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#本格的な爪とぎはしない
ogawa-xd · 11 months
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■サピエンス全史
もうかなり熟読しているが、少し時間ができたのでもう一度、ユヴァル・ノア・ハラリ「サピエンス全史」読み返す。至福だなぁ。
第一部 認知革命
第1章 唯一生き延びた人類種
135億年前「物理学」という物語りが始まり、38億年前「生物学」という物語りがはじまった。
7万年前、〈認知革命〉とともに歴史学がはじまった。そして1万2千年前に〈農業革命〉があり、500年前〈科学革命〉が起きた。
サピエンスは、人類のなかで唯一生き延びた種。ネコ科ヒョウ属にはヒョウもライオンもトラもいるが、人類種にはサピエンスしかいない。なぜか?
3万年前に近隣のネアンデルタール人が滅んだ具体的な理由は断定できない。しかし殺戮にせよ自然的淘汰にせよ、サピエンスの存在が関与していたことはまちがいがない。
その競争にサピエンスが勝ち残ったのは、「言語」によるものだ。
第2章 虚構が協力を可能にした
7万年ほど前に、サピエンスはその「内部構造」を変化させた。見かけこそ変わらないが、それ以降のサピエンスは認知能力(学習、記憶、意思疎通の能力)で格段に優れていた。
それ以前にアフリカを出たサピエンスはどれも成功しなかったが、それ以降の遠征は成功し、南極をのぞく世界中へくまなく進出した。
この「言葉」によるドラスティックな変革を〈認知革命〉と呼ぶ。聖書の創世記「知恵の木の実」を思わせる「言葉の獲得」だが、それ自体はたまたまサピエンスに起きた偶然の結果だった。
この認知革命が、世界の大変革につながるが、それは言葉のどんな効果によるのか。
• 存在しないものについての情報を伝達する能力
• たとえば伝説や神話、神々、宗教
• 総じて虚構、すなわち架空の事物について語る能力
実際には「虚構」は判断を誤らせる危険なものだ。だが、集団で嘘を信じることは、かぎりない力の元となった。鋭い牙や爪を持ったり、走力や筋力で勝ることより、桁違いに強大だ。
われわれはほとんど意識しないが、国もお金も人権も法律も会社も、みな虚構、擬制である。歴史の大半はどうやって膨大な数の人を納得させ、信じてもらうかという問題を軸に展開してきた。
第3章 狩猟採集民の豊かな暮らし
サピエンス20万年の歴史の19万年分、つまり95パーセントは狩猟採集のという生活形態だった。認知革命は狩猟採集の時代に起きている。
文字ももちろんなく、詳しいことはほとんどわからないが、ある程度たしかなことをあげれば、
• 農耕以前は「石器」の時代というより「木器」の時代
• 彼らは毎月毎週、あるいは毎日すべての持ち物を手で持って移動していたので、運べるのは本当に必要な所持品だけ
• 精神的、宗教的、情緒的生活は、器物や道具といった人工物の助けなしでおこなわれた
• 狩猟採集社会のもっとも大きな特徴は「多様性」
• 「群れ」と成員は一つの例外「犬」をのぞいて、すべて人だった、つまり家畜もない
• 平均的な人は、自集団以外の人を見かけたり声を聞いたりすることなく何ヶ月も過ごした。一生を通じて出会う人はせいぜい数百人程度。
• つまりサピエンスは広大な範囲にまばらに分布していた。
• 「狩猟採集」というが、一般的な「狩りをする人」のイメージよりも「採集」がメインだった
• 狩猟採集には多大な「脳」力と技能が必要で、個人レベルで見れば、その頃のサピエンスが史上もっとも秀でていた
• 一般に背が高く健康的だったが、平均寿命は30〜40歳。それは子供の死亡率が高いせいで、60からときに80歳まで生きる人もいた
• その理由は食物の多様性、感染症の少なさなど
• 感染症は農耕社会以降の家畜は由来のものが多く、そもそも人同士の距離ががまばらで感染・伝播の機会がほとんどない
• とはいえ、きびしく、情け容赦のない、欠乏と苦難の社会ではあった
最後に、狩猟採集時代のサピエンスが、平和主義者だったか好戦的な種族だったのかは興味がつきない。対サピエンス同士、対他の人類間、どちらの相手にも、平和的な好戦的か断定はできない。好戦的な部族もあったかもしれないし平和的な部族もあったのだろう。とにかく多様であった。
第4章 史上最も危険な種
しかし、餌の対象となる他の動物たちにとって、危険極まりない存在であった。
オーストラリアの例
• 4万5千年前のオーストラリアへの進出は、屈指のできごとだった。コロンブスのアメリカ発見、アポロ11号の月面着陸に匹敵する。
• それ以前にオーストラリアへ到達した人類はいなかった。
• それはサピエンスが特定の陸塊で食物連鎖の頂点に立った瞬間だった。
• 大型カンガルー、フクロライオン、大コアラ、大サイズの鳥、ディプロトドン(象サイズのウォンバット)などすべて姿を消した。
南北アメリカの例
• 最後の氷河期は、7万5千年前から1万5千年前にかけて。7万年前と2万年前の二度のピークがあった。
• 1万6千年前、サピエンスはシベリアから凍結したベーリング海を超えてアラスカをとおりはじめてアメリカ大陸へ渡った。
• それ以前にアメリカ大陸へ渡った人類はいなかった。
• アメリカに到達からわずか1000年から2000年の間に大きなげっ歯類、馬、ラクダ、巨大アメリカライオン、サーベルタイガー、象より大きなオオナマケモノなどを駆逐しながら南米南端に達する。
• この騒ぎからただ一つ無傷だったのがガラパゴス諸島。
そして第二部の農業革命に続く。
余談だが、訳者の柴田裕之(しばたやすし)氏は、自分の愛読書の主要なところで顔を出す。
• 「サピエンス全史」ユヴァル・ノア・ハラリ
• 「ホモデウス」ユヴァル・ノア・ハラリ
• 「神々の沈黙」ジュリアン・ジェインズ
• 「ユーザーイリュージョン」トール・ノーレットランダージュ
柴田さんが訳しているのなら、読む価値があるかな、などとも思う。
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kennak · 4 months
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生まれてから高校までアメリカで過ごし、それ以降は日本で住み就職もしている。今20代前半。最近X(Twitter)でこんな動画が賛否両論を生んでいた。https://x.com/sgwhn8727/status/1627815915457839104?s=20「子どもたちの自己肯定感を上げるため、わたしのクラスでは毎朝affirmationを言います。I am loved, I am brave, I am smart, I am kind, I am a problem solverと言い合って、ポジティブな気持ちで1日過ごせるようにします。これを毎日繰り返すことでポジティブな自分になることが狙いです。」これを見て、自分が今まで生きてきて感じたことを色々と思い出したので少し書く。便宜上、「アメリカ」「日本」と大きな主語を使うが、もちろん家庭や土地によって差はあると思う。アメリカでは↑の動画のように、「あなたは素晴らしい存在である」と言われ育つことが多い。「あなたは賢い」「あなたは強い」「あなたは愛されるべき存在」と。日本では謙遜という概念や「能ある鷹は爪を隠す」という言葉があるように、素晴らしい能力を持った人でも偉ぶらず控えめであることが求められることが多い。そんな日本の文化を窮屈に思い、アメリカの文化を羨ましく思う人も多いだろう。しかし、アメリカの「自己肯定感アゲアゲ」文化には致命的な欠点が存在する。身も蓋もないことを書いてしまうが、いくら本人が「自分は素晴らしい存在だ」と思っていても、現実は違うことの方が多い。「アメリカは個性を尊重する」とか言ってる人もいるが、誰だってバカより賢い人の方が好きだし、ブスより綺麗な人の方が好きなのだ。それはどこの国も変わらない。そもそも、「誰もが素晴らしい」が声高に主張される社会=そう言わなければいけない社会、ということである。社会に出たら嫌でも自分のランクを思い知らされる。自分の上位互換がいくらでも転がっている。自己肯定感のメッキが剥がれる瞬間が辛いなら、最初から身の丈にあった感覚を持ち生きたほうがマシではないか。特に今、日本中国韓国の若者と同じように、多くのアメリカの若者には金も希望もない。インフレや格差にあえぎ、親と同等の暮らしをすることをあきらめている人がほとんどだ。戦争や気候変動など世界的な問題も山積みだ。こんな中���「自分は素晴らしい」「人生は素晴らしい」と言われても困るのである。もはや呪いでしかない。「自分は素晴らしい」という言葉は呪いだ。なぜなら、むしろ自分のクソさに気づいたとき、そのクソさがものすごく大きく見える。日本に帰ってきたとき、とある女芸人さんがテレビに出ていた。その人は「ブスの戦い方」を指南していた。美人はどうやたって生きていけるが、ブスは工夫しなければいけない。しかし、努力すればむしろブスは美人よりも大きな成果を上げることができると。その話は「ルッキズムを植え付けるな」なんて批判されていたが、自分は感動した。自分が美男美女ではないから生きづらいと言っている人に対して、「あなたは美しいよ。素晴らしい存在だよ。」と言うのは正しいのだろうか。非美男美女としての生き方を提案するのが本当の優しさなのではないだろうか。もちろん美醜だけでなく、頭が悪い、身体が弱い、など、それを素晴らしいよ・あなたの個性だよで終わらせるのではなく、弱者としての戦い方を徹底的��教え込むべきなのではないか。アメリカの教育はその点で間違っている気がする。そもそも、アメリカの自己肯定感は間違っている。「自分は素晴らしい」と思わせるのは自己肯定感をはぐくむことではなくどんなスポンジケーキかということを考慮せずに、クリームをゴテゴテ塗ってごまかしているようにしか思えない。「あなたは素晴らしい」と言われ育ったが、そうではないことに気づいてから人生計画を立て直すのに時間がかかった人はたくさんいると思う。自分ももう大人になったし今は幸せなので、今まで受けた教育にだらだらと文句をつける気はないが、最初から人生がクソゲーだと教えられていたらもっと楽に生きられたと思う。自己肯定感とは、どんなに自分や自分の人生がクソでもなんとか生きていける能力だと思う。世界はクソ、人生はクソ、自分もクソ。でも昨日食べたラーメンはおいしかった。信号ですれちがった犬がかわいかった。昨日より1mmは仕事ができるようになった。だからよかった。そう生きていけるのが自己肯定感ではないか。日本の「自虐文化」は批判対象になることが多いが、実際無意識に救われてる人も多いのではないかと思う。あと、これは書くか迷ったんだけど、アメリカの自己肯定感アゲアゲ文化は奴隷を育てるためではないかと思ったことがある。日本の詰め込み個性ガン無視教育は批判されているし自分もどうかと思うけど、ほぼ全員に最低限の教育を施し、子供たちが次の道へ進みたいと思ったときへの土台作りはできると思う。しかし、アメリカは頭のいい子への教育は天才的であると感じるけど、バカへの教育はあまりよくない。最低限の基準に達していないバカに「君は素晴らしい」「我々は強い」と言って、一部の天才の奴隷にしようとしているのではないかと思った事すらある。これは陰謀論とかではなく本当に。まあ奴隷育成に失敗して中身スカスカなのに態度がでかい人間を量産してるけど。北朝鮮をバカにしてるけど正直アメリカも近いものがある気がする。
日米ハーフの自分が思う「自己肯定感」のクソさ
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kinemekoudon · 1 year
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【8話】 弁護士に言われたとおり取調べで黙秘してみたときのレポ・前編 【大麻取り締まられレポ】
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前回のあらすじ 僕とプッシャーと友人の3人で、共謀の上に大麻を所持した容疑で捕まった僕は、接見で当番弁護士に「50パーの確率で不起訴を狙える」と言われていた。
僕は「どういう理屈で50パーなんでしょうか?」と弁護士に尋ねると、弁護士は「共謀の罪での逮捕は、他の方が自白してしまうケースが多いんです」と答える。
僕は「一緒に捕まった2人は自白しないと思うので、大丈夫だと思います」などと言うと、弁護士は「ところが、いざ捕まってみると喋っちゃうんですよ、これが。そういうケースを何件も見てきましたから」と恐ろしいことを言うので、僕は少し勘ぐって黙りこくる。
弁護士は続けて「むしろ、ほとんどの人が喋っちゃいます。黙秘を続けられる人はサイコパスみたいなひとしかいませんね」と笑いながら言う。僕が「まぁ…2人はサイコパスっぽい感じはあります」と応えると、弁護士は「そうですか。いずれにせよ、不起訴を狙うのであれば、現段階では2人を信用するしかないですからね」と身も蓋もないことを言う。
しかし弁護士は、僕が気落ちしているのを見てか「まあ、売人の車で大麻が見つかっていて、持ち主が判明していないという状況ですから、このままいけば、犯行の主体を立証できず、証拠不十分のために不起訴となる可能性は高いでしょう」などと僕に期待を持たせてくれた。
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それから1時間ほど、弁護士に今後の対策について色々と教えて貰った。ただ、僕がやるべきことは、黙秘と署名押印拒否ということであった。不起訴を狙うにあたって、黙秘は自分の利益にはならないが、不利益にもならない。また、調書の署名押印を拒否すれば、調書を証拠資料として使用することを防ぐことができるのである。
また弁護士は、国選弁護人として就いてくれることになり、僕が黙秘を続けるメンタルを保てるよう、頻繁に接見に来てくれると言うので、とても心強い味方がついてくれたと思った。
※このときに弁護士に貰った「取調べをウケる心がまえ」というプリントがよく出来ていたので、pdfのURLを貼っておきます。
接見を終えると、消灯・就寝時間の21時が過ぎ、22時をまわっていた。場内は暗くなっていたが、監視のため蛍光灯がついており、居室内も天井の蛍光灯3本中1本だけ明かりがついていた。
居室に戻ると、留置官が「今日は5番の布団敷いといたから��あと寝る前の薬あるから、このコップに水入れてきて」などと言うので、僕は洗面で水を入れ、鉄格子の前に行く。留置官は配膳口を開き、僕に手を出すように言って、薬の包装シートのプラスチック部分を押して、中の薬でアルミ部分を破り、僕の手の上に直接薬を落とす。
僕はマイスリーとデパスを飲むのは久しぶりだったので、少しわくわくしていた。僕は薬を水で流し込み、コップを留置官に返すと、布団の中に入り込む。布団は非常に粗末なもので、敷き布団はこれぞ煎餅布団といった具合に入れ綿の少ない薄く固い布団で、掛け布団は薄い割に重く、ちりちりしていて触り心地の悪い毛布であった。
寝具は粗末、天井の蛍光灯は眩しい、加えて隣室からはいびきが聞こえるので、この環境で寝るのは、睡眠に神経質な僕には難しいことであったが、こんなこともあろうかと、あらかじめ睡眠薬をゲットしておいたのである。
薬を飲んでから、1分ほどでデパスが効いてきて、強ばった筋肉が弛緩し、あらゆる不安が和らいでくるので、(今日は本当に長い一日だったけど、未体験のことばかりで結構おもしろかったな…)などと天井を見つめながら前向きな回想をしていた。
さらに10分ほど経つとマイスリーが効いてきて、眠たくなってくると同時に、思考が少し加速し、個人的におもしろい発想が連続して生成されているように感じるので、結構楽しい。そうして自分の思考にニヤけたり感心したりしていると、次第に意識が遠のき、いつの間にか眠っていた。
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――逮捕から2日目。朝、起床時間とされる6時30分の10分前に目が覚めた。6時30分になると、消えていた蛍光灯が点灯するとともに、留置官が「起床―!」と大声を出して、まだ眠っている収容者を起こす。
布団を畳み、右隣の居室のベトナム人と入れ違いで布団置き場に布団を置いてから居室に戻ると、配膳口にブラシと雑巾の入った桶が置かれており、トイレと洗面を掃除するように指示をされた。
トイレと洗面はステンレス製で、水垢や尿石もなく清潔であったが、パフォーマンスとして掃除をし、ブラシと雑巾を桶に入れて配膳口に戻した。留置官がその桶を回収すると、今度は扉を開けて掃除機を渡し、床を掃除するように指示をしてきた。床は誰かの抜け毛が多く落ちていたので、割と丁寧に掃除機をかけておいた。
掃除機をかけている間、留置官が配膳口にタオルと石鹸、コップに歯ブラシと歯磨き粉を置いていたので、僕は掃除機を留置官に返してから、洗面で歯を磨き、顔を洗った。
タオルなどを抱え、鉄格子の前で待機していると、昨日左隣の居室でいびきをかきながら寝ていた、ガタイがよく目がギョロリとした50代くらいのヒゲの男が、ロッカーに向かう際にこちらを見てきた。
ギョロ目の男は僕と目が合うと、30度くらい頭を下げて「こんにちは!」と大声で挨拶してきたので、僕は少し萎縮して「あ、ちわ…」とぼそぼそした声で挨拶を返しておいた。ギョロ目の男は続いて、僕の右隣の居室にいるベトナム人にもかしこまって大声で挨拶をしていた。
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↑ギョロ目の男は清原を老けさせてもう少し色白にさせた感じ
ロッカーにタオル等をしまい、自分の居室に戻ると、すぐに朝食の支度が始まった。今回の朝食は、コンビニ弁当のようなプラスチック製の容器の中に、白米、きゅうりの漬物少々、マカロニサラダ少々、千切りされたたくあん少々に、メインのおかずとして野菜の入った薄く丸い形をした小さい天ぷら1つが入っている質素なものであった。
朝食を終えると、時刻は7時15分だった。本を読めるのは8時かららしく、仕方がないので文字通りゴロゴロしていると、「点呼開始―ッ!」という爆音が留置場内に響き渡った。
点呼の合図からすぐに、遠くの方で「第6号室!27番!」という大きなかけ声の後、「ハイ!」という収容者の声が聞こえ、「以上1名!」という大声の後、4人の留置官が「「「「おはようございます!」」」」と大声で挨拶をし、隣の居室へ移っていく。
それから、留置官らは僕の居室の前に立ち、「第2号室!5番!」と大声を出すので、僕は寝っ転がりながら「あい」と応えると、居室の後ろの小窓の前に立っていた暗い色のレンズの眼鏡をかけたヤクザ風の留置官が「座れぇ!!」と大声で怒鳴ってくる。
僕はまぬけ面で「はい?」と言ってみると、ヤクザ風の留置官は「座れ!座って返事��ろ!」と大声で指図してくるので、僕は仕方なしに上体を起こし、「はーい」と間の抜けた返事をする。
しかし留置官からのリアクションはなく、3秒ほど無音の空間になる。僕は少し戸惑った感じで「はい…」と言い直すと、留置官は「以上1名!」「「「「おはようございます!」」」」と大声を出し、次の居室へ移っていく。僕は彼らを人間らしくふるまっているNPCだと思う。
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7時30分になり、“運動”の時間になる。この運動の時間とは、留置場の敷地内にある屋根のない狭い場所に出られるというだけの時間である。また運動場では、貸し出しの爪切りや電動ひげ剃りを借りることもできる。
僕はなんとなく日差しを浴びたかったので、運動場で伸びをしていると、隣の居室にいる若いベトナム人が「何で捕まりましたか?」と急に話しかけてきた。僕は「ああ。大麻持ってたのが見つかったんだよね」と応えると、ベトナム人は「ハハ。日本人はだいたいドラッグです。若い人は大麻ですね」と言う。
僕は「そうなんだ。よく知ってるね。ここに来て結構経つの?」と聞くと、ベトナム人は「6ヶ月います」と言うので、僕は驚いて「何をしたらそんなに拘留されるの?」と聞くと、ベトナム人は「ビザが切れて不法滞在で捕まりましたが、コロナのせいで入管は人がいっぱいですから、入管が空くまでここで待機させられています」と言う。
僕は「へえ。それは不憫だなあ。辛くない?」と聞くと、ベトナム人は「もう辛くないです。ここに来て日本語が少し上手くなりました」と言う。話を聞くと、ベトナム人はこれを機に、留置場内で積極的に日本人と喋り、日本語を上達させようとしていたらしい。立派だ。
また、運動の時間が終わる寸前に、左隣の居室にいるギョロ目のじじいとも少しだけ会話をした。ギョロ目のじじいは、僕とベトナム人の会話を聞いていたようで、「おう、5番は大麻か。おれは覚醒剤だよ。よろしく」と言いながら、僕と握手をして去って行った。
つづく
この物語はフィクションです。また、あらゆる薬物犯罪の防止・軽減を目的としています( ΦωΦ )
#フィクション#エッセイ#大麻#大麻取り締まられレポ
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asaka-lucy-dr-rc · 6 months
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滑り込みでハロウィン漫画(未完)/V3の育成計画の世界線です
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✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚
育成計画でカムクラが幽霊だって噂されているという事実があまりにも可愛くてみた時からずっとハロウィンで何か描きたいなーと思ってたけどあっという間にハロウィンがきちゃったやつ。
続き描くつもりはめちゃめちゃあるのでハロウィンから大幅遅刻になるだろうけど多分どっかのタイミングでアップすると思います(何なら次の話が一番描きたい内容の予定)
<一応それぞれの衣装解説>
七海:ダーナ(ソロモンの鍵の主人公)
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元々は普通に可愛い猫耳魔女っ子衣装みたいなので描こうかと思ってたけど、「七海ならゲームにちなんだ衣装を選ぶのでは??」と思って色々考えた末にダーナになりました。ソロモンの鍵はRTAしか見たことないけど七海は絶対好きだと思う。何となく。
ソロモンの鍵を知らない御仁はこれ見て↓
そのまんまだとあまりにもハロウィン感が薄かったのでかぼちゃの装飾を付け足しました。
花村:かぼちゃの妖精(?)
