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#このあと滅茶苦茶セックスした
shredderwastesnow · 9 months
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クィアたちのZINE交換【後編】
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前回の記事に書いたが、ZINE交換会で、私は7冊のZINEをいただいた。 今回の後編では、それぞれを読んだ感想をまとめてみる。
※作者がセクシュアリティをどの程度オープンにしているか分からないため、ZINEの作者名は伏せています。 ※オンラインで公開・販売されているものについては、末尾にリンクを貼っています。
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■「ノンバイナリーがわからない」というテーマ詩またはエッセイ シンプルな紙面から、生きているだけで「男/女」と申告させる社会への失望が伝わってくる。これまで深く知る機会のなかった生きづらさに気付かされる。 「お兄さん」「お姉さん」という呼びかけも、時として相手のメンタルを削ることを学んだ。会話の端々で、知らず知らずのうちに相手を「男/女」のカテゴリーに当てはめていたかもしれない……と怖くなる。
「男/女」のあわいにいる人と同じ社会に生きているのだと、もっと意識して生活しなければと思う。 そして、無意味な性別の振り分けをなくす方向に社会を変えることも必要だ。当事者を死に追いやるレベルの苛烈なトランスヘイトが実際に起きている今、一層強く感じる。 シスジェンダーの自分には、まだまだ見えていないことがあると気付かせてもらえた一冊。
■YOGA HAMSTER STAMP ヨガのポーズを、素朴なハムスターのイラストと共に解説するZINE。 モフモフしたハムスターが、1ページごとに「チャイルドポーズ」「猫のポーズ」などを決めている。手足が短いなりに頑張っていて可愛い。
様々な研究で、クィアが精神を病む率は、そうでない人よりも高いことが分かっている。 体をほぐし、リラックスする時間を意識的に取ることも、クィアとして豊かに生きる上では大事だなと認識した。いや……いっそハムスター飼う?
■LIFE LIFE LIFE vol.3 そうだ、京都行こう 写真が趣味の6人(Gender Identityは男性寄りと思われる)が、京都で撮った作品をまとめたZINE。 作品と共に、撮影エピソードも載っている。歴史ある町並みや自然の佇まい、旅の興奮が伝わってくる。
ZINE作りに参加した6人のうち、3人は一緒に撮影旅行をしたそう。 1人では挑戦しづらい着付け体験に連れ立って行き、着物姿で街を散策しながらお互いを撮り合う。スーパーで食材を買い、airbnbの宿で一緒に料理をする。朝は古い喫茶店でモーニングを楽しみ、香り高いコーヒーを優雅に味わう。 エッセイパートで若者たちの予測不能な旅の面白さを追体験しながら、友達が家庭を持ってしまった今はこんな旅行もしづらくなった……と少し切なさもよぎる。
なお、この3人のうちの1人が、旅先で気分が落ち込んでしまったときに2人がそっとしておいてくれて嬉しかったと書いており、印象に残った。 自分が相手より優位に立っていることをアピールしたり、キャバクラなどの空間で女性にケアしてもらいながら親睦を深めたりする「ホモソーシャル」なノリではなく、お互いに褒め合ったりケアし合ったりする友情の育み方が、読んでいて気持ちよかった。 作者のクィアネスについては特に触れられていなかったが、シスへテロ男性らしさを要求されないコミュニティが、作者の精神を支えているのかもしれない。
■Q&Q スモールトークが苦手なわたしのための質問カンペZINE A6版の手に収まるサイズ感と、ポップなイラスト、ドミノピザの箱のような色使いが可愛い。 イベントで初対面の人と実のある対話ができるようにという心遣いから、各ページに「今日はどうしてこちらへ?」「今の社会に足りないものはなんだと思いますか?」などの質問が並び、読者(ユーザー?)はページを指差したりめくったりして会話を進めるという仕組み。便利!
趣味や好きなカルチャーに関する比較的軽い質問もあれば、「どんなジェンダーの相手とでも、友情は成り立つと思いますか?」「自分の力で社会は変えられると思いますか?これまでに何か変えられた経験はありますか?」など、ぱっと答えられないような深い質問もある。
後ろの方には、作者が推している海外ドラマや本などの紹介も付いていて、世界が広がる。 最近はセクシュアリティの問題を扱った作品の数が増えて嬉しい反面、作り手側に深い理解や考察のない作品は観ても傷つくだけなのでうかつに手を出せないという現実もある。 セクシュアリティについて日々真剣に考えている人から、口コミで良作を教えてもらえるのは有難い。
読んだのがイベントから帰った後だったので、作者の方と会場でこれを使って喋れたら更によかったかも。次回に期待。
★おまけ★ 「どんなジェンダーの相手とでも友情は成り立つか」について: 友達になれないと感じるジェンダーの人は思い浮かばないが、テレビに出ているゲイやトランスジェンダー(ドラァグクイーン)に時折見受けられる「自由=性的に奔放」という考え方は苦手だなと思う。 タレントの恋愛相談に「積極的にどんどん行っちゃいなさいよ!そうやって経験を積んで人は大人になるんだから~」と答えるオネエ言葉の人たちは、恋愛やセックスをしない自由という発想がなさそうなので、友達になれる気がしない。知り合い止まりにしたい。 でも、あの人たちも、テレビが作り上げたステレオタイプを演じさせられているのかもしれない……どうなんだろう。 ドラァグクイーンでも文化人寄りのヴィヴィアン佐藤さんあたりは、恋愛相談に対してもっと深みのある言葉を返すのではないかと思う。
■アセクシュアルである私がどのようにしてサトシに救われ、今回の件でどのようなことを考えたか 2022年の冬、25年もの期間にわたって放送されてきたアニメ版ポケットモンスター(以下「アニポケ」)の主人公が、次のシーズンからサトシではなくなることが発表された。 この��ュースは、アニポケのオタクであり、アセクシュアルでアロマンティック傾向のある作者にとって、人生を揺るがす出来事だった。
作者は、小学校時代から自身のセクシュアリティを自覚し、友人の恋バナについてゆけず疎外感を味わってきたという。 恋愛に無頓着でありつつポケモンバトルに魂を燃やし、そのまっすぐな生き方で人々に愛されるサトシの姿は、作者にとって救いだった。 脚本を書いた人は意図していなかったかもしれないが、テレビの前でアニポケを観ていた一人の小学生は、恋愛がなくても充実した人生を送ることができるというメッセージを受け取ったのだ。
主人公の少年が戦いを通じて成長するストーリーの少年向けアニメでは、多くの場合、サイドストーリーとして恋愛が描かれる。 「るろうに剣心」「NARUTO」「鬼滅の刃」など、主人公と女性キャラクターのカップルをぱっと思い浮かべられる作品は多い。 これらの恋愛は基本的に異性愛であり、同性カップルは登場しない。ほとんどの少年向けアニメの世界観は、シスへテロ恋愛規範に基づいていると言えるだろう。 こういった状況にあって、物語に恋愛を持ち込まないアニポケは、作者にとって抵抗なく楽しめる希有な作品だった。 サトシに好意を持つ女性キャラクターが登場しても、サトシにはぴんと来ず、「そんなことよりバトルしようぜ!」という態度を取る。そして、周囲はそんなサトシを責めたり馬鹿にしたりせず、「まあサトシだからね」と受け入れる。 こういった物語に触れることで、恋愛感情の湧かない作者は、自分自身も肯定されたと感じていた。
しかし、サトシが主人公のアニポケは、もう制作されない。作者の心の支えが、一つ失われてしまうのだ。
そして作者が危惧しているのは、「NARUTO」→「BORUTO」のような続編への移行だ。 「NARUTO」の続編である「BORUTO」は、「NARUTO」の主人公うずまきナルトとヒナタの息子が主人公。 この展開によって、主人公が異性と結婚して家庭を持つ=ハッピーエンド、という原作者と制作者の世界観が鮮明になった。 もし、同じように次期アニポケの主人公がサトシの子供になってしまったら――それはつまり、制作者の中に、「バトルに熱中していた少年も、大きくなれば異性を好きになって恋愛→結婚・セックスするのが当たり前」という考え方があることを意味する。 これまでアロマンティックやアセクシュアルを肯定する存在だったサトシが、シスへテロ恋愛の模範として再定義されてしまうことを想像し、作者は何度も泣いたという。 やり場のない不安を整理すべく、このZINEが作られた。
このZINEが突きつけてくるのは、恋愛や性愛のない人生を肯定してくれる物語の少なさだ。 純文学などの中には探せばあると思うが(谷崎潤一郎「細雪」とか)、沢山の人が楽しむアニメや漫画などのポップカルチャーの中に、主人公が恋愛なしで満たされている作品を見つけるのは難しい。 2022年、主人公がアロマンティック・アセクシュアルのドラマ「恋せぬふたり」がNHKで放送され、話題を呼んだ。 このような、恋愛に縛られない幸せの形を提示できる物語が、もっと作られてほしい。 そして、私も何か書けるかな……。
https://note.com/ichijosayaka_59/n/n93046e8a589f
■2306 最悪のプライド月間を、なんとかやり過ごすZINE 1968年にアメリカで起こったクィアによる反差別運動(通称「ストーンウォールの蜂起」「ストーンウォール事件」)にちなみ、6月は「プライド月間」とされている。 今年の6月も、世界各地でセクシュアルマイノリティへの理解を深めるキャンペーンやイベント���行われた。 日本でもこうした取り組みは盛り上がりを見せたが、一方でLGBT理解増進法案が保守勢力によって骨抜きにされるなど、国や社会によるクィアへの抑圧が鮮明になるような出来事もあり、国内のクィアにとっては希望を感じづらい1ヶ月となってしまった。
このZINEには、ゲイであり鬱療養中の作者がこの6月をどう過ごし、何を考えたかが記録されている。文章の合間にゆるい漫画や犬の写真が配置されているので、深刻な内容があってもそこまで肩肘張らずに読めて有難い。
鬱によって思い通りに動かない身体。過去に受けた性被害のトラウマ。 反差別というメッセージが限りなく薄められたLGBT理解増進法案や、SNSでのトランスバッシング。 彼氏が両親の留守中に犬の世話をするため実家に帰ることになり、こっそり同行させてもらうという楽しいイベント。 彼氏が両親にカミングアウトしていないため、表向きは友人を装わなければならない現実。 彼氏と犬のユズちゃんと共に過ごした穏やかな時間。 無職である後ろめたさ。梅雨時の湿気。 その時々の作者の感情が、グラデーションになって迫ってくる。
二人と一匹の間に流れる温かい空気を感じながら、二人が堂々と一緒に暮らせないことを悔しく思う。 また、病気などの理由で一日八時間労働が難しい人が社会から零れ落ちてゆくような現状も、もっと改善できないものかと感じた。 (「Marriage for All」に署名し、選挙の時も人権意識のあり��うな人に投票するようにはしているが、まだ足りないんだろうな……。) 一応、作者が欲しいものリストを公開した時に、応援を込めて1品ポチッとした。まだ足りないだろうけど。
※「はじめに」のみ公開 https://nigenige2020108.hatenadiary.jp/entry/2023/06/30/090000
■恋愛も結婚もセックスもしたくない人がいるんです アロマンティック・アセクシュアルである作者が、自身のこれまでの人生と現状、将来のビジョンをエッセイ漫画にしたZINE。
作者は30代で、性自認は女性。アロマンティック・アセクシュアルでありつつ、BLが好きで百合も読む「腐女子」。 自分が恋愛や性愛の当事者になりたくはないが、フィクションの恋愛や性愛は読者として楽しめる、ということになる。
恋愛を経ての結婚をする気はないが、何かあったときに助け合える人がいてほしい気持ちもあり、いわゆる「友情結婚」にも興味がある。 助け合うことと恋愛・血縁が分かちがたく結びついている現代社会では、恋愛感情や性欲がなかったり少なかったりすると孤立しがちだな……と改めて認識する。 「恋愛経験がない/少ない=人間的に未熟」というバイアスに苦しめられるくだりは、共感しかなかった。
平日は金融機関で働き、週末にオタ活を楽しむ作者の人生は、ちゃんと充実している。 変わるべきは、「人生には恋愛と性愛があるべき」という価値観を振りかざし、無駄なコンプレックスを味わわせる世間の側だろう。 恋愛・性愛のない豊かな人生はあり得るという希望を見せてくれる、爽やかな読後感のZINEだった。
※8/11時点でこのZINEは完売、続編は購入可能 https://hinotoya-akari.booth.pm/
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こうして感想を並べてみると、作者7人のセクシュアリティと抱えている事情が千差万別であることに、改めて驚く。 本やウェブで「LGBTQ+とは?」みたいな解説を読んだだけでは絶対に見えてこない現実と実感が、それぞれのZINEから生々しく伝わってくる。
社会がカテゴライズした性別や恋愛・性愛規範に自分を無理矢理当てはめて解釈しようとすると、どこかで無理が生じる。 クィアはそうでない人より無理をしなければならないが、自分がクィアだと明確に認識していない人も、実は無理をしていることがあるのではないかと思う。 (「性自認が男なのにメイクしたいと思うのは変かな?」「恋人との時間より友達との時間が楽しいと思う私は間違ってるのかな?」といったように。)
既存の枠組みに囚われずに自分のセクシュアリティを語ることは、社会や権力の都合によって奪われた自分の一部を取り戻し、自分の生を自分に合う形にカスタマイズする第一歩なのかもしれない。
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pm0305 · 2 years
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このあと滅茶苦茶セックスした
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larkinacage · 9 months
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TW4のマサムネがテレパスに覚醒しその力を暴走させてしまった時の話。拙さすぎて恥ずかしいのでそのうちまた消すかもしれません。
 春。  眠りの浅い、深夜にマサムネは目を覚ました。過去の忌まわしい記憶の夢が蘇る。  スマートフォンの時計を確認すれば午前三時。クソッ、と呟いてスマートフォンを枕元に戻し目を瞑るが、眠気など来ようはずもない。マサムネのふたつある「母国」の片方であるイギリスと、現地校時代の、忌まわしい記憶は目を瞑っても網膜にこびりつき、視界から振り払えないでいる。 --- 「Mr.ディケンズ。あなたの音楽テスト結果を発表します。弦楽器、A++。打楽器、A。……でも相変わらずコーラスはB、独唱はC-。あなたのご家庭の経済状況とご両親が許すのであれば教師を雇うなり、専門スクールに通うなり、ここ以外にもレッスンを検討なさいね」「……わかりました、Ms.オファレル。失礼します」  場所はロンドン現地校の音楽教室。未婚の中年女教師からテストの結果を受け取りに来たのは、マサムネが最後。用紙を丁寧に折り畳み、通学鞄に入れると『Have a nice Summer Vacation.』と女教師に告げ、後ろ手で防音扉を閉める。テスト用紙を受け取る際、脳裏に痺れを感じたのは学年度末の疲れだろうか。  気分を切り替えるために学校の自動販売機で、コーラ缶を買い一気飲みする。一瞬だけ、だが気分は晴れたものの、まだ脳裏の痺れとざわつきは止まない。音楽テストの歌唱力の結果が惨敗だった以外の理由の理由も思い当たらない。ながらも、「いつもの待ち合わせ場所」校舎中庭の樹の下で、クラスメイトで恋人のエルシーの到着を待つ。 「Hi!ごっめーん、マサムネー。ちょっとあたしセンセに赤点の結果で怒られちゃってさー。こればっかは仕方ないから、ごめんね?」と小走りにやってきたのは、茶色の髪を揺らし青い目を輝かせながら語る恋人エルシー。マサムネに右手で『ハイタッチ』を求める。  「いんや、気にするこったねーさ。オレも音楽のテストが惨敗だぜ?」そう言ってエルシーに『ハイタッチ』をし、指先と指先が触れたその直後、ある【思念】がマサムネの脳裏を電光掲示板のように、高速によぎる。   『(……またセックスとか求められるのかな……マサムネは、男子は、……そういうことばっかり考えてるのかな……やだな)』  感の鋭くない愚鈍なマサムネにもこれはわかる。読み取れる。察することが出来る。明らかにこれは『彼女の裏の心』である、と。  なん、だ。これは。これはなんだ。テレパシーか何かか?オレ�����能力者にでもなってしまったのか?恋人のエルシーがその後も語り続ける声も聞こえず、ただただ困惑狼狽しするしかない。 「……どうしたのマサムネ?あたしの話聞いてる?放課後シナモンロールが美味しいカフェに行こうよって話……聞いてた?」  エルシーの顔は心の底から心配そうでも、マサムネの脳裏の電光掲示板は、彼女の不機嫌さを赤い文字で点滅アラートし続ける。 「い、いやなんでもねー! なんでもねーよ! オレ、ちーと腹具合がベーヤーだからデートとかまた今度。エルシー!んじゃまたー!」  彼女のウェイト・ア・ミニットの声も聞かず、その場から全力で逃げ去るマサムネ。スクールバスの存在も忘れ、校内から全力疾走で駆け抜け逃げ出す。  校内を出ても街頭周囲は昼時故か人混みで多い。人混みを掻い潜る最中でも電光掲示板の如く、無差別に他人の思念が脳裏の電光掲示板に乱入してくる。  今日は何を食べよう、上司が鬱陶しい、ジャップの子供がぶつかってきた、昼休み明けだるい、エトセトラ、エトセトラ。  それらは浅い表層思考であっても『他人の心の声』。無差別に聞かされるのは苦痛でしかなかった。耐え切れず、すえた匂いの裏路地に篭もり、一瞬の安息を得るも、どういうタイミングで家路につけば、家についたとしても家族にどう相談していいのかわからない。もう、もういやだ。こんな声。何も聞こえない。聞きたくない。誰か。誰か。誰か。助けてくれ。    誰か。  この忌まわしい電光掲示板の赤文字から。
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natsu16g · 2 years
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20221018-19 徳島旅!
