Tumgik
#丸首ドレス
gallerynamba · 13 days
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◇ELISABETTA FRANCHI(エリザベッタ フランキ)◇ドレスが入荷しました。 定価:88,000円(税込)⇒SALE価格:61,600円(税込) 弊社通販サイト商品ページ⇒http://www.gallery-jpg.com/item/12318041/ 2023年SPRING&SUMMER 素材:レーヨン80%、ナイロン20% カラー:ブラック サイズ:40 着丈 約80.5cm、肩幅 約31cm、袖丈 約60cm、バスト 約66cm、ウエスト 約55cm、ヒップ 約64cm (平置きの状態で測っています。伸縮性があります。) バックコンシャスのニットジャカードドレス。 オフィシャルシグネチャーのモノグラム柄をニットジャカードで表現しています。 前身頃のネックラインにハトメをあしらい、ニット紐を通したトリミングデザイン。 背中は大胆にV字カットされ、ネックライン同様にハトメをあしらいニット紐を通し編み上げのデザインに。 透かし編みのニットジャガードでシアー感があります。 ボディラインに沿う超ミニのかぶりのドレス。※インナーは付属していません。 ※ご覧頂いている媒体により、色の見え方が多少変わる場合がございます。 ※店頭でも同商品を販売しておりますので、通販サイトの在庫反映が遅れる場合があり商品をご用意出来ない場合がございます。予めご了承頂きますようお願い致します。 Gallery なんばCITY本館1F店 〒542-0076 大阪府大阪市中央区難波5-1-60 なんばCITY本館1階 【営業時間】11:00~21:00 【休館日】4月無休 【PHONE】06-6644-2526 【e-mail】[email protected]
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elle-p · 5 months
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P3 Club Book Koromaru short story scan and transcription.
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虎狼丸の優雅な一日
初夏の爽やかな日差しが心地よい日曜日。今日もなかなかの散歩日和だ。少し早めに出かけて、少し寄り道をするのもいいかもしれない。明確な言葉によるものではないが、だいたいそんなことを考えつつ、その柴犬は神社の石畳から身を起こして軽くあくびをした。
犬の名はコロマル。正式には虎狼丸と書くのだが、本人 (本犬?) は字が読めないので、とくにその違いにこだわりはない。彼がこだわっているのは、毎日の散歩。先日、彼の飼い主である神社の神主が事故で亡くなって以来、新しく神社の主となった人間は、最低限必要な食事は出してくれるものの、散歩に連れて行ったり頭をなでてくれたりはしない。コロマル自身、前の飼い主だけが唯一の主人であると思っており、もし新たな神主が散歩に連れて行こうとしたとしても、以前のルートを変えるなど考えもつかないことだった。なので、今日もコロマルは散歩に行く。まず、長鳴神社からムーンライトブリッジを超えてポートアイランドの駅前まで。その後、再びブリッジから蔵戸台方面に戻り、町をぐるりと巡ってから神社に戻る。これが、毎日の長い散歩のロードマップ。
「わん!」
人間の言葉に直せば、さあ行くか、といった感じだろうか。コロマルは一声鳴くと、いつもののんびりとしたペースで歩き出した。
「あ、コロ助、おはよ!」
ふと、かけられた声に、コロマルは面倒くさそうに顔を向ける。それは、三つ編みの髪を頭の両側でお団子にした、小学生くらいの女の子。いつも、夕方ごろに神社で遊んでいる子だ。
実を言うと、コロマルはこの子が少し苦手だった。嫌いなわけではないのだが、ややコロマルを構いすぎる傾向にあるのだ。大人と比べて体温が高い子供が、気温が高い日にむしゃぶりつくように抱きしめてくることを想像してほしい。毛皮に覆われたコロマルの苦労は、その想像の軽く上をいくものだ。ただし、慈悲深いコロマルは、そんな女の子も無下には扱わない。この子がわりと苦労人であることを、コロマルは知っているのだ。そうしょっちゅうではないが、この子の両親は酷いケンカをするらしく、夕刻の神社で悲しみをこらえるようにコロマルに抱きついてくることがある。群れで暮らす犬族は、それこそ家族や仲間は命に等しい。それが仲良く暮らせない悲しみは、いかほどのものだろうか?そう思うと、コロマルは多少うっとうしくても、彼女に優しくせずにはいられないのである。
「あ、もう時間だ。ごめんねコロちゃん、舞子もう行かなきゃ。あーあ、塾面倒くさいなあ」
そう言って、彼女はコロマルの頭をひとなですると、廠戸台商店街方面へと歩み去った。うん、これぐらいのスキンシップが、コロマルにとってはちょうどいい。少し気分を良くして、コロマルも再び歩み始めたのだった。
潮の香りがする中、コロマルはムーンライトブリッジをてくてく進む。人間は、ここを観光地とかいう扱いでありがたがって見に来るらしいのだが、コロマルにとっては散歩ルート中もっとも退屈な行程である。というのも、橋の手すりが高すぎて、コロマルの体高では絶景と噂の風景も見えないからだ。しかも、やたらとたくさんの自動車が前から後ろから突っ走ってきて、危ないわ埃っぽいわ、嫌な油臭い空気を吐き出すわで不愉快ですらある。
であるからして、コロマルはこの場所を無心で歩く。なるべく潮の匂いにだけ集中し、遠くに見えるポロニアンモールの丸いドームを目指してずんずん歩く。時おり、ランニング中の人間が立ち止まって手を伸ばしてきたりするが、それも可能な限り無視してひたすら前へ。
しかし、それでも2度呼ばれると、つい立ち止まってしまう。コロマルが行ってやらないと、呼んだ人間は時々えらく傷ついた顔をすることがあるのだ。人間を傷つけることは、コロマルの本意ではない。なので、コロマルはあくまで “仕方なく” 人間に思うさま頭をなでさせる。コロマルはそういう自分の性格を時おり誇らしくすら思っているが、じつはなでられている間、ついつい尻尾を振ってしまっていることには気づいていない。コロマルはそんな犬だった。
「あれー、コロちゃん?こんなとこまでお散歩に来てるの?」
「あ、ホントだ。健脚だね〜」
ポロニアンモールに来たところで、厳戸台あたりでよく見る女子高校生に出会った。いつもの制服姿ではなく私服姿。セミロングの髪の子は、ピンクのタンクトップにデニムのジーンズ、ショートの髪の小さい子の方は、水色のワンピースを着ている。もっとも、犬であるコロマルにとって、服の違いは別にどうでもいいのだが。
このふたりは、けっこうコロマルのお気に入りである。水色ワンピースの子は、動物の扱い方を心得ているのか、コロマルが気持ちいい場所を的確になでてくれる。タンクトップの子は、なでかたこそ普通だが、あまりベタベタしようとしない点で好感が持てる。コロマルに触りたいという気持ちは、たくさん伝わってくるので、むしろもっと触ってくれてもいいのに、と思うことすらある。もし犬の言葉がわかる人がいれば、遠慮しないでいいよと言ってあげたいほどだ。まあ、そうそう都合のいいことはないと、犬ながらに買いコロマルはそう思う。
「あ、コロちゃん、こういうの食べるかな?」
そう言って、水色ワンピースの子が手に提げていた袋から何かを取り出す。赤いビニールに包まれた、棒状の何か。漂ってくるかすかな匂いに、ある期待を抱き、思わずコロマルの尾がぶんぶんと大振りになった。
「あれ?ソーセージじゃん。どーしたの?」
「え?あ、た、たまには自分で料理しようかと思って······さっきデパートで、ちょっと」
「ふーん、風花も料理したりするんだ」
「ま、まあね。あはははは」
ワンピースの子は何か焦った様子だが、すでにコロマルは、想像の中に広がるソーセージの味で心が一杯になっている。ワンピースの子は、そんなコロマルの期待に応えるように、できるだけ意いでビニールをむいてくれた。
「はい、どうぞ」
「わん!」
礼を言うのもそこそこに、コロマルはソーセージにかぶりついた。そういえば、朝食をとってからけっこうな時間が過ぎている。ちょうどいいタイミングの思わぬ幸運に、コロマルの心にじんわり幸せが広がっていく。やはり、何かを食べているときが、いちばん幸せだ。それがとくに、好きな人が手ずから食べさせてくれるとあれば、それ以上何を望むことがあろうか。
欠片ひとつ残さずにコロマルはソーセージをたいらげ、もう一度「わん」と礼を言う。
「どういたしまして」
とワンピースの子が答え、買い物の続きがあるからと、コロマルをひとなでしてどこかの店へと向かってふたりは歩き出した。ごくまれにだが、このようにコロマルの意思が、人間に通じているように思えることがある。それは単なる錯覚や勘違いかもしれないが、それもまたコロマルに満足感を与えることのひとつなのだ。
ともあれ、コロマルは今日彼女たちに会えた幸運に感謝しつつ、散歩の続きを楽しむことにした。いずれ、コロマルは先ほどの想像どおり彼の言葉を理解できる存在と出会い、この日もっとも幸運だったことは、ワンピースの子がくれた食物が “調理前” だったことにあったのだと知るのだが、それはまた別の話である。
散歩の折り返し点、ポートアイランド駅に着いたときには、太陽は南天を過ぎ、もっとも暑い時間帯を迎えていた。駅そばにあるオープンテラスのカフェは、日曜ということもあって満員。いつもなら、ここで小腹が空くタイミングとなるために、カフェの客に愛想を振りまいたりすることもあるのだが、今日はもらったソーセージのおかげでその必要もない。
とりあえず、涼しい日陰でも探そうかとコロマルが駅前広場を見回したとき、ぞわり、と背中の毛 が逆立つような感覚がした。無意識に、尻尾が丸くなって足の間に挟みこまれる。コロマルは、その感覚に覚えがあった。
--いた。
花塩そばのベンチに座った、白いドレスの少女。手には大きめのスケッチブックを持ち、空ろな目でしばし前を見つめては、手元に目線を移して右手を動かす。その作業を、少女はひたすら続けている。
コロマルは、あまりこの少女に近づいたことがない。別に危害を加えられた訳ではない。ただ、以前1度だけ、少女の前方にいたときにじっとあの目で見つめられた。それだけだ。その目が、コロマルは今も怖くて仕方がない。
言葉を持たないコロマルは、その印象をうまくまとめることはできないが、あえて説明するとしたら、それは生き物としてはありえないほどの、虚無に満ちた視線だった。コロマルの目からは、少女は既に死者に等しく見えた。
だが、そんな少女が。
「······おいで」
なんと、コロマルを認めて声をかけてきたのである。一瞬のためらいののちに、コロマルは少女のほうへと近寄った。丸めた尻尾は、気力を振り絞って常態に戻している。少女に対しておびえを見せることが、何となく申し訳なく思えたからだ。それがなぜかは、わからない。
コロマルが近寄ると、少女は手に持ったスケッチブックを数枚めくり、やがてコロマルにひとつの絵を示した。強弱が定まらない輪郭線、不安定な色彩。正直、犬であるコロマルに絵の良し悪しはわかりはしないのだが、その絵からは何か圧倒されるものが伝わってきた。それは、この世のすべての生き物が恐れるべく定められた、“死” そのもののイメージだった。
「······これ、お前よ」
その言葉に、コロマルは首をかしげて再び絵を見る。よくわからない。だが、コロマルの生き物としての鋭敏な感覚が、その絵にこめられた別のイメージを感じ取った。
これは、憧れ?
紙の上にすみずみまで満ち溢れる、死というマイナスイメージの中、ほんのかすかに匂う生への憧れというプラス。それはまるで、地平線まで広がる黒々とした底なし沼の真ん中から、すがるように空に向かって伸ばされた白い手。
「普通は······誰かに見せたりしないけど······お前は、勝手にモデルにしたから、一応······」
目を合わせず、言い訳するように少女は呟き、そそくさとスケッチブックを畳んでしまう。
「く~ん」
と、コロマルは、甘えるように鼻を鳴らす。少女に付きまとう、得体の知れない死のイメージは微塵も薄れてはいないが、それでも小さな小さな助けを呼ぶような気配が気になった。だが、少女にはそんな想いは通じず--。
小さな体に不釣合いな大きさのスケッチブックを抱え、少女は無言で立ち去ってしまった。
自分には、あの虚無から彼女を助けることはできない。それを本能的に知覚し、コロマルは少し悲しくなる。そしてコロマルは気づく。
--誰かを守れる力が欲しい。
そんな想いが、自分でも意外なほどに、強く強く満ち溢れていることに。それは、愛する主人を突然の事故で亡くして以来、自分の気づかない場所で、静かにっていた火だった。
それから、コロマルは沈んだ気分を晴らすように、ポートアイランド駅近辺をたっぷり散策した。今日はなかなか面白い人間が多く、別に吠えたり呻ったりもしていないのに「ちょっと!アタシは犬って苦手なのよ!犬は悪い人がわかるって言うし、アタシなんか噛まれるに違いないんだからね!しっし!訴えて慰謝料とるわよっ!」と叫ぶ中年男にじゃれ付いたり、なにやら月高の女生徒を付け回す同じく月高の男子生徒を、真似して尾行してみたりした。そして、ほんの少し気持ちが復活したところで、コロマルはポートアイランドをあとにして、行きと同じ道を辿って帰路に着く。
ポロニアンモールで立ち話をする主婦の、買い物袋から漂う匂いの誘惑に打ち勝ち、相変わらず埃っぽくて油臭いムーンライトブリッジをずんずん進み、ほんのちょっと厳戸台駅前に寄り道をする。これもいつものルート。
このあたりに来ると、昼が長い夏とは言え、すっかり日は傾きかけていた。駅前商店街に多数存在する食べ物屋からは、それぞれに違ったいい匂いが漂ってくる。とくに気になるのが、香ばしく焦げたソースの匂い。前に1度だけ食べたことがある、たこ焼きの匂いである。
ちょっとした気まぐれで、店主が散歩中のコロマルに投げてよこしたたこ焼きは、今までに経験のない美味だった。
「ホンマは犬猫にタコやイカはあかんのやけどな。ウチのはほら、タコ入ってへんから」
店主��そんなことを言っていたが、コロマルにとってはどうでもいいことである。ただ、もう1度だけ店主が気まぐれを起こしてくれないかと、このあたりで足を止める癖がついてしまったのが、我ながら情けない。
空腹をこらえながら、コロマルは商店街を進む。今日はあいにく、コロマルに食べ物を恵んでくれる気になる人間はいないようだ。いつも新しい神主が提供してくれる食事は、コロマルにとってはやや物足りない分量である。今日はちょっと疲れたので、もしかするとあれでは足りないかもしれない。今夜は、空腹をこらえて寝るしかないかと、コロマルが覚悟したとき。
「よう、コロちゃんじゃねえか」
後ろからかかる声。
大きく尻尾を振って、コロマルは声の主のもとに走り寄った。亡くなった主人を除けば、おそらくコロマルがもっとも大好きな人間だ。
「ほら、焦るなって」
そういって、その人は懐から容器を取り出し、地面に置いて開けてくれる。中身は何か肉を煮込んだもの。巌戸台商店街やポートアイランドでよく見かけるその人は、いつの頃からか、定期的にコロマルに食べ物を持ってきてくれるようになっていた。口調は乱暴だが、優しい人だ。
「よし、いいぜ。食えよ」
いつものことだが、コロマルは律儀に一声吠えて礼をいい、それから出された食事を食べ始める。あまり味を気にしないコロマルだが、その肉は絶品だった。濃すぎない味付け、適度な歯ごたえ、神社で出されるドッグフードとは雲泥の差である。食べながらコロマルは思う。色々あったが、今日は総じていい日だった。明日もいい日になるだろうか?
