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アミュゼ柏ひきこもり等青少年期問題相談会 終了のご挨拶
2020年9月28日(月) (令和2年)
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アミュゼ柏ひきこもり等青少年期問題相談会に
関心を持ってくださった方々へ   
  拝啓 全世界がコロナ禍で大変なときですが、皆様、お変わりございませんか。
 さて、アミュゼ柏ひきこもり等青少年期問題相談会は、2020年10月3日(土)の例会をもって終了することとなりました。2005年11月に始まり、今日まで14年10ヶ月継続してまいりました。私自身が78歳になること、コロナウイルス感染予防で参加者が少なくなったことが理由です。
 皆様の直面している問題が一日も早く解決に向かうことを念願しております。どうぞお元気でお過ごし下さい。 以上、よろしくお願いいたします。                            敬具
     福田隆三 
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ひきこもり不登校から脱却する道筋その2
2020年10月号
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 皆さんお元気ですか。10月のひきこもり相談会を開催いたします。ご参加の際は必ずマスクを着用してください。宜しくお願いします。
☆☆ひきこもり不登校から脱却する道筋その2☆☆
はじめに  愛情を沢山注いで育ててきた筈の子どもが、いつの間にか不登校やひきこもり、家庭内暴力、昼夜逆転の生活、ネットゲーム依存、自殺未遂、家出、非行、不純異性交際、暴走族の仲間入り、学校退学、会社での失職など、深刻な事態に陥ってしまっていることが、あなたやあなたの周りに起こっていないでしょうか。    新しい時代を担うはずだった若者たちが、社会人として独り立ち出来ないことは、本人や家族にとり非常な不幸ですが、社会全体にとっても大きな損失です。このようなことが起きるのは、現代の日本社会が子育てに失敗していることの証といえます。一体何が問題なのでしょうか。ご一緒に考えて見たいと思います。 Ⅰ.ひきこもりの事例 ひきこもり・不登校は、子どもが何か挫折したときに発症することから、心因性の現象であると考えられます。一つだけ事例をあげます。 事例19歳 女子、大学生  この人は大学に入学したばかりの頃に不適応を起こし、登校拒否に陥ってしまったのだが、その発現には姉妹の存在が深く関わっていたように思う。その理由はこうである。 本人には、2歳違いの姉が居て、姉は小さい時からよく勉強ができたし、性格も明るくていつも大勢の友だちに囲まれていた。学校ではいわばアイドルのような存在だったと言える。その妹、つまり本人が入学してきたと言うので、みんなから注目され、期待されたのである。(以下次ページ) (前ペジより) こんなわけで、何かにつけ先生方にも姉と良く比較をされた。また、学校ばかりでなく家の中でも、いつも親から姉を見習うように言われてきた。そのために、負けず嫌いの本人は嫌でも姉を強く意識し、対抗意識を燃やすように習慣づけられてしまった。成績もそうだし、友人でもクラブ活動でも、またもちろん大学のランクについてもである。ところが、大学受験では、姉の通っているところには入れず、別の大学しか受からなかった。そこもランクのいい大学で、別に姉の大学に比べて程度が低いわけではないのだが、本人は強い挫折感を味わってしまった。戦いに敗れて絶望を感じ、それとともにこれまでの疲れが一度に吹き出してきたと言える。登校拒否はこうして五月病の形で出現し、だらだらとと悪循環しながら進行していった。(以上)【稲村 博:思春期挫折症候群―現代の国民病―、新曜社P155から引用】
Ⅱ.ひきこもりになる要因 1.ひきこもりの心  ひきこもりは最初は、「受験、就職に失敗した」、「部活で喧嘩をしてしまった」、「いじめを受けた」、「会社の上司から叱責された」、などの心的外傷体験が引き金となって、外(学校や会社)に行けなくなることから始まります。本人がこれらの外傷体験をさして気にせずにすぐ学校や職場、社会に戻れれば大きな問題にはならないのですが、戻れない状態が長引くと、問題が大きくなります。    ひきこもり本人は、自分が学校、会社を休んでいることを苦にして、自分は駄目な人間だ、情けない、不甲斐ないなど自己否定の感情も持ち、心理的葛藤状態に陥ります。そうなると、これまで普通に付き合えていた仲間と会うことが苦痛となり、ますますひきこもりを続けることになります。  人は他人と付き合うことを通して人間的に成長するわけですが、ひきこもってしまうと成長できず年齢よりずっと未熟な心のままで居ることになります。未熟な心だから、ひきこもっている人は、親に対し些細な事で文句を言い難癖をつけ、甚だしいときは家族に暴力を振るいます。親がいくら諄々と説いても聞く耳を持ちません。全て、親の育て方が悪いからこうなったのだと親に責任転嫁します。    ひきこもりの悪循環  一旦ひきこもり状態に陥ると、ひきこもっている自分は駄目な人間だという自己否定の気持ちが強まり、こんな自分では恥ずかしくて友人・知人と会うことが出来ない、会いたくないという気持ちになります。そうなると、人と交際しないので、自ら心の成長を妨げることになります。心が成長しないと自己肯定感が低下して、ますますひきこもる悪循環になります。そして家族という狭い環境の中で、偏狭な考えを持って生活するようになります。(第1図ひきこもりの悪循環 参照)
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 2.挫折体験  ひきこもり・不登校は、子どもが何か挫折したときに発症することから、心因性の現象であると考えられます。ひきこもり・不登校は、子どもが自分の力で解決出来ない大きな問題に直面して、どうすればよいか分からず、もがき苦しんでいる状態、思考・行動とも停止してしまい、現実逃避する行動であると考えられます。  体育の時間の跳び箱に例えてみればわかりやすいと思います。跳び箱の高さが十分低ければ、子どもは楽に飛び越せます。しかし、跳び箱がどんどん高くなって、自分にはとても飛び越せない、しかし、自分の順番が来れば飛ばなければならない。そういう状況で怖気づいてすくんでしまう。  子どもの人生上の大きな課題、期末試験、卒業試験、入学試験、就職試験・面接、就職、結婚、昇進、転勤など、人生の転機の場面で、到底合格できないと思い込み、前に進むことも後ろにも退く事もできず、そこに立ち止まって適切に行動できない状況に陥ってしまった、と考えることが出来ます。    3.メンタルストレスに対する耐性の弱さ  心理学の用語でレジリエンス(resilience)とは、児童が貧困や親の精神疾患など極めて不利な生活環境にあっても、児童が健全に育つ力、精神疾患に対する防衛因子・抵抗力を意味します。レジリエンスは逆境に負けず、たくましい気力、精神力で跳ね飛ばして前進していく力です。この点、明治時代の日本の若者は素晴らしいレジリエンスを持っていました。平成、令和の日本の若者は、少子化と過保護で育てられ、このレジリエンスの力が非常に弱いために、ひきこもり・不登校になるのだと考えられます。    4.発達課題の未達成  もう一つの要因は、ライフサイクル上の発達課題の未達成の問題です。E.J.エリクソンが、ライフサイクル上の発達課題として上げているのは、乳児期において基本的信頼の感覚、幼児期において自律性・自発性の感覚、学童期において知識・技能の習得と勤勉性の感覚、思春期において自我同一性(自分に適する職業を選択する)の感覚です。日本においてひきこもり・不登校が多いのは、子どもたちが精神発達上の課題を未達成のまま大人になっていくケースが非常に多いからであると考えられます。換言すると、精神の発達が未熟なまま、大人になっていく人が多いことを意味します。    以上述べた人生ライフサイクル上の発達課題を、その年齢のときに達成していくことが重要です。未達成のまま、次の人生の段階に進んでしまうと、そこで発達が停滞してしまうことになるからです。   例:乳児期に基本的信頼の感覚を養うことに失敗すると、次の段階である幼児期において、自律性・自発性の感覚を身につけることが出来ないこととなります。この場合、前の段階に立ち戻って育ち直しをする必要が生じます。同様に、学童期において勤勉の感覚を身につける事に失敗した子どもは、次の段階、思春期において同一性の感覚を身につけることが出来ず、そこで停滞してしまいます。前の段階の発達課題を未達成の状態で、次の段階に進んでそのままにすると、どうなるでしょうか。子どもはそこで不適応状態に陥ることになるのです。これが学童期における不登校や、大学や専門学校を出て就職してからの出社拒否に繋がります。  これを解決するには、前の段階に立ち戻り、育ち直しをしなければなりません。現在、大人になっている人は、この立ち戻り、育ち直しを何度も繰り返して、これまで生きてきたのです。親の果たすべき役割は、子どもがどの段階で何につまずき、発達課題を乗り越えていけなくなっているのかに、いち早く気がついて、子どもの育ち直しを後ろから支援してあげることです。育ち直しは、その機会が早ければ早いほど効果的で問題を長引かせず、こじらせないことが大事です。    5.本人の性格傾向の問題  過敏な性格で几帳面、何事にも完璧を求める、しかも欲求水準が高い人は、神経質でくよくよします。このような性格もひきこもり・不登校の要因となります。 Ⅲ.ひきこもり・不登校から脱出する道筋  1.精神科医、臨床心理士、心理カウンセラーによる診断と見立て   不登校・ひきこもりになる要因には、不安障害(神経症、ノイローゼ)、統合失調症、うつ病、双極性障害、人格障害、発達障害があります。これら精神疾患のうち、不登校・ひきこもりにつながる点で一番多いのは、不安障害ですが、他の五つの障害も不登校・ひきこもりの要因となり得ますから、見立てが絶対に必要です。子どもが不登校・ひきこもり症状を示したら、一番最初に精神科医等の専門家の診断を仰ぐことが大切です。 統合失調症の発症のピークは、思春期から青年期にあるので、特に注意する必要があります。   治療方針を立てる  ①信頼できる治療者(精神科医、心理カウンセラー、臨床心理士など)に定期的に通う。必要に応じて向精神薬、抗鬱薬等の薬を処方してもらう。  ②幼少期からの生育過程に問題があって、自我の発達不全(子どものこれまでの生き方、考え方、感じ方に偏見や歪がある)が見られる場合は、心理カウンセリングを受ける。  2.家庭内での親子のコミュニケーション  親が一番留意しなければならないことは、子どもとどのようにして意思疎通、コミュニケーションを図るかということです。子どもも親も双方が構えることなく気軽に日常の挨拶、言葉掛けが出来るよう、家庭内の雰囲気を明るく気さくなものにしましょう。 子どもが一番気にしていることは、親の方から持ち出すことはしないこと。子どもの方から話してくるのを待ちましょう。   親子のコミュニケーションがスムーズに出来るようになれば、あらゆる問題は一気に解決の方向に向います。そのぐらい親子のコミュニケーションは重要です。    3.ひきこもりの人のための居場所に通う。  子どもに気づいてほしいこと;  ①自己イメージについての、誤り、虚像。  ②子どもが自分ひとりでは生きていけないこと。  ③自分の真実の姿。  ④子どもが、親や社会の世話になっている事に感謝の気持ちを持たなければならないこと。  それらに気づくためには、同じような境遇にある同年輩の若者同士が接触して話し合う機会が必要です。そのチャンスを与えるのが居場所です。子どもが無理なく行ける場所にある居場所を探しましょう。    4.昼夜逆転・ゲーム依存をやめ、生活のリズムを整える  ネットゲームにハマって、昼夜逆転しているケースが非常に多く、それが直接的に不登校の原因になっています。そうならないように子どもを誘導します。    5.親(保護者)の対応 他人の存在の必要性  ひきこもり本人とその両親の家族だけでは、問題を解決することは難しいです。ここに第三者、他人の存在が必要です。この第三者はカウンセリングマインドを心得ている必要があります。ひきこもり本人の親族(兄弟姉妹の配偶者、叔父叔母など)、信頼する学校の先生、心理カウンセラーなどです。他人が介入すると、ひきこもり本人は無理難題を言わなくなります。ひきこもり本人は心のなかでは、自分があるべき正しい生活を送っていないことを、ちゃんと分かっているのです。家庭内暴力の甚だしい場合、親のみで解決しようとしないで、警察など外部の権威者に来てもらうことも有効です。 親にできることは、 ①温かい愛情をもって接する。もう、諦めた、もう見捨てるよ、という態度を決して取らないことです。愛情とは甘やかすことではありません。愛情には厳しさがあります。 ②我が子に対して、以下のような否定的なイメージを強調するような言動を取らない。 ◯おまえはやっぱ���駄目だ。 ◯いつまでゴロゴロしていて、親のやっかいになるつもりだ。 ◯おまえにはいいところは一つも無い。 ◯好きなように勝手にしろ。親はおまえを見捨てた、諦めた。 ③家の中が明るく楽しい雰囲気となるように心がける。 ④親自身が明るく自信をもって、人生を楽しく過ごしている後ろ姿を見せる。 ⑤次に、「子どもへの接し方7箇条」を記します。諦めることなく頑張りましょう。 ☆☆子どもへの接し方7箇条☆☆  ◯親側の態度 (1)家庭の中がいつもあったかーい雰囲気。 (2)母親、父親がいつも明るい笑顔、、両親が楽しんで生活している背中を見せる。 (3)愛情に満ちた態度。嫌悪系のまなざし、表情を子供に向けない。 (4)ありきたり、平凡な挨拶、声かけ。 (5)プレッシャーをかけない。 (6)辛抱して子どもの立ち直りを待つ。過保護、過期待、過干渉をしない。子離れする。 (7)親として毅然とした態度、駄目なものは駄目と言う厳しさ。犯罪や非行、金銭的欲求に対して。 ◎子どもさんへの伝えたいこと (1)あなたは、子どもから大人へ、精神的な成長のまっただ中にあります。 (2)同世代の仲間とのつきあいが大切です。自己成長しましょう。 (3)自分が如何に恵まれた存在であるか、両親や周りの人に対する感謝の気持ち、これらにひらめきで気づくことができたら、ひとりでに良い方向に動き出します。 (4)自己肯定感を持ちましょう。あなたは今のありのままの自分であって良いのです、他人と比較して他人より勝っている、優れているなど考える必要はないのです。 (5)少し先のことですが、あなたが自分の好きなことを発見してそれを仕事とする、好きな異性とめぐり会って結婚し家庭を築く、それが人生の幸せです。 終わりにー願いと祈りー  希望を持とう  親や周りの人が適切に対応すれば、多少時間はかかっても、子どもは自分の真実の姿に気づき、社会に飛び出して活動していくものです。大事なポイントは、子どもを無用に刺激しないことです。場合によっては、医療のレールに乗せて正しい治療をする必要がありますが、予後は良好で家庭、学校、社会などの日常生活が出来るようになります。しかし、治療をしない、あるいは誤った治療を続けていると、遷延化、慢性化して、いつまでもだらだらと無為、無気力、退行した生活が続く事となります。    皆さんのお子様が、現状の不登校、ひきこもり状態を一日も早く脱却して、明るく希望のある生活を取り戻していただきたいと願います。以上
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ひきこもりから脱却する道筋
2020年9月号
