エドワード王 八巻
昔日の王の一代記、八巻
ワイルダーランド
ヴァレンウッドの旅は楽しいものでした。ほとんどの場所で昼間は晴れて、夜間は涼しい気持ちの良い天候が続きました。彼らの馬の足元に、舞い落ちる朱色や茜色、金色や緑の明るい色の葉っぱが降り積もってカーペットを作っていました。ヴァレンウッドは、曇りがちで急峻な森林の多いハイロックとはとても違っていました。北の国境に着いた時、振り返ったエドワードの目には、ほとんど丸裸で、栄光を失ってしまったような木々が見えました。彼らの前には、数えるほどしか木が生えていない、丘がうねる広大な緑の土地が広がっていました。それは永遠に続いているように思えました。
「エドワード、これがワイルダーランドだ」モラーリンが言いました。「気をつけるんだぞ。気持ちのいい土地に見えるが、この辺りを治める方法を知る王はいない。皆互いのやり方を否定している―人間より悪いものもいる。ここではタムリエルのすべての種族がいて、衝突している。身を守るんだ、ことによればな」
彼らの旅は、ちょっとした事件とともに、それから数日続きました。カジートの盗賊団が夜に彼らのキャンプに這い寄ったこと以外は。彼らはたやすく撃退されました。シルクが一人を倒すと、残りは叫びながら逃げて行きました。大人しいウッドエルフの少女、ウィローは彼らの後ろに向かって弧を描くように火の玉を投げました。街道はありませんでした。互いに交差し、どこにも続いていないように見える小路ばかりでした。
二週間の力強い騎乗のあと、彼らは土地が途切れるボウルのような形の丘に着きました。収穫物が積まれた畑はきれいに見えましたが、そこにいた人々は覇気がなく、ぼろをまとっていて、友好的ではありませんでした。宿についての質問も、ただ肩をすくめて困ったような顔をされただけでした。その時、武装した一団が現れて、用件を言えと要求しました。モラーリンがモロウィンドに向かっているというと、何も盗まずに早く行ってしまえと言われました。
「通過できただけで充分だ」モラーリンが静かに言いました。
「あの田舎者たちに誰か礼儀作法を教えるべきだ」普段は穏やかなマッツが唸りました。
「それなら留まってエチケットの学校でも開いてみるか」モラーリンが言いました。「ああいう悪党のために講義をしてやるには、私の人生は短すぎると恐れているんだ。空の具合が気に入らないな、あれはあの村人よりも邪悪に見える。町で運試しをしてみようと思うんだがね」
町は木の柵で囲まれ、丈夫な門がありました。彼らを見渡すと、衛兵が入場を拒絶しました。「人間だけだ、エルフ。下等な仲間を連れて去れ」
「わかった。アリ、マッツ、エドワード、お前たちがここで暖かく迎えられることを保証しているようだ。我々はどこか雨宿りできる場所を探すよ」
アリエラは、この門に足を踏み入れた途端、嵐が来る前にみんなファーストホールドに吹き飛ばされるのが見えるようだと皆に言いました。そこで彼らは町を迂回し、砦らしきものの中にある岩壁を備えた堀を渡りました。北に延びる道の脇に、近くに大きな納屋がある小さい家があります。どちらも粗末な修繕しかしていないように見えましたが、モラーリンはドアをノックして納屋で眠らせてもらえるか尋ねるのにアリエラとエドワードを行かせました。残りは道で待っていました。
年かさの女性がノックに応えて出てきました。彼らに会って喜んでいるようでした。「泊まりたいんですって?話し相手ができてうれしいですよ。納屋で寝なくたってかまやしませんよ、奥様。空いている部屋がありますからね。私はオラ・エンゲルスドッターと言います」アリエラは待っている仲間たちに合図をしました。女性は眼をすがめて彼らの方を見ました。「ご主人とお友達がいなさるの?ええ、それじゃみんな寄り集まっていましょう。その方が暖かいでしょうからね。火にスープの鍋が掛けてあるんですよ。一週間分の食事ですけど、どうかお気になさらず。まだ作れますよ」
「夫はエルフですの」
「そうなんですか?あの方はあなたと息子さんの面倒をよく見なさっているように見えますね。豚みたいによく太って。あの人たちを連れておいでなさい。私の孫娘にもこんな風に気にかけてくれる方がいるといいのに」
客人のもてなしに金を払わせなければならないほど困窮していないと言って、オラは支払いを拒否しました。その夜の物語と歌の楽しさで支払いに充分だと言いました。雨漏りの最悪の事態を避けるために、鍋と皿が置かれていました。彼女はそれを熟知していました。雨戸と扉をしっかりと閉め、屋根が全部飛んでいかないかと怯えるような嵐が荒れ狂う中、彼らは暖炉の周りに集まって、とても楽しく過ごしました。