どちらにせよ、コロマルは毎日を精一杯生きるだけだし、日課の散歩も変わらないだろう。手が届く範囲の幸せ、それを守ることがコロマルの重要事であり、それは確かに、生き物すべての真理なのである。
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本日の一枚。結紙様から頂きました。
@yuh_ka_mi より
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「https://twitter.com/yuh_ka_mi/status/1762379692064354401」
結紙様のアニメ塗りに一目惚れしたのがきっかけでリクエストを行った経緯がある。
このタイプの塗り方される方と中々縁が出来ず、pixivを彷徨って居た所FGOの素敵なイラストを投稿している絵師様が居られた。そう結紙様。いつかocのアニメ塗りを見てみたいと思っては頓挫し諦めの繰り返しだった所出会えたのだ。
この時「これは……天命だと思うか?」と自問自答しながら私は運命に導かれた。
初めての方にリクエストを送るのは毎回類を見ない緊張が出る。
結紙様の描きはアニメ塗り以外にも推しているところが有る。
くびれ、鼠径部、肩幅、体の丸み、腹筋。女体を知り尽くしているかの様な画力は見ているだけで魂まで響いてくる。私は今幸せを感じている。
今回のリクエストでは少しゆったり目のある露出の少ない服装を選んでみた。人間の脳は想像力に特化しているらしく、何時もとは趣向の違うリクエストを考えてみた。
結紙様の様な凄い!身体を描ける方にOCにドレスを着飾るとどうなるか、それは服の上から見える特徴から服の下が想像できる事。タイトな生地が身体に引っ張れれ、女体の大きな丸みが所々表されている表現は人間の脳ではの芸術的表現。
足は黒のニーハイブーツ。服で隠れているが、私には結紙様に描かれたふっくらとした肉付きの良い太ももが見える気がする。
上に行くと胸がゆったりと垂れ下がっている。服の陰影や線のシワの表現が垂れ下がる演出の深みのある味を出している。特に自分は鎖骨のラインに目を惹かれた。首周りが生地のタイトな表現でくっきり鎖骨や喉のラインが現れている描写は自分の好物。今自分の脳内に幸せホルモンが出ているのを感じる。
また胸から喉まで上へ上へ行く程奥へ深くなって見える立体的な演出はドレスのシワから成る演出だろうか。奥が深い。
二の腕の筋肉が服越しに感じ取れるのも幸せポイント。
表情は結紙様のセンスと表現豊かな面を垣間見えた気がした。この挑発的な表情、背筋に何か来る様な物を感じる。
瞳の作り込みが凄い。イラストレーターとは職人と思っていたが、改めて職人だと感じさせる描き込みを見た。これ以外にも結紙様の作品のキャラは皆瞳がキレイな印象が強い。どの作品も心が引き込まれていく。
最後はチラッと見える尻がインパクトが出ている。元々結紙様が描かれたみモリガンたいなポーズと送ったが、その時はここまでインパクトが出るとは考えてもいなかった。この少し見せる様なお知りの出し方は天才的な意味でズルさを感じた。これも服越しに感じられる特有の物なのか、アレは良いものだと思う。
この素晴らしい1枚に感謝。
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shukiiflog · 6 months
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ある画家の手記if 佐伯岬/春輝視点 告白
わたしを見つけて
佐伯岬:
光は人が好きだった。
妻の昴が持病の具合がよくなくて光を見ていられない日、僕は仕事で行くパーティに幼い光を抱えて連れていった。 子供用のかわいいドレスを着せて、髪の毛は僕が編んだ。 会場に着くと光はすぐに僕の腕から降りて、会場をとことこ歩き回り、途中から靴擦れで足が痛くなったのか靴を脱いで裸足になって、あちこちの人に笑顔でシャンパンや花を配って回った。途中でパーティの主催者に光にそういうことをさせてもいいかと聞かれて、僕も了承した。 接してくれる誰もが光を笑顔で可愛がり、あたたかく迎えてくれた。 しょっちゅう誰かにお菓子か何かをもらっては、遠目に見ている僕のところへ光はいちいち走って戻ってきて「もらった」といって僕にもらったものを一つずつ丁寧に見せてくれた。 「おとうさんがもってて。たべてもいいよ。これとこれはたべちゃだめ」光に荷物持ちにされて細かく指示を受ける。 「はい。いってらっしゃい」笑顔で受け取って光を送り出す。昴に似てとてもかわいい。僕がそういうといつも周囲は「いや、お前に似てる」と返してきた。そうかな? そういう場で春輝とも出会った。光に声をかけられた春輝はまだ学生だった。春輝も親に連れられて来場していた。
昴が病気で寝込むことが多い以上、お手伝いさんを雇ったりするべきだったのだろうけど、そこまでのお金がなかった。なんとか僕が仕事を調整すれば光のことは見ていられたし、家事はもともと僕が好んでしていたから、うちは僕と昴と光の三人家族だった。 それより以前は存命だった僕の父も一緒に暮らしていたけれど、影で光によくない悪戯をしようとしているのに気付いてからは父には出ていってもらい、そのまま親子の縁を切った。 僕はそれ以来、ほとんど勘当されたも同然の身になり、莫大な財産に支えられた生活は終わった。 その後は父ではなく僕個人と繋がった人脈でなんとか仕事を続けて稼いでいた。培った仕事の要領でそれなりの年収はあったものの、昴の医療費にかなりの額を確保しておく必要があったため、暮らし向きはどこにでもある中流家庭の域を出るものではなかった。 その点では財産を丸々失ってしまうため昴には申し訳ないことになると思ったが、僕が昴に事情を話すと、昴から言い出してくれたのだった。 「私たちが出ていくか、お義父さんに出ていってもらいましょう」
僕一人にえらく負担がかかっているように周囲からは見えたようだったけれど、光の面倒を見る時間は僕には癒しだった。 光は僕のいない時間は昴の寝ている布団のまわりで転がりながら、折り紙をしたり絵を描いたり本を読んだりして過ごし、昴は体調のいい日には光と一緒にそういうことをしたり、もっと難しい折り紙や一人遊びを教えたり、本を読み聞かせたりしていた。
僕は仕事から帰ってくると昴の寝ている部屋に顔を出す。光がいない。「光はどこかな?」「さぁ、岬さんの車が帰ってくる音が聞こえたら急にどこかに行ってしまって…」 これが僕と光の日課だった。 僕が帰ってくる気配がすると光は家の中のどこかへ隠れる。僕が光の名前を呼びながら家中を探し回る。 光は運動神経もいい上に極端に体の小さな子だったから、思いがけない場所によく隠れていて、真剣に探しても見つけるのはなかなか簡単ではなかった。 光の隠れ方もたまに巧妙に裏をつくようなものだったりして、洗濯籠に洗濯物に埋まって隠れている光の上から脱いだ服を気づかず僕は投げ入れていたり、帰ってきて無造作に放っていたままのコートの下に隠れていた光を危うく踏みつけそうになったり。 足場もない高い箪笥と天井の隙間の影にいたり、戸棚を一つずつ全部開けたらその中の一つに実にうまく体を曲げてコンパクトに手足を折りたたんでおさまっていたりした。 賢いのか天然なのか、とにかくいつも光は何事にも真剣で一生懸命に取り組んでいた。 ある時は隠れるためにあまりに高い場所に登ったせいで一人で降りられなくなって、いつまでも僕が見つけられずにいると光が僕を細い声で呼んだ。僕は笑って梯子を持ってきて光を抱えて床に降ろした。 それでもやっぱり子供だから簡単に見つけられる日もあった。けれど僕は見つけられないふりをしてしばらくの時間、家をわざとうろう���した。 「光はどこいったのかな?」「隠れるのが��手だね」「大人の僕でもこれはとても見つけられない」「光は賢いなぁ」そんなことを隠れているつもりの光に笑顔で言いながら。
どんな些細なことでも、光に一つでも多くの成功体験を積ませるため、僕は光をいつも褒めた。 この子が人を好きになってくれたら。 屈託なく誰にでも心から笑えて、人の善性を信じ尊んで大事にするように育ってくれたら。 もちろんいつまでもそれだけではいけない、けれどこの年齢ならまだ子供を守るのは僕や昴や大人の役目だ。先に信じることを、疑うことは後からいくらでも身につけられる。この世界への安心感と揺るぎない信頼をまず光にあげたかった。 光は僕と昴の愛情に育まれて、天真爛漫で素直な素晴らしい子に育ったし、僕も昴もそんな光の成長に日々を支えられていた。
ある日を境に、僕は光をパーティに連れていくことをやめた。光は行きたがったけれど、もう二度と同じような思いはしたくなかった。 パーティ会場で幼い光に多くの人が善意でお菓子やかわいいキーホルダーや着けているアクセサリーをくれた。光はいつも僕にそれを渡していって、中にあまりに高額そうなものが混じっていたら僕が帰り際に主催者に持ち主に返してくれるよう頼んで預けて帰った。 ある日、光が僕に渡したその中にコンドームの箱が一つ混じっていたのだ。誰が光にこれを渡したのかは結局分からずじまいだったものの、あまりの不快感と吐き気で僕はすぐに光を連れて帰って、二度とそういう場所へは連れていかなかった。
光が平均的な子供より可愛らしい容姿をしていることは親の欲目を捨てても理解できていた。 子供服のモデルのスカウトや、テレビでちょっとした子役に出してみないかという話がよく人づてにきたが、僕はそれらをすべて断ったし光にも教えなかった。 なんであれ子供に自分で金を稼がせることは慎重にしっかりした教育下で少額から少しずつ経験させていかなければいけない。労働や消費対象になることなども含めて、どんなに条件のいい話でも僕には許容できなかった。
光は、止むを得ず僕がほんのすこし目を離したタイミングで、誘拐されかけたり連れ去られそうになったりしていた。そのすべてを僕が間一髪で防いではいたものの、そういうことは光が成長するにつれて頻度を増した。まだ裁判沙汰にまで至らないし、すべて相手に逃走されて終わっていたとはいえ、僕にとってはすべて重大なただならぬことだった。
光にとってもどこかでストレス要因になって積もり積もったものがあったのか、それともまったく別の何かからなのか、光は自分の指や爪を噛んで、ちぎったり皮を剥がしてしまうようになった。 指先が血みどろになっても光はやめなかった。 とめる間もなくすぐに癖付いてしまった自傷をなんとかしようと、僕は空いた時間に光を抱きかかえて優しく揺らしながら家の中を毎日散歩した。 光は静かに揺られながら僕の首筋の肌に噛みついてじっとしていた。そのうちうとうとして、眠り込んだ光を昴の布団に入れる。 僕の首筋には鬱血した噛み痕が残ったけれど、光の指先に比べればどうというほどのものでもなかった。 なにかを噛んでいると光は安心するようだった。
その頃からすこしずつ、光の問題が浮かび上がってきていた。 知らない人についていってはいけないとか、物をもらってはいけないと言い聞かせても、光はそれを理解できなかったのか、何度も似たようなことを繰り返してしまった。 叱らずによく話を聞いたが、総じて光は加害者を「やさしくていいひとだった」というふうに屈託なく笑顔でそう評した。 僕が、育て方を致命的に誤ってしまったのか。悩んだ末に、光に危険な存在や行為や悪意についてそろそろしっかり教えなければと思った。光は人の言うことをいつだって真剣に聞くし、僕のことを誰より信頼している。根気強く教えればいい。 もし光にそれらを理解できない何か重大な問題があるのならそのように接して、光が生きていく環境を僕がある程度整えなくてはいけない。 酷いことが起きないように僕が目を光らせながら、僕がいつか居なくなっても光が生きていけるように、信頼できる伴侶や守ってくれる存在を見つけて、いつか僕からその人たちへ光を託さなければ。 このまま順当にいけば僕の方が光より先に死ぬことは明らかなのだから。
***
佐伯春輝:
岬さんが出張先の海外で起きたテロに巻き込まれて亡くなって、僕は遺された昴さんと結婚した。昴さんはまだ若いけれど僕よりはずっと歳上だった。 僕には岬が一人でなんとか仕事をして稼いで暮らしているのが理解できなかった。勘当されたとかいう話は聞いたけれど、なんでそんなことになったのか、光もいて、昴さんの医療費もあるんだし、佐伯の実家に頼るのが一番だろうに。 そう思って、結婚してすぐに僕は絶縁状態になっていた佐伯家へ出向いて、資金援助と和解を申し出た。 岬は不利な要素を抱えても一人で中流家庭並みの暮らしを実現させていたけど、僕はまだ若いし、とても岬の真似事はできなかったから。 そうして僕は佐伯の家の跡継ぎになった。一人息子の岬に去られて佐伯家は今後どうするかで揺れていたから、僕の申し出は歓迎された。ただやっぱり僕は頼りなかったのか、佐伯の家から受け入れられている感じはしなかった。 僕はすこし気が弱いし、あまり自分に自信もないし、自分でもこれからどうしようか途方にくれることが多かった。 それで僕は光を使うことにした。 幼い頃に僕にパーティ会場で花をくれた。初対面から光は僕に好意的だった。 僕は光に家でも人前でも僕を「お父さん」と呼ぶように言いつけた。光は断固としてそれを拒否し続けていたけど、一度ベッドに無理やり連れ込んだら以降はおとなしく言うことを聞くようになった。 それでも光は「おかあさんのお部屋にいたい」と言ってしつこかった。実際、昴さんは岬を亡くしてから持病を拗らせていたし、光はそんな母親のそばについていたかったのだろうが、僕はそれを許さなかった。 僕の目を盗んで母親の部屋にいた光を抱えて連れ出し、「そんなにべったり一緒にいたらお前にも病気がうつってしまうよ、昴さんはそれを望むかな?」と説いた。 それから光は遠くの廊下から母親のいる部屋を毎日じっと見つめているだけになった。 それから一度も昴さんと光は会えないまま、昴さんはあっけなく亡くなった。 家には僕と光だけになった。
光はその頃まだ小学生だったけれど、成人女性の色気とも種類の違う独特の色気のようなものを発していた。 子供にしても未発達な印象のあどけない童顔、黒くて艶めいた長くて太い睫毛で常にアイラインを引いてるような目元、小さな口や鼻、すこし厚めの唇。 頭、顔、肩幅、手、足、耳、爪、すべて規格外に小さい。すべて小さいのでバランスにあまり違和がない。 全身痩せ型で細いが、とくに手首と足首が折れそうなほど細い。 全体的な雰囲気は岬と似ていた。 生前の岬も、光はつけ狙われやすいと友人に相談していたそうだ。そういう子なんだろう。 僕を誘ったのは光の方だと思っている。意識的なのか無意識なのかは知らないけれど。光の体には毒がある。 僕はその毒にあたったのだ。 岬が死んでから光はほとんど眠れなくなっていた。夜の間は僕が遊び相手になった。 光の体は感度が良くてすぐ濡れるからいつも大した準備なんてしなくてもすんなり僕のことを受け入れたし、光もおとなしかった。佐伯の人間で僕を受け入れてくれるのは光だけだった。 同時期から光は食事を嫌がるようになった。匂いが強いとか味が濃いとか、食材も味付けも以前と変わらないのに急にわがままを言いだすようになった。なら食べなくていいと言った��、光は本当に食べずにどんどん痩せ細ってしまった。 医師からは拒食症だと言われた。なにか心的外傷になるような出来事があったか尋ねられたので、僕は岬と昴さんの死について語った。
僕は光を義務教育期間だけ学校に在籍させていた。高卒や大卒の履歴などこの子に必要ないだろう。 医師の診断書を偽造して、母親と同じ病気であるとあちこちに触れ回った。 それで光はむやみに外出もできなくなった。 妙に本質を突くような聡いところがあるかと思えばこんな僕の言うことを簡単に鵜呑みにしてしまう、どうにも愚かな子だった。 ただ何かの拍子に光は僕の目をじっとただ黙って見た。子供らしく床に転がってお絵かきをしたり本を読んでいる姿勢で止まって、そこにやってきた僕の目を、じっと。いつものように笑ってもいない、無表情に近いけれどはっきりと意思を宿した大きな瞳が、黒くて長いまつ毛に縁どられてただ僕を凝視していた。光はそういうとき一言もなにも言わなかった。
人形かなにかのようだ。意思があるように見えるだけで僕の内面を反映しているだけ。人の形をしているし、いかにも人間らしいけれど、それだけだ。 そのたびに、僕のことなどすべて見通されているように感じて、怖くなった。脅かされているのは、僕のほうだ。
そういうふとしたとき以外は、光は天真爛漫なかわいい子だった。 岬が死んで以来、身長や体重が変化せず、成長がぴったり止まったようになっていたし、光には第二次性徴が訪れず、月経も始まらなかった。そういう体質なのかもしれないと思って放っておいた。 何より光の成長が止まったことは偽りの病気にもっともらしいぱっと見でわかる事実としての身体的異常を付け加えてくれた。 僕は光に言った。 「こんなに背が小さいのも初潮がこないのも、病気の影響だよ。この歳でこんなに背が低いなんて昔なら奇形児なんて言われて気味悪がられてるところだ。今でもそういうふうに言ってくる心ない人は外にたくさんいるけれど、光がここにいれば僕が守ってあげられる。お前はきっと一生一人では何もできないだろう。未成熟な醜い子だけれど、僕は光を誰より美しいと信じてるよ。光を愛しているからね」 光は僕の言ったことを、ただ無表情で黙って聞いていた。 僕が喋れば喋るほど光は無表情になって黙って僕を見るだけになったから、怖くてだんだん僕は光とちゃんと会話するのを避けるようになった。
光は保健室登校しながら、ある日突然彼氏だと言って同じくらいの学齢の男子生徒を家に連れてくるようになった。 その度に僕が間に入って、申し訳ないけれどこの子は闘病で手一杯だからと話して無理やり二人を別れさせた。それでも光は性懲りもなく何度も新しい別の彼氏を作った。 ある日、僕は光に聞いた。「どうしてそんなに次々に誰かと付き合うんだ、別れるのだってあんなに簡単に別れるのならどうして付き合おうと思ったんだ」と。 光はこともなげに「付き合いたいって言われたから」だと答えた。それ以上のものはないように見えた。 ますますもって人形じみてきたと感じた。僕の人形だと思っていたけれど、誰の人形にでもなるのか。
僕の中で光への感情が修復不可能なほど屈折していくのが分かったけれど、僕が屈折しているのではなくて光がただ異常なだけであるようにも感じた。両親の死で本当にどこかおかしくなったのかもしれない。 僕は二人だけの家にわざと他人を招いて、光を襲わせた。 光も僕の差し金だと分かっていただろう。勝手に外で恋人を作ってくるような真似をするからだ。相手が欲しいのならいくらでも適当なのをあてがってやる。どうせ大した怪我なんてしないだろう、誰相手にでもすぐ慣れるふしだらな体だ。 そのうち光はそういう連中を相手取ってなのか家のあちこちに隠れるようになった。 光は見つかっては隠れた場所から力尽くで引きずり出されていいように弄ばれた。 あるとき光はひとりごとみたいに空中に向かって呟いた。「かくれんぼは最後に絶対にお父さんが見つけてくれる」 光の中ではまだ隠れているまま、終わっていないという意味か。お父さんとは僕のことじゃなく岬を指しているんだろう。 ちょうどいい。何度でも岬ではない他人に見つかって暴行されて終わるのを繰り返してその拠り所と一緒にめちゃくちゃに踏み躪られればいい。本当に岬はもういないのだから。
以前から光は年齢に似つかわしくない難解な本を好んで読んでいた。 僕にはそれらの内容が理解不能だったし、光はそれらに熱中することで他の自身についての事柄にさらに無頓着になっていたから、僕には都合が良かった。それで邪魔はせず、欲しがる本はすべて買い与えた。 光の本棚はあっという間に埋まって増えていって、一見たいそうな読書家の部屋のようになった。光が読んだ本について僕になにか語ることは一切なかった。
そして時間の止まった家は光を内包するための容量が足りなくなったことを象徴でもするようにその都度必然的な理由で増築されていき、家には巨大な施設群がくっついて光はそっちで過ごすことの方が多くなった。 見栄えも考えてあったが一般客のためのアトラクション的なものではなく、どちらかというと研究者や有識者のための学術的な場だった。プレゼンテーション用のスクリーンが完備されたホールなどがあり、そういう空間がよく学会などの発表の場として活用されていた。 屋内にも緑が多く、建物のあちこちに綺麗に水が通る自然の地形を生かした設計は訪問客にとても好評だった。光はその設計を初めて見たとき「フランク・ロイド・ライトの建築のよう」だとその美的感覚を絶賛していた。僕には光の話すことはよくわからなかった。 たまに光は訪れた有識者とオーナーの娘として知り合いになって気まぐれにしばらく楽しげに話し込み、「研究に興味を持って話を聞いてくれた。聡明な娘さんですね」と僕があとでお世辞を言われることもしばしばだった。 あの子をまだ小学生かその程度だと勘違いして買いかぶったのだろう。実年齢を聞けばきっとバケモノでも見るような顔をするに違いない。
あるとき施設の管理担当が一人の若い男に引き継がれる流れになった。 広くて全体を把握するのも難しいため、何人かの担当者にあちこち区分させて管理を任せていたけれど、その男は突然一人でやってきて簡単に屋内を歩いて巡ったあとで、仕事を一人で引き受けてしまった。 彼は僕と信頼関係を築くための必要最低限の世間話を応接間でしていった程度で、施設の現状の資料を一台のノートパソコンにおさめて帰っていった。定期的に訪れて微調整をすると言っていた。 彼が帰ったあとでよく思い出したら、この施設の初期の設計に携わった数人の建築家のうちの一人が彼だった。会ったのはこれが初めてだった。建設される当時はもっと年配の人間が責任者兼代表として僕に挨拶にきていた。 一人一人の年齢まで把握していなかった、まだあまりに若くて気づけなかったけれど、要は自分の設計した建物がようやく本人の管理下に落ち着いたということなのだろうか。
何より喜ばしかったのは、光がこの男に少しずつ惹かれていったことだ。 光と僕はそういう話はまったくしなかったが、僕から見たって一目瞭然だったし光も隠す気はないようだった。これまで迫られて了承する形でしか恋愛といったものに関われずにきた光が自分の意思で彼に迫るようになった。 それを十分確信したタイミングで僕は彼に光との縁談を持ちかけた。 光が世間的な常識人とうまく関係を築けるはずもない。接したところ彼はそのあたりをよく踏まえた常識的で賢明な人物であるように感じた。結婚してここを出ていこうが、必ず破綻して光がここへ出戻ってくることは明白だ、僕のもとへ。 光自身の無力と絶望的な精神的遅滞とを自分で痛感して、光は一生立ち直れないほどのひどい挫折体験を抱えて帰ってくるだろう。それが光にとっての外界へのイメージになるはずだ。光の中にある外界への憧れを光自身が望んで実行した行動と感情を基にして、折ることができる。 そのためには彼への恋愛感情がより強く揺るぎないものになればなるほどいいだろう。 僕は彼に感謝した。 病気でしかもどうしようもない世間知らずな娘を手厚く扶養する父親として、僕の立場はこれまでなんとかもってきていたのだから。
光視点
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japanpromos · 1 year
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衣替え季節に保管サービス・宅配クリーニングをおすすめ5選!
