Tumgik
39lucy · 9 months
Text
中洲の夜は警察官やパトカーが多い。中洲で働いたり、客として通ったりした事のある人にはお馴染みの景色だと思うが、初めて見かける人は驚くかもしれない。
中洲は1軒目に行く様な店は少ない、すなわちそれなりに飲酒した人達が集まっている。そうすると些細な事でトラブルになりやすい。
そういった街の雰囲気に乗じてか、故意に悪い事をする人も多い。
お水の業界では売掛や送りといった、ざっくり言うと後払いの様なシステムが存在する。
だいたいは信用のあるお客様にしか対応していないサービスだが、これを悪用しようとする人がいる。
私が中洲で初めて働いた店はスナックで、ママが中洲の別店舗で働いた後に独立して数年経った店だった。
その日は店がゆっくりで、私ともう1人のスタッフを残し、ママは近隣の知り合いの店へ挨拶兼ねて飲みに行っていた。
一緒に入っていたアヤちゃんと「もしこの店に出勤中に街にゾンビが溢れビルにも侵入してきたらどう対処するか」というテーマで盛り上がっていた時だったと思う。
1人のやや酔っ払いの男性が入ってきた。50代のサラリーマン風である。
私は非常に人覚えが悪い上に出勤日数が少ない為、超常連でないとパッと見では誰か分からない。咄嗟にアヤちゃんを見る、どうやらアヤちゃんも分からない様子だ。
ウチらが分からないだけか…?
この店は会員制の為、常連ではない場合はどなたかの紹介かを確認する。
「いらっしゃいませ、ご紹介ですか?」
男性客は以前ママの働いていたスナックの客で、この店をオープンしたと聞いたので来たとの事だった。店名も間違いなく、ママの名前も間違っていない為、カウンターへ案内した。
ママに「お客様が来店しました!以前のお店のお客様で初来店だそうです!」とテキストで連絡する。
初回のお客様へは、ボトルキープかハウスボトルで飲まれるかを確認しており、そのお客様はハウスボトルを飲まれる事になった。
ハウスボトルで飲む場合、基本はセット料金のみ。しかし、どこのスナックもだいたい時間制限がある。
おおよそ90分程なので、ママもそれまでには戻るはずだ。
お酒を作って、以前のお店の話等を尋ねたりしながらお客様にご一緒にお酒を頂いても良いかお伺いを立てる。 基本、スナックでハウスボトルで飲む際はホステスさんに何か勧めるのが一般的である。 何故なら、セット料金だけでは店側は赤字なのである。 大体、ビールの小瓶が1,000円ほどで多くのスナックでは女の子はビールを頂くと思う。
しかし、この客はあからさまに怪訝な顔をした。 「お前ら、二人で1本までだ!」 初対面でお、お前ら呼び〜〜〜?しかも1本? アヤちゃんとモガタ、1本なんて冗談や誇張なく秒である。 しかし、頂けるだけありがたい。 中洲で働くお姉さんたちは口を揃えていう言葉がある。 「酒の一滴は血の一滴」 そういう事だ。ママが戻るまでお客様を留めるべく小瓶のビールを二人で舐めるように頂く。 1時間ほど経った頃だろうか、他に来店もなく舐めるビールも底をつきそうになった時、その客がチェック!と発した。
この店では会計の権限はママにあり、私たちでは出来ない。そのママもまだ帰ってきておらず、もう少しお待ち頂くように伝えるが客は帰るの一点張り。ママに電話するともう少しで帰ってくるから!お待ちいただいて!との事だったが帰る姿勢は変わらず。 仕方なく、会計を行い合計金額を書いた紙を提示する。 金額はセットと私たちが舐めるように飲んだ小瓶のビール一本だ。 「送りで、住所はママに聞いて」と客が言う。いくら前の店で知り合いでも、この店には初来店、名刺も出してくれない人に送り対応はできない。
説明すると客はかなり不服そうに、これで!!と札をカウンターに叩きつけると同時に店を出ようとする。足りない!
足りません!!と止めるも振り払い出ようとする客を止めながら、カードも!クレジットカードも使えますから!!!と伝えると コレで払っとけ!!!とまたカードをカウンターに叩きつけて出て行こうとする。nimoca!!!(西鉄が出している交通系ICカード) カードを確認しているうちに店を飛び出した客を追いかけ、これ!!nimocaです!!nimocaでは支払えません!!!と叫びながら、店を出て客を止めるボディコンにパンプスを着たアヤちゃんと私。 エレベーターのボタンを連打する客を止めながらお支払いしてください!と叫んでいるとエレベーターの扉が開く。 クソ!!ここまでか!!と思ったら、乗っていたのは当店のママ!
この人、お金払ってくれないんです!!と伝えると、分かった。とりあえず店に戻ってて。と冷静なママ。 興奮冷めやらぬ我々は、文句を言いながら片付けをしていると、ほんの5分ほどでママが店に戻ってきた。 結果としては、足りないが手持ちの現金を全て支払ってもらったとの事だった。 聞くと前の店にも数えるほどしか来たことがなく、請求書送りで支払い対応できるようなお客様でもなかった様子。 その後、私とアヤちゃんはこういう場合は自分たちでどうにかしようとせずにすぐに警察を呼ぶように!とお叱りを受けて終わった。 しかし、そのサラリーマンがなぜこの店にわざわざ来たのかは謎のままである。 もちろん、私が知りうる間には再来店はなかった。 ちなみに、ゾンビが来た時の対処法は店の食料を持って、カラオケ用のマイクと酒の瓶を武器として持ち出し、ビルから脱出すると言うものだったと思う。
3 notes · View notes
39lucy · 1 year
Text
城一裕展
木、紙、金属、磁器
予め吹き込まれた音響のないレコー ド
Wood, Paper, Metal, and Porcelain-A record without prior acoustic information -J
会期: 2023年2月14日 -2月26日
城さんの展示とトークを大手門のギャラリー、エウレカに観に行った。
そこでは、同じ曲が刻まれた4種類の異なる素材で出来た4枚のレコード状の物とピザやケーキの様にカットされたアクリル板のレコード状の物が展示されていた。
4枚のレコード状の物には現段階で人類最古の録音と確認されている 1860年にフランスの発明家レオン・スコットが記録した「月の光」というフランス民謡が刻まれている。このレオン・スコットが記録した曲が「月の光」であるという事は、なんと148年後、20世紀と21世紀を跨いで2008年に判明したのだ。
私は1回目に展示を観た際は、レオン・スコットは後世に残したくてなんとか記録したのだと思った。
人間って残したい、記録したいという欲求がある生き物なのだろうか、私も些細な事も残したいと思う事がある。この欲求について私は非常に人間くさくノスタルジックな感覚を持つ。
しかし、2回目の来場で城さん、カラマリインクの尾中さん、エウレカの牧野さんのトークを聞いて思い違いを知らされる。どうやらレオン・スコットは音を形として見たいという気持ちで残した様なのだ。発明家はもっと違う所で考えていた。
今回、城さんが用意したレコード状の物はタイトルにもある通り素材が木、紙、金属、磁器 となっており、ギャラリーで配布されていた説明文には、磁器は1000年という年月残ると記されていた。城さんにはこの磁器を残したいという気持ちがありそう。
確かに磁器や陶器は博物館に展示されている様に非常に古い物、土器なんかは1000年どころじゃない太古の物も現代に残っている。
ここからはトークを聞いた私の想像の話。
この城さん作、月の光の磁器が例えばレオン・スコットの記録と同じ位、いや、もっと経った例えば500年後とかに見つかったとしたら?
