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4komasusume · 14 days
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「4コママンガのススメWeb」は Tumblr から note に引っ越します
 管理者のすいーとポテトです。ブログ引越のお知らせです。
「4コママンガのススメWeb」は Tumblr から note に引っ越します。note の共同運営マガジンの機能を使い、次のリンク先で更新していきます。
⇒ 4コママンガのススメWeb
 過去の記事の移行は難しかったため、note ではまっさらからの更新になります。今後もこの Tumblr は削除せず残し続けますので、過去の記事は引き続きこの Tumblr を参照ください。
 Tumblr での更新はこの記事が最後になります。note でも「4コママンガのススメWeb」をよろしくお願いします。
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4komasusume · 1 month
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読み手が感情移入するための余白――橋本ライドン『妹・サブスクリプション』
(注意:この記事は『妹・サブスクリプション』の核心に関するネタバレを大量に含んでいます。)
 全てを読み終えた後の感情は怒りだった。それは、最後まで人間性を獲得することができなかったみゆきに対する怒りである。
 失われた人間を模倣する人造人間技術「レプリカント」が実現された近未来で、失踪した妹・今日子のレプリカント「きょんちゃん」と暮らす姉・みゆき。2か月前に書いた記事の後、物語は佳局へと入っていき、そして結末を迎えた。みゆきとかつての親友・正美の対峙、今日子とその親友・吉乃の再会、そしてみゆきときょんちゃんのクライマックスである。
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妹・サブスクリプション (シリウスコミックス)
posted with AmaQuick at 2024.03.22
橋本ライドン(著), 講談社 (2024-03-08)
Amazon.co.jpで詳細を見る
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〔145・146ページ〕
 クライマックスで、みゆきはレプリカントのきょんちゃんの変化に動揺しながらも、自身がこれまでに犯してきた過ちにようやく気づく。「私はずっと過去を見てたんだ」と。そして二人が抱き合いながら言葉をやりとりする場面は、二人の対話に見えて、実は本物の今日子に対するみゆきの届かない独白だろう。目を見ることなく吐露する言葉にきょんちゃんがどのように反応するかは、みゆきにとってもはや問題ではない。むしろ言葉を吐き出すことそれ自体が、すなわちみゆきが過ちを自覚したことのあらわれこそが、この場面における焦点なのだ。
 ここまでこのように読んだ私はこう考えた。みゆきはついにレプリカントのきょんちゃんを捨てるのだ、と。本物の今日子はみゆきの認識では行方不明であり、またレプリカントのきょんちゃんの次の個体も工場が焼けてしまったので、どちらにももう会うことは叶わない。それでも、自覚した過ちと決別するために、まさに過去の象徴たる最後に残った一体のきょんちゃんを、みゆき自らの手で破壊するものだと信じていた。
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〔147・148ページ〕
 しかし、みゆきはそうしなかった。あまつさえ、今の住まいを引き払ってレプリカントのきょんちゃんと逃げ、楽しそうに遠出の遊びに来ているではないか。最初こそ入水心中エンドだと読んでいたものの、後にアップされたこの楽しそうなイラストを見て、その可能性は捨てざるをを得なくなってしまった。
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〔100ページ〕
 これでは、レプリカント会社の代表の「結局 偽物で構わないのだ」という言葉を認めたことになっているではないか! それとも、最後の一体になって替えが効かなくなったからレプリカントのきょんちゃんはみゆきにとって偽物から本物になった、とでも誰かは言うのだろうか。レプリカント自体が最初から本物の今日子の代わり=偽物だったにもかかわらず?
   ◇
 二人が抱き合いながら言葉をやり取りする場面を、私は読み違えたのかもしれない。146ページと148ページのセリフの反復を考えれば、みゆきの言葉はレプリカントのきょんちゃんにまさしく向けられたものと読む方が自然にも思えてくる。ダメな自分には偽物がお似合い、といったみゆきの消極的な諦めという読解だ。あるいは、みゆきの言葉は確かに独白だったが、同時に決意でもあったという読み解きもありえるだろう。過去を反省しつつ、しかし今日子との再会はもはや叶わない(みゆきの主観では今日子は行方不明である)のなら、せめて目の前のきょんちゃんを精一杯愛していこう、という積極的な諦めだ。これならまだ物語的な救いがある。
 しかし、いずれの読解を採用しても、私の怒りが収まることはなかった。なぜなら、私はこの作品の読解において絶対的に親・今日子かつ反・みゆきの立場であるからだ。その理由は、本作の第三期(今日子の過去編)の終盤における、今日子のこのセリフに心震えたからだ。
姉ちゃん 私がいなくなったら 姉ちゃんも私のレプリカントを作るのかな
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〔89・90ページ〕
 これは今日子の嘆きだ。誰かに否定してもらいたかった、できることなら��ゆきにそうしてもらいたかった悪い想像だ。「昔のきょんちゃん」でも「理想のきょん」でもなく、今ここにいる今日子と向き合ってほしかった、という叶わぬ願いだ。それは、個々の人間が代替不能な存在として、人間でない複製・改変可能な何かに取って代わられることなく、あるがままに尊重されてほしい、という人間的な祈りだったのだ。
 今日子にかように言わしめたみゆきを、私は決して許すことができない。今日子は全てにおいて正しく、みゆきの情状は一片も酌めない。この姉妹の悲劇が勘違いから始まったものだとしても(詳しくは単行本収録の描き下ろし番外編を参照)、思春期や反抗期という知識によってみゆきが誤りを正す機会はいくらでもあったはずだ。
 ひとことで言えば私は、みゆきは自身の過ちを改めてくれる、とギリギリまで信じたかったのだ。しかし、みゆきは最後までレプリカントのきょんちゃんから離れることができなかった。今日子の叫びを、またはレプリカント会社の代表の言葉を、ついぞ否定できなかったみゆきは結局、偽物の機械ではなく本物の人間こそを愛する、という人間性を獲得できなかったのだ。悲しいが、そう言わざるを得ない。
   ◇
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〔123ページ〕
 私の読みが公平世界仮説に依った、かつ寄ったものであることは甘受しよ��。『妹サブ』の物語展開は徹頭徹尾、みゆきと分かりあえ得ない者同士の相対であった。正美、吉乃、今日子、そして社会。それぞれに譲れない信義があり、どこまで行っても『理解すれども納得せず』を超えることはなかった。みゆきが「正美は正しい」ことは認めつつも「正論で片付けられない」としていることがその証左だろう。
 ここで重要なことは、作者の橋本ライドンは『妹サブ』のどの登場人物にも肩入れしていない、ということだ。世界がこうあり、またキャラクターがこう生きるから、その間の衝突で生まれるドラマを、達観あるいは諦観した――作者でさえ物語世界には介入できない、という――視座から巧みに写生することによってこの作品を描き上げたように思うのだ。だからこそライドンワールドでは、現実世界と同様に、公平世界仮説が成立しない。不合理も矛盾も、作者による意図的な味付けではなく、作品世界に生きるキャラクターという素材の味わいとしてあらわれるのだ。
 つまるところ、橋本ライドンはキャラクターを描くのが上手すぎるのだ。作者自身にとってさえも、作中のキャラクターは物語のための道具ではない、というスタンスでマンガを描いているのだ。だからこそ、それぞれのキャラクターに生々しさがあるし、また読者こそがそこに肩入れして感情移入する余地が生まれる。そして複数の並行した立場の中から、私はこのキャラクターを、そしてこの読みを選ぶ、という能動的な読書体験を可能にしているのである。
 また、ハッピーエンドやメリーバッドエンドといったものは、『妹サブ』においては物語が目指すべきゴールではないどころか、結果的にたどり着いてしまった一点ですらない。それすらも読者体験にゆだねられているのである。そして、かような複数の読解は多義的な場面描写だけでは成立し得ない。肩入れしたくなるほどに強烈な実在感を持つキャラクターがあってこそ、多義性そのものという客観視点ではなく、それぞれの意味に依った主観的な読解に強度が生まれるのだ。
 ここまで来ると作者は、『どのように読み解いても構いませんよ』というサービス精神を超えて、『あなたならどう読み解きますか?』と読者に対して挑戦状を突きつけているようにも思えてくる。そして2か月前の記事で私がほのめかした社会的な読解への志向は、全てではないにせよ、大部分が吹き飛んでしまった。そのような小手先(もはや小手先だと言い切ろう)だけで『妹サブ』を読み解こうとするのは無理だと悟ったからである。
   ◇
 いつかどこかで私は、確かとある歌手に対するインタビュー記事の中で、歌い手が感情を込めすぎた歌は聞き手に響かない、なぜなら聞き手が感情を込める余地がないからだ。だからプロの歌手は聞き手のための空間を空けて歌うのだ、といった旨を読んだように覚えている。
『妹・サブスクリプション』は作者が個々のキャラクターに肩入れしないことによって読み手が感情移入するための余白を残した作品と言えるだろう。それはまさにプロのワザだ。そして私はそのワザに見事にやられたのである。「全てを読み終えた後の感情は怒りだった。」と率直に表現するしかないほど、フィクションの存在に肩入れしてしまった。そう観念せざるを得ないほどの圧倒的なキャラクターの力が、この作品にはあったのだ。
(すいーとポテト)
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4komasusume · 2 months
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アプリネイティブは生麻雀に憧れる ――卯花つかさ『ごきげんよう、一局いかが?』
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(2巻P77)
 光の麻雀漫画、卯花つかさ『ごきげんよう、一局いかが?』の第2巻が発売されました。
 1巻レビューはこちら。
 1巻は大げさではなく革命的な麻雀漫画でした。麻雀初心者の女子高生たちがお昼休みにアプリを使って、美少女アバターの姿で対局する。そして一喜一憂し、笑い、話を弾ませる。打てば打つほど、仲良くなる。彼女たちの日常には負の要素は一片たりともなく、ただひたすらに麻雀への愛と希望が満ち溢れていました。  そして2巻になって、彼女たちにある欲求が芽生えます。
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(2巻P55)
 アプリでしか麻雀を知らない彼女たちにとって、雀卓の上で実際に牌を摘まんで遊ぶ「生麻雀」は憧れの対象なのです。バイトまでして遂にチャンスを得ました。  ここからの彼女たちの様子は全てが共感できるものでした。
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(2巻P56)
 そうだよなあ、初めて見たときは感動したよなあ。全自動卓って冷静に考えると凄いシステムですよね。
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(2巻P57)
 初心者あるある。これ、何気に現実ならではの行為ですよね。アプリにこんな機能はないので。現実の「何でもやれてしまう」面白さがここに見て取れます。
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(2巻P64)
 アプリではサポートしてくれたことも、現実では自分で考えなければなりません。フリテンは初心者にはかなり難しい概念ですが、それを知って「ウワーン!」と叫ぶ彼女は、生麻雀の醍醐味を全力で味わっているのです。
   *
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(2巻P93)
 現代の麻雀を取り巻く環境はガラリと変わりました。麻雀は雀荘で打つものではなく雀魂のようなポップな麻雀アプリで遊ぶものだと考える人が、あるいはもう多数派かもしれません。  本作が素晴らしいのは、そんな現状を「目新しいもの」として強調して描くのではなく、ごく当然のものとして描いている点です。作為的な匂いが一切しないのですね。アプリのフレンドルームで友人のログインに気づいてLINEで連絡する、なんてシーンがさらっと描かれているのには驚愕しましたよ。
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(2巻P96)
 こういったアプリネイティブとも言えるような彼女たちが生麻雀に憧れてバイトまでする、というところがまたユニークですよね。もちろんその作劇には狙ったようなところは全くありません。全ては自然な心の動きにより展開していきます。
   *
 最後に、本作の麻雀に対する姿勢を象徴するようなコマを紹介します。
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(2巻P104)
 いわゆる「ラス確定」の和了りでも、別にいいじゃないか。和了れたこと自体が楽しいんだから。ギャグ風に処理されてはいますが、これこそ本作が描きたいことなのではないかと思うのです。
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ごきげんよう、一局いかが? 2 (まんがタイムKRコミックス)
(水池亘)
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4komasusume · 2 months
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カリスマお嬢様の降臨ですわ!――師走冬子『不遊美堂家の名にかけて!』
 おーっほっほっほ!よろしくてよ!無知なるあなたがたのためにこの4コマの面白さを教えてあげてもよくってよ!
