Tumgik
uama-aqua-mi · 3 years
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TD4
自分たちが彼女を想ってもいい……それだけでも幸せなのに、彼女もそう想ってくれるとはその時の自分は思ってもみなかったんだ。目の前で、顔を赤らめて照れるように身じろぎをする彼女がとても眩しく見えて、凄く愛しくて……あまりその後のことは覚えていない。ただ、途轍もなく幸せな気持ちで包まれていた。それは確かだった。
--- 
  「で??」
「え?」
「それで?続きは??」
とある日の病院の休憩室。おれは同僚のハードバップさんとロカビリーさんに囲まれていた。
二人は同じ病院の仲間であり、アクアステージというマフィア組織の仲間でもあった。いつも陽気で溌溂とした陽のエネルギーを周りに振りまくエネルギッシュなヒトであるドリームポップさん。ニヒルな笑みを浮かべ、飄々とした振る舞いをしているが、とても腕がいい医者のロカビリーさん。二人はいつからかおれ達とフィルターハウスさんの事を応援していた……らしく、浮尾だっていたおれを見て、「何かあったのかしら!?」とこの日は突撃してきたのだった。
「それでそれで??付き合うことになったのかしら~!?」「そりゃそうでしょ~告白しあったんだから」
「あっ」 しまった。
「「あっ???」」
「……付き合ってくださいと、言ってない、デス……」
「「はーーーー!?!?」」
気づいてしまった事実に青ざめながら言うと、二人は目を真ん丸に大きくして、同時に大きな声で叫んだ。その叫びを一身に受けながら、おれは頭を抱えて机に突っ伏していた。
「いや、あの時は、デスが急に言い出したから、俺もう必死で……。気持ちを伝えることで精いっぱいで……ふがいない」
「ま、まあ、デス君のことだものね~。思い付きで行動したんでしょうし。あの子本当に欲求に忠実よね~そこがまた可愛いんだけど♡」「なんだ、まだ二人は恋人同士じゃないのか~」
ちょっぴりがっかりという顔をしているロカビリーさんとちょっぴり不満そうな顔をしているドリームポップさん。二人の視線がとても痛い……。 本当に、気持ちを伝え合うことだけで必死になっていて、その先のことまで進んでいなかった。そうか、フィルターハウスさんもおれ達の事を好きって思ってくれているのなら、おれ達は付き合える……のか……?いや、それはちゃんと彼女に確かめなくてはならない。
次に会える時はいつだっただろうか。組織のアジトへ行ける日はいつか?彼女の部隊と一緒に仕事をする日は近いうちにあっただろうか。 頭の中で予定をフル回転させていると、ドリームポップさんが「時間だわ」と声を上げた。どうやら休憩が終わったようだ。
「また進展があったら聞かせて頂戴ね♡」 そうウィンクして、ドリームポップさんが立ち上がった。
「それじゃおじさんはコーヒーのお変わり貰ってこようかな~」「はい先生は私と一緒に行きましょうね~~♡♡♡」
どこかへ立ち去ろうとしたのかもしれないロカビリーさんは隣のドリームポップさんに腕をからめとられ、引きずられながら休憩室から去っていった。今日の仕事は二人一緒らしい。おれ達の事を聞きたいという話は建前で、ロカビリーさんを逃がさないようにしていたのかもしれない……?なんて考えながら、一人残されたおれは彼女を想う。深呼吸をして、席を立った。
付き合ってほしいと伝えたい気持ちはもちろんあるが、そうじゃなくても、何より彼女に会いたい、仕事がなくても彼女に会いに行きたかった。彼女の事を想うと顔がほころんでしまうし、ついつい頬に熱が集まるのを感じる。両思いになるだけでこんなに嬉しいだなんて、初めて知ったんだ。
---
『付き合うってなんだ?だからどうだっていうんだ?何か変わることがあるのか?好きだけじゃ満足できねぇのか??』
『付き合うっていうのは……お互いが恋愛のパートナーとして約束し合うことだよ、デス』
『あん?』
『パートナーになることで、相手は他の人と恋愛しない、という暗黙の了解があってね。相手を理解して、支えて、一緒にいて……お互いを思いやる。それが付き合うことなんだ』
『……』
『おれは彼女と付き合いたいと思ってる。デス、君は?』
『……』
『彼女が他の人に一番の笑顔を向けること、嫌なんじゃないか?』
『…………嫌、だな』
『彼女の隣で、一緒にいたいと思わない?』
『……………………思う』
『うん、知ってる』
--- 
「フィルターハウスさん!」
「!スラッシュさん」
仕事が終わり、彼女がいるだろう組織の建物へ駆け込むと、書類を抱えていた彼女と出会うことができた。彼女も任務終わりなのだろうか。少しだけ硝煙の匂いと彼女じゃない血の匂いを感じる。見たところ怪我はなさそうだった。
「任務終わりですか?お怪我は?」
とつい心配して聞いてしまう。それに対して彼女は何もないですよーと朗らかに笑って答えてくれた。最も過酷な場所に身を置いているにも関わらず、彼女の笑顔はいつも曇らない。初対面の時よりも、朗らかになっているだろうか。花が舞うような、暖かい笑顔。……おれの色眼鏡だろうか?