私は二つの可能性を感じた。
一つ目は、月の光というフランス民謡がいつ頃のどんな曲なのか、という情報が残った世界で見つかった場合。
磁器は粘土を使う為、きっと素材を調べれば日本の九州で作られた物だと分かるだろう。そうすると学者達は混乱すると思う。
18世紀に作られたフランス民謡が21世紀の日本の焼き物に刻まれている。なぜだ!?日本でリバイバル(といえるのか)ヒットしてこの様な物が作られるまでになったのかもしれない。音楽史を揺るがす事態になるかもしれない。いや、もしかしたら地質学も揺るがすかも。
二つ目は月の光という曲について影も形も情報がない世界で見つかった場合。
これは簡単、たぶん21世紀の日本、九州でこの曲が作られたと認識されそう。でもこれはこれで前後の音楽史なんかの記録が残っていれば、なんでこんな曲調が?ともなりそうである。表面にフランス語も記載されてたから、やっぱり混乱かな。
私は常々あらゆる物が、例えば100年後とかに発見された時になんやコレ!?ってなるんじゃないかなぁとか考えている。特に大量生産された物でない、個人の作った物、彫刻作品なんかそんな感じ。
また、現状でほぼ最新みたいな物や場所にいる時、そうだな、銀座なんかに降り立った時に100年前の銀座を闊歩していたモガ、モボ達は絶対に日本で一番イケてて素敵な場所にいると思っていたに違いない。今の銀座の新しいビルなんて思い描いていなかったかもしれないし、私も同じ様にこれから100年後にどんな建物がそこにあるかも想像出来ない。
他には現在〇〇であろう、と認識されている物が研究が進んで実は⬜︎⬜︎だった、みたいな事もどんどん増えるのではないか?なんかもよく考えている。(恐竜に毛が生えてたとかあったよね)
そういう事が起こりうる様な物を城さんは作ったと思った。城さんはとんでもない物を作ってしまったかも。
磁器は1000年持つ、だけど展示された中では現状一番危うい存在にも思えた。
木も紙も鉄も、レコードプレイヤーへ乗せたりする際の不注意で壊れる事はかなり少ない���思う。
しかし、磁器は落としてしまえば割れて姿を変える。素材としては耐久年数が一番だが、扱う人間の手によって一番傷つきやすいと思う。
確か5枚位作ったと聞いたけど、全部割れる前にまずは500年後に届いて欲しいと思う。
Tumblr media
0 notes
39lucy · 1 year
Text
学生時代、居酒屋でバイトしてた時の話。
その居酒屋は一階がテーブル席と小上がり、二階は最大100名までセット出来るお座敷があり一階は昼間はランチ営業、夜は定食と居酒屋、二階は予約の宴会場として営業していた。
なお、三階以降は大将家族の自宅となっていた。
その日、夜に珍しく二階の予約がなく、一階のみで営業していたところ、6名程の来客があり一階に空きがなかった為、仕方なく二階を開ける事になった。
二階を開けるとトイレ掃除がそちらでも発生するので嫌なのだ。同僚のトミヤマンに行って欲しいな〜と思っていると奥さんから声が掛かる。
「だんごちゃん、二階の〇〇の間にご案内してそのまま担当して〜」
私はそのバイト先で毎日長い髪の毛を頭上でお団子にしていたので、大将夫妻はじめ板さん等にだんごちゃんと呼ばれており、その他のバイトスタッフにはモガちゃんと呼ばれていた。
二階には料理を運ぶリフトがあり、そこに一番近くコンパクトなお部屋にご案内する事になった。
二階で予約がある際は少なくとも2人体制でやるのだが、その日は予定がなかったため二階担当のお姐さんは来ておらず私1人で開ける事になった。
その為、リフトや冷蔵庫、またトイレに近いお座敷へのご案内となったのだ。
ちなみに店はウナギの寝所の様な細長い造りで、奥行きはおおよそ3ドア編成の電車一両分まではないが2ドアよりはある位、奥のリフト側には板場に続く階段、反対側が店舗正面入口からの階段がある。
料理もお酒もひとしきり出し終え、リフトすぐ近くでお客様のいる座敷から声を掛けられてもすぐ分かる位置の冷蔵庫の上で伝票を書いていた。
フッと何か声が店舗入口側から聞こえた様で、一階のレジから奥さんに呼ばれたかな?と思い顔を上げる。そうすると次に
「〇〇〜〜〜〜〜」
と私の下の名前を呼ぶか細く高い声が聞こえた。それは一階からではなく、三階へ上がる階段の奥から聞こえる。
おかしい。この店で私の下の名前を呼ぶ人はいない。そして、奥さんは一階にいる。大将は商工会の会合でいない。この店の一人娘のお嬢さんは帰ってきていない。三階にはすなわち人はいないのだ。
そう考えているとまた同じく階段の奥から
「あはははははは〜〜〜〜〜〜」
と先程と同じか細く高い笑い声が聞こえた。
と同時に生温く湿度の高い空気の塊の様なモノが足の間をすり抜けていく感触とドブの様な、植物が腐った様な、とにかく嫌な臭いが漂ってきた。
絶対的に嫌な感じにめちゃくちゃビビって、お座敷のお客様をほったらかして板場への階段を駆け降りた。
板さん達は急に顔面蒼白で降りてきた私を見て料理に異物混入か何かの不手際があったか!?と聞いて来たがそんな事は無く、今起きた事も上手く説明出来ず、なんか呼びました?とかテキトー���聞いてみたところ、お客様をほったらかして頓珍漢な事を言う私はただ叱られて二階に戻された。
戻った二階は臭いはほぼ無くなっており、お座敷のお客様の楽しそうな声だけが聞こえるだけだった。
この店は都市開発の範囲内だった為、建物丸ごと今は既に存在しない。
1 note · View note
39lucy · 1 year
Text
飛うめに週4.5回行ってた時の昼休みの話
その頃の会社は新天町の飛うめ、通称もがたの社食から近く週4.5回はランチで通っていた。
