Tumgik
eco115 · 2 months
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君の解像度だけ低く、低くなっていく。デジタル写真を合わせて一つの絵を作るアレ、名前はなんだっけ?存在だけは認識できるのに、一つ一つはぼやけてしまって自分の容量の小ささに心底辟易する。人が忘れていくのは声からなんだって、なんていう失恋とかいうタイミングでよく耳にするようなインターネットなのか偉人の言葉なのかよくわからない受け入りのセリフをまんまと思い出した。恋人には花の名前を教えるといい、花は一年に一度必ず咲きますとかいう、これまたよく耳にするセリフも思い出した。握った手の感触も温度も、その握った手を持ち上げて眺めたときの血管の色も爪の形や大きさも、手のひらの湿度も、その時交わした言葉も場所も。隣を歩く時は僕が右だったっけ、隣で寝る時は?食卓を囲む時は?ソファに座る時は?あの映画館の座席の色、君の家の玄関のタイル、あの動物園にいたのはパンダだった?あの時みたスカイツリーは何色だった?君に教えてもらったバンド、僕が教えた本、あのゲームで君が使っていたキャラクター、一緒に行った美術館の個展、そこで買ったポストカードの絵画の名前は?誕生日のケーキの味とろうそくの色、冬のボーナスで君が買ったのはなにで、僕がクリスマスにプレゼントしたのはなんだった?あの時なにが流行ってた?公開していた映画は?放送していたアニメは?あの有名な女優が亡くなったんだっけ?そんな思い出せるはずもない、夢なのか妄想なのか、現実だったのかすらわからないような君や君との思い出がずっとあの時から止まっていて、僕だけ押されて流されて忘れられて忘れて、僕だけ歳をとってこんなところまできてしまった。『何か大切なことを忘れてしまっている気がする』の、『何か』 も大切だったのすら思い出せないまま。僕はずっと忘れたまま。
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eco115 · 8 months
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だらりとインターネットで泳いでいると、安否を尋ねるメッセージが上から独特なテンポを刻んで3つほど落ちてきた。懐かしい下の名前と見知らぬ上の名前がくっついたその名前を見て、最後に会ったのはいつだったか思い出そうとしたけれど、なんだか思い出したくないことまで思い出しそうで、見たくない僕が垣間から覗いてきそうでやめた。僕は確実にあの時から、君と最後に会った時から、君と最後に話した時から、大きくも小さくもなっていないし、進んでも戻ってもいない、増えても減ってもいないし、上がっても落ちてもいない。そんな君はどうなんだよって打ちかけたメッセージをトトトっと音を立てて消して、元気だよ、とだけ返した。彼女の結婚を機に自分も結婚について考えてみたりする夜がある。かつての旧友たちの仕事、恋愛、生活で埋め尽くされたインターネットなんてみたくないし、僕が知らない君たちを知りたくなんてないし、それを介して初めて知ることが多い自分が情けなくなっていつしか液晶の隅にそれを追いやった。自分で自分を嫌いになった時、それでも好きだと言ってくれる人がいるってどれだけ救われるんだろうか、帰りを待つってどれだけ穏やかな気持ちになるんだろうか、自分の傷つける何かから守ってくれる人がいるってどれだけ心強いんだろうか。分かりたくても分からない、分かりたくなんてないかもなんて思ったりもする。だから僕はずっと
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eco115 · 1 year
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剃刀負けした肌がレースの下着に擦れてヒリヒリと痛い。「どうするの?」 じゃなくて「どうする?」 だろとお腹の底あたりで舌打ちをしながら、当たり障りのない、相手が求めているようなアンサーをこれまた当たり障りのない抑揚のそこまでない少し高めの声で返す。自分の人生や自分の対応が正しいのか誰にも確かめる必要も許可なんてものもいらないのに、インターネットでそれらしい正解を見つけて、認められた気になったり、なんで上手にできないんだろうなんて悲観的になってしまったり。その全てが馬鹿らしくなって、全部辞めたくなって、みんないらなくなって、とりあえずブラウザを上に押し上げた。結局のところ大事な場面で正しい選択をすることが正しいんじゃなく、その選択を正解にしていくことが正しいんじゃないか、と人並みに生きてきたわずかばかりの経験値で自分にフォローをいれた。