Tumgik
#椿柄帯
apartment315 · 2 years
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catdoll007 · 1 year
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一宮市尾西歴史民俗資料館 敷地内
🌟旧林氏庭園
旧林氏庭園は、10代目の林幸一が昭和初年から約10年の歳月をかけて作庭しました。
心字池を中心とした回遊式で、各地から収集された石の特徴を活かした石組みが見所です。
ドウダンやカエデなどとともに、四季折々の風景を楽しむことができます。
近代の愛知県における造園文化の発展がわかる貴重な庭園と言えます。
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toko1922 · 4 months
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緑の紬に椿柄の半幅帯を文庫結びで。
この黒の襟は合わせやすくて良い。
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bingata-nawachou · 1 year
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#紅型ナワチョウきものコーディネート ・ お客様に帯をお渡しするので 着物にて👘✨ ・ ♦︎ #着物 ♦︎ 私物です 今日はお昼が20℃🌞 まで上がったのでお単衣にて ふくれ織の薄藤色暈し #地紋愛してる 者には たまらない風合いの着物♪ ・ ♦︎ #紅型ナワチョウ帯 ♦︎ #唐草菊に丸紋蝶菊椿 #関東巻 にして ・ ♦︎ #帯揚げ ♦︎ #ペタ子さん に わたしの柄 #万華鏡紋様 の 帯揚げを 作っていただきました♪ 初おろしです✨✨ ・ ♦︎ #帯留 ♦︎ @classicko.jp さまの #椿の帯留 帯の椿と並べたく♪ ・ ♦︎ #長襦袢 ♦︎ #シロップ先生  × #真じま着物 さまの #あっと驚く赤太郎 を やっと初おろし✨ 本当に良いお色🥰です @syrupkimono @majimakimono ・ ♦︎ #紅型ナワチョウ半衿 ♦︎ × #YoshikoTAKEi @broderie_yoshiko #フランスアンティークボタン ・ ♦︎ #簪 ♦︎ @haberu___ さまの #ジーファー ・ ♦︎ #下駄 ♦︎ #紅型ナワチョウ鼻緒 × #辻屋本店 #舟形下駄 @tsujiyahonten ・ ・ 本日、昨日postしました 鳳凰の帯を 着物・帯揚げ・帯締めと コーディネートしつつ 納品させていただきました🕊 ・ ・ 今年最後の帯をお納めし お客様に大変お喜びいただき ホッとした本日 ・ 仕事納め… たいところなのですが まだまだ今年は最後まで🎉 がんばります🕊 ・ ・ #紅型 #紅型ナワチョウ #縄トモコ #きものコーディネート #着物 #kimono #鳳凰の帯 https://www.instagram.com/p/Cmtj1MIrevy/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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kuwashi-blog · 2 years
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「パールゴールド七宝地紋正絹訪問着袋帯セット 品番10029」 【往復送料無料 東京都内着付代無料】 【身長148cm~163cm】 【サイズ感 約7号〜11号】 https://www.kuwashi.com/SHOP/h018-o.html 「着物」 縁起の良い七宝(しっぽう)柄の地紋が美しく浮かび上がり 抑え目なゴールドの生地が身体の曲線に合わせて上品に光沢を出します。 柄には梅、桔梗、椿などの様��な季節の草花や 鴛鴦(おしどり)などのデザインがバランス良く配置され どの角度からお着物姿をご覧頂いても美しい立ち姿になります。 また、各草花の大きさも小付けになっていますので ご身長を気にせずにご利用いただくことが可能です。 結婚式会場やパーティ会場などでとても映えるお着物です。 クワシ着物レンタル👘 @kuwashikr いいね❤️、フォロー、画像保存、のタップ 気軽にコメント大歓迎です😃 当店の着物のコーディネートは全て店主の平山が行っております #着物レンタル #訪問着レンタル #着物 #着物コーディネート #訪問着コーディネート #着物好きさんと繋がりたい #着物初心者 #着物撮影 #着物姿 #レンタル着物 #着物スタイリスト #訪問着で結婚式 #きものレンタル #着物レンタル東京 #着物デビュー #kimonofashion #訪問着 #七五三3歳 #七五三5歳 #七五三7歳 #きものコーディネート #きものコーデ #きものすきな人と繋がりたい #フォーマルコーデ #30代ママ #結婚式コーデ #結婚式お呼ばれ #結婚式参列 #40代ママ #クワシ着物レンタル (クワシ着物レンタル) https://www.instagram.com/p/Cen4RJEpJI6/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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crystal-blue-daisy · 2 years
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国領神社にお詣りしてきました。
インスタからのリポート 国領神社にお詣りしてきました。 今日は、初めて着る会に参加してきました。お着物で国領神社にお詣りして、藤棚を見てきました。丁度イベントのタイミングだったので、人が多かった〜藤棚はもう少し後の方が満開だったかなって感じでしたが、十分楽しめる感じでした! 今日着たお着物は、椿の柄の洗える着物。濃い紅に近いピンクの半幅帯でした。帯揚げと浴び締めはからしです。半襟に赤地に黒で桜が書かれてる物を合わせてます。 お写真は何枚か撮ったけど、ピンはないので後ろ姿のものを。因みに右側です。も少し長めの着付けでも良いかなぁってお写真見ながら思いました。姿見なくて、スマホのカメラを使いながら着たにしては、良い出来だってことにしよう笑 #国領神社 #国領神社藤まつり #着る会 #着る会参加 I will see you again….. インスタへのリンク by…
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kurihara-yumeko · 3 years
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【小説】The day I say good-bye (1/4) 【再録】
 今日は朝から雨だった。
 確か去年も雨だったよな、と僕は窓ガラスに反射している自分の顔を見つめて思った。僕を乗せたバスは、小雨の降る日曜の午後を北へ向かって走る。乗客は少ない。
 予定より五分遅れて、予定通りバス停「船頭町三丁目」で降りた。灰色に濁った水が流れる大きな樫岸川を横切る橋を渡り、広げた傘に雨音が当たる雑音を聞きながら、柳の並木道を歩く。
 小さな古本屋の角を右へ、古い木造家屋の住宅ばかりが建ち並ぶ細い路地を抜けたら左へ。途中、不機嫌そうな面構えの三毛猫が行く手を横切った。長い長い緩やかな坂を上り、苔生した石段を踏み締めて、赤い郵便ポストがあるところを左へ。突然広くなった道を行き、椿だか山茶花だかの生け垣のある家の角をまた左へ。
 そうすると、大きなお寺の屋根が見えてくる。囲われた塀の中、門の向こうには、静かな墓地が広がっている。
 そこの一角に、あーちゃんは眠っている。
 砂利道を歩きながら、結構な数の墓の中から、あーちゃんの墓へ辿り着く。もう既に誰かが来たのだろう。墓には真っ白な百合と、あーちゃんの好物であった焼きそばパンが供えてあった。あーちゃんのご両親だろうか。
 手ぶらで来てしまった僕は、ただ墓石を見上げる。周りの墓石に比べてまだ新しいその石は、手入れが行き届いていることもあって、朝から雨の今日であっても穏やかに光を反射している。
 そっと墓石に触れてみた。無機質な冷たさと硬さだけが僕の指先に応えてくれる。
 あーちゃんは墓石になった。僕にはそんな感覚がある。
 あーちゃんは死んだ。死んで、燃やされて、灰になり、この石の下に閉じ込められている。埋められているのは、ただの灰だ。あーちゃんの灰。
 ああ。あーちゃんは、どこに行ってしまったんだろう。
 目を閉じた。指先は墓石に触れたまま。このままじっとしていたら、僕まで石になれそうだ。深く息をした。深く、深く。息を吐く時、わずかに震えた。まだ石じゃない。まだ僕は、石になれない。
 ここに来ると、僕はいつも泣きたくなる。
 ここに来ると、僕はいつも死にたくなる。
 一体どれくらい、そうしていたのだろう。やがて後ろから、砂利を踏んで歩いてくる音が聞こえてきたので、僕は目を開き、手を引っ込めて振り向いた。
「よぉ、少年」
 その人は僕の顔を見て、にっこり笑っていた。
 総白髪かと疑うような灰色の頭髪。自己主張の激しい目元。頭の上の帽子から足元の厚底ブーツまで塗り潰したように真っ黒な恰好の人。
「やっほー」
 蝙蝠傘を差す左手と、僕に向けてひらひらと振るその右手の手袋さえも黒く、ちらりと見えた中指の指輪の石の色さえも黒い。
「……どうも」
 僕はそんな彼女に対し、顔の筋肉が引きつっているのを無理矢理に動かして、なんとか笑顔で応えて見せたりする。
 彼女はすぐ側までやってきて、馴れ馴れしくも僕の頭を二、三度柔らかく叩く。
「こんなところで奇遇だねぇ。少年も墓参りに来たのかい」
「先生も、墓参りですか」
「せんせーって呼ぶなしぃ。あたしゃ、あんたにせんせー呼ばわりされるようなもんじゃございませんって」
 彼女――日褄小雨先生はそう言って、だけど笑った。それから日褄先生は僕が先程までそうしていたのと同じように、あーちゃんの墓石を見上げた。彼女も手ぶらだった。
「直正が死んで、一年か」
 先生は上着のポケットから煙草の箱とライターを取り出す。黒いその箱から取り出された煙草も、同じように黒い。
「あたしゃ、ここに来ると後悔ばかりするね」
 ライターのかちっという音、吐き出される白い煙、どこか甘ったるい、ココナッツに似たにおいが漂う。
「あいつは、厄介なガキだったよ。つらいなら、『つらい』って言えばいい、それだけのことなんだ。あいつだって、つらいなら『つらい』って言ったんだろうさ。だけどあいつは、可哀想なことに、最後の最後まで自分がつらいってことに気付かなかったんだな」