春先から初夏くらいまでは13時からの休憩で飛うめに行くとほぼ13分で食事が終わるので徒歩15分弱の大濠公園のお濠まで散歩したりしていた。
その日は前日まで大雨で、朝も少し小雨がぱらついていたが散歩時間にはすっかり晴れていた。
そして、その日は近所の小学校が早上がりだったのか、まだランドセルに黄色のカバーをつけた一年生の子たちが数人歩いているのを見かけた。
お濠は車道と歩道から数段降りた所にも遊歩道があり、お濠と遊歩道の間に柵などは無い。
2人の一年生らしき子たちが遊歩道を歩いていた。
お濠の水位は大雨で嵩増ししており、尚且つ初夏のため蓮が生い茂っていた。危ないなぁ〜と眺めていると1人の子がググッとお濠に近づく。
「めちゃくちゃ水いっぱいある!!どれくらいあるとかいな!!すげー!」
危ないな、、、危険な香りがする。
するともう1人が
「オレ傘もっとー!!これで深さしらべよー」
最悪の提案だ。もちろん2人は嬉々として手持ちの黄色い傘をお濠に差し込んでいく。
きっとこの子たちの持ち物の中で長い物ランキングかなり上位にランクインしているであろう傘。しかし、キミたちの傘はせいぜい50cmくらいである。お濠の深さには敵わない。
マズイな、、これ止めに入った方がいいか!?でもなぁ、、不審者みたいに思われてもな、、とりあえず見ていると近くに人影を見つけた。
杖をついた老人も離れた遊歩道で見張っているではないか。
そしてもう1人、遊歩道に降りる階段と歩道の間から私と同世代くらいの人もジッと見ていた。
我々の間に緊張が走る。こいつらまじわるそう、いらん事しいや。でもこれが一年生。落ちんでくれ。
3人の大人の気持ちも知らず、その子らは片手持って!とか言いながらもっと深くまで傘を差し込もうとしている、3人がだるまさんが転んだの様に一歩進む。
コレはもう危ないかも!と駆け寄ろうとした瞬間
「なんかあきた!もうやーめよ!」
「そしよ!!」
そう言って2人は傘を引き抜き、遊歩道をタタタターーッと駆けていった。
我々大人3人はホッとして、それぞれ進むべき方向へ進み始めた。
一言も交わしていないけど、明らかに同じ気持ちだった。
ああいうのを目の当たりにすると、本当に旗持ち当番さんとか通学路以外を歩かせないのとかめちゃくちゃ大事だなって思ったし、近所だったらタイミング合えば通学見張りボランティアするわ、、って思った。
1 note · View note
39lucy · 1 year
Text
不動産会社で働いてた時の話。
その日は市内の社長が戯れに購入したすげーボロアパートの物件に鍵を取りに行く様に言われて向かった。
そのアパートは戸数は少ないが鉄筋コンクリート造(RC造)の建物だった。
既に入居者は退去済みで工事が始まっていた為、物件は工事現場で設置される防音と書かれた幕が張られていた。
前日に上司と同物件に行き空き部屋の撮影も行っていたので、おおよその建物の構造も認識しており、工事現場の職人さんとも面識があったので気楽なつもりで向かった。
現場に着くとなにやら昨日と雰囲気が違う。
そのアパートは道路から少し高くした土地に建っており、道路から一階は見上げる位置にある。その為、階段を登らなければならないのだが、登って気付いた事があった。土曜の為、昨日いた職人さん達はみなお休みだったのだ。
昨日は人の気配があったこの建物もそれがなければ廃墟の面持ちである。
また、このアパートは直前まで住んでいた人を除けばその他の部屋は数年前に退居が済んでおり、一部の部屋には室内に驚く様なサイズのシロアリの蟻塚が出来ていたり、十数年前のグラビアアイドルのカレンダーポスターが貼られている様な状態だった。
指示された鍵は道路から建物入口まで外階段を登り、建物内部の階段に設置された鉄の扉の中にあるメーターを開いた所に置かれていると聞いていたので、さっさと終わらせるべく向かう。
鉄の扉の取手はボタンを押すと飛び出すものだったが、古い物件の為か固く錆びついていた。
グッと押すと取手が出て来て、それを持ち引っ張ると錆び付いた音を立てながら扉が開く。
開くと中に丸いメーターがあり、その蓋を開くと鍵の束が置いてあった。
コレか、と手を伸ばして取ろうとした時に鍵束を滑らせ落としてしまった。
鉄の扉はちょうど私の胸の下あたりが底辺だったのだが、中は足元くらいまでのスペースがあった。
その下の部分に鍵束を落としてしまったのだ。
前屈しようにも少し身長が足りず苦戦していると背後に何かの気配を感じた。
ソレは人の様であり、人でない様でもあった。
今日は工事も休みの為、入った時に職人さんがいると思ってお疲れ様でーすと声を掛けた際にも返事がなく、もちろんそれ以外にも誰も居る様子もなかった。
だけど、明らかにすぐ背後に気配を感じるのだ。
しかもその気配は奇妙な事に私に存在を気取られない様にじわりと動いて居る様に感じる。
野良猫か?とも思ったが、そんな小さな動物ではない呼吸を感じるのである。
怖くて振り向けないのと、相手がバレない様に動いている事を尊重しなければならない様に思えてワザと、アレ?取れないな!?等となんとも間抜けな声量で独り言を話す。
ボールペンで引っ掛けやっと鍵束が取れた時にはその気配は薄まっていた。
私は急いで鉄の扉を閉めて、極めて自然にしかし物凄く急いで階段を降り、ボロアルトを停めたパーキングまで急いだ。
もしかしたら、家を持たない人が土日だけ日陰と屋根を求めて過ごしていた所に私が不意に来てしまったのかもしれない。
だけれど、あの感じはなんだったのか。
こちらの気配を伺う様な、視線を感じる様な、��かもすごく至近距離を通っていく様なあの感覚は。
季節は夏であったが、鳥肌がひかず、じっとりと全身に気温を起因としない脂汗をかいていた。
0 notes
39lucy · 1 year
Text