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 皆さんお元気ですか。9月のひきこもり相談会を開催いたします。ご参加の際は必ずマスクを着用してください。宜しくお願いします。
☆☆ひきこもりから脱却する道筋☆☆  体も健康である、心もまあまあ健康である。それなのに、家に引きこもって外に出ていき働こうとしない。一体何故なの? 答え: 自縄自縛、自分の心が自分自身を縛り付けているから。自分の我見(がけん、自分が作り出す勝手な見方、考え)が、自分を駄目な人間であると思い込ませているから。 現実を見ない、考えない、現実から目をそむける、過去に拘泥する、独りよがりの独善的な考え方をする、自分の誤りを認め反省して、軌道修正が出来ない。  ですから、物の見方を変えればよいのです。しかし、本人はなかなかそれに気づいてくれません。   家族の者は責めない  家族の者(周りの人)は責めないこと。温かい眼差しで見守る。今は病気なのだから、動けない、働けないのは、やむを得ないのだ。いつか動けるようになることを願って辛抱強く待つ。
 ひきこもりの悪循環を断つ  本人は、ひきこもりの悪循環を断ち切る。ひきこもりは、他人とのふれあい、話をし、交流する機会を本人から奪ってしまう。人の心は、他人と交流する体験を通して成長します。ですから、些細な事件をきっかけとして一旦ひきこもってしまうと、ひきこもりの状態が非常に長引くという、悪循環を起こします。  本人は、ひきこもりの人同士が交流し話し合える居場所に通いましょう。また、家族と話し合える雰囲気を作ることが極めて大事になります。
 休学や休職をしている人も居られると思いますが、学校は必ず卒業すること。日本は学歴社会で、人生の最後までついてまわるからです。また、休職→退職、とつながらないように周りの人が配慮してください。適切な対応を取れば、本人は必ず働けるようになる、カムバック出来るのです。    ひきこもりの中にあっても、本人が興味を示すことを積極的に行うよう勧めてください。体を使い、運動する事も大事です。体の感覚を感じ、頭をからっぽにし、今自分の体が感じる感覚を大事にし、そこに意識を集中させて毎日を生きましょう(生きていることの実感)。今、あなたは生きている、食事ができる、呼吸が出来る、歩く事ができる、眠れる。外的条件は如何であれ、われわれは今幸せなのです。
本人の精神的な面  今からではもう遅い、手遅れだ、とは考えない。正しい方向に、まず一歩踏み出そう。 過去の失敗体験は忘れる、拘泥しない、いつまでも引きずらない。  座禅の心構えに学ぶ:この世界には、公(おおやけ)のみが真の存在であり、私(わたくし)なるものは幻影であり存在しない。我見(がけん、自分が作り出す勝手な見方、考え)から離れることが、悩み苦しみを無くす道である。我見を感覚にくっつけない。人生の悩みなるものは本来は存在しないもので、自分が勝手に生み出している。自業自得である。だから、悩みの一切を捨てよ。  自分の体が感じる感覚を大事にして生きる。ふわふわとうわの空では生きない。頭を空っぽにし余計なことをくよくよ考えない。  目標を掲げる。今日一日を大事に過ごす。毎日規則正しい生活を送る。  ゲーム(スマホ、パソコン)は中毒になるので、禁止。
体の感覚を大事にして生きる  自分の体の感覚、自分の気持、感情を大事にして生きる。他人に対して、自分のありのままの気持ちで接する。飾らない、見栄をはらない、虚言をつかない、正直である。
 自分の内面を隠さず、天真爛漫、はかりごとをしない、感じたことをそのまま表現する。主体性のある自分。他人、他物にふりまわされないで生きる。他人に支配されない。自由とは自分に由って生きるから自由なのです。
人は環境の産物  環境の要素として、次の三つがあります。  ①自然環境、  ②民族の文化的環境、  ③人的環境、身近に接する人々、親兄弟、祖父母、友達、学校の先生など。  人を育てるのはこれらの環境であり、できるだけ良い環境で育つことが理想です。①と②は所与のもので、我々には如何ともし難い面がありますが、③人的環境については、我が子にできる限り良い環境を整えてやることが親としての大切な努めです。   自分の感じたことを素直に表現できる人間になる  自分の感じたこと、気持ち、感情を素直に表現できる人間になろう。  幼児期にしゃべったことを親・兄弟から、「そんなことを言ってはいけない」と咎められた経験はありませんか?その経験がトラウマとなり、その後、自分の感じたことや、気持ちを素直に外に表現できなくなります(抑圧)。大人になってからも、自分の本当に感じている気持ちを素直に発言できなくなります。そうなると、周りの人に誤解されやすいし、自分でもストレスとなって自分の本当の気持ちがわからなくなってしまいます。
 本当の自分に気づく  自分って、本当は何を望んでいるのだろうか?人生において、何をやり遂げたいと思っているのだろうか? 自分で自分の気持、感情がわからなくなって生きている人がいます。自分の内面の気持ちと向き合う勇気を持ちましょう。  見栄を張る、自分を他人によく見せようとする、他人に良く思われたいと思って嘘を付く。これらは、人間の性質にかなり強くある傾向であると言えます。
人の踏み行うべき道  人の踏み行うべき道がある。「他人に役立つことをしてあげて、周りの人から、あなたのおかげで私は救われた」、と言ってもらえる人になれたら幸せである。自分の感じたこと、気持ちを大切にして人生を送ることです。 (以上) 
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ひきこもりの人の心
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2020年7月号
 皆さん、お元気ですか。ひきこもり相談会は、今年3月より、コロナウイルス禍のためお休みしておりましたが、2020年7月より再開いたします。ご参加の際は、必ずマスクを着用してください。宜しくお願い申し上げます。 ☆☆ひきこもりの人の心☆☆  今回は、ひきこもりの人に共通して見られる三つの心理的な傾向について考えてみたいと思います。 1.過去にこだわる (第1図 過去の記憶に押しつぶされる)  人は誰でも、過去の過ちに縛られて生きる。過去の否定的な記憶、過去の 否定的な思い出を捨てることができないで生きる。過去を振り切ることが できない。
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           第1図 過去に押しつぶされる  過去を忘れよ。過去を捨てよ。現在、今、をどう生きるかに思いを集中させよ。 過去の縄目を振りほどくために、誰も居ない林、森で、山の上で、海の浜辺で、 思い切り大きな声を出して叫べば良い。
2.他人の目を気にする。(第2図 ひそひそ話が気になる)  他人が自分をどう思っているかを非常に気にする。例えば他人が 何人か集まって、ひそひそ話をしていると、きっと彼らは自分のことを 噂にしているに違いない、と思いこんでしまう。 他人の目をひどく気にするその程度は甚だしく、病的である。
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          第2図 ひそひそ話が気になる
3.自分が無い。(第3図 道に迷う人)  自分のことが自分でわからない。自分が本当にやりたいことが 何かがわからない。主体性が無い。自分を見失っている。 目標を持てない。ただ惰性で生きる。 自分の進むべき進路、職業の選択がわからない。 貪・瞋・癡(トン・ジン・チ)の癡(チ)に当たる。
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              第3図 道に迷う人   貪・瞋・癡(トン・ジン・チ)の三毒    貪(トン)は、貪り(パーリ語でlobha)、または           愛欲(サンスクリット語でraga)、   瞋(シン、またはジン)は、憎悪(パーリ語でdosa)、   癡(チ)は、迷妄(パーリ語でmoha)。
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 これら三つの煩悩は、人間にとって根本的なものであるから、 古来仏教の学問では、「貪・瞋・癡(トン・ジン・チ)の三毒」と言う。  ragaは、愛し、むさぼ��、執着すること、  dosaは(1)嫌悪し、次に(2)憎悪し、更に(3)打ちのめし害すること、 mohaとは、真実の姿を知らずに、迷ってぼうとしていること。
まとめ;本人は、目には見えないロープで、金縛り状態に陥っています。ですから、「何時になったら、働くんだ、何を考えているんだ」、などと叱責するのはなんの効果もありませんから、しないようにしてください。  そうではなく、温かい思いやりの心、態度で接してあげてください。ちょっとしたきっかけから、本人は自分の本当の姿に、「はっと気づきます。」そこから、問題は解決の方向に向かいます。
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2020年4月~6月の相談会は、新型コロナウィルス感染予防のため、中止となりました。
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神経症(ノイローゼ)について
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2020年4月号
 2020年4月になっても新型コロナウイルスは収束するどころか、ますますパンデミックの勢いが強まっているようです。早く収束してくれることを願うばかりです。皆様、コロナウイルス感染に十分に気をつけましょう。
☆☆神経症(ノイローゼ)について☆☆
 今回ご紹介するのは、W.B.ウルフ著、周郷 博訳:どうしたら幸福になれるか(下) Ⅷ. 失敗の類型ーノイローゼについて ー岩波新書409 1961年  の抜粋です。神経症(ノイローゼ)について、素人向けに極めてわかりやすく書かれた本です。精神疾患として、統合失調症やうつ病、人格障害などがよく取り上げられますが、実生活上、現代人が一番多く罹患して苦しんでいるのは、なんと言っても神経症(ノイローゼ)です。これについて、根本に立ち返って、理解していただければ幸いです。この本は上下2巻ですが、お読みになりたい方がおられれば、お貸しいたしますので、私までご連絡ください。
Ⅰ.はじめに  神経症(ノイローゼ)は機械技術文明の時代に特有の疾患であり、現代人の生活一挙一動がこれに侵されている。 神経症(ノイローゼ)は厳密な意味では、疾病などというものではない。神経症(ノイローゼ)はいつも人生から逃げ、生活の問題から逃避しようという特徴を持った、人生に対する態度、一つの生き方、非常にまずい生き方であると言える。ノイローゼは他の間違った生き方と同様に、人間の行動の常識にかなった法則についての無知に基づいたものであり、また、その無知に基づいた恐怖の感情の上に作り上げられた生き方である。恐ろしいのは、ノイローゼは伝染性の疾患で、子どもたちが幼いときから、親、教師、ノイローゼ的書物などから、その危険性に気づく前に罹患してしまうという点である。ノイローゼは体裁よく、しばしば非常に苦しい口実を設けて、「私はしない」という代わりに、「私は出来ない」と言って、成熟した人間であればやればやれる社会的責任をはぐらかすことを目的とした、一つの人生スタイルなのである。
Ⅱ.ノイローゼ患者の十の特徴 1.人生の意味と社会的な協力についての無知。  自分の自我が世界の中心にあり、この世において自分の自我がいちばん大切なものであるという利己主義と、仕事を通して周りの人と協力し、社会の利益のためになるという人生の意味についての無知。
2.個人的な自我の優先、個人の独自性の礼賛。  ノイローゼの人は、個人的な自我の優位という根本的誤りと、宇宙の自己中心的な解釈の信仰を持っている。もし自分の自我が、何ものにも干渉を受けないということを、無理に持ち続けるとなれば、当然、客観的世界の問題や仕事、出来事などを無視し、回避しなければならない。  人の幸福は、人生の三大問題である、①社会的な適応、②しごと、③性の充足、を解決することによって得られる。この三大問題を解決しようとするならば、自我の優先ということは、不可能になってくる。しかし、ノイローゼの人は、現実の客観的な問題と普通の生活の検証を回避してしまう、という誤りを犯してしまう。
3.恐怖という情緒  ノイローゼの人の三番目の特徴は、神経症的な行為にまつわる恐怖という情緒的な底流である。人生の意味についての無知が、自分が立ち向かわなければならない問題の難しさを、ノイローゼ患者に、非常な難しさと思わせるので、正常な人生経験からの孤立が、彼自身の価値と能力についての本当の見通しを彼から奪ってしまう。ノイローゼ患者は、あらゆる問題が到底打ち勝てないものと感じてしまう。ノイローゼ患者は、自分の周りの人々は皆スーパーマンで、それに比べ自分は無能でどうでもいい捨てられた存在なのだ、と感じている。  おおかたのノイローゼ患者は、自分という人間は、だれも理解してくれない神様なのだと信じて、失望したあたかも虫けらのように振る舞う。客観的な問題についても、自分の本当の力を試してみることが、怖くて手が出ない、という人間にしてしまう。
4.独りよがりの力と安定感のでっち上げ。  ノイローゼ患者の四番目の特徴は、独りよがりの実力感と安定感を作り上げることと、見せかけの優越感をでっち上げることである。自分の活動舞台を小さく狭めることによって、ノイローゼ患者は、都合の良い、独りよがりの安定感と優越感を手に入れる。  恐怖症(人前に出ることの恐怖)にかかった神経症の若い女性は、家庭という小さな世界での、よく踏みならされた専制主義の中に居座ろうとする。そこでは自分がノイローゼということで、家族にたやすく無理を押し���ける。彼女は家にずっといるということで、あらゆる試練を避け、そうして自分の寝室以外に眼を向けないようにすることで、勝手に女王様気取りで居られるのである。
5.ノイローゼは意図的である。  最も重要なノイローゼ患者の特徴は、意図的であるということである。ノイローゼは全て意思の流れを持っている。ノイローゼ患者が手っ取り早く、超ー優越、超ー安定という彼の無意識な目標を達成するのに、ノイローゼは有用な機構である。ノイローゼの目的は、周囲の人々に対する効果を考えたときに、その意図がつかめる;疑心、恐怖、動揺、葛藤、遅延、優柔不断、といったものの意味と目的は、その人の実力を試すことの回避である。同性愛の目的は、一人前の性関係の回避であり、赤面恐怖の目的は、社会的責任の回避ということである。
6.「私はしない」という代わりに、「私は出来ない」を代用する。  普通の健常者であれば、自分が果たさなければならない社会的役割や仕事を、ためらうこと無く実行する。ノイローゼ患者は、周りが納得するであろう身代わりの理由を立てて、社会的役割や仕事をしない。その際、「私はしない」というべきところ、「私は出来ない」と言う。例を上げると、ノイローゼの人は、病人であるふりをして(しかし、これは悪意ある仮病ではない)、自分が仕事ができないことの言い訳にする。ノイローゼの人は、自分が病人だと思い込んでいて、本当の病人と同様に、あるいはそれ以上に、その症状に悩まされ、自分の不甲斐なさの紛れもない証拠だとしているのである。彼は他人を騙す前に、自分を騙さなくてはならない。  「舞台で怖気づいたりしないのだったら、みんなの前で喜んでピアノを引いてみたいのだが」、と神経症の芸術家は言う。こうして彼がその演奏が出来ないようにしている、何か困った不幸な望ましからぬ事情があることを、吹聴するのである。