 煙草の煙を揺らしながら、そう言う先生の表情には、苦痛と後悔が入り混じった色が見える。口に煙草を咥えたまま、墓前で手を合わせ、彼女はただ目を閉じていた。瞼にしつこいほど塗られた濃い黒い化粧に、雨の滴が垂れる。
 先生はしばらくして瞼を開き、煙草を一度口元から離すと、ヤニ臭いような甘ったるいような煙を吐き出して、それから僕を見て、優しく笑いかけた。それから先生は背を向け、歩き出してしまう。僕は黙ってそれを追った。
 何も言わなくてもわかっていた。ここに立っていたって、悲しみとも虚しさとも呼ぶことのできない、吐き気がするような、叫び出したくなるような、暴れ出したくなるような、そんな感情が繰り返し繰り返し、波のようにやってきては僕の心の中を掻き回していくだけだ。先生は僕に、帰ろう、と言ったのだ。唇の端で、瞳の奥で。
 先生の、まるで影法師が歩いているかのような黒い後ろ姿を見つめて、僕はかつてたった一度だけ見た、あーちゃんの黒いランドセルを思い出す。
 彼がこっちに引っ越してきてからの三年間、一度も使われることのなかった傷だらけのランドセル。物置きの中で埃を被っていたそれには、あーちゃんの苦しみがどれだけ詰まっていたのだろう。
 道の途中で振り返る。先程までと同じように、墓石はただそこにあった。墓前でかけるべき言葉も、抱くべき感情も、するべき行為も、何ひとつ僕は持ち合わせていない。
 あーちゃんはもう死んだ。
 わかりきっていたことだ。死んでから何かしてあげても無駄だ。生きているうちにしてあげないと、意味がない。だから、僕がこうしてここに立っている意味も、僕は見出すことができない。僕がここで、こうして呼吸をしていて、もうとっくに死んでしまったあーちゃんのお墓の前で、墓石を見つめている、その意味すら。
 もう一度、あーちゃんの墓に背中を向けて、僕は今度こそ歩き始めた。
「最近調子はどう?」
 墓地を出て、長い長い坂を下りながら、先生は僕にそう尋ねた。
「一ヶ月間、全くカウンセリング来なかったけど、何か変化があったりした?」
 黙っていると先生はさらにそう訊いてきたので、僕は仕方なく口を開く。
「別に、何も」
「ちゃんと飯食ってる? また少し痩せたんじゃない?」
「食べてますよ」
「飯食わないから、いつまでも身長伸びないんだよ」
 先生は僕の頭を、目覚まし時計を止める時のような動作で乱雑に叩く。
「ちょ……やめて下さいよ」
「あーっはっはっはっはー」
 嫌がって身をよじろうとするが、先生はそれでもなお、僕に攻撃してくる。
「ちゃんと食わないと。摂食障害になるとつらいよ」
「食べますよ、ちゃんと……」
「あと、ちゃんと寝た方がいい。夜九時に寝ろ。身長伸びねぇぞ」
「九時に寝られる訳ないでしょう、小学生じゃあるまいし……」
「勉強なんかしてるから、身長伸びねぇんだよ」
「そんな訳ないでしょう」
 あはは、と朗らかに彼女は笑う。そして最後に優しく、僕の頭を撫でた。
「負けるな、少年」
 負けるなと言われても、一体何に――そう問いかけようとして、僕は口をつぐむ。僕が何と戦っているのか、先生はわかっているのだ。
「最近、市野谷はどうしてる?」
 先生は何気ない声で、表情で、タイミングで、あっさりとその名前を口にした。
「さぁ……。最近会ってないし、電話もないし、わからないですね」
「ふうん。あ、そう」
 先生はそれ以上、追及してくることはなかった。ただ独り言のように、「やっぱり、まだ駄目か」と言っただけだった。
 郵便ポストのところまで歩いてきた時、先生は、「あたしはあっちだから」と僕の帰り道とは違う方向を指差した。
「駐車場で、葵が待ってるからさ」
「ああ、葵さん。一緒だったんですか」
「そ。少年は、バスで来たんだろ? 家まで車で送ろうか?」
 運転するのは葵だけど、と彼女は付け足して言ったが、僕は首を横に振った。
「ひと���で帰りたいんです」
「あっそ。気を付けて帰れよ」
 先生はそう言って、出会った時と同じように、ひらひらと手を振って別れた。
 路地を右に曲がった時、僕は片手をパーカーのポケットに入れて初めて、とっくに音楽が止まったままになっているイヤホンを、両耳に突っ込んだままだということに気が付いた。
 僕が小学校を卒業した、一年前の今日。
 あーちゃんは人生を中退した。
 自殺したのだ。十四歳だった。
 遺書の最後にはこう書かれていた。
「僕は透明人間なんです」
    あーちゃんは僕と同じ団地に住んでいて、僕より二つお兄さんだった。
 僕が小学一年生の夏に、あーちゃんは家族四人で引っ越してきた。冬は雪に閉ざされる、北の方からやって来たのだという話を聞いたことがあった。
 僕はあーちゃんの、団地で唯一の友達だった。学年の違う彼と、どんなきっかけで親しくなったのか正確には覚えていない。
 あーちゃんは物静かな人だった。小学生の時から、年齢と不釣り合いなほど彼は大人びていた。
 彼は人付き合いがあまり得意ではなく、友達がいなかった。口数は少なく、話す時もぼそぼそとした、抑揚のない平坦な喋り方で、どこか他人と距離を取りたがっていた。
 部屋にこもりがちだった彼の肌は雪みたいに白くて、青い静脈が皮膚にうっすら透けて見えた。髪が少し長くて、色も薄かった。彼の父方の祖母が外国人だったと知ったのは、ずっと後のことだ。銀縁の眼鏡をかけていて、何か困ったことがあるとそれをかけ直す癖があった。
 あーちゃんは器用だった。今まで何度も彼の部屋へ遊びに行ったことがあるけれど、そこには彼が組み立てたプラモデルがいくつも置かれていた。
 僕が加減を知らないままにそれを乱暴に扱い、壊してしまったこともあった。とんでもないことをしてしまったと、僕はひどく後悔してうつむいていた。ごめんなさい、と謝った。年上の友人の大切な物を壊してしまって、どうしたらよいのかわからなかった。鼻の奥がつんとした。泣きたいのは壊されたあーちゃんの方だっただろうに、僕は泣き出しそうだった。
 あーちゃんは、何も言わなかった。彼は立ち尽くす僕の前でしゃがみ込んだかと思うと、足下に散らばったいびつに欠けたパーツを拾い、引き出しの中からピンセットやら接着剤やらを取り出して、僕が壊した部分をあっという間に直してしまった。
 それらの作業がすっかり終わってから彼は僕を呼んで、「ほら見てごらん」と言った。
 恐る恐る近付くと、彼は直ったばかりの戦車のキャタピラ部分を指差して、
「ほら、もう大丈夫だよ。ちゃんと元通りになった。心配しなくてもいい。でもあと1時間は触っては駄目だ。まだ接着剤が乾かないからね」
 と静かに言った。あーちゃんは僕を叱ったりしなかった。
 僕は最後まで、あーちゃんが大声を出すところを一度も見なかった。彼が泣いている姿も、声を出して笑っているのも。
 一度だけ、あーちゃんの満面の笑みを見たことがある。
 夏のある日、僕とあーちゃんは団地の屋上に忍び込んだ。
 僕らは子供向けの雑誌に載っていた、よく飛ぶ紙飛行機の作り方を見て、それぞれ違うモデルの紙飛行機を作り、どちらがより遠くへ飛ぶのかを競走していた。
 屋上から飛ばしてみよう、と提案したのは僕だった。普段から悪戯などしない大人しいあーちゃんが、その提案に首を縦に振ったのは今思い返せば珍しいことだった。そんなことはそれ以前も以降も二度となかった。
 よく晴れた日だった。屋上から僕が飛ばした紙飛行機は、青い空を横切って、団地の駐車場の上を飛び、道路を挟んだ向かいの棟の四階、空き部屋のベランダへ不時着した。それは今まで飛ばしたどんな紙飛行機にも負けない、驚くべき距離だった。僕はすっかり嬉しくなって、得意げに叫んだ。
「僕が一番だ!」
 興奮した僕を見て、あーちゃんは肩をすくめるような動作をした。そして言った。
「まだわからないよ」
 あーちゃんの細い指が、紙飛行機を宙に放つ。丁寧に折られた白い紙飛行機は、ちょうどその時吹いてきた風に背中を押されるように屋上のフェンスを飛び越え、僕の紙飛行機と同じように駐車場の上を通り、向かいの棟の屋根を越え、それでもまだまだ飛び続け、青い空の中、最後は粒のようになって、ついには見えなくなってしまった。
 僕は自分の紙飛行機が負けた悔しさと、魔法のような素晴らしい出来事を目にした嬉しさとが半分ずつ混じった目であーちゃんを見た。その時、僕は見たのだ。
 あーちゃんは声を立てることはなかったが、満足そうな笑顔だった。
「僕は透明人間なんです」
 それがあーちゃんの残した最後の言葉だ。
 あーちゃんは、僕のことを怒ればよかったのだ。地団太を踏んで泣いてもよかったのだ。大声で笑ってもよかったのだ。彼との思い出を振り返ると、いつもそんなことばかり思う。彼はもう永遠に泣いたり笑ったりすることはない。彼は死んだのだから。
 ねぇ、あーちゃん。今のきみに、僕はどんな風に見えているんだろう。
 僕の横で静かに笑っていたきみは、決して透明なんかじゃなかったのに。
 またいつものように春が来て、僕は中学二年生になった。
 張り出されていたクラス替えの表を見て、そこに馴染みのある名前を二つ見つけた。今年は、二人とも僕と同じクラスのようだ。
 教室へ向かってみたけれど、始業の時間になっても、その二つの名前が用意された席には、誰も座ることはなかった。
「やっぱり、まだ駄目か」
 誰かと同じ言葉を口にしてみる。
 本当は少しだけ、期待していた。何かが良くなったんじゃないかと。
 だけど教室の中は新しいクラスメイトたちの喧騒でいっぱいで、新年度一発目、始業式の今日、二つの席が空白になっていることに誰も触れやしない。何も変わってなんかない。
 何も変わらないまま、僕は中学二年生になった。
 あーちゃんが死んだ時の学年と同じ、中学二年生になった。
 あの日、あーちゃんの背中を押したのであろう風を、僕はずっと探してる。
 青い空の果てに、小さく消えて行ってしまったあーちゃんを、僕と「ひーちゃん」に返してほしくて。
    鉛筆を紙の上に走らせる音が、止むことなく続いていた。
「何を描いてるの?」
「絵」
「なんの絵?」
「なんでもいいでしょ」
「今年は、同じクラスみたいだね」
「そう」
「その、よろしく」
 表情を覆い隠すほど長い前髪の下、三白眼が一瞬僕を見た。
「よろしくって、何を?」
「クラスメイトとして、いろいろ……」
「意味ない。クラスなんて、関係ない」
 抑揚のない声でそう言って、双眸は再び紙の上へと向けられてしまった。
「あ、そう……」
 昼休みの保健室。
 そこにいるのは二人の人間。
 ひとりはカーテンの開かれたベッドに腰掛け、胸にはスケッチブック、右手には鉛筆を握り締めている。
 もうひとりはベッドの脇のパイプ椅子に座り、特にすることもなく片膝を抱えている。こっちが僕だ。
 この部屋の主であるはずの鬼怒田先生は、何か用があると言って席を外している。一体なんの仕事があるのかは知らないが、この学校の養護教諭はいつも忙しそうだ。
 僕はすることもないので、ベッドに座っているそいつを少しばかり観察する。忙しそうに鉛筆を動かしている様子を見ると、今はこちらに注意を払ってはいなそうだから、好都合だ。
 伸びてきて邪魔になったから切った、と言わんばかりのショートカットの髪。正反対に長く伸ばされた前髪は、栄養状態の悪そうな青白い顔を半分近く隠している。中学二年生としては小柄で華奢な体躯。制服のスカートから伸びる足の細さが痛々しく見える。