クソ不動産会社で働いてた時の話。
以前ここでも書いた通り私は車の免許を30歳で取り、その際仮免と学科で一回ずつ落ち、仮免試験中に「海外生活長かったですか?」と聞かれても逆走に気付けず、尚且つ免許を取る前もなんなら今も何故クルマのハンドルは左右どちらか片方に寄っているのか?と思っている運転不適合者。
(なお、ハンドルが片方に〜の話をした時には母親から、「ちょっと…そういう人は免許取るのはやめた方が良いと思う」と言われた。)
そんなポンコツドライバーにも関わらず、当時働いていた不動産会社はなんの躊躇いもなくそこそこ遠方の物件調査に私を送り込んでいた。
その日は糸島の別荘地にあるログハウスの現地調査があり、南区から1人で向かった。
糸島の別荘地は山を切り拓いた場所にあり、それこそバブルの華やかなりし頃には別荘としてはもちろん、通年の居住者やオフシーズンには管理人も住まわせる様な場所でもあったが今は昔。
しかもその時、季節は冬。
今やリタイアしたご夫婦や工房として使う人が本当にごく僅かにいるだけで、入口の管理人以外には人の気配を感じない場所だった。
一度会社の人に付いて来た事があった為、まぁどうにかなると思っていたが、なんとも雲行きが怪しくなる。
別荘地帯は私有地の様な扱いであり、外部の者は届けを出さなければ敷地内には入れない。(その別荘地はそうだった)だからなのか、Googleビューにも出てこない。
また山を切り拓いた土地の為、道はうねり登りも下りもキツい。ここで合ってる筈なんだけど、こんな急な坂道あったかな。。冬の寒さと日本海側気候のどんよりさが心細さと不安を募らせる。
ボロクルマだったのでナビも付いておらず、Googleマップをプリントして通る道に印をつけていたのだけど、どうも道の形状が違う。
しかも、私にあてがわれていた社用車は古いアルト(窓は手動で開閉する)馬力もない。アクセルベタ踏みでもなかなか登れず、苦労する。
道なりにしか進めない為、とにかくこの坂道を上る事にし登り切ったところで次は急な下り坂になった。
マズい、次はブレーキが効かない。アクセル踏んでもいないのに下り坂でボロアルトはどんどん加速してしまう。強くブレーキを踏むも効かない。どうしよう、、なんか2番みたいなとこにこのシフトをズラすみたいなんだっけ。あー木々の隙間から見える海が綺麗だ。糸島の海は綺麗だ。東区とは違うな。道の先には木が生い茂る。この辺りの別荘は人が住んでなさそうだ。突っ込んだとしたら見つかるのか?こうやって人間死ぬのか、こんな状況なのに私の脳はおしゃべりだ。南無三!!!!
と思った辺りでブレーキが効き始めたのと坂が緩やかになりどうにか事なきを得た。
脂汗でベッタリなったハンドルを拭いて、その後なんとか物件にも着いた。冬なのに脇もびっしょり汗をかいていた。
物理的に命の危険を感じたのは���れだけだけど、他にお客様の目の前で物件の一部にクルマをぶつけて、気にしないでください!って言った事もあるし、オカルトめいた怖い目に遭った事もあるけど、それはまたの機会に書く。
1 note · View note
39lucy · 1 year
Text
私が松岡修造を勝手に師匠にしてた時の話
何度も書いてる某大型衣料品店で働いていた時の事。
勤続年数も5年程になり、ちょこちょこ新しく入ったバイトのトレーナーになる事も増え、新しく担当したのが18歳の学生バイト。
めちゃくちゃクールぶってて、笑顔や丁寧に何かをする事、特に声を元気に出す事に抵抗がある子だった。
この企業はなかなかの体育会系で、挨拶の発声は重要視されており、新人がまず担当させられるフィッティングルームでは店内放送を10分に一度ほどの頻度でさせられるのだ。
もちろんマイクを通すのだが、楽しそうに明るくチラシ掲載のオススメ商品をお知らせする必要がある。
18歳の子はクールぶってる為、全く明るく放送してくれない。先輩達から私にクレームが入る。
〇〇くんのマイク放送暗過ぎ。モガタどういう指導してんの?店の活気に直結なんだからちゃんとさせて。
私はお調子者気質でこの手の事は得意で、たまに老舗デパート風にやったりしていた。(たまに怒られてた)
18歳のクールぶってる子にどうやったら明るく楽しくマイク放送してもらえるのか。声の笑顔だよ!とか伝えてみるが、なかなか実行してもらえない。
そんな時、テレビで暑苦しくティーンを指導する松岡修造を見た。
これかもしれない。モガタはそう思った。
次に18歳と出勤が被る日に早速修造スタイルで挑んでみた。
〇〇くんの実力、そんなんじゃないと思う!もっとやってみて!きっと素敵だと思うよ!大丈夫!
ウザがられたけど、背に腹は変えられない。
一度やってみてもらった。ちょっとだけ良い感じになった気がする。
修造はこういう時、めちゃくちゃ熱く褒めてた。
すごい!!!さっきと全然違うよ!!え!?めっちゃ良いね!!!!!
沢尻エリカばりの「別に…」みたいなリアクションを貰ったけど、めげずに彼がマイク放送する度に自分がレジに居ても、離れた売場に居てもフィッティングルームに駆け寄って、えー!今のマイク放送〇〇くん!?すごい!!!別人かと思ったよ!めっちゃいい!!等と具体的に褒めて次の課題も伝えていった。
すぐに駆け寄る私の姿は他のスタッフから嘲笑されていたけど、これしかないと思ってやっていった。
どんどん彼のマイク放送はよくなり、次にレジ研修になった。
レジは笑顔で迎えて素早く打つ、新たな課題が生まれた。
ここでも隣のレジを打ちながらフォローしたり、励ましたりしてどんどん良くなっていた。
日曜日、レジは相変わらず忙しい。
しかし、なんとかレジも打ててそう。すごい。
クールぶってた彼はもう過去。今は笑顔でハキハキとレジを打っている。
すごい良くなってるね!忙しいのに凄いね!
