Tumgik
#うちのメイドに性癖歪められました
wangayaoi · 1 year
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Uchi no Maid ni Seiheki Yugameraremashita // I Got Weird Thoughts Because Of My Maid
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ayanemutuki · 5 years
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光の庭
!Fire Emblem Heros fan fiction!
・カミュとプリシラの話。名も無き森の夢語りの続き。
・独自解釈・ネタバレ・異世界交流を含みます。カップリング要素一切皆無。
Image song:光の庭(D)
00.
ある時、美しい真白の城に美しい姫君が居た。美しい姫君は、一人の王子様に恋をしていた。幼い頃に、出会った異国の王子様。だが、王子様は黄金郷を探しに長い長い旅に出てしまった。姫君は戻って来ない王子を慈しみ、会いたいと願った。だが、彼女の前に現れたのは、美しい悪魔だった。悪魔は言った。 「お前の願いを叶えてやろう」と。
01.
たまに愚痴りたい時もある。とかつて、この世界には居ない部下のロベルトが言っていた。王だって、王子だって――たまに不満を漏らしたい時もある。 アスク城にある酒場で、レンスターの王子はミルクを飲んでいた。 「不思議な感覚だな」 目の前に居るレンスターの王子はそう言い、椅子に座りながら此方を見ていた。 「この世界に来てから、驚きの連続だと思った。セリスの父上と母上が一緒に居て、アレスの父上と…伯母上もこの世界に居る。最初は夢だと思っていたけど、頬をつねっても、夢じゃない――本当の世界なんだなって」 「リーフ王子は、どう思いますか?」 「でも…この世界に来ていない父上と母上が来たら――僕は、どんな気持ちでいけばいいんだろうって。それが不安なんだ。フィンやナンナも、僕に気を遣ってくれているけど、僕は王の器に立つのが相応しいのかどうか、悩んでいるんだ」 リーフは王の立場であるが、王の立場に相応しいかどうかは――自分自身でも分からないのだ。幼い頃に国を追われ、若き騎士と、異国の王女と共に各地を帝国軍から逃げるように転々として来た日々。とある村でエーヴェルと言う女性に救われ、村の人達と、家族のように過ごしてきた日々。その平穏な日常が、ずっと続けばいい。その平穏が――帝国軍の襲来と共に終わった時。 自分にも見覚えがある筈だ。幼い双子の王子と王女も、立場が災いし、暗い、孤独のような日々を送ってきた。王族の頂点に立つのも、王族に生まれるのも、碌な事が起きない。それがリーフ自身が理解している事であり――黒騎士カミュの悲しみでもあった。 「貴方は貴方の道を進めばいい」 だから、自分なりの言葉を贈る事が、精一杯の類でもあった。 「王族であっても、貴方は貴方の道を進めばいいのです。誰の言葉に惑わされなくたっていい、自分の、信じる道を突き進めばいい」 それが――自分自身の答えでもあり、嘗て――自分自身が下したつらい決断でもあった。だが、目の前の王子は、 「…何だか、あなたの言葉に、救われた気がするよ…有難う、カミュ将軍」 ――救われた、か。 自分は、誰かの助けになれたのだろうか。酒場からの帰路についている最中、自分自身はその言葉に悩んでいた。 『…それでも、人は何処へ行くのでしょうか』 トルバドールの女性のプリシラから言われたその言葉は――確かに、彼の胸に響いた。人は、死んだら何処へ行く。 「…カミュ将軍、聞こえていますか?」 リーフの護衛騎士であるフィンから、ハッと我に返った自分は彼の方を見た。 「先程、リーフ様と何かお話しされていましたが…どうしましたか?」 「あ、ああ…少し、彼の悩みについて相談したりしていた」 「…そうですか、有難う御座います」 フィンからいきなり感謝され、こちらも理解がイマイチ分からなかった。何故、感謝されてしまうのだろうか。 「…私でも時、リーフ様のお力に、なれない時があるのですよ。自分自身では耐えきれない、立場故や、ナンナ様の事――そして、キュアン様とエスリン様の悩みを抱えているのですから…ですが、こちらに来てから打ち明けられる人が居て、嬉しかったと思うのですよ。だからこそ――」 「いえ、いい…此方こそ、感謝する」 自分自身でもどうすることも出来ない悩みは――リーフやフィンだけが抱えているのではない、エレブ大陸の杖使いのプリシラも心配していたと言うのなら、自分は結局。一人で悩みを抱えているのだな。と苦笑しながら。
02.