あの時“も“楽しかったなと振り返りたい思い出が、今じゃ相手を許すように自分に言い聞かせる口実にしかなっていない、そんななりたくないタイプの大人になってしまっている僕は、悲しいけど楽しい、と楽しいけど悲しい、を繰り返して、またなりたくないタイプの大人へと着実に帆を進める。僕が今その事実に気づいたところで僕にできることなんてものはないんですけどね、とまたお腹の底で舌打ちをしながら思う。まあ、そんなことはどうでもいいよ、僕たちの話をしよう、ふたりの話を。今日の夜ご飯は何食べたい?寝る前はどの映画観る?明日はどこに行こうか?そんなことをこれから何十年繰り返していけるのかな?ねえ僕たちこれから「どうする?」
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eco115 · 1 year
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人肌が恋しいという理由で異性に会わずに43度の湯船で満足することにした、僕は大人なので。教科書を目で追っているだけで、見返すことのないcampusのノートに板書を綺麗に書き写してる感覚。自分の正解は持っているのに、手を上げて声を出せないような感覚。国語の作者の気持ちを答えよ、なんて問題にそんなのわかるわけないだろと腹が立って、それに対して模範解答が定義されているのにさらに腹が立った中学校2年生の僕がずっと大人にならずに世間を睨みつけてた。「好き?」と聞いたときに与えられた好きに意味はない。「1番好きだよ」の1番に隠されたその他大勢。「お前って〜だよね」は誰と比べて?何か悪いことをしたあとの慰めと罪悪感の混ざったスキンシップ。本来ならば、愛が故に行われるはずの行為を軽視しているお前のそれに価値はない。失って初めて気付いたなんていう傲慢さ、一生理解したくない。冗談なのか本気なのかわからなすぎて、本気にした方が恋愛においては負けみたいだから全部を冗談で受けとった。当たり障りのない儀式みたいな「大丈夫だよ」はお前に求められているから。切っても切れない世界で、君が求める匿名の誰かになって、君を批判しない君が生きやすい誰かを演じている。それは全部僕がしてほしいことだから、僕は僕の愛し方で愛されたい。君から視覚、聴覚、触覚から与えられるものから何も生まれないし、でもそれが全てじゃないかもってわかりたかっただけ。一生わからない、君の気持ちとか、あの子の苦悩とか、僕の環境が不幸とか、一生わかりたくない。与えられたものや他人に幸せの照準を合わせているからすぐ幸せが何かわからなくなるんだよな。僕はなんで上手にできない。僕たちの恋はなんで愛になってくれない。
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eco115 · 2 years
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映画のエンドロールが流れてフロアが明るくなった後の「さて、ということでね!」みたいな雰囲気が苦手。床に散らばるポップコーンたちに申し訳ない気持ちを感じながらみんなが席を立つのを横目に見る。映画の半券をポップコーンのゴミと一緒に店員に渡されてしまうと少し寂しい。少し弾力のある映画館のカーペットを歩くことを楽しんでいる時にさっきの映画の感想を求められたくない。わかって欲しいとか思わないけど、わからないとかちょっとどうかと思う。我儘かな?傲慢かな?そんなこと思いつつも僕の話に「ふ〜ん、それで?」みたいな反応をしない君が好き。僕が教えた曲を聴いて君は眠ってしまったけれど、君が教えてくれた曲、毎日は聴かないけど一生聴くよ。できたことができなくなった世界で、できなかったことができるようになっていくね。まあそういうこともありますよね、としか言いようがない世の中で、そんな理由で片付けたくないことをとっておきたいんだよね。
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eco115 · 3 years
