Tumgik
kkagneta2 · 7 months
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まだここ見てる人いるんかな?
別に続きを書いている訳ではなく、久しぶりに詩帆ちゃんのことを思い出してたら降ってきたネタを書き留めました。
いまいち時間が取れなくて書けなくてすみません。でもたまにこうやって吐き出さないと精神衛生上良くないので(全然まとまってないけど)打ってたりはします。
まぁ何にせよ見てくれている人が居れば幸いです。
実は詩帆は知っていた。
事は今から10年も昔の話だ。当時4歳だった彼女にとって幼稚園は小さなものだった。昔から歳を同じくする子たちとは頭1つ2つ飛び抜けて大きかった彼女は、幼稚園入学当初からすでに机の上に立っているような背の高さであった。
「まぁ、大きいですね~」
なんて送り迎えのお母さん方には言われたけれども、自分の子供の大きさに絶対の自信を持つ保護者からは、なんだか羨望というか嫉妬、―――女の子なのに息子を胸の下に完璧に置いてしまうような彼女を、まぁ謂わば目の敵にするような表情で言われた時は流石に申し訳無いような気持ちになりはした。
私だけどうしてこんなに大きくなったんだろう。
よく分からない彼女は部屋の隅で他の子を見ながらこんなことを思ったものである。
そんな彼女に母親は見かねて光昭の母親に助けを求めた。
「光昭くんって今身長何センチ? 140センチ? ちょうどいいんだけど、ちょっと頼みたいことが…」
母親の作戦はこうであった。同学年の子よりも頭1つ2つ大きいなら、それと同じくらいの背の子を、―――例えそれが5歳上の子でも、―――紹介して詩帆と遊ばせればいいのではないかと。
互いに歳を知らせずに遊ばせれば、お互いに4歳の、―――光昭にとっては酷だが、―――子として接するのではないかと。
「光昭、今日はお母さんたち大事な話があるからあっちの子と遊びなさい。これを持って行って」
と女の子が好きそうなぬいぐるみを渡された彼は、よろしくねと言う詩帆の母の後ろに居るあどけない女の子を見て、ああ、この子と遊べばいいのか、はいはい、と思ったそうな。
さて、彼女の部屋へと行った彼であったが、なぜか距離感を詰めて接してくる詩帆に心臓をバクバクと言わせていた。それは彼女が、もはや誰とも似つかないとびっきりの美少女だったということもあるが、それ以上に彼はまだ他人を好きになったことが無いことが関係しているのである。おそらくこれが彼にとって初めての恋であったろう。そんな彼女に、もう互いの体温すら感じられるほどの距離で話しかけられるのである。
「うん、うん…」
完璧にリードする予定だった彼であったが、出鼻を挫かれて向こうの女の子に、―――しかも5歳も下の女の子に主導権を握られ、そして自分は恋心を抱きつつある。
―――これで、小学3年生の男の子が喋れようか。
だが、詩帆はそんな彼にお構いなしに接して行く。
「ねぇねぇ、これ、わたしのたからものなんだよ」
と、小物入れにはぴったりな、綺麗な装丁の箱を開けて綺麗な石を取り出して、嬉しそうな顔をしながら光昭と一緒に眺める詩帆。
彼女は滅多にこういう顔をしないのである。
それもそうなのである。彼女にとっては初めての自分と目線を同じくする相手なのである。
「いーでしょー。これはね、あめじすとといってね…」
と言って、石の名前と蘊蓄を手の上にそれを載せて喋る詩帆。彼も石は多少なりとも知っている。
「ああ、これはね…」
と負けじと詩帆に応戦する。
しかしまぁ、光昭はドキドキしっぱなしであった。それは詩帆の一挙手一投足が、どういうわけか彼にはたまらない宝物のように思えたからであった。
彼にはもはや彼女が髪をかき分ける仕草すら魅力的に見えたのである。
だが光昭はある違和感に引っかかりつつあった。隣に居るのは詩帆という名の美少女。背はだいたい自分と同じくらいだし、喋り方も、知識量もだいたい自分と同じくらい。だがどうして? この違和感は一体何なんだろう?
そう思って光昭は現状を確認しつつ詩帆の全身を下から頭のてっぺんまでも見、今この部屋を包んでいる空気、………いや、甘いいい匂いなんだけど、それと大事なものがあるはずの机の上を見て、やっぱり違和感がする…
この子、行動はやたら幼いし、やたら舌っ足らずだし、ランドセルは部屋には見当たらないし、机の上にはノートも教科書もない。
そう思ったとき、光昭はガーンとうなじら辺を岩で殴られるような感覚に襲われた。えっ、いや、そんなことは、………
いや、まさかな、………
―――詩帆は、小学生じゃない?………
そうは思ったが、息のかかる位置に居る詩帆、見たこともない綺麗な顔かたちの詩帆、いつまでも聞いていたくなるような声の詩帆、なんだかいい匂いもしてきて、頭がクラクラと揺れるような感覚に、
そんな状態が5時間は続いたろう。もう何を話したのか
そして最後に、
「みつあきくんせがたかいねAー、せいくらべしよっ」
と詩帆が提案してきた。そしてガバっと抱きついてきた。
光昭は驚いて現状を把握するのに手一杯であったが、詩帆の方は自分の頭の上から光昭の方へ手をスライドさせて背を測っている。
「うーん、よくわからないな~………」
何度もそうやっていたが、やっぱり分からないらしい。
そこで光昭は気づいた。詩帆の顔が、目が、各パーツが、自分よりも少し高いことに………
うっ、と思ったけれども、彼は彼女に勧められるがまま壁に掛けられている簡単な160センチまでのメジャーへと足を運んだ。
なぜなら小学生かも怪しい女の子に負けるはずがないから。
まずは光昭が先の簡単なメジャーに背を当てた。………1センチでも4月から伸びていますように!!
………
詩帆が光昭の身長を読み上げる………
「141せんち! すごーい!! おおきーい! 
 ―――こんどはわたしのばんね!」
と、光昭は先程まで自分が背筋を合わせていた場所に、詩帆の背中が当たるのを確認した。
そして彼女の身長を読み上げた。
と同時に得体の知れない恐怖が頭の中で爆発した。
―――自分より背が高い。
光昭の手はもうガタガタと揺れていた。
「どうしたのー? てがすごくふるえてるよ?」
「あ、ああ、ごめん。えっとね………ちょっと、待ってね………」
もう光昭は涙目で詩帆の顔すら見えなかった。
「えっとね、………1、…144センチ…」
喉の奥から絞り出すかのように彼は言った。
負けた………
「んふふー、みつあきくんよりたかーい!」
膝を崩しそうになる彼を他所に、詩帆は嬉しそうに手を広げてジャンプをした。
光昭の記憶は残念ながらここで途切れているが、その後糸が切れたように項垂れる彼に詩帆はなんとか彼を立たせて、反応の薄い彼を相手に
ちょっと悪いことをしてしまったと反省しているが、自分と同じくらいの背の男の子と遊べたのだから今となってはいい思い出である。
それが5つも上のお兄さんだったとは知らなかったけれども…
そして今、すっかりと小さくなった光昭と、膝を曲げに曲げて肩の高さを揃えつつ、それでもこっちの威圧感か遠慮しているのかどうか知らないが、微妙に距離のある彼に引っ付いて手の上にあるもう豆粒大の石を見る。
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kkagneta2 · 3 years
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ものっそい気楽に始めたからパイズリ描写を入れるかどうか迷ってるんだけど、kkag の書いたこういうの見たい人居る? (画像ですまん…)
今の所妹に攻められる展開しか考えてないです!
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kkagneta2 · 3 years
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寝る前の1時間ポチポチシリーズ
第一弾は怪力娘。しばらくこのくらいの息抜きが続きます。
スマホで打ったので見苦しいかもしれません。。。。。。。、。、。、。
これは給食の時に本当にあった話。
そのとき僕は、突然���ヤガヤする班に、一人女の子がいるのを見た。話は超能力で盛り上がっているらしかった。話を聞いていると、それは超能力の中でも有名な、スプーン曲げのことだった。
「へぇ、お前スプーン曲げできるのかよ」
と、ひとりの男の子が言った。その子は隣の男子に言ったようだった。
「おう、できるぜ。見てろよ」
と、話しかけられた子は言った。スプーンを手に持って、あの、よく見るように親指で押さえて、ぐっと力を入れた。
だけどスプーンは曲がる素振りを見せなかった。男の子は、
「無理だこれ!」
とおかしがって隣の子に、
「やっぱり無理じゃないか」
と言われていた。
と、その時だった。最初に僕が見た女の子が、
「わたしできるよ?やってみせようか?」
と言った。その子は細身で、色が白くて、見るからに弱々しそうな子だったから、僕は驚いた。さっき力技で曲げようとしていたのを、見ていたせいだった。
「えー、君じゃ無理だろー」
最初の男の子が言った。口ぶりからして、僕と同じように力技で曲げるのかと思っているらしい。
「できないのに言うんじゃねー」
と、二番目の男の子も言った。
が、女の子は動じなかった。
「できるよー。もう、見ていてね」
と、そう言って、スプーンを手に持った。僕が見たのはそれだけだった。だけれども、ニコニコとした女の子の目の前で、彼女の持ったスプーンはぐにゃりと簡単に曲がって行った。僕たちのと材質が違うのかと思った。
「えぇー!すげぇ!!」
「超能力じゃん!!!」
と、みな口々に言う。
「ね?できたでしょ?」
女の子はまるで簡単な計算問題を解いたかのように言った。曲げたスプーンを元に戻す時もにこやかだった。僕は我が目を疑った。
嘘だ、そんなのありえない。
と、女の子の細腕を見ては、そう思った。
 結局、給食は味がしなかった。
 その日の放課後、僕は少し用があって残った。
幸運だったのは、あの、給食の時間にスプーン曲げをした女の子も居たことだった。
僕は、思い切って話しかけた。
「ねぇ」
「ん?なに?」
と、女の子はにこやかに答えた。僕はこの時までこの子がこんなに可愛いとは知らなかった。
「え、えとさ、…」
「うん?」
「あ、えっと、…お昼のあれ」
「あれ?―――あ!もしかしてスプーンの?」
と、女の子は首を傾げて言った。
「う、うん。あれ、一体どうやったの?」
と、僕がこう言った時、女の子の目が変わった。一瞬、ニヤリとしたかと思うと、クスクスと笑って、僕を見つめてきた。
怖かった。
なんとなく、身がすくんだ気がした。
「ね、教えてあげようか?」
―――こっち来て、
そう言って彼女は僕を呼ぶ。
僕は怖かったけれども行った。体が怯えて、歩みが止まらなかった。
「握手しよっ」
そう言って、彼女は手を取ってくる。
と、その時だった!
「いたたたたたたたた!!!」
僕は突然走った激痛に身を悶えさせた。手が折れるかと思って、懸命に右手を、―――彼女との握手をしたのは右手だった、―――押さえつけて、耐えようとした。
が、しかし、
「ふふん♪」
と女の子は頬杖をついて、ニコニコとしている。
 それは、圧倒的なまでの力の差だった。
 僕は泣いていたように思う。だって、もう腕の感覚がなかったのだから。真っ白になった自分の手を、必死にもぎ取ろうとしては、激痛に叫んでいた。
「こういうこと♪―――わかった?」
と、女の子は言った。僕は手が離されたのにも気が付かずに床に倒れ伏した。
「ふふふ、…ねぇ、このこと誰にも言っちゃダメだよ。もし言ったら、どうなるか分かるよね?」
僕は懸命に頷いた。
「���ろしい、―――じゃ、またね、〇〇くん。なんか君とは長い縁になりそうだから、今後ともよろしくね。ばいばい〜」
  僕は彼女の言っていることは理解できなかったが、次の年も、その次の年も、そして中学生になった今でも同じクラスにいるのであった。
ああ、今日もそろそろ、―――
「〇〇くん!一緒に帰ろっ!」
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kkagneta2 · 4 years
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ボツ(?)5
ボツ5としていたやつです。
名前がcura なのは最近使った魔法がcura だったから…
質問者: cura | 2020/4/3 21:37
 30代、専業主婦です。主に息子についての質問と相談事です。
 息子は今年から中学3年生になる男の子で、勉強も運動も至って平凡(スポーツはともかく、勉強は学年で上から三分の一くらいです)なのですが、背の高さにだいぶ悩んでいまして、どうしても浮かんだ顔をしません。とくにここ一年間は笑顔を見せたことが、あっても両手で数えられるくらいです。
なので、背を伸ばしてあげて息子の笑顔が見たいというのが質問の内容ですが、もう少し詳しく話を聞いてください。少しその悩み方が異常なんです。
息子の身長は、いちおう去年の身体測定では164センチでしたからそう低くはありません。平均より少し低いくらいかな? というものです。けれども、本人としては背を1ミリでも伸ばしたいために色々と努力をしておりまして、その努力が少々甚だしくって心配なんです。
たとえば、もう中学3年生だというのに夜9時には絶対に床につきます。ですので、これを投稿する頃にはたぶん寝静まっているはずなのですが、小学生の娘(あとで言います)より先に寝るというのはどうしてもおかしいとしか思えません。中学3年の男子学生はそんなに早く寝るものなのでしょうか。本人は、どこから聞きかじってきたのか、成長ホルモンは夜の10時から明けの2時まで分泌されるからみんなこんなもんだと言いますけれども、やっぱりおかしいと思います。
また、食べるものもかなり制限しています。まず、間食としてお菓子やらジュースやらは絶対に飲みません。カルシウム、とにかくカルシウムをとりたいと言って、ヨーグルトやら納豆やらひじきやらを家族の二倍は食べて学校へ行きます。お昼は給食が出るので文句は言えませんが、夕食はカルシウムの吸収に良いらしい魚や鶏肉、それに野菜もほうれん草やら小松菜やらを無理してでもたくさん食べます。そして牛乳、これを毎日1リットルは必ず飲みます。しかも単に安売りされているものではなく、カルシウムが多量に含まれているらしい牛乳しか飲みません(私には分かりませんが………)。ココアにでもしてあげればいいのですが、本人は加熱でカルシウムが壊れたら大変だと言ってそのまま冷蔵庫から取って飲むので、私はおなかがゆるくなりはしないかと心配です。
そして毎日、お風呂上がりの柔軟体操を欠かしたことはありません。これは柔軟というよりは背筋を伸ばすためにしているようなもので、私もしばしば手伝わされます。背中を押してあげたり体を支えてあげたりと言ったありきたりなものから、特に最近毎日じっくりと時間をとってしているのは、本当に背筋を伸ばしてあげることで、これはどうするのかと言うと、まず息子の真後ろにぴったりと立ちます。すると息子が手をまっすぐ上に上げるので、その手首を掴んであげます(言い忘れましたが、私はかなり背が高く、188センチあります)。後はご想像どおり、そのまま腕を引っ張って背筋を伸ばしてあげます。伸ばしてあげるのですが、そのままだとすぐに体が浮き上がってしまうので夫に足を抑えてもらって、腕が抜けるか抜けないかのちからで引っ張ってあげる。というのを毎日息子がお風呂から上がった後、20分~30分はかけてじっくりやるのです。
まだまだ他にもやっていることはありますが、代表例としてはこんなものでしょうか。最後の体操などは体が密着してしまいますから、中学3年の男子としてはどうかと思いますけれども、本人としては嫌でも身長を伸ばす一抹の願いを込めてせがんでくるので、あえてなにも言わずに期待に答えてあげています。
それで身長が伸びたかと言うと、正直に言ってあまり変わっておりません。私からすると息子の頭はちょうど首の下あたりにあるのですが、去年からそれは同じです。一昨年から去年、つまり中学1年生から中学2年生に上がるまではかなり成長が確かめられたのですけれども、この一年間はなにも変わっていないのです。その事実が息子の顔に影を差している一つの原因になります。
と、ここで、「一つ」と言ってまた別に原因がありそうな言い方をしましたが、実際そのとおりでありまして、これはおそらく確実なのですが、例えそういった努力で身長が多少伸びようとも、息子の顔が晴れることはないかもしれません。というのも、私たちには今年小学6年生になる娘が居るのです。
もちろん娘は小学生ですから、息子からすると妹にあたります。ですが、私の血を強く受け継いでしまったのか(これも言い忘れましたが夫の身長は息子とそう変わりはありません)、小学5年生の春の段階で172センチもあって、この時点ですでに息子より背が高いのですけれども、それからも息子を置き去りにグングンと伸びていって、もう今では私にすら追いつこうとしています。たぶん180センチはあります。
元々、娘は大柄な子でした。幼稚園のときから周りの子よりも頭一つ飛び抜けていまして、小学生に上がる頃には頭どころか胸から上が突き出るようになっていました。私はその頃から息子と娘の身長差にあまり変わりが無いことにぼんやりと気づいておりましたが、息子はずっと戦々恐々としていたそうです。これは後で聞いたのですけれども、ある日友達からお前の妹とお前ってどっちがでかいんだ的なことを言われたらしくて、まだその時は息子の方が大きかったものですから、たいした傷にはならずにすんだものの、段々と娘が自分に追いついてくるつれて、なんだかこう………嫌な気持ちが芽生えてきたと、それで追いつき追い越されて、妹を見上げるたびに悔しさが心の底から沸き起こって沸き起こってしょうがないのだと、ようやくこれを聞いた時には息子は泣きじゃくってしまいましたが、その後の様子を見ると、明らかに自分の妹を敵視しているのです。なにを言われても素っ気なく返事をして取り合わず、昔は登下校も一緒にしていたのに、もう今ではすっかり2人別々に家を出るようになってしまっていました(露骨に避けると言うのが正しいかも知れません)。
いいえ、追い越された当初はまだ笑顔で受け答えをする様子が見えました。確か息子が中学1年生、娘が小学4年生の頃でしたでしょうか。春の身体測定では息子が152センチ、娘が157センチでした。息子も成長期に入って身長が伸びていた時ですから、おそらくそのために笑顔で受け答えをする余裕があったのだと思います。ですがその一年間で娘の背が170センチを超え、その次の一年間で(おそらく)180センチを超えてしまったとなると、伸びども伸びどもどんどん差が広がっていく現状に不満を抱いてしまうのも無理は無いでしょう。そしてどんなに頑張っても自分の身長が伸びていない現況を顧みると、どうしても妬み嫉みが勝ってしまって、娘をまともに見ることが出来ないのでしょう。
息子はよほど悔しいのだと思います。それが夜の9時には必ず床についたり、カルシウムだけを考えた食べ物をとったり、体操したりすることに出ているのでしょう。出ているだけで心の内ではどんな嘆きが交わされているのか計り知れません。
確かに自分の妹に身長を追い越されるのは嫌な気持ちです。ましてそれが年頃の男の子ならなおさらでしょう。私は身長で気になったことがないから分かりませんが、息子の様子を見ると、ほんとうにどうにかしてあげたい気持ちでいっぱいになります。
そこで質問の内容になります。
まず1つ目。どうしたら息子の背が伸びるでしょうか? もちろん10センチも20センチも伸びてくれれば御の字ですが、1センチでも1ミリでも伸ばせられる方法があるならば、教えていただきたいと思います。もう息子と娘が並んで立つと、息子の方が娘の首元までしかたどり着けていません………
そして2つ目。息子にどういう言葉をかけてあげればよいでしょうか? 少し前に言ったとおり、私は昔から背が高くて(前にも言いましたが188センチもあります………)身長の悩みを持ったことがございません。なのでいったいどういう言葉をかけてあげれば、息子の気持ちが楽になるのか分からないのでございます。特に最近では私に対しても妬みを抱いているらしく、声をかけてもソワソワとしてあんまり落ち着きがありません。ですから息子の悩み以前に、いったいどう話しかけたらいいのかお教えいただきたいと思います。
 こういう質問をするのは母として失格かもしれませんが、ほんとうによろしくおねがいします。
   ――――――――――――――
 名無し | 2020/4/3 22:01
 cura さんこんばんは。年頃の子らしい悩みを持つ息子さんをお持ちで大変ですね。切実な思い、伝わって来ます。また、息子さんも妹さんに身長を追い抜かれて、cura さんのおっしゃった事柄だけでも真剣に背を伸ばしているのが分かります。
さて、わたしも同じ年頃の子供を2人持っていて、反抗期に入った彼らをどうもて扱かえばいいのかと頭を悩ましていますが、これがなかなか曲者でたぶん答えはないかと思います。わたしの場合はただ単にうざがったり、言うことを聞かなかったりするだけですけれども、それでもその日その日によって同じ言葉でも捕らえ方が違いますから、うっかりすると大惨事になりかねません。ですがやっぱり一度優しく声をかけてあげる………なんといいますか、そうだねそう思うのも無理はないよね………っという感じで肯定しながら話しかけると、息子も気がゆるんでいるような気がします。なのでcura さんの場合は息子さんに、うんそうだよね、背が伸びないのは悔しいよね、こんなに努力してるのにね、と話しかけてあげてはどうでしょうか。cura さんはよく息子さんの様子をご覧になられているみたいですし、気持ちもおおよそ察せているようですから、それをそのまま語ってあげるだけでいいと思います。
あ、ここで妹に負けて悔しいよねと言うと、たぶん大惨事です。cura さんのおっしゃったことを見ると、息子さんは相当に娘さんに負けていることにコンプレックスを抱いているようですから、ご自身の身長だけに焦点を当てた方が無難かと思います。cura さんの身長も出来る限り触れないようにしてあげましょう。
そうやって味方についてあげれば、自然と息子さんも気が楽になるはずです。そうすればどんどん向こうから語ってくれて、身長コンプレックスの解決になるかもしれません。頑張ってください。
 身長を伸ばす方法については、すみません、カルシウムを摂るということ以外にしらないです。ちゃんと寝るとか、………
これまで通りの生活を続けていけばきっと伸びますよ!
 それにしても質問者様の身長もさることながら、娘さんも小学生にして180センチもあるとは驚きです。いったいどこまで高くなるのでしょうか。
 ――――――――――――――
 質問者: cura | 2020/4/3 22:28
 ご丁寧な回答ありがとうございます。大変に参考になります………。
やっぱり息子は娘に負けたこと自体にコンプレックスを抱いてしまっているのですね。それで自分の身長だけを考えれた方がよいと、………なるほどです。思えば息子が一番嫌がる顔をするのは、娘のことを引き合いに出した時ですから確かに名無しさんのおっしゃるとおりです。息子は案の定寝入ってしまっているので、また明日そういうことを踏まえて接してみようと思います。
ですがちゃんと大惨事にならないように言葉を選べるかもう不安になってきました………
 娘の身長については、私が小学生の時(たしか卒業時に179センチ)よりも高いので、このままだと確実に190は超えてしまいそうです。
 ――――――――――――――
 名無し | 2020/4/4 10:15
 大丈夫ですよ! cura さんは息子さんのことをご本人が思っている以上に理解していますから!
それに毎日背筋を伸ばす体操をしていらっしゃいます。体を密着させて腕を伸ばしてあげるなんて、よっぽどcura さんのことを頼りにしていないと出来ないことですよ。cura さんは「本人としては嫌でも頼らざるを得ない」とおっしゃいましたが、本当に息子さんは嫌がっているのでしょうか? 実はcura さんに頼れて嬉しいのではないのでしょうか?
そもそもコンプレックスなんてそうそう人に喋れるものではありません。ましてそれが自分が羨むような、まして異性ならばなおさらです(たぶん、………)。それなのになぜ頼りにしてくるのか? それはもう自分のことを理解してくれるから頼りにしているのですよ。もうcura さんくらいになると、うんうん頷くだけでも息子さんの気が晴れるような気がします。自分の子との距離が近いのは羨ましい限りです、本当に。
 ――――――――――――――
 質問者: cura | 2020/4/4 21:43
 回答が遅れました。息子はさっき寝入ったようなのでようやく書き込めます(といっても布団に入れば朝まで絶対に出てきませんが………)
何度も何度も褒めていただきうれしい限りです。今日、息子の腕を引っ張っている最中にこっそりと顔を見てみると(今まで見ていなかったのが不思議なくらいです)、名無しさんのおっしゃるとおり、こころなしか顔がゆるんでおりまして、ああこれはもしかするとと思い、試しに終わった後、今日も早く寝るの? と声をかけたらうんと答えてくれたので、毎日大変だね、身長が伸びるといいねと言ったところ、なんと(!)笑顔で頷いてくれて、しかもそのまま(!)お母さんより大きくなりたいとも言ってくれて、もう私、すごく感動してしまって思わず抱きしめちゃいました。すると息子は苦しいって文句は言いましたけど顔を真赤に抱きしめ返してくれて、いやはやまさかこんなにかわいいところを見られるとは思いもしていなくて、結局飽きるまで抱きしめてやりました。
その後そそくさとリビングを後にされましたが、手応えかなりアリです。
 もう今日は息子がかわいくて眠れません。アドバイスほんとうにありがとうございました。
 ――――――――――――――
 名無し | 2020/4/5 10:22
 そうです! そういうことです! さすがcura さんです!
やっぱり息子さんはcura さんのことを嫌がってなんていなかったんですね。私もついホッとしてしまいました。
それにしても、ハグしても特に嫌がる様子がないどころかハグし返されるとは、本当にcura さんのことが好きなんですね。お羨ましい限りです。うちのとこもそれくらい距離を近づければいいのですけど……
 少しずつ、少しずつ妹さんのことも織り交ぜて息子さんの気持ちを和らげてあげてくださいね! これからも支えてあげてください。
 ――――――――――――――
 質問者: cura | 2020/4/6 12:27
 ありがとうございます。ひとまず一つ希望が見えてきて嬉しい限りです。
名無しさんも子育て頑張ってください。
  ――――――――――――――
  名無し | 2020/4/4 13:01
 質問者様が188センチで、娘様も180センチくらいあるのですか、………ものすごい長身の一家ですね(男を除いて)、あまり背の伸びなかった息子様の苦労が目に浮かびます。もしかして質問者様のご実家の方も同じくらい背が高いのでしょうか………
それはさておき、当方、息子様よりも低い162センチのチビ男ですが、同じ悩みを抱えたことがありまして、色々と背を伸ばす手を取ったことがあります。
箇条書きで書くと、
 1.牛乳をたくさん飲んだ。(一日に500~800ミリリットル程度)
2.運動をたくさんした。(部活は野球部に所属しておりました。他にも筋トレやランニングなど、日に1時間か2時間程度は体を動かしていました)
3.ご飯をたくさん食べた。(質問者様の息子様とは違い、私の場合はほとんどやけ食いに近かったです)
4.栄養はビタミン剤を飲んで補助した。(市販のマルチビタミンです。それを毎食後に飲んでいました)
 あまり背は伸びなかったけど、ご参考程度に………
質問者様の投稿で触れていないだけかもしれませんが、運動はやっぱり大事かもしれません。
息子さんの背が伸びることを切に願います。
 ――――――――――――――
 質問者: cura | 2020/4/4 22:20
 貴重なご意見ありがとうございます。
私の父も母も妹も大きいです。平均して178センチくらいでしょうか(なんだかやっぱり私だけ大きいですね)。不思議なことに妹の子供も女の子ですが、今年中1で175はあるそうです。
 やっぱり運動は………必要ですよね。一応部活には入っていますから頑張るよう言ってみます。
 ――――――――――――――
 名無し | 2020/4/5 15:55
 横から割り込んで失礼ですが、やはり運動は背を伸ばすためには重要です。一番と言っても言い過ぎでは無いかも知れません。特に息子さんはcura さんの遺伝子を受け継がなかっただけに、運動なしではどれだけ食べても身につかない可能性があります。
cura さんがおっしゃるような食生活をして、中2から伸びていないとなれば、もはや運動不足が原因なのは間違いありません。
せめて170センチ台には乗れるように、ぜひ上の方がおっしゃったようにランニングなどをおすすめしてください。中2で175センチもある姪様を見ても分かる通り身長は8割が遺伝の賜物ですが、残りの2割が意外と効くものです。
 ――――――――――――――
 質問者: cura | 2020/4/5 22:47
 本日それとなく部活を頑張るように言ってみたところ、案の定苦い顔をされてしまいました………
これには少し理由があります。息子は中学のバスケ部に所属しているのですが、あまり背が高くない方な上に、夫に似て運動が得意な方ではないので、これまで一度もレギュラーメンバーに数えられたことがありません。なのでやる気を失っておりまして、先生が言うにはボールを持ってぼんやりとしている時間が多いのだそうです。確かに、運動不足なのは否めません。私は息子が部活中にどう過ごしているのか知りませんから何とも申し上げようがないですけど、体つきを見るとなんとく肉がついていないと言いますか、ひ弱な感じがするんですよね。その点で言えば、娘の方は骨太ではないですがしっかりと筋肉がついていて、ひと目見ても健康的な印象を受けます(しなやかと言った方が良いでしょうか)。
やはり私としては、息子は男の子ですからしっかりと運動をして健康的な体を養って欲しい、というのが本音でございます。今日はもう寝ていますので、明日の朝にでも早速ランニングをしてみてはどうかと勧めてみます。
 ところで身長は8割が遺伝と聞いてゾッとしました。残りの2割が意外と効くと聞いて安心しましたが、体つきに関しては夫の遺伝子ばかりを受け継いだ息子の身長が、その8割に引きずられて今後伸びないかもしれないと思うと、やはり母としては残念でなりません。しっかり運動させたいと思います。
 ――――――――――――――
 名無し | 2020/4/8 16:56
 小学生で180センチなんて信じられないです! いったいどういうものを食べたらそうなるんですか?!
 ――――――――――――――
 質問者: cura | 2020/4/8 23:07
 家族間で別々の料理を作るのはかなり億劫なので、基本的には息子と同じもの(カルシウム中心の料理)を食べています。なんだかそれも原因みたいですね。
 ――――――――――――――
 名無し | 2020/4/8 23:45
 なるほど! それは確かに背が伸びそうですね! 私もバスケ部なのでしっかり背を伸ばさないと!
 ――――――――――――――
 名無し | 2020/4/9 00:31
 妹に身長で逆転された息子さんも気になるのですが、娘さんは小学生なのに180センチもあることに悩んではいないのでしょうか? 息子さんはまだ中3で166センチでいいですが、周りの子はまだ小学生だから色々といじめなどがありそうで心配です。
運動会などでは二人三脚ができなさそうだし、ランドセルも合わなさうですし、水着もスクール水着が無そうですから他の子と違う水着をつけているのでしょうか。
 ――――――――――――――
 質問者: cura | 2020/4/9 9:33
 娘は、母である私が大きいので身長については特に悩んではいないです。おっしゃるとおり、学校では他の子が腰くらいまでしかたどり着けずに一人だけ飛び抜けてしまってますが(ほんとうにすごいんですよ。写真を見ると、え? これが小学生なの? と思っちゃいます)、いじめみたいなのは本人からも先生からも知人からも無いことは確かなようでございます。私自身も、授業参観などで別け隔てなくみんなと接している様子をこの目で見ましたし、それこそ運動会ではかけっこや綱引きで他のクラスの男子を圧倒して、喜ぶクラスメイト一人一人とハイタッチしていました。もちろん二人三脚なんてすると、普通の子の目線と娘のお尻がちょうど同じくらいですので、まともに歩くことすら出来ないかもしれませんが、それは臨機応変に………です。とにかくいじめなどはないです。
ランドセルについては赤色のオーソドックスなものを使用しています。娘は背こそ高くなってしまいましたけど体はまだ小学生なので案外持ちます。が、確かに身長180センチほどの女の子が背負うと違和感があるかもしれません。またスクール水着については、なんと今の時代ちゃんとサイズ展開されているんですよねぇ………私が小学生の時はほんと水着がなくて一人だけ浮いていたのに、学校から配られたカタログを見るとびっくり! 身長2メートルでも着られるようなスクール水着があったりして、いい時代になったなぁと思います。
 余談になりますけど、娘の目下の悩みは背の高さよりも体がふっくらしてきたことにあるそうです。失礼なことに(いつもは私に似て嬉しいって言うのに!)、お母さんに似てしまったからすぐに太っちゃうかもと言って、ダイエットに手を付けようとするので、大丈夫大丈夫、女の子はそういうものだよとたしなめることが多くなってきました。一応、夫は私の体型はかなりの細身だと言いますし、いつもお世話になっているショップの店員さんも、相変わらずものすごいスタイルですねと褒めてくれますから、世間一般に見てもスリムな方だと信じておりますが(自慢みたいな感じですみません)、胸が極端に大きくてOカップもあるので、娘はそのことを気にしているに違いありません。なぜと言うのはちょっと恥ずかしいのですが、ついでなので語っておきますと、ドレスやスーツなどのオーダメイドした衣装なら特に問題ありませんけれども、普段着を着るとどうしても着ぶくれして太って見えてしまうのです。ですから昔からの友人にはいつもちょっかいとして、胸で浮いた部分(例えばお腹の辺りだとか)を抑えられたりしまして、いったいどうやったらそのスタイルを維持出来るの? と真剣に聞かれたりもします。
こればかりはどうしようもありません。中学生の頃からすでにH カップとかI カップとかありましたから、その時から胸の大きさに四苦八苦しておりますが、未だにこれと言った解決法が見つからずに毎朝身支度を整えるときにうんうん唸っております。もしほんとうに、娘が私の遺伝子を強く受け継いでしまったというなら、娘もちょっと見られないくらいには胸が大きくなってしまうでしょうから、なんとかそれまでには着ぶくれの問題を解決したいと思っています。
 なんだか話がそれてしまいましたが、とにかく娘は楽しげに毎日を過ごしております。
 ――――――――――――――
 名無し | 2020/4/11 22:36
 詳細な回答ありがとうございます。娘さんが何の滞りもなく過ごしておられて安心しました。またcura さんなら、多少トラブルが起こったとしても難なく対処しそうでさらに安心しました。
これからも家族仲良く暮らしてください。
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 名無し | 2020/4/10 03:07
 身長なんて規則正しい生活をしていたら伸びますよ。後は遺伝次第なので伸びなければ諦めましょう。
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 質問者: cura | 2020/4/10 14:16
 そう言われるともうそれまでなのですけど、やはり私としては少しでも息子の努力が報われると嬉しいです………。現に、一昨日から外でランニングをし始めてヘトヘトになって帰ってきます。そんな息子の様子を見ていると、ひとしお身長が伸びて欲しい思いに駆られて、口に出して言うのは私と夫だけですが(娘にはお兄ちゃんの身長に触れちゃダメだよと約束しています)、一家総出で頑張れ頑張れと応援しております。
ですが遺伝が原因で伸びないとなるともう諦めた方がよろしいのでしょうか。とても私にはそんなこと言えそうに無いです………。
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 名無し | 2020/4/13 19:40
 諦めないでください! 絶対に伸びますから!
いつか聞いたことに身長は25歳くらいまでは伸びるそうですから、希望を捨ててはだめです!
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 質問者: cura | 2020/4/13 22:11
 25歳まで! なるほど、そういえば私も二十歳を超えてから1、2センチほど背が伸びていたことをすっかり忘れておりました。息子にも伝えてみます。
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 質問者: cura | 2020/4/10 14:38
 ランニングで思い出しましたが、息子に提案したときちょうど娘も同室しておりまして、お兄ちゃんがやるなら私もやる! と言いだして、ランニングは2人で行うことになりました。息子は娘を敵視していますから相当嫌がっていますけど、娘にお兄ちゃん行こうよ行こうよとねだられてしょうことなしにシューズを履いて出ていきます。
それでやっぱり息子は運動不足だったみたいです。ランニングをするのは息子が帰ってきてから夕食までの1時間ほどなのですが、2人揃って出ていったにも関わらず戻って来てぜーぜーと息を切らしているのは息子の方なのです。娘の方は多少血色がよくなったかな? という程度で、それほど疲れているようには見えません。後でこっそり様子を聞くと、一緒に走ろうと思ってぴったり横についていたらいつの間にか無理して走るような感じになってて、休もうと言ったんだけどすごい目で睨まれちゃったから、とりあえずお兄ちゃんと並んで走ることはやめにして、後ろからゆっくりついていくことにして走っていると、どんどんペースが落ちてって、図書館から家までは私、ほとんど歩いちゃってた。お兄ちゃんはその間もちゃんと走ってて、もうなんとか進んでいるという感じだったけど、それでも一歩も止まること無く足を動かしていたから、あの、お母さん、あんまり怒らないであげてね。私あんなお兄ちゃん見るの久々で泣きそうになったんだもん。と、娘は言っていましたが、さすがに小学生の妹より体力が無いのはどうなのかなと思います。しかも娘は活発な方ではなくて、むしろ本を読んだり、料理をしたり、ピアノを弾いたりするような大人しい子ですから、そんな娘にランニングでついて行けないとなれば、息子は思った以上に運動不足なのかもしれません。夏になればぜひ水泳をさせて(息子はカナヅチな方ですが)、せめて娘程度には体力をつけさそうと思います。
 ちなみに娘は息子と一緒に何か出来ること自体が嬉しいらしく、息子が寝静まってからもずっとお兄ちゃん、お兄ちゃんと言ってランニングを楽しみにしているようです。
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 名無し | 2020/4/12 09:39
 邪険に扱われても全然不機嫌にならないし、「あんまり怒らないであげてね」と言ったり、いい娘さんですね。
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 質問者: cura | 2020/4/12 18:53
 ありがとうございます。そう言っていただけると親として大変に誇らしい限りでございます。
まぁ、とはいっても娘は元々大のお兄ちゃんっ子で息子のことは大好きですし、何だかんだ言って息子が大切に思ってくれていることを見抜いていますから、邪険に扱われたからと言ってさほど傷ついてはいないようです(後者は本人が嬉しそうに話していました。身振りや手振り、それに話し方で分かるそうです)。なので、しばしばアタックが激しくなって、うるさいだとかそっとしてとか言われることはあるにはありますけど、少しでもそばに居たいがために、今回のランニングのように息子と一緒に何かしたがるんですよね。今日も渋る息子の手を引っ張ってランニングに行きました。
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 名無し | 2020/4/11 12:07
 cura さん
大変なご家庭をお持ちしてご心労のほど察します。
私は子供の扱い方も、背の伸ばし方も他の方が言われているようなことしか知りませんから一つ質問をさせていただきます。
お兄ちゃんの方が164センチで、妹の方が180センチくらいならよく兄妹じゃなくて姉弟と間違われるのではないのでしょうか?