「スラッシュさんこそ、仕事なんですか?」
「いえ、仕事は終わって……その、貴方に会いに来ました」
緊張しながら伝えると、驚いたように目を丸くした彼女は、次の瞬間頰に紅をさしたかのようにほんのり赤くなった。伝えたおれこそ、自分の顔がほんのり熱くなっているのを感じる。
「お話ししたいことがあって……、少しお時間頂けますか?」
砂糖たっぷり、ミルクたっぷりのミルクティーを注ぎ、自分は珈琲を注いで、二つの水中カップを持ってテーブルに座っている彼女の元へと向かう。カップを持つ手が震えてるのは、気のせいではない。彼女にカップをどうぞと渡し、彼女の対面に座った。少し気が休まるよう、カップに口をつける。口内に苦味が広がり、気持ちがきりりと引き締まるような気がした。
「この間は、突然にも関わらずおれ達の話を聞いてくださって、ありがとうございました。好きって言って貰えて、すごく嬉しくて。それだけでいっぱいいっぱいになってしまったんですけど、改めて申し込みたいことがあって」「?」
そっと息を吸う。
「貴方と一緒にいると幸せな気持ちになるんです。願わくば、おれも貴方を幸せにしたい。俺たちと付き合ってくださいませんか?」 「返事はいつでも構いません。良かったら、考えてみてください」
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uama-aqua-mi · 5 years
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g3
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いつ死んでも構わないと思っていた。組織の為になった上で死ねるのなら、本望だと。
だが、あの子が泣いているを見て、おれぁ死ぬ訳にはいかないと、この子を心配と不安から二度と泣かせたくないと、
笑顔でいて欲しいと、そう思ったんだ。
****** ****** ****** *
ライカさんをお借りしました。
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uama-aqua-mi · 5 years
Photo
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手をつないで、デート。
*フィルターハウスさんをお借りしました。
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uama-aqua-mi · 5 years
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H1
ふと、なんとはなしに思ったんだ。
星が見たいと。
ホタルイカの生態から研究され生み出された、小さな海のランプが部屋にあるその影を揺らした。
もぞり、と動いたそれは、山のような影から次第に人の上半身の影に変わる。
部屋の主人である男は、モノクルを掛け直し、緩く瞼を持ち上げ、壁に掛けられた振り子時計を見やった。
1時過ぎ、もう深夜の時間帯だ。仕事はとうに終えている時間である。急ぎの仕事を片付けるため、部屋にこもりずっと作業をしていたのだが……どうやら眠っていたらしい。
寝起きの頭でぼんやりとランプの光に照らされハードバップは、さてこれからどうしたものかと頭を巡らせていた。仕事を片付けたいのだが、悩みうまくいかずにそのまま寝おちていたのだということを、思い返していたのだ。
作業机を見やると、ごちゃごちゃとものと設計図が散らばっており、よほど寝る前の自分は作業が難航していたのだろうと伺えた。何かいいきっかけはないものか。思考を切り変えて発想を変えたいと思い、ハードバップはしばし夜の散歩に出ようと思ったのだった。
工房から離れ、建物から出たハードバップは暗く夜の帳の下りた海の中をぼんやりと泳ぐ。
人通りは少なく、いたとしても夜遊びにふける人魚くらいのものだった。そうした夜遊びはハードバップはあまり好きではない。もちろん、昔住んでいた町にもそういったモノはあったし、仲間は好んで行っていたのを覚えている。だが彼はそうした賑わいに参加こそすれど、一人座って酒を傾ける、そんな具合だった。
そもそもうるさいのが苦手だったのではないだろうか、と過去の自分を思い返して思う。今はむしろ、賑わっている方が好きではあるのだが。
そうしたネオンの光に照らされている街とは反対の方向へハードバップは泳ぎを進めていった。暗く、静かで、今の時間でも夜空を静かにゆっくり観れるスポット、それに向けて泳ぎを進めていると。
「ハーディ?」
聞いたことのある声色だと振り返ると、そこには同じ組織の仲間であり、シャチのデルタブルースがいた。
「デルタ」
そう名前を呼び、ゆっくりと彼女の方へと泳いでいく。荷物を持っている姿を見るに、仕事帰りなのだろうか。いや、家に帰るところだったのかもしれない。
「どうしたのこんな時間に?仕事?」
「いや、終わらなくて、抜け出してきたところだ」
「えっそれいいの?」
「息抜きさ。ちょっとみたい景色があってな」
そうやって何気ないやり取りを交わしているうちにふと、思ってしまったのだった。それは自分でも驚くほどするりと口からこぼれ落ちた。
「お前も一緒に来るか?」
夜の海は素直だった。穏やかに寄せる波、柔らかな音色を奏でる潮騒、暗く、空の色を映した海だった。
一度上昇し、海面から周りを注意深く観察したハードバップは、下にいるデルタブルースに手招きした。
ぐぐっと上昇し、ぱちゃんと水音を立てて海面から顔を出した彼女が隣に来たことを確認してから、ハードバップは天を仰ぎ見た。
満点の星空。一粒一粒の星々が煌めき、無数にある星々は世界が海だけでなくさらに広く遠くあるものだということを見上げる者に知らしめる。周り一面、全て海であるからこそ空を遮るものは海だけであり、絶景とはこのことだろう。
視界を埋め尽くす夜空の星々を見やり、二人は感嘆の息をもらした。
「……星、綺麗だね」
「……あぁ」
星空を眺め、波音のみ二人の間に流れていた最中、ぽつりと、想いを吐露するように言葉をどちらともなく零した。
「……あんまり、うまく物事考えられなくなった時は、ここに来ると考えが開けるんだ」
「よく来てるの?」
「あぁ」
ぽつりぽつりと会話をする。うまく言葉が回らないのは、星空が美しすぎるからだろう。
あぁ、綺麗だと、心の中でもハードバップは呟いた。
時折訪れるここは、いつも以上に星々の灯りが強く感じた。夏だからだろうか。陸で夏の大三角と呼ばれる星座が、一際輝いて見える。
彼女は楽しめているだろうかと、横に微かに目を向けると、そこに目に星々の煌めきを映したデルタブルースがいた。
興奮からだろうか、それとも暗い夜であってもこれだけ近くにいるからだろうか。きらきらと感情豊かに動くその瞳に、さらに夜空の星々の煌めきを映した彼女は、とても綺麗だった。
夜空の美しさ、海のたおやかさ、それらを身に纏うかのような彼女の姿に、小さく息を呑む。
柄にもない気恥ずかしさから目線を再び夜空へと移す。楽しめているようなら、それでいいと。
心の中で思いながら、それと同時にこれを彼女と一緒に見れて良かったと、思う。
あぁ夜であってよかった。この動揺もきっと、夜空が全て覆い尽くして隠してくれるだろう。
「……そろそろ行くか」
「うん」
暫くして、ハードバップが切り出し、二人は再び海の中へと潜り始めた。
海の底からきらきらと輝く、人魚達の営みから発する光もまた、美しく感じる。先程はあれほど眩しいと思っていたのになと、気持ちの変容っぷりに心の中で自分に苦笑していた。
「星も綺麗だったが……海も、綺麗だな」
そんな当たり前のことを、自分らしくない言葉を、隣で泳ぐ彼女に向けて言い、久方ぶりに自分の口角が上がったように、ハードバップは感じていた。
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uama-aqua-mi · 5 years
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H2
「抱きしめて欲しい…」
そうデルタブルースの口から紡がれた言葉に、一瞬驚きと、嬉しさを覚えた。何か嫌なことでもあったのだろうか。誰か他人を感じたいのだろうか?
「あ?あー…まあ、いいけどよ」
俺でいいんだろうかという気持ちを秘めて、そのまま腕を広げた。
するとデルタブルースの顔が真っ赤になった。
また風邪でもあるのか?体が弱っているからヒト恋しくなったのだろうか?
