Tumgik
#公園横の開口
gon-iii · 2 months
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虎口の風下に立つ
2018年、海の公園。
横浜市の金沢区の海の公園で開催されたどんど焼き。
いい位置を確保できたが、たくさん周りに人がいて風下で燃える神などが飛んできて来ても身動きが取れず危なかったw。
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elle-p · 3 months
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Famitsu PS2 31st March 2006 Persona 3 section pictures and transcription.
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『ペルソナ』は新世代へ
主人公
月光館学園の転入生。転入直後に謎の怪物"シャドウ"の襲撃を受け、ペルソナ能力を覚醒させる。自由にペルソナをつけ替えられる特殊な能力を持つ。
初期ペルソナ
オルフェウス
絆が僕らを強くする-
長い沈黙を経て動き出した『ペルソナ3』の第1報。橋野氏&副島氏のコメントも必見!
"召喚器"でペルソナを召喚
主人公たちが帯びた使命は、"シャドウ"を討伐すること。分身たるペルソナを"召喚器"によって召喚し、敵となる"シャドウ"たちと戦うのだ。
召喚器とは、ぺルソナを召喚するときに用いる小型の補助装置のこと。その多くは銃の形をしており、自分に向けて撃つことで、ぺルソナを召喚する。
ムービーも美しく
ペルソナ3
第一報
P3
PERSONA3
PS2
DVD-ROM
開発状況
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アトラス 7月13日発売予定 価格未定
学園 RPG 容量未定
1人
審査予定
ディレクター : 橋野桂
キャラクターデザイン&アートディレクター : 副島成記
『ペルソナ2罪・罰』から5年。ついに『ペルソナ3』が始動! 本作ではキャラクターとシナリオを一新。架空都市港区を舞台に、自分自身の別人格"ぺルソナ"を召喚できる力を持った者たちが、"シャドウ"と呼ばれる怪物と戦っていく物語が描かれるぞ。まずは、主要人物とペルソナを紹介。見たことのない『ペルソナ』が、始まる。
©ATLUS CO., LTD. 1996 2006. ALL RIGHTS RESERVED. ※画面は開発中のものです。
STORY
1日と1日の狭間には影時間が日在する
私立月光館学園に転校生した主人公は、怪物の急襲を受けたことでペルソナ能力が覚醒。1日と1日の狭間に"影時間"という隠された時間が存在することを知る。そこには"シャドウ"と呼ばれる怪物が棲んでおり、人の精神を食らっていた。その被害から人々を守るべく、主人公はペルソナ能力者が集まった特別課外活動部の一員となり、"シャドウ"と戦うことを決意するのだった。
ペルソナ
ヘルメス
いおり じゅんべい
伊織順平
CV : 鳥海浩輔
主人公の同級生。転校生である主人公に真っ先に話しかけてきたお調子者。ペルソナ能力に目覚め、主人公とともに戦いに参加する。
たけば
岳羽ゆかり
CV : 豊口めぐみ
主人公の同級生。同じ寮に住んでいる。ペルソナ"イオ"を召喚する能力を持ち、主人公とともにシャドウ討伐を行う。明るく前向きで、皆から好かれている。
ペルソナ
イオ
アートディレクター
そえ じま しげ のり
副島成記
独特のビジュアルで、多くのユーザーから高い支持を得ている。代表作は『ペルソナ2罪・罰』。
今回、完全新作となる『ペルソナ3』の絵を創るにあたって、いま一度『ぺルソナ』の魅力について考えるところから始めました。シリーズを通しての最大の特徴、それは本当の意味での"現代劇"であると考え至り、その部分をさらに掘り下げて作り込んでいます。等身大のキャラクター、日常感にあふれた街並を再現した背景、そしてゲーム操作画面に至るまで"現代"を意識したデザイン。さらに、ムービーパートを筆頭に、物語の展開に合わせてキャラクタ一の希望や不安といった内面世界までも絵にすることにより、魅力的でリアルな世界観を構築しています。つねに"いま"を表現し続けることにより新しい作品となった『ペルソナ』最新作の魅力を堪能していただければと思います。
→バトルでは、マンガのような演出も見られる。
朝、昼、夜一そして影時間
本作では、1日が朝、午前、お昼、午後、放課後と夜に分かれ、それぞれで行動していく"リアルスクールライフ"システムを採用。これにより主人公は、朝になると登校して、放課後には自由な時間を過ごす、というごくふつうの生活を送ることになる。しかし、午前0時になると影時間が訪れる。影時間に自由に動けるのは、シャドウとペルソナ能力を持つ者のみ。主人公はここで、仲間たちとともにシャドウに戦いを挑むのだ。戦うことにより、主人公は新たなぺルソナを手に入れる。入手したぺルソナは、"コミュニティ"システムでパワーアップさせられるぞ。また、ペルソナどうしを合体させて強化することも可能だ。ここではシステムの詳細を見ていこう。
舞台となるのは架空都市"港区"と私立月光館学園
港区は、古くからの港街"巌戸台"と新興の人工島"辰巳ポートアイランド"がある海沿いの都市。ポートアイランドの中心に、主人公たちが通う小中高一貫の名門校、私立月光館学園がある。
高校生としての日常を過ごす
スクールライフ
School Life
主人公は、定められた時間帯の中では自由に行動できる。朝から午後までは学校で過ごすことになるが、放課後は校内外を探索できるし、寮に帰れば寮内も見て回れる。さらに夜は、街を徘徊することもできるのだ。
→同級生のゆかりと会話。朝、昇降口でのひとコマだ。
もちろん授業も
↑校門前で順平に遭遇。たわいもない会話が交わせるのも魅力的だ。
↑夜、寮のラウンジにて。特別課外活動部員は、全員同じ寮に住んでいるのだ。
ショップも利用夜には街でお買い物
Shop
夜または自由時間であれば、街の中にあるショップも利用可能。ここのアクセサリー屋では、どうやらアクセサリーを売買するだけでなく、店員と話すこともできるようだ。
←色彩豊かでグラフィカルなインターフェースにもご注目。
深夜0時校門前にて
←同じ寮に住む仲間とともに校門前へ。これから何が起こるのか?
すべてが変わり影時間が始まる
→雰囲気が一転。いよいよ影時間の始まりだ。これから"シャドウ"が活動する。
怪物
"シャドウ"
影時間
Darkness
影時間になると、ふつうの人間はみなオブジェ化する(棺になる)。だが、オブジェにならなかった人間はシャドウによって精神を喰われ、口も聞けないほどの無気力状態に陥ってしまう。そうした人間を増やさないために、主人公たちは影時間になると活動を開始し、ペルソナを使ってシャドウを倒していくことになるのだ。
EVENT イベント
影時間中は、ゆかりや順平ら特別課外活動部の仲間とともに行動するのだ。行動中はさまざまなイベントが発生するようだ。はたしてどんな事件が待っているのか⋯⋯?
いったい何が?
↑影時間になると現れる謎の塔、タルタロスを横に見ながら疾走。
BATTLE
バトル
"シャドウ"に出会ったら戦闘。 ペルソナの持つスキルを駆使し でシャドウを倒していこう。
↓初期ペルソナのオルフェウスで攻撃。ぺルソナを使わずに武器のみで戦うことも可能だ。
→戦いに勝つとペルソナカードが手に入るぞ。どんどん集めていこう。
ペルソナカードをゲット!
←主人公は、カードに記載されている悪魔をぺルソナとして使えるのだ。
影時間の訪れと共に現れる謎の塔⋯⋯"タルタロス"
影時間とは⋯⋯?
午前0時に現れる謎の時間。始まると、 ふつうの人間は棺に似た形のオブジェに 変わるが、そのあいだのことは記憶に残 らないため、存在に気づいていない。
"コミュニティ"でペルソナをパワーアップ!
学校や街中にいる人物と会話して仲よくなったり、部活動に参加することで、コミュニティを発現できる。コミュニティは、所属する人物との関係を深めることによってレベルがアップするぞ。レベルが上がれば、ペルソナが強くなるのだ。
コミュニティの種類は多彩
→クラス、部活動など、20種類以上のコミュニティがある。
→命発現したコミュニティのレベルをチェック。
←人物と会話したことでコミュニティが発現。
友との絆が強さに直結する
↑コミュニティにはそれぞれアルカナ属性があ る。コミュニティがレベルアップすると、アルカ ナ属性に該当するペルソナもパワーアップする。
ペルソナ合体システム
謎の場所"ベルベットルーム"では、2枚以上のぺルソナカードを合体させることでより強力なペルソナを作り出すことができる。数多くのカードを入手して、より強力なペルソナを作り出していこう。
イゴール登場
→おなじみのペルソナ合体。何ができるかな?
→コミュのレベルに応じて経験値もつくぞ。
コンゴトモヨロしク{?}
ディレクター
はし の かつら
橋野桂
『真・女神転生⋯if』よりシリーズの開発に携わる。代表作は『真・女神転生Ⅲ-ノクターン』など。
前作で物語が完結してから5年、ついに、新たな舞台と物語を得た、まったく新しい『ペルソナ』を、シリーズ3作目として発表させていただききました。学園ジュブナイルという若い世代の思いや悩みを等身大で描く中で、ペルソナ召喚や合体システムなどのご好評いただいたゲームシステムを継承しつつ、さまざまな新要素を存分に加えて、十分なボリューム(プレイ時間は50時間以上)でやり込み度満点のRPGを、もうすぐお届けできると思います。とくにこだわったのは"日常"の表現。実際の人間社会にあるようなコミュニティの形成を『ペルソナ』の成長システムに大胆に絡め、まったく新しいシステムとして構築しました。日常のさまざまな人間関係のリアリティーを、365日という学園生活の中で、壮大な物語とともに存分に楽しんでいただけたらと思っています。シリーズのファンの方はもちろん、新しく興味を持っていただいた方にも、「本当におもしろかった!」と思っていただけるゲームにしたいと思っておりますので、ぜひご期待ください。
記事担当チェック!!
待望の新作。『ペルソナ2罪・罰』はあれで完結ということで、完全新シリーズです。注目はやはり"コミュニティシステム"。仲よくなることで強くなっていくなんて、ステキではないですか。もちろんペルソナ合体も健在。今度はピクシー出てるといいな! (ライター : 荒井弘子)
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tokyomariegold · 4 months
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2023/9/16〜
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9月16日 思いつく行きたいこと、やりたいことをした日。 シーツや枕カバーを洗い、ヨガに行って久しぶりに汗をかく運動をした。 昨日のギャラリーからのメールに返信をして、乗り換え駅で24時間メトロパスを買って、六本木のタカイシイギャラリーで野口里佳の“虹”を観た。 良いな〜写真撮りたくなる。ほとんど砂丘の写真だけど虹。 そこから恵比寿へ移動して渋谷の植物園へ。リニューアルオープンしてやっと行くことができた。 とても小さなスポットで、ナツメヤシやオレンジやグアバなど聞き覚えのあるフルーツの植物が多かった。裏に都バスの駐車場があり、みんくるスポット。 渋谷で阿波踊りのパフォーマンスを横目で見なが���、踊っている人たちも、まさか渋谷で踊るなんて…と思っている気がした。 銀座に移動して、ソニーのギャラリーを確認しててらおかさんの原画展に行った。 なぜか蔦屋書店で開催していると思い込んでしまいGINZA SIXへ行ってから伊東屋さんだと気がつく。 職場のデスク用にカレンダーを購入し、もうそんな時期! 六本木も渋谷も銀座も人が多かった。外国人の方がとても増えた。 渋谷のペデストリアンデッキの上で、この近くにオフィスを構える某企業の方に、研究なんて何の役にも立たないアドバイスいただいたことや、大学時代の職員さんに、渋谷とかとりあえずたくさん転職先ありそうだよね(転職先を探すのならとりあえず渋谷ならどっかしらは見つかるのでは?の意)と言われたこと、大阪の友人が東京って本当に何もない、と大阪のお部屋で泣いた話を思い出す。
帰りながらソニーの応募ようにキャプションを考えて、帰宅して提出データをそろえた。とりあえずニコンの公募に少し肉付けをした程度のものを提出する感じになりそう。
明日はIKEAで写真を撮れたらいいな。
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9月17日 24時間メトロパス2日目。 でも朝はヨガへ行ってしまった。終わって残りは2時間。とりあえず今日のしたかったことはできて、今までで一番有意義なメトロパスの使い方ができた。でも降り立ったどの地点でも目的以外に心惹かれたものがなかった気がしていて(何なら、本当に何もない…と思っていたりしていて)これはただ疲れているせいだと(本当に疲れてる?)いいな。東京、好きだよね?
日本橋をふらついつ、行ってみたかったバナナジュースのお店で黒ゴマのジュース���買った。暑くてすぐデロデロになってしまい半分だけ飲んだ。 もう一つ行ってみたかったリニューアルオープンしたコ本やへ。神楽坂で下車して江戸川橋方面へ行くとあまり見たことも来たこともない街過ぎてどきどきした。コ本やで展示されていた本にまつわるインスタレーション、よくわからなくて面白かった。 自費出版の本や雑誌もたくさんあって、何だか学生の時にお茶の水のヴィレッジヴァンガードにいた時の気分になった(今は亡き…)。
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次の目的地の途中、池袋で乗り換えをしてとてつもない人の多さ(西武デパートや東武デパートはそんなに人多くなかったのに)に帰りたくなってしまう。 今日も東京は至る所でお祭りをしていた。 夕方の予定で下りた街でもおみこしが担がれていて、ずーっと笛や太鼓の音がしていた。 引っ越しして東京の東側(下町)のお祭りの大きさに驚いている。 道を曲がった先におみこしを見つけて小学生の男の子2人(走って先を急いでいた様子)が「最悪だ……」と言っていておかしかった。 来月頭に今住んでいる町で花火大会があるらしいので最悪じゃないといいな。
デフォルトでついていたお部屋のシーリングライト、外し方を調べた簡単に外すことができた!照明を買いたい!