「光と闇、どちらが正しいかなんて私には分からないんですが、どちらも間違っている、どちらも正しいって言うのは、人其々なんだと思います」 モノクルをクイッと片手で正し、闇魔導の使い手である彼――カナスはそう述べた。カナスの自室の書斎は彼にとって、宝庫であろう。ナーガ神についての伝承、ギムレーに関してのレポート、ラーマン経典、正の女神アスタルテの本…探究者である彼は、異国の騎士である自分にそう述べた。 「貴方が出会ったあの闇に堕ちた暗黒皇帝ハーディン…でしたっけ、彼は元々、善良な騎士だったと聞きます。オルレアンの方々から慕われていて、草原の民達からは希望だったと聞きました…例えるなら、闇に堕ちてしまえば、後は奈落の底――私は、堕ちてしまった人達を知っています」 黒い牙の者達の事を、述べたいであろう。剣を振るう『白狼』のロイド、獰猛な凶器を振るい、戦場を大暴れする『狂犬』ライナス――彼らの事を言いたげであった。自分は「何��言わなくていい」と告げ、カナスは「有難う御座います」と申し訳無さそうに言った。 「…闇は、必ずしも負の一面、悪とは限らないと、私は思うのです。歴史に葬り去られた、真実。語られざる、英雄の物語――それは、貴方が経験していると自分自身が物語っているからこそ、歴史が証明している。そう、例えばマルス王子が」 光の英雄なら、貴方は闇の英雄でしょうか。 「…妙な例え方だな、しっくり来る」 「でしょう?」とカナスは人差し指を振った。彼が椅子に座っており、机には色々書物が積み重なっていた。「バレンシア大陸の歴史」「ギムレー経典」「アステルテ経典」「魔石と魔王」「神竜ナーガとメディウスについて」知識を欲する彼が、異界の書物を欲するのも無理はない。と我ながら思う。するとカナスは、ある一冊の本を本棚から出した。 「英雄王マルスの物語」 知識を欲する彼が、この英雄譚に興味を持つのは珍しい事だ。自分の悩み故の決断力であろうか。 「マルス王子が、皆から慕われている光の英雄ならば、貴方とハーディンは闇の英雄です。ですが、彼と貴方の闇は、断然に差があり――違うのです。暗黒皇帝と化したハーディンは、心の闇に、呑まれた英雄。そして貴方は――例えるのは少し難しいのですが、歴史の闇に葬り去られた、英雄でしょう」 ああ、納得した。あの時の自分は黒騎士ではなく、ただの旅の者であった。カミュではなく、シリウスと名乗っていた。 「史実なき戦い、影に隠れた者――闇に葬り去られた者は、私の世界でも居ます。ですが…光と闇は、バランスが成り立たなければ存在意義を見出す事が出来ない。そして、貴方は――何を見出したのでしょうか。何を――」「カミュしょーぐん!マークス様とミシェイル様が呼んでるの!」 自分とカナスが振り返ると、ピエリとラズワルドが自室のドアを開けて、自分を呼び出しに来たのだろう。ラズワルドが「だ、大事な話をされていたのですね…!」と申し訳無さそうな表情をしたが、自分は「いや、良い」と手を振った。 「では、この話はまた、後程で」 まるで自分らしくない。と言い聞かせながら――自室のドアを、閉めた。 「…行ってしまいました��」 カナスは、飛び出して行ったカミュを見つめ、ふぅ…と疲れた息を吐き出す。やはり、自分はこの世界でも探求を求めすぎている悪い癖が出てしまったようだ。 「…後で、ピエリさんとラズワルドさんに、お菓子でも贈っておきましょうか」 申し訳ない事をしてしまった表情をしたラズワルドに、お詫びの礼の品を考えておきながら、カナスは一つ、気になる事を呟いた。 「…それに、まるで彼女について話したくない素振りを、していた気がしますね…」
03.
「彼の王は泥から生まれた」 アカネイアの大陸一の弓騎士は、そう答えたという。泥から生まれた――その例えは、何処から来たのだろうか。レベッカはそう思った。 それは前、あの自分でさえも畏怖する力を持つ暗黒皇帝と相対していた時の事だ。ジョルジュやカミュが、苦虫を噛んだ表情をしていたのを忘れられない。それに、プリシラも、カミュやマークスについて余所余所しい態度をつい最近していたのも切っ掛けである。あまり他人の過去に突っ込みたくない(エリウッドや彼の御子息の有り難い御忠告である)のだが、ジョルジュと話をするタイミングが偶然にも弓を射る練習の休憩時に出来てしまったのだから。 「…ハーディンは、元々はオレルアン王の王弟だ。しかし、兄より劣る弟と言うのが災いなのか、少し心に歪があった」 ゼフィールもそうだった。彼は優秀過ぎるが故に、父親から忌み嫌われていた。とエリウッド様の御子息であるロイ様もそう仰っていたわね。とレベッカは納得の表情を浮かべた。それと同時に、遣る瀬無い感情が浮かび上がった。 「だが、アカネイアも元々は、高貴な血で建てられた国じゃない、それと同時に――神に守られし王国でもなかった。三種の神器を竜の神殿から盗み、其れを統治して出来上がった王国だった」 「こっちも、竜と人に歪な亀裂が入っていたのね」 「…人間、そう簡単に上手くいくもんじゃないがな。俺だってアカネイアの傲慢な貴族が嫌いだった。ラング将軍やエイベル将軍も、俺は死ぬほど嫌いだったが、アカネイアの為に、と何処かで逃げていた。現実逃避をしていたのかもしれない」 「こっちも大変なのね。ロイ様から、可愛らしいギネヴィア姫様が美しく成長したって言うから…もし会える機会があったら、見てみたかったなぁ」 「そうか…此方もニーナ様と出会える機会があったら、宜しく頼む」 分かった、約束するわ。とにこやかに微笑んだのだが――ジョルジュは口を開き、重たく、ある事を語る。 「――俺も、何時かはああなるだろう。と何処かで諦めていた」 「いつかは、ああなる…?」 「アカネイアの血を引く民が、他国の者達を蔑み、愚かだと嘲笑い、奴隷階級の者同士を戦わせ、動物の様な目でしか見ない剣闘士達の闘技場を見世物の様に観戦し…俺はそれが嫌いだった。だが、俺では何とかならなかった。ニーナ様は、その現状を変えようと必死に頑張っていた。だから俺は彼女の手伝いをしようと考えていた。だが、俺では役不足だったと…グルニア軍と戦う時に、気付いてしまった」 「あ…ああー…黒騎士の、カミュ将軍の事かしら?」 「だが、彼でしかニーナ様の心を開く事しか出来なかったんだろうな。敵国の騎士と、我々の国の王女、相容れない関係なのに、出会ってしまった。出会わなければ良かったのか、出会ってしまったのは必然だったのだろうか。それは今の俺にとっては分からない事だった」 ジョルジュの疑問に、レベッカはある事を口にしようとしたが――開けなかった。 ――ねえ、それはもう、必然だった方が良かったのじゃないかしら。辛い事や、悲しい事、楽しい事があるけれども、出会わなければ、何かが産まれなかったんじゃないかしら。 ニニアンの事を思いながら、レベッカの拳は固く握りしめた。
04.
