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#シングルプレックス検査
ishuran · 1 year
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Vol.159 ワクチン効かせたいなら睡眠を取るべし。特にあなたが男性なら
桜の季節に合わせるかのような、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)での日本チームの大活躍、素晴らしかったですね。
大谷、ダルビッシュ、吉田、ヌートバーといったMLB組の活躍はもちろんですが、脇役の選手たちの貢献(分厚いリリーフ陣、源田の守備、出塁しまくる近藤、山田の打席での粘り、周東の走塁、等々)にも目を見張りました。
日本のプロ野球(NPB)は米国のマイナーリーグとメジャーリーグの間くらいという評価を長らくされてきていますが、今回のWBCで一段と評価を上げたのではないでしょうか。
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【記事1】ワクチン効かせたいなら睡眠を取るべし。特にあなたが男性なら
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新型コロナのおかげ(?)で、ほとんどの日本国民が大人であってもワクチンを毎年打つような状況になりました。
私自身は、新型コロナのワクチンはもちろん、インフルエンザワクチンも毎年のシーズン前に接種しているのですが、ワクチン接種全般について気になる研究結果が出てきました。
 ■"A meta-analysis of the associations between insufficient sleep duration and antibody response to vaccination”「睡眠不足とワクチン接種に対する抗体反応の関連性に関するメタアナリシス」(Current Biology)
どんなワクチンでも、接種当日は激しい飲酒や運動は避けましょうとか言われるものですが、睡眠について注意喚起されることはほぼありません。
しかし、睡眠不足がワクチンの効果に悪影響を及ぼすとしたらどうでしょうか?
これまで発表されてきた睡眠とワクチン接種の抗体反応の関連性を調べた19本の研究結果の内、質が高いと判断された7本(ワクチンの対象は、インフルエンザや肝炎ウィルスなど)を統合・解析したところ、以下がわかりました。
・ワクチン接種前後の睡眠不足(6時間/日未満)は抗体反応を減弱させる
・睡眠不足による減弱は、2ヶ月間のCOVID-19ワクチン抗体の減衰と同レベル
・男性では顕著に減弱するが、女性については定かではない
ということで、なぜ性差があるのかは不思議なところですが、男性であればワクチン接種前後の睡眠不足は効果の減弱につながるという結論となりました。
気になったのが、どのタイミングでどれくらいの期間、睡眠をしっかり取った方が良いのかですが、個々の研究によってまちまちなので、一概には言えなさそうです。
ただし、7本中3本の研究が接種直後の一晩、1本が接種直前の一晩のみの睡眠時間での話なので、とりあえず前後の1日はしっかり寝ましょうという受け止めで良いのかなと、個人的には判断しています。
男性諸氏、ワクチン効かせたいなら前日と当日は睡眠しっかり取りましょう!
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【記事2】がん遺伝子検査のマルチとシングル、どちらが経済性が高いのか?
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がん遺伝子パネル検査については、このメルマガでも何度となく取り上げてきました。
がんを引き起こす様々な遺伝子異常がわかってきた中で、一つ一つの遺伝子異常の有無を調べていく既存のやり方ではキリがないので、まとめて一気に調べる「遺伝子パネル検査」が出てきた、という話は、下記のエントリーでも書いています。
 ■Vol.144 解決に光明。がん遺伝子パネル検査が生み出す「がんゲノム難民」
遺伝子パネル検査のように複数の遺伝子異常を調べる検査を「マルチプレックス検査」、それに対し遺伝子異常を一つずつ調べる検査を「シングルプレックス検査」、と呼びます。
遺伝子パネル検査で認識されている欠点の一つは、「費用」です。
現状、日本だと、検査のみの医療費は56万円で、保険が効くケースの患者負担はその1-3割。
そして保険が適用されるのは、「標準治療がない、又は終了する見込みである固形がん」などごく限られたケースで、それも一人一回のみとなっています。
そのため、医療現場のプラクティスとしては、最も多くの種類の遺伝子異常が明らかになっている肺がんでも、いきなり”マルチ”(遺伝子パネル検査)というよりは、EGFRやALKなどの個別の遺伝子異常を調べる”シングル”で進めるケースの方が多数です。
でも、シングルの方が本当に”安上がり”なのでしょうか?マルチの方が素早く最適な治療に入れるわけで、その分の効用を考えた時、それでも”高い”という話なのか?
この疑問を考える上で、大変示唆のある研究結果が出てきました。
 ■"Cost-Effectiveness of Next-Generation Sequencing Versus Single-Gene Testing for the Molecular Diagnosis of Patients With Metastatic Non–Small-Cell Lung Cancer From the Perspective of Spanish Reference Centers”「転移性非小細胞肺がん患者の診断における次世代シーケンサーと単一遺伝子検査の費用対効果比較:スペインのレファレンスセンターの視点からの検討」(Journal of Clinical Oncology)
スペインで1年間に診断・治療開始されると理論上考えられる、進行非小細胞肺がん患者9,734人分につき、標準治療とそこから想定される治療期間や副作用などを加味した上で、実際のコストを当てはめ、シミュレーションしたのがこの研究です。
結果、もし対象者全員にシングルプレックス検査の代わりに遺伝子パネル検査を使用した場合、1,873の遺伝子変異が追加的に検出され、82人の患者が臨床試験に登録される可能性があることがわかりました。
そして、長期的には、遺伝子パネル検査を使用することで、対象集団において1,188”質調整生存年(QALY)"の追加が期待されます。一方、増分コストは、21,048,580ユーロ。
質調整生存年(QALY)とは、「元気に過ごせる1年」と考えれば良いので、全体として見た時、遺伝子パネル検査を全面的に使うと、2100万ユーロ余計にコストがかかるけど、1,188年分の「元気な一年」を生み出せる、という構図ですね。
新薬を保険適応するかどうかで、「元気な一年を生み出すのにいくらかかるか」という観点は重要なのですが、上記であれば2万ユーロ(280万円)弱の計算で、これは保険者として十分に”安い”と考えられるレベルです。
ということで、少なくともスペインにおける進行非小細胞肺がんの治療では、遺伝子パネル検査は十分に費用対効果があると考えられそうです。
日本での保険適用の基準は、前述の通り「標準治療がない、又は終了する見込みである固形がん」等に限られているのですが、同様のシミュレーションはできるはずなので、ぜひそうしたシミュレーションを通じて、保険適用の範囲が拡大できないかの検討を進めていくべしですね。
※本項執筆時点(2023年3月31日)で、筆者は遺伝子パネル検査に関して、特筆すべき利益相反はありません。
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