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花村はもっとアーバンでファッショナブルな衣装を好むのでは?という気がしないでもなかったんですが、ゴテゴテした衣装は調理中に邪魔になっちゃうしなぁと思って、シンプルなかぼちゃの妖精にしました。手に持ってるのはモンスターハンバーガーです。
澪田:スパイダーガール
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澪田は特定のキャラクターというよりは自分でアレンジしたハロウィンっぽい服を着そうだなと思ったのでそんな感じのイメージで描きました。
詐欺師❤️:吸血鬼
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吸血鬼の仮装はイケメンにしか許されない(※個人の意見です)けど詐欺師はダンガンロンパの中で一番のイケメンなので当然仮装する権利があります。(※個人の意見です)
終里:狼女
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終里は仮装でも動きやすさを重視するだろうなと思ったのと、「弱そう」に見えるモチーフは絶対選ばないと思うので強そうで動きやすそうな衣装のイメージで描きました。(そういう意味で、肉球付きの手袋とかは多分動きづらくて嫌いだろうなと思って付け爪だけ付けてるという設定にしといたり)
左右田:ゾンビ警察
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左右田なりに「カッコいい仮装」を意識して選んだ結果がこれ、という設定。
「なんてったってソニアさんが見てるかもしれねーからなぁ!」by左右田
(一方ソニアは左右田も震え上がるほどの本格的にスプラッターな衣装を着ているという脳内設定があるけど出す余裕がなかった。悲しい)
破れたズボンから見えてる肌の色が緑なのはわかりづらいけどゾンビタイツを履いているという設定です。
狛枝:死に神ちゃん(レインコード)
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死神つながり※で絶対誰かやるだろうと思ってたけど誰もやってくれなかった場合に備えて自分で描いちゃったやつ。
※sdr2開発中の狛枝の仮の名前が死神だったことにちなんでます。
リボンとかスカートとかあまりにも女の子っぽいデザインは省いてアレンジしてるけど死に神ちゃん感出てると良いな。
一応補足しておくと左右田がオバケ仮装カムクラを見て「狛枝か?」って思ったのは単に身長が近いからというだけで他意はありません。ないけど後で狛枝に睨まれると思う。
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衣装考えるのなんて死ぬほど苦手なのに、描きたいキャラが多すぎてなんだかんだ色々増えちゃって地獄を見たけど一応何とかおさまって(?)良かったです
(しかし次回の方がさらに出るキャラが多い!予定!)
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yudai-mush · 11 months
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感想、ティアーズオブザキングダム
感想というかメモ。ネタバレあり
クリア時ハート16個、がんばり2周、マスターソード、賢者フルセット
プレイ時間は100時間は超えてたかと
ブレワイと無双含め、ゼルダシリーズ大体やってる人間の感想
ゲーム性
・戦闘
ブレワイより楽になった!どこかで苦戦して詰まるということはほぼなく、進めやすかった。注目対象が分散するのが1番のポイントかな?あと素手でアイテム投げれるとことか
特に今回は魔物も凶悪になってたり地底とか怖いフィールドもあるし、パーティ組んだようなわらわら感は精神的にも助かるとこあった
ただ賢者は全員出してると誤操作が多いかな…アクションの一部として使えた英傑の気軽さを引き継いでほしかった
これは鍋も使えると聞いて最近作ったやつ。バイクにしたいんだけど難しい
・ゾナウギア
初めの頃が慣れなかったが、既製品とか青焼きが出てきて便利になった。あんまり試せてないのでこれから遊ぼうと思う
乗り物は物理とかできると上手く作れるのか?自作すると、つんのめったり進まなかったりでけっこう苦戦する
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・右手スキル
恒例の、ネーミングがまんまでカッコよくはないけどわかりやすいやつ
スクラビルドで剣に岩というギャグみたいな状態に始めは「ええー…」となったが、最も役にたつ武器だった!しまうと岩が縮むのね
あとくっつける時のパチンという音が良い。糊っぽいけど固定されたんだなとわかるし、組み立てる感じが出る
トーレルーフは出て確認してる間停止するのと、戻れるのが助かる。もはや手のパワーってなんだよって感じだけど
・アイテム
ちょっと多すぎる…というか探しづらいのかな。矢につける素材とかズラーと並んでるし。自分で中身をカスタムできるポーチがほしい
あと効果つかないコスプレ服は、ミニゲーム景品とかがよかった…!ミドナ装備はめちゃありがたかったです!
ストーリー
・操作
クリア優先してたから、なににせよ何か取り出さないといけない億劫さがちょっとあった。リーバルトルネードは便利だったな…
前作できなかったとこがちょっと便利になってるのは良いね。雨天時クライミングとか武器入れ替えとか料理履歴とか
中盤くらいまでラウルさん黒幕では?などと疑っていましたすいません。たぶん黒っぽいデザインと、エネルギーの緑色とかゾナウのデザインがどっち側にも見える感じじゃない?新キャラだったし警戒してたな
序盤から暗い!おそらくサイドのチャレンジを挟めば和む場面も多かったんだけど、メインまわりだけやってると不穏と閉塞感で沈みがちだった。ラスボス戦手前までほんとに帰りたい気分だった
そういえば初めの頃に出たトレーラーと、本編のムービーはやや変わってるような?トライデントの絵とか出てない?てかトライデント使ってきたっけ?
不穏さを際立たせるのがゼルダ(偽とかウワサ含む)の不可解さだった。はじめに残留思念とか言われたら「え…?」てなるのよ。ムービー内のゼルダすら禁断の術を使おうとしてるし
でガノンドロフが作った人形というのがなんだか予想外。ムービー説明には魔物と書いてあるけど瘴気魔なのか?というか魔王前から瘴気を操れることに関して言及あったっけ?自然に発現した能力?
あとファントムの武器に「コタケコウメ」って入れてません?なぜ入れた、好き
本丸戦はなんか笑ってしまった。「待っています」は魔王が吹き替えしてんのかなとか。神代の存在だからみんなが「魔王?封印戦争?何それ?」状態で説明してくれるのも��切だなとか
正直英傑に比べて子孫たちはまだ若いというイメージがあるから、本人が助太刀に来るとちょっとビビるよね…仲間のHP気にしなくていいのは嬉しいね
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お遊びだろうけど、ゲルドでもなく風タク文字な理由とか、ツインローバ出る?とかいろいろ考えちゃったよ
※妄想として瘴気を操る術を教えたのはツインローバじゃないかと思ってる
時系列はやや混乱してる。ムービー通しで見返してようやく理解できてきた
急に空島が現れたのは、前から浮いてたけど視認できない高さにあったってことでいい…?でトリガーは魔王復活だった感じ?ミイラドロフは既にゼルダを知ってたから、ゼルダが過去に飛んでいろいろやったから空島が出たわけじゃないのよね?
これゼルダが秘石を手にしなかった場合、リンクは朽ちて敗北ルートだったのか?
秘石必要だったかな?と思う
能力倍化と龍化に関連性がなくてよくわからんアイテムだなという印象だった
あと善悪関わらず効果があるのに、見えるとこに普通に身につけてるの危なっかしい。まあそれがもたらした悲劇と省みていたけど
トライフォースの話はほんとに出てこなくなった。ブレワイでの見直しのひとつだったのかな
けど文様としてソニアの腕にもゼルダにも出てたし、存在はしている…?
あとマスターソードは建国時にはまだなかったのかな?これを造ったといわれる女神と、神の末裔たるゾナウは無関���?このへんよくわからない
キャラクター
全体としては本編と外れたチャレンジも含めて、人々に作用することが強調されてたと思う。ブレワイ後だから厄災を祓った剣士というのが周知されてるのも新鮮
あとはテリーやキルトンで、知りもせず恐れることへの言及多いなと思った。頑張って地底潜ってくださいってことかな
無双がいい感じに繋ぎになってる。チューリは無双で出てなかったら忘れてたかもしれない
・プルア
無双とも変えてきたな!赤が効いてる
「カカリコ村の族長さんが美人」でインパもアンチエイジしたのかと一瞬思った
・カッシーワ
でてこないんだなー。てっきり馬宿の楽団にいるのかと思ってたが。彼は英傑のためのキャラだったんだね
イーガ団として生きるの楽しい
・イーガ団
今回の最大の癒やし!ブレワイの奈落を繋げてくるとは思わなかった
バナナ要素を除けば機械いじれるし調査できるし普通に優秀な集団だな
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・ゾナウ族
ラウルさん、始め「ヤギかな?」とか思ってたが龍な!だから爪鋭いし鱗紋なのな。手がいい声で喋り出した時はびっくりした
龍化とか急に出たなと思ったけどゾナウは龍信仰てブレワイから出てたし、ゾナウ族自体も龍の特徴があるしで突拍子もないわけではなかったのね。さりげないので気づきにくい
この種族自体は天から来た?らしいがどういう…?宇宙人?天空人?他所から来た民族が王になって周辺一帯を統治するって言ってきたわけね、うーん。確かにガノンドロフ的には嫌だろうな
あとなんで滅びゆく種族だったんだろう
・タウロ
良いギャップ具合だ!けっこう傷痕あるから戦闘も強いと見た。それか気になると茨だろうが突っ込んでくタイプか
・ヨナ
ネーミングとか装飾で出身の違いを出してておもしろい。別の里はハイラル国外ってこと?幼馴染とか年上とかいい設定だなもう
・ガノンドロフ
ずっとミイラだったらどうしようと思った、ベストタイミングで完全復活してくれた。てかミイラ状態で喋れるのちょっと意外だった、唸るだけかと。ドアップ映しもありがたいね!スクショしまくった
魔王化で角生えて逆に弱そうに見えてしまったなんでだろう。そういえばラウルにも角あったぞといういらぬ疑いをもったりもした(ラウルさん疑いすぎ)
ゲルド族、当時どういう状態だったの
魔王化する前まではみんな従ってたの?さすがに魔物とつるむ人にはついていけないでしょってことで賢者候補が別で出てきたのか
ムービーで馬乗ってるけどさ、砂漠にいる間はスナザラシに乗ってたりしたのかなあ
フィールド
ゾナウの建物も饕餮紋のような中米のようなプラス枯山水でおもしろい
地底嫌すぎる!ミネルさん参加でだいぶ楽になったが…しれっとダンジョンボス置かないで
反対に天空が天気よくて良い対比になってる
回生の祠とか、ブレワイの厄災関係はほぼ出てこないのがちょい寂しい。ガーディアンの骸とか撤去したのかな
てか城の地下いろんなもん埋まりすぎでしょ、古代シーカーのさらに下にガノンドロフ封印されてるとか…ハイラルの地盤穴だらけだよ…
音楽
トレーラーで二胡のゼルダの子守唄が入った時はピンとこなかったが、龍化の話が出たとこで納得。
あの逆再生?BGMはだいぶ苦手で何度聞いても慣れない
地底BGMも、もっと陽気になったらいいな…根の解放具合で変わってこないかな
モンスター
ボス戦
ライクライク、ギブド懐かしいね!
ホラブリンはトワプリのボス猿を思い出した
イワロックがトーレルーフで弱体化したのが衝撃。体内通れるってどうなの怖い
手の瘴気魔はガーディアンと同等に「来ないでー!」という動きをする。初見はダッシュで逃げた…。未だに効率のいい倒し方がわからない
グリオークは遠くから眺めるだけにしている
余裕なくて変な格好で戦わなきゃいけなかったよ(下シーカーにしてるけど多分ハイリアズボンだった)
復活ガノンドロフと戦えたので満足!さんざん罵倒されたぜ!過去作の空き瓶とか釣り竿みたいなお遊びがあるか試したかったが、そんな余裕はなかったぜ
魔王状態でゲージが中央外れたのも笑った。あと自信満々の笑顔がたくさん見れたのも良いね!立ち絵の表情はなんだったんだ?
やっぱり巨体で身のこなし軽いのが良いなあ…強い。回避されてめっちゃ嬉しくなっちゃったよ
いやー強くて楽しかった!ボス戦入るまでの地底がほんとに嫌だったので魔王に会えて逆に安心した
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魔王化以降は、曲もデザインも終焉さんの主張がわりとあったのと、そのあと自我もいらんとか言いだしたのでちょっと寂しかった…。ガノンドロフでいてくれ…仮に勝てても喜ぶ自分がいなくなっちゃうでしょ…
自害に近いんだけど、やや自暴自棄な感じが魔王ぽくないなあ…と思ってしまった
まあこの後の演出のために龍化させないといけなかったんだなーとか思い返してる。結局魔物駆除になってしまってもう〜虚しい!