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STORESに登録したけれどギャラリーから実家へ配送してもらった作品や写真集が昨日から受け取られていないらしく(私のところには不在通知のメールだけが来ている)どこか旅行にでも行っているのかな。
昨日からTverで“鹿男あをによし”を観始めてから奈良にも行きたくなる。このドラマ受験生の時にリアリタイムで放送されていて、木曜日だけはこれを観るために少し早く塾の自習室を出ていた。
明日は起きれたら成田空港へ行く。
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503rd-graffiti · 4 months
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【迷】2
「あー、暇だなー。」 いつもの、面倒事の始まりの合図だ。 僕は決まって間が悪く、いつも真っ先に目をつけられてしまう。 今日もすぐに声をかけられて現世へと向かわされるのだろうと身構えていた。 「たまには仲良く三人で行ってきなよ。」 しかし今日は趣が違うらしい。珍しくも僕たち全員に声がかかった。 いつも寝たふりをしているハナマキ、すぐにどこかへ隠れるトビネ、そしてワタメである僕。 それがカミサマのもとでお使いをさせられている天使、いや召使いだった。 「ほら、そこのきみ起きなさい。あときみは見えているからね。」 観念したかのように目を開けるハナマキと、どこからともなく姿を現させられたトビネ。 僕を合わせた三人は目を合わせて一緒にため息をつく。 『三人って、そんな大掛かりなことなの?誰かだけで十分なんじゃない。』 トビネはさも面倒くさいといった声音でカミサマに食って掛かる。彼女はいつもそんな態度だった。 しかしカミサマはトビネの態度に意を介せず答えるのだった。 「ん-。まあ一人でも私は良いんだけどね。それだときっとすぐ死んじゃうだろうから、神からの慈悲だと思ってもらいたいな。」 『し、死ぬ?!ぼ、僕たち、また死ぬなんてあるんですか?!』 珍しくも口を開いたのはハナマキだった。彼はいつも口答えせず、極力カミサマや僕たちにすら関わらないようにしている素振りすらあったので、 こうして自ら話し出すのはそうあることではなかった。 しかしそれも無理もない。突然死ぬかもなんて言われれば誰でも慌てるだろう。なんたって僕たちは既に死んでいる身なのだから。 「うん、死ぬよ。知らなかったの?」 『そんなこと一度も言われたことない……。』 「そうだっけ。ま、次にそんなことがあっても私は救ってあげられないから、気を付けるんだよ~。」 そう言っていつものワープホールを作り出すカミサマ。 ハナマキは顔色を一気に悪くして俯いてしまっているし、トビネもさすがに押し黙っていた。 『……あの。今回はそんな危険な仕事なんですか?』 仕方ないので僕が代表して皆が聞きそびれていることを確認することにした。 大抵は何をするのか言われることが無いので、こうして前情報を渡されることは貴重だった。 「へー、きみは仕事だと思ってるんだ。」 『は?ええ、まあ……。違うんですか?』 「違うよ。救済は私の仕事ではあるけどね、きみの仕事じゃない。」 『カミサマが自分でやらないのを僕らに押し付けてるだけじゃ……。』 「ヒト聞きが悪いなぁ。そんなことはどうでもいいから、早く行ってきなよ。」 結局僕の質問には答えてくれることもなく、カミサマは僕たち三人をワープホールへと放り投げる。 一瞬の無音と暗闇。そして次の瞬間には視界が開ける。 そこは草木生い茂る、どこかの森だった。
『私はその辺で休んでるから、二人でやってきてよ。』 到着早々、輪を乱す発言をしてくるのは相変わらずのトビネだった。 『あのな――。』 『死ぬかもしれないんだぞ?!一緒に行動しないと駄目だ!!』 たしなめようとした僕の声に重ねて大きな声を上げたのはハナマキだった。 いつもと異なる様子に僕もトビネも目を丸くする。 『あ、ごめん……。ちょっと、気が動転してたみたいで……。』 慌てて謝りながらも俯くハナマキ。僕は苦笑いをしながら肩らしいところを叩いてみせる。 『いいよ。ええと、トビネもそんなこと言うな。あの無茶苦茶なカミサマが三人でって言ったんだ。 その方がきっと早く終わらせられるし、そしたらすぐに帰れるだろ?』 『……ふん。』 ハナマキの様子が効いたのか、不服そうな顔をしながらもトビネは僕たちについてくる意思を示してくれた。 雲行きが怪しいなあと思いつつ、僕たちは森の中を進むことにした。 『それにしても今回の仕事ってなんだろ。』 どこの森かも分からない場所。人の気配は無く、リヴリーの姿も見当たらない。 カミサマの言う救済の対象は様々だが、その多くは人間であり、最近はリヴリーも増えてきたらしかった。 なので今回も彼らだと思っていたのだが……。 『しかも死ぬかもしれないって、どんな面倒事に巻き込まれるんだか。』 トビネはそう言いながらも目の端で森の様子を窺っているらしかった。 先頭を歩いているハナマキは重たげに口を開く。 『ここは、“リヴリーアイランド”のどこかのパークだよ。』 『え?ハナマキ、知ってるの?』 『うん。何度かカミサマのワープで来させられたことがある。 リヴリーアイランドはリヴリーたちのために作られた大型の公園みたいな場所で、パークと呼ばれてるいくつかのエリアに区分けされてるんだ。 ここはそのパークのどこかで、こんな鬱蒼とした森のエリアがあるんだ。けど……。』 『けど?』 『ここには普段リヴリーたちはいない。いるとしたら、それは……。』 『なんだよ、勿体ぶらずにおしえてくれよ。』 しかしそこで押し黙ってしまうハナマキ。僕は仕方なくあたりを見渡してみた。 確かにこの辺りの木々のスケールはリヴリーに合わせられたように違和感が無い。 リヴリー用の公園というだけに、全てがリヴリーサイズになっているのかもしれなかった。 しかしハナマキが言うように依然としてリヴリーの姿は無いように思えた。 それも束の間、突然前方でガサリという物音がした。 『なに?!』 トビネが声を上げる。ハナマキも立ち止まって全身で威嚇する気配を出した。 現れたのは一匹のブラックドッグだった。 『な、なんだ。リヴリーか。』 トビネは胸をなでおろす。僕も無意識にほっと息をついていた。 『どうも。迷子?飼い主……はここでは出てこないのかな。それとも――』 いつもの質問を投げかけようとした僕の言葉を遮り、ブラックドッグは声を上げてきた。 『おい、お前らもモンスター狩りに来たクチか?』 『へ?』 『だったら今回はやめとけ。荒らしが来てる。たっく、ああいうのはいつの時代も沸くもんかね……。』 そう言い残すと、ヴォン、という音と共にブラックドッグはどこかに姿をくらましてしまった。 くらます前に一瞬見えたその姿は、何故かひどくボロボロのように見えた。 『荒らし……。』 ブラックドッグが現れてもずっと警戒を解いていなかったハナマキが小さく呟いた。 『荒らしって何?てか、モンスター狩りって何よ。』 そんなハナマキにトビネは問いかける。僕も単語の一つ一つは聞いたことがあるものの、それ自体が何を示しているのかはよく分からなかった。 モンスター。それはリヴリーの餌である虫が突然変異して生まれた化け物らしい。 その巨大化した体でリヴリーを襲い、時には食らってしまうという話だ。 しかしそれはリヴリーが現代に普及したての初期の頃であり、昨今ではそんな脅威は取り除かれ対処されたと聞いていた。 『モンスター狩りっていうのは、パーク内で時々開かれるイベントなんだ。』 『イベント?』 『そう。昔みたいな危険はなくて、あくまでもゲームみたいなもの。 モンスターは監視されていて、リヴリーが襲われるのは同じだけど殺されるところまでには至らない。 だから昔よりも安全に、スリリングを味わいながらモンスターを攻撃してddを集められるってことで一部では人気のイベントだよ。』 顔をしかめながら話すハナマキ。トビネも僕もきっと同じ顔をしていたと思う。 人気のイベント?ペットを危険な場所に向かわせてまで金が欲しいってことなのか? それとも攻撃されるかされないかの瀬戸際のやり取りをゲームとして楽しんでいるのかも知れない。 『文字通り、クソゲーね。それ。』 トビネが吐き捨てるように呟く。僕も同感だった。 『じゃあ、荒らしって何?イベント荒らしってこと?』 『うん。』 『それって、モンスター狩りアンチってこと?じゃあむしろ良い奴らなんじゃないの。』 トビネの問いに、ハナマキはゆっくりと首を横に振る。 『いや、良い奴らではないかな。アンチかどうかは、分からないけれど。 荒らしは、モンスター狩りに来たリヴリーの邪魔をするんだ。 モンスターではなくリヴリーの方を攻撃してね。』 『何よそれ!』 『うん……。だから荒らしがいる狩り場はめちゃくちゃになってね。 リヴリーは必要以上に傷つくし、時間切れになってモンスターも去ってしまい報酬も得られない。』 『前言撤回、良い奴らじゃなくてクソ野郎だったわ。 ま、でもそんなイベントに参加する方が悪いのよ。同情なんかできないわね。』 益々表情を険しくするトビネと、警戒した視線を絶やさないハナマキだった。 そしてそれを聞いていた僕の嫌な予感は徐々に形になっていくのだった。 『ってことは、今回の仕事って。』 『多分、荒らしを追い出すことだと思う。』 『……。』 僕たちが乗り気になれるわけがなかった。 イベント側にとって荒らしは害悪でしかないだろう。しかしそのイベント自体が害悪なのではないか。 命の保証がされているからといって、そんなデスゲームじみたものの秩序を守ることが果たして救済になるというのだろうか。 カミサマの考えていることはやはり分からない。 『私、やっぱりパス。』 『え?』 突然、しかしきっぱりとトビネは言い放った。 『そんなもの、共倒れしちゃえばいいのよ。』 『でも、解決しないと帰れないんだよ?』 慌てて説得にかかる僕だったが、トビネはそれを制止する。 『帰れなくて何が困るの?私、別にこのままここに残されたって良い。』 あまりの発想に、僕は言葉を吞んでしまった。 帰れなくても良いと、彼女はそう言ったのだ。 『大体、あっちに戻ってもここに取り残されても大差ないわよ。 あっちでこき使われるのも、ここで一人でやっていくのも。そうでしょ?』 『そうでしょ、って言われても……。』 僕は言い淀むしかなかった。しかし考えあぐねている間に今度はハナマキが割って入る。 『しっ。ちょっと待って。音が段々大きく……なって……?』 ふと我に返ると、かすかに地響きのような音がしていた。それも次第に大きくなってきている。 『まさか、こっちに?!』 『まずい、一旦離れよう!』 ハナマキが先導して���ってくれる。僕とトビネも慌ててその後を追って走り出す。 しかし不穏な地響きの音は遠くならず、そればかりかどんどん近づいてきている気がした。 『ちょっと!モンスターって同じ場所にいるんじゃないの?!』 『そのはずだ!でも様子がおかしい、もしかして運営の手を離れて――』 ハナマキが言い終わらないうちに突然の轟音があたりに響き渡る。 『うわあ!!!』 何者かに突撃されたかのような衝撃に、僕たちは勢いよく跳ね飛ばされた。 『いった……』 地面に投げ出された全身の痛みをこらえつつ、なんとか瞼を開いて様子を窺う。 土煙が立ち上る中、その向こうには大きな影が揺らめいていた。 『モンスター……?』 細長く凶悪な八本の脚、こちらを凝視する八つの眼。 その巨体を彩る特徴的な縞模様。間違いない、モンスターのジョロウグモだ。 ギチチチチと、鳴き声のような四肢の擦れる音のような不気味な音を鳴らしながらゆっくりとそれは近付いてきた。 『/hammer!!!』 すると突然の叫びと同時に、モンスターの頭上に大きなハンマーが現れてそのまま脳天へ叩き落とした。 『う、わ……!』 『早く!こっち来てお兄ちゃん!!』 そう言って僕の背後から現れて必死に引っ張っていくのはトビネだった。 『ハ、ハナマキは?』 『あっちでモンスターの気を引いてる!お兄ちゃんも立て直したら加勢して!』 少し遠くの方で何かを切り裂くような轟音が鳴り響いている。 茂み���で僕を連れてきたトビネはすぐさまモンスターのほうへと視線を移した。 その姿はさっきまで面倒くさそうに悪態をついていたものとは異なり、打倒モンスターのために真剣な面持ちをしていた。 『……そんな感じだったっけ、お前。』 『別に。私だってやればできるってだけ。』 そう言ってトビネはモンスターの方へと駆けて行ってしまった。 僕はまだ乱れている呼吸を落ち着かせるために深呼吸を繰り返す。 こうなってはイベントがどうこうなど言ってはいられない。まずはモンスターを倒して体勢を整えなければ。 『よし。』 自分の頬を叩いて気合を入れる。そして二人が押さえているところへ僕も急いで駆けつけるのだった。
『お待たせ!!』 『遅いよ!見て、イベントの参加者がみんな……!』 僕が駆けつけると、そこにはハナマキとトビネの他にも何匹かリヴリーが加勢していた。 しかしそれよりも大勢のリヴリーたちがそこら中に倒れこんでいた。 『これ、は……。』 『やっぱり、こんなイベント、あっちゃダメなんだ。』 歯を食いしばりながら言葉を絞り出すのはハナマキだった。 『どこに行っても、人間がやることなんて結局同じだ。自分と繋がってるリヴリーですら、こんな扱いだ。』 攻撃呪文の傍ら、吐き捨てるようにハナマキは言った。 『モンスターだって、どうやって生まれたんだか。これが、これが本当はあるべき姿なんじゃないかって、俺。』 『ハナマキ……?』 『ちょっと!お喋りはいいからもっと雷よこしなさいよ!』 トビネが叫ぶように怒号を飛ばしてくる。僕たちは口を噤んで呪文を唱えるのに専念した。 ハンマーに投石。雷に竜巻。様々な攻撃がモンスターへ雨のように浴びせかけられる。 次第に動きが鈍くなっていったモンスターは、最後に気味の悪い断末魔を上げて地面へと倒れこんだ。 立ち上る土煙。それが引くとモンスターの亡骸は無く、代わりに大量のddが積みあがっていた。 「いやー!!今日はマジでやばかったわ!」 「それな。運営仕事しろよ。荒らしウザすぎ。」 「てかエリア移動とかってするんだっけ?」 「サイレントアプデかよ。そういうのこそ告知すべきだろ。」 口々に悪態をつきながらddを拾っていくのは僕たちの他に加勢していたリヴリーたち……ではなく、 その後からどこからともなくやってきた人型の姿をした者たちだった。 『ホムね。人と直接通心している方の。』 いつの間にか近くまでやってきていたトビネが小さく耳打ちする。 『ホム無しでいると不審がられるから、早く離れようよ。』 『そうだね……。そういえば、ハナマキは……?』 『カイリお兄ちゃんなら、もうあっちで待ってるよ。さっきワープホールが現れたんだって。』 そしてトビネはホム達に見つからないようにその場を後にする。 ぐったりと倒れこんでいたリヴリーたちの姿はいつのまにか消えており、それを目の端に捉えながらも僕もトビネの後を追った。
『カイリお兄ちゃん。』 『うん。じゃ、帰ろうか。』 『待って。』 僕はワープホールに入ろうとする二をと止めた。 『ハナマキ。さっきの何だよ。』 『さっき?』 『あるべき姿って、言ってだろ。あれ、何だよ。』 僕は帰る前にどうしても確かめておきたかったのだ。 モンスターを攻撃していたとき、豹変したかのようなあの口ぶり。まるで、あの時みたいな様子が僕にはどうしても見逃せなかった。 『何って、そう思ったってだけの話だ。』 『兄貴は!いつも、そうだ。』 ハナマキの変わらない表情に苛立った僕は、つい昔の呼び名を使ってしまう。 しかしそのことに自分も気付かず、溢れる言葉を押さえることができなかった。 『勝手に色々思い込んで、勝手に決めて。それで勝手に壊すんだろ。 僕は今度こそ、ごめんだ。』 表情を強張らせるハナマキ。しかし何も言わずただ視線を落とすだけだった。 『ツグトお兄ちゃん!』 『アカリも、いい加減その呼び方やめろよ。カミサマにも言われただろ、もう僕たちは僕たちじゃないんだって。』 そう言うと、トビネは大きく目を見開いて押し黙った。 沈痛な空気が漂う中、ワープホールから気の抜けた声が聞こえてきた。 「おーい、何してるの。もう一日、やる?」 カミサマの声だった。僕たちは視線を合わせないまま、各々ワープホールをくぐっていく。 すぐに訪れる暗闇が、その時だけは僕にとって唯一の救いのようにすら思えたのだった。
「はい、おかえり。……おや?」 よそよそしい態度を取る僕たちの様子を見て、カミサマは一瞬きょとんとしていたが、すぐに楽しむような気配を漂わせてきた。 「おやおや、きみたちも喧嘩するんだね。そんなに楽しいところだったのかな?」 『楽しいわけないでしょ。』 すぐに食って掛かったのはトビネだった。 『もう二度とああいうのはやめて。今度こそ出て行ってやるから。』 「もしかしてそれって脅し?すごい!神なのに、初めて脅されちゃった。」 『うっざ。』 そう言い捨てて、トビネはまたどこかに姿を消した。 ハナマキはいつものようにすぐに横になって眠っていた。 一人取り残された僕は、やり場のない感情を持て余したまま突っ立っていた。 「きみも休んでいいよ。それとも、私に何か用事?」 「……いえ。」 流石にカミサマ相手にこの抱えているわだかまりをぶつけるわけにもいかない。 僕はいつもの居場所に腰を下ろして、瞼を下ろした。 現世であんなことを言ってしまったせいか、僕の夢見は久しぶりに酷く悪いものとなるのだった。