ニノは歌を歌っている。古い、エレブに伝わる歌である。まだ幼さが残っている魔導士の少女は、アスク城のバルコニーの冷たい夜風に吹かれながらも、用意されている椅子に座って歌を歌っていた。 それを遠回しに見ていたカミュとミシェイルは、暗夜第一王女カミラの臣下である竜騎士の少女から貰った(彼女曰く、日頃レオンやマークスと接していたからそのお礼らしい)暗夜王国産のワインをグラスに注ぐ。 「何処か、遠い国の歌のように見えた」 とカミュはそう述べた。歌は、竜と人の物語を準えた叙事詩のようであった。竜と契約した者と、美しい少女の物語。エレブ大陸に伝わる、悲しい物語でもあった。 「あの少女は、雪を義理の兄と一緒に見た事があるらしい…俺も、ろくに妹であるマリアに、其れらしい事が出来なかったな」 王の激務に追われ、妹のマリアと一緒に、遊んだり一緒にお出かけする事が出来なかったらしい。その王位が、自らの父を手をかけた代償だったとしても、マリアはミシェイルが大好きだった。大好きな兄を、慕っていたのだ。 「…私も、同じ気持ちだ」 敬愛する王の子であるユミナ様とユベロ様と、一緒に遊んだり笑ったり、泣いたりする事はごく僅かで、彼等に何か残す事が出来たのか――後悔した事もあった。 カミュはそう、述べていたがミシェイルに至っては 「貴様はバレンシアであのリゲルの王子と楽しく接していたのではないか」と答えたが、カミュは首を横に振った。 (貴様は本当に優しすぎるな。それが仇となる時があるのだがな――) ミシェイルはそう思う。マリアから見たら自分は「優しい兄」だと思うのであろう。だが、自分はそう優しい兄ではない。妹のミネルバから見たら「父親殺しの自分勝手な兄」と認識された事もあった。 ニノが歌を歌い終わり、立ち上がる。バルコニーの玄関に優しい兄であるロイドとライナス、大事な人であるジャファルが居て、ニノは駆け寄ってロイドに抱きしめる。 (兄である俺が、何をしてやれたんだろうな) ミシェイルは思い悩む――すると、カミュは笑って誤魔化した。 「だとすれば、貴方も私も同じ悩みを抱えていたのではないか。優しい兄と、王子と王女に仕える騎士が、何をやれたのだろうか」 「お前は悩んでいるのか?」 「ええ、自分は――優しすぎるのではないのか。と思い悩む事があるのです。少し、コンウォル家の令嬢と出かけた時に」 あのトルバドールの少女の事か。とミシェイルはすぐに分かった。彼女は厳格な兄と、彼に使える優しげな、柔らかな声音をした修道士の従者が居る。 「…カミュ」 「…何だ」 「――ドルーアに従った者同士、同じ悩みを抱えているが…貴様も俺も、『どうしようもない大人同士』また、飲む事があったら悩みを打ち明けようか?」 「…それは遠慮しておきます」 やはりこいつは騎士であるが故に優しすぎるな。とミシェイルはそう思いながらも、最後の一杯であるワインを飲み干した。
05.
戦場を駆ける漆黒の駿馬、まるで父上の様だと最初は、そんな感想を自分の心に抱いていた。 「…おい、貴様」 プリシラはゲストルームで暗夜王国のあのドジなメイドのフェリシアが淹れた紅茶を飲んでいる最中に、ある人物と出会った。プリシラは唇をハンカチで上手に拭き取り、後ろの方を振り返る。やはり、最近召喚されたばかりの――師子王エルトシャンの息子であり、セリスやリーフと共にユグドラルの解放戦争を戦った仲でもある…。 ――黒騎士アレス。父親譲りの剣裁きをし、戦場にその名を轟かせている聖騎士だった。 「はい、何でしょうか」 自分がそう答えると、アレスは「丁度良かった、貴様に話がある」とソファに腰掛けた。ベルクトといい、ミシェイルといい、兄と同じ融通が利かない人達と何気に縁があるのだろうか。とそう思っていると、アレスは意外なことを口にする。 「…最近、カミュについて気にしているのだな」 「えっ」プリシラはティーカップを落としそうになったのだが、アレスは「いや、忘れてくれ」とそっけなく答えた。これでは話になっていないのでは。思い切って、プリシラが思い当たる部分を考え、アレスに対してある事実を口にする。 「…貴方のお父様を、思い出しちゃったの?」 無言。どうやら図星のようだ。だが、アレスは「ああ、そうだ」と答えを口にする。プリシラは「やっぱり、そうなんですね」とふふっと笑う。早速だから、彼もお茶に誘ってしまおう。と、隣に居たジョーカーに、紅茶を頼んだ。 「エルトシャン殿下と、カミュ将軍は無茶をし過ぎなんだと思います」 毎回、シグルドとミシェイルが彼等を抱えて私やセーラさんの所に駆けつけて杖の治療を受けてしまうんです。と口にする。 