「奥様、教えてくださいな」オラがアリエラだけに囁きました。「あの方は本当にあなたに良くしておられる?あの方はとても大きくて、とても黒いのね」
「本当に良くしてくれますのよ」口は真面目そうな形を保っていましたが、アリエラの目は笑っていました。
「ああ、それはいいことですよ。あの方が大きくて黒いものだから、ちょっと男爵を思い出してしまって。あの人は孫娘のキャロンをさらって行ったんです―それに、あの子を手厚く扱ってくれやしません。あの人は―あの人はあの子を傷つけるんです、奥様。そして、彼女は逃げ出すこともできやしないんです。どこに行けるって言うんです?」オラの目に涙が浮かんで、使い古されて親しみのあるしわに沿って頬を流れ落ちて行きました。
女主人が就寝のために部屋に引き取ったあと、アリエラは彼女が話したことを繰り返しました。
「その子を助け出そう」ビーチが言った。「怠惰な生活で腐っちまう」
「賛成!」シルクとウイローが即座に言いました。
マッツが同意する唸り声を出しました。ミスとスサースは興味があるように見えました。
モラーリンは疑わしげでした。「我々はタムリエルのすべての間違いを正すことはできないよ。この男爵は村人に避難所のようなものを提供しているのだし。よそがいいと思えば、彼らは出ていくだろう」
「賛成」ミスが言いました。「盗賊を遠ざけてるから、そいつは楽しみのために村人から盗むのかもな」
「それで、彼を引きずり降ろすのかね?代わりになる誰かがいるだろう。あるいは、よそ者がやって来て、根こそぎ持って行かれるさ」
「この不潔な何かに勝るものはない」マッツが言いました。
「そういうことだ」嵐は過ぎ去ったようでした。アリエラは戸口に行って、雲が素早く行きすぎる東の月を見上げました。一つの大きな輝く青い星が、月の近くに浮かんでいました。「ゼニタールがタムリエルの近くにいるわ。モラーリン?」
「明日ここの屋根を修繕しようと思っていた、それが公正ならね」彼女が炎のそばに戻ってくると彼は言いました。「少なくとも、大仕事だよ。一夜の宿にしては―アリエラ?」
「彼女なりに…私に助けを求めたのよ…そして私―風の中にゼニタールの声を聞き、今夜の雨の中に彼の手を感じたの」
「君の試練、というわけだね、奥さん」
アリエラは頷きました。笑ってはいませんでした。彼女は煙突がある隅でモラーリンと一緒に身体を丸め、少しの間囁き合って笑いました。エドワードは眠っていました。朝になると、彼はビーチとウィローが新しいこけら板を置くのを手伝いに屋根の上にやられました。モラーリンは手紙を書いて、夕食の時間に間に合うように、徒歩で男爵に持っていくようにと、マッツに言い付けました。
「女の子のために彼に挑戦するつもりなんだね!」エドワードがにやりと笑いました。「でも彼は戦うかな?それに、僕たちがいなくなったら、またその子を取り返すんじゃない?」
「いや、彼は私を町に入れなかったから、代わりにお前の母上は彼を我々の家に招くことを考えたんだ」モラーリンはシグネットリングで手紙に封をしてマッツに渡しました。
「わあ。でも、あなたのおうちまでは遠いんじゃない?」エドワードはこの救出劇が差し迫ったものでないことに、少しがっかりしました。でも、彼には8人の人間だけで砦を奪おうなんて、とても筋の通ったこととは思えませんでした。たとえそれがモラーリンの仲間たちであってもです。多分、あの歌は彼らの行いを大げさに言っているのでしょう。
モラーリンはにやりと笑ってエドワードの髪をくしゃくしゃと撫で、質問をやめて屋根に行き、母上の心配をしなさいと言いました。モラーリンとミスは一緒に歩いて出発しました。アリエラは狩りに行ったのだと言いました。夕飯時になっても、彼らは戻ってきませんでした。アリエラはエドワードに心配はいらない、あとで会えるから、と言いました。
女主人にお別れを言ったのは、日が沈んでからかなり時間が経ったときでした。彼らは馬を全部連れて行き、砦の北側の壁の近くの木立に置いていきました。アリエラはエドワードに馬と一緒に待っていたいかと尋ねました。エドワードがどこに行くのかと尋ねました。
「私たちは砦に入ってオラのお孫さんを取り戻すのよ。質問は駄目です、エドワード。あなたが来るなら、私と一緒にいて、言われた通りのことをなさい。堀はレビテトで渡るの。私は泳がなきゃだめね。渡り終えたら塀をよじ登るのよ。中に入ったら、私についてきて、できるだけ音をたてないようにして」
エドワードはぽかんと口を開けて、母と他の仲間たちを見ました。彼ら6人でどうやって砦を襲うというのでしょう?3人の女性と、2人の男性と、男の子が1人で?壁の上には衛兵がいるでしょうし、中にはもっといるでしょう。マッツも一緒に中に入るだろうけど、と彼は考えました。でも、モラーリンとミスはどこに?