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衣替え季節には、衣服の取り出しや保管、��リーニングなどで時間や手間がかかることがあります。そこで、保管・宅配クリーニングサービスを利用することをおすすめします。保管・宅配クリーニングサービスでは、自宅にいながら衣類のクリーニングと保管ができるため、時間や手間を大幅に節約できます。また、クリーニングに出すことで、衣類がクリーンになり、新品のような風合いを取り戻すことができます。
保管・宅配クリーニングサービスを提供している会社が沢山あります。JapanPromos(日本プロモ)は、おすすめの5社の保管・宅配クリーニングをオススメいたします。
リナビス
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60周年クリーニングの老舗リナビスでは洋服や布団、革製品、インテリア・雑貨品などクリーニング・保管することがサービス、さらに無料オプションを提供しています。
お洋服のクリーニング
シミ抜き、消臭、防虫などの特殊加工を施した上で、最新の設備を用いた洗浄技術で、衣服をクリーニングします。また、シワを伸ばすプレス技術や、フォルムを整える仕上げ技術にもこだわっています。リナビスでの洋服の対象は、
保管付きコースで3・5・10・15・20点またはビジネススーツ、ロイヤルスイートとなっています。
着物コースには、帯・襦袢など付属品も対応しています。
毛皮コースには、ストール、セーター、カーディガン、ライナー、エリマキ、カフス、マフラー、ショール、ボレロなどオプションがあります。
お洋服の修理・リフォーム
ボタンやファスナーの交換、肩紐の調整、裾上げなど、簡単な修理から、リメイクやアレンジなどのオーダーメイドにも対応しています。
布団のクリーニング
羽毛布団、合成布団、マットレスなど、あらゆる種類の寝具のクリーニングを承っています。衛生的で清潔な状態に洗い上げるだけでなく、フカフカとしたふかふか感も再現します。また、お客様のニーズに答えてふとんのリフォームやリサイズのサービスも対応中。
通常は、ふとんコースまたは毛布コースご利用で最短21営業日後にお届けされるが、お急ぎの場合は「お急ぎコース」にご注文可能で最短8~20営業日以内になります。お急ぎコースのために、「最長12ヶ月無料の保管サービス」の対象外となります。
レザー・ブランド品のクリーニング
レザーやスエードのお洋服、靴、バッグ、財布、手袋など、あらゆる種類のレザーアイテムのクリーニングを承っています。専用の洗剤と技術で、汚れやシミを落としながら、革本来の質感を守ります。
インテリア・雑貨・ベビー用品のクリーニング
カーテンやブラインド、じゅうたん、ベビーカーなど、さまざまなインテリア・雑貨・ベビー用品のクリーニングを承っています。専用の洗剤と設備で、汚れや臭いを取り除き、清潔な状態に仕上げます。
ペット用品のクリーニング
犬や猫などのペット用品全般を対象にしたサービスがあります。例えば、ペットベッドやケージ、トイレトレイ、おもちゃ、カバンなどをクリーニングすることができます。これらのアイテムは、毎日の使用や長時間の保管によって、たくさんの毛や汚れ、臭いが付着することがあります。専門のクリーニングでしっかりと除去することで、清潔な状態を保つことができます。
保管のみサービス
リナビスの保管サービスには、衣類保管コースと靴保管コースが、最長1年間まで保管することができます。これらの保管コースは、お客様が大切にされている衣類、靴などをリナビスが専用の保管庫に保管し、お客様の都合に合わせて配送や取り出しができるサービスです。
衣類保管コースには、衣類のシーズンオフ時の保管、スーツやドレスの保管、など。(和装品の保管、ウェディングドレスが除外品であり、別途料金で保管される)
靴保管コースには、靴のシーズンオフ時の保管、スニーカーやブーツの保管、レザーシューズの保管などがあります。
せんたく便
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せんたく便は徹底的にネットでの宅配クリーニングの老舗です。各パックのサービスに応じて、最速や保管付き、布団などを対応しており、オプションでしみ抜きや毛玉取りや再仕上げなども無料になります。往復送料無料であり、2回目以降はリピート割引が適用されます。
最速パック
せんたく便最速パックには、通常のパックはお洋服以外にリュックも対応可能になり、セレモニースーツやブランド品の場合は最速DXパックをおすすめします。最速パックはいつもどおりのダンボール型、最速DXパックは立体ハンガーボックスでお届けされています。
保管パック
せんたく便保管パックは1回注文につき最大30点(集荷キットの容量)を利用できます。夏物が最大9ヶ月、冬物が最大11ヶ月になります。クリーニングサービスを利用したお客様におすすめ。
ふとん専用パックには2枚セットの料金ですが、クイーン・キングサイズの場合は1点で2枚分となります。無料サービス以外に、防虫・防カビ加工のオプションで別途料金が発生します。
コスプレパック
コスプレイヤーにおすすめのコースです。衣装本体1点(上下を含む)、最大5点付属品を追加でき、お届け場所を指定可能、さらに最長60日間まで保管サービスを対応します。
くつパック
靴やブーツやビジネスシューズをクリーニングする他に、せんたく便では最大9ヶ月に保管するサービスを提供し、1足当たり税込385円/月となります。基本のパックに突き2足であり、1足追加ごとに税込6,160円かかります。
ゆかたパック
選択大変な浴衣は選択便の匠の技術ですっきりクリーニングします。浴衣パックには4点品まで上限となり、5点名以降は1点あたり税込1,100円となります。ご希望の場合は、クリーニングしたあと、最長90日間で保管できます。
ぬいぐるみパック
1回注文に最大10点をご利用可能です。ヤマト専用の集荷ボックスの120サイズ(31cmx45cmx27.5cm)またはお手持ちの140サイズ以内ダンボールが1パックであり、大きなぬいぐるみ1点でも1パック料金になる場合があります。11点品から1点追加につき税込2,200円かかります。
ポニークリーニング
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1949年創業してから首都圏・中京地区に780店舗を展開したポニークリーニングは今なら宅配クリーニング、そして保管サービスをお手軽にご利用できます。10パータンの洗いと5パータンの乾燥のクリーニング、そして汗抜き・黄ばみ防止、しみ抜き、抗菌加工など、さらに最大9ヶ月保管のサービスで衣類を大切に保護します。
プラチナコース
洗濯し辛いものやブランド品など衣類ならプラチナコースにおすすめします。あなたの衣類は熟練の職人によって丁寧に対応します。また、プラチナコースの特典であり、撥水加工や黒ずみすっきり加工など点数分がつけ放題、しみ抜き無料、汗抜き・黄ばみ加工、通気性カバー、特殊の防虫剤、シルエットハンガーなどサービス。
シャンゼリゼコース
通常の衣類は大切にクリーニングし、保管サービスをご希望の場合はシャンゼリゼコースにおすすめ。プラチナコースの特別サービス以外に、他のオプションが等しくなります。
ライトコース
ポニークリーニング保管・宅配クリーニングの標準サービスだけで利用したいならライトコースがおすすめです。プラチナコースとシャンゼリゼコースより、いつでも安い。ただし、メンテナンスは有料となります。
布団の保管・宅配クリーニングの場合
ポニークリーニングでは、お布団に優しい洗剤で、6パータンで丸ごと洗浄。アレルギー対策や赤ちゃんの肌にも安心な抗菌・防ダニ加工など、さらに最大9ヶ月保管のサービスをご用意しています。専用集荷キットの容量によって、インターネットでご注文で2枚パックと3枚パックがあり、毛布やベビー布団や敷パッドの場合は2枚ごとにパックの1枚とされています。
リネットプレミアムクローク
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宅配にいたままクリーニング「リネット」のプレミアム会員様は標準サービスに加えて【リネットプレミアムクローク】という保管サービスを提供しています。夏物や冬物のシーズンオフの衣類が洗濯して保管したいならオススメ。
リネットプレミアムクロークには普通の洋服に向けて「プレミアムクローク」と特別な洋服に向けて「プレミアムクロークluxe」の2つコースがあります。1着から取り出せ、24時間空調管理の環境に最大8ヶ月保管し、いつでもスマホでお手軽に衣類の状況を写真でご確認できます。
衣類以外に、布団や靴のクリーニングを利用したいならふとんリネット、くつリネットにて対応しています。ただし、これらの対象が保管サービスに提供しませんので、クリーニング完結後にお客様のもとへお届けされます。
フランス屋
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50周年を誇るクリーニング業界に活躍した老舗の1つである「フランス屋」は宅配クリーニング及び保管サービスが最安級に挑戦しています。衣類のみ保管サービスを対応しますが、防虫・防カビ加工やUVカット・撥水加工やデラックス加工などの豊富なサービスでオプションから選べ、最大11ヶ月お預かりできるサービスです。
衣類以外に、フランス屋では布団の商品が宅配クリーニングをご利用可能。1回ご注文あたり2点パックとしてクリーニング料金が税抜11,000円で往復送料や防ダニ加工、抗菌洗浄、お電話相談など4つ無料サービスを提供しています。
保管サービス・宅配クリーニングまとめ
保管サービス・宅配クリーニングは、衣替えの季節や衣服や布団の大量クリーニングなど、忙しい人や手間のかかる作業をしたくない人にとって便利なサービスです。
保管サービスはほとんど衣類のみ提供していますが、ふとんや靴などの宅配クリーニングサービスもご紹介したいと思います。今まで保管サービスまたは宅配クリーニングを使用していない方にも、実際店舗や各社の料金をご参考になるでしょう。
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arukadress · 2 years
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【商標登録番号:6519967】 ARUKA DRESS(アルカドレス)
女性の美しいありのままで、飾りたてない、 生きたままの美しさ
まるで天使のような美しさ
女性らしいドレスが豊富に揃っています
今まで着たことのないコーディネートを豊富に揃えています
こんなドレスでデートしてみたいなど夢をふくらませていただくと嬉しいです
シンプルすぎず、周りのみんなより一歩先に行った大人の女性コーディネート
モデルの女性からコーディネートも参考にできるので心強いです
ぜひ納得の一枚をお買い求めください。
首元を丸で囲み年齢層の幅広くオシャレできるエレガント
胸元を多少締め付けることによりウエストに注目させる効果
お腹をキレイに隠しウエストをすっきりアピール
縦に目立たない線を入れることにより体のラインをキレイに見せる
ウエストの上部に別カラー線でお腹すっきり効果
膝上にスカート丈を持ってくることにより足長アピール
ウエストに短いヒラヒラを入れてボンキュッボン
首周りとウエストに同色のラインを入れることにより統一感を生み出す
ベースはシンプルカラーだがエレガントな印象に
スレットを入れてお尻の窮屈さをなくす
首裏から開けられる解放さを備えている
さらに引き締め効果があるブラックカラー
ホワイトを首周りとウエストに持ってきて上品さをアピール
肩幅が突っ張らないちょうど計算された長さ
暗くシンミリ感を解消した色合い
縦線と横カラー線でウエストラインを引き締め効果
お尻ラインがきれいに見えるように縦線を強調
首周り、ウエスト、靴の3点をホワイトで一体感を醸し出す
ボエロなどを添えてセレブを印象付け
ウエストのヒラヒラに描かれたアーチ模様で深みを楽しむ
ウエストをキュッと引き締めたスレンダーライン
皆様も少しだけの心遣いですが、試してみてくださいね
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アルカドレス 新着ドレス(オススメ)
https://aruka.tokyo/products/paola
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usickyou · 2 years
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Sugar.Bride.Strawberry.
(作品内に嘔吐表現があります。ご注意ください)
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 私はそれが嫌いだった。  その味が嫌いだった。風味も奥行きもなくただ甘いだけ、味蕾に触れることを想像するだけで吐き気をもよおす。その香りが嫌いだった。質の悪い油の焦げた匂い、煤の塊と少しも変わりはしない。かじる、咀嚼する、嚥下する、口の周りに半固形の糖が付着する下品な姿。意匠の欠片もない無為なデザイン。何枚何十枚と布を重ねても指先に残り続ける執拗な汚れ。辟易する。唾棄すべき、豚の餌にも劣るもの。一生私に近付けたくない。こんなものを好き好んで食べる人間は、どこか頭がおかしいのだろう。いや。間違いなく、そいつらは気が振れている。  つまり、私も同じ。  こんなものを買うために列を成して、キーキーと甲高い声を上げる女共は餌をねだる豚に見える。それが自分と同じ類に属する生物だと思うと、この場で命を絶ちたくすらなる。私のでなく、ここに並んだ全員。それで少しは、この世の中もマシになる。もしかしたら、この心も晴れるかもしれない。  店内へ進む。臓腑を揺さぶる悪臭に耐えながら、注文するものは決めていた。ずっと前から、決まっていた。 「一番甘いものを」  聞き返した店員は、何を言っているのか理解できない、そんな顔をしている。言葉を理解することさえ難しいのか、しかし豚であればそれも仕方がない。 「世界で一番、甘いものを出しなさい」  怪訝そうな表情を飲み込んで、店員はディスプレイから商品を取り出す。どうやら、本当に私の気も振れているらしい。豚との意志疎通は成立し、手にした紙袋からはうんざりするほどの甘い香りが立ち昇る。店を出た時には、厚い雲の隙間から無遠慮な日が降っていた。約束の通り、雨は止んだ。空の流れを追う。腹立たしいことに、よく晴れた一日になりそうだった。  六月の太陽。祝福する声。ドレス、ドーナツ。あの子の好きなもの。私が嫌うもの。  こんな日に旅立つ、それほどの不運はない。  心から、思う。
 *
「……来てくれたんだあ!」その声は、あの頃と違う音色で私を迎え入れる。自制を知らなかった唇も、その姿に似合う立ち居振る舞いを覚えたようだった。「時子さん」 「法子。様を忘れてるわよ」 「嬉しいよ、時子様」 「光栄に思うことね」  お前は家族やスタッフ、そういった連中を控室から追い出して、私と向き合う。その表情、体つき、佇まい。そういうものも、随分と変わっていた。「ね、私きれいになったでしょ?」  お前は笑う。十年が経ち、子供が大人になろうと、笑い方だけはあの頃と同じだった。  私は笑う。嘲笑を、する。「いいえ。少しも変わらないわ」 「むー、絶対褒めてくれるって思ってたのにー」 「そういう言葉は、マシな衣装に替えてから言いなさい」ドレスには、お前の好きな淡いピンクの色。雨傘の形に広がる裾には、ドーナツの飾りが二つ、空気も読まずに貼り付いている。「十年前の方が、まだマシよ」 「ね、楽しかったよね」 「は? どこが」 「毎日、夢みたいだったよね」 「悪い夢ね」お前を置いて、私は続ける。「これを、あげるわ」  膨らませていた頬を途端に崩して、お前はまた笑う。それは反射なのだろう。思考の介在しない、全く人間からかけ離れた行為。「ドーナツだあ!」 「ありがたく受け取ることね」纏ったドレスと同じ、ピンク色。小麦や卵、ミルク、油、べっとりと指先を汚すストロベリーシュガーのコーティング。全てが質の悪いもの。お前の、大好きなもの。「残さず、食べなさい」 「うん、でもメイクしちゃったのになあ」 「何度でもさせればいいわ」 「あはは、そうだね。時子さんの命令だもん」 「様」 「じゃあ、いただきます」お前はそう言って、私が掴んだドーナツをそのまま口にする。一口かじり、咀嚼し、嚥下する。飲み込んで、もう一口。信じられないという表情で、お前はささやく。「嬉しいなあ。幸せだなあ。時子さんとドーナツが、お祝いしてくれるなんて」私の知らない、法子がそこにいる。 「……そのまま全部食べるつもり?」 「だめ?」 「受け取りなさい」 「メイクさんに、謝らなきゃ」 「私から言っておくわ」 「お手柔らかにね」 「ええ、よく言い聞かせておく」私は立ち上がる。紙袋を捨て軽くなった脚で、扉へ向かう。「じゃあね、法子」 「待って、時子さん」お前は、私を引き留める。その目は、不安気に私を見上げている。「見ていって……くれるよね?」 「本当に、物覚えの悪い子」私は答える。「手塩にかけた子豚の出荷よ。見送るのが、飼い主の義務でしょう」 「……よかったあ」お前は、少し目に涙を浮かべて、それでも笑っている。安堵と共にかじられたドーナツは、今、お前の口と同じ形をしている。「ね、歌ってくれるよね。式で、みんなに歌ってもらうんだ」 「何を歌わせるつもり?」 「ふふ、ないしょだよ」 「……いいわ、特別に許してあげる」 「すごい、私も張り切らなきゃ」 「じゃあね、法子」 「うん、またね」  扉に手をかけた、私をお前はもう一度だけ呼んだ。「時子さん。そのドレス、すごく綺麗だよ」  私も一度だけ振り返り、答える。「当然でしょう」  そうして扉を閉じると、私は来た道を辿った。披露宴会場へ続く階段を登ることなく、降りていく。振り返ることは一度もなく、後ろ髪を引かれる想いもなく、しかし不意に行く先を豚の集団が塞いだ。思慮も配慮もなく、揃いの黒い衣装を纏って階段を塞ぐ、愚にもつかない連中。畜舎の光景のようだと思う。  苛立ちに爪を噛む、それは私の癖だった。  私は忘れていた。気付いた瞬間には全てが手遅れで、指先に付着していたストロベリーシュガーのコーティングは口内から咽頭、鼻腔を伝わり、脳を攪拌する。振動は全身を、内側をかき乱し外側までを震わせて、私は豚の群れを掻き分けて階段を駆け下りる。歪んだ視界で表示を確かめて、人目をはばかることもできずに飛び込んだレストルーム。その個室の一番奥にひざまづいて、嘔吐をした。  胃が、食道が痙攣し、淡黄色の液体が便器の内側に吐き出される。立ち昇る酸の味、匂いが更なる嘔気を促し、際限なく続いていく。全てを吐き出しても、空えづきに涙や唾液を絞り出しても、終わらない。何も食べていないのに、嘔吐物の中には固形の物体が混じっている。それは、すり潰された内臓。そうでなければ、私を形づくる何か。きっと、大切なもの。  誰もが、それを持っている。私も法子も、豚でさえも変わりはしないと、私は知らなかった。いや、知っていたのかもしれない。しかし、信じることはできなかった。十年前の私はそう、きっと、今だって。  冷たい水が、全てを洗い流す。個室を後にして鏡の前、顔や首すじに飛び散った液体を拭き取った。ドレスについた染みは、ショールで覆い隠すより他なかった。そうしてから、指を洗い流す。丁寧に、丹念に、何度も何度も。二度と、触れてしまわないように。いっそ切り落としてしまおうかとも考えたが、刃物がないのでやめにした。  鏡には、やつれた頬や窪んだ目をした女が写っている。「さようなら」その女は、小さく口を開いた。「私のかわいい、ピンクの子豚」  そうして女は扉を開く。思い出したように振り返り、屑籠にハンカチを放り捨てた。  いつかその子から贈られたハンカチは、淡いピンクの色をしていた。