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shukiiflog · 7 months
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ある画家の手記if.39  告白
三人で家族旅行をして、香澄の睡眠も落ち着きだしてからしばらく経ったある日に、情香ちゃんは唐突にこの家を出て行った。 もともとこのままずっとここにいる気じゃないのは僕も香澄も分かってたし、出ていくことに変な他意はなくて、そろそろいつもの体を動かす忙しい仕事に戻りたくなったんだろうなと思った。
荷物もないし玄関まででいいというから、香澄と二人で玄関で見送る。 一人靴を履いた情香ちゃんは玄関で香澄の頭を髪が爆発したみたいになるまでわしわし撫でたあとで、満足したみたいに笑った。 「ん。もうそんな痩せこけてないな」 「…うん。ありがとう。情香さんの料理おいしかった」 情香ちゃんが香澄をまっすぐ見つめる。 「困ったらいつでも呼びなよ」 「うん」 「…香澄の目は綺麗だな」 そう言って情香ちゃんが香澄の頭を両手で挟んで持って引き寄せ て 「?!」 「ちょっ…」 香澄の目元に軽くキスしていった。香澄はフリーズして目をぱちくりさせてる。 僕は後ろから香澄を抱きしめて牽制する。 「…情香ちゃん、や、やめて…。香澄口説かないで」絶対僕が負けるから。 「そう思うならもう少しお前も大人になるんだな」 情香ちゃんは笑いながら颯爽と扉の向こうに消えていった。 「……。」 「………。」 室内に残された二人でしばらく同じ体勢のまま固まる。 「……香澄…情香ちゃんに心変わり「してないよ?!」 つっこまれるみたいに否定されてほっと息をつく。…へんな感じだ。前だったらそんな、香澄が誰を好きだって、こんなに焦ったりしなかったのに…今僕に気持ちの余裕がないのかな、家族になろうって言ったときだって僕は、香澄にほかに彼女とかがいるならそれで…って思ったり…してたのに。 ……もしかしてこれが独占欲ってやつかな。 もやもやを新鮮に感じながら、香澄に提案する。 「…ねえ香澄。僕はこれからどうしてもやりたいことがあるんだけど、香澄も手伝ってくれる?」 香澄は後ろから抱きしめてくる僕の腕の上に手を乗せて、僕の足の上に足を乗せて、僕もそれに合わせて足をぶらぶらさせたり体をゆらゆらさせて二人で玄関先で一緒に揺れる。 「いいよ。やりたいこと?」 僕はそのまま足の甲に香澄を乗せて二人羽織みたいな二足歩行を戯れにしながらリビングまで戻った。 香澄をソファに待機させると、家族旅行で買ったばかりの防寒具一式をすばやく取ってくる。 ソファに座った香澄にぐるぐるマフラーを巻いて頭に大きめのニット帽をしっかりかぶせて耳まで覆った。体にコートをかける。 僕は寒さに強いから適当なコート一枚でいいや。 「よし、出発」 二人で家を出て、すぐ隣のひらけた公園まできた。 まだ雪が積もったままで、隅のほうに少しだけ子供が雪で遊んだあとが残ってる。 一番綺麗に高く積もったあたりを二人で探して見つけた。 「…よし。香澄、雪だるま作るよ」 僕の真剣な声にとなりの香澄がふっと息を噴き出すみたいに笑った。 「…え。なにに笑ったの」 香澄は手袋をした手で口をおさえて笑いを堪えるみたいにしてる。 「な、なんでもないよ…作ろっか」 …また僕へんなことやらかしたのかな…でも香澄は嫌な気になってるわけじゃないみたいだ 「香澄…」 じと…と香澄を半目で見たら、香澄が笑って両手を掲げて降参しながら白状する。 「直人かわいいなと思ってつい、だってすごく気合い入ってて、ほんとに真剣にやりたいことみたいだったから、なにかと思ったら…」 まだ笑ってる。雪だるまは子供の遊びじゃないんだぞ。 二人で小さな雪玉を転がしながら、僕が胴体、香澄が頭を担当することになった。 香澄が凍った空気に白い息を吐く。 「はー…… 今日からもう情香さんいないんだね…」 「香澄が呼べばきっといつでもまた来てくれるよ。僕が呼んでもあんまり来てくれないけど…」 「そういえば直人は情香さんと一緒に暮らしたことないって言ってたけど、二人が一緒にいるのすごく自然だったよ。幸せそうだった。どうして別々に暮らしてたの?」 「………」 僕の返事がそこで途切れたから香澄は慌ててつけくわえた。 「ごめん、口出しなんて…「いや、なんでも聞いていいよ。香澄も家族なんだから」 笑って香澄が謝るのを遮ったものの、質問には答えられずに、話は自然と別のことにうつっていった。 かなり大きくなった雪玉を、バランスをとりながらふたつ重ねて、二人で支えてしっかり立たせる。 長身の男二人で丸め続けた雪だるまの身長はなかなかのものになった。少なくとも子供が集まって作れるサイズ感じゃない。 「僕は目を探してくるから、香澄は鼻か口を見つけてきてくれる?」 「なんでもいいの?」 「いいよ」 二人で手分けして公園内の木や石を見て回って、手頃なものを探す。僕は黒々としたつぶらな石の瞳と元気に広がった枝の腕二本を見つけた。香澄も尖った石を持ってきて、顔の真ん中に鼻にして刺した。 目も腕もついて、ちょっとだけ天を仰ぐ顔の角度で、かわいくできた。完成だ。 「香澄、ケータイ持ってきた?」 「持ってるよ。写真撮ろうか」 「うん、……誰か…撮ってくれる人がいたら…」公園内は平日だからか閑散としてる。香澄と僕と雪だるまを撮ってくれそうな人が通りがからないか待ってみる。 すると一匹の大きなシェパードが遠くから僕らのほうに向かって猛スピードで走り寄ってくるのが見えた。 人なつこいのか、雪だるまに興味があるのかな。 「首輪つけてるね、飼い主に写真が頼めないかな」 二人で飼い主の影がどこかにないか見回す。 すぐに体に触れられるほど近くにきた犬の頭を撫でる。吠えたり噛んだりもしない、よく躾けられたいい子だ。 「直人、犬には嫌われないんだ」 「ね、猫だけだよ…あんなに嫌われるのは」 「犬も好き?」 聞かれて一瞬ぼうっとする …似てるってよく言われるな 犬は好き 特に大きい犬は僕がぎゅって抱きしめても骨を折ったりしなくて安心だし 犬は好きだったよ 飼い主が …いや、飼い主のことだって別に嫌ってたわけじゃ その時、雪上に大きな指笛の音がまっすぐ空間を貫通するように響き渡った 「…あ、この子の飼い主さんかな」 香澄が音のしたほうに振り返って、丘の上の散策路に人影を見つけた。 笛の音で犬は全身をぴしっと引き締めてまた一直線に音のしたほうへ駆け出した。 犬の…首輪に下がってたあれは名札? BU…STER…? 「come,バスター」 散策路の人影が一言発した 介助犬とかの訓練用に共通で決められて���命令語だ 犬と一緒にすぐ木立の陰に消えていって僕にはほとんど見えなかった 襟を立てたロングコートだけちらりと見えた 「………人違い…」 …だと思う。あの人はこの時期に日本に滞在してることは滅多にないし ここに居るほうが変だ 「直人」 横から怪我してないほうの腕を香澄にひっぱられた。顔を覗き込まれる。 「変な顔してるよ。大丈夫?」 「…うん。なんでもない」 いつも通り笑ったつもりだったけど香澄に手袋をはめた手で顔を挟まれる。…心配かけちゃってる。 「…さっきの人、知り合いだった?」 「…ううん、人違いだよ」 今度こそうまくちゃんと笑って、香澄をぎゅっと抱きしめる。 「雪だるま…大きく作ったからきっと明日もまだちゃんと残ってる。今日は写真は諦めて帰ろうか」 「…うん」 二人で雪だるまを公園に残して家のほうへ歩き出す。 まだちょっと心配そうにする香澄の頭をわしゃわしゃ撫でて頭を胸に引き寄せてこめかみにキスした。 香澄の右手から手袋をすぽっと取ると、素手になった香澄の指に自分の指を絡めて、しっかり繋いだ手を僕のコートの左ポケットに突っ込んだ。 夜。久しぶりに二人だけで夕飯を作って食べる。 ひとり分の賑やかさが消えて、ほんの少しだけ寂しいような、不安なような。 それをかき消すように二人でいつもより手間をかけて凝った料理をいくつも作った。 食事が終わって片付けも済んで、僕がソファに座ったら香澄が横からするりと僕の膝の上に座った。…かわいいな。 香澄の体を包むように抱きしめる。 「…こういうの久しぶりだね」 って、自分で口に出しておいてだんだん恥ずかしくなる。 情香ちゃんもいたときはそういうことを意識して避けてたわけではなくて、自然とそういう気分にはならなかった。 「…香澄、こっち向いて」 僕の腕の中でゆったりリラックスしてた香澄が顔をあげて僕を見る、手で顎をとって軽く開かせると舌をさし入れて深くキスした。香澄も目を閉じて舌が口内でゆっくり絡み合う。一度少し唇を離してもう一度、角度を変えてもう一度、そうやって何度も深いキスを繰り返してるうちに、身体の芯からじんわり溶けそうになる。…気持ちよくて目が潤む。 一旦休憩。口を離すと少しだけあがった息が至近距離で混ざり合う。 「…香澄… …したい」 正直にこう言っても大丈夫。香澄はもう嫌なときはちゃんと嫌って言える。迫られても襲われても、意に沿わないときは自分の身を守れる。…帰ってきてくれた。それがすべてだった。 香澄の両腕が僕の背中に回って、ぎゅっと僕の体に絡められた。 「……うん…」 首元にあてられた香澄の顔は見えないけど、ちゃんと聞こえた、返事。 そのまま香澄の脚の下に腕を通してもう片腕で背中を支えて、横抱きにしてソファから抱え上げる。 左腕に少しだけ痛みがあった。負担がそっちにいかないように香澄の体の重心を少しずらす。 ドアを開けっぱなしだった僕の部屋に入ってベッドの上に香澄をおろすと、少し赤らんだ頰にキスを落とした。
続き
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ichinichi-okure · 8 months
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2023.7.23sun_tokyo
お昼過ぎに起床。昨日のバーベキューの疲れを引きずっている。 チャイムの音で目覚めたような気がしたが、ドアを開けても誰もいなかった。
部屋の模様替えや仕事を軽く済ませたのち、30分ほど歩いて荻窪駅へ向かう。
16時ごろ、歌人の友人たち(宇田川美実・篠原治哉・鈴木黒目)と合流。 数日前に「荻窪最強の自販機を探すので来てください」と言われ、「さっぱりわからんが行くしかないよなあ!」と元気よく返事したのである。
ーーー
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早々に出くわした、1L飲料と「ふるんふるんQoo」のみを扱う癖(くせ)自販機。 古めかしい取り出し口に1kgの物体が落ちるのはすこし怖い。
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ときどき見かけるニュータイプのゴミ箱(右)は、周囲が荒れにくい形状でラブリー。 看板がちょうど治安の分水嶺になっていた。
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なぜか新旧デザインが並ぶカルピスソーダ。 経緯についてあれこれ想像して言い合う。
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一時期の「ヤクルト1000」ブームで品薄が相次ぐ中、この自販機にだけは依然として在庫があったらしい。
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自販機に隠れる自販機。 マウンテンデューが100円(安い!)なのも相まって、隠しコンテンツ感が強かった。
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「これが置かれて以来ドアは一度も開かれていないということ……初歩的なことだよ」と、シャーロック・空き缶・ホームズ。
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初めて入る「古書かいた」がかなり好みで、本を数冊購入。 紙袋っておれめっちゃ好きだなー。
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道中で見つけた「ご自由にお持ちください」の椅子を、ちょうどよく椅子を探していた宇田川宅へ運んで小休憩。
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今回もっとも異質な存在感を放っていたのが、なんでもない顔でコカコーラ自販機の横に並ぶインディーズの自販機(左)。
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ぶどう・もも・オレンジ等とだけ書かれている、ジュースのイデアたち。 さらには「金目鯛飯膳」「金華鯖飯膳」、990円のクラフトビネガーなど、常識では考えられないラインナップを惜しげもなく披露する。
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右のデザインに合わせてそれっぽい画像を用意したと思われる、左の森のありえないガビガビさをひとしきり面白がる。
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19時ごろ、歌人の武田ひかがさらに合流。 「大きい公園に行きたい」というオーダーを受け、石神井公園まで片道1時間ほど散歩することに。
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ポップな「けいさつをよびます!」が愛おしい。
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ボクシングジムの隣の店名が「こぶし」であるうつくしさ。 芋づる式に、神保町のカレー屋「パンチマハル」を思い浮かべる。
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「今から飲食店を見つけるたびにカウントして、10個目のお店に絶対入りましょう」と、鈴木黒目の楽しげな提案。 初めて入店した「福しん」の餃子サブスクは、理論上30日間で540個もの餃子を無料にし得る。
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石神井池に50年前からあるらしい「聖衣」という石像。 遠目に見るとその不確かさが恐ろしく、近づくと高さが5.6mもあって普通に恐ろしい。
ーーー
改札で3人を見送り、宇田川美実と歩いて帰る。 かれこれ3年ほどの付き合いになる我々は、お互いにちょうど人生の転機を迎えている。
冗談混じりに「To Be, or SUPER TO BE(生きるか、めちゃくちゃ全力で生きるか)」みたいなことを言ったら、ほんとにそうだよね、と力強く頷いてくれた。 せっかくなので、おれたちはSUPER TO BEでやっていきます。
ーーー
この日は16km歩いたみたいです。我々は散歩が大好き。
-プロフィール- 夜夜中さりとて 24歳 東京 ライター・歌人・DJ Instagram:https://www.instagram.com/superrocketspeed/ Twitter:https://twitter.com/yorusari HP:https://yorusari.studio.site
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tanakadntt · 11 months
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三輪秀次の小説(二次創作)
きみは河を渡る
 切れた電線はうねり、パチパチと鳴っている。もうもうと立ちのぼる埃と煙は視界を狭める。降ってくる灰を吸い込んで、喉が痛��。ゴホと咳が出た。
 空を雲が厚く覆っていた。
 時折、低く戦闘機が飛ぶ。空気を震わせる爆音も、いつの間にか聞こえなくなる。
 無駄を知り還ったのだ。替わりにヘリコプターのバタバタという回転音が耳に障る。避難を促すサイレンがとうとう途絶えた。
 道路や瓦礫の上にうち捨てられた、おびただしい数の死体ももはや何も言わなかった。
 それらの胸には皆、着衣の上から同じ箇所にこぶし大ほどの穴が開いていた。彼らが開けていったのだ。心臓の脇を的確に単調にえぐり取っていく様子は、実りの季節を迎えて収穫にいそしむ農夫のようだった。
 鋭い鉄の匂いが鼻の奥を刺す。血だまりに足が���られる。地面のいたるところにできた血液の浅い湖は徐々に固まり、粘度を持ちはじめていた。その上に、ぽつりぽつりと何かが落ちてくる。
 ……雨。
『姉さん』
 三輪は姉を探していた。
「お断りします」
 三輪の返事に根付は下がり気味の眉をさらに下げた。
「うーん、やっぱり無理かねえ」
「去年に引き続き、申し訳ありませんが……」
 これ以上は目を合わせないように顔を伏せて押し黙る。可愛げのない態度だったが、断る選択肢しか持っていない。
 ボーダー本部メディア対策室である。
 いかにもオフィス然としたレイアウトだ。メディア対策室の名の通り、棚を並べた一角があり、派手なロゴのついたグッズたちが飾られている。
 棚の横にも小ぶりの段ボールがいくつか置かれ、中にはビニールに包装された何かが入っていた。
 さらにはミニスタジオのようなものがつくってある。