そんなことを考えながら、そのまま動かないデルタブルースを迎えるように、ほら、と一言置いてから俺は自分の腕にデルタブルースを引き寄せた。
ぽすっと音が鳴るような。
そのまま背中に手を回し、なだめるようにぽんぽんと背中を優しくたたいた。
ヒト恋しくなるときは、あるよなあ。そうぼんやりとハードバップは思う。
じんわりとデルタブルースの体温が伝わってきて、自分もじんわりと暖かくなるようだった。こんなにも密着したのは初めてかもしれない。少なくとも、起きているときは。
ふんわりとフローラルの甘い香りと、馴染み深い硝煙の香りが俺の鼻腔をくすぐった。…どちらも好きだなと、ぼんやり思う。
あぁ、こうして彼女を感じることで、年甲斐もなく。
(心臓の音、聞こえねえといいけど)
顔が微妙に熱くなること、先ほどよりも高鳴る自分の鼓動を感じながら、今この時を感じ入っていた。
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uama-aqua-mi · 5 years
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TD3
ある日に見た、漫画。
それは少女マンガというものらしく、ぱらぱらとめくっていただけの俺は読んでいくうちにどんどんそれに熱中していった。
その主人公に共感を覚えるようになっていき、あまりにも自分の身に起きていることと同じだから、俺はこれを一種の医学書なのでは?と考えるほどだった。
風のうわさによると、これは同じ医者のロカビリーが置いておいたものらしい。
……あいつはさまざまな医学書を嗜んでいるんだな。
それによると、オレが長いこと頭を悩ませていたものについて、それが何なのかということが書いてあった。
それが分かったとたん、俺はその感情の大きさに耐えられなくなり、読んでいた漫画本を放り投げた。そうして俺は、呆然と思考の渦に飲まれていった。
    別によいんだ。オレは変わって良いんだ。むしろ、変わらないほうがおかしい。だって、オレは一人の人間なのだから。
オレは俺のための感情の代わり手ではなく、俺がオレを受け入れると決めたときから、一人の人間で、僕も一人の人間なんだ。
だからほら。怖がらなくていいんだよ、デスメタル。
あぁ、オレは
     グラウンド・ブルーの廊下にて。
目の前に探していた人魚がいた。おいと声をあげた。けれども名前を呼んだわけではない。気づいていなさそうであったため、さらにオレは声をあげた。
 「フィルター・ハウス!」
 そう名前を告げると、フィルター・ハウスは後ろを振り向いた。
 「デスさん?」
そうオレのことをすぐに呼んでくれた。
そうだ、オレが伝えなければならないことがある。そのためにずっと探していたんだ。
 「…オレは、お前に」
話したいことがある。だがうまく口が回らない。
きょとんとした顔でオレを見るこの女に、オレはうまく口を開けない。
なぜなのか。ただ事実を伝えればいいだけなのに。
  「…………ずっと考えていた」
 ようやく振り絞った言葉がそれだった。
 「これがなんなのか、わかんねえで、振り回されて、意味も分からなく安心したり、逆に激情にかられたり」
「ただ大事なモンだってのは、薄々感じていた。ただそれをあらわす言葉を知らなかったんだ」
「オレはな、フィルター・ハウス。
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 …………それだけ、伝えたかった。オレはそう思ってるってだけだけどよ。
スラッシュはわかんねえよ。あいつのことは、あいつに聞いてくれ。
それだけだ」
 そういって、オレは目を閉じた。
    パチリ、と目を開けたスラッシュメタルは、目の前にフィルター・ハウスがいることに気づいた。
 「あれ、あ…フィルター・ハウスさん……?」
 ぼんやりした頭に、直前の出来事の記憶がフラッシュバックする。
途端にスラッシュメタルは赤面していた。
声にならない叫びというのだろうか。なんとも言えない顔で、自分の感情を飲み込もうとしており、「デスは本当に、急だから…!」と後ろを向いて、今ここにいない人物を糾弾していた。心の準備もしていなかったからだろう。彼も彼で感情の渦に巻き込まれていた。
 「す、スラッシュ、さん…?」
 おずおずとした彼女の言葉にスラッシュはハッと正気にかえり、一番困惑しているのは彼女であると察した。
……それもそのはずだ。
 「す、すみません、フィルターハウスさん」
 あわてた様子でスラッシュは困惑させてしまったことを詫びた。そして言葉を続けた。
 「……デスは、貴方に自分の気持ちを伝えたんですね」
 わずかに顔を綻ばせて言ったスラッシュの顔は、どこか嬉しそうであった。まるで成長を喜ぶ兄のような顔であり。
そう言った後、自身も決意をみなぎらせた顔になり、すっと息を吸った。目の前にいる、フィルターハウスに改めて向き直なおり、震えながらも口を開いた。
 「俺達、は、それぞれ違う人魚です。多重人格という、他のヒトとは違う人魚です。考え方だって違う。好みも、嗜好も、違っていて。
それでも、貴方は俺たちに向き合ってくれた。普通のヒトのように、俺たちと分け隔てなく、接してくれた。……本当にありがとうございます」
「オレは、貴方が笑っている姿が好きです。俺にとって、貴方の笑顔は綺麗な真珠のようで、まぶしいくらいで。貴方と過ごすうちに、惹かれて、いきました。
……俺は、
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……もし、貴方さえよければ、この気持ちを、俺たちが抱くことを、許してください」
++++++
フィルター・ハウスさんのお名前を、お借りしています。
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uama-aqua-mi · 5 years
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g1
夜中に勢い良く跳ね起きた。
自分の体のいたる所から噴出する汗が止まらなく、体はとても冷えていた。
まさかまたあの記憶を見るとは思わなかった。
幾つもの年月がたち、年月を経るごとにこの手の夢は見ることが少なくなってきたのだ。
なぜまた今頃。
今が恵まれた環境に居るからだろうか。お前が幸せになる事は許さないということだろうか。
もとより幸せになる気は無いというのに。忘れたことなんてない。
グラウンド・ビートはちいさくため息をつき、修行用の木刀を持って部屋から出て行った。
一度目が覚めてしまった今、また寝るのは具合が悪い。またあの夢を見たくない、という理由でもあるのだが。
まだ夜が深い中、彼は海の森へと消えていった。
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uama-aqua-mi · 5 years
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td1-1
彼女がすすと泳ぎ去り、残���れた俺は手元の小さな硝子の入れ物に入った、プリザーブドフラワーを見た。
青、白、緑の鮮やかな色で彩られた、その硝子の入れ物を見ているうちに実感が沸いてくる。
手の中で転がしながら、光を受けて色鮮やかにきらめくそれを、ふと室内の蛍光灯にかざした。
硝子がきらりと光り、色が一層濃くなる。
「きれいだ」
スラッシュとオレに、ピアス女がプレゼントを贈ってきた。
プレゼント、というものになじみがないオレだが、スラッシュは大層喜んだようで、あまり帰らない家にそれをおかず、自分も、オレもよく見れるようにと病院の自分にあてがわれた個室の机の上に飾っていた。
今までは外的要因から意識の切り替わりがおこなわれ、オレが出てきていたが、今はそうした事以外でも眠る事をスイッチとして、オレが不定的に出てくるようになっていた。
表の診察の仕事などしないオレは大抵この個室にこもるか、組織の内部や人があまり居ない街のどこかをうろついていたので、そもそもの家に帰ることもあまりなかったのだ。
だからこそ、スラッシュは置き場所をここにしたんだろう。
浮かれてやがるな?