7.自分の失敗の原因を他の”身代わり”のせいにする。  ノイローゼ患者は自分の失敗を、自分の知識、勇気、ユーモア、社会的な責任感などの痛ましい欠如のためだとは思わない。そうではなくて、”身代わり”がそこにあるからだと思いこんでいる。この”身代わり”は、身体的な軽い病気、周りの人の無能や思いやりの無さ、敵意と妬みを持った競争相手、それに自分の性格的特徴(強迫観念に襲われやすいこと、気難しさ、怠け癖、短気など)である。
8.個人としての無責任と社会生活の義務への消極的抵抗。  ノイローゼ患者の生き方の特徴は、無責任、社会に対して非協力、行きあたりばったりの態度、社会の常識や論理に対する消極的な抵抗等である。
9.ノイローゼ患者の無益さ  ノイローゼのおかげで橋がかけられたり、何かの発明がなされたり、人が本当に幸福になったり、立派な芸術作品が生まれたりしたためしはない。ノイローゼはノイローゼ患者にとってはたいへん役に立つものだが、他の人々にとっては全くの無益なのである。
10.活動の領域を人生のごく僅かなつまらないことに縮める。  ノイローゼ患者の生き方の当然の成り行きは、社会的な孤立と人間的な限界の縮小である。社会的な孤立は、ノイローゼ患者の計略としては、なかなかの有用な役割(危険を軽くする、実力を試す試験を免れる、自尊心を高めてくれるなど)を果たすのである。  ノイローゼ患者の社会からの孤立が進めば進むほど、彼の視野は狭くなり、彼に本当の客観的な優越感をもたせてくれるはずの、自我の拡張の機会を彼から奪い取ってしまう。これこそ、あらゆるノイローゼ患者の悪循環である。無知が恐怖を生み、恐怖はノイローゼ患者の世界をますます狭く削り取って、ついには牡蠣の殻のように狭いものにしてしまう。彼がその視界を縮めれば縮めるほど、彼が成長し実力を養う機会は少なくなっていくのだ。無知は彼の恐怖を大袈裟なものにし、気狂いのようになって、かれは自分の周りに城壁を築き、自分が築いた城の中に逃げ込む。  その間に彼の独りよがりはどんどん育ち、彼の無益さは、彼の行動範囲が狭まっていくと、逆にいよいよ増していく。この進行過程の最後は、精神異常か、劇的な自殺という滅亡かである。
Ⅲ.ノイローゼの五つの型 (ーノイローゼを前線における戦いに例えるー) 1.戦線の単一の戦区に襲撃を加える事による現実逃避  優越感コンプレックスは、このがむしゃらなノイローゼの一例である。自分の社会的な、また性の充足の責任を放り出してしまって、全精力をその仕事に傾けるビジネスマン、それ以外のすべてを捨て、性だけに取り付くドン・ファンなどはこの例である。また、普通とは言えない熱心家、野心満々で攻撃的な活動家はこの戦術を取る。”気を張りすぎている”,”急いでいる”というのが、がむしゃらな神経症患者の基調である。その反面、疑惑、貪欲と権力への意志、とてつもない富への欲望、何でもよいが指導者になりたい欲望、これらがその基調を一貫した性質である。  がむしゃらに攻撃をかける神経症患者は、その線の先頭に立っていなければならない。彼はトップにいて、いつでも第一の最善の、最も人に知られた人であることによって、独自の人物でなくてはならないのである。  ノイローゼで失敗し、自分の失敗をうまく調節できない場合には、神経衰弱とか、迫害妄想や疑心や人間嫌いという兆候を見せる偏執症という精神異常になる。神経衰弱は、人生の一つの問題にかけた電撃作戦の失敗の結果であると言える。このノイローゼの底流をなすものは、誰からも注目されないとか、他の人に遅れを取るとか、遅刻するとかという恐怖である。
2.戦線から遠く離れて躊躇している。  人生の初期を通して、父母や周囲の人に褒められ、援助されて育った人が、いよいよ現実というものと、まともに取り組まねばならなくなったときに、一人前の義務と責任をちゃんと果たすということから尻込みし、どうしてもやらねばならぬ、これらの問題の解決を未来に流してしまう。決断不能、疑念、ぐずぐず引き延ばすこと、躊躇、時間つぶし、心配、つまらぬことを心配の種にする、細工を凝る癖、葛藤など。このノイローゼの人は、飛び抜けた安全の保証を求める。不安ノイローゼは、この引き伸ばし戦術の例である。もし彼がいつまでもぐずぐずしていれば、実際上もう何をしても遅すぎてしまう。躊躇ノイローゼの人は迷信的になりやすい。憂鬱症は躊躇ノイローゼのなれの果てである。問題がもはや否定し難くなったときに、そうしてノイローゼ患者が、もう遅すぎた、自分の人生の大部分を無駄に過ごした、と分かったときに、彼は気が塞ぎ、憂鬱、深い失意、生の味気なさにとりつかれる。
3.人間の努力を要求する主要な活動舞台を迂回する現実逃避。   迂回ノイローゼは、躊躇ノイローゼが活発に活動して発達を遂げたものである。迂回ノイローゼの人は、自分自身を欺くのに忙しい。解決するのを恐れている問題にぶつかると、何か他の明らかに重要な仕事をすることに注意を集める。これは人間の行為に応用した燻製の鰊(ニシン)(人の注意をそらす道具)の原理である。  転換ノイローゼで燻製の鰊(ニシン)は、身体的兆候、患者の70%を医師に行かせている神経症的な兆候は、この種のものである。偏頭痛、神経錯乱、喘息、神経衰弱、心気症、不能・冷感症・倒錯などの性的兆候、月経痛、どもり、血液循環神経障害、動悸や発作的心気亢進、神経衰弱的な熱望、便秘とそれに類する故障、その他たくさんの身体的一連の兆候である。  現代医学は、精神衛生の第一法則である、「身体的欠陥は、大きな社会的価値があるのだ」、と言うことをまだ十分に理解していない。転換ノイローゼ患者は、心臓、胃腸、性器、皮膚、血管など、彼に利用できそうな身体器官を使い、責任ある仕事ができないと公言する、勇気のない人々なのである。        迂回ノイローゼの患者は、”もっともらしい嘘を言う”という原理を自分の行為に適用する。どもりはその一例である。どもる人は、自分ができないと思っているので、他の人々と接するのが難しいと思う。彼は自分の出来なさを責め、そうしてますます自分を孤立させる。かれはもっともらしい嘘を言っている。  君がどもりなら、人と接することはますます難しいものになる。が、どもりの人が「自分は話せない」ということを気にかけてひどくする代わりに、人と交わり社会に役立とうという気持ちになれば、どもりの人はどもらなくなるに違いない。彼は自分が、自分に勝手に作り上げた「枠付」の犠牲なのだ、ということに気が付かないのである。
4.戦線からのあからさまの退却による現実逃避  退行ノイローゼの人は、多かれ少なかれ自分が生きることに耐えられぬと言う劣等感を持っていることを自ら認める。そうして、大っぴらな退却というものに落ち込むのである。  多くの退行ノイローゼは、子ども時代の「ふりをする」という異常な精神状態に逃げ込む。彼らが成長して立ち向かう困難がどんな性質のものかを知ったとき、彼らは尻尾をたれ、ずっと安全で人任せでよかった子どもの頃の条件を、もう一度作り出してみようと、一生懸命になる。彼らは成長することを拒み、サンタクロースを信じるのをやめようとしない。彼らは子どもっぽい腕白で無責任で幼稚で、現実の問題に心を煩わさないですむ人間でずっと居たいと思う。快楽、慰め、気安さ、安全、それに無責任ということ、これが彼らの目標なのだ。彼らは無力さという大変魅力的な態度を身につける。これは、世間の人々に、「私は無力な子どもです。あなた方は私に何かしてくれなくてはならないのです。」、とこう公言しているである。この国は、ますます多くなりつつある、大人になることを拒否する、成人してしまった幼児に手を焼いているである。彼らは、いつまでも救いがたいロマンチストであり、現実というものがその肩に触れると、びっくりして傷つけられた弱者のように、そこから逃げ戻るのである。  退行ノイローゼの患者は、大人の労働の世界から完全に孤立し、おとぎ話、幻想の世界に逃げ込む。ままごと遊びの世界が、彼らの避難所なのである。   5.自殺 自己破壊による現実逃避  ノイローゼの第5番目の戦術は自殺である。生きて人生の現実に取り組む勇気をなくした人々に残された、最後の非常出口である。自殺の哲学は、決して勇気の哲学ではない。自殺するのは、自殺が彼の困難から抜け出す最善の道だと思えてくるからである。しかし、自殺は何も解決しない、ということは、正常な人にとってはだれにもわかりきったことに違いない。が、おそらくどんな人にも、何かのとき、ひどく生きる勇気を挫かれて、自殺がやむを得ないものだと思ったことがあるだろう。  自殺がやむを得ないと思われるような問題や失敗に直面しても、正常な男や女であれば、このような脱出の方法を取ることはごく稀である。多くの自殺は、身勝手に自惚れているほどには、彼を迎えてくれない世の中、父母、恋人に向かって決行されるのである。自己破壊行為と呼ばれるノイローゼは、軽い形の一種の自殺と言える。このノイローゼの場合、人は自分の隣人の顔に意見するために、自分の鼻を切り落とすのである。  自殺というノイローゼの最後の形は、およそ人生について最大の失意の表現である。他の人々は皆超人、スーパーマンであるのに対して、自分は全く成功の望みのない最低の、まるで無意味な毛虫のような存在だ、という気力の失せたノイローゼ患者の考えに基づくものである。
Ⅳ.ノイローゼの治療法  ある種のノイローゼ患者は、自分の透察力で、「ノイローゼというものは何の得もないものだ」と分かって、ひとりでに治る。ある人は、もう役には立たなくなったノイローゼを払い落とす。それだけで実際何も治療しなくてもよい。  ある種のノイローゼ患者は、一人前になるのを延ばしている間に、ノイローゼが肥大してしまっている(悪化している)。他の者はたいへん客観性を必要とするような、商売上の、あるいは夫婦間の経験を通して、ノイローゼ的な行動を捨て去る。ある人は、経済的に大変安定したので、ノイローゼが自然と消えてしまう。ある種のノイローゼは、読書や勉強で得た透察力によって払いのけられてしまう。  けれども、大部分のノイローゼは、だんだん悪化する。そうして誰か熟練した第三者が、患者に対して人生観をはっきりさせ、彼のエネルギーの新しい出口を見つけてやり、彼のものの見方を再教育しない限り、ノイローゼはますますひどくなっていく孤立と精神的な葛藤に、その人を追いやるのである。   Ⅴ.ノイローゼ患者��治癒に当たる人の資格。
 どのような人が、ノイローゼ患者の治癒に当たるのが理想的なのであろうか。   ①障害や抵抗に直面した際に、忍耐力と謙遜な心を身に着けた人。  ②自分自身が過ちを犯し、ノイローゼという道に迷い込んで、再び正常な道を見つけ出した経験をもつ人。  ③不幸な経験を持ったことのある、今は幸福な人。  ④困惑と失意の底に沈んだことがある勇気ある人。  ⑤科学について基礎的知識を身につけており、且つ芸術のもつ意味を理解している人。        Ⅵ.最後に  何かのノイローゼ的傾向を持っていないような人間は、一人もいない。我々は皆神経症患者なのだ。正常さというものは、人間行動の理想の限界としてしか存在しないからである。皆さんは、自分の生活の中に一つの神経症的な機構があると言って、自分がノイローゼにかかっているなどと思い込まないで欲しい。精神衛生の役割は、天使を製造することではなくて、肉体と血を持った生身の人間が、その活動につまずいて、全く必要もない不幸の中に落ち込んで行くのを防ぐことにある。この本の目的は、もっぱら大きな間違いを小さな誤りに変えて、無用な落とし穴を避け、放っておけば精神病院や死体仮置場に続いているような「流れ」を最小限に食い止める手法を示すことなのだから。
 これまで述べてきたように、ノイローゼの力学を良く知った人なら誰でも、ノイローゼの治癒は、教育や精神の視野を広げることや、人間的な共感を増し加えることや、現実の障碍に立ち向かう勇気を持たせる事によるものであることが理解できるに違いない。どんなノイローゼにも「因果」というものがあるわけではない。その因果があるとすれば、ノイローゼ患者が、自分の欠点のために何か選んで<責めているもの>だけである。ノイローゼがどんなものかということを理解できて、よりよい方法見つけ出そうという願いを持ち、もう一人の人から励ましを受ける、ーーーそうすればどんな人でも、自分のノイローゼを緩和し、矮小なものにすることができる。遺伝にせよ個人の環境にせよ、彼を神経症に駆り立てる事ができるような境涯などというものは存在しない。これらの条件は、当人の良くなろうとする意志の前には、ノイローゼの<発生>を説明することはできても、そのノイローゼを<維持する>事はできないのである。人間であるいかなる人も、幸福というものと両立し得る一定の正常さに達することができるのである。
(用語の説明) 神経症:neurosis(英)Neurose(独)思い込みから生じる心身の疾病のこと。 ノイローゼ:Neurose(独)の日本語読み 意味は神経症に同じ。 劣等感コンプレックス:Inferiority complex   全人類は充たされないという気持ちで悩んでいるが、それが劣等感の根本にある。  劣等感を持ってしまう根拠として、次の3つが挙げられる。  ①人間は生物としては、特別に弱く、生来うまく生きていけるようには、出来ていない動物である。  ②人間の頼りない幼少期が長期に渡る。  ③人間の頭脳は、身体より先に早く発達するので、理解は出来ても体を自由に動かすことが出来ない時期が長く続く。 優越感コンプレックス:Superiority complex その人の持つプラスジェスチャーの総計のこと。自分が、自分自身について感じているようなつまらぬ人間だと、周りの人に覚られまいとする気持ち。劣等感コンプレックスに対する煙幕。 プラスジェスチャー:plus gesture 人が様々なジェスチャーをとって、自分を実際よりも大きく立派で重要な人間に見せようとする心の傾向。「見栄を張る、見えをつくろう」は、人間性の中にあるかなり強い勢いである。
 2002年に米国精神医学会が発刊のDSM-Ⅳ(精神疾患の分類と診断の手引)では、不安障害・身体表現性障害・解離性障害と呼び、それまで使われてきた神経症という用語は使われなくなっている。   参考文献 1.W.B.ウルフ著、周郷 博訳:どうしたら幸福になれるか(下) Ⅷ. 失敗の類型ーノイローゼについて ー 岩波新書409 1961年
人は、人に愛されるために生まれる。 人は、自らを愛するために成長する。 人は、人を愛するために生きる。
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3月の相談会(2020年3月14日(土))は、新型コロナウィルス感染予防のため、急遽中止となりました。
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ヒトの心は後ろ向き
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2020年2月号  新年あけましておめでとうございます。今年も良い年になりますようお祈りいたします。
☆☆ヒトの心は後ろ向き☆☆
 どうしてヒトの心の目は、後ろ向きなのだろう。
「親が僕を無理やり病院に入院させたから、僕はこんなになった。」、「お前ら親の夫婦仲が悪いから、僕はその犠牲になってこんなひねくれ性格になった。」、「お母さんが学校の3者面談の時、あんな余計なことを言ったから、僕の評価は下がった。」、「小学校に入学した時、お母さんがちゃんと教えてくれなかったから、僕は勉強についていけなかった。」等々。