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置かれた場所で咲かなくていい。土が悪かったら花は咲かないし、魚はコンクリートを泳げないし。日向から動かない猫を誰も責めたりしない。それが世間という大多数で正しいという判断を下しても、君はその正しいの中では生きたくはないんでしょう?もっと当たり前に、自然に、受動的に、大人とかいう存在になれると過信してて。自分の中の正しいを生き続けてたらなんだか寂しくなってしまって。とやかく言ってくる母親の存在が恋しくなってしまって。本棚からその人の軸がわかるような、写真フォルダからその人の日常がわかるような、部屋からその人の生活がわかるような、電話越しからその人の居場所がわかるような、指先からその人の苦労がわかるような、メルカリの出品物からその人の環境がわかるような、プレイリストからその人の応援歌がわかるような。そんなわかるようなを集めて語ってしまう僕も、君も、あの人も、アイツも、なんだか不器用で生意気で傲慢で少し腹が立つ。全部教えてやらない。お前らみたいな奴には絶対に。とっておきたい、とっておきなんだから。
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eco115 · 3 years
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愛することって与えることだったり、選択することって捨てるってことだったり、思い出すことって忘れてることだったり、傷つくことって期待することだったり。同じベットで違う夢をみるよりも、違うベットで同じ夢をみたい。くちびるがなくたってキスをしたいし、腕がなくたって抱きしめたい。もしできることならば、ふたりのプラスとマイナスを合わせてゼロにして、ふたりの複雑さを笑って、ふたりの不器用さを愛でて、ふたりでずっと生きたかった。僕たちはひとつにならない。ひとつになれない。平穏よりも刺激を、オアシスにいるよりもオアシスを見つけることが好きな君だから。君には僕は似合わない、僕には君は似合わない。君が語れる僕も、僕が語れる君も、そんなのきっと全部的外れだから。知りたくないから聞かないを繰り返しすぎて、何も知らないと開き直ることが増えてしまった。溺れる夕日に燃え尽きるこの恋を重ねてセンチメンタルできるほど、愛せた自信なんてひとつもないのに。ないのに会いたい。ないのに触れたい。それを口実に器用に約束なんてできないから、この前貸した本の感想聞かせてくれませんか。
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eco115 · 3 years
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生活がやめたいことでしか構成されていないと気付いたあたりから、気付きたくないから確認しないという他人任せな態度を人生に対して取ることにした。社用パソコンのWindowsを立ち上げた時にランダムに出てくる広大な自然や動物をEnterで消すたびになんだか悪いことをしてしまった気持ちになる。ヒント:誕生日、会ったことなければ男か女かすら存じ上げていない前の使用者の誕生日0621からパスワードを変えないのはここにいた事実を少しでも残したくないから。歳をとるごとに悪い部分なんて何一つ改善されてはいないのに、自分の良い部分だけが異常な速度で減っていく。お土産みんなで食べてねのみんなに含まれなかった側の人生、3人組の余り1側の人生、ドッジボールを楽しめなかった側の人生、グループラインに招待されなかった側の人生、集合写真に映ったことのない人生、好きな人に好かれたことのない人生。根本的なところは何も変わらないまま、器だけが大きくなって入れるものが足りない。「会おうと思ったらいつでも会えるよ」は嘘だということに今頃気づいて、こんな気持ちを人を変えて状況を変えて何パターンかこなすうちに完成された大人になっていくのかな、なんて思いながらやっぱり僕はそれでも僕はとメソメソしている。別にセックスをするだけのお友達(笑)がいたっていいけれど、イルミネーションもクリスマスケーキも宅配のピザやKFCですら、僕たち以外の2人のために存在していた。君を水族館に誘って鼻で笑われたあの日、あの大きな水槽の魚たちはなんのために泳いでいるのかななんて思ったりして、4秒で君を僕の世界から消した。
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eco115 · 3 years