 雑然としているが、外部の人間への窓口だけあって、明るい開放的な空間であった。
 三輪がめったに訪れない部署だ。それも入り口で済ませる所用くらいで、もしかしたら、ボーダーに所属して四年近く、初めて足を踏み入れたかもしれない。
 A級隊員の嵐山をデフォルメしたぬいぐるみの飾ってあるテーブルで、茶を勧められている。早く作戦室に帰りたい。自然と眉間が寄ったが長い前髪に隠されて、根付が気づいた様子はなかった。おそらく、気にしてもいない。
「原稿はこちらで用意するし、内容はちゃんとチェックしてもらうんだけどね、ダメかね」
 根付が頼んでいるのは、来月に行われる三門市主催の追悼式典のスピーチだった。
 近界民による大規模侵攻から四年目の式典となる。
 公会堂のステージに設置した祭壇を花で埋め尽くし厳粛に行われる。市外からお偉方や著名人がたくさんやって来て、それぞれ追悼の意を表わす。最後に遺族代表数人にお鉢が回ってくる。大人枠が何名かと青少年枠が一名。
 三輪に白羽の矢がたったのはその青少年枠だった。理由はボーダー隊員で遺族である人物のうち、比較的年下で一番長く所属しているからである。
 日頃から「ボーダーの印象向上」を仕事にしている根付からの依頼は筋の通ったものだった。
 しかも、直属ではないが上役である。
「三輪くんには業務外のことを頼んでいるのはわかっているんだけどねえ」
 人を丸め込む技量の高さがなんぼの職に就いている根付だが、実はかなり弱気に出ている。
 理由はわかる。
 三輪に式典のスピーチを依頼するのは初めてではない。
 一年目のとき、三輪は流されるままに引き受けたものの、原稿に目を通した段階で押し寄せてきた感情に引きずられて過呼吸を引き起こしてぶっ倒れ、騒ぎになったのだ。当然、本番のスピーチは見送られた。彼が中二のときの話だ。
 二年目は話がやってこなかった。当時、所属していた隊の隊長である東が反対したのだと思う。頼まれたとしてもとても務まらなかっただろう。
 三年目は根付は本部長を同伴してわざわざ頼みにきた。しかし、断った。三輪にとってこの依頼は荷が重く、片手間にできるものではなかった。高校生になったばかりで何かと忙しかったし、そのころ広報部隊としてメディア展開をはじめた嵐山隊を売り出す根付の派手な手法に若干いやな予感がしたのだ。
 そして、四回目の式典である。
 遺族でボーダー所属、さらに今年は初めて自分の部隊を結成している。
 千六百人超の死者行方不明者を出した異世界からの侵略戦争によって、最愛の家族を失いながらも生き延びた子どもが立派に成長し、隊長となって隊員を率い街を守っている。
『これからもボーダーの一員として、三門市を守っていくことを誓います』
 おそらく、そんな言葉で締めくくられるであろう、未来への宣誓。
 三輪もボーダーの印象がよくなることに否やはない。
 いまのところ命令はされていないが、任務ならば遂行しなければならないというのもわかっている。
 ただ、ことこれに関してはそつなくこなせる自信はなかった。
「ちょっとしたインタビューもあるけど、一局に絞るから」
「……」
元々、要領のいいほうではない。愛想はかけらも持ち合わせていない。人前でしゃべることも苦手だ。ましてや全国に映像が配信されるなどと聞くと気が遠くなる。
 それだけではない。
 ……雨はあっという間に激しくなった。
 血のにおいに、ドブのようなそれが加わるなか、ようやく彼は探し人に出会えた。
 折り重なるように積み上がった死体の山が崩れたのか、その脇に彼女は転がっていた。
 他のそれらと全く変わることなく、彼女の胸にはぽっかりと穴が開いていた。死に神は何もこぼさずに等しく命を刈り取っていったのだ。
「姉さん」
 誰か。
 誰か姉さんを。
 当日は各メディアも入り、騒がしくなるであろう時期を避けて、そこを訪れることにしている。
 追悼の意を込めた公園は市街地に近い高台に造られていた。
 本当の追悼の場所は、いまだボーダー管理下の警戒区域だ。
 まだ真新しい石碑が幾本か建っている。
 円柱の形をした石碑には名前がただ刻んである。犠牲者の名前だ。
 三輪は一つの石碑の前でたたずんでいた。腕を上げ、石碑にそっと触れる。指を滑らせる。知っている名前もある、知らない名前もある。ゆっくりと滑らせていく。
一点で指が止まる。
 彼女の名前だった。
『誰か』
『誰か姉さんを助けて』
 目の前に広がる風景はいまも鮮やかだ。音も匂いも。足にまとわりつく重さも。降ってくる雨の粒まで。
 足下の彼らはみな目を開けているが、そのまぶたは動かない。その指は動かない。
 今の彼は知っている。死体は苦しまない。
 大丈夫だ。
 向こう岸で、穏やかに微笑んでいる。そこまでの距離はいつでも一歩だ。ひとあし、踏み出すだけで届くほどに近い。
時間は流れる。仮にマイクの前に立ち、メディア対策室のしたためた美しい文章を読み上げても、もう息がくるしくなることはないだろう。それでも、引き受ける気にはならなかった。
 三輪は立ち上がると頭を下げた。
「お役にたてず、申し訳ありません」
強引に話を終わらせる態度を根付は咎めず、一緒に席を立った。
「残念だけどねえ。来年もまたお願いすることになると思うけど」
 来年は五年という節目の年のために大々的になるという。おおっぴらに全国規模でボーダーの存在をアピール出来る数少ない機会だ。遠征には金がかかる。そのスポンサー集めも兼ねているという。民間組織であるボーダーにとって、金の話はいつでも切実だ。
「まあ、気にしないでいい、他に方法はあるからね」
 頼りになるだろう、と彼はにやりと笑った。
 これからの物語を紡ぐことは彼にとっては今までの物語をひとまず終わらせることになる。彼にはそれはどうしてもできない。
 向こう岸はまだそこにある、いつでも行ける。死者たちは微笑んで待っている。一歩、踏み出せばすぐに会える。
黒い河の冷たい流れに脚を膝まで浸し、目の前の彼岸を見つめて彼は立っている。
この場所から立ち去りたくはないのだ。
 いまは、まだなお。
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kennak · 9 months
Quote
タイトルどおりだ。あの事件から5年以上が経った。心の傷も癒えてきた。そろそろ増田で語ってもいいだろう。予防線で悪いが、あまり長文を投稿することはない。読みにくい箇所はテキトーに読み流してほしい。悪いけど、思い出したくないことだから、わりと書き殴らせてもらう。推敲はほぼしない。花見シーズンの日曜日だった。当時は地元の市役所に勤めてて、労働組合主催の新人歓迎会だったんだが、皆でレジャーを楽しんでいた。組合のお金で遊びに行けることもあって、幹事連中は食料品やお酒をガッツリ買い込んでた。標高でいえば1kmはあるだろうか、そんな高い山にテニスコートとかサッカー場がある公共施設があって、そこのテニスコート(クレイコートだった)でみんなでテニスをしたり、森林公園を散歩して遊んでたよ。羽高湖だったかな。懐かしい。メンバーは、比較的若手の職員が20人ほどだった。そこまで詳しく覚えてない。昔のことだしな。で、昼が近づいてきて、さあ湖に行ってバーベキューだ、という時になった。当方はテニスを満喫して気分が高まっていた。といってもスポーツやるようなタイプじゃないし、なんなら今風の言葉でいうとチー牛とか言われるタイプの人間になる。すでに誰かが管理棟からバーベキューセットを借りてきてるのが遠目に見えて、テニスコートの前面道路を横断しつつあった。それで、さぁメシの準備だというところで、テニスのボールが自分のすぐ目の前に飛んできて、右を向くと同期の女がラケットを振ったと思ったら、その子がしゃがみ込んで、胸を押さえて、そのままクレイコートに倒れ込んだ。自分は捉え切れてなかったんだが、テニスのボールが胸のあたりに命中したのだ。当たり所が悪くて、こんなことになってしまった。当時二十代だった自分は、大慌てで声を出して、その同期の子に駆け寄った。ほかの集まりの参加者は遠目から見てる感じで、何人かがこっちに小走りできていた。自分はすぐに、見様見真似で心臓マッサージを始めた。焦っていたので呼吸の確認はしてない。マッサージは、その子のTシャツと厚手のトレーナーの上からだったが、何とかなるだろうと思っていた。近づいてきた人の中にひとりだけ40代ほどの女性がいたから、「代わってくれ」と言ったけど、首を横に振ってるような、なんとも言えない様子だった。その後も心臓マッサージを続けたけどダメだった。意識を失ってる人って、間近で見るとマジで人形みたいだった。呼吸がなくても生きてるのはわかるけど、でも異常に脱力していて、本当に人形みたいだった。厚手のトレーナーが邪魔なのか?? と思ったから、脱がしてシャツだけにして、消防の講習で習ったのを思い出しながらマッサージを続けた。でも、ぜんぜん意識が戻らない。テニスコートの入り口を見ると人がまばらだった。まずいと思った(※焦っていたからわからなかったが、みんな対応に走っていたのだと信じたい)。人工呼吸をやるしかないと思って、さっきの40代ほどの女性を見た。傍に人だかりが増えていた。その女性は、めっちゃビビった様子だった。諦めて視線を同期の子に戻して、人工呼吸を始めた。気道は確保したが、医療関係者じゃないからできていたかは不明だ。何回か人工呼吸をした後に、また心臓マッサージに戻って、「戻れ、戻れ」と口ずさんで、三回目の人工呼吸をしようとしたところで、「おい」という別の男の声が聞こえて、AEDを持って来ていた。「やってくれん?」と自分が言うと、「やり方がわからんけえ。お前がやるんど」と言い返された。自分もやり方はわからなかったが、AEDの箱を開けると、何やら説明の音声が始まって、同期の子のシャツを脱がせて、下着の横に電極パッドを嵌めて……。AEDの指示どおりにはやれたと思う。いや、わからんけど。やれたとは思う。で、真横や真後ろを見たら、もう参加者全員がこっちを見ていて、どうしようかと思っていたら、救急車じゃなくって、管理棟の人が乗った軽バンがテニスコート内に入ってきた。施設の職員に同期の子を渡すと、軽バンの後部座席を倒して、横に眠らせるみたいにしてバンの後ろ扉が閉まって、そのまま全力ダッシュで車は走って行った……。(追記 救急車じゃないのか?と自分も感じたが、固定式の車止めの幅の関係で、救急車が施設内に入れなかったのが理由になる。書いてなくて申し訳ない)この時、周りからはどう思われていたんだろうか。それはわからない。わからないということにしたい。みんな、今日はもうこれで終わりだな、みたいなどんよりとしたムードだった。自分に声をかける人はいなかった。いや、元々親しい人が参加してなかったのもあるが。次の週からは、針のむしろみたいな感じになった。視線でわかるんだ、同じ階の男性職員は自分を見てクスっと笑ってるし、女性はあからさまに自分のことを避けてる。それが仕事上のコミュニケーションにまで影響していた。イベント用品を取りに行く小間使いすら任せてもらえないし、何人かで集まって会議のセッティングをする際もハブられるようになった。連絡や報告も、口頭でのやつはあまり回してもらえない。苦しかったのは、ある時だったか、エレベーターで書庫にあるファイルを運んでいて、職場近くまで下りた時だった。エレベーターの扉が開いた時に聞こえてきた。「あいつキスしてたよ」「変態みたいだった!!」「ハアハア言ってたって……まじキモイ」「ブラまで取ろうとしてたって」みたいな自分に関する噂が直接、聞こえた。30代ほどのやや上の世代の職員が噂をしていた。あの時ほど救命活動を後悔したことはない。あの時、無理をしてでもあの女性に代わってもらえばよかった、と当時は思っていた。そうすれば、こんな思いをせずに済んだのに。結局、同期の子は命は助かったけど、しばらく入院が必要になったと聞いた。その子が復帰するまでの間に、自分は会社に行けない状態になっていた。事故から三週間くらいだったか?当時、憂鬱を通り越してうつ病寸前になっていた。メンタルクリニックにこそかからずに済んだが、有給を半分ほど使ったところで、市役所を辞めると職場長に伝えて、それから二度だけ人事課に出勤すると、離職の手続きが終わった。AEDのことは上の人には言わなかった。なんかもう、どうでもよくなっていた。人間が信じられないという気持ちだ。わかるだろうか。今は、市役所があったのと同じ広島県の東の、さらに端っこにある中規模工場で働いている。相当地味な仕事だけど、自分には合ってる。自分は優れた人間じゃないけど、父親や祖父が優れていたためか家にお金はある。つまんない人生になったけど、老人になった後はそれを頼りにしたい。今日、自分が伝えたいことがひとつだけある。確かに、法律とか倫理とかいう観点からすると、自分の行いは正しいし、あの市役所の連中は間違ってる。今でも惨めな気分だ。でも、それは理念のうえでの話であって、現実は違う。現実世界だと、自分みたいに見た目がいまいちなヤツは、イジメを受けたり(あいつキッショとか職場で言われたり)するわけだろう。それが現実だ。だから、状況を見て判断する必要がある。自分は、あの同期の子を助けたいと思った。だったらあの時、自分じゃない誰かに託さないといけなかった。助けようとしてはいけなかった。それだけだ。嫌な話を聞かせてしまって申し訳ない。でも、死ぬまでにはどこかで話したいと思っていた。当方、はてなは好きだけどブログは開設していない。ここしかないと思った。以上になる。読んでくれてありがとう。できればコメントも読んでみたい。わがままでごめん。
AEDを使ったことを後悔してるかもしれない
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oharash · 10 months
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余花に吉兆
1.  友人あるいは恋人のようなことを始めたら、もっと分かり合えて親密な空気だとか柔らかな信頼みたいなものが生まれるかと予想していたが、俺らの空間は特段何かが変化することもなく、近すぎず遠すぎずの関係が果てなく伸びていくのみだった。  大切なものを手のひらに閉じ込めるような日々だった。彼の大きな体は存在感だけでもどこか騒々しかったが、無音より心地よかったのだ。
 うずたかく積もった瓦礫がようやく街から消える頃、俺は人生初の無職デビューを飾った。事務所は畳んだし復興支援委員会の任期も終わった。警察や公安、行政から相変わらず着信や不定期な依頼はあれど、様々な方面からの誘いを断り所属する場所がなくなった俺はぼんやりと初夏を迎えることとなった。  無職になりまして。とセントラルの定期通院の帰り、待ち合わせた居酒屋で焼き鳥をかじりながら言うと彼は呆けた顔で俺を見た。エアコンの効きが悪いのか、妙に蒸し暑くてふたりとも首筋にじんわり汗が滲んでいる。 「お前が?」 「はい。しばらくゆっくりしてから次のこと考えようと思って」 「お前にそんな発想があったとは」 「どういう意味ですか」 「休もうという発想が。いつも忙しく働いとったろーが。そもそも趣味や休みの過ごし方をお前の口から聞いたことがない」 「それ元SKたちにも言われましたわーー。人を仕事人間みたく言わんでくださいよまあその通りですけど。今までやれなかったこと全部やったろ、と思ってたんですけど10日で飽きました。福岡いるとどうしても街の様子気になっちゃうしホークスだ〜〜♡ て言われるし、どっか旅行でも行けばって言われるんすけど全然そんな気になんないんすよ。来月には引きこもりになってるかもしれねっす」  そしたら会いに来てくださいね♡ と言ったら、彼は釈然としないような、そして何かに耐えるような、そんな顔をした。  店を出ると強い風が頬を打った。まだほんのわずか残っていた春の気配が吹き飛んでいく。じゃあ、と手をあげかけたところでデカい手が伸びてきて顎を掴まれた。「飲み直すぞ、うちで」「ひゃい?」かくて俺はそのままタクシーに突っ込まれ(この人と乗る後部座席は超狭い)、轟邸へお持ち帰りされることとなった。
 暗闇の中で���ずくまる恐竜みたいな日本家屋。数奇屋門と玄関の間だけで俺の1LDKがすっぽり入りそう。靴を揃えて上り框に足をかけると今度は首根っこを掴まれた。連行されるヴィランそのままの格好で俺は廊下を引き摺られ居間の隣室へ放り込まれる。今夜は何もかも展開が早い。「なになに? 俺には心に決めた人がいるんですけど⁉︎」「使え」「は?」 「この部屋を好きなように使え。しばらく置いてやる」 「もしかしてあなた相当酔ってますね⁉︎」 「あれくらいで酔わん。お前が、ヒーロー・ホークスが行くところがないなんて、そんなことがあってたまるか」  畳に手をついて振り仰ぐ。廊下から部屋に差し込む灯りは畳の目まではっきりと映し出しているけれど、彼の表情は逆光でわからない。 「俺、宵っぱりの朝寝坊ですよ」 「生活習慣までとやかく言わん。風呂を沸かしたら呼びに来てやるからそれまで好きにしてろ」  けれど俺が呼ばれることはなく、様子を見に行くと彼は居間で寝落ちていたのでやっぱり酔っていたのだと思う。デカい体を引きずって寝室に突っ込んだ。風呂は勝手に借りた。