 私たちは20年~30年も前の過去の出来事を、今なお引きずって生きています。ひきこもりの若者たちだけではない、私たち、一見社会に適応しているかのように見える大人たちにも、同じことが言えます。私たち、ヒトには過去にこだわり、拘泥する傾向が強くあります。自分の過去にこだわり続けるからこそ、現実が見えない、現実の自分に気が付かないのです。    しかし今やらないなら、、一体何時にやるのだろうか?ずるずると何年も何年も引き伸ばして、挙句の果て、事態は最悪、しっちゃかめっちゃかにしてしまう。誰も責任を取らない。それが私たち、ヒトの悲しい現実なのです。  さあ、ケセラセラ、過去を忘れよう、過去を切り捨てよう、そうすればチャンスはある、立ち直るチャンスは必ず来る。それを信じよう、1年先、3年先、5年先を見据えて・・・。
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ひきこもりのお子さんの 大きな思い違い
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2019年12月号   菊の花が見事に咲いています。秋もそろそろ終わり初冬の季節となりました。皆様お元気でお過ごしでしょうか。
 ☆☆ひきこもりのお子さんの大きな思い違い☆☆ 
 両親とも立派で、経済的にも何ひとつ不自由ない恵まれた家庭環境にありながら、思春期(第二反抗期)に入って、不登校、ひきこもり等の問題を起こすお子さんがいます。こういうお子さんは、思春期以前の段階の習い事や学習塾通いでは、親のしいたレールの上を従順に歩んでいることが多いのです。  思春期は、それまでは親に頼って生きてきた子が、自分で考えて物事を選んでいきたいという欲求が芽生えてくる時期です。親に反発し親と距離を置く、親の生き方や行動を、「ダサい」「ウザい」などと批評するようになります。 またこの時期は、仲間、異性にどう見られるかを気にし始める 時期でもあります。同世代の友だちとの関係を重視するようになります。異性のことも意識し始めるようになり、自他の性的魅力にも関心を持つようになります。そのため髪形にこだわったり、体形を気にしたり、異性をひきつけるファッションに夢中になる子も増えてきます。一方で、自分の性的な魅力に自信を持てない子は、強い劣等感を抱くこともあります。  挫折体験がきっかけとなって、不登校やひきこもりの状態になりますが、このとき、お子さんはとても大きな思い違いをしています。それは二つあります。
  一つは親を敵視する心情を持つことです。自分がこんな(不登校、ひきこもり)状態になったのは、親が悪い、親のせいであるとするものです。本来これまで育ててくれた親に感謝こそすべきであるのに・・・。
  二つ目は、自分は駄目な人間だ、もう遅い、立ち直ることができないという心情を持ってしまう(自己肯定感の低下)。
  では、どのように親は対処したらよいのでしょうか。親は子どもの気持ちをあれこれと詮索しないで、温かい気持ちで見守ってあげる、「私たち両親はどんなことがあってもあなたを無条件で愛しているよ。遅すぎることなんかなにもないよ。」、と態度で示してあげましょう。また、お子さんが同年代の仲間と付き合う機会を作ってあげることがたいへん大切です。それによって、自分の狭量、ひずんだ思考に気づきます。問題の解決はお子さん自身の気づきの中にあります。終り
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ストレスから病気になる
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2019年11月号 (2019年11月10日)  10月は 台風による大雨、洪水で大変でしたね。地球温暖化で異常気象が常態化する時代になったようです。大変な時代になりました。皆様 お元気でお過ごしください。
☆☆ストレスから病気になる☆☆
「ストレスから病気になる」��このことは、どのような科学的根拠があるのでしょうか。脳科学の立場から、脳が環境の要求と体の要求を統合する過程全体を、神経内分泌機能として捉える考え方で、この問題を理解出来ると思います。
Ⅰ.身体のホメオスタシス(恒常性)  外気温度がどんなに変化しても、健康なヒトの体温は、およそ36℃になるように調節されます。また、ヒトの食習慣が異なっていても、ヒトの血糖値は血液1ミリリットル当たりおよそ1ミリグラムに保たれています。このように、ヒトの体内環境は神経内分泌機能により、常に一定に保たれています。体内環境を一定に保つ機能のことを、ホメオスタシス(恒常性)と呼びます。
1.自律神経による臓器の制御  第1図 自律神経の分布 には、左側に脊髄、右側に支配される臓器を表しています。交感神経は赤い線、副交感神経は黒い線で示されています。交感神経、副交感神経とも、脊髄と支配を受ける標的器官との間には、神経節と呼ばれる小さなカプセルに包まれた神経細胞集団を作ります。第1図においては、◯(マル)で示します。節前線維は実践で、節後繊維は点線で示します。
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第1図 自律神経の分布
 求心性の自律神経ニューロンは、脊髄で遠心性の自律神経ニューロンに直接連絡します。そして次にこの遠心性の自律神経ニューロンが、神経節ニューロンの活動を調整します。脊髄から神経節に投射する神経細胞の軸索は節前線維と言います。神経節ニューロンから、標的器官に直接接続する神経軸索は節後繊維と呼ば れ、そこで標的器官に広範に側枝を伸ばして、標的器官を支配します。    例:心臓や血管や消化管の筋肉を支配する節後線維は、これらを収縮させたり、弛緩させます。腺を支配する節後線維は、涙、唾液、胆汁や汗などを分泌します。    自律神経系は大きく二つに大別されます。交感神経と副交感神経です。交感神経の働きは、動物が「闘争か逃走か」のギリギリの状況に置かれたときの心身の反応、と説明できます。強い緊張状態です。副交感神経の働きは、「安静と回復」の状態を作ります。食事をとった後のくつろいだ状態です。心拍は遅くなり、心臓の収縮は減衰し、瞳孔は収縮し、消化酵素の分泌は高まります。 第1表に、交感神経と副交感神経の作用を対比して示します。
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第1表 交感神経・副交感神経の作用の対比
2.ホルモン系による臓器の制御
 2.1内分泌器官  内分泌器官とは、特定の器官の細胞活動を調節するため、血液中に直接物質を分泌する器官のことを言います。 第2図に主な内分泌器官を示します。また第2表に内分泌系の概要を示します。
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第2図 内分泌器官
第2表 内分泌系の概要
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 内分泌器官は腺と呼ばれ、分泌する物質のことをホルモンと言います。 ホルモンは非常に強力でわずかな量で機能を果たします。ホルモンに反応する細胞は、非常に低濃度のホルモンでも感知することが出来る表面受容体を持っています。 ホルモンが標的細胞に到達すると、一連の体内調節が速やかに始まります。    2.2ホルモン放出の機序  ホルモンの体内放出を制御しているのは、視床下部ー下垂体系です。最初に視床下部から、下垂体に「放出せよ」、ないし「抑制せよ」の指令が出て、それを受けて下垂体から、体内にある各腺を刺激する刺激ホルモンが送られます。刺激ホルモンを受け取った腺が、その腺特有のホルモンを血流に放出します。  一例として、第3図に副腎髄質から放出されるアドレナリン、ノルアドレナリン((注)アドレナリンは別名エピネフリンとも言います。)が、広く体内にある諸器官に作用する様子を示します。副腎髄質というたった一つの腺を刺激することによって、遠く離れている内臓の器官を協調して反応させることができます。
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第3図 副腎髄質ホルモンの作用
 3.視床下部ー下垂体系   視床下部ー下垂体系は、内臓機能を統合する主要な領域���す。   次の二つの方法で働きます。   ◯神経回路による方法:視床下部の神経系が、特定の神経回路に信号を送りその神経回路から指令が出て、自律神経の節前神経を興奮させる方法。   ◯ホルモンによる方法:視床下部にある特定の神経細胞 (放出ホルモン、及び抑制ホルモンを生成する視床下部の神経核)が、すぐ下に存在する下垂体前葉のホルモン分泌を調整する方法。       第4図に 視床下部ー下垂体系の構造を示します。
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  第4図 視床下部ー下垂体の構造   (室傍核(最上部に見える)は、視床下部ー下垂体ー副腎皮質において、最初にストレス信号を受ける。)
 視床下部は4g、下垂体はわずか700mg、大きさ7~8mm、と小さい器官ですが、内臓機能を統合する極めて重要な役割をしています。視床下部は、次の3の機能を果たしています。  ◯体内に関する情報を受信する(体温、塩濃度、内分泌器官から分泌されるホルモンのレベルなど)。  ◯内分泌器官から放出されるホルモンの量に関して、下垂体から内分泌器官に指令を出す。  ◯大脳皮質と大脳辺縁系からの高次の制御を受ける。また、延髄の中枢からの感覚情報(血圧、呼吸、心臓のリズム)を受ける。     大脳皮質と大脳辺縁系からの高次の制御とは次のようなものです   内部環境や外部環境からの情報が、大脳皮質で比べられます。たとえば、もし時間や場所が食事を摂るのに不適切であると大脳皮質が判断すれば、低血糖や空腹を示す感覚信号はもっと適切な時まで排除されます。また、辺縁系からの入力は、大脳皮質の下した外部感覚信号の解釈に、情動や動機づけを付け加えたり、あるいは環境についての現状と過去の似たような状況を比較したりするようです。      Ⅱ.ストレスに対する防御システムとしての自律神経系、および内分泌系  Ⅱ-1.視床下部-下垂体-副腎皮質、HPA軸   中枢神経系(脳)が、ストレス(激怒・恐怖・危険・大出血・血圧低下・寒冷・低体温・外傷・疼痛など)を感知すると、神経系と内分泌系による分泌調節は関連して内部環境を調節します。ストレスホルモンであるノルアドレナリン、アドレナリンと、コルチゾルが分泌されます。
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 ◯ CRH    :副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン Corticotropin-releasing hormone  ◯ ACTH   :副腎皮質刺激ホルモン(Adrenocorticotropic hormone  ◯ コルチゾル:副腎皮質ホルモンである糖質コルチコイド(ヒトでは主にコルチゾル)。
 コルチゾールは循環器機能やエネルギー代謝を高め、ストレスに対する全身の防御に働く。  コルチゾールは、副腎皮質から分泌されるホルモンの一つです。ストレスを受けた時に分泌が増えることから「ストレスホルモン」 とも呼ばれ���す。コルチゾールの主な働きは、肝臓での糖の新生、筋肉でのた��ぱく質代謝、脂肪組織での脂肪の分解などの代謝の促進、抗炎症および免疫抑制などで、生体にとって必須のホルモンであります。
 ◯ 視床下部-下垂体-副腎皮質 HPA軸:Hypothalamic-pituitary-adrenal axis,HPA axis.  視床下部-下垂体-副腎皮質(HPA軸)の一連のホルモン伝達系はストレス応答の最も重要な経路です。  ヒトを含めた哺乳動物では、ストレスに対する防御システムとして内分泌系、および自律神経系が重要な役割を担っています。           Ⅱ-2 大脳皮質、大脳辺縁系の影響   自律神経の中枢は視床下部ですが、視床下部は大脳辺縁系や大脳皮質から直接的・間接的に影響を受けています。外部からの刺激によって、ある情動が生じると大脳辺縁系から視床下部に情報が伝わり、それにより視床下部は自律神経に、身体の各器官を適切な状態にするように指令を出します。  例えると、歩いていて脇道から急に自動車が飛び出してきたら、大脳辺縁系に恐怖の感情が生まれ、その情報が瞬時に視床下部に伝えられ、それを受けた視床下部が自律神経に指令を出し、交感神経が興奮することにより、急に血圧が上がり、心臓が早鐘を打ち、冷汗が出、全身の筋肉が収縮します。生命の危機を感じた脳の情報を受けて、自律神経を通じて全身が危機に対応するよう瞬時に変化します。この様に視床下部は本能的欲求や情動をつかさどる大脳辺縁系からの情報によって、自律神経をコントロールします。
     また、視床下部は大脳皮質からも間接的に影響を受けます。例えば、サスペンスやホラー小説や映画を観てドキドキしたり、好きな異性から声を掛けられたら胸が高鳴るのは、その一例と言えます。  ストレスを受けるとその情報は、視床下部 → 脳幹(縫線核)の道筋で伝わるので、脳幹のセロトニン(神経伝達物質)の働 きが弱くなり精神症状(うつ病やパニック症)の引き金になります。
    Ⅲ.まとめ  第6図に、視床下部が臓器を制御する二つの道筋、自律神経系とホルモン内分泌系を 示します。小さな小さな視床下部が身体のホメオスタシスを維持する最高の中枢である と言うことができます。
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第6図 視床下部は身体ホメオスタシスを維持する最高中枢
第3表にストレスホルモンによる作用をまとめて示します。
第3表 ストレスホルモンの作用 
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 ( )内は過剰分泌、長期投与の副作用 。 ☆髄質ホルモンは交感神経刺激により分泌される。
 このように、ストレスが様々な疾病を引き起こす事につながります。ストレスが長期間持続して加わると、例えばコルチゾルの「免疫抑制作用」で、癌を発症することになります。
 昔から、「病は気から」と言います。現代の脳科学では、「病はストレスから来る」と言うべきでしょう。現代は、ストレス社会、極めてストレスの多い社会です��ストレスの多くは、仕事と人間関係から生じます。仕事では7割できれば良しとする、人間関係では、嫌いな人には近寄らない、付き合わないと言う知恵が求められていると思います。              以上 
参考文献
1.フロイド・E・ブルーム他著、中村克樹・久保田 競監訳:新脳の探検(上)第6章体内環境の維持ーホメオスタシス BLUE BACKS
2.2017年度版:人体のしくみと働きについて 7 内分泌系のしくみと働き   http://plaza.umin.ac.jp/~histsite/7endcrinetxt.pdf       
3.犬束 歩、山中 章弘:視床下部 脳科学辞典  https://bsd.neuroinf.jp/wiki/ %E8%A6%96%E5%BA%8A%E4%B8%8B%E9%83%A8 #.E5.A4.96.E5.81.B4.E9.87.8E 4.Akira Magajine:間脳の話  https://www.akira3132.info/diencephalon.html
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最初の一歩を始めよう
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2019年10月号 ( 2019年10月6日 )  台風19号は、2019年10月12日(土)夕方に静岡県伊豆半島に上陸し、中部地方~東北地方に暴風と大雨をもたらしました。広範な地域に大規模な水害を引き起こしています。亡くなる人が出ないことを祈るばかりです。
☆☆最初の一歩を始めよう☆☆
 