とはいっても、オレには花なんてものはただのものでしかなく、意味を感じられてはいなかった。ぼうっと頬杖をつきながらそれを眺めていた俺は、ふとその先にある本棚に目がいった。
『花図鑑』
……ふうんと呟き、本棚に向かい、手を伸ばす。
気だるげに片手で背表紙をなでた後に取り出し、机の上に無造作に置いた。
また頬杖をつきながら、もう片方の手でパラパラとページをめくる。
「…花ってもんは、多すぎじゃねえ?」
あまりの数の多さに眉をひそめる。あぁ、海の珊瑚や海草の陸バージョンかと説明を読み知り、写真とともに文章を目で追っていた。
文章の中にある一つの単語に、思わず目が留まった。
「花言葉、だあ?」
なんでも花にはそれぞれ花言葉なるものがあり、意味があるのでそれになぞらえて花を贈ったりもするらしい。
そんなもんが陸の上にはあるのか。たいがい、そんなもんを考える人間ってのは暇な奴らが多いなと心の中で思い、そんなものがつけられている花に憐憫を覚えた。
くだらない、と思い半目になりながらさらに頁をめくっていると、見覚えのある花を見つけた。
机の上に置かれている、小さな硝子の入れ物に入っている��の花だった。
『…Blue rose 青バラ、バラ科バラ属、葉や茎に棘を持つものが多い。』
文章を心の中で読み上げていく。
『花言葉は、奇跡、夢叶う』
ふうんと思いさらに頁をめくっていく。形、色と様々な花が目に映っていく。
『…Clover、マメ亜科、シャジクソウ属、茎は地を這うように長くのび、葉は三小葉。希に四、五および七小葉のものがあり、一年草、二年草、または多年草である。』
『花言葉は、幸運、私を想って』
『Primula sieboldii、サクラソウ、サクラソウ科サクラソウ属の多年草。自生地では林間の湿性地や原野の草間に生え、ときに群生する。』
『花言葉は、初恋、憧れ』
「……ふうん」
その後もぱらぱらと頁をめくり、半分まで読みすすめたところで。
残りの頁をぱらぱら、ぱらぱらぱららららと一気にめくり、図鑑の紙はささやかな水流を巻き起こして、
ぱたんと閉じられた。
「…………」
いつのまにかデスは眠ってしまったようで、ぼうっと暗さが翳ってきた夕方にスラッシュは個室で目覚めた。
寝そべっていた机から上半身を起こし、目に映ったのは花の図鑑。
「……デスは気付いて無さそうだけど」
思わず頭に片手をやり、かきむしる。
ただ単純に贈りたかっただけかもしれない、意味を知らずに色や形で選ばれたのかもしれない。そもそも、単純に俺達にと贈ってくれたことが嬉しくて。
様々な事が頭の中を駆け巡る。
「……うぬぼれてもいいんだろうか」
知らなかったそれぞれの知識と意味を噛み締めて、スラッシュは手で口元を覆い、顔を赤らめながら、呟いたその言葉は、夕暮れの静かな海に泡となって吸い込まれていった。
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uama-aqua-mi · 5 years
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td1-2
苦虫を潰したかのような顔で町の一角に立ち尽くす1人の人魚。
腕を組みながら彼はイライラした様子で「…なんでオレがこんなことを…」と呟いていた。
今日は久しぶりの休み。丁度今の時期は病院も繁忙期であり、スラッシュもアクアメンバーも皆仕事に駆り出されていた。
そんな繁忙期の中、ようやくとることができた休みにスラッシュはお返しの贈り物を買いに行こうと決めていた。
しかし、運命の悪戯か。
今日表に出てきたのはデスメタルだった。
「……」
多くの人魚達が行きかう通りを眺めながら、眉をひそめ、不機嫌な顔をしたデスは覚悟を決めるまで動けていなかった。
そもそもの話、自分が買いに出る必要はなかった。しかし、スラッシュの意志が働いているからか、買いに出かけなければ落ち着かず、語りかけられているわけではないが、今日かわなければならないという圧迫感がデスにのしかかっていた。
スラッシュの意志の強制力が働いているのか。
そんな理由から柄にもなく、こんなところまでデスが出てきたというわけだった。
しかし、そもそもの話。
デスはどんなものをフィルターハウスが好むのか、その前にどんなものを女性は好むのか、全く知らず、分からなかった。
女性が好むものなど、今まで考えた事も視野にもいれてきたことがなかったため、全くの知識もなかったのだ。
女性が多く入っている店に入る・・・というのも勇気が出ずにはばかれ、通りの店を睨み付けるように眺めていてしばらくした頃。
「…デスメタルか?」
と声を後ろからかけられ、ばっと勢いよく振り返った。
そこには同じアクアステージのメンバーであり、カジノに勤めているテラーコアがいた。
「女が喜ぶもの?」
呆気にとられた顔をしているテラーコアに、デスメタルは苦虫をつぶした顔で舌打ちをした。
「……用意しなくちゃ、いけねえんだけどよ、……わっっっかんねえんだよ」
喉から振り絞るように、途切れながら押し殺すように、何とか言葉にする。
何で俺は人に相談なんかをしているんだ、あぁ無性に腹がたつと頭の中でぐるぐると考えが走り回っているデスメタルを不思議そうに見ながら、テラーコアは答えた。
「女の子が喜ぶものって、そりゃあ、可愛いものとか甘いものとか、サンゴとか……色々あるけど」
親切に答えてくれているテラーコアに一瞥を送り、デスメタルは不機嫌そうな顔で無言のままその言葉を聞いていた。続けろと一瞥で促す。
「でも、女の子ってより、誰かに贈るんだろう?それならその子が喜ぶものにした方がいいんじゃないか?」
「あぁ??」
それが分からないから、こうして何もできないのだというのに。
何言ってんだてめえとにらみつけていると、テラーコアは次のように続けた。
「分かり易く言うと、その子が持ったり、身につけたり、その子が浮かぶようなものがいいんじゃないかってこと」
??????とさらに不可思議に思い、その言葉の意図を噛み砕いて自分の中で反芻していく。つまりどういうことか。
沈黙を続け、考え込むように動かないでいるデスメタルを見て、もう少しわかりいい説明をした方がいいだろうかと、テラーコアが口を開きかけたとき、
「……理解はできないが、言いたいことは分かった」
そうデスメタルが口を開いた。
テラーコアはおぉと感嘆の声を漏らす。
「何かいいものが見つかるといいな」
人良さそうな笑顔を向けるテラーコアに鋭い一瞥を送り、しかめっ面のままデスメタルは起き上がった。
「……ほんとうに、オマエらがやることは理解できねえ」
そうつぶやき、じゃあなと言葉少なくテラーコアの元から泳ぎ去っていった。