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 質問者: cura | 2020/4/11 22:28
 ねぎらいのお言葉ありがとうございます。
娘の方が姉に見えるということは、おっしゃるとおりよくあります。が、息子もそう思われることを嫌っていれば娘も嫌っていて、もしお姉さんだとか弟さんだとか呼ばれると、ものすごい不機嫌になってこれ見よがしに「お兄ちゃん」と連呼します。いかにも子供っぽい怒り方ですけど、息子からしてみれば情けでお兄ちゃんと呼ばれるよりは嬉しいらしく、どことなく安心と言いますか、心が軽くなったと言いましょうか、とにかくそんな顔を浮かべて、僕が兄です、こちらが妹ですと紹介し直します。
しかしながら娘の方を年上だと見る人は跡を絶ちません。それには身長差もありましょうけど、何より娘の身にまとう衣服が、私の影響を受けて大人っぽいものばかりなのです。いえ、衣服だけではなくて髪型から化粧から靴まで、小学生らしいものは一つもないかもしれません。あなたまだ小学生なのよ? もう少し年相応の格好をしてみたらどう? とよく提案するのですが、ううん、私はこれがいいと思うし、こういうのでないと似合わないと思うと言って、息子が居ない時には特にかかとのあるブーツまで持ち出して身なりを整えますので、中学生や高校生どころか大学生に一見見えてしまいます。でもそうしないと、確かに娘の言う通りかなり不格好になってしまうし、そもそも丈の問題がありますから年相応の格好と言っても服自体そうそう見つからないのです。
逆に、息子はファッションなどにはかなり無頓着な方なので、娘と一緒に立たせると子供っぽさに拍車がかかって私ですら姉弟のように見えることがあります。幸いにも娘はまだあどけない顔をしていますから、一応兄妹だと言うと「ああ、なるほどね」と納得していただけるのですが、やはり街行く人々に姉弟だと思われるのは防ぎようがありません。
そんなことがありますので息子は今では娘とはあまり外出しません。用がある時はさっと音もなく出かけてしまいます。この間も夫と息子とでドライブに出かけたらしいのですが、何の書き置きもなく行ってしまったので、娘は大変に心配してお兄ちゃんが居なくなったと大騒ぎをしておりました。
 それにしても娘の選ぶ衣服は中々センスが良くて、しかも身長が身長だけにかなり似合っていますから、私としては変な男の人に声をかけられて怖い思いをしないかと日々心配しております(親馬鹿だと思われそうですが、私もかなりの頻度で声をかけられましたからどうしても心配になってしまうのです)。
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 名無し | 2020/4/12 17:24
 娘さん大人っぽいなら何を着ても似合いそうですね~。お羨ましい………けど、制服が似合わないような気がしてなんだかかわいそうな感じもします。
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 質問者: cura | 2020/4/12 21:44
 本人はもう制服なんて嫌だ~~と毎日嘆いております。が、小学校の制服もデザインが変わって可愛らしくなったので、そんなに似合ってないことはないですよ。
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 名無し | 2020/4/14 20:36
 身長を伸ばすことは可能です。しかもまだ中学生でしたら、まだまだこれからも伸びる余地はたくさんあります。
しかし、cura さんがおっしゃるように中学2年生から中学3年生の間で全く伸びていないのでしたら、申し上げにくいですがちょっと絶望的です。
もう5センチほどは伸びるかもしれませんが、娘さんのように180センチまで達するというようなことは無いと思っていいでしょう。まして娘さんはまだまだ成長期なようです。勝つことは絶対にあり得ないと思ってください。
ですので少しでも背を高くするために、他の方たちが言われているように規則正しい生活をして運動をたくさんさせてあげてください。それだけでもかなり違うはずです。
 ここで提案なのですが、身長や体格で娘さんに敵わないなら勉強を頑張ってみてはどうでしょうか。勉強ならやればやるだけ身につきますし、将来には絶対に役に立ちますし、それに何より、娘さんより秀でたところが一つでもあると息子さんも気持ちが楽になると思うのですが………
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 質問者: cura | 2020/4/14 23:17
 辛辣なお言葉ありがとうございます。私自身も正直に言えばもうそれほど伸びるとは思っておりませんが、少しでも息子の身長が伸びると言っていただけるだけで嬉しい気持ちになります。
 さて、勉強を頑張ってみてはという提案なのですが、ほんとうのことを申しますと、娘は勉強も物凄く出来てすでに高校の受験問題を難なく解いています。たぶん単純な学力なら娘の方が上にあることは間違いありません。このことは、言えばさらに��嫌いが加熱するかと思って息子には極内緒にしていますけど、なぜか頭の良さについては息子のほうが私譲りに、娘のほうが夫譲りに生まれて来てしまったんですよね。それで昔からよく、この子は先に生まれた子より賢くなるかもしれないと言って、2人で勉強を教えていました。するとどうでしょう、気がついた時にはすっかり息子を通り越してしまっていたのです。今はお兄ちゃんを超えたくないという娘の思いのためにお勉強は一旦中断していますが、もしそれがなければ(息子にとって)恐ろしいことになっていたかもしれません。
ですから、勉強を頑張ってみてはという提案は少々息子には過酷です。それに彼はよく頑張っています。夜早く寝る分朝早く起きますから、それから学校へ行くまでの時間はずっと勉強をしていますし、先生がおっしゃるには授業も姿勢良くきちんと聞いているようです。ただ単純に、おバカな私に似てしまったせいで伸び悩んでいるだけなのです。
娘はそんな息子を見てなんとかしてあげたい気持ちにかられるようですが、毎日宿題を教えてもらうフリをして部屋に押しかけます。あんまりうまく行っていないようですけれども、息子はしょうがないなという感じで教えてくれるそうです。今は息子の身長コンプレックスが爆発していますからこれ以上は望めません。とりあえず息子のモチベーション維持のために、お兄ちゃんにお勉強を教えてもらって嬉しそうにしていたよ、というような声はかけてみますが、娘に勝つためとは言わないでおきます。
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 名無し | 2020/4/15 19:03
 そうですか、娘さんは身長が高いだけではなくて、勉強面でもすでに中学生を凌いでいるのですか。本当にすごい子ですね。
確かに今は娘さんの方が頭がいいとは言わないほうがいいですね。状況も知らずに出しゃばってすみません。
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 質問者: cura | 2020/4/15 22:45
 いえ、ありがとうございます。何か一つでも秀でたところがあると気が楽になるのは確実だと思いますから、息子と一緒に得意なことを探そうと思います。
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 名無し | 2020/4/15 10:28
 ところでお母様の成長歴をお聞きしたいのですが………
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 質問者: cura | 2020/4/15 23:42
 わ、私のですか………? いいですけど、たぶんつまらないですよ?
 とりあえず小学校卒業時に179センチあるとは言いましたから、それまでを少し詳しく書きます(憶えている限りで)。
小3: 143センチ
小4: 149センチ
小5: 158センチ
小6: 173センチ
と、こんな感じだったでしょうか。全部春の身体測定の結果です。こうしてみると小5までは大柄な子程度だったのに、その一年間でずんずん伸びちゃって、小学6年生の春に170センチを超えてしまってみんな肩か胸くらい、特に男の子の中で小さい子は私の胸の下にすっぽりと入ってしまって、面と向かって立つと怯えられた憶えがあります。娘はもう10センチ近く高いのでもっとすごいんでしょうけど………
もちろん今が188センチですから、それからもちょびっとずつ伸びていきました。
中1: 180センチ
中2: 183センチ
中3: 185センチ
高1: 186センチ
高2: 186センチ
高3: 187センチ
中学生まではまだ伸びていたんですよね。それが高校生になると全然伸びなくなってようやくホッとしました。それでも186とか187とかありますけど。
なんだか中1で180センチあったって言うとみんな驚くのですけれども、私からしたら別に普通でした。180センチだ、って告げられた時もあぁ~やっぱり超えちゃったか~と笑っていたと思います。みんな私より小さいのも、ドア枠に頭を打ちそうになるのも、背が高いって驚かれるのも日常茶飯事でしたから。それに当時の男子は意外と背の高い女性というものが苦手ではないらしく、全然話したことのない下級生までもが付き合ってください!と告白してきまして(生徒会長だったからでしょうか)、自分の背が好きになる嫌いになる、というよりは、どう言えばいいのでしょう、なんだかこう、無頓着と言えばいいでしょうか、とにかく全然気にしたことはありません。ちなみに夫は昔からの幼馴染でございまして、そういえば彼は私の体のことについて何にも言わなかったものですから、余計に無頓着になったんだと思います。
そんなこんなで高校を卒業してからはめっきり測らなくなったので全然データが無いんですけど、22歳のときに測ったので188センチでしたから今でも188センチだと言い張っています。もしかしたらもう少し大きくて190センチ台に乗っているかもしれませんが、まぁ、そこはご想像におまかせすることにします。
 成長と言えば背よりも困ったのが胸でした。ちょうど身長の伸びが穏やかになりつつあった中学1年の春頃からすくすくと大きくなりまして、その年の冬にはA カップがD カップに、その次の中学2年生のときにD カップからJ カップに、そのさらに次の中学3年生のときにJ カップからL カップ(!)にまで成長してしまいました。特に中2の頃は胸が張って寝ようにも寝付けず毎日寝不足で悩まされましたよ。それが中3の夏頃に急激に柔らかくなって、それでもムクムクと大きくなってたんですけど夜に寝付けないということはなくなりました(中3の夏で108センチのK カップ。ほんとうにこの大きさだったんですよ)。でも代わりに制服が胸を圧迫するようになって、今度は日中に息苦しくってしょうがなかったです。それに男子からのセクハラとか(偶然を装って真正面からぶつかってくるんです)、友だちとランジェリーショップに行くと蚊帳の外になることとか、この胸にはかなり困らされました(私の妹はもっと大きいので何をそのくらいとしばしば言われましたが)。
と、まぁ、こんなふうに中学の3年間でABCDEFGHIJKL と12段階(!)も大きくなってしまいましたが、身長と違って高校に入ってからもずんずん大きくなっちゃって、入学した春の段階でM カップ、高校2年生でN カップ、3年生でO カップからP カップを行ったり来たりするようになって、校内中で私の胸がいったい何カップあるのか推測するゲームが流行っていました。当時は関西でも随一のバレー部の部長を務めていましたから、ちょっとした人気者だったのです。が、もちろんO カップとかP カップなどというカップ数があるとは誰も夢に思っていませんから当てられた人は一人もおらず、修学旅行でブラジャーのタグを見た友達にたいそう驚かれました。
それでそれで胸についてはまだ続きがありまして、高校を卒業してからしばらくはO カップに落ち着いていたんですけれども、妊娠を期に再び大きくなりまして、O がP になり、P がQ になり、Q がR(ほんとですよ……)にまで大きくなってしまって、ほとほとに胸が重くってしょうがなかったです。たぶん片方だけで5、6キロは軽くあったのではないでしょうか。とにかく胸が張って痛むので、母乳が出るようになってからは朝昼晩と、息子と娘に与える他に母乳を絞り出す時間を作ってやらなければならなくて、毎日毎日2時間3時間は洗面所の前で胸を抑えていました。これがなかなか大変で、夫に手伝ってもらおうにも胸が重いせいですぐに疲れたと言い出しますし、搾乳機を使おうにもあまりにも母乳の出が良くって効果的ではなかったものですから(1日に6リットルから8リットルは出てました)、結局は自分の手で絞らなくてはならなくて、洗面所は鏡や床までが真っ白になりましたし、匂いは服に染み付きましたし、何より絞っているうちに胸がじんじんと火照るのが、絞り終えた後も続きますから、お医者さんから処方された薬でどうにか母乳の出を抑えていました。
と、それはさておき、こんな風に出産で大きくなった胸は普通ならば赤ちゃんの離乳と共に少ししぼむのが常なんですけど、私の場合なぜか全然しぼまなくて未だにR カップを維持しています。と言っても、R カップだと言い張ったところで誰も信じてくれないので、聞かれた時はO カップと言うことにしていますが、それでもかなり驚かれます。
 私の成長歴はこのような感じで御座います。どうでしょうか? つまらないと感じられたなら、ほんとうに申し訳ございません。
  バレー部のキャプテン。男子プロチームをボコボコにしたことがある。取材があった。謎の巨乳女子高生。化け物のような子。本人は恥ずかしかったと控えめ。
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 質問者: cura | 2020/4/16 22:52
 今日は息子の身体測定の日でした。私はすっかり忘れておりましたけど、そう言えば今季の予定表に4/16が身体測定だと書いていたのを思い出しまして、いつものように息子の腕を伸ばしてあげている際に聞いてみたところ、あるにはあったけどだとか、一応測ったよだとかは言うのですが、身長についてはどうにも言葉を濁されてしまって答えてくれません。ここで無理やり問いただすのは良くないとこの一年間で学びましたから、とりあえず去年より伸びてた? と優しく声をかけたり、いつものように抱きしめてあげたりして待っていると、涙声で全然伸びてなかったと言って私の胸に顔を埋めるのです。でも1センチくらいは伸びてはいたよね? と聞くとかすかに頷きますから、なら良かった、少しでも伸びていたならお母さん嬉しいな、だって○○くんの努力が実ったってことだから、ほんとうに良かった、と本当にホッとして言ったんですけどやっぱり、でも全然、全然、全然だったと頭を振るばかりで話になりませんので、また明日にでも聞こうと思って頭をなでながら、今日はもう少し長くストレッチしてから寝る? と言って息子とはそれっきりになってしまいました。
で、やっぱり息子の身長については気になりますから、先程息子の部屋にまでこっそり赴いて来まして、熟睡しているのを確認してから、そっと鞄の中にある身体測定の結果を見てみました。もうすでにグシャグシャでしたけれどもとにかく読んでみると、今の息子の身長は165センチだそうです。確か去年が164センチでしたから1センチは大きくなりました。やっぱり伸びていたんだと私大変にホッといたしまして、身体測定の結果を胸に抱きながら息子の頭をなでたのですが、なでているうちになぜか悲しさがこみ上げてきて、気がついた時には泣いておりまして、眺めても眺めても変わらない165という数字をつい先程まで眺めておりました。
今も悲しさが収まりません。必死でたかが1センチ、されど1センチと念仏のように唱えていますが、やはりそう思えば思うほど悲しくなってきます。ですから今日はこの辺にして、お返事などはまた明日打とうと思います…
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 名無し | 2020/4/17 14:06
 息子さんの身長、伸びていてよかったですね。1センチと言っても大きな進歩です。絶望的と思わずに伸びていた事実を褒めてあげてください。勝手に見たことについては怒られるかもしれませんけどね。
 ところで息子さんの身体測定があったのでしたら、娘さんの身体測定もあったのでしょうか。娘さんの成長も気になるのでお聞きしたいと思います。
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 質問者: cura | 2020/4/17 18:39
 ありがとうございます。今日のストレッチ中に思いっきり褒めてあげようと思います。
 そうでした、娘の身体測定について触れるのを忘れていました。小学校の身体測定はつい一昨日にありまして、娘は帰ってくるなり嬉しそうに、お母さん、今日身長測ったんだけどね、やっぱり180センチ超えてた! とはしゃぎながら測定結果を見せてくれたのですが、確かに180を超えていまして、181センチが今の娘の身長なようです。すごいじゃない、去年が172センチだったから9センチも大きくなったんだね、私とはあと7センチ、今年中に追いつけそう? と言うと、でもお母さん、それって昔の身長でしょ? 今はどうなの? と言われまして、なぜか私の身体測定をすることになりました。で、結果なのですが、これが不思議なことに190センチぴったりなのだそうです。あれ? と思ったのですけど、メジャーを見てみるとやっぱり190センチぴったりで、この年になっても私の身長はまだ伸びているようでして、娘は、目標がまた遠ざかってしまったと項垂れておりました。
本当に不思議なものです。以前に25歳頃まで身長は伸びると答えていらしった方がおられましたが、今となっては疑いようがありません。ただ、私の身長が伸びたと言うと反感を買うかもしれないので、息子にはそれと��く強調したいと思います。
それにしても娘の成長は恐ろしいものです。同い年の私よりずっと大きいのにまだまだ伸びているなんて、私に追いつくのも時間の問題でしょうね。
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 質問者: cura | 2020/4/20 23:15
 すみません、少々問題が起きてしまって一昨日昨日今日とここを見ることが出来ず2日ほど間が空いてしまいました。他の方たちへの返信も行うので今しばらくお待ち下さい。問題というのはこのツリーに関わることなので、質問者回答者問わず私たちの家庭にご興味がある人はぜひ読んでいただければと思います。
さて、一昨々日の返信に、私は今日のストレッチ中に思いっきり褒めてあげようと思いますと書いて、実際に息子を思いっきり褒めながら背筋を伸ばしてあげていました。言ったことはありきたりなことです。息子は努力家だね、毎日毎日お疲れ様と言ったに過ぎません。ですが、なんとその後、息子が自分から身長を測ってほしいとメジャーを渡してきて、背中を壁にぴったりとつけてお母さんお願いと言うのです。なんだかよく分からない心境ですが、顔つきは真剣そのもので真っ直ぐに見つめてきますから、覚悟のほどが分かりまして、私はほろりとしながらメジャーを息子の頭に当てました。
するとどういうことでしょう、メジャーの目盛りは166センチのところを差しているのです。これを見た瞬間私は大変に喜んでしまいまして、166センチじゃない! 去年は164センチだったから2センチも伸びてる! やったね、やっぱり努力は実るんだねとメジャーを投げ捨てて息子を抱きしめて、胸の間に埋まったその頭を撫でてやりました。息子はムグムグと言うばかりでしたけれどもハグを解くと、母さん苦しい! って笑顔で言って、2センチだけでそんなに喜ばないでよと恥ずかしそうにしますから、私はそんなこと言うな~と一歩前に出て、もう一度息子をムグムグの刑に処してから、2センチでもちゃんと大きくなったんだからそこは喜ばないと、来年は3センチも4センチも、もしかしたら10センチも伸びちゃうかもしれないんだから、今のうちに喜ぶのに慣れておかないと心臓止まっちゃうよとなんだか壁ドンのような体勢で言うと、お母さんなにそれと笑ってしばらく私の抱擁に身を委ねておりました。
その後、息子はいつも自室に向かうときには暗い顔をしながら一人で階段を上がるのですが、その日だけは私に甘えっぱなしで、それでなおかつ上機嫌で、お風呂から出てきた娘と一緒にリビングを後にしまして、久々に見る光景にまたしてもほろりとして夫ともに喜びを分かち合いました。ほんとうに、息子がむくれずに娘の横に並ぶのは久しぶりで嬉しかったんです。そこで考えますに、私が本当に解決したかったのは息子の身長を伸ばして気持ちを楽にしてあげることではなくて、息子と娘が再び笑顔で話したり遊んだり、時には喧嘩もするでしょうけど最終的には他愛もなく笑い合う、そんな家族関係を取り戻したかったではないのかと、そういう思いがふつふつと沸き起こって来て、先程の光景が瞼の裏から離れませんでした。寝るときもかつて2人の子が他愛もなく公園の砂場で遊んでいた光景が浮かび、夢の中では高校生になってすっかり大人びた娘と、大学生になってそろそろ巣立とうとする息子とがしょうもないことで言い争う光景が浮かんで、ふっと私の中で何かが落ちたような感覚、まさに腑に落ちるというべき感覚がして、次の日目が醒めた時にはもうすでにはっきりと自分の目的が固まっていました。
もちろん、前日の測定で息子が背伸びをしたということは分かっています。いますけれども、息子が自分から身長を測ってほしいと言ってくれたことが嬉しくて嬉しくて、背伸びだろうがなんだろうが身長を読み上げたときに、自分の中の歓喜の気持ちが爆発してしまいましてあんなに喜んでしまったのです。そんなハリボテの褒め方では当然よくはありません。目が醒めた私は唐突に虚しくなってきて、いつもなら起きているところを布団に包まったままぼんやりと目を閉じていました。どうしたらいいんだろう? あんな背伸びをしてまで自分の身長を伸ばそうとする息子をどうやってなだめてあげたらいいんだろう? この時は結局考えが堂々巡りしてまとまらなかったのですけど、休日で時間もたっぷりあるからゆっくりと考えればいいやって、そうやって起き上がって思い出したのが、今日は息子が念願のシークレットブーツをお披露目する日だったことなんです(たぶん「背伸び」という単語で思い出したのでしょう)。
私はなんだか嫌な予感を感じながら、玄関先でシークレットブーツを履いて歩いてみる息子を眺めておりました。どう? 履き心地は問題ない? バランスを崩したりすることは無さそう? と声をかけますと、何だか変な感じがする、歩きにくいと壁に手をかけますので、近寄って体を支えてあげますと、意外なところから見つめられましたから、あら、あらあら? 何というか今日は一段と格好いいねと驚いていますと、どうせ僕はこれ履いても母さんより低いですよーとむくれて離れてしまいまして、またしょげたようなことを言いますから、昨日に引き続いて今日もムグムグさせようかしら、なんて思ったその時でした。あれ? お母さんとお兄ちゃん何してるの? と娘が草履を引っ掛けて玄関から現れたのです。
私はそうでもなかったのですけど息子がいたくびっくりして、ちょっと今は来ないでお願いだからと言いましたが、上機嫌だった昨日の今日のことなので、どうしてどうして? と無邪気にやってきて息子の目の前に立ちました。シークレットブーツを履いているとは言っても元が元ですから、息子はビクビクとして娘を見上げています。おそらく、離れてと言いたいのでしょう。けれども口をパクパクとさせながら睨むばかりで何とも言い出せないようです。一方、娘はにこにこ顔で息子を見下ろしていまして、しばらくはその状況が続いていたのですが、ふとした瞬間に娘が、不思議そうな顔を浮かべて、あれ? と言ったのです。私はしまったと思いました。が、娘は不思議そうな表情のままさらに息子へと詰め寄って、 お兄ちゃんもしかして背が伸びた? なんだか今日は目線が近いような気がするんだけど、………と、私はこの言葉を聞いた瞬間に、先ほど感じた嫌な予感というものの正体がなんとなく掴めて参りまして、急いで誤魔化そうとしたのですが時既に遅く、娘は、やっぱり大きくなってるよ! 昨日まで顎の下に入ってたのに、今日は鼻のとこまであるよ! とほとんど抱きかかえるかのようにして、手を息子の頭から自分の顔へスライドさせまして(背比べでよくやるあれです)、やったねお兄ちゃん、ようやく背が伸びたんだね。と言いながらその身をギュッと抱きしめたのでした。
息子はただ手をプルプルと握りしめて必死に自分を押し殺しているようでした。どういう心持ちだったでしょう、身長のせいで声も聞きたくもないのに、その本人から身長のことを言われて、どれだけ嫌な気持ちが沸き起こっていたのでしょう? とても私には想像が及ぶべくもありませんが、普段のつっけんどんな態度を思えば、今にも殴りかかる勢いであったとしてもおかしくはありません。
が、息子の受難はそれだけではありませんでした。娘はそれから息子の手を引っ張って家の中に入って行ったのです。曰く、身長を測ってあげようとしたそうなのですが、シークレットブーツを脱いで玄関から上がった息子を見て再度、あれ?………、と、かける言葉が見つからずに、えっと、えっと、お兄ちゃん、………あの、その、縮んだ? などと言ってしまいまして、息子の我慢がとうとう限界に達してしまいまして、一日で10センチも伸びるわけないっていくら○○でも分かってるよね? 頼むから、………僕だって○○のお兄ちゃんに相応しい背の高さになりたくて努力してるのに、○○の~~(ここは私も娘も聞き取れませんでした)になりたくて努力してるのに、………でも伸びて行くのはずっと○○ばかりで、もう全然追いつけないくらい差が出来てて、………ううん、もうしばらくは何も言わないで、ほんとにお願い………と涙ながらに訴えて、ごめんなさいお兄ちゃんと謝る娘を尻目に階段へと消えて行きました。私はそっとシークレットブーツを隠してから娘に話しかけたのですが、娘は娘で、私なんてことをしちゃったんだろう、お兄ちゃん嫌いになったかな、あんなに言われたの初めてで、絶対に嫌われちゃったよとこちらも涙ながらに言いますので、言葉をかける段階ではないと思ってそっと抱きしめてあげました。
いいえ、これは私の落ち度でございます。常日頃から娘には息子の身長については固く口を閉ざすように言い聞かせていたのですが、もし息子の背が伸びるようなことがあった時は褒めてあげなさいと言ってましたから、娘は当然のことをしたまでです。それに娘は、私と息子とが何かをしている時には必ずと言っていいほどやって来ますから、娘のことは頭の隅に置いておくべきでした。
その後しばらくしてからお昼ごはんに息子を呼びましたところ、意外にも呼びかけには応じたものの娘とはあんまりです。あんまりというのはこれまで通り素っ気ない態度を取るという意味でありまして、決して口を利かないだとか無視をするだとかという意味ではありませんが、これまで通りとは言ってもどことなく反抗心が強くなったと言いますか、取り付く島が無いと言いますか、何と言ったらいいのか分かりませんけど、とにかく娘への僻みが一層強くなってしまったらしく、娘の顔をじっと見ては突然うつむいてもじもじしたり、娘に話しかけられてはもごもごと言うばかりになったり、特に、娘の立った姿を拝むようにぼんやりと見上げていたりします。
もう詳しくは書きません。先日は息子を慰めているうちに日が暮れたようなものでした。幸いにもまだ私のことは信頼しているようですから、話を聞いてあげたりストレッチを手伝ってあげたりというようなことはその日も昨日も今日もやりましたけど、なんだか一日も持たずに希望が無くなってしまった感じで途方に暮れている最中でございます。
 あの、そこで質問の趣旨を変えることになって大変恐縮ですが、2人が仲良くなるためにはどうすればよろしいでしょうか? 見ての通り娘はかなりのお兄ちゃんっ子で、こんな状況になっても相当仲良くしたいようですから、ほとんど息子の気持ち次第ではありますけど、アドバイスのほどよろしくおねがいします。
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 名無し | 2020/4/21 15:34
 わお、ここ数日間cura さんが居なくて心配していましたが、めっちゃ大変なことになってますね。本当にお兄ちゃんを慕おうとしている娘さんが気の毒でなりません。
シークレットブーツの一軒ですっかり娘さんへの僻みが強くなったとのことですが、これは時間さえあれば元通り(といっても亀裂が入ったままですが)になりますから、しばらくは様子見、ですね。
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 質問者: cura | 2020/4/22 17:41
 名無しさん、ご心配をおかけしてすみません。名無しさんのおっしゃるとおり、早くも元通りになってきて先程2人揃ってランニングに出かけました。ですが息子はまだあのときのショックを引きずっているようで、娘が準備をしているうちにさっさとシューズを履いて行ってしまいました。また、ここ2、3週間ほどはみなさまのおかげで笑顔を見せるようになっていたのですけど、すっかり元通りになってしまいまして、娘を見上げてぼんやりすることが多くなりましたから、ストレッチ後には必ず胸に顔を埋めてリラックスさせてあげています。
あと娘に関しては、あれきり遠慮しているらしく、息子があんまり羨ましがらないように目が届いているうちは極力立ち上がらず足を伸ばすようなこともしません(股下が90センチ近くあるので普通の椅子だと疲れてしまうんです)。料理を作ったときも、これまでは必ず反応を伺っていたのですけど、そっと見守るだけになっていて、お兄ちゃん大丈夫かなぁとふとした瞬間に声を漏らしたりします。
 もう息子との仲が悪くなってからというもの、ずっとお兄ちゃんと仲良くしたいというのを聞いていますので、娘のためにも早く関係を修復してやりたいです…
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 名無し | 2020/4/21 20:28
 それにしても娘さんすごく忍耐強いですね。普通なら手を上げてもよさそうなのに…
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 質問者: cura | 2020/4/22 18:01
 娘もよく堪えていると思います。いくら素っ気なくされても絶対にふさぎこまないし、いくら突っぱねられても嫌な言葉を投げかけませんし、それに、その気になれば息子なんて軽くひねられるくらいには力があるのにしません。そのくらいお兄ちゃ��のことが大好きなんです。話してくれた時のことなどは一字一句憶えているらしいですし、手が当たったくらいなことで大喜びしますし、いつのことだったか忘れましたが、昔、お兄ちゃんと一緒な家で暮らせるのってすごい幸せだーっと言ったりもして、なんだか小学生らしくって可愛いですよね(自分でも言うのもなんですが)。
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 質問者: cura | 2020/4/22 22:14
 ところで今日ランニングを終えた娘に様子を伺うと別に異常は無かったそうですが、たった一つだけ変なことが起きたらしく、唐突に立ち止まってお腹を撫でられたみたいです。娘は嬉しそうに話していましたけどなんだか不気味な感じがします。
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 名無し | 2020/4/22 23:32
 話を聞いていると、身長の隔たりが無くなったとしても仲が良くなるとは思えないのですが…
何というか、息子さんから娘さんを大切に思う気持ちと言いますか、かわいいと思う気持ちが感じられなくて、ただただ娘さん一人だけが不憫な気がして…
もういっそのことこのまま時間に任せて、関係を修復することは忘れてみてはどうでしょうか。
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 質問者: cura | 2020/4/23 00:03
 そんなことはありません! 息子はたぶんですけど、娘に背の高さで逆転されて嫉妬しているだけで今でも娘のことは大切に思っているはずなんです。
例えば、毎年息子の誕生日になると娘はプレゼントをこしらえるのですが(もちろん小学生なので大したものではありません)、たとえそれが物心つかない頃に作った押し花であっても、一つ一つ大切に戸棚の上に飾って、動かそうものならやめてと声に出してまで制するのです。もちろん、プレゼントをもらうそのお返しに、息子もプレゼントを欠かしたことがありません。毎年娘の誕生日になると、息子は私に娘が何を欲しがっているのか聞いて、本やマフラー(娘は冬生まれなので)と言ったものを自分のお小遣いで買います。特にこの2年間は面白くて、娘は料理やお菓子作りが趣味ですから一昨年はエプロンを買いに行って、僕はこういうのがあいつに似合うと思うんだけどと中々洒落たエプロンを自分で選んだり、そう! そう! 特に特に面白かったのは去年の話で、娘が例のディズニーの映画を見たがっていたものですから、そのことを話しますと急に頬を叩いて気合を入れて、ぼんやりとソファでくつろいでいる娘を誘いに行ったのです。その時の誘い方と言ったら、まるで内気な少年が初恋の少女にデートを持ちかけるかのような感じで、思わず立ち上がった娘を見上げる息子の顔と共に夫婦の笑いの種になっているのですが、さて映画に行くとなると2人とも一生懸命めかしこんで今日が一世一代のような面持ちをしますから、よっぽどおかしくなって笑ったのですけど当人たちは至って真面目で、そんなに笑わないでよ、と息子だけではなく娘からも言われてしまいました。
で、料理と言えばそれはそれは昔からよく手伝ってくれまして、この頃ではすっかり上達しちゃって私もびっくりするほどなのですが、息子はそれを美味しいと素直に褒めますし、クッキーなどを作った時には焼き立てを口に放り込まれても文句を言わない上に、部屋に持ち帰って大切に食べているそうです。
こういったエピソードはまだまだあります。例えば娘にドレスを着せた時の話は娘らしくて面白いかもしれません。つい先々月のことです。ドレス自体は娘の背丈ですからとっても似合っていましたが、私はその時ついでとしてハイヒールのパンプスまで履かせてしまいまして、娘は立つの���やっとなくらいよろよろとしてしまった���でした。今の娘の身長が181センチですから、先々月には180センチだったとしても、ヒールが12センチありましたのでその時の娘の背丈は192センチ(私が履くと2メートルぴったりですね。ええ、2メートルぴったりです)、よろよろとするのも当然でございまして、まだ娘は小学生らしいひょろひょろとした体型ですからどうしてもバランスが取れないのです。なので、ヒールはもうすこし大きくなってからにしよっかと提案したのですけど、せっかくだからお兄ちゃんに見せに行くと言って、壁伝いにやっぱりよろよろと息子の部屋に向かいます。
で、192センチというと私の家のドア枠より高いですから、腰をかがめて部屋に入りますと、ちょうど勉強をしていた息子が驚いたように口をぽかんと開けて動かないのです。お、お兄ちゃんどう? お母さんに借りてみたんだけど、とおずおず聞きましたらやっぱり口をぽかんと開けたまま立ち上がって、ちょっと、ちょっとまって、なんでそんなに………、と恐る恐る娘の頭を指差すものですから、私笑っちゃいまして、大丈夫だよ、ヒールで高くなってるだけだから安心しなさいと言ってあげました。それで娘と言えばやっぱりふらふらしてしまいまして、息子がぽかんと口を開けたままドレス姿を眺めている間も危なっかしそうにしていたのですが、案の定と言いますか、ものの数分もしないうちにバランスを崩してしまいまして、息子の体にしがみつく形でなんとか倒れるのはこらえたのですけれども、今度は2人揃ってふらふらするようになっちゃいましたから、娘はとっさに手を天井に伸ばして、それでようやく体を支えました(壁が近くに無い時はこうした方が楽なんです。天井が低いと手が届きますからね)。
と、まぁ、こんな感じで息子と娘はお互いに抱き合う体勢になりました。で、今は娘の背丈が190センチを超えていますから、ちょうど顔が胸元に押し付けられている形になっておりまして、みるみるうちに真っ赤に染まっていきまして、結局無言のうちに2人ともハグを解いてしまったのですが、重要なのは抱き合ったときに息子がちゃんと娘の背中に手を回して体を支えてあげていたことです。これだけ見ても本心から娘を嫌っていないことはお分かり頂けると思います。
どうでしょう、以上のエピソードは僻みが強くなった2年間に起きたことですから、私には息子が未だに娘を大切に思っていると思えるのですが、みなさまの意見はどうでしょうか。
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 名無し | 2020/4/24 19:51
 こんにちは。cura さんの娘さんと息子さんのエピソードを拝見いたしました。毎年プレゼントを買ってあげたり、背の高い娘さんを支えてあげたり(しかも抱きかかえて!)、確かにcura のおっしゃるとおり息子さんはご自身の妹を大切に思われているようです。
ところでcura さんは、そんな息子さんを見て、その上で娘さんを突っぱねる息子さんを見るものですから、その気持がよく分からないというのが本音ではないでしょうか。もしそうであれば大丈夫です、息子さんは娘さんを嫌ってなんていません。むしろ逆に大変に好いておられるようですから、自分より背の高い娘さんを認めてあげられるよう声をかけてあげてください。
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 質問者: cura | 2020/4/24 22:23
 ありがとうございます。そう言っていただけると大変に安心します。息子が娘のことを好きだと言うのは少し不思議な感じがしますけれども…
それはともかくとして、やっぱり後は息子が娘を認めてあげられるかが問題なんですね。今日も仲良く(?)ランニングに行きましたから、解決は近いと思って頑張りたいと思います。ありがとうございました。
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 名無し | 2020/4/25 18:36
 確かに息子さんが娘さんのことを好きだと言うのは不思議な感じがいたしますが、たぶんあと2、3年もして息子さんの気持ちが和らぐと私の言った意味が分かるかと思います。
仲良くランニングに行くのはその一歩です。勉強を見てあげる………というのはどっちがどっちに教えることになるのか分かりませんが、勉強を見てあげるというのも手だと思います。
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 質問者: cura | 2020/4/25 22:08
 そうなのですか。そこまでおっしゃっていただけるなら相当に希望を持って息子に接したいと思います。今日はストレッチをしてあげている途中で笑顔も見えましたし、この調子だとなんとかなりそうです。
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 質問者: cura | 2020/4/25 22:39
 ところで今日のお昼ごろ、花を活け変えようと思って娘の部屋に入りますとなぜか息子がおりまして(娘は外出中でした)、衣装ケースの傍でうずくまっていましたから何事だと思って話しかけたのですが、さんざん狼狽えた後に本を貸してたから取りに来たんだけどどこにも無くて! と慌てて言って、自分の部屋に入って行きました。私は衣装ケースに本を入れたりするのかしらと不思議で、ベッドの下から引き出されたままになってるうちの一つを確認したんですけど、やっぱり本なんか無くって、どうして息子が本を探しに衣装ケースを漁っていたのか分からないでいます。
以前にも、娘の靴を勝手に持ち出して履いていたことがありまして(娘の足は29センチあるのでもちろんブカブカでしたが)、その時も私に姿を見られると慌てて取り繕う感じになっていました。
それを言えばそう言えば、以前にも娘の体操服のジャージが息子の部屋から見つかったりもしています。
 と、これはたぶん余談なんですけど、昨夜ストレッチを終えてからおずおずと呼び止められましたので、どうしたの? と優しく聞き返しましたところ、お、おっぱいってまだ出たりする……? と心底おどおどしながら聞いてきました。確かに私の胸は未だに張っていて、母乳も日にコップ一杯程度は出そうと思えば出せますから頷いても良かったのですけど、何とも様子がおかしいのでとりあえず、どうしたの? また飲みたくなったの? と笑いながら聞くと、取り繕うように(!)慌てて、いやそうじゃなくて……えと、おっぱいが背の成長に良いってネットに書いてたから………母さんならもしかしてって思って………、ともじもじしながら言って顔を赤くするのです。
男の子は大きなおっぱいが好きだといいますけど、こればっかりはさすがにどうかと思って昨日は昨日だけという約束の元コップに絞り出したのを差し出しましたが、こういう変な話がここのところ増えてまいりました。ちなみに私の母乳は甘くて美味しいって飲んでくれました。
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 名無し | 2020/4/26 11:58
 cura さんはじめまして! これまでのお話を聞いて、身長が逆転してしまった兄妹をお持ちでお困りなようなので、私の家族が参考になるかと思って書き込みに来ました。
早速ですが本題を。
 実は、私のとこも身長が逆転しているんです。お兄ちゃんが今年から大学生で169センチ、うちが今中3でこのあいだの測定では178センチでした。
あ、これで分かると思うんですけど、私、兄妹の妹の方です。ちなみに双子で、お姉ちゃんも178センチあります。
小学5年生とか小学6年生のときに成長期が来て一気に追い抜いちゃった感じです。中1で171センチでした。
それでやっぱり追い抜いたときは気まずかったです。気がついたらお兄ちゃんと目線が合うようになって、しばらくしたら、お姉ちゃんとお兄ちゃんが並ぶとお姉ちゃんの方が高くて、お姉ちゃんに聞くと私もお兄ちゃんより高いって言われちゃって、なんかうちらの方がお兄ちゃんに気を使ってしまって気まずくなってました。
でもお兄ちゃん、いつか忘れましたけど、前から思ってたんだがお前ら俺より背が高くないかって、向こうから話題を振ってきたんです。それで背比べしてみようぜー、とかなんとか軽く言って背中を合わせてみることになって、うちは、お兄ちゃんいいの? って聞いたんですけど、あん? 気使ってくれてるんか? まさかお前らが気を使えるような女だとは、―――と、まぁ、お姉ちゃんが割と本気で殴ったから最後まで聞けなかったんですけど、とにかくお兄ちゃん身長を追い抜かれたことに関しては全然気にしてなかったみたいで、そのあと実際に背比べすることになりました。