 酔ってはいたものの彼の意思はしっかり昨晩にあったようで、そして俺も福岡に帰る気が全くおきなかったので、出会い頭の事故のように俺の下宿生活は始まった。  「うちにあるものは何でも好きに使え」なるありがたいお言葉に甘えて俺は巣作りを開始した。足りないものはAmazonで買った。徹夜でゲームしたりママチャリで街をぶらついたり(帽子をかぶってれば誰も俺に気づかなかった)ワンピース一気読みしたり豚肉ばかり使う彼からキッチンの主権を奪いそのまま自炊にハマったりもした。誰を守る必要もなく、誰かを気にかける必要もない。誰を満足させる必要もなかった。彼が出かける時間に俺は寝ていたし夕飯も好きな時間に食べていたので下宿より居候の方が正確だったかも知れない。誰かとひとつ屋根の下で暮らすことへの不安はすぐ消えた。早起きの彼がたてる足音や湯を使うボイラー音、帰宅時の開錠の音。そんな他人の気配が俺の輪郭を確かにしていったからだ。  ヒーローを引退した彼は事務所を売却したのち警備会社の相談役に収まっていたがしょっちゅう現場に呼ばれるらしく、出勤はともかく帰り時間はまちまちだった。まあわかる。治安維持に携わっていて彼に一目置いていない人間はまずない(治安を乱す側はなおさらだ)。「防犯ブザーのように使われる」とぼやいていたが、その横顔にはおのれの前線を持つものの矜持があった。どうしてか俺は嬉しい気持ちでそれを見ていた。
2.  ある夜、俺は玄関で彼のサンダルを履き外へ出た。引き戸を開けると明るい星空が広がっていて、それが妙に親しかった。縁側に腰掛けてぼんやり彼方を眺めると星の中に人工衛星が瞬いている。ほとんどの民家の明かりは消えていて、夜は少し湿りそして深かった。紫陽花だけが夜露に濡れて光っていた。  知らない街なのに、他人の家なのに、帰らんと、とは微塵も思わなかった。俺はここにいる。知らない場所に身ひとつで放り出されてもここに帰ってくる。呼吸をするたびに心と体がぴったりと張り付いていった。  気配を感じて振り返ると、あの人がスウェットのまま革靴を引っ掛けて玄関から出てくるところだった。 「風邪をひくぞ」と言われ何も答えずにいると犬か猫みたいにみたいに抱えられ、家の中に連れ戻された。  それからほとんど毎夜、雨でも降らない限り俺は外に出て彼方を眺めた。そうすると彼は必ずやってきて俺を連れ戻した。ある夜「一緒に寝てください」と言ったら彼は呆れたように俺を見下ろして「お前の部屋でか」と言った。そうかあそこは俺の部屋なのか。「あなたの部屋がいいです」と言ったら視線がかちあい、耳の奥で殺虫器に触れた虫が弾け飛ぶみたいな音がして、目が眩んだ。 「そんで、同じ布団で」 「正気に戻ってからセクハラだとか騒ぐなよ」  彼の布団にすっぽりおさまると目が冴えた。やっぱこの人なんか変。そんで今日の俺はもっと変。分厚い背中に額をあてて深く息を吸った。おっさんの匂いがして、めちゃくちゃ温かくて、甘くて甘くて甘くて足指の先まで痺れる一方で自分で言い出したことなのに緊張で腹の奥が捻じ切れそうだった。  彼の寝息と一緒に家全体が呼吸をしている。眠れないまま昨夜のことを思い出す。俺が風呂に入ろうとして廊下を行くと、居間で本を読んでいた彼が弾かれたように顔を上げた。その視線に斥力のようなものを感じた俺は「お風呂行ってきまぁす」となるべく軽薄な声で答えた。一秒前まであんな強い目をしていたくせに、今はもう血の気の失せた無表情で俺を見上げている。妙に腹が立って彼の前にしゃがみ込んだ。「一緒に入ります?」「バカか」「ねえエンデヴァーさん。嫌なこととか調子悪くなることあったら話してください。ひとりで抱え込むとろくなことないですよ。俺がそれなりに役立つこと、あなた知ってるでしょ?」 「知ったような顔をするな」 「俺はド他人ですが、孤独や後悔についてはほんの少し知っていますよ」  真正面から言い切ると、そうだな、と素っ気なく呟き、それきり黙り込んだ。俺ももう何も言わなかった。  ここは過ごすほどに大きさを実感する家だ。そこかしこに家族の不在が沈澱している。それはあまりに濃密で、他人の俺でさえ時々足をとられそうになる。昨日は家族で食事をしてきたという彼は、あの時俺の足音に何を望んだのだろう。  いつぞやは地獄の家族会議に乱入したが、俺だって常なら他人の柔らかな場所に踏み入るのは遠慮したいたちだ。けれどあの無表情な彼をまた見るくらいなら軽薄に笑うほうがずっとマシだった。これから先もそう振る舞う。  きんとした寂しさと、額の先の背中を抱いて困らせてやりたい怒り。そんなものが夜の中に混ざり合わないまま流れ出していく。
3.  涼しい夜にビールを飲みながら居間で野球を眺めていたら、風呂上がりの彼に「ホークス」と呼ばれた。 「その呼び方そろそろやめません? 俺もう引退してるんすよ。俺はニートを満喫している自分のことも嫌いじゃないですが、この状態で呼ばれるとホークスの名前がかわいそうになります、さすがに」「お前も俺のことをヒーロー名で呼ぶだろうが」「じゃあ、え……んじさんて呼びますから」「なぜ照れるんだそこで」「うっさいですよ。俺、けーご。啓吾って呼んでくださいよほら」「……ご」「ハイ聞こえないもう一回」「け、けいご」「あんただって言えないじゃないですかあ!」  ビールを掲げて笑ったら意趣返しとばかりに缶を奪われ飲み干された。勇ましく上下する喉仏。「それラスト一本なんすけどお」「みりんでも飲んでろ。それでお前、明日付き合え」「はあ」「どうせ暇だろ」「ニート舐めんでくださいよ」  翌日、俺らは炎司さんの運転で出かけた。彼の運転は意外に流れに乗るタイプで、俺はゆっくり流れていく景色を眺めるふりをしてその横顔を盗み見ていた。「見過ぎだ。そんなに心配しなくてもこの車は衝突回避がついている」秒でバレた。 「そろそろどこいくか教えてくださいよ」 「そば屋」  はあ、と困惑して聞き返したら、炎司さんはそんなに遠くないから大丈夫だ、とまたしてもピンぼけなフォローで答えた。やがて商業施設が消え、国道沿いには田園風景が広がり出した。山が視界から消え始めた頃ようやく海に向かっているのだと気づく。  車は結局小一時間走ったところで、ひなびたそば屋の駐車場で止まった。周りには民家がまばらに立ち並ぶのみで道路脇には雑草が生い茂っている。  テレビで旅番組を眺めているじいさん以外に客はいなかった。俺はざるそばをすすりながら、炎司さんが細かな箸使いで月見そばの玉子を崩すのを眺めていた。 「左手で箸持つの随分上手ですね、もともと右利きでしょ?」 「左右均等に体を使うために昔からトレーニングしていたから、ある程度は使える」 「すげえ。あなたのストイックさ、そこまでいくとバカか変態ですね」 「お前だって同じだろう」  俺は箸を右から左に持ち替えて、行儀悪く鳴らした。 「んふふ。俺、トップランカーになるやつってバカか天才しかいねえ、って思うんすよ。俺はバカ、あなたもバカ、ジーニストさんも俺的にはバカの類です」 「あの頃のトップ3全員バカか。日本が地図から消えなくてよかったな」  そばを食べて店を出ると潮の匂いが鼻を掠めた。「海が近いですね?」「海といっても漁港だ。少し歩いた先にある」漁港まで歩くことにした。砂利道を進んでいると背後から車がやってきたので、俺は道路側を歩いていた炎司さんの反対側へ移動した。  潮の香りが一層強くなって小さな漁港が現れた。護岸には数隻の船が揺れるのみで無人だった。フードや帽子で顔を隠さなくて済むのは楽でいい。俺が護岸に登って腰掛けると彼も隣にやってきてコンクリートにあぐらをかいた。 「なんで連れてきてくれたんですか。そば食いたかったからってわけじゃないでしょ」  海水の表面がかすかに波立って揺れている。潮騒を聞きながら、俺の心も騒がしくなっていた。こんな風に人と海を眺めるのは初めてだったのだ。 「俺を家に連れてきたのも、なんでまた」 「……お前が何かしらの岐路に立たされているように見えたからだ」 「俺の剛翼がなくなったから気ィ使ってくれました?」  甘い潮風にシャツの裾が膨らむ。もう有翼個性用の服を探す必要も服に鋏を入れる必要も無くなった俺の背中。会う人会う人、俺の目より斜め45度上あたりを見てぐしゃりと顔を歪める。あの家で怠惰な日々を過ごす中で、それがじわじわ自分を削っていたことに気づいた。  剛翼なる俺の身体の延長線。俺の宇宙には剛翼分の空白がぽっかり空いていて、けれどその空白にどんな色がついているかは未だわからない。知れぬまま外からそれは悲しい寂しい哀れとラベリングされるものだから、時々もうそれでいいわと思ってしまう。借り物の悲しさでしかないというのに。 「俺より先に仲間が悲しんでくれて。ツクヨミなんか自分のせいだって泣くんですよかわいいでしょ。みんながみんな悲壮な顔してくれるもんだから、正直自分ではまだわかんなくて。感情が戻ってこない。明日悲しくなるかもしれないし、一生このままかも。  あなたも、俺がかわいそうだと思います?」 「いいや」  なんのためらいもなかった。 「ないんかい」 「そんなことを思う暇があったら一本でも多く電話をして瓦礫の受け入れ先を探す。福岡と違ってこの辺はまだ残っとるんだ。それから今日のそばはおれが食いたかっただけだ」 「つめたい!」 「というかお前そんなこと考えとったのか。そして随分甘やかされとるな、以前のお前ならAFOと戦って死ななかっただけ褒めてほしいとか、ヒーローが暇を持て余す世の中と引き換えなら安いもんだと、そう言うだろう。随分腑抜けたな。周囲が優しいなんて今のうちだけだ、世の中甘くないぞ、きちんと将来のことを考えろ」 「ここで説教かます⁉︎ さっきまでの優しい空気は!」 「そんなもの俺に期待するな」  潮風で乱れる前髪をそのままにして、うっとり海に目を細めながらポエムった10秒前の自分を絞め殺したい。  彼は笑っているのか怒っているのか、それともただ眩しいだけなのかよく分からない複雑な顔をする。なお現���の俺は真剣に入水を検討している。 「ただ、自分だけではどうしようもないときはあるのは俺にもわかる。そんな時に手を……  手を添えてくれる誰かがいるだけで前に進める時がある。お前が俺に教えてくれたことだ」 「ちょ〜〜勝手。あなたに助けてもらわなくても、俺にはもっと頼りたい人がいるかもしれないじゃないですか」 「そんな者がいるならもうとっくにうちを出ていってるだろう。ド他人だが、俺も孤独や後悔をほんの少しは知っている」  波音が高くなり、背後で低木の群れが強い海風に葉擦れの音を響かせた。  勝手だ、勝手すぎる。家に連れてきてニートさせてあまつさえ同衾まで許しといて、いいとこで落として最後はそんなことを言うのか。俺が牛乳嫌いなのいつまでたっても覚えんくせにそんな言葉は一語一句覚えているなんて悪魔かよ。  俺にも考えがある、寝落ちたあんたを運んだ部屋で見た、読みかけのハードカバーに挟まれた赤い羽根。懐かしい俺のゴミ。そんなものを後生大事にとっとくなんてセンチメンタルにもほどがある。エンデヴァーがずいぶん可愛いことするじゃないですか。あんた結構俺のこと好きですよね気づかれてないとでも思ってんすか。そう言ってやりたいが、さっき勝手に演目を始めて爆死したことで俺の繊細な心は瀕死である。ささいなことで誘爆して焼け野原になる。そんなときにこんな危ういこと言える勇気、ちょっとない。 「……さっきのそば、炎司さんの奢りなら天ぷらつけとけばよかったっす」 「その減らず口がきけなくなったら多少は憐れんでやる」  骨髄に徹した恨みを込めて肩パンをした。土嚢みたいな体は少しも揺らがなかった。  
 車に向かって、ふたりで歩き出す。影は昨日より濃く短い。彼が歩くたびに揺れる右袖の影が時々、剛翼の分だけ小さくなった俺の影に混じりまた離れていく。 「ん」  炎司さんが手でひさしを作り空を見上げ、声をあげる。その視線を追うと太陽の周りに���がかかっていた。日傘。 「吉兆だ」
4.  何もなくとも俺の日々は続く。南中角度は高くなる一方だし天気予報も真夏日予報を告げ始める。  SNSをほとんど見なくなった。ひとりの時はテレビもつけず漫画も読まず、映画だけを時々観た。炎司さんと夜に食卓を囲む日が増えた。今日の出来事を話せと騒ぎ聞けば聞いたで質問攻めをする俺に、今思えば彼は根気よく付き合ってくれたように思う。  
 気温もほどよい夕方。庭に七輪を置き、組んだ木炭に着火剤を絞り出して火をつける。静かに熱を増していく炭を眺めながら、熾火になるまで雑誌を縛ったり遊び道具を整理した。これは明日の資源ごみ、これは保留、これは2、3日中にメルカリで売れんかな。今や俺の私物は衣類にゲーム、唐突にハマった釣り道具はては原付に及んでいた。牡丹に唐獅子、猿に絵馬、ニートに郊外庭付き一戸建てだ。福岡では10日で暇を持て余したというのに今じゃ芋ジャージ着て庭で七輪BBQを満喫している。  炭がほの赤く輝き出すころに引き戸の音が聞こえ、俺は網に枝豆をのせた。 「今日は早いですね〜〜おかえりなさい」 「お前、無職が板につきすぎじゃないか?」 「まだビール開けてないんで大目に見てください」  家に上がった彼はジャージ姿でビールを携えて帰ってきた。右の太ももには「3-B 轟」の文字。夏雄くんの高校ジャージだ、炎司さんは洗濯物を溜めた時や庭仕事の時なんかにこれを着る。そのパツパツオモシロ絵面がツボに入り「最先端すぎる」と笑ったら「お前も着たいのか?」とショートくんと夏雄くんの中学ジャージを渡され、以来俺はこの衣類に堕落している。遊びにきたジーニストさんが芋ジャージで迎えた俺たちを見てくずおれていた。翌々日ストレッチデニムのセットアップが届いた(死ぬほど着心地がよかった)。  焼き色のついた枝豆を噛み潰す。甘やかな青さが口の中に広がっていく。 「福岡帰りますわ、ぼちぼち」  彼の手からぽとりとイカの干物が落っこちた。砂利の上に不時着したそれにビールをかけて砂を流し、網の上に戻してやる。ついでにねぎまを並べていく。 「……暇にも飽きたか」 「いや全然、あと1年はニートできます余裕で」  ぬるい風と草いきれが首筋をくすぐり、生垣の向こうを犬の声が通り過ぎていく。いつも通りのなんでもない夕方だ。そんななんでもなさの中、現役の頃は晩酌なんてしなかっただろう炎司さんが俺とビールを開けている。俺らはずいぶん遠くまで来た。 「福岡県警のトップが今年変わったんですけど、首脳部も一新されて方針も変わったらしくて、ヒーローとの連携が上手くいってないらしいんすよね。警察にもヒーローにも顔がきいて暇な奴がいると便利っぽいんで、ちょっと働いてくるっす。そんで、俺のオモチャなんですけど」整理した道具たちに目をやる。「手間かけて悪いんですが処分してくれませんか?」 「……どれも、まだ使えるだろう」 「はあ。リサイクルショップに集荷予約入れていいです?」 「そうじゃない。処分する必要はないと言ってるんだ」  的外れと知っていてなお、真っ当なことを言おうとする融通のきかなさ。その真顔を見て俺この人のこと好きだな、と思う。子どものまま老成したような始末の悪さまで。 「それは荷物置きっぱにしてていいからまたいつでも来いよってことでしょーーか」 「……好きにしろ」  唸るような声はかすかに怒気をはらんでいる。さっきまで進んでたビールは全然減ってないしイカはそろそろ炭になるけどいいんだろうか。ビール缶の汗が彼の指をつたい、玉砂利の上にいびつな模様をつくっていく。 「じゃあお言葉に甘えて。それとツクヨミが独立するってんで、事務所の立ち上げ手伝ってほしいって言われてるんすよ、なんでちょくちょくこっちに滞在するので引き続きよろしくお願いします具体的には来月また来ます♡」 「それを先に言え‼︎」  今度こそ本物の怒りが俺の頬を焦がした。具体的には炎司さんの首から上が燃え上がった。七輪みたいに慎ましくない、エンデヴァーのヘルフレイム。詫びながら彼の目元の皺を数えた。青い瞳にはいつも通りに疲労や苛立ち、自己嫌悪が薄い膜を張っている。今日も現場に呼ばれたんかな。ヒーロースーツを着なくなっても、誰かのために走り回る姿は俺の知ったエンデヴァーだった。腕がなくなろうが個性を使わなかろうが、エンデヴァーを許さぬ市民に罵倒されようが。だから俺も個性なくてもできることをやってみっかな、と思えたのだ。ここを離れ衆目に晒されることに、不安がないわけではないけれど。  疲れたらここに帰ってまたあの部屋で布団かぶって寝ればいい。家全体から、やんわり同意の気配が響くのを感じる。同意が言いすぎだとしたら俺を許容する何か。俺のねぐら、呼吸する恐竜の懐の。 「その……なんだ、頑張れ」 「アザーース」  帰属していた場所だとか、背にあった剛翼だとか。そんなものがごっそりなくなった体は薄弱で心もとない。だから何だ、と思う。俺はまだ変わる。  空があわあわと頼りない色合いで暮れていく。隣にしゃがんだ炎司さんの手が俺の背に添えられた。翼の付根があったあたりにじわりと熱が広がり、そのまま軽く背を押されて心臓が跳ねる。 「来月はそば打ちでもしましょうね」  短い肯定が手のひらの振動から伝わる。新たな命を吹き込まれる俺の隣で、炭がぱちりと爆ぜた。
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tomoyamashita · 10 months
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戸柱公園横向きで。 青い海と青い空。 海の向こうに、竹島、硫黄島、黒島、さらには口永良部島まで見えていました。 流石に屋久島は遠すぎた… #戸柱公園 #南九州市 #南九州市頴娃町 #青空フォト #青い空 #あおいそら #青い海 #青い空と海 #開聞岳 #開聞岳が見える風景 #竹島 #硫黄島 #黒島 #口永良部島 #松 https://tomohirondonplus.com/2023/06/03/石垣ⅰ(石垣駅・戸柱公園)/ — view on Instagram https://ift.tt/lKUQtu3