 彼女の名前は、河野ミナモ。僕と同じクラス、出席番号は七番。
 一言で表現するならば、彼女は保健室登校児だ。
 鉛筆の音が、止んだ。
「なに?」
 ミナモの瞬きに合わせて、彼女の前髪が微かに動く。少しばかり長く見つめ続けてしまったみたいだ。「いや、なんでもない」と言って、僕は天井を仰ぐ。
 ミナモは少しの間、何も言わずに僕の方を見ていたようだが、また鉛筆を動かす作業を再開した。
 鉛筆を走らせる音だけが聞こえる保健室。廊下の向こうからは、楽しそうに駆ける生徒たちの声が聞こえてくるが、それもどこか遠くの世界の出来事のようだ。この空間は、世界から切り離されている。
「何をしに来たの」
「何をって?」
「用が済んだなら、帰れば」
 新年度が始まったばかりだからだろうか、ミナモは機嫌が悪いみたいだ。否、機嫌が悪いのではなく、具合が悪いのかもしれない。今日の彼女はいつもより顔色が悪いように見える。
「いない方がいいなら、出て行くよ」
「ここにいてほしい人なんて、いない」
 平坦な声。他人を拒絶する声。憎しみも悲しみも全て隠された無機質な声。
「出て行きたいなら、出て行けば?」
 そう言うミナモの目が、何かを試すように僕を一瞥した。僕はまだ、椅子から立ち上がらない。彼女は「あっそ」とつぶやくように言った。
「市野谷さんは、来たの?」
 ミナモの三白眼がまだ僕を見ている。
「市野谷さんも同じクラスなんでしょ」
「なんだ、河野も知ってたのか」
「質問に答えて」
「……来てないよ」
「そう」
 ミナモの前髪が揺れる。瞬きが一回。
「不登校児二人を同じクラスにするなんて、学校側の考えてることってわからない」
 彼女の言葉通り、僕のクラスには二人の不登校児がいる。
 ひとりはこの河野ミナモ。
 そしてもうひとりは、市野谷比比子。僕は彼女のことを昔から、「ひーちゃん」と呼んでいた。
 二人とも、中学に入学してきてから一度も教室へ登校してきていない。二人の机と椅子は、一度も本人に使われることなく、今日も僕の教室にある。
 といっても、保健室登校児であるミナモはまだましな方で、彼女は一年生の頃から保健室には登校してきている。その点ひーちゃんは、中学校の門をくぐったこともなければ、制服に袖を通したことさえない。
 そんな二人が今年から僕と同じクラスに所属になったことには、正直驚いた。二人とも僕と接点があるから、なおさらだ。
「――くんも、」
 ミナモが僕の名を呼んだような気がしたが、上手く聞き取れなかった。
「大変ね、不登校児二人の面倒を見させられて」
「そんな自嘲的にならなくても……」
「だって、本当のことでしょ」
 スケッチブックを抱えるミナモの左腕、ぶかぶかのセーラー服の袖口から、包帯の巻かれた手首が見える。僕は自分の左手首を見やる。腕時計をしているその下に、隠した傷のことを思う。
「市野谷さんはともかく、教室へ行く気なんかない私の面倒まで、見なくてもいいのに」
「面倒なんて、見てるつもりないけど」
「私を訪ねに保健室に来るの、――くんくらいだよ」
 僕の名前が耳障りに響く。ミナモが僕の顔を見た。僕は妙な表情をしていないだろうか。平然を装っているつもりなのだけれど。
「まだ、気にしているの?」
「気にしてるって、何を?」
「あの日のこと」
 あの日。
 あの春の日。雨の降る屋上で、僕とミナモは初めて出会った。
「死にたがり屋と死に損ない」
 日褄先生は僕たちのことをそう呼んだ。どっちがどっちのことを指すのかは、未だに訊けていないままだ。
「……気にしてないよ」
「そう」
 あっさりとした声だった。ミナモは壁の時計をちらりと見上げ、「昼休み終わるよ、帰れば」と言った。
 今度は、僕も立ち上がった。「それじゃあ」と口にしたけれど、ミナモは既に僕への興味を失ったのか、スケッチブックに目線を落とし、返事のひとつもしなかった。
 休みなく動き続ける鉛筆。
 立ち上がった時にちらりと見えたスケッチブックは、ただただ黒く塗り潰されているだけで、何も描かれてなどいなかった。
    ふと気付くと、僕は自分自身が誰なのかわからなくなっている。
 自分が何者なのか、わからない。
 目の前で展開されていく風景が虚構なのか、それとも現実なのか、そんなことさえわからなくなる。
 だがそれはほんの一瞬のことで、本当はわかっている。
 けれど感じるのだ。自分の身体が透けていくような感覚を。「自分」という存在だけが、ぽっかりと穴を空けて突っ立っているような。常に自分だけが透明な膜で覆われて、周囲から隔離されているかのような疎外感と、なんの手応えも得られない虚無感と。
 あーちゃんがいなくなってから、僕は頻繁にこの感覚に襲われるようになった。
 最初は、授業が終わった後の短い休み時間。次は登校中と下校中。その次は授業中にも、というように、僕が僕をわからなくなる感覚は、学校にいる間じゅうずっと続くようになった。しまいには、家にいても、外にいても、どこにいてもずっとそうだ。
 周りに人がいればいるほど、その感覚は強かった。たくさんの人の中、埋もれて、紛れて、見失う。自分がさっきまで立っていた場所は、今はもう他の人が踏み荒らしていて。僕の居場所はそれぐらい危ういところにあって。人混みの中ぼうっとしていると、僕なんて消えてしまいそうで。
 頭の奥がいつも痛かった。手足は冷え切ったみたいに血の気がなくて。酸素が薄い訳でもないのにちゃんと息ができなくて。周りの人の声がやたら大きく聞こえてきて。耳の中で何度もこだまする、誰かの声。ああ、どうして。こんなにも人が溢れているのに、ここにあーちゃんはいないんだろう。
 僕はどうして、ここにいるんだろう。
「よぉ、少年」
 旧校舎、屋上へ続く扉を開けると、そこには先客がいた。
 ペンキがところどころ剥げた緑色のフェンスにもたれるようにして、床に足を投げ出しているのは日褄先生だった。今日も真っ黒な恰好で、ココナッツのにおいがする不思議な煙草を咥えている。
「田島先生が、先生のことを昼休みに探してましたよ」
「へへっ。そりゃ参ったね」
 煙をゆらゆらと立ち昇らせて、先生は笑う。それからいつものように、「せんせーって呼ぶなよ」と付け加えた。彼女はさらに続けて言う。
「それで? 少年は何をし、こんなところに来たのかな?」
「ちょっと外の空気を吸いに」
「おお、奇遇だねぇ。あたしも外の空気を吸いに……」
「吸いにきたのはニコチンでしょう」
 僕がそう言うと、先生は、「あっはっはっはー」と高らかに笑った。よく笑う人だ。
「残念だが少年、もう午後の授業は始まっている時間だし、ここは立ち入り禁止だよ」
「お言葉ですが先生、学校の敷地内は禁煙ですよ」
「しょうがない、今からカウンセリングするってことにしておいてあげるから、あたしの喫煙を見逃しておくれ。その代わり、あたしもきみの授業放棄を許してあげよう」
 先生は右手でぽんぽんと、自分の隣、雨上がりでまだ湿気っているであろう床を叩いた。座れと言っているようだ。僕はそれに従わなかった。
 先客がいたことは予想外だったが、僕は本当に、ただ、外の空気を吸いたくなってここに来ただけだ。授業を途中で抜けてきたこともあって、長居をするつもりはない。
 ふと、視界の隅に「それ」が目に入った。
 フェンスの一角に穴が空いている。ビニールテープでぐるぐる巻きになっているそこは、テープさえなければ屋上の崖っぷちに立つことを許している。そう。一年前、あそこから、あーちゃんは――。
(ねぇ、どうしてあーちゃんは、そらをとんだの?)
 僕の脳裏を、いつかのひーちゃんの言葉がよぎる。
(あーちゃん、かえってくるよね? また、あえるよね?)
 ひーちゃんの言葉がいくつもいくつも、風に飛ばされていく桜の花びらと同じように、僕の目の前を通り過ぎていく。
「こんなところで、何をしていたんですか」
 そう質問したのは僕の方だった。「んー?」と先生は煙草の煙を吐きながら言う。
「言っただろ、外の空気を吸いに来たんだよ」
「あーちゃんが死んだ、この場所の空気を、ですか」
 先生の目が、僕を見た。その鋭さに、一瞬ひるみそうになる。彼女は強い。彼女の意思は、強い。
「同じ景色を見たいと思っただけだよ」
 先生はそう言って、また煙草をふかす。
「先生、」
「せんせーって呼ぶな」
「質問があるんですけど」
「なにかね」
「嘘って、何回つけばホントになるんですか」
「……んー?」
 淡い桜色の小さな断片が、いくつもいくつも風に流されていく。僕は黙って、それを見ている。手を伸ばすこともしないで。
「嘘は何回ついたって、嘘だろ」
「ですよね」
「嘘つきは怪人二十面相の始まりだ」
「言っている意味がわかりません」
「少年、」
「はい」
「市野谷に嘘つくの、しんどいのか?」
 先生の煙草の煙も、みるみるうちに風に流されていく。手を伸ばしたところで、掴むことなどできないまま。
「市野谷に、直正は死んでないって、嘘をつき続けるの、しんどいか?」
 ひーちゃんは知らない。あーちゃんが去年ここから死んだことを知らない。いや、知らない訳じゃない。認めていないのだ。あーちゃんの死を認めていない。彼がこの世界に僕らを置き去りにしたことを、許していない。
 ひーちゃんはずっと信じている。あーちゃんは生きていると。いつか帰ってくると。今は遠くにいるけれど、きっとまた会える日が来ると。
 だからひーちゃんは知らない。彼の墓石の冷たさも、彼が飛び降りたこの屋上の景色が、僕の目にどう映っているのかも。
 屋上。フェンス。穴。空。桜。あーちゃん。自殺。墓石。遺書。透明人間。無。なんにもない。ない。空っぽ。いない。いないいないいないいない。ここにもいない。どこにもいない。探したっていない。消えた。消えちゃった。消滅。消失。消去。消しゴム。弾んで。飛んで。落ちて。転がって。その先に拾ってくれるきみがいて。笑顔。笑って。笑ってくれて。だけどそれも消えて。全部消えて。消えて消えて消えて。ただ昨日を越えて今日が過ぎ明日が来る。それを繰り返して。きみがいない世界で。ただ繰り返して。ひーちゃん。ひーちゃんが笑わなくなって。泣いてばかりで。だけどもうきみがいない。だから僕が。僕がひーちゃんを慰めて。嘘を。嘘をついて。ついてはいけない嘘を。ついてはいけない嘘ばかりを。それでもひーちゃんはまた笑うようになって。笑顔がたくさん戻って。だけどどうしてあんなにも、ひーちゃんの笑顔は空っぽなんだろう。
「しんどくなんか、ないですよ」
 僕はそう答えた。
 先生は何も言わなかった。
 僕は明日にでも、怪人二十面相になっているかもしれなかった。
    いつの間にか梅雨が終わり、実力テストも期末テストもクリアして、夏休みまであと一週間を切っていた。
 ひと夏の解放までカウントダウンをしている今、僕のクラスの連中は完璧な気だるさに支配されていた。自主性や積極性などという言葉とは無縁の、慣性で流されているような脱力感。
 先週に教室の天井四ヶ所に取り付けられている扇風機が全て故障したこともあいまって、クラスメイトたちの授業に対する意欲はほぼゼロだ。授業がひとつ終わる度に、皆溶け出すように机に上半身を投げ出しており、次の授業が始まったところで、その姿勢から僅かに起き上がる程度の差しかない。