堀では恐ろしいことがありました。エドワードは抗議を始めましたが、それからその方がいいと考え直しました。スサースが最初に堀に滑り込みました。小さな水音とシューッという声がして、水面が静まりました。アリエラが水の中に入りました。他の者たちは宙を浮いて渡りました。
「ロープがある」ビーチが壁を探りながら言いました。3本のロープがありました。エドワードとビーチとスサースが最初に上に上がりました。アリエラ、ウィロー、シルクがそのあとに続きました。モラーリンとミスが上で待っていました。二人の衛兵は荒れ果てた建物の上で穏やかにいびきをかいていました。
「どう―」エドワードが言い始めると、母が片手で彼の口をぴしゃりと叩いたのがわかりました。他の場所の壁の上にいる衛兵が大きな声で呼びかけ、エドワードは心臓が止まりそうになりました。ミスが何かを叫び返すと、どしどしという足音が遠ざかって行きました。
仲間たちは静かに階段を下りて、影のように中庭を横切りました。砦の中に入る扉には、衛兵が一人もいませんでした。通路の中は不気味なほど静かでした。彼らは堂々とした扉のところで身を落とし、壁にぴったりと身体をつけました。中の声が聞こえます。か細い、ゾッとするような泣き声がして、静かになりました。モラーリンがそのあとに続いた静寂に向かって口笛で短い曲を吹きました。ドアが大きく開き、彼らは中に駆け込んで、猛烈な勢いで驚いていた衛兵の上に身体を投げ出しました。
エドワードがトゥースを手に最後に中に入りました。彼は一番近くにいた衛兵の脇腹に突き刺して、ビーチが頭への一撃でとどめを刺しました。マッツはずっと中にいました。扉を開けたのはマッツだったのです。彼の斧が一人の衛兵の頭を割り、それから内側のドアに向かって振り抜きました。アリエラとウィローが外側のドアに素早くかんぬきを掛けました。モラーリンの敵はとても若い男でした。彼は大きなダークエルフを一目見ると、彼の剣を床に捨てて跪き、慈悲を請いました。
モラーリンは汚らわしいものを見るような目で彼を見て言いました。「ゼニタールによろしく言ってくれ。エボンハートのモラーリンが慈悲を推奨していたとな。私には、お前のような者には持ち合わせがない」彼は若い衛兵の喉を切りました。モラーリンの革鎧に血が吹きかかりました。彼の犠牲者は床に倒れ、ゴボゴボと恐ろしい音をたてています。燃える酸がエドワードの喉に上がってきましたが、彼は固唾を呑んで目をそらしました。
控えの間の中にいた衛兵たちは処刑されましたが、ドアの外では怒号と足音が轟いて、ドアに体当たりする音が聞こえました。エドワードは母のあとについて、巨大なベッドに鷹が羽を広げるような形で縛り付けられた裸の少女以外は誰もいない、奥の部屋に行きました。彼女の眼が彼らを見つめていました。
アリエラが彼女の肩を押さえている間に、仲間たちが彼女の縄を切って自由にしてやりました。「おばあさまが私たちをよこしなさったの。男爵はどこ?」
少女は本棚を指さして、アリエラにしがみつきました。彼女はエドワードより大きくもなく、年もそう変わらないように見えました。彼女の胸は膨らみ始めたばかりです。彼女の体はみみずばれと血と紫色と黄色の打撲で覆われていました。アリエラは自分のマントで彼女を包みました。ビーチが彼女を抱き上げました。ミスの指先が本棚を探っています。カチリという音がして、横に滑りました。彼は慎重に中に入りました。他の者たちがあとに続くと、秘密の扉が彼らの後ろで閉じました。
「それはただのねじ穴だと思う」ミスが言いました。「だけど、罠を仕掛けてあるだろう。間違いない」
「じゃあ、気をつけて」アリエラが言いました。「急ぐことはない。男爵は戸口で客の見送りをする準備をしてると思うよ、いい主人の常識みたいにね」
細い通路が左側に開けました。ミスは雷の矢を打ち込みました。床は骨でいっぱいです。人間の骨です。小さな頭蓋骨が空っぽの目で見つめていました。「彼を殺すことを楽しむことにするよ」モラーリンが言いました。
「駄目よ!」アリエラが抗議しました。「私の試練です、私が殺すの!」
モラーリンが彼女の方を振り向きました。「アリエラ―」
「私はアリエラの手によって死んだと歌われたいの!彼と対決する権利を主張しますわ、王様」
