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#感覚過敏
bokukan · 1 year
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聴覚過敏で声が大きくなる理由
聴覚過敏のある子供に見られがちな傾向として、「声が大きい」というのがあるように思います。何度注意されても治らない、という話はよくあるエピソードの一つではないでしょうか。
・なぜ聴覚が過敏なのに、自分の声が大きくなるのか?
その理由はまさしく「周りの音が大きく聴こえているから」ではないかと考えています。誰であっても、騒がしい場所では声が大きくなるものでしょう。常に大きな音にさらされているように感じているからこそ、聴覚過敏の子供はその音に合わせるように大きな声で話すのです。そうなると「声が大きい」「うるさいから静かにして」という注意は当事者にとって納得がいかないものとなってしまうでしょう。なにしろ、本人は周りと同じボリュームで話しているつもりなのですから。
・では、どうすれば調整できるようになるのか?
自他の境界線に気付き、「自分の聴こえ方は他者と違う」ということを意識的かつ肯定的に受け入れることができれば、意識的に自分の声量を調整することもできるようになると僕は思います。とはいえ、なにしろこれは「感覚的な」話ですので、常に意識し続けるというのも難しいものです。僕自身、「ああ、この音量は普通の人には聴こえないんだった(大きいんだった)」と気付いてハッとすることが時折あります。
ですので、声量調節を習慣化し、経験的に「自分では少し聴き取りにくいくらいの音量で喋っても、相手には聴こえる」という加減を学んでいくことになると僕は考えています。(23歳)
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25cafuhome · 9 months
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【2015.2.28 Instagramの記録】
2013.2.28
am9:02 ☀︎ 快晴の朝
どーしても欲しくて、
数年病院通って
病院変えたりもして
妊娠率が上がるからと、
バルーンまでして地獄を見て、
地道に
#不妊治療 して、
念願叶って
やっとの妊娠。 …したのもつかの間、
前期は
#切迫流産
後期は
#切迫早産 で
寝て過ごすことが多かった
マタニティlife。
予定日は2013.3.2で
だいぶ早まるかなと思いきや、
案の定
予定日の2日前に、
前もってパパが
名前は翼にすると
決めてたからか
28←つば ちゃんの日に
我が家に
来てくれました。
これは一年前
とあるご縁で出た
ローカル番組。
テーマは
産後や子育ての不安、悩み。
それを心理士の
おなじみ名越先生が
答えてくれるというもの。
毎日の育児が大変で、
旦那は仕事で忙しく、
疲れから
旦那とぶつかることもあったり、
娘は日に日に手がかかるわで
イライラしたくないが
どうしても
イライラしてしまう。
どうやったら
イライラしないで
育児できるか
何か
アドバイスがあれば
教えて欲しいと
話した。
名越先生は 「イライラがいかに
猛毒かということを
認識すること」 「ママは育児、パパは仕事で
お互い大変だが、
夜、パパが帰ってくるときは
なるべくもう一度笑顔で!と
パパもママもお互いが意識してみて」
と言われました。
それからの一年。
心がけてはきたものの、
やっぱり
毎日イライラ母ちゃんでした。
2年前の今頃、
産婦人科に入院し
微弱陣痛と戦ってた私。
そんなことあんなこと
考えてたら、
色々こみあげてくるものが。
つーのおかげで
我が家は癒され、
家に色がつくものが増えた。
正直想像してた
育児とは違うけど、
それがまた素敵な
夢を与えてくれた。
パパもつーも寝てる
この今の瞬間が
幸せです…♡ 実は、まだ手づくりの
飾り付けを
作れてない(°_°)。 でも、今のつーは
豪華なご飯や飾りよりも
ただただ
ママにひっついて
抱っこされてるほうが
心地良いみたいなので、
今日は家でのーんびり
そんな1日を過ごしたいと
思います♪(´ε` )
お返事など
また追い追いします💦 わたしもパパも
2年お疲れ様ー☺︎笑
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abahaffy · 2 years
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#自閉症かも と疑って ネットで検索して #自閉症の特徴 と比べることが されがちですが、 意味はありません。 #クレーン現象 、 #逆転バイバイ 、 #感覚過敏 、 #指差ししない ことから自閉症と 診断されることはありません。 自閉症の診断は 実際に #言葉の遅れ があるか、 #癇癪がひどい か、 #こだわり行動 が酷いか 集団行動の参加に困難があるか 等の行動をベースに考えられます。 診断名の有無に関わらず、 このような行動が出現した場合は、 家庭で改善していく (#家庭療育 ) ようにしていきましょう。 ブログ ↑プロフィールから LINE abatherapistで検索 無料発達相談しています。その他、質問、コメントお待ちしております。 #自閉症児  #自閉症スペクトラムの疑い  #発達相談年中無休  #abaセラピー https://www.instagram.com/p/CdNhZ45Nuhj/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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okumaseitai · 2 years
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・ 先日 発育発達の研修を受けました。 感覚統合の基礎と どういった支援ができるかという内容です。 感覚とは簡単にいうと五感のことです。それに振動感覚や温度の感覚、前庭の感覚などがあります。 発達とは 脳と体の連動で、これをつなぐものが神経です。 感覚を育てることが、脳と体を育てることになります。 この感覚は味の好き嫌いのように個人差があります。 脳でイメージできるようになるには五感という基礎部分、土台部分の発達が不可欠です。 感覚には 意識したら使える識別感覚と無意識で使える原始感覚があります。 固有受容覚は目を閉じても、机のものが取れたりする感覚です。 発達でみると 赤ちゃんは口に物を入れて確認しています。 だんだん自分と他人を感覚で覚えるようになるのです。 もしも 固有覚が育っていないと 刺激を求めて動き回ります。 ADHDなどや不自然な姿勢をとったりします。 これは発達段階で必要なことで、やめさせると余計に、その段階を飛ばしてしまうことにもなるのです。 触覚が育っていないと 不安になりやすかったり 音などに過敏になったりします。 スキンシップが苦手で、すぐに逃げたり、すぐにキレたりすることもあります。 感覚統合とは 遊びを通して発達を促すアプローチです。 土台である原始感覚、識別感覚を鍛えることで改善が見込まれます。(万能ではありません) 支援により いつもより 文字が綺麗に書けたり、 勉強ができたり、することは可能です。 また トランポリンは とてもおすすめです。 前庭覚の遊びです。 自分のジャンプ力以上の高さまで飛んだりできるので、とても刺激になります。 ブランコや平均台なども有効です。 例えば 姿勢が悪い子供さんには どう言った支援が良いのか 前庭覚が適切に育っていない場合ですので 姿勢の調整筋、筋緊張が働いていないことが多いです。 鉄棒や跳び箱、トランポリンなどで前庭覚を鍛えることで姿勢の保持もできるようになるのです。 とても勉強になりました。 時々、バランスボードやハーフのストレッチポールなどでお子様と遊びながら、みております。 遊びの中にトレーニングを取り入れるのが、とても有効だと再認識いたしました。 お役に立てるように全力でサポートいたします。 *資料は講師の先生より許可をいただいて掲載しております。 #感覚統合 #前庭覚の発達遅延で姿勢が悪くなる #姿勢保持は前庭覚 #多動は固有覚の発達遅延 #発達遅延にトランポリン #トランポリンは前庭覚 #触覚の発達遅延は過敏になる #HSC #HSP https://www.instagram.com/p/Cff4SnuOzLX/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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筆者が「水戸黄門効果」と名付けた現象がある。
それは、TBS系列で放送された時代劇「水戸黄門」において、1997年10月に放送を終えた第25部までは16mmフィルムで撮影されていたが、1998年2月から始まった第26部からは59.94iのVTR撮影となった。すると、それまでと同じセットや衣装などが用いられているにも係わらず、視聴者からの「安っぽくなった」といった投書が新聞に掲載されたのだ。
当時この質感の差が生じる理由は、テレビ映像は電気信号、フィルムは化学変化という、メディアの記録方法による質感の違いだと考えられていた(「水戸黄門」には当てはまらないが、ブラウン管の透過光、スクリーンの反射光の違いという説もあった)。
しかし、1992~3年にフジテレビの深夜枠で放送されたテレビドラマ『La cuisine』において、岩井俊二が監督を務めた「オムレツ」「GHOST SOUP」「FRIED DRAGON FISH」といった作品で、半分のフィールド情報を捨てて30fpsにするという手法が用いられる。
結果は衝撃的で、てっきり筆者は16mmフィルム撮影だと思い込んでしまったほどだった。そしてこの手法は、「フレームレートを落としただけで、主観的にフィルム風のリッチな質感が得られる」と業界で話題になり、競うように多くの映像クリエーターが真似をした。
このあたりの感覚は、テレビ系のエンジニアには理解できなかったようである。筆者がその現象を、ある技術系の学会で報告した時、偉い人から「フレームレートは高い方が良いに決まってるだろ! 低い方がリッチに見えるなんて、そんなバカなことがあるか!」と怒られた記憶がある。
しかし実際にフレームレートを落とすことで、過剰なリアリティがなくなって造り物っぽさが感じられなくなる。「水戸黄門」を観ていた一般人は、それが記録メディアの変更によるフレームレートの違いとは気付かないまでも、質感の違いは敏感に感じ取っていたのだ。
逆に高いフレームレートは、素材感を生々しく認識してしまうため、セットはセットに見え、カツラはカツラに見えるという現象を引き起こす。そのため、視聴者の心理はフィクションの世界に留まれず、現実世界の見え方に近付いてしまうのである。
アバター2はなぜ48コマなのか。HFR映画がもたらす視覚効果とリアリティ - AV Watch
だが、最初は生っぽさに抵抗を感じた観客が、2度目に24fps版の『ホビット』を鑑賞したり、別の3D映画を見た時に、それまで気にしていなかったフィルムジャダーが急に煩わしく思えるようになったと発言していた。
つまり、我々がこれまで24fpsの映像に馴れていただけとも考えられ、DVDで十分だと思っていた人がBlu-rayを体験して後に戻れなくなったように、人間は一度高いスペックを経験すると感じ方が変わってしまうのかもしれない。
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superhighkaiser · 3 months
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乳首に射ること自体は否定しない、それで爆アゲするのもその人の勝手だと思っている。
ただ、乳首射れが乳首自体に作用して超感じやすくなるという理解はおかしいと思う。
「皮膚への刺激や性感帯含め全ての知覚は脳で生じる」
この基本的な理解がベースにあるべきだろう。だから乳首に入ったアレが直接乳首の神経に作用するのではない。
乳首の毛細血管を経由して脳に達したアレがドーパミンの大量放出を促し、脳の体性感覚の部位に作用して、触覚過敏=乳首の異様な敏感をもたらすと考えたほうがいいと思う。体性感覚の部位は基本的に触覚を司るが、同時に性器や性感帯ともコネクトしていると考えられている。
つまり、腕の静脈に直接射れるのと乳首の毛細血管から吸収させるのも、結局は同じ場所にアレが行きついて乳首が感じるに違いない。だから、どちらの方法でも乳首狂いは楽しめることは事実だwそれはその通りだ。
とはいえ自分は、止血や消毒をおろそかにしてエグい熱と膿を出して腕に酷いクレーターのような跡を残したポン中を知っているだけに、乳首を触りまくることのリスクを考えて、乳首射れはしない。。。
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tar0 · 1 year
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視覚過敏の特性を持つ子どもの中には、先端が鋭くとがった明朝体の『はね』や『はらい』が自分に刺さってくるように感じ、恐怖やストレスを感じる場合があるそうです。他にも、例えば『山』の一画目の始まりの部分が、筆をぐっと押し付けた形状になっていることが気になって文字が読めなかったり、この部分を一画とみなしてしまうこともあるそうです。明朝体で書かれた文章を長時間読むと、集中力が続かなかったり、イライラする子どももいると聞きました。
(4ページ目)“奇跡のフォント”で小学生の正答率に差 開発者が語る「UDデジタル教科書体」の驚くべき効果とは | デイリー新潮
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elle-p · 4 months
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P3 Club Book Koromaru short story scan and transcription.