「父上が、シグルド…様と本当に親友だったのか」やはり彼は敵討ちのシグルドに対して敬語をつけるかどうか、まだ迷っているみたいだった。 「で、カミュがミシェイルに抱えられているのは…どんな関係なんだ?歴史書だと、ドルーア側に就いたマケドニアとグルニアの総帥だったと聞いているが」 「…どんな関係、ですか」 確か、その時カミュの事を話していたミシェイルは、友人と言うか、親友とは言い難い…所謂、共犯者?の様な態度をしていた。 「ええっと…一緒に戦った、戦友?」 上手く誤魔化しておく事にした。彼等に首を突っ込むと、余計事態が悪化してしまう。 「そうか」とアレスは納得した表情をした。 「正直、思う。俺はずっと復讐の事を考えていたが…実は、父上の背中を追っていただけだろうな。と今は思ってる」 プリシラは、何も口にしない。アレスの話を、ただ聞いているだけだ。 「…父上は、立派な騎士だったと、母上から聞かされていた。高潔で、誇り高く、優しい騎士だったと聞いていた。俺はそんな父上に憧れていた」 だが、父上が死んだ時は――全てが変わった。とアレスは何処か暗い表情で語る。 「…そうですか、誇り高い黒騎士さんでも、弱音を吐く事はあるんですね」とプリシラは、ちょっと皮肉を込めた言葉を吐き出した。 「騎士である彼等は、誰かを守る為に戦っているんです。貴方のお父様やシグルド殿下、セリス様に、エリウッド公…それに、カミュ将軍や、ミネルバ王女も、前線で戦っている。人はいつか死にます…ですが、その何かを、また次の誰かが受け継いでいるのでしょう」 アレスは「そうか」と口にすると、ソファを棚代わりにして置いているミストルティンを構える。 「…この剣は、父上が俺を見守っている証だったんだな」 プリシラは、そんな彼を見て――ゆっくりと微笑んだ。 「私も貴方も、似たような悩みを抱えているんですね。だったら、一緒にお話ししましょうか」
「んで、俺が弓兵に狙われている若を守る為に、颯爽と弓兵を背後から攻撃して、若を助けたんですよ!」 「成程…今度、ミカヤが狙われた時にはその戦法を組み込む事も考えてみるか」 「じゃあ弓兵はあたしに任せるね!マシューは魔導士をお願い!」 「いやいやいや、俺は若様命だからな!じゃあ魔導士はガイア、お前に任せるぜ!レベッカー、期待してるぜー」 「何で俺!?おい、アズ…ラズワルド、笑いを堪えるな!」 ハハハ…と、食堂で弾んでいるマシュー達の姿を見て、ルーテは考える。プリシラがカミュについて気にしている。つまり、プリシラはカミュを見て何かを思い出した可能性は高い。だとしたら、カミュと関わりのある人物を探ってみる事にした。ジョルジュ、リンダ、ミシェイル、ミネルバ、マリア、パオラ、カチュア、エスト、ベルクト、アルム…思い当たる節が見当たらない。だとすれば、まだ可能性がある筈だ。此処はプリシラに尋ねるしか方法は無いだろう。ルーテが心の中でえいえいおー!と誓った途端に、カミュがミシェイルと一緒に、食堂に入って行った。 「いっつも行動しているのは、お友達なのかしら?」とラーチェルが困惑している表情をしていた。何時だったか、覚えていない。ふと、彼等の会話が聞き取れた。 「…で、最近その御令嬢が貴様を気にしていると?」 「ああ、そうだが……恐らくは、あの一件で」「そうか」 (つまり) 「一緒に出掛けた時に、彼女の言葉が…うん…」 (プリシラさんと出掛けた――つまり、彼女の方程式に考えると、ピクニックか何処かに行ってきたのでしょう。そして、彼女の言葉を考えると――やはり、カミュ将軍の過去に何か関係が?) ルーテがその光景を見ていると――後ろからカナスが「何をやっているんですか?」と話しかけてきた。 「いえ、人間観察です」 「人間観察って…ああ、カミュ将軍の事ですか」とカナスは、何か納得した表情で見据えた。 「多分、彼等については、放っておいたほうがいいと思います」 「どうしてですか?私は非常に気になるのです」 するとカナスは――微笑み、こう答えた。 「あれが、彼等なりの答えなのですから」 (彼等なり、ですか) 恐らくは、自分が介入しなくても、無自覚に彼の善人さが――悩みを解決してくれるのだろう。ルーテはそう思い、魔導書を持ち、立ち上がる。 「カナスさん、有難う御座いました」 ルーテが立ち去った後、一人取り残されたカナスは――ちょうど部屋に帰ろうとしていたマシューを呼び出す。 「…マシュー、少し良いですか?」 「えぇ、何だぁ?」 「私の悩みも聞いてくれませんか」「は、はあ…」 恐らく、カミュについては…勝手に誰かが、悩みを解決してくれるのだろうから。
07.
