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#横浜シネマリン
mninmt · 4 months
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2023年に観てよかった旧作映画の感想など
○洋画&邦画(順不同)
ペトラ・フォン・カントの苦い涙(1972)ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー @新宿武蔵野館
ずっと苦手意識を持っていたファスビンダー。これを観る前にオゾンのリメイクを観たので、物語を追う必要がそこまでなく画に集中できたことによって、ファスビンダー作品の"凄み"みたいなのが感じ取れたのかもしれない。これまで男性同士の恋愛映画はいくらか観てきたが、女性同士の物語はというと、性愛を含まないシスターフッドが銘打たれていたり、女性たちをエンパワーメントするような作品は好んで観るものの、私自身に差別意識はないつもりでも、なんとなしに遠ざけてしまっていたのだろう。先にも書いたようにオゾンがリメイク版で主人公とその相手役も男性のキャラクターにしていたから、個人的に取っかかりやすくなったことは否定出来ないが、作品としては全くの別物であったし(オゾン版は大大大コメディ映画)ファスビンダーの作る画は、その映画の物語とは別のところでも魅力が発揮されていると思う。そして完膚なきまで室内劇であることに大興奮だった。
偽れる装い(1945)ジャック・ベッケル @シネマヴェーラ渋谷
自分で制作した洋服にこれまで関係をもってきた女たちの名前をつけていくような、変質的(だがカリスマ性のある)主人公が、アトリエの中をぐるぐると回るカメラワークとともに狂っていく様子が素晴らしい。(性愛による)狂いの先に死がある物語も大変好み。というのは建前で、別ジャンルの推しがパリに洋裁で留学しているという設定なので、パリで洋裁をするということに対してのディテールが深まり大変良かった、同担はみんなこの映画観て~!(オタク)
ショコラ(1988)クレール・ドニ @新文芸坐
とにかくクレール・ドニの映画にでてくる黒人男性はかっこよすぎる(昨年に挙げた『パリ、18区、夜』(1994)も同じく)という言葉に尽きるのだが、主人公の幼い頃の記憶として描かれていながら、危なげで、そして艶やかなところもある彼らを写す数々の場面に魅了された。暗い部屋に佇む人の存在の緊張感とその熱を感じられるのはドニの映画特有のものなんじゃないかと思う。
ラストエンペラー(1987)ベルナルド・ベルトルッチ @シネマ・ジャック&ベティ
満を持して観た…!ちゃんと大きめのスクリーンで…!名作すぎて多くを語りたくないのだけれど、マジで映画を観て眩暈がすることってあるんだなって。世界観に浸り、酔うことができて、いい映画体験だった。
赤線地帯(1956)溝口健二 @配信 / 流れる(1956)成瀬巳喜男 @配信
吉原の女たち。芸者の女たち。同時代に2人の監督が、一つ屋根の下で支え合って生きる女たちを異なる形で作品にしていることに純粋に驚いた。『赤線地帯』を観れば、京マチ子の演じる明るさや若尾文子の強かに生きる賢いキャラクターに力付けられる。『流れる』を観れば、田中絹代の表現するなんとも形容し難い表情や、山田五十鈴の薄幸な演技、その作品のまとう物哀しさに涙する。ここにあげていない他の女優たちの演技も素晴らしくて、それを演出する監督の作品ももっと観たい。けど、成瀬作品を見ると毎回夜も眠れないほど悲しい気持ちになるので、どうしたものか!