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虎狼丸の優雅な一日
初夏の爽やかな日差しが心地よい日曜日。今日もなかなかの散歩日和だ。少し早めに出かけて、少し寄り道をするのもいいかもしれない。明確な言葉によるものではないが、だいたいそんなことを考えつつ、その柴犬は神社の石畳から身を起こして軽くあくびをした。
犬の名はコロマル。正式には虎狼丸と書くのだが、本人 (本犬?) は字が読めないので、とくにその違いにこだわりはない。彼がこだわっているのは、毎日の散歩。先日、彼の飼い主である神社の神主が事故で亡くなって以来、新しく神社の主となった人間は、最低限必要な食事は出してくれるものの、散歩に連れて行ったり頭をなでてくれたりはしない。コロマル自身、前の飼い主だけが唯一の主人であると思っており、もし新たな神主が散歩に連れて行こうとしたとしても、以前のルートを変えるなど考えもつかないことだった。なので、今日もコロマルは散歩に行く。まず、長鳴神社からムーンライトブリッジを超えてポートアイランドの駅前まで。その後、再びブリッジから蔵戸台方面に戻り、町をぐるりと巡ってから神社に戻る。これが、毎日の長い散歩のロードマップ。
「わん!」
人間の言葉に直せば、さあ行くか、といった感じだろうか。コロマルは一声鳴くと、いつもののんびりとしたペースで歩き出した。
「あ、コロ助、おはよ!」
ふと、かけられた声に、コロマルは面倒くさそうに顔を向ける。それは、三つ編みの髪を頭の両側でお団子にした、小学生くらいの女の子。いつも、夕方ごろに神社で遊んでいる子だ。
実を言うと、コロマルはこの子が少し苦手だった。嫌いなわけではないのだが、ややコロマルを構いすぎる傾向にあるのだ。大人と比べて体温が高い子供が、気温が高い日にむしゃぶりつくように抱きしめてくることを想像してほしい。毛皮に覆われたコロマルの苦労は、その想像の軽く上をいくものだ。ただし、慈悲深いコロマルは、そんな女の子も無下には扱わない。この子がわりと苦労人であることを、コロマルは知っているのだ。そうしょっちゅうではないが、この子の両親は酷いケンカをするらしく、夕刻の神社で悲しみをこらえるようにコロマルに抱きついてくることがある。群れで暮らす犬族は、それこそ家族や仲間は命に等しい。それが仲良く暮らせない悲しみは、いかほどのものだろうか?そう思うと、コロマルは多少うっとうしくても、彼女に優しくせずにはいられないのである。
「あ、もう時間だ。ごめんねコロちゃん、舞子もう行かなきゃ。あーあ、塾面倒くさいなあ」
そう言って、彼女はコロマルの頭をひとなですると、廠戸台商店街方面へと歩み去った。うん、これぐらいのスキンシップが、コロマルにとってはちょうどいい。少し気分を良くして、コロマルも再び歩み始めたのだった。
潮の香りがする中、コロマルはムーンライトブリッジをてくてく進む。人間は、ここを観光地とかいう扱いでありがたがって見に来るらしいのだが、コロマルにとっては散歩ルート中もっとも退屈な行程である。というのも、橋の手すりが高すぎて、コロマルの体高では絶景と噂の風景も見えないからだ。しかも、やたらとたくさんの自動車が前から後ろから突っ走ってきて、危ないわ埃っぽいわ、嫌な油臭い空気を吐き出すわで不愉快ですらある。
であるからして、コロマルはこの場所を無心で歩く。なるべく潮の匂いにだけ集中し、遠くに見えるポロニアンモールの丸いドームを目指してずんずん歩く。時おり、ランニング中の人間が立ち止まって手を伸ばしてきたりするが、それも可能な限り無視してひたすら前へ。
しかし、それでも2度呼ばれると、つい立ち止まってしまう。コロマルが行ってやらないと、呼んだ人間は時々えらく傷ついた顔をすることがあるのだ。人間を傷つけることは、コロマルの本意ではない。なので、コロマルはあくまで “仕方なく” 人間に思うさま頭をなでさせる。コロマルはそういう自分の性格を時おり誇らしくすら思っているが、じつはなでられている間、ついつい尻尾を振ってしまっていることには気づいていない。コロマルはそんな犬だった。
「あれー、コロちゃん?こんなとこまでお散歩に来てるの?」
「あ、ホントだ。健脚だね〜」
ポロニアンモールに来たところで、厳戸台あたりでよく見る女子高校生に出会った。いつもの制服姿ではなく私服姿。セミロングの髪の子は、ピンクのタンクトップにデニムのジーンズ、ショートの髪の小さい子の方は、水色のワンピースを着ている。もっとも、犬であるコロマルにとって、服の違いは別にどうでもいいのだが。
このふたりは、けっこうコロマルのお気に入りである。水色ワンピースの子は、動物の扱い方を心得ているのか、コロマルが気持ちいい場所を的確になでてくれる。タンクトップの子は、なでかたこそ普通だが、あまりベタベタしようとしない点で好感が持てる。コロマルに触りたいという気持ちは、たくさん伝わってくるので、むしろもっと触ってくれてもいいのに、と思うことすらある。もし犬の言葉がわかる人がいれば、遠慮しないでいいよと言ってあげたいほどだ。まあ、そうそう都合のいいことはないと、犬ながらに買いコロマルはそう思う。
「あ、コロちゃん、こういうの食べるかな?」
そう言って、水色ワンピースの子が手に提げていた袋から何かを取り出す。赤いビニールに包まれた、棒状の何か。漂ってくるかすかな匂いに、ある期待を抱き、思わずコロマルの尾がぶんぶんと大振りになった。
「あれ?ソーセージじゃん。どーしたの?」
「え?あ、た、たまには自分で料理しようかと思って······さっきデパートで、ちょっと」
「ふーん、風花も料理したりするんだ」
「ま、まあね。あはははは」
ワンピースの子は何か焦った様子だが、すでにコロマルは、想像の中に広がるソーセージの味で心が一杯になっている。ワンピースの子は、そんなコロマルの期待に応えるように、できるだけ意いでビニールをむいてくれた。
「はい、どうぞ」
「わん!」
礼を言うのもそこそこに、コロマルはソーセージにかぶりついた。そういえば、朝食をとってからけっこうな時間が過ぎている。ちょうどいいタイミングの思わぬ幸運に、コロマルの心にじんわり幸せが広がっていく。やはり、何かを食べているときが、いちばん幸せだ。それがとくに、好きな人が手ずから食べさせてくれるとあれば、それ以上何を望むことがあろうか。
欠片ひとつ残さずにコロマルはソーセージをたいらげ、もう一度「わん」と礼を言う。
「どういたしまして」
とワンピースの子が答え、買い物の続きがあるからと、コロマルをひとなでしてどこかの店へと向かってふたりは歩き出した。ごくまれにだが、このようにコロマルの意思が、人間に通じているように思えることがある。それは単なる錯覚や勘違いかもしれないが、それもまたコロマルに満足感を与えることのひとつなのだ。
ともあれ、コロマルは今日彼女たちに会えた幸運に感謝しつつ、散歩の続きを楽しむことにした。いずれ、コロマルは先ほどの想像どおり彼の言葉を理解できる存在と出会い、この日もっとも幸運だったことは、ワンピースの子がくれた食物が “調理前” だったことにあったのだと知るのだが、それはまた別の話である。
散歩の折り返し点、ポートアイランド駅に着いたときには、太陽は南天を過ぎ、もっとも暑い時間帯を迎えていた。駅そばにあるオープンテラスのカフェは、日曜ということもあって満員。いつもなら、ここで小腹が空くタイミングとなるために、カフェの客に愛想を振りまいたりすることもあるのだが、今日はもらったソーセージのおかげでその必要もない。
とりあえず、涼しい日陰でも探そうかとコロマルが駅前広場を見回したとき、ぞわり、と背中の毛 が逆立つような感覚がした。無意識に、尻尾が丸くなって足の間に挟みこまれる。コロマルは、その感覚に覚えがあった。
--いた。
花塩そばのベンチに座った、白いドレスの少女。手には大きめのスケッチブックを持ち、空ろな目でしばし前を見つめては、手元に目線を移して右手を動かす。その作業を、少女はひたすら続けている。
コロマルは、あまりこの少女に近づいたことがない。別に危害を加えられた訳ではない。ただ、以前1度だけ、少女の前方にいたときにじっとあの目で見つめられた。それだけだ。その目が、コロマルは今も怖くて仕方がない。
言葉を持たないコロマルは、その印象をうまくまとめることはできないが、あえて説明するとしたら、それは生き物としてはありえないほどの、虚無に満ちた視線だった。コロマルの目からは、少女は既に死者に等しく見えた。
だが、そんな少女が。
「······おいで」
なんと、コロマルを認めて声をかけてきたのである。一瞬のためらいののちに、コロマルは少女のほうへと近寄った。丸めた尻尾は、気力を振り絞って常態に戻している。少女に対しておびえを見せることが、何となく申し訳なく思えたからだ。それがなぜかは、わからない。
コロマルが近寄ると、少女は手に持ったスケッチブックを数枚めくり、やがてコロマルにひとつの絵を示した。強弱が定まらない輪郭線、不安定な色彩。正直、犬であるコロマルに絵の良し悪しはわかりはしないのだが、その絵からは何か圧倒されるものが伝わってきた。それは、この世のすべての生き物が恐れるべく定められた、“死” そのもののイメージだった。
「······これ、お前よ」
その言葉に、コロマルは首をかしげて再び絵を見る。よくわからない。だが、コロマルの生き物としての鋭敏な感覚が、その絵にこめられた別のイメージを感じ取った。
これは、憧れ?