『……たぶん、次会ったときに、スラッシュが今日のことを御礼言ってないことについて、あいつの代わりに謝罪と感謝に来るんだろうな……』
普段の二人の様子を思い浮かべ、容易にできるそんな未来予測をして、思わずくすりと笑う。
相変わらず愛想がない人魚だが、まさか誰かにものを贈ろうとしていたとは。
あの彼にとってそれは大変なことだろうと思いつつ、それでも贈ろうとする彼に何かしらの変化を感じられた。
デスメタルの去って行った方向から目を離し、テラーコアは時計をみやる。約束の時間に遅れはなさそうだと思ったテラーコアも、その場を泳ぎ去っていった。
「いらっしゃいませー!」
店員の甘い声に鳥肌を立たせながら、デスメタルはすばやく店内を見渡した。
見るからに甘ったるそうな、変に丸いもの、明るい色彩の数々、とても自分とは縁遠いものたちがそこにあった。
小物、アクセサリー、ぬいぐるみ、文房具などなど……たくさんの商品が並んでいるそこは雑貨店。女性客がターゲットのかわいらしい名前のついた店である。
もはやここは異世界なのではないか。
そう思案してめまいがするほどに、そこはデスメタルにとって異質な世界で。しかし街の通りからずっと眺めていた中で、この店が一番女性客が多く出入りをしていたのだから、ここが一番おあつらえ向きなのだろうと、デスメタルは考えたのだが。
早くここから出たいという気持ちが、店員の挨拶を聞いてから急激に上昇していた。
とにかく、選ばなければ。早くこれを終わらせよう。
睨み付けるように店内を見渡し、一通りおかれているものをチェックする。こんなのが喜ぶのか、こん���もの女は持っているのか?そう不思議に思いながらも、あぁそういえば病院内の看護師の奴等も、こんな飾りのついたボールペンやらメモ帳を持っていたなと、記憶と照らし合わせながら物色を進めていた。
テラーコアの言った助言を思い出す。あいつが普段何を好いているのかも、何を持っているかも分からない。知っているのは病院や本部で顔を合わせたときの、彼女の姿だけで。
そういやあいつの目、青磁色だったな。髪は薄い紫色で、とにかくピアスと露出が多くて。
こんこんと記憶の引き出しを開けながら、彼女の姿を思い浮かべながら物を見やる。これだったらあいつも満足するんじゃねえの?と不機嫌そうな顔で手に取ると、なんとなくスラッシュはこれではないと言っている様に感じた。
なんとなく気持ちにもやつきを覚えるのだ。まるでスラッシュがNOと感情で俺に干渉してくるようで。
ならお前が表に出てこいや!!!!そう腹立ちながらも、それがすぐにできるものでもなし。
苛立ち不機嫌なオーラを増やしながら、手に取り自分とスラッシュの意思を確認する、という行為を繰り返した。
うまく見つけられない自分に苛立ちながら、なかなかスラッシュが満足しないことにも苛立ちながら、それでもとほかのものを見やり、何かがよぎったような気がして、ふいに一度見たところをもう一度見た。
吸い寄せられるように、それを見た。
手に取り既視感を覚え、あぁそうか、と一人で納得する。
スラッシュからも何もない。むしろ少しだけ心が晴れたように感じて、ならこれだと素早くそのまま店員の下へと泳いで行った。
本当は買った本人が渡すのが一番いいのだろうと思う。けれども今日出てきたのは俺で、そしてデスもあれから中々出てこようとしてないのか、俺がずっと表にいるようだった。
恥ずかしさなのか、選べたことに関する困惑なのか、何かしらの感情を彼は抱いているようで、心の奥底でなんともいえない感情が渦巻いているのを、自分も感じていた。
しかしこれは俺の感情ではなく、デスの感情だ。お互いにお互いの感情に引っ張られることはあるけれど。
もう一人の自分がわずかに変わっているのを感じながら、俺は病院ではなく組織の廊下を泳ぎ進めていた。
「フィルチー?それならさっき会ったし!まだ談話室でお茶を飲んでると思う」
「ありがとうございます、チカーノさん」
フィルターハウスと仲の良いチカーノラップを見つけ、居場所を教えてもらい、そのままゆっくりと泳いで進んでいった。自分達も彼女に言いたいことがあるから、その言葉を反芻して確かめつつ泳ぎ進めると、すぐに談話室へ着いた。
本部の建物にある談話室は広い。この時間は談話室を利用している人も多く、様々な言葉が行き交っていた。
そんな談話室の一角に、探していた彼女を見つけた。
「こんにちは、隣いいですか?」
「!スラッシュさん」
飲み物を味わいながら端末を操作していたフィルターハウスは、顔を上げて声をあげた。
どうぞと言葉にありがとうございますとお礼を言い、スラッシュメタルは隣の席に座った。
「先日はプレゼント、ありがとうございました」
「!こちらこそ」
お礼を述べると、彼女はへへへと照れ笑いを浮かべた。
その笑顔に心が暖かくなる。
「すみません、とっさにお礼が言えなくて。今は自分の診察室のデスクに飾らせてもらってます。とてもきれいで」
笑顔につられ、自分も笑いながら、嬉しそうにスラッシュは言葉を続けた。
「デスも、始めこそ興味はなさそうでしたが、花の図鑑を引いていたり、してましたよ。どんな花か気になってたみたいで」
デスがそれをいうな!と言っているような気持ちの感触を覚えるが、構わずスラッシュはそう話した。
「デスさんが?」
目を丸くしてフィルターハウスは驚いていた。
「あいつ、あぁ見えて勉強家というか、わからないことは調べるタイプなんですよ。そこは俺も同じなので、やっぱりあいつは俺なんだなと思います」
「やっぱりデスさんはスラッシュさんなんですね」
「はい」
そう他愛なく会話しながら、意を決して言葉を続ける。
「それで、俺もデスも、頂いて嬉しかったので」
バックから物を取り出す。可愛くラッピングされたそれをフィルターハウスに差し出した。
「もしよかったら、お礼に受け取ってもらえますか?」
「……貴女にお礼を俺たちも言いたくて。
デスは、あんな性格で、感謝も言えないやつなのですが……。フィルターハウスさんが声をかけてくれて、突き離しても変わらず接してくれて、本当に、感謝しています。」
「デスだからと怯えることなく、俺にも、あいつにも、普通の人のようにいつも接してくれることが、あいつは気づいてはいないけど、俺たちにとって嬉しいことだったんです」
天の邪鬼でぶっきらぼうで、人を傷つけることしかできないオレが、ここまで変われたのも、貴女や、ジャングルさん、テラーさんのおかげで。
感謝し足りない。
ふと、あのときの笑顔を思い出す。そしてふと、デスが調べた花言葉を思い浮かべる。うぬぼれてもいいのなら、貴女のことをより知りたいと