過去にこだわらない
 失敗はどの人生にもある。失敗のない生き方など誰にもない。だから、過去にこだわらないようにしよう。
過去は文字通り「過ぎ去る」と書く。時(とき)は、川の流れのように、水が上流から下流へと流れていくように、元に戻ることはない。だから、過去にこだわることなく、過去のことは忘れてこれから先のこと、前の方向に眼を向けて生きていこうではありませんか。今まさに、その第一歩を踏み出しましょう。
万事はあなたの心次第  気持ちは心の持ちように左右されます。一例として、次のような状況を想像してみましょう。 『寒風吹きすさぶ北極の大雪原、生き物は何も居ない』を想像すると、寒々とした孤独な気持ちになります。 『日本の秋。澄み切った青空、澄んだ空気、ホカホカと温かい日差し』を想像すると、何故か温かい幸せな気持ちになります。  昔の人は、『心に太陽を持て』と言いました。個人の生き方としては、『明るい、のびのび、おおらか、楽しい、自信がある、気にしない』、社会的な生き方としては、『周りの人々に対して、温かい、思いやりの気持ちを常に持って接する』、ということを、『心に太陽を持て』と表現しているのだと思います。自分自身に関しても、周りの人に関しても、温かい思いやりの気持ちを持つことが、なにより大事ですね。  その反対が、否定的な、破壊的な、ネガティブな、邪悪な気持ちを抱いて、生きることです。否定的なネガティブな気持ちで生きている人は、その顔付きや態度に現れます。そして、次々と不幸な問題を引き起こして行く生き方になります。
 人が幸せに生きることは、特段、難しいことではありません。私たちが自分の心の中に抱くイメージ(心象)を明るく肯定的で前向きなものにすることがポイントです。その反対に、暗く否定的で後ろ向きのものからは、私たちの心象を出来る限り引き離して生活することです。『心に太陽を持て』の生き方を選択するだけでよいのです。心象は私たち人間の生き方に非常に強い影響を及ぼすのです。
具体的なアドバイス  古来、仏教では『五戒』と言って、次の5つの行為を厳しく禁じています。これらが人の精神を狂わせることを認識していたからだと思います。古い教えであっても、現代に通用する教えです。現代の若者には、パソコンゲームやスマホゲーム中毒が5番目の戒めに当たりますね。不登校の直接の原因は、パソコンゲームやスマホゲーム中毒になり、毎日毎晩深夜までゲーム漬けとなり、朝起きられなくなることから始まります。
1.生き物を殺すな。我が身にひき比べて、生き物に苦痛を与えたり殺してはならない。 2.他人の物を盗んではならない。 3.虚言(嘘)をついてはならない。一つの嘘は次々と新たな嘘を生み出し、人を苦しみの淵に突き落とす。 4.男女の関係を乱す行為をしてはならない。 5.あらゆる中毒を起こす行為、(アルコール、煙草、薬物、ギャンブル、ゲーム、賭け事等)をしてはならない。
ひきこもりの最中に居る若者へ  諦めるな  ひきこもりの若者は、「もう遅い、間に合わない、手遅れだ。」「やり直しは効かない」などと思い込んではいないでしょうか。過ちに気がついたときが、すなわち、過ちを改める最善の時なのです。後で振り返れば、「あの時にこう決断していて良かった」と思うことが必ず来ます。過去の諸々の出来事にこだわらないことです。   他人を僻むな  学校時代の友人が社会人となり、独立を果たして暮らしている、それに比べて自分はひきこもりを何年も続けていて、何の進歩発展もない、と他人を僻みます。しかし、他人を羨ましく思い僻んでも、建設的なことは何も生まれてきません。意味のないことに時間とエネルギーを使ってはなりません。僻む気持ち、羨む気持ちを振り捨てて、今度こそ今から本当の自分を取り戻して、前に進もうではありませんか。自分の職務経歴書に書くことがなにもない、白紙だと引け目を感じたりすることのないようにしましょう。それはあなたの思い込みに過ぎないのです。ハローワークは若者に対して、親切丁寧に対応してくれます。  以上
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思考狭窄を起こすひきこもりの若者たち
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2019年9月号
( 2019年9月14日 )
 台風が千葉市に上陸し、9月9日(月)早朝は猛烈な風が吹きました。皆様、被害はありませんでしたか。暑さが台風とともに、戻ってきました。暑さに負けずお元気でお過ごしください。
☆☆思考の狭窄を起こすひきこもりの若者たち☆☆ 
ひきこもりの若者には、共通する目立った特徴があります。それらは、
①思考の狭窄、融通の効かない型にはまった考え、思い込みや決めつけ
②一方的で自己中心的な考え
③責任転嫁、被害的他罰的傾向
④病識がない
⑤精神の集中力が無い
です。以下、二つの事例を上げます。
☆☆ひきこもり者の思考障害、被害念慮、他罰的傾向☆☆  事例:ひきこもり、27歳、男、無職  この人は高校3年の受験のころから躓き始め、心気症状、登校拒否などを示して、受験に失敗した。一年浪人してある大学に入ったが、志望校は全て落ち、すべり止めに受けた一つだけに合格したのである。本人はもう一年浪人する気でいたが、前の一年もほとんど勉強になっていなかった事情を考えた家族に説得され、不承不承入学した。しかし、ほとんど休んでばかりいたうえ、テストの成績も悪いので留年を続け、ついに期限が来て退学となった。その後急速に悪化して、逸脱行動が多くなり、一時アルバイトなどもしたが、どうしても続かずに、この一年あまりは全く閉じこもった生活を続けている。  この人は、毎日ごろごろして寝たり起きたりの生活を送り、昼過ぎにしか起きてこないし、起きた後も近頃ではほとんど外出もせず、自宅にこもっている。家庭は初老の父母しかおらず、父親は仕事の都合で昼間は居ないから、大部分の時間を母親と過ごしている。母親に対して、過去のことをくどくどといつも同じように責め、何故あの時学校をやめさせてしまったのかとか、取り返しがつかなくなった責任をどう取るのかといつまでもくっついてきては迫る。仕方がないのであれこれ説明したり弁解したりすると、それに対して今度は腹を立て、いらいらが高じて暴力に及んだりもする。かといって、適当に受け流しているとそれが気に入らず、真剣未が足りない、一生懸命にもっと考えろなどと食い下がる。  こうしたことが毎日続くので、ついに母親は心身ともに疲れ果て、一度狭心症の発作を起こして倒れてしまった。一ヶ月ほど入院して事なきを得たが、以来母親はすっかり無理ができなくなった。  本人は、そうした母親の事情を知ってはいるが、興奮し出すと止まらず、すぐカーッと激昂して、いつまでもしつこく責めさいなんでしまう。普段でも客観的な考え方や判断ができず、思考の狭窄を起こしているし、全く自己中心的な考えに囚われている。ともすれば被害的な考えをしたり、そのために他罰的な言動が多い。遷延化するにつれて、いよいよ被害念慮や他罰傾向が強まり、後述の意欲障害や退行とともに家族をほとほと困らせている。  【稲村 博:思春期挫折症候群―現代の国民病―、新曜社P37から引用】
☆☆ひきこもり者の思考障害、被害念慮、他罰的傾向 その2☆☆ 【事例】31歳 男性 会社員  この人は、大学院を卒業した後、ある大手の企業に就職した。ところが、そこが気に入らなくて、やがてもっと小さな別の会社に移っている。その頃から、親や兄弟に無理難題を言い、逆らうと、母親にも姉にもひどい暴力を振るうようになった。その程度は相当凄まじく、母親は首を絞められて危うく殺されそうになったことも一度や二度にとどまらない。また、姉の方も踏んだり蹴ったりの、凄まじい暴力を受け、殺されるのではないかと思ったことが何度もある。そんなときは、やむを得ずパトカーを呼び、助けてもらったことも数回に上る。なぜ本人が暴力を振るうかというと、そのきっかけは、たいてい職場のむしゃくしゃで、その他には結婚問題などもある。本人としては、大学院を卒業した後、就職などしないで大学に残るつもりでいたのに、両親が馬鹿だから、就職するはめになってしまったと言い、結婚が遅れているのも、結局はみなそれに端を発しているのだと言う。ところが、実際は本人の希望で就職したのであり、ことに最初の職場は人も羨む良いところであった。また結婚は、これまで何人も候補者が出来て、婚約にまでこぎつけたのだが、、深く付き合うほど、本人の言動が相手に不安感を抱かせるようで、結局皆破談になってきたのである。それを、本人はまるで家族が裏で破談にして廻っているように考えたり、あるいは策を弄して就職させてしまったかのように被害的に考えている。明らかに思考障害とみられる。また、意欲も近頃ではかなり落ちているように思われる。こうしたことから、本症候群の一種と考えられるのだが、家族が苦労してやっと専門医に受診させても、正常だと診断され、親と姉の方こそ、治療を要すると判断されてしまう。もっとも確かに母親はうつ病であり、姉の方はノイローゼをきたしていて、治療を要することは確かだが、本人の方の病理の根がより深いと言わざるを得ない。  ところが本人は職場では変人だとみなされながらも、まあ普通にやっている。元来の能力から見るとずっと落ちて入るであろうが、通常の業務はこなせるためであろう。婚約者などのように個人的に深い交際をし、情緒面や思考面の根本に関わるところで接すれば、おかしいと解るのだが、日常の仕事や対人関係程度ではわからない。医師でさえそうで、母親が受診していた病院へ、姉が苦労してやっと本人を連れて行ったときなど、医師は本人の弁舌に丸め込まれて、姉こそ財産目当てに本人を精神病者に仕立てようとする異常者だと決めつけた程である。こんなふうで、知的にも高いし、社会的地位は高いしで、治療に乗せるのが容易ではない。統合失調症などのいわゆる精神病ではないし、かと言って異常性は高いしで、最も厄介なタイプの状態だと言えよう。しかも困ったことに、最近はこういう三十代や二十代の本症候群の例が増えているように思う。なおこの例は、すでに大学に在学中から軽く兆候が始まっていたとみられる。 【稲村 博:思春期挫折症候群―現代の国民病―、新曜社P103から引用】
 何故このようなネガティブな心理的傾向を持つのか、そうならないようにするため、親はどのような子育てすればよいのか、ご一緒に考えてみましょう。次の二つを検討します。
 Ⅰ.人生(ライフサイクル)上の発達課題の未達成  Ⅱ.現代の理想的な子育て・教育とはなにか 
 Ⅰ.人生(ライフサイクル)上の発達課題の未達成
 人生ライフサイクル上の発達課題が未達成のまま、次の段階に進んでしまう、と言う問題があります。第1表 ライフサイクル上の発達課題を御覧ください。
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(1) 乳児期には、基本的信頼の感覚を持つことが課題です。この時期に母親は、乳児の個々の要求に敏感に応じて世話をし、お乳やミルクをタイミング良く与えて子どもの空腹を満たし、おしめをタイミング良く交換することにより、子どもの不快感を取り除いてあげます。この母親による適切な世話によって、子どもの心には、必要物を供給してくれる外的存在(母親)が、いつも同じで連続性を有していると感じます。この感覚が基本的信頼です。もし母親が乳児の要求にうまく応えられず、不適切な世話をし続けると、幼児の心に基本的不信の感覚が醸成され、次の段階に進めないことになります。
 (2) 幼児期には、自律性・自発性の感覚を養うことが課題となります。自律性の感覚とは、子どもが自分に”出来ること”を意図するようになり、強制されたという感覚から、自分が”意志をもって◯◯◯した”と感じる事が出来るようになることです。この時、両親は自律性を育てるために、子どもの”独立したい”という欲求を励ましてあげることが大事です。  自発性の感覚を養うとは、次のようなことです。この時期の子どもは、躓きや不安に多少つきまとわれながらも、積極的に課題に取り組み解決していきます。溢れんばかりの活力を発揮して、目標に向かってひるむことなく接近していき、仕事を引き受け計画し、果敢に取り組みます。両親は自発性を育てるために、子どもの”やりたい”という欲求を励ましてあげます。   (3) 学童期には、子どもは大きな好奇心を持ち、学びたい、知りたい、という強い欲求を持ちます。そして、”ものを作る情熱”に支えられて、社会の基本的原則や技術を学びます。これは”何かものを上手に作ることが出来る”という感覚であり、また、”自分には能力があるのだ”という感覚です。この感覚によって、学校という集団の熱心な一員となり、今後生産的な大人の生活に参加していく基盤となります。それを通し��、勤勉の感覚を養っていきます。
(4)思春期には、同一性(アイデンティティー、identity)の感覚を養います。同一性は、「自分はこれこれのものである」と自分が自分を認識することです。思春期に達した若者は急激な身体の発達を受けて、それ以前の子ども時代に確立してきた同一化(理想とする人、親、先生、時代のヒーローなどに自分もなりたいという気持ち)の全てを作り直さなければなりません。そして、子ども時代の同一性を捨てて、青年期の同一性(アイデンティティー)の感覚を養っていきます。    以上、述べた人生ライフサイクル上の発達課題を、その年齢のときに達成していくことが重要です。未達成のまま、次の人生の段階に進んでしまうと、そこで発達が停滞してしまうことになるからです。    例:乳児期に基本的信頼の感覚を養うことに失敗すると、次の段階である幼児期において、自律性・自発性の感覚を身につけることが出来ないこととなります。この場合、前の段階に立ち戻って育ち直しをする必要が生じます。同様に、学童期において勤勉の感覚を身につける事に失敗した子どもは、次の段階、思春期において同一性の感覚を身につけることが出来ず、そこで停滞してしまいます。前の段階の発達課題を未達成の状態で、次の段階に進んでそのままにすると、どうなるでしょうか。子どもはそこで不適応状態に陥ることになるのです。これが学童期における不登校や、大学や専門学校を出て就職してからの出社拒否に繋がります。    これを解決するには、前の段階に立ち戻り、育ち直しをしなければなりません。現在、大人になっている人は、この立ち戻り、育ち直しを何度も繰り返して、これまで生きてきたのです。親の果たすべき役割は、子どもがどの段階で何につまずき、発達課題を乗り越えていけなくなっているのかに、いち早く気がついて、子どもの育ち直しを後ろから支援してあげることです。育ち直しはその機会が早ければ早いほど効果的です。問題を長引かせず、こじらせないことが大事です。
 ☆☆コラム 自我について☆☆  精神分析の創始者、ジークムント・フロイドの流れをくむ自我心理学派では、”自我”という言葉を重んじます。「あの人は自我が強い」「この人は自我が弱い」などと言います。  自我の原語はドイツ語で、”Das Ich”、つまり”この私、この自分”の意味です。日本語では”エゴ”と言い表します。また、ドイツ語の”Das Es”で、その人の無意識界にある”欲動、欲望”を意味します。日本語では”エス”と言い表します。もう一つ、ドイツ語の”Uber-Ich”で、”この私の上に在るもの”を意味し、”スーパーエゴ、超自我”と表現します。”スーパーエゴ、超自我”とは、親から刷り込まれた倫理観・道徳観・モラルを意味します。    自我心理学派では、人間の心は自我、エス、超自我の3の要素の三層構造から成り立っていると考えます。自我の役割は、その人の内面から湧き上がってくる欲動のエス、親から刷り込まれた倫理観 超自我、その人が今置かれている”現実”の、三つの要請をうまくバランスを取って、生きていくという調整役をしていると考えます。       自我にはこの調整役の他にも、次に述べるいろいろな機能を果たしています。
