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林田の世界(初稿版)
2話:林田、なう
※動物に人間の食べ物を与える描写があります。真似なさいませんよう。
再び。林田のアパート。
再び。林田の部屋で俺はソファーに座っている。
猫らしき存在は俺や林田と同じソファーに並んで座っている。
真正面から見た場合、右から俺、林田、そいつ。
俺はとりあえずビールを飲んでいる。
ビールが旨くなる光景ではないと思うけど、ただ黙って見てるのも変だし。
「間」だよな。「とりあえずビール」って、要するに「間」のことなんだ。「とりあえずビール」が気まずい「間」を消してくれる。
「なう」
俺は2缶めの「とりあえずビール」に手をかける。
「はいはい。開けてあげるからね」
林田はソフトクリームを覆う蓋を外し、
「なう、なう」
「ほーら。お食べ」
ソフトクリームを猫らしきものの口元に持っていく。
猫らしきものはもう待ちきれないという勢いで林田が持っているソフトクリームを舐め始める。舌がザラザラだ。
ソフトクリームを食べられて嬉しいのか、ソファーから垂れた両足の先を交互に曲げたり伸ばしたりしている。
ひと舐めしては舌を8の字に動かして−−。
「なうなう」
またひと舐めしては−−。
「なうなう」
旨し、旨しと唸るように−−。
「林田、なうなう」
俺はサラミを口に放り込みながら言う。
「とうとう喋り出したか」
とうとう喋り出したのである。
「わかってはいた! 喋ってるんじゃないかなって気はしてた!」
林田は吐き捨てるように叫ぶ。
「林田、林田、林田、なうなう、林田」
猫らしきものは前足で林田の腕をキュッと掴み、ソフトクリームを舐め続けている。
「なうー、なうー」
ウッチャンのコントの『ミモー、マモー』を思い出させる音程で猫らしきものは言う。多分、ソフトクリームがすごく美味しいと言いたいのだろう。多分。
猫らしきものの声は硬質で、抑揚というか、音程というか、そういうのが人間のものとは違う。オウムの声に似ている。
しかし発音自体はものすごくはっきりしているのだ。まだ「ニャヤシダ、ニャウニャウ」なら聞き間違いで済ませられるかもしれないけど、どう聞いても「は」「や」「し」「だ」「な」「う」だ。
「なうなう、なうなう」
「喋ってるだろ、明らかに」
「もういいよ。わかったよ。十分だよ」
言いながら林田は空いている手で猫らしきものの耳の下をくすぐる。
顔も声も困っているけど、相手が相手なのでどうも呑気に見える。
俺だってシリアスになれずにいる。どうしてもほのぼのしてしまう。これは俺の問題じゃなくて、なんていうか、対象である猫的なもののせいだ。
俺だってもしも林田が相手にしてるのがもうちょっとこう……もうちょっと、ほら、もうちょっと毛が少なめで、肉球が付いてない、そういう感じの「うわー。怪物だー」みたいなのだったらシリアスになれるし、平凡な日常生活の中で埋もれていた俺の野生的な一面を覚醒させることも多分できるのに。ワイルドな俺が目を覚ますのに。ゴルフクラブとかブンブンしちゃたりしてさ。
「なうーなうー」
猫らしきものは気持ち良さげに目を細めた。デカさはともかく、可愛いことには可愛い。鼻とかピンクだし。口元とか剽軽だし。
せめて触手の1つでも生えていてくれないだろうか。それかもうチョイ野生みを見せるとか。こいつ、本当に「人によく慣れた、懐っこい猫」がただ単にでかいだけなんだもん。なんなのこれ。
「先週末あたりから薄々、喋ってんじゃないかなー? とは思ってたんだ」
「お前、何でもかんでも『薄々』で済ます癖をなんとかしろよ」