18 火曜日
仕事終わり、一番遅い便、JAL463で徳島へ。内山さんが仕事終わりに急いで来てくれて、送り届けてくれる。羽田空港で鳩サブレ買って携えて徳島へ。
先週末から調子良くなくて、土日もお姉ちゃんち行けなかったから心配してたけど、行けてよかった。新たな発見、4日筋トレ休んでも暴飲暴食しても体型は変わらない。お風呂に入れなくても内山さんがいれば眠れる。4日よくよく休めば、回復できる。
徳島空港にますに迎えに来てもらう。うれしい。久しぶりだったけど、なんか、久しぶり感ない。面と向かって会えるのが本当に嬉しい。テレビ電話苦手なのは秘密。
空港を出て、徳島ラーメンを食べにいく。醤油かと思ったら豚骨!590円!安!学生みたいな若者ばっか。ひっさしぶりの豚骨うまかった〜。そのあと翌日の朝ごぱんを買うべくパン屋へ。BLTサンドとガトーショコラを買う。そ���でスーパー銭湯でのんびりお湯に浸かり(おっぱいぷるぷるお姉さんがいた/ますの月経カップがずれて血まみれ/体重58キロ)セブンで生チョコアイス買って、ますんち。おばあちゃんが先日亡くなったらしく、お線香をあげさせてもらう。
これまたひさしぶりなビールをいただき、生ハムやらチーズやら食べつつひたすらおしゃべり。内山さんのことも話す。内山さんのこと話せたの、嬉しすぎた〜〜。そんで話してて気付く、わたし内山さんのこといーっぱい聞いてほしいんだわ。なんだよ、ふつうにふつうにすきじゃん。の気持ち。
ますの友だちのラジオの話、日本のこのごろの話、内山さんの話、月経カップの話、セックスの話、東京と地方の話、いろんなはなし、26時まで話して同じお布団出眠る。
朝は6時?くらいから寝たり起きたり、7時くらいに一葉の声を聞いて完全に起きる。はじめましてして、つんつんして、そのあと一緒に朝ごはん食べて、ちょっとずつ仲良しになる。
畑の水やりをして、ひろきくんにはじめましてして、出発してスーパー「セブン」に寄りカフェオレと海苔買いますにお茶を買ってもらいつつ眉山へGO!天気良い。そんで道の駅ぐるぐるなるとに行きお昼ごはん(ぶりぶり鰤丼/テイクアウト)を食べ、渦潮を見に鳴門大橋へ。
一葉、車の中で泣きすぎてヨダレのゲボを吐く。
渦潮すごかった!ぐるぐる。内山さんは高くて怖くて歩けないでしょう、といった様子のところ。一葉大はしゃぎ。ここでめちゃくちゃ仲良くなる。抱っこしまくりかわいすぎ。なぜか、一葉に対しては友だちの子、じゃなくて、家族の子、の気持ちになる。自然にちゅーしそうになりあぶねえとなる。人んちの子だからね、勝手にちゅーはいけないよね。聞いたらいいよって言ってくれそうだけどさ。
帰りにまた道の駅ぐるぐるなるとに寄りアイスを食べて、ますんちに。一葉とバイバイしてます母にはじめましてして、ふたりでドライブしながら中出家の畑を周りつつますの新しいお家を見に行く。佐那河内村、山奥〜!いいとこ。蕎麦の実は全滅。シカに遭う。
いい時間になったので空港の近くのカフェで晩ごはん食べておしゃべりすることにする。
ひろき、初めてのセックスの前にコンドームをつける練習をする
ひろき、初めてのカラオケの前にますのリクエスト曲の歌の練習をする
ひろき、ますの「私のことかわいいと思ったら、かわいいって言って!!」のリクエストにお応えし、ふとしたとき爆笑するますに「かわいい」と言う(その前にますの好きなところは笑った顔という前情報あり)
ひろき、嘘いわない(嘘をつくことでその場を誤魔化そうとしない)(場をもたすために、という概念が恐らくない)(笑っとくみたいなのはあるっぽい)
カフェで、なつきのダイエットについての強迫観念というより、自分は太っていて醜いんだという概念のことや四六時中考えているダイエットのこと、食事のこと、派生して最近できるようになってきた「無理しない」こと、休むことで回復できて、そっちのほうが価値があることに気づけたことなど話す。ます、ちょっと泣きそう。(そもそもなんでこんな話になったか、カフェで私がオーダーしたクリームパスタやますのぶんまで食べたドリアのことから。脂質の話をしたので。)
話してたら時間ぎりぎりになってしまい、あちあちカフェオレをがぶ飲みしてダッシュ空港。フライト25分前に着く。
ますのこと大好きだな。だんだん大好き越えてきたな。ずーっと話してられて、全部が全部一緒じゃなくて、考え方違うところもいっぱいあって、私とは間違いなく違う人間であることがよくわかってして、それでいて愛してる。見返り求めてないから、愛でしょこれは。
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20kitan · 2 years
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エスケープ/ニコライ・ズダーノフ
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セリフ集
「コーリャでいいぜ。どうせ短い付き合いだ」 「わかったわかったつうの!纏わりつくな!」 「海の藻屑になりかけてかき集めた金が紙クズになりやがって……ったく泣けるぜこの世はよ」 「故郷でもねえのに故郷の味っつったらロシア料理だ。うちの祖母さんがこればっか作るもんだからな」 「俺が漁師をクビになったのは無能だったからじゃねえ。地球も海も凍っちまったからだ!」 「手足と頭がありゃ仕事くらい調達する」 「普通の家だよ。なんてことはねえただのよくある家だ。俺が息子で兄貴だっただけの……」 「これが小せえ喧嘩に見えるってのか?」 「べっつに構わねえよ」 「おう、どうした」 「へいへい……」 「ふっざけんじゃねえ!!」 「マジかよッ!ファック!」 「豚の餌にもなりゃしねえ」 「主憐れめよ」「主イースス・ハリストス、神の子よ。われら罪人を憐れみたまえ」 「どこでも行けるだろうよ。テメェにその能がありゃ……」 「俺ァ欲しいものをただ待つのは性分に合わねえんだ。それがたとえ嵐の中でもな」
◆ニコライ身上調査書
姓名:ニコライ・ズダーノフ(Nikolay Zhdanov/Николай Лукич Жданов) 愛称:愛称はコーリャ、ニーカ、もっと親しければニコラーシャなど 年齢:29歳 性別:男 血液型:AB型 誕生日:1月1日 星座:山羊座 身長:186cm 体重:86kg 髪色:赤茶色 瞳の色:明るいアンバー 視力:左右4.0 きき腕:右 声の質:低くて響く声(icv.ベオウルフのときの中井和哉) 手術経験や虫歯、病気:体が丈夫、病気をほとんどしないのであまり病院に行かない 身体の傷、アザ、刺青:顔や身体に細かい傷、手が傷だらけでぼろぼろ 胸、腹、二の腕にタトゥーがある その他の身体的特徴(鼻や目の形、姿勢、乳房、足、ホクロなど):恵まれた体格で肩幅が広い。 セックス体験、恋愛、結婚観:交際経験は3~4人。仕事が忙しすぎて連��できず、自然消滅するパターンが多い。フリーのときは可愛いと思った女性に目をつけている。結婚願望はけっこうある。 尊敬する人:父親 恨んでる人:昔乗っていた漁船の船長、税関、代替わりした本社の社長 出身:アメリカ合衆国アラスカ州 所属:オレゴン州の漁業組合 将来の夢:大きい漁船を持つか、組合の会長 宗教:キリスト教正教徒(ロシア正教) 恐怖:真冬のベーリング海 高波 癖:拳を握る 酒癖:黙り込むか、思い出話をする
*交流向け 恋人:ジズ・サリバン 一人称:俺 二人称:お前、テメェ、あんた 呼び方:下の名前呼び捨て、愛称があればそれ
*概要
 オレゴン州で漁師をやっていた屈強な男。若いころから過酷なベーリング海での漁に勤しんでおり、非常にタフ。洋服を選ぶセンスがなく、出かけるときは恋人に言われるがまま着ている。笑うのが下手。
*性格
 強い信念を持つ働き者。怠けようという気持ちが一切なく、仕事に誇りをもって成果をあげようと努力する。いったんこうと目標を決めたらどれだけ長い時間がかかろうと寄り道も近道もせず忍耐強く熱心に取り組み、厳しいほど己を律して必ず達成する。若いころからの経験や教訓を糧に自立心と強い意志を持ち、誰よりも自分自身を信頼する。そのため人からの助言を受け付けない頑固な部分も。欲しいものがあれば誰かと争うことも厭わず、闘いを重ねることで獲得してきた。  根拠のあるものを信用し、そうでないものを信じきれない節がある。実績には確固たる自信を持つが自分自身にはそれほど自信はなく、不安定になると周りの人間を支配しようしたり、横柄にふるまうことも。外見が威圧的であることを自覚しているが、わざわざ優しく振舞ったりはしない。利己的で実益を求めるあまり淡々としすぎ、温かみや思いやりに欠けることもある。
*人間関係
 人付き合いはそれほど得意ではないと思っているが実は下手でもない。人をやる気にさせたり監督・指導するのが上手い。仕事ではある程度の地位につき、恐れられたり緊張感を与えながらうまく現場を回す。危険なときや指導の際は間をあけず瞬間的に怒るが、案外褒め上手で人の良いところをよく褒める。  特に恩義があったり自分の利益になると思った相手にはきちんと接して関係を保とうとするが、そうでない相手にはそっけない。小さな子供の扱いは比較的上手。自分や家族、それから利益を守るために喧嘩は買う主義で攻撃されれば間髪入れず反撃する。上下関係に厳しく、上には忠実で下を守ろうするが、自分だけ得をしようとしたり従業員を使い捨てるような上の人間には絶対に泣き寝入りせず、猛然と反抗する。
*家族関係、幼少期体験
 アラスカ州の自然豊かな田舎生まれ。祖父母がロシア人移民であり、その3世のロシア系アメリカ人。ロシアに出自のルーツを持つが、本人の意識としてはほとんどアメリカ人。妹が生まれてからしばらくして母親が病気で亡くなり、祖母、父、5つ下の妹と暮らした。
 18歳になるまで公立校に通う。学歴はごく普通。父親が主に過酷なベーリング海のカニ漁を生業にしており、体つきがしっかりしてきたハイスクール時代から死ぬほど手伝わされている。25歳のころ父親が海の事故で帰らぬ人となり、自身が「早死にの家系」であることを悟る。妹が行きたがった大学に行かせるため、アラスカからオレゴン州のポートランドに引っ越しをし、漁師として十分な生計を立てていた。
*能力
 働き者で野心もあり、仕事につけばそれなりの地位につくことができる能力を持つ。とにかく仕事ができるせいで人を頼より自分でやったほうが早いと思いがち。確実に努力したぶんだけの報酬を得て、体力の許す限りいくらでも働くことができる。  家計の管理や家を整えることもあまり苦ではなく、当然のように掃除や洗濯、自炊もする。レパートリーは主に魚料理と祖母から教わったロシア料理。得意なのはピロシキ。将来的に漁船を持ちたいと考えており、大型トラック、フォークリフト、水上バイク、すべての海域での船舶の運転免許、エンジントラブルにも対応できる海技士の資格を取得。乗組員としても重宝される。  また海上での星での位置確認が得意。体内時計を自在に操ることができ、数秒から数時間いつでもどんな場所でも眠ることができる。簡単な大工仕事はお手の物。サバイバルスーツの着用と氷をアイスピックで砕くのが異常に早い。  なんでも実用性を重視するのでファッションセンスはいまいち。ボロボロになるまで着る。
*好きなもの
食べ物:牛肉、カツレツ、新鮮なサラダ、スープ類、チーズ、いちじく、チコリー 飲み物:クラフトビール、ウォッカ、コーヒー 季節:春 色:緑 着るなら黒か茶色 食欲がわくのは赤 香り:普段はほぼ香水をつけずちょっと磯臭い もらいもののヴェルサーチェのエロスをたまにつける ミント、グリーンアップル、バニラの香り 煙草:吸わない 書籍:新聞、情報誌、古典文学 動物:カモメ 異性:自分の手元を離れない女 ファッション:動きやすくて汚れに強い服 もしくは80年代ファッション(他薦) 場所:穏やかな海、家 愛用:エプロン、ゴム製の靴、サバイバルスーツ 趣味:音楽を聴く、映画、読書
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thedevilsteardrop · 2 years
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無責任に好きでいて、別れの時に泣くだけさ
ポリアモリーっぽい恋愛観なんだよね、多分。佐藤さんを本当に好きなのも嘘じゃ無いんだよ、と彼は言った。
私は難しい言葉よくわからない、あんまり賢くないし、私の知らないことを教えてくれる彼をすなおに信じた。複数の人を同時に愛せる、そういうひとは身近に心当たりもあったし、だからなおさら。
疑うより信じたいにきまってる。好きなんだもの。
ピピピピピ、って電子音で意識を引き戻されて、スマホのアラームを止める。
午前5時。早すぎ、こんな時間にアラーム設定した記憶無いよ、って思ってから、それが着信だったことに気付いた。
こんな非常識な時間に電話してくる人なんて彼女くらいしか心当たりない。最近ご無沙汰だったけれど、近くに来てるんだろうか。
…切っちゃった電話を掛け直す。マナーモードにしてなかったのは、私も仕事を辞めたからだ。
久しぶり、って言う前に彼女は私をぎゅっと抱きしめた。待ち合わせは駅の大きな時計の前。人は大勢居て、でも誰も私たちのスキンシップを気にしてない。それぞれ自分たちの別れと再会をあたためている。
「ただいま、千草」
「…おかえり、真優」
彼女、マユちゃんは真っ直ぐに私の目を見詰めてから優しく頬にキスしてきた。
吟遊詩人の友達が居る、なんていうと驚かれるから他の人に彼女の話をしたことは無い。好きに海外をふらついて、ギター片手に歌って、チップをもらって、気紛れに帰国する。三十路までには定職に就かないとな~なんて言いながらも、就活する気配は無い。
いいなぁ、憧れるな、私には真似できない。って言ったら、こんなことは、家族がないからできるんだよ、って、以前そう返された。
千草は心配する両親とかが居るでしょ、それを振り切れない、真似しようとしてできることじゃないよ。って。
「しばらく会わないうちに見慣れない格好してる」
マユちゃんに言われて、自分の着てる服に目を落とす。
彼が買ってくれた、花柄のワンピース。今時の子がよく着てる、大人しそうで無難な格好。
「趣味変わった?」
「…ううん。別れた彼氏の趣味」
「そうなの?じゃあ好きな服着て見せてよ、日本の服屋も見たい!」
マユちゃんに手を引かれて、思わず吹き出した。日本人なのに、日本の服屋も見たい、だって。
「案内してあげるよ」
「頼んだ」
腕を絡めてくっついて、もう何年も素通りしてしまったブランドの入り口をくぐる。ほんとは何度も横目で見ながら、ずっとずっと、気になってたお店。
シースルーブラウスにタイトなレザースカート。足元はヒールのあるブーツ。買った服に着替えたら、マユちゃんは沢山ほめてくれた。
「かわいい、よく似合うよ」
「そうかな。ありがとう」
私が腕を取ると腰を抱き返してくれる。人混みでもぜったいにはぐれない。歩調は私に合わせてくれて、久しぶりに履くかかとの高い靴でも、安心していられる。
マユちゃんも会った時着てた服から着替えて、真っ白なボートネックのシャツに緑味のかかった濃い青の、オシャレなジーンズを履いた。
マユちゃんはわたしよりだいぶ身長が高いし、髪も短くて身体が薄い(海外でお風呂入れないからと、食事を摂れるか怪しいからだそうだ)から、いまどきの男の子っぽい服を着ててもかっこいい。
道の途中でケーキ屋さんに入って、ケーキと紅茶を頼んで食べながら「うちにおいでよ」ってお泊まりに誘ったら、マユちゃんがびっくりした表情で「珍しいね」って言った。
「休み取れたの?泊まりがけでもいいなんて…正直助かるけど。なんかあった?」
「…仕事やめたから。だから当分おやすみなの」
仕事を辞めるはめになっちゃったのは、ひとえに私の愚かなおこないのせい。いわゆる、不倫をしていた。
バレたわけじゃ無い。それが相手の奥さんを傷付けたり、世間的に配慮を欠いた、道徳に反することだってわかってる。だから絶対、バレることだけはダメだって思ってた。
先の無い恋だったんだ。バレる前に私は逃げ出した。
相手が職場の上司だったから、仕事も辞めたんだ。
てことを、包み隠さず正直に、手短に話したらマユちゃんは
「彼氏ってそれかー」って目を丸くした��ま聴き入っていた。
「じゃあ遠慮なく泊らせてもらおうかな」
悪いことした相手だ、ってふうに見て無さそうな、あっさりした返事。この場では根掘り葉掘り訊かずに、すぐ一緒にいることを選んでくれた。
疲れちゃってた身勝手な心が、ほっと安らぐような気がする。
2
小さい頃からあんまり勉強が得意じゃなかった。両親はそんな私を心配してか、幼稚園から高校までエスカレーター式に進学できる、私立の学校に受験で入学させた。小学校までは男女共学だったその学校は、中学、高校は女子校に進学するか、共学に進学するか、選ぶことができた。
「千草は女子校の方がいいよ」って、両親に言われるがまま、私は女子校の方に進級した。「かわいいから、色気づいた高校生の男なんか身近に居ない方が良い」って。