その時は中1だったから、うちらの方がお兄ちゃんより2、3センチ高いくらい、途中からお母さんも見に来て、はい、ちゃんと背中を合わせて―、って定規で測ったりもして、なんだかそれまで気を使ってたのが馬鹿らしくなるくらい、和気あいあいとした空気が流れてました。で、私の番が終わってからお兄ちゃん、私と向き合って、もう俺が一番小さいんだなぁ、昔はこんなだったのに、こんなになりやがって、………と、自分で自分の頭に手を乗せて、私の額に滑らせて来て、その���まコツンと小突いて来るんです。コツン、コツンって。それがなんだかおかしくって、うち、お兄ちゃんがちっちゃくなっただけなんじゃないの? とつい言ってしまったんですけど、うるさいこのデカ女って、笑って流すばかりで、背比べが終わった後はお姉ちゃんと一緒に、ずっとお兄ちゃんをいじり倒してしまいました。
そうなんです。お兄ちゃん、たまに悔しそうにはしますけど、私たちの方が背が高いことに嫉妬はしていないみたいなんです。
あ、いや、悔しそうにするのはちょっとやりすぎちゃったときに………たとえば、お兄ちゃんが目の前に居るのに、あれ?どこ行ったんだろう? とキョロキョロと辺りを見回したときとか、あ、そうそう、うちらのお兄ちゃんもcura さんの息子様のようにシークレットブーツを履くんですけど、そういうときに限ってうちやお姉ちゃんが、思いっきりかかとのあるパンプスとかブーツを履いてわざとくっついてくるので、そういうときはかなり恨み言を言いますね。なんでそんなもの履くんだよ! お前らもう十分でかいだろ! って。
そういうときは特に面白くって、お兄ちゃん今日は一段とちっちゃいね~、とか、お兄ちゃん足短くない? そんなだから私たちの自転車に乗れないんだよ、とかとか、ここ靴脱がないと駄目みたいだよ、入ってみようよ、とかとかとか、そんなことを言うたびにお兄ちゃん、180超えの女とか嫌やわー、ほんま嫌やわー、みたいなことを言って拗ねるんですけど、うちらの顔をチラッと見て、まぁ悪くはないなって照れるんですよ! お姉ちゃんなんかそうすると、照れないでよ~って言って、後ろから抱きしめりなんかして、お兄ちゃんの反応を楽しんだりします。
話が逸れましたが、とにかくお兄ちゃんは身長については特に何とも思っていないです。
それで私たちもまた、お兄ちゃんの背を気にしたことがないんです。しいて言えば、うちもお姉ちゃんも178センチあるのに、なんでお兄ちゃんが169で止まってしまったのかなー、って、不思議に思うくらいです。
たぶんcura さんところの妹さんも同じ気持ちなんじゃないでしょうか? もしうちがcura さんのように188センチで、お兄ちゃんが166センチだったとしても、やっぱり何も思わないと思います。
とにかく何が言いたいかと言うと、妹に身長を追い越されようがなんだろうが捉え方次第なんだってことです。捉え方次第で、妹の方が背が高くても全然気にもならないし、恥ずかしくもないんです。
実際にお兄ちゃんの友達にも別に私たちが大きいことをとやかく言う人はいないみたいです。ですから、妹のほうが大きいからと言って何も変なことはありません。
 うちらは運が良かっただけかもしれませんけど、お話を聞いていると、cura さんも妹さんもとっても綺麗な人なんだって、そう思いますから、うちからすればむしろお二人が羨ましてしょうがありません。
 長々と書いてしまってすみませんが、世の中にはお兄ちゃんより妹の方が背が高い家族が居ること、そしてそれは別に恥ずかしくないってことを、ぜひ息子様に伝えてあげてください。
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 質問者: cura | 2020/4/26 21:47
 名無しさん、貴重なお話ありがとうございます。まさか兄と妹ととで身長が入れ替わってしまったご家族がいらっしゃるとは思っておらず、じっくりと読んでしまいました。娘に身長を追い越されたと面と向かって言うのは少々勇気がいりますが、全然恥ずかしくないってことを息子に伝えたいと思います。また、おっしゃるとおり娘は息子の身長についてかなり無頓着で、そんなに低くないと思うんだけどなぁとのんびり言いますし、もしかしたら自分の身長が180センチあることすら大して気にしていないかもしれません。
さて、名無しさんのお話を伺ったところで質問があるのですが、お兄様の身長を追い抜いたのが小学生か中学生、もしくはその間だとすると、つまりお兄様が高校1年生か2年生の時ということになるのでしょうか。もしそうであればお聞きします。名無しさんとお姉様が大きくなっている間、身長の話題などに触れた折がありましたでしょうか。また、気まずくなった時にもお兄様はいつもどおり接してくれたのでしょうか。そして最後に、お兄様が身長コンプレックスを抱かなかった理由に心当たりはあるでしょうか。
なんと言いますか、お兄様が名無しさんの身長に関して全然気にしていないというのが不思議でならなくて、いったいどういう関係をたどればそうなるのか知りたいのです。
お手数おかけしますがよろしくおねがいします。
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 名無し | 2020/4/27 18:09
 cura さんこんばんは。さっきようやく学校から帰ってこれて書き込めます。あ、私は姉の方です。双子の。妹が勝手に書き込んだみたいですみません。
今日は熱を出して寝込んじゃってるので、代わりに私が返信したいと思います。
では早速。
 >>名無しさんとお姉様が大きくなっている間、身長の話題などに触れた折がありましたでしょうか
これについてはびっくりするほど話題になりませんでした。お兄ちゃんは本当に身長に関しては興味がないみたいで、妹の書き込みを見ても分かるとおり、私たちに2、3センチも追い越されてからようやく、お前らのほうが背高くね? と聞いてきたくらいですから、もしかしたら私たちがあの時(背比べをしたときです)お兄ちゃんの身長を測らなかったら自分の背の高さすら知らないでいたかもしれません。
それに、妹はそうでもなかったそうなのですが私は成長痛が辛くて、特に膝が痛くてしょうがありませんでしたから、毎夜お風呂上がりにお兄ちゃんにマッサージしてもらってたんですけど、そのときも、ああ、成長痛ね、俺も結構痛かったわ~みたいな感じで撫でさすってくれて、身長に関しては痛みが酷かったら病院に行きなと言うくらいで後は与太話ばかりをしていました。
たださすがに運動会を見に来た時には、他の生徒から頭一つ抜けている私たちを見て、なんだあいつら妙にでけぇな、なんて呟いていたそうです。
でも、私が知ってる限りお兄ちゃんが身長を話題にしたことはこれくらいで、むしろ身長が逆転してからようやくネタになったような感じがします。例えば、妹の書き込みで「思いっきりかかとのあるパンプスとかブーツを履いて」とあるんですけど、そういう靴を履いて出かけると必ず身長を聞いてきて、どっちかが今日は8センチだから186センチだよのように伝えると、うわ、デカっ! とわざとらしく驚くんです。あと、友達が家に遊びに来た時なども真っ先に私たちを紹介して、本当に俺よりでかいだろ? 妹のくせに! と言ったりもします。
1つ目の質問についての回答はこれくらいにしたいと思います。疑問などがあれば遠慮なくおっしゃってください。
 >>気まずくなった時にもお兄様はいつもどおり接してくれたのでしょうか
これについては、何も変わらず接してくれました。妹も書いている通り私たちだけが勝手に気を使うばかりになっちゃって、後でお兄ちゃんに聞くと、変によそよそしいから嫌われたかと思っていたらしくって、少ししょげいたらしいです。大変に悪いことをしました…
  >>お兄様が身長コンプレックスを抱かなかった理由に心当たりはあるでしょうか
これについては何とも申し上げようが……。上の回答を見ても分かる通りお兄ちゃんはとってものんびり屋さんで鈍感なものですから、そういうのが原因なんだと思います。だから全然、身長コンプレックス云々の前に、身長自体に興味が無かったのだと……。
まぁ、でも思ってみると、兄妹同士仲が良いのが一番なのかな、とは思いますね。あ、cura さんのご兄妹の仲が悪いと言いたいんじゃ全然ないです! ないですけど、私たち、他の人に話すとびっくりされるほど仲がいいみたいで、そうだったからこそ、今こうして身長が逆転したことを私たちもネタにすれば、お兄ちゃんもネタにしているんだと思います。
 あの…どれくらい仲がいいかは聞かないでくださいね。何というか、その…とっても話しにくいので…
  と、お兄ちゃんがご飯に呼びに来ましたから、ここまでにしたいと思います。大変長くなりまして申し訳ございません。私たちの家族がcura さんの参考になれば幸いです。
あと、お兄ちゃんを殴ったのは私じゃなく妹なので、そこは訂正しておきます。
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 質問者: cura | 2020/4/27 21:31
 長いなんてとんでもない。詳しく回答していただきありがとうございます。お兄様とのご関係大変参考になります。
身長の話題に触れてはいけないどころか、全然興味がなかったり、自分から触れて面白い話にしてしまうなど、私にとってはなんとも別世界なような気が未だにしますけれども、兄妹同士仲が良いのが一番と聞いてなるほどと思いました。いくら心の隅では互いに思い合っていたとしても、今の息子と娘とは仲が良いとは言えませんから、なんだか原因と結果が逆転しているようではありますけど、仲が良くないせいでますます身長コンプレックスが酷くなっていっているような気がしてきました。なので、もう無理やり身長コンプレックスを取り払うよりも、兄妹同士仲良くするにはどうしたらいいのかと考えた方がいいのかなと、そう思ってまいりました。
ああ、でも具体的にはどうしたらいいのでしょう。名無しさんご姉妹のお話を聞いて何か掴めそうな感じがしたのですが、やっぱり身長コンプレックスを取り払うというのが真っ先に頭に浮かんできます。息子は今日も先ほど私に腕を伸ばされた後、まっすぐに自室へと向かってしまいました。そして今日もたくさん牛乳を飲んで(母乳も断りきれずにコップに絞ってあげました)、たくさん骨になりそうなものを食べて、ランニングもヘトヘトになるまでやります。
それで今日は娘の身長を聞いてきました。聞きたくはなかったんじゃないの? と一応言ったのですがどうしても気になるようでしたので先々週にありました身体測定の結果を(実は日曜日に測ってみたら182センチあったのでどちらか迷いました)伝えると、案の定ショックを受けたようで、やっぱり180あるんだ、すごいなぁ…僕より大きいのに一年で9センチも伸びたんだ…と、しばらく放心状態で目もうつろになってしまっていました。
 ところで妹様は大丈夫でしょうか。ただの風邪ならいいのですが、それでもこじらせると大変なことになりますからお大事になすってくださいね。
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 名無し | 2020/4/28 12:58
 妹は大丈夫ですよ! 今日は熱が下がりましたから朝から元気にお兄ちゃんに甘えていました。まぁ、一応休校してるんですけどね。心配してくださってありがとうございます。
 ところで兄妹仲良くするので大変にお悩みのようですが、cura さんのお話を読んでいるともうすでにお兄さんは妹さんのことを好きだし、妹さんはお兄さんのことを好いているんですよね? これまでのことを読んでいると、なんだか私には息子さんが素直になれないだけなような気がして、ちょっとでも背中を押してあげるとすぐに仲直りする予感がします。
なので息子さんが素直になれと言うのが一番だと思うのですが、どうでしょう? 確かに身長コンプレックスは無いに越したことはありませんけど、たとえそれがあったとしても仲良くはなれるはずで、例えばうちのお兄ちゃんのように、なんでお前の方が大きいんだよと、悪態をつけるようになると、身長コンプレックスは抱えているんだけど仲は良いみたいな(腐れ縁みたいな感じですけど)、そんな関係になることができるような気がします。
何にしてもcura さんのご家族が幸せになることを望みます。
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 名無し | 2020/4/28 17:26
 横から突然すみません。友人から噂を聞きつけてやって来ました。私も身長が逆転してしまった兄妹の妹の方です、が、私の場合は兄は兄と言っても従兄の関係になります。
歳は、私が高校2年生の16歳で兄も同じく高校2年生の16歳です。兄の方が一月ほど早く生まれたこともあって、実際には従弟なんですけれども敬意を払って「兄さん」と呼んでいます。今は離れ離れになってしまったんですが、昔は隣家に住んでました。
それで、肝心の身長なんですけれども、これはちょっとびっくりされるかもしれません。私、どうも病気か何かで骨が異常に伸びてしまった���しく、現在身長が207センチもある上に股下も1メートル10センチ近くあるんです。手足もすっごく大きくて、靴のサイズは37センチもあります。それに対して兄は162センチしかありません。父も母も、従兄の家族もみんな170を超えていなくて私だけが飛び抜けて大きくなっちゃった、という感じです。
あとこれは余談なんですけど、胸もとてつもなく大きくて(cura さんよりもまだまだずっと大きいです…)、でも顔は身長に対してかなり幼い方なものですから、個人的にはあんまり背は伸びてほしくなかったかな~…って時々思ったりします。
さて、こんなに身長差のある私たちですが、実は一昨年の暮れからお付き合いをしています。きっかけは里帰りと称して帰省していた兄が、あんまり背が伸びなかった俺と一緒に居るのは恥ずかしいかと思うけど、もし良かったら付き合ってほしいと告白してくれたからでした。その時の私の身長はすでに201センチ、兄さんの方こそこんな大きいだけの私と一緒に居るのは嫌じゃない? もっと普通の女の子と、………と言いかけますと、実は、―――と喋り初めて私とっても驚いてしまったんです。
結論を言うと、兄さんは背の高い女の人が大好きだったみたいで、あまりにも背が高くなっていく私を見ていると、とても耐えきれないくらい体がうずくんだって、そう言ったんです。呆気にとられていると、なぁ、お前の身長が急に伸び始めた時に俺がどういう反応をしたのか憶えているか、と真剣な面持ちで聞いてきて、確かその時は140センチくらいから180センチ台まで一気に成長しちゃった時で、玄関まで迎えに出た私を、まるで化け物にでも出会ったかのような目で見上げていたのが今でも思い出せますから、そのことを言いますと、実はその時な、あまりにも理想的な女性がいきなり現れて、もうダメかと思うくらい心臓が高鳴ってたんだよ、しかも何だ、………その女性がお前だと思うと余計に気が抜けてしまって、喋れもしなかった―――って、今もドキドキして仕方がないのか胸を抑えながらそう言ったのでした。
私はまだ兄さんのことが信じられませんでした。だって、その伸び始めの頃ならまだしも今は2メートルもあるんですもの、バレーの選手でも外国人にしかいないような女性が好きだなんて、突然言われても信じられないじゃないですか。だから、ほんとにこんなのが好きなの? って立ち上がってみたんです。でも兄さんは、本当に真面目な顔つきをしながら、ああ、好きだ、もう好きで仕方ないんだって言って、自分も立ち上がって近寄って来るんです。でも、でも、私のことが好きだなんてまだ信じられなくて、ま、待って! む、胸だってこんなに大きいんだよ? 気持ち悪いでしょ? って、身長と一緒に急成長した胸を揺すってみたんですけど、だからお前はたまんないんだって、胸に触れる一歩手前まで寄ってきました。そして、昔からずっと好きでした、もしよろしければお付き合いしてくださいと、頭を下げました。
もう二つ返事でした。私もまた、兄さんのことはずっと、それこそ隣家に住んでいた時分から好きで、背が伸びてからほとんど諦めてしまってたのが今急に叶ってしまったものですから、背筋を伸ばして、ふつつか者ですがよろしくおねがいしますと、こちらからも頭を下げました。
ちなみに、兄が背の高い女性が好きなんだと確証したのはこの時でした。というのも私、この時自分でもびっくりするくらい舞い上がってしまっていたらしく、背筋を伸ばした際に頭を天井に打っちゃったんです。あいたっ、………って声を出して。すると兄さんは、………あの、ここに書くべきでない内容なんですけど、急に慌てて、あ、ちょ、ちょっとこっち見ないで、………って、前かがみになって体を隠したんです。
それは、まぁ、そういうことでして、………あの、本当にここで話題にするようなお話ではないんですけど、えっちをするときも、わざと私との身長差を活かした体勢をお望みなさって、例えば階段を2、3段登って、それでさらにつま先立ちまでしてしたりとか、足に縋り付きながらあそこを膝に擦りつけてきたりとか(ちょうど私の膝が兄のお股なんです…)、特に、私に抱きしめられながら太ももの中で果てるのは大好きみたいで毎日のようにねだってきたりとか、本当に背の高い女の人が好きでないと出来ないようなことをしてくるんです。いつのことだったか聞いたことがあります。どうしてそんなに大きい女の人が好きなの? って。私はこの時(年が変わってすぐだったかな?)、厚底でなおかつ少しかかとのあるブーツを履いていたから、背丈でいうと2メートル12、13センチはあったんじゃないかと思います。でもそれは兄が、せっかくそういう靴を持ってるなら履いて行こうと提案したからで、それで疑問に思って聞いてみたんです。すると兄はちょっと悩んだ風をして、どうしてかは分からない、分からないけどお前みたいな女の人を見ていると息が詰まるんだ。もっというと、背が伸びて行くお前を見た時からなんだ、こうなるのは。だからどうしてと問われると、従妹のせいなんだろうな。と、ちょうどお店のガラス張りになっているところで立ち止まって、そこに写る私の姿を見て、こうしてみると脇にも全然届いてないんだな、顔が胸の下で、顎がヘソくらいで、あのマネキンでさえお前より低いじゃないか、こんなに素敵な女性を彼女に持てて俺は幸せ者だ、………と、ポケットから手を出して私の手を握ってきました。
ところで兄にはよく身長で困っていることを打ち明けます。それは何も兄がそういう話を聞きたがっているからではなくて、言っておかないと一緒に過ごしている上で色々と都合が悪いからなんですけど、なんというか背の高い人とそうでない人とで常識が違っていることがよくあって、特に私と兄さんとでは40センチ以上も身長差がありますから、見える景色も全然違いますし、歩幅だって全然違ってて、兄を置いてけぼりにすることはしょっちゅうあります。ええ、そういうので一番困ったのはバスに乗ったときでした。
あの、ちょっと余談なんですけど、私、バスに乗るのがとっても苦手で、………あの、それがなんでかって言うと、座席に足が入らなくて、毎回はしたない格好をしなくちゃいけないんです。………あ、あの、分かってくれますでしょうか? 席と席の合間が私には狭すぎて足がはみ出てしまうんです。それで、付き合いたての頃は兄も私もそういうことを知りませんでしたから、気軽にバスに乗ろうとしたんですけど、いざ乗ってみるともう大変で大変で、バスから下りた後は2人ともしばらく呆然と立ち尽くしていたと思います。でも、ふいに笑いがこみ上げて来てくすりとすると、兄さんも困ったように笑いだして、これからは困ったことがあったら2人で相談しようか、ってことになったんです。まぁ、私が身長のことで困ってるって言うと、兄さんは嬉さそうな顔をするんですけどね。
と、なんだかほとんど惚気になってしまいましたが、私が言いたいのは惚気なんかじゃなくって、世の中には兄のように背の高い女性が好きな男性がいらっしゃるということです。兄などは本当にひどくって、しょっちゅう私と背比べをしてお喜びになりますから、好きな方はとことん好きなのかもしれません。ところでcura さんの書き込みを見ると、息子様は背の高い女性が嫌いどころか、とても好いていらっしゃるような気がします。えっ、と思われるかもしれませんが、「互いに立った状態で」おっぱいに顔を埋めてあげるというのは、背の高い女の人が嫌いであれば絶対にしてほしくない行為なはずです。それってつまり自分の頭が相手の胸にしか届いてないってことじゃないですか。それなのに全然嫌がらないどころかcura さんの抱擁に身を任せるというのは、背の高い女性に対して抵抗感など持っていないように見えます。
でも確かに男の子はおっぱいが大好きですから、ただ単にcura さんの抱擁に安心しただけかもしれません。ですが、いつも行っていらっしゃる背筋を伸ばすストレッチ、これについてははっきりと断言できます。背の高い女の人が好きでないと出来ないって。だって、背の高い女の人が好きでないと出来ないって言うか、背の高い女の人でないと出来ない行為なんですもの。それに、あの、これたぶんなんですけど、背後から手首を持って体を引っ張ってあげるって、男の人からすると相当に屈辱的な行為なような気がして、背筋を伸ばす方法としては普通は選ばないような、………いえ、実は私も兄さんにやってあげることはありますけど、それは兄さんが背の高い女性がとても好きでいらっしゃるからこそやっているだけで、普通の男性の方は嫌がるんじゃないかと思います。まして身長にコンプレックスを抱いていらっしゃる息子様は特に。
ですから、息子様はもしかしたら背の高い女性が大好きなのかもしれません。少なくとも嫌な気は起こしていないように思います。なので、………なんだかcura さんに伝える感じになりますが、そんなに全然希望が無いようなことはなくって、むしろ身長に関してでさえ全然問題が無いような気がします。きっかけさえ与えればご兄妹仲良くしていただけるのは間違いありません。
………が、あの、もしかしたら息子様は背の高い女性が好きなのを自覚していらっしゃらないのではないでしょうか。私の兄ですら私を見るまでそうだとは気が付かなかったほどですし、息子様が自覚していらっしゃらない可能性はだいぶ高いかもしれません。一度、娘様のことをどう思っていらっしゃるか、まずはよく考えるように言ってみてはどうでしょう。嫌だと返されるかもしれませんが言ってみるだけの価値はあると思います。
最後に、上のように妹のほうが背が高いご兄妹、そして私たちのように彼女の方が背が高いカップルが居るということをぜひ息子様に伝えてあげてください。そしてそのことは別に世間ではよくあること、また、女性側は何にも気にしていないということも同時に伝えてあげてください。
 どちらにせよ、ご兄妹が幸せになることを願います。私たち兄妹の話がcura さんにとって参考になれば幸いです。長々とありがとうございました。
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 質問者: cura | 2020/4/29 12:49
 名無しさん、とっても貴重なお話ありがとうございます。昨日から数えてもう3、4回は読んでしまいました。何と言っても、名無しさんの身長が207センチもあることがとっても驚きなのですが(胸も私より大きいなんて想像がつきません)、なんだか昔の私と夫を思い出して少しほろりとしました。
夫もまた、小学生のときに引っ込み思案だった私を引っ張り出して、名無しさんのお兄さんのように面と向かって好きだって言ってくれて、それが大変に励みになって今の私が居るんですよね。今後いがみ合うこともあるかと思いますが、私の方こそお二人の幸せを祈っております。
さて、息子が背の高い女性を好き、というのはとてもハッとさせられました。目からうろこでした。息子は絶対に背の高い人が嫌いで、それで娘のことも私のことも嫌っていて、毎夜行うストレッチも嫌々ながら私にされていると思っていましたけど、そうおっしゃっていただけると確かにそうなのかもしれません。よく思い出してみれば、息子は身長の高い女性が嫌いであればしないようなことを私にするような気がします。例えば部屋の電気を変えたりとか、私が息子の部屋まで変えの蛍光灯を持って行くと、今手が離せないから母さん代わりにお願いと言って、手が離せないと言った割にはじっと私が蛍光灯を付け替えているのを見守るんです。それで、電気つけてって今度は私がお願いすると、素直にうなずいて電気をつけて近寄ってきて、お母さんありがとうと、真新しい明かりの下で私の顔を見上げながら言うのですけど、あの、その行為も何だか今となっては嫌いならしないような気がして、現在狐につままれたような心地になっています。
確かに、息子は背の高い女性に対して嫌だとか嫌いだとか、そういう感情は持っていないように感じます。でもそれが私に対してだけなのか、一般の女性に対してなのかよく分かりませんから、少し思い切って、私の背に関してはどう思ってる?―――と言った切り口で、娘をどう思っているのか考えて見るように言ってみます。それでポジティブな印象を持っているなら素直になるように言って、ネガティブだったら………それはまた後で考えます。
でも素直になれって言っても、今までが今までなのでそのまま簡単に素直になってくれるかどうか不安です。どうすればいいでしょう?
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 名無し | 2020/4/29 17:37
 身長207センチ! すごい! 私たちより30センチも高い方が居るなんて、本当にものすごいです。胸もcura さんよりも大きいなんて…えっと、それって、U カップとかV カップとか…ですか? 私、全然胸が大きくならないからとっても羨ましいです(でもお姉ちゃんは大きいです。ぐぬぬ)。
 あの、ご心配おかけしました。少し前に居た双子の妹の方です。今はすっかり体調もよくなって、ちょうどさっき学校から帰ってきたところです。
 実は私も、cura さんのお兄さんがそんなに背の高い女の人が苦手とは思っていなくて、それは名無しさんもcura さんも言った通りなんですけど、娘さんに負けて恥ずかしがっているだけなような気が最初からしてました。たぶんcura さんのことは大好きで、娘さんのことも別にネガティブな感じは抱いてないと思います。
そのつもりで言うんですが、素直になれそうにないなら手紙でやり取りしてみてはどうでしょう? そちらの方が時間がかかりますけど色々と恥ずかしくなくっていいような、………いや、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしいですけど、面と向かって言いにくい時は手紙に限りますし、それにやっぱり手紙ってなんか嬉しいんですよね。私もお兄ちゃんが手紙をくれた時はとっても嬉しくって夜通し読んでたくらいなので、娘さんも大好きなお兄さんから手紙をくれるととっても嬉しいと思うんですよね。
どうでしょう? 手紙でなくってもline でもなんでもいいので文章でやり取りしてみてはどうでしょうか?
 ところでなんでみなさんそんなに胸が大きいんですか…? 秘訣を教えてもらいたいです…。
 ――――――――――――――
 名無し | 2020/4/29 19:56
 そ、そんなに胸のことを言っていただけるのは嬉しいんですけど、本当にバカみたいに大きくて、逆に体はか細いからシルエットなんかを見るとかなりアンバランスなんですよね。
>U カップとかV カップとか…
には全然収まらないです…。なんだかもうとんでもないことになっちゃってて、出来ることなら分けてあげたいです。
 >>cura さん
少しでもお力になれたようで嬉しい限りです。息子様が娘様にネガティブな印象を抱いていないことは確実だと思うので、安心して訪ねてくれれば、と思います。
それと電気を付け替える例についてなんですが、それはまさに背の高い女の人が好きだという証拠だと思いますから、cura さんの実際の身長(190センチでしたか)を伝えつつ、こんなに背が高い人をどう思ってる? みたいに聞いてもそんなに嫌がらずに教えてくれるかも、………ですけどどうでしょう、私の場合、近くに背の高い女性好きという方は兄しかいらっしゃらないので(あの人は何を言っても喜ぶんです)、反対にもう少し婉曲に聞かないとダメかもしれません。まずは身長抜きで色々と聞いてみるのも手だと思います。
  >>名無しさん
賛成です。手紙はとてもいいと思います。私も昔は兄と半年おき程度にしか会ってなくて、その間ずっとline するだけでしたけど、だからといって面と向かうと不思議な気恥ずかしさがあって喋れなかったので、文章で色々と気持ちをやり取りするのは楽で良いです。
そこで提案なのですが、まず最初に娘様から手紙を出してみてはどうでしょうか。もう思いの丈をありったけぶつけるような感じで! 数えてみればシークレットブーツの一件から1週間以上も経っているので、ものすごく思いが溜まっているはずですから、書けることはこの際全部書いちゃいましょう。たくさん書いて、素っ気ないお兄様をあっと言わせましょう。娘様は小学生とは言っても高校生顔負けの学力をお持ちですから、長くなるとは思いますけど簡単に書けるはずです。
頑張ってくださいと娘様にお伝えください。きっとお兄様に思いは伝わると思いますから。
 ところで胸を大きくする方法は、実は分かりません。………私の場合、身長と一緒に半年足らずでそのU カップとかV カップになっちゃって、お医者様も原因がよく分からないらしいです。役に立たなくてすみません。
 ――――――――――――――
 名無し | 2020/4/30 16:14
 名無しさん、それいいですね。娘さんから手紙を出すことから始めると、お兄さんもすんなりと心を開くと思います。その後手紙を交わしていることを秘密にされるかもしれませんが…
まぁ、でも、cura さんのご兄妹の仲がそれで進展するといいですね~。途中からとは言ってもずっと追いかけてきてて、妹さんがお兄ちゃん大好きって言うのを何度も見てきましたから、お互いに心を通わせられると私もなんだかホッとします。
 胸については役に立たないなんてそんな! いえいえ、大きすぎるというのも大変だと思いますから、お大事にしてください。私もまだ中学生なのでまだまだこれから(?)だと思って頑張ってまいりたいと思います。
   ――――――――――――――
 質問者: cura | 2020/5/4 23:58
 また数日間空いてしまってご心配をおかけしました。ですが、みなさまからのご返信等はちゃんとその日のうちに読んでいますので、その点は伝えておきます。
 それで、あの、進展はありました。結果から言うと、かなりいい方向に転がりました。
今はそれだけ伝えておきます。また時間を取ってゆっくりとこの数日間に何が起こったか文字に書き起こそうと思いますので、しばらくお待ち下さい。
 ――――――――――――――
 名無し | 2020/5/5 00:45
 よかった。なにはともあれ仲良くなったんですね。cura さんもお疲れさまです。大変だったでしょうから、ゆっくりとおやすみください。
 ――――――――――――――
 名無し | 2020/5/5 11:02
 cura さんお疲れさまです! ご兄妹が仲良くなられたようで安心しました。いえ、実はそれ以上にcura さんがもう一度現れていらしったことに安心しました。いくらでも待ってますので、ゆっくりとお書きください。
 ――――――――――――――
 質問者: cura | 2020/5/7 20:17
 みなさまありがとうございます。まさかこんなにうちの息子と娘を思ってくださってる方がいらっしゃるとは思わず、ついほろりとしている最中でございます。ここまで来れたのもみなさまのおかげかと思うと、感謝しかありません。
 さて、どこからお話したらいいものやら少し悩みましたけど、やっぱり先月の29日の名無しさんの書き込みに、手紙を送ってみてはどうか? という旨の内容がありますので、そこからお話しようと思います。
実は私も手紙でやり取りをさせると息子はもちろん、娘も思いの丈をぶつけられていいなと思っておりました。そこで、双子の妹様の書き込みと従妹様の書き込みを見たその日のうちに娘を呼んで(返信出来なくてすみません)、一緒にさ、お兄ちゃんにお手紙を書かない? いつも背を伸ばそうと努力をして頑張っているお兄ちゃんを労うつもりで、………だけど○○ちゃんは言いたいことたくさんあるよね? だから分担して、私が労いで、○○ちゃんがお兄ちゃんへの思いを書く、というのはどう? もう本当に自分が思ってることを全部書いていいから、お兄ちゃんをあっと言わせるようなお手紙を作ろう、と言いますと、娘は眼を輝かして二つ返事で頷いて、本当になんでも書いていいの? と訪ねて来ましたのでいいよと言ってその日はそれきりになりました。
私が書いた内容は以下の通りになります。毎日したいこともせずに背を伸ばそうと頑張っていること、そして勉強も朝早くから起きて学校でもちゃんとやっていること、それらを知っていてこっそりと応援していること、背は伸び悩んでいるかもだけどランニングのおかげで心なしか大人びてきたこと、○○(娘のことです)の方が大きいけれども2人で並んでいるとお似合いなこと、やっぱりお兄ちゃんはお兄ちゃんなこと、これからも無理せずに頑張ってほしいこと。それらをちゃんと便箋にしたためたのが結局月をまたぐ直前の夜中で、娘も同じ頃に出来上がったそうなので次の日に早速渡すことになりました。
………なったんですが、その日(30日)少々息子といざこざがありまして、少し書き足さないといけなくなりました。というのも何があったかと言うと、ストレッチが終わった後に、息子に双子様のご兄妹と従妹様のご兄妹の話をしてあげたんです。双子様の方は、お兄ちゃんが妹の身長については何にも思ってなくて、むしろそれをネタにして驚くほど仲が良いこと、従妹様の方は50センチ近くも身長差があるのに、お兄様がとてつもない長身好きで恋人にまでなったこと、を強調して、これこれこういう兄妹も居るんだよ、というような感じで語ってあげました。すると途中から泣き出してしまって、どうしたの? どうしたの? と聞いたんですけど、続けて、続けて、と言うばかりで涙を流し続けていますから、とりあえず最後まで話して優しく声をかけました。別に妹の方が背が高いことはよくあることだし、別に背が高くても恥ずかしいことじゃないんだよ。それに娘も息子の身長には何にも気にしていないんだよ。あの子は身長抜きであなたのことが大好きなんだから、………と言いかけると、でも、それでも、………僕は全然格好良くないし、としゃくりあげながら言うんです。
私、その時は全然意図が取れなくて静かに息子を抱きしめていたんですが、息子はしばらく泣いてから、お母さんだって僕よりずっと背が高くて綺麗で、こんな僕が、………うあ、なんで、お母さん190センチもあるの、………と言ってそっと離れてしまいます。私はドキッとしました。息子には188センチだと伝えていたのに、どうして190センチあるのだと、いえ、実はそれすらもサバを読んでてあの時(娘に背を測られたときです)192センチもあったんです。どうしてそのことに気がついたのか不思議で尋ねると、だってお母さん、僕の部屋のドアって190センチなのにいつもくぐってくるし、そこに立った時はいつも首を曲げて立ってるから、………と、そう言うのでした。
私は何も言えずに突っ立ったままでいました。身長が192センチあることは本当についこの間まで知らなかったものですから、嘘を言っていたわけではなかったのですけど、結果息子に嘘をついていたことになってしまって言葉が紡げません。と、そうしていると息子が口を開けて訪ねてきました。お母さん、今何センチあるの? って。私はもう隠しきれないと思って192センチあることを素直に述べました。実はね、192センチもあるらしいの、お母さんもつい先週まで知らなかったんだけど、まだ伸びちゃってるみたいで、………えと、ごめんね、と言うと、ひゃ、ひゃくきゅうじゅう、………にせんち、………と口の中でモゴモゴと言うのでした。心なしか震えてもいるようでした。
それから娘の本当の身長を教えて欲しいとも聞いてきます。これについてはもう嘘をついても仕方がないと思って、182センチあるそうだよと伝えると、僕は一年で1センチなのに○○は何週間で1センチ、17センチも差があるのに一緒には、………と、呪文のように唱えてまた泣き出しそうにしますから、もう堪えかねて抱きしめました。そして、192センチあろうが166センチあろうが182センチあろうが、2人はお似合いの兄妹なんだからくよくよしない。ね? 今日はもう寝る時間でしょ? 大丈夫、背はまだ伸びるからと言って、息子を部屋まで送り届けました。その日は息子に嘘をついた罪悪感が酷くて、あまり眠られずに明け方まで息子への手紙を読み返して文字を正していたように思います。
明くる日、息子たちは学校がありますから、手紙を渡すのは2人が帰ってきてからランニングをするまでの間となりました。娘の手紙は意外と小綺麗にまとめられてて、桜色の淡い下地に真っ赤なチューリップの所々添えられた可愛らしい封に入っていましたから、内容も推して知るべしなんですが、手に取るとお母さん絶対に見ないでよ! と怒られてしまったので、確かなことは何も言えません。私のはただの鳥の柄のついた便箋です。部屋まで一緒に持っていって、私が、普段頑張っている○○のために書いたからぜひ読んでねと、娘が、お兄ちゃん、あ、あの、お返事待ってます、………とやたらと真剣な面持ちで言って部屋を後にしました。
先日にあんなことがあったものですから、気分としてはまぁまずはホッとした、というところでしょうか、娘と共にリビングへ向ううちにも自然に笑みが漏れて、足取りもどこか軽やかなような気がします。おそらく、これがきっかけで息子と娘が仲良くしてくれる、そんな予感も感じていたのでしょう。娘も、これでお兄ちゃんと仲良くなれるかなぁ、なんてくすぐったそうに笑いながら言ってて、その後ランニングに行くまで互いに息子の良いところを言い合いながら夕食の下準備をしました。
まぁ、と言っても次の日は特に何もなかったんですけどね。えっと、ゴールデンウィーク初日の2日です。この日は家族でゆっくりと休日を過ごしたんですけど、娘は始終ソワソワしてて息子が手紙を読んでくれたの���どうか非常に気になっているようでした。
で、問題はその次の日なんです。習慣として私が朝食の準備をしている時に息子が部屋からやって来て、眠そうな目をこすりながらソファにもたれ掛かっているのですけど、この日は娘も早く起きてきて息子がソファにもたれ掛かると同時にリビングに入ってきたと思います。その時おはようと言って、私がおはようと返すのが習わしなんですが、この日は違いました。私よりも先に息子がおはようと言ったのです。もう一度確認のために言いますと、普段の息子はそんなことは言いません。あれ? と思って、ついお玉を取る手を休めて2人の方を向きますと、お兄ちゃん隣いい? と聞くのが聞こえてきました(キッチンの作り上、ソファまで目が届かないんです)。そしてすぐさま、うん、おいで、と言うのが聞こえて、次いでソファにもたれ掛かる柔らかい音が、次いでお兄ちゃんと呼びかける声が、次いでどうしたんだ? といういつにない優しい声が、次いで楽しげに会話する2人の声が、次々に聞こえて来ます。
もう夢を見ているような心地でした。いえ、というよりも、夢にまで見た光景が目の前に繰り広げられているかと思うと、居ても立っても居られなくなって、2人の元まで小走りに駆け寄りました。するとどうでしょう。2人は肩を寄せ合って仲良く並んで座っているのです。お母さんどうしたの? と娘が聞いてきます。気がつけば私は口をあんぐり開けて固まってしまっていました。息子はきまりが悪そうにもじもじしています。よく見ればこっそりと隠すようにして手を繋いでもいるではありませんか! あ、いや、仲が良いのならそれで良いわ、とそう言って再びキッチンへ向かいましたけど、私はどうしても先程の光景が気になってもう一度息子と娘の元に行って、夢じゃない? と聞いたのですが、お母さんどうしたの? 夢じゃないよと娘は笑って答えるのでした。息子と寄り添って手を繋ぎながら………。
もちろん今でも夢を見ていたのではないかと思うときがあります。でも、その日はずっと仲睦まじそうにしていまして、寄り添うのはもちろんのこと、突然抱きしめ合ったり勉強と称して2人きりで部屋に閉じこもったり、おそらく2人が離れたのは入浴ぐらいだったのではないでしょうか。しかも、娘もそうであれば息子も始終、………まぁたまに迷惑そうな顔をする時はありますけど、大抵の場合は笑顔で接してて、一体何が起こったのやらさっぱり分からなくて、その日はもう息子のストレッチを手伝った後はすぐに床についてしまいました。
でもやっぱり目が醒めてみると夢ではありませんから、何がどうなってそんな間柄になったのか次の日に聞いてみました。ですが、捗々しい回答は得られず手紙が原因とだけ言って、二人で仲良くランニングに出かけてしまいました。
本当にぽっかりと胸に穴が空いたような心地がして、その時私、2人が出ていった玄関をしばらく眺めていたように思います。泣きそうになっていたとも思います。2人が仲良くなってくれたのに、なんだか虚しくて仕方がなくて、とぼとぼとキッチンまで行って、息子の大好物である唐揚げを揚げてからはなんだかもっと虚しくなって、ソファに腰掛けて2人が帰ってくるのを今か今かと待っていました。耳にはスープのくつくつ沸く音と、時計のカチカチという音だけが聞こえてきます。と、急に、胸がヒヤリと冷えてきて、ちゃんと服を着ているのにどうしてと思って眼を下げると、いつも胸と胸の間にあったあの可愛らしい頭が全然思い浮かばなくて、とうとう落涙してしまいました。それでも2人が仲良くなってくれることは悲願でしたから、さっと顔を上げて、涙を拭いて、再び玄関が開く頃には笑顔が見せられるようにして、ソファから立ち上がりました。
それで書き込んだのが5月4日の「また数日間空いてしまってご心配をおかけしました。」の一文です。あの時は本当に狐につままれたようなふわふわとした心地で、まだ夢見心地でしたけれども、この数日間の2人の様子を見るにつけても、今日二人して仲良く登校して行ったのを見るにつけても、仲良くなったのは確実でございます。ですから、あの、なんだかよく分からないですけど、問題が解決してしまいました。みなさま、今日の今日まで見守ってくださってありがとうございます。
  あ、なんだか落ち込んだことを書いてしまいましたし、今日はとうとう背筋を伸ばすストレッチも娘に取って代わられて意気消沈しておりますが、私は元気ですのでご心配なく。それよりも、あの2人の距離が近すぎるというのが次の私の悩み事でございます。そのことにつきましては、また新しくスレッドを立てようと思いますので、みなさまどうぞよろしくおねがいします。繰り返しになりますが、この一ヶ月間声を寄せてくださった多数の方に感謝の念を伝えたいと思います。ありがとうございました。
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kkagneta2 · 4 years
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まだ書いてないやつ
おっぱいが大きい(大きくなっていく)妹の日記。
実は一番力を入れて書く予定だったんですが、ネタを思いついているうちに他の話が浮かんでしまった上に、時間が取れなくなったので、その妹ちゃんが小さい頃に書いた(という設定にしたボツ)を載せておきます。時間をくれぇ!!