 高飛車お嬢様スタイルでこんにちは。量産型砂ネズミです。今回取り上げるのは師走冬子さんの新作『不遊美堂家の名にかけて!』です。ふゆみどうと読みます。
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不遊美堂家の名にかけて! (1) (バンブーコミックス 4コマセレクション)
posted with AmaQuick at 2024.03.05
師走冬子(著) 竹書房 (2024-01-17)
Amazon.co.jpで詳細を見る
 主人公の不遊美堂星羅(せいら)は金髪縦ロールで上流階級出身。高笑いをしながら登場する完璧なお嬢様スタイルで、そして何事にも形から入る主義なのです。
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 まずこのお嬢様というスタイルについて解説をしておきます。
 竜崎麗香 (りゅうざきれいか)とは【ピクシブ百科事典】 (pixiv.net)
 スポコン漫画の金字塔の一つ『エースをねらえ!』の登場キャラである竜崎麗華、通称お蝶夫人が有名です。ピクシブ百科事典にもあるように、現在イメージされる金髪縦ロールでお嬢様言葉を使うキャラクターであり、そのインパクトの大きさから、お嬢様キャラのテンプレートを確立するまでになりました。。現在隆盛を誇っている悪役令嬢作品もお蝶夫人に源流を持つのです。お蝶夫人というキャラクターは創作界隈でエポックメイキングなキャラクターであったのですね。作品現役世代でない方々への解説でした。
 『不遊美堂家の名にかけて!』の主人公・不遊美堂星羅もこのテンプレートのキャラクターです。テンプレートそのままのキャラ像を用いること自体が一つの面白さになっているのです。
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 星羅の初登場シーンです。イメージ通りのお嬢様キャラが教壇に立って自己紹介をする。テンプレート通りのお嬢様キャラ自体の面白さに加え、教壇の上に立って自己紹介をするという行為で、この星羅というキャラが一般常識の外で生きていることが読者に認識されます。それを強調するのが迎える生徒の心の声。新連載1話目の1本目でこの作品がどんなものかを読者に提示するインパクトがあります。
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  2本目、3本目で星羅のキャラクターが残念かつ鉄のメンタルであるであることがわかります。お嬢様のテンプレートをギミックにした作品であることを描きながら4コマとしての面白さもちゃんと押さえているのがさすがです。師走冬子さんのコメディセンスの良さが「秘密の花園ですわ」の3コマ目のセリフ「すげーな パンツ見えそう」です。パンティーでもショーツでも下着でもなくパンツ。10代男子のバカっぽさと淫らさのないエロの組み合わせ、さらに読んだ時のリズムの良さ。オチにつなげるコマとして良い仕事をしています。
 星羅がぶっ飛んだお嬢様キャラな一方で、脇を固めるのは一般庶民の普通の生徒です。伊藤と綾瀬。この二人は星羅のこの学校での初めての友達で、一緒に星羅の埒外な行動に付き合います。作品の構造でみると星羅に対してのツッコミ役と進行役を担っているキャラたちです。
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 担任から星羅のお世話を頼まれる形になった伊藤と綾瀬は最初貧乏くじを引いた感じを出していますが、星羅の友達になっていき友情を強くしていくのが心地よいのです。関係を深めた二人はそれぞれ面白い面を出していきます。
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 星羅が熱帯雨林でナマケモノを保護したというのを聞いた伊藤は天然ボケキャラを見せています。
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 綾瀬は星羅により教室でグラビアアイドルにならされた時の反応です。2コマ打ち抜きで水着スタイルを見せながらのこのセリフは笑いを誘います。
 伊藤と綾瀬は階層の違いからくる異文化交流をコメディに仕上げるのに不可欠なキャラクターですが、それぞれが単体でも笑いを取れるポテンシャルを持っているのです。
 さらにキャラクター同士に隔意がないことが作品を読んでいて心地が良いのです。クラスの中には不良や黒ギャルなどがいますが、星羅や伊藤、綾瀬とも友好的に接します。
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 黒ギャル虎尾にギャルの何たるか教わりみんな仲良くギャル化です。これが感動エピソードの後にくるのが面白いのですよ。「仲良き事は美しきこと哉」この精神が『不遊美堂家の名にかけて!』そして師走冬子作品全体の魅力なのです。
 主人公の不遊美堂星羅をテンプレートなお嬢様キャラにしたことで、ごく当たり前な事がとんでもない面白さに生まれ変わる。『奥様はアイドル』という長期連載の次にこの作品を作り上げる手腕はさすがです。コメディの面白さと師走冬子作品の心地よさを改めて感じさせる作品です。
(量産型砂ネズミ)
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画像出典 竹書房 『不遊堂家の名にかけて!』1巻 P11,P3,P4,P7,P46,P94,P59 掲載順
 
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4komasusume · 2 months
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約束された幸せなんて見えなくても――黄身子『本当のヒロインはこんなこときっと思わない』
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〔58ページ〕
 内なるポテ子さんがギュルンギュルンしたので、本日はポテ子さんがお送りします。
 黄身子『本当のヒロインはこんなこときっと思わない』は恋する女の子たち、あるいは恋に恋する女の子たちを描いた4コママンガです。主役は一人ではなく複数で、その恋模様も様々だけど、どの子にも共通していることがあります。それは「面倒くさい」ということです。とてもイイですね。私も面倒くさい側の人間だという自覚があるので。
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本当のヒロインはこんなこときっと思わない
posted with AmaQuick at 2024.02.24
黄身子(著), すばる舎 (2022-07-23)
Amazon.co.jpで詳細を見る
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〔40ページ〕
 女の子たちの面倒くささを読み解くカギは、タイトルにもある「本当のヒロイン」です。絵本や小説やマンガやドラマの中で、苦しみや悲しみにも負けることなく立ち向かい、最後には大きな愛を手に入れるヒロインの主人公。ファンタジーでしかないはずの存在を、しかし「本当の」と呼んでしまう。どうにも矛盾しているはずなのに理解できてしまうのは、きっと恋や愛それ自体や恋愛というアクティビティに『本当の形』が存在するのではないかという――思い込みであれ願望であれ――観念があるのかもしれません。
 あるいは「本当の」は「約束された幸せが待っている」と置き換えてもいいのかもしれません。最後にハッピーエンドになると分かっていれば、どんな苦難だってきっと耐えられる。でも現実には未来なんて見えないから、今の自分が本当に幸せな結末に向かっているのかどうか疑ってしまうし、この苦しみや悲しみを真正面から上手く受け止められずに次の一歩が踏み出せないでいてしまう。それもまた恋愛や人生の味わいなのかもしれないけれど、“あなたの人生はあなたが主役です”と誰かは言うけれど、じゃあ私はその主役をどのように演じればいいのだろう? そんなの誰も教えてくれないよね。
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〔114ページ〕
 「正しい」やり方なんて知らなくても、「本物」かどうかなんて分からなくても、恋はしてしまうもの。この作品を読んでいてイイなと思ったのは、そういった『本当の形』を思いながらも、恋愛の中で相手や自分自身の気持ちと真っ直ぐに向き合う女の子も描かれているところです。ここじゃないどこかに「本当」があるんじゃなくて、自分が感じた全てが本当なんだ。そう気づいて認めてしまえば、心の中のモヤモヤがスーッと晴れていく。それだけでどこかへ踏み出していけるわけじゃないけど、少なくとも今ここに私は確かにいるんだって。自信と呼べるほど強くはないけど、大丈夫だって思えるんだって。そんな機微ある感情が��みに描かれているんですよね。
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〔110ページ〕
 相手や自分自身と向き合うということは、あなたと私で話すということ。恋人同士であっても「恋人」という型にはめるのではなくて、個人と個人で関係を築くということ。右側の子の「君だから」を期待しちゃう気持ち、分かりすぎる~。左側の子の「それでもいっか」もグッときます。もちろん、これはホントに「私じゃなくてもいい」と思ってるわけじゃなくて、その裏に“あなたを実際に励ましているのは確かに私なんだから”という自負が見えるのがイイんですよね。
   ◇
 恋愛の『本当の形』に自分をはめようとするから苦しくなるのなら、そんなものにはめなくたっていい、と言うだけなら簡単なのです。『本当の形』を捨てることが「約束された幸せ」に別れを告げることと等しいのなら、そんなものはありもしないと分かっていても、手放しづらくて仕方がないものでしょう。だからこそ、相手や自分自身の気持ちと素直に向き合うことは尊いのだと思います。全てが手探りで、全てがぶっつけ本番。苦しみや悲しみが報われるとも限らない。それでも一歩踏み出せるとしたら、ひとえに“やっぱりあなたが好きだから”という素直な情動ゆえ。そして迷い悩む日々に何度も“やっぱり”に戻ってくるからこそ、二人の日々は積み重なっていくのだと思います。その先に約束された幸せなんて見えなくても、きっと大丈夫。日々を積み重ねたことそれ自体を幸せだって言える日が、いつか来たらいいなって、思えるようになるはずだから。
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〔107ページ〕
 素朴な気持ち、忘れないようにしたいですね。
(すいーとポテト)
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4komasusume · 2 months
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ユニークな言語感覚、王道の青春 ――有馬『エイティエイトを2でわって』
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(1巻P22)
 有馬『エイティエイトを2でわって』は独自の言語感覚によって描かれた青春物語です。作者の「言葉・台詞」に対するこだわりようは並ではなく、全てのコマ、全ての台詞が精密に考え抜かれています。
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(1巻P17)
 「ピアノへの反抗期」というワードはわかりやすく独特で、この作者にしかないセンスを象徴しています。また、1コマ目の「鍵盤……でしたっけ?」という少しひねった言い回しはさりげなくも効果的で、なかなか他人には生み出せないユニークさを感じさせます。更には4コマ目、「ポテチ『とか』食べてました『けど~』」という台詞は、内容自体はありがちにも見えますが「とか」「けど~」といった細部の表現で独自性を演出しています。そして3コマ目、一見普通の内容ですが、見逃せないのは「フ……」「ゴクリ……」という書き文字。これがあるだけでこのシーンの茶番っぷりが浮き彫りになり、思わず笑ってしまいます。  このように、どのコマを取ってもオリジナルな創意工夫が施されており、非常に手の行き届いた作りであると言えます。ここまで徹底してやっている作品はなかなか多くないですね。  他にもいくつか例を見ていきましょう。
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(1巻P23)
 流れるような台詞の最後に「聴きてえわ…天才のピアノ…」。これはもう作者以外の誰にも思いつきようがないですね。こんな台詞が無数にあるのが本作です。地味ながら付け加えると、「聞」ではなく「聴」を使っているところもポイント高いです。
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(1巻P26)
 シンプルですよね。それなのに真似できそうもない。天性のセンスです。
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(1巻P50)
 「味気」という言葉のユニークさに着目する感度の高さと、それを膨らませる技量。これ、本当に真似できないですからね。
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(1巻P77)