「わぁー!雪だ!」 黒い天馬に乗っている軍師ルフレの娘と名乗る少女は、降り積もる雪を見て感想を述べた。護衛にはパオラが居るが、どうやら雪と聞いて駆け付けたターナと、追っかけてやって来たであろうフロリーナも参加した。ミシェイルは不満げに竜で空を飛んでいるが――そう言えば、雪なんて久々だろう。とこの時思った。 『貴様は、雪を見たと言っていたが――何時頃だ、アンリの道か?』 『アンリの道…確か、氷竜神殿に行く最中に、だ。ミシェイルは雪の中を行くと言うのか?』 『少しあの軍師の娘とやらが雪を見たいと言っていてな…全く、あの黒い牙の少女もそうだが、少しは危機感を…』 『いえ、それは構わないと思った方がいい――こんなに降り積もる雪の中で戦った時は、氷竜神殿で竜達と戦った時以来だったな。だが、こっちの方が、まだ暖かい』 『…まだ、暖かい?』 『あの時、猛吹雪で――凍えるような息吹を感じたが、ニフルで降り積もる雪は…暖かさを感じる。死を感じられない雪だ』 出発前のカミュとのやり取りを思い出す。自分が彼女らの護衛に立候補に参加したのは、マークが自分の末っ子の妹を思い出す故か、将又他の立候補役が彼女等を任せられない故なのか(ナーシェンやヴァルター)…。だが、ミシェイルはこの雪に、確かな暖かさを感じられたのは事実だった。 「…あの、ミシェイル様?どうなされましたか?」 「いや、少し昔の事を思い出してな」 「…昔の事、ですか?」 「もし、俺と貴様、どっちがマルス王子率いるアカネイア軍を討ち取れるかとしたら――貴様はどっちを選ぶ?」 カミュは自分の忽然とした問いかけに戸惑いを隠せずに居るが、『もし仮にマルス王子を討ち果たし、そしてガーネフを倒せるか』についてを答えるとしたら。まあ、小難しい問いかけに彼は答える事が出来ないだろう――と確信した矢先。 「…ミシェイル、陛下だろう」 驚きを隠せない答えだった。何故自分がマルス王子を倒せるか?とカミュに問いかけた。しかし彼は 「騎士として死ねるのなら、それでいい」と答えるだけだった。丁度その頃は、雪がしんしんと降り続いていた。 結局は、この戦いに何も意味がないと分かっていただろうか、それとも――あの双子の未来が掛かった戦い故の、結論だろうか。 この雪には何もいい思い出がない。が、カミュは気楽に答えた。勝者と敗者の答えなのか、それとも…まあ、いい。これが終わったらカミュにさっさと暖かい酒を寄越せと訴えかけてやろう――降り積もる雪に、舌打ちをしながら。
08.
あいつの顔を見る。高慢な性格のリゲルの王子であるベルクトから見た黒騎士さんについての物語と言うのを誰かはそう言う。俺は彼ではなく、リゲルにいた頃を思い返す。叔父上と話していた時に、今と違う笑い方をしていた。何となくだが、あの時は陰りがない顔をしていた――あのティータという女性と幸せそうに、睦まじく過ごしていた。だが、今の姿は――リゲルの騎士ではなく、グルニアの黒騎士団を率いる騎士の姿だ。何処か、陰りが見えたような気がした。 「貴様からしたら、どうなんだ」「だが、彼が優れた騎士であるのは間違いないだろう」 ノディオンの騎士であるエルトシャンから見たら、自分から見たら優れた騎士である事を直ぐに見抜いた。若くして死んだ者であるが、シグルドの戦友である彼の下す判断は、流石はクロスナイツ騎士団長でありながら、ミストルティンを持つ(どうでもいいが、息子も優れた騎士であるが俺と似た性格をしている)騎士である判断であろう。 「優れた騎士でも、弱点を取られると直ぐに脆くなる」「例えば?」 エルトシャンは口ごもった。きっとあのノディオンの王女や妻の事を言いたいのだろう。自分はそう易々と言及する事は無かった。自分もリネアの事を思い返していたからだ。 「父上は、そう仰っていたのか」 「そうだ」 アレスは自分の問いかけに答え「そうか…」と悩める、思春期の少年らしさをまだ残している表情をしていた。すると会話している自分達の後ろでプリシラが絵本を持って何処かに行こうとしていた。 「おい、いったい何をしに行くつもりだ?」 「あれ、ベルクトさんに…アレスさん?珍しいですね。二人で何をしていたのですか?」 「ちょっとな…貴様こそ、何をするつもりだ?」 「ノノやミルラが絵本を読みたいって言うから、書斎から絵本を取り出してきたんです。この絵本が一番好きそうかなー…と考えてしまったんです。じゃあ、私は先を急いでますから」 それでは、失礼します。と言い、彼女は先に行ってしまった。 (分からない事だらけだ、結局は――自分は皇帝にはなれないと、何処かで感じてしまったのか。だが、あいつは…王になる器になんて持っていなかった。そう言えば、カミュも何時だったか、ある事を自虐していたな) 『私は騎士の器を持っているとは思えないのですが――王には、猶更向いていなかったのかもしれません』 (…似たもの同士、って事か) 急に用事があると言い、ベルクトが立ち去った後一人取り残されたアレスも自室に帰ろうとした瞬間、後ろから肩をポンポンと叩かれた。後ろを振り返ると――不機嫌な表情をした、従妹のナンナが居た。 嗚呼、これはまた説教のパターンか。と理解したのだが…ナンナは、意外な言葉を口にした。 「ちょっと、話があるの」