 そういう僕も、怠惰な中学二年生のひとりに過ぎない。さっきの英語の授業でノートに書き記したことと言えば、英語教師の松田が何回額の汗を脱ぐったのかを表す「正」の字だけだ。
 休み時間に突入し、がやがやと騒がしい教室で、ひとりだけ仲間外れのように沈黙を守っていると、���辺りから空気中に溶け出��て、透明になっていくようなそんな気分になる。保健室には来るものの、自分の教室へは絶対に足を運ばないミナモの気持ちがわかるような気がする。
 一学期がもうすぐ終わるこの時期になっても、相変わらず僕のクラスには常に二つの空席があった。ミナモも、ひーちゃんも、一度だって教室に登校してきていない。
「――くん、」
 なんだか控えめに名前を呼ばれた気はしたが、クラスの喧騒に紛れて聞き取れなかった。
 ふと机から顔を上げると、ひとりの女子が僕の机の脇に立っていた。見たことがあるような顔。もしかして、クラスメイトのひとりだろうか。彼女は廊下を指差して、「先生、呼んでる」とだけ言って立ち去った。
 あまりにも唐突な出来事でその女子にお礼を言うのも忘れたが、廊下には担任の姿が見える。僕のクラス担任の担当科目は数学だが、次の授業は国語だ。なんの用かはわからないが、呼んでいるのなら行かなくてはならない。
「おー、悪いな、呼び出して」
 去年大学を卒業したばかりの、どう見ても体育会系な容姿をしている担任は、僕を見てそう言った。
「ほい、これ」
 突然差し出されたのはプリントの束だった。三十枚くらいありそうなプリントが穴を空けられ紐を通して結んである。
「悪いがこれを、市野谷さんに届けてくれないか」
 担任がひーちゃんの名を口にしたのを聞いたのは、久しぶりのような気がした。もう朝の出欠確認の時でさえ、彼女の名前は呼ばれない。ミナモの名前だってそうだ。このクラスでは、ひーちゃんも、ミナモも、いないことが自然なのだ。
「……先生が、届けなくていいんですか」
「そうしたいのは山々なんだが、なかなか時間が取れなくてな。夏休みに入ったら家庭訪問に行こうとは思ってるんだ。このプリントは、それまでにやっておいてほしい宿題。中学に入ってから二年の一学期までに習う数学の問題を簡単にまとめたものなんだ」
「わかりました、届けます」
 受け取ったプリントの束は、思っていたよりもずっとずっしりと重かった。
「すまんな。市野谷さんと小学生の頃一番仲が良かったのは、きみだと聞いたものだから」
「いえ……」
 一年生の時から、ひーちゃんにプリントを届けてほしいと教師に頼まれることはよくあった。去年は彼女と僕は違うクラスだったけれど、同じ小学校出身の誰かに僕らが幼馴染みであると聞いたのだろう。
 僕は学校に来なくなったひーちゃんのことを毛嫌いしている訳ではない。だから、何か届け物を頼まれてもそんなに嫌な気持ちにはならない。でも、と僕は思った。
 でも僕は、ひーちゃんと一番仲が良かった訳じゃないんだ。
「じゃあ、よろしく頼むな」
 次の授業の始業のチャイムが鳴り響く。
 教室に戻り、出したままだった英語の教科書と「正」の字だけ記したノートと一緒に、ひーちゃんへのプリントの束を鞄に仕舞いながら、なんだか僕は泣きたくなった。
  三角形が壊れるのは簡単だった。
 三角形というのは、三辺と三つの角でできていて、当然のことだけれど一辺とひとつの角が消失したら、それはもう三角形ではない。
 まだ小学校に上がったばかりの頃、僕はどうして「さんかっけい」や「しかっけい」があるのに「にかっけい」がないのか、と考えていたけれど、どうやら僕の脳味噌は、その頃から数学的思考というものが不得手だったようだ。
「にかっけい」なんてあるはずがない。
 僕と、あーちゃんと、ひーちゃん。
 僕ら三人は、三角形だった。バランスの取りやすい形。
 始まりは悲劇だった。
 あの悪夢のような交通事故。ひーちゃんの弟の死。
 真っ白なワンピースが汚れることにも気付かないまま、真っ赤になった弟の身体を抱いて泣き叫ぶひーちゃんに手を伸ばしたのは、僕と一緒に下校する途中のあーちゃんだった。
 お互いの家が近かったこともあって、それから僕らは一緒にいるようになった。
 溺愛していた最愛の弟を、目の前で信号無視したダンプカーに撥ねられて亡くしたひーちゃんは、三人で一緒にいてもときどき何かを思い出したかのように暴れては泣いていたけれど、あーちゃんはいつもそれをなだめ、泣き止むまでずっと待っていた。
 口下手な彼は、ひーちゃんに上手く言葉をかけることがいつもできずにいたけれど、僕が彼の言葉を補って彼女に伝えてあげていた。
 優しくて思いやりのあるひーちゃんは、感情を表すことが苦手なあーちゃんのことをよく気遣ってくれていた。
 僕らは嘘みたいにバランスの取れた三角形だった。
 あーちゃんが、この世界からいなくなるまでは。
   「夏は嫌い」
 昔、あーちゃんはそんなことを口にしていたような気がする。
「どうして?」
 僕はそう訊いた。
 夏休み、花火、虫捕り、お祭り、向日葵、朝顔、風鈴、西瓜、プール、海。
 水の中の金魚の世界と、バニラアイスの木べらの湿り気。
 その頃の僕は今よりもずっと幼くて、四季の中で夏が一番好きだった。
 あーちゃんは部屋の窓を網戸にしていて、小さな扇風機を回していた。
 彼は夏休みも相変わらず外に出ないで、部屋の中で静かに過ごしていた。彼の傍らにはいつも、星座の本と分厚い昆虫図鑑が置いてあった。
「夏、暑いから嫌いなの?」
 僕が尋ねるとあーちゃんは抱えていた分厚い本からちょっとだけ顔を上げて、小さく首を横に振った。それから困ったように笑って、
「夏は、皆死んでいるから」
 とだけ、つぶやくように言った。あーちゃんは、時々魔法の呪文のような、不思議なことを言って僕を困惑させることがあった。この時もそうだった。
「どういう意味?」
 僕は理解できずに、ただ訊き返した。
 あーちゃんはさっきよりも大きく首を横に振ると、何を思ったのか、唐突に、
「ああ、でも、海に行ってみたいな」
 なんて言った。
「海?」
「そう、海」
「どうして、海?」
「海は、色褪せてないかもしれない。死んでないかもしれない」
 その言葉の意味がわからず、僕が首を傾げていると、あーちゃんはぱたんと本を閉じて机に置いた。
「台所へ行こうか。確か、母さんが西瓜を切ってくれていたから。一緒に食べよう」
「うん!」
 僕は西瓜に釣られて、わからなかった言葉のことも、すっかり忘れてしまった。
 でも今の僕にはわかる。
 夏の日射しは、世界を色褪せさせて僕の目に映す。
 あーちゃんはそのことを、「死んでいる」と言ったのだ。今はもう確かめられないけれど。
 結局、僕とあーちゃんが海へ行くことはなかった。彼から海へ出掛けた話を聞いたこともないから、恐らく、海へ行くことなく死んだのだろう。
 あーちゃんが見ることのなかった海。
 海は日射しを浴びても青々としたまま、「生きて」いるんだろうか。
 彼が死んでから、僕も海へ足を運んでいない。たぶん、死んでしまいたくなるだろうから。
 あーちゃん。
 彼のことを「あーちゃん」と名付けたのは僕だった。
 そういえば、どうして僕は「あーちゃん」と呼び始めたんだっけか。
 彼の名前は、鈴木直正。
 どこにも「あーちゃん」になる要素はないのに。
    うなじを焼くようなじりじりとした太陽光を浴びながら、ペダルを漕いだ。
 鼻の頭からぷつぷつと汗が噴き出すのを感じ、手の甲で汗を拭おうとしたら手は既に汗で湿っていた。雑音のように蝉の声が響いている。道路の脇には背の高い向日葵は、大きな花を咲かせているのに風がないので微動だにしない。
 赤信号に止められて、僕は自転車のブレーキをかける。
 夏がくる度、思い出す。
 僕とあーちゃんが初めてひーちゃんに出会い、そして彼女の最愛の弟「ろーくん」が死んだ、あの事故のことを。
 あの日も、世界が真っ白に焼き切れそうな、暑い日だった。
 ひーちゃんは白い木綿のワンピースを着ていて、それがとても涼しげに見えた。ろーくんの血で汚れてしまったあのワンピースを、彼女はもうとっくに捨ててしまったのだろうけれど。
 そういえば、ひーちゃんはあの事故の後、しばらくの間、弟の形見の黒いランドセルを使っていたっけ。黒い服ばかり着るようになって。周りの子はそんな彼女を気味悪がったんだ。
 でもあーちゃんは、そんなひーちゃんを気味悪がったりしなかった。
 信号が赤から青に変わる。再び漕ぎ出そうとペダルに足を乗せた時、僕の両目は横断歩道の向こうから歩いて来るその人を捉えて凍りついてしまった。
 胸の奥の方が疼く。急に、聞こえてくる蝉の声が大きくなったような気がした。喉が渇いた。頬を撫でるように滴る汗が気持ち悪い。
 信号は青になったというのに、僕は動き出すことができない。向こうから歩いて来る彼は、横断歩道を半分まで渡ったところで僕に気付いたようだった。片眉を持ち上げ、ほんの少し唇の端を歪める。それが笑みだとわかったのは、それとよく似た笑顔をずいぶん昔から知っているからだ。
「うー兄じゃないですか」
 うー兄。彼は僕をそう呼んだ。
 声変わりの途中みたいな声なのに、妙に大人びた口調。ぼそぼそとした喋り方。
 色素の薄い頭髪。切れ長の一重瞼。ひょろりと伸びた背。かけているのは銀縁眼鏡。
 何もかもが似ているけれど、日に焼けた真っ黒な肌と筋肉のついた足や腕だけは、記憶の中のあーちゃんとは違う。
 道路を渡り終えてすぐ側まで来た彼は、親しげに僕に言う。
「久しぶりですね」
「……久しぶり」
 僕がやっとの思いでそう声を絞り出すと、彼は「ははっ」と笑った。きっとあーちゃんも、声を上げて笑うならそういう風に笑ったんだろうなぁ、と思う。
「どうしたんですか。驚きすぎですよ」
 困ったような笑顔で、眼鏡をかけ直す。その手つきすらも、そっくり同じ。
「嫌だなぁ。うー兄は僕のことを見る度、まるで幽霊でも見たような顔するんだから」
「ごめんごめん」
「ははは、まぁいいですよ」
 僕が謝ると、「あっくん」はまた笑った。
 彼、「あっくん」こと鈴木篤人くんは、僕の一個下、中学一年生。私立の学校に通っているので僕とは学校が違う。野球部のエースで、勉強の成績もクラストップ。僕の団地でその中学に進学できた子供は彼だけだから、団地の中で知らない人はいない優等生だ。
 年下とは思えないほど大人びた少年で、あーちゃんにそっくりな、あーちゃんの弟。
「中学は、どう? もう慣れた?」
「慣れましたね。今は部活が忙しくて」
「運動部は大変そうだもんね」
「うー兄は、帰宅部でしたっけ」
「そう。なんにもしてないよ」
「今から、どこへ行くんですか?」
「ああ、えっと、ひーちゃんに届け物」
「ひー姉のところですか」
 あっくんはほんの一瞬、愛想笑いみたいな顔をした。
「ひー姉、まだ学校に行けてないんですか?」
「うん」
「行けるようになるといいですね」
「そうだね」
「うー兄は、元気にしてましたか?」
「僕? 元気だけど……」
「そうですか。いえ、なんだかうー兄、兄貴に似てきたなぁって思ったものですから」
「僕が?」
 僕があーちゃんに似てきている?