「俺達と仲良くしてくれて、ありがとうございます。
もしよかったら、これからも仲良くしてくれると、嬉しいです」
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uama-aqua-mi · 5 years
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「あら先生」
「ボサノヴァさん。ご無沙汰しております」
「スラッシュ先生も、お変わりないようで。どうです?仕事のほうは」
「相変わらずですよ。最近は新しいウィルスもはやってますからね。皆てんやわんやです」
「私もちゃんと予防するようにしないといけないわね~。体調管理、しなきゃいけないのはわかるんだけど苦手なのよね」
「ポリフォニーさんと一緒に管理しあうのはいかがですか?」
「それもそうね、特にポリーは病気にかかりやすいし。今以上にしっかりしなきゃ……」
「健康が一番ですからね。そうじゃなきゃ仕事もできない」
「ふふ、それもそうね」
「Miss.ボサノヴァ」
「あらエピック。調子はどう?」
「変わりなく。こちら、頼まれていた資料になります。必要であれば資材も注文可能ですが」
「ありがとう、さすが仕事が速いわね~。うんうん、これは注文していいかガラージにも聞く必要があるし、他の子達も必要かもしれない。一回皆に聞いてみてからまた連絡するわ」
「承知しました。ではご連絡お待ちしております」
「ありがとう~~。あっそうだ、エピック」
「はい」
「今度ポリーとね、有給とって二人で出かけようと思ってるのよ。まだ私たち、生まれ故郷とこことで他の場所に入ったことがないからさ。貴方がお友達と一緒に行った、素敵な絶景がある場所、お勧めを教えてくれない?」
「それは喜んで。Miss.ボサノヴァ」
「ありがとー!」
「おっと、気をつけろぉ」
「ぶっご、ごめんなさい、グラビさん。ちょっと考え事してたわ。反省反省…。
あら?貴方も情報部隊へ?」
「あぁ、この間の報告をまとめられたからなぁ、近くまで来たもんだ、せっかくなら直接渡そうと思ってなあ」
「そうなのね~」
「ん、そうだ、せっかくだぁ、おまえさんにもこれをやろう」
「ふふ、飴ちゃんってやつ?ありがとう。
何このパッケージ、見慣れない黒と黄色のマスコッ���のようなキャラがいるわね?」
「これぁ陸の飴でなあ、そのきゃらくたーが実際に陸にはいるんだと」
「へ~~~。HONEY CANDY?きれいな黄色の飴玉なのね~」
「おう、ちょいと気になってな。買ってみたのさぁ」
「ふふ、このマスコットキャラも可愛いわね?」
「ふっそうだなぁ」
『陸のキャンディーってのも気になった要素なんでしょうけど。あのパッケージで買うの決めたくさいわね~~。本人気づいているのかしら?』
「ポリー!今日は何時上がり?」
「わ、わ、おねえちゃん!
えっと、今日はカリプソさんについて、お仕事だから、ちょっと遅くなる・・・かも。えっと、また後でちゃんと聞いて連絡するね」
「わかったわ~。私も今の案件が変わらなければ、定時で上がれそうだし。時間が合うようなら一緒に帰りましょう」
「うん!」
「はあい、シューさん!」
「これはボサノヴァ様」
「なになに?開発帰りってやつ?貴方も最近はよく遊びに来てるのね~」
「仕事の休憩時間ですから。私は行きたいところに来ているだけですよ」
「ふ~ん??まっ私は二人のこと応援してるから」
「とてもよい笑顔ですね。とても楽しそうだ」
「他人の恋路は見守りたいものでしょ?
っていうか、ちゃんと言わないとあの子気づかないわよ??のんびりしてるけどさあ、誰かに掠め取られるってことだってあり得るんだから」
「そうですね」
「そうですねって。……相変わらず淡白ね~それに相変わらず、その余裕のある姿勢は崩さないのね。それが貴方ではあるけれど」
「恐れ入ります」
「まぁ、でも、それはお互いそうか。うっかりしてたら、貴方も、あの子も、別の誰かに掠め取られるなんとこともあるものね」
「えぇ」
「…その余裕は本当になあに?ちゃんと布石を貼っているとか?」
「さて、どうでしょう。ただ」
「ただ?」
「私も彼も、時間と知ることが、まだ必要な期間であるということです」
「やだデスじゃないの~!!!」
「げえっ!?!?怪力女」
「ちょっとちょっと~~~レディに対してその呼称はないでしょうよ~~!!?!?」
「うわくんな近寄んな!!」
「はーーーーもーーー。ん?でもあんた、ちょっと雰囲気変わった?」
「あぁ?」
「ふふ、前よりもちょっと丸くなったというか。なんかいいことでもあったの?」
「んなもんねえよ」
「ほんとに?ま、お姉さんはあんたみたいな子がなんかよいかんじになってるのは、嬉しいわ」
「意味わからねえ」
「わかんなくていいのよ。あたしが勝手に思ってることだし。最初に会ったときとは別人だもの。今のあんた。どんな人たちがあんたをそう包んでくれたのかしらね」
「…………知らねえよ」
「ふふ」
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uama-aqua-mi · 5 years
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attention 今回の文では、登場人物の欠損表現および軽いグロテスク表現が含まれます。簡��な内容、あらすじを知りたい��けの方は、一番下までスクロールを動かしてください。 報告書 20××年○月△日 ノースサイド 海溝 戦闘部隊所属 GROUND BEAT 交戦中 負傷 左腕 二の腕から下を欠損 医療部隊にて治療中。 同じ任務はひとつとして存在しない。 今回の任務は、綿密な情報を元に練られた、掃討任務であった。 事前に渡された情報にすべて正しく、抜けはなく、目の前の敵も情報通りのもの。 粛々と敵を屠り、銃弾と刃のぶつかる喧騒を背に、彼らはただひたすらに任務へと没頭していた。 敵の数は残り三分の一。このまま進めばいつものように完璧に、冷徹に、調べを奏でるように美しく。 ただ終わるだろうと思われていた。 少なくとも、戦闘部隊構成員の一人である、グラウンド・ビートは考えていた。 だが よほど切れ味のよい刃物だったのか。 グラウンドビートの左腕が、ひじ上から切り離された。 グラウンドビートは目を見開き、次の瞬間海中に血が噴出、血のもやを作った。 遠くで誰かが自分の名前を呼んだ気がした。 腕を切り落とした敵はこの隙を逃すまいと、果敢に追撃をかける。 きっとショックで身動きができなくなるだろう。そう踏んでいたのかもしれない。 