ほんとは少し怖かった。男の子より、女の子の方が、私にとって怖かったから。
私はずっと自分のこと、「ちぐさ」って名前で呼んでいて、そのことをよくぶりっこだとか、赤ちゃんみたいで気持ち悪いって嘲笑された。そういうことは全部、女の子から言われた。男の子たちには逆に、優しくしてもらえたから、女子校は自分にとって怖い人しかいない、優しくしてくれる人がいない場所なんじゃないかって思えた。
中学になっても結局「ちぐさはね」って自分のことを呼んで喋って、嘲笑される原因を無くせずにいた。「私」が上手く馴染まなかった。 けど、高校生になったら周りの人はべつに、そんな私を笑ったりしなかった。怖がっていた心は、杞憂に終わった。
他にも色素の薄いうねった髪や、あんまり日本人ぽくない変わった顔も、中学の時ほどわるく言われなくなって、むしろ「妖精さん」って女の子たちから可愛がられた。…周りのメンバーが違うからなのか、みんな大人になってきて他人を攻撃しなくなったからなのか、それはどっちなのかよくわからない。ただ危惧してた憂鬱な高校生活にならなかったことに安堵していた。
そんなとき、……彼女に会った。
外部の高校からわざわざ、受験で編入してきた同級生。閒真優、って名前の彼女を、私はまちがえて「ゆう」って読んだ。しかも彼女はそれを訂正しなかったから、大学に入る頃までずっと「ゆうちゃん」って呼んでた。他のみんなは「閒さん」って呼んでいた。佐藤、とは出席番号が離れていて、私とゆうちゃんの席は遠かった。
名前を覚えるのが苦手らしい彼女は、人懐こくすぐに打ち解けるのに相手の名前を覚えていなかったりして、よく後輩や、好いてくる相手を泣かせていた。彼女は女の子にすごくモテたんだ。……女子校だから女の子同士の恋愛はふつーに日常にあった。でもいつも一緒にいる相手は、席が近いわけでもない私だった。
「千草は自分の名前言ってくれるから助かる。それに毎回ちゃんと名前言うの、かわいい」って、彼女は初めて私の口癖を肯定的に言って、あったかく笑ってくれた人だ。
真優ちゃんは誰に告白されても誰とも付き合わなかった。
どうして?って��いたことがある、その時に「付き合うってことがよくわからない」って教えてくれたんだ。
「恋愛と、友情の区別も、よくわからないし…、好きじゃ無い人と好きな人の区別は、つくんだ、性欲が……あ、いや。ごめん。でも…千草のこと好きなのと、他の友達好きなのは、違うよ、…違う人への感情だから一個一個全部ちがう。特別じゃないわけじゃない、むしろ逆で、……どう思ったらいいかわかんないんだ。キショいかもしんないけど、好きなら、えっと、セックスもキスもできるよ。こないだ千草と演劇の時ちゅーしたよね。ああいうのうれしいなって思ってしまうし、あー、…興奮するっていうか、まぁ。ごめん。きもいかな」
私は首を横に振ってみせたけど、項垂れた真優ちゃんには見えてなかっただろう。
「…そんなだから、ほら、恋人って一対一で、他の人に好意向けたりスキンシップとるのは浮気っていうでしょう、不誠実だって…私はとだもちのことちゃんと好きだけどさ。…それをひとつに絞れないから、付き合えないよ。せめて友情と区別あったらよかったかもだけど、…できないよ」
そっか、って私は納得して頷いた。俯いてあらわになった細い首に触れないように、黒くてまっすぐな真優ちゃんの髪を撫でた。
3
「ゆうちゃん」
家のドアをくぐった先で、そう呼び止めたら、彼女はきょとんと私を振り返った。
「…って、呼んでたの、おぼえてる?」
「…おぼえてるよ。あれ?いつの間にマユになったんだ」
ぼけたこという真優ちゃんにまた笑って、「どうして名前、すぐ教えてくれなかったの」って訊く。ほんとの名前。訂正してくれなかったから、私は長い間ほんとの名前を知らなかった、他のみんなが知ってたのに。今更なにを、って言われるかもしれないけど、思えば私が真優ちゃんってちゃんと名前を知って呼び始めたあたりから、私たちは滅多に会えないようになってた。私に彼氏が居るようになった(大学の頃だから、不倫の人とは別の彼氏。)し、真優ちゃんは日本にあまり留まってなくなったから。
真優ちゃんは「あー?」って玄関先で視線を泳がせながら、
「私はあんまり、名前とか、頓着しないっていうのかな。気になんないから、ゆうでもなんでも、千草が私を呼んでることはわかるからよかったんだよ、多分」
「多分なんだ」
曖昧な返事にくすくす笑って、
「名前間違えても怒られないなんて社会人になったらそうそう無いよ」
言った後で、つまんないこと言っちゃったな、とか考えて
でも真優ちゃんは、すぐに私のことも見てくれる
「千草が名前を大事に思うなら、��草にはちゃんと名前を呼ぶよ」
…やさしいんだ。私には。
高校時代の知り合いたちは、名前を覚えてもないだろうに。社会人にだって真優ちゃんが一般常識とかの枠におさまってるところ、想像できない。変な感じがしてしまう。真優ちゃんが言ってることのほうが、周りのたくさんの人が言うことよりも、私には優しいんだ。
「…あの、ね。誘っておいてなんだけど」
「ん?」
「部屋、めっちゃきたないから、ドン引きするかも」
「ほー?」
私が先に申告したら、真優ちゃんは逆に面白そうにニコーって笑った。
「どれどれ」
躊躇いなく一本道しかない廊下を歩いてリビングの戸を開ける。その場で立って部屋を見回し、
「一目で虫が湧いてない。まだまだだな」なんておどけて私の肩を叩く。
「世界規模で測るな!」って肩を叩き返したら、ひらりと身を躱されたから声を上げてちょっと追いかけた。 しばらく小声でじゃれた後、
「…にしても、これ数日やそこらじゃないね。ずっとそこに居たんだ?」
すっとふざけた顔をひっこめて、真優ちゃんは長い指でベッドの上をさした。じゃれあってる間ニコニコと下がってた目元が、ほんのちょっと凜々しく見える。
「…うん」
他の場所には部屋中散乱してる、ティッシュやペットボトルやつもったホコリのゴミ類、服の脱ぎ散らかしたあと。だけどぽっかりそこだけ空いた、ベッドの上の一人分のスペース。
ずっとそこに居た。
頷いたら、はぁー、と溜息が隣から聞こえた。真優ちゃんがしゃがみこんで、床の上のティッシュをぺいって指先でひとつ放る。
「……千草が無事でよかった」
その言葉で胸がきゅん、て締め付けられたような感覚になる。
こんな惨状、人を招く部屋じゃない。なのに真優ちゃんを泊まりに誘った。それは私が常識を知らなかったからじゃなくて、真優ちゃんが他に泊まるとこが無いからでもなくて、誰かに見て欲しかったからかもしれなかった。知ってほしかったのかもしれなかった。
彼と別れた後、ずっと泣きながら何もせず横になってた、寂しくて惨めな震えてた私を、誰かに、真優ちゃんに、知らせたかった。
「…………最初は奥さん居るの知らなかったんだ」
近所迷惑にならないように掃除機は朝になってからね、って
片付けなきゃ座る場所もない部屋から、ベランダに出て 大きく窓を開け放したまま、真優ちゃんと並んで立った
夜景なんてぜんぜん見えない真っ暗な夜に、タバコの煙を吐き出しながら話す
「会社に奥さん来てて知ったの。その頃にはもう付き合ってたから、奥さん居るなら別れよって言ったんだ。そしたら僕はポリアモリーみたいな感じだからって」
「ぽりあもりー?」
「たせいあいしゃ?私も未だによくわかんない。でも、奥さんも自分もそうだから、お互いそれを了承してやってるからって。奥さんにも他に彼氏が居るからって言われて、…それなら、いいかって思っちゃった。別れたいわけじゃ無かったの、一緒にいたかった」
好きだった、って言ったら涙が落ちた。
真優ちゃんはそんな私をじっと見てる。
「私の服をね、千草はそんな格好より、大人しくて清楚なワンピースとかが似合うよって、化粧も、お昼ご飯のチョイスとかも…タバコは身体に悪いからやめなって言ったりね、せっかく綺麗な肌が荒れちゃうよって。化粧厚くするより、健康で綺麗な千草で居てよって言った。何でもうれしかった、私に向けてくれた言葉だから」
一年もすると、雰囲気変わったねっ��言われるようになった。どうしてか自分勝手に服を着てたときより他人の視線が怖くなった。大学時代の友人とは会わなくなって、人間関係が職場の人としか無くなって、ますます彼に依存した。彼以外の職場の人にセクハラされたりもしやすくなったけど、彼には相談できなかった。
「好きじゃ無い格好して、好きじゃ無いもの食べて…彼に言われた通りのかわいい女の人でいなきゃって」
そうしてるうちに
ふと思った
「でも、こんなに彼の好みになっても、ぜったい報われない」
奥さんがいて、仕事の立場もある彼と、ただの部下の私。この先何年付き合ったって結婚できるわけでもない。
「…そうおもったら、心折れちゃった」
へへ、って泣き笑いでタバコの火を踏み消したら、真優ちゃんが頭撫でてくれた。
タバコも、身体に悪いのは知ってる。でもまた吸い始めちゃった。この引きこもってた数ヶ月で、失火をおこさなかったのはただの幸運だったと思う。人様に迷惑かけることに、なるかもしれなかった。
「ばかだなぁ私」
いけないことした側なのに、傷付いた顔してる。いけないってわかってるなら最初からしなきゃいいんだ。なのに好きなままで居た、誰に言ったって私は共犯者、だから一人で部屋で泣いてた。後ろめたいんだもの。
ぼろぼろ涙が落ちるままにしてたら、真優ちゃんがその涙が伝う頬を両手で包んだ。
指先が目元までなぞって、軽く頬にキスされる。チュッて軽い音がして、涙が唇に吸い取られるのがわかった。
「…おばかさん。次は千草がほんとに着たいと思う服着てるのを好きだって言ってくれる人と付き合えよ」
間近で見つめ合う真優ちゃんの、黒い大きな目に私が映り込む。シースルーブラウスにタイトスカートの、赤い口紅を引いたわたし。
「今日の私はかわいい?」
「かわいいよ」
「……もし、ちぐさが真優ちゃんを好きって言ったら、付き合ってくれる?」
見詰め返したら驚いたみたいにぱちぱち瞬きして、真優ちゃんが目を見開いた。
「……ははっ」
一拍おいて、むにっと両頬を両手で挟まれる。
「懲りないねお前は」
付き合わないよ、って真優ちゃんはハッキリ私を振った。それで傷付いたばかりのくせにって、学習しない私を笑い飛ばした。
ベッドには入らずに一晩ベランダでおしゃべりして過ごして、真っ白な空に郵便バイクの音がする頃、部屋に入った。静かな朝を掃除機の音でぶち壊しにしながら、私たちは笑ってた。
#ss
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202208050519 · 2 years
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Aさんへ ⑰
Aさんこんにちは
Aさんはカヌレはお好きですか
私は最近「生カヌレ」にはまっております
生カヌレ。その存在を目にする前に字面を読みとけば
「つまりプリン?」
と察するのですが、初めて生カヌレに出会い意外な真実をしりました
カヌレの上に生クリームがのっているのです
生、で切りクリームを切り捨てるネーミングセンス。嫌いではないです
***************
『ジャストモーメント』
「結構切ったねーすっごい似合うーかっこいいー」
女は、イスに浅く座ると背もたれに背中をつけることなく向かいに座るリョウの、今まさに美容院で切ったばかりの髪をひとしきり褒めた。慌ただしい全てが。胸の下まである長い髪が、偽装天然人工茶髪がイスに座るときフワリと軽やかに踊った。
リョウがよく知る、しかし一度も触れたことのない髪。その髪とよく似た目の前の女の茶色の髪を見つめ、くるりと丸まった毛先を見つめ必然的な流れとして胸の膨らみを見つめリョウは胸のうちだけで呟く。これじゃない。
女が発した言葉のだらしなく伸びた語尾の母音いの高音が気に障る。耳につく。気に入っている「い」の低音に上書きされる。かき消される。低い声が消える。
「リョウくんいいわね?わかった?」
「大丈夫。いいわよ。」
「残念でした。タカシくん今いないわ。」
女を見つめたあと、つくる予定でいたリョウの笑顔は出番を無くした。出番を無くした理由は女の褒め言葉と言葉の語尾伸ばしにイラついたから。だけではなく、ソノコの眠くなる低い声のいの母音を思いだしたからでもなく過日のタカシの声が頭のなかで聞こえたからだ。
いつかの平和な日曜日。
*****
リョウはその���、仕事を終えると泥袋のように重くなった身体を引きずり駐車場の車を目指した。たどり着くとしばし車をぼんやりと、呆然と、憤然と見つめた。泥袋の重力が増す。頭から突っ込んだ四駆は二本の平行な白線と社会的倫理を見事なまでに無視した斜め駐車。洗車とは無縁の紺色の車体は埃っぽく、この晴天のなかどこのどしゃ降りを走ったのかと思わせるほど薄汚れている。年季のいった四駆を見つめ、
「誰だ下手くそが。俺だ。」
呟いた。
気持ちの乱れが表れるがごとく慌ただしく停められた斜めの愛車を睨み、ため息を吐き、運転席へ乗り込んだ。太陽で熱せられたシートに座ると自分はいま職場をあとにするときお疲れさまを言い忘れた。と、忘れたのではなく他意ありきで言わなかったことをふりかえり、先のため息より深く長く息を吐き出した。吐き出した二酸化炭素の最後に「疲れた。」が小さく自分の耳に届いた。
エンジンをかけギアをバックに入れる前、携帯電話の電源をいれトップ画面を見つめてから角の丸い、目に刺さる色彩の派手な緑色に囲まれた呑気な白い吹き出しの四角を叩いた。
病院の出口から愛車にたどりつくまでのほんの数分の距離、ギラギラと照りつける太陽に顔をしかめ、良い天気だと思うより先に鬱陶しいと思った。疲労のみの身体は重く、元気一杯のぎらつく晴天を恨めしく思った。
「あえる?あいたーい」
「おつかれさまー」
女からのラインを読み(直近のメッセージがラインを開く前にトップ画面で最初に目につくように、1回で済む短文をわざわざ2回に分解し送られたその、二つの白い吹き出しに込められた真のメッセージを読んだ。私は労いを忘れないし重い女ではないという真意)アイコンごと削除する。
「漢字を使え。」
携帯電話から女の存在が消える。携帯電話の重量感がほんの少し軽くなる。送り主のぎらつく晴天のような笑顔を思い浮かべようと苦心してみたがタカシの顔だけが浮かんだ。
(日曜か。日曜だよな。)
タカシは家に居るだろうか。ギアをバッグに入れそろりそろり車を後進してブレーキを踏むと、ドリンクホルダーに差し込まれたサングラスをかけドライブへ。
行く先は自宅ではなく、女を拾うための待ち合わせ場所でもなく、日中のエネルギッシュな晴天をゆるゆると締めくくり静寂の夜を招く直前の夕暮れのような笑顔のタカシ。兄が暮らすマンション。
自宅で一刻も早く睡眠をとり身体を休めるのは多分正解、惰性のセックスによる荒治療で精気を養うぐらいの余力はあるだろうからそれもまた歪曲した正解。けれど、代わり映えのしない平穏な兄の「お疲れさま。」をリョウは、その泥まみれの泥だらけの日曜日に選んだ。
タカシがソノコと再会する前。
つまりリョウがソノコと出会う前。それより少し前の、兄弟の暮らしにソノコが最後のピースのように加わる前の、いつかの日曜日。
タカシの存在そのものがリョウのマンケーブであった頃のろくでもない日曜日。最高の日曜日。
インターホンをならし数十秒後「リョウくん。」と玄関を開けた夕暮れ顔のタカシに「カップラーメンある?」と、「ただいま。」でも「急にごめん。」でも「おう」でもなくタカシの顔を見た途端、空腹に襲われたずねた。
「いま帰り?お疲れさま。顔色悪いね。」
「カップラーメンはあるのかと聞いている。さっさと答えてくれ。空腹と眠気のせめぎあいだ。無駄な会話をしている暇も余裕も俺にはない。」
空腹と眠気と苛立ちのせめぎあいなのだと穏やかな兄の笑顔から気づかされる。兄の笑顔を見つめながらさらに分析すれば、空腹と眠気と苛立ちと認めたくない傷心のせめぎあった結果の八つ当たりなのだと思う。
職場で常々言葉足らずの指摘を受け、その言葉足らずを補うがため二、三の言葉を増やしたところ理屈っぽいと再指摘を受けた。社会人としての前に人として決定的な何かが欠落していることをそろそろ認めるべきではないかと泥だらけの体と心を抱えながら職場をあとにするとき。お疲れさまの変わりに「今日までお世話になりました。」とぶちまけてしまいそうになった気持ち。お疲れさまは言い忘れたわけではなく、言わなかったのでもなく、言えなかったのだ。
口を開けば、口からではなく目から何かが吐き出されてしまう気がした。それでいて「どうしろって言うんだ。」と泣き言を吐き出して立ち止まっていられるほど社会も時間も寿命も優しくはない。どうにかしろと自分が相手でも言うだろう。
「カップラーメン。
ストックあるけど、俺がうどん作ってあげる。
俺さー、最近かき玉うどんにハマっててさ。そしたらさー、会社の後輩からなんと。卵をもらったんだよ。
お土産。
どこ行ったんだっけ。違う、どこも行ってないか。スーパーで買ったのか。まあいいや。一個二百円。ひとパックじゃないよ、一個。リョウくん一個二百円の卵食べたことある?