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今日も世界に馴染めなかった。「思っていたのとなにか違う」 の 『なにか』 が生まれてこの方分からないまま、2021年7月20日。夏が好き!と繰り返し問う人種の肌の黒さと腹の黒さ。美しいこの国の四季をはしたない行為の言い訳に使った罪、懲役87年。画素数が少なくてドット絵に見えなくもない孫の写真。キーボードを叩く指の本数の少なさと、時々勢いをつけて飛び出る小指。あの、キーボード強く叩かないでくれます?今日は何を食べようかなのノリで仕事を変えたい。パイロット、宇宙飛行士、鳥、鳥、鳥、飛ぶ仕事がしたいらしい。灰皿代わりの空き缶は8本のハイライトと溜息を吸い込んで、残りの12本は梅雨の湿気を残したままポケットで折れている。「なんで?」 という感情をグッとヘソの下に溜めるたびに、完成された大人に近づいている感覚。お母さんごめんね、僕はごめんなさいが言えない。初めましての人へ紹介できるだけの自己がない。半額シールを貼られたお惣菜の気持ちがわかる気がする。いつか僕はこれから僕は1人になるし、てか僕はもともと独りだし。インターネットに聞いたら、女の気持ちも男の気持ちもわかる時代に、僕の気持ちは全然わからないし。もう全部やめちゃいたいけど、もう全部が何かもわからないし。やっぱり僕は今日も世界に馴染めなかった。
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eco115 · 3 years
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武力で平和は作れないし、アルコールで不安は紛らわせないし、才能は金で買えないし、努力は裏切るし、好きな人はもう誰かと恋をしていて、ラブホテルにはきっとラブはない。好きな喫茶店は潰れた。好きなブランドは倒産した。あのバンドは解散した。好きなカルチャーは衰退した。僕の好きなものばかり神様がこれは要らないね、と選んでは捨てている感覚に陥りながら、マイナスに働く感情が口に出てしまわないように、悲観的になるのが好きだね、という僕の言葉で封をする。悲しいね、苦しいね、辛いね、現在進行形の僕の話題は決まってここの感情に落ち着いて、傲慢なこいつらは僕の大切で貴重な尊い美しい人生にあぐらをかいて居座っている。お前らそこをどけ、そう思いながらも解決策とかゴールとかそんなものは人生においては例外みたいだなんてまた感傷的になる。縋るようにずっと同じ思い出をタイミングと人を変えては話続けている。吐いたハイライトの煙がキッチンの換気扇に吸い込まれていく。きっと今の現状をあの時は〜と明るく話せる未来はこない。あの愛おしい時間の延長戦にあるのが今の人生なんてのはやっぱり思えない。生きているが、納得がいかない。生きているのが、納得いかない。与えられたものを大切にできない。頑張る前に頑張れないと判断する。白黒なんてつけたくない、僕はピンクが好きだから。そうやって自覚してるから別にいいでしょ、まあ僕の人生なんで、と強気な他人を味方する人は誰もいない。誰もいないんだよ。
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eco115 · 3 years
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阿保でも使えるSNS、猿でもできるセックス、バカが共感する歌詞、ミーハーがわかった気になれる芸術、この世で流行しているものは全て愚か者が好きなものばかりなのかもしれないと考えては世間のために口をンムと閉じる。簡単だから、消費するだけだから、傷つけないから、傷つかないから。春といえば桜、夏といえば海、秋といえば紅葉、冬といえば雪。1+1=2みたいな完璧な答えに辿り着いてわかった気になってる。恋愛の先が結婚、「すき」という表現は男女に向けられるという普遍的なそれ、あの音楽は私のことを歌ってる、この芸術はこんなメタファーが、あの映画は実はこんな設定が、あのファッションブランドはダサい、あの車を持ってたらお金持ち。別に否定しない。流行りに乗らない僕がかっこいいなんて思ってないし。そんな奴ってなんか癪に触るし。僕はいわゆるエモいとかいう単語は嫌い。邦ロックバンドが多用する缶チューハイも煙草も金木犀も。Instagramに幅をとるいろんな言語で書かれたハッシュタグも。男の手が見切れている夜ご飯の写真も。いや別に嫌いじゃないんだけどね?と念を押していう悪口も。未読既読送信取り消しも親しい友達も。結婚がない恋愛、子供が産めない身体、勃たない性器、歌われなかった季節、実らなかった片想い、またねに約束されたはずなのにこなかったまた、戦争、ホームレス、政治家、俺、お前、私、あなた、全部意味も解決策もない。だから、だからさ、猫でも好きな小説でも、海で拾った小さい貝殻でも、好きな香りでも、あの時の感情でも、好きとやまないその存在を抱きしめて愛したらいいよ。家族って呼んだらいいよ。難しくなったら逃げたらいいし、どうせ僕たちわかり合うことなんて一生できないんだし、人は一生独りだし、僕はそう思います。僕は、僕だけは、僕が、ってまた僕の話。