 *
 私を目覚めさせたのは、月の明かりだった。  私は、隣に眠るお前に気付く。決して起こしてしまわないよう、開きかけていたカーテンを閉じて、そっとベッドを抜け出した。  少し、肌寒い夜だった。不思議と目は冴えて、私はコーヒーをマグカップに注ぐ。丸い穴の空いたカップからコーヒーは全てこぼれ落ちて、私は舌打ちをする。お前の声が聞こえた気がして、しかしお前はベッドの中で安らかな寝息を立てていた。  みだれた毛布をかけなおして、その髪を撫でた。名前を呼んだ。眠る頬に、一度だけ唇で触れた。お前は決して、起きることはなかった。  静かにカーテンをくぐり、���ランダに踏み出す。寒いだろうと思っていた、風のない夜の空気は温かに体を包み込む。ひんやりと心地良い、手すりにもたれて空を見上げる。雲一つない空。星のまたたく夜。お前の好きなもの。私が嫌うもの。  夜空には、月が浮かんでいる。  穴の空いた、丸い月が浮かんでいる。
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junikki · 2 years
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Butterfly Sleeve Dress🦋
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よく見ると襖に描かれていそうな絵柄のすごく可愛い生地を使ってドレス縫いました。このでかい袖はbutterfly sleeveとかいうらしい。内側はノースリーブ状になっています。ノースリーブの上に羽織ものを肩掛けしてるようなデザイン。
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鶴みたいな鳥と、日本昔話に出てきそうな山の絵柄がかわいい。グリーン系のグラデーションになっててめちゃくちゃ好きな色合い。
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後ろ姿。ちなみにめちゃくちゃタイトです。一応サイズ3で作ったんだけどもアオザイのようにタイトです。めちゃくちゃ細く見えるるけども、ちょっと食べすぎるとお腹が目立つデザイン。二の腕は隠せていいんだけどもね。めちゃくちゃ痩せててお腹ぺたんこだと似合うデザインってかんじ。もっと痩せて少し余裕ある程度になるよう頑張りたい。
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型紙は洋裁本「BREAKING THE PATTERN」よりthe butterfly sleeve dressを使用。この型紙では丸首になってるけども、すっきりとしたVネックにしてみました。Vネックの方がネックレスつけたり雰囲気変えやすいかと。
この本の見本も素敵なんだけども、なんか真っ白なので聖歌隊のような雰囲気に見えてしまう。透け感も気になるし。
今回使った生地は薄手だけども柄や色合いのおかげで透け感はあまり気にならない感じです。見本のような無地も可愛いけども、柄物の方がゴージャスに仕上がるのでおすすめです。
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ari0921 · 3 years
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バイデンの対中政策に異変あり
 櫻井よしこ
米国の対中政策が変化している。「中国とは強い立場」から交渉すると 言ってきたバイデン米大統領が、必ずしもその強さを維持できていない。 日本にとっては切実な問題である。岸田新政権はこの米中関係の変化を見 てとり、全ての面で日本の地力を強める手立てを急がなければならない。
振り返れば、ブリンケン国務長官は上院での指名承認公聴会で、中国によ るウイグル人の扱いを「ジェノサイド」と認めた。その厳しい対中姿勢は 3月18日、アラスカにおける米中会談での楊潔?国務委員との烈しいやり とりにつながった。
ブリンケン氏の中国に対する姿勢の厳しさは、バイデン氏の対中姿勢と一 致しているはずだ。現にアラスカ会談のひと月前、2月10日に行われた米 中首脳電話会談でも、バイデン氏の強気は明らかだった。
米中首脳の初の電話会談は2時間も続いた。双方が発表した情報から、習 近平氏が「両国関係の改善」を熱望し、米中協力の必要性を訴えることに 時間を割いたことが見てとれる。
習氏が特に強調したのが米中対話の枠組み再構築だった。バイデン政権が 人権問題などで強く出てくることは織り込み済みだ。中国は状況が不利な 時は時間稼ぎをする。それがハイレベル対話の再開であろう。意思疎通の 機会を増やすことで、リスクを管理しやすい状況を作る思惑があったと考 えるべきだ。
一方、バイデン氏は、習氏の求める「対話」や「協力」とは距離を置く姿 勢をとり、中国が中国封じ込めの枠組みと見て強く反発している「自由で 開かれたインド太平洋」戦略の維持が政権の優先事項だと明言した。香 港、台湾に対する中国の圧政に関しても、米国の「根本的な懸念」を伝え ている。
中国側は米中関係について、「協力」や「対話」という言葉を両首脳の発 言として強調したが、米側は「関与」というより控え目な表現にとどまっ ており、中国の方が米中関係の維持に前のめりだった。
こうした中、4月14日、バイデン氏が重要演説をした。9月までにアフガニ スタンから撤退、軍事力を中東からアジアに移し、中国の脅威に対処する 方針を明確に語った。そのために、日本を含む同盟諸国の協力拡大を求めた。
2日後の16日に、バイデン氏は就任以来初めての対面首脳会談にわが国の 菅義偉首相(当時)を招いた。米国の要請に応える形で菅氏は、自衛隊を 強化し、日米同盟をさらなる高みに引き上げ、日米間の協力で抑止力を強 化すると語った。国土、文化など主権に関わることについては絶対に譲歩 しないとも語った。これらすべては中国を念頭にした発言で、日本政府は ルビコン河を渡ったと評価されたゆえんである。
だが、バイデン氏のアフガン撤退作戦はこれ以上ない程、拙劣だった。7 月2日、アフガン全土を監視できるバグラム空軍基地を捨てて、米軍は文 字どおり夜陰にまぎれて撤退した。タリバンは勢いづき、一気に全土制圧 に向かった。
負の効果
丁度この頃、米国務副長官のシャーマン氏が中国の天津を訪れ、王毅国務 委員兼外相と会談した。王毅氏は高圧的とも言える対応に終始し、中国側 はファーウェイ副会長、孟晩舟氏の釈放を含む対米要求事項の数々を長い リストにして渡した。
米軍のアフガン敗走は、明らかに米国の威信を傷つけ、その負の効果は中 国による米国への侮りとなって外交交渉に影を落としている。9月1日、 ジョン・ケリー大統領特使(気候変動問題担当)が天津を訪れた。相手は ベテランの解振華氏である。ケリー氏はCO2を削減しなければ地球が滅 びるとでも考えている���うな人物だ。米中関係には多くの懸案事項がある が、それらに関わりなく、「世界2大CO2排出国は純粋に協力しなければ ならないと、中国に懇願した」(9月2日、ウォール・ストリート・ジャー ナル紙)。
CO2のことなどほとんど気にしていないのが中国の本音であろう。彼ら にとってケリー氏のような環境問題が全てだと思い込んでいる人物はカモ である。CO2削減に協力するか否かで条件闘争ができるからだ。予想ど おり、中国側は気候変動問題のみを特別扱いにはできない、中米関係全体 の中で考える、と冷たく言い放った。このとき中国側は米国に提出済みの 「二つのリスト」に回答せよと求めたという。
二つのリストとは、1米国が必ずやめなければならない誤った言行のリス ト、2中国が重大な関心を持つ重点個別案件のリストである。
前者は、中国共産党員およびその家族のビザ制限、中国の指導者・政府高 官・政府部門への制裁、中国人留学生へのビザ制限、中国企業や孔子学院 への圧力などについてだ。先述の孟晩舟氏の引き渡し要求も入っている。 後者は、中国人留学生の訪米ビザ申請の拒絶などを解除すること等だ。
「貿易戦争で米国に勝利した」
国際社会で米国への信頼が揺らぐ中、9月9日、バイデン氏は習近平氏と2 度目の電話会談に臨んだ。中国側は「米国側の求めに応じて」会談したと 報じた。会談に応じてやったと言わんばかりだ。
WSJ紙によると、約90分の会談で、習氏はもっぱら米国批判に終始した が、2大国は共に働けるとの楽観的見通しも示した。同紙はバイデン氏は 特別の目的を定めて会談に臨んだわけではないが、中国からの輸入品に対 する懲罰的関税の削除を交渉してほしいと、米国経済界が圧力をかけてい ると報じた。バイデン氏の国内政治における立場は苦しく、氏は中国が要 求した二つのリストを丸呑みしたと、批判されている。
現に、孟晩舟氏は9月24日に解放された。ファーウェイは中国政府とは無 縁の民間企業だという主張だったが、孟氏は中国共産党のシンボルカラー である真っ赤なドレスで深?の空港に舞い降りた。テレビ局は帰国の模様 を生中継し、人民日報は「中国は貿易戦争で米国に勝利した」と狂喜の社 説を掲げた。
バイデン政権発足10か月目にして、米中関係は変わりつつある。10月4 日、米通商代表部のキャサリン・タイ代表が「米中貿易関係の新戦略」に 触れ、翌5日にはシンクタンクでの講演でこう語っている。
「米中の経済切り離し(ディカップリング)は非現実的だ。より建設的な リカップリングが必要だ」
8日、タイ氏は劉鶴副首相とリモートで話し、両者は、米中貿易はより強 化されるべきだと合意した。年内に米中首脳会談がリモートで行われるこ とも発表された。
米中の動きを時系列で辿れば、バイデン政権が徐々に後退しているのが明 らかだ。中国の無法やジェノサイドは許さない、という米国の気概が失わ れつつある。日本よ、岸田首相よ、しっかりしなければ国を守れないぞ。
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gallerynamba · 1 month
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◇LES COPAINS(レ コパン)◇ドレスが再入荷致しました。 定価:132,000円(税込)⇒SALE価格:92,400円(税込) 弊社通販サイト商品ページ⇒http://www.gallery-jpg.com/item/D30507-60S/ SHOW SAMPLE MADE IN ITALY 素材:レーヨン100% カラー:ブラック サイズ:40 着丈 約117cm、肩幅 約40cm、袖丈 約69cm、バスト 約76cm、ウエスト 約66cm、ヒップ 約80cm (平置きの状態で測っています。) ドライな質感のジャージー素材を使用したアシンメトリードレス。 身頃の片側、ウエストから腰に掛けてギャザーを寄せ、ドレープのあるイレギュラーヘムのスカートに。 袖口も同様にギャザーを寄せています。 シンプルなドレスですが、上質な素材を使用しているからこそ成立する美しさです。 ※ご覧頂いている媒体により、色の見え方が多少変わる場合がございます。 ※店頭でも同商品を販売しておりますので、通販サイトの在庫反映が遅れる場合があり商品をご用意出来ない場合がございます。予めご了承頂きますようお願い致します。 Gallery なんばCITY本館1F店 〒542-0076 大阪府大阪市中央区難波5-1-60なんばCITY本館1F 【営業時間】11:00~21:00 【休館日】3月無休 【PHONE】06-6644-2526 【e-mail】[email protected]
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kokoro-m · 4 years
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F 7/23
記憶を、2019に戻す。 Somewhere in Paris.
寺院の中は人で溢れていて、高い天井に続く壁に備えられたステンドガラスの窓から色とりどりの光が差し込んでいて、誰しもがその写真を撮っていました。色合いがビビットで力強く、描かれている人物も流し目していたり、どこか虚ろな目をしていて少し毒々しさを感じて、それがまた寺院内の神秘さを物語っていました。ひんやりとした空気の中、出入り口の大きな扉とガラスの光、飾られて置かれている多くのキャンドルだけの灯りで、物音を立ててはいけない中、響く大勢の足音と、子供の囁き声、誰かが息を呑み、集中して装飾を見る姿、私は今本当にここにいるんだ、と感動してしまった。
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外に出たら途端の灼熱地獄。
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モンマルトルは心なしか木が多くて、木陰を作ってくれる。石畳の丘を暫く歩いておみやげ屋さんを覗いたり堪能した後、2区やら9区の方を歩こうかなくらいにしか考えてなかったので、取り敢えず駅まで戻り、メトロに乗って戻ります。
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確かオペラ駅で降りたのか...多分そう。適当に歩いていたら、行きたいなあと思っていたPrintempsが目の前に現れてびっくり!行こうと思ったらその前にSephoraを見つけてもっとびっくり!!Sephoraのにわかファンなのですぐに駆け込んで欲しかった香水、リップやら、お土産のちょこまかしたもの、激安丸っこネイルを購入。レジに行って最初適当にフランス語で挨拶してウィウィ答えてたら、ネイルポリッシュ指さされて超絶早口フレンチ攻撃受けて、ごめんなさい英語で説明してもらえないかと言ったところ、フランス語が喋れないのかとまた怒涛の早口で怒られ、待ってなんか悪いことした?と心の中で喧嘩しました。結局、一個買ったらもう二個付いてくるからそれを選んで来いと言われてただけなんですけれど、何でそれ優しく言ってくれないの、てかめちゃめちゃお得なのに何で怒る!!最後は大きな声でThank you!!です。この人相手にMerciはもう言えなかった。喋れるやんけ!!って言われそう。ちゃうねんそういうことちゃうやん。
お姉さんとのタイマンで疲れたまま、Printempsの中にある食の楽園、Printemps du goutまでエスカレーターで猛直行。
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ここには全ての食に関わるものがあって、お土産選びにも最適です。何でもあります。おフランスのものなんでもある。何か岩塩とか買おうとした。美味しそうなワインを母に買って行きたかった当時19歳の私、残念でした。本当は、こ��のエッフェル塔が見えるデリカテッセンのテラスでひといき優雅な時間をと思っていたのですが、何だかバテていてデリを食べる気にならず、また今度。上の階はちょっとしたレストラン街になっていて、オープンスペースにハイセンスな家具と料理が楽しめる空間が広がる。今日の昼食は軽くここで、なんて出来る。スウィーツを食べている家族連れが賑やかでした。一人でも座れるようなソファー席もあって、住んでいたら最高だなとよだれを耐える。
デパートを出て、またも適当に歩いていると大きな建物に人集りが。何だろうと思って門を入ったら、Plais Garnier、オペラ座でした。地図見ろや自分!本物のオペラ座やぞ!?と途端に動揺、こ、これが、オペラ座...
団体のお客さんもいたのか入り口に結構人がいて、入ろうか迷ったのですが折角辿り着いたのだからと並ぶ、チケットもすんなり買えて、すぐに入場出来ました。入った瞬間、ネオンのライトに照らされた空間を抜けて鏡に映る自分を見ながら階段を上がって進むと、美女と野獣みたいな、夢見る豪勢な大階段が待ち受けていました。沢山のライトが装飾に跳ね返ってあまりに輝いていて、慌てて携帯やカメラで撮ろうとすると、下手な私の撮り方ではその輝きを切り取れないほどでした。迷ってしまいそうなくらい、階段からあらゆる廊下に出れて、思いの向くままに進むと、まさにオペラ座の劇場に出る。頭上を見上げると、巨大なシャンデリアを囲む5色ほどの天井画。その下に客席が広がっていて、横を見ればボックス席が。よく動画や映画で見ていた景色がそのまま今自分の視界に写っている、これまた最高の気分でした。オペラ座の恐ろしいところは、館内全てが素晴らしい。こんなに素晴らしいとは、思いも寄らなかった、反省しています。
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大量の蝋燭が浮かび上がり、全ての壁画を照らす廊下、Grand Foyer。
ベルサイユ宮殿か?と錯覚するほどの煌びやかさが、この厳格なオペラ座の中に。あまりの美しさに、独り言が止まりませんでした。首が痛くなるほど上を見上げました。廊下の真ん中を一人でゆっくりと進む。チュールのドレスにヒールを履いたりして、この廊下にコツコツを音を鳴らし風を起こしながら歩いてみたかったな、と小さな妄想が膨らみました。展示品が飾られている部屋や、小さな図書館(これまたハリーポッターのような空間)、あらゆる場所に繋がっていました。
オペラ座内で催されていた美術展に足を運ぶと、過去のオペラを永遠流しているシアタールームがあり、コンテンポラリーダンスや劇、いろんな映像に夢中になって観入ってしまった。お尻痛い、お腹空いた!となって初めて立つ気が起きるほどに、あまりに魅力的な映像ばかりでした。最高の没入体験。
感動の溜息をもらしながら、そのままスターバックス オペラ座へ。店内も宮殿さながらで、ソファーで足を組みながらコーヒーをがぶ飲み。
お店を出ると近くにZARAを発見。そのまま周辺のお洋服屋さんをまわりつつ、この日の夕飯にと考えていたFTG(9 rue du Nil, 75002)へ直進、歩いて向かいました。
営業時間間違えてました閉まってました大号泣でした!!!!