俺ないよ。
たまごってさ。ほら、王様の王に点のぎょく、に子供の子。と、一文字のたまごあるじゃない。
どの場面でどう使い分けるのかリョウくん知ってる?教えてあげようか。」
「タカシ。今はいい。
なんと。卵をもらったのか。なんと平和な。」
「だね。かき玉うどん作ってあげる。カップラーメンより滋養があります。俺が作るうどんは。
ベッド貸してあげるから食べたら休みなさいよ。その顔で運転はさせられない。」
かき玉うどんと聞き、リョウは正直なところ顔をしかめたくなった。
三度の飯より化学調味料が好きなタカシの作る出汁はピタッと安定した味がする。
親の仇のごとく大量に投入されるそれは食材の風味を活かすどころかぶち壊し、どんな食材を使っても常に同じ味だ。化学調味料味。たまごの漢字の意味を教えてくれるなら代わりに適宜の意味を教えたい。
滋養に満ちた卵が気の毒のような気がした。
挙げ句、かき玉うどんとなれば正式名称はかき玉インゼリーうどんになるであろうことは、現物を見ずとも想像はつく。
ゼリーは好きだけれどトロミになれなかった片栗粉の塊は一個二百円の卵度外視のインパクトがあるであろう。
けれど、タカシの弟思いのひとつひとつには既に卵より滋養があった。それが答えに職場でなんとか堪えた溢れそうな何かがいま、なんと、溢れてしまいそうだ。
「うどんお願いします。ベッド借ります。ありがとう。」
ふふっと、プロが作るかき玉のようにフワリとトロリとした笑顔で兄は笑った。
「リョウくんのありがとうはとても気持ちがいいね。ちゃんとありがとうの音がする。」
また始まったと笑ったときには、もうかなり養生がすすみ既に元気を取り戻しているのだと実感 した。
「お前はつくづくそういうさ、聞かされるこっちが恥ずかしくなるような話を恥ずかしげもなく話せるな。
淡々とな。
その、女受けのいいクシャッとした笑顔と共に。
女がコロッとくるのはその笑顔じゃなくて、実は、そのポエムのようなリリカルじゃないか?
というかお前、実際女の前でもそういう感じなの?モテないわけないよな。ナチュラルにサラッとやってのけるもんな。計算じゃないってのがまた。計算じゃないってきっちり伝わるところまで込みのポエムだよな。ちゃんと成立してるよ。」
「リョウくんはありがとうって思うときにしかありがとうって言わないからだろうね。」
「華麗なまでのスルーだな。」
タカシは華麗に
「ごめんね。リョウくんなに言ってるかわからないし、俺はリョウくんほどもてないよ。
あとさ、リリカルって単語は詩人とミュージシャン以外が使うと聞いてて恥ずかしくなるよね。」
笑った。
「どの口で恥ずかしいって言ってんだ。」
笑った。
「言葉って便利だから。ありがとうって思ってなくても、かわいいよとか好きだよとかもさ。ごめんねとか。
まあ、リョウくんから滅多にごめんは聞かないけどさ。
本当は思ってなくても相手の点数稼ぎとか、とりあえずその場を整えるためにありがとうもかわいいよも、ごめんねも言葉にすればその場を整えることができるよね。関係性も。突貫的に。だから言葉ってすごく便利だよね。
まあさ、本当はそんなこと思ってないくせにとかってなる場面はあるけど、でもたいがい平和がおとずれる。」
「それは言葉云々じゃなくてお前の人間性が大きいんじゃないか?タカシの培った人間性。人となり。まあなんにしても気持ちが悪い会話だな。」
「俺は全く気持ち悪くないよ。ありがとう。でもさ、中身が空っぽの言葉って結構あるよね。リョウくんはさ、ありがとうはありがとうって思ってる時にしか言わないし、かわいいもごめんねも、おいしいとかも。そう思ったときにしか使わないからきっと本物の言葉なんだろうね。リョウくんの言葉はちゃんと本物の音がする。だから、リョウくんのことは信じられる。そうなんだと思う。本当の時にしか使わないから誤解を招くことも多いんだろうけど、でも、リョウくんがごめんねって言う時はきっと本当にごめんねの時なんだろうね。だからきっと、その時はきちんと相手に許してもらえると思うよ。」
「タカシ。お前のポエムは計算だ。緻密に計算され尽くしている。」
「そうなの?」
タカシの恥ずかしくなるリリカルは、恥ずかしいと思う気持ちを温かく包みこんでしまう。
体温よりは少し高く、かといって服を脱ぎたくなるほど熱いことはない。気持ちいい。恥ずかしいを取っ払いありがとうと言わざるを得ない温かさ。恥ずかしいという思考はさらさらと温もる気持ちよさに、思考から感情に着地する砂時計。
自分を支えるためのバックボーンは、兄から与えられる養分でより強固になり、タカシから贈られる言葉が生きる道しるべの教科書となる。時折、ページを開いてリョウはタカシの言葉を探す。
*****
あのかき玉うどんは人生で一番うまいかき玉うどんだったのかもしれない。あの、泥まみれの日曜日の。タカシお手製の。滋養溢れる。
いま目の前にいる女が放つすっごいも、似合うも、かっこいいも、それらの言葉からは本物の音が聞こえない。と思う。「あなたのちょっとした変化にちゃんと気づけるわたし」を内包しているのだと思う。点数稼ぎ。突貫の、張りぼての、偽りのいい気持ち。
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mazu-meh · 6 years
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Her booby sense tingled
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genparo · 3 years
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現パロ設定まとめ
れじな(源氏名:めい・ナツメ)
28歳限界デリヘル嬢・現役JD。本強ガシマン許さない。帝都大学文科Ⅲ類哲学専攻、西洋哲学科。中国哲学を選択科目に取っている。宗教哲学が主。卒業後はイタリアの大学に留学し神学を学んだ後、英語・イタリア語・日本語の三ヶ国語で児童書の翻訳をするのが夢。
没落豪農の祖父、武家のおひいさまの祖母の家で育ち名ばかりの英才教育を施されるが全部途中で投げ出し逃げ出した。実母に暴力を振るわれ勘当済。11歳の時に実父に犯されており、あらゆる虐待を網羅してしまったサバイバーだが被害者意識のようなものは薄く、寧ろ世界と血縁を憎み倒している。男に生まれていればあらゆることが上手く行ったのにと信じ切っており、男だというだけで自分を支配したり上から抑えつけて来る奴らを全員殺してやりたい。
レズビアン寄りのバイセクシャル。自己肯定感を性関連のものに一任しているため性欲とは少し違う部分で恋人だろうと客であろうと肉体を求められないと気が済まない。リスロマンティックの傾向があり、自分の認めた高嶺の花を追いかけている時だけ輝いているが、いざその高嶺が振り向いて自分を求めてきたり多くの人間に理解されてしまうと一気に興味を失い容赦なく捨てる。「高嶺の花の花盗人」だの「光物大好きなカラス」だの散々なことを言われている。今の処高嶺センサーに引っかかっているのは魈と鍾離。魈とは事実上の恋人だが、珍しく彼がこちらを向いて執着しても逃げようとしていない。が、いつまでそれも続くのやら…。
前髪はセンター分け、胸下まであるロングの黒髪に薄いピンクのインナーカラーを入れている。ピアスは左耳と右耳軟骨、右の耳朶には空けていない。タトゥーは肩甲骨に一対の黒い悪魔の羽(勘当された時に自ら望んで入れた)、右腕の内側にリスカ痕を隠すように緑色の細い線で金翼鵬王座が入っているが、此方は入れた時の記憶があまり無い。163㎝、カップ数I85。山羊座のAB型。
適応障害と重度のPTSDを患っており、物心ついた時から不眠症。母親に関連する出来事と相対すると過呼吸になり動けなくなる。比較的病状は安定しているがそれでも薬は手放せない上に、唐突にODをして卒倒している日もあるが、大抵そういう時は魈にばれて世話をされる。
魈とはセフレののちに友達以上恋人未満を続けているが、ずぶずぶ泥沼に嵌まってなんとなく依存されている気は感じ取った上で傍に居る。彼がなんとなく自分と大体同じ地獄の更に深く暗い場所を歩んでることには気づいており、其処にはきっと人の命が絡んでいることも分かっている。その上でどうか自分に出来ることがあれば何でもしてあげたい。なりゆきで風俗の黒服にしてしまったことは申し訳なく思っているものの彼はそれなりに楽しそうに仕事をしているのでほっとしている。が、4nemoの収録部屋に彼の部屋が使われていることは本当に勘弁してほしい。何故ならカズハ担カズショウ推しなので。ナチュラルにわたしに皆の分の食事を作ることを頼まないで欲しい顔が良すぎて気後れするので。
タルタリヤは滅茶苦茶良い客だがやべー男だとしか思えないので若干苦手。でも彼の誕生日、あまりにも彼が母性を擽るから成り行きで金を貰わず本番込みのセックスをしてしまった。そこそこ後悔しないこともないが、それでも彼のことは放っておけず、たとえ自分が愛したかつての思い出を踏み躙る国の犬だったとしてもそれは彼という個とは関係が無いので、精々野垂れ死ぬまで傍にいてやりたいと思っている。
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misen9710 · 3 years
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朝比奈潤(ドMおじさん)@doemojisan
今から15年ほど前、20代後半の頃に個別指導系の学習塾で数年間働いていた。担当は男子中学生ばかりだったがその中に明らかにオーラが違うイケメンがいた。今で言えば坂口健太郎によく似ていたので、ここでは彼を坂口君と呼ぶ。坂口君は身長180弱、不良っぽさと中性的な部分を併せ持ったルックスだった。
実際、彼はよくモテていた。恥ずかしい話だが、私は女性の生態についての知見をほとんど彼から得たと言っても過言ではない。30歳手前の大人が14~5歳の少年から女について教わるという屈辱は私を大いに苦しめたが、童貞だった私には坂口君が無邪気に話すモテ話が抗いがたい魅力を持っていた。
「さっき逆ナンされてカラオケでセックスしてきちゃった」私が担当してすぐの頃、彼が述べた遅刻の理由である。成績の良い子が行くような塾ではなかったから真面目に勉強しに来ている生徒は少ない。それでもこの発言は衝撃的であった。事の真偽はともかくとして、私は注意するよりも呆然としてしまった。
イケメンの中でもよりすぐりの「超イケメン中学生」には凡人には想像し得ない奇跡のような出来事が毎日起きている。逆ナンパはそれこそ日常茶飯事だ。家電量販店で暇をつぶしていたら、見知らぬ40代のマダム風女性に当時、流行っていたゲームボーイアドバンスを買ってもらったこともあるという
奇跡というのはたとえば、繁華街ですれ違った20代の女性に道を聞かれ、親身になって教えたところ連絡先を聞かれ後日、お礼がしたいと食事に誘われる…といったようなことだ。そんなことがあるのだろうかと思う。私は42年間生きて、宗教の勧誘以外で一人歩きの女性に声をかけられたことがない
こうしたエピソードの一つひとつに何とも言えない迫力を感じ、私は授業中の彼の雑談、自慢話を黙認した。そういった話に私自身が興味を持っていた。彼の携帯電話の画像フォルダには今まで関係した女性との画像が収められていた。その数の多さ、写真に収まった女性の美しさには圧倒される思いであった
そのフォルダを全部見たわけではないが、一際目を引いたのは坂口君と同世代であろう白人とのハーフの美少女だ。玉城ティナ、トリンドル玲奈に似た雰囲気の彫刻のように美しい顔だった。とても中学生には見えない。そしておっぱいも、服の上からでもそれなりの大きさになっているのがわかった
何枚かの画像には私と同世代、もしくは30代であろう女性も写っていた。私には視線すら合わせない同世代の美女が15歳の少年には心を開き体も許しているのかと思うと、やるせない思いであった。自分の私生活がとてつもなく惨めに感じ、オスとしての能力の違いを見せつけられる思いであった
当時の私生活は今よりも悲惨であった。休日ともなれば昼近くまで惰眠を貪り、起きれば近所のコンビニへ行く。道中、美少女とすれ違えばその顔や胸の膨らみを凝視して目に焼き付け、帰宅後はその美少女を想像しながら自慰をする。そしてコンビニ弁当を食べテレビを見ながら夕方になるとまた自慰にふける
坂口君が恋愛ゲームを楽しみ女性を楽しませ、そして愛されている一方で、私は道行く美人を盗み見ては服の上から伺えるおっぱいの大きさを確認して脳裏に焼き付け、その乳房を揉みしだく妄想にかられながら一人慰め、果てる。東京砂漠とはこのことだろう。私は自分の情けなさに消え入りたくなった
坂口君を教えていて気付いたことがある。それは女も男と同じように気になる異性をチラ見するという事実だ。教室で隣り合って座っていた私にはそれが手に取るようにわかった。そしてチラ見された側は視線に完全に気付く。チラ見されている事に気付かれまいとあえて見ないようにする行為すらもほぼわかる
授業時間が終わり坂口君が帰宅しようとすると、いつも奇妙な光景が繰り広げられた。女子生徒たちがみなソワソワしながら坂口君の様子を気にしているのである。女子生徒の中でもカースト上位と思われる、沢尻エリカ似のリーダー格はいつも偶然を装って坂口君の周囲をうろつき会話の機会を伺っていた
沢尻の積極性に私は驚いた。女の子は相手次第でこれほどまでに積極的になるのである。カースト下位の女の子には坂口君と話す機会は与えられない。女子リーダー格の沢尻は、その地位を生かして他の女の子を牽制していたのかもしれない。授業が終わると上位グループが坂口君を取り囲むこともあった
坂口君と沢尻はもしかしたら関係を持っていたのかもしれない。なぜなら沢尻が坂口君に夢中になっていたのは誰の目にも明らかだったからだ。坂口君に入れあげていたのは沢尻だけではない。女性社員にもまた坂口君は人気があった。中でもある20代後半の女性社員が取った行動は生々しかった
の女性社員は波瑠に少し似ていたのでここでは波瑠さんと呼ぶ。長身でスレンダー、キリッとした顔つきが近寄りがたい雰囲気を出していて仕事が速かった。その波瑠さんは、愛想が良いほうではなかったが、坂口君と話すときだけは満面の笑みになるのである
志望校などを調査する資料を坂口君が提出し忘れたことがあったが、その時の波瑠さんの動きは凄かった。坂口君の席の隣にひざまずいて「ここに名前を書いて」「学籍番号はここ」と、手取り足取り教えながら書かせているのだ。どこに名前を記入するかなどバカでもわかる。波瑠さんの魂胆は明らかだった
波瑠さんが坂口君に資料を書かせている間、二人の物理的な距離が徐々に近づいていくのがわかった。波瑠さんは時に坂口君に覆いかぶさるように資料の書き方を教えていた。私には波瑠さんのおっぱいが坂口君の背中に当たっているように見えて仕方がなかった。いや、間違いなく胸と背中が触れ合っていた
波瑠さんは長身だったが胸はそんなに大きくなかった。体の線がはっきりとわかるような服を着てくることもなかった。私はそんな波瑠さんが自らの女の部分を強調していることに衝撃を受けた。よく恋愛マニュアルに「OKサインを見逃すな」なんて書かれているが、こういうことなのかと思った
女のOKサインとはかくも露骨なものなのだ。本物のOKサインとはこのようなものなのだと思い知らされた。恋愛マニュアルに書かれた「酔っちゃった~」なんていうセリフや、普通の男が「もしや」と感じるセリフなど、このときの波瑠さんのOKサインに比べれば勘違いに近い