8/30 はれ
お兄ちゃんから言われて、今日から日記を付けることにした。つづくかどうかわかんないけれども、がんばってみる。お兄ちゃんはひとことだけでもいいって言うから、今日はこれだけ。おやすみなさい。
 8/31 はれ
今日はお兄ちゃんといっしょにえいがを見にいった。わたしは泣かなかったけど、お兄ちゃんはとなりでずっとグスグス言ってた。そういえば、朝、下着を着るときに、変な感じがして、ずっと気持ちわるかった。今は着てないから、ぜんぜんです。おやすみなさい。
 9/1 はれ
今日で夏休みもさいごになっちゃった。もう宿題もちゃんと準びしたし、明日着る制服もよこに置いています。……うそ。実はお母さんがやってくれました。お兄ちゃんはずっとぐうたらです。おやすみなさい。
 9/2 はれ?
ちょっとうれしいことが起きたかも。朝ね、下着を着ようとしたらね、やっぱりへんなかんじがしてお母さんに言ったらね、大きくなってるって言われたの! うれしいな~。どこまで大きくなるかな~。これでわたしもねんがんのブラジャーデビューです。たぶん。お母さんが約束どおり買ってきてくれたら。おやすみなさい。
あ、お兄ちゃんは元気です。
 9/3 くもり ときどき はれ
学校から帰ったらブラジャーが机に置いてあった。思ってたのとはちょっと違ったけど、まだ小さいからこれでがまんです。早くわたしもお母さんみたいなブラジャーをつけたい! お兄ちゃんには言ってないけど、言ったらよろこぶかな? おやすみなさい。
 9/4 あめ
ブラジャーデビュー。すごい。ずっとあったチクチクが消えた。でも心配です。これはおっぱいがもっと大きくなりたいって言ってるんだって、お母さんから教えてもらったから、消えちゃったらどうしよう。うー、今日はお兄ちゃんとねます。おやすみなさい。
 9/5 あめ
今日、お兄ちゃんに、お風呂で「どうした? むねが痛いのか?」って聞かれちゃった。そういえばおっぱいのチクチクを感じてからずっと見つめてしまってた気がする。反省です。なんでもないって言ったら、なぜか「そろそろお前と入れなくなるのか」ってさみしそうな顔してた。よくわかんないけど、「お兄ちゃんとならいやがらないから、これからもいっしょに入って」って言ったら頭をなでなでされた。体がぽかぽかした。えへへ。おやすみなさい。
 9/6 はれ
あついよー。なんだかおっぱいもあつい気がする。宿題をしてるときもずっとあつかったから、途中でお兄ちゃんの部屋でやってた。教えてもらったから早く終わったのはいいんだけど、おっぱいの痛みは増したような。今でも痛いです。ブラジャーをしてるのに、ね。明日はみきちゃんと、かえでちゃんと、えりなちゃんと、みなちゃんとプールです。おやすみなさい。
 9/7 はれ
今日は昨日言ったようにプールに行きました。わくわくしながら服を脱いだら、みんなブラジャーを着けててがっかりしました。でも、一番ふくらんでいたのはわたしでした。みんなぺったんこです。みなちゃんは二番目です。ひさしぶりにスクール水着を着てみたら、おっぱいの形が出てて恥ずかしかったです。みんなにさわられました。「わっ、おっぱいがある!」とか、「いいな~」とか言われながら、こう、ふにふにって。痛かったけれども、うれしかったからがまんしてました。わたし自身はあんまりさわったことがなかったから、家に帰ってからさわってみました。ちょっと前とはぜんぜんさわり心地がちがいます。やわらかくて、ふわふわで、ずっと揉んじゃいました。
こうい室にいたおねえさん、すごくおっぱいが大きかったな~! わたしもあんな感じになりたいです。おやすみなさい。
 9/8 はれ
今日は朝にお兄ちゃんと宿題をしたあと、ご飯を食べて、電車に乗って遊びに行きました。おやすみなさい。
 9/9 はれ
うー、……今日はなんだかブラジャーのつけ心地がわるいです。チクチクってするのはいつもと同じなんだけど、かゆいって言ったらいいのかな、とにかくいやな感じがするの。今日はそれで全然授業に集中できなかったです。走るともっと痛くなるので、体育は休んじゃいました。どうしよう。明日も続くなら、お母さんに相談です。おやすみなさい。
 9/10 はれ
やっぱりおっぱいが痛いので、お母さんに相談してみました。とってもおどろかれました。やっぱり大きくなってたみたいです。このブラジャーにはもう合わないでしょって言って、急いで新しいのを買ってきてくれました。痛いのは変わらなかったけど、くすりをぬってくれて、ちょっと楽になった、……かな? でもその様子をお兄ちゃんに見られてとってもはずかしかったです。しばらくはお兄ちゃんの顔を見られません。お兄ちゃんのばか。へんたい。おやすみなさい。
 9/11 はれ
今日はおねぼうです。いつも起こしに来てくれるお兄ちゃんが、ねぼすけなせいです。お母さんが起こしに行ってもねてるので、飛びついてやりました。何が「おー、お前に起こされるなんて、今日は雪でも降りそうだな」ですか。「よくねたー」ってなんですか。それで「ありがとな」って言うのはなんですか。ひきょうです。おやすみなさい。
 9/12 はれ
新しいブラジャーにしてからとっても気持ちがいいです。今日は体育があったけど、ちゃんと走れました。おくすりはこれから毎日、お風呂から出た時にぬることになりました。もう、ちゃんとおっぱいがあります。平べったい山みたい。ぬっていると、お母さんがメジャーを取り出して来ます。胸のまわりをはかります。「あら、もうこんなに大きくなったの。今度、いっしょにブラジャーを買いに行こっか」と言います。うれしかったです。そっぽを向いてたお兄ちゃんは「さすがおれの妹だ」って言って、お母さんに怒られてました。痛いのはいやだけど、大きくなるのはやっぱりうれしいです。おやすみなさい。
 9/13 はれ
今日は学校でみなちゃんとお話してる時に、「おっぱい大きくなってる?」って言われました。もう制服を着ててもわかっちゃうみたい。「いいな~、わたしなんて全然だよ。ちょっとちょーだいっ」と
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kkagneta2 · 4 years
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神ノ如キ妹
天才の妹を持つ兄の話。ボツにはしませんが、取り敢えずここまで書いて寝かせます。
 俺の妹は化け物だ。あいつは生まれた時から天才だった。話し掛ければ返事をする、文字を教えれば覚えてしまう、パズルを渡せば解いてしまう、―――分娩室に居る時から、あいつの知能は小学生並みだった。
三歳違いの俺は良くあいつと比較されながら育てられた。俺ははっきり言って馬鹿の方だ。周りの子供が字を書き始める頃になっても一向に文字が読めず、三語文でしか会話が出来無い上に、数字が苦手でどうしても数が数えられ無かった。一緒に勉強をする妹が、円周率を使った計算をしている最中(さなか)、俺は仮名の書き方から覚えなければなら無かった。
「お母しゃん、兄しゃんはいつまで『あいうえお』を書いてるの?」
「あの子はあなたとは違って、物覚えが悪いのよ」
「ふぅん、そうなんだ、………」
妹は一歳と半年で、小学校の過程を修了した。
中学校へ入学したのは二歳の頃だった。入学試験は圧倒の全問正解で以て式辞を読み、他の生徒の度肝を抜いた。先生方は、あいつがどこまで未知の問題を解けるか、一度詳しく調べた事があるそうだが、二歳のあいつは、これまでの人類の努力を嘲笑うかの如く、次々に難題を解いて行く。
「白崎さんのお子さんは怪物です。あの子は我々人類とは別種の生き物です。新しい世の中は彼女に依って作られるでしょう」
教師はあいつをそう評した。
二年後、あいつは高校生になった。正確には高等部に転入した。
そして、高校を出て、大学に入ったのは五歳の時だった。それまで中学校の教科書位しか置いて無かったあいつの机の上には、俄に大学のテキストが増えて行き、あいつの勉強した後には訳の分から無い数式が並ぶ様になった。Quantum Mechanics, Group Theory,  Group Representation, QFT, Relativity, Differential Geometry, String, AdS/CFT correspondence,………初めて書いた論文は、そう言った物理学に関する物であった。あいつから論文の草稿を手渡された時、俺は俄には信じられ無かった。信じられずに、表紙に印刷された妹の名を見つめて、同じ兄妹なのにどうしてこうも違うのだろうかと思った。
そんな俺の日常は凄惨たる物だった。妹がたった一年で大学を出て、教授職を得て居る中、俺はと言えば未だ小学校の内容に苦心して居る途中で、勉強のために家族旅行にも置いて行かれる始末だった。
―――俺はやっぱり馬鹿だ。掛け算割り算の計算も出来ずに落ちこぼれ、家では会話について行けずに厄介物扱いされる。
馬鹿と言えば未だある。………俺は、妹に恋をしてしまった。
それをはっきりと自覚したのは、あいつが未だ大学に通って居る時だったろうか。あの頃の俺は、小学校の宿題も満足に出来無かったから、見かねたあいつに勉強を教わっていた。
「兄さん、今日は分数の足し算をしましょう。出来たらご褒美がありますよ」
あいつは優しかった。どんなに俺が不出来でも懇切丁寧に教えてくれた。ある時は三角形の面積で躓く俺に、面積とは何かから教えてくれた。ある時は単位を蔑ろにする俺に、単位の重要性を教えてくれた。もう立派な先生だった。五歳とは雖も、俺にはあいつが妹の様には見え無かった。
あいつは化け物だ。五歳で弦理論を理解し、非可換幾何を使ってプランクスケール下の物理に最も貢献した人物。そして、数年後には、地球上のあらゆる生き物を支配する絶対的強者。
妹の様には見えなかった? ―――違う。俺は、あいつが妹である事とか、三歳年下の幼女であるとか、そういう当たり前な事を忘れてしまったのだ。
「あっ、ダメですよ兄さん。これは突き詰めると座標系って何? って言うとっても難しい問題になっちゃいますから、深く考えない事。相対性理論って中学校で習うんでしたよね? その時になったら教えてあげますから、今は取り敢えず受け入れちゃいましょう」―――
同時に、俺は妹に勉強を教えられると欲情するようになった。
「は、はい。分かりました。すると、ここのグラフの読み方はこうで、速さは、………」
と言いながらも、内心では妹が欲しくて堪ら無い。俺は馬鹿だ。妹と目が合うだけでも、馬鹿みたいに恥ずかしくなる。次いで地に足が着かなくなる。あいつの一挙一動が気になって仕様が無くなる。そしてそれを隠そうとして、余計な行動に出てしまう。
「兄さん今日はどうしたんですか? 熱でもおありになっていらっしゃる?」
クスッと笑ったあいつに額に手を当てられると、俺は死にたくなった。そのままズルズルと後ろへ引き下がろうとして、壁に打つかって、さぞ可笑しそうに笑うあいつに、今度はおでこを突(つっつ)き合わされて頭が真っ白になる。―――俺の体は一ミリも言う事を聞いてくれ無い。まともに、あいつの瞳を射抜いてしまう。
「兄さん? お顔が真っ赤ですよ? もしかして、私に興奮していらっしゃるんですか?」
そう言われて、ハッとなる。だが、あいつの髪の毛の匂いを嗅いで居る内に、またしても俺の心は挫けそうになる。
目の前に居るのは確かに妹だ。妹だのに、俺には年上の女性の様に見えて仕様が無い。どうして兄妹なのにこんなになってしまったんだろう。どうして妹だけ異常に頭が良く生まれたんだろう。何かもう訳が分から無くって、俺は泣いた。情け無かった。だけど俺のアレはおっ勃って仕様が無かった。
「兄さんのえっち」
あいつはそう言って、俺の陰部を踏み躙った。
五年後、即ち十歳の時、あいつは学問を追求するのを辞めた。代わりに会社を起こして世の研究者を奨励すると言って、次の週には本当に会社が出来た。
が、当の研究者らは、先ずあいつのした事が理解出来ずに居る。あいつが研究者として活動した五年間で影響を与えた分野は、何も物理学だけでは無い。物理数学化学生物工学社会経済、………凡そこの世にある学問の全てに於いて、あいつは輝かしい業績を残した。
しかし、矢張り数理科学の分野は目覚ましかった。人類が千年掛かって到達出来るレベルを、あいつはたったの五年で超えてしまったのだから。
会社はあっという間に成長して行った。一年も経つ頃には、あいつが世界を支配して居ると言っても過言では無い程の大企業になった。
あいつが指を一本動かすと、国も企業も動く。
俺はせめて妹を守れるようにと、体を鍛え始めた。あいつは応援してくれた。彼女は昔から体だけは細くて脆かったから、代わりに体を鍛えてもらう事に、嬉しさを感じて居る様だった。
俺が抱え上げたりなんかすると、あいつは無邪気に笑って褒めちぎった。
だが、俺は心の内では完全に妹に屈して居た。もう身長は完璧に追い抜かれ、毎日出会う度に、俺はあいつに見下ろされて居る。高い所の物を取るのも、電灯を変えるのも、あいつに取って代わられた。どこへ行っても弟扱いで、あいつが訂正する度に、俺はバツの悪い思いをした。
そんなある日の事だった。
俺は、あいつの秘密を覗いてしまった。
尤も、それは覗こうとして覗いたのでは無かった。その日の夕刻時、あいつの部屋を通り掛かると、ドアが少しだけ開いて居たのだった。俺はそのまま通り過ぎようとして、一旦は目を離したけれども、真っ暗な部屋の中で、一人パソコンの前に向かって居る妹が気になって様子を伺って見た。
―――途端に俺の目はあいつに釘付けになった。
ベッドの上に脱ぎ散らかされた服、聞こえるピチャピチャと水の跳ねる音、そしてあいつの甲高い声、………妹は、パソコンに向かって自慰をして居たのである。
しばらく見惚れて居た。
だが自慰をして居るなら、パソコンにはあいつの好きな物が映し出されて居るのでは? そう思って俺は少し扉を押し開けた。ちょっと中にも入った。
そして後悔した。あいつは、人であった物をおかずに、自慰をして居た。
映し出される画像の数々、それらは全て、切断、又は何かで手足をねじ切られた男である。男だと分かったのは、それがどれも屈強な体つきをして居たからであって、恐らく普通の体つきの人だったら分から無かったはずだ。それくらい、あいつのおかずはグチャグチャになった人間だった。
俺はそれから数日間、悪夢にうなされた。
が、同時に、あの時の妹がどうしても頭から離れ無かった。エロかった。妹のあんな姿が見られるなんて、思いもして無かった。
―――俺もあいつにああしてくれたら、………
何故か、俺はその時こう思ったのであった。
そしてあれから一週間後、俺は妹の部屋に忍び込んだ。目当てはあいつのパソコン、いや、その中にあるあいつの性癖。
パソコンは電源が点いて居た。それどころか、ログインされたままになって居た。あいつがあの時見て居た画像が見つかるまでに、五分と掛から無かった。
ついでに、動画も見つかった。
そこに映し出されたのは、真っ黒にモザイク処理された人物が、人を潰して居る場面、………
大の男達がモザイク処理された人から逃げ回り、絶叫を上げながら殺され、殺される。
不思議と吐き気は催さ無かった。これを見て、妹が自慰をして居るのだと思うと、寧ろ興奮した。
俺はいくつかの動画を見てから、パソコンを閉じた。そして静かに部屋を後にした。
バレる心配なんて無かったはずだ。
翌日、俺はいつも通りあいつに勉強を教えてもらって居た。
「兄さん、今日は証明問題の書き方を勉強しましょう」
初めの方は、普段と何も変わら無かった。しかし、勉強を教えてもらって居る内に、俺はあいつが顔を赤くして居る事に気が付いた。
俺は、
「美希にならいい」
と言った。
あいつは、
「いいの? 兄さん」
と言った。
俺は、その時まで普通のセックスが始まるのだと思って居た。
「では、失礼します」
あいつがそう言うと、俺の体はベッドの中央に投げ飛ばされて居た。俺は座って居たはずだった。あいつも座って居たはずだった。なのに、俺は今度は、宙に浮く感覚を感じて、
「ひっ、」
と言う声を上げた。
「兄さん、兄さんがいけないんですよ? 妹の秘密を覗くなんて、許されません」
―――あいつは知っていた。下を見ると、俺はあいつに脇の下に手を入れられて、それで浮いて居る。
「ふふ、私ね、力も普通の人よりあったの」
―――ちょっと試してみますか? 
そう言って、あいつは俺を抱きしめる。たったそれだけで、俺は激痛に藻掻いてしまった。
「どうです? 今のでも、全然力入れて無いんですけど、苦しいでしょ? じゃあ兄さん、まずは手からさよならしましょうか」
と、言うと、あいつは俺の手を握った。そして、そのまま握り潰した。
右手が血の塊となった時、俺は漸く悟ったのである。
―――ああ、あいつには何一つ勝て無かったんだ。
と。
それからあいつは、俺の四肢の一本一本を、ゆっくりと潰して行った。それは、俺があいつの部屋に忍び込んで見た光景と、何一つ変わる事は無かった。ただ、俺の場合、あいつに潰されて喜んで居た様に思える。何故なら、………良くは知らないが。
最終的に、俺は胴体と、それにくっついている頭だけになってしまった。今俺は、あいつにその頭を掴まれて、陰部を擦り付けられて居る。
ああ、骨の折れる音が聞こえる。………
「ふふ、ダメな兄さん。妹に欲情する上に、妹にオナニーの種にされちゃって、―――でも、もう最後なんですね。私、兄さんの事はずっと好きだったのになぁ、………」
声が霞んだ。俺はもうダメだった。最後まであいつの声が聞きたかったが、目も見え無くなった。
あいつの手に力が入った。
頭蓋骨が窪んだ。
あいつの腕に力入った。
胴体が無くなった。
唇に熱いものが触れた。
俺の最後が床に落ちた。
それを悟った時、俺は死―――
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kkagneta2 · 4 years
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ふくろう便
おっぱいが大きくなる病気にかかった妹の話。ちょっとこれを書いてて個人的な時間が取れなくなったので、取り敢えずここで止めておこうと思います(改行が無いのは本当にそうやって書いてるからなんですが、まぁ、まだ完成してないから許してくれる…よね?)。
膨乳ものではなくて、成長ものです。あと、思い入れが出来たので絶対に完成させます。
俺の妹が珍しい病気にかかった。名前の読みにくいその病気は、とある女性ホルモンを異常に分泌させ、体の一部分を際限無く大きくしてしまうのだと医者は語った。一月前から始まった突然の巨大化、それはまだほんの序章であってこの先どうなるのか、どこまで大きくなるのか、医者にも判断が付かないのであった。俺を含め、家族の誰しもがまだ前兆であることに震えた。妹はまだ11歳の小学生だった。体の一部分とは彼女の胸のことだった。一月前、胸が痛いと訴えだしてから突如として膨らみ始めた彼女の胸元には、この時すでに大人顔負けのおっぱいが、服にシワを作りつつ大きくせり出していた。事の発端は夏休みに入ってすぐのことだった。最初彼女は何らの変化も無かった。ただ胸にチクリとした痛みが走ったかと思えば始終皮が引っ張られるような感覚がし、夜中から朝にかけて最も酷くなった後日中ゆっくりと時間をかけて溶けていく、そんな疼きにも似た心地がするばかりであった。が、日を経るに従って疼きは痛みへと変わり、胸が膨らみだした。初めの幾日かは様子を見ていた妹は、八月も一週間が経つ頃には自分の胸が異様に膨れつつあるのを悟った。四六時中走る痛みに体の変化が加わって、彼女は漠然とした不安を抱いた。誰かに聞いてもらおうと思った。胸の内を打ち明けたのはある日のこと、俺の膝の上に頭を乗せながら黙々と本を読んでいた時のことであった。「おっぱいが大きくなるのってこんなに痛いんだね、お母さんもおっきいけどこうだったのかな」と、妹は本に目を落としながらぽつんと呟いた。「春、」―――俺は妹の名前を呼んだ。「おっぱいがおっきくなってきたのか?」「うん。でもすごく痛くてなかなか眠れないの。」「それはだいぶ酷いな。ちょっと待ってて、どこかに軟膏があったはずだから取ってくる、」と、そうして俺は軟膏を取りに行った。「これを塗れば少しはましになると思う。お風呂上がりとか寝る前にちょっと手につけて練り込むように塗るんだ。ちょうど今日はもう寝る時間だから早速お母さんに塗ってもらいな。話を聞いてもらうついでに」と、軟膏を妹に手渡そうとした。妹は受け取ろうとしなかった。「今日はお兄ちゃんに塗ってもらいたい、」―――そう言って服を捲くり上げる。身に纏うていた寝間着一枚が取り払われ、彼女の胸元が顕になる。俺は息を呑んだ。妹の胸は本当に膨らんでいた。「変じゃない?」心配そうにそう尋ねてくる。「変じゃないよ、綺麗だよ。さあ、もう少し捲くってごらん、塗ってあげるから、」と軟膏を手に練り込んで、俺は妹のおっぱいに触れた。暖かかった。俺は必死に冷静さを保って塗った。静かなものだった。俺も妹も固く口を閉ざしていた。妹はさらにじっと目を瞑っていた。「いいかい? 今日は塗ってあげたけど、今後は自分ひとりで塗るか、お母さんに塗ってもらうんだよ」「うん、ありがとうお兄ちゃん。少し楽になったような気がする。」「よしよし、じゃあ今日はもうおやすみ。友達と遊び回って疲れたろ」と、促したけれども彼女は不服そうに居住まいを崩さずにいる。「今日はお兄ちゃんと一緒に寝てもいい?」―――そう言ったのはちょっとしてからだった。「いいよ、おいで。少し暑いかもしれないけど、それでいいなら、………。」俺はこの時、あまりにも心配そうな顔をしている妹を放ってはおけなかった。そして聞いた。胸の痛みのこと、胸の成長のこと、不安のこと、誰かに聞いてほしかったこと。いつしか寝入ってしまったその背を擦りながら、眠くなるまでそれらのことを考え続けた。「春、―――お兄ちゃんはいつでも春の傍にいるから、甘えたくなったら甘えてもいいんだよ。これくらいだったらいつでもしてあげるから、」と気がつけば呟いていた。そっと顔を覗き込むと、ちょっと微笑まれたような気がした。明くる日、夜になると先日同様妹は俺に軟膏を塗るようにねだってきた。その明くる日も、またその明くる日もねだってきた。けれども、お盆が終わる頃にはその役は母親に取って代わられた。さすがに誰が見ても妹の胸元には小学生離れした膨らみが出来ていた。母親は妹を連れて下着を買いに行った。E カップもあったということを聞いたのは、その夜いつもの様に妹が本を片手に俺の部屋にやってきた時のことだった。「そんなに大きいの?」と彼女は俺のベッドに寝そべりながら聞いてきた。「ああ、俺の友達でも何人かしかいないんじゃないかな。春はお母さんのを見慣れてるからそうは思わないかもしれないけど、もう十分大きい方だよ。」「そっかぁ。でもやっぱり自分だとわかんないなぁ。お兄ちゃんは大きいと思ってる?」「それは、………まぁ、もちろん思ってるよ。」「お兄ちゃんはおっきい方が好き?」「もちろんす、………こら、お兄ちゃんをからかうでない」「えへへ、ごめんなさい。」妹はいたずらっぽく笑いながら言った。それから二週間弱という時が経った。妹の胸は日を経るごとに大きくなって、異常を感じた両親に病院に連れられた頃には、寝間着のボタンが留められないくらいになっていた。L カップだと母親は医者に言った。「胸に痛みは感じますか。」妹は黙って頷いた。「どれくらいありますか。我慢できないくらいですか。」これにも黙って頷いた。普段ならばそつなく受け答えをするのだが、胸が膨らみ始めた頃から彼女は酷く引っ込み思案になっていた。「少し酷いようです。昼間はそうでもないんですが、それでもやっぱり痛みはずっと感じているようで、胸元を押さえてじっとしていることがよくあります。」俺は代わりに口を開いて言った。「昨日も寝ている最中にうなされていましたし、肌着が触れるのも辛そうです。」「まあ、それは、―――」と、医者であるおばあさんは優しい笑みをこぼした。「それは辛かったでしょう。よく今まで我慢したね。」「はい、………。」「お薬を出してあげるからね、きっと楽になるよ。」「あ、ありがとうございます。」かすかな声で言った妹は、ここでようやく安心した顔を見せた。診察はそれから30分ほどで終わった。両親が結果を聞いている間、俺はあの小さな肩を抱いてやりながら静かに待った。結果は言うほど悪くはなかった。医者にも専門外過ぎて分からないことが稍々あるものの、妹の体は健康そのものだった。俺はひとまず胸をなでおろした。巨乳化の影響が今後どのような形で現れるにもせよ、健康であるならそれに越したことはない。俺はただそう思った。その日も妹は俺の部屋にやって来て、ベッドの上に寝転がりながら本を読んだ。「お兄ちゃんは魔法使いだったら、ふくろうと猫とカエルのうちどれを飼う? 私はふくろうがいいなぁ、………白くてふわふわな子にお兄ちゃんからのお手紙を届けてもらいたい。」―――そう云った時の妹の顔は、本当にそういう世界が広がっているかのようにキラキラとしていた。
 実際、妹はその魔法使いの話題、―――はっきりと言ってしまうが、ハリー・ポッターを話題にする時はいつもそんな表情をした。彼女はあの世界に強く憧れていた。きっとこの世のどこかには魔法の世界があって、自分にも手紙が来るかもしれないと思っていた。毎夜持��てくる本は松岡訳のハリー・ポッター���った。どんなに虫の居所が悪くなっても、それさえ話題に出せば立ちどころに機嫌が良くなった。この夜もそうであった。妹は次の日の始業式に言いようのない不安を感じていた。彼女は自分の胸がクラスメイトたちにどう見られるのか、どういう反応をされるのか怖かった。それに彼女は私服で学校へ向かわねばならなかった。胸が制服に入らなかったのである。「どうにかならないの」と言ったが、どうにもならなかった。「行ってきます。」翌日、出来るだけ地味な服に身を包んだ妹は玄関先でぺこっとお辞儀をした。また一段と大きくなってしまった胸は、この時M カップあった。俺は「胸は大丈夫なのか」と聞いた。妹は「うん、お薬塗ったから今は平気」と答えた。寂しそうな顔だった。途中まで見送りに行こうと草履を引っ掛けたけれども、首を横に振られた。「お兄ちゃん、行ってきます、」―――そう言って妹は玄関から出ていった。俺はこの時どうなることかと思った、が、お昼ごろになって帰ってきた彼女は、行きよりはずっといい顔で家に入ってきた。「おかえり、春。学校はどんなだった?」俺はホッとして聞いた。「えっとね、大丈夫だったよ。みんなすっごく驚いてたけど、ちょっと見られただけであんまり。………あ、この制服はね、行ったら先生が貸してくれたから保健室で着替えたの。」言われて彼女が制服を着ていることに気がついた。袖も裾も余っているけれども、胸元だけはきつそうだった。「そうだったのか。貸してくれてよかったな。」「うん、でもちょっとぶかぶかだから変な感じがして気持ち悪い。………」「春は昔から小さい方だからなぁ。まぁとにかくお入り。一緒にお昼ごはん食べよう」「うん!」―――妹は元気よく答えた。それから彼女は今日のことについて楽しそうに喋った。俺は安心した。何となく、これからまたのんびりとした日が始まるように思った。けれども違った。彼女の胸はそんな俺の思いなどお構いなしで大きくなり続けた。薬を塗らなければ痛みでブラジャーすら着けられない日が続き、始業式の日には90センチ台だったバストは、次の週には100センチを超え、次の次の週には110センチを超え、そのさらに次の週には120センチを超えた。V カップ、というのが彼女の下着のサイズだった。「ブ、V カップ?!」母親からそれを聞いた時、俺は思わず聞き返した。「春の胸はそんな大きいのか、………。」「そう、だからあの子に合う下着なんて、どこのお店にも置いてないのよ。」母親は深刻な表情をして言った。妹は、胸が大きすぎて自分が着けるべき下着が無かった。彼女は普通の女性で言うところのO カップのブラジャーを着けて居たにも関わらず、胸が締め付けられて苦しいと訴えていた。俺は時々彼女の無防備な姿を見た。少なくともブラは着けておかなければいけないと思った。あの姿を友達に見られでもしたらと一人心配した。「買うとなると、後は海外のものすごく大きいブラジャーしかなくってね、………。」―――母親はそう言った。果たして妹は、翌々日に初めての海外製のブラをつけることになった。母親が言った通りものすごく大きいブラジャーだった。そればかりでなく、分厚かった。どこもかしこも肉厚で重みがあり、肩の部分にはクッションのようなものが誂えてあった。ホックも四段あって、これを妹が着けると思うと少し可哀想な感じがした。でも、妹は文句も何も言わずにホックを留めて制服を着た。「行ってきます。」と言う声はいつもどおり明るかった。彼女が明るかったのは、そのわずか二日後に行われる運動会を楽しみにしていたからであった。けれども当日、妹は開会式と閉会式に姿を見せただけだけで、後は自分のクラスのテントの下に小さくなって、クラスメイトが走ったり踊ったりするところを見ているだけだった。妹の胸はトラブルの原因になりかねない、として学校は急遽彼女に自粛を要請したのである。のみならず、運動会の直前で不審者情報が寄せられたために、妹はタオルまでかけられていたのであった。俺は耐え切れなかった。2、3の競技が終わるとすぐに妹のところに行った。「先生、久しぶりの母校を見学させてもらえませんか。」「宮沢くんか。昔のように窓を割らなければ別にいいが、くれぐれも物だけは壊さないように。」「ありがとうございます。もちろんです。―――小春、一緒に行こう。」「えっ? う、うん、―――。」先生は何も言わなかった。結局俺たちは校内を散策するのにも飽きると、閉会式まで黒板に落書きをして遊んだ。妹は星やふくろうの絵を描いたりした。テントの下で居た時よりもずっと楽しそうな顔で、………。そしてその夜のことだった。「お兄ちゃん、入ってもいい、………?」彼女にしては少し遅い9時過ぎに、妹は部屋にやって来た。「春か、………おいで。」「お勉強中だった?」「大丈夫、ちょうど今キリが良いところまで終わったから。」「ほんとに?」「まぁ嘘だけど、遠慮せずに入っておいで。」「ごめんね、おじゃまします。」そう言って入ってきた妹を見て、俺は少なからず狼狽えた。彼女がいつもハリー・ポッターの松岡訳を持ってくることは言った。けれどもその日は本ではなく、いつか病院で処方された塗り薬が携えられていたのであった。「お兄ちゃんにお薬を塗ってほしいの。」………そう彼女は言った。「………鍵をかけてこっちにおいで。」俺は読みかけの本を閉じた。カチリという音はすぐに聞こえてきた。大人しく従うということ、妹は理解してこの部屋にやって来たのである。目の前に立った彼女を、俺は見つめた。「服を脱いでごらん。」妹は小さく頷く。裾に手をかけ、ゆっくりと寝間着を脱いでいく。―――「ブラジャー、だいぶきつくなってきたな。」「だって、もうY カップもあるんだもん。ブラなんてもう外国にだって無いかも、………あっ!」「どうした?」「ホックが、………。」「お兄ちゃんが外してあげる。」と、俺は背中に腕を回して外してあげた。ホックが外れると、ブラジャーはすぐに彼女の足元に落ちた。あのY  カップだと言った妹のおっぱいが目の前に現れる。「お兄ちゃん、どう? 私のおっぱい、こんなに大きくなっちゃった。」「すごいな、春の顔が小さく見える。」「お兄ちゃんの顔も小さく見えるよ。倍くらい大きいかも。」「さすがにそんなにはないだろ。触ってもいいか?」「どうぞ。―――」俺がおっぱいに触れた時、妹はビクッと体を震わせた。だが嫌がっている様子はなかった。びっくりしただけのようだった。そして、もっと触って欲しそうにもたれ掛かってきた。「お兄ちゃん、私、―――。」その後、俺は妹の胸に薬を塗ってから今日の出来事を日記にしたためた。もちろん、先程のことについては書いてはいない。俺が日記帳を閉じた時、時刻は既に12時を過ぎていた。妹は静かに眠っていた。嘘のように可愛いかった。こんなに小さな体をしていたとは思わなかった。「ごめんな、春は痛かったろう。明日はゆっくりしてな。」俺は明かりを消して妹の隣に寝た。翌日、学校から帰ってくると机の上に一通の手紙があった。内容は俺への感謝の気持ち、友達のこと先生のこと、自分の胸のこと、そして運動会への悔しさと、―――11月にあるマラソン大会では絶対に走りたいという思い。それらが妹の綺麗な字で綴られていた。「お兄ちゃん、いつも私のおっぱいを心配してくれてありがとう。とってもうれしいです。これからもよろしくお願いします。小春より。」俺はマラソン大会に少しく不安を感じながら、同じように返信を手紙に書いた。そしていつか買っておいたふくろうのぬいぐるみと共に、妹の机の上に置いた。
 妹がマラソン大会で走りたいことは、俺も予想していたことであった。元々妹は体を動かすのが好きな子だ。小さい時は二人で家中を駆け回ってよく怒られたし、毎年夏に祖父母の家に行くと近くにある川で遊んだ。胸が膨らみだした時も、毎日のように友達と一緒にプールに行ったり、公園で遊んだりしていた。だから妹がマラソン大会で走りたいと思うのは当然のことだった。しかし彼女にも分かっていたはずである。もう自分があまり走ったり飛び跳ねたり出来ないということ、―――あの夜俺が本当に驚いたのは彼女の胸の大きさではなかった、彼女の胸の重みだった。妹はその頃から、胸の重みを軽くするような姿勢を知らず識らず取った。例えば机に向かう時には胸をその上に乗せた。階段を上り下りする時には胸を抑えて慎重に進んだ。本を読む時にはクッションを抱くように胸をお腹に抱えた。彼女は、その手の胸が重いという仕草は全部した。10月も下旬になる頃になると、妹のそういった仕草はよりあからさまになった。彼女は立つと必ず柱を背にして、それにもたれた。そして、柱がなければ俺の背にもたれかかってきた。胸の重さは、彼女の体に相当の負担を掛けているに違いなかった。俺は聞いた。「春、体の方は大丈夫なのか? ちょっと本当のことを言って」―――この問いに対する彼女の答えは、俺の予想を少し超えていた。「あのね、実は首と肩がすごく痛いのはずっとなの、………。それに最近は腰も痛くなってて長く立ってられないし、ほんとうは歩くのもつらい、………。」妹はこれを言い終えると俯いて鼻をすすった。俺は少し唖然とした。「歩くのもなのか。」「うん、………あ、でも全然歩けないってことはないからね、胸が揺れちゃうってだけで、………。」「やっぱり大変だよな。階段とかもゆっくり進んでるし。」「あ、あれは揺れるのもあるけど、下が見えないから、………。」と、少しの間沈黙が訪れた。やがて俺は少し真剣に彼女の名を呼んだ。「―――春。」「な、何、お兄ちゃん?」「………少し横になろうか。マッサージしてあげる。」「えっ? う、うん、分かった。」―――俺はあの時、妹の感じている苦痛を甘く見ていたのであった。成長が止まらない胸による身体的な制約、それは妹のかかっている病気の特徴的な障害の一つだった。俺はいつか医者から聞いたことがある。この病気が原因で胸が大きくなりすぎ、好きだった部活を辞めてしまった子が居たと。女の子はごく普通の中学生だった。昔から体を動かすことが好きで、部活はバスケットボール部に所属、来季からはキャプテンを務めることになっていた。しかし女の子は胸が大きかった。来診時、彼女の胸はT カップかU カップ相当の大きさであった。女の子は言う。「胸が大きくて、最近はバスケもあんまり出来ません。揺れると痛いので、………。体育の時間も胸を抑えて走ってます。」彼女は迷っていた。胸が大きいということは、彼女にとっては普通なことであった。小学生の頃には既にH カップあったし、中学を一年経る頃にはP カップのブラがきついくらいになっていた。胸を口実にして部活を辞めていいのだろうか、―――女の子には何でも無い悩みのように思えた。が、初診から約半年後、結局女の子は部活を辞めた。胸が大きくなりすぎて、歩くのも難しくなってしまったのである。再び医者に見えた時、女の子はこの決断を涙ながらに語った。彼女は自身の胸が引き起こした結末を、受け入れて尚悔しいと感じているのであった。俺は、この話を思い出すたびにあの日の妹を思う。あの日、俺に胸の重みを打ち明けた時の彼女の抱えていた苦しみは、この女の子と同じものだった。彼女は自分の胸が大きくなりすぎていることに気が付きながらも、どうしてもマラソン大会が諦めきれなかった。彼女は知っていたのだ。あの日、妹はバストを測って泣いていた。そして泣きながら服に袖を通していた。刻一刻自由に動けなくなっていく自分の体を、彼女はどう思っていたのだろう? わずか11歳の少女には、病気で異常に大きくなってしまった自身の胸が、どれほど重く感じられていたであろう? 俺はマッサージを通して、彼女の肩の荷を下ろしてあげたかった。塞ぎがちになっていた彼女の、傍について居てあげたかった。「―――春?」と、俺は、背中を圧しながら彼女を呼んだ。彼女は眠そうに答えた。「な、なに、お兄ちゃん、………?」妹は眠そうに答えた。「ああ、いや、なんでも。髪、切ったんだなって。」「うん、………今日お母さんが切ってくれたの。もう、理容室なんて行けないから、………。似合ってる?」「似合ってるよ。俺の好きな髪型だ。綺麗だね。」俺がそう褒めると、妹は嬉しそうに身を震わせた。「そっか、お兄ちゃんはこういうのが好きなんだ、」と、静かに目を瞑る。俺は、マッサージの手を止めた。「春。」「………ん、なに?」「やっぱり、マラソン大会は諦めきれないか。」「………うん。」と、妹はかすかに頷く。「そうか、………なら何も言うことはない、頑張るんだよ。たぶん、おっぱい、ものすごく揺れて大変だろうけど、ゆっくり、春は春のペースでね、俺も応援に行くからね、だから、………。」「ちょ、ちょっと、お兄ちゃんがなんで泣いてるの、………。」「ごめん、今だけは、春のおっぱいに顔を埋めさせてくれ、………ありがとう。」俺は、そのまま妹の乳枕で寝てしまったようだった。週末、妹は病院で胸の重さを測ってもらった。妹の胸は看護師の手によって医療用の大きな秤に乗せられ、片方ずつ正確に測定された。結果、妹の胸は右が7.6キロ、左が7.7キロだった。俺と妹は言葉を失った。が、しかし、彼女の胸を取り扱った看護師は淡々と作業をしていた。「まだ乳房は成長の初期段階にあります、」―――医者は淡白に言った。「しかし15キロ以上ありますから、出来る限り揺らさないように気をつけてください。飛んだり走ったりは厳禁です。」「やっぱり、走るのはやめておいた方が良いですか。」「ええ、ダメです。胸を痛めますから。」「………そうですか。」―――やはり言われてしまったかと、俺は思った。「お兄ちゃん、私やっぱり走りたい。少しだけでもいいから走りたい。」その帰り道、玄関前で夕日を背に彼女は言った。「ああ、でもゆっくり走るんだよ。いいね?」と、そう言って俺は彼女と指切りをした。