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eco115 · 3 years
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僕が死にたい朝に限って。スッキリ目が覚めてしまって、今日が給料日だったことを思い出して、朝のニュースで洗濯日和を知った。僕が死にたい夜に限って。旧友から連絡がきて、SNSの自撮りのいいねが妙に多くて、好きなラジオを聴いてるうちにいつ間にか瞼が落ちている。僕が死にたい春に限って。例年より少し遅い桜の開花を待ちたくなって、柄にもなく外でご飯が食べたくなって、そういえばあそこのパン屋にまだ行けていなかったことを思い出す。僕が死にたい夏に限って。夏らしいことなんて人生で一度もしたことがないもんだからどうせ最後になるならとスイカと風鈴を買ってしまって、去年の夏からショッピングサイトの買い物かごに入ったままの水着をクレジットカードで買ってしまった。僕が死にたい秋に限って。食欲の秋という言葉に甘えて好きなものを沢山食べて、なんだか母の料理が恋しくなって、次の休みに片道20,000円の新幹線の切符を買った。僕が死にたい冬に限って。この街に今年初めての雪が降って、鼻の頭が赤くなった君が妙に愛おしくなってまだ手を繋いでいたい。そうやって明日には愛がわかるかもと錯覚したり、歌われなかった季節に意味があるのか考えたりして、最後の晩餐がどうも納得いかないだとか、死ぬにしては貯金がありすぎて勿体無いだとか、最後にムカつく上司に一言食らわせてやろうだとか、死ぬ勇気があればなんでもできるだとか、案外なんてことない理由で生きていたりする。死ぬタイミングを失っている、死にたいっていうために生きている、どれも回答としては三角マークのつく理由で、でも実は誰か何かに生かされてるという本物に気づかないフリしてそれに軽く会釈しちゃったりして。
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eco115 · 3 years
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先の尖った靴の中で5本の指が窮屈そうに顔を顰めている。肩パッドの入ったスーツで少し逞しい身体を猫背にして歩く。あのコンビニについたらライターを擦って次のコンビニに着く頃にはガムを噛む。あの角を曲がったらあの曲を聴いて、制服姿の高校生とすれ違う。毎月同じ額振り込まれる給料から毎月同じ額を消費して、一向にゼロの増えない預金通帳を眺めては宝くじが当たる妄想をする。何年経っても痛みって学習しない。満たされているような気がするだけ、の僅かばかりの気をコツコツとグラスに溜めては自分は満たされてると麻痺している。苦しい時にそばにいてくれるだけでいいのにそれが1番贅沢で、弱音を吐くことに対してため息を吐かれることもザラで、全部、全部足りていない。指切りをしたい。絶対的な何かじゃなくていいから、今日はずっと、できたらずっと、その何かに期待して生きたい。
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eco115 · 3 years
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桜が咲いたって高校の春に馴染めなかった自分を思い出して顔を顰めてしまうし、花火に誰かを誘えるほど器用でも社交的でもない、香る金木犀に馳せる想いなんてものはないし、この街に雪が積もることなんてない。一生を誓った相手はもう隣にはいないし、単位も内定もまともに取れない、あんなに通った保健室の先生も、僕の未来に関わったあの恩師もいつかは僕の名前も顔も忘れる。卒業アルバムのカラフルな寄せ書きも、Reが増えていくメールアドレスの件名も、交換した制汗剤のフタも、消しゴムにかけたおまじないも、はじめてのアレもコレも、全部過去に流れて、流れたことすら気づかない。言えなかったこと、言わなかったこと、言いたかったこと、言いたくなかったこと、忘れられなかったこと、忘れたかったこと、忘れたくなかったこと。好きも嫌いも、惚れた腫れたも、飽きた飽きないも、見栄もプライドも結局信じられるものなんてこの歳になったって何もなくて、同じようなことを人だけを変えて繰り返していく。もう会うことはないお前たちのことを、もう経験することはない時間を、たまに奥からそっと出して眺めてはしまって眺めてはしまっている。今でも愛している、お前たちのことを、愛しているんだよ。