手取り足取り教えられながら資料を書き終えた坂口君の行動も私を驚かせた。「疲れた~」と言いながら席を立った坂口君は「波瑠さんの肩揉んであげます」といって肩のあたりを揉みはじめたのだ。波瑠さんは顔を真っ赤にしている。あのクールビューティの波瑠さんが真っ赤になって動揺している
波瑠さんにひそかに思いを寄せていた私は激しく嫉妬した。童貞ゆえの自信のなさで会話すらままならなかったが、いつも彼女を盗み見ていた。服の上から伺える乳房の形を想像しながら自慰したこともある。年上の彼氏がいるという噂にうちのめされたこともあった
そんな高嶺の花だった波瑠さんが「どうぞ私を抱いて」と言わんばかりにオンナの表情をしていたことがショックだった。一見、ツンとしているように見える女性でもイケメンに見つめられたらイチコロなのだ。しかも相手は15歳の少年である。この事実は私を苦悩させた
その日、自宅に帰った私は波瑠さんの表情を思い出していた。肩を揉まれた時の波瑠さんはなんと幸せそうな表情をしていたことか。坂口君が波瑠さんを抱いている姿を想像してみた。すると嫉妬と悔しさで不思議と興奮してくるのがわかる。寝取られ好きの気持ちがわかった。私はその夜、何度も自慰をした
この一連の出来事は童貞を捨てたいという思いを強めた。風俗でもいいから童貞を捨てれば嫉妬に苦しまなくてもすむかもしれないと思った。次の休日、ネットで入念な下調べをし風俗へ向かった。初めての記念だからと一番美人でゴージャスな容姿の女の子を指名した
指名し部屋で待つ間、胸は高まった。期待と緊張が入り交じり、武者震いが止まらなかった。女の子が部屋に入ると緊張は限界を越えた。手足が震えている。まずい。嬢に童貞であることを悟られたくない一心で、手足の震えを隠し手慣れた様子を演じようとすればするほど震えは強まり会話にも妙な間ができた
正常なコミュニケーションすら成立しない私を前に、風俗嬢は徐々に心を閉ざしていった。恐らく私は緊張と劣等感にまみれた恐ろしい表情をしていたのだろう。風俗嬢が私を不気味がり、怖がっているのがわかる。私はその雰囲気をどうすることもできず、無言で胸を揉み続けた
子泣き爺のように後ろから覆いかぶさり、ぎこちなく胸を揉みしだく私の表情をチラリと見た風俗嬢は、ほんの一瞬だが嫌悪の表情を見せ、その後は私をできるだけ見ないようにしていたと思う。私の性器に手を伸ばし、数回上下に動かしながら刺激を与え勃起を確認した彼女は無言でコンドームを装着させた
コンドームを装着されながら私は女体に感じ入っていた。初めて触る女性のおっぱい。その柔らかさ美しさに衝撃を受けた。女の乳房とはこんなにも男に幸せな感情を与えるのかと。ずっと揉み続けていたい衝動にかられた。しかしコンドームを装着させた嬢は女性器に何かを塗り込んだあと挿入を促した
正常位の体勢から、私はアダルトビデ���の見よう見まねで挿入を試みた。しかし、これが意外に難しい。挿入しようとし、角度や位置の違いから押し戻される。それを数回繰り返すうちに動揺は強まった。童貞であることがバレたかもしれない。そして何より精神的動揺から勃起が弱まっていくのを感じた
萎えて柔らかくなった男性器を女性器の入り口に押し付け、どうにか挿入しようとして押し戻される滑稽きわまりないやりとりの後、私は挿入を諦めた。気まずさを誤魔化すため、私は風俗嬢のおっぱいにむしゃぶりついた。風俗嬢は事務的に私の性器を手でしごき、再び勃起を促した
胸を揉むとわずかだが、萎えた性器が復活する。ベッドの上にお互い向き合って座りながら無言のまま、私は胸を揉みしだき、風俗嬢は淡々と私の性器をこすり上げる重苦しい時間が20分くらい続いた。異様な光景だったと思う。やがてコンドームがシワシワになったところでタイマーの警告音が響いた
「時間…」とつぶやいた風俗嬢はコンドームを剥ぎ取り、激しいペースで性器をしごいた。私も胸を揉むペースを早める。すると数十秒後、精子が放出された。思わず「あっ」という声を上げてしまった。賢者モードに陥る私をよそに彼女はティッシュで精子を拭く。これが私のみじめな初体験だった
挿入に成功しなければ真の意味で童貞を脱したことにはならない。翌週も同じ店に行った。指名した娘は先週の子ほど美人ではなかったがとても愛想が良かった。武者震いしながら性行経験者を装う私のバレバレの演技にも笑顔だ。私を傷つけないよう、私が彼女をリードしている錯覚を与えながら挿入へと導く
メリメリという感覚の後、私の性器はするっと女性器の中に入った。挿入に成功した。私は激しく動くことで緊張を悟られないように努めた。しかし、このとき私は膣内での射精には成功しなかった。風俗業界ではこれを中折れと呼ぶらしい。結局、私は手と口で嬢に刺激されながらゴム内で発射させられた
恥ずかしながら私はセックスがこんなにも難しく、重圧がかかるものだとは知らなかった。機会さえあれば誰にでもできると思っていた。水を飲み、道を歩き、ベッドで寝る。そんな人間の当たり前の営みと同じく挿入と射精ができるのだと。しかし実際は違う。自転車の補助輪を外すような訓練が必要なのだ
風俗店から帰宅後、ネットで調べたところ、私のような症状は「膣内射精障害」と言うらしい。自慰ばかりしているモテない男が患う風土病のようなものだ。普通の男性が患うこともあるが、多くは加齢、飲酒、あるいは倦怠期で刺激を失ったことが原因であり、コンディション次第ですぐ回復する
自慰ばかりしている男性は、しばしば自分の性器を強く握りしめる。そして、それは膣が加える刺激を上回る。性交よりも自慰の回数が圧倒的に多い非モテ男はそれに慣れきってしまい、いざ性交するときに刺激が足りず射精に至らないのだ。オナニー病、モテない病と言える。こんなに哀しい病があるだろうか
結局、膣内での射精に成功するまで、童貞を捨てた日から3年以上の月日がかかった。風俗店へ通いつめた回数は40回を超える。30歳を超え、ようやくである。中折れし途中で萎えた性器を手でしごきあげられ、射精させられるという情けないセックスを40回以上も繰り返したのだ
童貞を捨てれば消え去るかと思われた劣等感はさらに巨大になった。3年の間、自らの性的能力の低さ、異常さを突きつけられた思いがした。15歳の少年がいとも簡単に、毎日のように行う「普通の性交」にお金を支払ってもなお達しないのである。波瑠さんら女性社員や生徒がこれを知ったら、蔑み笑うだろう
恥ずかしい話だが、今でも私は2回に1回は膣内射精に失敗する。これは異常なことだろう。しかし、異常者なりに気づきもあった。風俗嬢に「実は素人童貞で経験が少ないんです。リードしてください」と白旗を上げるのだ。すると精神的に少し楽になることがわかった。少なくとも手足の震えは軽減した
裸の女性を前にした緊張、武者震い、手足の震えは、恐らく素人童貞を恥に思い隠そうとする男のチンケなプライドと密接に関わっている。あえて白旗を上げることで、それはいくらか軽減する。しかし「途中で萎えたらどうしよう」という重圧は依然として残る。この重圧から逃れる方法を私はいまだ知らない
風俗嬢に「経験が少ないのでリードしてほしい」とカミングアウトすると、高確率で「そういうお客さんの方が好き」と言われる。これは好き嫌いというよりも、その方が業務上、楽なのだろう。世の女性が素人童貞を好きというわけではない。むしろ素人童貞で射精障害のおっさんなど視界にすら入っていない
しかし指名した子がドンピシャで好みだった場合は、経験が少ないことを明かせずにいた。もしかしたらこの娘と付き合えるかもしれないという下心からである。冷静に考えれば風俗嬢が客と付き合うことなどあるはずがない。にも関わらず、自分を偽りカッコつけてしまうのだ
なぜか。それは女性との接触が極度に少ない非モテには万に一つの可能性でさえ貴重な機会だからだ。自分でも狂っていると思う。しかし非モテの劣等感とは、これほどまでに人間の判断力を狂わせるのである。こうして性に習熟した大人の男を演じようとして射精に失敗し呆れられる。私はこれを繰り返した
風俗店通いで不快だったのは待合室の存在だ。見るからに女と縁がなさそうな醜い男たちが折り重なるように狭い部屋に押し込められ、煙草の煙にまみれながら携帯電話の画面を覗いている。そしておそらく彼らは軽く勃起している。この世の終わりみたいな場所だ。気持ちの悪さに身の毛がよだってしまう
フェミニストが憎み、罵り、滅ぼそうとしているのは風俗店の待合室にいるような男たちのことだろう。決して坂口君のような美少年ではない。この点に関して、私はフェミニストに深く同意する。彼らを消し去ることで、世界は少しだけ良くなると思わざるを得ない。私も消えてしまうけれども
おそらく坂口君は、平均的な非モテ中年の何十倍、何百倍もの女性を傷つけ、悲しませ、不安にさせてきたはずだ。しかし、世の女性はそれでも坂口君を愛する。そして彼に特別扱いされることを望む。フェミニストも坂口君を攻撃することはない。彼の存在そのものが女性を幸せにするからだ
私のような非モテ中年がフェミニストにお願いしたいのは、せめて我々が生きる権利だけは奪わないでほしいということだ。風俗店の待合室に来てしまうような種族は、自分ではどうにもできない性衝動と法律の折り合いをつけ、やむにやまれず安月給を工面して数万円を握りしめてやってきた善良な市民である
男がお金を払って快楽を得ようとすることに関して、女性の目は厳しい。それは本来なら淘汰され、消えてなくなるべき遺伝子が、お金の力で力を得ることへの本能的な嫌悪であると思う。この本能は現在の人権制度、博愛主義と完全に対立する。この点について現代社会はまだ答えを見いだせていないと思う
坂口君には女性を虜にする必殺技があった。それは笑顔で挨拶することだ。なんだ、それだけかと思うかもしれない。しかし彼は笑顔だけで女性を完全にコントロールしていた。私が見る限り、彼はいつも同じように笑顔の挨拶をしていたわけではない。人や状況に応じて、振りまく笑顔の量に濃淡をつけていた
坂口君が最大級の笑顔で挨拶をすると、女たちは皆、有頂天になった。成人女性とてそれは同じだった。みな狂ったように喜んだ。しかし、いつもそれをするわけではない。そうやって濃淡をつけることで、不安にさせたり、嫉妬させたりしながら女たちの行動をコントロールするサイコパス的な側面があった
それは幼少期から女性と濃密なコミュニケーションをすることで得られた天性の能力だろう。真似しようとしてできるものではない。「女性に優しく」と、よく恋愛マニュアルに書かれているが、大半の男が考える優しさは「弱��ゆえの優しさ」であって、本質的には媚びや譲歩に近い
そしてこれは重要なことだが、女性はその「弱さゆえの優しさ」には興味がない。いや、嫌悪すらしていると思う。「弱さゆえの優しさ」でどんなに高額のプレゼントを貰おうとも、女たちはなびかない。むしろ坂口君から時に冷たくされ、時に嫉妬させられながら、ごくたまに優しくされる恋愛を選ぶ
坂口君に話しかけられた女性の反応は、若くてハンサムな白人男性に話しかけられた日本人女性のリアクションに近い。若い白人男性が日本人女性を次々といとも簡単にナンパする動画がネット上で賛否を呼んでいたことがあり、私もそれを興味深く観たが、あれはまさしく坂口君の周りで起こっていたことだ
六本木などを歩けばわかることだが、ハンサムな白人男性を連れて歩く日本人女性は不思議と欧米風の所作になる。彼女らは白人男性を連れて歩いているという状況そのものに酔っていて、「みんな見て、これが私の彼氏よ」とアッピールしたくてたまらないように私には見える
白人男性と交際すること、それを周囲に認識させることが自らの格をも上げるのだと確信していないと、ああはならないのではないか。少なくとも冴えない日本人男性を連れて歩く日本人女性は、六本木を彼女らほど我が物顔では歩かない。もっと申し訳なさそうにそそくさと歩いているように私には見える
思えば沢尻や波瑠さんは、坂口君と話しているとき、とても得意げだった。周囲に見せつけるように、「坂口君とこんなに仲が良い私」をアッピールしていた。そして我を忘れて会話を楽しんでいた。沢尻はともかく、波瑠さんまでが中学生相手にそんなになってしまったことは、私に強い衝撃を与えた
私が初めて風俗店へ行ってから数週間後、沢尻の母親からの電話が私の勤務する学習塾を大混乱に陥れた。最初に電話をとったのは私だ。母親が言うには沢尻が波瑠さんからしきりに服装について注意を受け精神的に参っていると。服装についての規則はないはずでは?何が悪いのかということだった
これは沢尻の母親に理がある。生徒の服装を職員が注意することは、基本的にはないはずだ。そんな場面を見聞きしたこともなかった。これは奇妙だ。そして母親は言いにくそうに、話を続けた。「あと…娘が波瑠さんにあなた処女じゃないでしょって言われたみたいなんですけど…」。私は耳を疑った
沢尻母が校舎へやってくると、室長室へ通し、私は退席した。約1時間後、沢尻母が帰ると、今度は波瑠さんが室長室へと呼ばれた。授業時間になっても波瑠さんは戻ってこない。私は嫌な予感がした
納得がいくようでいかない、なんとも要領を得ない説明である。「波瑠さん、沢尻に派手な下着を着るなとか、ピタっとした服を着て来るなとか言ってたらしいですよ…。で、別の教室へ行って、すぐ辞めたみたい…」。私はそのことを坂口君から聞いた。そして事の真相にある程度の察しがついた
一連の騒動はおそらく坂口君をめぐる沢尻と波瑠さんの潰し合いなのだ。そして沢尻が勝ったと。坂口君と沢尻がイチャついていたのを見た波瑠さんが嫉妬し、坂口君におっぱいを密着させて接近した。それを察知した沢尻は波瑠さんのクビを獲りにきた…。そういうことなのではないかと
坂口君はなぜ波瑠さんの「その後」を知っていたのか。私は彼に「そんなこと誰から聞いたの?」とは聞けなかった。仮に聞いたら、彼はおそらく「だって波瑠さん、俺のセフレだよ」と無邪気に答えたであろう。波瑠さんに想いを寄せていた私は、それだけはどうしても聞きたくなかった
坂口君は波瑠さんのOKサインを見逃してはいなかったのだ。そして彼は波瑠さんとセックスしていたのだと思う。室長の聞き取りで波瑠さんは、沢尻への仕打ちだけでなく余罪も白状した。そして警察沙汰を恐れた塾側は、噂になる前に波瑠さんをクビにした…。これが坂口君の口ぶりから察した私の仮説である
坂口君と波瑠さんは、いったいどんなセックスをしていたのだろう。15歳にして180cm近い長身、私より10cm以上も高い。きっと性器も立派なのだろう。少なくとも私のような仮性包茎のイカ臭い、粗末な性器ではないはずだ。場馴れした手つきで波瑠さんをリラックスさせ、「好き」と囁き合ったのではないか
坂口君は30人以上とやったと豪語していた。多少盛っていたかもしれないが、説得力はあった。セフレの女子大生からの「生理来たよ」というメールを見せてきたこともあった。当初、私はその意味がわからなかった。数日してようやく危ない日にコンドームなしでセックスしたことを意味するのだと悟った
童貞の男はそんなことも分からないくらい察しが悪い。そのくせ嫉妬深い。坂口君と波瑠さんがセックスしていたことに気付いた日、私は帰宅するなり自慰をした。波瑠さんを奪われた怒りに近い感情が、なぜか興奮を高めた。怒りと興奮で顔を紅潮させながら、あらん限りの力を込めて性器を握りしめていた
そのときの私はこの世のものではないくらい醜い顔をしていたはずだ。嫉妬に狂いながら坂口君が波瑠さんを愛撫する姿を想像し、「畜生、畜生…」と呟きながら性器を握りしめた。膣内射精障害が悪化するとも思ったが、どうにでもなれという自暴自棄の気持ちが勝っていた