で空中ステージは変なことしなければ死なない易しさがよかった。ちょっと胴体の弱点に目が行きづらい?しばらく目を狙ったりしていた
音楽いいね!メインテーマだし、ボス戦というか勝ちステージの曲というか。地底から上がった爽快感もあるし、サックス?が意外でおしゃれだ
ほか
そして、消滅…。この後の展開、演出優先でやや強引な気も。強制半裸とか奇跡とか空中変身解除とか
空中キャッチの演出は最高だったが、もう戻れないとか言ってたのにサラッと解決しちゃうんかい
スクショ1500枚越えてて笑った
ブレワイも含め、もののけ姫とか宮崎駿作品の魅力を分析して取り入れてる感ある。あと日本のデザインとかあえて入れて個性にしているのかも
ハテノで買った家ゼルダに譲ったの?そして自分は最新式のマイホームへ…完全に武器コレクション置き場にしちゃってるけど、いっぱい置けるのは嬉しい
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r1ok4 · 1 year
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推しを推せなかった話
国際男子寮の食堂で働いている。
国際男子寮の明確な定義は何かと言われるとよくわからないけど、とにかくその寮の近くには国際系(「国際系」って大学の専攻とかの区分で最近よく聞くけど、そもそも「国際系」って何なんだろうか。未だによく解らない)の大学があり、その大学に通う男子学生が多く暮らしている寮である。日本人も勿論いるが東南アジアや中国・韓国にルーツがある学生が大半であり、私の仕事はその寮の食堂で彼等の食事を作ることだ。日本語でのコミュニケーションが難しい彼等と私の間にボーイミーツガール的なラブイベントが起きることは勿論なく、1年近い勤務期間の間に無精髭に薄汚れたタンクトップ姿の彼等と三角巾にマスクで目以外は何も見えない容姿の私が交わした会話と言えば「こんばんは」「ごちそうさまです」「ありがとうございます」「ヘイ ワンピーポーワンプリン」くらいのものである。私の職場は、彼等にとっては自宅のキッチンだ。自宅のキッチンでわざわざ髪を整え髭を剃りアイロンのかけられたジャケットを着て「お姉さん、今日も美味しいご飯をありがとう(ニッコリ)」なんてしてくれる男は居ない。
そんな無精髭タンクトップ男達の中で、ふと目を引く男の子がいた。190cm近そうな長身にふわふわの銀髪。いつも黒いオーバーサイズの服を着ているが、それが本人の体格によく似合っている。皿を受け取る時の手は大きく、指は節ばっている。たまにその指先にある形のいい爪にネイルが塗られていることもあった。大抵は黒、たまに他の暗い色。ふわふわの銀髪は結べるくらい長く、実際に何度か結ばれていた。私は何度か彼を見るうちに、なんだかジョングクに似ているなと感じた。図体はでかいのだけど、挙動が素直で綺麗な目をしている。
彼はいつも野菜も残さず食べてくれるが(男子学生というのは大半が野菜を残してくる)、最初に並んだ惣菜を選ぶ際には真剣な目でどの皿が一番肉が多いか見定めている。野菜が好きというよりただ飯であればなんでも全部かっ食らうようだ。私は肉への執着心が強いジョングク似の彼をジョン肉と呼び見守ることに決めた。
1ヶ月ほどジョン肉を見守っていると、彼がおそらく韓国人であることに気付いた。他の学生とハングルで会話していたからだ。これまで「ご馳走様でした」以外の日本語を聞いたことがなかったので気付かなかったが、言われてみれば確かに発音に若干のぎこちなさがあるように感じる。
彼の「ご馳走様でした」は、私が彼を気に入った理由でもあった。食器を戻す時に毎回、律儀に「ご馳走様でした」と言ってくれるところ。多くの人の言うそれとは違って、彼の「ご馳走様でした」は、本当に「ご馳走様でした」と言っているように聞こえた。言い慣れて惰性で意味を失ったおつかれさまでーす、や、あざーす、とは違う。わざわざ食堂にいる寮長や寮母さん、私の方を向いてぺこりと頭を下げて、「ご馳走様でした」としっかり言ってくれるのだ。
気付いたら私は彼の「ご馳走様でした」を聞くために、積極的にそれまで嫌いだった洗い場に入るようになっていた(洗い場にいれば学生から直接皿を受け取ることができる)。なんなら仕事に向かうため自転車を走らせながら、今日はジョン肉を見られるかしらと考えることもあった。ジョン肉���今日はどんな服を着ているだろう。成人しているんだろうか。本当に仲良い友達と話す時はどんな感じ?あんなに背が高くて銀髪で、こんな田舎に住んでたら目立つだろうな。筋肉質な身体をしているけど、何か運動をしているんだろうか。毎日のように食堂で夜ご飯を食べているけど、あまり人と飲みに行ったりはしないのかしら…でも、そんなこと話せるような仲ではない。私はジョン肉の顔を知っているけど、ジョン肉は私の(目しか見えないので)顔すら知らない。寮の外ですれ違ったら彼は私に気付かないだろう。ああ、それでもこのまま、どうにかしてもう少しだけジョン肉のことを知られたら…
そこで私ははたと気付いた。このジョン肉への感情。私はこれをよく知っている。23年間の人生で何度も経験した胸のときめき。その中にふと訪れる切なさとどこまでも深い理屈を超えた愛おしさ。これは…
完全に、推しだ。
推しだ。完全に推しだ。私はジョン肉を推している。完全に、完璧に、推している。
私は推しへの愛と恋愛感情の違いを明確に理解している。恋愛感情は、「私がその相手と実際にどうにかなりたい」だ。私はジョン肉と、どうにもなりたくない。赤の他人のままでいて欲しい。誰と付き合っていようがどうでもいい。私はただジョン肉を推しとして愛したいだけなのだ。新規供給情報に暴れて画像を何枚も保存してちょっとしたエピソードから人間性をなんとか掴もうと考え込んでVLIVEを見返しては生きる糧を貰って寝る前に今何してるかな、元気だといいなと思いを馳せたりどれだけ彼を愛しているかをやかましい言葉でインターネットに垂れ流したりしたいだけなのだ。私にとって『推す』とはそういうことだ。
でも、そんなことをアイドルでない赤の他人にすることはできない。ストーカーどころか人権侵害だ。怖い。
そこまで理解したとところでぐらりと世界が反転した。全身の力が抜けた私は食堂の冷たい床にがっくりと膝をつく。
神様!!!!!!!!!!!!!!!!
ああ、私はジョン肉を推すことはできない。彼はアイドルではないのだ。アイドルでない他人を推すことはできない。ジョン肉はアイドルではない。故に、私は彼を愛することはできない。私は彼を愛することはできない…
私は、ジョン肉と、アイドルとファンになることができない。もっと彼のことを知って眺められたらどれだけ良いだろう。でもアイドルでない彼にそれを私が求めることには、責任と覚悟が必要とされる一対一の現実的な人間関係が生じる。一体どのオタクが推しと責任と覚悟が必要とされる現実的な一対一の人間関係を生じさせたいというのだ。それを望んではもう「推し」ではない。違うのだ。私はただ、アイドルの推しを推すようにジョン肉を一方的に推したいのだ。けれどそれは敵わない。私は彼を推すことはできない……
そこまで気付いてしまった私は、静かに一人、この気持ちを封印するしかなかった。推せない推しを推すことはできない。私はどれたけジョン肉を推していようと、彼の情報をインターネットで漁ったり個人情報を知ろうと話しかけたりしてはいけない。何故なら彼はアイドルではないからだ。彼は私に推されるべき人間ではないからだ。彼は完全に一般人で、彼のことが知りたければ私は彼と、ごく健全で現実的な人間関係を構築しなくてはいけない。無責任に愛の捌け口とすることが許されるオタクとアイドルではなく。そして、それは私が求めていることではなかった。私はジョン肉とごく健全で現実的な人間関係を構築したい訳ではなかった…
さようなら、ジョン肉。いつか日プ3があったら、出てね。毎日、投票するからさ。もしよかったら、アイドルになってね。でも、ならなくてもいいよ。私に「ご馳走様でした」って言ってくれてありがとね。あれだけはファンサと思って浮かれていいかな?
じゃあ、いつか推すことができるその日まで。
さようなら、ジョン肉。私の、推せなかった推し。
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shintani22 · 1 year
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2022年11月13日
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【サマリー:J1参入プレーオフ 決定戦】
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【熊本】J1初昇格逃す、大木武監督「こんな経験忘れたほうがいい」プレーオフで京都とドロー(日刊スポーツ)
J2ロアッソ熊本は1-1で京都サンガFCと引き分け、上位の京都が勝利するプレーオフ(PO)の規定により、J1初昇格を逃した。
下克上昇格はかなわなかったが、意地は見せた。同点の後半ロスタイム2分。クロスの流れから、MF平川怜(22)が渾身のシュートを放った。だが、京都FWウタカの“顔面ブロック”に阻まれた。再び目の前にきたボールをシュート。しかし今度はゴールポストにはじかれ力尽きた。
1点を追う後半23分、右CKから、DFイヨハ理ヘンリー(24)が2戦連発となるヘディング弾で同点。ボール支配率で上回り、枠内シュートも互角の7本と健闘した。
とはいえ、負けは負け。来季1年契約で続投する大木武監督(61)は、来季のPOの経験を生かす方法を問われて「いい経験を踏んだなら生かせるが、負けて、こんな経験忘れたほうがいい。サポーターを笑って帰してやれなかったのが心残り」と悔しさをにじませた。
九州のライバル・大分がJリーグ史上初となるJ3を経験してのJ1復帰を果たした18年。くしくも、熊本は08年のJ2昇格後初めてJ3降格の屈辱を味わった。前年の17年は他力ながら21位でギリギリ残留していたが、16年4月の熊本地震の影響もあって弱体化して以降、勢いを取り戻せないままもがき続けてきた。14年度決算では債務超過に陥り、クラブ存続の危機もあった。
だが、広島で強化部長や社長を務め、育成面で評価があった織田秀和氏(61)が18年にGM就任して、徐々に息を吹き返していった。
編成において、資金難ゆえに将来有望で伸びしろのある大学生の獲得に重きを置く。日本代表DF冨安と福岡ジュニアユース時代に同学年だった2年目のMF杉山や、J2得点ランク3位(14得点)で3年目FW高橋ら中心の多くが、大卒から熊本でプロになった選手。その数は、京都戦でのスタメンで6人に及んだ。20年に就任の大木監督が清水、京都監督、日本代表コーチなどを務めた豊富な経験を基に鍛え上げた。
J1の16位とはいえ、予算は約3倍の京都が相手だった。だが、大木監督は「(クラブの)歴史がないとか、経験がないとか、予算がないとかあるが、うちみたいなチームは何も成し遂げていないので、俺らもやれないことはないと思う」と強気で立ち向かった。
就任から3年計画で進化を遂げた“大木チルドレン”が、監督の言う「普段通りにやる」サッカーを体現した。エンブレムに象徴される火の国熊本の“暴れ馬”のごとく暴れた。【菊川光一】
【熊本】来季もJ2で編成面はいばらの道 主力残留望まれるも“草刈り場”になる可能性大(日刊スポーツ)
ロアッソ熊本はJ1参入プレーオフ敗退で来季もJ2となり、チーム編成面では、いばらの道が待ち受ける。
22年度決算見込みは収入約7億円、チーム人件費約3億円の緊縮財政の中、リーグ4位と躍進を遂げた。だが、来季も資金不足により、過度な補強や外国人の獲得はしない予定だ。
永田求社長(71)は「4番バッターばかりをそろえても仕方ないわけですから、野球で言う。ブレずに伸びしろのある若手を育てるチームにする」。編成に関しては、これまで通りお金をかけず、向上心やハングリー精神を持つ大学生の獲得や、ユースからの昇格などをベースにする方針だ。
基本、アンカーのMF河原創主将(24)、J2得点ランク3位のFW高橋利樹(24)、DF菅田真啓(25)ら主力の残留が望まれる。だがJ1からのオファーがすでに届いた選手もおり、他クラブの“草刈り場”になる可能性が高い。J3から昇格1年目で4位躍進した一方で、選手個々の能力もフォーカスされた。
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文科省が「図書館の自由」揺るがす依頼文 「拉致問題の本充実を」(朝日新聞)
文部科学省が全国の公立・学校図書館向けに出した1通の依頼文が波紋を呼んでいる。「拉致問題の関連本の充実」を求めるもので、内閣官房が文科省に依頼した。特定のテーマで国が図書館にこうした文書を送るのは初めてという。これに対し、公益社団法人・日本図書館協会は10月、「図書館の自由に関する宣言を脅かすものであると懸念する」などとする意見書を文科省に出した。
「北朝鮮当局による拉致問題に関する図書等の充実に係る御協力等について」
文科省が8月末、全国の公立・学校図書館あてに送った「事務連絡」だ。文書は、拉致問題の解決には「世論の一層の喚起が不可欠」だと指摘。12月10~16日の啓発週間に向けて関連本を充実させ、テーマ展示をするなどして、「児童生徒や住民が手にとりやすい環境の整備」に協力するよう求めている。
文科省地域学習推進課によると、図書館向けにこうした文書を出すのは初めて。「内閣官房拉致問題対策本部から頼まれたから」で、「図書館の自由を侵害する趣旨ではない。撤回予定はない」という。
拉致問題対策本部も「毎年力を入れている若者の啓発策だった。お願いにすぎず問題があるとは考えていない」との見解を示した。
図書館には戦前の反省から、独立や市民への責任をうたった「図書館の自由に関する宣言」がある。宣言では、「権力の介入また��社会的圧力に左���されることなく、自らの責任に基づき資料の収集と提供を行う」などと明記している。
このため、図書館協会は依頼文について「外部からの圧力を容認し、主体的な取り組みを難しくする怖れがある」などとして「是認できない」としている。
現場の司書たちにも、危機感が広がっている。
千葉県の公立図書館で働く50代の男性司書は、9月、県から届いたメールで依頼文を知った。違和感を覚えた男性が司書の会議で議題にすると、戸惑いの声が上がった。
「国が依頼してくるのはどうなのか」「拉致問題は重要。本をそろえないということはないが……」
男性は「依頼文の通りに展示すれば『従った』ととられる。もう普通の展示はできない」と話す。
「国は『正しいこと』をやろうとしているのかもしれないが、協力を求めて当然という考え方は怖い」
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ウクライナ廃虚にバンクシー壁画 「不屈の象徴」と住民歓迎(AFPBB)
【11月13日 AFP】英国の覆面ストリートアーティスト、バンクシー(Banksy)が、ウクライナの首都近郊の廃虚と化した建物の壁にグラフィティを描いた。住民は「不屈の象徴」になると歓迎している。
バンクシーは11日、廃虚の壁に描かれた、倒立する体操選手の絵の写真3枚をインスタグラム(Instagram)に投稿。キャプションには「ボロジャンカ(Borodyanka)、ウクライナ」と記されていた。
首都キーウ北西に位置するボロジャンカは、ブチャ(Bucha)やイルピン(Irpin)と同じく、2月のロシア軍の侵攻開始直後に激しい攻撃にさらされ、4月まで占領されていた町。ロシア軍による徹底的な破壊の爪痕を残す場所として知られている。
「私たちが不屈であることを示す象徴となる」と、オレクシーさんはAFPに語った。「そうとも、わが国は負けない」
ボロジャンカでは、柔道着姿の大人の男性を小さな男の子が投げ飛ばす様子を描いた壁画も見つかった。武道に熱心なロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領がモチーフとみられる。
この作品がバンクシーの作品かは確認できていないが、ウクライナのテレビジャーナリスト、ボグダン・マシャイ氏(30)は「男の子が老人に立ち向かい、打ち負かしている」「バンクシーがここボロジャンカにいるなんて信じられない」と感激を口にした。
キーウ近郊ではバンクシー風の壁画が他にも幾つか出現しており、ウクライナの人々は、バンクシーが今も国内で活動しているのではないかと考えている。イルピンの廃虚では、首を負傷してコルセットで固定した新体操の選手が、リボンの演技を披露する姿を描いたグラフィティが見つかっている。