ラヴ・ストリームス(1983)ジョン・カサヴェテス @横浜シネマリン
いままでどうしてもカサヴェテスの映画をフィクションとして捉えられなかった。打ち出される邪悪な男性性を、あまりにもリアルに感じてしまい、まるでドキュメンタリーを観ているように、コメディだと思えないからだ。本作品は、いつも通りジーナ・ローランズの演技の素晴らしさはさることながら、これまでのわたしの観てきたカサヴェテス映画にはなかった、いい意味でふざけた演出(劇中オペラ)が、”この映画はフィクションである”と言ってくれたような気がしたのだ。カラックスの『アネット』(2021)を想起したのだけれど、この作品は関係しているのだろうか?激動する映画。
ママと娼婦(1973)ジャン・ユスターシュ @ヒュートラ渋谷
もうレオーといったらドワネル…というのは否めない、というかレオーもトリュフォーの映画じゃなくても、放浪青年役=ドワネルとして出演してるんじゃないの?とも感じてしまうくらいなのだけれど、それが嫌だとか、一辺倒でつまらないということはなく、バチバチにかっこいい映画。あらすじを簡単に言ってしまえば三角関係のお話(というかわたしの好きな映画はほとんどが痴情の縺れのお話)だが、主人公が居候している、タイトルでいうところのママの部屋が、レコードプレーヤーなどの色々なものが部屋の低いところに置いてあって(それも布団から寝ながら手を伸ばせるような位置に)、雑然としていて、とても綺麗だとは言えないが、その堕落した生活感のある部屋で起こっていることを登場人物の皆が皆、おおごとにみせていて、吸い込まれるように見入ってしまったし、別に、登場人物の誰にも感情移入はしなかったけれど、それぞれにとにかくこの三角関係をなんとかするんだという気概が台詞の端々に感じられて見応えのある映画だった。
ヘカテ デジタルリマスター版(1982)ダニエル・シュミット @配信
この映画を観たという人と話したときにどうでしたかと聞いたら、微妙な反応と共に「あんまり好きじゃないと思いますよ。」と言われ、"自分は好きだけどあなたには合わない"なのか、"自分は好きではなかった、ただそれだけ"だったのかはわからないけど、いつも"好きじゃないと思うよ"と言われると、勝手に決めんじゃねー!と思ってしまう質なので、帰って即座に観る。大抵それは外れていて(まあ関係の浅い人から言われることなんかそりゃそうなんだけれど)外交官が駐在先の灼熱の土地で出会った謎の女に狂わされるやつなんか好きにきまってんの!真っ白なスーツに、しっかり固めた髪の毛の、いかにも精悍な男が、服も髪の毛もどんどん乱れ薄汚くなっていく、汗でべたつく額と、必死に女を探すその表情が何とも馬鹿馬鹿しくて良い。姿を消してしまった人がいるであろう思いつく限りの場所を探して回る、やっとのことで見つけても、その相手にはぞんざいに扱われ、また苦しめられる…最初からやめとけって忠告されてたのにね。
利休(1989)勅使河原宏 @配信
利休と豊臣秀吉、三國連太郎と山崎努の、静と動の相対する演技。山口小夜子の出ている映画を観て(伴睦人『杳子』@国立映画アーカイブ)、他の出演作品はも観たいなと思った、きっかけはただそれだったためそこまで期待はしていなかったが非常に面白く観た(まあ勅使河原作品は元々好きなんだけどね)。学生時代、日本史なんか全然勉強してなかったから(他の科目も特段勉強したわけではないが)時代劇(や大河ドラマ)を観てて、たくさん人達や合戦にポカーンとしてしまうことが多いのだけれど、この作品は二人の張りつめた関係性、空気感が丁寧に、冗長することなく描かれていて集中して観れた。時代劇のやんごとなき人の出てくるシーンや描写が好きだ。今年は母に連れられて大友啓史『レジェンド&バタフライ』(織田信長)、北野武『首』(豊臣秀吉)も観て、図らずも安土桃山時代に…(?)