そのときなぜか波瑠さんが小ぶりなおっぱいを精一杯寄せて、坂口君の性器を挟んでいる像が思い浮かんだ。パイズリだ。なぜそんなイメージが浮かんだのかはわからない。心の奥底に閉じ込めた性衝動が脳内で不可思議に暴発したのだと思う。そして、その瞬間、私の性器は精子を垂れ流した
その後、私は坂口君の立派な、私の倍くらいはあるだろう性器を波瑠さんが小さな乳房で一生懸命に包み込んで奉仕している場面を思い浮かべながらもう一度、射精した。その後、今度は波瑠さんが坂口君に攻められ、涙声で「ごめんなさい」と言いながら絶頂に至る妄想でさらにもう一度、射精した
それにしても波瑠さんはなぜ沢尻なんかに目くじらを立てたのだろう。たしかに職員にとって沢尻は苛立たしい存在ではあった。反抗的で知性に欠け、徒党を組むタイプの女だ。が、所詮中学生。美人だが波瑠さんの上品な美しさとはモノが違う。しかし沢尻にあって波瑠さんにないものが一つだけあった
大きな乳房だ。沢尻は中学生の割におっぱいが大きかった。それを見せつけるように胸の谷間も露わなキャミソールを着てくることもあった。波瑠さんは沢尻の胸の大きさに嫉妬していたのだろうか。普通ならば、そんな結論には至らない。何より女性は男が思うほど、恋敵の胸の大きさを気にしない
本当のところはわからないが、少なくとも気にしない素振りを見せる。しかし、こんな普通じゃない状況になった今、どんな可能性だってありうるように思われた。沢尻が大きな胸で坂口君を誘惑していると確信した波瑠さんが、嫉妬にかられ派手な下着や体のラインが出る服を着ないよう命じた…
そんなのはアダルトビデオの中だけの話。そうやってシンプルに考えられる人を私は羨む。いろいろな可能性を考えたとしても、それは何も生まない。真相は本人に聞いてみなければわからないのだから、考えたって仕方がないのだ。本人ですら、自分が何を考えているのかわからないのかもしれないが
波瑠さんは胸は小さく、おそらくAカップかBカップといったところだったが、170cm近い長身で顔が小さく手足が長い。他人の美貌に嫉妬するようなコンプレックスがあるようには見えなかった。沢尻は165cmくらい、Dカップくらいだろうか。大人びてはいるが品の無いヤンキーみたいだなと思うこともあった
私は波瑠さんに話しかける勇気はないくせに、チラチラと盗み見ていた。ブラウスの間からブラジャーが見えていて、凝視してしまったこともあった。もう少し角度をずらせば波瑠さんの胸の大きさが確認できるような気がした。思えばあれは気付かれていただろう。なんとも情けない話だ
真剣佑という俳優が14歳当時、37歳の子持ち既婚女性と肉体関係を持ち、その女性が真剣佑との間に生まれた子供を出産したというスキャンダルがあったはずだ。私はこの報道を聞いて真っ先に坂口君と波瑠さんのことを思い出した。この世には現実にこういうことがあるのだ。「事実は小説より奇なり」である
37歳人妻の理性はなぜぶっ壊れたのか。希少性の法則という言葉がある。人は希少なものや機会には価値があると思い込み、しばしば非合理的な行動をとる。旅先で割高な土産物を買ったり、閉店セールで安いからと絶対に使わないものを買ったりしたことはないだろうか
希少性の法則は性愛においてこそ当てはまると私は考える。目の前にいる美少年が完全に自分の好みのタイプで、彼にいま好意を伝えなければもう会えないかもしれないという状況があったとしたら、女の理性は少しづつ壊れていく。「こんな子にはもう出会えないかも」「今しかない」という感覚
それでも法に触れることを恐れて、性衝動を理性で強引に閉じ込めるのが普通の人間だ。しかし、心の奥底に折り畳まれた性衝動を侮ってはいけない。理性で閉じ込めるたびに性衝動は力を増す。性的な衝動を発散する機会が少ない、抑圧された女性の性衝動は男の数倍強い
希少性の法則を突き詰めれば、非モテ男の生存戦略は希少性を獲得することということになる。容姿に恵まれていないが幸せな性愛生活を送りたいと願うなら、希少な存在になるべきだ。この観点から、モテたくてバンドをやる、芸人を目指す、漫画家を目指すという行為はまったく正しい
希少な存在だけが女の心を揺さぶり、理性の扉を開くことができる。モテたいのに会社員になってそれなりの年収を貰おうと努力するのは完全に間違っている。そもそも非モテは会社で出世できない。会社とは非モテがせっせと努力して得たものをリア充がまるで自分の手柄のようにかっさらっていく場所だ
イケメン男子中学生に手を出した年上の女は、遊ばれた挙げ句、無残に捨て��れるだけなのになぜ…?と理解ができない人もいるだろう。非常に浅はかな考えだ。性愛に賭ける女の深い情念を甘く見すぎている
女はイケメンに近づけば遊ばれ捨てられることなど百も承知なのだ。15歳の美少年に手を出せば、彼と同世代の美少女と比較され、子供と侮っていた女に男を奪われ、時に恋敵の女子中学生よりも胸が小さいというみじめな現実を突きつけられ嫉妬に狂うことだって覚悟の上なのだ
男子中学生と成人女性の間には、事実、性愛関係が成立する。たった今も地球のどこかで男子中学生と成人女性はセックスをしている。にも関わらず、それは世間的には許容されない。いや、法的、社会的、道徳的、教育的などあらゆる観点からそれは否定される
そして弱虫や嘘つき、偽善者たちは、男子中学生と成人女性の性愛関係など、この地球上にまるで存在していないかのように振る舞う。しかし、私は文学的、ないし芸術的な観点からは、それを肯定したい。少なくとも私には坂口君に肩を揉まれ至福の表情を浮かべる波瑠さんを咎める気にはなれなかった
私は数日前にTwitterでここに書いたトラウマを吐き出したことで、ようやく性愛と向き合うことができた。性愛以上に大事なものはこの世に存在しないことにようやく気付いた。そして素人童貞なりに、この世にどうにか自分の爪痕、生きた証を残したいという強い生の衝動に突き動かされてこれを書いている
私の書く文章を気持ちが悪いと思う人は多いだろう。作り話だ、決めつけだ、素人童貞に何がわかるという意見だってあるはずだ。批判したければ批判するがいい。笑いたければ笑えばいい。しかし、批判しても笑っても、すべての人間に気色の悪い性的衝動が存在する事実を消し去ることはできない
この一連のツイートを波瑠さんと、私を射精に導いたすべての女性に捧げる…って、捧げられても困るか…。まあいいや(完)
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gerdrud · 3 years
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かぞえきれぬほどの罪
 本ブログ「Sommerwind」は本記事のみを目的として作成されており、文責は末尾に示されるクレジットの本人(二名義同一人物)が全面的に負っている。これは作品でも、手紙でもなく、ただの文章である。よって、心当たりがある、あるいは単純によく分からないけど最後まで読んでしまった、という場合を除き、本文章は完全に無意味である。
 さて、こう前置きをしたはいいものの、作品ではないというのは通用するような気がしないでもないが手紙ではないというのは苦しい気がする。というか通用しないな。このアイコン、ヘッダーのブランド名(教えてくれた2007SSのショーは本当にすばらしい、今色んなランウェイを観るのにハマっているが群を抜いていると思う)、全て特定の人物に宛てられているものでしかないからだ。小説を書くときいつも人称に迷って、俺は俺のことを俺と呼んでいるのでよいとして、便宜的に「あなた」のことをどう呼べばいいだろうか?というのも、「あなた」のことを代名詞で呼んだことがない。かと言って、のちほど述べるようにこれは俺自身のデジタルタトゥーなので実名と筆名を併記するがインターネットの海に今は何をしているか知らない人の名前を表記する気にはとてもなれない。俺だってパクられたくない。「お前」では不作法だし、「君」も味気ない。「きみ」ぐらいがロマンティック過ぎて俺にはちょうどよいような気がする。
 夏の前に春があって、風の後に嵐が来る(Sommerwindはドイツ語で夏の風。作曲者はアントン・ヴェーベルンだが、Gerdrudの邦題は……すべてを言うまい)。世界は結局よく分からない風邪・オルタみたいなものに過剰にビビり(俺もビビっていた)、そしてこのせいで四季の中で俺が特に好きな二つの季節に何もできないまま、俺ときみは終わった。すごく残念だったと同時に、恋人という関係ではこの結末しかなかったと思う。この文章は、意志表明、悔恨、などではあるが、怨嗟、未練、などではない。言っておくが、あんなことがあってもきみを今は恨んでいない。あの時会っていたら、どうなってただろうね。縋りたかったというきみは縋ったのだろうか。俺はほだされていたのだろうか。イフなどない。ないからこそ眩しい。最後に送ってきたDMでも、「あなたといれたはずの未来が眩しいのだ」と書いていたと記憶している。恐らく色んな意味で焼き印のように忘れられない言葉である。
 はっきり言おう。俺はきみと出会う前のような文章をもう書けなくなってしまった。同人誌を3つ(うち主宰1つ)抱えて映画の監督と脚本もやって賞にも出して人から頼まれて卒論を出してうんぬんかんぬんうんぬんかんぬん……となると、俺のジャンキーな旨味成分が形式や字数によって脱臭されていくのだな。割と色んな人にウケるようではある。「割と」「色んな人に」だが。俺は、何よりもまず、「きみだけに」刺さるような文章をのびのびと書ければ一番よかった。それでよかったはず、とも言えないのが難しい。それでよかったのだとすれば、俺は大学5年のそろそろ12月に「進路:フリーター」で某喫茶店の給料では今の一人暮らし(付き合ってたら連れ込んでただろうね)では持たないのでまたバーでもやるかあ、さてさてWordを開いてメモを取って、俺はこっちが本業だから……とかほざいておらずコロナ真っ盛りヒエヒエの出版業界でよくて中小にヌルッと入っていただろう。これもまたイフのない話で俺はこれからいわゆる「イタい大人」になっていく訳で、その選択に後悔はない。そしてきみがいなければ俺はこの選択をしていない。ここまではよい。
 「誰かを愛せたというのは、自分のおかげで誰かが変われたときだけ」とは俺の敬愛する(ご存じ)ルイ・アルチュセールが最初のガールフレンド、クレールに宛てた手紙の一節だ。変わりたくなかった。変わったらダメだと思っていた。きみは変わりたかった。変わらなければならないと思っていた。さて、どうだっただろうか?きみは「結局お互い変われた」と言い、俺は「そっちは知らないが俺は変わってない」と言った。もう正直愛がどうとかどうでもいい。今の彼女ですら愛せていない。ただ、俺は変わってしまった。悔しいね。きみに愛されてたんだろうね。あのときは頭に血が上ってたけど感謝ぐらいはしてもよかった。俺はきみからDMが来て数日間うろんになり、書いていたプロットを全部白紙にし、勢いで5万字の小説を書いて某談社に送り付けた。のち、父親に掴みかかり投げ飛ばされて発狂、精神病院に叩き込まれ、退院して一人暮らしを始めて2か月で今に至る。やるしかねえという感じではあるが、きみに出会っていなければこうはなっていなかっただろう。���こうはなっていなかっただろう」によしあしの価値判断は存在しない。きみとのブッ飛ぶようなセックス(今の彼女とのセックスはまったくもってつまらない。人生で女がいるのにセックスしたくならないなんて初めてで戸惑っている)で脳細胞の一部が死滅してしまったのだろうか?まあ、いいや。女で人生が、創作が変わると認めたくなかっただけの話だ。変わるね。変わります。生きることと書くこと、どちらが先に来るのか分からなくなってきている。書くために生きるのか、生きるために書くのか。書くために生きていたいと、ずっと思ってる。しかし、それができるのかどうかは、分からない。勝ちたいが。勝つって何?ちなみにだが、その意味で言うと俺はやっぱり君を愛せなかった。努力がどうとかではなかったと思う。生真面目なところも、自分の見た目に自覚的で自信を持っているところも、服のセンスが今まで見た女の中で一番お洒落で隣を歩くのが恥ずかしいぐらいだったところも、酒に弱いところも、勉強の要領が悪いところも、不安定になると誰かとすぐセックスしちゃうところも、眠り過ぎたり眠れなかったりするところも、最後まできみはきみのままでいたことを証明してみせた。だからまあ、同じような始まりが同じように終わるのは理の導くところといった感じで今は自責の念を感じている。何の資格かは言わないが、試験は終わったのかな?取れてるといいね。
 2月にきみが友達になろうと言ったとき、俺はそれを呑めないと言った。これは俺は間違っていなかったと思う。恐らくあれで友達になっていたら時間の問題で関係が粘ついて同じことになっていた。何が間違っていたのか?文章を書く俺。熱心に俺の文章を読むきみ。やはり、始まりが全てだった。友達から始まっていたならば、と。ナンセンスに過ぎる話ではある。これは不可能な話をしていて、というのは所詮男女だから、というのは差し引いても、これは俺ときみのパーソナリティに由来する問題だからだ。いつか言った気がするが、俺ときみはある種のアンバランスさや病的な部分を基底に「何か」が似ていた。アイドルとか、清竜人25(あれを女の子とカラオケで歌えたのはきみで人生最初で最後かもしれない)とか、そういう趣味の問題でもない。だからこそ、最後はああなった。俺もまあああいうところはあるからだ。微妙に合っていて微妙にずれているぐらいがちょうどよいのだろう。ずれ過ぎていても面白くない。噛み合いすぎたらショートする。ショートした回路は戻らないということは、俺ときみが一番よく知っていることだろう。
 他にもいっぱい書きたいことがある。書きたいことというより、喋りたいこと。俺が喋り過ぎなのはきみが一番知っているはずだ。きみのバイト先に手紙を渡しに行こうかとか、顔を見たら緊張で場ゲロしそうで怖いなとか、家で待ち伏せてたら間違いなく交番まで羽交い絞め、Gmailはブロックされてるし、8月のきみみたいにDMで送る蛮勇は揮えないしそもそもこれは長すぎる(といってもほとんど書いていないに等しいが)。死んでいたら別だが生きていればいずれすれ違うぐらいのことはするだろう。俺は今4つのTwitterアカウントを持っているが、これはどれにもリンクを上げない。書き終えたあと、Tumblrのパスワードを乱数に変更し、ログアウト。さらにこのTumblrを立ち上げるために作ったGmailアドレスのパスワードを乱数にしてログアウト。これで完全にこの記事は俺の意志ではどうにもならなくなる。訴えるならコンタクトを取ってもいいが。あのアカウント、消しちゃいけなかった。ビビってしまった。だから、これは残す。最後に二つの名前を載せておく。特に実名はリスキーだがきみの身元が割れるような内容は(恐らく)一切ないはずだ。どちらでもいいから気が向いたときに名前でググってこの記事がヒットして思い当たる節があればビンゴだ。Tumblrが一番書きやすいね。あの本は割とバイト先で読まれている、というか喫茶店ブックガイドみたいなのに載ってしまった。ウケる。
 罪をかぞえる。かぞえていった。かぞえきれなかった。多分これからも。書くことをやめないでねときみは言った。きみに言われるまでもなく、と言いたいところだが、きみに言われたのでやめない。きみはインターネット上でいつでも俺の文章を見つけるからねと確か言った気がするが、見つけられたかな?