 キャラクターの性格を考慮し、「おおむね…」ではなく「おおむねェ…」とする。キャラに合わせた台詞を描くということはわかるのですが、そのために「ェ」のカタカナ一文字を挿入するというのはわからない。でも圧倒的に正解なのですよね。このあたり、計算ではできないような気がします。
   *
 このように、言葉の表現に特色のある本作ですが、あくまでそれは世界を彩るための飾り。その本質は王道の青春物語です。ピアノの世界で夢破れた少女が、純粋にピアノを愛する少女と出会って心を揺れ動かす。そんな普遍的なストーリーに作者は真正面から取り組んでいます。それはとても真面目で誠実な姿勢であり、故に本作も気品と知性の溢れる作品となっているのです。
 確固たる信念で丹念に織り上げられた逸品です。心からおすすめします。
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エイティエイトを2でわって 1 (まんがタイムKRコミックス)
(水池亘)
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4komasusume · 3 months
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悪魔なメイドは少年の心を通わせる物語――あきらんぬ『キミはあくまでも。』
 
 
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キミはあくまでも。 1巻 (まんがタイムKRコミックス)
posted with AmaQuick at 2024.02.04
あきらんぬ(著) 芳文社 (2024-01-26)
Amazon.co.jpで詳細を見る
 今回取り上げる作品は、あきらんぬさんの初コミック『キミはあくまでも。』です。作品要素としておねショタ、メイド、メガネっ娘、異種交流、触手プレイとディープな要素がてんこ盛りとなっています。これらの要素をひっくるめて一言でこの作品を紹介するなら、おとぎ話4コマというのが最適ではないでしょうか。
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 作品の冒頭で[西暦20XX年 イスタリカ国 「ハーグーヴァ島」]と語られています。架空の国と島、そして特定されない年代。これはおとぎ話で言うところの「昔々あるところに」という枕詞と同質の効果があります。これを作品冒頭に置くことで、おとぎ話、ファンタジーであるということを読者に提示する舞台装置となっているのです。おとぎ話であるなら悪魔が登場するような設定も繰りだすことができますね。
 メインキャラは二人。上流階級に属する少年・ヴェネル・ノートン。ノートン家の次期当主が約束されています。容姿端麗で聡明な少年ですが、館にヴェネル以外の家族はいません。学校へも行かずに孤独を抱え一人で何をするわけでもなく日々過ごしていました。
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 そんな彼の前に現れたメイドがエクールカ。美人でメイドでメガネっ娘で巨乳という妖しく官能的な雰囲気をまとっている人物ですが、彼女はタコの悪魔が人の姿に変身しているのです。つまりタイトルの『キミはあくまでも。』は悪魔とあくまでものダブル・ミーニングになっているわけですね。
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 ノートン家の館にはエクールカ以外にも使用人が多くいますが、表情が描かれることはありません。キャラクター性がないのです。使用人たちがヴェネルに隔意を抱いている、もしくはヴェネルがそう思っているからか。どちらにせよヴェネルにとって、自分を見てくれているのはエクールカだけであるというのがよくわかる演出であり、この作品は二人の物語であるというのが伝わってきます。
 エクールカはヴェネルに対して過剰なスキンシップを仕掛けてきます。ここに極上のおねショタを楽しむことができるのです。
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 未だ思春期前とはいえエクールカの肉感的な身体に密着されて赤面するヴェネルからは熱き滾りを得ることができます。ショタがお姉さんキャラに対して赤面する姿には世界に光をもたらす力がありますね。赤面しながらなんとか毅然とした態度をとる努力をするヴェネルというキャラが素晴らしい。
 さらに悪魔と人間の異種交流が加わります。触手に絡め取られる少年という倒錯したシチュエーションもまたそそりますね。
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 異種交流、一歩進んで異種ラブは古今、洋の東西を問わずに王道のシチュエーション。それにおねショタを組み合わせた時の素晴らしさは最高です。見ているだけで目の保養になります。また、エクールカとヴェネルは個々のキャラクターとしても魅力的であり、その核となるのが二律背反の気持ちにです。
 ヴェネルは自分に関心を示してくれるエクールカに安らぎを得ていますが、悪魔である彼女が何を目的として自分に近づいたかという警戒感を持っています。
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 ただこの警戒心はエクールカが悪意を抱いていないのを証明したいことの裏返しと読み取ることもできます。それはヴェネルのこの内面から想像することができるのです。
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 そしてエクールカの方はヴェネルに好意的な感情を抱いていますが、悪魔が善行を為すという矛盾を抱えています。その理由は1巻ではまだ語られることがありませんが、ヴェネルと過去に何かあったのではないかというのをうっすらと読み取ることができます。
 特にヴェネルの感情の揺らぎは、悪魔が人に害をなす存在で決して油断して良い相手ではないことを理解はしていても、孤独な心を満たしてくれるエクールカへの好意のせめぎ合いが繊細に描かれていて、おねショタシチュエーションに深いドラマ性を持たせています。エクールカは何もかも見透かしている反面、目的がなかなかはっきりと明かされないことにより、はっきりとした結論を持てないヴェネルの感情描写が際立つ構造になっているのです。
 『キミはあくまでも。』おねショタや異種交流がまず目に留まりますが、ヴェネルの視点から見るジュブナイル作品としても大変面白いです。孤独な少年のもとに現れた理解者との時間の共有。求めているものを満たしてくれる優しさと、決して手に入らないのではないかという予感を合わせた悪魔のメイドとの交流。美しく淡い色をした感情に彩られたおとぎ話が語られます。
(量産型砂ネズミ)
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画像出典 芳文社 『キミはあくまでも。』 1巻 P7,P2,P6,P13,P30,P24,P40 出展順
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4komasusume · 3 months
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全人類よ、今すぐ橋本ライドンさんの『妹・サブスクリプション』を読んでくれ
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〔なかよし姉妹 -- 2023年10月10日〕
 可愛すぎる妹シリーズの印象で読み始めてみたら、まさか骨太のSFヒューマンドラマになっていくなんて、連載当初は思ってもみなかったんですよ、マジで。
作品の紹介に入る前に
 この記事で紹介する『妹・サブスクリプション』(妹サブ)は、ぜひともツイッターで毎日21時に更新される最新話を連載で読んでいただきたい。3月8日に発売される単行本を待つことなく、今すぐ連載で読んでほしいのだ。それくらい、この作品を連載で読む体験にはすさまじいものがある。
 今から連載を追いかけるには、まずは min.t で公開されているこれまでの連載まとめを読むといいだろう。連載開始は2023年10月10日であり、これまでの話数は約100話、すなわち100本の4コマなので、それほど難なく追いかけられるはずだ。その後、連載媒体である「ツイシリ」アカウント @twi_sirius、または作者・橋本ライドンさんのアカウント @hashimotorideon をフォローいただければ、最新話の更新やその周知が流れてくるだろう。
 以下、この記事は作品紹介の都合上、これまでの連載のネタバレを含んでいる(できるだけ軽微なものに抑えたつもりではある)。妹サブのマンガ体験を十全に味わいたい方は、この記事の続きを読む前に、ご自身で連載を読んでいただければ幸いである。
前置きはここまでにして作品の紹介に入る
 妹サブの舞台は、失われた人間を模倣する人造人間技術「レプリカント」が実現された近未来。主人公の一人である姉のみゆきは、妹・今日子(きょんちゃん)のレプリカントとともに暮らしている。冒頭で引いた第1話の時点で、妹は既にレプリカントなのだ。その設定は連載初期に少しずつほのめかされていった。
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〔お姉ちゃんの部屋 -- 2023年10月10日〕
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〔嫌いな業者 -- 2023年10月12日〕
 連載開始から3日目までの印象的な場面を挙げよう。意識を失ったと思しき妹の体躯が、姉によって鍵付きの部屋に引きずられ、「回収センター」を名乗る者によって箱詰めされる。それも複数体が同じような姿で。この時点で、妹は人間ではなくロボットのような何かであること、またタイトルの「サブスクリプション」は昨今の継続購入サービスを意味していることが推察できた。だがその核となる設定はまだ示されておらず、確証がないまま不穏な空気が醸し出されていったのだ。
 妹サブのマンガ体験の面白さは、こういった毎日のハラハラドキドキにある。各話で明かされる事実が断片的であり、次の更新は翌日を待たなければならないことから、その間に想像や考察が否応なく膨らむのだ。ここまでに私が述べたあらすじや解説は過去の連載を読んだ後だから書けるのであって、現在進行形で読んでいたときには翌日の展開を予想しても外すことは日常茶飯事だった。外してもその日のうちにスッキリできるならまだ良くて、時には何日も核心が伏せられたまま物語がジリジリと進み、早く真相と答え合わせさせてくれ!と悶絶と期待が入り混じった感情に駆られることもしばしばだった。
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〔いつも通りの朝 -- 2023年10月23日〕
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〔あなたにだけは話したい-- 2023年10月30日〕
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〔あなたは異常 -- 2023年11月3日〕
 作中で「レプリカント」という単語が初出するのは連載開始から2週間後、妹がレプリカントだと姉の口から名言されるのはさらに1週間後、そして壊れやすいからサブスク形式だという設定が述べられるのはそのまた4日後であった。ここでようやく、妹が“意識を失った”こと、複数体存在したこと、そして回収されたことに合点がいき、もやが晴れるようなカタルシスが得られた。そして同時に、これらの場面はみゆきとレプリカントの、そしてレプリカントと社会の関わりを示してもいたのだ。
妹サブのタテ軸とヨコ軸
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〔妹は そのままで -- 2023年10月13日〕
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〔いつも通りの朝 -- 2023年10月23日〕
 妹サブの読みどころはいわばタテ軸とヨコ軸に大別される。タテ軸は、みゆき(姉)から今日子(妹)に向けられる“家族愛”の歪さだ。今日子のレプリカントを溺愛するみゆきは、オモテ向きには頼れる保護者でありつつも過保護のきらいがあり、妹離れできていない姉のように見える。だが実際にはもっと悪いのだ。
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〔悩めるお姉ちゃん -- 2023年10月14日〕
 その悪さは、みゆきが今日子のレプリカントと相対していない、ウラ側の状況で見え隠れする。キーボードを猛烈に叩いてサポートチャットに要望を送り、無機質なビジネス応答に舌打ちしながら怒るみゆき。その態度と「直せ」という強い口調には過保護を超えて、“愛する”妹を自らの管理と制御の下に閉じ込めて作り変えんとする魂胆があらわれている。もちろんリアルタイムの連載時には、本物の今日子は真に素直な子だったという可能性もあった。しかし現在までにその可能性は明確に棄却されている。
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〔瞳に星屑をまぶして -- 2023年11月29日〕