こういう忙しい日こそ、声掛けが大事だ。そうやって先輩としての余裕も見せたい。
そうカッコつけたその日に、私はマイナス9,000円というその店舗で過去最高レベルのレジ金差違を出した。
褒めに注力しすぎて自分の業務が疎かになったのだ。私に修造法は早過ぎた。
店長代行からものすごく叱られた後に18歳バイトから慰められ、めっちゃ優���いね…あの頃とは別人だね…なんかごめん。。って落ち込んでめんどくさい先輩になった。
2 notes · View notes
39lucy · 1 year
Text
Tumblr media
THE FIRST SLAM DUNK観てきた。
小学生の頃、テレビでやってたのを観ていたのは覚えているけど、その頃は両親の影響でゴリゴリの週マガ読者で、今に至るまで漫画は読んだ事はない。
だけど、テレビアニメを観て親しみを覚えたのは今振り返ると、多分花道の友人や三井の取り巻きに週マガの主流であるヤンキー漫画のバイブスを感じだからかもしれない。
しかし、もうテレビアニメの頃から随分と時間が経ち、主要メンバーをなんとなく覚えているだけの状態。
なんとなく観た人達の話を見聞きしていると忘れていても楽しめそうだと思った事と、そして漫画家の井上雄彦先生が監督した作品という事が大きなきっかけとなりどうしても観たいと思っていたところ、友人の誘いにより1月2日に観に行った。
すごく面白かった。すごく良かった。2時間あっという間。そして、作品を知らなくても楽しめるのは間違いなし。
今回印象深かったのはアニメーションの表現。
テレビアニメの時に思っていたのは、漫画動かしてる感だったのだが、映画もそうだった。めちゃくちゃ漫画だった。
昨今の非常にリアルな背景に「日本のアニメ」らしさ全開のキャラクターが乗り、湿度の高いというかヌルッと動く様なアニメーションが多く支持されている中、この表現をやったのすごいと思う。
そういった超絶技巧みたいなアニメーション技術が発達しているのも文化だが、こういった表現のアニメーションも生まれるのが豊潤な文化だと思う。
私の印象としては、バンドデシネのアニメーションといった感じがしてとても好きだった。
監督の見せたいところに集中出来る感じがした。描き込みだけが正義で価値ではないのだ。
ストーリーは基本的に湘北と山王の試合がメインで途中途中に今回の主役的な宮城リョータ、そしてそれぞれメンバーの今に至るまでの回顧録が挟まってくる。
私は高校バスケを観たことはないし、どんな選手がいるのかも知らない。
その為、実際こんなガタイいいんか!?ってのがあるんだけど、それでもみんな多感なティーンエイジャーなのだ。些細な事で心が揺れて、不安定で、イラつきそれがプレイに出てしまう。(体格に関しては彼らの目線で描かれているのかな)
そんなティーンなのに、強い山王はメンタルも比較的安定して統率が取れて、揺さぶりにも冷静に対処していく。客席には統率の取れたバスケ部員の応援。甲子園とかで観るアレ。そんな山王の若きエースの最後のあの回想。
最近、映画は最前列で観るのにハマってるんだけどこの映画は試合の臨場感も最高だったし、こういう精神面の描き方も素晴らしかった。
井上先生の表現技法を広げ、今回の作品を作った事に対してもすごく励まされた。新しくチャレンジする事に遅いなんてない。
最後に桜木花道ってめちゃくちゃジャンプの主人公だな〜と思った。
私が好きなキャラクターは木暮くんと桜木軍団のみんな。
2 notes · View notes
39lucy · 1 year
Text
大学生の頃、巫女バイトしてた時の話。
人が働いてる時に休んで、休んでる時に働きたい天邪鬼と非日常の場に身を置く事を好んでいた為、大学生〜フリーターの最初の数年、親戚が氏子を務める神社で正月や夏の祭事、七五三等の度にバイトしていた。
今はどうか知らないが、私がバイトしていた頃はご飯休憩やおやつ休憩の時間は勤務時間から引かれず滞在時間×時給でバイト代が計算され、ご飯もおやつも用意される最高の職場だった。
確か2年目の正月バイトの事。
既に何度もバイトに来ていた事、氏子の親戚という事で神職さんや本職巫女さんからベテラン認識されていた私は、正月だけ募集される高校生バイトの指導係の様なものも任されていた。
私は基本的に楼門入った中にある回廊に臨時的に設けられた札所が持ち場で、区切られた格札所に高校生と2人ペアで入る。
客足が少し落ち着いた頃にペアの高校生から質問された。
「モガタさんって、オチアイさんと仲良いんですか?」
オチアイさんとは裏方と力仕事要員で雇われている男子大学生の事だ。どうやら話を聞くと、高校生バイト達の間でカッコイイと話題らしい。
私は何度も一緒にバイトに入っているので、単に季節労働の同僚といった認識で、それはオチアイさんも同じだった。
「いや〜普通にバイトの知り合いって感じだよ」そう伝えたすぐ後に、その高校生におやつ休憩の順番が来たため、彼女は札所の紅白幕の裏に下がった。
高校生と交代で入ったのがオチアイさんだった。
タイムリーだった為、冷やかそうと思い話しかけようとするとそれより先に話しかけられた。