レースを編む女(1977)クロード・ゴレッタ @アテネ・フランセ文化センター
ヴァカンス先での出会いはもういっそのこと割り切って、ひと夏の恋として終わらせるに限る!(エリック・ロメール信奉者)ふたりがまた会えるかもしれないという淡くロマンティックな気持ちを抱きながら、ぐるぐるとお互いを探すシークエンスがとても長く感じ、このあと幸せな展開にはならないだろうなと、なんとなくうっすらと気付いてしまったわたしは、ふたりが再会できたとき、とても悲しくなってしまった。フランソワは自身のコミュニティの範囲で様々なところへポムを連れていくけれど、その行く先々でのポムの馴染めなさ。ポム自身はその場をありのままに楽しんでいるのにも関わらず、フランソワはその馴染めていない様子に居心地の悪さを感じ、またその居心地の悪そうなフランソワをみてポムの居心地も悪くなっていく。しまいには、君は大学に行くことには興味はないか?と聞き出すしまつ。おめ~が惹かれたポムという人間をなんもわかっちゃいね~!君は勉学に励めるような環境で育ったかもしれないけど、ポムはそうじゃない。そうじゃないから、手に職をつけるために(または、あなたと一緒にいるために)今自分にできることを精一杯頑張っているんですけど…!?運命の人かもしれないと勝手に期待したのはそっちなのにね、なんか違かったとか言っていろんな理由つけて離れていくんだ。ポムにうんざりしてもう別れたいと言うフランソワをみる友人たちの目も痛い。心の壊れてしまったポムを見舞いにきた(見舞いくるなよ)フランソワのセリフの端々から滲み出る、まだ自分のことを思ってくれているかという確認の浅はかさ。ダセーからやめな~!
不安は魂を食いつくす/不安と魂(1974)ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー @横浜シネマリン
『苦い涙』以降すっかりファスビンダーへの苦手意識が払拭され、半ば楽しみにしていた気持ちを裏切られることなく、なんて美しく純粋な物語なんだろうと思った。ふたりが一緒にいることの意味、お互いを愛する気持ちと、取り囲む人々からの見る目との齟齬が大きくなり、どれだけふたりが幸せだと感じていても不安が募り精神/身体を蝕んでいく様子が濃密に明示される。このあとに本作品の下敷きとなったダグラス・サークの『天はすべてを許し給う/天が許し給うすべて』(@早稲田松竹)を観たとき、ファスビンダーのこの完成されたメロドラマをあそこまで自分のものにし、昇華させたのかと思わず比較して再度感動してしまった。
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tissoku · 5 months
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横浜シネマリン舞台挨拶決定!!
12月2日(土)20:00の回終了後、和田光沙さん、長尾元監督
12月3日(日)20:00の回終了後、仁科貴さん、長尾元監督
遅い時間ですが、ぜひお越しください!
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ichinichi-okure · 11 months
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2023.6.7wed_tokyo
今日はお仕事お休みの日。待ち遠しくて朝の3時には起きてしまいどんな予定にしようか、やっておかねばならないこと、やりたいことにかかる時間や優先度合のパズルをしながら予定を組む。昨日から考え初めていたのに、まだ決まらない。
外が白んできて、なんなら今から映画を見ようか!なんて元気な心の声が聞こえるも応えず寝落ち太陽燦々の7時。
母に暇電をかけたところ出ず、また寝てしまう。9時。 このままだと大事なお休みの1日を台無しにしてしまう!取り返すべく今日は分刻みホリデーにすることを決めた。
🏃‍♀️本日のタイムライン 9:00-11:30  身支度と洗濯/掃除/衣替え 11:30-13:00  BONUS TRACKでちょい確認事、移動 13:00-14:00  横浜にて皮膚科 14:00-16:00 フリータイム 16:20-18:30  (大本命!)横浜シネマリンで映画 19:00  実家でご飯 _ _ _
バタバタと外に出るまで片付け掃除をスタート。 床にものが落ちてない状態にしたかったのに、身支度に時間がかかり結局散らかったまま出る。洗濯と衣替えはできたので良し!朝ごはんも食べてない。
BONUS TRACKに出勤途中にあった、小さな森が刈られていて少し残念に思う。着工前の土地にぐんぐん伸びていた草木たちよさようなら。