①現実検討機能: 現実外界に向かう、現実感覚を正確に確実に保つ機能。 ②防衛機能: 自我が欲動エスをコントロールして、自分が受け入れることができるものにする機能。また、自我が超自我の厳しい要求を温和なものに変えて、自分が不安や罪悪感を感じないようにする機能。
③自我感情: 私はこういう人間であると認識する機能。 ④適応機能: 現実検討の結果に基づいてどのように外部に向かい活動するか、を決める機能。
⑤対象関係機能: 心のなかに思い浮かべるものを表象と呼ぶ。自己表象とは、自分についての表象のこと、対象表象とは、事物についての表象のこと。表象を思い浮かべる機能のことを対象関係機能と言う。 ⑥自律機能: 自分の成長や発達に寄与するような自我の働きを言う。 ⑦統合機能: 自分を1個のまとまりのある人格として存在させる機能。
 前節で述べた、人生ライフサイクル上の発達課題を各段階で解決している人は、自我心理学では、”自我が強い人”と言います。その反対に、発達課題を解決できていない人を”自我が弱い人”と言います。冒頭に述べた「思考の狭窄を起こすひきこもりの若者たち」とは、自我が弱いから、そうなるのだとも言えます。
 
 Ⅱ.現代の理想の子育て・教育とは何か
 ここでは、Ⅰ.人生(ライフサイクル)上の発達課題の未達成、において述べた問題が解決できたとして、残った課題について考えます。便宜上、3歳の時まで、10才の時まで、及び24歳の若者まで、と区切って考えていきます。 
 1.3歳の時までの課題
 幼児の心のなかに、自我、欲動、超自我の三層構造が出来て、一応大人に近い心の構造を持つ時期です。ことわざに、”三つ子の魂百まで”というのはこのことを意味しています。
 子どもにとって、最も大きな課題は、それまでのように母親に依存したいという気持ちと、母親から離れ独立していきたい、という”依存と独立”の葛藤です。母親が早々と依存関係を撤去してしまうと、子どもは不安になり依存対象にしがみつき、母親から離れられなくなります(分離不安)。逆に依存関係が満たされていると、子どもは安心して独立していけます。この依存と独立の葛藤を解決するには、母親は子どもの両面の気持ちを受け入れながら、穏やかに独立の方向に向かって子どもを押し出してあげる必要があります。もし失敗すると思春期になってから問題が再現して、子どもはいつまでも母親に依存し続けて離れられない事になります(思春期の分離不安)。
 2.10歳の時までの課題  10歳の時というのは、このときまでにその人の人格の基盤が固まる時期とされています。ですから、家族が10才の時までに子どもにどのような対応をするかは、子どもの成長にとり、極めて大切です。ポイントは、とことん遊ぶ、自然と親しむ、本の読み聞かせと読書の習慣の3点です。    (1)とことん遊ぶ  子どもは同年齢や異年齢の子どもと遊びを通して、その心が成長します。ですから、知識教育よりもむしろ遊びが大切なのです。”よく遊びよく遊べ”とはこのことです。幼児が体全体を使って、どろんこになり、真っ黒になって遊び回ることが、スケールの大きな人間性を養う事になります。    (2)自然に親しむ  海、川,プールでの水遊び、野原でのピクニック、山でのハイキング、登山等。自然の中で自然と親しみ、情緒豊かな人間性を養います。
 これとまさに正反対のことは、人間が作った人工的な環境の中で、子どもが育つことです。大都会の集合住宅で成長する多くの子どもたちは、そういう環境の中に生きています。仮想の世界をバーチャル(virtual)な世界と言いますが、その反対がリアル(real)な世界です。コンピュータグラフィックスCGが作る映像やアニメはバーチャルな世界です。そこからは人間の心の本当の成長、癒しや満足は得られないのです。  コンピュータゲームやスマホゲームの普及は、子どもたちがそのゲームにのめり込んでしまい、夜ふかしをするので、翌朝、起きられずに不登校になってしまう原因となっています。今、教育の世界では、大問題となっています。
 (3)本の読み聞かせと読書の習慣  幼児期~学童期において、親が本を読み聞かせをすることは、子供の心の発達にとり極めて大切です。小学校高学年では、読書の習慣をつけ、沢山の本を読むことが、心の成長と後々の学力向上の基盤になります。幼いときに読んだ本の記憶はその子どもの一生の宝となることでしょう。
 3. 24歳の時までの若者の課題  大学、専門学校を終了して、社会に巣立っていく時期です。このときまでに、若者は自分の適性に合致した職業を選択、決定します。自己分析し、自分は何が好きか、何をしているときが一番楽しいか、に基づいて決めるのがよいです。  若者は、自分のアイデンティティーを確立する最中にありますから、なかなか職業を決定することが難しい。それでモラトリアムとは、職業を決定するまでの猶予期間のことです。現代はモラトリアムの期間が長くなる傾向にありますが、就職する時期の目安としては、24歳ぐらいが適当だと思います。モラトリアムの期間があまり長期化すると、生活上の摩擦が大きくなるからです。    4.親の役割  親は常日頃から、子どもの生活ぶりをよく観察し、子どもがどういう事物に興味を示すかを知る必要があります。例えば、昆虫、動物、植物、草花、木、道具、器具、機械、装置、家、建物、建造物、音楽、絵画、造形等。  そして、子どもの適性を知り、職業選択の時期になったら、「あなたは、こういう方面のことに向いているんじゃないの」とアドバイスが出来るようになります。これが大切です。    5.学問の選択  進歩変化が激しい現代社会で生き抜いていくには、若い時の学び、学問が大切になります。現代は科学技術の時代、科学技術の知識なくして生きていくことは出来ない時代です。昔でしたら、いわゆる文科系の学問、言語学、文学、哲学、法律学、宗教学、社会学等が主要な学問でした。今は違います。自然科学(化学、物理学、生物学、天文学、地質学、気象学など、またその基盤としての数学)がもっとも重要な学問となっています。
Ⅲ.痛ましい児童虐待事件  このような虐待事件が連続して発生するとは、日本人の資質が著しく悪くなっていることの証です。極めて憂慮すべき事態です。    2018年3月 東京都目黒区 船戸結愛(ゆあ)ちゃん、5歳。  父親 船戸雄大被告の暴力、虐待により死亡。母親の優里被告も夫の虐待を止めなかった罪で起訴。    2019年1月 千葉県野田市 栗原心愛(みあ)ちゃん、小学4年生、10歳。  父親の矢野栗原勇一郎被告(41歳)による暴力と虐待により死亡。母親の栗原なぎさ被告(32歳)も起訴、執行猶予5年の判決。    2019年8月 鹿児島県薩摩川内市 大塚璃愛来(りあら)ちゃん、4歳。母親の交際相手 日渡 駿容疑者(21歳)から暴力を受け死亡。璃愛来(りあら)ちゃんは、夜1人で歩いているところを4回も保護されていた。   参考文献 1.稲村 博:思春期挫折症候群―現代の国民病―、新曜社 2.馬場禮子:精神分析的人格理論の基礎  岩崎学術出版社 3.E.H.エリクソン、仁科弥生訳:幼児期と社会Ⅰ、及びⅡ(1950)みすず書房
 以上
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親子の会話をスムーズにするには
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2019年8月号
(2019年8月3日) 
  親子間の会話がスムーズに行かなくて、悩んでおられる親御さんも多いと思います。どうすればよいのか、エンプティチェア法などの癒し技法の実演を通して、具体的な対処法をご一緒に考えてみましょう。
子どもから見た親 ○うざったい、わずらわしい、面倒くさい、邪魔だ。 ○自分の学業や就職、友達との人間関係がうまく行っていないことが背景にある。 ○自責の念がある。それを親からあれこれと詮索されたくない。 ○自分が、不甲斐ない自分に対してイライラしている。 ○いつまでも過去のトラウマ体験に拘泥する。 
親の立場から見た子ども ○一体、何時になったら、学業、就職など普通の状態に立ち戻るのか。何時まで続くのか。 ○一体、どういう気持なのか。何が問題なの? ○病気なのか?原因は何か、発達障害?精神病?
問題の所在 ○不断から親子間の会話がないか、非常に少ない。いつの間にか、親子間に大きなギャップが出来てしまっている。 ○親からの保護、援助が必要だ、ありがたいと感じている反面、親を批判し、親から独立したいという二律背反の気持ちを持って居る(思春期特有の問題)。
解決方法 ○家の中の雰囲気を明るく保つ。 ○子どもが家に居ることで、精神的にストレスを感じないよう配慮する。 ○「親の言うことを聞け。」権威主義的、頭ごなしの態度を取らない。 ○日常の平凡な挨拶 「おはよう」、「頂きます」、「ご馳走さまでした」、「お風呂湧いたよ」、「行ってきます」、「お帰り」等。 ○スマホゲーム、パソコンゲーム依存で昼夜逆転の生活をしている場合、生活リズムの正常化する。
 さあ、子どもさんと会話を始めましょう。会話の基本は、観察、傾聴、確認、共感、の4つです。(別紙手渡し資料を参照)
癒し技法  1.エンプティチェア法・・・第1図  Aさんは相手(例:息子)   Bさんは私 (例:父親)  空椅子にAさんが座っている(想像)。Bさん(私)がAさんに語りかける。 今度は、Bさんが空椅子に座る。Aさんになったつもりで、目の前にいるBさんに語りかける。  これを繰り返す。AさんもBさんも言いたいことが言えたと感じたら終了。そうでない場合は、これを繰り返す。
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  2.セルフロールプレイング法・・・第2図  Aさん:過去の私  Bさん、Cさん:過去の相手    過去の問題の場面を想定して演劇をする。台本が必要。Aさん(クライアント)が主役。Bさん、Cさんが脇役。  Aさんが、Bさん、Cさんに対して、言いたいことが言えたら終了。心にジーンと来たら、成功である。
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   3.役割交換法  セルフロールプレイング法で、AさんとBさんの役割を交換する。相手になりきって演技することにより、深い気づきと 癒しが得られる。    4.守護神法・・・第3図  Aさんは私。(Aさんが、自分を守ってくれる支援者が居ない、孤独なトラウマ体験を持っているときに守護神法を用いる。)  Aさんが椅子に座り、自分の気持を言う。  Aさんを椅子に座らせたまま、Aさんは立ち上がって、背中側にまわり、守護神に変身する。  守護神は椅子の背に手をかけて、Aさんに語りかける。  例:「私は誰々���んの守護神である。私はあなたが孤独で落ち込んだとき、いつもあなたの側にいて、あなたを見守ります。私はあなたにどんなことが起こっても、あなたを守ります。」  椅子に座り、Aさんに戻り、気持ちを言う。  気持ちが満たされれば終了。そうでなければ、続ける。
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以上
参考文献 1.宗像恒次、小森まり子、橋本佐由理:ヘルスカウンセリングテキストVol.1  2000年4月、  (3. ヘルスカウンセリングを支える4つの基本姿勢 p.54)  (4-3 癒し技法の応用 p.149)
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幼児期の記憶の重要性
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2019年7月号
2019年7月6日
幼児期の記憶の重要性
もうじき夏本番、子どもたちには楽しい夏休みがやってきます。私たちも元気に頑張りましょう。
☆☆ー幼児期の記憶の重要性ー☆☆
”三つ子の魂百まで” ”三つ子の魂百まで”のことわざ通り、人は人生のごく初期の段階で、性格や行動の基礎となる一定の傾向を身につけます。「信頼していいものと信頼してはいけないものを学ぶ」、「自信がある、自信がないという感覚を身につける」、「性について自己認識する」、「外向的か内向的かの傾向が生まれる」、「積極的か引っ込み思案かの態度も発達する」等々。そして、その後の人生に大きな影響を及ぼす感性的基盤を形成します。  私達は、生まれ落ちたその日から、毎日毎晩、親や周りから暗示を聞かされて育ち、その後の人生に大きく影響する暗示を受け始めます。幼児期に身につけた振る舞いや生活態度の多くは生涯の習慣となります。それがその人の観念・信念・信条の基盤となります。観念や信念は私達が生きる指針です。強い感情を伴って体験した子供時代の出来事は、それが肯定的なものであれ、否定的なものであれ、本人の習慣を作り上げます。しかし、子供時代に作られた習慣がすべて役立つというわけではありません。(3)
扁桃体記憶・海馬の記憶  人の記憶は、0~3歳は扁桃体が、それ以後は海馬が行います。扁桃体と海馬はともに大脳辺縁系に属します。  3歳までの扁桃体の記憶は、情動、すなわち感覚や感情の記憶です。3歳を過ぎてからは、情動の記憶の再生の器官として、また、出来事に対する価値評価を行う器官として働きます。価値評価とは、ある出来事が良いか悪いか、好ましいか嫌いか、近づくべきか遠ざかるべきか、報酬系か嫌悪系かなどを判断します。この扁桃体記憶は通常は想起出来ません。しかし、瞑想法の1種である胎児期退行催眠法により前頭葉への血流を低下させることにより、想起させることが出来るとされています(4)。
 海馬の記憶は、”何時、どこで、誰が、何をしたか”というエピソード記憶、物語記憶です。人が大人になってから通常思い出すのは海馬記憶のことです。 情動(2)   情動とは科学的定義はできませんが、以下の通り、行動と組み合わせて8種類に分類する考え方があります。  ①共同作業ー受容、②拒絶ー嫌悪、③破壊ー怒り、④守りー恐れ、⑤生殖ー喜び、⑥喪失ー悲しみ、⑦注視ー驚き、⑧探索ー期待。このような基本的な情動は、人種や文化的背景の違いにかかわらず、人類に共通に見られます。  あるいは、乳幼児が最初に発達させる、愛、喜び、怒り、悲しみ、恐れ、の5つを基本情動とする考え方もあります。  情動は、生き延びるための行動に必須の神経活動です。人も動物も快感や喜びを感じる有益なものには近付こうとし、不快感や怒り・恐れや悲しみを与える有害なものは、攻撃するか、または逃避して遠ざかります。好きか嫌いかでぱっと行動を起こさないと、餌を食べるチャンスを逃すかもしれないし、敵に近づきすぎて命にかかわるかもしれない。あらゆる行動の根底には情動があり、情動は、生き残るために行動を一定の方向へ誘導する役割を果たしています。  生きていくために、どう行動すべきかという観点から、対象物を評価している神経活動が情動なのです。したがって、情動は「生物学的価値評価」ということができます。  「生物学的価値評価」は、ただちに行動に結びつきます。必要な行動がすぐにとれるように、自律神経や内分泌系にも信号が行きます。例えば、敵を見た場合には、胃や腸に行っていた血流が、筋肉にまわるように指令が下り、すぐに戦闘態勢に入ることができます。ノルアドレナリンは「怒り」(攻撃活動)に、アドレナリンは「恐れ、不安」(逃避行動)の情動が発現したときに分泌される傾向があり、とくに情動の強度が強いときには、アドレナリンが分泌されます。