ここのローストビーフサンドとチキンが極上だってTwitterで見て、絶対に食べてやると意気込んでいたのに痛恨のミスでした。店内締め作業の真っ最中。途方に暮れる。隣のお店がどうやらいい感じのレストランで、店への入り口が隠し扉系のお洒落感満載だったのですが落ち込みすぎて入る気もなく、近くのマックまでトボトボ歩き、Mサイズコーラをまたもがぶ飲み。日は落ちないものの、時間は夕飯時。どうしようかと考えるも、気分を上げようとショッピングへプラン変更。次の日に行くつもりだった &other stories とCOSへ行くことに。大好きで大好きなお店。幸い歩きですぐだったので早歩きで向かい、まずはCOS、いつでも洗練された洋服と空間、無駄のない品質とデザイン、、ニヤニヤして店内を見るも、ここでは何も買わず、近くの&otherへ。ここでは爆買い。スコットランドラインのセールをしていて大興奮。とにかくサイズが合うものと、気に入った色のものは手に持って試着室へ。パリらしく、エッフェル塔がポイントで胸に刺繍されたTシャツも買ってみた。そして&otherと言えばのメイクライン。お土産に数個購入。アクセサリーもセールしていて、友達に貝殻のシルバーピアス、自分へはBeeのリングを購入。自分の掲げたいシンボルは蜂にしているので、モチーフのものがあればすぐ買ってしまう。幸せ、平和のシンボル。リアリティのある絵が好きです。フローレンス・ピューさんが手首にbeeのタトゥーを入れていて羨望。タトゥーは立派なスキンアクセサリーです。
お洋服やらを買ってしまい、荷物を持ちながらゼーハー駅まで歩く。もう今日は軽い夕飯でいいや、駅までの道で何かテイクアウトしようかな、と思って通りを眺めるも、時間はすでに20時、街の皆さんの夕飯の時間、テラス席にも溢れんばかりの人・人・人。そんなお店の中にゼーハー突入してテイクアウトする勇気が薄れていき、キッシュとかないかなーと探すも虚しく。結局駅近くのモノプリでサンドウィッチとスモークサーモンポテトサラダを買い、ホテルで夕陽を見ながら食しました。
さっさとシャワーに入り、NetflixでOITNBを見直しながら、お洒落なガラスのボトルに入った備え付けのお水を飲み、22時過ぎには夢の中。
次の日も沢山稼働するのです。
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skf14 · 4 years
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06090046
あるところに、それはそれは醜い姫がおりました。顔には幾つもの爛れた火傷の痕があり、目や耳は聞こえていましたが、人間が一目見ればバケモノ!と声を上げ逃げてしまいそうな、そんな顔でした。醜い姫は国の外れ、森の中で、真っ黒な面を被った魔術師の男と二人、暮らしていました。
姫は、街に住むことは出来ません。危ない場所だから行けない、と男に言われ、姫は素直に森の中、何もない狭い小屋で、野生の動物や花と戯れながら、日々を過ごしていました。
姫と男が住む国は、気弱な王と、それはそれは美しい王女が納めている国でした。元は普通の国だったその場所は、王女によって段々と変わっていきました。
彼女は王に成り代わって国の仕組みを変え、美しさこそが全てである、という法律をもとに、国を作り替えました。
美しの国、と呼ばれたその国は、6歳になった日、見た目の美しさで、社会的な地位が決められます。
その地位は、一生変わりません。見た目がとても美しくなって、上にのぼっていく人も稀にいましたが、皆、醜いものは醜いものに与えられた貧民街で泥水を必死に啜り、美しいものは美しい場所で美しい景色を見ながら、贅沢な暮らしをする、世界が光と影に真っ二つ。そんな国でした。
「相変わらず、あの国は醜いな。」
「あら、新聞を読んでいるの?」
「あぁ。天気が知りたくてね。もうじき雨季が来る。今日は林檎を見に行こうか。」
「やったぁ!行く行く!」
姫には、幼い頃の記憶がありませんでした。自分が誰から産まれ、なぜこんな顔になり、この一見不気味な男と暮らしているのか、全く分かりません。男に聞いても、「森で拾った。」としか言われなかった姫は、時々男が持って帰ってくる新聞や本、そしてさまざまな森の植物、動物を見ながら、色んな知識を付けました。
魔術師の男も、姫の前で面白い実験をしてみたり、野生動物を捕まえて捌いてみたり、常に好奇心を満たしてやろうと楽しいものをたくさん見せました。
姫は、側から見た自分の顔がとても醜く、国では酷い目に遭うことを知っていました。美しいものこそ全て、という価値観に染まりきった国の人間とは違い、姫の顔を気にせず、ただ何事もないように過ごしてくれる男は、姫にとって、かけがえのない人でした。
男は、姫と出会ってから一度も、仮面を外したことがありません。真っ黒なカラスのような嘴のついた仮面を被り、眼の部分も暗くてよく見えません。
でも、姫は、例え、その仮面の下を一度も見たことがなくても、男のことが大好きでした。
「魔術なんてものはね、本当は無いんだよ。全部、科学で説明ができるんだ。」
「科学?」
「そう。皆は知らないが、病気だとか、飢饉なんかも全て、科学で解決するんだよ。」
「それって素敵!よく分からない迷信とか、思い込みに縛られているなんて、馬鹿みたいよ。」
「君は賢いな。さ、早く眠ろう。明日は16歳の誕生日だろう?収穫をして、君の大好物を作ってあげよう。」
「本当!?楽しみ、早く寝なくっちゃ!」
その日の夜、男は、小屋の外の気配に気付いてゆっくりと起き上がりました。隣のベッドでは、気持ちよさそうに寝息を立てる姫がいます。
男がナイフを手に玄関を開け、人影目掛けてナイフを突きつけると、そこには、ガタイのいい男が一人立っていました。
「なんだ、アンタか。」
「物騒なお出迎えだな。久しぶり。」
「姫はもう寝てる。外で話そう。」
仮面を外した男が、訪ねてきた男からタバコを貰い、肺に深く煙を吸い込んで口からぼわり、と吐き出しました。夜の闇に、薄ら白い煙が燻り、溶けていきます。
「誕生日だから、様子を見に来たのか。」
「あぁ。あれから10年経ったんだな。」
「立派に育ったよ。昔から変わらず、綺麗な人だ。」
「...そう、だな。」
「用はそれだけか?」
「いや、これを、姫に。と思って。」
「...生花のブローチか。は、クリスマスローズを選ぶなんて、趣味が悪い。」
「そう責めないでくれ。俺はあの日からずっと、姫を忘れず想って生きてきたんだ。」
「まあ、そのおかげで今ここに姫がいるんだ。責めやしないよ。」
「じゃあ、俺はもう城に戻るよ。夜明け前には戻っておかないと。」
「待て、これ持ってけ。」
「...変わらないな、お前も。ありがとう。帰りがてら食べるよ。」
ガタイのいい男は、渡された包みを懐に入れ、後ろ手で手を振りながら夜の闇の中へ消えていきました。仮面の男は仮面とブローチを抱えたまま、満天の星が浮かぶ空をぼーっと眺めていました。星の光が瞬いて、時折地面へ落ちてきて、木に実った沢山の果実を照らしました。
姫は、美味しそうなパンの焼ける匂いで目が覚めました。溶けたバターと、蜂蜜とミルクの匂い。飛び起きてキッチンに行けば、エプロン姿の仮面の男が姫を抱きとめ、「おはよう。」と言いました。
「おはよう。今日の天気は?」
「快晴さ。魔法の力でね。」
「ふふ、昨日は夕焼けが綺麗だった。だから晴れたんでしょ?」
「バレてたか。さぁ、ペテン師特製の朝食ですよ。席について。」
「はぁい。」
「「いただきます。」」
姫は手に持ったカゴへ、もぎ取った林檎を一つ入れました。もう5個、6個ほど入ったそのカゴはずしりと重たく、姫の目にキラキラと輝く群青が写ります。
「今年も綺麗に実ったね!」
「あぁ、10年目ともなると安定するね。出来がいい。」
「はぁ、早くおじさんのアレが食べたいわ。」
「支度はしてあるよ。林檎を小屋へ運んでくれるかな。」
「はぁい!」
普通の林檎は火よりも濃くて、血のように赤いものだと、食べたことがなくとも本で読んで姫は知っていました。ただ、男の育てる林檎はどれも群青色。一眼見ただけではくさっている、と思わなくもない毒々しい色をしていました。でも、勿論毒などありません。姫は毎年、この林檎を、男の一番得意な料理で食べているからです。
「出来るまで眠っているかい?」
「ううん、見てたいの。だって今日は、私の誕生日だもの。」
「分かったよ。」
しゃく、しゃりと大きめの角切りに切られた林檎。瑞々しいそれよりも、姫はたっぷりの砂糖で煮込まれて、飴色になった林檎の方がずっと美味しそうに見えるのです。そう、姫は男の作るアップルパイが、世界で一番好きでした。
「さ、あとは焼けるのを待つだけ。」
「この待っている時間、狂おしいほど愛おしいわ。」
「こちらへおいで。」
「...なぁに?」
彼らの住む国では、16歳の誕生日は特別なものとして扱われていました。社会的地位が決められてから10年。顔の美しい者たちがそれはそれは盛大に祝う誕生日として、どこかの祭りのように盛大に騒ぐのです。
男は、クローゼットの奥から、大きな箱を取り出しました。姫の目は期待にキラキラと輝いています。埃の被っていないその箱を開け、姫は、嬉しさのあまり悲鳴を上げました。
箱の中にあったのは、純白のウェディングドレスでした。姫が物語の中で何度も見た、幸せなお姫様が王子と結ばれて、そして祝福の中で着るドレス。シンプルで模様も飾りも何もない、上品なデザインでした。
つやつやした生地を恐る恐る触って、手のひら全体で触れて、頬擦りしてみました。気持ちが良いその絹に顔を埋めて、そして、仮面の男を見上げました。姫の目には涙が揺蕩って、今にも溢れそうに膨らんでいます。
「どうした?」
「私、こんな綺麗な服、着ていいのかな。」
「君に着て欲しくて、君のために作ったんだ。」
「でも、私、」
「出会った頃からずっと、君は美しい。生まれてきてくれたことを、祝福したいんだ。それに、私は魔法使いだよ。いくらでも夢を見させてあげられる。騙されたと思って、着てくれないかな。」
「っ、分かった、大好きよ、おじさん。」
男はカメラを取り出して、中にフィルムを入れました。庭に置いた白いテーブルとチェアー。そして、姫の大好きなハーブティーにアップルパイ。外で待つ男の前に、着替えた姫が現れました。
純白のドレスに身を包んだ姫は、男が思わず見惚れてしまうくらい、それはそれは美しい姿をしていました。男は嬉しそうな声色で姫へ色々指示をし、座らせてみたりしゃがませてみたり、色々なポーズで写真を撮りました。
姫は写真が嫌いでした。でも、今日くらいは、綺麗な服を着た姿くらいは、せめて首から下だけでも、思い出として撮っておきたい、そう思って、涙を拭いながらカメラに向かって笑い続けました。
お腹いっぱいアップルパイを食べた姫は、日が沈む頃にはすっかり眠りに落ちてしまいました。キッチンの机の上には、現像された写真たちが何枚も散らばっています。その写真に写る姫の顔には、爛れた痕も、傷も何もなく、まるで白雪のような肌に、真っ黒で艶めかしい黒髪、熟れた正しい林檎のように赤く色づいた小さな唇、まさしく姫と呼ぶにふさわしい可愛らしい娘が写っていました。
「10年も掛かったよ、ごめん。」
そしてその夜、森に火が放たれました。男は姫を抱え、森の奥、人知れず作っていた岩の洞窟に逃げました。真っ赤な炎が青い林檎の木を包んで、飲み込んでいきます。
姫は震える唇を噛み締めて、その光景をただ見ていました。
「私が、醜いから、森を焼かれたの?」
「違うよ。君は悪くない。」
「おじさんの林檎の木、沢山リンゴが実ってたのに、燃えてしまう。」
「大丈夫だよ。落ち着こう。ゆっくり3数えてごらん。」
「......さん、にぃ、いち、」
��を数え、男のかけた術によって眠った姫を、男はそっと洞窟の奥へと寝かせました。被っていた仮面を外し、彼女へと被せ、洞窟へも術をかけた男は燃え盛る木々を見ては笑い、火のついた木を四方に投げ、むしろ森に広がる火を手助けしました。
「燃えろ燃えろ。これでいい。はは、ははは!」
森は延々と燃え、舞い上がった青銀の灰が風に乗せられ舞い上がって、街の方へと流れていきました。
王女は爪を噛みながら、城の中で怒鳴り散らしていました。10年前に殺したはずの姫が、生きていると鏡に知らされたからでした。
王女はその日も日課を済ませるべく、鏡の間で鏡に話しかけていました。
「鏡よ鏡、この世で一番美しいのは?」
『......おぉ、なんということ、この世で一番美しいのは、貴方の娘、白雪姫です。』
「何言ってるのよ、あの子は10年前に死んだわ。」
『いえ、生きています。街の外れ、森の中で自由に暮らしています。』
「なぜ10年もわからなかったの!?」
『強い魔力を感じます。』
「まぁいい、ちょっと!」
そばにいた側近の、ガタイのいい家来を呼びつけた王女は、冷酷な顔で一言、言いました。
「夜の間に火を放ちなさい。」
「お、王女様...しかし、あの森は...」
「焼け野原になれば、醜い者たちに土地を与えて畑にでもすればいい。早く火を。燃やし尽くして更地にして、殺すのよ。」
「......仰せのままに、王女様。」
城に突然の来訪者があったのは、火をつけた次の日の朝でした。王女は、呼んでも誰の姿も見えない城の中を、カツカツと苛立った足音を鳴らしながら歩いていました。
そして自室に戻った王女の前に、全身が黒い男が現れたのです。
「おはようございます、王女様。」
王女は固まりました。その男の、口の端の裂けたような傷痕と、色の違う左右の瞳、そしてその卑しい笑顔、神聖な城になど絶対入れるはずもないアシンメトリーな醜い顔には、嫌と言うほど見覚えがあったからです。
「あぁ、やっぱ覚えてた?そりゃそうか、自分の子供殺させた相手忘れるほどバカじゃねえな、さすがに。」
「何をしにきた。」
「お礼を。」
王女のベッドへ勝手に腰掛け、タバコへ火をつけて吸い出す男。困惑したままの王女を見て、心底楽しそうな笑顔を浮かべた男が、謎解きを始める。
「まずは10年前のお礼。娘の美しさに嫉妬したアンタの目の前で娘の顔に薬品ぶっかけて、その後一旦解放した俺を襲って、死体奪って、こんなご褒美までくれて、どうもありがとう。」
にこにこと上機嫌に笑いながら、男は昔を思い出していました。
鏡によって娘の美しさを知らしめられた王女は、6歳になる頃、呪術師の男に顔が醜くなる呪いをかけさせ、そして失望のあまり娘が自ら命を絶った、と、そういうストーリーを作り上げていたのでした。
勿論手を下した男も、二度と街を歩けないよう顔を傷つけて、トドメを刺させたつもりでした。
「10年前、アンタが娘の死体だと思ったあれは、俺が術をかけた豚の死体だよ。」
「な、そんな...確かに、鏡は死んだと、」
「何のために俺みたいな呪術師がいると思う?アンタみたいな醜い人間の心を騙して、呪うためだよ。ははは。」
高笑いが止まらない男は、ゆっくり瞬きしながら王女に近付き、煙を吐きかける。
「なぁ、王女さんよ。引き連れてるお供はどうした?」
「!!!��さか、それも、お前が...?」
「くく、ははは、あはははは。お前ならあの森を焼くって、分かってたからなぁ。俺は。」
王女は慌てて自室の窓に駆け寄り、バルコニーに出て外を見下ろしました。城の外、普段は美しい者たちが仲睦まじく集っている広場が、夥しい数の倒れ込む人々で埋まっています。
「10年間ずっと呪い続けたんだ。人も、土地も、何もかも、終わり。もうこの国は死んだ。」
「嘘だ、そんなはずは...貴様!」
「足掻くなって。もう、あとアンタが死ぬだけだから。」
男が人差し指を王女に向け、そして、オッドアイを見開き、何か言葉を呟きました。ニヤリ、と歪められた口角が釣り上がり、耳まで繋がった痕が引き攣れました。
ふわり、と浮いた王女が恐怖を顔に浮かべ、そして、男の指の動きと一緒に左右に揺らされ絶叫が城に響きます。
「さようなら。世界で一番醜い、王女様。」
下を向いた人差し指に操られるまま、王女は地面に顔から落ちていきました。男がバルコニーから下を覗けば、恨みがましい顔で見上げている王女がいます。楽しくてしょうがない男は、王女目掛けてバルコニーに置かれていた鉢植えを全て落とし、そしてスッキリした面持ちで城を後にしました。
男の育てていた青い林檎は、呪いの林檎でした。摂取しても、灰を吸い込んでも、育った大地さえ猛毒になる恐ろしいものを、男は森いっぱいに広がるまで育てていたのです。
ただ、男と、そして姫だけは、守りの呪いをかけたアップルパイを食べ続けていたので、この世界でも無事に生きられる。そんな理不尽すら、男は厭わないほど、この国を、人を嫌い、呪っていたのです。
死体の転がる小綺麗な広場を、男が楽しそうにスキップしながらかけていきます。転がる死体の中には、かつて姫と男が逃げるのを手助けした、あのガタイのいい男の姿もありました。
洞窟で丸二日眠っていた姫が目覚めた時、目の前には本の中でしか見たことのない海が広がっていました。今までは緑に囲まれていた姫は、また違う世界の自由を手に入れたのです。
そばに座って姫を見ていた仮面の男は、いつもと変わらない「おはよう。」を姫へと伝え、そのつるりとした頬をなぞりました。
いつもと違う感触に姫が目を見開き、己の顔に触れ、あふれる涙とともに男に抱きつくまで、あと3秒。
めでたし、めでたし。
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774 · 5 years
Quote
最高のドレスコードが求められる先日の儀式のような場こそ、私が常に仕事をしているシーンであり、こうした機会がただのバッシングで終わるのではなく、日本のファッション文化が成長する機会になればと思い、考えをまとめてみることにしました。 「即位礼正殿の儀」のときのドレスは、色はオフホワイト、丈は膝丈で、袖がベルスリーブと言われるとても個性的なデザインのものでした。以前にも着られたもことがあり新調されたものではなかったようです。 内閣総理大臣決定として発表された「即位礼正殿の儀の細目について」では、「ロングドレス、デイドレス、白襟紋付きまたはこれらに相当するもの」と決められていたそうで、おそらく多くの方が知りたいのは、あのファッションはドレスコードとしてマナー違反ではなかったか、ということではないかと思います。 私の答えとしては、「ドレスコードとして間違いではないとしてもファーストレディの装いとして相応しくはなかった」とさせていただきます。 もしもあのスタイリングが私の仕事だとしたら完全にNG、絶対にしない選択です。 デイドレスは良いとされていたとして、ドレス自体が完全なマナー違反ではなかったとしても、最前列に座ることや、万歳三唱をする儀式の流れは承知だったはず。お膝が丸出しになってしまうシーンが多くの人の目につく状況は予測できたはずです。 今回のような格式の高い儀式に、オーダーメイドの膝丈のドレスを選びそれがどのような結果を招くか、疑問に思わなかった姿勢に、首相夫人のお支度として配慮に欠けたと思うのです。
「即位礼正殿の儀」のドレスコード
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hitodenashi · 5 years
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27/肚の内
(はるゆき)(のような何か)
(※CoCシナリオ「ストックホルムに愛を唄え」のネタバレがあります)
(一般的に不快を催すであろうような感じの描写があるかもしれない)
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 幼い頃から疑問だったのだ。
 どうして野獣が得なければならなかったのは、人間からの真実の愛だったのかと。