「それはさー、無理だってばー」
林田は駄々っ子の声を出す。
「前も言ったじゃんよー。徐々に徐々に変わってくるからいつも一緒にいるとわかんないんだってば。モーフィング? モーフィングっていうの? ほら、クオリアのアレだよ。クオリアの。ちょっとずつ変わる間違い探しって難しいじゃん。お前も俺の立場になればわかるってー」
「林田、林田」
猫らしきものは舐めるのをやめてソフトクリームのクリーム部分だけをかじりだした。コーンは好きではないらしい。
「Youtubeとかに時々あるじゃん。おっさんみたいな声で喋る猫の動画とか。会話してるように見える野良猫の動画とか。そういうアレかな? って」
「林田ー、林ー田ー」
「あぁ。ごめんごめん。ほーれ。ほーれ。気持ちいいか。ほーれ」
林田は猫の耳をくすぐり始める。猫は満足しているらしい。尻尾が右へ左へのお祭り騒ぎだ。
「意思疎通完璧かよ」
「声のイントネーションで大体分かるようになってきた」
林田は少し自慢げだ。
林田の膨らんだ鼻の穴にサラミをねじ込みたくなる。これ、ハバネロ入りだし。少しは呑気な頭がピリッとするんじゃないかな。
「そうは言っても、ここまでになる前に気がつくべきだと思う」
「お前だって、俺の猫写真ツイートを見ても何にも言わなかったじゃんよ」
林田は開いている手で器用に3本めのス��パードライを開ける。
「人ん家のペットの写真なんてそんなに真面目に見てねぇよ」
「でもいつも『いいね』押してくれてたじゃん!」
林田は『愛してるって言ってくれたじゃない!』みたいな口調で言う。彼女か。
「だって誰も『いいね』押してないのも可哀想かなぁって」
「え、え、え。じゃぁ、何。お前、『いいね』って思ってないのに『いいね』押すの? え、何それ! そういうの、すごい不誠実だと思う。そういうことされると俺、お前のこと信じられなくなっちゃうじゃん。これからさ、お前が何か言っても、俺は常に、俺の心は常にだな『いやいや。待てよ。こいつは『いいね』って思ってないのに『いいね』を押すやつだ。本当のことを言ってないんじゃないか』とだな、そういう、そういう目でお前を見てしまう! これはですね! 友情の崩壊! 友情の崩壊ですよ! お前、とんでもないことをしてくれたな! 命の恩人であるこの俺に! 親友であるこの俺に!」
林田は何かと言うとガキの頃に俺が沼で溺れた時の話を持ち出す。別にあれは溺れていたわけじゃなかったし、仮に溺れていたとしても林田に助けられなくても自力でなんとかなったし。
「うるせぇなぁ。アラサー男の猫の写真に何でそこまで真面目に向き合わなきゃいけないんだよ。お前の猫写真、アップばっかりだったろ。スケール感わかんねぇよ。抱っこしてる写真とかツイートすればよかったんだ。こう、ほら、マグロ抱える感じで。そしたら俺だってここまでデカくなる前になんとかしたよ」
「前に俺と猫が一緒に寝転がってる写真ツイートした時、『面白い写真だな』って軽く流したじゃん。俺、あの時、お前が『猫デカッ!?』ってリプくれたら『そっか、やっぱでかいんだ』って気付けたと思うよ? あの時、内心ちょっとデカいなって疑ってたんだから」
あぁ。あれかぁ。
「遠近法とか、目の錯覚を駆使してるのかと思ってた」
RT数稼ぎの小賢しい写真だと思ってたからぶっちゃけ「そんなにRTが欲しいのか。見え見え過ぎて引くわ。意地でもRTしねーから」って思ってた。
「ほら、お前だって気がついてないじゃん。俺のこと言えないね。同類だ、同類」
林田は勝ち誇ったように鼻を鳴らした。林田はすぐに調子にのる。
「ふーん。それで『林田』と『なう』以外には何か喋るの?」