09. 「最近、プリシラと言うあのトルバドールの少女とよく話してるわね…私だけじゃ、相手にならないと思っているわけ?」 伯母上譲りの気の強さが得りなナンナの言葉に、アレスは言葉を詰まらせた。別にそう言う訳ではない、ただのお茶会仲間だ。と上手く話せば、ナンナは「…そう」と溜息を吐きながらそう言った。彼女と話をするのは久々だろうか?…いや、ナンナはいつもリーフと話をしていた。そりゃあ彼女はリーフの大事な人だから…幼い頃から一緒にいた仲だろう、仕方がないとは言え、彼女��詰め寄られては困る。「気の強いナンナ様」に言い寄られては、流石の黒騎士アレスもお手上げだろう。 「…そうだな、ナンナ。俺は今、悩んでいるんだ」 「…悩んでいる?どうしたの、らしくないわよ」 らしくない、か。そうだな。と確かに今の発言はまずかっただろうか。ふと考えると、ナンナにある事を尋ねた。 「…ナンナ、一ついいか?」 「どうかしたの?」 「…お前は、フィンの事をどう思ってる?」 えっ。まさかアレスから、フィンの事を尋ねられるとは思っていなかった。これは、答えに迷ってしまう。私はフィンのことを理解している母とは違うのだ…だが、ナンナははっきりと答えた。 「大切な人よ。私やリーフを、立派にエーヴェルと一緒に育ててくれて…エーヴェルが石化した時も、支えてくれた人」 そうか。とアレスは無表情で頷き、天井を見上げた。 …アレスと別れた後、ナンナは彼の行動に不可解を感じた。 (…でも、どうしてあんな事を。いつものアレスだったら――あれ?) そう言えばプリシラと言えば、一つ気になる事がある。プリシラは別の異界で黒騎士と言われているカミュについて詳しく調べている様子が見受けられた。アレスも、プリシラとお茶会をしていたと言う訳ではなさそうだ。じゃあ、一体何の為に?とナンナが考えるとしたら――直接カミュ本人に問い質すしか無さそうだ。 「…でも、どうしてアレスは悩んでいたのかしら…あら?そういえば、カミュ将軍と、叔父上は一緒に出撃していたから…もしかして、そのせい…?」 ナンナは、やっぱりアレスの気持ちも考えた方が良いのかしら。とぼやいた。
10. ざく、ざく、ざく。プリシラはニフルの土地を歩いていた。雪が降り積もるこの国は、雪合戦でも出来そうだ。と考える程だった。そう言えばカミュも、カナスに話をしていたらしく、自分も彼も、似た悩みを持っているのだな――と思いながら、雪がじゃりじゃりとなるこの地を足で踏みしめながら、前に――カミュと一緒に森を歩いていた事を思い出した。死んだら、魂はどこへ行くのだろうか。と問いかけていた。彼は、ニーナ王女の事を語っていた。救国の聖女。と何処かの記述ではそう記され、或いは傾国の魔女。と記されていた。他者を犠牲で成り立っている平和と言うのは、あまりにも残酷だったのだろう――ロイが語っていた『女王ギネヴィア』の物語――ゼフィールの豹変、そしてベルン動乱…竜と人が、分かり合える日は何時かは来るのだろうか。もし、そうだったとしたら…この冬景色を、竜達が見られる日が来るのかもしれない。 ふと、プリシラの足元に、誰かが居た――下を見たら、竜の少女であるファが、雪を見てキラキラと目を輝かせていた。 「ファ、雪を初めて見た!」「ふふふ、そうですね。これが雪なんですよ」 あのね、ニニアンお姉ちゃんからお話しをしてもらったの!イリアの雪はね、綺麗なんだって!と健気に話す姿は、とても楽しかった。 カミュとミシェイル、それに兄とルセアも一緒に連れて来て、ファと一緒に遊ぶのも考えたのだが――雪を見て、思った。 「カミュ将軍に――また、問いかけたい事があります」 この世界にきて、どう思ったのでしょうか。私はそれが、聞きたいです。 「…」 外でニフルの雪を見て、カミュは思う。自分は役目を果たしたからそれでいい。と何処かで思っていた。だが、バレンシアのアルムやベルクト、ティータを見て――一度は考え直した。生きると言うのは、とても残酷な事だ、だが、必死に生きていれば、結果が見えてくる事もある。と言うのも、事実だ。だが、一つだけ心残りがあるとすれば――。 「…この雪を、一度だけニーナに見せてもらいたかったな」 彼女がこの世界に来るのは、まだ遠い。
11.
真白のお姫様に王子様に会える対価というのは、人の心臓でした。人の心臓を悪魔に渡せば、お前の願いは叶えてあげる。そう、1000人の人間の心臓を私に渡せ。と。 お姫様は必死に人間の心臓を食らい続け、悪魔に献上をしました。そして残り一つの心臓を悪魔に上げれば、王子様に会える――しかし、現実は残酷でした。何故なら、残りの心臓は、王子様でしたから。 そう、お姫様は、王子様の国の民や、家族の心臓を喰らい、悪魔に献上したのです。 怒り狂った王子様は、国の民や家族を殺したお姫様にこう言ったのです。 「人殺し」と。 そうして真白のお姫様の心臓は剣で貫かれ、ドレスは真っ赤に血に染まったのです。
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館の魔女と