  初夏。午後の教室には、青葉の匂いが満ちている。気の早いあぶらぜみが、もう中庭で鳴き始めていた。遅い梅雨がようやく明けた六月の空は夜のように青い。再来週に期末テストが近づいていることも吹き飛んでしまうほど、一般的に良い空模様をしていた。  エアコンが稼働しているのに、教室はじんわりと暑かった。手扇でぱたぱたと首元を仰いでも、汗はなかなか引いてくれない。  五限開始のチャイムまで、あと一分三十秒。窓際の席の人たちは、あついあついと口々に言いながら、友達の席を囲んで談笑している。廊下側の席は直射日光が届かず、エアコンの冷風も程よく流れてくるので、ちょっとは居心地がよいけれど、教師たちはやれ空気が悪くなるだの、エアコンの使い過ぎは体に毒だので設定温度を高くしているし、常に教室の窓はどこかしらが換気のために開いているので、さほど教室が快適だとは言い難い。  廊下側でこうなのだから、窓側の席はもう少し不快なことだろう。外から吹き込んでくる生ぬるい風は、すでに気の早い夏の色をしている。  パンティングのような呼吸を一瞬だけして、すぐ咽頭の渇きを覚え、口を閉じた。そして、誰にもばれないようにそっと窓際の席に目を向ける。生成色のカーテンに隠れて、銀色の髪が陽に透けているのが見えた。静かに窓の外を見ている。夏服の白い襟に、首筋を伝った汗がすっと沁みて消えた。  本鈴のチャイムが鳴って先生が入ってくると、皆慌てて席に着いた。初老の国語教師のつまらない口上と、前回授業の振り返りを聞く。指定されたページは言われる前からもう開いている。中国のどこかで撮影されたらしい竹林の写真は、鬱蒼としてひどく涼しげだった。  ぼんやりと指先でシャープペンを回していると、頭上に微かな視線を感じていやな気持ちになった。 「じゃあ二十六ページ、始めから、二十八ページ八行目まで。誰か読んでくれる奴ー」  挙手を促しても、誰が進んで読みたがることなんかないだろうに、必ずこの教師はそうやって聞く。誰も彼も指名されたくなくて、いっそう息を潜めてしまうのが、少し面白かった。現文の時間って、挙手したらテスト悪くても内申上がるのかな。なんて、皆が嘲笑混じりに言っていることを彼が知っているかどうかはわからなかった。  再度、視線を感じる。薄らと、今度は四方から。  反応は返さず、藪の中で息を潜めるように呼吸を小さくする。教師は頭を掻きながら「誰もいないのかあ」なんて決まりきった言葉を吐く。いつもそう。自主性の無い奴は成績が上がらないぞ。それに続いて出る言葉を、私は良く知っている。 「じゃあ、鏡。十八ページから」  いつもの名指し。決まりきったこと。周囲のやっぱり、そうなるよね。という、安堵の呼気を聞いた。「はい」短く返事をする。みんなそんなに読みたくないのだろうか。別に、朗読しろって訳でもないのに、難しい漢字や、句読点の息継ぎがそんなに恥ずかしいものだろうか。  席に腰を下ろしたまま、段落の頭を指でなぞった。唇を舐める。唾液がねばついていた。暑さからだろうか。水が欲しい、生ぬるくてもいいから。 「“なぜこんな運命になったかわからぬと先刻は言ったが、しかし考えようによれば、思い当たることが全然ないでもない。”」  グラウンドから、体操の掛け声がこだましている。見て面白い光景でもないだろう。犬の吐息のように生ぬるい風が、開いた窓から吹き込んでいる。微かに汗ばんだ首筋に、髪が張り付いて鬱陶しかった。横髪を耳に掛ける。  そもそも、どうして髪を伸ばし始めたのだっけ。  ふと思い返したことだが、私は今まで、美容室へ行ったことがない。髪はいつも、母が大事に切ってくれるので、外で誰かに切ってもらうという習慣がなかった。  幼稚園のころ、お遊戯会で赤ずきんちゃんをやったことを覚えている。  私は赤ずきんちゃんをやりたかったのに、生まれの早い私は他の子と比べて背が高く、赤ずきんちゃんは似合わないという理由で、悪いオオカミの役になってしまった。���時の私はそれはそれは落胆して、��習の度に落ち込んでいたのだが、本番の舞台の時、母親が主役の子よりも綺麗に見えるようにと張り切って髪を整えてくれたので、不機嫌にならず演じ切れたことを覚えている。  髪を大きく切ったのは、恐らくその記憶が最後だ。  それ以来、なんで髪を切っていないんだったか。母親がそもそも、女の子は髪が長いほうが良いと夢見るように言っていたからだったような気もする。けれど、多分決定的なものは違う。  そうだ。確か、綺麗だねって、一言褒められたから、伸ばしていたのだ。  多分、そんなありきたりで下らない理由だ。  恐らく、言った本人は、きっともうそんなこと忘れている。それくらい、下らない一言だった筈だ。 「……“人間はだれでも猛獣使いであり、その猛獣にあたるのが各人の性情だという。おれの場合、この尊大な羞恥心が猛獣だった。”」  一つだけ、色合いの違う視線を感じた。窓側、私の左後方から。 「“虎だったのだ。”」  それが誰のものであるか、理解はした。それでも私の目線は、教科書体の黒いインキの上を見ている。俯いた頬に横髪が再び零れてきて、私は句読点の間に小さく唸り声を上げた。  がり。内側で、何かが私を引っ掻いた。  生成りのカーテンが風を孕んでゆったりと膨らむ。囁くような衣擦れ。まるで、下草がざわめくような。私の視界にはない青葉が、窓の向こうに揺れている。 「“ちょうど、人間だったころ、おれの傷つきやすい内心をだれも理解してくれなかったように。おれの毛皮のぬれたのは、夜露のためばかりではない。”」  俯いたまま文字を追う。横髪は、また音もなく滴り落ちてくる。  私は未だ、髪を伸ばし続けている。窓の外に垂らすことのできる日なんて、来るはずもないのに。  私は初めから、窓辺になんていない。
 じわじわじわじわ。
 籠もったような、あぶらぜみの声が耳について離れない。  微かなアンモニアの匂い。薄暗い女子トイレの個室の壁を爪で引っ掻くと、骨を齧ったような乾いた音がした。  放課後の校舎は、どこもかしこもじっとりと暑い。さっきまで涼しい図書室にいたのに、廊下を数歩歩いただけで、もうぶわりと汗が噴き出している。肌に薄い夏服がくっついている。怠い下腹部を抱えて、溜め息を吐いた。 「最悪……」  淀んだ、濃い血液の匂いが鼻についた。  道理で日中、思考がぐらぐらすると思ったのだ。経血にぬるついた下着を下げるだけで不快感が強くて、思わず眉を顰める。不運にも替えの下着を持ってきていないので、血の着いたクロッチ部分をふき取るだけに留める。咥えたサニタリーポーチから、ナプキンを取り出す。  月経血の生臭さは、腐敗した肉の生臭さによく似ていると思った。スカートの裾を引っ張って、後ろに血が滲んでいないことを確認して、一先ず胸をなでおろす。  暑さが纏わりついてくる。途端に全身が重く感じる。 「……帰ろう……」  図書当番を早引けするのは申し訳ないが、幸い今日当番にいるのは後輩の女の子たちばかりだったので、素直に話せば事情は汲んで貰えた。さっさと荷物を抱えて図書室を後にし、下駄箱のたたきにローファーを放り投げる。  気の早い午後の日差しは痛いほど強い。日光を避けて、軒をずるずると這うように歩いていると、ふと、剣道場から人の声がするのを聞いてしまった。  足が止まる。日影から足先が出る。  私の足が勝手に剣道場へ向かっていた。
 剣道場自体に足を運ぶことは、ほとんどない。体育の授業でも、部活棟の辺りは使わないからだ。  グラウンドの隅にある剣道場周辺にはとくに樹が少なくて、日影がない。立ち寄る生徒は運動部の子たちくらいだった。剥き出しの皮膚が、じりじりと焼かれて痛んだ。  道場の外壁には高窓しかついておらず、見上げて聳えるそれはまるで刑務所の壁のように見えた。果たして内側と、こちら側のどちらが閉じ込められているのか、私には判別ができなかった。  通用口と、グラウンド側に繋がる大きな出入口は空いているが、そこから中を覗くことは、とてもじゃないけれど私にはできない。  木目に擬態した道場の外壁に手を当てると、壁は日差しに焼かれて鉄板のように熱かった。内側からは、剣道部特有の咆哮が響いている。  私はたくさんの遠吠えの中から、彼の波形を探した。汗の匂い。くぐもった反響。壁の振動。声はすぐに見つかった。北西側、反対側の壁際、多分三列目。  沢山の気配の中に、彼が混ざっていた。  彼ではない気配の中に、紛れるように、しかし違和を残しながら、そこに溶けていた。水に落とされた、油みたいに。
 不意に、私はどうしたらいいかわからなくなってしまって、その場にただ立ち竦んだ。  人がいるのだ。この中には人がいる。  当たり前のことだ。ここは、学校なのだから。しかし、私ではない人間たちがいた。私が知らない彼を、知っている人間がいた。そうして、会話して、戦って、視線を交わすのだろう。私の知らない、触れあって。  知らないで、見ないで、触れないで。見るな。私の、 。
 喘いだ。  湿度の高い、熱せられた空気が喉に絡んで、小さく噎せた。自分を支えることが困難になって、鉄板のように熱い壁に額をつけて凭れる。壁は、焼けるように熱くて痛い。強く爪を立てると、ぎゃり、と不快な音がした。私の爪は鋭かった。そして、空しい音を立てるばかりだった。
 おとぎ話は、人間が夢を見る為にある。  幼い頃から、私は世界に王子様とお姫様がいることを、疑いはしなかった。本の世界にばかり、足を浸していたからだ。物語に主役がいるのであれば、邪な竜も、野獣もこの世界には存在することになる。役割は、必ずしも自分が望むとおりに振り分けられるわけではない。幼稚園のお遊戯会と一緒。誰も彼もが王子様やお姫様になれる訳じゃない。紡ぎ車も狼も、そうなりたくてなった訳ではないだろう。私が、悪いオオカミを演じたように。
 そうだ。だから、私だって、彼だって、例外じゃないことなんて。
 どうして野獣が得なければならなかったのは、人間からの真実の愛だったのか。  そうだ、小さい頃からずっと疑問だった。彼がたとえ野獣に身を窶しても、同じ野獣の番であれば、傷をなめ合うことのできるはずなのに、って。どうして彼は貶されて、傷を深められても、人間からの愛を得て、人間に戻りたいと思ったのだろう、って。
 おとぎ話は、人間が夢を見る為にある。  頭の中にある書物のページをいくら捲っても、化物と化物が結ばれた結末なんて、一つだってなかった。化物が化物のまま、幸せになる物語なんてなかったのだ。シルヴィアも、李徴も、グレゴールも、みんなみんな。  おとぎ話は人間しか幸せにしてくれない。幸せになりたいなら、人間になるしかない。それを私は知っていた。だから私は人間でいなければいけなかった。人間でいる必要があった。私だけでも、人間でいなければいけなかった。人間で居たかった、人間で居たかった、人間で居たかった。  そうでなければいけなかったのに。  おとぎ話の世界で、私は。
 月が零れる。  獣の匂いが、否応なく下腹部から立ち上る。つま先から皮膚がひっくり返っていく。全身の毛皮があわく月夜に煌めいたとして、たとえそれを千枚縫い合わせても、光り輝くドレスになんかならない。  私は全部、知っていた。最初から分かっていた。目を背けていただけだった。  足元で、ぽたぽたと水滴の垂れる音がした。それは異様に粘ついていて、腐肉の匂いがした。  私の中にいる私が、そっと耳元で囁いた。
 もうどうしようも無いんだったら、はやく喉に噛みついちゃえばいいじゃない。って。  
 ラ・ベッラなんて、最初からいなかった。  狼だったのだ。
 †
 意識は冷たくて、白濁していた。  そこで私は初めて、気を失った時に世界が真っ白になるということを知った。  全身はまんべんなくずきずきと痛んでいる。頭は特に割れるように痛む。焼けた火箸で頭蓋の内側をぐちゃぐちゃにかき混ぜられているような痛みだ。床の感触が冷たいのに、脇腹が異常に熱を持っている。  熱いから痛いのか、痛いから熱いのかわからなかった。全ての熱がそこに集まってしまったようで、事実、指先は凍えていて一切動かない。  私は薄らと目を開いた。  下水のような、饐えた汚物の匂いがする。そして血の匂い。地下室は、ひたすら暗い。髪を垂らす窓も無く、寝台もなく、ただ檻のような壁だけがあった。  晴。  名前を呼びたくても、舌が動かない。呼んで、どうなるというのだ。私が目を覚ましたことを、気付かせるだけではないのか。  床に投げ出された私の手のひらは、まだらな赤褐色に乾いていた。それからは、微かに甘い匂いがした。床がまだ新しい血で赤く濡れていて、それはひどく生臭かった。きっと狼の血なのだろう。  なんとか視界を広げようと瞼を上げると、部屋の中に晴が立っていることだけが解った。後ろ姿だけのそれを見るや否や、たちまち悔いと後ろめたさが燻った。後悔の念が尽きない。
 私が願わなければ、こんなことにならなかった。ましてや、晴が傷つくことなんて、望んでいなかった。
 私はただ、庭先に咲いた私だけの薔薇を誰にも盗られたくなかっただけ。ただ、それだけだった。  傷つけることを、望んでなんていなかった。  けれど、それを今誰が証明してくれるだろう。現に私は晴を閉じ込め、切り裂いて、頭から丸呑みにしようとした。きっと、またすぐに私は狼になってしまう。狼である証拠に、私は彼を酷く甘いものだと思い込んでいる。一体、これのどこが人間だと言うのだ。健常な意識ですら、獣性を否定できていないのだから。  私は目を閉じた。  目を覚ましたくなくて、冷たい眠気へ緩やかに身を任せる。  そうだ、このまま私が眠っていれば、少なくとも私が晴を傷つけることはない。目を覚ませば、私はたちまち狂気に取りつかれて、彼に牙を立てることしかできなくなってしまう。もう彼を傷つけるのも、怯えた瞳で名前を呼ばれるのも嫌だった。
 眠っていよう。  これ以上、晴を傷つけないように。いっそ、私が救われなくたっていい。茨の内側が暴かれなければ、私はいつまでもお姫様と誤認されたままでいられるでしょう。狼がお姫様を丸呑みにしてドレスを着て、精一杯着飾ったところで、大きな口と生臭い匂いですぐに狼だとばれてしまう。  そんな姿は、晴に見せることができない。彼がまだ、私を人間だと思っているうちに、朽ち果ててしまいたかった。  微睡みは心地よかった。  ふと、何か、喧騒のようなものが聞こえた。悲鳴か、怒号かわからない叫び声のように思った。ただ、晴の声ではないことだけは理解して、どうでもよくなった。それも私の意識が氷湖の底に沈んでいくうちに、ぼやけて遠くなっていった。  夜明けの笛の音も、白く光を亡くした月もなく、薔薇の花も無い。深い眠りの水底には、ただ長い静寂が横たわるだけだった。
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shinobu-mechikko96 · 5 years
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Bunkamura30周年記念シアターコクーン・オンレパートリー2019
DISCOVER WORLD THEATRE vol.5『罪と罰』
  2019.2.17(大千穐楽) 森ノ宮ピロティホール
春馬クン出演の舞台、『キンキーブーツ』も観に行く予定なのでどうかと思ったけど、結局DMの乗せられ🎫購入してしまった💦
<あらすじ> 舞台は、帝政ロシアの首都、夏のサンクトペテルブルク。 頭脳明晰な貧乏青年ラスコリニコフ(三浦春馬)は自分が「特別な人間」として、 「人類が救われ、その行為が必要ならば、法を犯す権利がある」という独自の理論を持っていた。
そして強欲で狡猾な質屋の老婆を殺害し、奪った金で世の中のために善行をしようと企てている。 そんな中、酒場で出会った酔っぱらいの退職官吏、その後妻カテリーナ(麻実れい)ら貧乏な家族を見ると質入れで得たお金をすべて渡してしまうのであった。 ついに殺害を決行するが偶然居合わせた老婆の妹まで手にかけてしまい、罪の意識、幻覚、自白の衝動に苦しむことになる。 そうして意識を失い数日間も寝込んだ彼を親友ラズミーヒン(松田慎也)が見守り、 結婚のため上京してきた妹ドゥーニャ(南沢奈央)と母プリヘーリヤ(立石涼子)も心配をする。 一方、老婆殺人事件を追う国家捜査官ポルフィーリ(勝村政信)はラスコリニコフを疑い心理的に追い詰めていき、 さらに謎の男スヴィドリガイロフ(山路和弘)の登場に翻弄されていく。 そして退職官吏の娘・娼婦ソーニャ(大島優子)の家族のためへの自己犠牲の生き方に心をうたれた彼は... 数々の普遍的なテーマに触れながら、 人間回復への強烈な願望を訴えたヒューマニズム大作! (公式より引用)
博のない言葉足らずの私には、この舞台をどう説明したら良いのか考えあぐねる。どんな感想の書き方をしているのかネットを漁っている時にエンタメステーションのサイトにフォトコールの記事を見つけた。 舞台内容がわかりやすく記してあったので、これを引用させて頂く事にした。
三浦春馬の“狂気”を大島優子の“慈しみ”が救う。舞台『罪と罰』フォトコールで感じた今年最初の傑作の予感 【es】エンタメステーション https://entertainmentstation.jp/357338
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【三浦春馬の時空を超越した演技に感嘆】
公開されたフォトコールは冒頭から十数分といったところだったが、客席に着き、まず驚かされたのがマックス・ジョーンズの美術だった。天井から吊り下がった蛍光灯がステージの上手・下手・中央に直列に3本、奥の方にかけて4列並んでいる。つまり12本の蛍光灯が、色を変え、明滅しながらアップダウンし、当時のうらびれた貧民街を照らし出す。帝政ロシア時代の貧困、暴力、差別、生活が鋭敏にあぶり出され、リアルに伝わってくるようだ。一方で、使い古しのベッド、テーブル、バケツ、丸太木に突き刺さった斧などがいたるところに置かれ、時代がかったガジェットが溢れかえることで、街を賑やかに表現している。
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舞台上は階段、踊り場、再び階段と踊り場といった3段構造で、最上段の踊り場の奥はコンクリートの壁のようなもので囲まれており、壁面にはロシア語の文字が刻まれていたり、スプレーのいたずら書きがあったりする。これらはタイポグラフィにも見え、前近代のイメージをしっかりと踏襲しながらも現代の要素を盛り込んだ、2010年代の最先端の舞台美術のようだ。
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ラスコリニコフ(三浦春馬)がボロボロのベッドに寝転んでいる。別場所でラスコリニコフを殺人容疑で追い詰めることになる国家捜査官のポルフィーリ(勝村政信)がタバコを吸うシーンから物語は始まる。マッチをこすり“シュッ”と火をつける音とタバコを吸う仕草がとにかくやさぐれていて、たったひとつの所作で客席の視線をすべてさらってしまう勝村の演技がかっこいい。
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そこからうらびれた街の雑踏に早変わりする。アンサンブルがクラリネットやチェロ、アコーディオンを奏でて街の喧騒を彩る。公開されたフォトコールでは、基本的にほとんどのキャストは舞台袖に“ハケる”ことがなく、どの役者もアンサンブルになって存在する。いわば街のひとりの人間となる。そうしてキャスト全員で街の貧民窟にあるような騒乱めいた雰囲気を醸し出していく。
パディ・カニーンによる音楽が高らかに鳴る。ハイトーンな耳障りにも感じさせる現代的な音楽が、舞台『罪と罰』の一種の“救いのなさ”を巧みに表現している。そこにラスコリニコフが、これからしようとする自らの行為(ここでは善か悪かはわからない)に対して、ひたすらに自己肯定をする台詞が繰り広げられる。彼の性格が垣間見えるわけだが、それ以上に、翻訳の木内宏昌の手腕が光る。三浦春馬が喋る台詞は、聞き取りやすいし、リズムとテンポも抜群だったけれど、何より言葉の意味がわかりやすくて、すっと脳内に入ってくる。木内の言葉選びの妙技も味わえるだろう。