「顔のつくりとかは、もちろん違いますけど、なんていうか、表情とか雰囲気が、兄貴に似てるなぁって」
「そうかな……」
 僕にそんな自覚はないのだけれど。
「うー兄も死んじゃいそうで、心配です」
 あっくんは柔らかい笑みを浮かべたままそう言った。
「……そう」
 僕はそう返すので精いっぱいだった。
「それじゃ、ひー姉によろしくお伝え下さい」
「じゃあ、また……」
 あーちゃんと同じ声で話し、あーちゃんと同じように笑う彼は、夏の日射しの中を歩いて行く。
(兄貴は、弱いから駄目なんだ)
 いつか彼が、あーちゃんに向けて言った言葉。
 あーちゃんは自分の弟にそう言われた時でさえ、怒ったりしなかった。ただ「そうだね」とだけ返して、少しだけ困ったような顔をしてみせた。
 あっくんは、強い。
 姿や雰囲気は似ているけれど、性格というか、芯の強さは全く違う。
 あーちゃんの死を自分なりに受け止めて、乗り越えて。部活も勉強も努力して。あっくんを見てい���といつも思う。兄弟でもこんなに違うものなのだろうか、と。ひとりっ子の僕にはわからないのだけれど。
 僕は、どうだろうか。
 あーちゃんの死を受け入れて、乗り越えていけているだろうか。
「……死相でも出てるのかな」
 僕があーちゃんに似てきている、なんて。
 笑えない冗談だった。
 ふと見れば、信号はとっくに赤になっていた。青になるまで待つ間、僕の心から言い表せない不安が拭えなかった。
    遺書を思い出した。
 あーちゃんの書いた遺書。
「僕の分まで生きて。僕は透明人間なんです」
 日褄先生はそれを、「ばっかじゃねーの」って笑った。
「透明人間は見えねぇから、透明人間なんだっつーの」
 そんな風に言って、たぶん、泣いてた。
「僕の分まで生きて」
 僕は自分の鼓動を聞く度に、その言葉を繰り返し、頭の奥で聞いていたような気がする。
 その度に自分に問う。
 どうして生きているのだろうか、と。
  部屋に一歩踏み入れると、足下でガラスの破片が砕ける音がした。この部屋でスリッパを脱ぐことは自傷行為に等しい。
「あー、うーくんだー」
 閉められたカーテン。閉ざされたままの雨戸。
 散乱した物。叩き壊された物。落下したままの物。破り捨てられた物。物の残骸。
 その中心に、彼女はいる。
「久しぶりだね、ひーちゃん」
「そうだねぇ、久しぶりだねぇ」
 壁から落下して割れた時計は止まったまま。かろうじて壁にかかっているカレンダーはあの日のまま。
「あれれー、うーくん、背伸びた?」
「かもね」
「昔はこーんな小さかったのにねー」
「ひーちゃんに初めて会った時だって、そんなに小さくなかったと思うよ」
「あははははー」
 空っぽの笑い声。聞いているこっちが空しくなる。
「はい、これ」
「なに? これ」
「滝澤先生に頼まれたプリント」
「たきざわって?」
「今度のクラスの担任だよ」
「ふーん」
「あ、そうだ、今度は僕の同じクラスに……」
 彼女の手から投げ捨てられたプリントの束が、ろくに掃除されていない床に落ちて埃を巻き上げた。
「そういえば、あいつは?」
「あいつって?」
「黒尽くめの」
「黒尽くめって……日褄先生のこと?」
「まだいる?」
「日褄先生なら、今年度も学校にいるよ」
「なら、学校には行かなーい」
「どうして?」
「だってあいつ、怖いことばっかり言うんだもん」
「怖いこと?」
「あーちゃんはもう、死んだんだって」
「…………」
「ねぇ、うーくん」
「……なに?」
「うーくんはどうして、学校に行けるの? まだあーちゃんが帰って来ないのに」
 どうして僕は、生きているんだろう。
「『僕』はね、怖いんだよ、うーくん。あーちゃんがいない毎日が。『僕』の毎日の中に、あーちゃんがいないんだよ。『僕』は怖い。毎日が怖い。あーちゃんのこと、忘れそうで怖い。あーちゃんが『僕』のこと、忘れそうで怖い……」
 どうしてひーちゃんは、生きているんだろう。
「あーちゃんは今、誰の毎日の中にいるの?」
 ひーちゃんの言葉はいつだって真っ直ぐだ。僕の心を突き刺すぐらい鋭利だ。僕の心を掻き回すぐらい乱暴だ。僕の心をこてんぱんに叩きのめすぐらい凶暴だ。
「ねぇ、うーくん」
 いつだって思い知らされる。僕が駄目だってこと。
「うーくんは、どこにも行かないよね?」
 いつだって思い知らせてくれる。僕じゃ駄目だってこと。
「どこにも、行かないよ」
 僕はどこにも行けない。きみもどこにも行けない。この部屋のように時が止まったまま。あーちゃんが死んでから、何もかもが停止したまま。
「ふーん」
 どこか興味なさそうな、ひーちゃんの声。
「よかった」
 その後、他愛のない話を少しだけして、僕はひーちゃんの家を後にした。
 死にたくなるほどの夏の熱気に包まれて、一気に現実に引き戻された気分になる。
 こんな現実は嫌なんだ。あーちゃんが欠けて、ひーちゃんが壊れて、僕は嘘つきになって、こんな世界は、大嫌いだ。
 僕は自分に問う。
 どうして僕は、生きているんだろう。
 もうあーちゃんは死んだのに。
   「ひーちゃん」こと市野谷比比子は、小学生の頃からいつも奇異の目で見られていた。
「市野谷さんは、まるで死体みたいね」
 そんなことを彼女に言ったのは、僕とひーちゃんが小学四年生の時の担任だった。
 校舎の裏庭にはクラスごとの畑があって、そこで育てている作物の世話を、毎日クラスの誰かが当番制でしなくてはいけなかった。それは夏休み期間中も同じだった。
 僕とひーちゃんが当番だった夏休みのある日、黙々と草を抜いていると、担任が様子を見にやって来た。
「頑張ってるわね」とかなんとか、最初はそんな風に声をかけてきた気がする。僕はそれに、「はい」とかなんとか、適当に返事をしていた。ひーちゃんは何も言わず、手元の草を引っこ抜くことに没頭していた。
 担任は何度かひーちゃんにも声をかけたが、彼女は一度もそれに答えなかった。
 ひーちゃんはいつもそうだった。彼女が学校で口を利くのは、同じクラスの僕と、二つ上の学年のあーちゃんにだけ。他は、クラスメイトだろうと教師だろうと、一言も言葉を発さなかった。
 この当番を決める時も、そのことで揉めた。
 くじ引きでひーちゃんと同じ当番に割り当てられた意地の悪い女子が、「せんせー、市野谷さんは喋らないから、当番の仕事が一緒にやりにくいでーす」と皆の前で言ったのだ。
 それと同時に、僕と一緒の当番に割り当てられた出っ歯の野郎が、「市野谷さんと仲の良い――くんが市野谷さんと一緒にやればいいと思いまーす」と、僕の名前を指名した。
 担任は困ったような笑顔で、
「でも、その二人だけを仲の良い者同士にしたら、不公平じゃないかな? 皆だって、仲の良い人同士で一緒の当番になりたいでしょう? 先生は普段あまり仲が良くない人とも仲良くなってもらうために、当番の割り振りをくじ引きにしたのよ。市野谷さんが皆ともっと仲良くなったら、皆も嬉しいでしょう?」
 と言った。意地悪ガールは間髪入れずに、
「喋らない人とどうやって仲良くなればいいんですかー?」
 と返した。
 ためらいのない発言だった。それはただただ純粋で、悪意を含んだ発言だった。
「市野谷さんは私たちが仲良くしようとしてもいっつも無視してきまーす。それって、市野谷さんが私たちと仲良くしたくないからだと思いまーす。それなのに、無理やり仲良くさせるのは良くないと思いまーす」
「うーん、そんなことはないわよね、市野谷さん」
 ひーちゃんは何も言わなかった。まるで教室内での出来事が何も耳に入っていないかのような表情で、窓の外を眺めていた。
「市野谷さん? 聞いているの?」
「なんか言えよ市野谷」
 男子がひーちゃんの机を蹴る。その振動でひーちゃんの筆箱が机から滑り落ち、がちゃんと音を立てて中身をぶちまけたが、それでもひーちゃんには変化は訪れない。
 クラスじゅうにざわざわとした小さな悪意が満ちる。
「あの子ちょっとおかしいんじゃない?」
 そんな囁きが満ちる。担任の困惑した顔。意地悪いクラスメイトたちの汚らわしい視線。
 僕は知っている。まるでここにいないかのような顔をして、窓の外を見ているひーちゃんの、その視線の先を。窓から見える新校舎には、彼女の弟、ろーくんがいた一年生の教室と、六年生のあーちゃんがいる教室がある。
 ひーちゃんはいつも、ぼんやりとそっちばかりを見ている。教室の中を見渡すことはほとんどない。彼女がここにいないのではない。彼女にとって、こっちの世界が意味を成していないのだ。
「市野谷さんは、死体みたいね」
 夏休み、校舎裏の畑。
 その担任の一言に、僕は思わずぎょっとした。担任はしゃがみ込み、ひーちゃんに目線を合わせようとしながら、言う。
「市野谷さんは、どうしてなんにも言わないの? なんにも思わないの? あんな風に言われて、反論したいなって思わないの?」
 ひーちゃんは黙って草を抜き続けている。
「市野谷さんは、皆と仲良くなりたいって思わない? 皆は、市野谷さんと仲良くなりたいって思ってるわよ」
 ひーちゃんは黙っている。
「市野谷さんは、ずっとこのままでいるつもりなの? このままでいいの? お友達がいないままでいいの?」
 ひーちゃんは。
「市野谷さん?」
「うるさい」
 どこかで蝉が鳴き止んだ。
 彼女が僕とあーちゃん以外の人間に言葉を発したところを、僕は初めて見た。彼女は担任を睨み付けるように見つめていた。真っ黒な瞳が、鋭い眼光を放っている。
「黙れ。うるさい。耳障り」
 ひーちゃんが、僕の知らない表情をした。それはクラスメイトたちがひーちゃんに向けたような、玩具のような悪意ではなかった。それは本当の、なんの混じり気もない、殺意に満ちた顔だった。
「あんたなんか、死んじゃえ」
 振り上げたひーちゃんの右手には、草抜きのために職員室から貸し出された鎌があって――。
「ひーちゃん!」
 間一髪だった。担任は真っ青な顔で、息も絶え絶えで、しかし、その鎌の一撃をかろうじてかわした。担任は震えながら、何かを叫びながら校舎の方へと逃げるように走り去って行く。
「ひーちゃん、大丈夫?」
 僕は地面に突き刺した鎌を固く握りしめたまま、動かなくなっている彼女に声をかけた。
「友達なら、いるもん」
 うつむいたままの彼女が、そうぽつりと言う。
「あーちゃんと、うーくんがいるもん」
 僕はただ、「そうだね」と言って、そっと彼女の頭を撫でた。
    小学生の頃からどこか危うかったひーちゃんは、あーちゃんの自殺によって完全に壊れてしまった。
 彼女にとってあーちゃんがどれだけ大切な存在だったかは、説明するのが難しい。あーちゃんは彼女にとって絶対唯一の存在だった。失ってはならない存在だった。彼女にとっては、あーちゃん以外のものは全てどうでもいいと思えるくらい、それくらい、あーちゃんは特別だった。
 ひーちゃんが溺愛していた最愛の弟、ろーくんを失ったあの日。
 あの日から、ひーちゃんの心にぽっかりと空いた穴を、あーちゃんの存在が埋めてきたからだ。
 あーちゃんはひーちゃんの支えだった。
 あーちゃんはひーちゃんの全部だった。
 あーちゃんはひーちゃんの世界だった。
 そして、彼女はあーちゃんを失った。
 彼女は入学することになっていた中学校にいつまで経っても来なかった。来るはずがなかった。来れるはずがなかった。そこはあーちゃんが通っていたのと同じ学校であり、あーちゃんが死んだ場所でもある。
 ひーちゃんは、まるで死んだみたいだった。
 一日中部屋に閉じこもって、食事を摂ること��眠ることも彼女は拒否した。
 誰とも口を利かなかった。実の親でさえも彼女は無視した。教室で誰とも言葉を交わさなかった時のように。まるで彼女の前からありとあらゆるものが消滅してしまったかのように。泣くことも笑うこともしなかった。ただ虚空を見つめているだけだった。
 そんな生活が一週間もしないうちに彼女は強制的に入院させられた。
 僕が中学に入学して、桜が全部散ってしまった頃、僕は彼女の病室を初めて訪れた。
「ひーちゃん」
 彼女は身体に管を付けられ、生かされていた。