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核ごみ、地下450メートルに 岩盤に密閉、3年後稼働―世界初の最終処分場・フィンランド(時事通信)
【オルキルオト島(フィンランド)時事】原子力発電所から出る使用済み核燃料の処理に各国が頭を悩ませる中、フィンランドは世界初の最終処分場建設を進めている。地中深くに放射性廃棄物を埋める「地層処分」と呼ばれる方式で、3年後の稼働を目指す。南西部オルキルオト島の地下400~450メートルに造られた最終処分場が、時事通信など一部メディアに公開された。
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【図解】核燃料最終処分場「オンカロ」
 ◇100万年先も安全
らせんを描きながら薄暗い坑道を下りていく。道幅は車2台がぎりぎり擦れ違える程度。天井や壁には掘削された岩肌の凹凸がそのまま残る。
核廃棄物の最終処分場「オンカロ」は、フィンランド語で「洞窟」を意味する。使用済み核燃料は約40年間、原発敷地内の貯蔵プールで保管。鉄と銅の容器(キャニスター)で二重に密封した後、オンカロ最深部の縦穴に配置する。
水の浸入を防ぐため、縦穴と容器の隙間はベントナイトと呼ばれる粘土で埋める。すべての縦穴が埋まると、トンネルそのものを粘土とコンクリートで密閉。処分場管理会社ポシバの関係者は「この岩盤は20億年近く安定しており、氷河期など地上の環境変化にも影響されない。100万年先も安全だ」と語る。
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「オンカロ」の粘土とコンクリートで密閉された実験用トンネル=10月31日、南西部オルキルオト島
 ◇透明性を徹底
約5キロ続く坂道を下り、オンカロの最深部に到着した。空気は乾燥し、人や重機が舞い上げた砂ぼこりの臭いが鼻を突く。アリの巣のように張り巡らされたトンネルには、核燃料を埋設する縦穴が数メートル間隔で掘られる。最終的にトンネル数は100本以上、総延長は50キロになる見通しだ。
2025年ごろに稼働し、約100年かけて使用済み燃料6500トンを埋設する。同関係者は「すべてのトンネルや道を埋め戻した後は、地上施設を取り壊し、生物圏から隔絶する」と説明する。
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「オンカロ」の地下450メートルに下りる坑道
スウェーデンは今年1月、フィンランドに続き、最終処分場の建設計画を承認した。だが、日本を含む各国では処分場の建設地選定が難航。フィンランドが他国に先駆けた背景には、伝統的に政府や公共機関に信頼を寄せる国民性もあったとされる。「徹底した情報開示で透明性を確保し、地元住民と協議を重ねた」とポシバ社の広報責任者パシ・トゥオヒマ氏。オンカロの見学希望者は、可能な限り受け入れたという。
オルキルオト島では原子炉2基が稼働し、近く3基目も運転を開始する予定だ。原発とオンカロで20年以上働く地元住民のヤン・ライホネンさん(52)は「多くの住民は原発の安全性を信頼しており、最終処分場もさほど抵抗なく受け入れた」と話している。
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【本日(11/13)の広島県内の感染状況】(広島県)
新型コロナ 県内で2105人感染確認3人死亡 13日発表(NHKニュース)
広島県では13日、新たに2105人が新型コロナウイルスに感染したことが確認され、3人が亡くなったと発表されました。
感染が確認されたのは、▼広島市で955人、▼福山市で311人、▼東広島市で162人、▼呉市で120人、▼廿日市市で110人、▼尾道市で78人、▼三原市で74人、▼三次市で65人、▼府中町で52人、▼海田町で29人、▼大竹市で28人、▼庄原市で22人、▼府中市で21人、▼竹原市で18人、▼安芸高田市で11人、▼熊野町で10人、▼世羅町と神石高原町でそれぞれ7人、▼江田島市と安芸太田町、北広島町でそれぞれ6人、▼坂町で4人、▼大崎上島町で3人のあわせて2105人です。
1週間前の日曜日より71人増えていて、9日連続で前の週の同じ曜日を上回りました。
これで県内での感染確認は、のべ49万286人となりました。
また、県内で患者3人が亡くなったと発表されました。県内で新型コロナウイルスに感染し、その後、死亡した人は801人となりました。
新型コロナ県内の医療体制 病床使用率42.7% 12日時点(NHKニュース)
12日の時点で病床の使用率は42.7%(確保病床517床、入院患者221人)、このうち重症患者用の病床使用率は9.5%です(確保重症病床42床、重症の入院患者4人)。
軽症の人や症状がない人が入る宿泊療養施設は1047室を確保し、307人が過ごしています(利用率29.3%)。
直近1週間の人口10万人あたりの新規感染者数は556.92人です。
現在、広島県の感染状況はレベル0から4の5段階のレベルのうち、医療体制への負荷が生じはじめていることを示す「レベル2」です。
【新型コロナ 厚労省まとめ】67人死亡 6万8894人感染(13日)(NHKニュース)
厚生労働省によりますと、13日に発表した国内の新たな感染者は空港の検疫などを含め6万8894人となっています。また国内で亡くなった人は67人で、累計4万7579人となっています。
また、今月10日に行われた自主検査を除くPCR検査などの数は速報値で6万5009件でした。
東京都 新型コロナ 3人死亡 6922人感染確認 前週に比べ652人増(NHKニュース)
大阪府 新型コロナ 4人死亡 3269人感染確認(NHKニュース)大阪府内の感染者の累計は221万2402人となりました。府内で感染して亡くなった人は、合わせて6661人となりました。
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飼いネコがコロナ発症 北海道・中標津の獣医師らが国内初報告(北海道新聞)
【中標津】根室管内中標津町の「やまだ動物病院」の獣医師山田恭嗣さん(56)と国立感染症研究所が、新型コロナウイルスに感染し、発症した飼いネコの症例を論文にまとめた。新型コロナウイルスに感染した動物の発症の報告は国内初という。山田さんは飼い主からネコに感染した可能性があるとし、「動物に接する際も感染防止を」と呼びかけている。
症例は今年4月に日本獣医師会雑誌で報告した。
ネコは、同管内の住民が室内で飼育する12歳の雌。2021年8月、飼い主と家族が新型コロナに感染して発症し、その10日後にネコにくしゃみや鼻水などの症状が出た。飼い主はネコの発症の3日後、動物病院に電話し、自身の新型コロナ感染についても伝えた。
山田さんはネコにも感染した可能性があると考え、飼い主に採材キットを送付。ネコの口内などから採取した粘液を国立感染症研究所で遺伝子や中和抗体を分析したところ、ネコが飼い主らと同じデルタ株に感染していたことがわかった。
ネコは発症8日後に食欲減退など症状が悪化。山田さんが抗菌剤や抗ウイルス剤などを投与すると翌日に症状が緩和した。風邪と症状が似ているため、山田さんは「症状だけで新型コロナと診断するのは難しく、飼い主の感染などの申し出が不可欠。情報がなく見過ごされた例もあるのではないか」とみる。
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tokyomariegold · 2 years
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2022/8/27〜
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8月27日 カスタムくんに会いに出かけた! 片道2時間の少し複雑な乗り換えを頭にたたき込んだ。あと少しのところで初めての路線乗り換え。そこでお財布を忘れていることに気がつく。え〜〜……!!と、でも、なんとも戻るしかない。そして戻ったらまた同じ道を出発する元気もないし、カスタム君の午後の部にも間に合わない。横浜駅構内にはブルーナカフェが入っていてナインチェかわいいけれど、心はすっかりカスタムくん。
合計3時間程の旅を0円でしてしまった。
戻りながら電車で日記の文字起こしをして、最果タヒの展覧会のオフィシャルブックを読む。もう1年以上私の部屋にある本だけれど、昨日、この本にマンスーンさんが寄稿していることを知り、もう一度読むことにした。
駅のホームでおじさんに話しかけられる。 私に顔を近づけて「一言、二言で終わるから!」と言われ、イヤホンを外すと「あなたは美人です。だからすてきな彼氏がいるんでしょう。そしてその人と結婚して、絶対に幸せになって下さい。」と言って、去って行った。(“絶対に”の位置が「“絶対に”その人と結婚して〜…」だったかも知れない。) 揶揄う相手を間違えている。
ヨドバシカメラで洗濯機をみる。 1人だとただの鑑賞会をして終わってしまうので友人に付き添ってもらった。ドラムより縦型の方が私の生活には合っていそう。コストダウンできた分で何かしようと思った。 友人がフィルムの現像を出していて嬉しかった。自分以外の人が写真を撮っていると嬉しい。
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8月28日 夜にライブイベントに参加する予定があり、1日を、それまで体力を保たせて帰宅後もきちんと過ごせるように時間を過ごしていた。 夜の予定が本当に苦手になってしまう。 もともと、ライブには1人でよく行っていたけれど、チケットを取った時の喜びから、そのライブが近づくにつれて憂鬱になることばかり。ライブの中身より、その時間を耐えた開放感と夜の街にいる喜びに、ライブ=楽しい、という印象をもっていて、ライブって楽しい。
でも、いつもの日曜日をいろいろ終えて、そこからお出かけするのはなんかいい感じ。みんな帰っていく中でわたしはこれから!みたいな。 途中、ディズニー帰りのお姉さんが隣に座り、携帯で新幹線を予約している様子で、これから大阪まで帰るのか〜と眺めていた。
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臨海副都心の街に久しぶりに降り立てて、しかも日暮れ時の涼しい夏の日曜の夜で最高だった。ライブ中も、外の景色とか今の空の暗さとかが気になって、元々終演までいるつもりはなかったけれど、早めに会場を後にした。 フットサルをしている人達、それ以外は、日暮れ時の公園の人達はみんないなくて、ビルの赤いランプが点々と映えていた。
夜の海沿いの首都高を眺めながら、ほとんど千葉なのでは?と思いながら、意外と日曜日もお仕事お疲れ様な人が多い、と思いながら、ライブ会場の粗悪なパイプ椅子から座って鑑賞することを想定されていない高さの舞台を見ることで痛めた身体を引きずりながら、涼しい夜を帰ってきた。
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8月29日 実家へ少しだけ帰ってみる。 母と同じ時に京都にいたらしい。近所の梨園で無人販売を始めたらしく、梨を1袋買った。ちょうどもぎ取ったところで、その場で詰めてくれる。1,000円で5,6個入っていて、1つだけ貰ってあとは実家に置いてきた。
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実家は色々家の補修を済ませていた。 庭の一部にコンクリートを打って通行しやすくしたり、かなり劣化していた木のデッキと縁側をプラスチックの擬木のデッキにして手入れしやすくしたり、施工不良でずり落ちた屋根を葺き替えたりしていた。 また駅まで車で送ってもらう。 昔、塾に行くために下車していた駅は、駅ビルがかなり充実していて、駅横のデパートはショッピングモールみたいになって格が落ちていた。
池袋のビッグカメラで洗濯機を買った! 他店で目星をつけた製品をもう一度紹介してもらい、その内、一つ前の型がかなりお買い得だった製品に決めた。満足のいく行程で購入まで漕ぎつけた、と思っていると、最後にポイントプレゼントキャンペーンの紹介(セールス?)。どこかの国の必殺技くらいにしか思っていなかった“格安SIM”のことが少しわかった。
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帰宅して眼科へ。ペッパー君みたいなお兄さんに検査してもらう。使っているコンタクトのゴロゴロがつらくて、とても毎日装着できないことを伝えると「そうですよね〜、◯◯さん(私の名前)はかなり乱視が強いので違和感はあると思います。」と流れるように答えてくれてペッパー君。「目薬や装着液を使ってもあまり軽減しなくて…」と言うと、「え…?装着液ですか…?」と人間になってしまった。装着液ってハードコンタクトにしか使わないらしい。「(ゴロゴロするのは)慣れれば感じなくなりますかね〜」と言うと「慣れませんよ〜。ずっと違和感は残りますよ。」とペッパー君に戻った。
梨の皮を剥いて、カットして、今までで1番カットされた梨っぽい造形になって嬉しい!包丁を新しくして良かった。
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8月30日 夕食のお誘いメールをもらった。 職場の飲み会が無くなったご時世でとても助かっている身だけれど、少人数の少し心落ち着ける人選の会だと、行きます!と返事をしてしまう。 (食事の席に変わりはないので、少しずつこれから憂鬱度が増していくのだろうな。) でもお誘いメールに“参加してくれると嬉しいです。夕食を取らない派であれば飲み物だけのオーダーでも構いません。ご一緒できるのを楽しみにしています。”とあり、ならば!となったのかも知れない。 基本的に、他人から気を遣われてしまうタイプだと思っていて、(こんなにしたら逆に相手に悪いかな)と不安を抱かせてしまうくらい気を遣ってもらえると嬉しかったりする。(だから、家族や身内の無礼にしょんぼりするし、いつまでも引きずったりする。)
妹と喋れていた頃、その最後の方は彼女とそんな感じの関係でなんか良かった。祖母のお葬式を中抜けして一緒に帰った時、少しお互いの近況を話して、お葬式も大事だけど、テストや課題や明日の大事なことがあるよね、みたいな話をした気がする。
上司の思いつきで明後日は都庁へ行くことになった。昼食問題は自分に正直になって乗り越えよう。
職場で2日連続で病欠した人がいて「また病んでいるんじゃないか」「お前何かしたんじゃないか」みたいな会話が飛び交っていた。 その人がお休みすることで仕事が増えることの迷惑より、ただ何か面白がって言っている愚痴に聞こえて、とっても私は落ち込んだ。
明日で8月が終わる。暑中見舞いは2通お返事が来た。
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8月31日 今日は何もなかった。 そんなことはないはず。だけど、今日は何もなかった。
9月1日 都庁へ行った。1階のエントランスの巨大なピロティが、何かの搬入口みたいな空間なのに人だけが通っていて不気味。 ロビーにはアルソックの警備ロボットがウロウロしていて可愛い。 ずっと閉鎖されていた45階の展望室は、なんと今日から再オープンのよう!警備員のおじさんが「ちょうど今日からなんですよ。」と教えてくれる。 用務まで東京観光案内所で23区と市区町村のパンフレットを眺めて、再来週行く予定の府中市のお散歩マップを手に入れた! 隣は全国都道府県の観光マップが揃っていて楽しい。月替わりショップは今日から山梨県で、オープンしたてなので信玄餅の入荷数を数えていた。
用務が終わり、昼食に行くみなさんを見送って展望室へ。新宿から眺める東京は、何かありそうで、特別何もなくて、意外と住宅街が細々とよく見える。 誰でも弾けるピアノに人がたくさん並んでいて、代わる代わるに上手に演奏していた。みなさん力強いタッチ。
午後から職場へ戻るため、中央線に乗る。 平日の昼間の中央線っていろんな人がいる。ビンテージっぽいTシャツとキャップ、短パンにサンダルを身につけて、手にはフライトの本があり、昨晩の音楽イベントのストーリーを投稿している男の人がいた。
職場に戻ると、昼食をとれない、人前で食べられないことを、また今日も明るみにしてしまい、そのことを話されているな〜小声で遠くで、というのを察知したりした。あと都庁のどこかに傘を忘れたことに気がついた。
帰り道で稲妻を5回見た!