林田は話題を変えられたことに少し嫌な顔をしたが、差し迫った問題、つまりは人語を喋り始めた異常にデカい猫らしきもののことを思い出したらしく、少し酔いの醒めた声で答える。
「『なう』は『ニャー』の変形だから言葉に入らないと思うよ。最近はあんまり『ニャー』って鳴かなくなっちゃったし」
「じゃぁ、『林田』以外は?」
「今のところはないなぁ」
猫らしきものはソフトクリームをコーンを残して食べ終えてしまった。
「林田ーなーう」
「ダメダメ。ソフトクリームは1日1本」
「なーう」
猫らしきものはソファーから立ち上がると、二本足で歩いてテレビの前に行き、うつ伏せに寝転がった。前足を顔の下で組んでいる。
「歩いた」
「徐々に徐々にああなったんだ。モーフィングだ。トイレのドアを開けたりするのに立ち上がることはあったんだけど、徐々に徐々に距離が伸びていって、最終的にこうなった。でも、これは喋ることに比べたら全然許容範囲内だと俺は思うんだ」
「猫の歩き方じゃないだろ」
右手と左足、左手と右足を交互に振って歩いてた。あんな『ザ・歩行』みたいな歩き方、人間だってしない。
「あの寝方も猫の寝方じゃない。あれは日曜日のお父さんの寝方だ」
「でもYoutubeではベビーカーを押して歩く猫の動画が人気だし。歩き方についてはたまたまなんじゃないかな」
本当にそう思っていると���うよりは、目の前の現実から逃避したくてあれこれ理由をでっちあげているように見えた。
相当動揺しているのだろう。さっきからピスタチオを殻ごと口に運んではバリバリと嚙み潰している。
こんな林田は初めてみたし、ピスタチオを殻ごと食べる奴も初めてみた。口の中は痛くないのか。頬がびっくりした時のハリセンボンじゃないか。
「あのなぁ、林田。デカい猫は探せばいるだろうよ。トイレで用を足す猫もいるだろうし、喋ってるみたいに鳴く猫も、ちょっとの距離を2本足で歩く猫も、寝方がおかしい猫もいるだろうさ。でも、それ全部っていうのはおかしいだろ。地震と雷と火事と親父はそれぞれ独立した現象としてみればありふれてるけど」
「親父と言う独立した現象って何?」
飼い猫でかくなっても大して深刻になんねぇくせに、そういうとこは食いつくのな。
「それはニュアンスで汲み取れよ。とにかく、それぞれ別個のアレだけど、地震と雷と火事の中に親父が現れたとしたら、その親父がただの親父ではない可能性の方が高いじゃないか。ほら、宇宙人とかさ。復活した魔王とかかも」
林田は奥歯でゴキブリを噛んだような顔で俺を見る。
「あのさぁ。俺、一応、真剣に話がしたいからお前を呼んだんだけど。ふざけてるなら帰ってくれる?」
俺、林田の真剣とふざけてるの判断基準、よくわかんねぇよ。一番ふざけてる存在にはソフトクリーム食べさせてやってんのに何それ。
「可能性としてはありえるだろ。猫があんな風になるんだからさ。まぁ、猫がああなったのか、そもそも猫じゃなかったのかで言うと、俺はそもそも猫じゃない方が可能性高いと思うけど」
「な、な、な、な、な」
猫らしきものが「踊る! さんま御殿」を見て妙な声で鳴く。
「笑ったのかな、今の?」
「ただの鳴き声だろ」
俺たちは「踊る! さんま御殿」を見ている様に見える猫らしきものの背中と、テレビの中の今田耕司を注意深く眺める。
『それからの二時間は地獄でしたわ』
今田耕司の面白発言に明石家さんまが引き笑いをしつつ、司会者テーブルをバンバン叩く。今回の踊るヒット賞は今のかもしれない。
「な、な、な、な、な、な、な」
猫らしきものも床を前足で叩きながら鳴く。
「爆笑してるんじゃないかな、これ」