紙の上にすみずみまで満ち溢れる、死というマイナスイメージの中、ほんのかすかに匂う生への憧れというプラス。それはまるで、地平線まで広がる黒々とした底なし沼の真ん中から、すがるように空に向かって伸ばされた白い手。
「普通は······誰かに見せたりしないけど······お前は、勝手にモデルにしたから、一応······」
目を合わせず、言い訳するように少女は呟き、そそくさとスケッチブックを畳んでしまう。
「く~ん」
と、コロマルは、甘えるように鼻を鳴らす。少女に付きまとう、得体の知れない死のイメージは微塵も薄れてはいないが、それでも小さな小さな助けを呼ぶような気配が気になった。だが、少女にはそんな想いは通じず--。
小さな体に不釣合いな大きさのスケッチブックを抱え、少女は無言で立ち去ってしまった。
自分には、あの虚無から彼女を助けることはできない。それを本能的に知覚し、コロマルは少し悲しくなる。そしてコロマルは気づく。
--誰かを守れる力が欲しい。
そんな想いが、自分でも意外なほどに、強く強く満ち溢れていることに。それは、愛する主人を突然の事故で亡くして以来、自分の気づかない場所で、静かにっていた火だった。
それから、コロマルは沈んだ気分を晴らすように、ポートアイランド駅近辺をたっぷり散策した。今日はなかなか面白い人間が多く、別に吠えたり呻ったりもしていないのに「ちょっと!アタシは犬って苦手なのよ!犬は悪い人がわかるって言うし、アタシなんか噛まれるに違いないんだからね!しっし!訴えて慰謝料とるわよっ!」と叫ぶ中年男にじゃれ付いたり、なにやら月高の女生徒を付け回す同じく月高の男子生徒を、真似して尾行してみたりした。そして、ほんの少し気持ちが復活したところで、コロマルはポートアイランドをあとにして、行きと同じ道を辿って帰路に着く。
ポロニアンモールで立ち話をする主婦の、買い物袋から漂う匂いの誘惑に打ち勝ち、相変わらず埃っぽくて油臭いムーンライトブリッジをずんずん進み、ほんのちょっと厳戸台駅前に寄り道をする。これもいつものルート。
このあたりに来ると、昼が長い夏とは言え、すっかり日は傾きかけていた。駅前商店街に多数存在する食べ物屋からは、それぞれに違ったいい匂いが漂ってくる。とくに気になるのが、香ばしく焦げたソースの匂い。前に1度だけ食べたことがある、たこ焼きの匂いである。
ちょっとした気まぐれで、店主が散歩中のコロマルに投げてよこしたたこ焼きは、今までに経験のない美味だった。
「ホンマは犬猫にタコやイカはあかんのやけどな。ウチのはほら、タコ入ってへんから」
店主はそんなことを言っていたが、コロマルにとってはどうでもいいことである。ただ、もう1度だけ店主が気まぐれを起こしてくれないかと、このあたりで足を止める癖がついてしまったのが、我ながら情けない。
空腹をこらえながら、コロマルは商店街を進む。今日はあいにく、コロマルに食べ物を恵んでくれる気になる人間はいないようだ。いつも新しい神主が提供してくれる食事は、コロマルにとってはやや物足りない分量である。今日はちょっと疲れたので、もしかするとあれでは足りないかもしれない。今夜は、空腹をこらえて寝るしかないかと、コロマルが覚悟したとき。
「よう、コロちゃんじゃねえか」
後ろからかかる声。
大きく尻尾を振って、コロマルは声の主のもとに走り寄った。亡くなった主人を除けば、おそらくコロマルがもっとも大好きな人間だ。
「ほら、焦るなって」
そういって、その人は懐から容器を取り出し、地面に置いて開けてくれる。中身は何か肉を煮込んだもの。巌戸台商店街やポートアイランドでよく見かけるその人は、いつの頃からか、定期的にコロマルに食べ物を持ってきてくれるようになっていた。口調は乱暴だが、優しい人だ。
「よし、いいぜ。食えよ」
いつものことだが、コロマルは律儀に一声吠えて礼をいい、それから出された食事を食べ始める。あまり味を気にしないコロマルだが、その肉は絶品だった。濃すぎない味付け、適度な歯ごたえ、神社で出されるドッグフードとは雲泥の差である。食べながらコロマルは思う。色々あったが、今日は総じていい日だった。明日もいい日になるだろうか?
どちらにせよ、コロマルは毎日を精一杯生きるだけだし、日課の散歩も変わらないだろう。手が届く範囲の幸せ、それを守ることがコロマルの重要事であり、それは確かに、生き物すべての真理なのである。
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chikuri · 7 months
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科学的に正確でもポリコレ的に正しくない、「不都合」な研究結果をどうするか。
現代西洋社会においてミソジニーは神話である—と唱える女性進化心理学者が、アカデミアの自己検閲、ジェンダー・バイアスと学術界における女性の影響、学問的アプローチに見る男女の違いなどを語った。
↓以下まとめ
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『Modern Wisdom』は、クリス・ウィリアムソン(Chris Williamson)が様々な思想家達を招き、社会・文化・健康などあらゆるテーマについて語る人気ポッドキャスト番組。ジョーダン・ピーターソン博士、サム・ハリス、アンドリュー・ヒューバーマン博士、スティーブン・ピンカー、ダグラス・マーレイなど、豪華なゲスト陣は十人十色で内容も興味深いものばかり。
第665回目のゲストは、ペンシルバニア大学助教授で社会心理学者、そして作家でもあるコーリー・クラーク博士(Dr. Cory Clark)。
クラーク博士は、学術心理学における自己検閲について、特にジェンダー・バイアスと学術界における女性の影響に焦点を当てた研究についての洞察を語った。
以下、クラーク博士とクリスの対談要約と関連する発言を一部抜粋して訳した(発言は繋がっていない場合あり):
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①アカデミアとジェンダー・バイアス
・アカデミアは必ずしも知的純粋さと真実の砦ではない
・蔓延する女性嫌悪という概念は、現代西洋社会においてはほぼ神話である
・もう一方の性に対して、どちらがよりひどい扱いを受けているのかという問いに答えるのは難しい
・我々は女性への加害により敏感な傾向があり、主流のナラティブは反女性バイアスにより重点を置いてきた可能性がある
/
クラーク博士(以下、博士):「(一年前に発表した論文について)心理学におけるジェンダー・バイアスに関する最近の研究をレビューしたものなんですが、多くの場合、正反対のことが見られる。つまり、人々は様々な領域で女性に有利な方向へ偏っているんです。
男性よりも女性の方が良く扱われることが多い。男性よりも女性の方が好かれます。同じことをしても、女性は男性より罰せられません。女性は男性より優れているとする根拠が示された時よりも、男性が女性より優れているとする科学的な発見があった場合の方が、人々はより偏見を持ちやすいんです。
つまり、人々は女性が男性よりも優れていることを望んでいる。だから、社会は女性に対して性差別的であり、私たちは女性に対する潜在的な危害に警戒しなければならないという考え方は、実は私たちが男性よりも女性のことをとても大切に思っているという事実そのものから生じている可能性があると思われます。男性に対する偏見が見つかっても、誰も気にしないし、見出しにもならないわけです」
博士:「現代の西洋社会において、それ(女性差別)はほとんど神話だと言っていいでしょう、はい」
博士:「7年間も発表するのに苦労した研究があるんですけど、知能に関するもので。男性も女性も同レベルで知的である、女性は男性よりも知的である、男性は女性よりも知的であるという。
人々は男女が同じように知的、あるいは女性の方が知的というのを好ましく思うんですが、男性の方が女性よりも知的である、というのには苛立ちを覚えるんですね」
クリス:「どうしてでしょうね。というより、まず主流のナラティブでは反女性的バイアスが蔓延しているということになっていて、当の男性達ですら反男性的な感傷に呼応している」
博士:「そうですね。男性も女性も女性有利に傾いたバイアスを持っていますが、女性の方がそれはより強い傾向にあります」
博士:「女性の方が『価値』が高いという考え方は、進化の観点からすると、100人の女性と1人の男性がいれば100人の赤ちゃんを産むことができるが、1人の女性と100人の男性がいれば、1人しか産めないというのがあるかもしれないですね。すなわち女性は『限られた資源』であると。学者達もそう主張してきたし、まあもっともらしいと言えます」
博士:「1920年の時点で男性が女性より賢いとか、女性が男性より賢いというような研究を行ったとしたら、現代と同じ反応があったかと言えば、とても疑問です。
加えて、女性はX年間不利な立場に置かれてきたという文化的なナラティブがある。
これは大きな問題です。そして今、是正措置が進み、完全に逆転してしまった。そして多くの場合、男性は女性のために不利益を被っている。だから、どちらも社会において起こっていることだと思います。女性に対する性差別のようなものがあると、みんなワッと飛びついて炎上する」
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②ガンマ・バイアスの概念
・ガンマ・バイアスとは、女性の成功も男性の失敗も、見出しの中で性的に扱われてしまうという概念である
・人々が日々経験する世界は限られており、ニュースやソーシャルメディアが彼らの世界観を形成している
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クリス:「ガンマ・バイアスというのは、男性心理学センターのジョン・バリー博士が…少なくとも彼が広めた概念です。彼が考案者かどうかは忘れたけど。基本的には、特に一般的なニュース、メディアの記事において、記事が女性寄りのものであれば見出しに性別を表記する、というものです。