「私に任せて、歌は君の言った通り歌うよ!彼は君の2倍はあるんだぞ。権利のために私と戦いたいのかね?」エルフは彼女に向って身を屈めました。彼は彼女の頭一つ分余計に身長がありました。
「必要なら」アリエラは彼を撫でて通り過ぎ、腕につけた盾を鳴らしました。そして走り出すと、彼女のショートソードを抜きました。
モラーリンは彼女を掴みましたが、掴み損ねて彼女のあとを走って追いかけました」彼の大きな体は低くて狭い通路で引っかかりました。不用意に壁にぶつかると、彼の魔法のシールドから火花が飛びました。
「二人とも、早く」ミスが前方で叫びました。「お前らのためにやつを取っておくとは約束してないぞ」
「モラーリン」エドワードが彼の後ろを走りながら喘ぐように言いました。「母さまにやらせないつもりなの!」
「させるさ!どうやって止められるか教えてくれるのか?私は提案を受け付けるぞ。実際に彼女と戦うには知識が不足している」彼は半分怒って、半分面白がっているように見えました。
「た、多分彼はもう逃げちゃってるよ」
「ないな。彼は我々と一緒にここに閉じ込められたんだ。さっき反対側から出口を見つけてミスが男爵には開けられない鍵をかけた」
「じゃあ、麻痺させよう。父さまは運べる」
「彼女は盾を使ってる。他にも効果はあるが、あれは呪文を跳ね返すんだ。私はただ自分を麻痺させるだけだし、私は運ぶには不便だ。彼女は大丈夫さ。あれはすばらしい盾だ。とても強い魔法を使える。アイリック本人が細工をしたんだよ」
「今夜、鍵にちょっとした問題がおありかな、男爵?」前方からミスの声が聞こえました。彼らは広い部屋に出てきました。そこでは、男爵が巨大なドアの隣のスイッチを虚しく引っかいていました。
「彼には必要ないでしょう」アリエラが鼻で笑いました。仲間たちは彼女の周りに半円状に広がりました。男爵は背中を扉につけて戦う間合いを取りました。彼は大男で、マッツほどの大きさがありました。そして、彼はマッツが持っているのと同じくらい大きな斧を抱え、ブレストプレートとヘルムを身に着けていました。彼はモラーリンを指さしました。
「9対1だ。お前のような黒い悪魔たちからのオッズを期待しているぞ」モラーリンはグループの後ろにいましたが、男爵は彼をリーダーに選び出しました。なぜかみんなそうするのです。
「ウェイトでアドバンテージを取るのがお好みなのだろう?だが、妻が戦いたいそうでね。お前の魅力に抗えないと見える。私もだ。招待への返事を待ち切れなくてね。だから代わりに来てやったのだ」
「俺があの女を負かしたら、残りのお前らが俺を殺すのか?は!その値打ちはあるかもな」彼はアリエラを冷酷な黒い瞳で見つめながら付け加えました。
アリエラは恐ろしい微笑みを見せました。彼女の黒い髪は肩の辺りで奔放に揺れ、彼女は輝いているようです。「お前はこの女を打ち負かすことはできないでしょう、男爵。ですが、もしできるなら、どこにでも行きなさい。今夜、お前は私だけのものです。皆に誓います、ゼニタールに懸けて!もしまかり間違って彼が私を殺したら、私の幽霊が墓まで、その先も彼を追い立てるわ」彼女の声は予想よりも楽しそうでした。エドワードは震え始めました。
「ゼニタールに懸けて!」
男爵は笑いました。「信じられんな。だが俺のコレクションにまた女が加わるわけだ。その女にそんなに飽きてるのか、エルフ?」
「そんなに彼女を恐れているなら、代わりに私とやる方がいいか?」エドワードの心が、どこか深いところでかのエルフが正しいことを理解しました。男爵の虚勢にもかかわらず、彼はアリエラを恐れていました。エドワードは彼らとともには誓いませんでした。彼はしっかりと杖を握り締めていましたが、足は床に根を張っているようでした。
男爵は再び笑って、答え代わりにアリエラに強力な一撃を繰り出しました。でも、それは彼女の盾に傷もつけずに跳ね返されました。彼女が魔法でシールドを張っていることがわかると、彼の目が見開かれました。アリエラは踊るように脇に避け、彼の腕を切りました。彼女は敏捷でしたが、彼はどうにか多くの攻撃を当てることに成功しました。もし彼女のシールドが切れ…エドワードには最後まで考えませんでした。