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9月2日 聴く・見る・読む、何を受け取っても、どこかで気持ち悪いレーダーが働いてしまう日。何も聴きたくない見たくない読みたくない。なので、自分の頭の中で健やかな都合の良いイメージやストーリーを流していた。
今日も何もなかった。 でも、以前同じ部署だった方にばったり会って「相変わらずかわいいですね〜」と言ってもらった。 「ヘッドホンおしゃれですね。」と言ってもらい、でもただのファッションなんです、ファッションといえば◯◯さん(相手の名前)のメガネっておしゃれですよね、といつも思っていたことを伝えることができた。「眼鏡はね、こだわりがあるんです。」と言っていた。眼鏡市場で買っているとのこと。
掃除をして爪を切って写真を撮って梨を剥いて花の水を換えて鏡を磨いてお香を焚いて洗濯をした。
場所性の本に、写真や芸術作品を作る人は場所のアイデンティティの要素をダイジェスト的に捉える、みたいな文があり、ある作家は、以前住んでいたプレーリーの土地を、グミの匂いの中に見出した、とあって、その作家の作品を観たくなった。
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amrgamata · 8 days
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虚ろゆらゆら misskeyまとめ #2
「ひらひらふわふわして落ち着かぬの……」
由良が小さく抗議する。けれど、僕の持っている服で由良でも着られることの出来る服といえば、今由良が着ているものしかなかった。文化祭で着せられたぎりぎり制服に見えるか見えないかくらいの女子向けの服だった。 と、いうのも、である。 今日僕と由良は、一緒に外へ出かけるのであった。可視化した由良は、僕に会う前になる事の出来た「霊体化」が出来なくなってしまったらしく、僕としては大変不本意なのだけれど、僕の持っている服を着せることにした。無論、こないだの「お菓子事件」再発防止の狙いもある。
「由良だって男物着るのは嫌だろ?」 「まあ、そうじゃがの。別にわしの普段着でもいいじゃろ」 「悪目立ちするよ。今の時代じゃね」
僕は変に注目を浴びるのが昔から嫌だった。ほぼ裏方に徹するような生き方をしてきたと言える。 それに、恐らく世間知らずの由良はあれやこれやと言葉を上げるに違いないと僕は踏んでいた。現に、テレビやスマホの画面に出たものにいちいち「あれはなんだ」と興奮気味に声を上げるのだから、それは簡単に予想できる。あらかじめル���ルを決めたところで、由良は自分の中で決めた方を優先する性格だから、僕の言葉に果たしてどれほどの抑止力があるのかどうかも分からない。
「とにかく、僕から離れないこと。いい?」 「何度も言わずとも理解しておるわ。わしとてここは住みよいからの」
ローファーの爪先をとんとんと地面にぶつけながら由良は言う。
「……まあ、誉め言葉として受け取っておくよ」
そう言って、僕は玄関のドアの把手に手を掛ける。 由良が息を呑み、こくりと喉を鳴らした。
ーーーーーー
ふはあ、と由良がやっと息を吐く。 由良の喉がつっかえてしまうのではないかとというほどに、由良はパンケーキを口に運び続けていたから、僕はなかなか訪れない由良の呼吸を心配していた。 両手でカップを持ち、由良はそれに入っていたミルクティーを一気に飲む。飲み終わり、満足げにまた息を吐いた。
「こんなに美味いものが世の中にあったとはのう……」 「僕にとっては日常なんだけどね……」 「てれびやすまほだけでは世界は完結せぬのじゃな」 「知らなかったの?」 「言うてみればわしは『そういう設定』じゃからの」
メタいな、と僕は思う。由良がスマホを使うことで、確かに由良の世界は広がっていた。先程の言葉も、恐らくはネットサーフィンをしていて見つけたのだろう。
「夕陽は食わぬのか?」 「さっき言ったように僕にとっては日常だからね」 「日常的にこのようなものを食うておるのか、お主」
唇を突き出し、由良が抗議する。
「それ食べたら帰るよ」 「まだ回りたい場所があるのじゃが」 「だめ。また来週」 「……『また』があるのじゃな?」
したり顔で由良が言う。都市伝説とはいえ外に出ないままでは気が滅入ってしまう。そう考えたのと近所にカフェができたできたからという理由で、今日の外出は計画されたものだった。
「次は『げえせん』に行ってみたいのう」 「はいはい。考えておくよ」
子供のようにはしゃぐ由良を見ながら、僕は由良は都市伝説としては何歳なのだろう、とぼんやり思った。
ーーーーーー
濡鴉の眼を閉じて、由良が何か考え事をしていた。 口の中で何かを言いつつだから、僕は少しばかりそれが気になってしまう。 手は指先だけ合わせ、それから十分程度過ぎた頃に、由良はやっと眼を開けた。
「考え事?」 「いや、会話じゃよ」
由良の言葉に、僕は面食らう。 明らかに由良は独りでいた筈なのだが。そう思っている僕の考えを見抜いたのか、由良はにまあ、と笑う。
「気になるか?わしが一人でいたにもかかわらず『会話』という言葉を使った理由が」 「……気になるなんて言ってないだろ」 「強がらなくともよい。眼を見ればわかるからの」
胸に手を当て、由良はふふん、と鼻を鳴らし威張る。その態度に僕は少しばかりかちりと来たけれど、僕は言わないでおいた。
「『カシマアヤコ』を知っておるか?」 「カシマアヤコ……確か、『かしまさん』って怪異の本名の一つだよな」 「知っておるなら話は早いな。わしはアヤコと話しておったのじゃ、交信を使ってな」 「交信?テレパシーみたいな感じか?」 「ああ、そうじゃな」
人がスマホや電話で話をするように、都市伝説も離れた場所にいても話ができる、そういったものだろう。
「……カシマさんが知り合いってすごいな」 「そうかのう?」
由良は言いながら、こて、と首を傾げた。
ーーーーーー
「……「妖怪神社」に、花見?」 「そ!七神も行こうぜ」
鈴渚神社ーー通称「妖怪神社」の次期当主である頼山が僕に言う。
「……合コンじみてないよな」 「おう、その辺は大丈夫。今度ばっかしはな」
去年行われた「花見の皮をかぶった合コン」の悲惨さを思い出したのか、頼山は苦笑いする。去年はとにかく、女の子達に振り回されただけだったのだ。
「でも妖怪神社って桜あったっけ?」 「いんや、梅見ってのがあるらしい。梅の木なら何本かあるぜ」 「ふうん……」
僕が気のない返事をすると、頼山は食いついてきた。
「んでんでんで、七神も行こうぜ?」 「どうせ行かなかったら会長になんか言われるんだろ……分かった、行くよ」
溜息を吐きながら、僕は言う。瞬間、頼山の表情がより明るくなった。
「ドタキャンとかなしだかんな!」 「分かってるよ」
バタバタと足音を立てながら、頼山H廊下を走っていく。
「梅見か。久しいな」 「そうなんだ……って由良?」 「ああ、そうじゃぞ」
ふよふよと浮きながら、由良が応える。いつからいたのか、どうやって学校まで来たのか、それらは僕にはわからずじまいだ。
「……僕以外にも見えてるの?」 「夕陽だけじゃろ。勘の鋭いものなら見えるかもしれぬがの」
含み笑いをして、由良は僕をちらちらとみる。訊かずとも、僕と頼山の話を聞いていたのだろう。
「わしもついていってもいいじゃろ?」 「……はあ」
僕の溜息で由良は全て分かったのか、嬉しそうにくししっ、と笑った。
ーーーーーー
ちちち、と雀が鳴く。 見上げれば、満開の梅が誇らしげに咲いていた。
「へえ、じゃあ君って七神の従妹なんだ?」 「多少古くさい喋り方はするがの」
由良の声がして、僕は木の上の雀から由良のいる方へ眼を向けた。そしてよく化けたものだな、と感心する。 今由良は「人間として」怪異研究会の面子と顔合わせしていた。怪しまれないように僕の入れ知恵はしてあるから、ちょっとやそっとのことじゃ由良の正体はバレないだろう。
「じゃあ、夕陽くんがなんか楽しそうだったのって、由良ちゃんが来てたからなの?」 「まあ、そうなるかな」
僕は苦笑する。方向性や意味合いは多少違えど、それに変わりはない。
「余程夕陽くんは由良くんを気に入っているのだね」 「……そう見えます?」 「見えるよ。そして由良くんも夕陽くんを気に入っている。違う買い?」 「わしは夕陽を好いておるぞ。夕陽は優しいしの」
由良が会長の問いにそう応えると、頼山と大鳥がひそひそと話をする。その話が聞こえずとも、大方は想像がつく。僕と由良の間に恋愛感情があるのかどうか話しているのだろう。
「それにしても、見事な梅じゃ」
むぐむぐと三色団子を食べながら由良が言う。それに僕は頷きを返した。
「『妖怪神社』なんて言われてるのにね」 「うぐ。それを言うなよな、七神……」
がっくりと、頼山が肩を落とす。次期神主様にも、色々あるらしい。そう思いながら僕は由良と同じく、三色団子に手を伸ばした。
ーーーーーー
「由良ちゃんっていっぱい都市伝説知ってるんだねぇ」
すっかり酔った頼山がそう言葉を発する。それに大鳥も頷きを返した。会長も、眼を細めて感心している。僕だけ一人、由良は都市伝説なのだから当たり前だと思っていた。 それにしても、と僕は思案する。由良がここまで完璧に化けることができるのを僕は知らなかった。一緒に住んでいるとはいえ、まだ由良について知らないことはありそうだ、と僕は思い、くぴくぴと音を立てながら梅酒を呷る由良を見る。
「……由良って酒飲めたんだな」 「なんじゃ夕陽、わしが幼子のような見目じゃから呑めぬとでも思うておったのか?」
僕の呟きに由良が不満げに答えた。僕はそれに、またも苦笑しながら首を横に振って否定の意思を伝える。
「ふん、どうじゃかの……それにしてもこやつらは弱すぎるのではないか?」
ちらり、と由良が酔いつぶれて眠っている頼山と大鳥を見る。ついさっきまで起きていた気がするのだが、と僕は微かに首を傾げる。
「……二人が眠っている今だから、突っ込んだ話をするけれどね」
酒の入っているらしい紙コップを傍らに置いて、会長が切り出した。
「由良くん、君ーー人間じゃないんだろう?」
その会長の言葉に、僕と由良の動きはぴたりと静止した。けれど会長はお構いなしに言葉を続ける。見れば、会長は涼しげな顔をしていた。
「え、と……会長……」 「そこまで警戒しなくとも平気だよ。私も此岸と彼岸で言うなら『彼岸側』のものだからね」 「……は?」
由良が会長の言葉に訝しげに短く言葉を発する。 途端、寒気がぞわりと背筋を駆け上がった。
「白面金毛九尾の狐、とでもいえば、分かるかい?」
ぶわり、と風が吹く。一瞬見ないうちに、会長は以前由良がやったかのように、腰のあたりから九本の金色の狐の尾を出してみせる。 再び会長は目を細めて、くけけ、と嗤った。
ーーーーーー
「……うまく化けたものじゃな」
じとり、と由良が会長を見る。
「心得てはいるからね。化け方も、騙し方も」
くい、と酒を呷り、会長は涼し気に言った。
「わしに妖気を悟られないとはな」 「千年は生きているからね」
目を細め、会長は再び由良に応える。
「殺生石になって見世物にでもなったかと思ったが」 「結構前にその姿は辞めたよ。今は私の……そうだな、跡取りがやってるかな」 「……あ、のー」
たまらず、僕は言葉を上げる。一つ引っかかることがあったからだ。会長と由良、四つの眼が僕を見る。
「跡継ぎ、って……?」 「うん、いい問いだね。今や九尾の狐は一個体じゃないんだ。下手すれば神格化すらされてる」 「……それで、近親婚でもしておるのか?」 「まさか。そんなことしていないよ。過去にそういった行為に手を染めた九尾の狐もいるかもしれないけれどね。私にはそいつの血は継がれていないよ」
くつくつと笑いながら、会長は由良と僕の言葉に流暢に答える。そして、「それじゃあ」と言葉を続けた。
「今度はこちらから訊くけれど、君はいつ顕現したんだい?」 「『顕現』などと大それたものではないがな。この姿はまあ、ふた月ほど前になるかの」 「ふた月、ねぇ……」
じ、と会長が由良を見つめる。 そしてやおら、うんうんと頷いた。
「その程度だと思ったよ。由良くんは化けるのがあまりうまくないからね」
会長の言葉に、由良が息をのむ。
「……わしに化けるのが下手じゃと言いたいのか?」 「うまくない、と言ったまでだよ」 「同じことじゃろ」
握りつぶしそうなくらいに強く握られていた缶の酒を一気に飲んで、由良は会長を睨みつける。
「ちょっと、由良……」 「なんじゃ夕陽」 「睨みつけるとかさ、やめてよ……?」
僕がそう言葉を上げたことで、由良に睨みつけられるのは僕になった。そういえば狐の眷属は階級に煩いのだっけ、と以前読んだことのある噂話を集めたブログの文言を思い出す。会長はもしかしたら、僕と由良が一緒に暮らし始めていることを感づいていたのかもしれない。僕はぼんやりと思う。
神格化までされた九尾の狐、会長と、一般と言っていい狐にしか化けられない由良。どちらの方が立場が上なのか、そういったことにあまり詳しくない僕でも分かる。 その九尾の狐に、遠回しでも「化けるのが下手だ」と言われてしまったのだ。由良の高いプライドが傷付けられているのも、また火を見るよりも明らかだった。寸前で「睨みつける」で済まされているだけで、本当は襲い掛かりでもしたいところだろう。そんな由良をなだめつつ、僕は眠っている頼山と大鳥に眼を向ける。無論、二人にまで止めに入ってくれれば、なんて思ってはいないけれど、せめて目を覚ましてくれれば事態が好転するかもしれないと思っていた。
「……起こそうか?二人を」 「え?」 「催眠術はもういらないだろう?今日はお開きにして、夕陽くんと由良くんは帰るといい。想一くんとひすいくんは私が送ろう」
僕は眼を瞬かせる。そして、感づいた。 頼山と大鳥は酒につぶれて眠ったのではなく、会長の催眠術にかけられたのだ、と。
ーーーーーー
「アヤコに訊いたぞ。彼奴、名を『時揃』というのじゃな」
梅見から帰り、ふくれっ面のままの由良がそう僕に言う。
「……ああ、会長のことか」 「彼奴以外に『時揃』などという奇天烈な名を持つ奴なぞいてほしくないわ」
苦々しく、けれど確かな信条を持ったような眼で、由良は僕を見上げる。
「で……その会長がどうかしたのか?」 「話はそれに終結するが、九尾の狐というのは矢に射られて死んでおるのじゃ。つまり、」 「会長を矢で射ろう、って?それは喩え僕が許しても世間が許さないよ」
僕が由良の言葉をばっさり切ってそう断言すると、由良は再びふくれっ面に戻った。
「何故じゃ」 「なんで、って……会長は人としてこの世界に生きてるからだよ」 「わしにかかれば証拠なぞ残らんぞ」
ずい、と顔を僕に近づけ、由良はまだ不機嫌そうに言う。
「郷に入れば郷に従えっていうだろ?人の姿で顕現した以上、由良も人の仲間ってことだよ。知ってると思うけど、人の世界だと殺人は許されない」
僕の言葉に、由良は少し考えるような仕草をする。ぐるうり、と一度首を回して、由良は溜息を吐いた。
「……お主に言い敗かされるとはな」 「納得、した?」 「悔しいがしたな」
由良は呟いて、苛立ちを表すようにがしがしと頭を掻いた。
ーーーーーー
「七神ィー」
廊下で名前を呼ばれて、僕は振り返る。声の主は頼山だった。ひらひらと手を振りながら、こちらへ向かってくる。
「頼山。どうしたんだ?」 「どーしたもこーしたもねぇよ。こないだの梅見、俺とひすい寝落ちしたじゃん?アレで由良ちゃん怒ってねぇかなーって。そんだけ」
バツが悪そうに、頼山は言う。まさか「あれは会長の催眠術で」なんて言えるわけもないから、僕は心情を隠しながら首を横に振る。
「んお。そうなのか?」 「うん。……まあ、別のことでイラついてはいたけど」 「別のこと……?」 「ああ、こっちの話」
僕の言葉に、頼山はじっとりと僕を見る。けれどそれはほんの一瞬で、すぐに「ま、いいや」と頼山は話を変える。
「会長が言ってたんだけどさ、次の心スポ巡りどうするか、だってさ」 「……なんでそれを僕に?」 「いんや、由良ちゃん都市伝説に詳しかったからさ」
ひすいの意見も取り入れ済み、と付け足して頼山は言う。
「……あれで由良ってかなり世間知らずだけど」 「あー……それはあの喋り方だしなんとなく予想できるわ」
ケラケラと笑って、頼山はすれ違いざまにばしばしと僕の背中を叩いて「ま、由良ちゃんに宜しくな」とと言い残して行ってしまう。 後には、「由良にそんなことを聞いたところで有用な意見が得られるのだろうか」と思う僕が残された。
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psytestjp · 16 days
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kennak · 19 days