 屍のように寝台に横たわる、変わり果てた彼女の姿。
(市野谷さんは死体みたいね)
 そんなことを言った、担任の言葉が脳裏をよぎった。
「ひーちゃんっ」
 僕はひーちゃんの手を取って、そう呼びかけた。彼女は何も言わなかった。
「そっち」へ行ってほしくなかった。置いていかれたくなかった。僕だって、あーちゃんの突然の死を受け止めきれていなかった。その上、ひーちゃんまで失うことになったら。そう考えるだけで嫌だった。
 僕はここにいたかった。
「ひーちゃん、返事してよ。いなくならないでよ。いなくなるのは、あーちゃんだけで十分なんだよっ!」
 僕が大声でそう言うと、初めてひーちゃんの瞳が、生き返った。
「……え?」
 僕を見つめる彼女の瞳は、さっきまでのがらんどうではなかった。あの時のひーちゃんの瞳を、僕は一生忘れることができないだろう。
「あーちゃん、いなくなったの?」
 ひーちゃんの声は僕の耳にこびりついた。
 何言ってるんだよ、あーちゃんは死んだだろ。そう言おうとした。言おうとしたけれど、何かが僕を引き留めた。何かが僕の口を塞いだ。頭がおかしくなりそうだった。狂っている。僕はそう思った。壊れている。破綻している。もう何もかもが終わってしまっている。
 それを言ってしまったら、ひーちゃんは死んでしまう。僕がひーちゃんを殺してしまう。ひーちゃんもあーちゃんみたいに、空を飛んでしまうのだ。
 僕はそう直感していた。だから声が出なかった。
「それで、あーちゃん、いつかえってくるの?」
 そして、僕は嘘をついた。ついてはいけない嘘だった。
 あーちゃんは生きている。今は遠くにいるけれど、そのうち必ず帰ってくる、と。
 その一週間後、ひーちゃんは無事に病院を退院した。人が変わったように元気になっていた。
 僕の嘘を信じて、ひーちゃんは生きる道を選んだ。
 それが、ひーちゃんの身体をいじくり回して管を繋いで病室で寝かせておくことよりもずっと残酷なことだということを僕は後で知った。彼女のこの上ない不幸と苦しみの中に永遠に留めておくことになってしまった。彼女にとってはもうとっくに終わってしまったこの世界で、彼女は二度と始まることのない始まりをずっと待っている。
 もう二度と帰ってこない人を、ひーちゃんは待ち続けなければいけなくなった。
 全ては僕のついた幼稚な嘘のせいで。
「学校は行かないよ」
「どうして?」
「だって、あーちゃん、いないんでしょ?」
 学校にはいつから来るの? と問いかけた僕にひーちゃんは笑顔でそう答えた。まるで、さも当たり前かのように言った。
「『僕』は、あーちゃんが帰って来るのを待つよ」
「あれ、ひーちゃん、自分のこと『僕』って呼んでたっけ?」
「ふふふ」
 ひーちゃんは笑った。幸せそうに笑った。恥ずかしそうに笑った。まるで恋をしているみたいだった。本当に何も知らないみたいに。本当に、僕の嘘を信じているみたいに。
「あーちゃんの真似、してるの。こうしてると自分のことを言う度、あーちゃんのことを思い出せるから」
 僕は笑わなかった。
 僕は、笑えなかった。
 笑おうとしたら、顔が歪んだ。
 醜い嘘に、歪んだ。
 それからひーちゃんは、部屋に閉じこもって、あーちゃんの帰りをずっと待っているのだ。
 今日も明日も明後日も、もう二度と帰ってこない人を。
※(2/4) へ続く→ https://kurihara-yumeko.tumblr.com/post/647000556094849024/
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moderndays · 4 years
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何必館コレクション 北大路魯山人 展 -和の美を問う- 2020年2月 5日 (水) - 17日 (月)  日本橋三越本店
京都・四条通を八坂神社方面に行く際に、いつも通りすがりに気になっていた美術館「何必館」のコレクション。
北大路魯山人は詳しくないが、この椿の器はよく見ている。何故なら、愛用しているペーパーウェイトに刷り込まれた絵がこの器の写真なのだ。
たくさんの書を残し、器が作られたが、花器の展示にこんな文章があり、撮影は出来ないので大筋暗記してきた。
「自然の美に気づいた後で、止むに止まれなくなり、仕方なく部屋に切花を飾るのが、真の生花」
建物仲間との新年会に向かう前に立ち寄った。着物は白大島の紬、ローズカラーの帯締めと帯揚げ。帯は名古屋、柄は…偶然にも「椿」。
2019/02/15鑑賞
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片貝木綿を栗、椿、葡萄柄の染め帯で。 #片貝木綿 #木綿着物 #普段着着物 #染め帯 https://www.instagram.com/p/BpEfRH1lwWE/?utm_source=ig_tumblr_share&igshid=1py32b5ghdpu9
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itocaci · 2 years
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花を咲かす風と装い
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こんばんは。
駆け抜けた年末年始。
本当に日々詰め込みすぎて、そして作業にも終われ、全く落ち着く暇もなく今日を迎えています。
ようやく少し落ち着くと、今度は家のことが全くできていないことに気がつき、今月はゆっくりとではありますが家の整理もしていければなと思っております。
なんだか2021年が、はるか昔のように感じております。笑
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さて、昨日”小寒”を迎え、いよいよ冬の五番目の節気を迎えました。
今回のオンラインショップでは「寒の内」ということで温かなアイテムもピックをしたのですが、アウターにも限りがあり、そしてそんなアウターばかりを掲載するのにも流石に辟易としてきたので、ちょっと趣向を変えて「花」をメインにアイテムを選んでみました。
本格的な冬の中で花と聞くと違和感を抱く方もいらっしゃるかもしれません。
しかし年明けの節目でもある”小寒”から春の終わりまで、「二十四番花信風」という、花を咲かす風が吹くとされます。
これは、”小寒”から”穀雨”までの八節気を二十四区分に区切り、その区分毎に吹く風が、対応した花を咲かせるという、素敵な言い伝えになります。
ちなみに二十四区分というのは七十二候に対応しており、”小寒”の期間ですと下記になります。
1/5〜1/9:”芹乃栄(せりすなわちさかう)” 〔初侯〕
1/10〜1/14:”水泉動(しみずあたたかをふくむ)” 〔次侯〕
1/15〜1/19:”雉始雊(きじはじめてなく)” 〔末侯〕
このように各節気間はいつも三区分に分けられます。
”小寒”の三候に当てられた花は、初侯が梅花、次侯が山茶(椿)、末候が水仙となります。
中国から入った慣習となるため、多少の誤差はありますが、このように、次の”大寒”はもちろんのこと、5月頭の”立夏”の前日まで続いていきます。
本日は、そんな花を咲かす風が吹き始める頃を祝って、当店の花柄のアイテムをご紹介させていただければと思います。
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Fumiku : Flower Satin Long Sleeve Dress (Blue) ¥42,900 (tax in)
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Fumiku : Flower Satin Long Sleeve Dress (Black) ¥42,900 (tax in)
まずは"Fumiku"の花柄のロングワンピース。
"Fumiku"らしく、生地を重ね1枚のワンピースの中でレイヤードをお楽しみいたけるアイテムとなります。
左右非対称のデザインとドレープを巧みに使い、レイヤードを活かしたデザインがとても素敵な1着となります。
サテンと呼ばれる、光沢の美しい織物をベースに、シックで繊細な花柄が、上品な雰囲気を出しています。
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袖が長いため、コートやトップスを上に着用しても、袖元の重ねをお楽しみ頂ける点もオススメです。
また、ワッシャー加工と呼ばれる、シワ感を出す加工を施すことで、ドレスのような美しさを持ちつつも、ラフに日常の場面でも着用できるよう落とし込んでおります。
そのため、幅広いシーンで活躍する1着となりますよ。
そういったアイテムを1着持っているととても便利ですね。
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BANSAN:Design Motif Skirt (DARK BROWN) ¥49,500 (tax in)
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BANSAN:Design Motif Skirt (WINE RED) ¥49,500 (tax in)
大胆な花柄を全面に用いた"BANSAN"のスカート。
ボテッとした花柄がとこかレトロな雰囲気を醸し出し、良い味を出しております。
ノスタルジーな趣を感じつづも、装いに取り入れると、嫌味はなく、気張らないスタイリングができてしまう点が個人的にとてもオススメな点でもあります。
上品な花柄のロングスカートですと、どうしても着用する場面が限定的になってしまいますが、このスカートからは、絶妙な野暮ったさやレトロな趣を感じることができ、カジュアルな装いにも華を添えるアイテムとなるのでは無いでしょうか。
贅沢に布地を使ったスカートは動きに合わせて広がりも生み出します。
巻きスカートのように重ねたようなデザインも相まって、とても美しいシルエットが素敵です。
着丈の長いワンピースやコートと合わせて、膝下でチラッとポイントを見せるような着こなしもオススメですし、ショート丈のトップスと合わせて大胆にスカートを主張していただくような合わせ方も良いですね。
気張らない、生活に寄り添う花柄。
そんな言葉がしっくりくるスカートになるのではないでしょうか。
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BANSAN:Long Tie Front Open Cotton Dress (BEIGE) ¥46,200 (tax in)
最後は、スカート同様の花柄の素材をアクセントにしたワンピースをご紹介します。
スカートも良いけど少し主張が強いと感じられる方にはこちらのワンピースがオススメです。
首元のタイをリボンように結んでアクセントにして頂くのも良いですし、軽く重ねて垂らして頂く合わせ方も素敵です。
ニットやコートのインナーに着用しても、首元からチラッとリボンを出すことで装いに華を添えるような着こなしが可能となります。
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袖のふんわりとしたボリュームや、袖口の包みボタンが女性らしい雰囲気を引き立てる、細部に抜かりのない1着となります。
コットン素材がベースになりますので、秋から春までシーズンを跨いで着用が可能となりますよ。
ということで、本日は以上5点をご紹介させていただきました。
なお、こちらのアイテムは現在オンラインショップにも掲載をしておりますので、そちらも合わせてご覧いただけると幸いです。