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hotelinfernoll · 10 months
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実りある人生
fanfic(円満期 - 貘ハル貘)
昼休み 公園にて
「本当は海にでも行きたかったんだけどね」
ビル街の真ん中にある公園。昼食帰りの会社員たちがおのおの好きなように過ごしている。街中で際立つ彼も芝の上に寝転んで人々の視線から逃れている。真昼間のオフィス街にはまったく不似合いないつもの白スーツに白い革靴。上から溢れる木漏れ日が彼の髪の波間でまたたいていた。
昼休みが始まる時間ぴったりに内調前に現れ、僕の顔を見るなり「どっか行こうよ」と言った。どうやら“お屋形様”業に退屈して抜け出してきたらしい。だったら一人で遊びに行けばいいのに、どうして僕を誘うんだろう。 「わかってるくせに」 彼は僕の顔から頭の中を読んで、僕が言葉を発する前に会話を続ける。 「ハルも退屈してると思って」 「だからと言って抜け出せないよ。勤め人なんだから」 「つまんないね〜」 言葉とは裏腹に彼は笑っている。最近はいつも機嫌が良い。以前の彼とは大違いだ。 「じゃあ一緒にランチしよ。天気もいいし外で食べるのはどう?」 「いいよ」
昼時になるとどこからともなく現れる移動販売の車からサンドイッチとコーヒーを買って公園まで歩いた。ベンチはどこもいっぱいで大きな木の陰の下に見当をつけた。彼はポケットから真っ赤なハンカチを取り出すと「どーぞ」と僕を促した。 「君のそういうところが嫌い」 「お姫様扱いがお気に召さなかった?」 「誰も座らないとは言ってない」 そう言ってハンカチをしまおうとした手を払いのけた。午後も仕事があるんだ。おしりが芝だらけになるのは困る。僕が座ったの���見てから彼も芝生の上に直接腰を下ろした。 「ずるい」 すべては彼のお膳立て通り。本当は彼と同じようにしたいのに、彼はそれを分かってて僕から文句を引き出す事をして余計なやりとりを増やす。めんどくさい彼の流儀には慣れたつもりでも、時々それがすごく嫌だ。 「ハハッ」 不機嫌を隠さない僕の顔を見て彼は笑う。たとえ僕が怒っても泣いても笑っても、彼の前で感情を隠さない僕を見ると彼はいつでも機嫌がいい。知ってる。そういう僕を見るのが楽しいんだろう。そしてそういう勝手な彼を見て、僕は呆れて、つい笑ってしまう。
ランチを食べて、コーヒーを飲んで、昼休憩は残り20分。
1998年 ある男の顛末
男は都心にある大手銀行に勤めていた。地方出身の彼は国立大学入学を機に上京し、大学生活はサークルにも入らず、残り少ないモラトリアムを楽しむ浮ついた学生たちを尻目に真面目に講義を受け、地道な努力をして氷河期と言われた中で就職戦争を勝ち抜いた。結婚をして、家庭を持って、家を買って、そういうぼんやりとした将来に向けて、就職と同時に貯金も始めた。しかし貯金の額が増えるほどに彼自身が疲弊している事に彼自身が気づいたのは、日本で冬季五輪が開催された時期だった。
仕事を終えた帰りに、駅近くの繁華街で声をかけられた。相手は自分の名前を知っていたが、彼はその男の名前を最後まで思い出す事はできなかった。男は大学時代に同じ講義を取っていたと言い、このあとの予定を聞いてきた。普段なら同僚からの飲みの誘いも断っていたが、その日は大口の顧客から担当を外され、ムシャクシャしていたので覚えのない同級生の誘いを受けた。
元同級生は陽気でよく喋り、彼は相槌を打つだけで済んだので一緒にいるのは楽だった。2軒目を誘われた時も断らなかったのは、断る理由を思いつかなかったというだけだった。男に連れられて入った繁華街の外れのバーが闇カジノだと気がついた時も、ちょっと遊んでみないかと誘われた時も、男は同じ理由で断らなかった。
翌朝目を覚ました時、男は自宅のリビングのソファーにいた。そこまでの記憶は途切れ途切れだったが、カジノを出て大通りでタクシーを拾って乗り込み、窓の外から元同級生が「また遊ぼうぜ」と笑っていたのを見た。リビングのテーブルに置いてあった彼のブリーフケースには札束が詰まっていた。
それから彼は闇カジノに通うようになった。そこからあとは簡単だ。勝ちと負けを繰り返しながら、それでも彼は社会人になって以来感じた事がなかった「生きている」という実感を感じ、その顔に正気が戻っていた。そして、そのうち負けが続くようになった時には彼自身の意思ではもうその蟻地獄から抜け出せなくなっていた。ぼんやりとした未来への貯金はすぐに底をつき、よりハイリスク・ハイリターンな勝負を求めて闇の奥へと飲み込まれた。
闇カジノに通うようになって10ヶ月もした頃には、抱えた負債は彼の生涯収入を上回った。そして彼は今夜、一世一代の大勝負に出る。
その夜、男が用意したのは昼間に顧客から預金として渡されたカネだった。テーブルの向かいに座っているのは、自分をこの蟻地獄に誘った元同級生だった。「助けてやろう」彼はそう言った。「ただし、俺に勝ったらな」。男はその誘いに乗った。どちらにしろ翌朝になれば会社に横領がバレる。負けたらそのまま道路に飛び込むか、海に身を投げるか、いちばん楽な方法で死のう。そう思っていた。
勝負はセブンブリッジ。カジノの一角の異様な雰囲気を察して他の客達も集まってきた。転落はあっという間だった。カードを持つ手も冷たくなって、視界も霞んでくると、まわりのギャラリーの囁く声だけが直接脳内に届くような感覚になった。その時頭の中で声がした。
「死んでもいいと思ってる奴は絶対に勝てない」
男か女か若いのか年寄りなのかわからない声だったが、その声は男の心臓を掴んだ。顔を上げて周囲を見渡しすと、テーブルの向こうの相手から「キョロキョロするな」と制されて、正面を向いた。さっきまで大きく見えた相手が今は自分と同じくらいに見えた。もう大丈夫だ。迷いも恐れも消えた。男は口元を歪めて笑った。さっきの声は、きっとギャンブルの悪魔だと男は思った。
そこから男は勝ち続けた。勝負が始まる前にあった負債と同じだけ元同級生の男から巻き上げた。元金が無くなった瞬間、元同級生は周囲のギャラリーの後ろから現れた黒服の男達に連れて行かれた。ギャンブルに勝った興奮に男は震えていた。その時視界の済みにこの場にひどく不似合いな二人連れが見えた。格好は若いがひとりは目深にキャップをかぶっていて、もうひとりも白い髪が目までかかって二人の顔はよく見えなかった。白い方がキャップに耳打ちをして、くすくす笑った。 「地獄はこれからだよ」
その声を聴いたあとの記憶は無い。男は翌朝、自宅に戻ったところを逮捕された。 塀の中で男はどうして自分がここにいるのかを考えた。 (俺は悪魔にそそのかされたんだ)
塀の外に出てからも、男はカジノ通いを止めることができなかった。あの夜、死ぬ気で勝負して勝利を掴んだ高揚感。全身が、脳が、命が痺れるあの感覚を味わうためなら全てを失ってもいいと、男は自ら再び闇の中に呑まれた。あの日死んだ方がマシだったと気付いた時には、もう出口はとっくに見えなくなっていた。
昼休みのおわり
木陰のランチを終えた二人の後ろから近づく影があった。男の手の中のものが木漏れ日を反射した瞬間鈍い音とともに影が倒れて、近くの茂みに引き摺り込まれた。昼休憩も終わりに近づき、足早に職場に戻る人たちは誰もその短い出来事に気を止めなかった。
腰を上げようとしたハルに向かって、貘が横になったまま声を掛けた。 「ねえ、海行かない?」 「…いいよ」 何を言っても最後は貘の思い通りになるから、ハルは面倒臭いやりとりをスキップして答えた。 「車を呼ぼうか?」 「たまには電車もいーんじゃない?」 「そうだね」 ふたりは立ち上がって、スーツについた芝を払いながらハルが「今の誰?」と訊ねた。 「あ〜…覚えてない? 昔カジノにいたの。10年物だったから、正直もっと楽しませて欲しかったんだけどね〜」 「…ふーん。僕じゃ足りないんだ」 「お楽しみは多い方がいいでしょ。で、ハルは俺を楽しませてくれんの?」 「君次第だ」 優等生な答えに貘は満足そうに笑った。
(230528)
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newpntls-blog · 10 months
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2023年5月の日記(4)
・2023.5.24(水)晴れ
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覚書。この日はすごく活動的だったので、長々と日記を書こうと思う。10時からずっと気になっていた物件の内見の約束があったので、早く起きる。高校生の時に買ったコンサバ風のピンクのスカートを引っ張り出して着てみたら、今の気分にぴったりでよかった。今年の夏はたくさん着ようと思う。朝の西武新宿線に初めて乗り、物件へ。思っていたよりも色々なものが小さく、最近はこの物件への思い込みとときめきだけで保っていたところがあったので、ウワーとなった(まだ内見はひとつ目だから仕方ないのかも)。
この前散歩した時に入ってみたかった駅前の喫茶店に行く。モーニングの時間帯、トーストにバナナ一本とゆで卵が付いてきてかなりテンションが上がった。タバコも吸える。店で流れている朝のテレビを見ながらご飯を食べた。途中から常連さんフィーバータイムが始まってしまい、気まずく���ったので店を出た。少し狂った空間だった。
もうひとつ、内見する予定の物件の外観を眺めるついでに哲学堂公園を散歩。本当にいい公園、駅から公園に続く大通りも緑が多くて好き。植え込みにおばあちゃん(推定)の携帯が落ちていて、心配だったから案内所に届けることに。携帯を持って歩いていたら、同じ気持ちを持っているであろう男の人が案内所のおじさんを連れて向かってきた(ふたりで「あ、」となった)。無事おじさんに携帯を預け、少しいいことをした気分になった。なかなか外でひとりの時、人の純粋なやさしい気持ちに出会うこともない。
公園から中野まで歩く。途中の道によさげなリサイクルショップを発見、入ってみたら本当によかった。マガジンラックを買ってしまうか数分悩み、諦め(私はマガジンラックは使わないだろうから)、代わりに蟹のお皿を二枚買った。店員のタトゥーが入ったお兄さんが、なぜか「少しおまけしておきます」と200円ほどおまけしてくれた。うれしい。もしこの街に本当に住むことになったら、私は荻窪のyeyeでの買い物くらいの荒々しい買い物をすることになる気がした。
中野でタバコを吸い、西荻へ。この前日曜日のお兄さんにおすすめされた古着屋に行ってみる。店員のお兄さんと少し話し、商品を選別する際のこだわりなんかを教えてもらった。服についての話を聞くと、ひとつひとつのものの良さがすごくわかる。いい店だった(指輪とパーカー、イカれたボトムスを買うかすごく迷った)。さくらももこ展のおみやげをバイト先のお姉さんに渡すべくそれいゆへ。アイスレモネードを飲んだ。お姉さんにおみやげを渡したら喜んでくれてうれしい!やっとSNSも交換した。いつか遊びたい。
帰宅したらPerfect Young LadyのTシャツが届いていた、たくさん着るぞ〜。少し用事を済ませ、夜はアップリンクでシャンタル・アケルマン映画祭。かなり前からずっと気になっていた『ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』を見る。わりと、凄まじかった(三時間半近くあったので腰を痛めたけど)。かなり余韻に浸り帰路へ。映画の中で出てきたビーフカツ、ハンバーグが忘れられずマルエツでカツを調達。帰宅して鍋も作り、食べる。
23時頃訪問者が来たので瓶ビールとスナック、ワインとハムを一緒に食べた。結局四時くらいまで宴が続いてしまい、化粧も落とさずに寝た。本当に、よく活動した日だった。
・2023.5.23(火)雨
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起きたら13:30だった。気圧のせいか目が開かない。軽くご飯食べてエージェントの人と電話。最近エージェントの人は、私に対してタメ口が出てきたり本音が飛び出してきたりで少しおもしろい。私は私のエージェントなんて絶対にやりたくない。30分とかの予定だったけど長引いてしまい、バイトに遅刻。今日は久しぶりに一日中雨だということだったので、気持ちをあげるべく、大昔に買ってしっくり来ず、捨てようか悩んで結局取っておいた元気な色のワンピースを着た(今の私にはよく似合っていたので、捨てなくてよかったと思った)。交代の時の火曜のおばさんにかわいい!と褒められる。珍しくチーズとハムの入ったホットサンドをいただく(うちの店にいちばん長くいるおじさんは、私のことを機嫌のいい時だけちーちゃん、と呼ぶのだ)。すごくおいしかった。
今日は比較的ひまな日だったので、火曜のお兄さん(俳優をしている)の身の上話を聞かせてもらったり、映画の話をしたりしていた。Filmarksを交換(俺のFilmarksを知っている人はこの世でひとりしかいないから、レアだよとのこと)。明日出すキャロットケーキをひとつ持って帰らせてもらった。お姉さんが、「これがいちばん大きいからこれを持って帰りなさい」と言って準備してくれた。うれしい。
退勤の時にお姉さんに「就活がんばってね、あなたならどこでも働けると思うのよ」と言われ、「でも焦らないでね、色んなものをじっくり見た方がいいよ」とも言われた。今日は気圧のせいかずっと眠くて、身体は元気ではあったけど色んなことが鮮明に見えてしまって、少し大変だった。帰り道に気まぐれでceroの緑のアルバムを聴いたら、雨降りの今日にあまりにもぴったりすぎて、ドキドキして、世界が完全に繋がってしまったような気がして少し怖かった。今日は早く家に帰ってひとりにならなくては、という気持ちに駆り立てられ早足で帰宅。気圧やホルモンバランスに動かされているタイプの不安定さが今日はあった。
帰宅して届くのを楽しみにしているTシャツの不在届はないだろうかと二ヶ月ぶりにポストを開けたら、明日電気が止まることが書かれたハガキが投函されていて軽くパニック(有識者のセージくんに電話をかけてしまうくらいには)。一人暮らし、もう四年もしているのに。私は基本的に生活は得意な方だと思っているけど、何せかなり気持ちに波がある方なので少し勇気がいること(ポストを開けることであったり)を後回しにしてしまいがちなのが弱点かもしれない。恥を忍んでコンビニに支払いに行く。最寄りのコンビニには、私の利用する時間のほぼ毎回にいる店員のお兄さんがいて(その人は私の生活のリアルなところを全部見てしまっていると思う、もじゃまるもそう言っていた)、今日だけはその人でないでくれと思っていたのにバックヤードから出て来てくれてしまった。かなり、恥ずかしい。仕方ない。
また家に帰って、キャロットケーキを少し食べた。残りは明日の朝。明日からまた晴れるとのことなので、そろそろ洗濯をしなくては。
・2023.5.22(月)晴れと小雨
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また早朝に起きたかったのだけど起きたら昼だった。最近始まった家の隣の更地の工事の音がうるさいし、またゴミも捨てられていない。今日は横浜に行く日だったので意外と電車までの時間がなく、昨日の夜中に作った鶏ハムを入れたサラダを食べた。あと最近新しい薫玉堂のお香を買い足しました(堺町101)。すごくいい匂いがする、最近は家のことを考えているのだけど、私は意外と自分の家がいちばん好きなのかもしれない。いい匂いがするし、好きなものがたくさん置いてある。今日は、土曜日にcanaで買った新しい透け透けのシャツをハーフパンツに合わせ、いいスタイリングができたと思う。
横浜は意外と近い。fishmansを聴いたり本を読んだりしていたらすぐだった。サスケくんと合流するまでタバコを吸い、コンビニのカフェオレを飲む。今日は暑くて晴れてて「夏だね!」という気持ちだった。髪を切り、ちびまる子ちゃんのトートバッグを持ったサスケくん(まるで美容学生)が現れる。ふたりで橋の下のクラゲを見たり動く遊歩道ではしゃいだりした。
さくらももこ展。私の中のさくらももこは、姉の部屋に置いてあったちびまる子ちゃんとコジコジのコミック、そして日曜日の夕方のアニメ、くらいだったのだけど私は意外とちびまる子ちゃんの主要な話をすべて網羅していたことに気づく。原画を読みながら笑っていた時間が多かったけど、さくらももこはコマ割りや色使い、背景での魅せ方がすごい人だったということを今さらながら知った(シンプルに絵がうまいし)。私はちびまる子ちゃんの、まる子とお姉ちゃんの関係性に触れられている回には特に弱く、さまざまな感情になり泣きそうになることを思い出したりもした。たぶん、私はこのふたりを自分と自分の姉にかなり重ねてきたのだと思う。姉の部屋は幼い私にとって漫画の天国だったし、すこし懐かしかった。すごくいい展示だったと思う。心がほっこりして、久しぶりにあたたかいものに包まれている感覚だった。私の今の生活に必要なものはさくらももこワールドはじめそこから生まれる気持ちなのかもと思った、ので、エッセイを読むことにする。
サスケくんと横浜駅前でビールを一缶飲み、東横線で帰路に着く。サスケくんと電車の中でグッズのシールを分け分けし、明大前で別れた。一緒にいるとほっこりするサスケくんとほっこりするものを見にお出かけしたので、かなりいい日だった。ありがとう、また遊ぼうね!