「なー、なー」
どことなく明石家さんまの引き笑いっぽい鳴き声だ。
「林田、間違いない。これ、猫じゃねぇよ」
林田は両手を首の後ろで組むと、両足の間に頭を挟むように背中を丸めた。
「そういうのは困るよぉ」
「困るよも何も、しょうがないだろ。猫じゃないもんは猫じゃないんだから」
「どうしよう」
林田は眉毛を八の字に下げる。
「な、な、な、な、な、な、な」
猫らしきものは俺たちの気持ちなど全く気にしていないようだ。
ちょっと思ったんだけど、「踊る! さんま御殿」の笑いが理解できるのなら、俺たちの会話だって理解できているのかもしれない。
「……本人に聞いてみればいいんじゃねぇの?」
聞かれているのではないかと思うと自然と声が小さくなる。
「なんて?」
林田の声も小さい。俺たちは肩をくっつけあい、お互いの耳に息を吹き込むような感じで会話を続ける。
「そりゃ……あなたは誰ですか? とか。どこから来たんですか? とか。何が目的なんですか? とか」
「え、なんで自分の猫に敬語で喋んなきゃいけないの」
林田は眉間にV型の皺を寄せる。
「そこは別にどうでもいいだろ。とにかくちょっと聞いてみろよ」
「え。嫌だよ。絶対嫌だ」
「なんで?」
V型の皺がWになる。怒っている時のディカプリオの皺。
「普通に返事したら滅茶苦茶怖いだろ?」
「え、怖がってんの?」
さっきデレデレしながらソフトクリームあげてたじゃん。
「今は怖くないけど。なんか、なんか、言葉で疎通できちゃったら引き返せない感じするじゃん。今はさ、今はまだギリギリセーフだろ? 今はまだ「アンビリーバボー」とかで笑って流せる感じじゃん? でも喋っちゃったらさ。会話できちゃったら、なんか一線超えちゃう感じするじゃん?」
俺はCMが始まってからは「な、な、な、な、な」という笑い声をあげなくなり、ゆっくりと尻尾を左右に揺らしている猫らしきものを見つめる。
「もう一線は超えてる。林田、これはもう腹を括ってだな。ちゃんと真実を明らかにした方がいい。ほら、案外なんてことないことかもしれないじゃん」
そうは言ってみたものの、拾ってきた野良猫が1年ちょいで虎サイズにまで巨大化し、床に寝転がりながら「踊る! さんま御殿」をみて笑っている状況を「なーんだ。そういうことだったのかぁ。驚いて損した」と言える真実なんてあるのかどうか、俺には想像できなかった。
けど、好奇心は抑えられない。俺、そういうとこあるから。
「ほら、聞いてみろって」
俺は肘で林田を小突く。
「え。嫌だ、嫌だ、絶対嫌だよ」
「いいから聞けって」
「嫌だってば。俺やんねーから。別に聞きたいなんて思ってねぇし!」
「ばっか。お前、そんなこと言ってどうすんだよ。ハッキリさせろって」
「心の準備が!」
「じゃぁいい。俺が聞く。おい、そこの! でっかい猫さん!」
林田が俺にしがみついた。
「ばっか! やめろって! 返事したらどうするんだよ! 聞くな! 俺は何も知りたくない!」
「うるせぇな! こういうのはな! あれこれ想像するとどんどん悪い方向に考えちゃうんだよ!」
「お前、他人事だと思って!」
俺の口を塞ごうとしてくる林田の両手首をつかむ。体格は同じくらいだけど林田はソファーに膝立ちになって俺の上に覆い被さってきているので、俺の方はうまく踏ん張れない。たちまち俺は林田に押し倒される形になる。俺は林田の手首を固く握りながら猫みたいなものに大声で叫んだ。
「おい! 猫! お前、何者だ! 猫型宇宙人か? 猫風のロボットか? どこかの実験場から逃げ出してきたのか? さんまさんの言葉がわかるんだ、俺の言葉だってわかるだろ!」