https://itocaci.thebase.in/
冬の冷気を帯びた風は身体に応えます。
それでもその風がどこかで花を咲かせていると思うと、少し微笑ましく思えてしまいます。
今回は、そんな花を咲かせる風に思いを馳せて纏っていただければと思いご紹介をさせていただきました。
それでは次回もお楽しみに。
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nextsummerraika · 3 years
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call me my ghost ライナーノーツ
call me my ghost のあとがき、というか作業中なにを考えてたか的なやつです。長い。
・もともと、もっとくらい話になる予定だった(死ネタだった)んだけど、ジャンル初で投稿する話で死ネタ……あまりにハードル高すぎでは…になったので変更になりました。(たしか急性トラップ反応を起こして死にかける依織と、そこに居合わせた匋平との間の「約束」をテーマにした明るい地獄のはなしだった) ・書いてる最中「これはこのふたりにとってのイニシエーションなんでは……?」と思いました。「一時停止ボタンを押されてそのままになっていた関係が、再生ボタンを押されたことによってまえに進まざるを得なくなったけれど、こどものままの距離感ではいられないので、なにかしらの通過儀礼が行われる」みたいなことがメモに残っていた、ので、そういう感じです。
1章 ・「幽霊」
 BGMに関わってくるんですがthe engyの『funny ghost』をそのときめちゃくちゃ聞いていて、そこからの発想だった気がする。依織が自分を「ゆかいなゆうれい」として認識している、みたいな。三枚目演じてるし。 なんの気なしに書き始めたこの幽霊の設定が、後半でわりとバチっとはまってきたので、書いててたのしかった思い出があります。(もともと1、2章と4章の海に行くシーンを先行して書いてた) ・ピアノ
 最初依織が酒を呑みながら匋平を「ええ男になったなぁ」って眺めてるだけの章だった。でもせっかくなのでピアノを弾いてもらったら、即興でセッションしだすし、イチャコラするので書いている人間はびっくりした。でもおかげで物語のモチベーションが出来てよかったな~と思います。ブルーノ・マーズの選曲はなんとなく。だけど、4章で「たからもの」というワードが出てくるフックになったかなと思う。 なおわたしは全然洋楽くわしくない。 ・ジン
 冷凍庫でも凍りません。(実体験) ・依織の劣情  ピアノと匋平の実質セックスを目の当たりにしたので、ムラッときた。えろいことをなにもしていないのにえろい雰囲気になる文章を書きたかったけどいまいち実力が伴わなかったなというかんじ。 ・匋平の欲情
 後述予定だけど、まあ、自分の内側をみせまいとするタイプの男に、そんないとおしそうな目で見られたらワンチャンあるか?くらいは思うだろう。というか、「おまえはまだそんな目で俺を見てくれるのか」って思っていたと思う。依織のそういうちょっと迂闊なところがかれのかわいげだなぁと思います。 ・デュポンのライター  実際のところ、匋平のライターはデュポンではないと思っているんですが、わたしがデュポンのライターを使っている描写が好きなのでデュポンということになりました。 2章
・過去編  すべて幻覚。一から十までわたしの幻覚。書いてる当時、「ありもしない過去の幻覚をもう五千字も書いてる……」ってTwitterで呟いていた。結果、五千字どころではなくなった。  依織はたぶんこどものころから馬鹿みたいに頭がよくて、まわりの人間が頭悪くてしょうがないみたいに思ってみてたと思う。でもそんなことを言ったら波風立てるだけだしな~と思いながらもバカばっかりの世界に嫌気がさして衝動的に暴力ふるったりしていた。依織にとって、親父は当時自分の知る中で一番頭が切れる大人だった、かもしれない。  匋平のことは、まじで後先考えねぇなこいつ…と思いながらも、根は良い奴で、情にあつくて、馬鹿なところがかわいい、と思っていた、かもしれない。 ・夕暮れの部屋
 制服のスラックスを脱ぎ落す依織とそれを眺めてても許される匋平、エモ。  学校行きながら仕事して、って相当なハードワークだと思うんだけど、(組の)部屋住みってわけではなかったのかな?部屋住みだったにしては家事がからっきしそうなので、どこに住んでるとは明言しない書き方にしました。むしろ匋平のほうが部屋住みだったのか?  バディ時代の匋平と依織はたましいのふたごだったと思ってはいるのですが、この話においては、ありったけの夢と希望を詰め込んで、過剰なくらいの信頼関係があったと仮定して書きました。  依織は自分のことまじで大事にできないタイプだよな~って聴き始めたころから思っていました。自分のこと二の次だよなこの人。  依織のさみしさ、というのは、頭が良すぎるので自分が周囲とは隔絶されているような孤立感があった、というかんじかな。かれもまだ若かったので、その孤立感をどうしていいのかわからなかったんじゃないか。だから無茶ができた。そういう依織のさみしさを埋めたのが匋平の存在だったらいいな~。健全なたましいを持つ男に、ばかみたいにまっすぐに信頼をむけられたとき、ようやくその孤独をわすれることができたんじゃないか。知らんけど。
 大人になった依織の孤独は、頭の良さが要因というより、立場由来のもののような気がします。
・組抜けのあれこれ
 この物語における最大の幻覚ですよね。  書けなかったけど、親父は事前に依織から匋平が組抜けたがってる旨を聞いていて今回の沙汰をくだしています。匋平の想像通り、依織はここで裏社会で生きていくことに腹くくったと思う。後がなくなったというか。
 「目を見れば相手のことがわかる」 過剰かなぁとは思ったけど、まあ、いいか……って。たましいのふたごだし。  「めっちゃゴキゲンだぜ!」似非関西弁で虚勢はる匋平(依織の手前、自分があっさり音をあげられないので)、その内心を悟って「アホやなあ」と思ってバディの双方を憐れんでしまう先代翠石。殴ってるうちにどんどん歯止めの利かなくなってくる依織。三者三様思うところがあったんだろう。 ・歯  呑んだはいいけど、血肉にもならない。  思いついたとき「天才か?」と思った。匋平が一生知ることのない、依織の巨大感情発露シーン。※不衛生ですので決して真似はしないでください。 3章 ・1章の匋平視点。依織は「そんな甘ったるい顔を自分にみせないでほしい」って思ってたけど、自分もたいがい甘ったるい顔してたんだよ。まあ、匋平に引きずられた部分は確実にある。
・組抜け後のあれこれ。  特に意識はしてなかったんですけど、バーの居候第一号は匋平君ということになっていました。4/7はオーセンティックバーなのかなっていうイメージでいます。どうなの。でもファンブックの感じ見てるとそれっぽい気がする。 ・椿のピアノ  匋平にピアノ教えたのは椿だと思うので、師弟っぽさがでるようにラヴェルのはなしをいれてみた。匋平にとって、音で世界を描くということ(ひいては幻影ライブへ)の原体験が椿のピアノにあるんじゃないかな。
・依織のまぼろしと愛のはなし  4章で、依織は匋平の名前を呼ぶことを固く戒めているという描写と対比して、匋平にとって依織の名前を呼ぶことはむしろ自分を鼓舞することだったし、それ自体が愛だったっていう話をしておきたかった。  なんというか神林匋平という人間、どんなきつい目にあっても、そのこと自体を(もちろん傷つくし、悲しむし、トラウマにもなってるけど)自分を成長させる機会だと認識できるタイプの人間にみえる。ものすごく健全な魂の持ち主って感じ。なので、これまでのすべてのことは「祝福」だとはっきり言える。 ・マルボロのブラックメンソール  書いてて「天才か?」になった第二弾。依織ばっかりが巨大感情を拗らせてるわけではなくて、この人もわりと平然とした顔しながら拗らせてる。まあもともとヤクザなので虚勢を張るのは得意ということで。  西門が煙草のことに言及したのは、匋平の部屋にたまたま飲みに来ていた時に、いつもと違う銘柄があることに気付いてちょっとつついてみたら「あ゛ー……昔のツレが吸ってたやつ」みたいな、ものすごーく不本意そうな顔で言うのでそれ以上は突っ込まずに「愛だね」とだけ言ったみたいな遣り取りがあったと仮定しています。なので依織のことは知らなかった。JUSTICE戦後、依織とよく飲みに行くようになった匋平を見て、たぶんあの煙草は依織のものだったんだな~って気が付くかんじ。でも別に言わない。愛だねって思ってる。 ・バディ時代の依織と匋平の関係  昔のこの人たちには肉体関係は発生しなかったけど、恋は発生していたと思う。ただふたりともホモソーシャルな世界で生きていたので、余計に一線踏み越えられなかったんじゃないかな。(ヤクザ世界の性行為は暴力だと思っているので) ・ライトマイファイア
 とは書かなかったけど、3章のラストはハートに火をつけてってかんじの流れだったな~と思います。匋平は腹くくったら強いと思う。ぶれない。ので、そういう相手にまっすぐ気持ち向けられた依織はかわすの大変だろうな。しかも憎くて別れたわけじゃない元カレ(元カレではない)相手に。 4章 ・桃色吐息と煙管と月  ピアノ弾きに自分のからだを奏でて欲しいっておもうの、めちゃくちゃえっちだなあと思う。依織が地で手フェチとかじゃないのに旦那相手にしたときだけめっちゃ手ェ見そうだなっていう印象があります。  依織にどーしても煙管を吸わせたかった。持ち物一覧(ファンブック)に煙管が入ってるので携帯しているんだとは思うけど、ふつうに灰皿つかうのかな~?謎。 ・バディ時代の距離感  ここも夢と希望をありったけ詰め込んだ。このはなしのひとつのテーマとして「越境」というのがあって(というかわたしが書いてる話はだいたいそう)、バディ時代に一度とけあったお互いの境界線が、別れてふたたび引き直されて、再会してお互いのそれをどこに設定するのか、をもだもだやっているというかんじ。バディ時代はべたべたしていてほしい。 ・翠石組  まーじでこのコンテンツにおいてめちゃくちゃ謎過ぎて是非詳しい設定を教えてほしいところナンバーワン。悪漢のメンバーの台詞なんかからも「任侠」っていわれてるので、人情味のある組織なんだろうとは想像してるのですが、まあそれはそれとしてもし本当に2年前の時点で依織が「若頭」だったとしたら、年齢が若すぎるし、絶対内部で反発あったでしょという思いからいろいろ書いてみた。整合性とかしらん。 ・善と匋平
 外堀を埋められている依織。まさか旦那がそんな手を使うと思っていなかったので、若干後手に回っている。昔の旦那の素直さがなつかしいな~。  匋平が、依織についての気持ちを先に善に告げたのは、いちおう筋を通したかったからなのだけれど、見方によっては思いっきり喧嘩売ってるよな…。匋平は筋を通したかっただけです。いちおうここのふたりの遣り取りも考えてたけど書けるかどうかはよくわからない。善はいまのところ依織に全幅の信頼をおかれていない(と感じる)ことにコンプレックスがあるので、匋平に対して複雑な思いがあるだろうけど、結局のところ「若が決めたこと」を尊重するのかなぁとは思う。善は良い男だし、依織もちゃんと信頼をしてるので心配しないでほしい。依織は用心深くて責任感が強すぎる男だからそういうムーヴしちゃうんだ。そして匋平の存在は依織にとってイレギュラーなだけだ。(し、組関係のはなしは匋平にはぜったい口外しない) なお、善の依織に対する感情は現状性愛をふくまない(うちの善はという話です)ので恋情ではないかな~。(どう転ぶかはわからない) ・教授の車