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そしてラスコリニコフは、真ん中の踊り場に現れるドアベルを鳴らす……丸太木に突き刺さった斧をこげ茶色のロングコートに忍ばせて。彼の手がすでに血のように真っ赤に染まっているのも象徴的だ。そこに金貸の老女アリョーナ(立石涼子)、その娘リザヴェータ(南沢奈央)も登場し、家賃の支払いに困ったラスコリニコフといざこざを始めるのだが、“暴力と金”という即物的で刹那的な匂いがプンプンする緊迫感のある芝居が続く。
ベルの音が鳴り、シーンが変わる。おそらくドアベルの音が舞台の転換を意味しているようだ。このドアは“向こう側”と“こちら側”、それは“生”と“死”の境界であり、さらにはラスコリニコフを殺人へと駆り立てる、踏み越えてはならない入口として存在していたのではないか。とてもシンボリックな演出で、フィリップ・ブリーンの手腕がオープニングから存分に発揮されていたと思う。
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シーンは転換し、ベッドに寝転がっているラスコリニコフは母のプリヘーリヤ(立石涼子)からの手紙を受け取る──妹のドゥーニャ(南沢奈央)に結婚相手が見つかったことが報告され、「お前はお前で神の御許に従い頑張れ」といったことが書かれている。要は「お前には援助はできない。期待するな」という宣言でもあると思うのだが、唯一の頼みの綱と思っていたであろう母親にも見限られ、焦りで次第に追い込まれていくラスコリニコフの精神がここでは描かれる。舞台の上手奥ではドゥーニャの結婚祝いが行われ、ラスコリニコフのどん底の生活と同居させることでとで“ハレ”と“ケ”のコントラストの明度を高め、彼の絶望感をマックスまで膨らませている。
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そして再びベルが鳴り転換すると、“ケバい”といっていいほどの派手な赤いドレスを着たソーニャ(大島優子)が、酒を飲んでいる男にすがって体を売ろうと必死の形相で立っている。しかし、男たちはむげに扱い、“娼婦”が堕落した存在であることをまくし立てる。それをBGMにソーニャの父親でマルメラードフ(冨岡 弘)とラスコリニコフの会話が繰り広げられる。ここでの会話は、帝政ロシアという時代の空気を一心に体現しており、歴史の証言として目をみはるものがあった。フォトコールでのソーニャの登場はこの場面がメインだったが、大島優子は男にすがりながら、それでいて男との共依存関係を拒否するように強く生きようとする女性をたくましく体現しながらも、時代に抗えない憂いのようなものも感じさせた。極彩色の衣装もあいまったエロティックなオーラを小柄な体躯から漂わせつつ、虚飾を脱ぎ去った先にある、何かに取り憑かれたような恍惚とした表情も艶っぽかった。
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その後、ソーニャにある想いが芽生えたラスコリニコフが、有り金を彼女に渡してしまう。そしてベルの音が再び鳴る……。
フォトコールで公開されたシーンは以上だったが、カンパニーの全員が舞台上に登場し、群像劇として展開していく人いきれの満ちた舞台に、悪意、憎悪、生活、現実、宗教、金、暴力、時代への批評、自己顕示欲、自己肯定、救済の予感、そういった原作のエッセンスがフルに注ぎ込まれ、マッピングに頼らず、“肉体”を使った原初的だからこそリアリスティックな表現方法だった。
その中で中心に存在するラスコリニコフの三浦春馬は、夜郎自大にみえそうな危うい自問自答を、時空を超越してあらゆる時代(それが歪んでいようがいまいが)に対する肯定に見えてしまう説得力のある演技を見せて感嘆するし、痩せこけてほっそりとした透明なフォルムも本当に美しかった。
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この後物語はラスコリニコフの殺人、彼とポルフィーリとの丁々発止のやり取り、ソーニャとラスコリニコフの関係など見どころが続くのだが、原作を知っていても知らなくても、テーマは普遍的で、誰でも楽しめる。演出・演技・美術・音楽は隙のないつくりで、カンパニーの結束力の高さも感じさせる。おそらく千秋楽を迎えたときには、「今年の演劇界の大きな収穫になるのでは」と予感させてくれた圧巻のフォトコールであった。
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一応、私の感想も…。 春馬クン、ずっと出ずっぱりでした。この舞台の為に減量された様で頬もこけ、狂気に満ちた表情、台詞も捲し立てる様な長台詞。凄かったです😱 圧巻でした👏 だた、いつからあんな声になったんだろう…っとふと思ってしまいました。『キンキーブーツ』でローラを演じられてからでしょうか❓ あの時はドラァグクイーンだからこんな声なのかと思っていましたが、今回の舞台でもあのローラの声のままでした。
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大島さんもかなりの長台詞ありました。特にラスコリニコフに聖書を読み聞かすシーンはとても良かったです😊
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捜査官ポルフィーリ役の勝村さん。いったいいつ声を発するのだろうと思う程、前半は台詞無し。1幕後半から罪を犯したラスコリニコフを笑いも誘いながら飄々と追い詰めていきます。勝村さんの真骨頂と言える演技です。叶わないですねぇ~😆
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金貸し役の立石涼子さん、とてもお声が印象的な方。たまたま前日『ヘンリー五世』を観劇して、冒頭『ヘンリー四世』を振り返るべき映像が流れたんですよ。『ヘンリー四世』に出演されていたんですね、立石さん。ちょっと懐かしくなりました。
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視覚的にも引き込まれる✨ 木製のドア(扉)を使い、空間移動を表現したり、アンサンブルが動作をシンクロしたり視覚的にも効果的な演出でした。 この舞台、演者が台詞が無いからと袖に下がる訳でもなく、ずっとステージに上がっていて役を演じているんです。なので、例えば春馬クンが台詞を喋ってる舞台の奥で勝村さんが演技をしていたり。視線をあちらこちらに向けないとならないので、個人的には少し鬱陶しかったかな😅
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(画像はSPECE,ステージナタリー,シブヤ経済新聞,シネマトゥデイ,TOKYO HEADLINE,ローチケ,エンタメステーションより引用)画像が多すぎてどこのサイトから引用したのか、わからなくなっちゃった💦
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negipo-ss · 6 years
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焼きそばハロウィンはいかにして無敵のアイドルになったのか(2)
 ごうごうと音を立てて裏庭の果樹園が赤く蠢いていた。永遠に収穫されることのなくなったりんごたちは次々に燃え落ちていった。光線を歪めて通すガラス窓がちらちらと女性の顔に炎を落としていた。質素なドレスからむき出しになった上腕を伝い、デスクの上へとおびただしい血が流れていた。その女性はみずから三重四重にナイフで切り口を開いて、金属のボウルに血を溜めていたのだった。ふわりと娘の方を振り向いた彼女のかんばせは、尊い使命を神から与えられて、地獄に遣わされた人の純真を示すヴェールのように白く輝いていた。最も高い天にたなびく雲よりも美しく結われたプラチナ・ブロンド。晴れた日のエーゲ海の上下を混ぜ合わせてしまったような知性に溢れたブルーの瞳。  ボウルから血をおさない娘に何口か含ませると、「絶対に声を出してはだめよ」とその女性は言った。腕の痛みで眉はひどく歪み、額には乱れた前髪が数本張り付いていた。娘はこくこくとうなずいた。母親が言うことを忠実に守るために、口元には両手が当てられて、目には涙が浮かんでいた。母親が「いい子」と言って微笑んだのを見て、ああ、愛しいママ、とその娘は思った。ママが苦しむのを、見たくない。ママが喜んで、嬉しい。  その娘は、かつての志希だった。  そうだ、これはあたしの物語だった、と志希は思った。志希はその鉄臭い液体を口いっぱいに含み、母親の言う通りベッドの下に潜り込むと息を殺した。そこにはカビ臭い本が何冊もあって、それは志希が数ヶ月前にそこに隠したあと、忘れてしまった本たちだった。志希の母親は「いい子だから。きちんと、隠れていてね」ともう一度言いながら、悲痛な表情で彼女の手を握った。血でいっぱいのボウルが横っちょに押し込められた。志希は本の内の一冊を大事に抱えて、ついでボウルを脚の下に隠した。  こく、と血を少しだけ飲んだ。 「ごめんなさい」と彼女は言った。 「許してね。力のない私を許してちょうだい」と、囁いた。  そうして彼女が足早に去っていくのを志希は見送った。  自分の息がうるさすぎて、ごうごう��知恵の実が燃えていく音は遠くなった。  やがて重々しい足音で、数人の兵士たちがやってくる。全員が、統制された動きで部屋を荒らし回った。クローゼットに整然と並んでいたお気に入りのドレスたちは床にぶちまけられ、踏みつけられた。ベッドシーツはめちゃくちゃに切り裂かれ、本棚の本も同様にすべてが投げ捨てられた。がしゃんと窓が割れる騒々しい音がして、家具たちが外に放られているようだった。  志希はそれらをすべて、そのベッドの下の小さな隙間から見ていた。こく、と血を飲む。ボウルの血を口に含めば、まだ少しは、保つはずだった。誰に祈ればいいのか、志希にはもう分からなかった。  そして、母親が戻ってくる。  母親は自分の脚で歩いていない。  つま先はずるずると引きずられている。二人の兵士たちが彼女の両脇をきっと抱えている。そして、彼女は木でできた床に打ち捨てられる。志希の愛したドレスと同じように、本たちと同じように。死の直前、ひどい苦悶に喘いだであろうその美しかった顔や目に、もはや生命のしるしは無く、志希は約束を破って、「ママ」と小さな声で呟きながら、ベッドの下からその死体に手を伸ばした。志希の周囲で、正体のわからない激しい火がぼうぼうっと燃え盛っている気がした。  伸ばされた彼女の手は、炎の向こうで、親しい人にそっと取られた。 「志希」と美嘉は言った。涙で歪んだ視界の奥で、志希は母親の代わりに美嘉を見つけた。  すべてはかつてあった真実が夢に溶けた姿だった。  友愛に満ちた顔には、不安が滲んでいた。ベッドから離れて光るデスクライトだけに照らされて、美嘉の尖った鼻が作る陰翳は、記憶の中の母親のそれに少しだけ似ていたが、おさなさが濃かった。  志希はじっと美嘉の輝く瞳を覗いて、微笑んだ。「泣いちゃった」と、くすくす笑った。そのまま、ぐす、と鼻を啜って、「あー」と意味なく呻きながら人差し指で目の下を拭い、 「美嘉ちゃん台本見てたの? 今何時?」 「一時過ぎ」 「明日も撮影なんだから、早く寝ないとだめだよ」  ふ、と美嘉は笑って、「いつもとなんだか、逆だね」と静かに言った。  そっと美嘉が手を離したとき、志希の手はわずかに空を掻いて、去っていったそれを求めた。求められた美嘉の温もりは、デスクライトをか、ち、とゆっくり消したあと、志希のベッドへと戻ってきた。  志希は美嘉の胸元に抱かれて、少し恥ずかしそうに「ちょっと、美嘉ちゃん」と言った。「お母さんの夢を見ていたの?」と美嘉は聞いた。短く迷って、志希は柔らかな美嘉の胸の中でうなずいた。 「志希のお母さんは、どういう人?」 「……よく、覚えてない」 「そう」  美嘉はそのまま黙って、腕の中の志希の頭を撫でていた。  いつまでも、ゆっくりと撫でていた。  やがて、発作がやってきた。悲しみの発作が作る苛烈な嵐に、志希はほとんど息ができなくなった。ぎゅうっと美嘉のシャツを握りしめて、志希は激しく嗚咽した。その泣き方には、激しい生命の力が込められていた。生きるためには、そうするしかなかった。 「ママ」と、志希は母親を求めて泣き続けた。  結局のところ、志希はそういう星の下を選んで、産まれてしまったのだ。
 * * *
 何時間も回り続けるように精巧に作られた独楽が回転しているとき、巨大な運動エネルギーを秘めたまま一見静止しているように見える。それと同じように、美嘉は志希の方を向いたあと、口をくっと結んで動かなかった。心中の感情がこれほど苛烈に渦巻いているひとを見たことがなかったから、志希はその熱量の凄まじさに気がつくと、食べかけのゼリーが載っていたスプーンを咥えたまま、動くことができなくなった。  やがて、野生の動物の子どもが襲われた瞬間の母親のように、美嘉は素早く立ち上がると一言も言葉を発さずにベンチから立った。「え」と志希は小さな悲鳴めいた声を上げると、「ゼリー……」と呟いて、手元のそれを大事そうに両手で持ち、そのまま焦ったようすであとを追いかけた。  きめ細かい乾いた土の上を早足で歩く美嘉に小さな歩幅で走って追いつき、志希は「美嘉ちゃん、ゼリー」と言ってそれを差し出そうとした。美嘉は「いらない」と言うと、「着いてこないで」と表情のない声で彼女を拒否した。志希は「う」とひるんで、それでも「美嘉ちゃん……」と呟きながら美嘉の肘をそっと取ろうとした。  ばし、と腕を払われて、志希が持っていたゼリーが土の上にカップごと飛び散った。二人の向いからちょうどやってきた室内犬が低い声で唸りはじめ、その飼い主の子どもは慌てて犬を抱えると、足早に去っていった。 「どうせ、アタシがなんで怒ってるかもわかんないんでしょ」  美嘉に言われて、志希は答えを探そうと必死に頭を巡らせた。志希は半年ほどの彼女との付き合いの中で、何度も何度も美嘉を怒らせたことがあった。ふざけてわざと怒らせたことも、意図せず怒らせたことも、怒っている理由がぼんやりとわかるときもわからないときもあった。しかし今日ほど彼女を怒らせた理由が知りたいと思ったことはなかった。彼女がその魂の底から真剣に怒っていることがわかったからだった。  ほとんど一番に大事な友人にどうしても何かを言わなければならないはずなのに、なんと言っていいのかわからずに志希は下を向いた。  美嘉は、ふっ、と鼻で笑った。「……ごめんねも言わないんだ」と、掠れた声で言って、志希を見つめた。志希は何も言えずに眉を寄せて、何か見るべきものを探し、しばらく地面の上で飛び散ったゼリーが一列の蟻に運ばれていくのをじっとなぞっていた。やがて視野の端をかすめた何かに気づくと、ゆっくりと顔を上げ、その視点は美嘉の手に留まった。  志希は美嘉に駆け寄ると「ちょっと!」と美嘉が振りほどこうとするのに構わず、彼女の手を引いて近くにあった水飲み場まで連れて行った。蛇口を捻って水を出すと美嘉の左手をその下に寄せた。美嘉の手のひらは、文香に倒されたときに傷ついて、皮膚が人差し指の爪ほどの範囲でめくれていた。その傷口に、美嘉は冷たい水が触れたときに初めて気づいたのだった。桃色の皮下組織が乾いた土の下から現れて、「いつっ」と小さな声で美嘉は呻いた。志希は何も言わないまま、大事そうに傷口を水の下で何度か拭うと、綺麗になったその手に顔を近づけてよく確かめてから、美嘉を見上げた。 「なに?」と美嘉が言うと、志希は「バンソウコー、ない」と悲しそうに言った。美嘉はため息をついてタオルハンカチで傷口を拭いながら近くのベンチまで歩いていき、バッグを片手で探ると絆創膏を取り出して志希に渡した。それが自分の親指の付け根へと丁寧に貼られるのをじっと待った。  すべてを終えると、志希はほっと息を吐いた。美嘉は手を引いて「ありがとう」と言った。志希は美嘉におびえているかのように、何も言わずそのまま地面をつま先で軽く擦っていた。 「なんで今日、レッスンに来なかったの」と美嘉は言った。  志希はびくりと身を固くした。数秒のあとにもう一度、拗ねたように土をかき回し初め、やがて「……忘れてた」と一言言った。  はああ、と長いため息を美嘉はついた。 「……ちょっと勘弁してよー、ほんとにもー……あのさ」  美嘉は立ち上がると、ずっと地面を向いていた志希の視線をひらひらと治療の終わった手のひらで遮って上を向かせた。「何回も何回もチャットで言ったでしょ。明後日は最終確認だよー、明日は最終確認だよー! って。志希は全部振り覚えてるかもしれないけど、アタシは不安なの。文香さんは……」  美嘉は一瞬言葉を区切って、何か痛みに耐えるかのような表情をした。志希が不思議そうにそれを見つめているのを無視して、 「文香さんはかなりダンスが不得意だし、三人で合わせる機会はすごく大事だと思ってる。明日からの本番で、失敗しないように」  新たなため息が美嘉の口から音もなく出ていった。 「……ま、ほんとは志希もちゃんと分かってるよね……」  美嘉は志希の青い目を覗き込んだ。「なんで、忘れたの? なにかすごく大事な用事があったの? それでいつもみたいに頭からスポーンって抜けちゃったんでしょ」  はく、と志希の口が動いた。「怒らないから、言ってみな」と美嘉は小さな笑みを口元に浮かべて言った。  長い沈黙があった。 「……マ、ママ、に……呼ばれたの」と、志希は途切れ途切れに言った。 「……どういうこと?」 「……あの、ママ、今日東京に出てきたから、それで……最近はどうしてるのって、何か変わったことない、って、電話で……言われたから……あ……」  志希はベンチに座ったまま、美嘉を見上げていた。彼女の顔が変わっていくのを、どうすることもできずに見つめていた。そして、「死ね」と彼女に言われたとき、もともと白かった顔色はまっしろに変わって、口元は悲鳴の形を作り、首だけが二、三回、静かに振られた。 「馬鹿みたいじゃん」と美嘉は言った。 「アタシ、馬鹿みたいじゃん!」と、叫んだ。絆創膏が貼られたばかりの握りしめられた拳が、ぶるぶると震えていた。 「ほ、ほんとに呼ばれたんだよ! ほんとだよ!」と志希が必死の声で言うと、「アンタアタシにお母さんは死んだって言ったでしょ! それも忘れたって言いたいの!?」と美嘉は叫んだ。  小さく風が吹いて、二人の頭上を覆うクスノキの枝がざあっと揺れた。激しい太陽の光が木々の間から顔を出し、呆然と立ち尽くす志希の姿をつかの間、真実を暴くかのようにぎらっと照らした。怒りのあまりに美嘉の声は震えて、両眼には今にも溢れ出しそうなほど涙が溜まっていた。 「志希、マジ、なんなの? 全部ウソなの? ……沖縄で同じ部屋、泊まってさ、アイドル楽しいね、ずっとやっていきたいねって語って……あの夜……」  光る瞳を残酷な形に曲げて、志希を睨みつけたまま、ぐ、と言葉に詰まり、また口をひらいた。 「アタシだけが本当のこと言ってたの? アタシだけがアンタに騙されて馬鹿みたいに身の上話して……ねえ、志希」  美嘉は笑った。途轍もない悲しみを隠して、涙を零しそうになりながら笑っているので、志希はその凄惨なようすにほとんど耐えられなくなり、く、と唇を噛んだ。 「志希、アタシのこと馬鹿にしてるでしょ」 「してない」 「馬鹿にしてる! アタシの何もかもを、志希は絶対馬鹿にしてる! 馬鹿だ、馬鹿だ、真面目に人生語っちゃって、アイドルなんて真面目にやってって、馬鹿だって!!」 「馬鹿になんかしてない!」 「もういい! 志希なんか死ね!」と言って踵を返すと、美嘉はそのまま早足で歩き始めた。 「……なんでそんなこと言うの……」  志希がそう声をかけたとき、美嘉はついに両腕のすべてを使って志希からは見えなくなってしまった顔を拭った。とうとう溢れ出した涙を、どうにかしようと努めながら、その場から消えゆこうとしているようだった。去っていくその背中を見つめて、「ほんとなのに!」と志希は叫んだ。ぐっと涙をその瞳に湛えて、「あたし、ママいっぱいいるんだもん、ほんとだもん。い、今のママに呼ばれたんだもん!」ともう一度叫んだあとも、美嘉が脚を止めないのを見た。  そして、何もかもが決壊した。 「美嘉ちゃんの馬鹿ー!」と大声で詰ったあと、志希は子供のように泣き出した。嗚咽しながらぽたぽたと地面に落ちていく涙の粒をどうにかしようともせずに、ぎゅっとカーディガンの袖口を握りしめたまま志希は泣いていた。ああーという長い泣き声は公園の隅々まで響いて、遠い通路から脚を止めて彼女を見ている人々が何人もいた。志希はそのまま泣きながら立ち尽くし、葉の間の小さな隙間から漏れる燦然とした光を全身に点々と受けていて、やがてそのままどこかへとふらふら歩き出した。美嘉とは違う道を選び、泣き声のトーンをまったく落とさないまま十メートルほど歩いたところで、早足で戻ってきた美嘉が志希に追いつくと、その両手を握って「ほんとなんだね」と言った。 「ほんとだって、言ってるのに!」と志希は言って、振りほどこうと少しだけ暴れた。 「わかった」  美嘉はもう泣いてはいなかった。しゃくりあげる志希を、前からぎゅっと抱きしめて、後頭部をやさしく撫でながら「ごめんね、信じなくて」と耳元で囁いた。そのまま火を放ち続ける石炭のような志希の感情が落ち着くまで、目をつむって抱き続けていた。