明大前で駅近の中華屋(デカ円卓あり)に入り、豚肉とニンニクの芽炒め定食を黙々と食べた。中華ってかなり好きなものであることに最近気づいている。なんか元気になる感じ、食事中は無心に戦っている感じがして、すごく爽快感があるし、たのしい食事だと思う。店を出たら小雨が降っていたので傘をさして下高井戸。Filmarksを始めた人を横目に梅酒を飲み、SAKEROCKやINUを流した。終電で帰宅。マスクを外して歩く感覚はこんな感じだったか、と思い出した。ある意味で懐かしい夏がやって来そうな予感がする。家に向かう小道を曲がった瞬間にまた雨が降ってきた、ツイている。家に帰って来たら安心した。今日買ったグッズを眺めて幸せな気持ちなので、そろそろ寝る。
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yutakayagai · 10 months
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午前五時前にオールナイト上映が終わり、信也と男は不忍池の方に歩いて行った。外は未だ朝陽が出ていなかった。誰もいない上野恩賜公園を二人は大噴水の方に向かって行った。
途中、自動販売機で缶コーヒーを買い、大噴水の周りにあるベンチに座った。互いに見つめ合うと、男は信也の手を握った。
「このまま離れたくない」
そう言うと、彼は信也と接吻した。時折額と額を合わせ、近距離で見つめ合うと、再び唇と唇を合わせた。
二人は最寄りの公衆便所に入り、今度は信也が男の肉体も貪った。ワイシャツのボタンを外し、ベルトを外すとバックルの重みでスラックスが滑り落ちた。男は、青と黄色の横縞のジョックストラップを穿いていた。股間はすでに隆起し、卑猥なテントを造っていた。
信也は、初めて見る下着に度肝を抜かれた。男はリムレスの四角い眼鏡を掛け、一見テレビのニュース番組にキャスターをしているアナウンサーに似ているが、生真面目そうだがこんな変態な一面もあるとは…。彼は、
「早くして…」
と懇願した。
信也は男の反り返った肉棒の裏を愛撫し、そのままジョックストラップの右脇から引き出し、咥えて始めた。予め手持ちのウェットティッシュで拭いたのか、小便の臭いは感じられなかった。サーモンピンクの肉棒は太く、口の中でとめどなく唾液が込み上げてくるのを感じた。嗚呼、オレもやっぱりその気があったのか…。彼は心の中で落胆した。しかし、男を気持ちよくしたいと言う肉欲は十二分にあった。
クチュ、クチュと卑猥な音を立てながら、信也は「フェラ」をした。男は自分の乳房を両指を使って弄びながら、
「イ、イイ!き、気持ちイイ…」
と恍惚の表情を見せた。
男の肉棒から先走り汁が噴き出すのを、信也は口の中で感じた。少し塩気を含んでいる。彼は、先刻男が自分にしてくれたことと同じ様にフェラをした。スラックスの中で再び一物が硬くなっていくことに気付いた。
「う、ううん、うん…」
口の中が唾液でいっぱいになり、時折彼は飲み込んだ。男の肉棒が急に硬直し、
「あッ、イク!イッちゃう!あッ、ああん!」
と、生卵の白身の様なものが口の中に広がった。ヌルッとしており、生温かかった。信也は、男が愛液を跳ばし終えるとトイレの床に吐き出した。男は言った。
「こんなの、久しぶり…」
この言葉を聞いた時、信也は裕美との情事を思い出した。
男は信也の背中に両腕を絡ませ、抱擁した。
「また会いたい…」
信也も、
「…いいよ」
と彼の唇に唇を重ねた。
男の名前は、大隅憲一と言った。齢は五十六歳で、日本橋茅場町の証券会社に勤めていると話した。金曜日の夜になると、いつも上野の成人映画館で見知らぬ男と遊んでいると言っていた。
憲一は、信也と仲良くなりたいと言った。それに対し、
「オレ、よく解らないンだよね。この『ホモ』の世界って」
と話した。しかし、接吻もしたし抱擁もしたし、親しくなる条件は揃っていると思い、二人は電話番号を交換し合った。
別れる前、憲一は信也と最後の接吻をした。よほどオレのことが好きなンだなと、信也は思った。憲一は、
「信ちゃん、見捨てないでね」
と言い、公園口の改札を通って行った。
「『信ちゃん』か…」
信也は、初めて自分を「ちゃん」付けで呼ばれ、あまり快くはなかったが、じゃあオレは彼を「憲ちゃん」と呼べばイイのか?と思った。
信也のマンションは、東京メトロ・銀座線の稲荷町駅から歩いてすぐのところにあった。隣には銭湯があり、時折入りに来ていた。マンションに戻ると、裕美の姿はなかった。未だ仕事の区切りがつかないのだろう。まァ、イイや。今日は寝て過ごそうと、彼は浴室に向かった。
風呂の中で、信也は昨夜のことを思い出していた。憲一が彼の肉棒を咥え、フェラしている時の眼差しや、彼の乳房を時折歯をたてながら舌の先で弄ぶ様子…等々。裕美と寝た時は、あんなに肉体のあちこちを触られることはなかった。オレが彼女の恥部を弄ったり、乳房を揉んだりすることはあったが…。同じ男だから感じるところが解るからなのだろう。
そう色々と考えていたらば、信也は一物が硬くなっていくのを感じた。
「あれ、ヤベぇ…」
彼は風呂から上がった。未だ黒々としている茂みの真下には肉棒が、包皮から剥き出しになっていた。いきり勃ち、天井の方を向いていた。こんなに反り返ったのも久しぶりだと思った。バスタオルで身体を拭き、彼は水色のストライプ柄のトランクスを穿いた。卑猥なテントを造っていた。
「…オ○ニーしようかな」
まるで中学生の様だなと前かがみになりながら、信也は寝室にしている八畳の部屋へ行き、ベッドに滑り込んだ。そうだ、タブレットで何かスケベな動画を見ながらオ○ニーするかと、彼はサイドテーブルの上に充電されているタブレットを手に取った。せっかく風呂に入ったのに、嗚呼、先走り汁が垂れてやがる、早く抜かなきゃと彼は早る気持ちを抑えられずにいた。
「xh○mster」
と検索し、ヒットした結果の一つをタッチするとそのサイトが表示された。そうだ、男同士ってどんな感じなのかな?と、彼は「gay」とチャンネルを変更した。
すると、下半身の穴に肉棒を挿入する動画の一場面や、男同士が接吻しながら互いに一物を愛撫し合うものがズラッと並んだ。信也は、日本人で背広姿の中年の男同士が絡んでいる動画をタッチした。場面が切り替わるとすぐに再生された。スラックス越しに相手の股間を弄り、接吻している男が映っている。時折チュッ、チュッといやらしい音を立てながら、二人とも恍惚な表情をしていた。次第に気分の高揚によってか背広を脱いでいく。
「すげぇ…」
おのずと、信也はテントを造っている股間を愛撫していた。肉棒の先がトランクスの生地に擦れ、それがエクスタシーとなっていた。先走り汁でテントの先が濡れていく。
「す、すげぇ…」
場面は、片方の男が越中褌、相手が真っ白なスタンダードブリーフだけの姿で愛し合っている動画に変わっていた。越中褌なんて未だに売ってるンだ…。ブリーフなんて中学三年の時に「卒業」したけどなァ…。彼は色々と思いを馳せた。生唾を飲み、彼はサイドテーブルに置いてあるティッシュボックスに手を伸ばし、「せんずり」する準備をした。
タブレットの中では、片方の男が相手の下半身の穴に人差し指、徐々に中指を忍ばせていた。
「あん、ああん…」
相手の男は猫の様な声を上げながら、自分の乳房を両手で弄っていた。時折、彼の穴に入れている手指が揺さぶられると、
「あ、ああん、気持ちイイ…」
「こ、壊れちゃう!」
と、肉棒をピクつかせながら叫んだ。しかし、
『…これって気持ちイイのか?』
と、信也は疑問に思った。これまで用を足すぐらいしか下半身の穴は使わなかったが、まさか手指を、しかも人差し指だけでなく人差し指や中指も忍ばせるとは…。確か、会社で前立腺肥大があるか検査を受けた者がいたが、直腸と大腸の間にちょうど前立腺の裏に当たるところがあり、手指を入れられたら、
「痛てぇぇぇぇぇ〜!」
と大騒ぎしたそうだ。
その間に、いきり勃った肉棒が下半身の穴に挿入される場面が映し出された。信也の穴も無意識のうちにピクついた。
「あッ、ああん!あん!」
パンッ、パンッと音を響かせながら、女の様に内腿を広げながら挿れられている男が己の肉棒をしごきながら感じていた。時折涙声になりながら、
「イイッ、イイ!もっと突いて、突いてぇぇぇぇぇ〜!」
と求めていた。
信也は、下半身の穴に「ごぼう」より太い肉棒を挿入されたらと言う恐怖感と、もし気持ち良いのならやられてみたいと言う好奇心を抱えながら、彼はトランクスの前開きから紅潮した肉棒を露にし、しごいた。
「あッ、ああん、あん…」
思考回路が麻痺し、口の中が酸っぱくなり、全身がじんわりと汗をかいていた。こんな烈しいオ○ニーをしたのは何年ぶりだろう?信也は、急いでティッシュを何枚か敷いて並べた。
「イク、イクッ!出ちゃう、あ、あん、あぁぁぁぁん!」
勢いよくピュッと、透明の先走り汁が跳んだ直後にドロッと、栗の花に似た「臭い」を放ちながら乳白色の愛液が四、五度ほど溢れた。動画の方も、
「イ、イク!あん、ぁぁぁぁん!」
と絶頂に達した。
射精が止むと、信也はぐったりとした。何なのだろう、この脱力感は?彼は、あの成人映画館で憲一に「イカ」された時のことを思い出していた。女と絡むよりオルガズムが半端ないと、彼は感じた。嗚呼、憲一だけでなく数多の男ともセックスしてみたい…。
時計の針は八時を回ろうとしていた。信也は愛液で汚れたティッシュを丸め、もう一枚で包んで捨てた。ようやく萎えた一物をトランクスの中に仕舞い、寝間着にしているTシャツとハーフパンツを着た。
もし起きたら、上野広小路にでも買い物に行こうかと、信也は再びベッドに入り、眠った。
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79nihs · 11 months
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日記 / 5.7 / 写真を再び
どうもここ数ヶ月、写真が撮れなかった。半年前から撮っている写真のシリーズについてのことだ。製本ワークショップに参加して製本してみて、一度立ち止まって俯瞰的に見てみようと試みたが、これがまさかの急ブレーキとなってしまった。本の形になった高揚感に浸りつつ、「足りない」こと探し、粗探しを繰り返した結果、撮影を始めたときに抱いていた前のめりな感覚を忘れてしまっていたように感じていた。
京都国際写真祭でそれに拍車がかかった。凄みのある作品を三日三晩浴び続けることで、着眼点や撮影の技量、熱量、我が事とする力強さ、数え切れないポイントと比較ばかりして苦しくなってしまっていた。正直、息ができていない状態に陥っていた。1年前は「制作」をしていなかったから、どの作品も憧れのような対象だった。尊敬する写真家の自宅に訪ねて相談させてもらったり、他の写真家の方には、勤務中に彼の働く会社まで足を運んで助言を請うたりした。ようやく、自分なりの視点を持って撮影してこれたのでは��、思った今年のはず…と思っていたのだが、違った。「作品をつ��るようになった若い人」(と言われるようになった)は、先人たちから厳しいレビューを受け、落ち込んでしまったのだ。この落ち込みを誰かに解消してもらうことなんてできないし、親しい友人に話しても、結局情けをかけてもらいたいという気持ちから始まってしまうわけで、健全ではなかった。
先週には、撮影をお願いしていた方と長い時間お茶をして撮影に望んだが、正直に伝えた。「今は撮れるような状況ではない」と。相手からも、見透かされたような気がして、ブローニーフィルム一本を撮り切ることだけにしか集中できなかった。つまり被写体との対話ができていたとは言い難い。きょう、現像から上がってきた写真たちは、それなりに撮れているのだが、撮ったときの感情をまだ記憶しているので素直に見ることができないことで思い知らされた。現像があがるまでの高揚感、ポジティブ���気持ちを抱いていなかったことに気づいた。
ここまでネガティブなことばかり書き連ねているのだが、ようやくトンネルを抜け出せそうな感覚をきょうは覚えた。一日を振り返りながら、いろいろ考えてみようと思ったからきょうは書こうと思う。
まずは、久々に早朝に起床できたことに始まる。朝マックに足を運び、エッグソーセージマフィンのセットを食し、スイッチを入れる。朝ごはんを食べると血糖値が高まり、血の巡りを感じる。ファストフードとはいえ、気持ちが前向きになったようだった。その勢いで、都内の展示へ。本当は丸木美術館に行きたかったが、せっかく晴れている日、2時間も電車に乗るのがもったいないと思い、終了日前日なのに諦めた。
昨日、WHOがコロナ緊急事態宣言の終了を発表。週明けにはコロナが第5類に移行する。パンデミック下に置かれていた日常は、ようやく活気づいてきたことを武蔵小杉から乗り換えた行楽日の総武線快速で感じた。先月行った京都も、外国人観光客が戻ってきて、マスクをしている人がほとんどみなかったので、不思議ではないのだが、東京にもコロナ前の日常が戻りつつあった。そんなことを思いながら、上野に着くとすごい人だった。動物園に並ぶ人々の姿も見えた。美術館前で記念撮影をする人。にぎやかな声が聞こえてくるから、自然と触発される。
向かったのは東京芸術大学陳列館。「解/拆邊界 亞際木刻版畫實踐」(脱境界:インターアジアの木版画実践)(※)を見るためだった。初夏の日差しに浴びる青々とした葉をつけた木々が陰をつくる上野公園がこんなに気持ち良いとは思わなかった。陳列館の2階は、天窓から優しい日光が注ぎ込み、版画がすられたキャンバスや布がゆらゆらとしていた。版画は力強かった。日本、韓国、中国、香港、台湾、フィリピン、インドネシアのアーティストの作品をゆっくり何周もしながらみる。印象的だったのは、タイトルの通り、ボーダーを越えていくことの希望だ。
點印社(香港)の「私たちは輪になって食べる、刷る」は横長の大きな版画。テーブルでご飯を食べる様子を描いているのだが、そこに描かれているのは、人間だけでなく、シャチや、犬など動物もいる。コロナ禍によって幾多の国境が閉ざされた世界で、異なる国籍や民族やルーツ、バックグラウンドを持つ人々の間に境界線が引かれるようになったことを忘れてはいけない。そんな時代だからこそ、他者との時間を共有することを肯定し続ける力強さを感じた。登場する人々や、動物の表情は笑顔で豊かで、美しかった。決して丁寧に、きれいにつくられたわけではないけれど、その雑然さを版画で刻む描くことの尊さを感じた。
韓国のキム・オクさんが制作した7枚の版画からは、いつか未来で消える朝鮮半島の南北の境界線を想像させた。30年以上に渡り、朝鮮半島南部をくまなく歩き、フィールドワークしてきたというキムさん。農村地帯など韓国の原風景が描かれた7枚は、南北統一という先に続きがうまれるはずだという期待を抱かせ、そしていまだ解決しない南北問題について、極東の島国にいる自分をハッとさせた。
何よりエンパワーメントされた。この展示の作家の多くが社会運動に参画し、運動を活性化させたり、アジテーションを強化するという目的を持ったりしながら制作しているということを掲示されているテキストで知る。政治的抑圧に抵抗する。それは大きな主語を語りがちのように感じられるが、版画を刷るということによって我が事として捉える身体性が一層増していくように感じた。何より、作家自ら社会に対して、異議申し立てをするまでのプロセスを、自らの生活実践の場において果たそうとする姿勢が感じられた。だからこそ、「私たちは輪になって食べる、刷る」のカラフルな描き方に心が揺さぶられたのだろう。
何より、描いて、版を作り、刷るという繰り返しを諦めない。その先に、社会的に生じている苦しさから解放されるように思えた。新聞記者として多くの時間を、社会的課題について考えようとしながら、当事者性があるかどうかなど悩み、写真撮影においても強度があるかないかなど気にしていた自分にとって、今までの悩みがちっぽけに思えたし、何よりそうだ、自分が言いたいことを言えばいいんだと思えた展示だった。
彫り続ける作家たちの姿勢に刺激をもらい、浅草に移動してから入ったタリーズで本を開いた。坂口恭平の「継続するコツ」だ。数ヶ月前に綴方で購入したまま開いていなかったが、効果てきめんだった。「才能という言葉」の呪いにかけられたように、他者の作品を羨望の眼差しで見ていた。そして、撮影ができない状態に陥っていたけれど、それは「比較が始まり、否定が始まり、手が止まる」という項で正体が書かれていた。ある程度、自分がやりたいことを続けていくと「慣れ」が生じるというのだ。「慣れ」。なるほど。確かに、慣れてきた。こうして撮っていけばいいのだ。こう進めていけばいいのだという実感は、いつしか、「見る人に伝えるには○○が足りない」と完成度ばかり気にすることに変わっていたからだ。
製本して、足りないことが見えて、評価を受ける作家のアーティストブックやダミーブックに圧倒され、到底その領域に達していないのにと自分を卑下して、比較をし続けていたなと気付かされた。なんか自分が馬鹿らしくなった。撮っていく。それだけでまずは十分じゃないか。当初抱いていた撮りたい写真への気持ちは、いろんな人の助言や苦言や励ましで少しずつ変容したりしているけど、自分の撮りたいという気持ちに正直になれるのは自分しかいないわけなんだから。