あるいは反男性的な記事であれば、見出しに性別を入れる。しかし逆のケースでは、男女の区別をつけない。つまり基本的に、女性の成功も男性の失敗も、結局は両方が取り上げられることになる。だから例えば、白人男性の射殺事件が見出しになったり、女性のCEOが見出しになったりする。
でも、その逆は必ずしも正しいとされないというか、その逆はあまり見ないわけですよね。結果、人々の世界に対する見方に歪みが生じる。今、より多くの人が外よりも家の中で時間を過ごしていて、すなわち彼らが日々経験する世界は限られている。つまり、ほとんどの人は読んだニュースやフォローしているソーシャルメディアを通して、それが世界観を形成してるんですね」
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③高等教育における女性
・2023年第1四半期、女性CEOの数は過去最多となったが、これは必ずしも女性にチャンスが多いことを意味しない
・心理学の学者も、データの解釈に関しては女性寄りのバイアスをもっている
・このようなバイアスは、誰が権力を握っているかということと、実際に何が起こっているかということに対する誤った認識の組み合わせによって引き起こされている
・女性が高等教育を支配するようになったことで、トリガー警告や弱者保護への懸念といった文化的な変化が起きている
/
クリス:「科学が女性にとって不利な場合、人々はその情報を検閲したがる傾向にある、という研究もなさってませんでした?心理学者にも(女性重視の)バイアスがあるといういうような」
博士:「まず心理学の教授達にアンケートを取ってインタビューしたんですね。(中略)
動機は、よくわからないですが、いくつか考えられます。ひとつは… 前にも言ったように、私たちは女性により大きな関心を持っている。そして文化的な変化があり、その一部は、女性がより権力のある立場にいるという事実によってもたらされている。
女性がメディアや科学分野といった組織内で権力的地位を占めるようになり、自分達の利益をより気にかけるようになった、というのもあるでしょう」
博士:「この論文はうまくいけば今にも受理されそうなんですが、学者や一般の人々が雇用における男女差別を信じている、というものなんですね。
実際の求人に女性や男性の名前で応募してもらうというものなんですが、2009年ごろから、突然、ステレオタイプな男性向けの仕事でも、女性に有利なバイアスがかかるようになりました。ステレオタイプな女性向けの仕事では常に女性が有利でした。
しかし、一般の人々や学者達は、誰もがその逆だと思い込んでいる。ステレオタイプの男性的な仕事には、女性に対する大きな偏見があると思い込んでいるんです」
クリス:「男がCEOになった、という話には被害者カードを振り回す余地もないので、だからどうした、となるわけでね」
クリス:「ある種のミサンドリー(男性嫌悪)や、男性を非難し続けたいと願望を持つ女性がいるのは、まあ理解できますかね。
Google Scholarでミソジニーを検索すると114,000件ヒットしますが、ミサンドリーを検索すると2,340件しかヒットしません。つまり、人々は反男性的な偏見、特に女性からの偏見について研究していないし、関心もない。
『黒人が人種差別をするなんて、まさかそんなことはない』というヤツですよね。街頭インタビューやアンケートで『女性は性差別主義者ですか?』と質問したら、似たような結果になるに違いない」
博士:「Googleといえばもっと面白いのがあって、これは論文執筆後に見つけたんですけど、『Men are stronger than women(男は女より強い)』でイメージ検索するんです。(男は女より強い、というのは)平均的にというか、ほぼ例外なく事実ですよ。
すると検索結果に表示された41枚の画像のうち、1枚は当てはまるものでした。2枚は中立的なもの。残りは全て、女性の方が男性より強いとする画像だったんです。女性が男性より速く走るとか、女性が男性を頭上に持ち上げるとかね。
だから、『男は女より強いというのは事実だ』と言ったところで、『いや、女の方が強い。グーグルで検索した』となってしまうんですね」
画像 博士:「ここ数年で、学部レベルでは女性が圧倒的に多くなり、男性よりも女性の方がはるかに多く、大学院でも女性の方が多くなり、今では教員も女性の方が多くなっています。かつて教育機関のほとんどは男性によって運営され、学生も男性であったわけですが、今では女性が過半数になりました。
それが唯一の原因だとは言いたくないし、それだけとは思いませんが、過去10年間に起こった多くの文化的な変化の主な原因であることは間違いないでしょう。
なぜなら、それらの変化はすべて女性の価値観を優先しているからです。
例えば、授業でトピックを教えるときに、トリガー・ウォーニング(センシティブな題材、性暴行や虐殺や人種差別などについて扱う前に、そうした話題が苦手な人達が教室を出たり記事を読むのをやめるなどして心理的な負担を回避できるように配慮する措置)を出したがる。
物議を醸しそうな問題を研究した学者がソーシャルメディアで攻撃されたり、解雇されたり、嫌がらせを受けたりするケースが急増していま���。
学術雑誌の編集変更を見てみると、リスナーの皆さんには馴染みがないかもしれませんが、シュプリンガー・ネイチャー誌系列の科学界で最も権威のある学術誌が、ここ数年、一連の論説を発表していて、『人間の社会集団の尊厳を損なう可能性のある科学は掲載せず、撤回する可能性がある』と述べているんです。一体どういう意味かと」
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④男女の心理的な違い
・女性は歴史的に子供を育て守る責任があり、男性は集団を守るために連合を形成する責任があった
・女性は物事に対して平等主義的な傾向があり、男性は階層主義的な傾向がある
・女性は自分の功績を過小評価する傾向があり、男性は自分 の功績を過大評価する傾向がある
・女性は言論の自由よりも包摂的な社会を優先する傾向が強く、男性は包摂的な社会よりも言論の自由を優先する傾向が強い
・女性は他人を助けることを目的として科学を追求する傾向が強く、男性は世界を理解することを目的として科学を追求する傾向が強い
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博士:「アカデミアの男女比率構成が変わったことで、女性の関心、すなわち弱者を危険から守るという目的が優先されるのは避けられない結果でしょうね。また女性の方がはるかに形式的平等主義者でもあります。なので男性の方が階層集団的であるのに対して、女性は皆等しい結果になるのを好む傾向もあるんです」
博士:「(身体的特徴の差や原始社会から現在まで積み重ねられた役割の違いなどを鑑みれば)男女の差はものすごく大きいわけです。そして男女には優先順位の違いも見られます。
心理学の教授陣に関して言えば、男性教授は女性教授よりも科学の目的である真実の追求を支持していますし、女性よりも学問の自由を支持しています。
一方で女性は、それらと道徳的な懸念や危害の懸念とのバランスを取る必要がある、と考えています。
つまり、こういうことです。男女の性差や性格が進化し、教育機関の男女構成が変わると、その教育機関が達成しようとしている目標が根本的に変わってしまうのです。
科学の場合であれば、『真実(但し特定の誰かに対するネガティブなステレオタイプを広めないものに限る)』みたいなことになってしまっている」
クリス:「あなたの調査の中に、私の好きな統計があるんですが…男性の56%が、『大学は攻撃的な考えから学生を保護すべきではない』と答えたのに対し、女性の64%は、『保護すべき』だと答えた。
男性の51%は、『学生が暴力的な抗議運動をすると脅した場合にも、大学は講演者の来校を中止すべきではない』と答えたのに対して、女性の67%が『中止すべき』と答えている。
男性の58%は、『学生が攻撃的な発言を報告するために利用できる、大学の秘密報告制度に反対』しているが、女性の54%は『賛成』。
『学生新聞の物議を醸すようなニュースに関して、掲載前に管理者の承認を必要とすべきではない』と考える男性は63%、一方で女性は『承認を必要とすべきだ』が51%。
71%の男性が、『言論の自由を守ることは、包括的な社会を促進することよりも重要』と回答しているが、女性の60%は、『言論の自由を守ることよりも、包括的な社会を促進することの方が重要』と答えています。
つまり、男性は経験的に正しいことを進めることに比較的関心があり、女性は道徳的に望ましいことを進めることに比較的関心があるということでしょう」
博士:「学問の自由を当たり前に重要視していて、科学は当然のように真理を追求するべきだと考えている人には、これらの統計は非常に好ましくないものに見えるでしょう。女性が科学や学問の世界で問題を引き起こしているのでは、とね。
しかし女性達はこの統計を見て『やっとこれで(学問が)救われる』と考えているんです。『誰にとっても安全な場所を作り、科学が良いことをするようにするわ』とね。科学は害を成すものではないんですが。
科学者の優先順位について、別の論文があるんですが、男性は世界を理解し、何が真実なのかを知り、物事の仕組みを解明することに基本的な関心を持っている。
一方、女性が科学をするのは世の中に良いことを起こしたいから、です。つまり、彼女たちの動機としては真実を知りたいけれども、それは、それが他の人々を助けることに役立つ場合だけなのです。つまり、他の人々を助けないような真実、特に他の人々を傷つける可能性のある真実には価値がなく、科学や学問の分野でそれを追求すべきではないと考えるんですね」
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⑤進化心理学とジェンダー・バイアス
・男女は進化によって異なる心理的特徴を持っている
・生物学的性別は、大多数の人々にとって二項対立である
・性的に強圧的な行動をとる傾向は、そのような行動をとる男性に進化上の利点を与えるために進化した可能性が高い
・ジェンダーバイアスは、STEM分野で女性の割合が低いことの最も重要な要因ではない