 さらに悪いことに、みゆきは自身の行いが正しいとかなり純粋に信じている(少なくとも、この記事の公開時点で、これまでの連載を素直に読む限りでは)。みゆきの信念は関係者との間で軋轢を生んでいき、それがまたドラマになるのだ。
 もちろん、みゆきはわけもなくレプリカントに手を出したわけではい。作品設定では、レプリカントを正当に得るには対象の家族が亡くなったとされる必要がある。みゆきが今日子自身でなくそのレプリカントと暮らしているのには相応の理由があり、それもまた連載の中で描かれている。これらの事情を理解した上でなお、彼女の“家族愛”は歪だと言わざるをえないものであって、控えめに言っても全てを首肯することはできないものなのである。こういったアンビバレンツな人間模様や読後感もまた妹サブの魅力である。
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〔いつも通りの朝 -- 2023年10月23日〕
 そして読みどころのヨコ軸は姉妹をとりまく社会との関わりである。それは家族や友人といった近しい他者にとどまらず、文字どおりに世の中の状況を含んでいる。作品世界の中ではレプリカントが社会問題になっており、受容する動きもあれば批判する動きもあることが、連載開始から2週間のうちに示された。そしてこの記事を公開した時点で進行中の連載では、レプリカントと社会のあり方がまさに描かれようとしているのだ。これは本当に連載で読んでいただきたい。
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〔違わない -- 2023年10月26日〕
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〔初めて わかってくれた人 -- 2023年10月31日〕
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〔知らない友達 -- 2023年11月12日〕
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〔あるアルバイトの苦悩 -- 2024年1月9日〕
 かような背景をベースにして、姉妹の生活とみゆきの思いは他者と相対される。近しい者では、例えば共生を否定した両親、カミングアウトを“ひとまずは”受容したみゆきの友人、何も知らずに“再会”した今日子の友人。より社会の側では、例えばレプリカント企業のカスタマーサポートで働くアルバイト。他にも、みゆきと同様にレプリカントに手を出した別の家族や、レプリカント事業の起業者なども登場する。かくして社会の中で姉妹模様が描かれ、また姉妹模様を通じて社会が描かれる構造は、科学技術の“もしも”と同時にそれが存在する世界での人倫を描く、骨太なSFヒューマンドラマの基礎となっているのである。
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〔今日子 中3の夏 -- 2023年12月10日〕
 その中にはもちろん、もう一人の主人公である、“在りし日”の妹・今日子も含まれる。今日子の過去、あるいはやがてレプリカントに手を出すことになるみゆきの過去は、これまでの妹サブの連載の中で最も重要な物語である。これもぜひ連載まとめで読んでいただきたい。
「今」すぐ読まれるべき、ということ
 以上、私がこの記事で急ぎ語りたかった、今すぐの「すぐ」について語り切ったつもりである。ここからは、連載がまだひと段落していない現状では拙速で蛇足かもしれないが、今すぐの「今」について少しだけ語りたい。本格的な語りは単行本の発売後に別の記事を起こす予定である。
 妹サブを読み進めていくと、私は現実の現在におけるいくつかの社会問題をどうしても連想せざるを得ない――ひとつは毒親に代表される支配的な家族である。みゆきは親ではなく姉だが、家族の御旗のもとに個人(今日子はみゆきの姉である前に今日子個人である)の人格を支配どころか改竄までせんとする姿はまさしく毒親のそれに当たると言えよう。もうひとつは人格ある他者を部分的に模倣する技術であり、その最たるものがいわゆる生成AIである。特に妹サブにおいて中心的に描かれる家族と故人というテーマにおいて、私はTEZUKA2020・TEZUKA2023プロジェクトを真っ先に思い浮かべた(奇しくもTEZUKA2020プロジェクトの単行本は、3月に刊行予定の妹サブとの単行本と同じく、講談社から刊行されている)。故人・手塚治虫の版権を管理する法人やその家族が関わるこのプロジェクトは、仮に著作財産権の観点で正当だとしても、死後も譲渡できない著作者人格権の観点では正当性をどのように主張するのか。まさか家族の御旗のもとに正当性を主張するとでも言うのだろうか。よしんば法的に許されたとして、法に先立つ人倫として許されるべきなのか――こういったことを考えてしまうのだ。
 妹サブは意図的にせよ結果的にせよ、現実のかような社会問題を空想のSFマンガの形で読者に問いかけているように思う。レプリカントの「レプリカ」は複製を意味する言葉だ。そして人間が『死後に』『他者によって“正当”に』『“複製”と称される行為の対象になる』ことは、人間の尊厳に踏み込み、個人主義を溶融させ、代替可能性を加速させる営みと捉えられるだろう。かような世界において、人間が人間らしくあること、あらゆる何かに先立つ個人であること、そしてその人格が代替不能であることは、いかにして成立し得、また成立“しなければならない”のか――過剰な願いかもしれないが、私はそのひとつの答えを、あるいは少なくともその確固たる問いを、妹サブには描き切ってほしいと思っているのだ。
(すいーとポテト)
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4komasusume · 4 months
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ダジャレを言うこと、距離感を測ること ――ため『鈴宮さんのダジャレをスルーできない』
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(1巻P8)
 わかるなあ。わかる。
 ため『鈴宮さんのダジャレをスルーできない』はヒロイン・鈴宮さんの繰り出すダジャレの数々を楽しむ漫画、ではありません。フォーカスしているのはダジャレそのものではなく「ダジャレを言う」という行為とそれにつきまとう「空気を読む/読まない」の繊細な距離感です。
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(1巻24P)
 会話の中、不意にダジャレを思いついて言ってみたらしーんとなってしまった、という経験は誰しもあると思います。そもそもダジャレとはそんなに面白いものではなく、それを脈絡なく披露する行為は空気を読まず破壊していることと同じです。それでも、どうしても言いたくなっちゃうという点が鈴宮さんのユニークなかわいらしさですし、それを許容する主人公・嶋くんとの「特別なつながり」としても機能しているわけです。
 またこの作品は嶋くんの「他人の懐への入らなさ」に対する物語でもあります。
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(1巻P10)
 幼少期から転校を繰り返し、友人ともすぐ別れることが常態化していた彼は、他人とあまり深く関わろうとしない人物となっていました。象徴的なのが次のシーン。
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(1巻P49)
 自分で自分のことを八方美人と呼ぶ主人公なんて初めて見ました。読んだ人ならわかると思いますが、彼、全く八方美人じゃありませんからね。そういったシーンは皆無に等しく、それだけに彼の自己評価の歪みがクローズアップされます。  八方美人って、要はその場の空気に合わせて適当なことを言う人です。ダジャレで場を無差別に台無しにするような行為とは対極に位置するものです。嶋くんが何を思って自分を八方美人と言ったかはわかりませんが、少なくとも彼は鈴宮さんのダジャレに適当に付き合っているわけではありません。  平穏に日々を過ごしたいはずの彼は、寒いダジャレを繰り返す鈴宮さんのことだけはどこか放っておけず、関係を深めていくことになります。不可思議ながらもかわいらしい彼女の存在で、彼の何がどう変わるのか。それがストーリー上の大きな読み所になっています。
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(1巻P61)
 恋愛沙汰になるのかならないのか曖昧なまま続いていくノリも面白いですね。
   *
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(1巻P64)
 ダジャレとはすべからく無駄なものです。その無駄で会話の流れを止めてしまうことから��骨に呆れられることもあります。それでも鈴宮さんはダジャレを言う。そこには、言う相手への甘えと信頼があります。だからこそ彼女は安心してドヤ顔できるのです。  他のテーマでは描けない人間関係を形にした青春物語として非情にオリジナリティの高い作品です。おすすめします。
 最後に鈴宮さんの素敵なドヤ顔を見ながらお別れです。
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(1巻P20)
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鈴宮さんのダジャレをスルーできない 1巻 (まんがタイムコミックス)
posted with AmaQuick
ため(著)
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(水池亘)
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4komasusume · 4 months
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愛すべきポンコツキャラ達の狂想曲――双葉陽『ばーがー・ふぉー・ゆー!』
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ばーがー・ふぉー・ゆー! 1巻 (まんがタイムKRコミックス)
posted with AmaQuick at 2023.12.24
双葉陽(著) 芳文社 (2023-11-27)
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 今年最後の取り上げる作品はきららMAXで連載中の作品、双葉陽さんの『ばーがー・ふぉー・ゆー!』です。
 本作の主人公にして笑いの肝であるのが春原(すのはら)こむぎです。第1話の時点で休みの日にはベットに入ったままソーシャルゲームでひたすらハイスコアを目指しています。プレイしているゲームも人気作品ではなく、マイナーで旬の過ぎたハンバーガー店で店員になるゲームで、登場キャラのピ・来栖というキャラに熱を上げている感じです。部活もせずに友達もなし。勉強に力を入れているわけでもない。
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 学校で友達を作ろうと試みますが、そのやり方がイタイことこの上ない。ハンバーガーの帽子をかぶって注目を浴びようとする行為には厨二病の症状が見受けられます。自分が思い入れのあるものは他者も同様に価値を認めていると思い込む。自他の境界があいまいな思春期にやらかす案件です。こむぎというキャラが今までの人生で友達関係を作れなかったことが容易に想像できるのです。
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 これらのこむぎの持つザンネン要素は埒外なものではなく、人が誰しも経験するザンネン要素をカリカチュアライズしたものです。読者はこむぎというキャラに共感や理解を持つことができます。さらに妹のまいにこむぎを肯定させることによりネガティブ感を軽減させる演出もしています。肯定させるだけでなくこむぎがアクションを起こさせるきっかけも同時にまいに言わせているのが秀逸です。
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 第1話目で描かれるこむぎは家族という一切遠慮のない相手に見せる地のキャラと、人間関係を構築できていない相手に対する素っ頓狂なキャラの二つを見せています。
 紆余曲折の後にこむぎはモグモグバーガーでバイトをすることになります。職場での仲間という関係を得たこむぎが新しいキャラを見せます。毒舌キャラです。
 モグモグバーガーの立地は吉祥寺駅のすぐそばです。そのおしゃれ街・吉祥寺に恐れおののくこむぎの発言です。
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 ナチュラルに町田を下に見ている発言です。神奈川県との関係でネタにされる町田市というのが下敷きに毒舌ですね。ネタにされることが多い町田ですが、街の持つスペックの高さはかなりのものであるとフォローしておきます。
 仕事仲間という関係性を構築したとはいえ、まだぎこちなさを見せる中でこの毒舌発言をしてくるのです。コメディリリーフとして大変良い仕事をしています。さらに関係性が深くなるとこの歯に衣着せぬ、身もふたもない発言をこむぎはします。