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皮膚科DONE。ここからはお休みを満喫コース。月曜日にBONUS TRACKのキッチンでお弁当を販売されているYAWN(本当に本当に美味しいから食べに来てください!)のまりさんと、お久しぶりにあったビデオさんに、シャンタル・アケルマン作品をオススメいただいた。予告を見てとても気になった。 今は横浜シネマリンにて上映祭が行われていると分かったので、今日の大本命は「囚われの女」鑑賞だと、ここはマストで決めていた。
その前にお昼ご飯を食べるところを道端に停まりGoogle Mapで探す。その場でしか食べれないものを…、横浜で食べるか映画館周辺で食べるか、何が食べたいか…。 ある程度絞れたので、伊勢佐木長者町に向かう。
老舗喫茶を目指す途中、駅構内のとても不思議な道に遭遇。消失点がある。大きな地下駐車場のためこのような設計なのかな。反対側に向かって歩いていると、脳内の声漏れまくりおじちゃんが近づいてくる。「なげーよ、なげー、一回休憩」と駐車待合室にどかっと座ってた。確かに長い。永遠に続くように思えちゃうよね。
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煙草が吸える喫茶店だった。煙草のにおいは嫌いではないけど服ににおいつくのは好まない。くらっとするくらいの匂いレベルだったらどうしようかと思ったが、時間をかけて探した自分を裏切らまいと入店。全然におわない、よかった。胃の形をした大きなオムライスを食べた。
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囚われの女を見る。R18指定だったのでThe Dreamers並みの性描写満載だったらなんだか恥ずかしいわ…!と暗くなるまで帽子を被った。実際そんなシーンはさほどなく、圧倒的長回しの数々、彩度の低さ、画面の暗さに根負けして目を瞑りそうになる。パートナーとのすれ違いに気づいた時の心情、疑心暗鬼になる瞬間、他人との向き合い方、自分の見られ方。普段表に出さないようにしている自意識が、ずるずる引き出されてしまうようだった。
もう帽子は被らず外に出て、実家でのご飯も数日前に約束していたので向かった。姉も仕事終わりに来るのだそう。Very Happy🐟 ウェルカムドリンクだよ〜と出してくれた冷凍フルーツに炭酸水を入れたのがおいしかった。
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マンションに通る夜風が本当に気持ち良い。母のご飯はシンプルで何皿も出てくるので楽しく美味しい。3時に食べたオムライスによりあまり食べられなかったけど、満たされた。私が元通りになる時間。 帰り際母の言動にムッとする。電車の中でこの日記を書き始めてどうでも良くなり、LINEで連絡を取る。愛を伝えるのは難しいねとのことだったけど、この件についてはどうだかな!いつもありがとうとはいつも思っているので、そう返した。
休みはこころも体も元通りにするためにあると思うので、ちょっと冒険して、休憩する今日のような日が過ごせてよかった。スケジュール的にはハードだったけれど整ったのでまた明日も頑張りたいと思いながら寝そう。部屋は散らかったままです。
-プロフィール- 塚崎りさ子 26 東京 BONUS TRACK イベント/コワーキングスペース運営 https://instagram.com/______ri___ https://twitter.com/seimaibuai55
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single8movie · 1 year
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4.23㊐横浜シネマリンにてトークイベント開催‼
4月22日㊏より上映がスタートする横浜シネマリン🎬
翌23日㊐は、上映後に小中和哉監督と利重剛さんのトークイベントがございます‼
小中監督と利重剛さんは成蹊高校映画研究部の同期✨
映画『Single8』で、桑山隆太さんが演じた映画マニアの佐々木は、利重剛さんがモデルだそうです。
そんなお二人の青春時代のこぼれ話も紹介されるかもしれません♬
この機会、ぜひ横浜シネマリンにお越しください。
🎥横浜シネマリン上映スケジュール
📍4月22日㊏~4月28日㊎ 
1日1回上映 連日12:55~
※29日㊏以降は劇場に直接お問合せください
🎁入場者プレゼント
ご来場のお客様に、小中監督が描いた「絵コンテ」+「クランクアップ時メインキャスト集合写真ポストカード」セットをプレゼント‼
(数量限定、なくなり次第終了)
🎬トークイベント
📍4月23日㊐ 12:55の回上映後
登壇(予定)小中和哉監督×利重剛さん(俳優・映画監督)
🚉JR京浜東北線 関内駅北口徒歩5分 🚇横浜市営地下鉄 伊勢佐木長者町駅 3B出口徒歩2分 🚊京浜急行日ノ出町駅 徒歩5分