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クリス:「アレクサンダー・デイト・サイクス(Alexander Date Sykes )が発表した、本当にめちゃくちゃ素晴らしい研究があるんですけどね。彼には再来週あたりにゲストで来て話してもらう予定なんですけども。
55%の独身男性は、この1年の間、女性に声をかけたことがないというんです。女性の77%は、よりアプローチされたと答えていますが、それは18歳から30歳の層に限ります。
そして41歳以上になると傾向が反転し、55%の女性が「声をかけられたくない」と答えたんです。
ここで疑問なのは、『男性は女性にアプローチするのをやめよ』みたいな論説を誰が書いているのかということです。その年齢層の女性達なんですよね」
博士:「ああ、なるほどですね。つまり、女性にアプローチするのを止めろと言っているのは年配の女性で、アプローチされない層の女性なんですね。だから競争相手を排除するべく、20歳の女性を口説くのを止めろと言っているという」
クリス:「そうそう、女性の敵は女性じゃないの、なんて」
博士:「心理学の教授に、『教授は生徒とセックスしたら解雇されるべきか』という質問をしたことがあります。男性は『解雇されるべきではない』と答える傾向にありますが、女性は『解雇されるべき』と言いますね。自分の利益を考えているのかもしれない。
ひょっとしたら若い女性に気を配っているのかもしれない。年上の教授からハラスメントを受けては嫌でしょうから。でも年配の女性教授達にしてみたら、自分らとくっつくべき年齢層の男性教授が、24歳の大学院生と性交しているのが嫌というのもあるかもしれない。まあこれらのことを区別するのは難しいですよね。
個人的にはどちらもれっきとした理由だと思うんですけどね。例えば特に年配で子供がいる女性には、母性本能のようなものがあって、若い人を守りたいという願望があります。同時に若い女性は繁殖の競争相手でもあるわけです。あなたは40歳の女性教授で独身なら、45歳の男性教授が28歳の大学院生とデートするのを望まないでしょう」
クリス:「そうそう、ビル・バービット(Bill Burbitt)の話で、平均的な女性がよりボディ・ポジティブを支持する理由として、自分の周りの太っている友人に痩せて欲しくないから、という」
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クリス:「進化心理学、あなたの専門分野のひとつであり、僕が執着する分野のひとつでもありますけど、進化心理学がこれほど嫌われるのはなぜだと思いますか?」
博士:「私の目的は、なぜ人々が進化心理学や行動遺伝学を嫌うのかを知ることではなかったんですけどね。心理学で物議を醸す結論のほとんどは、あなたをトラブルに巻き込みます。それらはすべて進化心理学や行動遺伝学から来ているといっていいでしょう。
人々は集団の違いに関する結論を嫌うんですね。男女差や人種差、特に進化論的な説明や行動遺伝学的な説明によって支持される結論を嫌うんです。進化心理学も行動遺伝学は互いに相性が良く、というのも進化は私たちの遺伝子に働きかけるからですね。」
博士:「最初に話したように、その違いが女性よりも男性に有利なものであったり、黒人よりも白人に有利なものであったりするとね。
白人が黒人より、あるいは男性が女性よりも優れているようなことがあれば、それについて進化的あるいは遺伝的な説明をするじゃないですか。そんなことをしたらクビになるわけです。論文も撤回されることになる。誹謗中傷も受けるでしょう。
進化心理学はめちゃくちゃになってしまいました。特に、女性が学問の中心を占めるようになるにつれて、有害になりうる話題には気をつけよう、避けよう、となってしまっている」
博士:「まあでもいちばん行きたくないのは社会心理学ですね」
クリス:「ですね。様々な心理学分野の中で最も信頼性が低いのに、現在最も台頭していて、政治的に、感情的に最も支持されている分野という」
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⑥心理学における政治的バイアス
・保守派は心理学で十分に代表されていないグループである
・政治的バイアスは人種的バイアスよりも一般的である
・イギリスでは階級が決定的な要素であり、アクセントは階級を表すことがある
・人々は人種差別よりも政治的人種差別を容認しがちである
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クリス:「学者に平均的な世論調査をすると、特に今、現代の学界では、かなり左寄りになっていますよね」
博士:「それについては議論がありますね。保守派が科学に向いてないとか、科学が嫌いなだけだと言う人もいるんですが、保守派を差別して採用しなかったり招聘しなかったりすると、学者がはっきり言っている研究もあるんですね。だから、人々が保守派を差別していると考えるには十分な理由があるでしょう」
クリス:「スコット・ギャロウェイ(Scott Galloway)が教えてくれたんですが、民主党の親の3分の1か5割だったかな、自分の子供が共和党員と結婚することを恐れているんだそうです。そう、政治的なものに対する集団内、集団外での憎しみは本当に大きく、人々はそれを認めているんですね。恥とも思っていない」
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⑦アカデミアにおける過敏症
・NYUは黒人専用の寮を検討していた
・シュプリンガー・ネイチャー・ガイドラインは、害を及ぼす可能性があるものは抑制すべきであると示唆している
・心理学の教授の多くは、何かを発表するかどうかを決める際には、道徳的な懸念よりも学問の自由を優先すべきであると考えている
・過敏症のせいで、2つの堅実な研究分野が悪評を立てられている
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博士:「NYUだったかな、黒人専用寮を検討していて、それもあれですけど、さらに白人のみの人種に関する集会で『黒人は参加できません。我々のしでかしたクソの山にあなた方は我慢してきたというのに、顔向けできないからです』みたいな感じで」
クリス:「あなたの研究に戻りますが、アメリカ中の心理学教授共を集めたわけですね。有害な結論に達した時それをどう対処するか、奴らは何と?」
博士:「男女の違いについて話してきましたが、私のデータ全体を見渡すと、ほとんどの人が学問の自由を支持し、何かを発表するかどうかを決める際に道徳的な懸念を考慮に入れることには反対しているんです。
なので私は訊いたんです;その発見が抑圧されてしまう前に、一体どの程度、その有害性が確実であるべきか、と。
最も一般的な回答は、『科学的知見を決して抑圧すべきではない』というものでした。そこから段階的に『害を防ぐ唯一の方法が、その発見を抑制することだという証拠があるべき』という感じで、驚いたことに一番下(抑圧すべき)にはほとんど誰もいませんでした。
驚いたというのは、先ほどお話ししたシュプリンガー・ネイチャー・ガイドラインは、『害を及ぼす可能性があると思われるなら、論文をリジェクトするか撤回すべし』というようなものだからです。
しかし、それが適切な���引きだと考える心理学教授はほとんどいなかった。だから私は、この分野がどこに向かっているのか、人々が何を望んでいるのかという認識は、実際にはどうなのだろうかと思うんですね。一部の過激派が、政策に影響を与えるような権力の座を得ようとしているということなのでしょうか。ネット上での声が実在する数以上に多く感ぜられるだけとか。
人々が何を望んでいるのかが歪められている気がしますね。
私たちの多くは怖くて何も言えない。その結果、声を上げる少数派の人達は、大胆な政策変更を行うことができるのです。闘いを挑む人はそれほど多くない。不満を持っている人は何人かいるが、反対意見を持つ人の多くは何も言わないので」
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⑧学界における女性の影響力
・女性がアカデミアを支配し、男性教授候補のプールはますます小さくなっている
・議論されているすべてのトピックの間に共通して通っている一本の糸筋は、ある種の偏狭さと、社会的に過小評価されているとされるグループに対する懸念であり、それはしばしば人生で苦しんだことのない進歩的な白人女性によって推進されている
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博士:「このような性差に加え、女性がアカデミズムを席巻しているのを目の当たりにすると、その数は当分の間、女性側に推移していくでしょうね。現時点では、男性側に戻るという希望はありません。
男性はもうそれほど大学に進学していないし。なので教授になれる可能性のある男性のプールは、日に日に小さくなっています」
博士:「進歩的な人達は本質的に黒人を見下すような話し方をし、黒人と話しているときに自信のなさを見せるのに対して、保守的な人たちは黒人も白人も同じように扱うという論文もあるんです。
他にも、どんなジョークが面白いか、不快か、みたいなことを調べた論文もあって、保守派は『一様に全員をからかう、みんな面白い、みんなこういうことの対象だ』みたいなのに対して、進歩派は『マイノリティ・グループをからかっちゃいけない、他のみんなはからかうけど、彼らをからかっちゃいけない』みたいな感じなんですよ」
博士:「ポーランドの学会にいたんですが、友人のマヤ・グラッソ(Maya Graso)が非常に興味深い発見をしていて。
どうやって計測したのかは失念したんですが、男性は外的危害あるいは肉体的危機の保護者であるのに対して、女性は内的危害や内面的損傷の保護者なんです。つまり、男性は他人が肉体的なダメージを受けているのを見ると立ち上がるのに対して、女性は特に心理的、感情的なダメージを受けている人を守るために立ち上がるんですね。