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kkagneta2 · 4 years
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ボツ6
おっぱい、妹。なんか妹もの以外上手く書けなくなっちゃった。双子で、胸が極端に大きい妹と同じ教室に居るってどんな気持ちなんだろうなぁ
場所: 学校にて
時: 春。入学式の次の日の話………
 「一緒なクラスだな」
と、掲示板を静かに見つめる妹に、俺は言った。
「うん、………」
妹は、緊張しているのか、一層無口である。今日は前髪に着けているヘアピンが真新しい。
「それ似合ってるぞ」
「うん、………ありがと」
教室へ赴くと、すでに沢山の生徒たちで賑わっていた。俺の席は窓際、最後列から2番目、妹の席はその真後ろにある。―――と、黒板に書かれている。
「お、お兄ちゃん、………」
「ん? どうした?」
「は、恥ずかしい、………」
見ると、妹に気づいたクラスメイトたちが、こちらに視線を投げつけている。しょうがない事ではあるが、良い心持ちではない。横目でチラチラと見てくる者も居る。
「びっくりしただけだろうから、な? 大丈夫、すぐに慣れると思うからそう恥ずかしがんな」
「う、うん、………」
遅刻間際であったせいか、俺たちが席につくと同時に、先生が教室に入って来る。優しそうな女の先生で、ちょっと喋るとすぐに自己紹介の流れとなった。各々の生徒が教壇に立って、名前と出身校と趣味と、………まぁ、よくありがちな自己紹介をしていく。
「趣味は音楽を聞くことです。よろしくおねがいします、―――」
パチパチパチ、………
まばらな拍手が、一人が頭を下げる毎に鳴る。
「お兄ちゃん、………」
妹が呼びかけて来た。
「なんだ?」
「やっぱり、………前に立たなきゃダメ?」
「ダメだろう。一人だけやらないってのも、目立つぞ」
「………そう、だよね、………」
俺の番が何事も無く終わって、いよいよ妹の番がやって来る。立ち上がった彼女に、教室内がざわついたが、妹はしかとその身を晒した。
「あ、えっと、よろしくおねがいします。○○と言います。さっきの人とは双子の兄妹で、そのせいで苗字が同じになってます。………出身校はお兄ちゃんと同じ○○中、趣味は読書を少々、………あ、えと、それから、………」
と、妹は思い切ったように口を開く。
「この胸は病気で大きくなっちゃって、それでこんなになってます。………あの、気持ち悪いかも知れませんが、よろしくおねがいします」
と、か細い手で、胸を隠しながらお辞儀をした。
―――まぁ、あんなに大きいのだから仕方がないわな。
「おつかれ」
「き、緊張した、………」
家に帰って来て、妹はそう言いながら鞄を置く。よっぽど疲れたのだろう、俺が麦茶を差し入れる頃には、ソファに腰掛けて目を閉じて眠っていた。
何か可愛かったから頭を撫でて、そっと胸元を覗く。
よくこれで体が折れてしまわないものだ。
「本当に、でかくなりやがって、………」
「触ってもいいよ」
「起きてたのか」
「初めて触った時も、こんな感じだったの?」
「あれは悪かった。それに、あの時は夜だった。―――って、おい! 何してるんだ!」
俺が気が付いた時には、妹は俺のズボンのチャックを下ろして、息子を取り出していた。
「私のおっぱいでこんなガチガチにして、お兄ちゃんもう何言っても説得力ない」
「しょうがないだろ。お前のは、………なんだ、見るだけでもヤバいんだから」
「挟む?」
「たのむ」
と、そう言うと、妹はブレザーを脱ぎ、ブラウスのボタンを外して行く。
「腰、自分で振って。もう重くて動かせないから、………」
言われるまでもなく、俺は腰を振っていた。妹のおっぱいを丸抱えして、彼女の腹に自分のを擦り付ける勢いで、押し付ける。
「うぐっ、………!」
最初の一回は余りにも呆気ない。だが、妹のおっぱいに入っている限り、俺の勃起力は持続する。何故か、興奮が収まらないのだ。
「出るっ、………!」
二回目の射精も呆気なかった。俺は、本能的に自分のモノを引き抜いた。
「はー、はー、………」
「気持ちよかった?」
妹は、当然だが汗一つかいていない。
「う、上手くなったな、………」
「当然、お兄ちゃんのためなんだもん」
妹が抱きしめて来る。
「ま、待って! 今お前に触られると、………!」
また入ってしまった。その瞬間に、俺は三回目の射精をしてしまう。
四回、五回、………五分と経たずにあいつに抜かされる。
もう引き抜けはしない。
「奈緒、………もう無理、無理だから、………」
「ヤダ。ちゃんと出しきってからじゃないと離さない」
「そ、そんな、………奈緒、奈緒、―――」
 「あれ? なんか元気ない?」
その日の夕食時、俺は親にこんなことを聞かれた。
「奈緒にやられたんだよ。こいつ、見かけによらず荒っぽいからさ、教科書を全部持たされた」
「ははは、それくらいで疲れてどうする」
「あははは、まぁ、色々とあったんだよ。前後の事情っていう奴」
「あ、そう、………」
「お兄ちゃん」
それまで黙っていた妹が口を開く。
「うん? どうした?」
「またしようね」
そう言って、あいつは胸を揺すった。
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kkagneta2 · 4 years
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ボツ5
長身女性。なんかいい感じなので書き直すために投稿は控えようかなぁ。
内容は(背も高ければおっぱいも大きい)お母さんが、息子と娘の身長が逆転してしまったことに(というよりそれで悩む息子に)悩んでいる話なんですけど、もしここを見てる人が居たら上げます。
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kkagneta2 · 4 years
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ボツ(?)4
おっぱい。どうしよう、ボツにしてもいいけどこの子好きだからまた考え直すかも…
「また出たんだね、例の通り魔」
と、僕は何となしに言いながら、もう目で追いかけるだけになっている教科書のページを手繰った。
「そうなんだよ、もうこれで7人、いや、8人目か、一体いつ収まることやら、………」
と友人はパンを齧る。
「またいつもの状態で見つかったの?」
「あん?―――そうだよ、いつもどおりさ。俺らと同じ中等部の男子が、傷も怪我も何もなく教室に倒れていたんだと。で、これまたいつもどおり、何があったのか聞いてもうんともすんとも言わないで首を振るのみで、一向に埒が明かねぇ」
「怖いなぁ。首絞めでもされたのかなぁ」
「それが違うんだってさ。この男子の言うことじゃ、首絞めじゃなくてもっとこう、………そう、そう、枕みたいなもので押さえつけられたらしいんだ」
「ふぅん、枕かぁ、………」
と怖くなってふるりと震えて身をすくめた時、ふわりと横から人影が。
「何話してるん?」
現れたのはクラスメイトの佐々木さんだった。その気さくな人体と学年トップの成績から二年生でありながら生徒会長を勤め上げ、その一方で部活の水泳では全国大会で結果を残すなど、天に二物も三物も与えられたような女子生徒。特に一体何カップあるのか分からないぐらい大きな胸は、一時詰め物をしているのだと言う噂が絶えなかったが、運動会の練習時にブラジャーが壊れたハプニングがあって以来、男子はすっげぇ、すっげぇ、と言いながら、告白しては振られていった。
そんな彼女が真横に立ったので、僕は少しドギマギした。
「おぉ! 佐々木か。あれあれ、あの話。通り魔事件の話」
「美桜ちゃんは何か知ってる?」
僕は彼女を呼ぶ時はいつも下の名だった。
「あー、あの話かぁ、………実はうちもよく知らへんねん。昨日も教室で倒れてるん見つかったんやろ? うちその時部室に居てなぁ、秋ちゃんと一緒に見に行こ言うて行ったんやけど、先生に追い返されてしもうてなぁんにも。いや、怖い話やで、………」
「まじかー、………あの生徒会長様でも知らないとは、お手上げかなこりゃ」
「あ! でもうち一つ大切なこと知ってるで!」
と、身を乗り出してきて彼女の胸が顔にあたった。
「み、美桜ちゃん、胸が、………」
「おっと、ごめんごめん」
「おい、啓介そこ変われ」
「い、いや、これ僕のせいじゃないし、ここ僕の席だし、………」
「あははは、いや、啓介くんごめんよ。最近また大きくなってて距離感が掴めへんくてなぁ、昨日もシュークリームを潰してしもてん。困ったやつやで、ほんま」
「うおー、………すっげぇ、………。ま、まぁいいや。佐々木の言う大切なことってなんだ?」
気を取り直した友人は、それでも美桜の胸に釘付けである。
「そやそや、その話やった。大切なことって言うんは被害に会った男の子のことなんやねん」
「ほうほう」
「実はうち会ったことがあんねんけど、みんななぁ、すっごい可愛くってなぁ! うちああいう子が弟に来てくれたら思うて、ぎゅって抱きしめとうてたまらなくなってん」
「なんだ、そういうことか」
「そういうことって、どういうことや?! これほど重要な点はあらへんやんか!」
「分かった分かった、大切なのは分かったから落ち着いてくれ」
「ふん、分かればええ」
と美桜を宥めてから友人は僕の方を向いた。
「それにしてもアレだな。可愛いと言えばうちの俺らのクラスにも居るな、一人」
と言うと、美桜も僕の方を向いた。
「せやねんなー、せやねんなー」
「ヤバいぞ、佐々木の言うことが本当だったら啓介の身が危ない。おい、啓介、夜道には気をつけるんだぞ」
美桜はこれを聞いてクックッと笑った。
「せやせや、啓介君はかぁいいから気をつけんとあかんで」
ふるふると、笑うに従うて彼女の胸が揺れた。
  それから一週間、件の事件は鳴りを潜め、学園は平和で、静かで、ゆるやかな日常がゆっくりと流れていた。今日も冬だと言うのに朝から陽気な日差しが差し込んで、始終あくびを噛み締めながら授業を受けなければならないくらいにはおだやかな空気が漂っていた。
そうして何事もなく授業が済んで、夕日の沈んで行くのを見ながら友人と一緒に教室を出たのだったけれども、校門の手前でふと、何か忘れものをしたような気がして立ち止まった。
「ごめん、忘れものしちゃったからちょっとまってて」
「しゃあねぇな、待っててやるからさっさと取ってこい」
腕組みをする友人を残して、僕は一人校舎の中へと入って行った。
校舎の中は妙に静かだった。さっきまで沢山人が居たような気がするのに、教室にたどり着くまで誰とも会わず、どこもかしこもひっそりとしている。電灯も消えていて廊下はほの暗い。
それで教室にまでたどり着いてみると、そこだけまだ明るいのであった。
「美桜ちゃん?」
中では美桜が一人窓際に佇んで外を眺めていて、僕に気がつくとふっと笑った。
「あれ? 啓介くんやん。どしたん?」
「ちょっと忘れものしたような気がして戻ってきちゃった」
「あはは、アホやなぁ」
と、美桜は近くの机に腰かけて、
「見つからへんのに」
そう呟くのがぼんやり聞こえたけれども、なぜか何にも気にかけないで机の中を漁り始めた。
それで随分と探したのであったが、机の中にも、ロッカーの中にもプリント類が山積みとなっている他何もなくて、一向にこれと言ったものは見つからない。そもそも何を忘れているのかも分からず、プリントの束を抱えて机を覗き込んだり、何となく体が動いて掃除用具入れの中を覗いたりもした。で、今は、床の上に落ちているのかと思って自席の周囲をグルグルと這っているのだけれども、もちろん何も見つからない。
「あれ、あれ?………」
あれ? と思っても見つからないものは見つからない。と、思ったその時だった。くすくすと上から笑い声がして、
「忘れものは見つかったやろか」
とほぼ頭上から声がしてハッと顔を上げると、やたらと綺麗な足が見え、次いでグワッと、物凄く大きな胸が目と鼻の先にまで迫ってくる。
僕は呆気にとられた。本当に大きくて、制服なんて今にも破れてしまいそうで、思わず後ずさりした。
「啓介くん?」
「あ、いや、何でもない、………あはは、はは、………」
僕はこう言いつつさっと立ち上がったけれども、
「んーん? 啓介くん?」
と、美桜がグッと覗き込んできて息が詰まった。彼女の方が頭一つ分は背が高くて、見下ろされると何となく身がすくむのである。………
「啓介くん」
「は、はい」
「今めっちゃうちのおっぱい見てたでしょ」
「えっ、いや、そんなことは、………」
「うそ、うちには分かってるから正直に言いな~?」
「ご、ごめん、見てました」
「あははは、えっちな子やなぁ!」
「―――むぐぅ!」
………一瞬のことだった。眼前に彼女の胸が迫ってきたかと思うと、顔中、………いや、頭がすっぽりとやわらかいものに包まれて、途方もなくいい匂いが鼻腔中に充満した。
「どーお? うちのおっぱい気持ちいーい?」
「むむぅ、………」
「んー? 何言ってるんか分からへん。もっと押し付けたらどうやろか」
と本当にぎゅうううっと後頭部を押し付けてきた。
息が、出来ない。
「むー! むー!」
こう藻掻いているうちにも美桜はさらに力を込めて押し付けてくる。一体何十センチあるのか分からない谷間に後頭部まで埋まり初めて、とうとう我慢しきれなくって美桜の腕を掴んだけれども、貧弱な僕では水泳部の彼女の力に敵うはずもなかった。
「グリグリ~」
と頭をゆすられると、されるがまま体も揺れる。自分ではどうしようもできないその力に、僕は恐怖を感じて叫んだ。
叫んだがしかし、その声は彼女の胸に全て吸収される。
「むうううううう!!!」
「すごい声やなぁ、でもうちには何言ってるかぜーんぜん分からへん、やっぱりもっとやってほしいんやろか」
とグリグリ、グリグリ。グリグリグリ。と、頭を擦られる度に、柔らかいおっぱいに鼻を押し付けられて、あの甘いような、懐かしような、とろけるような匂いが鼻をついて、頭がショートを起こしたように膝がガクガクと、腰が抜ける。
あゝ、もうだめだ、………
もはや彼女の手には尋常でないほどの力が込められていた、頭に激痛が走るほどに。でもそれが快感に変わって、僕は頭がもうどうにかなってしまったのだと思った。
「ええなぁ、このぎゅってする時の男の子の息、やっぱりたまらへんわぁ」
とますますギュッとして彼女の匂いが。ぬくもりが。
だけど命をつなくためには息を吸わなければならない。
「ふは、ふあ、ふひ」
「たっくさん吸ってぇな。うち生まれたときからええ匂い醸し出してるらしいねんわ」
「ふー!ふー!」
「ふふ、ええ気持ちやろ。もうなんにも考えられへんやろ。苦しくっても苦しくってもどこにも行きたくならへんやろ、―――」
ああああああ、………落ちていく、落ちていく。学園一の優等生の谷間の中へ落ちていく。
自力では立ってもいられなくなって彼女にすがりついた。柔らかい体、それがものすごく心地良くて、一生離したくないと思った。
気がつけば後頭部にあった手の感触が消え、僕の頭はすっぽりと彼女の胸に包まれていた。頭頂部にも、首元にも、肩にも、柔らかい感触がひたひたと吸い付いて、外からでは髪の毛の一本すら見えなくなっていた。
制服を着ているのに僕の顔を包み込んでしまう。
それほどまでに彼女の胸は大きい。世界一だと言っても誰も不思議に思わない。
だけどまだ中学生、二年生。………
「―――もうブラジャー無くってなぁ、今日学校終わったらすぐに買いに行かんとあかんから、ごめんなぁ。また誘ってぇな」
「―――今日すごい胸が張ってん。あーあ、明日になったらまた何センチか大きなってるわ」
そんな彼女のおっぱいに、僕の頭は丸ごと食べられてしまった。
そうして始まったのは頭部へのパイズリ。
さすがに僕も知っている。胸の大きな女性が男に向かってするアレ、………彼女はそれを僕の頭でやろうとしているのだった。
「男の子はこれすると腰が抜けんねん。うちのお兄ちゃんなんてな、毎日毎日、美桜! あれをやってくれ! たのむ!! ってせがんできてな、毎日毎日とろっとろにとろけきって十何回って射精すんねん。終わったら終わったで気ぃ失ってぐったりするし、起きたら起きたですぐ抱きついてくるし、昔はかっこよくて頼りになったんやけどなぁ、もう細うなってうちのことしか考えられへんようになったんやわ。あ、これ誰にも言ったらあかんで。うちこれ言われると弱いんやから」
と言ううちにも、ぎゅうううっと頭を圧迫してくる。美桜がどういう風に僕の頭を捕らえているのかは分からないけれども、もうここまで来ると嘘みたいな心地よさが体中を駆け巡って、手をだらりと垂れ下げた。
でもしばらくは開放してくれなかった。………
「あはは、もう腰立たん?」
ドサリと仰向けに倒れた僕に向かって美桜はこう言った。
で、唐突にのしかかってきた、―――!
「むぐぅ!!!」
僕の顔は彼女の胸の下敷きに、そしてまたしても息が。
(お、重っ、―――!!)
苦しさよりもこう思うほうが先だった。人が一人顔に乗っているような感じで、体を起こそうにも全く歯が立たない。
一方で美桜は胸の重みから開放されて、
「あー! 重かった!」
と、非常に清々しい声を出していた。
「ほんま重いわ。啓介くんもそう思う?」
「むー!!」
「あはは、めっちゃ苦しいやろなぁ。うちのおっぱい片方だけでも10キロは余裕であるねんもん。何カップやと思う?」
「むぐ、………むぐぅ!」
「正解は、………よく分からない、―――でした! ………あはは、うちZ カップ超えてんねん。胸小そうしとうて水泳部に入ったんやけど、逆効果やったみたいやわ。―――ほな、そろそろ息吸おか」
とゆっくりとずり下がって行って、美桜の顔が見えた。
「すごかったやろ? うちくらいおっぱいおっきいとあんなことも出来るねんで」
と、ここに於いてようやく区切りが出来たようだった。が、開放とは言っても美桜は未だに僕の体の上に乗っていて、あと一歩ずり動けば僕はまたしても天国のような苦しみを味わうことになりそうであった。
「それにしても啓介くん、最近うちのおっぱい見すぎやで。今日も授業中にチラチラチラチラ、………気づいてへんと思うてた?」
「ご、ごめん、………」
「あはは、むっつりさんやなぁ。でも正直な子はうち好きやから、しばらくこないしてよか。さっきみたいなのは苦しだけやったやろ?」
と、その時だった。
「おーい、啓介ー、いつまで忘れもの探してるんだ?」
と友人が教室に入ってきた。美桜を見つけて、
「おぉ、佐々木じゃないか。啓介を見なかったか?」
「啓介くんならさっき腹痛(はらいた)でトイレに行きはったよ」
「そうか、俺も忘れものをしたような気がして来たが、入れ違いになったか」
「―――?」
あれ? と思った。
―――なんで僕らの状況を不思議に思わないんだろう?
「み、美桜ちゃん」
と、言うと美桜は不敵に笑って、
「驚きはった? うち超能力使えんねん。ほら、こんな風に」
と左手の人差し指をピンと立てて僕の目にかざした。
すると途端に、クラクラと眼の前が揺れた。そして胸が苦しくなった。頬も耳も火傷しそうなほど熱くなって、口がぽかんと開く。そしてただでさえ可愛い女の子がさらに可愛く見えてきて、………あっ、あっ、………か、かわいい………!!
「あはは、目ぇとろっとろやん」
「うあ、うあ、………」
「声もしどろで、体が熱うなって、うちのことしか考えられなくなって、………ええねんで? おっぱい揉んでも、顔を埋めてぇも、口を吸い付けても」
「―――?!」
一体何が起こったのか分からなかった。分からなかったけれども説明すると、おもむろに立ち上がった美桜が指をパチンと鳴らすと体が空に浮き上がって、次の瞬間には小さな虫のごとく彼女に抱きついていたのである。
「しゅ、しゅごいいいいい!」
僕はそう叫んだ。
―――とろけていく。
脳がとろけていく感覚がする。動きも考えも支配されて僕が自由に動かせるのは手だけ、足はガッチリと彼女をホールドし、胴体はみっちりとそのなまめかしい体に張り付き、顔は再び胸に押し付けられている。
これでおっぱいを揉んだらどうなるのだろう。………
「あぅあ、………あわあわ、………」
それは恐怖とでも言うような感覚だった。触れたら終わる、確実におっぱいの虜になって人間性を失ってしまう。………だけれども手が伸びていく、おっぱいに、おっぱいに。
と、かすかに手先が触れた。「あ、終わった」と思った。
「なにこれ! なにこれええええええ!!!」
やっぱり一度触れたら最後だった。手が、止まらない。
「き、気持ちいいいいいい!!!」
あゝ、これが美桜ちゃんのおっぱい。僕の顔よりはるかに大きなおっぱい、いつも目の前で揺れるのを見つめるだけだったおっぱい、みんなが羨ましがるおっぱい、さっき自分の頭を丸ごと包んできたおっぱい、世界一のおっぱい、………おっぱい、おっぱい、美桜ちゃんのおっぱい、………
「あーあ、もううちのおっぱいのことしか考えられへんようなったなぁ」
と言ううちにも、ぎゅうううっと抱きしめておっぱいに顔をうずめ匂いを嗅ぎ、首元から手を突っ込んでじかにおっぱいに触れ、裾を軽くたくって彼女のおっぱいを覆う純白のブラジャーを堪能する。
「むああああああ!………」
何という快感、………
おっぱい、………
おっぱい、………
美桜ちゃんのおっぱい、………
彼女に再び人差し指を目にかざされると、恐ろしいまでの衝撃に駆られて、おっぱいの中でも特に大切な突起物に吸い付いた。あれ? と思ったら僕は今、制服を透いて、下着も透いて乳首を吸っているらしかった。そしてその乳首を口に含むのも自分の意思ではしていなかった。
それはまるで魔法だった。人差し指一本だけで僕の手足は彼女の思い通りに動いて、思考は全て奪われた。彼女がくるくると指を回すと頭が勝手に谷間へと向かった。彼女が指で空間を切ると僕の制服は真っ二つになった。彼女が5本の指を小さく折りたたむと、僕の体は赤ん坊のように小さくなった。彼女が指をクイと動かすと、僕は誘われるかの如く彼女の胸元に収まった。
そして赤ん坊のようにちゅうちゅうとおっぱいを吸った。―――
「ちゅうちゅう、ちゅうちゅう、………」
「ふふふ、かわいいなぁ」
「ちゅううう………!」
「ふふ、―――あ! せや、今うちが超能力使うんやめたらどうなるんやろ」
ふと美桜が言った。
「ちょっとやってみよか」
人差し指をくるりと回す。すると、
「んん?」
と友人がこちらを見た。
「どしたん?」
「なんか音がしたんだけど、佐々木は聞こえたか?」
「うちはなんも聞こえへんかったよ」
と、美桜は言って僕の方を顧みた。
「まさか全部見せるんやと思うた? あはは、いくらうちでもそんなことはせぇへんよ」
と言うものの、僕は赤ん坊にされると同時に知能までも剥奪されて、その実この言葉の意味がよく理解出来なかった。
「ばあ!」
「あーあー、よちよちよち、けいすけくんおっぱいおいちい?」
「あぅあぅ!」
「せやねー、友達邪魔やねんなぁ。よし、せやったらけいすけくんのために消してあげよか」
と指をくるくると回す。すると今までそこで忘れものを探そうとロッカーを覗いていた友人の姿は、その座席ごと、―――荷物も、制服も、身につけていた腕時計も何もかも、光がまたたくのと同じように消えた。
「きゃっきゃっ」
「帰る?」
「ばうばう、あー」
「ふんふん、けいすけくんはほんまにおっぱいが好きやなぁ。ほんま赤ん坊みたいやで。ほんならこないしてやろ」
と今度は親指と中指をぴったり合わせてパッチンと鳴らした。僕の体は赤ん坊からさらに小さくなって、リスのようになって、ネズミのようになって、最終的に蟻のサイズへ。彼女の手のひらの上でゴロゴロと転がされて、怖くてびーびー泣くのを見つめられる。
そしてブラジャーのカップの中へと入れられた。
そして次に見たのは、どんどん迫ってくる大きな大きな乳首だった。
僕はおっぱいとブラジャーの板挟みにされてもがき苦しんだけれども、ちょうどよい段差を見つけてそこに滑り込んだ。
「あーあ、気をつけなあかんて言うたのに、まったく啓介くんはかぁいいなぁ」
 時に、日が沈んで教室の中は真っ暗と、広々とした室内に半分に切れた一着の制服、闇の中に紛れて持ち主の帰りを待つ。
女神のような少女はそれすらも消して教室を後にしたが。
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kkagneta2 · 4 years
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ボツ3
長身女性。これも最後まで書いてるけど個人的に好きじゃないので途中まで投稿してお蔵入り。
麻耶が昼の弁当を忘れたから届けてくれ、と白羽の矢が立ったのは、先週水曜日の午前10時34分。僕が、………じゃなくて俺が昼からの講義にそろそろ赴こうかとぼんやりしている時だった。
「なんだ、あいつが弁当を忘れるなんて珍しいじゃないか」
呆れつつも、別に弁当を届けるくらい訳ないし、久しぶりに母校に入れるかと思うとちょっとウキウキして、俺は赤い綺麗な風呂敷に包まれたそれをいそいそとリュックに入れた。食の細い俺とは違って、バレーで多くのエネルギーを使う彼女の弁当箱は大きくて、リュックはすっかり重くなってしまった。
麻耶が通う中学校とは、歩いて15分ほどの距離がある。俺はその15分の道のりを、普段の倍くらい重いリュックを背負って、冬の寒さに凍えながら歩き、やがて見えて来た懐かしの校門をくぐった。卒業してからこれで3回目なのだが、ここに身内が入学してからは初めてであった。校門があって、校庭があって、校舎があって、右手に体育館、左手に駐輪場やらゴミ捨て場やら何やらがある、………この光景は10年近く経った今でも変わっていない。俺は、あの麻耶がこの校舎の中で黙って授業を聞いている所を想像して、吹き出しそうになったけれども、そのまま校庭を突っ切って、靴箱、―――に向かいそうになる足を職員玄関へと向けた。
入って直ぐ近くにある事務室の人たちに妹の忘れ物を届けに来た旨を伝えると、もうすぐで休み時間ですので本人に直接手渡してくださいと言われ、少々手持ち無沙汰になった。10分ほどしてチャイムが鳴ると同時に麻耶はやって来て、まずはありがとうと言って弁当箱を受け取った。
「お母さんが来るのかと思ってた」
「なんか用事があるんだって」
「ふーん、それで暇なお兄ちゃんが来たって訳なんだ」
「暇とはなんだ、暇とは。俺だってこれから、―――」
「はいはい」
と伸び上がって今にも突っかかりそうな俺を制してから、少し後ずさって考え込む様子。なんとなく良くない予感がしたから固まって、
「どうしたんだ、………?」
と聞いた。すると手を打つ代わりに眉をパッと上に吊って、
「お兄ちゃん、ちょっと待っててくれる?」
「?」
「ちょっと回ってくるから、そこに居てね!」
「ちょ、ちょっと、―――」
さて弁当箱ごと廊下の奥に消えた彼女は、それから1分か2分くらい経ってから、職員玄関から入ってきたのであった。
「おまたせ」
「一体どうしたんだ、わざわざそっちから来て」
「折角届けてくれたんだもん。いくらお兄ちゃんだからって、見送らないと、こう、………良心がね、………」
などと胸を抑えて心にも無いことを言う。そして飛び跳ねるように背筋を伸ばして、
「さ、そういうことだから、お兄ちゃんほら、靴履いてよ。これから大学あるんでしょ?」
と、兄である俺を見下ろしながら言った。
この時俺は上り框、麻耶は土間に立っていたから、見下ろすと言ってもまだ顔と顔を突き合わせられていた。が、ストンと降り立った時にはすっかり見上げる形、もう慣れた光景に眉間にシワを寄せていると、その頭の上に手を置いて、
「あれ? さっきまでここに顔があったのに。どこ行ったんだろう、………」
と不思議そうにキョロキョロする。
「うるさい。お前が高すぎるんだ」
「え~、お兄ちゃんが低すぎるんだってば。147って何、女の子じゃん」
「お前こそ178とは何だ。いや、何なんだちくしょう、………」
「何なんだろうねぇ、どうしてお兄ちゃんはお兄ちゃんなのに、こんなに小さいんだろうねぇ」
と、今度は肘を乗せて来たから払い除けた、そのまま歩きだして、
「休み時間終わるぞ」
「大丈夫だよ。次は高杉先生だから、―――お兄ちゃんも知ってるでしょ?」
「知ってるけど、俺はお前のお兄ちゃんなんだから、見過ごしちゃいけないだろ」
わざと「お兄ちゃん」の部分を強く言ってのけると、麻耶は突如として腹を抱えた。
「お、お兄ちゃん、………お兄ちゃん、お兄ちゃん、………お兄ちゃんだって、………くっ、笑っちゃ、………あはははは!」
「………もう、何だよ。早く教室に戻れよ。………はぁ、やっぱり来るんじゃなかった。………」
「あっ、ひどいお兄ちゃん、わたしに餓死しろと?」
余程俺が「お兄ちゃん」を強調したのがツボに入ったと見える、目元を拭って、その屈託ない笑みを浮かべたまま、こっちに駆けてきて、
「ま、可愛いお兄ちゃんに免じて許して差し上げましょう」
と言いつつ俺の手を取る。
「誰が可愛いお兄ちゃんだ」
「だって可愛いんだもん。こんなちっちゃなお手々して、生意気な事ばっかり言うんだもん。お兄ちゃんは可愛いね」
「お前もな」
「えっ、やだ、照れる」
「生意気なところだ!」
そうして俺は、取られた手を取られたまま、引きずられるようにして校門まで麻耶と歩いて行った。やはり休み時間はもう終わりだったらしく、すれ違う生徒たちはみな反対方向に進んでおり、みながみな見慣れぬ来訪者を一瞬間不思議そうな顔で見つめてから、微笑ましい笑みを顔に浮かべつつ通り過ぎる、………俺はそれではっと気がついて、麻耶の手を振りほどこうと何度も藻掻いたけれども、そうすればするほど妹は握った手に力を込めてきて、来た時には一歩のように感じられた校庭が果てしなく広いように感じられた。
「お兄ちゃん、お弁当ありがとね」
「礼はいいから、お兄ちゃんは早くこの手を離してほしいな。お前、力入れすぎで痛いんだよ」
やっとの思いで校門に辿り着いても、俺の手はしっかりと握られたままだった。
「えー、やだ」
「やだじゃありません。………いや、ほんとにお願い、後で何か買ってあげるから、………その、頼むよ。………」
時にチャイムがカーンと鳴って、校庭には俺達2人だけがぽつんと居るようになっていたから、教室という教室から視線を集めているような気がして堪らなかった。麻耶はニッと笑って、
「そんなに必死にならなくてもいいじゃん。お兄ちゃんはほんとに可愛いね」
と力を緩めて、その手で俺の頭を撫で、頬を撫で、顎を撫で、外れかかったマフラーを掛け直す。俺はムッとして何も言わず。ずっと近くなった我が妹の顔を見つめるのみ。
「もっと可愛い柄のを買えばよかったのに。お兄ちゃんはこんな大人っぽいの似合わないよ。………よし、できた!」
「その時一番気に入ったのがこれだったんだ。多少似合わなくても別にいいだろ」
「今度わたしのを貸してあげよっか」
「いいから、いいから、もう早く授業に行けって」
と、無理矢理校舎の方へ押しやると、
「もう、可愛いお兄ちゃんと一緒に居たい妹の気持ちを分かってくれてもいいじゃんかー」
と文句を言つつも、しぶしぶ麻耶は踵を返して手を振った。
「ばいばい、お兄ちゃん」
「ああ、ばいばい」
と、俺も踵を返した時だった、
「そうだ、お兄ちゃん、―――」
振り返ると、麻耶は無邪気な顔をこちらに見せていた。
「次は制服で来てみてよ。―――」
聞いて愕然とした。未だに頭にこびり付いて離れないその言葉、彼女からしてみれば単なる思いつきだったのに、………と思っても今は遅い。この時なぜか俺は、制服を着て、妹の通うこの学校を訪れたくて堪らなかった。
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kkagneta2 · 4 years
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ボツ2
おっぱい、大食い。最後まで書いたけど胸糞なのでここに途中まで投稿してお蔵入り予定。
時: 午前8時05分
所: ○○中学正門前
身長: 標準的。155センチ程度。
衣服: 〇〇中学指定の制服。黒のセーラー。リボンの色より二年生と断定。
年齢: 中学二年生なので14、5。
持ち物: 右手に〇〇中学指定の鞄。左手にスマホを所持。
同行者: 友人1名。興味無しのため略。
背格好: やや細身か。冬服のため殆ど見えなかったが、スカートから覗く脚、そして周りの生徒と見比べるに、肩や腕も細いと思われる。腰回りもほっそりとしていると感じた。正確には引き締まっていると言うべきか。
顔: いと凛々し。小顔。頬は真白く、唇には薄い色付き。笑うと凄まじく整った歯が見え隠れする。この時髪をかき上げ血の色の鮮やかな耳が露出する。
髪: ボブ系統。ほぼストレートだが肩のあたりで丸くなる。色は黒、艶あり。
胸: 推定バスト98センチ、推定アンダーバスト62センチのK カップ。立ち止まることは無かったが、姿勢が良いのでほぼ正確かと思われる。しっかりとブラジャーに支えられていて、それほど揺れず。体格的に胸元が突出している印象を受ける。隣の友人と比べるとなお顕著である。制服のサイズがあっておらず、リボンが上を向き、裾が胸のために浮いていた。そのため、始終胸下に手を当てていた。揺れないのもそのせいであろう。制服と言えば、胸を無理に押し込んだかのように皺が伸び、脇下の縫い目が傷んでおり、肩甲骨の辺りにはブラジャーのホックが浮き出ている。されば制服は入学時に購入したものと思われ、胸は彼女が入学してから大きくなった可能性が大である。元来彼女のような肉体には脂肪が付きづらいはずなのだが、一年と半年を以てK カップにまで成長を遂げたところを見ると、期待はまずまずと言ったところか。要経過観察。名前は○○。胸ポケットに入れてあったボールペンが落ちたので拾ってあげたところ、「ありがとうございます」と丁寧にお辞儀をされる。
  時: 午前10時28分
所: 〇〇駅構内
身長: 高い。170センチ強
衣服: 薄く色味がかった白、つまりクリーム色のファー付きコート。内には簡素なグリーンのニットを羽織る。首元に赤のマフラー。
年齢: 22、3。休み期間中の大学生かと思われる。
持ち物: キャリーバッグ。手提げのバッグ��
同行者: 友人2名。先輩1名。何れも女性。貧。
背格好: 体格が良いと言った他には特に無し。腕も見えず、脚も見えず、首も見えず。肩幅の広さ、腰つきの良さから水泳を営んでいると推定される。
顔: その背に似合わず童顔。人懐っこい。マフラーに顔を埋め、視線を下げ、常に同行者に向かって微笑む。愛嬌よし。
髪: ショート。これより水泳を営んでいると断定。色は茶、染め上げてはいるがつやつやと輝く。
胸: 推定バスト129センチ、推定アンダーバスト75センチのR カップ。冬である上に、胸元が目立たないよう全身を地味に作っており、某コーヒーショップにてコートを取っても、無地のニットのために膨らみが分かりづらかった。さらに、胸の落ち具合から小さく見せるブラジャーを着用しているかもしれない。そのため、推定カップはR カップより3、4カップは大きい可能性がある。コートを取った際、胸元が一層膨らんだように感じられた。机の上に胸が乗って、本人は気にしていないか、もしくは気づいていなかったが、柔らかさは至高のようである。他の男性客の腕が肩にぶつかって、驚いた際に胸で食べかけのドーナツを落とす。以降会話は彼女の胸に話題が移ったらしく、左右に居た友人二名が所構わず触れるようになり、両手を使って片胸片胸を突っついたり、揺らしたりして遊ぶ。「机まで揺れる」と言う声が聞こえてくる。「ちょっとやめてよ」と言いつつ顔は相変わらず微笑むでいる。しばらくして四人とも席を立って、地下鉄筋の方へ消えていく。童顔ゆえに顔より大きい胸は驚くに値するが、体格からして胸元に自然に収まっているのを見ると、やはりなるべくしてなったとしか思えず。
  時: 午後00時14分
所: 〇〇市〇〇にあるスーパー前
身長: 低い。150センチに満たない。
衣服: 所謂マタニティウェア。ゆったりとした紺のワンピースに濃い灰色のポンチョ。
年齢: 26、7
持ち物: 買い物袋。ベビーカー。
同行者: ベビーカーの中に赤ん坊が一人。女の子である。
背格好: 小柄。寸胴で、かつ脚も長くはあらず、そして手足が細く、脂肪が程よくついている。つまりは未成熟な体つき。身長以上に小さく見える。
顔: かなりの童顔。着るものが着るものであれば高校生にも見える。可愛いがやつれていて、目の下に隈あり。子供が可愛くて仕方ないのか、そちらを見ては微笑む。
髪: セミロングを後ろで一束。中々の癖毛であるかと思われるが、目のやつれ具合からして、もしかしたら本当はもっと綺麗なのかもしれない。髪色は黒。可愛らし。