彼女の盾の効果を消すことばかり考えて、彼が体を開いていたため、彼女は彼の足に何度も攻撃を加えました。彼女は打撃を低く保って、足を鈍らせ、血を流させようとしていました。その間中、彼が死んだら玉を抜いてやると言いながら、彼女は彼の男らしさをあざ笑って挑発していました。猛烈な一撃が彼女を後ろに下がらせました。彼女の盾が光ると、消えてしまったのです。
男爵は彼女の頭を一撃で割ろうとして斧を高く構えました。彼女は腕を後ろに引き、細身のショートソードを敵の目のにまっすぐ投げ込みました。彼は斧を取り落として叫びながら膝をつき、両手を顔に這わせました。アリエラは前に進み出て、彼の脳に深く貫通するほど、痛烈に剣を突き刺しました。身体をよじり、痙攣させながら、彼は倒れました。
「よくやった、奥さん!」
「私にはすばらしいトレーナーと、いい甲冑師がいますもの!」アリエラは笑って、やがて頭を戻し、こぶしを握り締め、両手を挙げて言葉にはしない勝利の叫びを上げました。
「お前のおかげだ!」モラーリンはシルクを掴むと荒々しく抱きしめて大きな音をたててキスしました。「お前が彼女に教えてくれたいかしたトリックだ、シルク」
「私のトレーナーさんを口説くのをやめて下さったら感謝しますわ、旦那様!」細身のアダマンティウムの剣を慎重に拭いながらアリエラが言いました。
「わたしが?口説く?怒っていないだろうね…それに、君の盾はまだ魔力がある。私はただ感謝しただけだよ。次に会った時はアイリックにキスしよう」
「本当に死んだの?」戦闘の間中、キャロンは目をつぶってビーチにしがみついていました。今の彼女はアリエラを―畏敬のまなざしで見つめていました。エドワードは適切な言葉だと考えました。エドワードも何か同じことを感じていたのです。恐怖に近いものでしたけれど。
「充分死んでいるわ」アリエラは、まだかすかにぴくぴくと動く身体を満足気に見つめながら言いました。少女は近寄り、彼の隣に膝をつきました。彼女は石を持ち上げると、泣きながら、何度も何度も彼の顔にぶつけました。彼女がそれを終えると、スサースが彼女に治癒の呪文をかけました。ミスが鍵を開けて外に出ると、馬を置いて行った場所のすぐ近くでした。
彼らは少女を母親の家に送り届け、彼女を冒涜しようとする人間には誰にでも、もし彼女が傷つけられたら、ゼニタールの番人たちが戻って来ると言うように、と教えて立ち去りました。まごついた老女は孫娘を抱きしめました。彼女が別れの挨拶をすると、夫の面倒を見るようにとアリエラに耳打ちしました。
「あら、そうしますわ」アリエラは言いました。「そうしますとも」
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彼らが休憩のために足を止め、アリエラが話をしようとエドワードの方に行きましたが、彼はとても疲れていて、ただただ眠りたいと抗議しました。息子が彼女を必要でない時は、君を必要としている夫に会えるだろうと言いながら、モラーリンが彼女を引き離しました。二人は火を囲む輪の外に出て行きました。エドワードは目を覚ましたまま起きていて、二人の小さな、鼻を鳴らすような音を聞いていました。それは、珍しいことではありませんでした。最初は気になりました。「眠れないよ、二人ともうるさいんだもん」ある夜、彼は抗議しました。「ねえ、何してるの?」その言葉は仲間たちから忍び笑いを引き出しました。「少なくとも、眠る振りぐらいできないのか?」モラーリンが平静を装って尋ねました。「僕は今、どうしてダークエルフがよく一人以上子供がいるのかわかったよ。僕がわからないのは、どうやって人間がこんなにいっぱい増えたかってことだ」モラーリンとアリエラは、その夜彼に嘘をつくために戻ってこなければなりませんでしたが、彼が眠ったふりをしたあとは、他の夜と同じようにしていました。
その騒音はあまりにも身近なものだったので、その夜の冒険の映像が彼の心の中で明滅するのを防ぐことができず、まるでそれらが再び本当に起こっているように、生き生きとしていました。彼は自分のデイドラが餌を食べ、それを止められないのを感じていました。不公平だ、と彼は考えましたが、自分のデイドラに餌をやり、それでも神々とともに歩むというモラーリンの言葉の意味を理解し始めていました。ゼニタールとともに。