大脳辺縁系  第1図 大脳辺縁系を御覧ください。大脳辺縁系は大脳皮質の下、間脳(視床と視床下部)の上に位置し、情動を作り出す働きをしています。大脳辺縁系は、次の部分から構成されています:視床前部、視床下部、扁桃体、海馬、帯状回、脳弓、中隔、それに前頭葉の眼窩皮質と側坐核。    大脳辺縁系は、大脳皮質、間脳(視床と視床下部)、脳幹の三要素間のインターフェースとして、情動を始めとする高次脳機能に重要な役割を果たしています。   大脳辺縁系は何をしているか(2)  サルはふつう、おもちゃのヘビを見ると飛び上がって逃げます。ところが扁桃体を中心とした大脳辺縁系を破壊すると、ヘビを恐れないどころか、口に入れて噛んだりします。このサルは、ヘビと認識する感覚刺激と、逃げるという情動反応を結びつける事ができないために、異常な行動を起こしたと考えられます。視覚刺激からヘビと識別はできても、ヘビが危険なものかどうかの評価ができなかったのです。つまり、大脳辺縁系が、大脳皮質から入力された感覚情報に、情動的意味付けを与え、それを行動に移すプログラムが存在する視床下部などに指令を出す、という役割を担っているわけです。このサルには大脳辺縁系が破壊されていました。扁桃体だけを破壊しても同じことが起こ��ことから、大脳辺縁系の中で生物学的価値評価についての中心的な機能を担っているのは、扁桃体であることが分かっています。  情動が表出されるときには、まず大脳皮質からの情報を受けて、大脳辺縁系から指令が出され、視床下部でその指令に相当するプログラムが選択され実行されます。そのプログラムに基づいて情動表出が起こります。    ここまで述べてきた研究は、サルなどの動物実験によるものでした。ヒトの扁桃体も、動物の扁桃体と同じ機能を担っていることが、明らかとなっています。
 また、前頭葉はどのような機能を担っているのでしょうか。研究によって、前頭葉は、目的の行動に向かって動機を持続し、困難な状況を克服して報酬を獲得する過程を担っていることが分かってきました。また、前頭葉の眼窩皮質は、複雑な社会生活に適応するため、現在と将来の状況を、以前の情動的体験から推論し、判断することに重要な役割を果たしていることが分かってきました。眼窩皮質は、扁桃体や視床下部という情動をつかさどる領域と密接にかかわりながら、本能・情動と理性を統合して、個人的にも社会的にも適切な行動が何であるかを判断することに与っていると思われます。
脳の仕組み、右脳と左脳(3)  左脳は論理的、分析的、合理的です。現実志向で言語活動を制御します。弁護士、法律家、科学者などの職業は左脳をよく使うタイプです。  他方、右脳は非合理的、直感的です。想像力、空間の感覚、音楽、芸術、記号体系などは右脳の機能です。右脳は並列処理をしていて、多様な情報を一度に処理するのに向いています。ひらめきや直感を生みます。  右脳を使うのは、イメージを見たり、出来事を思い出したりしているとき、物体と空間の関係、部分と全体の関係を把握するとき、比喩を理解するとき、夢を見るとき、アイディアを生み出して組み合わせるときなどです。
複雑で説明しにくい事があると私たちは説明の補足として身振り手振りでも伝えようとしますが、それは絵を描こうとする右脳の作用です。 芸術家、音楽家、詩人は右脳的特性が求められる職業であると言えます。 顕在意識と潜在意識  人の脳の機能には、”考える機能”の顕在意識と”感じる機能”の潜在意識があります。意識全体に占める割合は、顕在意識は10%、潜在意識は90%です。我々は不断、顕在意識しか使っていないので、潜在意識をうまく使えるようになれば、我々の情報処理能力は飛躍的に高まることになります。 脳の両半球、または意識の両側面を最大限に活用するためには、カウンセリング技法の一つである”催眠”の技法を使います。 顕在意識  顕在意識とは、気づいていること。顕在意識は、情報を感覚器官から受け取り思考し判断し決定します。顕在意識は入ってきた情報を細かな部分に分割し、分析し、比較し、評価し、理屈づけて一つの応答を送信するからです。身体の随意的運きも顕在意識により管理されています。顕在意識が使った情報は潜在意識に保存保管され、将来の行動や意思決定の参考にされます。 顕在意識の機能のまとめ 1.「気づき、気づいている」が顕在意識の特徴である。 2.顕在意識は「現実」と接している。触覚・味覚・視覚・聴覚・嗅覚などすべての感覚器官は、顕在意識に情報を伝達する。自分の身体やそれを取り巻く環境という現実は、感覚器官を通じて本人に知覚される。 3.顕在意識は情報を収集する。あらゆる情報は感覚器官を通じて観察された後収集される。 4.顕在意識は情報を選別する。感覚器官を通じて観察、収集された情報は、将来の必要に応じて検索できるように選別処理される。このプロセスが「私たちが考える」ということである。 5.顕在意識は可能性を探る。顕在意識は起こり得る出来事を探り、その場にふさわしい選択肢を用意する。 6.顕在意識は判断し、決定する。可能性を探り選択肢を用意した顕在意識は、さらに判断しその判断に基づいた行動を決定する。 7.顕在意識は潜在意識に情報を提供する。選択した行動の結果は、顕在意識から潜在意識に送られ保管される。 8.顕在意識は潜在意識内に保管された情報を検索する。感覚器官がその必要性を伝えると、顕在意識は潜在意識に保管された記憶から適切な情報を検索する。 9.顕在意識の機能は、主に脳の左半球(左脳)にある。 10.顕在意識は、帰納法と演繹法の両方の思考法を使う。
潜在意識  潜在意識には、過去の感覚的な印象記憶がすべて保管されています。潜在意識を構成するのは、脳、脊髄、体のすみずみまでを結ぶ神経網です。あらゆる動作、思考、感情に関わる情報は、神経網を通して体の各部まで届きます。体の動きはすべて管理されています。非随意的な内臓機能、たとえば消化、循環、生殖、まばたきなどがここに含まれます。潜在意識は内臓や骨や体の細胞を一つ残らず管理して健康を保っています。反射的に繰り返している習慣や体質までも潜在意識の管理下にあります。  潜在意識は、顕在意識が直接管理してはいない身体のあらゆる機能を管理しています。状況によっては、顕在意識を押しのけて優勢になります。たとえば、顕在意識では「話そう」としているのに潜在意識がそれを邪魔すると言葉がつかえてどもったりする。  あなたが目覚めていようと眠っていようと、潜在意識は昼夜を問わず働いています。睡眠中は潜在意識が優勢になりますが、それ以外のときも休んでいません。潜在意識には過去の出来事がすべて記憶されています。良いことも悪いことも、また出来事にまつわる感情や周囲の状況も記憶されています。 潜在意識は問題を解決する  睡眠中の夢が潜在意識の産物であることはよく知られています。ある種の夢は、人生を改善する解決策を模索する潜在意識の試みです。実際、潜在意識には問題を解決する能力があります。「その件については一晩眠って考えてみるよ」、と言うと、潜在意識は「その件」について本当に一晩考えるのです。翌朝目覚めると、全く新しいアプローチや解決策が見つかっていたりします。インスピレーションやひらめきも潜在意識の産物です。夢をヒントに天才的な発見や発明をした例は珍しくありません。これも潜在意識が前日の課題を睡眠中に処理した結果であると言えます。偉大な発見、思想、洞察などは、ゆったりとリラックスした状態にあるときの潜在意識の活動から生まれ出るのです。
潜在意識はコンピュータ付きオートメーション機械  潜在意識はコンピュータ付きオートメーション機械のようなものです。ゴールや答えを設定すると、そこに向かって直進します。潜在意識には独自の感情や意見が無い。すでに記憶されている情報を参考に応答します。顕在意識が送り込む提案やアイデアをそのまま受け入れ、それを元に行動します。独自の判断はしません。また、現実と想像を区別できません。潜在意識の想像の力は顕在意識の意志の力よりも優先します。酸っぱいレモンを想像しただけで、つばがわくのはそのためです。  催眠では、潜在意識のこのような性質を利用します。催眠の誘導によってリラックスしているときが、もっとも潜在意識に近づきやすいときです。潜在意識はコンピュータ付きオートメーション機械のようなものであるから、あなたの習慣や生き方を変えたければ、新しいプログラムを入れてあげればよいのです。 潜在意識の思考方法  顕在意識の思考が帰納法と演繹法の二通りであるのに対し、潜在意識は帰納的な思考しかできない。特殊な事例から一般的は法則へと向かう思考です。顕在意識が何年もかけて蓄積した体験・意見・結論などから情報を引き出します。そしてその情報に基づいて決定し行動するのです。 脳波(3) (7)(第1表を参照のこと。) ベータ波:覚醒時の脳波。身体も顕在意識も働いている状態。目覚めて活動しているほとんどの時間は、このベータ波の状態です。ベータ波状態の平均は21Hzで、苦痛、怒り、恐怖、歓喜などの感情が高まった状態では30Hzまで上がります。ベータ状態では、私たちは時間と空間の枠内で生きていることを感じます。 アルファ波:創造性を高め、身体的なリラックスを誘う脳波。催眠及び深い瞑想状態を作り出します。学習に効果的な状態。選択した対象に意識を集中出来る。アルファ状態は、頭を活発に働かせているベータ状態と、睡眠時のシータ波・デルタ波状態との間の中間の状態にあると言えます。 アルファ波には、2種類あります。一つは速いアルファ波(アルファ2波、10~13Hz)で、もう一つは遅いアルファ波(アルファ1波、8~10Hz)です。アルファ2波のときは爽快でスッキリしたクールな感じで、腹筋呼吸法などにより、セロトニン神経を活性化しているときに出ます。アルファ1波のときはリラックス感、安らぎの感覚で、閉眼時や眠気に誘われたときに出ます。(7) シーター波:睡眠と覚醒の境目。人は皆朝と夜、少なくとも一日に2回シーター波状態を通過します。筋肉活動、心拍数、血圧は制御されています。想像力を使う職業に従事している人、科学者、発明家、作家、詩人などはシーター波状態で活動しています。まどろみ、空想している状態です。 デルタ波:熟睡時。脳内の活動はシーター波より更に深く休息します。夢を見ている。休息し、新たな細胞が生産されるとき。睡眠不足は、デルタ波状態を体験していないので、心身不調の原因となります。
統覚の機制(6)  統覚の機制とは、ある経験が自分に同化して自分の生活のスタイルを作り上げていくのに適したものかどうかを見るために、あらゆる経験を前もって確かめ検討する心の作用のこと。我々は自分の経験から学ぶのではなく、それらの経験を我々の生活のスタイルに合ったものに作り直してしまいます。 プロクルステスの寝台(ギリシャ神話)  道幅の狭い峠の頂上に作られた山小屋のなかに住んでいたプロクルステスという巨人についての、有名なギリシャの神話がある。この巨人は、すべての旅人を呼び入れて一緒に夕食を取り、その晩はその小屋に泊まらせた。プロクルステスはこのお客さんたちのために悪名高いベッドを一つもっていた。もし旅人がそのベッドより短いと、この巨人はその旅人をちょうどベッドに合うくらいまで引き伸ばしてしまい、多くの場合、旅人の命を奪ってしまった。もし旅人がベッドに比べて長過ぎると、プロクルステスはかれの刀でその足を切断してしまった。  我々は、このプロクルステスが旅人を始末したのとそっくりなやり方、我々の経験を始末している。我々の「統覚の機制」は、我々のあらゆる経験を集めているベッドのようなものだ。もしある経験が、うまく我々の型に合わないと、我々はそれを引き伸ばしたり、切り落としたりして、もとの経験を歪めてしまう。言い換えれば、我々は我々の新しい経験をすでに出来上がってしまった生き方に合ったものにしてしまうのだ。ーーーそれらの経験が先行き、何かと役に立つなどということは、惜しげもなく忘れてしまってーーー。
 自分の経験から学ぼうとしないということは、きわめて人間的なものでもあるが、経験を自分の型に合ったものに引き伸ばしたり切り詰めたりするよりも、生活のスタイルをそれらの経験に合ったものにしていくように心がけるほうが、はるかに良いものなのである。すなわち、次の2つの方式の中、客観方式を選択すべきなのです。 プロクルステスの方式:主観方式。統覚の機制は固定してしまっている。主観的人間は、現実はこうあるべきだという前もって出来上がっている考えに合わせて、現実をへし曲げようとする。 客観方式:新しい経験を取り入れて生活のスタイルを拡げていこうとする。統覚の機制が弾力性を持っている。幸福な人間は、自分の人生の型を拡げて現実に直面しようとする。  本当の幸福は、人間の手の届くところにあります。あらゆる興味のある仕事に我々の統覚の機制を拡げていくことの中にあります。統覚の機制に弾力性があるならば、それだけ経験はバラエティーに富み、かつ意味のあるものになってくるでしょう。臆病者は彼らの統覚の機制を、ちっぽけな興味、ー自分の活動を制限することで安全が保証されるように見えるちっぽけな興味ー、に狭めてしまうのです。
自己イメージ脚本(自己イメージスクリプト)  自己イメージ脚本とは、感覚情報(視覚、聴覚、嗅覚、触覚、体性感覚など)と感情情報(怖い、恐ろしい、悲しい、辛い、楽しい、嬉しいなど)、及びそれらに基づく行動情報、この三つからなる自分のイメージに関する物語のことです。 スキーマ  スキーマとは��概要、大意、図解、略図などが元の意味です。心理学でスキーマとは、「人は物語を理解したり記憶したりするとき、自分の持っている既存の知識や過去の経験から期待される方向に合致するように、物語を再構成する。」という意味で使われます。  自己イメージ脚本もスキーマも、先に述べた「プロクルステスの統覚の機制」と同じことを表現したものと言えます。すなわち、『人は現実をありのままに見るのではない。自分の過去の体験・経験に基づいて、「こうあってほしい、こうあるべきだ」と現実を編集してねじ曲げて見る。人は現実を無色透明の眼鏡ではなく、自分の経験・体験という色眼鏡をかけて見るのです。』                                                                                            以上 参考文献 (1)フロイド・E・ブルーム他著、中村克樹、久保田 競 監訳; 新脳の探検、上、下、第1章 脳・神経系への招待、第8章 情動、第9章 ヒトの記憶、講談社ブルーバックス (2)井原康夫編著:脳はどこまでわかったか、第3章、第8章、朝日選書771、2005年、朝日新聞社、 (3) A.M.クラズナー著、小林加奈子訳:クラズナー博士のあなたにもできるヒプノセラピー、 (株)ヴォイス (4)宗像恒次:SAT療法、P32、金子書房 (6)W.B.ウルフ著、周郷 博訳:どうしたら幸福になれるか、上、下、 岩波新書409 (7)有田秀穂:セロトニン欠乏脳、キレる脳・鬱の脳をきたえ直す、生活人新書、NHK出版093 第1表 脳波
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人は、何故間違うのか
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2019年5月 号
2019年5月11日
人は、何故間違うのか
 私たちは、乳幼児期~少年期にかけての生育環境で、両親や学校の先生など重要な他者との交わりを通して、信念や観念を形成し、大人になってからも、それをずっと持ち続けようとする傾向があります。時代が変われば、それが周りの環境と合わなくなり、いろいろと矛盾を生むことになります。    ですから、自分が幼少年期に身につけた信念や観念を絶対のものとしないで、相対的なものと受け止め、柔軟に対応していくことが求められます。このことは、今日、時代の変化のスピードが非常に早くなっているので、大変重要になっています。
 しかし、時代がどう変わっても、人間として変わることがない、”人の生きるべき道”というものがあります。今回はその観点から、「人は何故間違うのか」を、私の76年の人生体験から考えてみました。思いつくままに書きましたので、体系的ではありませんが、この中で1項目でも「ああ、なるほど、そうだなあ。」と思い当たる点があれば幸いです。