 子どもたちの陽気な声が空へと抜けていった。美嘉と志希の二人は疲れ切って、出口近くの噴水の縁に座り込み、一歩も動けずにいた。志希は赤い目をして、ぼうっと噴水がきらきらと落ち始めた太陽の光を反射するのを眺めていた。時折、彼女はきらりと美しく輝いた。美嘉はじっとその顔を見つめながら、 「志希のお母さん……いっぱいいるのね」  さらさらとした水音に、志希は沈黙を乗せて答えた。 「何人いるの、お母さん」 「……わかんない。もう数えてない」  はあーっと、美嘉は呆れてため息をついた。「ちょっとそれホントでしょうね……」と呟いたあと、テレビヒーローの真似をしながら追いかけっこをしている小さな子どもを眺めながら、「アタシにはわからん世界だなー」と言った。 「お母さんと、何の話してたの?」 「今度、焼きハロでやるライブ、インターネットとか��流れるかもしれないよって。だから見てねって」 「おーっ、いいじゃん」 「言おうとして……なんか怖くて、話せなかった」  がくっと下を向いて、「すっぽかされ損じゃん、アタシ……」と、美嘉は軽く笑った。  拗ねたようにずっときれいな水の流れを見ている志希を、美嘉はもう一度見上げた。きっとこの子は、どこかの喫茶店でお母さんと話しているときもこうなんだろうなと思った。目の前で起きていることに、とことん興味のなさそうなその視線。たどたどしい返答。退屈そうにほうっと吹かれる、ただ生きるための微かな吐息。だがその中心で、何かを求めようとする強い願いが燃え盛っているのを、少なくとも美嘉だけはもう知っていた。 「美嘉ちゃんはさー」 「ん?」 「美嘉ちゃんがアイドルやってるのをすごーく見てほしい人っている?」 「んー、このアタシを日本中に見せつけてやろう! とは思ってるけど」 「うまくできてる?」 「どうだろうね」  美嘉はくすくす笑った。「努力はしてるよ。マジで」 「……あたし、アイドルやっててほんとにいいのかなー」 「なんで?」  志希はゆっくりと美嘉の方を向いた。水面が彼女の顔を怪しく照らしていた。 「ママ、あたしがアイドルやってるってこと、知らないんだ」  またそのパターンかー! と美嘉は思った。くうー、と下を向いて、ガシガシ頭を右手でかきむしったあと、 「あのさ、実は文香さんも――」  ぐううう、ととてつもなく大きな音が美嘉の声を遮った。着崩したシャツのおなかのあたりを抑えて、志希は少し悲しそうに美嘉を見た。美嘉はしばらく目をぱちぱちとさせていた���、にこりと笑うと、「アタシの家、行こうか!」と陽気に言った。 「美嘉ちゃんのアパート? 手料理?」 「手料理は正解。アパートは不正解」  美嘉は勢いよく立ち上がると、志希に手を差し出して「行こ」と言った。志希は吊るし売りの人形のように美嘉を見上げたあと、弱々しくその手を取った。
「なんか、幼稚園みたい」と志希は言った。 『児童養護施設 飛翔』と書かれた看板の横の壁に、子どもたちがペンキで描いた絵が連なっていた。志希はそれに顔を近づけながら「美嘉ちゃんはどのへん描いたの」と聞いた。 「その壁建て直したのけっこう最近だから、アタシのはないよ」 「なあんだ」  つまんないの、と言いながら、志希は熱心に横歩きをして、壁をじっと見つめていた。美嘉は腰に手をかけると、ふふ、と笑って、何棟もの宿泊棟へと視線を移した。裏庭で遊んでいるのだろうか、姿の見えない子どもたちの声が建物に反響していて、美嘉は活気を感じた。 「おっ、美嘉ねえじゃん!」  遠くから声をかけられて、美嘉は志希の先から歩いてくる少年のほうを振り向いた。志希もそれに気づいて、壁から離れると美嘉の後ろにさっと隠れた。 「トオル、今部活終わり?」 「そうだよもー、めちゃつかれた」  巨大なバッグを背負い直すと「昨日ぶり〜」と言ってトオルは美嘉に上腕を差し出した。ごつ、とぶつけて「いえい」と二人は親しげに声を合わせた。 「美嘉ねえの友達? こんちは」と、トオルは子供らしさの微かに残る笑顔を志希に向けた。 「トオルは志希の二個下だよ、バドミントンがうまいんだ」と、美嘉が志希に紹介すると、志希は「こんにちは、一ノ瀬志希です」と小さな声で挨拶した。差し出された大きな手を恐る恐る握る。 「志希はねー、アイドル仲間」 「うおー、マジか!」  トオルはぱあっと顔を輝かせると、「一ノ瀬さん、お会いできて感動っす!」と言うと、握ったままの手をぶんぶん振り回した。志希はあうあうと焦ったあと、さっと美嘉の背後にもとのように隠れてしまった。 「ちょっとアンタ、あんま乱暴しないでよ。つうかアタシも一応アイドルなんだけど、なんだと思ってんの?」 「やー、本物はやっぱ全然違うね! めちゃかわいい!」 「あんま調子乗ると彼女に言いつけるよ。昨日ライン交換したんだから」 「すみません、やめてください」  神妙な言葉とは裏腹にあははと笑うと、トオルは口元に手を添えて、小声で「ほんとは初彼女のことみんなに自慢しにきたんじゃないの〜?」と美嘉に囁いた。 「初彼女……」  志希は目を丸くした。数秒ほど固まった美嘉は全身を真っ赤にして「んなわけないでしょ! バカ!!」と叫び、既に宿泊棟のほうまで逃げていたトオルを追いかけていった。 「昨日のお返し〜! 美嘉ねえのアホー!」  トオルが宿泊棟に駆け込むと、はー、とため息をついた美嘉はとぼとぼと戻ってきて「ごめんね、バカで」と志希に謝った。 「美嘉ちゃん、昨日も来てたの? よく戻ってきてるんだ」 「ん? んー、今日はほんとにたまたまだよ。アタシは家が場所的に近いからすぐ来れるっちゃ来れるけど、フツーは一回外に出たら、あんまり戻らないかな」 「なんだか、不思議な家だね」  志希の正直な感想に、美嘉は少しの間黙った。黄金に色を変えつつある太陽光線が、ピンクに染められた髪を掠めて志希の瞳を焼いたので、志希は微かに目を細めた。「そうかもね」と言って、美嘉は猛烈な光の中心で笑い声を上げた。 「さて……チサはどこにいるかな……」  美嘉は志希を促して敷地の中を歩いていった。何人もの子どもたちが美嘉を見つけると親しげに挨拶をして、志希はそのたびにたどたどしく自己紹介をした。女の子たちばかりが遊んでいる場所をいくつか通ったあと、美嘉はついにちいさな図書室の暗がりで、赤い絨毯の床にぺたりと座って図鑑を読んでいる女の子を見つけた。 「チサ」  図書室の中にはほかに誰もいなかった。からからと引き戸を大きく開けながら、小声で美嘉が彼女の名前を呼ぶと、チサは顔を上げて、「美嘉ちゃん」と嬉しそうに言った。 「あさ、起きたら美嘉ちゃんいなくて、悲しかった」 「あはは、ごめんね。お仕事があって忙しかったんだ」 「そっかー……」  チサは下を向いて、「わがまま言って、ごめんなさい」と言った。「昨日の夜、アタシに帰るなってみんなが言ったこと?」と言いながら、美嘉は靴を脱いで中庭から図書室へと上がった。 「大丈夫、遅刻とかはしなかったから」と、チサの頭をぽんぽんと叩いた。チサは悄然として床を見ていた。美嘉は苦笑いを浮かべながら「さて」と言った。  じゃじゃーん、と、美嘉は大きく手を広げて志希を指し示した。 「アタシが連れてきた、この子は一体誰でしょう!」 「……知らないおねえさん」 「や、まあ、見たことないだろうから、そうなんだけど」 「美嘉ちゃん」  志希も訝しげに美嘉を呼んだ。美嘉は志希に向かって笑みを浮かべ、 「覚えてない? 夏休み子供アイドル相談室で、石鹸のつくり方を聞いてきた……」  あ、と志希は声を出した。 「そうか、キミはあの子か」と、靴を脱ぎながらふふ、と笑うと、急に自信に満ちた態度で図書室に上がった。膝で立って目線を合わせ「こんにちは」と挨拶をすると「一ノ瀬志希です。夏休みのラジオ番組で、キミの質問にこたえたのは、あたしだよー」と言うと、床に置かれていたチサの手にそっと触れた。  チサはぼうっと志希を見ていたかと思うと、ぱあっと顔を輝かせた。「石鹸、できました! あぶないって言われたところは先生たちに手伝ってもらって――」と、流れる川のように喋り始めた。やがていくつかのあらたな質問が溢れ出て、志希はそのひとつひとつに丁寧に答えていった。美嘉は微笑みながら二人のようすを見ていたが、志希に「ご飯作ってくるから」とひとこといい添えて、図書室を出ていった。  中庭を楽しげな長い影が、小さな鼻歌と共に横切っていった。
「ハンバーグ美味しかった? 時間かかっちゃってごめんね」 「ううん。みんなとお話してたから、楽しかったー」  皆に挨拶を済まし、二人は施設をあとにしていた。日はすっかり暮れて、薄暗い中に街灯がぽつぽつと点いていた。志希はカーディガンのポケットからセロファンの袋に包まれたマーブル模様のきれいな直方体を取り出すと、街灯にかざしてほうっと息を吐いた。 「いいなー。それ半分に切ってアタシにもちょうだいよ」 「絶対だめ」 「ええー」  けち、と言いながら、美嘉はとても嬉しそうに笑った。志希は赤く細いリボンを少し緩めて、すっとその香りを鼻腔に満たした。 「ダージリン、ヘーゼルナッツ、ハニー。このブラウンはココアか……」  しばらく余韻に浸ると、大事そうにそれをポケットに戻して、 「きっとこれで身体を洗ったら、お菓子みたいになっちゃう」と言うと、泡だらけになった自分を想像したかのようにふふふ、と笑って、くるっと回った。 「美嘉ちゃん、ありがとう!」と美嘉の目を見て言い、また歩き出した。美嘉は驚いてしばらく立ち止まっていたが、「びっ……くりしたあ。志希がお礼を言うなんて……」と、あとを追った。 「次はごめんねが言えたらもう一歩成長かな……ていうか、元気が戻ってよかったよ」 「んー、どうだろにゃー」  志希は機嫌の良い子どものように大きく手を振って歩く。しかし、目を細められ、口元は薄い冷笑を作っているのがわかった。いつまでも消えないそのアンバランスさがひどく哀れに思えて、美嘉は悲しくなった。 「ママ……ママたちね、きっとみんな、あたしのこと嫌いだと思う」 「……なんで?」 「みんなあたしがほんとうの子どもじゃないということを、おなかの底からよくわかってるんだと思う。だから嫌いなの」 「……そうかなあ」  言葉を区切ると、近くの草むらで秋虫が鳴く声がはっきりわかるようになった。美嘉は次の街灯が自分の身体を照らし始めるところまで黙って歩いた。 「アタシは逆に血縁のことなんて信じてないから、もっと大きなつながりのほうを強く信じてるよ。だから志希は大丈夫だと思うんだけど」 「大きなつながり?」 「愛だよ、愛」 「うっわ」  恥ずかし、と茶化すと、にゃははと笑った。 「まー、よくわからないけど、今日のあたしは、アイドルできてた! すっごく嬉しかった!」  たたっと走って、次の街灯に先にたどり着くと、 「だから、あたし、アイドルを馬鹿になんかしてないよ。美嘉ちゃんのこと、馬鹿になんてしてない」 「もー、わかったから」  その街灯に美嘉が歩み寄ったので、二人はお互いがはっきりと笑っていることを知った。 「早いとこお母さんに言いなよ」 「努力しまーす」 「ったく、保護者の同意書どうやってくぐり抜けたのよ」 「署名のギゾー」  何かを言いかけた美嘉はぴた、と止まって、数秒してから「忘れてたあ……」と座り込んだ。 「なになに、なにかトラブル?」 「今日の練習、文香さんも来なかったんだよ」 「ほほー」 「午後に文香さんち行ったんだけど、『親にやめろって言われたから、アイドルやめる』って言われちゃって」 「あは〜ん、で、それを今の今まで忘れていたと」  志希はふむふむ、と何かを考える振りをしながらくるくると視線を動かしていたが、やがて、「美嘉ちゃんは、馬鹿なのかにゃ?」と言った。美嘉はゆっくり立ち上がると、思い切り振りかぶった拳を志希の頭に振り下ろしながら、「お前が言うなっ!」と叫んだ。
 その駅のホームに降り立ったとき、志希はすうっと一息空気を吸い込んで、立ち止まった。「どうかした?」と美嘉が聞いて、志希は首を振ってこたえた。炎が暴れ狂う匂いだ、と志希は思った。どこかでだれかの財産と生命が、燃えているのだ。蛍光灯に照らされながらとんとんと階段を降りていく、志希の顔は暗い。  東口を出ると、美嘉は「ちょっと、とりあえず作戦立てよ、作戦」と言った。 「ファミレスはそこにあるけど、えーと……」と、スマートフォンを取り出して操作していると、志希は「美嘉ちゃん」と遮った。 「文香ちゃんの家って、あっちのほうだったりする?」 「ん、んー? 多分そうだと思うけど……」  志希が指さした方で、空や建物が恐ろしげに赤く照らされているのが美嘉にもわかった。遠く、何台もの緊急車両のサイレンが聞こえた。「行こう」と、微かに不安の滲む声で、美嘉が言って走り出したとき、志希はその場で過去の体験がぐわあっと自分を追い越していくのを感じた。あの燃え盛るりんごの木々、てんてんとボウルに血液が落ちる音、本に生えたかびの臭い、錆びた鉄の味、床に捨てられたママの美しかった瞳が、恐怖に歪んであたしを見ていて、彼女はその口を開き「いい子」と――。 「志希!」と激しい声で呼ばれて、はっと顔を上げた。「くっ」と声を漏らすと志希は美嘉を追って走り始めた。  やがて、二人はその家にたどり着く。 「嘘でしょ……」と美嘉は最後の角を曲がると呟き、志希は「ああ」とその激しさに絶望して、声を上げた。  分厚い人垣の向こうで、鷺沢古書店は燃えていた。屋根は柱を何本か残して既に落ち、二階にあったはずの文香の居室は跡形も無くなっていた。一階の店舗部分からは今もめらめらと恐ろしい勢いで炎が吹き出し、庭木のいくつかはすべての葉を落としていた。太い電線がまさしくちょうど焼け切れて、ばぢん、という何かを切り落としたような音が辺りを裂いていった。何もかもが燃え尽きていく凄まじい臭気が空間を満たしていた。  美嘉がだっと駆け出して人混みをかき分け、そこに近付こうとすると、すぐに警察の張った黄色い規制線に遮られた。開けた周囲をぐるりと見渡し、救急車、消防車、警察車両がすでに到着して、必死の消火活動が行われていることが分かった。 「すみません!」  美嘉はテープを広げようと忙しく働く警察官に声をかけた。「危険だから、少し下がって!」と強く言われた。 「友達が、住んでた家なんです! けが人とか……どうなったのか教えてください!」 「なんだって……近所の人には、持ち主が帰ってこない空き店舗だと聞いたけど」  その警察官が無線でどこかへ連絡し始めたとき、美嘉はぎゅうっと両手を胸の前で組んだ。文香がまだ見つかっていないということがはっきりと分かったからだった。 「お願い……」  美嘉の開ききった目は燃え盛る火宅をじっと見つめ、震える喉からは悲しい祈りが漏れ出た。そうやってぼうぼうと踊り狂う炎が何もかもを奪っていくのを、力無く見守っていた。祈ることしか、彼女にはできなかった。  志希は、そうではなかった。  志希は美嘉が背中を丸めて、全霊で何かに祈っているのを見つめていた。やがて、ふ、と踵を返すと、元来た道を走って戻った。冷たい空気が肺で暖められて、彼女の周りに形無くたなびいていた。いくつもの街灯が、規則的に彼女の冷静な顔を明滅させていた。角へと立つたびに、彼女は、すん、と鼻をうごめかした。  四つの角を曲がり終わると、彼女は人通りの少ない道へと出た。誰も目にすることのない狭いビルとビルの間で、やがて志希は目的のひとを見つけた。  かちゃ、と、ノブが回される音が鳴った。  乱れた呼吸を、ふ、ふ、と戻すように努力して、志希はその奥を見つめながら、ふ、と自嘲気味に笑った。  通る者のいない路地を囲む植木鉢と、枯れた植物の奥、トマソンと化したドアの奥、ブゥーンと低い音で鳴る室外機、ゆっくりと回るガスメーター、なにかよくわからない液体の汚らしい流れと、何年もの間繰り返し捨てられて拾うもののいない缶や瓶のごみのさらに奥に、まさにそこに、文香はいた。  焼け焦げて濡れたストールに身を包んで、服も炭で汚れていた。背を壁にぴたりとつけ、地面に座り込み、小さな空間で彼女は一心不乱に広げた本を読んでいた。角が焼けてしまったその青い表紙のソフトカバーを、文香はまるで数日ぶりの食事をしているかのように、大事そうに一行一行をなぞっていた。志希が目の前に現れたことにも気づかない様子で、時折その文を小さく声に出して読み上げていた。  そして、今や彼女がふつうの人間ではないことは明らかだった。その頭で、猫のような大きな耳が揺れていたからだ。  文香が感覚の一切を集中してその本に身を投じているのに、その耳だけが別個の意志を持っているかのようにく、く、と動いた。志希がちり、と音を鳴らして耳に下がっていたピアスを片方外すと、文香の右耳がこちらの方を向いて、あたかも獲物を凝視する一匹の肉食獣であるかのようにそのまま止まった。志希はピアスについていた小さなアンプル状の装飾をぱきっと砕いて開けながら「キミも、そうだったんだね」と文香に向かって言った。  瓶の中で、ぬらりとした液体が怪しげに揺れていた。  パトカーが一台サイレンを鳴らしながら現れて、志希の姿をばあっと照らした。その光を志希は一瞬眩しそうに見つめて、そのまま猛スピードで通り過ぎていくのを目で追った。  文香のいる谷間に一歩入りこんでから、志希は液体をこくりと飲み干した。志希の身体は、それで仄かな緑色に光り輝きはじめ、両側の壁面を美しく照らした。  ぴちゃ、ぴちゃ、とローファーで汚水を踏みしめて、志希はその隙間のもっとも奥へとたどり着くと、文香の頭をやさしく撫でた。彼女の頭で、ぴ、ぴ、と大きく動いていた耳は、志希が両手でそれをそっと包んで、何事かを唱えながらゆっくりと触っていると、やがて透明になっていき、消えた。 「あたしたちみたいなのが、アイドルだなんて、笑えるよ」と言って、志希はほんとうに笑った。  文香は志希のやわらかな光にようやく気づいたのか、顔を上げると「志希さん」と言った。  猛烈なスピードで近づく電車の前にみずから佇む人は、頭の中が後悔でいっぱいになり、自分がなぜそこにいるのかついには理解できなくなる。それと同じように、文香は何もわからないようすで志希の表情を反射するかのように笑みを浮かべた。口元は笑っているのに、すだれのようにすべてを覆い隠す前髪の奥で、ロシアンブルーのそれのような瞳が彼女の魂を映しているかのように悲しげに瞬いていた。
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