これは非常に興味深いもので、実際我々が目の当たりにしているのは、肉体的な被害の可能性を生み出してまで女性達が他者の「気持ち」を守ろうとするもので、彼女達は必ずしも二次的、三次的なことまで考慮していないように見えます」
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⑨映画監督とジェンダーの優先順位
・映画監督をする上で、女性は男性とは異なる優先順位を持つ
・2020年版『ムーラン』の予算は2億円、興行収入は7000万円で、1億3000万円の赤字だった
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クリス:「20年くらい前でしたっけ、ディズニー映画の『ムーラン』が最初に作られたとき、主人公は小柄な女の子で、より賢く、より懸命に働くために、あらゆることをする必要があった。
彼女は自分の体格を補うために一生懸命に働いて、頭を使って体格のなさを上手く利用したりして、より速く、より経験を積み、困難を克服し、やったー、彼女は素晴らしい、となったわけですよね。
ムーランの最新版とは対照的なんです。
最新版の主人公は何もする必要がない。彼女はそこにいる男たち全員に見下されている。彼女は当然、その男共より優れている。彼女は困難を克服する必要がない。彼女は魔法のような女性の気、エストロゲンの気、それこそ何でも持っていて、そのおかげで男達全員よりも才能がある。
そして男達はみんな不器用で、恩着せがましい。そしてそれは…どこかで見た展開だよね」
博士:「1作目は男性監督で、2作目はおそらく女性監督じゃないですかね」
クリス:「そう思う?見てみよう。どうかな。なんてことだ。新しい方の『ムーラン』の監督はニッキー・カロ。ニュージーランドの女性映画監督だ。ファックだよ、古い方のは…男だ。バリー・クックとトニー・バンクロフト監督、1998年だって」
クリス:「参考までに『ムーラン』の予算は2億ドルで、興行収入は7700万ドルだった。1億3千万ドルという重い重い代償を払って、女性の脆さを支えたわけなんだね」
(まとめ&訳終わり)
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今回の動画は密かに大先生として尊敬している吉澤洋治さん(@yojireal )にお薦めいただきました。いつもためになる書籍のご紹介やコメントをありがとうございます。
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rosysnow · 20 days
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ずっとそばに
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 ゆっくり、夜の街に明かりが戻ってきたと感じる。居酒屋やスナックが夜遅くまで光を灯している。
 そんな通りに並ぶ、とあるバーに大学時代からよく行っている。ゲイバーじゃないけど、ママがニューハーフで、トークがなかなか愉快なのだ。そんなママを気に入って、店によく来る奴のメンツもだいたい決まっている。
 その人々の中に、いつからそのカップルがいたのかは憶えていない。自然と、名前と顔は一致するようになっていた。長身でワインレッドのメッシュを入れた男が真寿、黒髪ショートのきりっとした女が寧々だ。真寿は二十六の俺とタメくらいで、寧々はそれより年上で三十手前だろうか。
 見ている感じ、真寿は寧々の尻に敷かれている。寧々が何かしら一方的に言うと、真寿はしゅんとして謝っている。
 あんな女、俺なら嫌だな。そう思うけど、だからこそ、好きこのんで寧々とつきあう真寿は、よほど彼女が好きなのだろうと俺は思っている。
「あの子も、あんなモラハラみたいな女、やめとけばいいのに」
 その日も仕事を終えて、帰宅前にカウンターで一杯飲んでいた。すると、大学時代に同じサークルだった茅乃も顔を出し、俺の隣でカクテルを飲みはじめた。お局に対する愚痴をひと通り述べたあと、ボックス席にいる真寿と寧々を一瞥して、茅乃はそう言った。
「モラハラって」
「いつも怒られてるじゃん、あの子」
「あいつが彼女のこと好きなら、勝手なんじゃね」
「克宏も、好きな女だったらああいうのOKなの?」
「……俺は嫌だけどな」
「ほら。あーあ、真寿くんならもっといい女がいるのにさ」
 俺は静かにハイボールを飲んだあと、「それは、お前が『いい女』だと自称してるのか?」と眉を寄せた。
「悪い?」
「お前は『いい女』ではないな」
「克宏にはそれでいいけど」
「真寿くんに興味あんの?」
「私は可哀想な男が好きなの」
「可哀想って……」
「放っておけない。私が幸せにしたい」
「本人は幸せだと思うぞ」
「あれを見て、本気でそう思う?」
 真寿と寧々がいるボックス席をちらりとした。寧々は腕を組んでソファにもたれ、何か言っている。真寿はやっぱりうなだれている。会話はジャズと客の話し声に紛れている。
「絶対モラハラだわ、あれは」
 茅乃はひとりうなずき、オレンジ色のカクテルを飲んだ。「そうですか」と俺は聞き流して、スマホを手に取っていじる。
 今まで、真寿と寧々のそういう関係は、当たり前のように見ていた。でも、実は真寿は寧々に負担を感じているのだろうか。だとしたら、別れない理由が俺には分からないけど、真寿は別れたいと切り出せるタイプじゃなさそうだなとは思う。
 やがてアルコールが軆にまわり、ほどよいほてりを覚えてきた。茅乃には「あんま野暮なこと考えんなよ」と釘を刺し、俺はママに支払いをしてバーをあとにした。
 びゅうっと寒風が吹きつけてくる。十二月になって、一気��冷えこむようになった。���スクが隠れるくらい、マフラーをぐるぐるに巻いて、駅へと革靴の足を向ける。
 この通りは、パンデミック前は酔っ払いもかなりふらふらしていて、やや治安が良くない感じだった。でも、時短営業を機に閉じた店も多く、現在はそこまでうるさくない。灯っている明かりは増えたけど、活気が戻るのはまだもう少し先なのかなと思う。
 恋人もいない俺は、毎日会社で仕事をやるしかない。リモートワークも選べるけど、実家住まいの俺は、フルリモートが解除されたら、さっさと出社するようになった。リモート授業の大学生の妹に、「満員電車に乗ってきて、そのまま近づかないでよね」とか言われるが、そもそもお前がそんなふうに生意気だから家でゆっくりできねえんだよと思う。そして、これを口にしたら、両親は確実に妹の味方をするのも鬱陶しい。
 年末感が濃くなる金曜日、俺はまたバーにおもむいた。今年は土日がクリスマスなので、何となくうんざりしていた。彼女持ちの後輩は、「彼女とゆっくり過ごせるから最高ですよね」とか言って、俺は引き攣った苦笑いをするしかなかった。
「今年は久しぶりにオールのクリスマスイベントやるから、うちに来たら? 出逢いもあるかもしれないわよ」
 ママになぐさめられて、それもありかもしれないと深刻な面持ちで検討していると、からん、とドアベルが響いた。ついで、「こんばんは」と誰か店に入ってくる。
「あら、真寿くん。寧々ちゃんは?」
 俺はグラスから顔を上げ、入ってきたのが紺色のコートを羽織った真寿であることを認めた。彼は相変わらずな印象の弱気な笑みを見せると、ホールのボックス席でなく、俺のいるカウンターにやってくる。
 手にしたメニューを見つめた真寿は、吐息をついて、「とりあえず水を……」と言った。
「いいの? お水でもお金はいただくわよ」
「分かってます」
 ママは肩をすくめ、ミネラルウォーターをペットボトルごと真寿に渡した。しかし、受け取った真寿は、それに手をつけようとしない。
「何かあったの?」
 スツールがあいだにふたつあるけど、その横顔を見兼ねて、俺は声をかけてみた。はっと真寿はこちらを見る。女顔だなあと失礼ながら思っていると、「……克宏くん」と真寿はつぶやく。話すのは初めてだが、名前ぐらい把握されていても驚かない。
 真寿は視線を下げると、「あの子……」とぽつりと口を開いた。
「君の恋人ではなかったんだね」
「はい?」
「茅乃さん。ずっと、そう思ってたよ」
「………、え、茅乃と何かあったのか?」
 真寿はやっとペットボトルを開封すると、ごくんと喉仏を動かして、ミネラルウォーターを飲みこんだ。
「夕べ、茅乃さんと一緒だったんだ」
「はっ?」
「それが寧々に見つかって、怒られちゃって」
 え……と。
 何言ってんだ、こいつ。茅乃と夕べ一緒だった?
 もしや、この男、おとなしそうな顔して下半身は緩いのか。一緒だったということは、まあ、そういうことだろう。そりゃあ寧々も怒る。
 いやいや、待て。茅乃は先日、モラハラとかめんどくさいことを勝手に言っていた。
「もしかして、茅乃に無理に迫られた?」
「……まあ」
「マジか。それは……何か、あいつの友達として謝らないとな」
「いやっ、僕が流されただけで」
 そこは確かにお前も悪い。と言うのはこらえて、「真寿くんって、寧々さんとうまくいってなかったりする?」と問う。
「え? そんなことはないけど」
「じゃあ、あんまり……良くはなかったな」
 あんまりというレベルじゃないが、そう言っておく。真寿は黙りこんでしまい、ただ不安そうな顔で水を飲む。
「茅乃は、その──あいつなりに、真寿くんを心配にしてたみたいだから」
 沈黙が窮屈になった俺の言葉に、「心配?」と真寿は首をかたむける。ワインレッドのメッシュがさらりと流れる。
「真寿くんが、寧々さんにモラハラ受けてんじゃないかって」
 真寿は心底驚いた丸い目になって、「それはないよっ」と身まで乗り出してきた。
「確かに、寧々は僕のダメなところに目敏いし、よく指摘するよ。でも、それはほんとに僕が直さなきゃいけないところで」
「お、おう」
「ふたりきりになれば、寧々は僕のいいところもたくさん褒めてくれるんだ。すごく厳しいけど、すごく優しいんだよ」
「そう、なのか……」
「寧々はかっこいい。ずっと僕の憧れだった」
「ずっと?」
「うん。友達のおねえさんだったんだ、もともと。何年も、すれちがうときに挨拶するだけで。寧々からお茶に誘ってくれたときは、夢みたいに嬉しかったなあ」
 真寿は幸せそうに寧々との馴れ初めを語り、俺は臆しながらそれを聞く。
 何か、こんなに寧々にベタ惚れしていて、こいつ、本当に茅乃と寝たのか?