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タイトルの通り。末端のケースワーカーやってるけど最悪。そろそろ異動かなってくらいにはやってる。年度末を控えてるけど、正直今年で終わりじゃなかったら辞めてると思う。何が嫌かって言うと、命を預からされるところとやりがいがないところ。あと制度が古過ぎるのが目につくところ。そこに付随する様々なイライラ。人を見下しちゃいけないって道徳で学ぶけど、一人一人寄り添って真面目に対応してると持たない。最初は真面目に話聞いてたけど、酷い目に遭うことも多かったし気持ちの面で負担感があった。今はナマポほとんどをクズだと思ってるし、人生の価値は年数とかじゃないなって思った。あいつらが80年生きてこっちがその半分にも満たなかろうが、間違いなくこっちの人生の方が総合的な価値も世間への貢献も上だと思う。配属されたらいきなり担当させられて、あれこれ相談に乗ったり時には厳しく赤の他人の生活のお世話をさせられる。100は行かないけどそのくらい。みんながみんな手取り足取り教えないとってレベルじゃないけど、一人で生きていけないような奴は全然いる。そんなことする意味ないくない? 言うこと聞かないで好きに酒飲んだり勝手に退院したりして、それで死んだら公務員が悪いんだって。叱る以外になにしろってんだよ、20超えて自分で出来ない、理解しようとしない方が悪いだろ。親族も文句言う前に引きとって手前でやれよ。誤嚥で施設が訴えられてのあったけど、あんな感じのことなんかよくある。養えない支えられない、そのくせ一丁前に訴えはする親族。生きてるうちは親族の役に立たないし地域住民のお荷物だけど、せめて死後に親族のゴネる理由になれたのは生まれて来た意味があったのかもね。なんで知らねえやつの人生背負うんだよ、金と介護とかの手間を消費するだけの人生なのに。あとやりがいもない。大体のこっちがやるのは家に行って話聞いて、金出せる出さないの話するだけ。何でもかんでもとにかく金が出るか聞かれて、例えばテレビの修理代は出せないって言ったらすぐゴネゴネ。大人しく諦める人ももちろんいるけど、面倒臭いやつはとことんワガママ。議員連れてくる時もある。そう言う時はもっと面倒臭い。楽だから金出すって言ったって税金なんだし、それに一回金出すとズルズル文句を言うから基本は渋る。でもまたゴネ始める。普通の人って欲しいものあったら働くなり節約なりすると思う。それをまず職員にゴネ続けて目標達成しようっておかしくね? 働けよ。仕事よりゴネるの楽なのは理屈はわかるけど、他の住民の皆さんは働いてそれを実現してんだよ。なんで当然のようにあれもこれも要求できるのか教えて欲しい。引越し代、マッサージ代、タクシー代とかは自治体が待つことが多い。引越しはこの中だと要求されることは多くても金出すことはすくないか。意味わかんねえ。引越しなんか普通の家はそうそうしねえし、マッサージなんて受けねえ。タクシー使わねえと病院行けないなら、入院かお看取りのある施設でもどうぞ。あと制度の作りが甘い。と言うか性善説すぎるから悪いこと考えてる人に対して後手に回るし、古いから最近のお金の流れの実情に沿ってない。て言うかみんな言えば働くって前提だから、病気ですって言われるとまた手間かかる。ちょっと腰が痛い、体がだるい、気持ちが乗らないですぐ病院の先生は診断書書くから、そうなるとこっちはお手上げ。病気ですって言われたらもう何も言えなくなる。そんくらい通院して我慢しながら仕事してる人もいますやって言ってやりたい。でも言ったら揉めて面倒になるから任期ギリギリまで見逃すのが一個人から見たら一番楽、でそれが横行する。不服審査とかも簡単にやれてスラップ訴訟みたいに出来るし、それでこっちの体力使わされるのもしんどい。制度の悪用に弱いのはどこもそうかもだけど、こっちは不正受給やらなんやらある上に、税関係みたいに本人の意思をガン無視して差押とかまだはできないのが歯痒い。色々言ったけどセーフティネットに頼る人間がみんな嫌いなんじゃない。障害があっても出来るだけ働いてる人もいるし、高齢でフルタイムは無理だけど調整しながら頑張ってる人もいるし、シングルマザーで逃げて来た中仕事と子育てに奮闘してる人もいる。自分にできることをやった上で、冷静にこっちに相談を投げかけて欲しいし、実際にあったこと、貰った金をちゃんと言って欲しい。これって無茶言ってないと思うんだけど。これが出来ないから社会の爪弾きなんだろうけど。確かにこの制度がなくなると治安悪化ってのが見えてくるので、何かしらの形で必要なのはわかるけどもっと縮小していいんじゃないかな。それか事務系の公務員じゃなくて、警察とかそう言フィジカルに長けた人がやるのがいいと思う。言ってわからない平均未満の人間なんだから、暴力で躾をやってもおかしくないと思う。先月まで子供関係の伝票処理してました! みたいな人がいきなり来て金返せとかヤクザ上がりと揉めるのってめっちゃ辛いと思うし辞める人がいても不思議じゃない。でもそれで辞めちゃうって生活保護の連中が生きてることによる外部不経済だろ。なんでこんな連中のせいで人生を狂わされるのかわかんねえ。総じて気に食わないことばっかり。他の仕事も気に食わないなってことはそりゃあるけど、この仕事の不快感はまた別だなと思う。俺の税金がこんな無駄遣いされてるなってのを見るのはやるせない。その分社会保障費が減れば家計に余裕も生まれるし、子どもだってもっと持てたかも。貧困の問題で切り捨てるのか! みたいなこと言う人いるけど、こんな連中のためにみんなが共倒れする方が馬鹿らしい。こんな連中に税金泥棒って言われると鏡をくれてやってその分収入認定してやりたくなる。もっと金締め上げて生きていけなくするべきだ。全体の割合でいくと年寄りばっかなんだけど、若い時備えてなくて死ぬ間際は生活保護って本当にムカつく。俺たちが老いた頃には亡くなってるだろう制度に乗っかってオムツ代貰って偉そうに。しかもたまーに仕事の仕方とかで説教してくるやついるんだよな。いやそろそろ人生の総まとめの時期だろうけど、人に説教できる人生じゃないじゃん。障害に関しては一括りにすべきじゃないと思う。身体、知的と大体はそのお母さんの世帯とかは生活保護と別制度で手厚くして欲しい。知的の人ってすごい素直なんだよ。仕事をする意味が収入以外に日中活動の確保とか社会とのつながりとか、他の側面でやるべきって事情もあるけど、結構ちゃんと仕事してこっちに報告してくれる。普通に話して普通に言ったことを聞い��くれるから、話をしてて全く困らない。噛み砕いたりする時や、メモにまとめて渡す時もあるけど、別にそう言う個別対応は苦じゃない。あの時やってくれたとかでその後ゴネることはないし。精神障害者はもっと働けって思う連中や、処方された薬を自己判断で飲まずに困ってるようなのが多くて最悪。ここの連中も割と職員からは嫌われてると思う。うつとかでも作業所に行くなりしてくれてればまだわかる。仕事をまだやろうって意思を感じるし。後結構いるのは発達もあるのかもだけど、精神的に辛いですってゴネまくって仕事をしない若い奴ら。20代で家にいて、いざ訪問すると普通にゲーム機とかあんのね。こいつらゴミだなって思う。このまま一生制度に世話になるんだなって、何も生み出さねえ国民ガチャのハズレ。あと人格障害の連中は本当無理。比喩じゃなく死んで欲しい。一番手間がかかるし、精神的にも負荷がかかる。無理と言って理由を述べても、自分の納得する答えが得られるまで延々電話したら窓口に来たりする。仕事もしないし友達も家族もいなくて暇だから。大体家族は手を引いてることが多い。病院やらも出禁になり、関わりがあるのが生活保護と障害の窓口だけになるけど、こっちは出禁までは出来ない。聞く価値のない話を丁寧に繰り返して時間を取られて残業する羽目になるのはもらえる金より精神的な負担が重くて辛い。後ヤクザとかすぐ怒鳴るタイプの連中。こう言うのに性別関係なく担当をつけるのは社会の進歩だなぁと思ったのも束の間、お尻を触ったりするような奴がいるらしくそれじゃ意味ないなって思った。てかそんなのあったらすぐ通報したらいいのに。職員の尊厳の問題なのに何を躊躇ってるのかわからない。実際こいつらも言い合いになると本当体力使う。たまに病院でもらった薬転売してるやつとかいるし。普通の国民の生活とかなり切り離されてるし、他に色々日本に問題があるからこれも取り上げられないけどこれも早く直した方がいい問題だと思う。社会の汚物を生かす意義のあるマイナスの仕事です。月曜もまた皆さんの税金を無駄使いしますね!
生活保護のケースワーカーやってるけどもう無理
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stormfrozen · 1 month
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塔の頂上・最終戦2
ふっ!!
立ち上がる「アヴェック・スター」の6人。そんな彼女達に、プラズマを放出する拳がNo.OOから放たれた。地面を走り迸る電流が、6人を襲う。
そしてこれも!
鋭く切れる花吹雪の一撃。全員の逃げ場を塞ぐ様に満遍なく周囲に吹き散らした。No.OOの素早い攻め立てに、策が思いつかない6人。
どうしよう!このままじゃ… …取り敢えず、私とキャステラナでこの攻撃を何とかする。 …それはつまり、パトリオットがあの電流を消し飛ばすのか?
逃げながら作戦を立てるキャステラナ、パトリオット、サランバート。
私とアーレンティで花吹雪を消してみる。それで良い? …ああ。上からやってやろうぜ。 でもそうなると、誰がNo.OOに攻撃を入れるんですか?
続けてアーレンティ、トラヴェリア、グルナッシュの方もどうにかして打開策を立てる。
トラヴェリアが一撃入れて、サランバートと私で追撃入れれば… いや、あの。この素早い私でも、あの敵の上取れるか分かりませんからね………でも、やるしかありません。
そして6人は散らばり、No.OOの真正面からパトリオットとキャステラナ、アーレンティが向かった。
小賢しい真似だ。一層の事、一気にやってくれる!
2発目のプラズマの拳が襲い掛かる。電撃の衝撃波は空にいたキャステラナとアーレンティに容赦無く降り注いだ。
きゃあぁ!! うぐっ……!!
しかし、飛ばした衝撃波は1発目のみで、それ以降はパトリオットの地震の衝撃により消されてしまった。
これ以上は、やらせないわ。
そして、そこから爪の刃を出し、No.OOに斬り掛かる。だが………
成程。面白いアイデアだ。でも………一歩遅かったかな?
花吹雪を再び撒き散らして6人の視界を遮り、御構い無しにと奪った視界の先から爪で振り払うNo.OO。
いやあぁっ………!!
斬撃を受け、吹っ飛ばされたパトリオット。構えた盾にNo.OOがぶつかり、傷を負わせる事には成功した。
うわぁ!! おっと!!
素早く蜻蛉返りされ、後ろから攻撃を喰らった所為か飛ばされたにも関わらず一瞬判断が遅れたNo.OO。そして、サランバートとグルナッシュは当初の予定通り追撃した。
えぇーい!!
翼を広げ、煙幕もどきの花吹雪を消し飛ばす。だが、それに紛れて突撃をかますNo.OO。その勢いでキャステラナとアーレンティを始末するが、その後ろからトラヴェリアが不意打ちを仕掛けて来た。
…!?………あああああっ!!
しかし、No.OOは神速で近付き爪を薙ぎ払う様に振り回した。またしてもトラヴェリアは吹き飛ばされ、サランバートは攻撃こそ間に合ったものの自身も反撃されてしまった。
えい!!
その間に、グルナッシュは冷凍の光線銃を心臓部目掛けて撃ち放った。これに気付いたNo.OOだったが低音の冷気で凍えてしまい………
パリィン
音と共に壊されたのは、植え付けられた外付けのAIモジュール。グルナッシュが爪に刺さった所でNo.OOの動きが止まり、そのまま声が聞こえてきた。
………あ………私、どうしてこんな所にいるの………!?こんな見た事無い場所に………
………やっぱり君………人間なんだね。
植え付けられた人格は、彼女の本来の性格すらも支配していたのだった。グルナッシュは刺さった爪を抜き、No.OOに聞いてみる。
…君の名前は? ………私は………あ!………私の名前…「ナチュラル・ミスティ」です。
それまであった事務的な口調が嘘の様に、本来の姿であろう女性らしい台詞が聞こえた。それを聞いたグルナッシュは確認を取る為、証明が出来る物を有るかどうか聞き取りを続けた。
………学生証? ……少し前の物ですけど、これで良いですか?
目を瞑り、流れた血を拭いてグルナッシュは続けた。
元々はこのグゥエルに仕えていた訳では無い?君に何が起きたのか教えてくれないかな。 …はい。元々は普通の人間でした。
「全てはあの時………私はあの人に壊されました」
「『君………この俺と付き合わないか?大丈夫、何にもしないから!』」
「その時私は断ったのですが、どうやらあの人は私の素性を知った上でどうしても………と言わんばかりに、後ろからの影打ちで私は倒されました」
「『どんなものかな。ようこそ、俺の巣………双拳の塔へ。まさか君が………幻の子だとは思わなかったよ、ここから先は好きにやらせてもらう』」
「そして、私は高性能AIの人格を植え付けられ、人間としての理性と感情を失い………まるで心を、支配されているかの様でした。伸ばしていた長い髪の毛も切られて、本来の私を消し去ろうと、あの人はコードネーム…No.OOを与えて私を好き勝手に使い始めました。それが全てです」
………私は自身の持っているこんな力、使いたくありませんでした。だからあの時断ったのです。
ここに至るまでの経緯と一部始終を語ったNo.OO…もといミスティ。と、その時。彼女の体が光り始める。
…ミスティ。貴方、髪の毛が………!
あの時、髪を切られ短くなっていたミスティの髪の毛。その後ろ髪が、再び伸び始めて長くなったのだ。
…あれ…?どうして…?
俄には信じ難い事だが、それが今現実に起きている。グルナッシュはAIを見つめ、倒れている「アヴェック・スター」の仲間を起こして戻る。
あの、グルナッシュさん!どちらへ? 神様を、起こしに行きましょう。グゥエルを倒さなければ、全て終わりになりません。
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misasmemorandum · 2 months
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『ゴサインタン ー神の座ー』 篠田節子
久しぶりの篠田節子。農家の跡取り、外国人妻とそのディーラー、自己中な男たち、妻を「しつける」と言う姑と夫/男たち。
主人公の母は家事に介護に息子の面倒に地元の世話に家の存続にスーパーウーマン。主人公は��男で、長男はアメリカに逃げた。主人公の結木(ゆぎ)輝和が結婚相手を見つけるために外国人女性たちとの結婚を斡旋してくれる集まりに行く。母同伴で、母親にも女性の選択権がある。母同伴ってのがなんじゃそれと思ったが、これは、姑として嫁を教育するのは母だから、なんだよ。はあ、そうですね、だ。輝和は脚の綺麗な女の子を選ぶが、母親が日本人っぽい外見をした女の子が良いと言うのでその子にし、ネパールの名前が呼びにくいので勝手に「淑子」と名付ける。これがねぇ、中学生時代に好きだった女の子の名前で、「淑子」と結婚後に偶然出会って不倫関係を結んだりするんだよ。はぁ〜〜。篠田は本当、アホ男を書くのが上手い。
「淑子」は日本語にも日本の生活にも中々馴染んでくれないが、受け入れる方は自分達が日本のものだけを押し付けてるとは全くわかっていない。傲慢。あれこれあって、母親が実は葛藤してるってのも見せたりした後、「淑子」生き神様になる。そしてこの地域の豪農だった結木が先祖代々残してきたものを施す。何故ならこれらは「百姓たちの血を吸って築き上げてきた結木の家の名誉と富」「人々の恨み、苦しみ、悲しみが染み込ん」だ「この家の底深くに溜まった念」だから。ふむふむ、これってカルトの手口でもあるよね。
この結木の家のために借財の取り立てなどの汚れ仕事は、主人公の世代の場合は母親がしていたようだ。照一はこれに気づいて、5千万ほどは施すことにする。そして、こうさせた「淑子」は高い「買い物」だったと思う。買い物だとお!!!と腹立ったのは言うまでもない。で、最終的には全財産を失ってしまう。どうすれば止める事ができるか輝和はわかっているけど動こうとしない。この人、とにかく自律的でないのよね。輝和もちょっと見えるようになったりするのか、最初から何となく見えていたのか。土砂崩れが起こる。助かった山持ちの山に入る(萩尾望都の作品を思い出す)。
「淑子」が体現する「神と呼べるもの」について
 人の姿を写すこともなく、名前もなく、人の言葉をもって世界と宇宙を語ることもなく、彼岸について語ることもなく、偶像によって人格化されることもない神。  病気を癒やし、失せ物を探し、身辺に迫った危険を知らせ、人々を安らかな気持ちに導く。たかだか人間、それも個人というちっぽけなものに対し、きわめて現世的な救いの手を差し伸べてくるに過ぎない、卑近で実用的な神。それでいてありとあらゆる生命の根源に立ち、時のその峻厳さを見せつける神。  それはある種の雰囲気として漂い、体を包み込んでいく森の霊気のようなものでもある。あえていうなら命をはぐくむ太陽光や自然の大気のような、あまりにあたりまえのものだった。(p438)
世間や家族から爪弾きにされた者たちばかりで共同生活。この団体に入ってしまったら、人はこれに依存してしまうのか?そういうタイプの人々が集まってるのか?ちょっと考えさせられる。
そうこうしてるうちに、生き神、パワーを失う。「淑子」行方不明になり、使っていた石も割れてしまっている。メンバーは「淑子」は入滅(生死を超越した境地に入ること、また、高僧が死ぬこと)したと考える。輝和は、「淑子」を母のように家の全てを取り仕切ってくれる嫁として考え、農家としてはもう消滅するしかなかったから、家を片付けてくれたと考えて折り合いをつけていたので、いなくなってしまったことに納得が行かない。「淑子」を自分の嫁として対処し見つけたいと考える。この「嫁」というのは、よその土地から嫁いで来て、家に仕えた歴代の嫁たち、母や祖母やその他の女たちのこと。
納得行かない輝和は探しに行く。結婚ディーラーがいい加減で詐欺だったかも知れないとわかる。「淑子」は「ある事情から一生結婚できないと運命づけられていた」人で、日本には仕事のためにやって来ていたのだが、お見合いの集まりに出させられるようになってしまっていたとある。輝和は女性支援団体、ネパール大使館などにも行ってみる。「淑子」の本当の名前をうろ覚えでしかない。「淑子」ことカルバナは見つかっていたがその間の記憶がなく既にネパールに帰国してる事がわかる。で、輝和、働いて資金を貯めて、淑子/カルバナを迎えにネパールに行く。いきなりのどえらい行動力に私は驚いた。
道中、輝和、どうやら英語がちょっとは出来る模様なんだ。これって、勉強はしっかりさせてもらって、しっかりやったってことか。次男だし農家を継ぐつもりはなかったってことかな。そして、淑子/カルバナに輝和の母が憑依していたようだったし、母親も農業は辞めさせたいと思っていたのか、次男だからいいと思っていたのか、ここら、読み手の考え次第だろうな。