 たぶんレクサスのRXクラス。昔はアルファロメオ乗ってたって匋平がいってました(独自設定)。匋平をのせる必要が出てきたので車変えて以降も、四季やリュウが増えたのでスポーツカーは乗らなくなったらしい。たぶん教授は実家が太いのではないかな。学生身分でバーのオーナーやってたわけだし。 ・海
 具体的な地名も一応考えたけど、ようするに「どこでもないところ」です。どこでもないところでだれでもないだれかになることでしか、口にすることのできない本音がある、っていう。  「幽霊」の伏線回収。あなたとわたしは違う世界の存在です、という宣誓。あるいは懺悔かな。匋平は組を抜けたことで転生したし、依織は翠石の名前をもらって転生してしまったみたいな。依織の覚悟というのは、主に「翠石」の名前によるところが大きくて、しかもそれを捨てたりないがしろにすることはアイデンティティの喪失につながるから絶対にできない。でも、だからこそ匋平は懲りずに何回でも手を伸ばすんだろうな~という気がします。それでこそ健全なたましいを持つ男。 「幽霊でもキスできただろ」  このラストを書きたいがためにこの話を書いたと言って過言ではない。畢竟、そういうことなんですよ。どれだけ屁理屈並べたって、いまここに自分たちがいることは事実で、触れ合うことも、愛し合うこともできるんだよって。その形がどんなものになるかはこれから模索していくしかないにしても、「できる」んだっていう可能性の提示。匋平のそういうひたむきさがずっと好きだったし、これから先もきっとこの瞬間を思い出して依織は救われたような気持ちになるんだと思う。あの夕暮れの匋平の言葉と一緒に。
エピローグ
 これねえ、ほんと割と本気でキャプションに「エピローグは蛇足です」って入れようかどうか迷ったんですよ。読まなくていいよって。だったらのせるなって話になるのでキャプションには書きませんでしたけども。  唐突にコメディがぶち込まれたことによって温度差で読んでる人が風邪ひくんじゃないかと思ったんですけど、もしもこの物語のふたりに続きがあるとしたら、その「接続詞」としてのエピソードがあってもいいかな、と思ってつくりました。  蛇足ではあるけど、最終的にはうまいこと伏線(?)が回収できてきれいにおさまったんじゃなかろうかという自画自賛をしておきたいと思います。  ここでも外堀埋められてる依織ですけど、弟たちはリュ四季とあそぶために4/7に行ってるので匋平とは普通にしゃべってるという感じ。おやつとかジュースとか出してもらってる。兄貴の昔なじみの、気の良い兄ちゃんという認識。玲央だけが匋依の間にあるなにかに気付いているかな。弟たちはたぶん兄貴が匋平と深い関係になったことを知っても嫉妬とかはない。「別にあなたがいなくても兄貴は自分たちが守るけど、兄貴があなたがいることですこしでも救われるなにかがあるなら、あなたの存在を容認します」みたいな。兄貴に対しては「兄貴が惚れてるっていうんならそれでいいのに。そんなに気を張ることないのになあ」って思ってます。でも依織は大人だからいろいろ思うところがあるのよ。  今回、バディ以外のひとたちの心情には触れなかったんだけど(話が膨れ上がるので)、たぶんみんなそれぞれ思うところはあるんだと思う。
「ほんまにアホなやっちゃなあ!」と、旦那を心の中で呼ぶシーンは、は3章ラストの「おまえはほんとうに馬鹿だよ、匋平」に対応していました。「匋平」と呼んだのは、依織にとってかれがもう自分の半身ではないという宣言でありかつ匋平がもはや「他人」となったことの証だったので(この物語においては)、旦那と呼ぶことは何らかの関係の回復を意味している、はず。依織に家族以外の、心のよりどころになり得る相手が出来てよかったな、みたいなラストです。お互いが幽霊であることを認めたうえで、またあたらしい関係を築こうとしている。それってたぶん希望なんだと思う。 タイトル
call me my ghost ・「俺の幽霊」に向かって「俺を呼んでくれ」と告げる、あるいは、相手に向かって「自分を幽霊と呼んでくれ」という、二重の意味になるように句点はうちませんでした。匋平からとも依織からともとれるタイトルになったんじゃないかな。 というわけ備忘録としてのこしておきます。長いわ!
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sajimausuginu · 3 years
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https://twitter.com/gofukuyasan/status/1375291381090983937?s=21
浴衣のデザインコンテストに参加しております!
Twitterのイイネで投票出来ますのでよろしくお願い致します。
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308hair · 4 years
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雨のシーズン真っ只中ではありますが、夏本番もすぐそこです。
日本の夏の風物詩の浴衣、今年もレンタルやります!
浴衣の画像をクリックすると詳細をご覧いただけます。
気になるものがありましたら是非チェックしてみてください。
*詳細が表示されない場合は下記の投稿をご覧ください。バレバレですが昨年と一緒です(笑)
黒トンボ柄 水色 生成り 孔雀羽 薄茶
・・・・
マスク姿はすっかり見慣れましたが、浴衣にマスクはさすがに風情が無いですよね~~。
でも、ドクロ柄に黒マスクとかなら逆にかっこいいかもしれません。
藍染とか白地に紺の浴衣なら共布のマスクというのもありですかね。
千代の富士の浴衣が発売されてるみたいで、それも手ぬぐいで作ったマスクが合いそうですね。
まあ、混み合ってない屋外で大声を出さないならマスクなしでOKだと思います。
私もこの夏1回くらいは浴衣を着たいと思っています。
2020/6/30
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toko1922 · 5 months
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椿柄のウールアンサンブル。
半幅帯を貝の口、帯留も椿で。
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bingata-nawachou · 1 year
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ほんの少しの上京の間 たくさんの!! 出逢いと経験を させていただきました✨ ・ ・ あと1週間! 上京の予定が後ならば 開炉に間に合ったのですが どうしても スケジュール合わず💦 ・ 今回は 6歳になる娘と一緒に 上京予定だったので @umegaka 先生 に 娘と共にお稽古を ご指導いただきました🍵 ・ 娘にとって はじめてのお茶のお稽古 先生が手取り足取り😭🙏✨ 一つずつ 本当に丁寧に丁寧に 教えてくださり😭✨ わたしも大変勉強になり (同時��ハラハラしながら😂) 良い経験となりました✨ ・ 自身のお稽古は 9月のお稽古から そんなに間が空いていないので いつもよりも ほんの、ほんの少しだけ?!🐢 お手前の流れが覚えて いられているような🍵💦 細く長くの学びを 続けていけたらと🍵🙏 ・ ・ この日の #きものコーディネート ・ ♦︎ #着物 ♦︎ 私物にて ようやく袷の着物が✨ 纏える喜び👘 刺繍の一つ紋入りの色無地を ・ ♦︎ #帯 ♦︎ #紅型ナワチョウ帯 #唐草菊に丸紋蝶菊椿 前柄は #関西巻 の  #藍型 を締めて ・ ♦︎ #帯揚げ & #帯締め ♦︎ 共に私物にて 帯揚げは桃色 帯締めは海老茶色で キリッと👘✨✨ ・ 娘にも着物を!っと 思っていたのですが 移動時間含め 断念してしまいました、、 次の機会があったら 着物で共にと←課題です🤣 ・ ・ 「6歳6月6日に お稽古をはじめると良い」 というのは この日初めて知ったのですが😂 6歳になったばかりの 彼女にとっては 大きな学びの 時間になったのでは! っと、わたしも感慨深く🙏 ・ 後ほど娘は 上京中1番楽しかったことは お抹茶点てたこと!っと 申しておりました🙏 ・ ・ この日の #お軸 は #一期一会 まさにこの日のために😭🙏 っと感じ入りました✨✨ ・ #上生菓子 は #鈴懸 さんの #錦繍  紅葉の様を 目からも美味しく愉しく✨ ・ #神楽坂千 さんの 秋のお料理にも舌鼓✨ #梅が香先生 との お稽古の時間は 毎回感謝ばかりです🙏✨ ありがとうございます!! ・ 次回のお稽古も またどうぞ よろしくお願いいたします🍵✨ ・ ・ #紅型 #紅型ナワチョウ #縄トモコ #お抹茶 #抹茶 #お稽古風景 #裏千家 #和の心梅が香 #kimono #きもの #着物 (神楽坂和食千) https://www.instagram.com/p/Ck8NzfuLBH2/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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kinnokuraya1 · 4 years
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月姫です。メルカリで着物や帯を販売しています。 心を込めて出品させて頂きますのは、しつけ付 未使用 美品 訪問着 正絹 落ち着きのある色合い ネイビー ブルー 和の情緒 花柄 椿柄 暈し 袷 手縫い仕立て 和装美人 です。 趣ある色使いが醸す落ち着きある和の情緒に身を包むかのよう。 ほんのりとした美しい光沢感が さりげなくもこだわりの感じられるお品です。 上品な色使いがステキで、椿柄が染められております。 さりげない華やぎが上品な大人の女性ならではの佇まいを演出します。 幅広い年代の方に末永くお手元でお召しいただけます♪ ゲストとして招待された結婚式や披露宴、パーティー、 祝賀会、ディナーショー、お茶会など 少し改まった服装が求められるシーンで幅広く着用出来ます。 また、お宮参りや七五三、卒業式、入学式など、 お子さまの行事で着るお母さまの衣裳としても大変重宝されています。 街並みにも馴染む、品の良い雰囲気も醸し出しています。 ぜひ“貴女”だけの帯や小物合わせで、 誰もが羨む着姿を演出してくださいませ。 職人さんの丁寧な手仕事が際立つ手縫い仕立て♪ しつけ糸付きの未使用品ですので、 表地、裏地、シミや汚れはなく綺麗で状態の良いお着物です! 女性らしい品のあるお色目ですので着る方の年齢を選びませんね。 様々な場面にお召しいただける訪問着は一枚ご用意 いただくと何かと重宝なもの。この機会にいかがでしょうか。 ■広衿 (スナップ) ■素材 表生地:正絹 胴裏:正絹 八掛:正絹 (手縫い仕立て) ■サイズ 身丈(肩):160㎝(前5.8㎝、後5.7㎝縫込みあり) 裄:62.2㎝(肩側4.2㎝、袖側3.7㎝縫込みあり) 袖幅:31.8㎝ 袖丈:49.5㎝(6.5㎝縫込みあり) 前幅:22.3㎝ 後幅:28.2㎝ ■適用身長:155㎝-165㎝ (着丈の+-5㎝が基本で目安になります) - [ ] #着物 #和装 #和服 #着付け #着付け教室 #和 #kimono #お茶会 #お茶席 #茶道 #書 #書道 #花道 #華道 #美 #美容 #美容院 #メルカリ #メルカリ出品中 #きもの #着物好き #茶道教室 #着物好きな人と繋がりたい #美品 #正絹 #訪問着 https://www.instagram.com/p/B7okxeBgPGs/?igshid=1ckaksb3sgieu
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