 ひっそりと山の中に佇む古びた館。冷んやりとした空気が立ち込める森にポツリと怪しく光るその館には、永遠に美しさを保つ魔女と、若さを食い物にする使用人たちが住んでいるという噂があった。  室内暖房で暖かくなった廊下を早歩きで歩く執事服の若者が一人。少し癖っ毛のブロンドの髪を気にしながらも、若者は歩みを緩めることはない。エメラルド色の瞳は一点をずっと見つめている。 「俊!俊はどこにいるの?」 すぐ目の前の部屋で彼の名前を呼ぶ声が聞こえた。俊はノックもせず部屋へ入る。 「ミズ・ベリー。お待たせしました」 そういって俊はにっこりと微笑む。俊の笑顔につられてミズ・ベリーは、ふふっと笑った。深い青色のドレスの端をつまみ、ミズ・ベリーは俊の側へ駆け寄った。 「あら、可愛い可愛いあたくしの俊坊や。」 そう言うとミズ・ベリーは、俊の顎のラインを華奢な指でそっとなぞる。俊は片膝をついて視線を合わせる。 「ミズ、俺はもう坊やと言われるほどそんなに子供ではありません……」 ミズ・ベリーは、無言で指を顎から髪の毛へ這わせ……そして、そっと唇に触れた。俊の少しばかり乱れた呼吸も落ち着きを取り戻したようだ。ミズ・ベリーは満足して指を離すとルージュの映える自分の口元へ手を添えた。 「今日、あなたを呼んだのは他でもないわ。俊、明日はあなたの二十二歳のお誕生日!とても素晴らしいことよ!」 「ありがとうございます。ミズ・ベリーに今年も祝福を受けるのかと思うと、もう俺は感無量です」 俊は照れたようにはにかんだ。彼女は俊の表情を眺めてから言葉をつなげる。 「だから、俊、あなたの欲しいものがあるかしら。あたくしからプレゼントをしたいと思うのだけど、何がいいかしら」 「ええ、ミズ・ベリー。俺は貴女が欲しいです。独りだった俺を拾ってくれてこんなになるまで育ててくれた。俺は貴女が欲しい」 真剣に俊は訴える。俊のずっと欲していた誕生日プレゼントは、何物にも変えられないほど、自分のことを見てくれたミズ・ベリーのことである。孤児院出の俊には長い年月をかけて育ててくれたミズ・ベリーは愛おしいほどだったのだ。  老いを、死を、衰えを知らない彼女は頰を赤くする。今まで何人もの同じようなイケメンに同じように、二十二歳の誕生日の前日に同じセリフを言われるのだ。嬉しくて嬉しくて思わず不気味なほど歪んだ笑顔になる。ただ、俊は気づいていない。この後、彼に二十二歳の誕生日は永遠にこないということは、彼女と唯一の彼女のメイドしか知らないのだから。 「俊、気持ちは嬉しいけど、あたくしはみんなと過ごすのよ。俊ばかりの特別は、他の子も嫉妬しちゃうでしょう」 「そっか……ミズ・ベリーの言うことなら我慢する。だけど、俺の誕生日だよ……一日だけ」 もし普通に暮らしていたならば全ての女性を虜にするその姿、甘い声、これらを全て独り占めにするミズ・ベリーはほくそ笑む。 「わかった。せっかくの俊の誕生日だもの。たまには俊のわがままだって聞いてあげなくちゃね」 「本当!?」 俊は目をキラキラと輝かせて子犬のように彼女に擦り寄る。 「ミズ・ベリー!俺、これからもあなたのために一生懸命がんばるよ!」 「そう。頼もしいわね……。期待しているわ」 俊の頬にそっと、唇を近づける。触れはしないギリギリで。俊はのぼせたようにして、部屋を後にした。  ミズ・ベリーはため息をつく。 「ルナ、いつものことよ。聞いていたわね」 月明かりには照らされない影の奥から、小柄なメイド服の少女が一人歩いてくる。 「はい。ご主人様」 「全く……時が経つのもはやいものね」 「ええ。でも、それも仕方のないことだと思います。ご主人様はいつも面食いな男性ばかりを連れてくるのに、二十二歳の齢を重ねてしまえば興味もなくなる。でも、そんなところもご主人様の魅力だとルナは思います。」 「それは褒められているのかしらね」 ミズ・ベリーは悲しく微笑む。ドレスのポケットから、ダイヤの散りばめられた細身のルージュを取り出していじりはじめた。 「できれば、あたくしも育てあげた子供達みんな食べてしまいたいのだけれど……そうもいかないのよね」 「悪魔の……」 「ルナ、それ以上はダメよ」 悪魔の契約なんて……ミズ・ベリーはポツリと呟く。 「まあ、それと引き換えに、あたくしもルナも永遠に若さを保っていられるのよ。背に腹は変えられないわ」 「わかっております。ご主人様」 ミズ・ベリーは窓の外を見上げた。月が雲に覆われてぼんやりとしている。彼女は視線を落として手の中におさまっている口紅をながめた。 「そうね。彼にはこのルージュをもたせてあげましょう。来世ではもっといい女性が見つかるようにね」 小柄な使用人は頷いた。手を伸ばしてルージュを受け取る 「承知しました。では準備を行いますのでお先に失礼します」 「ええ。ルナありがとう。このあとはもう一人でいいわ」 ひっそりと静まり返った部屋には館の主だけが残された。  陽気な音楽、豪華な料理、グラスで踊るワインに鼻歌を歌う、若き使用人の男たち。数十人の使用人たちが集まる大部屋では、明日の俊の誕生日のお祝いがなされていた。 「やあ、俊、一日早いけど誕生日おめでとう」 一つ年下の男がビール片手にやってくる。もう彼も、他も、みなお酒に音楽ですでに出来上がっている。 「二十二歳の誕生日は節目だってな!これからどんな大役を任せられるか楽しみだな!」 「うん。俺もミズ・ベリーのためにこれからもずっと仕え続けることができるなんで夢みたいだ!」 「まったく!羨ましい限りだぜ!さあ、祝福だ!乾杯!」 「ああ、ありがとう!乾杯!」 掛け声とともに、より一層空気は暖かく揺れる。右も左も前も後ろも、四方八方イケメンばかり。こんな楽園を知るものは館の住人以外はいない。香水のいい匂いに包まれ、活気溢れる晩餐は俊にとってもこの上ない幸せだった。  コンコンと小さくノック音がする。一番年下の男の子が扉をあけた。 「お楽しみのところ申し訳ありません。すぐ終わりますので」 扉の先には、この館唯一の女性使用人がいた。