「モガタ、、入って早々でめちゃくちゃ申し訳ないんやけど、、トイレ行って来ていい?」
前述したとおり、ここのバイトは休憩時間が引かれない。その為、ご飯休憩等の際にトイレも済ませておき、基本的にそれ以外の時間でのトイレはNGだった。
しかし、オチアイさんのただならぬ様子に冷やかす気にも咎める気にもならず、いいよ!神主さんには説明しとくけん!と伝えて送り出した。
この時、トイレに行くのはあんまり表立って言いにくいせいか、オチアイさんは私に耳打ちの様な感じで話しかけてきた。
これをまた別の高校生バイトが目敏く見ていた。オチアイさんが戻ってきて、少し経ち私もおやつ休憩が回って来た。紅白幕をくぐると高校生バイトの子達が2人いた。
「モガタさん、さっきなんかオチアイさんと話してましたよね?その後、どっか行ってたのなんでですか?」
すごい、そんな見てんのか。でも、年長バイトが休憩時間外にトイレ行ってんのあんま言わない方がいいよなぁと思い、社務所に呼ばれたっぽいよ〜とテキトー伝えた。
おやつ休憩終わり、札所に戻ろうとしているとまたしてもオチアイさんが話し掛けてくる。
「モガタごめん!またトイレ行って来ていい!?」
いい?と聞いているが、その真剣な眼差しと私の肩を掴む手からヤバさがビンビンに伝わってくる。様子がおかしい。めんどくさいので肩掴まないで欲しい。高校生バイトの視線が刺さる。
「行くのは全然かまわんけど、調子悪い?インフルとかだとヤバいからさ、マジでヤバいなら神主さんに言いなよ」
そう言う私に雑に相槌を打ち、オチアイさんはまた早々に出ていく。オチアイさんが本来やるはずだった御守りの補充なんかを私がしているのを見つけて、その札所担当の神主さんがあれ〜オチアイくんいないの?と話し掛けてきた。
オチアイさんなんか調子悪そう、多分社務所のトイレ行ってる。そう伝えると、神主さんはちょっと見てこようかな、と札所を抜けた。人員が2人減る。
2人減った為、バタバタと初穂料の受け取りや御守りの補充していると救急車の音が聞こえてきた。境内に入ってきている様だった。
しばらくして、先程の神主さんが戻ってきて話しかけてきた。
「オチアイくん、戻ってこないから。ちょっとヤバいから救急車呼んだ。嘔吐下痢してた」
さっきの救急車はオチアイお迎え用だった。
その日のシフトを終え、社務所に戻るとオチアイさんの同級生でオチアイ人気に乗じて、我がもモテようとするが高校生バイトからは全く評判の良くない坊主頭のヤツがいた。名前は忘れた。
「モガタ聞いた!?オチアイ、救急車で運ばれたぜ!!」ホントそういうとこが嫌われる原因。
「なんか体調ヤバかったらしいすよ、昨日も一緒だったでしょ?なんか知らないんすか」そう聞くと坊主は、
「あー?なんかあったかなぁ〜?あ!アイツだけ昨日、バイト後に露店でサザエの壷焼食ってた!」
食中毒で多分確定。
「あとさ〜俺ら白衣に白袴じゃん?救急車で運ばれるオチアイ、既に死装束みたいだったわ〜爆笑」ホントこういうとこが嫌われる原因であるけど、真っ青な顔色で白衣に白袴が救急車乗る姿を想像すると、本当に本当に申し訳ないけど、めちゃくちゃ面白いと思った。
控え室に行くと、人気者のオチアイさんに肩を掴まれ真剣な眼差しで話しかけられていた私は高校生バイトに質問攻めにされた。
みんなの憧れのオチアイ先輩が嘔吐下痢していた真実は誰の為にもならないので言わずにいた。
巫女バイトも面白い事色々あったけど、正月バイトの印象深いのはこれ。
1 note · View note
39lucy · 1 year
Text
20代の後半に西中洲のBARでちょっとだけバーテンダーやってた時の話。
そこの店は夜中3時までの営業で、その日は一緒に働く子と常連の女の子と3人で営業後に24時間営業のうどん屋で軽く飲んで帰ろうって話になった。私はそのうどん屋には初めて行くので、気になってた店に行けるの嬉しい〜と2人に話しながら向かった。
いつも夜中は客の多いうどん屋は珍しくまばらで、名物従業員のベテランお姉さんと地味な男性従業員がいた。
私達が来る前の1時〜2時が忙しかったらしく、ベテランお姉さんはピリピリしており、いくつかつまみを頼むと、全部時間かかるよっ!!!と強めに返されてしまった。全然大丈夫です〜と返事し、瓶ビールを3人で飲みながらお喋りを始める。
その時、ガラッと大きめの音を立てながら1人の男性が入ってきた。今時こんなチンピラみたいなファッションの人おるんや〜夜の街やな〜と思いながら見てると、その男性は入ってくるなり
「キョウさん!太い輪ゴムない!?太いやつ!」
キョウさんとはベテランお姉さんの名前だ。
キョウさんが、輪ゴム?何に使う?ないよ〜!と返事をしたところ、その男性は自身の腕を指差しながら
「血が止まらんっちゃんね!輪ゴム���い?あー仕方ないちょっとトイレで洗ってくるわ!」
そう言いながら男性は我々3人の傍を横切る。床に腕から点々と血を垂らしながら。
思わず黙り込む我々。
男性はトイレから戻り、カウンターに座りビールを頼む。キョウさんは、飲むの〜?と聞きながらビールを出す。
(((((いや!血が止まらん人は飲んだらいかんやろ!!!!!)))))