人は、人生行路で何故間違うのだろう。
 1.自分で自分をコントロールできない人、自分の身の回りの事を自分でできない人は駄目である。  2.労働。いくら金持ちだから、財産があるからといって、自分で汗をかいて働かない人は駄目である。  3.自己を直視して、謙虚であれ。謙虚でない人、上から目線で周りの人を見下す人は駄目である。  4.礼節を忘れないこと。ありがとうの気持ちを常に持ち続けよう。  5.素直に人の忠告を聞けない人は駄目である。  6.こだわり。重箱の隅を突付くような些細なことにかかずらって生きてはならない。
 7.自分の間違いと誤りには、全然気づかずにいて、これでいいのだと思い込んでいる、とんでもないあきれた人  がいる。   8.自分は絶対に正しい、と思い込んでいる人がいる。それこそ”生意気な人”である。  9.自分には能力があると思い込んで、自分の能力を過信してはならない。  10.財産あるからと言って、自分の財産を誇ってはならない。  11.自分の学歴を誇ってはならない。学歴などは過去の遺物に過ぎない。  12.自分の社会的地位を誇ってはならない。それはかりそめのものだから。
ありのままの自分で良い。  1.”私は私”、私の持って生まれた資質に従って生きる。他人と比較し勝とうと競争などしない。無理しない。自然体で生きる。
過去の想いにこだわらない。  1.これまで生きてきた過去の様々な思い、記憶、失敗や成功もこだわらない。  2.過去のことは全て、もう過ぎ去ったのである。  3.まなこを現在と近い将来に向けて、現実点検をし、真剣に生きる。人生、”今”が真剣勝負だ。
生活を正す。  1.自分の生活を正す。1日をやるべきことをやる。やってはいけないことはやらない。  2.怠���ない。  3.正しい方向に向かって進む。
本当の自信  1.本当の自信はどこから来るか。  2.嘘をつかず、正直に生きることに伴って、ついて来る。  3.自分を良く見せようとして、あるいは自分の利益を図ろうとして、嘘をついてはならない。
自己教育  1.教育って、学校卒業したら、終わり?  2.とんでもない、一生涯死ぬまで教育だ。  3.自己を訓練し、自分の能力を高める努力は、一生続けないといけない。   生物  1.自然界のあらゆる生き物は、自分の子孫を残そう、増やそうと必死で生きている。だから、命あるものを大切にしよう。我が身に引き比べ生き物を殺してはならない。生き物に溢れた星、奇跡の星、地球の”自然環境”を守りましょう。
以上
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2019年5月のご挨拶ーうつ病ー
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2019年5月号
2019年5月4日
うつ病
 風薫る5月となりました。暑からず寒からず一年中で一番過ごしやすい季節ですね。桜や椿のあと、ツツジの花が見事に咲いています。
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庭のアイリス
 しかし、5月は、大学生の5月病など、若者が心の病にかかりやすい季節でもあります。心の病の代表格であるうつ病は、患者に過重なストレスが長期間にわたり継続してかかり、自分では問題を解決できないものと主観的に思い込んでしまうところにあります。   健康人であっても抑うつ気分になります。同じ抑うつ気分でも、健康人とうつ病患者とでは、どのような違いがあるのでしょうか。違いはその重傷度にあります。健康人の場合の抑うつ気分は、自殺を考えるほど、あるいは日常の家庭や職場での生活に支障を生じるほど重篤ではありません。また、その抑うつ気分は一過性であって、職場では憂うつであっても家に帰れば、あるいは一晩寝て翌日になれば何かを楽しむことが出来るというものです。     うつ病患者のそれは、日常生活に支障が生じ、時には自殺を考えて実行してしまうほど重篤です。うつ病患者は抑うつ気分を、「心が凍り付いたような絶対的なマイナスの気分、地獄のような苦しみ」、と表現しています。  うつ病の生涯有病率は5~10%と高く、きわめてありふれた病気です。男性より女性のほうが発症率は高く、平均的発症年齢は40歳ぐらいと言われていますが、青年期にも小さなピークがあります。  うつ病は命に関わることもある重大な病気です。その点で、「うつ病は心の風邪である」というのは、間違っています。
 症状  うつ病とはどのような病気でしょうか。次のような症状が特徴的です。 必須の症状 ①抑うつ気分。毎日一日中、気分の落ち込みが2週間以上続く。 ②興味・喜びの喪失。毎日一日中、何事にも興味が持てず、楽しいはずのことが楽しめない。このような状態が2週間以上続く。  その他の症状 ③2週間以上、よく眠れていない。 ④食欲が落ちて体重が減少する。(逆に、食欲が亢進して体重が増加する。) ⑤疲れやすい。ほんの少し働いただけで、2日間ぐらい寝込む。 ⑥自責感。自分は駄目な人間だ、皆なに迷惑をかけているなど自分を責める。 ⑦思考力、集中力の低下。いつもは普通に決められる事が決められない。 ⑧生きていてもしかたがないと思う。 ⑨動作が緩慢。動きや反応が遅くなる。
精神科医 加藤忠史さんはうつ病診断基準を次のように述べています(参考文献(1)NHKテレビテキスト「きょうの健康2015年11月号」うつ病 P50。) 1.『必須①、必須②のうち、どちらかが必ずある』 2.『必須①から⑨迄のうち、5項目以上該当する』 3.『これら症状が毎日一日中、2週間以上にわたって続く』
 これら三条件が当てはまる場合、うつ病と診断されます。あなたは如何ですか?    栄養バランスの良い毎日の食事、適度な運動、仕事以外に楽しめる趣味、気晴らしを持つなど、 心の健康に日頃から留意しましょう。
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認知療法(認知行動療法とも言う)
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2019年4月 号
2019年4月13日
認知療法(認知行動療法とも言う)
はじめに
   認知療法は、米国の精神科医アーロン・T・ベック博士が初めて提唱し、その効果を実証した心理療法です。1980年代半ばから注目され、うつ病だけでなく、不安障害、パーソナリティ障害、双極性障害、統合失調症など、多くの精神疾患の治療と再発の予防に効果的であることが実証されて、現在では、世界の標準的な心理療法となっています。  日本では2010年に、認知療法がうつ病の治療法の一つとして認められ、医療保険が使えるようになりました。これにより、薬物療法が中心だった我が国の精神医療の変革が期待できるようになりました。数ある心理療法の中で、医療保険が使えるのは、唯一、認知療法だけです。  認知療法を一言で説明せよ、と言われましたならば、次のように言えます。 「私たちは、現実を客観的に見ているようで、実際は自分なりの思い込みで見ているところが沢山ある。現実に起きたことに自分なりの解釈で対応しようとするため、現実とのズレが生じます。それで問題を解決することができない。それで、もう一度可能な範囲で客観的に現実を見つめ直し、問題に対処したり解決したりする心理療法。」  認知療法は、認知の再構成法であるとも言えます。以下に認知療法の3つのキーワードを挙げます。 認知:認知とは、ものの受け取り方や考え方のこと。 自動思考:比較的表層的なもので、ある体験をしたときに、瞬間的に頭の中を流れる思考やイメージのこと。 スキーマ:自動思考の基礎となっている、その人なりのこころのクセのこと。その人が生まれながらの素質と環境の要因の影響を受けながら、それまでの体験を通して形作られてきた個人的確信でその人のこころの規則となって、考え方や行動をコントロールしているもの。その人がずっと持ち続けている基本的人生観や人間観のこと。
ここでは紙面の都合から、認知療法の実践の中核である”非機能的思考記録表”の使い方を説明します。”非機能的思考記録表”は最終頁に添付してあります。
非機能的思考記録表(コラム、思考バランスシート)の記入方法 第1欄 出来事が起きた状況 第2欄 その時の気分・感情、及び行動 第3欄 その時の自動思考  自動思考を裏付ける根拠、自動思考と矛盾する反証、を考えることで現実に目を向けるのを助ける。 第4欄それに代わる適応的思考  視野を広げたバランスの良い別の考え方 第5欄 最終的な気分と考え方、の変化 第6欄 今後の課題
第1欄 出来事が起きた状況  気持ちが動揺したり、つらくなったりしたときの状況。なるべく具体的に書く。どこで、何が、誰が、誰が何を言ったのか、どのような順序で事は進んだのか。  気なっていること、最近のこと。一区切りの時間(slice of time)を選び、認知と行動の修正を図る。 認知療法は、具体的な出来事を取り上げることで、考え方の特徴や偏り、解決すべき問題を明らか��していく方法です。今いるレベルから出発して、具体的な出来事をもとに考えます。 第2欄 その時の気分・感情、行動  そのときに感じた気分・感情、及びそのときに取った行動。気分は一つの言葉で表現できるもの。感情の強さを0~100%で表し、物事をゼロか百かではなく、段階的に考えるようにします。 第3欄 自動思考  出来事が生じたときに感じた気分と、その気分のときに頭に浮かんだ考えやイメージ。自動思考の中味を、主語(私、あなた、上司の誰々)を必ず入れて文章化し、自動思考の文章は言い切り形にします。  うつ状態の時、否定的認知の三徴が認められます(自分、周囲の人、将来、の三領域に対して悲観的な見方をする)。文章に主語を入れることにより、どの領域の考え方が偏ってかがわかりやすくなります。  自動思考を裏付ける根拠と、その反対に、自動思考と矛盾する反証を考えます。こうして現実に目を向けるのを助けます。  自動思考の確信度 100%・・・完全に信じる。  0%・・・全く信じない  自動思考がいくつも浮かぶ場合は、一つか二つにポイントを絞るとよいです。自動思考が思い浮かばないときは、次のように、自己、周りの他人、将来、に焦点を当てて考えてみるとよいです。 〇自己・・・その時、自己についてどういうことを考えたか? 〇周りの他者・・・相手について、どのようなことを考えたか。他者が、自分についてどのように考えていると思ったか? 〇将来・・・これからどうなると考えているか? 自動思考をチェックする (1)思い込み・決めつけ  自分が着目していることだけに目を向け、根拠が不十分なのに、自分の考えが正しいに違いないと決めつける癖。 (2)白黒思考  曖昧な状態にあることが耐えられずに、ものごとを全て、白か黒か、良いか悪いか、0%か100%かといった極端な考え方で割り切ろうとする傾向。 (3)・・・すべきだ思考 「こうすべきだ」、「あのようにすべきではなかった」、とあれこれ思い悩む癖。「何があっても、こうしなければならない」と思うと、現実を無視して、自分の考えで自分の心を縛ってしまうので、苦しくなる。柔軟な対応をとるようにします。 (4)自己批判  良くないことが起きると、どんなことでも自分が原因だと考え、自分を責めてしまう癖。 (5)深読み  相手の気持を一方的に推測して、そうに違いないと決めつけてしまう癖。 (6)先読み  自分で将来に悲観的な予測を立ててしまう癖。    根拠・反証  根拠は、自動思考を裏付ける事実。反証は、自動思考とは逆の事実、すなわち自動思考とは矛盾するような事実です。あくまでも事実だけを書き出す。推測や解釈は入れません。 「自分の中で、あるいは今の状況で見逃している事柄はないだろうか」、と心の中でつぶやくと、冷静になって現実を見直すことができます。
第4欄 それに代わる適応的思考  自動思考に代わる柔軟な考え。”根拠”と”反証”を、”しかし”でつないだ文章を作り、「”根拠”という事実もある、しかし、”反証”という事実もある。」と書き出すと、プラスにもマイナスにも目を向けたバランスの良い考え方ができます。  自動思考が事実ではないと、最初から決めつけないことが大事です。 適応的思考を次の三の視点で見直し、評価する。 (1)もう一度、冷静になって考えてみよう。 (2)視点を変えて見るとどうなるだろうか。 (3)これまでの経験を振り返ってみて、なにか気づくことはないだろうか。  シナリオ法という方法があります。最良のシナリオと最悪のシナリオの両方を考えてみると、バランスのちょうど良い、現実に沿ったシナリオが見えてくる場合があります。代わりの考え、適応的な思考を書き出した後は、その新しい考えをどの程度信じているかを、0~100%の段階で評価する訓練をします。 認知の偏りを修正するためのヒント (1)思い込み・決めつけ そう考える根拠はどこにあるのだろう?、と具体的な証拠を考えて見る。 (2)白黒思考 できていることと、できていないことの両方を列挙し、両方に点数をつけ、連続的に考える練習をする。 (3)べき思考 「こうすべきだ」、「あのようにすべきではなかった」、という考えに対しては、「他人が同じ立場に立っていたら、私はどのように他人にアドバイスするだろう?」、「親しい友人は私にどのように言ってくれるだろう?」、と視点を切り替える練習をします。 (4)自己批判 何でも自分の責任だ、という考えに対しては、以下のことを具体的に書き出す。 ・誰にどのような責任があるのか? ・何を根拠に責任を決めるのか、の判断基準。 (5)深読み  相手の気持を一方的に推測した考えに対しては、直接、相手に確認してみる。 (6)先読み  自分で悲観的な予測を立ててしまっているときには、失敗する要因について、現実的に検討して、具体的な対応策を考えるようにする。  もし、予想していたような悪い結果が起きる可能性が高い場合は、「それはどの程度重要か」、「もし、それが本当だとして、どんなひどいことが起きるのだろう?」、「違う行動を取れば、何か困ったことが起きるのだろうか?」、と考えてみましょう。 このようにして、視野を広げたバランスの良い別の考え方を見出します。 第5欄 最終的な気分と考え方、の変化  適応的思考を取った後、気分がどう変化したかを書きます。新しく生まれた前向きの気分、気持ちが楽になるなど。気分にあまり変化が見られない場合には、適応的思考の別の考え方や見方ができないか、 と考えてみます。 第6欄 今後の課題  この段階で、今後どう取り組めばよいか、課題が見えてくることがあります。それを書き出します。    まとめ  適応的思考では、なにか正しいことを一つ見つけるということではなく、現実に目を向けながら、いろいろな可能性を考えるということが大事になります。私たちは、何か気持ちがひどく動揺するような出来事に出会った時、すぐに自分なりの意味付けをしようとします。これは、なかば無意識的に行われることが多く、だからこそ私たちはあまり深く考えずに日常の諸問題に対して判断を次々と下すことができます。しかし、そのように瞬時に判断するだけに、思い込みや勘違いで間違った判断をすることもあるわけです。逆に、極端なように思える判断が正しい場合もあります。  注意しなければならないことは、自動思考が正しいか間違っているかを決めるのではなく、自動思考の考えとその反対の考えと両方の可能性を考え、具体的な問題があれば、それに対処するように考えていく、ということが大事なのです。つまり、最初の考えから、ちょっと距離を置いて、現実に目を向けるようにするということです。
参考文献 大野 裕:はじめての認知療法、こころが晴れるメソッド入門、講談社現代新書、2012年
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