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 病気で休んでいる人の家に行っているのにもかかわらずこの発言と行動。第1話で友達を作ろうと迷走しまくっていたこむぎにこの対応をさせること自体が、作品全体を通しての笑いにもなっています。ちなみにこむぎがこの塩対応するのにはちゃんとした理由があるのです。
 こむぎは第1話目のエピソードで人間関係の構築が下手であることが描かれています。それが一度仲間の輪に入ったらかなり踏み込んだ関係を作っていく、かなりオタク気質の強いキャラクターです。オタクにありがちなキャラクター性に、共感や親近感を覚えるのも魅力の一つではないでしょうか。
 もう一つこの作品での面白さの肝はこむぎと他のキャラクターの関係性の変化です。そのキャラクターは小浦零(こうられい)です。こむぎに次ぐサブヒロインのポジションで、同じくバイトをしている兄の透が大好きな女の子です。お兄ちゃん大好きっこですが、その感情は天井知らずというか底が抜けているというか、なかなかの業があります。
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 先ほどこむぎが病気の男性を放置して帰ろうとしたエピソードを紹介しましたが、放置された男性が透なのです。看病なんかしているところを零に見られたらめんどくさいことになる。それ故の発言と行動だったのです。それほど度を越したブラコンの零ですが、こむぎをバイトに誘ったきっかけを作ったキャラでもあります。登場時は先輩としてこむぎを引っ張っていましたが、実はこむぎより一月早く入っただけで、新人研修も未だに合格していない状態で、こむぎよりポンコツだったのです。
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 こむぎにド直球に失礼なことを思われています。
 零のポンコツが判明したことによりこむぎとの関係が変化します。こむぎにツッコミを入れていた零がボケにまわることになるのです。そしてボケレベルはこむぎを超えていきます。こむぎと零の二人がボケを担当することで笑いのバリエーションが増えるのです。
 
 『ばーがー・ふぉー・ゆー!』ではキャラクターのポンコツ具合が魅力になっています。「愛すべきバカ」という表現がありますが、この作品では「愛すべきポンコツ」といったところでしょうか。ポンコツ部分ではあるけどそれが良さでもあるという描き方がされているのでコメディとして
秀逸な作品となっています。
(量産型砂ネズミ)
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画像出典 芳文社『ばーがー・ふぉー・ゆー!』1巻 P10,P13,P11,P31,P111,P20,P43 掲載順
 
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4komasusume · 5 months
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様式美の創造と破壊――にとりささみ『ホワイトタイガーとブラックタイガー』
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〔20ページ〕
 これは「軽いやけど」で済んでいるのだろうか(真顔)
 にとりささみ『ホワイトタイガーとブラックタイガー』はお約束あふれるギャグ4コマだ。基本的な流れは、トラのホワイトタイガーくんとエビのブラックタイガーくんが日々の暮らしを送る中で、ブラックタイガーくんがドジを踏んでおいしそうになってしまい、ホワイトタイガーくんが救急車を呼んで、うさぎ先生に治療してもらう、というもの。そして完治したブラックタイガーくんは次の4コマでもドジを踏み……という展開が繰り返されていき、この作品の様式美として定着していく。
   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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ホワイトタイガーとブラックタイガー
posted with AmaQuick at 2023.12.12
にとりささみ(著), KADOKAWA (2023-10-26)
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(最新の連載は Twitter を「from:nitorisasami #ホワイトタイガーとブラックタイガー」で検索)
   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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〔21ページ〕
 ブラックタイガーくんは剥かれることもある。殻はどこかで失ったように見えるけど、そんな簡単に再生するものなの……? お決まりの「軽い●●ですね」で済ますうさぎ先生、どんな症状でも元通りに治癒するブラックタイガーくん、そして何の疑問も持たずに「軽い●●でよかったね~」と反復するホワイトタイガーくんはこの作品の黄金のトライアングルである。
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〔22ページ〕
 焼かれることもある。ブラックタイガーくん、もはや自ら鉄板に飛び込んでない!? 全く動じない店員さんや診察室で平然と食事に興じる三匹を見れば、この展開にシリアスさは微塵もなく、お決まりのギャグであることが読者にも分かってくる。
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〔24ページ〕
 溺れることもある。凝った料理名はそれ自体が笑いどころであるとともに、著者が実際のエビ料理から逆算してシチュエーションを作っていることも伺える。そしてうさぎ先生はたまたま居合わせたわけではなく、二匹をいつも見守っている、あるいはストーキングしていることが他の4コマでも示されていく。
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〔44ページ〕
 茹だることもある。4コマ目に登場する犬のおまわりさんはこれ以降も先生の魔の手から二匹を守ったり、先生と仲良くケンカしたりしていく。そしてホワイトタイガーくんの留守録メッセージが「ゆでえび」だけな点が、ブラックタイガーくんがおいしそうになってしまうのはもはやいつものこと(だから「どう」おいしそうになってしまったかさえ言えば全て伝わる)という身も蓋もなさのあらわれで笑いを誘うのだ。
   ◇
 かくして綴られるお約束によって、この作品の可笑しみは生まれている。しかしそれだけではない。著者は自身が構築したパターンを自ら破り、それによっても笑いを生んでいるのだ。
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〔37ページ〕
 例えば、ホワイトタイガーくんの方が治療される話。トラがぐるぐる回るとバターになる、という『ちびくろさんぼ』の物語をオマージュし、言葉遊びに過ぎなかったはずのトラとエビのコンビを食べ物で関連付ける力技よ。その場に溶けたバターではなく、パッケージされた固形バターになっちゃうところがシュールすぎる。この世界の法則どうなってるの!?
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〔86ページ〕
 うさぎ先生が早とちりをする話。唇を噛んだ表情は、先生と同じくスカされた読者の気持ちを代弁しつつ、二匹が無事だったんだからそんな渋い顔しなくたっていいじゃない、という可笑しみも生み出している。
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〔72ページ〕
 うさぎ先生が不審者を捕まえる話。いいことをしたように見えるけど、先生も二匹をストーキングしてたから同じ場所にいたんじゃないですか? でも狙った獲物を他の誰にも渡さないスタンスはちょっとカッコいいかもしれない。
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〔54ページ〕
 そして診察結果を告知する話。ブラックタイガーくんがうさぎ先生の施術ではなくお決まりのセリフで治癒しているように見える点と、ホワイトタイガーくんが「まちがえちゃった…」とベタに焦る様は、メタなお約束に過ぎないはずの黄金のトライアングルを奇妙に映し出す。君たち実はグルなの? そして呪術か何かで治療してるの?
   ◇
 キャッチーなキャラとセリフによる定番の展開で笑いを誘うだけでなく、その展開を自ら外すことによっても可笑しみを生み出す。言わば様式美の創造と破壊を同じ作品の中で巧みにやってのけるのが『ホワイトタイガーとブラックタイガー』の面白さだろう。単行本でまとめ読みした後は Twitter での連載のフォローもオススメしたい。
 この記事の最後も様式美で締めたいと思う。
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〔85ページ〕
 軽いすり傷でよか……いやこれは「軽いすり傷」で済んでいるのだろうか(真顔)
(すいーとポテト)
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4komasusume · 5 months
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緩急で演出する青春 ――大熊らすこ『ハッピーセピア 大熊らすこ作品集』
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(1巻P18)
 そうはならんやろ……
 大熊らすこ『ハッピーセピア 大熊らすこ作品集』は4コマとしてはめずらしい短編集です。とはいえ内容の大半は『ハッピーセピア』が占めており、後は単話の『あるじのいぬまに!』と、ストーリー形式の『星屑テレパス』読み切りが掲載されています。  『ハッピーセピア』は不可思議な話です。女子高生・かえでは敬愛する10歳年上の家庭教師・みなみからこのように言われます。
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(1巻P9)
 その願いを何とか叶えたい……そうだ、タイムトラベルしよう! という発想の跳び方。実際にタイムトラベルに成功するところから話が始まるのですが、その仕組については一切の説明がありません。とにかくタイムトラベルはあるのだという前提の元に話が進む思い切りの良さは、本作が描きたいものは何かを明確にしてくれています。
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(1巻P45)
 つまり本作は、友達になることをテーマにした王道の青春物語なのです。勉強の虫であり他人と関わろうとしない高校時代のみなみが、唐突な闖入者たるかえでと交流することでだんだんと変化していく、その過程を丁寧に描いています。
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(1巻P57)
 感情を描くため、効果的に用いられているのは緩急をつけた演出です。これは主に台詞の量、吹き出しの区切り、展開のリズムで表されており、独特の表現になっています。  例えば以下の2ページ。
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KUUHAKU
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(1巻P23-24)
 前半のページでは文章量が多く、大きな幅を取った形で描かれています。それを布石に、後半ではパッと見てわかるくらいに台詞の部分が小さく、また一つの文章による台詞を3コマに分けてゆったりとしたリズムで読ませる工夫が成されています。ただ表情を描くだけのコマも効果的です。  同様の試みは他にも見られます。
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(1巻P70-71)
 3コマ目でみちっと台詞を詰め込んで勢いを演出し、その直後から速度を一気に落とす。こうすることで赤面するみなみの態度がより鮮烈に印象づけられます。ここには明確な意図とロジックがありますが、それだけではないでしょう。7コマ目、顔を半分だけ描き、しかも傾かせる、というやり方はなかなか計算ではできません。感性の鋭さが見て取れるように思います。
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(1巻P81)
 本作には目を見張るような演出技術が数多く盛り込まれています。それらを全力で行使して描かれるクライマックスの感動を、ぜひ味わってください。
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ハッピーセピア 大熊らすこ作品集 (まんがタイムKRコミックス)
posted with AmaQuick
大熊らすこ(著)
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(水池亘)
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4komasusume · 5 months