「答えなくていいからな! なーんにも答えなくていいからな!」
「往生際が悪いぞ、林田!」
「うるせぇ! お前に飼ってた猫がこんな風になった俺の気持ちがわかるか!」
林田の頭突きが俺の顎に当たった。奥歯がぶつかり合い、一瞬耳がキーンとなる。
「てめぇのために聞いてやってんだろ!」
俺は林田の手首から手を離し、中学の時から全然ヒゲの生える気配のない生卵みたいな顎を殴りつけた。俺たちはもみ合いながらソファーから転げ落ち、テーブルとソファーの隙間に挟まる。今度は俺の方が上になった。俺はテーブルの上の殻付きピスタチオを片手で掴めるだけ掴むと、林田の口に押し込み、奴の両手を俺の両膝で抑えた。ピスタチオを吐き出そうとするので、俺は両手で奴の口を塞ぐ。
聞き分けのない林田だ。豆でも食って黙ってろ。
「猫! お前何なんだ!」
改めてテレビの方に顔を向けると、猫らしきものの姿はそこから消えていた。
「おい、林田。猫がいないぞ」
俺が口から手を離すと林田は勢いよくピスタチオを吐き出す。中途半端に噛み砕かれた唾まみれの殻が飛んでくる。うひゃぁ。汚い。
「とっととどけよ、馬鹿野郎!」
林田は俺を押しのけて立ち上がると「猫ー! 猫やーい!」と叫びながらテレビの裏やカーテンの裏を探し回る。
「あのサイズだぞ。そんなとこに隠れられるわけないだろ」
「うっせぇな! わかってるよ! お前のせいで逃げたんだぞ、このバカ! お前が脅かしたからだ! バカ! バーカ! 座ってないで捜せよ! この、バーカ! バカッ! バカッ!」
「お前が結論を先延ばしにするから俺が聞いてやろうとしただけじゃねぇかよ。バカバカばっか言ってんじゃねぇよ」
あ、今のちょっとダジャレっぽくなった。
「今のはそういうアレで言ったんじゃねぇからな!」
俺はパンツやらシャツやらにへばりついた林田の唾液付きピスタチオの欠片を払い落としながら立ち上がる。ほんときったない。俺、こういうのダメなタイプなんだよね。鍋とか無理。他人の食べかけとか食べられる奴の神経を疑う。
「猫ー! 猫、猫、猫! 猫ちゃーん! 出ておいで!」
俺は玄関に向かい、チェーンがちゃんとかかっていることを確認する。
「おい! お前のせいでこんなことになったのに逃げる気かよ!」
「ちげーよ! 外に出ちゃったかもって思ったからチェーン見てたんだよ。チェーン!」
「え。チェーン無事?」
「無事無事。家ん中のどっかにいるよ」
林田は安堵のため息を吐いてから「猫ー猫どこだー」と叫び、寝室へと歩いてゆく。
俺も林田の後を追い、寝室に入る。林田は四つん這いになり、ベッドの下を覗き込もうとしているところだった。
「ところであれの名前は何ていうんだ?」
「決めてない」
「え、なんで」
「猫飼うの初めてだから真剣に考えてたんだよ。画数とかそういうのとかも考えなきゃいけなきゃだし。それで、名前を決めるまでの間に仮に『猫』って呼んでたら、『猫』っていうのが名前だと勘違いしちゃって」
林田はベッドの下を見て「いないなー」と呻く。
「他の名前で呼んでも全然反応しなくなっちゃったんだよ。だからもう「猫」でいいかなって。わかりやすいし。なぁ、見てないで探すの手伝えって」
「家の中にはいるんだから、すぐに見つかるよ。これの中とかにいるんじゃねぇの? 開けていーい?」
林田の返事を待たずに俺は壁と一体になっているクローゼットを開けた。
フロントライトサイズの金色の目が俺を見ていた。
うぉ。めっちゃいる。いるんじゃねぇのと��言ったけど、本当にいた。やめろよもう、吃驚するじゃんもう。