カルバナに出会えるまでネパールの村で輝和は体を壊したり、水のパイプを直したり、橋を渡したり、色んなことを経験する。「淑子」の信者たちとの共同生活が役に立っていたり、また、自分の農家の息子としての経験が役に立つ。カルバナの村で輝和がここの風習/食事に慣れて行く。自分がカルバナに無理強いしようとしてたことを体験するんだな。ゴサインタン、ネパールでは「神の住むところ」だが、チベット側ではシシャパンマと呼ばれる「家畜が死に絶え、麦も枯れる地」を見て輝和は考える。
 自分はだれでもない。名もなく、素性もわからず、心さえない。永遠の闇の中を一瞬走るパルスのようなものだ。彼を彼と特定し意識させる肉体、空気や足元の岩に連なるこの肉体の無数の細胞が、結木輝和という意識を作り出し、ここまで連れてきた。  あれが神か、と和輝は深い藍色をした空にそびえる神の座の白い峰に向かい手を伸ばした。  あれが神だ。淑子は長い年月をかけて、自分をここに導いた。あの神の存在を知らせるために。  とたんに彼の中のもう一つの意識が叫び声を上げた。  違う、と。  あれは神などではない。褶曲した大地の頂点に過ぎない。  しかし人はそこに神を見る。  神はそびえる。神は五穀を実らせ、神は家畜を殺し、麦を枯らし、神は罪のないものをを殺し、罪のある者もない者も救う。神は突然現れ、何も告げずに去る。神に倫理はなく、もちろん論理もない。(pp641−642)
最後には輝和はこの地に住んで、カルバナに認めてもらおうと決心する。これって、良く考えたら、輝和が人間として成長したってことだが、こうするのは良いとしてそれより以前にああだこうだと言おうと思えば言えると思う。ま、もうそれは置いておいて、カルバナの能力は何だったんだろうかと思う。テレポーテーションもできるし、憑依もされるみたいだし。元々寺院に巫女として差し出されて初潮を迎えると同時に巫女としてはおしまいになってその後に日本の工場で働くようになったみたいなんだもんね。それが歴史のある豪農の家に入ってしまって、歴代の嫁たちの念のようなものを読み取って、特に姑が憑依したんだろう。現代の農家、農業のあり方、家族、結婚、宗教、共同体、などなど、色々と考えさせてくれた作品だった。
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nvi143 · 2 months
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不燃愛
ぽたり、と鼻から血が垂れる。外に出るのが億劫だね、と家でポップコーンを食べながら映画を見ていた。ちょうどラブシーンで鼻血が垂れた。それがあまりにも単純なエロで興奮する男子中学生みたいで、馬鹿馬鹿しくて、2人して肩を震わせて思い切り笑った。君が丁寧に、優しくテッシュでそれを拭った。「今日はキスできないんだね」と眉を下げたぼくに対して、君は額に唇を落とした。鼻にティッシュを詰めてるとこ「見ないで」というと、「そういうところも可愛いよ」と微笑んだ。じくりと肺の横が痛んだ。これが、ときめきか、と思った。そうして眠った。
朝が来た。ピクニックに出かける予定だった。カーテンから溢れる日差しは眩しく、目を突き刺した。鼻血のせいだろうか、貧血のように体が重かった。隣で眠る君が額に手を当てると、自分の温度の高さに驚いた。試しに体温を測ると体温計は38.2を表示した。ピクニックは今度行こうか、と眉を下げる君に今日行きたかったのに、と怒鳴り拳で彼を叩き、ベットの上で泣き叫んだ。君は眉を下げながら「君のためだよ」と謝った。僕は泣いても涙が止まらなかった。最近不安定みたいだ。体調も、感情も、何一つとしてコントロールできない。情けなくてさらに泣いた。シーツがべちょべちょになった。泣いている間に君は落ち着きなね、と1人でどこかに行ってしまった。僕のことを置いていくなんて、大嫌いだと、叫びながら泣いた。そのうち涙も枯れて、だるさが襲い眠りについた。暫くして目が覚めると、君がキッチンに立っていた。きみはあたたかいお粥を僕に作っていた。ベットに運ばれたそれをゆっくり食べた。味はおいしいとは言えなかったけれど、君の優しい味がした。そのあとみかんゼリーを食べて、歯を磨いて、君に頭を撫でられながら寝た。不甲斐ない自分すら愛されている気がして、またじくりと肺の上が痛んだ。
朝が来た。お互いそれぞれ仕事をこなし、やり過ごす毎日が続いた。パターン化された毎日でも、君と過ごす時間があればそれは幸福になった。少しのスパイスで格段と味が上がるカレーのように、僕にとって君は特別だった。ただ一つ、変わったことがある。よく体調を崩すようになった。心ではなく、体が。鼻血を出した時から段々と体が蝕まれる感覚がする。前より呼吸が浅くなり、足首が誰かに掴まれてるのではないかというほど体が重くなった。ただの風邪だろうと流していたが、君の心配もあり病院に行った。風邪薬を貰うだけのはずが、アルコールの匂いを嗅ぎながら、多くの検査をした。医者に告げられた結果は、悪いものだった。病名は長すぎて頭に入ってこなかった。愛の病だと言われた。最愛の人と一緒にいることで寿命が縮まるらしい。所謂、末期癌のようなものだった。彼との生活を続けると三日ほどで君は死ぬと、そう言われた。治療薬はなく、彼と離れることで長生きできると言われた。その日は家に帰り、君が帰ってくるのを待った。帰ってきた君には開口一番に具合を問われた。「大丈夫だった?」「薬は飲んだ?」「ちゃんと食べないと」と。僕は、「ただの風邪だったよ」と笑った。心配する君の姿が母親みたいで、それがまた愛おしく、苦しくて、すぐにトイレに駆け込んで、君に見られないように涙をこぼした。思わず出てしまう声を必死で殺した。僕は選択を迫られている。君と居れば死んで一緒にいられないし、君と居なかったら生きれるけど君は居ない。どちらも地獄だと、そう思った。その夜、僕たちはシーツの中で深く深く交わった。冷たいシーツと、君の温かい体に挟まれ、君の熱いそれを受け止めた。僕の中でどくりと脈打つそれから、君の心臓を感じた。何度も奥が抉られ、息が上がる。心臓がじくりと痛い。君にこうやって近づく度に、死ぬんだと、それが実感としてあった。君の背中の皮膚に爪を立てて激しくしがみついた。君を離したくない、離れたくない、離れていかないで。涙が溢れるのは、快感のせいにして誤魔化した。君の生温い性液を腹の中で感じるのすら、尊くて、虚しかった。僕を忘れないでという気持ちで、君の首筋に沢山のキスマークを残した。
朝が来た。今日は仕事を休むと君に言い、部屋を出ていく背中を見送った。君がいない時間に、僕は決断を下した。全ての荷物をまとめた。君との思い出のCDや、本、日記帳はゴミ袋に入れた。一冊だけ、君にあげた本だけを本棚に残した。最後の悪あがきだったんだろうか。君に僕を覚えて欲しい、なんて、呪いをかけるような気持ちで残したのかもしれない。夜、君が帰ってくる前に家を出た。僕の痕跡をできるだけ残さずに、僕は君の前から消えた。さようならという言葉も残さずに、温かい場所から自分で去った。飛行機の窓から小さくなる街を指でなぞった。僕の体温が冷たくなる感覚がして、静かな機内で涙を落とした。
何度か朝が来た。君の側から去って、1ヶ月ほど過ぎた。肌にはまだじっとりと、君の温かい感触が残っているのが辛かった。君から離れた場所で、君のことをなんとか忘れようと必死だった。昼間は仕事に追われて平気だった。それなのに夜になると、毛布にくるまっているのに寒くて仕方なかった。医者には離れた時の副作用として、低体温になっていると言われた。耐えるしかないと、そう告げられた。君に会いたい。会いたくて、仕方がない。数少ない君の痕跡を辿った。電話帳から消したはずの連絡先がメモに残っていた。衝動的に10円を握りしめて外に出た。数が減った公衆電話を探し出し、10円を数枚入れて君の番号を打った。ちゃんと君にお別れを言って忘れられれば、僕の体温も戻るんじゃないかと、安易にそう思った。呼び出し音の後に君の声が聞こえる。「もしもし」と僕が口にしただけで、君は僕が誰か分かったようだった。「ちゃんと、さよならを言えてなかったから」というと、君は「そういうの辞めてよ」と怒った。僕はその言葉に動揺して、「また君に愛されたい」と呟いてしまった。君は、苦痛を搾り出すように僕に言った。「僕は、君との恋や思い出をやっと仕舞ったんだ」と。その言葉を聞いて僕は受話器を下ろした。まだ時間は余っていたようで、10円玉がカランと音を立てて数枚返却された。君との物語はもう終わったのだ、というのを理解した。
何度か朝が来た。あれからまた数ヶ月経った。時々病院の検診に行った。レントゲンを見せてもらった。「病気の進行は完全に止まった」と医者に言われた。レントゲンには、心臓や肺に白いツタのような物が巻き付いているのが写っていた。医者曰く、これは骨のような物で、最愛の人の近くにいるとこれを育ててしまい、これが育ち花のように咲く頃には、心臓や肺を締めて止めてしまうと言われた。死ぬ寸前だと言われたのがよく理解できた。僕は君を完全に忘れるために努力をした。夜の街に繰り出しては、孤独を埋めるための恋をして、お酒を飲んで、冷たいベットで肌を寄せ合った。「君は、すごく冷たいね」とその子たちは肌を撫でた。僕の体温は君といた頃の体温には戻らなかった。心臓が高鳴る、痛くなるあの感覚が、恋だったとは思いたくなかった。
朝が来た。朝が来るのが怖かった。何も楽しくなかった。映画を見るのも、ご飯を食べるのも、音楽を聴くのも。自分の中の大事なピースが欠けて、そこの空白がどうしても埋まらない。そんな毎日が続いた。たまたま用事があり、君の住む街に行くことになった。半年だと、何も変わってはいなかった。君と住んでいた街は、温かかった。というより、君との思い出が温かった。気が緩んだ。君を捨てて、僕は傷つかないことを選んだのに、その温かさに許された心地になった。用事を済ませた僕は、自然に君とよく行っていたカフェに足を運んだ。日曜日、いつもの窓際の席。そこに君はいた。君はまだそこに座って、僕があげた、本棚に閉まったはずの詩集のページをめくっていた。横顔を見詰めるだけで、涙が溢れた。声を掛けたい気持ちを抑えて、僕は君が見える離れた席に座った。机にあった紙ナプキンに、ぎっしりと君への手紙を書いた。もし、君がこれを受け入れてくれるのなら、僕は死んでもいいから君に会いたいと、そう思いながら言葉を綴った。謝罪と、君の思い出がどんなに尊いかということ、そして、君への愛。それを一心不乱に綴った。それを君に渡して欲しいとウエイターに渡し、僕はカフェを出た。あの日、ピクニックをするはずだった公園に行った。これで、君が現れなかったら、もう諦めようと、そう思いながらベンチで君を待った。しばらくして、僕の隣に君は座った。僕たちは何も言葉は交わさなかった。ただお互いの手を握り合って、指先で気持ちを伝えた。久々の暖かさに、溶けてなくなりそうだった。
朝が来た。君の腕に包まれながら、僕は目覚めた。「君はあたたかいね、」と笑った。あんなに冷たかった肌は、一晩にして戻ったようだった。帰りのフライトはキャンセルした。君の腕の中で死のうと、そう覚悟した。僕は、彼に逃避行がしたいと懇願した。旅行に行きたいと、君にワガママを言った。近場なら、と君は頷いて、僕たちは昼過ぎから出かけた。車を山奥に走らせて、僕らは現実から逃げた。君の助手席で、思い出の曲をかけて、窓を開けて息を吸い込んだ。心臓と肺が押し潰されて体は苦しいけれど、生きている、という心地がした。僕らはその夜、山奥のペンションに泊まった。焚火をして、思い出や、空白の期間何をしていたかを話し合った。君も君で、僕じゃない人を愛そうとして涙を溢したこと、僕は君じゃないと日常が埋められないと気付いた日のこと、色々語りながら、時に涙を溢した。夜空を見上げると、星が煌めいていた。僕は君に言った。「いつかあの星に、楽園に、2人で行こうね」と。君は優しく微笑んで頷いた。そうして、僕らは社会から離れた小屋で2人で眠った。僕は君の心臓の音を忘れないように、耳に刻むように、聴きながら眠った。
朝が来た。起き上がるのも、指一本動かすのも、辛くなってきた。息も上手くできず、視界が霞んだ。死が近づく気配がした。顔が青白い僕を見て、君は心配して帰ろうと諭した。僕は行きたいところがあるんだ、と君に頼み込んだ。どうしても最後に君と、最初に出会った場所に行きたかった。君はまた困った顔をした。僕は、一生のお願いだからと、君の手を握った。そうして、僕らは、僕らが出会ったキャンパスに向かった。ここで初めて、彼に出会った。卒業して暫く経ったキャンパスは、少しだけ変わっていた。僕らがよく逢瀬していた秘密基地は、綺麗に整理整頓されていた。授業を受けていた教室に行くと、あの頃の気持ちに戻れた。初めて、振り返って、後ろにいた君と言葉を交わした日を思い出した。君の前の席に座れたことは、僕の人生において1番の幸運だった。そして、屋上に向かった。今にでも倒れそうな僕に帰ろうと、不安そうに諭す君を振り切って、なんとか階段を登った。あの日、ここで、君のことが好きだと気づいた。カメラのシャッターを君に向けて切った時。僕の臓器に埋められた種は、この時に芽を出したのだと思う。ここで、きみとこうして手を繋げていることが、本当に幸せだと思った。そう思った瞬間、心臓が何かに突き刺される心地がして、血を吐き、鋭い痛みに耐えきれず、僕は倒れた。君は「駄目だ」と泣きながら僕を抱いた。朧げな視界の中で、君を目に映そうとして、僕は君の頬に手を伸ばす。暖かい涙が頬に落ちる。この暖かさが僕の拠り所だった。最後に言いたい言葉はたくさんあった。だけど、不思議と、この言葉しか出てこなかった。シンプルでありふれた言葉だけれど、この言葉だけを言いたかった。「愛してる」きみを、世界でいちばん愛してる。急激な眠りに襲われ、僕は瞼を閉じた。幸せだと、心から思った。
君には朝が来て、僕には朝が来なかった。僕の体は燃やされた。けれど、僕の中で育ち、僕を殺した花は綺麗に咲いて、燃えなかった。遺骨のように、その花も残った。僕が死んでも、僕の愛は燃えなかったらしい。生まれ変わっても、この愛は燃えない。僕は、君への遺書にこう書いた。「もし、生まれ変わったら、どんな形であれ、君に会いたい」
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ishuran · 6 months
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Vol.167 沢井製薬の品質試験”不正”はどこまでヤバい話なのか
秋が深まりつつあるとはいえ、11月最初の週の天気予報を見ると、東京はまだ夏日がありそうな気配ですね。季節の進みが例年から半月くらい遅れている感じがします。
先日、気分転換も兼ね、富山県黒部市に一泊出張してきたのですが、そろそろ紅葉が見頃かもと期待していたものの、山間でもまだようやく色づき始めたくらい。
とはいえ、初めての土地を歩き回ることで、脳がだいぶリフレッシュされました。脳も筋肉みたいなもので、時々意識的に休めてあげたり、異なる刺激を入れてあげるのが大事ですね。
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【記事1】 9週投与でも1年投与でもハーセプチンの効果は同じ!?
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服薬に伴う患者の負担を減らすことを目的に、抗がん剤の投与量や投与日数を減らしても既存の治療法に劣らないことを立証する試験を「デ・エスカレーション(De-escalastiion)試験」と呼びます。
このメルマガでも、下記の記事をはじめ、何度か取り上げています。
 ■「超低用量免疫療法が世界を救う?インド発の画期的な試験結果」(イシュランメルマガVol.157)
今回紹介する研究は、まさにその「デ・エスカレーション試験」の典型的な事例です。
 ■”Nine-Week Versus One-Year Trastuzumab for Early Human Epidermal Growth Factor Receptor 2–Positive Breast Cancer: 10-Year Update of the ShortHER Phase III Randomized Trial”「早期HER2陽性乳癌に対するトラスツズマブの9週間投与と1年投与の比較:ShortHER第III相無作為化試験の10年アップデート」(Journal of Clinical Oncology)
トラスツズマブとはハーセプチンのことです。(このメルマガでは成分名での表現が基本ですが、今回は製品名がかなり馴染み深いものと思いますので、本記事では”ハーセプチン”で行きます)
ハーセプチンは、HER2陽性の乳がん、胃がん、大腸がん等に使われます。
早期乳がんで再発予防効果を期待して術後療法として使われる場合、通常、ハーセプチンの投与期間は1年です。
上記のShortHER試験は、通常の1年投与した群627名(1年投与群)と、9週間(約2ヶ月)に短縮投与した群627名(9週投与群)とを比較する試験で、今回その最終解析結果が出てきました。
結果を見ると、
・10年DFS(無病生存期間) 1年投与群:77% vs 9週投与群:78%
・10年OS(全生存期間) 1年投与群:89% vs 9週投与群:88%
と、再発や他の病気がなく患者さんが生存している期間(DFS)も、単に生存している期間(OS)も、一見して差が見られません。
しかしながら、統計解析ではサンプル数不足が響き、9週投与の1年投与に対する「非劣性(劣っていないこと)」の証明には至りませんでした。
「ええ、そんなバカな!?!?」って思いますよね。
統計解析を勉強していないとわかりにくいところなのですが、要はこの程度のサンプル数だと偶然同程度だった可能性がわずかながら残り、差がないことを証明するには不十分ということです。
例えば、両群で5人ずつの試験だったら、いくら同じ様な結果だったからといって、それは偶然そうなっただけでしょ、というのは直感的にわかるかと思います。
今回のサンプル数だと、9週投与群が1年投与群に劣っていない確率は93.2%と計算されています。これが、95%を超えればOKだったのですが… 惜しい!!