 ああ!久々にこんなのびのびと文章を書いた。人生でもう一回ぐらい会えないかなと思ってるよ。そして謝らせてくれ。やっぱり友達としてやり直したいよ。「やり直す」なんて、無理なんだけどね。激しく憎まれてるだろうからコンタクトはないと思うし、とりあえず、「きみ」、お前ではない、あなたでもない、特定個人の「きみ」が、変われるような相手がいつか見つかりますように。愛するということは今でも結局分かんないけど、人として間違いなく好きだった。一番話してて楽しい女の子だったよ。マジでね。
 さて、ボトルレターよろしくこれからこの文章はGoogleSEOの荒波の澱に投げ込まれる。揉まれて浮上することはないだろう。知らない誰かに読まれることもあるだろう。なのであまり恥ずかしいことは書けない。「本音」などない。「正直」などない。「都合」のみがある。ノットファクトアザーフェイク。知ったことか。
文責 宮﨑悠暢(早良香月)
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d17ing · 4 years
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女の話『本当に神になってしまった』
Twitterで自分を神と名付けたあの子は、たしか『ナナ』という名前だった。
時折、Twitterの『メンヘラ界隈』という極々狭い世界が賑わっていた頃を思い出す。
その中心人物とも言える彼女と僕は密接な関係であるかのように他者に思われたこともあったが、実際のところは出会ってから彼女が死んでしまうまでには片手で数えられるぐらいしか会ったことがなかった。
彼女との記憶は悲しいものかと思いきやコメディとブラックジョークに満ちていて、滅茶苦茶になった夜のこと、彼女がお腹にある龍のタトゥーが「太って伸びてしまった」と悲しむのを慰める為にひたすらタトゥーだけを舐め続けたり、薬の影響で泣いたり叫んだり笑ったりを繰り返して最終的には小便を掛け合おうと思い立ったはずがトイレで2人で爆睡したこととか、くだらないことばかりを思い出す。
僕がTwitterの『メンヘラ界隈』でほんのりと名前が知られるようになった頃に、きっかけは忘れてしまったけれど、彼女とはどちらからともなくDMで色々な話をするようになり、彼女が開催する地獄のようなオフ会へ参加することになった。
メンヘラオフ会と呼ばれたあの集まりは新宿のカラオケルームで開催され、大量の精神薬や海外製の怪しげな色とりどりのスマートドラッグ、度数の強いアルコールと貝印のカミソリがテーブルに並べられ、病みソング(笑)のPVで出てきそうな絵面が繰り広げられていた。
思い出すと笑ってしまうような光景の中で、カラオケのパーティールームのチープな照明に照らされた彼女が宣言していたことを思い返す。
「メンヘラなんて何も特別なことなんかじゃないんだ、あなた達が抱えている悩みなんて全く高尚なものではない、とてもくだらない悩みなんだって、早く自分は特別な存在なんかじゃないって気付かせてあげたい」
今ほど『メンヘラ』という言葉がポップな意味を持っていなかったあの頃、メンヘラオフ会に参加する男というのは、色々と拗らせてしまったオタクか、発達障害の愛されなかった獣しか居なかったので、僕のような存在は珍しかったのかもしれない。
オフ会後はより密接に話すことが増えた一方で、僕は別に『ナツミ』というどこまでもマトモな女の子と交際しているという命綱を掴んでいたので、『ナナ』の破滅的な誘いに乗る機会は減っていってしまった。
『ナナ』はSNS上での破天荒な発言や行動ばかりが目立っていたものの、実際に話すと落ち着いて会話が出来るだけでなく、会話の節々に頭の良さが垣間見えていたのを覚えている。
ある日「どうしても来て欲しい」という彼女の誘いへ終電に飛び乗って向かった夜、部屋に着くなり2人でアルコールと薬を一気飲みして日々の悲しみをぶちまけきった後、全てを忘れて滅茶苦茶になる前の短いシラフの時間に、お互いの死生感について少しだけ語り合った。
「別にリストカットするとか、ODするだけが自殺未遂じゃなくて、いつもよりちょっと多めにお酒を飲んで前後不覚で街を歩いたり、いつもよりちょっと車道側を歌いながら歩いたり、いつもよりちょっとお風呂の中に潜ってみたりさ、もしかしたら死んじゃうかもしれないってことをするだけでも立派な自殺未遂だよね」
「私達は毎日、確率の大小はあれど自殺未遂を繰り返していて、自殺した人のことを凄いと思ったりするけれど、その一回がたまたま成功、もしかしたら失敗なのかもしれないけれど、上手いこと逝ってしまっただけなんだろうね」
僕らが二人の時間を過ごしたのはあの夜が最後で、もう一度会いたいと話しながらも、彼女は「ねこをたのむ」と言ってベランダから飛び降りてしまった。
当時はセンセーショナルだったネット上の有名人の突然の死は話題となり、ミームの亡者であるネット住人の餌食となった。
それから彼女はあっという間に本来の人格を全て奪われて、神を名乗っていただけのちょっとおかしな女の子ではなくて、一つ一つのSNS上の発言を取り上げられては神格化された、熱狂的な信者まで創り出した僕の手が届くことのない本物の神様になってしまった。
僕は時折思い浮かべるのだ、結果的に彼女は上手く逝ってしまったけれど、「いや~!飛び降りてみたけど死ねなかったよ、人間って丈夫なもんだね~!」と笑いながら言ってのける彼女の満身創痍な姿を。
僕が彼女が飛び降りて叩き付けられたであろう場所を訪れたのは何年も経った後、『ナミ』と別れて本気で死ぬことばかりを考えていた時期だった。
僕はその場所の写真を撮って、しばらくの間は携帯の待受画面に設定していた、何の変哲も無い地面の写真は確かに僕を生かしていた気がした。
「死ぬことは何も特別なことではない」と。
コメディとブラックジョークで満ちた彼女と僕の関係に相応しい、『ナナ』の追悼で久々に会ったメンヘラオフ会の参加者である『イク』という女とセックスしながら、「もしこれで妊娠したら、子供には『ナナ』という名前を付けよう」と笑い合ったのは、また別の話。
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xf-2 · 5 years
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あなたは2013年に放送されたアニメ「ステラ女学院高等科C3部(以下、ステラ)」を覚えているだろうか。萌えとサバイバルゲームをミックスさせた先駆的な題材に、ジャジーな劇伴を組み合わせたオシャレな音響演出。そして細部までこだわったエアガン描写。
 主人公は高校1年生の女の子・大和ゆら。引っ込み思案で友達のいない彼女は、高校のサバゲー部で初めての友達と出会う。ところが話が進むにつれて、彼女はゆるふわな部活動では満足できなくなり、修羅の道を歩みだしてしまう……。
 お茶でまったりしたい部員たちを「勝つための足手まとい」と怒鳴りつけ、急速に孤立を深めていくゆら。一転して最悪な空気の合宿。さらに大会本番では不正行為に手を染めるなど、主人公の転落人生は加速の一途をたどった。
 当初の萌えや癒やしを求めた視聴者は、胃痛が不可避のギスギスした展開に振り落とされ、DVD/BDの売り上げでも苦戦。収益化の方法が多様化した現在では円盤の売り上げが“計測不能”となることも珍しくなくなったが、当時ぎりぎり算出されてしまった「267枚」という数字は、一部では「1ステラ」という単位として広まった��どだ。
 あの衝撃の放送から5年が過ぎた。そして、あなたは「ステラ」のことは忘れても、あのとき味わった胃痛までは忘れていないはずだ。その「ステラ」の川尻将由監督が5年ぶりに放つ新作が、短編アニメ「ある日本の絵描き少年」である。
 同作の主人公は、漫画家を目指す少年・シンジ。本編では彼の幼少からアラサーに至るまでの成長に合わせ、登場人物のタッチが「幼児の絵」から「漫画家の絵」へと次第に変化していく。その挑戦的な手法や、監督の人生を反映したかのような生々しいストーリーは高く評価され、“第40回ぴあフィルムフェスティバル”での準グランプリをはじめ、“第10回 下北映画祭”でグランプリに輝くなど、「ステラ」ファンとしても「まさか」と思うほどの快挙を納めている。
 5年越しのこの復活劇。川尻監督は何を思い、自主制作の手法で新作アニメに挑んだのか。たっぷりと語ってもらった。
帰り道、毎日ゲロを吐いていた
――受賞おめでとうございます。いよいよ下北沢トリウッドで上映も始まりました。
川尻:いやあ、いろいろあったねえ(笑)。
――いろいろありましたか。
川尻:「ステラ」の後、「俺、ちょっともう業界で作れないな」と思って始めた自主制作だったから、「これからどうしようかな……」って気持ちは込められているよね。
――「ある日本の絵描き少年」では漫画家になるのが夢の主人公・シンジはなかなか連載の機会に恵まれません。そんなとき舞い降りてきたアニメのコミカライズ企画に飛びつくものの、連載が思い通りいかずにボロボロになっていくわけですが……。
川尻:確実に「ステラ」の経験が反映されてますよね。俺は子どものときから夢は映画監督で、ラッキーなことにチャンスにも恵まれたけど、それを自ら思いっきりふいにした。完全に力不足が原因だったけれども。
――せっかくなので「ある日本の絵描き少年」の前に、まずは「ステラ」について質問させてください。
川尻:どうぞ……。
――当時、そもそもどんな経緯で監督をすることになったのでしょうか?
川尻:実は自分でも謎なところがあるのですが、以前山賀さん※に聞いたときは、「ダンタリアンの書架」に美術で参加した際の仕事ぶりを評価してくれた、とのことでした。
※山賀博之・・・「ステラ」を制作したアニメ会社・ガイナックスの社長。山賀氏は「ダンタリアンの書架」で美術監督も務めた。
――商業作品の監督経験は無かったわけですよね?
川尻:もちろんありません。山賀さんはたまにすごい采配をするんです。「ダンタリアン」では上村泰さんも初監督でしたよね。上村さん、今では「幼女戦記」「フリクリ オルタナ」と着実にキャリアを積んでいますが。
――川尻さんにとって「ステラ」での初監督はいかがでしたか。
川尻:精神的にかなり追い込まれました。帰り道に毎日ゲロ吐いてましたね。ただ周囲は意外なほど優しかったです。当時は大学卒業から間もない25歳で、周りとは経験値に差がありすぎて、ベテランの人からは孫みたいな距離感で見られてたんじゃないかな。
――当時のインタビューでは力不足を認めつつも、主人公・ゆらが闇堕ちしていく展開は良く描けていたと自己分析されていましたね。テーマ的には「ルーザー(敗北者)の物語を描きたかった」(外部関連記事)と。
川尻:「ステラ」では前半でつまらない萌えアニメをやったけど、主人公のゆらが堕ちてヒリヒリしてくるあたりで面白くなってきた手応えはあったよね。そこがネットではめちゃくちゃ不評だったわけだけど(笑)。
――原作漫画ではもっと明るい話なので、アニメの展開には驚きました。
川尻:ゆらが堕ちていく過程は俺のネガティブ思考も反映されてると思うけど、「成長物語にしないとダメだろう」というのは、もともと原作のいこまさんの案だった。ゆらがゾンビになって※、一度とことん堕ちてから復活させようというのは当初から決めていて、ゾンビもいこまさんの案です。
※ゾンビになる・・・サバゲーでヒットしたにもかかわらず自己申告をしない不正行為。
――それは意外ですね。
川尻:実を言うと、制作中に音付けのほうが面白くなっちゃったんですよ。曲や音響をどうするかを音楽に造詣が深かったプロデューサーさんと組んで、ひたすら音にこだわってました。だから中盤以降はサポートしてくれたスタッフにお任せしてしまった部分も多く、今になって、「もっとできることがあったのでは」と反省点は多いです。それでもたまに「あれが好きだった」と言ってくれる人が現れると、ちょっと救われた気持ちになりますね。
自主制作を選んだのは、もう業界では作れないと思ったから
――そこから紆余曲折があり、自主制作をやることになったと。クレジットにある“株式会社ねこにがし”とはどういう会社なのでしょうか?
川尻:吉祥寺トロン※を退社したタイミングで起業しました。義父の印刷会社の子会社という形になっていて、大きな会社ではありません。なんとなく業界では監督をやらせてもらえないだろうなあと思ったときに、会社化すれば「製作費が経費になる」「個人よりも他のスタジオに依頼しやすいはずだ」と気付いたんです(笑)。
※吉祥寺トロン・・・ガイナックスを親会社に持つCG制作会社
――「ある日本の絵描き少年」では主人公の画力向上に合わせて、途中から商業アニメのような映像になっていきますけど、製作費はどのくらいでした?
川尻:ちゃんと計算してませんが、合計で100万~150万円くらいです。
――クレジットには「ステラ」でキャラクターデザインを担当した梅下麻奈未さんのお名前もありますね。
川尻:せっかくなので、数カットですがお願いしてご参加いただきました。参加してくれたプロのアニメーターは2人だけで、「ステラ」で作画監督をやった大村将司さんも描いてくれています。大村さんは困っていたときに「やりますよ」と引き受けてくれて本当に助かりました。漫画パートの後半部分や最後のシーンを担当しています。
――主人公の成長に合わせて、登場人物が「幼児の絵」→「小・中・高生の絵」→「美大生の絵」→「プロ漫画家の絵」……と、さまざまな絵で描かれます。このアイデアはどのように生まれたのでしょうか?
川尻:アイデア自体は大学時代からありました。子どもの成長と発達科学についての本を読んで、成長していく様子をアニメで表現してみたら面白そうだと思ったんですね。「ステラ」が終わって「この後どうしようかな」ってときに地元の友達と一緒にやろうよという話になりました。それが2014年ごろです。
――そこから完成まで結構時間がかかりましたね。
川尻:シナリオにむちゃくちゃ悩みました。それに制作開始と前後して「6才のボクが、大人になるまで。」という映画を見てショックを受けたりもした。これは制作に12年かかっている異色作で、子どもの成長や親子の関係性を描くために、1年に1回、同じ役者と共に12年間にわたり断続的に撮り続けた作品です。同時期に見た「コングレス未来会議」もアニメと実写を独創的に融合させた映画で、見たときに「やられた」と思いました。
――確かに、どちらも「ある日本の絵描き少年」と重なる部分のある作品です。
川尻:すばらしい作品を見ると、どうしても「どうせああはなれない」という気持ちが生まれます。それでも「ある日本の絵描き少年」では、主人公のシンジはそれなりに、子どもが喜ぶくらいの絵は描けてるじゃないかと示したかったんですよね。別に大した才能はなくても、そこは肯定してあげたい。
 エンドロールでいろいろな絵を使っているのも同じ理由です。絵にはヘタウマもあれば単に下手なのもある。うまい絵だけを取り上げるのではなく、世の中にはいろんな人のいろんな段階の絵があって、それが他人からの評価とは関係なく存在しているんだと。創作すること全般を礼賛したいと思ったんです。
物語の主人公になりえないような人を描きたい
――「いろいろな絵」ということでいえば、作中では障害者アートが重要な位置を占めていました。
川尻:悩んでいた時期にいろいろと取材をしていて、愛成会という福祉団体が月に1回開いている、障害のある方たちを対象にしたお絵かきイベントの存在を知りました。そこでの体験にとても刺激を受けました。
――主人公の友人に知的障害のあるマサルくんが出てきます。
川尻:マサル役は知的障害者専門の芸能事務所アヴニールさんの紹介で、俳優のあべけん太さんに演じてもらいました。マサルの母役もダウン症のお子さんを持つお母さんで、取材を進めていく内に「この人の声しかない」と思って、お願いしました。作品には取材時にヒ���リングした内容も盛り込んでいます。
――マサルくんがおもむろに自分の髪をむしってしまう描写がさらりと描かれていて、キャラにすごくリアリティーを感じました。
川尻:ああいうところだよね。作るのに時間をかけてよかったなと思うのは、制作中に自分のシナリオに飽きれたところかもしれない。髪のシーンもですが、作画時にシナリオにはなかった要素を盛り込む余地ができたのは良かったですね。
――障害者アートを扱うアイデアは最初からあった?
川尻:そうですね、かなり最初のほうからあった。自分にはやはり物語の主人公になりえないような人を描きたいという思いがあるんです。最終的に成功者になるわけでもない、何者にもなれない人をテーマに描きたいといつも思っていて。あるいはクリエイター崩れの、でも絵描きのピラミッドの中では一番多い層みたいな人のことです。
 シンジとマサルはある意味対極のキャラクターとして設定しています。主人公は商業的な方向に進んでる人物にしたかったので、現代美術とかよりは漫画家。そしてその対比として障害のある子を置きたかった。主人公はマサルたちのアウトサイダー・アートに触れて、社会の評価とは関係なく描かれる、創作欲に対して純粋な人に引かれていくんです。
――それは川尻監督自身もそんな風に創作と向き合いたいから?
川尻:そうかもしれない。作りたいのに作れない人は、自分を卑下する自己破滅型の人が多いと思うんです。鬱っぽくなり、そこから抜け出せない。俺もまさにそういうタイプなんだけど。でも、例えそれが成功につながるものではなかったとしても、「絵を描く」っていうのはその人だからできたことだから。せめてそこを自己肯定できれば、取りあえず最初の「何かを作る」第一歩が踏み出せる。その応援ができるような作品を作りたかったんです。
――ところで、「シンジ」と聞くとどうしても某ロボットアニメの主人公を思い浮かべてしまうのですが……?
川尻:「『エヴァ』ですか?」とよく聞かれますが、実は「エヴァ」ではなく北野武監督の「キッズ・リターン」からいただいています。「マサル」の名前もそちらからです。「キッズ・リターン」はその名の通り、子ども時代を回想していく話。子ども時代に忘れてきたものに再び触れるというストーリーを考えたときに、それならしっくりくるのはシンジとマサルだなと。
――そっちのシンジだったとは。北野作品は昔から好きでした?
川尻:「キッズ・リターン」を見たのはそれこそ中学生のころ。全作見てるので、そういう意味では結構影響を受けてるかもしれません。北野作品はどれも好きで、一般にはそれほど評価されていない「TAKESHIS'」とかもお気に入りです。
もし「ステラ」を作り直すとしたら
――もし今「ステラ」を作り直すとしたら、どんな展開にしますか?