オンラインチケットご購入はコチラから
➡ https://eigaland.com/cinema/163
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『Single8』小中和哉監督x利重剛x手塚眞 映研が教えてくれたこと【Director’s Interview Vol.295】|CINEMORE(シネモア)
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t-life · 1 year
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昔一瞬だけHMをかじってから全く聴いてないんだけど、この人はちょっと特別にカッコ良いギターを弾いた。初めて聴いた時には、既に伝説になっていたけど。 (横浜 シネマリン) https://www.instagram.com/p/CnrDd6ePCMa/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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jindongkt · 1 year
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チャン・リュル『福岡』 at 横浜シネマリン ZHANG. Lu ‘Fukuoka’ こちらも2回目。俺は本作が一番好き。 俺も、クォン・ヘヒョに苦虫を噛み潰したような顔で「いい加減ちゃんと歳を取れよバカ野郎」って言われたいです。 https://instagr.am/p/CnGnKa0yDtO/
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steve0620 · 2 years
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The Rolling Stones Rock and Roll Circus 🎤🎸🥁🎪🇬🇧🇺🇸 #rockandrollcircus #therollingstones #johnlennon #ericclapton #jethrotull #thewho #tajmahal #jesseeddavis #mariannefaithfull (横浜シネマリン) https://www.instagram.com/p/Ci2bUG6J50nRLOEVmjhM1G3GmMHbAwXQ37zLt80/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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shimbashi-bonsoir · 2 years
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宮台さんと伊藤さんのトークを後2時間聞きたかった! 本編も素晴らしく面白い。出てくるTシャツ全て欲しい、餅米美味そう、と思うけど、そんだけじゃダメなのも #ムラブリ (横浜 シネマリン) https://www.instagram.com/p/CervAs3P-Un/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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primalarrow1226 · 2 years
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ようやく休みに。長者町の横浜シネマリンで「教育と愛国」鑑賞後、横浜西口ジョイナスのビルの方の地下にある「大龍」で午餐。この後西口のT-JOY横浜で「2020東京オリンピック」を鑑賞。 (中国屋台料理 大龍) https://www.instagram.com/p/CeddRafPiCY/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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marverous7285 · 2 years
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https://zappamovie.jp (横浜 シネマリン) https://www.instagram.com/p/Cd2fST3pCJz/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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シ���ンタル・アケルマン
