Tumgik
chuichaofan-112 · 1 year
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バイト
大学院生の頃、印刷屋さんでバイトをしていた。受付をし、納期を決めて接客の仕事の合間に印刷作業をする。やること自体は難しくない。ただそのバイトは常に時間に追われていて、切羽詰まって来店されるお客さんによる「印刷なんて誰でもできる仕事だろ早くやれよ」って横暴な態度を取られること多く辟易していた。日常的に嫌な事を言われることが多い中で、これまではなるべく丁寧な接客を心がけていたわたしも徐々に投げやりに最短でできる時間を計算して受付をしていた。
1年ちょっと働いた中で接客したあるサラリーマンのお兄さんが忘れられない。
拡大コピーだったか、ポスターだったか。その日はいつもより少しだけ忙しくて、本来ならば最短30分ほどでお渡しできる商品に1時間以上かかることをお伝えしなければいけなかった。
嫌な顔されたらだるいなぁと思いながらも、まぁこれも仕事だ。聞くしかない。
「お渡し13時頃になりますがよろしいですか?」
恐る恐る表情を伺ったら、お兄さんはちょっと困った顔をしていた。
ああ、やっぱりか。先輩にこれを優先させてもらえるか交渉してみないと。
そう思っていると
「13時で本当に大丈夫ですか」
「あ、1時間長いですよね、、」
「1時間後で、お姉さんお昼の休憩取れる…?」
予想もしなかった返答に、拍子抜けし思わず笑みが溢れた。
この人も他の人と同じように時間や業務に追われながら仕事をしている。その中でたまたま利用した店の店員のお昼ご飯の時間まで気を回してくれた暖かい気遣いは、きっと一生忘れない。
人に優しくできなかった時、私はいつもこのお兄さんを思い出している。
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