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想像の翼をNTRの世界へーー後藤羽矢子『ボクの妻はNTRれない』
 
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ボクの妻はNTRれない (バンブーコミックス)
posted with AmaQuick at 2023.11.25
後藤羽矢子(著) 竹書房 (2023-09-14)
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 今回取り上げる『ボクの妻はNTRれない』は艶笑4コマです。艶笑とは「おかしみが含まれた性風俗の描写」。艶笑譚(たん)という表現があります。下ネタ、エロネタをメインにしたジャンルです。1990年代から2000年代に4コマのジャンルで流行りました。ももせたまみさん、さんりようこさん、荻野眞弓さんなどはこの艶笑4コマで人気を博し、活動の幅を広げました。4コマ史の中でも外せないジャンルと言えます。今回取り上げる後藤羽矢子さんはこのルートではなく、成年向け作品で実績を上げ「まんがライフ」で『どきどき姉弟ライフ』の連載を始めました。艶笑4コマを手掛けるのは4コマ漫画家として実績を上げてからなのですね。
 予備知識として持っていてほしいのですが、タイトルにある「NTR」とは寝取られ、寝取りの略語です。今作では寝とられのほうに主眼を置いています。男性向け成年ジャンルの一つです。自分の妻や恋人が第三者と性的関係を持つことをテーマにしたジャンルで、倒錯した性癖を満たすシチュエーションとなっています。
 荘司貞雄(しょうじさだお)と妻である心寧(ここね)は仲睦まじい新婚夫婦です。ただ貞雄に心寧に知られてはならない秘密を抱えていました。それがド級の寝取られ属性を持っていることです。
 結婚を機に寝取られ属性を卒業とした貞雄ですが、人妻を得た事実により興奮する現実を手にいれてしまいました。妻への愛と同時に寝取られ妄想も育むことを決意するのでした。この貞雄の寝取られ妄想が1話完結で描かれる構成になっています。
 貞雄の妄想から繰り広げられるのは定番の寝取られから、最新の寝取られまで多岐にわたり描かれます。
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 最初に取り上げる寝取られ妄想は「電マ」、電動マッサージと配達人です。寝取られでは古典的シチュエーションで、欲求不満なんでしょと言って寝取られる妄想です。貞雄のこだわりとして竿役のビジュアルをしっかりイメージするというのがあるので、どの妄想でも熱いドラマが見れます。この妄想をするためだけに電マを通販する貞雄の拗らせ具合がわかるエピソードになっています。
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 秀逸なのは電マにエロのイメージを持っていない心寧の反応を描くことで、貞雄の拗らせ具合がより強調することができているのです。
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 この寝取られ妄想はリモート寝取られ。ネットミームにもなっている「オタクくん見てる〜?」ですね。貞雄がリモート寝取られの歴史について語るのですが、写真送付、ビデオレターの様にタイムラグがなくリアルタイムで見せつけられ、無力感を味わうことになるシチュエーションです。社会のインフラ設備の拡充とともに、趣味嗜好の世界も変化していることが貞雄の妄想により語られています。
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 この貞雄へのツッコミを入れつつ、愛ある夫婦仲を描いているのが秀逸です。
 かなり拗らせた寝取られ癖を持っている貞雄と無垢な心寧という当初の構図は後半になると変化してきます。心寧にスーツフェチの性癖があることが発覚するのです。
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 心寧はセックスの最中にスーツを着た貞雄を攻めたいという妄想をして、気分を上げるテクニックを編み出します。ただこのように非常に後ろめたい気持ちになるのです。この心寧がスーツを着た貞雄とセックスをする機会に恵まれると…。
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 愛欲ハンターの表情です。貞雄は寝取られ妄想を満喫しながら心寧に対して後ろめたい気持ちを持っていましたが、心寧の覚醒によりメタ的ながらも妄想の源である存在から抜け出し、二人は同じステージに立つことになりました。
 寝取られという性癖はジャンルとして成立するほど人気を集めていますが、忌避する人もまた存在します。心寧のスーツフェチへの覚醒は、艶笑4コマの「笑」を成立するための仕掛けの一つです。この仕掛けはまだあります。
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 貞雄の尖った性癖にツッコミを入れる後輩の存在。貞雄に寝取られ属性を含め性生活全般の相談を受け、その都度ツッコミを入れます。この相談シーンがテンプレートとなっているのです。このシーンを入れることで取り上げるテーマの説明と貞雄の志向に対するツッコミの双方を両立させています。ちなみに貞雄に冷静にツッコミを入れている後輩君ですが彼は妹属性持ちです。
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 リアル寝取られの否定。貞雄はあくまでも妄想として寝取られを楽しんでいるので、リアル寝取られについてはたびたび否定する言動をとっています。
 1話目で声高らかに「虚構と現実の区別をつけろ」と彼の寝取られへのスタンスを明確に示しています。心寧の元担任が略奪婚をした話を聞いた時もその行為を非難しているのです。この現実への寝取られ否定を際立たせる演出として、貞雄の寝取られ妄想仲間が心寧を妄想で寝取ってやると宣言したオチがこれです。
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 妄想でさえもリアリティのある寝取られはやれない。ということは現実に知り合いの人を寝取るのはかなりハードルが高いことであることがこのオチから連想できます。
 そして貞雄の心寧への愛情。このぶれることのない軸を描いています。
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 同じマンションに住む人妻から粉をかけられた時も間髪入れず心寧以外のパートナーはありえないと答えています。また田舎でおじいちゃんやおばあちゃんに心寧が孫の顔を見せてほしいと囲まれた時も心寧を守る壁となるのです。
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 このように寝取られという背徳の快感を笑いに昇華する仕掛けが作品のいたるところに配置してあります。寝取られは現実で考えると不倫や略奪愛になるのであくまでフィクションとして楽しむことを強調しているのです。
 最後に後藤羽矢子さんには『アスクミ先生に聞いてみた』というお悩み回答4コマがあります。この作品内は生徒の疑問にアスクミ先生が回答を出すという形式の4コマです。後藤羽矢子さんはこの疑問に対して回答を出すという展開を色々な作品内に取り入れています。『ボクの妻はNTRれない』ではこんな感じで描かれています。
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 心寧が抱いているセックスでの悩みについての回答です。歯に衣着せぬぶっちゃけ感ですが、笑いを含んでいて機知に富む回答です。男性からのこの回答はなかなか出ないなと感嘆しました。さらにこのお悩み相談から心寧のスーツフェチへの覚醒につなげるところが上手いのです。
 令和の艶笑4コマとして寝取られというシチュエーションの多々を楽しめる作品です。成人向け作品も手掛ける後藤羽矢子さんの本領発揮がされています。
(量産型砂ネズミ)
人はエロスと共にあり――後藤羽矢子『お嬢様の痴的好奇心』
春夏秋冬お酒は幸せの味ーー後藤羽矢子「うわばみ彼女」
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画像出典 竹書房 『ボクの妻はNTRれない』 P9,P10,P54,P55,P109,P117,P6,P8,P46,P69,P98,P103 掲載順
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4komasusume · 6 months
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4つのコマで大喜利だ!? 「現代4コマ」作品を分類しつつ紹介する試み
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「#現代4コマ」は Twitter (現「X」) 上のハッシュタグ・ムーブメントです。最初の使用者は「いととと」さん (@itototo1010) のようであり、現在はいとととさんや Twitter アカウント「現代4コマ」 (@gendai4koma) を中心に投稿が行われています。
 現代4コマとは、いとととさんによれば「マンガに捉われない新たな4コマの概念」であり、また「現代4コマ」アカウント管理者のひとりである人生さんによれば「芸術運動でありながらも大喜利性を秘めたユーモア深きコンテンツ」とのこと。筆者の理解では、二重カッコ付きの「いわゆる『現代アート』」を参照しつつ、抽象表現や現実の事物を4コマだと理屈付ける試み、といったところでしょうか。挑戦的で挑発的だが表層的にも思えるこの営みは、しかし投稿されている作品を見れば、してやられた、と感じるものがいくつもあります。
 冒頭に挙げた、いとととさんの代表作4つを紹介しましょう。まずは『運命を思い付いた瞬間』。ベートーベンの顔を一部だけ映した1・2・3コマ目とタテ長のバストアップを映した4コマ目は、タイトルによる誘導とあいまって『交響曲第5番 運命』の冒頭のジャ・ジャ・ジャ・ジャーンを想起させます。ベートーベンと同時にコマもタテ方向に伸縮させることによって時間流の長短を表現しているわけです。また、言わば4つあると認識できるものを、具体的な4つのコマに収めていく、あるいは4つのコマに見立てていくのも、現代4コマの主流な手法であるように見えます。
 次の『卒業式』は合唱曲『旅立ちの日に』を題材にした作品。混声合唱のパートごとに時間的にズレたり合わさったりする歌唱を、各コマを二重にしてヨコ方向に空間的にズラすことによって表現しています。歌唱のズレがネタになることは珍しくありませんが、この作品で特筆すべきはそれを4コマ的な手法で表現している点です。これはタテ方向の大局的な時間流を前提にして、ヨコ方向で局所的な時間流を表現する試みと理解できます。その製作意図はヨコ書きの文字が読者の視線をまずヨコ方向へと誘導するものになっていたり、最後に伸ばして歌う「て」がヨコ長になっていたりする点からも伺えます。
 続いての『カニカマ食べてる時/カニ食べてる時』は二本一対の作品です。前者では家族団欒のセリフが描かれているのに対して、後者ではセリフどころか何も描かれていません。俗に言う、人はカニを食べるとき無口になってしまう、というやつです。一対の4コマを用いて対比を描く手法は昔から存在するところ、この作品では片方の4コマを全くの空白にしている過激さがポイント。一本目に有を対置させることによって二本目で言わば「無を描く」ことを実現した、技巧的で哲学的な4コマと言えます。
 代表作4つの最後は『非行少年の4コマ』。円を切るように引かれた手書きのように真っ直ぐでない線は、タイトルからも推察されるように『ケーキの切れない非行少年たち』を題材にしています。元々はホールケーキを三等分するという課題に対して等分ではない3つに分けている→等分の概念が分からない少年がいる、という衝撃による問題提起だったところ、この作品は3つを4つにしただけ。元ネタの表層しかなぞってないじゃんとか、そもそも分割後の各領域が四角形になってないじゃんとか、様々なツッコミが容易に想像できる問題作です。その一方で、言わば「4つじゃないなら4つにしてしまえ」「四角形でなくてもコマと言ってしまえ」イズムも確かに感じる、ある意味でラディカルな作品のようにも思うのです。
   ◇
 現代4コマを端的に述べるならば、4コマ表現の限界と本質を追究するムーブメントと言えるでしょう。それならば、その表現を成立させている原則を理解、分類することによって、ボーダーラインはより明瞭となり、技法は再利用が可能になり、そしてまだ見ぬ先へと歩みを進められるようになるはずです。
 そこで、以下では筆者が見た数多くの現代4コマ作品を名前付けて分類しつつ、代表的と思われる作品を埋め込み画像やリンクで紹介します。なお、あらゆる作品を網羅的にカバーできてはいないこと、また名前付けと分類は完全に筆者の独断によるものあることをご容赦いただきたく思います。これもまた大喜利の一部。
(注意:技術的な問題により、作品全体を表示的できていない画像が多々あります。また、画像中の「Read more on X」は機能しません。画像に対応した作品タイトルを本文中で太字リンクにしておりますので、クリックいただき、Twitter にて観賞いただくことをオススメします。)
空白主義