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GWからシャンタル・アケルマン映画祭にひょこひょこ通っていて、先日全部観たので記録を残してみる。
渋谷では19日で終わりですが、しばらくいろんな映画館を回っていくみたい!(多分この文章ネタバレだらけになってしまうと思うので、ご注意ください…) 去年「ジャンヌ・ディエルマン」が確か横浜シネマリンで上映されていたんですが、終わった後に知って、「え!こんなのやってたの!」って後悔していたので(シャンタル・アケルマンもこのタイミングで知った)、観られて本当によかった!(観られる時に観るっていうのがなんでも大切ですね…) 今回上映されていたものの中で特に好きだったのが、「ジャンヌ・ディエルマン」と「アンナの出会い」。 撮り方とかの発想の奇想天外さに心酔して忘れられない映画になることが多いですが、「ジャンヌ・ディエルマン」はまさにそれ。
「アンナの出会い」は語られているテーマ���とても好きです。 ▼ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コルメス湖畔通り23番地
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「シャンタル・アケルマン映画祭」Twitterより引用
日の登り切らない朝に目覚める/靴を磨く/息子を起こす/朝ご飯を食べさせる/息子を見送り買い物へ/昼食の準備/近所の赤ん坊の面倒を見る/雑多な家事をして男を迎え入れる(ばいしゅんをする)/風呂に入ってついでに風呂掃除/再び買い物に行ったりする/息子と夕食を取る/息子と散歩へ/寝る/(空白の時間はボーッとする)
ジャンヌの第一声は、多分映画の始まりから2,30分くらい経った時に言う「食事に集中して」っていう息子への語りかけ。
抜けているルーティーンもあるかもですが、大体専業主婦ジャンヌの毎日は上の内容で構成されている。些細な違いはあれどコピペしたような日常が一日目・二日目とダラーっと流れてゆく。
しかも定点カメラでずっと撮られているので、”被験体を観察している”もしくは"誰かの日常を覗き見ている"みたいな撮り方で、特におかしなことはしていないのにそこはかとなく不気味。
事前情報をあまり入れずに観に行ったので、正直「え、なにこれ?」という感覚にはなって、しかも同じ日の1本目に「囚われの女」を観て2本目だったこともあって集中力は結構低かった… でも、2日目の終わりにマッシュポテトを作れなかったところからだんだん不穏になっていって、3日目にルーティーンが崩される出来事が多発する。 靴磨きの道具を床に落とす/子守りの赤ちゃんを抱っこしてみたら死ぬほど泣かれる/コートのボタンを付け替えたいのに理想のボタンがどこにも売っていない/馴染みのカフェの"いつもの席"が空いていない/コーヒーがうまく作れない などなど… 別に流そうと思えばいくらでも流せそうなことで、俗に言う「ツイテない日」なんですが、ルーティーンが全てのジャンヌはストレスが頂点に達して、寝た男を衝動的に殺しちゃう。
本当にこんな映画を撮ろうと思う発想が尋常ではない、25歳で。 印象的だったのは、生活にはあまりにも空白の時間が多いということ。ジャンヌは必要最低限しかセリフがないし、バックで音楽も流れないので、生活ってこんな静かだったんだってふと思う。そして、思えば自分も誰かの会話(YouTubeとかサブスクとかね)で自分の空白を埋めてただけだって気づく。 心の動かない場所に人生はやっぱりないと感じる。
ルーティーンは物事の効率化のために作られていくものだと思うけれど、繰り返すたびに無機質な緊張感が増して、私自身が生活で登場する道具と同じように、マシーンになる。 私自身ルーティーンがあってもなくてもストレスが生まれて苦しんでしまうタイプですが、心が動く場所にいつでもいられればいいなと思う。
<2回目鑑賞後>
ああ…もう一回集中力がある状態で観たいな…と思ったのでもう一度鑑賞。
インスタで同じくアケルマン作品をコンプリートされた方とお話しして、受け取り方が全然違ったというのも面白かったので、そういう所も織り交ぜながら。 1回目よりもジャンヌの生活を"自分ごと"として考えながら観ていたんだけど、最初に観た時よりもジャンヌの喜怒哀楽の波がしっかり描かれていたことに驚いた。
1日目はベートーヴェンを聴いて鼻歌歌ったりしてたし。ぼーっと空を見つめる空白の時間があるのは、よく観ると3日目だけだった。 (つまりジャンヌは一貫して寡黙な人間である、というよりは"例の"3日目が鬱DAYだったんだということ) 喜怒哀楽の波が絶えず繰り返し押し寄せる命を、淡々とした生活で埋めている。