そうだ。去年の7月、アレック・ソスに「SLEEPING BY MISSISSIPPI」にサインを入れてもらったとき、メッセージをお願いして書いてもらった言葉を思い出した。「Don't ever forget the feeling when you first piched up a camera」。そうだよね。初心忘れずって言うよね。いま撮っているカメラは別に「First」じゃないけれど、このカメラで撮っていくぞって嬉々としていたときのことを思い出した。小さな1Kで、千尋からも「買ってよかったね」なんて言われて、ファインダーを覗いて初めて装填したネガフィルムに彼女を焼き付けたんだっけ。うまく扱えず、フォーカスと露出を決めるのに時間がかかって切ったシャッターによって写し取られた千尋のふと力の抜けた表情が自分は好きだったんだなと。あの感覚があったから、静かに被写体となる他者に正対する感覚を今でも大事にしているのかもしれない。
そんなことを思いながら、ベトナムの写真作家たちのダミーブック展をあとにしたあと、ブローニーを装填した。ゴールデンタイムの日差しが当たる街にカメラを向けてシャッターを数枚着る。隅田川に沿って歩いていくと、ふと人を撮りたいなという気持ちが湧いた。
ふと、目が止まった。若い男女が微動だにせず、静かに抱き合っている姿に見とれてしまった。高校生か、大学生かな、と思い、声をかけさせてもらった。こうやって街にいる人に声をかけて撮りたいって伝えるの久々だな。心のなかで自分に語りかけていた。それに、やっぱり最初は緊張する。「ティックトックですか?」と聞かれたけど、「いえ違いますよ」という。最近、インスタやYou Tubeのショート動画で確かに「ストリートスナップ撮っているんですけど」という動画が流れてくるなと思い出した。それのおかげなのかな。恥ずかしがっていた彼らは、少し悩むそぶりを見せてくれたけれど快諾してくれた。撮らせてもらえる。高揚感が全身に走った。
マキナで露出を決め、フォーカスを固める。透明の四角いファインダーの向こうで、静かに佇む二人に引き込まれる。女性は恥ずかしいからマスクをしたままだったけれど、風になびく黒髪の隙間から見える青いカラーコンタクトをつけた瞳から向けられる視線が、まっすぐ力強く凛としていた。男性の方も、無表情ながら芯の強さを感じさせていた。
撮影後に聞くと、二人は15歳の高校1年生。男性はぼくの父とおなじ江戸川区で生まれ育ったという。在日朝鮮人の母を持ち、インスタグラムには日本と韓国の国旗アイコンを掲げる。聞きづらかったけれど在日コリアンかどうかを聞いてしまったが、「そうですよ」とさらりと答える。僕がこれまで川崎で取材をしてきたことなども伝えると、親しげな感じを見せてくれた。そして、なにより自分のルーツに誇りを持っているようだった。スケートボードが好きで、スケートボードが「バ先」だといって、店長のインスタグラムアカウントを見せてくれた。女の子はシャイだ。ファインダーの奥に見たあの視線の強さとは相反するのか、不思議だった。
街で声をかけ写真を撮る。撮影時間を入れても、賞味10分ほどしかなかったかもしれない。写真はSHOOTだ。池澤夏樹によると、「Shoot」は銃撃か撮影でしか使わない。だから、若い彼らをカメラの前に立たせる行為というのは、主従関係が生じ、抑圧・被抑圧の関係性が生まれることにほかならない。それでも、撮影を許容してもらうために、僕は彼らに誠意を伝えようとする。そして彼らも受け入れるために覚悟をする(覚悟を強いている可能性も忘れてはいけない)。そのわずかな時間でも、僕と彼ら彼女の間に一定の緊張感が生まれ、正対することによって他者を信じ切るしかないのだ。嘘偽りがないとは言い切れない。それでも、1/500秒という膨大な時間軸における一瞬、フィルムに焼き付ける行為そのものが、僕がこの社会に接点を築いていくことに必要なプロセスなのだと言い聞かせるには十分なんだ。そのことを、二人との出会いによって改めて認識させられた。
これが、明るい兆しだ。写真を諦めなくてよかったと思えた撮影だった。写真を撮ることでしか、僕は社会を知るすべがないことも知っている。それが、なにか明確なメッセージや、スローガンがなくても、そこに写し込まれた人々の姿によって、この社会の輪郭が際立ち、描かれていくことを信じたいから撮っている。僕にとって人を撮ること、正対してポートレートを撮ることとは、その決意表明みたいなものなのだ。沈みかけていた気持ちが、ようやく前を向き始めた。
※参考)近年、アジア各地で木版画による芸術・文化実践が再び注目を集めています。20世紀初頭の中国で魯迅によって始まった近代木版画運動は、民衆自身が社会や現実を表現する運動/方法としてアジア各地に伝播しましたが、20世紀後半になると社会構造やメディア環境の変化により下火となっていきました。しかし、2000年代から2010年代にかけてアジアの芸術家や社会活動家たちの一部は木版画を通じて社会や政治の問題を表現し、文化的直接行動や集団的創造の実験、さらには国境を越えた交流・ネットワークを生み出してきました。 本展は《「解/拆邊界 亞際木刻版畫實踐」(脱境界:インターアジアの木版画実践)》と題し、アジア各地から12の作家・活動団体による木版画を紹介します。とりわけ2020年に始まったパンデミックでは、人やモノの移動を一元的に管理する国境の問題や、差別や排外主義などの社会的、心理的な排除や断絶の問題を現前化させました。本展はわたしたちの生きる世界や社会に張り巡らされた「境界」を改めて主題化し、これらの境界からの離脱・解体を志向するトランスナショナルなアジアの木版画実践とそのネットワークについて紹介します。同時に、コロナ期に各地で制作された木版画を比較することで「アジア」という地理的/政治的概念への批判的認識と、さらなる理解・議論の可能性を開くことを目指しています。
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namuahi-san · 1 year
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 馬無山(うまなしやま、馬に乗らなくても登れることからその名がつけられた山)が噴火し、補修者(ぶっ壊れてしまった世界を補修する者たち)も、オルタナ力士(ぶっ壊れた世界に順応して生きる者の総称)も皆、黒焦げ骨付き肉と化した。つまりジ・エンド(おしまい)だ。神が不在(いない)のだから仕方がない。じゃあ、マチ子は? マチ子は肉全般が嫌いだった。が、嫌いな食べ物を食べることで魂がより高いレベルに達する(実際、鳩にちくわをやるおばさんは鳩の魂をそうしているわけで……)ことを知っていたので仕方がなく黒焦げを口に入れ、いそいで川の水で流し込んだ(ところで、実家から電話が来ると聞いたことないような方言で訛る猫の話はしましたっけ?)。お金がなさすぎて塩(主食)を買うのに躊躇してたら海の水を焼いて塩(主食)を作ることを思いつくような人だって世の中にはいるのだ(それはマチ子)。あまつさえ、それを売って儲けようだなんて(原価はゼロ円ですね)! そう思ってマチ子、三十五年ローンで七階建ての塩御殿を建てたが結果、塩屋大赤字(主にガス代です)。塩御殿は売却されパルコ(塩)とかになりました。マチ子はね、悲しみのあまり、こう、猫背になったんですってよ。猫だけに(だけに?)。バスに乗るマチ子(バチ子)。窓から見えた細い道に『猫背矯正! 直します、すごく!』の看板を発���した。降車ボタンを押すと同時に両手をクロスしたまま窓を突き破り(そのとき、一陣の風がマチ子の頬を凪いだら……?)バスを降りた。件の猫背矯正医院では医者と看護師が互いをメフィスト(看護師)、ゼロ(医者)と罵り合っており、壁には、生のサメが『神さまアレルギーで神様がいない世界に行った人も、まあ……なかにはいますかねえ!!』とトゲ吹き出しで叫んでいるポスターが貼られていた。マチ子、いつまで経っても自分の番が回ってこないことに腹を立てて、裸(ら)、併設されている教会へと。奥の大きな十字架には肋(ろっ)の浮き出た男が磔(くつろい)でいた(あるいは、男は本当に存在するのではなく、皆(みーんな)の無意識が作り出した幻想、なのかもしれませんね)。そのうちの一人が、さみしい、という名前の子供だ。さみしい、は、墓場(常温)、というあだ名の女性と結婚し、戦争(うぉー)、というあだ名のバイト先のおじいさんを産んだ。戦争(うぉー)はいつも左手で右の脇腹をおさえているところからついた名で、名札にも、あっ、ここでニュースなんですが! 鳩にちくわをやり続けているおばさんを黒く塗りつぶしたら、鳩を黒く塗りつぶすおばさんに進化しそうだったので! 鳩おば(鳩をどうにかしようとするおばさんの総称)をマチ子(西暦のことをキリストの何回忌って数え方するタイプの女)が滅することで、未然に止めることができました。良かった……鳩は平和のシンボルですからね、なるべくむごたらしく殺した。表彰式を途中で離(り)するマチ子。おい主役は……マチ子はどこだ! 一方その頃、インター・ネットでは。おや、夫婦でそれを描き続けてる絵本作家の担当編集者が困ってるようですよ。夫婦はしきりにヤバい虚構の国(滋賀県付近)で鳩をむごたらしく殺す話を描きたいと言ってきかず、結局その話は自家製本(玩具屋の床に転がり、欲しい! 買って! と無限に駄々をこねている子どもの皮を集めて造ったものではありませんよ、あしからず)され各地の公民館や幼稚園、図書館といった公共施設に配られたということです(その頃の町の子どもたちの総数は、若干、ですが……減っていたそうです)。え? だからマチ子はどうしたかって? それどころじゃないんだよ! 世界では体の先端が壊死するタイプの奇病が大流行! 指先から発症して、第一関節、第二関節とそのたび切っていくしかないって、これ、どういうことかわかります? はい……自分(っぶん)、いいっスか……? 考えたら、怖くなってきたんっスが(震え)つまり、ね、最終的に人間は完全な球体になります(わあ……きれい)。そんな病気を鎮めるために祈り師は生まれた。税金の無駄遣いとの批判もあったが、彼らはシンプルに病気の鎮(ちん)を願った。祈り師たちの一日はこうだ。国から税金を貰う。ホテル暮らしで、好きなもの(湿らせたお麩等)を飲み食いし、ふて寝。で、時間が余り、尚且つ興がのったら激しく祈る。誰に? だから、まだいない、神に。一方マチ子(後にこの話をハッピーエンドで終わらせる存在)は、勤務先のスナックでいつだって常連のクソ客に絡まれていた。客はマチ子のことを姪だと思い込み、真(しん)には自分より年上のマチ子に対し、このタイミングで死することを勧め続けている。こんな調子だ。ヘイ、どうだろう、いま君は美しい……その美しさを永遠にするため死ぬという選択肢イェイ? マチ子はマチ子で叔父(叔父ではない)の顔に唾(だ)を吐きかけ耳たぶを思い切り捻り上げ部屋を後にした。バタン!(ヒュー!(口笛)) ドアが閉まる音。静寂(サイレンス)。マチ子の叔父(マチ子の叔父ではない)の、啜り泣く声。さて、君はこんなマチ子のことをどう思う? マチ子(苗字は川中島。浅くて広い川の中にある小島に代々住んでいる一族)はね、世界を救おうとしているんだ。嘘じゃあ……ない。現にマチ子はその足で叔父(叔父)の口座からありったけのお金を引き落とし、飲食店を開いた。店名はない。看板、いや、紀文のかまぼこ(赤、縁起が良さそうという理由で)の下に敷かれていた板が入口のドアの横に両面テープで貼ってはいるが……。食べログの唯一のレビューはこうだ『親兄弟を殺してでも食べたい名店の味!』。インター・ネットの効果だろうか。マチ子の店にはたちまち多くの人(じん)が並んだ! 並んだ数はあまりに多く、その行列は山(ざん)を越え、町(ちょう)をはみ出し、補修者も祈り師たちも踏みつけ、国(こく)を跨ぎ、海(かい)に浮かび、世界(ぜん)を繋いだ。そして食べた全員(みーんな)が、せーの、過激な食中毒! (もしくは)未知の病気! によってドラスティックに絶命した。巨大な両翼によって空に浮かぶオルタナ力士(本名)は、それをかなり満足そうに見ていた。するとどうだろう。『なにか』が集まり『なにか』が生まれた。やあ、俺さ。神は言った。こうして神は地上に降臨なさったのです(え? 話はこれで終わりかって……? いえいえ、本当のお話はここから、ですよ)。『それ』っぽいのがマチ子ひとりなことに神はひどく動揺(ヴァイヴ)していた。そして、マチ子に永遠の命を与えようと決めた。マチ子は口では文句を言いつつも満更ではなさそうで、むしろ(イェイイェイ)とさえ思っていた。神は、ひとりぼっちになったら正直……ちょっとキツいかな〜……と思っていたのだ。だが、それを知ったオルタナ力士がシュン!(音)と地上に舞い降り、神に反対した。神は突然の闖入者に驚き、多大なる衝撃を受けた(そう、神は反論とかに滅法弱いのだ)。そうして神は、喉越しの良い麺類しか喉を通らなくなる……。反抗したオル士(おるし、オルタナ力士の略称)もこれには驚き、甲斐甲斐しく風の強い島に行き本格的な歯応えとするりとした喉越しを両立させた素麺を自ら作るなどして永い時間(あいだ)尽くしていたが、その心にはある計画を秘めていた。オル士はそれを、鹵(ろ)と呼んでいた。床に伏せる神の前に出された素麺は、その日だけ特別なものだった。おお、いつもすまないねえという神に、オル士は何も言わず椀を差し出す。口を開くと余計なことを言ってしまいそうだった。神はそれを気にする様子もなく箸を持ち、以前よりもゆっくりとした動作で麺を口に運ぶ。ああうまい、と神が言おうとしたそのとき、素麺は意思を持っているかのように神の口蓋垂に絡みついた。別の麺が、口蓋扁桃、舌根扁桃をバウンドし気管に飛び込んでいく。それは賭けだった。神の身体の構造がマチ子と同じかはオル士には分からなかった。ただ、神は一瞬驚いたようにオル士を見たあと、胸の上あたりを押さえ、ゆっくりと目を細めると何事か唇を動かし、上半身を起こしたままの姿で動かなくなった。享年およそ四十四億歳であった。オル士はそれを見届けると、(手の代わりだろうか)両翼を自身を包むように前へと持っていき、静かに合わせた。オル士が立ち上がると、終わったの? と無邪気な声がした。オル士はやけに長い睫毛を二、三度瞬かせると、緊張した面持ちでマチ子の方へと手を伸ばした。マチ子はいつか祈り師の上着からくすねたハンカチで自分の手を拭き、差し出された手のひらを見た。水でもどしたばかりのどんこのような、ふっくらとした手。数十億年ぶりの神のいない世界。太陽の光はどこまでも白く、マチ子はその手を伸ばした(人類が誕生する、何千年も前の話だ)。え? マチ子たちはその後どうしたのかって? どうしたもこうしたも、あんたの知っての通りだよ。オル士は神との戦いを、一対一(タイマン)で、武器も持たず、だが局部だけは隠した格好で行ったと後世に伝えた。その結果、神は倒れ、世界に再び混沌(リアル)が戻ったのだと。当初、素の姿で舞うことで素舞(すまい、すまう)という名だったものは、やがて相撲(すもう)と呼ばれるようになった。戦う者は、オルタナ力士の本名から、力士と名付けられた。彼らは皆一様に、オル士のような肉体を目指した。素麺作りのための毎日の島への往復によって作り上げられた、豊満ながらも無駄のない肉体を。ん? だからマチ子はどうしてるかって? マチ子なら今日も海に出てるよ。今は砕けたガラスの破片が海の流れのなかでいい感じに丸くなったものを透明石と呼んで、ふらっと遊びに来た人に売りつけているのさ。
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poddyshobbies · 10 months
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福津市の小竹石穴古墳(1)アクセス
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福津市立神興(じんごう)小学校グラウンド側から北の山方向、住宅地の路地を入った先です。名前の通り?石室が開いてます。
小学校側からの突き当り(上の写真の道)
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(デザインは違うけど)「糸島もあったな、ダジャレ?」 > 園第1古墳
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小竹(おだけ)公園から古墳方向(中央の森)
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登り口付近に駐車スペースは無し。
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ジープが置かれた車庫の横から坂道を登ります。
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途中から左へ階段になります。
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車庫横の道(石段から車庫方向)
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登ってきた石段(上から見下ろす)
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2023.5.1 ~ つづく
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