私達3人全員の心の声が漫画みたいに頭上に文字で浮かぶ様だった。
チンピラファッションの男が腕から血を流しながらビールを飲むすぐ後ろに座る我々。
居た堪れなくなり、キョウさんに頼んだツマミがいつ出来るか訊ねる。
時間がかかると言ったにも関わらずに催促する我々に、先に時間かかるって言ったでしょ!!と怒るキョウさん。居た堪れなさに拍車がかかる。もう一本ビールを頼む男性。
その後、待ちに待ったキョウさんお手製水餃子が非常に美味しく、美味しい美味しいと食べ、会計をしたところ、キョウさんにアナタ達良い子ね!美味しいって言ってくれて嬉しいよ〜!と声をかけられた。
修羅の国、博多の繁華街の夜働くキョウさんにとって、血を流した男性はよくある事象なのか。
夜を噛み締めて各々帰路についた。
1 note · View note
39lucy · 1 year
Text
多分これが最後の衣料品店話。
勤めていた店舗には独特なお客様が何人かいた。
3ヶ月以内は返品交換します!というサービスを最大限に利用して、購入後2ヶ月半くらいに毛玉だらけのルームパンツを交換しにくる人、紙物が好きでカゴに入ったチラシを根こそぎ持って帰る人、スタッフに惚れて尋ねてくる人、、等色々。
その中でも印象深い人が1人いる。
私がそのお客様に出会ったのは、店頭で親の仇か?というくらいにギチギチにカゴに商品を詰めまくって品出しに没頭している時だった。
そのお客様は商品を手に声を掛けてきた。だいたいこういう場合は希望サイズや色の在庫を尋ねられる事がほとんど。しかしこの人は違った。
「これ、何色?オレンジ?」
この衣料品店には独自の色番があり、00の白から09黒まではモノトーン。
10からは赤のグラデーションと続くのだが、商品によっては赤の色番でも見た目はオレンジ、赤に見えるがオレンジの色番、といった事が多々あった。
尋ねられたその商品は、見た目はオレンジだが色番は赤の物だった。
これは赤ですね〜と伝えるとそのお客様は、
「じゃあ要らない、戻しといて」
と私に商品を渡してきた。そのお客様は全身オレンジ、カゴにもオレンジの商品のみが入れられていた。
心の中でオレンジおじさんと呼ぶ事にした。
オレンジおじさんはその商業施設でよく買い物する様で、休憩中や退勤後に館内でもよく見かけていたし、よく店舗にも来ており私やそのほかのスタッフにもオレンジか否か確認していた。
毎回全身オレンジでめちゃくちゃオレンジの物を買うし、どんなにオレンジに見えても色番がオレンジでなけれは絶対に買わないのでスタッフみんな認識していた。
そして、オレンジおじさんはオレンジの商品には金払いが良いので、色確認の質問はめんどくさいけど良いお客様という印象だった。
別日、私はいつもの様にレジ担当だった。
内線が鳴り、出るといつも顔を合わす警備員さんが警備室からかけて来ていた。
「お!もがちゃんお疲れー!今、店長か代行おるかね?紀伊國屋の万引きGメンが万引き犯捕まえて持ち物改めてたら、ユニクロさんの商品出てきたけん、警備室来て確認してもらえる〜?」
私の勤務していた商業施設はその運営会社でも悪名高い窃盗の多い館だったのでこんな事はしょっちゅうあり、木の実ナナを思い浮かべながら、あー了解っすー伝えておきまーすと内線を切り店長代行にインカムで伝える。
30分後に戻ってきた店長代行が興奮気味にレジに来た。
そう勘のいい人はお気付きだろう。
「モガタ!!万引き犯!!オレンジおじさんだった!!!!!」
めちゃくちゃ驚いた。いつもすごい買ってるのに、万引きもしていたのだ。こちとら万引きには耐性があるので、思わず
「え!!!!オレンジおじさん!?やっぱりオレンジのヤツばっかり万引きしてました!?」と聞いた。
あんまり詳細は覚えてないけど、オレンジじゃないもの、パンツとか色々あったみたいだった。
オレンジじゃないものを買うのが恥ずかしかったのかな。万引き犯が常連だったのは在籍中それっきりだったけど、金があってもやる人はやるんだなーと、そういうの本当なんだな〜と感慨深かったのを覚えている。
0 notes
39lucy · 1 year
Text
一個前の日記で書いてたショッピングモールの衣料品店で働いてた時の話。
その日も私はレジ担当。休日でレジの列は途切れない。レジ打ってはお次お待ちのお客様、1番レジにどうぞ!と手を挙げて次のお客様を呼ぶ。
次のお客様は年配の女性、うちの店舗ではない館直営店の買い物カゴをカートに載せてやってきた。この館ではよくある事だ。次の休憩の時に戻しに行かないとなぁ〜と思っていると
ビターーン!ビタン!と想定外の音がレジカウンターで鳴る。
え!!!鯖!?となんかの切り身!?
鮮魚が入ったパックが2つカウンターに置かれた。
分からんすぎて、どうしました!?とそのお客様に尋ねると、はい、幾らですか?レジの遠かった〜!とややご立腹。
まずい、ここではお魚の計上は出来ない。
なぜならユニクロだから。
しかもおばあちゃまはバリバリお金を払うつもりなのに、食品売場の敷地内から出てしまい、カゴ抜けをしてしまっているのだ。
ここでお支払いが出来ない事と、食品売場のレジに戻らなければならない事、それらをおばあちゃまの気持ちを傷付けずに、万引きと気取られずに伝えなければならない。
しかし、お耳も遠そうだし、足も弱っていらっしゃるのかカートを杖代わりにしており既にお疲れの様子。それもその筈、食品売場からここのレジまでは同じ館内とはいえ、私の足でも急いで5分はかかる距離。
悩んでいると早く会計をして欲しいおばあちゃまに、早よしてください!幾ら!と急かされる。休日の騒ついた店内、レジカウンター越しには声が届かずなかなか伝わらない。
レジカウンターから出て近寄るとレジを打たずに出てくる私に驚き、お怒りに拍車がかかる。
でも、ここでは支払いは出来ない。なぜならUNIQLOだから。
説明しながら、インカムでレジから食品売場までご案内に入れる人がいないか、もしくはレジを代わって欲しい旨呼びかける。
「お客様がお魚をレジにお持ちです。どなたか食品売り場にご案内お願いします」
誰も来てくれない、そして隣のレジスタッフが驚きの表情でこちらを見る。
「モガちゃん、誰も空いてない!とりあえず案内してあげて!」
仕方なく、『レジ休止中につきお隣のレジへ』との立札を出してレジから出る。
なんでレジしないのか!とお怒りを買うが背に腹は変えられない。
「お魚のお支払いが出来るレジにご案内します」
分かりにくくてごめんなさい、ご一緒にいきましょうとカートを引っ張り、UNIQLOを後にする。
道中、レジはこっちて聞いた!遠かったのにどこに行くのか!と話される中、こういう時は否定しない方が良いと思い、そうですね、分かりにくくてごめんなさい。と相槌を打っていると、数人しかいない女性の警備員さんが前から歩いてくる!
