Tumgik
nana-shi-san · 4 years
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まるでお酒に酔ってしまったように頭がぽぅっとして、君と居ると全てのものがぼやけていく。いつも視界に捕えるのは君だった。「なにみてるん?」優しく笑いかけてくる何度目かの彼女。君が僕にとっての最初で、僕が君にとっての最後の人だったらよかったのに。
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nana-shi-san · 4 years
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予定を立てるまでが楽しくて、前日に控えると少しだけ面倒くさくなる。でも、実際にはその日が楽しくて、適当な音頭を取りつつ、ジョッキを鳴らせる。仕事の愚痴から始まってやがては懐かしい話へとなっていくの手元のビールで流し込む。友達からされるそんな話だったら適当に相槌を打つだけ。それでも、貴方の話なら何故こんなにも、煌びやかに色付いていくのだろう。私ってなんでこんなにも、実に単純で、流されやすいんだろう。
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nana-shi-san · 4 years
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ep.4
付き合ってしまったことで元の関係には戻れないとはよく言ったもので、復縁なんて尚更のこと。友人さえも程遠い。付き合わなければよかったなんて思いたくもなかった。
「また会えたりできる?」
『次は土曜日とか?』
「そうだね…空けておくよ」
平日に約束も無いのに会うことなんて無理みたい。また僕は言い訳を探すところから始まる。割り勘になった会計を済ませて、僕達は店を後にした。
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nana-shi-san · 4 years
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ep.3
忘れようのない笑顔と、忘れつつある彼女の感触を脳にうかべた時、そこに残ったのは言い様もない孤独感が生まれる。例えば、電車の吊り革だったり、喫茶店のグラスに伝う雫にも"それ"を思わせた。
『あの時止めていたら、変われたと思う?』
僕達2人の間柄。何を指すのか君だってわかっているのだろう。君の癖なんて筒抜けだ。
「どうかな?私にはわかんないや…」
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nana-shi-san · 4 years
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ep.2
初デートにして全ての順番をすっ飛ばしてセックスを提案できるほど、僕は肝が座っていなかった。確かにあの頃、それくらいに僕達は純粋な恋をしていた。何をするのにも臆病で君待ちで。
『君のことが好きです…。』
告白の時も、
『今日は服見たいな〜』
デートの提案だってそう。
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nana-shi-san · 4 years
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ep.1
知らぬ間に木々も街並みも塗り変わり、ケータイが震えたのを合図に顔を上げた。そこには約束を取り付けた待ち望んだひと。
『待った?』
「ううん、いま来たとこだよ」
君は随分と大人びた格好をして、乱れた髪を直しながら走ってきたことを連想させた。こういうとこは変わってないと少しだけ安心したのは確かだ。
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nana-shi-san · 4 years
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ベランダで並んで吸うのが好きだった。伏せた目と咥えた横顔が色っぽくて、「見すぎだよ」だなんて、ケラケラ笑うところも、八重歯が嫌だからって口元を隠す仕草も全部好き。君の残り香を残すための禁煙も、汚れきった灰皿を見てはまた想う。「あぁ、帰ってこないんだよなぁ」って火をつけた。久々の喫煙はやけに目が沁みました。
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nana-shi-san · 4 years
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さっきまでハイボールを飲んでいたクジラ公園まで歩く。数少ない街灯を過ぎるたび、2人の影がウニウニと伸びては薄くなって消えた。それを見て彼女が「なんか宇宙人みたい」と言った。「地球は慣れましたか?」「ややこしい星ですよね、いろいろと」少し疲れた声で返した彼女の横顔は、ヒトとは思えないほど綺麗だった。
これには全てが詰まっていると思うのです。
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