ということで、試験としては「失敗(劣らないということを証明しきれなかった)」なのです。
一方で、これだけいい線行っているのであれば、9週投与と1年投与では患者負担的にも大きく違うわけですから、短縮するオプションも患者さんに説明する意義が出てくるのではないでしょうか。
いずれにしても、現状に一石を投じる非常に意義深い試験と言えましょう。
いつも言及することですが、デ・エスカレーション試験は患者や保険者にとっては非常に有意義なのですが、製薬会社にとっては費用をかけて試験を行なうインセンティブはありません。
今回の試験も、「イタリア医薬品庁」という国の公的機関がスポンサーになっています。
日本でも、今後もっと盛んに行なわれることを期待したいですね。
※本項執筆時点(2023年10月31日)で、筆者はハーセプチンに関し、特筆すべき利益相反はありません。
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【お知らせ】イシュラン上で広告を希望される方へ
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【記事2】沢井製薬の品質試験”不正”はどこまでヤバい話なのか
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ジェネリック医薬品の大手、沢井製薬が品質試験の不正を行なっていたというニュースが10月23日に駆け巡りました。
 ■「別カプセルに詰め替え…胃炎薬の検査で“不正”沢井製薬 社長が謝罪」(テレ朝news)
同記事の報道ステーションでの一画面の抜き取りを見ると、「不正検査8年も…  ”溶けない”カプセル」と何やら非常に「ヤバい」ことが起きているように見えます。
他社の大手メディアも似たような見出しで一斉に報じていましたので、特にご自身で沢井製薬のお薬を服薬されているような方は、かなり不安を覚えられたのではないでしょうか。
ただ今回の事件は、報道内容を詳細に見ると、「沢井製薬がやったことはよろしくないのは確かだが、そこまで騒ぐ話ではなさそう」というのが素直な感想です。
 ■「薬の安定供給への影響懸念も 沢井製薬の検査不正」(産経新聞)
薬の中で最も一般的な「飲み薬」では、薬本来の成分を顆粒でコーティングしてカプセルに詰め込む「カプセル剤」や、成分を圧縮したりコーティングしたりした「錠剤」が典型的です。
飲み薬で薬本来の成分が、胃の中でどのように溶け出すのかを、試験管の中で擬似的に確認する試験(検査)を「溶出試験」と呼びます。
今回は、薬が一定の保存期間を過ぎても品質を保てているかを確認する溶出試験での不正がありました。以下、上記の産経新聞の記事の抜粋です。
>>
平成22年に行った社内の試験で、有効期限の3年を1年超えている長期保存していたカプセルを使った場合、薬の成分の溶出が低下していることが分かった。その後、27年以降、保存3年目のカプセルから内容物を取り出して別の新しいカプセルに詰め替えて試験を行うという、承認を受けた手順と異なる方法で試験を進めた
>>
なんでこんなことをしたのかというと、ガイドラインの改定により、「それ以前は、成り行き室温(工場内温度の約22度)で保存した検体が用いられていたが、25±2度、60%の湿度で保管された検体が対象となり、劣化が早く進むようになった」(ミクスOnline)ことが背景にある様です。
爪水虫薬に睡眠導入剤を混入していたとか、品質試験不合格の錠剤を砕いて再び加工していたとかの、製造工程での問題が発覚した近年の他の不祥事と比べると、そこまでクリティカルではありません。
気をつけるとしたら、ご自宅で例えば2年を超えて保存している薬は使わない方が良いという話です。
マスメディアというものはセンセーショナルな報道をした方が商売になるので、冒頭に挙げたようないかにも不安を煽る伝え方をしますが、そこに踊らされる必要はありません。
とはいえ、沢井製薬の不正自体を擁護するわけではありませんし、そこは真摯に反省していただき、再発防止や社内風土の見直しはしっかりしていただければと思います。
※本項執筆時点(2023年8月31日)で、筆者は沢井製薬に関し、特筆すべき利益相反はありません。
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shukiiflog · 6 months
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ある画家の手記if 中郷稔視点
例えば俺の革靴の靴底にはパリに持つ別宅の周辺の街路の美しいタイルを職人に頼んで打ちつけてもらっていて、それで歩くたびに高いヒールを履いた女が歩くより響く硬質な音がいちいち鳴る。 これから語ることはそれに勝るとも劣らない、取るに足りない話。 今となってはすべてが過ぎた話だ。
教授の勧めで俺は大学を卒業せずに中退して、早くから自分のアトリエを持った。まだ分不相応という連中もいたが、教授は俺が一生そこを拠点に制作を続けることを疑っていなかった。俺自身、そんなような今後になるだろうと思っていた。 資金繰りと、ほんの少しの思うところでしばらく海外を彷徨くことになったが、帰国してからは断崖絶壁にほど近い立地のボロ屋敷を買って、そこをアトリエにした。 年中やまない強い潮風、叩きつけてくる白砂、風雪に晒されて煤けた洋舘仕立ての白い三階建。遠巻きの近隣住民からはお定まりの幽霊屋敷という噂付きの物件だった。
俺に両親はいない。 赤子の頃、ちょうどこのボロ屋敷の近くの浜辺、打ち上げられた粗末な小舟の中に放置されていたのを運良く拾われた、捨て子だったと聞いている。発見時、頭に大きな怪我を負っていたとか。 物心つくまでの施設暮らしのあとに、酔狂な金持ちのご老人に誘われてそこの養子に入った。その爺さんが大層な遊び人で顔が広く、意図せずして俺にも半端な知り合いーーー後の人生の稼業において太い人脈になるような金持ち連中ーーーが、大勢できた。 その中で爺さんとは唯一関係なく、不可抗力として知り合ったのが、近所に住んでいて同い年の充(みつる)だった。
充は奇妙な幼馴染だった。幼い頃に知り合って以来、関係は途切れず続いていた。 俺がアトリエを構えると気まぐれにそこへも顔を出した。 いつも大型犬を連れている。充は人間より���大型犬と一緒に育ったようなやつで、犬の扱いには優れていたが他がまるきりだめだった。 特にいけなかったのは人間への関心の薄さ、理解の欠如、境界線への無頓着、危機意識のなさ。 小柄であどけない容姿の充はしょっちゅう襲われかけた。本人もそれで泣きも怒りもせずへらへら笑っているからたちが悪い。 一度勤めかけた犬の訓練士の仕事も職場でいたずらされているのが明るみになって、切り落とされるように充の採用の話が立ち消えになり、それきりだった。 少し目を離せばもう勝手に触られる、どこかへ連れ込まれる、見かねて街中や人混みでは俺が無理やり腕を絡めて引いて家族か付き添いかパートナーのふりをした。それにも充は笑うばかりだった。 充は俺といても芸術に感化されたり触発されたりすることは一切なかった。
アトリエには馴染みの大学の卒業生たちが溜まることがよくあった。各々好き勝手に泊まっていったり数ヶ月も黙って居候するやつもいたが、放っておいた。 その頃から俺には絶え間なく誰かしらミューズがいた。彼ら彼女らを直接的に作品のモデルに使うこともあったが、ただそばにいるだけで十分だった、リャナンシーが周囲を舞っているように。一人にはとどまらなかった。この世には美しいものが多すぎるし、そのどれもを俺は心から愛していた。
直人と知り合ったのは教授の個展のレセプションでだった。 おそらくまだ学生だったんだろうが、馴染みの教授のパーティに手伝いとして駆り出されていた。俺も学生の頃はそういう仕事で食いつないでいた。 存在だけは前から知っていた。その日は髪をオールバックにしてすらりと長い肢体を黒いスーツに収めていた。背は高いが職業モデルの空気感は持っていない。纏っていたのは画家のそれだった。それにしても目立つ長い手足や大きな手よりも秀でて美しいのはスーツに隠れた胴、特に背中だろうと思った。 その場で、同じ学校の先輩だと名乗って直人をパーティ会場のトイレに引っ張り込んで服を乱して背中を見た。痩せ気味の背中は少しだけ骨が目立ったが大事な筋肉を残していて、その筋肉はあまり肥大せずに筋ばって浮きやすい体質のようだった。 傷がつかないうちに手元に置きたいと思ったものの、会場にはもう一人気にかかる人間がいた。慧鶴だ。 あまりにも華やかな慧鶴はパーティ会場でも常に人に囲まれていて声をかけるだけで骨が折れる。 結局その日はどちらにも大して接触しないままその場を後にした。 少し気分を害してもいたような気がする。俺のすることに直人がやや戸惑いつつもただ受け身だったからだ。背中を暴かれても困り顔で慌てるだけ。その自分への歪な無関心さが充と少し重なって見えたんだろう。
ちょうどそれくらいの頃からか、誰を抱くときも服は脱がなくなった。 服の下は生傷だらけでとても見られたものじゃなかった。 何をされても笑っている充に苛立ってその小さな体をこれ以上ないほどひどく犯して暴力を振るい傷めつけて追い込めば、こいつに暴力やその先に待つ死の恐怖を教え込めるのか、一度試したことがある。 すると誰に犯されても機嫌よく笑っていた充が俺相手には抵抗するような素振りを見せて、最中もひっきりなしに俺の体に爪を立てて噛みついて泣き喚いて暴れた。残念ながら体格と筋力の差で充の抵抗は俺にとって簡単にあしらえる程度のものでしかなく終わったが。 だが俺は嬉しかった。何かに抵抗して必死に嫌がる姿に、ようやく充が俺と共に同じ時間を過ごしているような錯覚を抱いた。真実など知るか。そう感じたまでのこと。それが全てだ。 それから、ずっとそんなことを続けている。
俺の意識はいつも身体から数センチほど浮いていた。 この感覚をひとに上手く説明するのは難しい。物心がついたときにはそうだった。生まれつきといっていいのかも知れない。 数センチ斜め上から自分自身の肉体を意識体だけで常に見下ろしているような感覚だ。俺はいつも自分の肉体が行うことをぼんやりと見ていた。あるいは別の場所に意識は向いていた。 肉体は俺が動かすものではなく勝手に動くものだった。それも相手に応じて臨機応変に現実的な実に的確な行動と判断を無駄なくこなしていく。はたから見れば何もおかしいところなどない。気づく人間も一人としていなかった。まず俺自身がその状態に長い間疑問を持たなかった。 もっと人は意識と身体にズレがなくぴったりと重なり合うようにして生きているものだと気がついたのは、充を抱いた時にその数センチずれた意識が身体に引き戻されたような感覚があったからだ。意識ーーー精神と肉体が、綺麗に重なってすべてが生々しくクリアに目が覚めたように感じられた。 どちらの状態のほうが心地いいとも、正解だとも思えないまま、俺は自分を放置し続けた。 服の下で治っては増えてを繰り返す生傷が痛んでたまに何かを訴えるようだったが、それも無視し続けた。
俺はアトリエにやってきた誰にでも笑顔であたたかく接して、求められることには教え導いたり、ここに居たいという人間には居場所を与えた。能力を持て余した後輩を相応しい道に進めたり、バレエで成功したいという女をモデルにして海外留学資金を工面してやったり、食っていけずに路頭に迷った画家をアトリエに置いて画材を貸し与えたり、頼られればすべてに応えた。 全員感謝して俺をたいそう慕ってくれた。恩人だという人間もいた。 身体から意識が浮いている俺はずいぶんと愛想がよく慈悲深くて面倒見がいい。そのすべてに自分がやっているという実感に欠けていたが、外聞が悪いわけでもなし、それも放っておいた。 俺の行動で誰が救われようと害されようと知るか。誰にでも無神経に手を差し伸べられるのは相手のことなどどうでもいいからだ。本当に救いたい相手に迂闊に触れられるものか。
直人がスラムで一人意固地になって荒れながら絵を描いていると噂に聞いて、手に入れられると踏んだ。あの背が欲しかった。 今にも崩れそうなボロアパートまで訪ねていった、部屋の扉を開けた途端ガラスコップが飛んできたのを避けながら近寄った。直人はすっかり痩せていたがその土地の荒廃した空気に馴染んでいて、痩せ方は衰えるというより一層研ぎ澄まされて暴力的な、生命力に漲った野良犬のようになっていた。 その一方で瞳の奥はいまだに寂しげに揺れたままで、まるで幼い子供だった。あやしつけて懐かせるのも服従させるのもまったく楽な仕事だった。あの先の見えない場所のせいかどうかは知らないが直人もそう望んでいた。高い背に頑丈な体、怪力と、疲れ知らずの性欲は、他のなにより暴力に向いていた。本人にもその自覚はあるらしかった。
直人の背中を気に入っていたが、直人は俺のミューズではなかった。直人はすでに体にいくつも傷を抱えていた。だからただ可愛がった。たまに雑用を言いつけることはあったが、直人も嫌がらずに従った。 前にパーティで服を剥がした時も思ったが、まるで目の前のことしか見えていないようだった。それは静物画を描くにはうってつけで、後天か先天か知らないが狂気と呼んでもいい。が、大抵の人間はそれを画家と呼んだ。 直人は人を傷つけることをひどく恐れていた。その一方で林檎と人間の区別もうまくついていないのだから笑い話だが。 いつだか直人は俺に自分のこれまでの話を詳細に語った。それで俺が傷つかないことを理解したからだ。嘘か本当かすらどうでもよかったが聞く限りこいつは嘘のつけない人間らしい。第一俺の中にいちいち話を疑うほどの関心がなかった。
その頃から充は俺のアトリエへあまり顔を見せなくなっていた。 とうとう何がしかのトラブルで死んだかと思っていたが、直人が慧鶴に引きずられてここから出ていったのと入れ���わりのようなタイミングでまたふらりと訪れるようになった。 充が自発的に俺から離れていくことはない。姿を見せなかった期間に何があったか、結局尋ねはしなかった。 俺の体は充のいない間にすっかり癒えて綺麗になっていて、その責任を取れと言わんばかりに俺はまた同じことをただ行動でのみ充に対して繰り返した。充の反応も以前と変わりなかった。また服の下に生傷が絶えなくなった。
たちの悪い人間だ。愛嬌のある幼げな笑顔で誰のことも疑わない。人間に関心が薄いが人間を嫌悪したり遠ざけているわけではない。充にとって自分に振るわれる暴力はまったく悪意や害意を含まないものらしかった。充にとってはそうだった。路上で他人からいいように暴行されようと、充はそれを凌辱だとか侵害だとか屈辱的だとかいうふうには捉えられない。むしろそういうものはすべて自分と積極的に関わろうとする友好的な態度だと見做されていくらしかった。それが突き詰めてしまった寂しさからくることに薄々気づいてはいたが、俺は俺が頭で考えてみたことなど信用しない。
充が唯一自分からもコミュニケーションを取りたがる犬を奪ったらどうなるか、試した。 いつものように連れてきた大型犬を、充がベッドで気絶している間に鈍器で殴り殺した。さすが充の育て上げた犬だった。常にそうではあったが、完璧に行き届いた躾と人間というものへの揺るぎない信頼と安心感に満ちていた。野生の死んだゆきすぎた従順さ。どれほど暴力を振るわれても逃げることも噛みつく事も、鳴き声すら上げずに犬は飼い主である充のそばについて離れず最期まで耐えた。 充はぼんやり目を覚ましてから黙って頭の潰れた死んだ犬を大事そうに抱えてもう一度眠った。 次の日から、充は散歩に行くような気軽さと頻度で自殺未遂を繰り返すようになった。取り乱すわけでもなく悲痛な様子でもなくいつもの顔でただ導かれるようにふらふらと。
充は俺のミューズではない。それに足る程度の容姿とオーラを備えてはいたし、実際俺に勝手に何らかの影響を与えていってはいたんだろうが、俺の何かが充をミューズにすることを拒んだ。モデルにすることも。 俺にとってのモデルは興味関心の対象とは違っていた。そういうものへの愛もある。 ただ、なぜかはわからない、ある時またいつも通りやってきた充が指を数本欠けさせていたことに対して抑制できない感情が働いた。充もその時笑いながら言った「おれはおまえのモデルじゃない」と。その通りだ。自分のことを把握しきった人間などここには今も昔もいない。 冷水がはられたままの浴槽に充を体ごと放り込んで片腕で頭を水中に押さえたまま、浴槽の隣に座って俺は何事かをしばらく一人で充に話し聞かせていた気がする。喉の動くままに。 なにを話したか自分でも覚えていないが気がつくとかなりの時間が経っていて、水中に沈められたままの充はそのままこときれていた。
俺はその日充がつれていた大型犬を引き取った。名前は確かバスター。 上等な名入りの首輪を飼ってつけてやった。 充はバスターを自分の恋人だと言い俺には懐かないと豪語したが、バスターは俺によく懐いている。 生前の充の命令を今でも守り続けるかのように。
0視点:一人のモデルが二人を横目で見ていた
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