モラーリンがアリエラを抱えて戻ってきました。彼は彼女を優しく下ろしてから、エドワードと彼女の間に横になりました。
「女でいるということは困難に違いないね」彼は優しく言いました。「彼女を見ていると大変だ。ただ見ているだけで」
エドワードは頷きました。
「私はそれについてよく尋ねた、彼女に」モラーリンは続けました。「彼女はそれがどんなに大変か教えてくれたが、今晩まで知らなかった。彼女が勝つことは知っていた。ゼニタールが彼女とともにあって、男爵にはデイドラしかいなかった。それでも、見ているのはとても辛かった。彼女は10回のうちの9回を使った。そして、もし失敗すればあの盾にはさらに使い道がある…彼が疲れ切ってしまう前に、消耗を回復したかもしれん」
「僕もそのことを考えていたの…そしてあの衛兵…彼は命乞いをした?」
「わかっているよ。だが、彼は同じ言葉を聞いていた…毎晩毎晩な。それでも彼は男爵の手下であり続けた」
「大抵の男はあなたみたいに強くないんだよ。自分でもどうしようもなかったんじゃない?」なぜ彼は、もう死んでしまった男の弁護をしているのでしょう?彼の心はその夜の出来事を、良くも悪くも違う結果になったかもしれないと何度も繰り返し考えていたのです。
「あのように腐った魂のような邪悪を目にしたのに、ただ見ているだけで何もしないなどとは…マッツは持っている値打ちなどない私の片手を持ったままだったかもしれないな。それに、若者にとってはさらに悪い。今夜のようなことを経験させて済まなかった」
「僕の魂は腐っちゃった?」
「苦虫を噛み潰したような気持ちだろう、みんなそうだ。だが、治るよ」
「今治せる?」
「もちろんだとも」モラーリンは彼を腕の中に引き寄せて寝返りを打ち、エドワードが両親の間で横になれるようにしました。アリエラは眠ったまま彼女の両腕を彼に回しました。エドワードの鼻で、彼女の強い女性の香りと、モラーリンの麝香の暗いスパイスの香りが混じりました。
「母さま、とても怒ってた」エドワードは囁きました。彼はまた同じような気持ちで母を見られるようになるかしらと考えました。きっと、モラーリンもその安心感を求めていて、それを求めるには充分賢明だったのでしょう。
「彼女は女だ。他者に対するああいう類の傷は、彼女の心の琴線に触れる」彼は言いました。
どのぐらい?少年はその質問を口に出せるわけがないことを察しました。
「お前の父は怪物ではない。だが、彼女は自分のことを気にもかけない男に嫁いだ。そして、彼の下から去ることができなかった。お前の種族にはよくあることだが、だからと言って耐えることをたやすくはしないと私は思うよ」
「じゃあ、彼女にもデイドラがいるの?」エドワードは悲しげに尋ねました。
「それについては本人と話さなければいけない」
「今日のはほんとには公正な戦いじゃなかった。母さまはシールドがあったし、彼にはなかったもの」
「公正な戦いは闘技場のためのものさ、坊や。お前は狼やヘルハウンドが何も持っていないからって、武器も呪文も鎧もなしに戦うのかい?私は使うだろうな」
「男爵が死んじゃって、キャロンとオラはどうなるの?それに他の村の人たちも。」
「私が予言者マルクに見えるかね?わかるわけがない。春までここにいて、今夜我々が焼いた畑に何が育つかを見ることはできる。私は留まる気も、耕す気もないがね。私には私の、手入れすべき畑がある―聞いたかい、ノルドの農夫みたいじゃないか。鉱山の方がもっと私らしいな」彼はあくびをしました。
「他のみんなはあとのことは考えてなかった。父さまは考えてた」
「私は王だよ。それが仕事さ」
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本番まであと〜
2日〜!!ってはや!!えっもうそんな時期ですか?!そんな時期ですね?!
この稽古日誌ないし役者紹介は新入生に見てもらってるのかしら…だとしたら適当な紹介は出来ないな!よっし久々にちゃんと書きますかーっと( *˙ω˙*)و グッ!
それでは役者紹介、いってみよー!!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
児島桃香
児島じゃねぇよ!児玉だよ!!