猫ではないけど猫という名前で呼ばれているそいつは、林田のコートとスーツの間に2本足で立っていた。俺を見ても黙っている。まるで「私は林田のスーツでーす。洋服でーす。だからクローゼットの中にいるんでーす」と言っているかのような白々しい顔だ。
「林田、猫いたぞ」
「おぉ! なんだよ、そんなところにいたのかよ」
もー、心配したんだからぁーと言いながら林田がクローゼットの前にやってくる。
あいつ、時々口調が昔のキョンキョンっぽくなるんだよな。
「ほーら。もう怖くないからなー。一緒に「さんま御殿」みようなぁ」
林田が猫らしきものの喉を撫でると、猫らしきものはやっと「お洋服のふりごっこ」をやめて「林田、なう」と鳴いた。鳴いたでいいの? 喋った? 鳴いた? 喋った? 喋ったにしとくか……喋ってるしなぁ、実際。
奴はクローゼットから例の「ザ・歩行」で出てくると、俺と林田を交互に見てからもう一度「林田、なーう」と喋って、寝室からも出て行った。テレビを見にリビングに戻ったんだろう。
「いやぁ。一時はどうなることかと思った。よかったよかった」
林田は腰に両手をあて、天井を見上げて笑う。
「あーあ。スーツが毛だらけだぞ。どーすんのこれ。結構いいやつじゃん」
「ガムテープかコロコロでなんとかするよ」
林田は毛だらけになったスーツを取り、リビングに戻ってゆく。多分猫らしきものとテレビを観ながら毛を取るつもりなんだろう。
あいつの正体がわかる前に、林田の方があいつとの生活に順応してしまいそうな気がする。
「あー! さんま御殿終わっちゃってんじゃん!」
「林田ー!」
林田と猫らしきものの悲鳴がリビングから聞こえてきた。
さんま御殿の後は特に面白い番組もやっていなかったので、Netflixで「デアデビル」マラソンを始めることにした。どうせ明日は祝日だし。
猫らしきものはお笑い番組ほどには海外ドラマが好きではないのか、それとも単に疲れていたのかどうかはわからないけど、幼少期の主人公が失明するところあたりで床にベターっと腹ばいになったままいびきをかき始めた。失神したアケボノのポーズだ。
猫らしきものが眠っている間に、林田はコロコロでスーツの毛を取りながら、俺は魚肉ソーセージをぱくつきながら、アレについてどうするかを話し合った。
林田は未だにアレが猫である可能性を捨てきれておらず、「動物病院に連れて行って医者に診てもらうのはどうか」と提案したが、俺が「解剖されるか、頭に電極刺されて宇宙に飛ばされるかのどっちかしかないと思う」というと「猫にそんな酷いことする人間がいるかなぁ」と首を捻りながらも提案を引っ込めた。
そもそもアレがなんだかわからない以上は、延々と「ああじゃねぇか」「こうじゃねぇか」と仮定の話をするしかないわけで、俺たちはその内議論にも飽きてしまった。
そもそもの諸原因である猫らしきものが呑気に寝ているのに、なんで俺たちが頭を悩ませなきゃいけないのかと馬鹿らしくなったというのもある。
「徐々に徐々に巨大化して、徐々に徐々に喋り始めたのなら、徐々に徐々に縮小して、徐々に無口になっていくんじゃないの? もうちょっと様子見てみたら?」
と言う結論に達した俺たちはそのまま「ジェシカ・ジョーンズ」マラソンに突入したのだった。
幸いにして、その後、林田から「気がついたら猫がシェイクスピアをそらんじるようになっていた」という連絡を受けることはなかった。
不幸にして、その後、林田から「気がついたら猫が俺の服を着るようになっていた」という連絡は受けた。
これから妹のいらない服を持って林田ん家行ってくる。
アレがお洒落に目覚めたのだそうだ。
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