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「空白主義」は何も描かれていない4コマを用いて何かを表現しようとする思想であり、究極の(屁)理屈主義とも言えるでしょう。現代4コマにおけるメインストリームのひとつであり、作品例は枚挙にいとまがありません。前述の『カニカマ食べてる時/カニ食べてる時』もここに位置付けられる作品です。
 空白主義で特筆すべき作品は、いとととさんの『骨格標本』。理科室のガイコツと対照させることによって空白の4コマを「4コママンガの骨格標本」と意味付けた画期的な(あるいは、うまいこと言った)作品です。骨格という表現からは、4コマの本質を起承転結に求める「起承転結根本主義」に対して、そのような意味付けに先立つ4つのコマ枠にこそ本質を求める「4コマ枠根本主義」の作品であることが伺えます。
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 また、空白主義をさらに推し進めた「補完主義」は4つのコマを描くことなく4コマを想起させようとする思想です。いとととさんの『はーい4人組つくって~ (班決め)』は学校の授業でありがちなフレーズを題材にした作品。そのタイトルと1つだけ残されたコマからは、作品の外部に4つ1組になったコマ=4コマが存在することが想像できるでしょう。
事物主義
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「事物主義」は現実のコトやモノに4コマを見出す、あるいはそれらを4コマに見立てる原則です。写真による表現が主ですが、前述した『非行少年の4コマ』のようにイラスト的に表現されることもあります。これも現代4コマの大きな流れのひとつであり、『starbucks』『ジェンガ』『無題 (駐車スペース図)』『無題 (ポケモンのワザ欄)』『キャベツの4コマ (作画崩壊の4コマ)』『無限1upできそう』など多くの作品が発表されています。
 その中でも、いとととさんの『サークルカットの4コマ』は同人誌即売会のサークルカットを4コマに見立てた作品です。左上隅のスペース番号欄と上部のサークル名欄を前提かつコマと見なし、カット本体を二分割することによって、全体で4コマとしているのです。この即売会はスペース番号とサークル名から推測するに COMITIA145。この回のカタログではいとととさんの同人誌『自分を4コマ漫画だと思い込んでる4コマ』が紹介されており、いとととさんはその紹介ぶりにも4コマを見出しています。
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 また、事物主義の支流のひとつである「掲示物主義」は街中のポスターや看板などを主な対象としており、『こんなビル助かるな~の4コマ』『不景気』『←』『石川のカニを食べよう』といった作品が発表されています。その中でも、いとととさんの写真作品『無題 (流石に4コマすぎる なんだこれ)』は、日鮪さんが指摘するように、現代4コマと「剥がしアート」という二つの大喜利ムーブメントの邂逅と言えるでしょう。
カラーチャート主義
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「カラーチャート主義」は4コマを着色して何かを表現する思想です。やはり現代4コマの主流のひとつであり、『オレオにケチャップ混入』『プーさん』『肉抜きバーガー』『ねぎま』など数多くの作品が発表されています。相当数の作品が事物主義の流れも汲みつつ各コマを単色で塗りつぶしており、言い換えればスーパーワギャンランドのモザイク当てを突き詰めたものになっています。
 その中でもアラヤマさんの『暗槓』は麻雀牌の白の暗カンをタテ方向に表現しており、2・3コマ目に空白主義の流れも感じられる特筆すべき作品です。また、いとととさんの『バナナ、食べ頃の推移』はむしろ時間主義(後述)の流れを汲み、また塗りつぶしだけでなく黒い斑点も描いているところが注目に値します。
時間主義
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「時間主義」は4コマを上から下へと読む順に時間が流れているものと捉える原則であり、前述した『運命を思い付いた瞬間』もこの流れを汲む作品です。また、やがみさんの『将来』は1・2コマ目の白、3コマ目からの不穏な文字、そして4コマ目から下の黒塗りが、白いキャンバスのような無限の未来、将来への不安、そしてお先真っ暗、という思春期から青年期にかけた現代社会の生きづらさを表現しています。
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 時間主義の支流のひとつである「歌唱主義」は歌唱の時間流を4コマによって表現する思想であり、先ほどの『旅立ちの日に』もここに位置付けられます。また、こーやんさんの『無題 (LMNOP)』は『ABCの歌』の冒頭を題材にした作品であり、4拍を1コマとして4コマ目で LMNOP の文字を重ねることによって、いわゆるエレメノピーのリズムを巧みに表現しています。歌唱主義の作品には他にも『モーニング娘。の4コマ』『学園天国』『天城越えの4コマ』などがあります。
空間主義
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「空間主義」は4コマを物理的あるいは概念的な空間として捉える原則です。qpdb さんの『自分』はタイトルのように見える「自分」からコマが進む=距離が離れるにつれて友人、知人、他人と疎遠な関係になっていきます。4コマ目では色を併用することによって赤の他人を表現している点も巧みです。また「んぷとら」さんの『脱走』は非常口マークがコマ枠からはみ出ていくのを牢屋からの脱走に見立てた作品と解釈できます。人の部分だけでなくマーク全体が出ていく点にシュールさを感じます。
時空間主義
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「時空間主義」は時間主義と空間主義の合流です。視力さんの『セグウェイ』は騙し絵の要素も含んだ特筆すべき作品。残像のような図像は、一見するとセグウェイに乗った人間が時間とともに左から右へと移動しているように見えます。しかしこの図像を道路に見立てた1コマと残像1つのペアが4ペア分ズラされてコピペされたものと解釈すれば、各ペアのコマ内の人間に相対的な動きはなく、それを残像のようにコピペしたところで動きが生まれるはずがないのです。にもかかわらずパッと見では時空間的な動きを感じられるところに面白さがあります。また、桜桃さんの『執行』はギロチン処刑を表現した作品であり、時間が経つととともに重力によって上から下へと刃が落ちていく様子を描いた各コマは時空間の両義性を帯びたものとなっています。
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 時空間主義の支流のひとつ「カメラワーク主義」は4コマをカメラのフレームの連続と見なす原則です。ぷらりねさんの『拡大または縮小』はズームアップとズームバックを2通りの方法で対比的に表現した、示唆に富む作品と言えます。また、いとととさんの『プッチンプリン側の視点』は逆さになったプリン容器の内部からプッチン棒の方向に上天を見た光景を表現したものであり、絶妙なドラマ性さえ感じられる作品です。
コマ間主義
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「コマ間主義」はコマとコマの間を細工して意味付けをする思想です。「なむさん」さんの『幸せな人生だった (心電図)』はコマ間を用いて心電図の波形を表現した作品。タイトルから想像するに臨終の時を表現しており、上から下へとコマを読み進めるにつれて波形が小さくなっていくことから、時間主義の流れも汲んでいることが伺えます。同様に、うりよしきばさんによる時間主義的な『YouTubeの4コマ』では、プレミアムの方はタイトル枠から4コマ目=最後まで隙間なく詰まっているのに対して、無料会員はそれぞれの間に空きがあることから、コマ枠で本編を、コマ間で広告を表現しているものと解釈できます。タイトル枠と1コマ目の間=動画の再生開始時にも空白=広告の有無にちゃんと差異があるところが細かい。
 また、コマ間を排除してコマ同士を隣接させ、コマとコマの仕切り線に意味付けをする思想も、コマ間主義に含まれると言えるでしょう。城ブドウさんによる、モールス信号のSOSを用いた『タ・ス・ケ・テ』や、折り紙の山折り線や谷折り線を用いた『山あり谷あり、山あり』がここに位置付けられます。
オブジェクト主義
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 前述した空間主義がコマを物理的または抽象的な広がりを持つ空間と見なすのに対して、「オブジェクト主義」は各コマや4コマ全体を抽象的なモノに見立てる原則です。いとととさんの『通販番組の4コマ』は各コマを通販商品と見なし、ありがちなフレーズとともに5コマ目を提示しています。空白主義的でもあり、またトータルではコマが5つ存在するにもかかわらず4コマとして成立させている、前衛的な作品と言えます。オブジェクト主義の作品には他にも『4コマの千切り』『水圧』『肩身が狭い』などがあります。
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 オブジェクト主義の支流のひとつである「擬人化主義」は各コマや4コマ全体を人間的な体躯または人格ある主体と見なす原則です。いとととさんの『ジェットコースターに乗れない4コマ』は4コマ全体を児童の体躯と見なした作品。なんじゃそりゃ、と思われるかもしれませんが、1コマ目を頭部と見なしつつ、こどもは4~5頭身と言われていることを鑑みれば、実はかなり的を得た描写と言えます。擬人化主義には他にも『デス4コマ』『回避』などの作品があります。
記号主義
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「記号主義」は4コマを図像として捉えて記号を解釈する、あるいはその逆に記号を図像として捉えて4コマを解釈する原則です。qpdb さんの『1分前の4コマ』はデジタル時計の「2359」=23時59分を表現した作品。あと1分で00時00分=「0000」になって4つのコマが出現することを示唆しており、コマ枠を用いずに4コマを表現した画期的な作品です。また、にこはぴさんの『万』はタイトル付きの空白の4コマを反時計方向に90度回転させており、タテ長のタイトル枠と4つのコマ枠をデジタルカウンターの「10000」に見立てた、空白主義の流れも汲む作品です。
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 また、記号主義の支流のひとつである「漢字主義」は漢字の中にある四角形の部分をコマとして解釈する、またはその逆に4コマを漢字の一部として解釈する原則です。つぶ謎さんの『憂鬱』は時間主義の流れも汲む作品であり、2コマと2コマの分割、赤黒の着色、そして4コマ目の下に伸びる脚によって、日曜日が終わって月曜日が始まる憂鬱を表現しています。また、城ぶどうさんの『喋りすぎなことわざ』は上3コマを目、下1コマを口に見立てることによって、目は口の3倍しゃべる→「目は口ほどに物を言う」を表現しています。漢字主義の作品としては他にも『無題 (ヌメヌメ)』『小学生「1+1は~?」』などが挙げられます。
4コマ詩派
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 漢字主義の中でも、トウソクジンさん (@co_v_h2) は「4コマ詩派」として極めて特筆されるべきでしょう。漢字を用いた詩の文字列を柔軟にフローさせることによって、4つの四角形部分の連続=4コマを図像的にも表現するのです。それぞれの詩は単独でも情感豊かに成立しており、視覚的かつ聴覚的に味わえる作品の数々は技巧的でいて趣深いものがあります。
 代表作『空蝉が喚き囁き啼き叫ぶ』は4つの漢字の口偏を並べて見せた作品です。七五調が三・四・二・三に細分化されてリズミカルに進む詩とともに4コマが提示される様には、えも言われぬ情趣を感じます。「叫」の右側を数字の4に見立てるのも上手い。トウソクジンさんはこの他にも『「骨を埋める」~』『未だ青き~』『箪笥の中から~』『ローファー履いて~』といった4コマ詩を発表しています。
本質主義
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 この記事における最後の分類である「本質主義」は、4コマの本質とは何かを見出そうとする思想です。まっちゃさんの『結』は入れ子になった4コマを描いた作品。一番大きく見える4コマでさえも右側にタテ線があることから、さらに大きな4コマの一部であることが伺え、ここから「(起承転結の)結が永遠にやってこない」ことを表現しているように解釈できそうです。しかし見方を変えれば、これはいわゆるストーリー4コマにおける4コマ内の局所的な起承転結と4コマ間の大局的な起承転結、そしてさらなる上部構造(雑誌連載や単行本など)を部分的ながら表現しているようにも見えます。
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 また、城ぶどうさんの『視線誘導』はタテ書きの4コママンガにおける基本的な視線誘導をコマ枠なしに表現した作品であり、きらら勢には『グレーゾーン』でお馴染みのアレとも言えます。注目ポイントは4コマ目の終わりから次の1コマ目へ向かう線形を「4」に見立てているところ。あんさん、それがやりたかっただけとちゃう?