溢れ出る圧倒的ヒロイン感。今回やっとそれが生かされるような役です。え?初じゃない?こんなに公演もプロデュースも出てるのに…?後輩女子に人気で最近よくくっついたりくっつかれたりしているのを見かける。表情がくるくる変わる、よく笑う可愛い子。
渡辺開閉
あっミスった。名前は快平です。OPEN&CLOSEではありません。
*追記 渡辺→渡部ですね。指摘し忘れてた!ごめんやん舞監キックは飛ばさんといてててて
この人は性格が演じる役に引っ張られることで(ちゃうか内で)有名。ある時はチンピラに、またある時は陽気に。彼は、今回はあまり引っ張られていないと供述しており、一部容疑を否認していますが、さてさて…?あと皆言っているけど背が高い。
古家検索
名前が健作なのであだ名はGoogleらしいです。皆古家って呼ぶけどね。
今回彼はなんと演出補佐も担っております。おっやるじゃないか古家!外公時より遅刻は激減したのではないだろうか。やるじゃないか古家!そして何より演技が自然で上手いし笑いのツボもおさえてる。やるじゃないk(以下略)
GEQ
いっけなーい!つい勢い余って1本付け足しちゃった☆QじゃなくてOだったね!失敬失敬☆
Airmanの役者紹介時は日本にいなかったけど今はちゃんと戻ってきてくれました!「オラ、こんな狭い日本嫌じゃ!ちょっと世界一周してくる!」なんてLINEが来たらどうしようかとオヨヨ…今年からキャンパス移動なのでバイクの免許を取った模様。凄い。
樹木キ゛ッ
噛んじゃった!正しくは樹木キキちゃんです!
勝手なイメージだけど、毎日バイトしてる。いつの間にかその範囲を拡張した模様。おめでとう!そろそろ和歌山あたり、進出してみない?(行かない)いや、うん…この子はシンプルに面白い。まぁ役のせいもあるんだけど…うん、めちゃ面白いです。ネタバレになるので言えないけど…うん、超絶面s(ry
三葛麻衣装
その名の通り衣装に人生をかける女。それが三葛麻衣。嘘です、そんなことないよ!
真面目で演劇に真剣に向き合っている印象を受けてます。どんどん演技が上手くなっていく伸びしろのある後輩。一つ一つの動きが丁寧です。百聞不如一見。是非観に来て頂きたい所存で御座います。
高木悠
「高」じゃなくて「髙」の方です…?あらごめん遊ばせ間違えてしまいましたわ。
独特の間と喋り方が面白い後輩。高木節と呼ばれている。(だから「髙」ですってば!)勿論このような事実は一切御座いません。原動機付自転車の発音が「げんつき⤵」初めて聞いた発音だよ。
Yeahman
ハッ何か妙な気配がする…何処からだ…?真逆後ろかパァンッ………………………Airman(血文字)
っとまぁ冗談はここまでにしておいて(自分でも状況が分からなくなった)、眼鏡かけてマスクつけてフード被って前傾姿勢だったら大体彼である。今度最近流行り(?)のカラフルマスクのような赤いマスクを作るのだとか作らないのだとか。
初田大和
ハツダカズマサは、はつだかずまさで、初田和大。
「あれ?今日なんか物足りねぇな静かだな」と思ったら此奴がいない所為。「あーくそ今日賑やかだなうるせぇよ」と思ったら此奴がいる所為。0(いない)か120(いるぜFoo↑)の男。その存在感で演出の思考を奪っていく曲者。声量も圧も熱もデカい。
乙川
私。ナナナ〜ナナナ〜ナナナナ音川〜♪(唐突なジョイマン←古い)
木上愛梨
偽物は皆を見下ろす木の上の愛梨。本物は皆を見上げる木の下の愛梨。申し訳ございません、「木上」と打ってしまいました。正しくは「木下」でした。
よく私とセットにされてるけどそんなことはないです。可愛いし仕事できるし〆切は絶対破らないしえっ最高かよ最高ですよ。
遠藤由已
「已」って漢字あんまり使わないからつい使いたくなっちゃった。古文の授業ではよく使ったよねー已然形って。けど結局何で「已然形」って言うんだろうな、遠藤由己さんよ。
現座長で演劇に人生をかける漢。実際演技力は上がってると思う。大根の私でもわかるくらいだから相当じゃないかな。今回は濃口醤油。
小澤由己
ありゃ同じ読み方だから予測変換が間違って反応しちゃったみたい!小澤祐貴ですね。
彼に直接言ったことはないけど、実は私の推しだったりする。彼のカリスマ性は舞台上だけでは計り知れないけど、舞台上だけでも凄いのは分かると思う。うん、いや、もうね、はい、本当に狡いです。
ruru
お?こんなに舌を巻かなきゃいけなかったっけ…?違いますね、luluですね。"r"と"l"を間違えちゃうの、よくあるよね〜
辻利の抹茶?これは行くしかないでしょってことでこの前ミスドデートした後輩。すみっこぐらし仲間だと思ってる(違う)。皆が言う通り、ダンスはもちろん上手いけど、個人的に話も上手いと思う。本人曰くコミュ障らしいが…?