きらびやかな男性の間をかき分けてルナは俊のもとへと近づき、そっと囁いた。 「こちらをご主人様からあなたに」 「俺ですか?」 女性使用人はコクリと頷く。そして続けた。 「晩餐を抜け出して日が昇りきる前に一人でご主人様のお部屋へ伺いなさい。他のものへの挨拶は忘れずに」 「わかりました」 どこかから、野次が飛ばされる。その間に、小柄な女性使用人は忽然と消えた。  俊は盛り上がる晩餐の最中、こっそりと大部屋を抜け出した。歩きながら途中で手鏡を取り出して、髪の毛や執事服が乱れていないか確認する。胸ポケットには先ほどミズ・ベリーから直接ではないけれど、手渡されたルージュが入っていることも確認する。一瞬立ち止まって、これからミズ・ベリーと起こる甘い夜を考えた。思わず表情が緩む。 「やっと……俺の願いが叶う」 俊は呟いて息を整える。いつもより心臓の音が大きく聞こえる。ドキドキしている。ミズ・ベリーの部屋の前へたち、俊は今度こそノックをした。 「お入りなさい」 大好きなミズ・ベリーの声がした。俊は重い扉を軽々とした気持ちであけた。 「おまたせしました。ミズ・ベリー。今夜、あなたに会えること心より嬉しく思います」 「ええ。あたくしもよ、俊。さあ、まずは座りなさい」 バラの華が豪華にあしらわれた美しい青いドレスに身を纏うミズ・ベリーと向き合うようにして俊は腰掛けた。 「お誕生日おめでとう。まずは乾杯ね」 中央のテーブルに置いてあった赤ワインの入ったグラスを持ち、そっと二人で傾ける。 「ミズ・ベリー。二人きりで飲むワインはすごく美味しいですね」 「あたくしもそう思うわ」 二人で微笑みあう。俊はこれだけでもう、トロけてしまいそうな雰囲気だった。ミズ・ベリーはグラスを置いて話し始めた。 「十七年前、あのころの俊はとても小さくてかわいかったわ。でも、とても言う事を聞かなくて当時は困り果てていたわ」 「そうでした。俺はやんちゃでしたね」 「ほんとうよ。でも、今はこんなに大きくなって……。あたくしのこと、ずっと見ていてくれるかしら」 「もちろん。俺はずっと見ています。なんだろう、すごく俺、ドキドキしてて なんか苦しいくらいに、あなたのこと、好きで……」 ミズ・ベリーは立ち上がって、俊をそっと抱き寄せる。 「おかしいな、心臓がばくばくしてて上手く呼吸できないや」 「大丈夫、ゆっくり立ち上がって。ベッドへ移動しましょう」 俊を支えて彼女はゆっくりとベッドへ押し倒す。 「ごめんね、俊。もうあなたはこことは卒業よ」 「え……なんで、嫌だ。俺はベリー……あなたと……」 俊は、意識朦朧とするなか、最愛のご主人様に向かって喋り続ける。どんなにあなたが好きか、どれほど抱いてほしかったか、話しかけても話しかけても、彼女は一向に笑ってくれない。俊は息をすることさえ困難だった。 「辛いでしょう。息をするのも苦しいでしょう。だって赤ワインは毒だもの……俊。あたくしとルナには平気な赤い毒」 愛の言葉をつぶやきつづける俊には聞こえていない。泣きじゃくって……。嫌だ、嫌だと俊は動くことすらも困難になりつつある身体で訴えた。 「せっかくのイケメンが台無しよ、俊」 ミズ・ベリーはようやく笑った。それを見たのか俊は少しだけ言葉を紡ぐのをやめた。 「俊、あなたの赤が欲しいの。若い血がね。だから痛いけど我慢してね。そのあとは、ほんとにお別れなの」 そういうと、ミズ・ベリーは俊の喉元に顔を近づけそっと歯を立てた。俊の身体に生まれて初めて刻み込まれる痛さと、「お別れ」という言葉の痛さが鋭��な棘となって突き刺さった。 「いやだ、お別れ!?そんなのしたくない、俺はずっと……ずっとあなたと一緒なんだ、独りはいやだ。痛いよ……また独りぼっちなんて。俺は……もうあなたがいないと生きていけないんだ」 俊の喉元から、太く赤い線一本ベッドへ滴れる。混沌とした痛みで俊の息の漏れる音が大きくなる。ベッドが俊の赤い体液でじわりとしみを広げる。 「ごめんね。俊」 「俺を独りにしないでくれ……なんでもするからっ。俺を独りにしないで……いやだ……いちごっ!」 ミズ・ベリーはハッとした。どうして俊が名前を知っているのかと。その驚きとともに、口を離す。名前は捨てた。いや、今は関係のないこと。そして、もう血は十分だ。ドクドクとエキが流れ出る首筋にそっと接吻する。  唇が真っ赤に染まっている彼女は、息も絶え絶えな俊をベッドから抱き起こして抱える。俊の身体がベッドから離れると、ベッドはその液体を飲み込むように俊の血液を吸い取って、俊の真っ赤に染まったシャツとは対照的な真っ白になった。ミズ・ベリーは息をつく。腕の中で涙をボロボロとこぼしている俊を見ていた。  暗闇からルナがそっとやってきて、ミズ・ベリーから俊を受け取った。彼女の口元と、彼女のドレスについた俊の名残はすぅっと飛沫となって消えた。 「ご主人様、お疲れ様でした。ご休憩なさってください」 「ええ。ルナありがとう。この子はいつもの場所へ廃棄して」 小柄な使用人はそっと頷くと闇の中へ踵を返した。  身体も動かない、声も出ない、そんな俊は視界が霞む中、意識を失う直前に、涙をこぼした最愛の館の主人を見た。俊の唇は声にならない『好き』を彼女に伝えて……。  そして、彼はとあるゴミ捨て場へ廃棄された……。
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