川尻:今だったらJKラッパーのバチバチのバトルの話にしてたね。
――最先端という感じはしますね。「ゾンビランドサガ」で見た気がする(笑)。
川尻:ま、また先にやられてしまった……。でも山賀さんにも言われたけど、当時はやはりちゃんと監督の仕事をしてなかったんだよね。たぶん「こうしたい」って言い切って、それで周囲を説得できていれば、何かもっと良い方向にはできたんだろうなと思う。
――当時はなぜ言い切れなかったのでしょう。
川尻:単純に未熟さもありますけど、実はキャラクターにあまり愛情を持てないんです。サイコパスっぽいと思われるかもしれないけど。極端にいえば、そのキャラが「別に死んでもいいじゃん」と思ってしまうし、「ステラ」のゆらにしても、年端もいかない子の暴走を引いた目線で見てしまう。そしてあそこまで堕ちちゃったら、そんな簡単に部に戻るべきじゃないよなとも思う。その気持の折り合いが当時はちゃんと付いていなかった。
――ラストで無理やり仲直りするのは嘘っぽいと感じた、ということでしょうか。
川尻:それもあるし、人生って部活に戻ることが全てじゃないよなと(笑)。これは本編ではボツになってしまったけど、ゆらの感情が爆発して、「頑張って自分なりにやろうとしたけど、もう無理ですよこんなの」って、わーっと1話の独白で見せていたような部分を初めて表に出すラストも考えていました。その案ではゆらの妄想が現実になる超常現象も起こらず。先輩・そのらが「お前そんなキャラだったんだ」って爆笑する。単にそのらがゆらの存在を受け入れてあげるという終わり方でも良いんじゃないかと。
――あー、確かにその終わり方もきれいだったかも。
川尻:もともとトラジコメディー(悲喜劇)が好きなので、悲惨な展開もちょとコメディーのつもりで描いていたところはありました。それが伝わりきらなかったというのはあるかもしれない。「ステラ」でみんなが流しそうめんを楽しんでいるのに、ゆらだけ「私がやりたいのは流しそうめんなんかじゃない、サバゲーだ」って心の中で吐き捨てる場面とか、自分ではギャグのつもりだったんだけど(笑)。
――アニメでそういう表現をやろうとすること自体、ちょっとめずらしい気がします。
川尻:90年代後半からそういう空気を持ったアメリカ映画の作品群が現れてきて、そこにとても影響を受けています。監督名でいうと、ポール・トーマス・アンダーソン、チャーリー・カウフマン、トッド・ソロンズあたり。彼らは同じシーンに哀愁と笑いが同居しているように描くんです。こういったジャンルを「クウォーキー」と呼ぶと最近知りました。それで最近は自分でも「クウォーキーアニメ映画監督」を自称するようになりました(笑)。
 あるいは90年代以前の作品だけど、「ガープの世界」(1982年公開)もとても悲惨な話なのに、演出がすごい引いた目線で笑えたりする。以前山賀さんに「そういうのをアニメでやりたいんです」と伝えたら、「いや、それ俺が昔やってたんだよ」と言われて。山賀さんいわく、「王立宇宙軍」ではまさにジョージ・ロイ・ヒルを参考にしたっていうんですね。
 「王立」のころのアニメというと、子どもに見せたい教養的なやつか、ただひたすら面白いエンタメのどちらかしかなかったと。そのどちらでもない、当時のアメリカ映画では既に表現されていたやつをアニメでやろうとしたのが「王立」だったというんです。
――「王立」は画面はエネルギッシュだけど、テーマを完遂するためあえて抑制された演出やストーリーにしてる感がありますよね。
川尻:山賀さんは「その後『AKIRA』に全部持っていかれた」と笑ってましたけどね(笑)。当時でいう“大友”の座を今も「ウル」※で狙っているのでしょうね。
※「蒼きウル」・・・「王立宇宙軍」の続編。山賀監督作品として2022年公開予定(関連記事)。
アニメは業界を出ても作れる
――「ある日本の絵描き少年」を受けて、今後はどんな作品を作っていきたいですか。
川尻:今って山賀さん、大友さん、今 敏さんみたいな、あのテイストをアニメに持ち込む人が新しい世代にはあまりいない気がしていて。いないのなら、自分が「クウォーキーアニメ映画」として、その位置に収まる作品を作りたいという気持ちがあります。
 今回アヴニールさんと密に組んでやれたので、このままもっといろいろできる気がしています。取材で障害のある方のお話を聞いていると、「自立したい」とか、「親離れ子離れ」という結構難しい問題を抱えていることが多かったんですね。
――切実で、普遍的な問題でもありますね。
川尻:親離れって、セックスと暴力の映画を見てなんとなく大人になることだと思うんです。タランティーノの映画を親は嫌悪するけど、俺は好きなんだっていう。それを経てやっと親と離れられる。そういうジャンルの映画を障害のある方と組んでやれれば、面白いものができるんじゃないかと。障害のある主人公が最初はなめられてるんだけど、実はめちゃくちゃ強い殺人マシンだったとかね(笑)。
――次回作はもう準備中?
川尻:ちょっと毛色が変わりますが、恋愛ものの長編企画を練っています。3月に香港アジア映画投資フォーラム(HAF)への参加が決まっていて、そういうところなどで出資が得られれば……という感じです。次回作ではデザインで男女の性差を表現しようとしています。
――「ある日本の絵描き少年」のようにキャラごとに絵柄が違うとか?
川尻:その発展形だね。キャラごとに別の漫画家の絵柄のようになっていて、その違いに惹かれ合う。いろいろな絵柄が同居する画面になると思います。でもそれって今月公開される……
――「スパイダーバース」みたいですね(笑)。
川尻:それは分かってるんだよ! でも「スパイダーバース」の前からアイデアはあったの!
――「スパイダーバース」はともかく、実現したら面白い作品になりそうですね。
川尻:興味を持ってくれたアニメーターやアニメーター志望の方がいましたら、ぜひご連絡ください。それから、最後にこれは言っておきたいというのがありました。ぴあフィルムフェスティバルで入選した「Good bye, Eric!」という作品がありまして。これを作った高階匠監督は元アニメ会社の制作進行だったそうなんです。受賞会場でお会いしたときに元同業者だったこともあり、「お互いいろいろありましたね」とお話させていただきました。
 それでつくづく思ったのが、アニメ業界で寝る時間もなく身動きが取れなくなっていくぐらいなら、いつか自分の作品を作りたいという気持ちさえあればアニメ業界を出ても作れるということ。俺が言うのもアレだけど。見かけにこだわらず、いろいろ作ってみたら良いんじゃないかなと。
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saniwa-uke · 5 years
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残念長谷部君伝説 〜愚直な男 / 主のお役に…編〜
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昼…本丸、主人の部屋。 
「…良し…っと。ここでいいだろう」
外が曇ってきたので、干されていた主人の布団を取り込んだ長谷部。 主人の部屋まで運んだものの、非番の主人はどこかへ出かけたらしく留守。 蜂須賀も不在だった。 部屋を見渡したのち、部屋の適当なスペースに運んできた布団を置く。 溜息をついて軽く腰を伸ばすと、何気なく周囲を見渡した。
幸か不幸か、主人の部屋の周囲には誰の気配もない。 一瞬躊躇いつつも唾を飲み、布団の前に跪く長谷部。
そして…ぼすっ…と、主人の布団に顔を突っ伏す。 
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「……………フッ…フフフ…」
布団にうずもっているため顔は見えないものの、漏れる笑い声だけでニヤついていると容易に想像できる長谷部。 …とそこへ、
「主、帰ったよ」
…と、出陣していた燭台切がやってきた。 バッと顔をあげた長谷部と目があい、しばらく固まる二人。 「…主は、留守みたいだね。じゃあ、しばらくしたらまた…」 「待て」
何事もなかったように、主人の部屋を後にしようとする燭台切を素早く捕まえる長谷部。 
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「どうしたんだい、長谷部君?」 「…見たな?」 「…何をかな?」 「お…俺が…あ、あ、主の…布団を…」 
「…ああ、主の布団に突っ伏していたことかい?」 
長谷部が真っ赤になりながらどもっていたことを、爽やか笑顔でさらりと告げる燭台切。 「ぐっ!」と言葉につまり、汗をかきながらより赤くなる長谷部。 「何も見なかったことにしてやり過ごそうと思ったんだけれど…わざわざ自己申告してくるなんて、長谷部君は真面目だなぁ…」 そう言って苦笑いをする燭台切に、長谷部は気まずそうな表情で唸っている。 
「うん、わかるよ君の気持ち。布団ってさ、お日様の香りがするだけでも素敵なのに、それに好きな人の香りまで付いていたら、思わず突っ伏したくなっちゃうよね」 
長谷部の行為をフォローするように、大人な対応をする燭台切。 しかし、それに対しても…
「そ、そんな気色の悪いことなど、理解できるものかっ!加州清光でもあるまい、普通の人間はそんなことなどしないっ!!」
…と、焦りながらも自分で自分の行為を否定する長谷部。 …が瞬時に、先程までの自分の行為を思い出して、途端にバツの悪そうな表情になる。
「……………うん、君、愚直すぎ」
そんな長谷部の様子を見、呆れながらも力なく笑う燭台切。 そして、燭台切にすら呆れられたことにショックを受け、顔を引きつらせる長谷部という。 
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某日夜半…本丸、主人の部屋。 
「へし切長谷部、参りました」 「入ってどうぞー」 「失礼致します」 
主人に促されるまま障子を引くと、室内には、すでに寝支度を整えた主人と、寝しなに見たくもない顔である宗三さんが鎮座していた。 反射的に、開けたときとまったく同じ所作で、障子を閉じた長谷部。 何も見なかったことにして戻ろうとすると、背後から視線を感じた。
「どこへ行くの?」 「……………」 「逃げるの?」 「……………」
主人からの���線とプレッシャーに、じっとりとした汗を背中にかきはじめた長谷部。
「長谷部君、逃げるの?」 「…いえ、逃げるわけでは…ただ、先客が…」 「長谷部君」 「…はい」 「入って」 「……………はい」 
いよいよ観念した長谷部は、渋い表情で主人の部屋へと入室。 ところが、先客である宗三さんを見ると、こちらもまた渋い表情をしていた。
「主」 「なに?」 「何故、長谷部が此処に?」 「なぜって、俺が呼んだから」 「何故?」 「なぜって…長谷部君」 「はい」 「君がいつも俺に主張してくるあれ、言って」 「はい?」 「ほら、自分は役に立つとか…」 
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「あ、ああ…俺は、気位だけが高い連中とは違います」 「それじゃなくて」 「俺ほど主の命に忠実な奴は、いないと思います」 「そうそれ!」 「それが…何か?」 「うん、じゃあ長谷部君、俺のかわりに宗三さんの相手してあげて」
「「……………は?」」
主人からの突拍子もない発言に、長谷部だけではなく宗三さんも愕然とする。
「な、な、な、なな何故、お、お俺、俺が、こ、っこい、はああっ!? はああああっ!?!? おまっ、お前は何を言っている!?馬鹿か!?馬鹿なのか貴様!?いや、阿呆…はっ!?いや、あ、何、何をま、ま、まよ、迷言を!?」
本当に頭が混乱しているらしい長谷部は、最早何を言っているのか自分でもわかってはいないらしい。 主人に対して、滅茶苦茶な言葉遣いで問いただしていた。
「主、何故急にそのような地獄の所業を思いついだのでしょう?僕には主から、拷問や折檻の類を受けるいわれは無いのですが…質の悪い冗談だとしても、あまりにも質が悪すぎて、笑えませんよ?」
動揺しすぎている長谷部をよそに、宗三さんははっきりとした物言いで主人に問いただす。 
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「貴様っ!拷問とは何だ!!」 「拷問は拷問ですよ」 「お、俺の相手が拷問だとっ!?拷問を受けるのは俺の方だ!何が悲しくて、貴様の相手をせねばならん!!」 「俺がやれって言うからだよ」 「主っ!!」
主からの死刑宣告に、普段は絶対に発しないような涙混じりの悲痛な声音を出す長谷部。
「俺の言うことはなんでも聞くんでしょ?じゃあ、かわりに宗三さんの相手してあげてよ。苦しいの、好きでしょ?」 「苦しいことも、宗三左文字も好きではありません!願い下げですっ!こんな碌でもない奴と性交をするくらいならば、豚と睦み合う方がましだっ!!」 「それは此方の台詞です!何が悲しくて、破棄寸前の性具にすら劣る男に、慰められなくてはならないのですか!?」 「何だと貴様ぁっ!?」
珍しく、はきはきとした声音で拒絶を示す宗三さん。 それに対して、思わず失礼だなんだと噛み付く長谷部。 最早状況は、なにがなんだかわからなくなってきていた。 
「うるさい!二人共、少し声を落として!」 そんな白熱してきた二人のやりとりを、人差し指を口元に当て、静かにのジェスチャーをした主人がとがめる。 「静かにも糞もありません!貴方の無茶苦茶な発言でこんな事態になっていること、理解しています!?」 「ちょっとよくわからないですね」 「主!いい加減になさい!」
今度は主人と言い合い(というか一方的な詰問)をはじめた宗三さん。 しかしそのやり取りも、やや冷静さを取り戻し、何事かを考え込んでいた長谷部によって遮られた。
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「…黙れ、宗三左文字…」 「な、何を!?何故黙れと!?今ここで撤回をさせなければ、貴方も巻き添えなんですよ!?」 「うるさいっ!黙れと言っているだろう…?」
項垂れた長谷部の眼光が、鋭く宗三さんを睨みつける。 今まで感じたことのない気迫に、思わず口をつぐむ宗三さん。 
「…主…この命を駆けた貴方からの沙汰、見事こなしましたら…俺の願いを、聞き届けて下さいますか…?」
己の運命を悟ったように、やけに静かな声音で告げてきた長谷部。 「うーん…まあ、いいけど…」 「…そうですか……………わかりました。では、不肖へし切長谷部、主の為に身命を賭してでも宗三左文字を、満足させてみせましょう…!」 そう言い切った長谷部は、目を据わらせて宗三さんににじり寄る。 長谷部の本気を感じた宗三さんは、反射的に後ずさった。 「どうした宗三左文字、気持ちよくなりたいのだろう?何故逃げる?」 「貴方、気でも狂ったのですか?嫌悪感しか無い僕に、だ、抱かれる…と?」 「恨みは無い…とは言わんが、主命だ。主からの命とあれば、やってみせる…!」
さしもの宗三さんも、本気の長谷部に押されている。 苦渋を表情ににじませて、なんとかこの状況を回避しようと考えているらしいが、いよいよ壁際まで追い詰められてしまった。 
「そういえば、長谷部君はなにを望んでいるの?」
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すると、何故かこのタイミングで主人が長谷部に問いかける。
「…主、何故このタイミングでそれを?」 「いや、なんとなく」
長谷部の背後に、明らかにホッとした表情の宗三さんが見えて、相当追い込まれてたんだなあ…と物珍しさを感じた主人。 次から何かあったときは、この出来事が担保になるなと心中頷き満足をする。 「…いえ、ここでは…」 そして目の前の長谷部は、ごにょごにょと言いづらそうに口ごもっていた。 「いや、それを聞かないと…もしも、俺に死んでくれなんて願いだったら、絶対に無理だから…」 「いえ、それはありません」 「じゃあ、なに?耳打ちでいいから」 「いや、でも…」 「余程のことじゃない限り断らないから、心構えくらいさせてよ」 「……………ええ、はい…じゃあ…」
部屋の端に寄り、主人に耳打ちをする長谷部。
「……………ああ、要は隠語罵と…」 
相手から耳打ちを受けていた主人だったが、思わず声に出してしまう。 そして、慌ててその口をふさいだ長谷部。
「隠語罵倒?何です、その面白そうな単語?それ、僕も見たいです」
そして、目を輝かせながらそれに食いついてしまった宗三さん。 「うるさい!貴様には関係ない!いいから早く服を脱いで、布団に横になれ!」 「嫌です、僕への奉仕より、お前の隠語罵倒セックスの方が見たいです!早く服を脱いで、布団に横になりなさい」 「だぁからぁ、それはこちらのセリフだ!」 「主、早く隠語罵倒セックスしてください!」 「え、やだよ。罵倒しながら乳首責めてほしいとか気持ち悪い」 「な゛っ!何故言った!?」 「あっ、ごめん。つい…」 「まあ!そんな面白そうなこと!やらないなんて損ですよ、主!」 「宗三さんがしてあげたら?」 「まあ、そんな無体なことを仰ると、主の手足を切り落としてでもさせますよ?口さえあれば、大抵のことはこなせますから」 「…今日は気分じゃないから…」 「なら何時ならいいんですか?」
珍しく口をとがらせて拗ね顔を見せる宗三さんと、それを全然可愛くねえなあ…と思いながら、やんわりいなす主人。 結局、宗三さんを落ち着かせるために、朝までかかってしまって寝不足の主人とそれに巻き込まれた?長谷部なのだった。 
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crydayz · 2 years
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220415
愛とは許す事。願いとは信じたい現実だけを信じ、引き寄せること。
チタン観た。
端的に言えばクソ映画。
しかし、傑作B級スリラーやホラーの「食えるとこ」全部盛りって感じなので超美味い。
泣きまくった。自分がとっくに見放した自分の中のクソな人格がこれでもかというくらい救われる。
以下ややネタバレあり。
中学生男子めいた浅はかな人間性に昆虫じみた性欲抱えたダンサー兼コンパニオンの主人公(女)はカーセックスが好きだった。
と言っても人とじゃなくカーの方とするやつ。
車がとにかく好きなのだ。かつ、人もフランクに殺す異常者。そうなったきっかけは子供の頃の交通事故に起因していそうだが素養は恐らく最初からあったのだ。
設定がペラペラすぎてそんなキャラどう演出されようが好きになれっこなさそうだ。
目撃者を殺し損ない指名手配された主人公は顔を変え逃げ延びた先で出会った「息子を行方不明で失った消防士」の「息子枠」に収まることで警察の追跡を逃れる。
妄想か現実か、カー(との)セックスにより主人公は得体の知れない「なにか」を妊娠していた。バンテージを巻くことでどうにか妊娠と女性であることを隠し続け、無言のまま息子を演じ続ける主人公だが臨月が近づくにつれ限界が来て…
「超パターナリズムの塊で自分の信じたいもの以外一切受け入れない、息子を失った初老の消防士の異常性」と、絶望的なレベルで社会性が欠落した主人公との間に紡がれる歪みに歪み切った信頼と愛。それが痛みと焦燥に彩られながらエンディングに向けてノンストップで加速してゆく。
この吐き気を伴うドライブ感はラース・フォン・トリアー監督映画に通ずるものがあるが、コンセプトとモチーフは基本的に「バカ」枠なのでやはりこの映画特有の鑑賞体験ってものがある。
バカなテーマで滅茶苦茶泣かされたという詐欺感というか敗北感みたいなものが残る。
ああ、これは文句なしの傑作だ。
もっと若い頃に観たかった。
倒錯的なエディプスコンプレックス抱えた人なら男女問わず刺さる部分あるだろう。
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