胸: 推定バスト110センチ、推定アンダーバスト58センチのQ カップ。体格が小柄であるのでQ カップよりもずっと大きく見える。というより迫力がある。私が訪れた時は買い物袋をベビーカーに吊っている最中であった。ほどなくして赤ん坊が泣き出したので、胸に抱えてあやしたが、赤ん坊は泣き止まず。片胸と赤ん坊の大きさはほぼ同じくらいであっただろう。また、胸と赤ん坊とで腕は目一杯伸ばされていた。胸に抱いて「よしよし」と揺らすのはしばらく続いたが、赤ん坊が泣き止むことはなかった。そこで、座る場所を求めて公園へと向かおうと、一度ベビーカーへと戻そうとしたのであるが、一度胸に食らいついた赤ん坊は離さない。「さっきも飲んだじゃない」とため息をついて片手で危なっかしくベビーカーを引こうとする。「押しましょうか」と接近してみたところ、意外にもあっさりと「よろしくおねがいします」と言って、私��ベビーカーを預けた。中には玩具が数種類あった。道から離れた日差しの良いベンチに腰掛け、ケープを取り出して肩にかけ、赤ん坊をその中へ入れる。それでもしばらくは駄々をこねていたであったが、母親が甘い声をかけているうちに大人しくなった。私が「お腹が空いてたんですね」と笑うと、「困ったことに、食いしん坊なんです。女の子なのに」と笑い返して赤ん坊をあやす。話を聞いていると、母親の母乳でなければ我慢がならないと言う。授乳が終わってケープを外した時、子供はすやすやと眠りについていた。「胸が大きくなりすぎて、上手く抱っこできなかったんです。大変助かりました。ありがとうございます」と分かれたが、その言葉を考えるに、妊娠してから一気に胸が大きくなったのであろう。授乳期を終えたときの反動が恐ろしい。むしろベビーカーの中に居た赤ん坊の方に興味を唆られる。
  時: 午後01時47分
所: 〇〇市市営の図書館。某書架。
身長: 標準的。158センチ程度。
衣服: 白のブラウスにブラウンのカーディガン。
年齢: 30前後か。
持ち物: 白のタブレット
同行者: 無し
背格好: 小太りである。全体的に肉がふっくらとついている。けれども目を煩わすような太り方ではない。豊かである。ただし、著しく尻が大きい。
顔: 目尻は美しいが、柔らかな頬に愛嬌があって、どちらかと言えば可愛らしい方の顔立ち。鼻がやや低く、口元はリップクリームで赤々と照りを帯びている。色白とは言えないが、光の加減かと思われる。眼鏡をかけており、リムの色は大人しい赤。非常によく似合う。
髪: ストレートなミディアムヘア。髪色は黒であるが、不思議なことに眼鏡の赤色とよく合い、前髪の垂れかかるのが美しい。
備考: 司書である。
胸: 推定バスト128センチ、推定アンダーバスト81センチのO カップ。本日の夜のお供にと本を物色中に、書架にて本を正していた。胸が喉の下辺りから流麗な曲線を描いて20センチほど突き出ているばかりでなく、縦にも大きく膨れており、体積としてはP カップ、Q カップ相当かもしれない。頭一つ分背が低いので上からも望めたのであるが、カーディガンで見え隠れする上部のボタンが取れかけていた。本を取る度に胸が突っかかって煩わしいのか、肩を揺すって胸の位置を直す。本棚に胸が当たるのは当然で、文庫本などはその上に乗せる。一つの書架を片付け終わった辺りで、適当に思いついたジャンルを訪ねて接近すると、如何にも人の良さそうな顔で案内をしてくれた。脚を踏み出す度に甲高い音が鳴るのは、恐らくブラジャーのせいかと思われる。歩き方が大胆で胸が揺れるのである。途中、階段を下りなければならないところでは、一層音が大きくなって、臍のあたりで抱えていた本を胸に押し付けて誤魔化していた。そのため、ブラジャーのストラップがズレたかと見え、書棚の方へ目を向けている隙に、大胆にも胸を持ち上げて直していた。なまめかしい人ではあるが、年が年なので望みは無い。
  時: 午後02時22分
所: 〇〇小学校校庭
身長: 140センチ前後か
衣服: 体操服
年齢: 10、11歳
持ち物: 特に無し
同行者: 友人数名
背格好: ほっそりとしなやかである。幼い。腕も脚もまだ少女特有の肉が付いている。今日見た中で最も昔の「彼女」に似ている体つきであったが、この女子児童は単に骨格が華奢なだけで、痩せ細った体ではない。健康的である。脚が長く、短足な男子の隣に立つと、股下が彼の腰と同位置に来る。
顔: あどけなさは言うまでもないが、目元口元共に上品。笑う時もクスクスと擽るような、品の良い笑い方をする。眼鏡はテンプルに赤色が混じった、基本色黒のアンダーリム。そのせいで甚だ可愛らしく見えるが、本来は甚く聡い顔立ちをしているかと推定される。が、全般的に可愛らしい。
髪: 腰まで届く黒髪。ほぼストレートだが若干の癖あり。また、若干茶色がかっているように見えた。髪の質がかなり良く、時折肩にかかったのを払う度に、雪のように舞う。
胸: 推定バスト81センチ、推定アンダーバスト48センチのI カップ。体育の授業中のことである。男子は球技を、女子はマラソンでもやらされていたのか、校庭を走っていた。身体自体は小柄であるから胸はそう大きくはないのだが、無邪気に走るから激しく揺れる。揺れるごとに体操服が捲れ上がって腹部が見えそうである。明らかに胸元だけサイズが合っていない。何度か裾を直しながら走った後、耐えかねて胸元を押さえつけていたのであるが、いよいよ先生の元へ駆け寄って校舎内へ入った。そして出てきてから再び走り初めたけれども、その後の胸の揺れは一層激しくなっていた。ブラジャーに何かあったのだろうと思われる。顔には余裕がありながら、走る速さがこれまでとは段違いに遅く、これまで一緒に走ってきた友人に追い抜かれる。結局、彼女は胸を抑えながら、周回遅れで走りを終えた。しかし可哀想なことに、息を整えていると友人に後ろから手で掬われて、そのまま揉みしだかれる。小学生の手には余る大きさである。寄せあげて、掬い上げて、体操服をしわくちゃにしながら堪能する。私にはそう見えただけで、実際にはじゃれついていただけであろうが、指が深く沈み込んでいる様は男子児童の視線を寄せるのに足る。なされるがままにされていた彼女は、そのうちに顔を真っ赤にして何かを言いつつ手をはたき落とし「今はダメ」と言い、以降はすっかり両腕を胸元で組んで、猫背になって拗ねてしまった。この生徒は要観察である。下校時に再び見えてみれば、制服下の胸はブラジャーは着けていないながら見事な球形を為している。先程の光景から張りも柔らかさも極上のものと想像される。名前は○○。名札の色から小学5年生だと断定。ここ一ヶ月の中で最も期待すべき逸材。
  時: 午後05時03分
所: 〇〇市〇〇町〇〇にある某コンビニ
身長: やや高い。163センチほど。
衣服: ○○の制服。
年齢: 17歳
持ち物: 特に書くべきにあらず
同行者: 無し
背格好: 標準的だがやや痩せ型。恐らくは着痩せするタイプである。一見してただの女子高生の体であるが、肩、腰つきともに十分な量の肉量がある。その代わり腕は細い。右手に絆創膏。
顔: あどけない。非常に可愛らしい顔。人柄の良さが顔と表情に出ていると言ったところ。眉は優しく、目はぱっちり。常に口が緩んで、白い頬に赤みが差す。が、どこか儚げである。分厚くない唇と優しい目が原因か。
髪: 後ろに一束したミディアムヘア。一種の清潔さを表すと共に、若干の田舎臭さあり。後ろ髪をまとめて一束にしているので、うなじから首元へかけての白い肌が露出。これが殊に綺麗であった。
備考: 高校生アルバイター
胸: 推定バスト118センチ、推定アンダーバスト68センチのP カップ。服が腰元で閉じられているので、高さ24センチほどの見事な山が形成されている。そのため余計に大きく感じられる。手を前で組む癖があるのか胸が二の腕によって盛り上がって、さらに大きく見える。レジ打ちを担当していた。面倒くさい支払い方法を聞いて接近。レジにて紙を用いて説明してくれるのであるが、胸元が邪魔で始終押さえつけながらでの説明となり、体を斜めにしての説明となり、終いには胸の先での説明となる。ブラジャーの跡あり。よほどカップが分厚いのか胸と下着との境目がはっきりと浮き出ている。この大きさでこのタイプのブラジャーは、1メーカーの1ブランドしかないため、懐かしさに浸る。大体分かりました、では後日よろしくおねがいしますと言うと、にこやかにありがとうございましたと言う。腕の細さと胸の大きさとが全くもって合っていない。腰つきとは大方合っている。顔があどけないところから、胸に関しては期待して良いのではないだろうか? それを知るには彼女の中学時代、ひいては小学時代を知る必要があるが、そこまで熱心に入れ込めるほど、魅力的ではない。
   本日も予が真に求むる者居らず、―――と最後に付け足した日記帳を、俺は俺が恐れを抱くまでに叫び声を上げながら床へと叩きつけ、足で幾度も踏みつけ、拾って壁に殴りつけ、力の限り二つに引き裂いて、背表紙だけになったそれをゴミ箱へ投げつけた。八畳の部屋の隅にある机の下に蹲り、自分の頭をその柱に打ちつけ、顎を気絶寸前まで殴り、彼女の残した下着、―――ブラジャーに顔を埋めて髪を掻き毟る。手元に残りたる最後の一枚の匂いに全身の力を抜かされて、一時は平静を取り戻すが、真暗な部屋に散乱した日記帳の残骸が肌へと触れるや、彼女の匂いは途端に、内蔵という内蔵を酸で溶かすが如く、血管という血管に煮えたぎった湯を巡らせるが如く、俺の体を蝕んでくる。衝動的にブラジャーから手を離して、壁に頭を、時折本当に気絶するまで、何度も何度も何度も打ちつけ、忌々しい日記帳を踏みしめて、机の上に置いてあるナイフを手にとる。以前は右足の脹脛(ふくらはぎ)を数え始めて26回切りつけた。今日は���こを虐めようかなどと考えていると、彼女の残したブラジャーが目につく。一転して俺のこころは、天にのぼるかのようにうっとりと、くもをただよっているかのようにふわふわと、あたたかく、はれやかになっていく。―――
―――あゝ、いいきもちだ。彼女にはさまれたときもこのような感じであった。俺の体は彼女の巨大な胸が作り出す谷間の中でもみくちゃにされ、手足さえ動かせないまま、顔だけが彼女の目を見据える。ガリガリに痩せ細って頬骨が浮き出てはいるが、元来が美しい顔立ちであるから、俺の目の前には確かにいつもと変わらない彼女が居る。我儘で、可愛くて、薄幸で、目立ちたがり屋で、その癖恥ずかしがり屋で、内気で、卑屈で、でも負けん気が強くて、甘えん坊で、癇癪持ちで、いつもいつもいつも俺の手を煩わせる。冷え切った手で俺の頬を撫でても、少しも気持ちよくは無い、この胸、この胸の谷間が冬の夜に丁度良いのだ。この熱い位に火照った肉の塊が、俺を天に昇らせるかの如き高揚感を與えるのだ。
だがそれは後年の事。床に広がったブラジャーを拾って、ベッド脇のランプの燈を点けて、ぶらぶらと下へと垂れるカップの布をじっくりと眺める。華奢で肉のつかない彼女のブラジャーだったのだから、サイドボーンからサイドボーンまでの距離は30センチ程もあれば良く、カップの幅も中指より少し長い程度の長さしかない。が、その深さと広さはそこらで見かけるブラジャーとは一線を画す。手を入れれば腕が消え、頭を入れればもう一つ分は余裕がある。記念すべき「初ブラ」だった。
それが何たることか! 今日、いや昨日、いや一昨日、いやこの一ヶ月、いやこの一年間、いや彼女が居なくなってから実に6年もの間、このブラジャーが合う女性には出会うどころか、見かけることも出来ないではないか。細ければサイズが足りず、サイズが足りればぶくぶくと肥え、年増の乳房では張りが足らず、ならばと小学生の後を付け回してはお巡りに声をかけられ、近所中の中高にて要注意人物の名をほしいままにし、飽きる迄北から南の女という女を見ても、彼女のような体格美貌の持ち主は居なかった。風俗嬢へすら肩入れをし、ネットで調子に乗る女どもにも媚びへつらった。
恭しくブラジャーを箱へと収めて床に散らばりたる日記帳の屑を見るや、またしても怒りの感情が迸ってくる。今日は左太腿の上をざっくりとやってやろうか。紙屑をさらに歯で引きちぎり、喉に流し込みながらそう思ったけれども、指を切る程度に留め、代わりに床を突き抜ける位力を入れて、硬い板の上に差す。今日書いた文面はその上にあった。
「なんで、なんで俺はあんなことを、……」
気がつけば奇声を上げつつ髪の毛を毟り取っていた。時計を見れば午後11時28分。点けっぱなしにしておいたパソコンの画面にはbroadcasting soon! という文字が浮かび上がって居る。忘れた訳では無かったが、その英単語二文字を見るだけで、怒りも何も今日の女どもも忘れ、急に血の巡りが頭から下半身へと下り、呼吸が激しくなる。まるで彼女を前にした時のようである。急いで駆けつけて音量を最大限まで上げて、画面に食い入ると、直にパッとある部屋が映し出され、俺の呼吸はさらに激しくなった。
部屋はここと同じ八畳ほど、ベッドが一台、机が一つ、………のみ。
机の上にはありきたりな文房具と、食器類が一式、それに錠剤がいくつか。ベッドの上には質の良さそうな寝具、端に一枚のショーツ、その横に犬用のリードが一つ。これはこれから現れる者が、謂わばご主人さまに可愛がられるために着けている首輪につながっているのである。そしてその横に、あゝ、彼女がまだ傍に居ればぜひこの手で着けて差し上げたい巨大なブラジャーが一つ、………。ダブルベッドをたった一枚で埋め尽くすほど大きく、分厚く、ストラップは太く、今は見えないが12段のホックがあり、2週間前から着けているらしいけれどもカップは痛み、刺繍は掠れ、ストラップは撚れ、もう何ヶ月も着たかのようである。
しばらく見えているのはそれだけだったが、程なくしてブラジャーが画面外へ消えて行き、ショーツが消えて行きして、ついに放送主が現れる。病的なまでに痩せ細って骨の浮き出る肩、肘、手首、足首、膝、太腿、それに反して美しくしなやかな指が見える。顔は残念ながら白い仮面で見えないが、見えたところで一瞬である。すぐさま画面の殆どは、中央に縦線の入った肌色の物体に埋められるのだから。その肌色の物体は彼女の胸元から生え、大きく前へ、横へと広がりながら腰元を覆い、開けっ広げになった脚の間を通って、床へとゆるやかにの垂れており、ベッドに腰掛けた主の、脚の一部分と、肩と、首を除いて、体の殆どを隠してしまっている。床に垂れた部分は、部分というにはおかしなくらい床に広がる。浮き出た静脈は仄かに青々として、見る者によっては不快を感ずるだろう。
言うまでもなく、女性の乳房である。主は何も言わずにただそこに佇むのみで、何も行動をしない。仮面を着けた顔も、たまに意外と艶のある黒髪が揺れるだけで動かないのであるが、極稀に乳房を抑える仕草をして、愛おしそうに撫でることがある。けれどもそれは本当に極稀で、一回の配信につき一度の頻度でしかなく、殆どの場合は、一時間もしたらベッドに倒れ込んで寝てしまうのである。
この配信を見つけてからというもの、俺の日中の行動は、その寝姿を見るための暇つぶしでしか無い。彼女そっくりな体つきに、彼女そっくりな胸の大きさ、―――しかもこちらの方が大きいかもしれない上に、彼女そっくりな寝相、………見れば見るほど彼女に似て来て、また奇声を発しそうになる。無言で、手元にあった本の背表紙で頭を打ちつけて落ち着きを取り戻し、画面を見ると、ゴロンとベッドから落ちてしまったその女の姿。彼女もよくやった寝相の悪さに、途端懐かしさが込み上げて来て、
「あゝ、こら、叶(かなえ)、寝るんだったらベッドの上で寝ないと、……。手伝ってやるからさっさと起きなさい」
と頬を叩いたつもりだが、空を切るのみで、消息不明となっている者の名前を呼んだだけ、羨ましさと虚しさが募ってしまった。
   幼馴染の叶が居なくなってから早6年、片時も忘れた事はないのであるが、隣に住んでいながら出会いは意外と遅いものであった。当時俺は11歳の小学5年生、物凄く寒かったのを思えば冬から春前であったろうか、俺の家は閑静な住宅街の中に突如として現れる豪邸で、建物よりも庭に意匠を凝らしたいという父上の意思で、洋館が一つと離れが一つ庭に面する形で建てられ、俺はその離れを子供部屋として与えられていた。球状の天井を持つその部屋は、本当に子供のために閉ざされた世界かのようだった。庭の垣根が高く、木に埋もれる形で建っているのであるから、内は兎も角、外からだとそもそも離れがあることすら分からない。音も完全に防音されていて、車が通りかかるのすら、微妙な振動でようやく分かるくらい外界から切り離されているのである。いつも学校から帰ると、俺はその部屋で母上と共に話をしたり、ごっこ遊びをしたり、宿題をしたりする。食事もそこで取って、風呂には本館の方へ向かう必要はあるけれども、学校に居る7、8時間を除けば一日の殆どをそこで過ごしていた。だから、近隣の様子なぞ目については居なかったし、そもそも父上から関わるなというお達しがあったのだから、あえて触れるわけにはいかない。学校も、近くにある公立校へは通わずに、ずっと私立の学校へ入れられたのだから、関わろうにも、友人と言える者も知り合いと言える者も、誰も居ないのである。
そんな生活の中でも、よく離れの2階にある窓から顔を突き出して、燦々と輝く陽に照らされて輝く街並みを眺めたものだった。今はすっかりしなくなってしまったけれども、木々の合間合間から見える街並みは殊に美しい。一家の住んでいる住宅街というのが、高台に建っているので、街並みとは言ってもずっと遠くまで、―――遥かその先にある海までも見えるのである。
そ���、やっぱり冬のことだ、あのしっとりとした美しさは夏や秋には無い。いつもどおり、俺はうっとりと椅子に凭れかかって街並みを眺めていたのであるが、ふとした瞬間から、女の子の声で、
「ねぇ、ねぇ、ねぇってば」
と誰かを呼びかける声がしきりに聞こえてきていたのだけれども、それが少し遠くから聞こえてくるものだから、まさか自分が呼ばれているとは思わず、無視していると、
「ねぇ!」
と一層激しい声が聞こえてくる。下を見てみると、同年代らしい女の子が、彼女の家の敷地内からこちらを不満そうに見つめてきている。
「僕ですか?」
「そう! 君!」
と満面の笑みを浮かべる。
この女の子が叶であることは言及する必要も無いかと思うが、なんと見窄らしい子だっただろう! 着ている物と言えば、姉のお下がりのよれよれになった召し物であったし、足元には汚らしいサンダルを履いていたし、髪は何らの手入れもされていなかったし、いや、そんな彼女の姿よりも、その家の古さ、ボロさ、貧しさは余りにも憐れである。流石に木造建築では無いものの、築20年や30年は越えていそうな家の壁は、すっかりと黒ずんで蜘蛛の巣が蔓延っており、屋根は黒いのが傷んで白くトゲトゲとしているし、庭? にある物干し竿は弓なりに曲がってしまっていて、痛みに傷んだ服やタオルが干されている。全体的に暗くて、不衛生で、手に触れるのも汚らわしい。広さ大きさは普通の一軒家程度だけれども、物がごちゃごちゃと置かれて居るのでかなり狭苦しく感じられ、俺は父上がどうして近隣の者と関わるなと言ったのか、なんとなく理解したのだった。目が合った上に、反応してしまったからには相手をしなくちゃいけないか、でも、できるだけ早く切り上げて本の続きでも読もう。―――俺は一瞬そう思ったが、ようようそう思えば思うほど、彼女に興味を抱いてしまい、小っ恥ずかしい感情がしきりに俺の心を唆していた。
それは一目惚れにも近い感情だっただろうと思う。というもの、その時の叶の外見は、着ているものが着ているものだけに見窄らしく見えただけで、顔立ちは悪くないどころかクラスに居る女子どもなぞよりずっと可愛いかった。いや、俺がそう感じただけで、実際は同じくらいかもしれないが、普段お嬢様と言うべき女の子に囲まれていた俺にとっては、ああいう儚い趣のある顔は、一種の新鮮さがあって、非常に魅力的に見える。どこか卑屈で、どこか苦心があって、しかしそれを押し隠すが如く笑う、………そういう健気な感じが俺の心を打ったと思って良い。また、体つきも普段見るお嬢様たちとは大きく変わっていた。彼女たちは美味しいものを美味しく頂いて、線の細い中にもふっくらとした柔らかさがあるのだが、叶はそうではない。栄養失調からの病気じみた痩せ方をしていて、ただ線が細いだけ、ただ貧相なだけで、腕や脚などは子供の俺が叩いても折れそうなほどに肉が付いておらず、手や足先は、肌が白いがために骨がそのまま見えているかのようである。兎に角貧相である。が、彼女にはただ一点、不自然なほど脂肪が蓄えられた箇所があった。
それはもちろん胸部である。叶は姉から譲り受けた服を着ているがために、袖や裾はだいぶ余らしていたのであるが、胸元だけはピンと張って、乳房と乳房の間には皺が出来ていて、むしろサイズが足りないように見える。恐らく裾を無理やり下に引っ張って、胸を押し込めたのか、下はダボダボと垂れているけれども、胸の上は変にきっちりしている。体の前で手をもじもじさせつつ、楽しげに体を揺らすので、胸があっちへ行ったり、こっちへ行ったりする。俺は最初、胸に詰め物をしているのであろうかと思われた。そう言えば、一昨日くらいにクラスの女子が、私の姉さんはこんなの! と言いつつ、体操服の胸元にソフトボールを入れてはしゃいでいたが、その姿がちょうどこの時の叶くらいであったから、自然にやっぱりこの年の女子は大きな胸に憧れるものなのだと納得したのである。だが、叶の胸は変に柔らかそうに見える。いや、それだけでなく、ソフトボールを入れたぐらいでは脇のあたりが空虚になって、はっきりと入れ物だと心づくが、彼女の体に描かれる、首元から始まって脇を通り、へその上部で終りを迎える曲線は、ひどく滑らかである。手が当たればそこを中心に丸く凹み、屈んで裾を払おうとすれば重そうに下で揺れる。
俺が女性の乳房なるものに目を奪われた初めての瞬間である。
それは物心ついた少年の心には余りにも蠱惑的だった。余りにも蠱惑的過ぎて、俺の体には背中をバットで殴られたような衝撃が走り、手が震え、肩が強張り、妙に臀部の辺りに力が入る。頭の中は真っ白で、少しずつ顔と耳たぶが赤くなっていくのが分かる。途端に彼女の胸から目が離せなくなり、じっと見るのはダメだと思って視線を上げると、さっきとは打って変わって潤いのある目がこちらを見てきている。微笑んでくる。その瞬間、徐々に赤くなって行っていた顔に、血が一気に上る感覚がし、また視線を下げると、そこにはこれまで見たことがない程の大きさの胸。胸。胸。………あゝ、なんと魅力的だったことか。
「こんにちは」
「うん、こんにちは。今日は寒いね」
彼女に挨拶されたので、俺はなんとか声を出したのだった。
「私は全然。むしろあったかいくらい」
「元気だなぁ」
「君が元気ないだけじゃないの」
「熱は無いんだけどね」
「ふふ」
と彼女は笑って、
「君どのクラスの子?」
「いや、たぶん知らないと思う。この辺の学校には通ってないから」
「どおりで学校じゃ、見ないと思った。何年生なの?」
彼女がこの時、俺を年下だと思っていたことは笑止。実際には同い年である。
「へぇ、あっちの学校はどうなの?」
「どうもこうもないよ。たぶん雰囲気なんかは変わんないと思う」
「そうなんだ」
と、そこでトラックが道端を通ったために、会話が区切れてしまって、早くも別れの雰囲気となった。
「ねぇ」
先に声をかけたのは彼女だった。
「うん?」
「またお話してくれない?」
少年はしばし悩んだ。近くの者とは関わるなと言う父上の言葉が頭にちらついて、それが殆ど彼女の家庭とは関わるなとの意味であることに、今更ながら気がついたのであったが、目の前に居る少女が目をうるませて、希望も無さげに手をもじもじと弄っているのを見ると、彼女の学校での扱われ方が目に見えてしまって仕方がなかった。そっと目を外すと、隣に住んでいなければ、多分一生関わること無く一生を終えるであろう貧しい家が目に飛び込んできて、だとすれば、良い育ちはしていないに違いはあるまい。だが、今言葉を交わした感じからすれば、意外にも言葉遣いはぞんざいではなく、笑い方もおっとりとしている。それに何より、自分がここまで心臓の鼓動がうるさいと思ったことはないのである。少年の心はこの時、「またお話したい」などというレベルではなく、彼女に近づきたい気持ちでいっぱいであった。近づいて、もっともっとお話をして、その体に触れて、夜のひと時をこのメルヘンチックな我が部屋で過ごせたら、どんなに素敵だろう。この窓から夜景を見て、手を取って、顔を突き合わして、行く行くは唇を重ねる、………あゝ、この部屋だけじゃない、綺麗に見繕って、二人で遊びに行くのも良い、いや、もはや二人きりでその場に居るだけでも僕の心は満足しそうだ。………実際にはこんなに沢山ことを考えた訳ではなかったけれども、しかしそういうことが、父上の言いつけから少年をすっかり遮断してしまった。つまりは、彼女の言葉に頷いたのである。
「もちろん。こうやって顔だしてたら、また話しかけてよ」
「ふふ、ありがとう。またね」
「またね。―――」
これが俺と叶の馴れ初めなのだが、それから俺たちは休みの日になると、窓を通じて10分20分もしない会話を楽しんだ。尤もそれは俺が父上と母上を怖がって、勉強しなくちゃいけないだとか、習い事があるとか、そういう理由をつけて早々に切り上げるからではあるけれども、もし何の後ろめたさも無かったら日が暮れても喋りあったに違いない。
「えー、……もう? 私はもっとお話してたい!」
「ごめんね。明日もこうやって外を眺めてあげるからさ」
その言葉に嘘はなく、俺は休日になれば、堪えきれない楽しみから朝食を終え、両親を煙に巻くや窓から顔を突き出していた。すると叶はいつも直ぐに家から出てきて、
「おはよう」
と痩せ細った顔に笑みを浮かべる。彼女もまた、楽しみで楽しみで仕方ないと言った風采なのである。
「おはよう。今日はいつにもまして早いね」
「ふふ」
会話の内容はありきたりなこと、―――例えば学校のこと、家のこと(彼女はあまり話したがらなかったが)、近くにある店のこと、近くにある交番がどうのこうのということ、近くにある家のおばさんが変人なことなど、強いて言えば、近所の人たちに関する話題が多かった。というのも、この住宅街に住んでいながら、今まで何も知らなかったので、俺の方からよく聞いたのが理由ではあるけれども、話に関係ないから述べる必要はあるまい。
それよりも、あんまり叶が早く出てくるので、いつのことだったか、聞いてみたことがあった。すると、彼女は心底意地の悪い笑顔で、
「私の部屋から丸見えなんだもん。そんなに楽しみ?」
と言うので、無性に恥ずかしさが込み上げてきたのは覚えている。どう返したのか忘れたが、その後の彼女の笑う様子が、強烈に頭に残っているのを考慮すれば、さらに恥ずかしい言い訳を放ったのは確かである。………
そんなある日のことであった。確か、叶と出会って一ヶ月経った日だったように思う。何でも学校が春の休み期間に入ったために、俺達は毎日顔を合わせていたのであるから多分そうで、非常に小っ恥ずかしい日々を送っていたのであるが、この日は俺しか俺の家には居ないのであった。それも朝一から深夜まで、何故だったのかは忘れてしまったが、両親も居なければ、ハウスキーパーも、確実に居ないのである。然れば初恋に目の暗んだ少年が悪巧みをするのも当然であろう。つまり俺はこの日、叶をこのメルヘンチックな離れに招待しようとしていたのである。
一種の期待を胸に抱きながら、いつもどおり窓から顔を突き出して、今や見慣れてしまった貧しい家の壁に視線を沿わせては、深呼吸で荒れそうになる息を整えようとする。一見、「いつもどおり」の光景だけれども、この時の俺はどうしても、初めての彼女をデートに誘うような心地よい緊張感ではない、恐ろしい罪悪感で押しつぶされそうだった。別に子供が同級生の女の子を連れてくることなど、親からしたら微笑ましい以外何者でもないかもしれない。が、これから呼ぶのは、父上が関わるなと言った、隣家の貧しい娘なのであるから、どうしても後々バレた時の事を考えると、喉が渇いて仕方ないのである。―――出来れば叶が今日に限って出てきてくれなければ、なんて思っても、それはそれで淋しくて死ぬ。まぁ、期待と緊張と罪悪感でいっぱいいっぱいだった少年の頭では、上手い具合に言い訳を考えることすら出来なかったのである。
「おはよう」
そうこうするうちに、いつの間にか外に出てきていた叶が声をかけてきた。一ヶ月のうちに、さらに胸が大きくなったのか、お下がりの服の袖はさらに長くなり、………というのは、服のサイズを大きくしないと胸が入らないからで、その肝心の胸の膨らみは今やバレーボール大に近くなりつつある。
で、俺は焦ることは何もないのに、挨拶を返すこともせずに誘うことにしたのであった。
「ねぇ」
「うん?」
「きょ、今日、僕の家にはだ、だれも居ないんだけど、………」
「え? うん、そうなの」
それから俺が叶を誘う言葉を出したのは、しばらくしてのことだったが、兎に角俺は彼女を頷かせて門の前まで来させることに成功して、庭を駆けている時に鳴った呼び鈴にギョッとしつつ、正門を開けると、さっきまでその気になっていた顔が、妙に神妙なので聞いてみると、
「なんか急に入って良いのか分からなくなっちゃった」
ともじもじしながら言う。それは引け目を感じると言うべき恥であることは言うまでもないが、一度勢いづいた少年にはそれが分からず、不思議な顔をするだけであった。それよりも少年は歓喜の渦に心臓を打たせており、今日という今日を記憶に焼き付けようと必死になっていた。というのは、普段遠目から見下ろすだけであった少女が目の前に現れたからではあるけれども、その少女の姿というのが、想像よりもずっと可愛いような気がしただけでなく、意外と背丈がひょろ高いことや、意外と服は小綺麗に整えてあることや、手も脚も、痩せ細った中にも一種の妖艶さが滲み出ていることなど、様々な発見をしたからであった。特に、胸元の膨らみにはただただ威圧されるばかり。大きさは想像通りだったものの、いざ目の前に来られると迫力が段違い。試しに顔を近づけてこっそりと大きさを比べて見ると、自分の頭よりも大きいような感じがし、隣に並んでみると、彼女の胸元にはこんな大きな乳房が生えているのかと驚かれる。
「ちょっと、どうしたの」
と言われてハッとなって、叶の手を引きながら広大な庭を歩き始めたが、少年の目はやはり一歩一歩ふるふると揺れる彼女の乳房に釘付けであった。
庭の様子は今後必要ないから述べないが、一方はお坊ちゃん、一方は女中にもならない卑しい少女が手を取り合いながら、花々の芽の萌ゆる庭園を歩く様子は、或いは美しさがあるかもしれない。
離れについて、「や、やっぱり私帰るね」と言い出す叶を無理に押し込んで、鍵をかけると、一気に体中の力が抜けて行くような気がした。何となく庭を歩いているうちは、誰かに見られているかのようで、気が気でなかったのに、今となっては何と簡単なことだったであろう。とうとう成功した、成功してしまったのである、叶を一目見た瞬間に思い描いていた夢が、一つ叶ったのみならず、この心の底から沸き起こる高揚感はなんだろうか。期待? それとも単に興奮しているだけ? いや、恐らくは彼女が隣に居ること、手を触れようとすれば触れられる位置に居ること、つまり、彼女に近づいたという事実が、嬉しくて嬉しくて仕方がないのだ。そしてそれが、自分の住処で起こっている、………俺は多分この時気持ち悪いくらいに笑っていたように思ふ。頭は冷静に叶をもてなしているつもりでも、行動の一つ一つに抜けている箇所が、どうしても出てしまって、土足のまま上がろうとしたり、段差に足をひっかけて転けそうになったり、お茶を溢しそうになったり、最初からひどい有り様であったが、彼女は引け目を感じながらも笑って、
「ほんとにどうしたの、熱でも出てるんじゃ、………」
と心配さえもしてきて、その優しさもまた、俺には嬉しくて仕方がなくって、ますます惚けてしまったように思われる。が、それが出たのは昼前のことだったろう、あの時俺は、目の前ある叶の乳房が大きく重たく膨れ上がっているのに対し、それを支える身体が余り痩せすぎている、それもただ単に痩せているのではなくて、こうして間近で見てみると、骨格からして華奢であるので、身長はどっこいどっこいでも(―――当時の俺は背が低かったのである)、どこか小さく感じられるし、そのために、余計に体と胸元の膨らみとが釣り合っていない上に、胸が重いのか、ふらふらとして上半身が風で煽られているかの如く触れる時がある、それが緊張で体が強張っている今でも起こるので、段々と心配になってきて、
「す、すごい部屋、………」
ときちんと正座をしながら目を輝かす彼女が、今にも倒れてしまいそうに思われたのだった。しかし惚けた少年の頭では、ああ言えば失礼だろうか、こう言えば婉曲的に尋ねられるだろうか、などと言ったことは考えられない。ただ、この眼の前に居るかぁいい少女が、かぁいくってしょうがない。あれ? 叶ってこんなにかぁいかっただろうか? と、彼女の一挙一動がなんだか魅力的に見えて来て、手の甲を掻くのすらもかぁいくって、言葉が詰まり、今や何とか頭に浮き出てきた単語を並べるのみ、彼女を一人部屋に残して外で気持ちを落ち着けようにも、今ここに叶が居るのだと思えばすぐさま頬が燃え上がってくる。再び部屋に入れば入ればで、自分の思い描いていたのよりかぁいい少女が、きちんと正座をしながらも、未だに目をキラキラとさせ、口をぽかんと開けて部屋中を眺めている。そんなだから、一層少年の頭は惚けてしまった。同時に、胸の前で、乳房を押しつぶしながらしっかりと握られている両の手が目について、その細さ、そのか弱さに惹き込まれて無遠慮に、
「ねぇ、前々から気になってたんだけど、どうしてそんなに細いの? どうしてそんなに痩せてるの?」
と、彼女の正面に座りながら聞いた。
「あっ、うっ、……」
「ん? だって手とか僕が握っても折れそうだし」
「え、えとね?」
「うん」
「その、食べては居るんですけれど、………」
叶はここに来てからすっかり敬語である。
「食べても食べても、全然身につかなくって、………その、おっぱいだけが大きくなってしまってるの。だから、こんなにガリガリ。骨も脆いそう。………あはは、なんだか骸骨みたいだね」
「全然笑い事じゃないんだけど」
「うん、ありがとう。それだけでも嬉しいな」
とにっこりするので、
「もう」
とにっこりとして返すと、叶はすっかり普段の無邪気な顔に戻った。
「あ、でね、もちろんお母さんも心配してくれて、お金が無いのに、私のためにたくさんご飯を作ってくれててね、―――」
「たくさんって、どのくらい?」
「えっと、………」
と言葉に詰まるので、
「まぁ、別に笑わないからさ。言ってごらん?」
とたしなめた。すると返ってきた言葉は、俺の想像を軽く飛び越していたのだった。
毎日微妙に違うから昨日のだけと、はにかんだ叶の昨夜の夕食は、米を4合、味噌汁が鍋一杯、豆腐を3丁肉豆腐、その肉も牛肉1キロ、半分を肉豆腐へ、半分を焼いて、野菜はキャベツとレタスと半々に、鶏胸肉2枚、パスタ500グラム、………を食した後に寒天のデザートを丼に一杯、食パンを2斤、牛乳一リットルで流し込んだ、と、ご飯中は喉が乾いて仕方がないと言って、水もペットボトルで2本計4リットル飲んだ、いつもこれくらいだが、それでも食欲が収まらない時は、さらにご飯を何合か炊いて卵粥として食べるのだと言う。
笑わないとは言ったけれども、流石に苦笑も出来ずに唖然とするばかりで、俺は、スポーツ選手でも食べきれない食い物が、一体全体、目の前で顔を覆って恥ずかしがる少女のどこに入って、どこに消えたのか、想像をたくましくすることしか出来なかったが、そうしているうちに、今日の朝はねと、朝食までおっしゃる。それもまた米が4合に、やっぱり味噌汁を鍋一杯。そして、知り合いが店を構えているとか何とかでくれる蕎麦を、両手で二束、大鍋で茹でてざる蕎麦に、インスタントラーメンを2人前、水を2リットル。言い忘れてけどご飯は大きなおにぎりとして、中に色々と具材を入れて食うと言って、最後に、デザートとは言い難いが、デザートとしてシリアルを、やっぱり牛乳1リットルかけて食べる。その後パンがあればあるだけ食べる。水も何リットルか飲む。で、大体食事の時間は1時間半から2時間くらいで終わるけれども、お腹が空いていたら30分でもこれだけの量は平らげられるらしい。
「いやいやいやいや、………えっ?」
俺のそんな反応も当然であろう。ところで以上の事を言った本人は、言っちゃった、恥ずかしい、と言ったきり黙って俯いているが、益々見窄らしく、小さく見え、やはり可哀想でならなかった。
ポーン、と鳴って、時計が12時を示した。叶の告白から随分時間が経ったように思っていたら、もうそんな時間である。空腹を訴えかけている腹には悪いが、今ここで食事の話題を振れば恐ろしい結果になるかもしれない、一応自分の昼食は、父上が予め出前を取ってくれたのが、さっき届いたからあるし、母上が夕食もと、下拵えだけして行った料理の数々があるので、それを二人で分けて、一緒に食べる予定ではあったのだが、しかし先の話が本当だとすれば、とても量が足りない。だが、恐ろしい物は逆に見たくなるのが、人間の常である。俺は、叶がご飯を食べている様を見たくてたまらなかった。普段、外食は両親に連れられてのものだったけれども、幸い街を歩けばいくらでも食事処にはありつける。日本食屋に、寿司屋に、洋食屋に、喫茶店に、中華料理屋に、蕎麦屋饂飩屋鰻屋カレー屋、果ては創作料理屋まであるから、彼女をそこに連れて行ってみてはどうか。もちろん一軒と言わずに何軒も訪れて、彼女が満足するまでたくさんご飯を食べさせてあげてみてはどうだろうか? 俺はそんなことを思って、心の内で嫌な笑みを浮かべていたのであったが、偶然か必然か、その思いつきは叶の願いにぴったり沿うのであった。