しかし次の瞬間、敵は目の前が真っ赤に染まり、自身が真正面から十文字に切られていることを知った。 切られたことを知った時、壮絶な痛みが敵を襲った。 そしてさらに、敵は叫ぶ暇もなく決定的な一撃を体に刻まれる。 勝利した、と確信した立場が逆転し、大量出血で自身がショック状態に陥り、命が急激に消えていく実感を覚えながら。 敵の意識が霞に落ちていく中で見たのは、血のもやをまといながらも眼光を鋭く、刃を下ろした灰色の男の姿であった。 追撃をされる前に敵を処理したグラウンドビートであったが、とっさの緊張状態から解放された瞬間、頭が腕を切り落とされた、という事実を認識し、急激に血の気がうせ、目の前が瞬き始めた。 これはまずい、と自身を奮い立たせ、次の行動に移れたのは、持ち前の強固な精神ゆえだろう。 周りに新たな敵が来る前に何とかしなければならない。 グラウンド・ビートは速やかに刀の柄を口にくわえ、ジャケットのうちポケットに右手を入れた。勢いよく出した右手に握られていたのは簡易注射器。 それをきられた左腕に素早く注射した。
医療部隊と武器開発部隊が共同開発した、出血を抑える薬だ。持ち運びがしやすく、注射しやすいよう形状を整えられ、誰でも簡易的に使える注射器を、任務前の支給品として受け取っていたのである。 手早く注射をすませ、その注射器を放り、また懐から布のきれっぱしを取り出した。 布のきれっぱしを切られていない片腕と自身の胸を使い、切られた腕に器用に巻きつけ、簡易的な応急処置を完了とした。 急激な出血とショックで目がくらむ中の処置。その間の敵の攻撃を他の戦闘部隊のメンバーが、援護していてくれたおかげだった。 でなければただ畳み掛けられ、今頃グラウンド・ビートは哀れな死体になっていただろう。 遠くからの狙撃音、前にきらめく刃物の光に感謝していた。 ふーーーーっと、深く息を吐き出して、グラウンド・ビートは前を見据える。 その眼に闘志は消えていなかった。 咥えていた刀を右手で持ち直し、流されないようにと尾で抑えていた切り離された左腕を、その口で咥えた。 腕を切り落とされてもなお、戦場にゆらりと立つその姿は。 それは、まるで鬼のような。 「さあぁて、続きをはじめるかぁねえ」 口角を鋭く上に上げ、鬼のように、獣のように目を光らせ、グラウンドビートは不敵に笑い、目の前の闘争に向かって泳ぎだした。 敵は征圧され、アクアステージのマフィアのみがこの海溝に立っていた。 まばらにそれぞれの敵と戦っていた仲間たちが、集まってくる。 敵がすべて倒れたことを確認した時、アドレナリンが切れたのか。 グラウンドビートの視界は再び、ゆがみ始めた。 「…お、おぉう?」 いくら流血を抑える薬を打ち、布で巻いてはいたとしても、時間がたちすぎたのだろう。 そのままふらり、ふらりとグラウンドビートの体は揺れ…
あぁ、これは倒れるなと自分でも思ったとき、急いで駆けつけてくれたのだろう。まだ若いゴシックメタルが、倒れそうになるその体を支えてくれたのだ。 ゴシックメタルが自分を見て何かを言ってくれているのはわかる、だか声が聞こえない。 援護射撃を遠くから行っていたダークコアの姿が向かってくるのも、見えていた。 ただ、それ以上は体も言うことを聞かず。 「あー…すまねぇ」
そう困ったように笑いながら、グラウンドビートの意識は底へと落ちて行った。 情報部隊のエピックは、その知らせを受け取ったとき、普段感情をあらわにしない彼女にしては珍しく、眼を見開いた。 しかしすぐに一息、すってはいて、冷静を取り戻し、その情報を報告書としてまとめ始めた。これもひとつの仕事である。自分がまとめなければ、誰がまとめるというのか。 そしてこの情報は、ある程度確定してから渡すべきものだ。いたずらに心配させ、不安にさせるべきではない。 新たな情報を得るために、エピックは医療部隊への連絡先を開いていた。 「まったくこれは。綺麗に切れすぎているくらいだ」 グラウンド・ブルーの院長であるマキナは重ねられたカルテを見て、嘆息をつきながら言った。 「ええまったく。だからこそ、接合手術もこれだけスムーズに行うことができました。これなら、回復も早いでしょう」 カルテに書き込みをしながら、スラッシュメタルも続けた。 「さてスラッシュ、手術の報告書もそうだが、術後の経過もまとめなければならぬ。お前に任せてかまわんな?」 「もちろんです、院長」 「何かしら怪我をしたとき、お前があやつの担当であったからな。気心知れたものが見ていたほうが、やつにとってもよいだろうよ。頼んだぞ」 「はい」 そこからの話は、まあ至極簡単な話で。 手術後三日間の眠りから覚めるも、また眠るを繰り返し、面会謝絶が解かれたのが二週間後。 一番に情報部隊と戦闘部隊の幹部ことアンダーボスであるロックと面会し、状況を説明、今回の任務での結果、処分を聞き、二度とこんな姿は晒さないと、グラウンド・ビートは改めて誓いを立てていた。 自分の状況を整理し、半年もあればリハビリをしつつ腕は治るだろうという診断結果に、心のなかで安堵する。 さすがグラウンド・ブルー、といったところか。優れた医者と看護士がいるこの病院で治療を受けられなければ、まず腕はだめになっていただろう。 動かない片腕を見る。 しばらくは片腕での生活、仕事となるが、二刀も使うが、基本的に一刀で戦闘をしていたため、その点については問題はなさそうだと感じていた。 しかしベッドに寝たきりで動けないことで、体が重くなってしまうのではないかと思い始めてきた。なまるのだけは避けたい。 入院中にも、誰かにダンベルを持ってきてもらおうか。 スラッシュが聞いたら怒り出しそうなことを考えていたグラウンド・ビートは、ふと自分が気絶する前の事を思った。 まるで死ぬときのように、走馬灯というのだろうか、いろんな人の顔が頭を瞬時によぎっていたあの時のこと。 同じ戦闘部隊の仲間、可愛がっ��いる若い子達、年の近い酒飲み仲間、手合わせ仲間。 そして、歳が一回りも二回りも違うが、仲良くしてくれている、情報部隊の若い女の子。
そうした人たちの笑顔が頭をよぎっていった。自分の中にある、色褪せない記憶だ。 自分は様々な人と出会い、様々なものをもらってきたと思う。 そんな眩いほどに尊い人達だからこそ、自分は彼らを失いたくないと思い、守りたいと思っている。だからこそこの体を、腕を振るい組織に貢献したいと思う。 あぁ彼らが大切だ。 そう噛み締める。 そしてなにより 優しいあの子の笑顔は曇らせたくないと。 静かに、一人、極限の状況を経て、自分の深いところにある物を感じ取っていた。 まとめ:グラビさんが大怪我したけど半年したら完治するお話! 怪我したことで深層意識にちょっと気づくよ!