 そこのところを、具体的に訊けずにいたときだった。
「やっぱりここにいた」
 からん、とベルを鳴らして、店に入るなりそう言ったのは、カーキのオーバーと細いデニムを合わせた、いつも通りボーイッシュな寧々だった。
 真寿ははたと寧々を振り向き、口ごもる。
「ねえ、あんたの部屋にあたしとあの子とふたりきりにして、あんたは逃げ出すって何なの?」
 おいおい、そんな修羅場を投げてきたのかよ。ついそう思ったが、同じ男として、そんな現場は逃げたくなる気持ちも分からなくはない。
 真寿は気まずそうにうつむいているので、思わず「友達が失礼したみたいで」と俺は口をはさんだ。寧々はこちらに、長い睫毛がナイフみたいにも感じる鋭利な目を向ける。
「あの女の子の友達?」
「そうです」
「友達は選んだほうがいいわよ。で、真寿、あんたはあたしに言い訳ぐらいしたらどうなの?」
「言い訳なんて……悪いのは、僕だし」
「それで、何も説明しないのはもっとずるい。あたしがどうでもいいってことなら別だけど」
「それはないよ! 僕が好きなのは寧々だよ、絶対に。寧々のこと、大好きだよ」
「あの子にも同じことを言ったの?」
「言うわけないっ」
「じゃあ、それは、あたしにきちんと説明してほしかったな」
「……ごめん」
「あと、一緒に過ごしたくらいで、だいぶ大ごとに捕えてるみたいだけど、何もなかったならあたしは怒らないわよ」
 え? 俺は思わずぽかんとして、真寿もまばたきをする。
「あの子が言ってた、『相手にされなかったから』って」
「信じて……くれるの?」
「むしろ、信じないと思われるほうが不愉快ね」
「ご、ごめんっ。僕だったら、寧々がほかの男とふたりで過ごしたら許せないし、たぶん、何もなかったなんて信じられないから。そんなの、頭が変になると思う」
「……あたしも、頭は変になりかけたけどね」
 むすっとした感じで寧々が言うと、真寿はぱあっと笑顔になり、スツールを立ち上がって「ごめんね」と彼女を抱きしめた。「あらあら」なんてママはにっこりしているけど、俺にしたら痴話喧嘩なので、しょうもないと思いながらスマホを取り出す。
 いつのまにか、通話着信がついている。茅乃からだ。俺はいったん席を立ち、壁際で茅乃に通話をかけた。奴はワンコールで出た。
「真寿くんとひと晩過ごして、何もなかったことは聞いた」
 俺が開口で言うと、茅乃は『ありえないでしょ……』と絶望的な涙声でつぶやいた。
「だから、真寿くんはそれだけ寧々さんに惚れてんだよ」
『うー、つらいよお。私、真寿くんのこと、けっこうマジで好きだったんだよ?』
 俺は壁に背中をもたせかけ、けっこうマジで好きなのはこっちもだけどな、と思う。
 本当に、見る目がない女だ。そんなお前に恋をした俺が悪いんだろうけど。マジで、鈍感すぎる。
 俺がいつも隣にいるって気づいてくれよ。何だかんだ、ずっとそばにいるじゃないか。でも、こいつはおもしろいくらいに気づいてくれない。
 真寿と寧々は、いつも通りのホールのボックス席に移動している。寧々が何か言っても、真寿はいつになく嬉しそうだ。
 あのふたりは、ずっとお互いのそばにいるんだろうな。茅乃の泣き言を聞きながら、そんなことを思う。
 俺が茅乃とあんなふうになれるかは分からないけど、憂鬱だった週末のクリスマスは、ひとまず彼女のやけ酒につきあって過ごすことになりそうだ。
 FIN
【THANKS/診断メーカー『お題ひねり出してみた(ID:392860)』】
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ryecha · 20 days
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酒しか勝たん👊 じゃなくて腹減ったんだが🥺
そういえば枠では濁したんだけど、お酒が飲めなくなった原因もアレルギーなんじゃないかなって推測してます🤔 アルコール過敏症(アルコールアレルギー)ではないんだけど原料に起因して真っ赤になってる説が濃厚です😌 というのも、元々アレルギー体質で中学生くらいから食物が出始めたんだけど、年々増え続けてるんだよね🤧 だからお酒たちの原料にもアレルギーがあるし、普段食べてるものにもある🫠 基本的にはたべてるんだけど、ただ一切食べられないものもあってそれが甲殻類ってわけ🥲 甲殻類おいしいんだけどな🥹
まぁそんなこんなで最近は抗生剤にも反応が出始めてて厄介だなーなんて思っているところですね🤧 っていいつつ元々抗生剤は耐性菌があって飲んでも効かないんだけどね🥰 だから大した問題ではないかな💦 今も生活できてるし特に心配するものでもないと思う🥺 心配してくれる気持ちはありがたいけどね🙏
ちなみに花粉症は減感作療法もやってたし薬も年中飲んでるしかなり落ち着いている方です💉 だから本当に心配しないでくださいって言うのとあまり気は遣われたくないですって感じ🥳 枠で言わないのもそれが理由です💦 なんか変な雰囲気になるじゃん🥺
あ、それと22歳っていう年齢バレしました🥰 いや、まさか2019年にドイツ行った時が18歳だったなんて話をして年齢バレするとは思わないじゃん🥺ドイツに行った時の年齢なんて言うんじゃなかったわ🇩🇪 ちなみにそれでも日本に帰ってきて一時期酒に溺れてたので… 2年間禁酒してましたけど💦 まぁいろいろございました😊 今日の総括は私が22歳って発覚したことがよくわかったね😭
さて、お腹すいたし寝るか😴
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kennak · 30 days
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問題が起こりすぎて、感覚が麻痺しつつありますが、国民は政治の問題に敏感でい続けなければ、民主主義は形骸化し、いつか誰も声を上げなくなります(そうなりつつありますが)。政治家は本来、国民の代表であり、中にはこうした人が1人ぐらいいてもおかしくはありませんが、連続して起こるということは、党としての資質でしょう。国民の代表たる自覚がなく、権力に甘んじているのだと思います。それを変えられるのは、国民しかいません。もっと国民が政治に積極的に参加しないと、いよいよ相当危機的なレベルに陥っていると感じます。
「パンツ1枚の県議を縄で縛り…」和歌山過激ダンスショーにつづき…自民党青年局に再び激震「SM緊縛パーティ」を開催していた(文春オンライン)のコメント一覧 - Yahoo!ニュース
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xx86 · 1 year
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2022年、バニラ、お蕎麦、がらくた
長く愛用していた香水が廃盤になってしまった。眠れない夜、寂しい夜にいつでも抱きしめてくれた香り。だいすきなのに、特別だったのに、毎日使っていたのに、どんな香りだったのか思い出せない。なんて薄情。
さてどうしよう、と松坂屋を出ようとしたところにあった香水ショップで見覚えのある香水瓶が目に付いた。そのブランドで買い物した時に、リボンに振りかけてもらった香水だった。甘く、じゃくじゃくとした、砂糖を煮詰めたようなにおい。または、子供にフリフリの服を着せたがるお母さんが使ってそうな香水。
店員さんにこの香水は男性でも使われる方が多いと話していてまさかと思ったけれど、ラストのくしゃみをしたくなる甘さを引き摺りながら、この香りを選ぶ男性はぜったい欧米人だなと思った。日本人男性の体臭にはパンチが強すぎる。人と被らない香水を選んできたわたしがまさかブランドのアイコンとなるような香水を選ぶ日がくるとは思わなかった。普遍と考えるならいいのかもしれない。しばらく試してみて、夜を越えられそうだったら定番にしてみようと思う。
と、思っていたのは夏の話で50mlの香水は突如空になった。何の前兆もなく。クリアガラスになっていない香水瓶だったので、残量を把握できてなかったのだ。しかしながらトップの立ち上がりがだいぶマイルドになって、鼻が慣れてきたのかななんてお気楽なことを考えていたけど、今思えばだいぶ揮発していたのだと思う。揮発してちょうどよく感じるほどトップがきつい香水って多くない?ずっと使っていた香水は、トップからスペシャルに甘酸っぱくて好きだった。
まあこの香水も使いこなせるようになってきたので、もう一度同じものを買っても良かったのだけれど、もうすぐ会える彼と香水を揃える約束を幾分前からしていたので、取り急ぎつなぎとして全然違うバニラのにおいのする香水を買った。置いてあるテスターって大体ラストだから気をつけなければいけない。やっぱりトップがきつい。明日から泊まりに来る妹に嫌がられそうな匂い。でもまあ赤のキラキラの箱に入っているところからギャルみたいで気に入っている。20代の内にバニラのにおいがするtinyな女の子ぶってみたかったから。
仕事に疲れ土日は寝倒し、空腹で目が覚めるも食べるものがなく、仕方なくUberEATSでマックを頼む、みたいな怠惰な週末を過し続け気づいた。私、マックは別に好きじゃない。そもそも実家に暮らしていた頃は10年近くマックを口にしていなかった。私にとってマックのハンバーガーは小中学生の時ジャスコで友達と食べるものだったから。高校生の時はひたすらサイゼにいた。専門学生の時は居酒屋ばっかにいた。社会人になってからはフレンチやら懐石やらちょっといい焼き鳥なんかを食べていた。自分のお金で。言わばマックは私にとって子供時代に遊び尽くしたおもちゃみたいなものだったのだ。子供というのは常に新しいものに敏感だから。そして行きたいところも食べたいものも一巡して、戻ってきたのだった。マックとスタバの新作にやたら敏感な26歳のできあがり。
しかしながらカロリーの高いものを食べるのは疲れる。これは26歳という年齢もあるのかもしれない。いつも食べては後悔していた。なのにしばらくするとまた頼んでしまう。なんらかの力が働くみたいに。やけになっていたのだろう。激務に追われ心身共にボロボロだった。疲れると何もかも破壊したくなる。
疲れきった仕事帰りのある日、なんとなくショッピングモールにあるお蕎麦屋さんに入った。暖かいお蕎麦と八寸を口にして、涙が出るかと思った。優しいお出汁の味。これだ、日本人のDNAが喜んでいると馬鹿みたいなことを真剣に思った。やっぱりハンバーガーじゃなくて、和食なのだ。私の体が欲しいものは。元々薄味が好きだし。そんなことを思いながら、マックを食べている。懲りない。