   ◇
 以上、私の理解による分類でした。このユーモラスなムーブメントに興味を持たれた方は、公式 (?) アカウント「@gendai4koma」やハッシュタグ「#現代4コマ」、またはいとととさんなど個別の作家をフォローしてみてください。
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4komasusume · 6 months
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自由な発想が生み出す演出 ――檜山ユキ『妄想アカデミズム』
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(1巻P81)
 そうかな……そうかも……
 檜山ユキ『妄想アカデミズム』は妄想癖のある女子高生たちが東大を目指して受験勉強に励む物語です。本作で特徴的なのが、多彩な演出の妙。漫画というメディアであることを最大限利用した工夫が随所にあり、楽しめます。演出に意識のある4コマ漫画は良いですね。  今回はその演出の数々を紹介します。
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(1巻P10)
 注目すべきは机。これがコマの境目として機能することで、4コマとして読めるようになっています。地味ながら新鮮な発想です。  他にも、同じように物体を利用した演出があります。
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(1巻P69)
 姿見に映った姿をそのまま描くというカメラワークの妙。まず思いつかないような発想です。コマ枠からはみ出させている点も上手いですね。
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(1巻P38)
 本の中身を描いたシーンであることが一目でわかる、大胆な演出。ここまで大がかりにやるのは斬新です。  同様のシーンが以下。
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(1巻P104)
 こちらはタブレットの画面をそのままコマにしています。非常にユニークで自由な発想といえるでしょう。
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(1巻P13)
 妄想シーンへの入り方に一工夫あります。キャラクターを大きく背景に描くことで、妄想であることを示すと同時に誰の妄想かわかりやすくしています。  これを発展させた演出が以下です。
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(1巻P30-31)
 ページの左と右で別のキャラが妄想していることを表した演出ですが、シンメトリーの構図にすることで視覚的なインパクトを生みだしています。
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 その他にも細かい工夫が見られます。
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(1巻P21)
 単純な考え込むシーンですが、枠を排除し、背景の「……」をはみ出させることで時間経過をより強く感じさせます。
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(1巻P56)
 よくある多段ぶち抜きでありつつも、その左下のコマのはさみ方があまり見られないもので面白いです。
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(1巻P94)
 欄外を使う演出はよくありますが、このシーンでは3コマ目を下にずらすというユニークな工夫があります。
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 全体的に、本作の演出はセオリーに縛られておらず、自由です。また豊かでもあります。更には、それらが内容に効果的に寄与してもいます。結果としてなかなか他にない読み味になっているところが本作の大きな長所ですね。オリジナリティを求める読者におすすめしたい一作です。
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妄想アカデミズム 1 (まんがタイムKRコミックス)
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檜山ユキ(著)
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(水池亘)
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4komasusume · 6 months
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不器用な大人の恋模様――佐野妙『理想のおとなりさん』
 今回取り上げるのは佐野妙さんの『理想のおとなりさん』です。なんと男女の恋愛作品なのです。佐野妙作品では女性キャラの関係性をメインにしていることが多いので、男キャラがメインになることはまれなのです。今作はがっつり男女の恋愛を描いています。
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理想のおとなりさん (1) 【電子限定かきおろし漫画付】 (主任がゆく!スペシャル)
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佐野妙(著) ぶんか社 (2023-09-14)
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 最初に登場するのが若者というにはくたびれた感のある男性キャラ。彼はこの作品の主人公の一人・古橋湊大(ふるはしこうた)。
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 少し自虐的な物言いをしていますが、「鏡サイド」というPNで執筆する現役のラノベ作家です。ラノベ一本で食べていくのが難しいので、市の文化講座で文章の書き方講座の講師を兼業しています。壁の薄い年季の入ったアパートに住んでいて、食べ終わった豆苗を水耕栽培で再収穫をする。紅茶のティーパックは干して3回は使う。一見、赤貧洗うがごとしを地で行く生活をしているのですが、これは彼の経済感覚が鋭いが故の生活なのです。
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 テンプレートでよくある売れない作家で生活能力が低く貧乏生活している。湊大は表面的にはそう見えるけど、市民講座の講師、過去作品の印税などの収入、投資信託などの財形と税制優遇を網羅する等このテンプレートを外しています。この設定が絶妙なのは本業が上手くいってない35歳男性が恋愛するに当たって、ヒモになる要素を排除していることです。たとえ鳴かず飛ばずのラノベ作家でも、経済面で恋愛対象に依存する必要がない。経済的に対等の関係であるというのはこの作品にとって肝なのです。
 もう一人の主人公にしてヒロインは音成奏(おとなりかな)。
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 彼女は市役所に務める社会福祉士、ソーシャルワーカーです。湊大は大学時代に半年ほど中学生だった奏の家庭教師をしていました。天真爛漫で美人ですが、そそっかしくズボラでがさつな面のあるキャラクターです。明るさが前面に出ているキャラクターですが、彼女の人生には暗さがあります。湊大がラノベ作家としてデビューした直後、奏のお父さんが亡くなりお母さんも体調を崩して入院してしまったのです。奏は作中で語っていませんが、彼女が社会福祉士という職業を選んだのはこのことが理由であることは想像できます。20代前半ですがかなり苦労をしたことがうかがえるのです。
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 このあたりの奏が語る現実のシビアさはリアリティがあります。介護と金というのは人から余裕をなくしてしまうのです。
 そんな奏は家庭教師をしてもらっていた中学時代から、湊大に好意を持っていましたが、社会人となり大人の女性として恋愛感情を抱くようになります。ただ恋愛スキルは低めです。社交的でコミュニケーション能力が高いがゆえに、湊大との関係が他者からは兄妹のように見られてしまいます。キャラクターの魅力として描かれている面が同時に枷にもなっているわけです。この奏のキャラクターはラブコメストーリーに抜群の面白さを出しています。このあたりの佐野妙さんのキャラクターの作り方は本当に見事です。
 奏が湊大の住んでいるアパートの隣に引っ越してきたことで、10年ぶりに二人の関係が動き出します。
 ラノベ作家・鏡サイドこと古橋湊大のデビュー作にして最大のヒット作「太陽の女神が俺だけにデレてくる」通称「俺デレ」。ヒロインのヒナが湊大の理想の嫁。湊大のインナースペースに存在するイマジナリー彼女を体現させたキャラクターなのです。さらにこのヒナというキャラクターを創造するに��たって、大きな影響を与えた存在がいます。教え子当時の奏なのです。ラノベ作家として生きていくことを決定づけた存在が10年の時を経て隣に引っ越してくる。しかも少女から大人の女性へと変貌して。中学生との恋愛はアウトですが、成人した女性との恋愛に障害はありません。燃え上がる恋物語が始まる…かと思いきやそうはなりませんでした。理由は「俺デレ」なのです。
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 湊大いわくこじらせた情熱で作り上げた理想の嫁・ヒナのモデルにしたことを奏に知られないように、さらに彼女の理想の先生像を壊さないようにと自分の中にストッパーをかけます。とは言え、奏のそそっかしさと湊大の保護者気質のせいで二人の距離は急速に縮まるのですが、湊大が自分の中にかけたストッパーは恋愛感情を発露することに、後々まで影響を与えることになります。さらに「俺デレ」は新作よりも重版の印税の方が入ってくるという作品です。現役ラノベ作家として切ない状況を作るギミックにもなっています。
 読者の視点から見ると、自分をモデルにして理想の嫁を創り上げたと言われたら、ドン引きされる可能性が高いことは想像がつくので、この湊大の気持ちは理解できます。しかしメタな視点を持つ読者だから、「告白しても奏は受け入れてくれる」というのも想像できます。この悶々としたもどかしさが作品を読むにあたっての快感になっているのです。
 奏の方も湊大に対して恋心を抱いていますが、告白して恋人関係になることには踏み出せません。告白が上手くいかずに現在の楽しい関係を壊したくないという、現状維持の思いに囚われているのです。
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 自分の心を抑えつけている状態は些細なきっかけでバランスを崩しますが、それを解決することで恋愛関係を進展するエピソードにしているのです。
 湊大の担当編集・美咲と一緒にいるところに鉢合わせした奏はショックを受けます。美咲は湊大の大学の同級生で「俺デレ」のファン第一号。好きすぎて大手商社の内定を蹴り、出版社に就職して湊大の担当になりました。それゆえに湊大とはざっくばらんになんでも言い合える関係を今でも続けているのです。
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 奏は距離のない二人の関係を恋愛状態にあると思い込んでしまったのです。その日から奏の態度はよそよそしくなります。
 恋愛ストーリーで大きなドラマを見せる「すれ違い」展開です。奏の勘違いがきっかけですが、湊大の方も恋愛スキルの低さが露呈して、彼女がなぜよそよそしい態度を取るのかがわかりません。美咲という自分を外から評価してくれる人を通してようやく関係改善の糸口を見つけます。
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 しかし行動に移そうとしたところで、奏がアパートに帰宅しないのです。そしてやきもきした湊大がようやく帰宅した奏を迎えに出ます。
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 こうして勘違いから始まった誤解が解けることにより、カタルシスが生まれます。『理想のおとなりさん』のエピソードは1話完結で描かれる中でこのエピソードは3話使って展開されているのです。二人を昔馴染みの知り合いから一歩踏み込んだ関係にするだけでなく、湊大と奏のキャラクターと現状の深掘り、美咲という湊大を後押しするだけでなく、ドラマを動かすトリックスターにもなりうるキャラクターの登場。このエピソードは6話目から8話目になります。5話までを序章とするとこの6話目からが本編といったところでしょうか。まだまだ恋愛関係未満ですが、二人の関係が変わる大きな一歩なのです。
 大人の恋愛は好きという感情を、恋心を常に最優先にはできません。仕事、人間関係、経済面、家族関係、人生を重ねるほどこのしがらみは多くなります。湊大も奏もこのしがらみが絡みついているのですが、二人の距離が縮んでいけば解決への糸口が見えてくるという、希望と期待が感じられる描き方がされています。佐野妙さんのストーリーテラーの妙技を堪能できる作品となっています。
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画像出典 ぶんか社 「理想のおとなりさん」1巻 P3,P48,P11,P20,P14,P70,P41,P49,P54 掲載順
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4komasusume · 7 months
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犬ゴコロに対する高い解像度――せかねこ『後輩くんは甘やかしたい』
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〔10ページ〕
 ご主人様のピンチにはいつでもどこでも駆けつける。それが忠犬。
『後輩くんは甘やかしたい』は、『ほむら先生はたぶんモテない』などで知られる著者・せかねこさんの「創作男女」の源流を感じられる、商業デビュー最初期の4コママンガのひとつだ。しっかり者の後輩・タフチくんが自由奔放なエンダ先輩をついつい甘やかしてしまう日常には、エンダ先輩の憎めない可愛らしさはもちろん、タフチくんの「犬っぽい」キャラの魅力がぎっしり詰まっている。
   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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後輩くんは甘やかしたい (コミックエッセイ)
posted with AmaQuick at 2023.10.13
せかねこ(著), KADOKAWA (2018-06-01)
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   ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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〔9ページ〕
 タフチくんは忠犬タイプの犬系男子。全方位に準備万端でエンダ先輩を甘やかすぞ。おやつを「エサ」と言っちゃうあたり、彼には先輩をお世話している自覚がある。自分の方が実質ワンコなのに、先輩のことを動物か何かだと思っているフシがあるところが面白い。
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〔12ページ〕
 頭を撫でられてこの反応。これは絶対エンダ先輩に惚れてる。俺は根が犬だから彼の気持ちが分かるんだ(どこから目線なの)。尽くす系のワンちゃんにとって飼い主さんが構ってくれる時間は至福なんだよな。自分がそうされたいから、タフチくんは先輩を甘やかしているのかもしれない。
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〔15ページ〕
 甘やかすだけでなく、たまには言葉で好意を匂わせてみる。でも先輩には伝わらない。さすがに遠まわしすぎないか、タフチくんよ。好きの気持ちをストレートに表さないのは、シャイボーイだからなのか、それとも行動で示したい派だからなのか。
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〔26ページ〕
 そしてタフチくんは嫉妬深いところもある。この場面、質問攻めからの「男の人ですか?」のセリフが、ヤキモチ妬き男子の繊細な心をあまりにも的確に表現している……! 普段はあまり動じない彼が冷や汗をかいていることからも焦っていることが見て取れる。
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〔29ページ〕
 そして連れて来られたのは戦隊ヒーローの握手会。先輩は主役・マタタビレッドの大ファンだったとさ。いちおう男の人じゃなくてタフチくんもひと安心……と思いきやしっかり嫉妬してしまうのであった。渋い表情が良すぎる。独占欲が強そうなところも犬っぽいよね。
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〔30ページ〕
 結局ブロマイドゲットのための頭数だったタフチくん。でもエンダ先輩に感謝されて褒められたら、イヤな気持ちも全部吹き飛んで胸キュンしちゃう。そういうところがまさに犬なんだよな。分かりにくいようで分かりやすい、チョロいと言えばチョロい、でもその気持ちに抗えない。一途で従順な心が報われるお話に、私も安心感を覚えてしまうのであった。
   ◇
 とかく犬ゴコロに対する解像度が高い作品だと思う。好きな人に尽くしたい想いと構ってもらいたい心情の描写が巧みで、タフチくんに共感することしきりだった。著者作品の男子はどこか「可愛い」と表現できるものを持っているところ、タフチくんもその例に漏れずいいキャラしている。せかねこさんの原点を感じられる作品として、そして犬ゴコロを満たせる作品としてオススメしたい。
(すいーとポテト)
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