久保マッチョ触るなフューチャー伊織(●風館)以上!
あれ?合ってる?足りない?どんどん増えていく彼の元の名前は久保伊織。癪なので他の劇団名は伏せとこ(伏せ切れてない)
そうですね、副座長かつ新歓隊長を担う彼の良さは人当たりが良いところ。桜というよりは菜の花(今窓越しに桜が見えたので)のイメージ?男を花に例えるなとツッコミが来そうなのでこの辺でやめとこ。
林中社
なんか物足りないと思ったら木が1本足りないじゃないか!これじゃあ森中社じゃないよ!(当たり前)
今回で当劇団では4回目、自身のプロデュースを合わせたら5回目の演出経験を手に入れし男。1年でこんだけの数って普通にヤバい奴なのでは?近々「森中休養かぼちゃ劇団」に改名するかもしれません(しません)。
小森秋人
森中社で行方不明になってた木はここに家出してたのか!君こそ林だよ!小林秋人だよ!!
今回の照明オペさん。本公演、色々初めてのことだらけなので苦労している様子。その分完成した時の達成感はこの上ないはずなので頑張ろう。
町民l
うっ小文字の"L"にしちゃった…正解は大文字の"i"で、町民I!←ここ重要(分かりにくいわ)
今回の音響オペさん。個人的に最近一番お世話になってた人。ツッコミもボケもバッチコイのセンスの塊だけどその分煽りも凄い。
あみちゃん
ついちゃん付けしちゃったけど、芸名はあみでしたね、すまんすまん。
今回の映像オペさん。何を隠そう公演PVを作ったのもこの人。え?どんなPVなのかって?馬鹿野郎!公式TwitterなりホームページなりからYouTubeに飛んで見て来い!一昨日来やがれ!
かかった時間���計約2時間。は?長過ぎない?長かった〜
ぐおぉ目の疲れ、肩こりが…これが歳かよ
やっぱり普段から姿勢は意識した方がいいですね。人に与える印象とかも全然違いますしね
ひとに与える印象といえば、高校の頃担任が「ラ」の音の声が一番人に良い印象を与えると仰っていたけど本当なのかな…心地よい音なのだそうです。
めを見て話す、とかも大事なことですよね。私はあんまり出来ないんですけど。恥ずかしいのでちょっと苦手ですね。
はなし上手な人も憧れますね。一緒にいて楽しいですもの。
おっと話がいつの間にか横道に…いかん、いかんぞ。軌道修正せねば。
どんどん話って逸れていっちゃいますよね。まあこうして話は膨らんでいくわけですが。
らいんとかは文字化されるのでそこまで…ハッ
せっかく軌道修正を図ったのに!話を戻せって言ってんだろ!!
たいくつしてたらごめんなさいね
いつも私こんな感じなんで!
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はい、茶番はこの辺にしておきましょうかね。解りにくかったかな…これが本公演のタイトルです。今回は不自然な点が目立つし、そんなに難しくはないとは思いますが、どうでしょうね?『かぐや姫は踊らせたい』でございますよ。かぐや姫といえば竹ですけど、紙のない昔は竹に文字を書いてたんですって!だから日本は横書きじゃなくって縦書きなんですってね。確か。記憶違いでなかったら。
さてさて、そろそろ締めくくりましょうかね、朝昼晩の気温差が激しくて体調管理が儘ならない季節でございますが、皆さんどうぞお体には気をつけて。我々一同、大集会室でお待ちしております!それではー( 'ω')ノシ
(以下Twitterよりコピペ)
第112回新入生歓迎公演
「かぐや姫は踊らせたい」
脚本・演出 森中社
演出補佐 古家健作
🌸日時
4/11(木) 17:30〜
4/12(金) 17:30〜
4/13(土) 12:30〜
🌸場所
大阪大学豊中キャンパス 学生会館二階大集会室
🌸料金
無料!(カンパ制)
※開場・受付開始は開演の30分前です
※当公演は全席当日席です
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