安定しているはずがない心を、安定させていないとダメだ、って感じてしまう。私たちは生活という枠に嵌め込まれているから。(ストレス、ストレス、ストレス…) やっぱり生活と心はどうも折り合いがつかない。 ▼アンナの出会い
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「シャンタル・アケルマン映画祭」Twitterより引用 「アンナの出会い」は4作品目に観たんですが、それまでに観た作品で感じていたアケルマンの価値観とかモチーフが繋がっていくみたいで心地よかった。
ずっとメイ・サートンの「独り居の部屋」を読んでいることもあって、人生の曲がり角を過ぎた女性のアイデンティティとか幸福観の話に敏感で、スッと内容が入ってきた。
内省的で孤独を引き寄せているアンナ…
・裸になること
「私、あなた、彼女」がリフレインするように感じたのが、裸になることについての描き方。
アンナは最初に出会った男とホテルに帰るんだけど、結局「恋じゃない(ニュアンスでしか覚えてないな…)」と言って裸になることを拒む。(男にも早く服を着て、と言う)
でも部屋に一人でいる時とか、お母さんと寝る時には裸一貫になる。 「私、あなた、彼女」でもアケルマン自身が裸になってずっと過ごしているシーンがある。
裸になることというのが精神的な解��のモチーフとして作品をまたがって描かれていて面白かった。
でも「アンナの出会い」の作中に「寝ることなんてなんてことない」ってセリフがあるのね。これは「ジャンヌ・ディエルマン」にもあったセリフなんですが。 裸になる・ならないにはすごい繊細な意味合いを持たせているのに寝ることはどっちでもいい、って言うのはなんか不思議。
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「シャンタル・アケルマン映画祭」Twitterより引用
・わからないふりをする視線
「囚われの女」と繋がっているように感じたのが、「アンナの出会い」のアンナと、「囚われの女」のヒロイン・アリアーヌの視線。
二人とも男性からの愛とか、家父長制的な考え方を押し付けられている立場なのですが、二人とも語りかけられているとき、絶妙にわかっていないフリをした目をしてる。
絶妙なにわかっていないふりをする目/賢く、煩わしさを避けている目/目の奥が閉じている目/諦めていて、期待をやめた目 賢いからわかっている。愛してくれる人を愛し返したり、家父長制という構造に則って、結婚して子供を得たりするのが一番煩わしさがないと言うことはわかっている。
わかった上で、内省してみた時、自分の求めているものが、効率が悪いというか、世間の王道からちょっと外れてるとか、回り道をしているとか、周囲の人を落胆させるかもしれないとか、思う。 だからどこかぼんやりした視線で、わかっていないフリをしながらやり過ごしている感じがする。誰を責めるわけでもなく、どうしようもなく疲れてゆく。 特に、「アンナの出会い」ではアンナが旅の道中で4人くらいの男性と出会って会話を交わすんですが、アンナは黙ってスポンジのように悩める男たちの話を体に染み込ませていって(染み込まされていって) 、アンナの自我はどこへ行くんだろうと思った。 ちょっと片言の、最後の"where are you now?Anna."
5作品の中では最後に観た、「オルメイヤーの阿房宮」はラストの長回しがすごい良かった。映画に点数はつけないけど、自分的には本当に跳ね上がった。
家父長制と白人至上主義…それらに縛られた男なりに娘を本当は思っていたこと。男の弱さ(叫び・激昂することで強く見せていた)。頬に指す太陽の光と震えるまつげ。
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❤︎me→https://lit.link/asaiii
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背景イラスト 
「赤い風船」アルベール・ラモリス
『こども映画教室 シネクラブ@横浜シネマリン2019』チラシ
映画の中のフランス・パリの町に入り込むように、劇場で映画を観て欲しい!という気持ちを込めて描きました。
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underdocsjp · 3 years
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『ジョーン・ジェット/バッド・レピュテーション』横浜シネマリン での再上映日程が決定
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一時上映を中止していました #横浜シネマリン での再上映日程が決定しました! 