「あはは、………やっぱり引いた?」
と叶がもじもじしながら言う。
「若干だけど、驚いただけだよ」
「ほんとに?」
「ほんとほんと」
「じゃ、じゃあ、もう一つ打ち明けるんだけどね、………あ、本当に引かないでよ」
「大丈夫だって、言ってごらん?」
と言って顔を緩めると、叶は一つ深呼吸してから、もじもじさせている手を見つめながら口を開くのであった。
「えとね、私、………実はそれだけ食べても全然たりなくて、ずっとお腹が空いてるの」
「今も?」
「今も。ほら、―――」
叶が服の裾をめくり上げると、そこにはべっこりと凹んでいる腹が丸見えになる。
「すっかり元通りになっちゃった。君と会うために外に出た時は、まだぼっこりしてたんだけど、………」
「お昼は?」
「え?」
「お昼。お昼ごはん。どうするの?」
「我慢かなぁ。いつもお昼ごはんは給食だから、全然平気だよ!」
この時、図らずも俺の画策と、彼女の願い、というよりは欲望が、同じ方向を向いたことに歓喜したのは言うまでもない。俺はこの後のことをあまり覚えていないが、遠慮する叶に向かって、
「ご飯一緒に食べよう!!」
と無理やり立たせて、取ってあった出前を彼女の目の前に差し出したのは、微かに記憶に残っている。彼女はそれをぺろりと平らげた。口に入れる量、噛むスピード、飲み込む速度、どれもが尋常ではなく、するすると彼女の胃袋の中へと消えていった。母上が下ごしらえして行った料理もまた、子供では食べきれないほどあったが、5分とかからなかった。こちらは食べにくいものばかりであったけれども、叶は水を大量に飲みつつ、喉へと流し込んで行く。それがテレビでよく見る大食い自慢のそれとは違って、コクコクと可愛らしく飲むものだから、俺はうっとりとして彼女の様子を見つめていた。食べ終わってから、俺は彼女の腹部に触れさせてもらった。その腹は、3人前、4人前の量の食事が入ったとは思えないほど平たく、ぐるぐると唸って、今まさに消化中だと思うと、またもや俺の背中はバットで殴られたかのような衝撃に見舞われてしまった。ちょうど、叶の乳房に目を奪われた時と同じような衝撃である。思わず耳を叶のヘソの辺りに押し付けて、たった今食べ物だったものが排泄物になろうとしている音を聞く。ゴロゴロと、血管を通る血のような音だった。
「まだ食べられる?」
「もちろん!」
叶は元気よく答えた。俺は彼女がケチャップで赤くなってしまった口を、手渡されたナプキンで綺麗に拭き終わるのを待って、
「じゃあ、行こうか」
と、財布と上着を取りながら聞いた。
「どこへ?」
「今日はお腹いっぱいになるまで食べさせてあげるよ」
俺の昼食夕食を軽く平らげた彼女は、今更遅いというのに遠慮をするのであった。「いや、私、もうお腹いっぱいで」とか、「お金持ってない」とか、「別にいいって、いいってば」とか、終いには「ごめん、ごめんなさい」と言って泣き出しそうにもなったり、なんとかなだめて離れから飛び出ても、動こうとしなかったり、自分の家に入ろうとする。「だ、大丈夫! 嘘! 嘘だから! 忘れて! もう食べられないから!」など、矛盾に満ちた言葉を放っていたのは覚えている。俺はそれをなんとかなだめて、気持ちが先行してしまって不機嫌になりつつも、最終的には弱々しい彼女の腰を抱きかかえるようにして引っ張って行った。
「ごめんね、ごめんね。ちょっとでいいからね。私よりも君がたくさん食べてね」
と食べることには堪忍したらしい叶が、物悲しそうにしたのは、確か家からまっすぐ歩いて、3つめの交差点を曲がって、広めの県道を西に沿ってしばらく行った所にある小綺麗な中華料理屋だっただろう。前にも述べたが、俺はこの日のことをあまり詳しく憶えていないのである。何故この中華料理屋に訪れたかと言えば、ようやく落ち着いた叶に何が食べたい? と聞くと、渋々、春巻きが食べたいとの答えが返ってきたからであるのだが、この店は昔も今も量が多いとの文句が聞こえてくる名店で、俺はよく、父上が天津飯一つすら苦しんで食べていたのを思い出すのである。とまぁ、そんな店であるのだから、そんな店にありがちな、所謂デカ盛りメニューなるものがあって、例えば丼物、―――麻婆丼だったり、炒飯だったり、それこそ天津飯だったり、そういうのはだいたい揃ってるし、酢豚とか、八宝菜の定食メニューもそれ専用の器すらあったりする。そしてそれを30分以内に食べきったら無料なので、これならお金を気にする彼女も安心してくれるだろうと、少年は考えた訳であったが、いざ入ってみて、奥の席へ通されて、
「この春巻きを10人前と、デカ盛りメニューの麻婆丼一つと、それと僕は、………エビチリ定食をご飯少なめでください!」
と注文すると、
「ぼ、僕? 冗談で言ってる?」
と、まず俺を見、そして叶を見して怪訝な顔をするのであった。
「冗談じゃないよ。ねぇ?」
と叶を見るが、彼女は静かに俯いている。
「ま、そういうことだから、お金は出すんだから、早く! 早く!」
「でもね、これはとっても量が多いんだよ?」
「うん、知ってる。だけど叶ちゃんが全部食べてくれるから、平気だよ」
「え、えぇ、………? この子が? 嘘おっしゃい」
そういう押し問答は10分乃至15分は続いたのであったが、とうとう店側が折れる形で、俺達の前には山になった春巻きと、山になった麻婆丼と、それ比べればすずめの涙程のエビチリが、テーブルの上に現れたのであった。俺も驚いたし、店員も驚いたし、何より他の客の驚きようと言ったら無い。奥の席だったから、人気はあまりないものの、写真を撮る者、頑張れよと冷やかしてくる者、わざわざ席を変わってくる者も居れば、自分たちも負けじとデカ盛りメニューを頼む者も居る。彼らの興味は殆どテーブルの上に置かれた理不尽な量の料理と、それに向かう華奢な少女であったが、妙に俺は良い気になって、ピースして写真に写ったり、冷やかして来た者を煽ったりして、相手をしたものだった。本当に、あの時の俺は、自分が一時の有名人になったかのような心持ちで、サインでも握手でもしてやろうかと思った。いや、そんなことよりも、もっと写真に撮って、もっと騒ぎ立てて、もっと人を集めてくれという気持ちであった。有頂天と言っても良い状態だった。が、ふと叶の方を見てみると矢張り俯いたままでいる。―――あゝ、こんなに騒がしかったら美味しいものも美味しくは無いだろうな、早く食べないと冷えてしまう、それに、自分もお腹が空いて仕方がない、そろそろ追っ払おうかしらん。叶の様子にいくらか冷静になった俺はそう思ったのであった。
「ごめんね、彼女、恥ずかしがり屋だから、ほら、あっち行ってて」
そう言うと、店主のハラハラした視線だけはどうすることも出来なかったが、皆次第に散り散りになった。叶もまた、周りに人が居なくなって安心したのか、顔を上げる。
「騒がしかったね」
「うん」
「まったく、野次馬はいつもこうだよ」
「うん」
「足りなかったら、もう一つ頼むことにしようか」
「あ、あの、………」
「うん?」
「いただきます」
この時の彼女の心境は、後になって聞いたことがある。たった一言、ああいう状況に慣れていなかったせいで、食べて良いのか分からなかった、と。実際には、中華店へ入る前から匂いに釣られて腹が減って死にそうになっていたところに、いざ目の前に好物の春巻きと、こってりとした匂いを漂わせている麻婆丼が現れて、遠慮も恥も何もかも忘れて食らいつきたかったのだそうである。事実、麻婆丼は物凄い勢いで彼女の口の中へと消えていった。
ところで麻婆丼は、後で聞けば10人分の具材を使っているのだと言う。重さで言えば8.7キロ、米は5合6合はつぎ込んで、女性の店員では持ち運べないので、男が抱えなければならない。時たま米の分量を誤って、餡のマーボーが指定分乗り切らない時があって、そ���いう時は乗り切らなかった餡だけ別の器に盛って出す。かつて挑戦した者はたくさんいるが、無事にただで食べられたのはこれまで1人か2人くらい、それも大柄な男ばかりで、女性はまだだと言う。
そんな麻婆丼が、11歳の、それも痩せ細った体つきの少女の口の中へ消えていくのである。休むこと無く蓮華を動かし、時折春巻きを箸に取っては、殆ど一口で飲み込むが如く胃の中へ流し込み、真剣ながらも幸せの滲み出た顔をしながら、水をグイグイ飲む。見れば、心配で様子を見に来ていた店主は、いつの間にか厨房に引っ込んで呆れ顔をしている。叶はそれにも気が付かずに黙々と口を動かして、喉が微かに動いたかと思ったら、蓮華を丼の中に差し込んで、幸せそうな顔で頬張る。あれよあれよという間にもう半分である。こういうのは後半になればなるほど勢いが落ちるものだのに、叶の食べるスピードは落ちないどころか、ますます早くなっていく。やがて蓮華では一口一口の大きさが物足りないと感じたのか、一緒に付いてきたスプーンで上から米もろとも抉って食べる。叶は普段から綺麗に食べることを心がけていて、大口を開けて食い物を口へ運んだとしても、それが決して醜くなく、逆に、実に美味そうで食欲が掻き立てられる。優雅で、美しい食べ方は、彼女が言うには、体の動かし方が重要なのだと、かつて教えてもらったことがある。気がついた時には、もう普通の麻婆丼と殆ど変わらない分量になっていた。一個もらうつもりだった春巻きは、………もう無かった。
俺は、叶の料理を食べている姿をついに見ることが出来て、ただただ感激だった。先程は恐ろしい勢いで食べたと言っても、量は大食いの者ならば簡単に平らげる程度しか無かったのである。それが今や10人前の巨大な麻婆丼を前にして、淡々と頬張っていき、残るは殆ど一口のみになっている。彼女はここに来てようやくペースが落ちたのだが、その顔つき、その手付き、その姿勢からして、腹が一杯になったのではなくて、あれほどあった麻婆丼がとうとうここまで無くなったので、急に名残惜しくなったのであろう。その証拠に、一口一口、よく噛み締めて食べている。俺は、またもや背中をバットで殴られたかのような衝撃に身を震わせてしまい、その様子をじっくりと穴が空くほどに見つめていたのであったが、汗もかかずに平然と、最後の豆腐に口をつける彼女を見て、とうとう食欲がさっぱり無くなってしまった。代わりに無性に苛立つような、体の内側が燃えるような、そんな堪えきれない欲が体の中心から沸き起こってきて、今までそんなに気にしてなかった、―――実際は気にしないようにしていた胸元の膨らみが、途端に何かを唆しているように思えて、もっともっと叶の食事風景を見ていたくなった。
「ごちそうさまでした」
と、声がしたので見てみると、澄ました顔で水を飲んでいらっしゃる。俺は慌てて、店主がテーブルの上に乗せて行ったタイマーを止めて時間を見てみた。
「16分39秒」
「えっ? 食べ終わった?」
「ほんまに?」
「本当に一人で食べたんだろうか。………」
気がつけば観客たちがぞろぞろと戻ってきていた。彼らの様子は、もうあんまりくだくだしくなるから書かないが、俺はまたしても注目を浴びている彼女を見て、ただならぬ喜びを感じたということは、一言申し上げておく必要がある。少年は輪の中心に居る少女の手を取るに飽き足らず、その体に抱きついて(―――何と柔らかかったことか!)、
「やったね叶ちゃん。やっぱり出来るじゃないか」
と歓声を放ち、
「ほら、ほら、この子はデカ盛りを16分で食べきったんだぞ。男ならそれくらいできなきゃ」
と、まるで我が手柄のように、奮闘中の大学生らしき男性客に言うのであった。俺の感性はまたしても有頂天に上り詰めて、多幸感で身がふわふわと浮いていた。隣で叶がはにかんで居るのを見ては、優越感で酔っ払ってしまいそうだった、いや、酔いに酔って、―――彼女の隣に居るのは僕なんだぞ。少年はそう叫んだつもりであるのだが、実際には心の中で叫んだだけなようである。俺がこの日の記憶をおぼろげにしか覚えていないのは、そんな感情に身も心も流されていたからなのである。………
騒ぎが収まってから、俺は半分近く残っていたエビチリを叶にあげた。もちろんぺろりと平らげた訳なのだが、しかしその後余りにも平然としてデザートの杏仁豆腐を食べているので、ひょっとしたら、………というよりは、やっぱりそうなんだなと思って、
「もしかしてさ、もう一回くらいいける余裕ある?」
「あ、………もちろん」
もちろんの部分は小声で言うのであった。そして小声のままその後に続けて、今体験した感じで言うと、もう一回あのデカ盛りを食べるどころか、さらにもう一回くらいは多分入ると思う。なんて言っても、まだ空腹感が拭えない。実のことを言えば、あれだけ店主が期待させてくるから楽しみだったのだけれども、いざ出てきてみれば、美味しかったものの、いつも食べてる分量より少なかったから、拍子抜けしてしまった、30分という時間制限も、頑張ったらさっきの麻婆丼2つ分でも達成できると思う。いや、たぶん余裕だと思う、出来ることならもう一回挑戦してみたいが、あの騒ぎを起こされた後だとやる気は起きないかなと言う。少年は彼女の食欲が未だに失せないことに、感謝さえしそうであった。なぜかと言って、この日の俺の願望は、彼女の食事姿を眺めること、そして、街にある食事処をはしごして、彼女が満足するまでたくさんご飯を食べさせてあげること、―――この2つだったのである。しかし、前者は達成したからと言って、それが満足に値するかどうかは別な問題であって、既に願望が「彼女の食事姿を飽きるまで眺めること」となっていた当時の俺には、元々の望みなどどうでもよく、叶がお腹いっぱいになっちゃったなどと言う心配の方が、先に頭に上っていた。が、今の彼女の言葉を聞くに、彼女はまだまだ満足していない。腹で言えば、三分ほどしか胃袋を満たしていない。となれば、第二の願望である「彼女が満足するまでたくさんご飯を食べさせてあげること」を達成していない。然れば、僕が叶の食事風景を飽きるまで眺めるためにも、そして叶が満腹を感じるまでに食事を取るためにも、今日はこのまま延々と飯屋という飯屋を巡ってやろうではないか。そして、あのメルヘンチックな子供部屋で、二人で夜景を眺めようではないか。………斯くして三度、俺の願望と叶の欲とは一致してしまったのであった。
結局叶は、春巻きをもう一度10人前注文して幸せそうな顔で味わい、その間に俺は会計を済ましたのであったが、あっぱれと未だに称賛し続けている店主の計らいで杏仁豆腐分だけで済んでしまった。本当にあの体にあの量が入ってるとは信じられんとおっしゃっていたが、全くその通りであるので、店を出てから叶に断ってお腹に手を触れさせてもらったところ、ちょうど横隔膜の下辺りから股上までぽっこりと、あるところでは突き出ているようにして膨らんでいる。ここに8.7キロの麻婆丼と、春巻き20人前が入っているのである。ついでに水何リットルと、申し訳程度の定食が入っている。そう思うと、愛おしくなって手が勝手に動き初めてしまいそうになったけれども、人通りの多い道であるから、少年は軽く触れただけで、再び少女の手を引いて、街中を練り歩き出した。
それから家に帰るまでの出来事は、先の中華料理屋とだいたい似ているので詳しくは書かないが、何を食べたかぐらいは書いておこう。次に向かった店は近くにあったかつれつ屋で、ここで彼女は再びデカ盛りのカツ丼4.3キロを、今度は初めてと言うべき味に舌鼓をうちながらゆっくりと、しかしそれでも半額になる25分を6分24秒下回るペースで平らげ、次はカレーが食べたくなったと言って、1つ2つ角を曲がってよく知らないインドカレー屋に入り、ご飯を5回おかわり、ナンを10枚食べる。おぉ、すごいねぇ、とインド人が片言の日本語で歓声を上げるので、叶はどう反応していいのか分からずに、むず痒そうな顔を浮かべていた。で、次はラーメン屋が目についたので、特盛のチャーシュー麺と特盛の豚骨、そして追加で餃子を頼んで、伸びたらいけない、伸びたらいけないと念仏のように唱えながら、汁まで飲み干す。この時既に、一体何キロの料理が彼女の腹に入っていたのか、考えるだけでも恐ろしいので数えはしないが、店を出た時に少々フラフラとするから心配してみたところ、
「いや、体が重いだけで、お腹はまだ大丈夫」
という答えが返ってくる。事実、その移動ついでにドーナツを10個買うと、うち9個は叶の胃袋へ、うち1個は俺の胃袋へと収まった。そして今度は洋食屋に行きたいとご所望であったから、先の中華料理屋の向かい側にある何とか言う店に入って、ナポリタン、―――のデカ盛りを頼んで無料となる19分17秒で完食す。とまあ、こんな感じで店をはしごした訳であったが、その洋食屋を後にしてようやく、ちょっと苦しくなってきたと言い出したので、シメとして喫茶店のジャンボパフェを食べることにした。彼女にしてみれば、どれだけ苦しくても甘いものだけはいくらでも腹に入れられるのだそうで、その言葉通り、パフェに乗っていたアイスが溶けるまでにバケツのような器は空になっていた。そして、喫茶店を出た時、叶は急に俺の体に凭れかかってきたのであった。
「あ、あ、………苦しい、………これがお腹一杯って感覚なんだね」
と、俺の背中に手を回してすっかり抱きついてくる。うっとりとして、今が幸せの絶頂であるような顔をこちらに向けたり、道の向かい側に向けたりする。人目もはばからず、今にもキスしそうで、その実ゴロンと寝転がってしまうのではないかと思われる身のこなし。心ここにあらずと言ったような様子。………彼女は今言った量の料理を食べて初めて、満腹感を感じられたのであった。―――あゝ、とうとう僕の願望と叶ちゃんとの欲望が、叶い、そして満たされたしまったのだ。見よ見よこの満足そうな顔を。ここまで幸せそうな顔を浮かべている者を皆は知っているか。―――少年も嬉しさに涙さえ出てくるのを感じながら、抱きついてくる少女のお腹に手を触れさせた。妊娠どころか人が一人入っているかのようにパンパンに張って、元の病的なまでに窪んでいた腹はもうどこにもなかった。胸元だけではなく、腹部にある布地もはちきれそうになっていた。思えばここに全てが詰まっているのである。今日食べた何十キロという食べ物が、………そう考えれば本来の彼女の体重の半分近くが、この腹に収まって、今まさに消化されているのである。少年と少女はついに唇を重ねるや、そっとお腹に耳をつけてその音を聞いてみると、じゅるじゅると時々水っぽい音を立てながら、しかしグウウウ、………! と言った音が、この往来の激しい道沿いにおいても聞こえてきて、この可愛らしい少女からこんな生々しい、胎児が聞くような音を立てているとは! 途端に、股間の辺りから妙な、濁流を決壊寸前の堤防で堰き止めているかのような、耐え難い感覚がして、少年は咄嗟に彼女から身を引いた。今度の今度は背中をバットで殴られたような衝撃ではなく、内側からぷくぷくと太って破裂してしまいそうな、死を感じるほどのねっとりとした何かだった。そしてそれは何故か叶の体、―――特に異様に膨らんだ胸元と腹を見るだけでも沸き起こってくるのであった。少年は恐怖で怯えきってしまった。この得体の知れない感覚が怖くて仕方なかった。目の前でふらふらとしている少女から逃げたくもなった。が、無情なことに、その少女はうっとりと近づいてきて、少年の体にすがりつくので、彼は逃げようにも逃げられず、為されるがままに、その痩せきってはいるけれども上半身の異様に膨れた体を抱いてやって、少女の希望ゆえにお腹を両手で支えながら帰路につくのであった。
「お母さんに何言われるか分からないから、楽になるまで遊んで」
離れに戻ってから、叶はそう言って俺の体に寄りかかってきた。道沿いでしてきた時はまだ遠慮があったらしく、俺はすっかり重くなった彼女の体を支えきれずにベッドに倒れてしまい、じっと見つめる格好になったのであるが、そのうちに堪えきれなくなって、どちらからともなく、
「あははは」
「あははは」
と笑い出した。
「ねぇねぇ」
「うん?」
「さっきキスしてきたでしょ」
「………うん」
俺はこっ恥ずかしくなって、素っ気なく答えた。
「もう一度しない?」
「………うん」
今度はしっかりと叶の顔を見つめながら答えた。
これで俺たちは二度目の接吻をした訳であるが、俺の手はそ���後、自然に彼女の胸に行った。この時、叶の方がベッドに大きく寝そべっていたので、俺の方が彼女より頭一つ下がった位置にあり、目の前で上下する乳房が気になったのかもしれない。俺の手が触れた時、彼女はピクリと体を震わせただけで、その熱っぽい顔はじっとこちらを向けていた。嫌がっている様子が見えないとなれば、少年は図に乗って、両手を突き出して乳房に触れるのであったが、それでも少女は何も言わない。思えば、少年が恋する少女の胸に手をかけた初めての時であった。やわらかく、あたたかく、頭ぐらい大きく、手を突っ込めばいくらでもズブズブと沈み込んでいき、寄せれば盛り上がり、揉めば指が飲み込まれ、掬い上げれば重く、少年はいつまででも触っていられそうな感じがした。と、その時気がついたことに、着ている物の感触として、女性にはあって然るべき重要な衣服の感覚が無いのである。
「ぶ、ぶ、ぶ、ぶらは、………?」
と少年は何度もどもりながら聞いた。
「高くって買えないの。………それに、おっぱいが大きすぎて店に行っても売ってないの。………」
と少女は儚げな表情を、赤らめた顔に浮かべる。
それきり、言葉は無かった。少年も少女も、大人にしか許されざる行為に、罪悪感と背徳感を感じて何も言い出せないのである。少年の方は、父上の言いつけに背くばかりか、この部屋に連れ込んで淫らな行為に及んでいるがため、少女の方は、相手が自分の手に届かない物持ちの息子であることから、果たしてこんなことをして良いのかと迷っているところに、突然の出来事舞い込んできたため。しかし両者とも、気が高揚して、場の雰囲気もそういうものでないから、止めるに止められない。そして、どうしてその行動を取ったのか分からないが、少年は少女に跨って下半身を曝け出し、少女もまた裾を捲って肩まで曝け出した。玉のような肌をしながらも、はちきれんばかりになったお腹に、少年はまず驚いた。驚いてグルグルと唸るそれを撫で擦り、次に仰向けになっているのにしっかりと上を向く、丸い乳房に目を奪われた。生で触った彼女の乳房は、服を通して触るよりも、何十倍も心地が良かった。少年は、少女の腹を押しつぶさないように、腰を浮かしながら、曝け出した物を乳房と乳房が作る谷間の間に据えた。と、同時に少女が頷いた。右手で左の乳房を取り、左手で右の乳房を取り、間に己の物を入れて、すっぽりと挟み込み、少年は腰を前後に振り始めた。―――少年が射精を憶えた初めての時であった。
叶の腹がほぼ元通りに収まったのは、日も暮れかかった頃であったろうか、彼女を無事家まで送って行き、すっかり寂しくなった部屋で、俺はその日を終えたのであるが、それからというもの、お話をするという日課は無くなって、代わりに、休みの日になると叶を引き連れて、街にある食事処を次々に訪れては大量に注文し、訪れてはテーブルを一杯にし、訪れては客を呼び寄せる。その度に彼女は幸せそうな顔を浮かべて料理を平らげ、満足そうな顔を浮かべて店を後にし、日の最後は必ずその体を俺に凭れさせる。彼女にとって嬉しかったのは、そうやっていくら食っても俺の懐が傷まないことで、というのは、だいたいどこの店にもデカ盛りを制限時間内に食べられれば無料になるとか、半額になるとか、そんなキャンペーンをやっているのだけれども、叶はその半分の時間で完食してしまうのである。「頑張ったら、別に2倍にしても時間内に食べられるよ」と言って、見事に成し遂げたこともあった。その店には以降出入り禁止になってしまったけれども、痛いのはそれくらいで、俺は俺の願望を、叶は叶の欲望を満たす日々を送ったのであった。
だが、叶を初めて連れて行ってから一ヶ月ほど経った時の事、父上に呼ばれて書斎へと向かうと、いつもは朗らかな父上が、パソコンの前で真剣な表情で睨んで来ていらっしゃった。俺は咄嗟に叶との行動が知れたのだなと感づいて、心臓をドキドキと打たせていると、
「まぁ、別に怒りはしないから、隣に来てくれ」
とおっしゃるので、すぐ傍にあった椅子に腰掛けて、父上が真剣に見ていたであろうパソコンの画面を見てみた。そこには家中に配置されている監視カメラの映像が映し出されていたのであったが、その映像をよく見てみると、若い少年と少女が手を繋いで庭を渡る様子と、端に俺が叶を連れ込んだ日の日付と時間が刻銘に刻まれているのである。俺は頭が真白になって、どういい訳をしたらいいのか、どうやれば許して頂けるのか、―――そういう言葉ばかりが浮かんで結局何も考えられなかったが、兎に角、叶と会っていたことが父上にバレた、それだけははっきりと分かった。
「この映像に思い当たる節はないか?」
無いと言っても、そこに写っている少年の顔は俺であるし、後ろ姿も俺であるし、背丈も俺であるし、況や叶をや。言い訳をしたところで、事実は事実である上に、父上に向かってこれ以上見苦しい姿を見せたくなかったし、嘘を言うなんて事は俺には出来ないので、正直に告白することにした。もちろん、彼女に一杯物を食べさせてたなんて言うべきではないから、ただ一言会っていたとだけ伝えることにした。
「ふむ、正直でよいよい。そんなとこだろう。いや、それにしても、いきなり自分の部屋に連れ込むとは」
と、一転して朗らかになったので、急に恥ずかしくなってきて、キュッと縮こまったのであった。
ところで俺がこの監視カメラを甘く見ていたのには、少しばかり理由がある。1つには、庭は木が生い茂っていて見通しが悪いこと、そしてもう1つには、子供部屋として使っている離れには設置していないこと、だから俺はあの日の朝、部屋にさえ連れ込んだらこちらのものと思っていたのであったが、それ以上の理由として、父上がその防犯カメラの映像をあまりチェックし給はないことが挙げられる。父上は抑止力としてカメラを設置していらっしゃるだけで、その映像を見ることは月に一回あるかないか、それもたまに半年間もすっぽ抜かすこともあれば、チェックをするのも適当に何日かを選んで、早送りをして見るだけというずさんさがあった。俺はしばしばその様子を眺める機会があったのだが、いまいち鮮明でない画面であるがゆえに、もはや人が居るかどうかが辛うじて分かる程度であった。だから、俺はあの時、叶を部屋に連れ込んだとしても、見つかるはずは無いと高をくくっていたのである。
で、子供が一人で家の中で何をしているのか気になった父上が、ひょんなことから防犯カメラの映像を、ぼんやり眺めていると、何者かと共に離れにまで入っていく事を確認し、それが何とも見窄らしい格好をした少女であるから、2、3回繰り返して見ているうちに、隣家の貧家の娘であることに気がついたのであろう。
俺はそれから、また真剣な顔つきになった父上に、たんまりと諭されてしまった。この住宅街は、その大半が一般庶民の暮らしている家で埋められているのであるが、とある一画にだけは物騒な人(に売られる)が住んでいる。不幸なことにこの家を建てる時に、上手い土地が無かったために、ある一つの家を挟んで、そこと向かい合わせになってしまった。それならば、せめて家の裏にして、木で生け垣を作って完璧に仲を隔ててしまおうと思って、お前の部屋からも分かる通り、風景は見えるようにだけしたのである。もちろん、それなら別に他の所に住めば良いではないかと思うかもしれないが、しかしこの地は俺が子供時代に何年か過ごしたことがある土地であって、そして、お前のお母さんの生まれ育った土地である。つまりは夫婦の思い出の地であって、(言葉を濁しながら、)つまりは俺もお前と同じ穴の狢であるから、近所に住む女の子を一人や二人呼んだところで何も言いはしない。が、裏にある地区だけはダメだ。別にそういう地区ではないが、何しろ物騒な噂ばかり聞く。で、彼女の家はそんな地区と我々とのちょうど境目に建っていて、一番可哀想な境遇を経ているのであるが、向こうから色々と入れ知恵されていると人はよく言う。もし問題が起これば面倒事になるかもしれないし、お前に怪我でもあったら良くない。実際、昔お前のお母さんの友人が、あの地区にいる人といざこざを起こした時に、上辺だけは丸く済んだけれども、その後に復讐として連れ去られそうになったことがあった。彼らは放っておくとどこまで非情なことをするのか分からない。だからあの言いつけはお前を心配してのことだったのだ。そもそも、俺はお前にはもっとふさわしい女性とお付き合いしてほしい。ほら、一人二人くらい学校で仲良くなった子は居るだろう。いたらぜひ言ってくれと、最終的には学校生活の話をするのであったが、父上は諭している途中ずっと真面目であった。俺はそれをふんふんと頷きながら、その実父上がそういうことを話てくれることが嬉しくて、内容はあまり耳に入ってなかった。ただ叶が可哀想なんだなと思うくらいで、始まった父上の詰りに、すっかり考えを逸らされてしまったのであったのだが、
「しかし、可愛い子だな。あんな家に住ませておくのがもったいない。転校して会えなくなる前に、分かれの挨拶くらいは許してやるから、やっておけよ」
と、突然父上が衝撃的な事を言ってのけるので、
「え? 転校?」
と聞き返してしまった。全く、転校するなどとは俺には初耳で、椅子の上でぽかんと口を開けたまま固まってしまった。
「もう少ししたら、気晴らしに別荘の方で何年か過ごすからな、―――あゝ、そうそう本当に何年間かだぞ、一週間などではなくて。だからそのつもりでな」
俺はぽかんと口を開けたまま固まってしまった。
それからは急に頭がぼんやりとしてしまって、引っ越しまでどう過ごしたのか憶えて居ない。ただ、最後に叶に会ったことだけは憶えていて、彼女は泣いていたように思う。ようやく自分が満足する量の食事を隔週ではあるけれども、取っている彼女の体つきは、微かに肉付きがよくなっているのだが矢張りガリガリに痩せ細っていた。逆に、胸元だけは一層膨らみ始めていて、その大きさはバレーボールよりも大きかった。俺は木陰に入って、最後にもう一度触らせてもらった。もうこれが最後だと思うと、お腹にも耳を当てた。朝食後直ぐに出てきたというその腹からは、矢張りゴロゴロと中で何かが蠢く音が聞こえてきた。そして泣いて泣いて仕方がない彼女と最後のキスをして、また会う約束を交わして、蕾を付け始めた桜の花を、雲の下にてあわれに見ながら袂を分かった。
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kkagneta2 · 4 years
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ボツ1
おっぱい。図書室に居る可愛い先輩っていいよね。未完。
さる令和元年の12月14日、午後4時57分、天候は晴れ、外は暗くなりつつある、図書室前の廊下にて、元来プレッシャーに弱い僕は、いよいよと言う時になって逃げ出したくなっていた。いつもならば平然と過ぎ去る空き教室も、今となっては格好の逃げ場所のように感じられて仕方なかった。手洗い場も、トイレも、僕にとっては魅力的に目に写った。
耐えきれなくって、気持ちを落ち着けたくって、先の手洗い場に佇んで、蛇口を捻った。水は冷たくて、僕の緊張はますます高まった。
その時後ろから笑い声が聞こえた。ハッとして振り返ると、これまで固唾を呑んで事の成り行きを見守っていた連中、………早く行けと言わんばかりに、手をこう、シッシッと動かしている。
あゝ、僕もそっち側に行きたいのに、………
僕は喉が乾いて来るのを感じた。どうしてこんな目に合わされているのかという憤りを感じた。窓の外は暗くて、廊下の明かりは心許なかった。
でも、図書室から漏れてくる光は、やわらかくてあたたかくて、なんだかこそばゆくって、自然と歩みが進んだ。
いよいよもって、扉の前まで来てしまった。―――あゝ、彼女が居ませんように!………なんて思ってしまって、頭を振った、後ろから笑い声がまた聞こえた。
その笑い声に挑発されて、取っ手には手をかけたけれども、開ける勇気が出ない。手に力が入らず、まっしろな頭で、開け、開け、と念じても、いま一歩のところで不安と緊張に飲まれる。
………ガラリ���
前方から暖かい空気が漂ってきて、扉が空いたんだなと感づいた頃には、僕の顔はもっとあたたかいものに包まれて、手を取られる。
「やっぱり君だったんだね。おいで、寒かったでしょう、こんなに手を冷たくして」
僕より頭一つ背の高い、上級生のお姉さん、―――僕の手を引いて、僕の手をその手の中に抱き込んで、ふうっと息を吹きかける。
「ね? 待ってたんだよ。あんまり遅いから、お姉さん今日は来ないんだと思っちゃった」
と、嬉しそうに微笑んで、図書室の扉を閉めた。
僕は今日、この人に告白する。………
   僕があの人と出会ったのは、やっぱりこの図書室の中で、もう半年前になるだろうか。
6月なのに暑くって、けれども借りてこなくちゃいけない本があったから、下敷きで仰ぎながら扉を開けた。中は明るかった。でも、しーんと静まり返っていて、自分の息だけが嫌に聞こえてくる。
目的の本は、………見つからなかった。書架を行ったり来たり、何度往復しても、見つからない。
諦めかけたその時だった、僕のちょうど後ろから、ペラ、………と本を捲くる音。そこは古臭い小説が並ぶ書棚で、唯一僕が探していなかった箇所だった。
誰か居るのかな、―――と、思いつつ、顔だけを出してそっと伺った。
一目見て、胸がドキリとした。とっても綺麗な上級生が、後ろの書棚に軽く凭れかかって、真剣な顔で、手にした本を読んで居たのだから。………
僕は見惚れてしまった。少し茶色がかったふわふわとした髪の毛に、外国の綺麗なお姉さんのような顔、細い手足、それに、とっても大きな胸元。………どれも見たことが無かった。
背広も中身も焼けてしまった本を捲って、ある所では物悲しそうに、ある所では微笑んで、どっぷりと本の世界に浸っている。
僕は思い切って話しかけた。
「あの、こういう題名の本って、どこにありますか、………」
掠れた声に自分でも驚いたけれども、お姉さんはこっちを向いてニコッと笑った。
「この本よ」
パタンと閉じて、僕に近寄ってくる。しーんとした中から制服の擦れ合う音が聞こえてきて、目の前にまでお姉さんがやって来て、ふうわりと風がなびいてきて、心臓のドキドキはますます高まった。僕の視界は、お姉さんのとっても大きなおっぱいで、占められていた。見上げてようやく伺えた顔に向かって、
「ご、ごめんなさい」
「ん?」
「あ、あの、………読書を邪魔しちゃって、………」
僕がそう言うと、お姉さんはしゃがんで、
「別に、いいんだよ」
と、ひんやりした心地よい手で、僕の手を取って、本をその上に乗せてくる。
「この本、とっても面白いから、よかったら感想を聞かせてね」
僕の返事を聞く前に、お姉さんは立ち上がって、またにっこりとした。
「あ、ありがとうございます」
「ん、どういたしまして」
チュ、………と音がした。それはお姉さんが僕の両頬に手を当てて、額にキスをした音だった。
「またね」
気がついた時には、お姉さんはずっと遠くに居て、手を振っていた。ガラリと扉が開く音がして、またガラリと扉が閉まる音がして、僕は本を落として、つい今しがたお姉さんが唇をつけた額を撫でた。夢だと思ったけれども、周りには本のカビ臭い臭いではなく、なんだか甘くて懐かしいが漂っていた。
  「お前知らないのか」
「知ってるの?」
「知ってるも何も、この学校に居る限りは知ってないといけないじゃないか」
次の日、友達にお姉さんの事を聞いてみたら、そんな返事が返ってきた。みんな小学校に居る時から知っていて、その場を通りかかった女子も、ああ、あの人でしょう? え、君知らないの? と驚いた顔をする。
お姉さんは、ちょっとした有名人だった。秀才、天才、スポーツ万能、ハーフ、ギネス記録保持者、胸はZ、―――
「ギネス? Z?」
「胸だよ、胸。こんなんだったろ?」
と、友達が腕を抱えた。
その他にも沢山あった。だけれども、僕が本当に知りたかった、お姉さんの学年とか、名前とかは最後の最後になってからだった。
「だからすごいんだそうだ。この間も、ずっと向こうの高校生がわざわざここまでやって来たぐらいだからな。俺の兄貴も狙ってるし」
「ふぅん」
「ま、でも無駄だろうな」
「どうして?」
「お高い所に止まっていて、女子なら兎も角、男とは滅多に話さないんだそうだ。話してもずっと不機嫌で、―――」
僕は突如として憤った。
「そんなことなかったよ!」
「え?」
「全然、そんなことない! ずっとにこにこしてて、ずっと優しくて、―――」
「お前、会ったのか!」
「うん。昨日図書室で。この本はお姉さんが渡してくれたんだ」
僕は得意気になって言ってやったけれども、友達は頑として信じてくれなかった上に、
「人違いだろ、―――ああ、でもお前のことだからなぁ、………可愛い弟が目の間に現れた感じじゃないか?」
とも言い出すので、結局は喧嘩になってしまった。
  その日も図書室へ足を運んだ。お姉さんが手渡してくれた本は、難しかったけれども面白くて、昨晩の間に一気に呼んでしまったのだった。
図書室の中は、相変わらず物音一つしてなくて、窓から入ってくる夕日の光だけが、ゆっくりと動いていた。椅子を引く音も、鞄を置く音も、高らかに響いて、座った途端に、このまま永遠に閉じ込められてしまうような気がして、怖かった。
宿題をしようと、パタパタと教科書を取り出すのも、なんだか別の人が音を立てているようだった。トントンと、文字を書く時に鳴る音も、淋しく響くだけだった。耳がキーンとして、いまいちここが現実なのか、夢なのかよく分からなかった。
「こんにちは」
突然、両肩に人の手を感じると共に、そんな声がかかったので、僕は思わず鉛筆を落とした。
「何やってるの?」
ふわりと、いい匂いが僕を包んだ。
「しゅ、宿題を、………」
「んーん? 見せてごらん?」
と、後ろから覗き込んでくる。
その時、突如として現れた白い塊に、僕は唖然としてしまった。
―――で、でかい!