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eco115 · 3 years
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いつ誰がどのような採点基準で私を大人にした?大人なのでおやすみなさいもおはようも1人でする。大人なので暗い部屋に鍵をかける音が響いても泣かない。大人なので体調不良でもSNSに書かない。大人なので薬は3錠。大人なので部屋に置くぬいぐるみは一つまでと決めている。大人なのでたまにはお酒を飲んで寿司の出前をとる。大人なので月に何冊か本を買い、レディースデーに映画を観る。大人なので青信号が点滅したら無茶して走らない。大人なので仕事帰りにコンビニで新作のスイーツを買う。大人なのでプリクラも加工カメラで写真も撮らない。大人なので歯の定期検診を欠かさない。大人なのでおしゃれな食器をたまに買う。大人なので高校生が眩しく見える。大人なのでデパ地下でお高いサラダを買う。大人なので、エレベーターで何階までですか?と代わりにボタンを押すことができる。大人なので焼肉の食べ放題は胃もたれする。大人なので結婚式もお葬式も経験した。大人なので言いたいことを我慢する。大人なので妥協を覚える。大人なので作り笑いが上手くなる。大人なので1人で泣く。大人なので大丈夫です、私は大人なので。
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eco115 · 3 years
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靴擦れするピンヒールで歩くのをやめた。ピンの部分に3キロ増量した体重を載せて闊歩するのが馬鹿らしい。靴紐をキツく縛った新品のスニーカーの靴底に、もたつく不幸を張り付けて足を引きずりながらペタペタと知らない街に足跡をつけて歩く。抜いた親知らずの左上のぽっかり空いた穴にすっかり愛着を持ってしまった。舌で触って塞がっていないかマスクの下で確かめながらヘッドホンからアニソンが音漏れしていないかが急に不安になって音量の点々をを3つ下げた。まだ見ぬ未来がどうなっていくのか楽しみで仕方ないのに歳を取ることは怖い。自分の1番のお気に入りの服を着て玄関の鏡を見て今日も可愛いと自信満々で家を出るのに、ショーウィンドウや電車の窓に気合の入れた自分が映ると恥ずかしくて仕方ない。女の子はみんな可愛いと思うのに無意識に点数をつけてしまう。気がおかしくなってしまいそうなほど誰かに恋がしたいのに、生温い日常に浸かっている自分がいる。手を繋いだ瞬間から手を離してしまういつかのことを考える。新しいものが出るたびにワクワクするのに、自分だけ古くなっていくような感覚。誰かに共有したくてこんなことを書いたって、わかるよと得意げな顔されたら唾を吐いてしまう。考えたって答えは出ないし、泣いたって仕方がないし、もがいたって伝わらないし、顔を作ることすら上手くできないし、なんだか全部に疲れているんだし。もうほっといて、でもかまって。
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eco115 · 4 years
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僕を傷つける意図で君が放った言葉すら愛おしいからずっと抱きしめてしまう。抱きしめた僕の胸には血が滲み、その痛みで流れる涙の意味を君にわかってもらえたことはないし、心配をかけた記憶もない。君にあの時言われた言葉、のフォルダの中で少し不機嫌そうにあぐらをかいて座っているそれを何度かそっと取り出しては眺めて、グラグラと僕の情緒を揺らすのを確認してから元にあった場所にしまう。気に入っているあの映画のワンシーンを繰り返し見るように、自分で再生ボタンを何回も押しながら何回も君に傷つけられた気持ちになる。大丈夫、僕はまだ君のことで傷つくことができるくらいに君のことが好きだ。君のことを責めるくらいなら、黙って傷ついていようと思える。この傷は癒えないでいい、刺さった棘も抜けなくていい。僕たちが別々に乗るはずの電車をホームから何本見送ったんだろう。いったりきたりする不安定が愛おしくなってしまって、僕がわざと終わりを見逃していることをいつから君は気づいてたんでしょう。
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