 ■ 2/20(土)~3/5(金)
https://cinemarine.co.jp/joanjett/
お見逃しなく!!
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tacomar · 4 years
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つげさんぽ 公開初日の監督出演者リモート舞台挨拶が気になって、横浜シネマリン。 佐野史郎さんが繰り返す『被害者的な視点発想だけでなく、一歩間違えていたら加害者にもなっていたかもしれないかも』という歴史理解で鑑賞。 戦争反対・平和希求の波を伝えてゆく水分子でいようと決意する真夏の夕方。 いや、音楽が主題なだけに俺は「音波を伝える空気」でい続けよう。 BGM:ピアノコンチェルトNo.8"悲愴"第二楽章 #つげさんぽ #横浜シネマリン #お母さんの被爆ピアノ #佐野史郎 #武藤十夢 (横浜 シネマリン) https://www.instagram.com/p/CDn8mnBh-qu/?igshid=10vwuvjd4b56h
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jindongkt · 1 year
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2回目の、チャン・リュル『柳川』 at 横浜シネマリン ZHANG, Lu ‘Yanagawa’ 最後のニー・ニーのカットいいねえ。『福岡』と違い固定キャメラメインで、ボートのシーンを始めヌルヌル動くショットが美しい。それがあってのニー・ニーのあのダンスだもの。 過去作もっと上映されていい監督。 https://instagr.am/p/CnGmcPmyBc7/
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afroninja · 6 years
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『見栄を張る』 6/15〜 和歌山公開!
6月9日より大阪での公開が始まった『見栄を張る』ですが、6月15日より遂にロケ地の和歌山で公開が始まります!
和歌山ロケ長編映画『見栄を張る』
監督:藤村明世 主演:久保陽香
6/15(金)〜6/28(木) @ ジストシネマ和歌山
上映スケジュール
6/15(金)〜6/16(土)  19:00〜 6/17(日)                   9:40〜 6/18(月)〜6/21(木)   9:40〜 / 19:00〜 6/22(金)〜6/28(木)  未定
ジストシネマ和歌山 http://www.o-entertainment.co.jp/xyst_cinema/wakayama/schedule.html
 この映画は2015年12月下旬〜2016年1月頭にかけて撮影したのですが、とあるご縁があり、殆どのシーンを海南市、紀美野町、有田川町で撮影しました。
撮影中は海南市、紀美野町、有田川町の皆さまに大変お世話になり、地元の皆さまと一緒に作り上げた映画だと思っています。お世話になった皆さまのご期待に応える為、海外の映画祭で上映したり日本全国で公開して和歌山の風景や人々の美しさを多くの人に観てもらいたいと思い、今まで頑張ってまいりましたが、ジストシネマという大きな映画館での上映という形で戻って来れて作り手としてこんなに嬉しい事はありません。
書きたい事はたくさんあるのですが、15日と16日は藤村監督の舞台挨拶もありますので、劇場にお越し頂き、監督の声を聞いて頂ければと思っております。
そして、和歌山公開を記念して、14日と17日にはこんなイベントも開催します!
下北沢トリウッドでも17日まで、大阪のシネ・ヌーヴォでは29日まで引き続き上映してますので、お越し頂ければ嬉しいです!
下北沢トリウッド http://tollywood.jp/tt.html
シネ・ヌーヴォ http://www.cinenouveau.com/schedule/schedule1.html
この映画は撮影当時25歳の女性が監督した28歳の女性の物語です。藤村明世監督は是枝裕和氏プロデュースの『十年 Ten Years Japan』の監督の一人に選ばれた注目の若手女性監督です。ぜひ、若い女性に観ていただきたい映画です。
和歌山での公開をきっかけに今まで以上に多くの人に届く事を願っています!
『見栄を張る』プロデューサー 今井太郎
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