こんなはずじゃなかったと思ったのが去年で、こんなはずじゃなくても生きていける、と思ったのが今年だ。なんだかんだ私は強い。死なずに生きてる。生きるためには、適応していける。生きがいなんて、やりがいなんてゴミ箱の中からでも探し出せる。虚しさなんて犬にく��てやった。
社会人7年目にもなると最早独壇場だ。研修も無くなってくる。カリキュラムもマニュアルもない。やれ電話の取り方だ、やれ打ち合わせの進め方だと教えてくれる先輩も、1限目は数学だとか2年生から文理選択とか、決めてくれる大人もいない。
子供と違って大人はなんとなくでも生きていける。自分の手ではっきり選びとったり、掴み取った感覚が無くても、流されるだけで生きていける。私はそれが嫌なのだ。もったいないし、去年と今年は変わり映えない1年だったなとぼんやり思う自分を想像すると居ても立っても居られなくなるから。生き急ぐ性質は結構セーブしてるけど、ひとつひとつちゃんとこなしてはいきたいのだ。時間は有限だから。
ぼんやり生きないこと、多忙に流されず争うこと。それが私の来年の目標であり、20代の目標でもある。
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okumaseitai · 2 years
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・ 【自閉症のセミナーに参加】 先日 自閉症スペクトラム (ASD)の基礎と対応・支援などについての研修に参加いたしました。 当院でも 自閉症、LD(学習障害)でお困りの方がいらっしゃいます。 何か私でもお役に立てたらと思い最善を尽くしております。 自閉症でまず 印象に残ったのが 当事者と支援者が考える お困りごとが違うということてです。 当事者は アレルギーや胃腸の不調など 体のお困りごとが多いそうです。 一方でご家族や学校の先生などが考えるお困りごとは 社会に適応し辛いなどの社会性の障害に目が向いているということです。 ですので ココ!を意識することも大切だと感じました。 【自閉症スペクトラムの3つの特徴】 ①社会的なお困りごと 特に ・言葉が苦手 ・対人関係が苦手 ・非言語が苦手なので相手の表情が読み取れないということがあるそうです。 ②こだわりが強い ・特定のものに関心を持ち、他には興味がない。人にも興味がない。 ・やり方、ルーティンが決まっている。イチロー選手のようにバッターボックスに入る時のルーティンが決まっているような感じです。 ・マイペースを維持するので他人に乱されたくない。 ③感覚の困難 ・触ったり、力加減、重さ、バランスなどの感覚が困難。ドアを思いっきり開けて大きな音を立ててしまうなど ・視覚、聴覚、味覚など識別、判別したりする感覚が苦手 ・時間に遅れたり、約束を守れなかったり、温度の感覚が苦手 当院で目の動きの検査をさせていただくと片方の目が追従できなかったり、眼振が見られました。凄く特徴的な目の動きでした。 自閉症はいろんな発達障害と合併することが多いです。 また親子で遺伝することも多いと言われています。 【自閉症の支援】 ・ルールの見える化 ルールを決めて"やるべきこと""順番"を明確にする ・マナーの視覚化 同じ場所に同じものを置くなど ・言語環境の視覚化 目標などを絵に描いたりして見えるようにしておくなど 【声かけの注意点】 禁止的な言葉を使わず 肯定的な指示に変換する。 例えば 廊下は走らない! ↓ 廊下はゆっくり歩きましょう やってほしいことを具体的に言語化することが大切です。 これは以前より私が学んでいる"ペップトーク".でも同じことを提唱されておりました。 禁止用語ばかりだと自己肯定感が低くなり、自分は悪い子、何もできない子と気持ちも沈んでしまいがちになります。 できることを探しましょう! 自閉症の方のことを少しでも知り、理解して支援できるようになればと考えます。 私は整体の方で体の調整をして呼吸能力を、あげたり、睡眠の質をあげたりして支援できればと考えております。また分子栄養学からも食事のアドバイスも少しできたらと考えております。 そして心や思考で少しでもお手伝いできることが有れば嬉しいです。 今後も 全力でサポートさせていただきます。 *資料については講師の先生より投稿の許可を、得ております。 追伸 最近 ドラマで 「僕の大好きな妻」 #僕の大好きな妻 というのが放送されております。 発達障害を抱えた奥さんとの日常生活を描いたドラマです。 とても参考になるので 良かったらご覧になってください。 #自閉症スペクトラム #自閉症の支援 #こだわりが強い #感覚が困難 #空気が読めない #コミュニケーションが苦手 #左右対処に並べる #強迫性障害 #過敏症 #うるさいと集中できない #HSP #好き嫌いが多い #人に興味がない #アスペルガー症候群 #1人でも平気 https://www.instagram.com/p/CfFkCG3Jp4v/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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bathask · 3 months
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視覚過敏で視覚優位自閉症スペクトラム小さい時感覚探求で横眼や眼球押したり瞬きせず目を酷使し目薬多種処方。高粘度目薬,視界見えず感覚過負荷の感覚過敏発作のメルトダウン追体験。感覚飽和しリミッターかかり視界見辛く輪郭の縞々模様溢れ不安MAX。発達障害/自閉スペクトラム症感覚世界ASDあるある
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ari0921 · 3 months
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「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和六年(2024)1月31日(水曜日)
    通巻第8112号
<<読書特集>>
田村秀男『中国経済 衰退の真実』(産経新聞出版) 
 数字をグラフにしてみると一目瞭然、中国経済は間違いなく衰退している
  そのゾンビを助けている世界でも珍しい愚昧な国がある
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 昨今、中国のネット空間で「中国衰退」と打ち込むと厳重に検閲され、書き込みは消去され、繰り返すと公安がやってくる。「衰退」はタブーである。
 「64」(天安門事件)と記号で打ち込んでもダメ、言論統制は以前にも増して凄まじいことになっている。『趙紫陽』『胡耀邦』もダメ、『プーさん』もダメである。換言すれば、それほど習近平は経済運営に自信がないのである。
だって周りを見れば経済がわかるブレーンは殆ど不在、イエスマンと茶坊主に囲まれている。経済のわかる改革派の共青団人脈はぜんぶ閑職へ追いやられた。
 評者(宮崎)は十年以上前から「中国経済は死んだ」「余命半年」、「中国大破綻」などと書いて来たし、著者の田村氏とも『中国経済はどこまで死んだか』、『中国発金融恐慌にそなえよ』という本を上梓してきた。
 親中派のエコノミスト等は私たちに非難の合唱、大手メディアは一切書評にとりえあげず黙殺した。孤独なる戦いだった。
 コロナ禍でサプライチェーンが寸断され、都市はロックダウン、工場はとまった。そのうえに米国の制裁が加重され、EUも中国に急に冷たくなった。台湾危機を煽れば煽るほどに世界で中国の味方は減ってしまった。南太平洋諸国やアフリカ諸国がまだ中国様々と作り笑顔をしているのは中国が振りまくプロジェクトである。昔から言うように「金の切れ目は縁の切れ目」。
 いずれ中国のオトモダチはいなくなる。
 中国のGDPの30%を占めた不動産は鏖殺されたも同然、1億5000万人分のマンションが空き室。人類の歴史始まった以来の空前のバブル崩壊である。恒大集団一社だけで負債総額は54兆円(最低に見積もっても49兆円) 
 不動産ローン支払い中断、ドル建て社債はデフォルト、凄まじい焦げ付きとなって、倒産したデベロッパー本社へ抗議活動をおこなうと公安が自宅にやってきて「二度と加わるな」。個人の預金残をしらべて「不動産を買え」「株を買え」「BYDを買え」と脅迫まがい。
 日本の「上品な」メディアはこういう暗黒面を伝えないから多くの読者は中国経済がまだ大丈夫だと錯覚している。
 情報に敏感な欧米ファンドはあらかたが中国投資から手を引いて撤退した。その余��資金が日本株に雪崩れ込んでいるのは一興。
 ともかく中国経済は死に至る病の過程にある。けれども生き延びているのはゾンビに生命維持装置をつけているからである。
 このゾンビ残存という奇跡がなぜ起きているか?
 第一に「数字の誤魔化し」「嘘の経済統計の水増し」だ。本書はその実態、真実の数字をわかりやすくグラフ化し、しかも総天然色だ。
 第二がウクライナ戦争という『僥倖』でロシアとの交易が増え、カンフルとなっているからである。
 第三にイスラエルvsハマスで外交に苦渋の選択を強いられた米国の隙を狙って、さっとサウジに食い入ることができた等の偶然の要素がかさなったからだ。
 本書の特徴は大手メディアや親中派のエコノミストや官庁系シンクタンクや中国と取引している商社、銀行、証券会社のレポートには現れない、というより中国にとっては知られたくない真実の数字と明確に状況が把握できる図表である。
数字をグラフにしてみると一目瞭然、中国経済はまぎれもなく「衰退している」。GDP成長は虚勢、じつはマイナス、外貨準備は空っ穴。
 評者がもっともビックリしたのは47ページのグラフで、「外準(外貨準備高)と海外の銀行からの借り入れの増減額の推移」を数字の一覧ではなくグラフにしたところ、「外準の増減額は海外の銀行による対中融資増減とほぼ一致している。中国の外貨準備がみかけこそ世界最大で3兆ドルを超える『巨額』なのだが、海外からの借り入れによって支えられているに過ぎない」(49p)
ところが、このゾンビを助けている世界一お人好しで、愚昧な国がある。それは何処か、本書にあたっていただきたい。
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