それに柔らかい。ぴったりと、僕の顔に張り付いて、後ろからページを捲ってくる度にふるふると揺れる。前回にはあんまり気にならなかったのに、流石にこれでは目が離せない。
「ん? ………んふふ」
あ、まずいと思って、僕は咄嗟に下を向いた。でも、グイグイと押し付けられていたし、手もいつの間にか取られてしっかりと握られていたから、逃げられずにされるがままだった。
「可愛いなぁ」
そんな呟きが聞こえてきた。僕は友達の「可愛い弟が目の間に現れた感じじゃないか?」という言葉を思い出して、少し落ち込んだけれども、隣に座ったお姉さんの顔を見て、一気にあたたかい気持ちに包まれた。
「本、読んでくれた?」
「は、はい」
「どこまで?」
「い、一応、ぜ、全部、………」
僕がそう言うとお姉さんの顔はパアッと晴れ上がった。
「すごいじゃない! 面白かった?」
「はい、と、とっても。………その五で主人公が、思いの丈を言うところとか、すごく。………」
「うんうん、私もそこが一番好き。………何だか気が合うね、私達」
その一言に、僕はドキッとしてしまって、嬉しいやら恥ずかしいやらで、お姉さんの顔が見られなかった。
「そ、そんな、………」
「ふふ、そんなに緊張しなくていいじゃない」
「す、すみません」
「………もう一度してあげよっか?」
ふるんと、胸が揺れる。
「い、い、い、いえ、もう大丈夫です、もう大丈夫です!」
僕は必死な思いで顔を上げて、彼女の顔を見つめたけれども、綺麗で、可愛くて、見れば見るほど頭が真っ白になってきて、やっぱり視線を下げたら、今度はお姉さんのおっぱいが目に飛び込んできて、結局は膝の上にある自分の手を、眺めるだけになってしまって、吹き出したお姉さんに、
「冗談だから、ね? ほら、分かったから」
と、しっかり握り込まれた手を包まれて、ようやく安心出来たけれども、
「でも、してほしかったら、いつでもしてあげる」
と、耳元で囁かれて、三度、穴があったら入りたくなるような、こっ恥ずかしい気持ちで一杯になってしまった。
僕はそれから、お姉さんと本の感想を言い合ったり、宿題を教えてもらったりした。ずっと緊張しっぱなしで、喉がカラカラに乾いて、変な声を出してしまわないか心配だった。でも、お姉さんは優しかった。言葉に詰まった僕に、
「大丈夫、大丈夫。間違ってても笑わないから、ちゃんと自信を出して言ってごらん?」
と言いつつ頭を撫でてくれたり、それで間違っていても、
「これはこうしたかったんだよね?」
と、こちらの意図を読み取ってくれる。でもやっぱり、ちょっと子供扱いする癖があって、ついあくびをしてしまった時なんかは、膝をぽんぽんと叩いて、
「空いてるよ」
と嬉しそうに笑う。
外はすっかり夕日が沈んで、東にある山はもうすっかり暗くなって、窓の外からはカラスの声が聞こえてくるようになっていた。
「そろそろ帰ろっか」
お姉さんがぼんやり外を眺めながら言った。
「あんまり遅いと、お兄ちゃんが心配するからね」
と、くにゃっと笑った顔に、僕は何故か言い知れない悔しさを感じた。それが何だったのかは分からないけれども、何か、僕に向けていた笑顔とはまた別の、別の、別の感情があるような気がした。でも、気がするだけで、たぶん「お兄ちゃん」と、お姉さんの口から僕以外の男の人を出されるのが、ただ嫌だったんだと思う。だって、「お兄ちゃん」だから、相手は家族なのだから。
教科書とか、ノートとか、その他文房具を片付けている時に、僕は思い切って、お姉さんに噂のことを聞いてみた。僕にはどうしてもお姉さんが、友達の言うような無愛想な人には、見えなかった。
「噂、………ねぇ?」
と、お姉さんも困ったという感じだった。
「んー、………知ってるけど、んー、………君は信じるの?」
「ま、まさか!」
「ふふ、良かった。じゃ、こうしよっか。お姉さんの本当の姿は、私達だけの秘密、………ということで」
これを言った時のお姉さんの顔は、いたずらっ子のような無邪気な顔だった。
僕はそれから、お姉さんに手を引かれて正門前まで行った。もう、お別れなのだと思うと、寂しくって、手を離したくなかったけれども、ただ握りしめられてるだけだったから、いつしかあのあたたかい感触は無くなっていた。
「家はどこ? よければ送っていってあげる」
「○○町なので、あの、いつもそこのバスで行き帰りしています」
「そっか。じゃあ、お別れだね」
「はい、………」
僕は、お姉さんが「お別れだね」と言った時には堪えていた涙が、途端に滲み出してくるのを感じ取った。幸い、僕は背が低いし、ずっと下を向いていたから、こんな格好悪い涙を見られずに済んだ、―――と思っていた。
「おいで」
その優しい言葉に、ふらふらと彼女に縋り付いて、その胸元に顔を埋めた。背中には手が回されて、しっかりと抱きしめられ、息が出来なくて苦しかったけれども、それでもお姉さんの優しい甘い懐かしい匂いに、僕の気はどんどん和らいでいった。校庭から人が出てくる気配がしても、お姉さんは抱きしめるのを止めなかった。かなり目立つ場所だったのに、誰も僕たちを見咎める者は居なかった。足音はそのまま過ぎ去って行って、僕はその時、お姉さんの体と一つになったんだな、と心付いた。僕の体はお姉さんの体の一部になってしまって、だから誰も何も言わずに通り過ぎて行くんだな、と思った。僕はもう既に意識しか残って居ないんだな、とも思った。このままお姉さんと一生を過ごすんだな、とさえ思って嬉しくなった。―――けど、気がついた時には、僕の体はお姉さんの体から引き剥がされていた。
「もう大丈夫そう?」
「うん」
「気持ちよかった?」
「う、うん」
「ん、素直でよろし。――ね、そういう感じで、寂しかったら、ちゃんと寂しいって言うんだよ?」
「うん」
「お姉さんには甘えていいからね? いつでもいいからね?」
「うん」
「恋しくなったら、ちゃんと呼ぶんだよ?」
「うん」
「じゃあ、………」
チュ、………と、また額にキスをされる。
「ふふ、ばいばい」
ぼんやりと後姿を眺めているうちに、また寂しくなって、追いかけそうになった。外はいよいよ夕焼けの光が無くなって、通りを行き来する車の光と、街灯の光がまばゆく目に飛び込んできたけれども、雲の上からチラチラと見える月の光だけは、ほんのりと、僕を姿を照らしていた。頭の中は、お姉さんが「お兄ちゃん」と言った時の顔が思い浮かんでいた。だってあの顔が僕の中で一番可愛く見えたのだから。………
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kkagneta2 · 4 years
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未完1
全部書き直す予定なので投稿はなしだけど、中々な様な気がするので許して…
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kkagneta2 · 4 years
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予定
おっぱいもの2つ、ふたなりもの2つ(実質一つ)、長身女性もの1つ、怪力娘もの1つ。
忙しくてネタばかりが溜まってて色々とうずいてたまらん。
追記:おっぱいもの一つ追加。
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kkagneta2 · 5 years
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夢の女性
長身女性もの。4k文字程度。
 昔から、俺はある夢を執拗に見続けている。その夢の中では一人の女性が出てきていた。場所はどこかも分からない部屋の中で、彼女はすぐ外、ドアのところに立っていた。すらりとした脚に、それに反してむっちりと肉の詰まったお尻、くびれた腰に、またもやそれに反してとてつもなく巨大なおっぱい。赤いドレスのようなものを大きく膨らませて、彼女が腰をくねらせる度にゆさゆさと揺れる。そんな極上とも言える彼女はドアの枠に手をかけて、妖艶に微笑んでいるようであった。「よう」と言ったのは遠目から見たからではない。本当に見えないのである、顔がドアフレームに遮られて。それほどに、彼女の背は高かった。俺は毎度のこと、その迫力に押されて呆気にとられてしまい、声を上げられずにいる。口をパクパクとさせて、一体何なんだ、一体誰なんだ、一体ここはどこなんだ、と、そんな考えが堂々巡りして、後退りすることすら出来ない。が、誰だってそうなるだろう、あんな極上な体でなくっても、見上げるほどの女性が目の前に現れれば、つい目を見開いてしまうはずである。彼女はそんな俺を見て笑う。笑ってドアをくぐって来ようとする。ちょうどドアの枠に手をかけて、腰をかがめたその時、目が覚めてもどかしい思いをする。そして一日中をあの体を思い出しながら悶々と過ごし、妻が寝静まった頃合いを見計らって手淫をする。
――と、言うのが、近頃頻繁になってきている。はっきり言ってたまったものではない。夢を見る度ごとに彼女の体が頭の中に強く残って、日中であっても体がうずき、トイレに駆け込むことが明らかに多くなったし、妻の体では俺の獲物は立ち得ないので、もう2、3年はセックスレスである。魔性とも言える彼女の体に、俺はこの身が焼き焦げるほどに、虜にされている。
そんなある日のこと、俺はあるパーティへと出席した。下っ端な俺ではあるけれども、社長やら役員やらなんやらかんやらも出席する大きな会食だった。会場としてはホテルだったが、宿泊することになったは別の豪華なホテルであった。そんなホテルに泊まること自体、滅多にないことであるから、早々にパーティから引き上げてきた俺は、ロビーにある椅子に座って人の往来を眺めていた。その中で特に目を引いたのは、一人の女性であった。あわやエントランスの扉に頭を打ち付けそうになりながら入って来たその女性は、まっすぐにフロントへ行き、何やら話をしているようであったが、隣でチェックインを済ませている男性の頭が、ちょうどお腹の辺りまでしか届かないほどに背が高かった。が、夢で見たような女性ではなかった。お尻はふっくらと、胸は中々に大きいが、どちらかと言えばスレンダー体型である。夢の中の女性は、もっと極端に胸とお尻が大きくて、全体的にむっちりとしている。それに、あの時フロントで見た女性はやたらと幼いような感じがする。そのうち、彼女は再びゆったりと歩き始めて、去っていったのであるが、途中でこちらの視線に気がついて笑みを浮かべる。それは夢の中で見た妖艶な笑みのようだとなぜか思った。一気に股間が固くなって、自分の部屋へと駆け込んで、手淫をした。
いつも以上に激しい自慰の後、俺はふかふかのベッドに身を投げ出し、ウトウトと宙を見つめた。先程のパーティは昼食会で、実はこの日は昼食会もあって、俺はそこに出席しなければいけなかったが、そんなことをする気も起きなかった。
――すごい背だった。
先程見た女性を思い出す度にそう思う。脚だけで一体どれほどの長さがあるのか、隣に居た男性の肩ほどに股が来ていたから、股下120、130、140、150、……160は流石に言い過ぎだが、そう言われても驚きはしない。自分だと胸のあたりまで来ていたフロントのデスクから察するに、その身長はおそらく250センチほどか、もしかしたらもう少し小さいかもしれないが、それでも驚くべき身の丈である。
と、そこであることを思いついて、ホテルの部屋のドアの前に立ってみた。かなり大きいホテルなせいか、一つ一つの、――例えばエレベーターだったり、廊下だったりがかなりゆったりと作られているのであるが、このドアも例に漏れず、ホテルの一室とは思えないほど大きい。高さはおそらく230センチほどはあるだろう。ここに先程の女性を立たせてみると、ちょうど夢のようになるのではないだろうか? ――と思って、ドアの枠に手をかけてみる。彼女がよく部屋に入る際にやっていたことだ。彼女はたしか上1/3に手をかけていた。が、自分は下1/3よりちょっと上にしか届かない。そして、ほとんど彼女のシルエットしか見えなかった訳だけれども、ちょうどこういう造りのドアを埋め尽くしていたから、目の前に来ると相当威圧感を感じるはずである。また、胸元なぞはこの大きなドアの幅を超えていたのだから、余裕でZ カップを超えているに違いあるまい。
「信じられん」
そう呟いたのもしょうがないことだろう。もし、本当に居るのであれば、確実に��界一の身長、世界一の胸の大きさである。力も強いに違いない。そんな女性、居るわけがない、……などと思ったが、ロビーで見た女性を見た手前、 あながち否定することも出来なかった。再びムクムクと股間が固くなってきたので、俺は頭を冷ますためにも俺は部屋の外に出て、階段を下ってゆっくりとホテルを一周することにした。
帰りはいつもとは別のエレベーターに乗った。降りてみると妙に薄暗かったが、夜だったことと、間接照明がかなり雅に展示されていた生花を映していたことから、何も思わずに自分の部屋へと向かった。鍵はそのまま開いた。結局俺のモノは萎えることがなく、むしろ歩いているうちにどんどん固くなり、息苦しくなってきていたので、再びふかふかのベッドに倒れ込んだ。早いところこんな所を出て家に帰りたかった。ああ、そうだ、扉を閉めなくてはと、開け放たれたドアを見て思って、立ち上がろうとしたところ、足音が聞こえて来た。廊下は柔らかい絨毯敷のために、俺が踏んでもちっとも音なんてしないのだが、たしかに重い足音が聞こえてくる。そのうちに足音は部屋の前で止まった。気がつけば廊下は明るく、そして逆光で黒いシルエットとなった一人の人がドアの前に佇んでいるようだった。確かに女性である。赤いドレスを着て、胸元を異常に膨らませて、臀部を脂肪と筋肉で押し広げて、腰に手を当てて、もう片方の手をぶらぶらとさせて、そしてドアフレームの上から妖艶な笑みをもらしていた。廊下の光は、……彼女の体で遮られてほとんど漏れて来ていなかった。威圧感でどうにかなってしまいそうだった。悲鳴を上げようとしたが、口をパクパクとさせるだけになって、一体何なんだ、一体誰なんだ、ほ、本当に女なのか? 本当にこの世に居るのか? という考えが堂々巡りする。
「あらあなた、ここには来ちゃいけないのよ」
という声は想像よりもずっと優しげで、澄んだ声だった。こちらの返事を待たずして、彼女はドアの枠に手をかけて、腰をかがめて部屋の中へ入って来た。
「あっ、あっ」
「そんなに怯えなくてもいいじゃない。何も取って食おうなんて思ってないから安心して」
と、近づいてくるその体は遠目からの印象よりもずっと大きい。太ももも、ありえないほどに太い。お尻もありえないほどにでかい。胸の膨らみもありえないほどに大きい。顔はその胸に遮られて見えないが、ちらりと見た感想を言えば、今まで見た女性の誰よりも美しい。
「それとも取って食われたい子かしら? ……ふふ、そのようね」
と、彼女は俺の股間を撫でつつ言う。
「じゃ、行きましょうか」
「ど、どこへ、……?」
「決まってるじゃない。私たちの部屋よ」
その提案はあまりにも魅惑的すぎた。もはや抗う術は無かった。俺が頷くと、彼女は俺の体を抱き上げた。ひょいと、軽々と持ち上げた。そしてあろうことか、ドレスの胸元を大きくはだけさせ、あの巨大な谷間を顕にさせると、
「狭いけど、楽だから」
といたずらっぽく言って、俺をその谷間の中へズブズブと押し込んで行った。俺は彼女に抱きつくような格好で、胸と胸の間に挟まってしまった。暖かいどころか熱くて、いい匂いがして、くらくらしてきて、天国のようである。頭はおっぱいの中。呼吸が出来ずに苦しいが、彼女の身につける下着になったような心地からすればどうでもよい。ちょっとして彼女が歩く振動がこちらにも伝わってきた。もう心地よすぎて焦点しそうになっていた。妻のことはもはや頭には無かった。
「あっ、ふぁ、……」
「大丈夫、大丈夫。私たちが満足したら返してあげるから」
とスリスリとドレスの上から背中を擦られる。その優しさも心地よすぎて、俺は彼女の部屋まで持たずして気を失って、目が覚めた時には、
「明日もまたあの部屋へまた来なさい。たっぷり楽しませてあげるから」
というメモ書きを横に、本来の自分の部屋で寝ていた。もちろん行った。人生で最高の体験だった。
後で聞けば、あのホテルには別棟があったらしく、建設当初からとある母子に占拠されていて、普段は行けないのだそうである。なぜ、俺があんなに簡単に行けたのかは分からない。しかし、行けたものは行けたのである。この時の体たらくが原因で俺は仕事を辞めさせられ、結果、妻とも離婚することになったが、あの女性を味わった事実からすれば、そんなこと些細なものであろう。あれ以来、あの夢を見ることは無くなったが、この上なくどうでもいい。今となっては現実の方が、俺には艶めかしいのだから。
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kkagneta2 · 5 years
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従妹
 長身女性もの。前の短編に加える予定。5k文字程度。
「お前、涼香ちゃんのこと覚えてるか?」
「すずか? 涼香ってあの俺の部屋で縮こまってたやつか?」
「そうそう。今度の休みに遊びに来るんだって」
「へー。たしか従妹なんだっけ」
「母方のな。なんか今、すごい背が高くなってるらしいぞ」
「ふーん」
「お前、抜かれてるかもな」
「やめろよ。冗談じゃない」
 と、言う会話があったのが先週のこと。そしてその「涼香ちゃん」という子を迎えに行っているのが今のこと。楽しみというよりは面倒でしかない。車の中から見える景色は走っても走っても変わらず、眠くなってくる。
気がつけば駅についていた。寂れてはいるけれども、新しい駅舎は毎日通学のために訪れるものである。今日は休日なので人は少ない。
「なんだ、寝てんのか」
という声がしたが、眠いから寝た。そのうちに、ドアを開ける音と閉める音が少し間を開けて聞こえてきたので、自分を放っといて降りたのだろう。車のエンジンの音が妙に心地よい。日が胸に当たって気持ち良い。
と、突然外が賑やかになったので耳を澄ますと、程なくしてバタバタバタとドアを開ける音が聞こえてきた。隣の席に誰かが座ってくる気配がする。
「あ、寝てる」
と、ずいぶんと可愛らしい声。両親は前に座っているから、これが「涼香ちゃん」の声だろうか。大人びても、子供っぽくもない心地よい声である。
「ごめんね。しばらくしたら起きると思うから。あ、起こそうか?」
「いえいえ、それは可哀想ですから、大丈夫です」
と、そのうちに車が動き始めた。両親と涼香はまだ話している。
そっと薄めを開けてみた。黒い長い髪の毛、白っぽい服、細長い腕、綺麗な横顔、……目を開けそうになったが、ハッとなってまた狸寝入りをした。今度は白い足が見えた。膝をこちらに向けて女らしくパタンと横に倒して、なんだかずいぶん窮屈そう。
「向こうの犬、……なんて言ったっけ?」
「ラムネくんです、ラムネくん」
「あの子かわいいね~。今度行った時撫でさせてくれや」
「もちろんです! 撫でられるの好きなんで、きっと喜ぶと思います」
なんて会話が聞こえるけれども、まどろみの中ではぼんやりとしか聞き取れない。カクン、カクンと船を漕ぎ始めて、いよいよ夢なのか現実なのか分からなくなってきた。
次に目が覚めた時にはもう家が見えていた。なんだか柔らかいものに頭を乗せている気がするが、はて、なんなのか。体を起こして初めてそれが涼香ちゃんの肩だということに気がついた。
「おはようございます、兄さん」
と笑顔で。間近であったことにもびっくりしたが、予想外に美しい顔だったから、そっちに驚いて目が覚めた。
「ん、……? 涼香、……?」
「おい、起きろ。着いたぞ―」
「はーい。――さ、兄さん降りましょ?」
と手を振ってから向こう側のドアに手をかけて、軽く押し開けて、外に出て、こちらを覗き込んで、
「兄さん、ほら」
と言いながら、グッと来て、こちら側のドアを開けてくれる。ようやく夢から覚めて、俺は太陽の元で伸びをした。どうしてあんなに眠くなったのか、不思議なほど頭が冴えてくる。
「おはようございます、兄さん。お久しぶりです」
と後ろから声がして呆気にとられた。あの綺麗な顔が今度はちょっと上に、――というのは悔しかったから、本当は頭一つ分ほど上にあったのである。
「おう、久しぶり」
としか俺は答えられない。
「あはは、眠そう」
「今日は朝から親父に起こされたからな」
そんな風な会話があって、俺たちは家の中へと入った。
涼香ちゃんの持ち物は簡素な鞄にキャリーケース、それと、行きがけに買ったというペットボトルが一本。彼女は俺の従妹に当たる。4歳違いなので今年中学2年生ということだが、会ったのは大昔の一度だけ、家族総出で俺の家まで遊びに来た時である。挨拶をしつつ、向こうの家の近況を述べつつ、お茶を軽く飲んでから、彼女の望みで俺の部屋に行くことになった。
「おーい、キャリーくらい持ってやれよ」
リビングのドアを閉める直前に言われてムッとする。階段の下で代わろうと思っていたから。
「いえいえ、大丈夫ですから」
と涼香ちゃんは言った。今日は客人なんだからと言って、手をのばす。少々強引にひったくって階段の下まで転がす。グッと持ち上げようとす、――
「んん?!」
上がらなかった。両手でも少ししか浮かなかった。そんなバカなと思った。さっきまで片手でグイグイ持ち上げていたから簡単だと思った。
「ああ、兄さん、そんな無理しなくても、……」
男の矜持である。一段、一段、確実に上って行く。ふっ、と軽くなる。
見ると涼香ちゃんが指をかけていた。それだけ。それだけで、あの重かったキャリーケースが持ち上がった。俺のcontribution はほんの僅か。
「ありがとうございます。後は私が」
と笑顔。
「わあ! 久しぶりだー!」
と、涼香ちゃんははしゃぐ。当たりを見回して、「懐かしいなぁ。あんまり覚えていないけど、このぬいぐるみは覚えてます」と俺の部屋に一つだけあるクマのぬいぐるみを取って、高く上げて、顔をうずめて、歓声を上げる。恥ずかしがり屋だった彼女は、昔、このぬいぐるみを肌身放さなかった。あのときも可愛いが、今のほうが魅力を感じる。
キャリーケースに何が入っているのか聞いたら、本だった。ところでなぜキャリーケースをここまで持ってきたかと言えば、ちょうど客間が改装中なのである。そこで白羽の矢が立ったのが俺の部屋。これも彼女の希望。
やっぱり彼女の方が背は高かった。裸足なのに見下ろされる。たまらなくて座ることにした。俺はベッドの上で、涼香ちゃんは俺の机の椅子。椅子が小さく見える。
色々と話した。互いのこと、互いの学校のこと、互いの過去のこと、だいたいは昔話に帰着して、俺が覚えていることを彼女は聞きたがった。クマのぬいぐるみはずっと抱えたままである。
「あ!」
と、涼香ちゃんが声を上げる。机の方に体を向け、机の上に顔を向いているので、何かを見つけたか。
「兄さんこの問題」
「あん? どうかしたか?」
「これ難しいですよね。うん、うん、ここをこうして、……あっ、兄さんも同じ間違いをしてる」
ふっふっふ、と笑うのが理解できなかった。奇しくも机の上にあるのは、ある難関大学の過去問題。どうして中学2年生の彼女が「これ難しいですよね」などと言えるのか。
「ちょっとまて、なんで分かるんだ」
「兄さん、ここは素直に計算しちゃダメですよ。たぶんこの問題の出題者はひねくれてるんです。回り道でしょうけれども、――」
と、手招きをして、ペンを手に持って、さらさらと俺の答案の続きに自分の答案を書いて行く。大きな壁を感じた問題が、あっという間に解かれて行く。
「模範解答はもっと回りくどいんですけど、こうするとちょっと楽ですよね」
「す、すごいな」
「ふふん、どうです? 結構頑張ったんですよ?」
胸を反らせて得意顔をする。だけど、俺には彼女が今しがたしたことが、未だに理解できない。
と、呆気にとられているうちに、机の上にあった参考書類を眺めて、手にとって、
「これ私もやりましたよ」
と、これも、これも、あれも、これもとページを捲って行く。戦々恐々とするしかなかった。彼女が「やった、やった」と言う本のだいたいは、半分程度で挫折したものばかり。もし彼女がひょっこり、「兄さん、この問題どうかしたか?」などと聞いて来たらお茶を濁すしかあるまい。どの教科も満遍なく勉強しているというのも怖い。いったい、なんなんだこの頭の良さは。
「ところで兄さん、何か分からないことでもありますか? こう、行き詰まってるー! とか、全然分かんないー! とか」
と、逆に聞いてくる始末。とてもではないが、キャリーケースの中にある本を聞く気にはなれない。況してや中学2年生の少女に教えを請うなど、出来やしない。
「いや、だいたい分かってるから大丈夫。強いて言うても暗記科目くらいやし」
と強がるのも、冷や汗が垂れる。話題は再び昔話に移って安堵するも、涼香ちゃんに負けた衝撃は心に残った。
気がつけば夕方となっていた。飯に呼ばれたから、階段を下って、一家で食卓を囲んで、かき揚げを頬張る。味はしなかった。喉にも通らなかった。
「涼香ちゃん、おっきくなったね~」
しばらくして母親が言った。嫌なことだけはすぐにする。
「いや~、ちょっと困ってるんですけどね」
「それでも綺麗だからすごいよ。お母さんからね、びよんびよんに伸びてるって聞いて、どんなことになってるのか気になってたんだけど、まさかこんなに綺麗になってるとは思わ���くって」
「いえいえ、でかいだけですよ」
「身長いくつや」
と今度は父親が言う。
「身長ですか? 確か182センチくらいだったかな。でも今年の身体測定の結果だから、今はもう少し大きいかも」
「おぉ、俺より高い」
と言って、
「で、お前はいくつだっけ」
と、こっちに話を振ってくる。一家の視線、そして涼香ちゃんの視線が突き刺さる。
「162」
短く言った。
「20センチも低いか~。お前では釣り合わんな!」
「ちょっとお父さん、そういうこと言わないの」
「そ、そうですよ!」
「まぁでもあれだな。お前があと20センチ大きくなったところで、涼香ちゃんには合わんかな」
「こら!」
「兄さんは兄さんですから!」
さっきから涼香ちゃんが地味に反論しているのが救いか。だがこうもはっきりと言われると痛むのが男心いうやつである。変わらずいじめてくる父親に目を背けた彼女は、少しこっちに寄って、手首を握って来て、首を横に振る。
「ちょっと二人で立ってみてくれ」
「嫌や」
「ちょっとでいいから、な!」
渋々俺は立ち上がった。こうなったらもうお終い、俺をいじめ抜かなければ気がすまないのである。もっと渋る涼香ちゃんの手を取って、立ち上がらせ、ぐんぐん上って行く彼女の顔を見た。背中合わせになれと言うからなった。
「肩ぐらい、……かしら?」
「足が長いんだな。うちのは短足だな」
「もういいだろ?」
「おう、もういいぞ」
「はぁー、……ほら、涼香ちゃん。……」
「兄さん。……ごめんね」
と言ってぴったりと引っ付いてくる、その優しさに勘違いをしそうになったけれども、似合わぬからと押し殺してしまった。
  「良いお風呂でした」
「あぁー、……」
「兄さん大変でしたね」
「あー、……あんなにいじめられたのは初めてだー」
あの後も散々いじめられて、心は割とズタボロである。背の高い低いはなんとも感じなくなったが、釣り合う釣り合わないでの否定は、さすがに辛い。
「気にしちゃダメですよ、兄さん」
ベッドの上でゴロゴロしていると、その真横に座ってきた。
「外見が釣り合う釣り合わないなんて、気持ちさえ合えば関係ありませんから」
「………」
「私だって嫌な気がするもん、ああ言われたら。でももうへっちゃらですよ。ま、こんな身長だから、慣れてるっていうのもあるんですけどね」
「だけどな、……」
「まぁまぁ、もう今日は寝ちゃいましょう! それでスッキリです!」
ピッ、という音がして電気が消えた。普段はまだ起きている夜の10時、眠くなるわけはなく、二人してポツポツと暗い中で語り合った。勉強のこと、大学のこと、友達のこと、ペットのこと、趣味のこと、……ほとんど初めて会うというのに、話題は尽きなかった。
「ところで、なんで来たか分かりますか?」
と、そのうちにそんなことを聞いてきた。
「それ聞きたかった。なんでだ?」
「聞きたいですか?」
「教えてくれ、――」
不意打ちとはまさにこのことか、そう言った途端、唇に柔らかくて温かい感触を感じた。
「ないしょ! おやすみなさい!」
「は? ちょっとまて、涼香、おい、今なにをし、――」
「おやすみなさーい」
「涼香!」
そうやって呼んでも、後は「ふふふ」という不敵な笑い声が聞こえるばかりで、気がついた時には寝息を立てて、涼香ちゃんは眠ってしまったのである。
「くそ、……寝れるわけないじゃないか」
と、俺がつぶやくと、もう一度だけ彼女が笑ったような気がした。
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