あと性癖にしたがってちょっとおじちゃんをぼろぼろにしたかった。
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uama-aqua-mi · 5 years
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くっそいみわかんねえ
狂いも狂って、これが普通なのではないか、そう思い始めてもくる。 いや意味わかんねえよ。 事の始まりは、べつになんでもねぇ、普段の日常。ただ他人と会うだけで始まる。 今までだって何度会ってきたか、それこそ数えてねぇ。 なぜなら同じ環境に身を置くやつだからだ。 ただすれ違うだけ。 フィルターハウスと会う。 それだけだ。 たまに話してるとあいつが笑う。 それだけだ。 意味がわからねぇ。 初めの頃なんて他人は無であり、なにも思わなかった筈なのに、今では何かしらの感情を抱く。 この感情はなんだ? なんだか胸がざわつく。意味がわからねぇが体温が上がる。 生理現象? 何かしらの発作か? どの医学書にも書いていない。 スラッシュが所持するどの書物にも書いていない。 書いていないものということは答えがないものなのか? わからねぇ。 そしてそうした感情を抱く度に。 オレは安堵する気持ちと焦燥する気持ちに挟まれていた。 以前のような憤怒は緩くなり、殺意は穏やかになり、自分を構成していた物の形が変わっていくのを感じる。 初めて恐さを知った。 変わってしまうのが恐ろしい。 ○○から分かれたのがオレでありスラッシュだからなのか、それともこのまま変わることでオレ自身が無くなってしまうとオレは捉えているのか。 オレという感情の塊が形を変えてしまったのなら、それはもうオレではなくなるのではないか?などと。 止めどなく思考は流れる。 いやだ、こわい、なんで。 思考は海溝に落ちるように沈み続ける。 もがいてももがいても沈む心地で、深い絶望を味わう。なんなんだこれは、なんでこんな。 ぐちゃぐちゃになって、どうしようもなくなって、オレは今までこんなときどうしていたと。 なにか自分の前に立ち塞がったら、オレは今までどうしてきたと? そんなの 消してきたじゃないか 「デスさん?」 あいつの声がする。 目を開けるとそこにいたのはピアス女。 あぁ、思考するうちに瞼を閉じていたらしい。 海草が覆い繁る、誰もいない静かな空間。 海の草原と誰かが呼んでいた、鮫や海獣なども彷徨くこの場所。 人が多すぎるのは嫌いだ。だからこうした誰もいない静かな場所を好み、静かに体を横たえて思考することを度々行っていた。 ここについては誰に教えていたんだっけか。 もう忘れた。オレのことだからそうそう人に言ってはいないだろう。 ジャングルと、フィルターハウス位じゃねえのか? 「…んだよピアス女」 深く深く眉間にシワを寄せ、尋ねる。それに対してこっちの台詞ですと言わんばかりの顔で、唇を尖らせながらフィルターハウスは言った。 「あのですねぇ、これから任務だって指令受けてますよね??時間30分前にもなにも連絡しないから、皆心配したんですよ!」 「あーーーー……」 もうそんな時間だったのか。 そういえばけたたましく携帯端末から音がなっていたような気がしなくもない。 「ここかもって思ってきてみたら…。デスさん寝てますし。……具合悪いんですか?」 「別に」 そう言って体を起こした。 ここからなら、任務地まで時間はそこまでかからない。今からでも充分間に合う時間だ。 ふあぁも空の欠伸をして、左手で手にしていたナイフをもてあそびはじめた。 虚ろな目で、くるくると、思考するように、それを回し続け…。 そのナイフをそっと懐にしまった。 あぁ、オレはほんとうに変わってしまったらしい。 あんなにも思考して、結論を出して、変わることを恐れていたのに。 本人を目の前にしてこれだ。 切っ先を向けることも、それを威嚇に使うことも、もうできない、もうしない。 衝動的に攻撃することも、感情をぶつけることも、今はしようとは思わねぇ。 ただ横目であいつの顔を見る。 するとまた同じように心は凪いて、体温は僅かに上昇を感じる。 一番不可解なことは、それを自分が不快には思わないことだ。恐怖は感じるが。 この症例はどの医学書になら書いてあるんだろうな?あぁねえんだっけか?院長位の研究室にならあるんだろうか。 わかんねえよ。
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uama-aqua-mi · 5 years
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s1
『シューさんと、ならどこまででも』
その言葉を聞いて、あぁ彼はこういう人物だったと改めて思い知る。 そういう所に惹かれたのも一つある。どこまでも純粋で、ひたむきな彼である彼だからこそ、と。 どこまででも、そう彼は答えてくれた。その意味を理解してはいなさそうではあるが、それも踏まえての答えなのだろう。
その答えを聞いて、シューゲイザーの口元が優しげに弧を描く。
「では言葉を改めましょう。 好きですよ、ハウス。 今までも、これからも、貴方の一番近くのヒトとして、隣に立たせてください。」 「すべてが同じ気持ちである必要は、勿論ありません。分からないこともこれから知っていけばいいでしょう。 これからも共にあれるのなら、それも叶うことですから」
そうして手を差し出すのかと思いました。
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uama-aqua-mi · 5 years
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原案
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uama-aqua-mi · 5 years
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フォークさん、ハウス君をお借りしました。
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uama-aqua-mi · 5 years
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ケルトさんをお借りしました。
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uama-aqua-mi · 5 years
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[人足になるために] 
デスラッシュはダイバー使用 
エピックは乾かすだけ 
グラビさんはダイバー使用 
ボサノヴァはダイバー使用(体に合わないので飲みたがらない) 
ポリフォニーは乾かすだけ 
シューゲイザーは乾かすだけ 
ドリーさんはダイバー使用
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