呼び止めて事情を説明すると、快諾してくれ食品売場まで案内してくれる事になり、担当が変わることを伝えその場を離れる。
少し押し付けた様な後ろめたさを感じながら、小走りで店舗に戻り、担当レジのカウンターになんとなく汁気が無いかを確認して、私は何もなかったかのようにまたレジを打ち始めた。
冬場の暖房の効いた店内を想定外に回遊してしまったパックの鮮魚が傷んでいなかったか気掛かりだった。
1 note · View note
39lucy · 1 year
Text
もう10年以上前に大型ショッピングモールに入ってる衣料品店で働いてた時の事。
勤めていたのは、海外にも旗艦店を持つ日本最大手のカジュアル衣料品店。そして、勤務店舗はその当時では九州には数店しかない大型店舗。
そのため、閑散期の平日でも少なくとも10人近く出勤してバイトも常時募集中。
平日のその日、私はレジ1番担当でほぼレジから離れられないシフト業務をやっており、そんな中で館内連絡用の内線を受けた。
「お!モガちゃん!お疲れ様〜。今日〇〇って人の面接入ってるか分かる?」
��手は毎朝顔を合わせて挨拶する警備員のおじさんだった。内線を保留にしてインカムで店長代行に面接の有無を確認する。
(面接の人、もしかして従業員入口で店舗の場所尋ねたのかな?お客様用入口から入って良いのに)
と考えていると、店長代行から該当者の面接があるとの応答があり、その旨を警備員さんに伝える。
「モガちゃん!その人ねぇ、今日面接ないから!中止って店長に伝えとって〜!あのね!食品売場で万引きしよってから、捕まえたらそちらで面接があるけん解放せろて言いよったい!驚くよね〜それで確認で連絡した〜!よろしくね!」
面接前に館内でまさかの万引き。しかも、今から面接だから釈放しろとの訴え。肝がすわりまくった大型新人の登場や。
内線を切って、店長代行へインカムで伝えたい事があるので、レジに来てもらうか、誰かレジを少し交代して欲しいと伝える。
店長代行からは忙しいからインカムで伝えて!と少しイラついた応答。
なんかまぁまぁショッキングな内容だし、個人情報ぽいけど、うーん、、そう言うならと店内にいるスタッフ全員が聞いているインカムで警備員さんから伝えられた内容を説明する。
インカムで話し終わると、よくマンガの効果音で静かなのにザワ…とかどよめく演出があるけど、まさにそれが店内で起きてる事を感じた。
それと同時に店内後方のスタッフルームのドアがパーンっと閉まる音が聞こえたと思うと、店内で許されているギリギリ走ってない、しかし最大スピードでキレながらレジに向かってくる店長代行が視界に入る。
やべぇ怒られると思った時には店長代行はレジに着いており、そう言う話はインカム通さずに直接言って!!!!!!とブチ切れられた。理不尽である。
この人、万引き見つからんかって面接受かったらどうなってたんかなーというか、絶対なんか取ってたやろうなーヒートテックとか。
この話をこないだ人に話した際に、ここでの勤務時のエピソードをいくつか思い出したので、いっときこのシリーズ書く。
0 notes
39lucy · 1 year
Text
先日、時間に余裕あったから丁寧にメイクしたら、知り合いのお兄さんに
「今日のもがちゃんなんか可愛い!メイクの雰囲気違う?」
って言われたんで、これは今日も丁寧にやっていき!
て思ったのに、その日はなぜか悠長に風呂入ってしまい、風呂出て10分で出発!というちょっとAVのタイトルみたいな状況になって、丁寧なメイクどころか顔になにも塗れずにパッサパサで出勤した。
しかも前日飲みすぎてやや脱水状態で全身パサパサだった。
0 notes
39lucy · 1 year
Text
私が自動車免許教習所通ってたのは30歳の頃。
クソ不動産屋の退勤後、クタクタな状態で夜に通うとまぁまぁ歳のいった大人がポツポツと居た。
仲間じゃん!って思ったけど、人に聞くと何らかの理由で免許失効した人達だと思うよ〜と聞いてからは、みんなが覇気がない理由が何となくわかった。
その教習所はロビーでpepper君を飼ってて、その日も人のまばらな夜のロビーで、pepper君はウロウロしていた。
pepper君は1人でおしゃべりしてたけど、急にソファの方へ進みはじめ、腰掛ける男性に近付く。多分、あの人も免許失効チームだ。力なく項垂れ座っているから違いない。
「コンバンワ〜ちょっとおしゃべりよろしいですかー👁👁」
pepper君はよりにもよって、このロビーで一番ダウナーなおじさんに話しかけた。
ダウナーおじさんは頭を上げ戸惑うが、お構いなしに僕のモニターを見ててね!と有無を言わさず話を続ける、ゲームに誘っている。
おじさんは力無く対応し満足したpepper君はおじさんの元を離れる。振り返るpepper君と目が合った。目が合ったのに、私のところには来てくれなかった。
それから一度もpepper君に話しかけられる事なく卒業した。3ヶ月半も通ったのに。
1 note · View note
39lucy · 1 year
Text
東区まで!
福岡市中央区警固でタクシー乗った瞬間にそう伝えたはずだった
ふいに居眠りしてしまって、目が覚めたらメーターは10,000円振り切ってて、��けわかんなくなってiPhoneのGoogle map開いたら現在地は福岡県直方市らへんだった
えっ!なんで!?ってかなりパニックになったんだけど福岡県民の悲しい刷り込みで
「直方がんだびっくり市」
って口をついて出た
Tumblr media
0 notes
39lucy · 1 year
Text
26歳の時の話。
クリーンニング屋でバイトしてて、他県から進学でこっちに出てきた 18歳の男の子に仕事教えてた。こっち来て間もない頃は前から気になってた梅ヶ枝餅すげーうめーっす!!とか、博多駅であやまんJAPAN観てきたっす!とかではしゃいでた。
その時、私が彼氏と別れて1年位経ってて、なかなか次の人って見つからないもんだねーって話すと
「モガさん!そんなガツガツしてたらダメっすよ〜!」 ってたしなめる様に言われた。
ちょっと前に人生初の彼女が出来て、クリスマスプレゼントの相談してきた(しかも私が教えたとこで買ってた) 奴とは思えない余裕の発言されたもんだから、 マジで立派になっちゃって、、 もう仕事一人で出来るやろ、今日は帰っていいですか?って思いながらも 「はい。。。」って答えた事、博多駅でイルミネーション見て思い出した。
ちなみに、そこのクリーニング屋はオレンジストライプのシャツに蝶ネクタイが制服で、ボブでたまにメガネだった私は自分が大木凡人みたいに見えてる気がして、制服の事も全面ガラス張りの店の作りも別の掛け持ちバイト先から近い事も嫌だなぁって思ってた。
0 notes