Vol.165 遺伝子変異は早く知るに限る〜進行非小細胞肺がんでの興味深い研究結果
お盆が過ぎ、少しは涼しさを感じられるようになるかと思いきや、変わらずの猛暑&熱帯夜続きで、流石に身体に堪えますね。
東京で猛暑日がこんなにもあった年はあったかなと記録を調べてみたら、今まで一番多かったのが、昨年の16日間。2010年に記録した13日間を12年ぶりに更新しての数字です。
そして、今年は… なんと8月29日時点で既に22日間!!
世界陸上での日本記録の大幅更新はWelcomeですが、こんな大幅な記録更新は勘弁して欲しいです。
私自身も、夏バテなのか先日来体調を崩してしまい、久しぶりに高熱にうなされる日を過ごしています。検査の結果、コロナでもインフルでもなさそうなのはまだ良かったのですが…
読者の皆さまにおかれましても、どうぞお身体ご自愛くださいませ。
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【記事1】 BMIと副作用:太るべきか、太らざるべきか?
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適切な体重管理は、がん治療においては一般的にプラスに働くと考えられています。
特に、乳がんについてはかなりエビデンスが揃っており、ガイドラインの中でも肥満の影響について論じられています。
■「CQ6 肥満は乳癌患者の予後に影響を及ぼすか?」(乳癌診療ガイドライン2022年版)
「乳癌診断時に肥満である患者の乳癌再発リスク,乳癌死亡リスク,全死亡リスクが高いことは確実である」
「乳癌診断時より肥満度が上昇した患者において乳癌再発リスク,乳癌死亡リスク,全死亡リスクが高いことはほぼ確実である」
と記載されており、治療医が患者の体重管理について助言をする根拠となっています。
一方で、抗がん剤治療の際に、体重(BMI)がどのような意味を持ち得るのかについて、一本興味深い論文が出てきました。
■"Impact of BMI in Patients With Early Hormone Receptor–Positive Breast Cancer Receiving Endocrine Therapy With or Without Palbociclib in the PALLAS Trial”「PALLAS試験でパルボシクリブ併用または非併用の内分泌療法を受ける早期ホルモン受容体陽性乳癌患者におけるBMIの影響」(Journal of Clinical Oncology)
抗がん剤は注射剤の場合、一般的に「体表面積」あたりで投与量が決まっています。「体表面積」は身長と体重で決まります。
一方で、パルボシクリブ(イブランス)のように「経口剤」の抗がん剤もありますが、この場合、身長とか体重には関係なく、投与量は基本誰でも同じです。
PALLAS試験は、ホルモン陽性の早期乳がんの患者さんに、術後療法として標準的なホルモン剤にCDK4/6阻害薬パルボシクリブ(イブランス)を上乗せした場合の再発予防効果を検証した試験です。
この試験を実施した際に、BMIによる副作用の出方の違いも同時に検証しており、その結果について論じられているのが、上記の文献になります。
解析に組み入れられた5,698例のうち、ベースライン時の体重は、68例(1.2%���が低体重、2,082例(36.5%)が標準体重、1,818例(31.9%)が過体重、1,730例(30.4%)が肥満でした。
そして、パルボシクリブ群では、BMIが高いほど好中球減少症が有意に減少(7%)し、これがBMIが高いほど治療中止率が有意に低下(25%)したことに繋がったと考えられました。
ちなみに、BMIに関係なく、本試験ではパルボシクリブの上乗せ効果は認められませんでした。
ここから推察されることは、パリボシクリブだけでなく経口剤の抗がん剤の治療においては、体重がある方が副作用の出方やそれに伴う中止のリスクは下がるかもしれないということです。
有効であることがわかっている治療方法であれば、副作用による中止リスクは下げた方が良いでしょうから、その意味では体重は増えている方がむしろ良いのではと考える向きもありそうですが…
とはいえ、全体としては再発リスクがBMIの増加により上がることはほぼ確実なわけで、この試験結果をもって「太るべき」とは、言えないでしょうね。
いずれにしても、パルボシクリブ以外の薬剤での追加的な研究結果が期待されるところです。
※本項執筆時点(2023年8月31日)で、筆者はパルボシクリブに関し、特筆すべき利益相反はありません。
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【記事2】遺伝子変異は早く知るに限る~進行非小細胞肺がんでの興味深い研究結果
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非小細胞肺がんは、がんを引き起こす「ドライバー遺伝子」の解析と臨床への応用、すなわち「個別化医療」がもっとも進んでいるがんです。
現在、日本で対応する分子標的薬が存在する遺伝子変異は、EGFR, ALK, ROS1, MET, RET, NTRK, BRAF, KRAS遺伝子G12C変異、と数多くあり、今後も増えていくことが予想されます。
従って、このメルマガでも何度も取り上げている「遺伝子パネル検査」を行なう意義がもっともあるがんと言えます。
ところが、ここで大きな問題が一つ。
現状では、遺伝子パネル検査が保険で認められるのは、「標準治療がない、または局所進行または転移が認められ標準治療が終了となった固形がん患者さん(終了が見込まれる方を含む)」のみです。
本来であれば、再発/進行が判明した時点で、「遺伝子パネル検査」を行ない、適合した治療にすぐ進んでいったら良さそうなものなのに、そうなっていないわけですね…
遺伝子パネル検査をなるべく早期に行なった方が良さそう、ということを示唆する研究結果を、一本ご紹介します。
■”Compromised Outcomes in Stage IV Non–Small-Cell Lung Cancer With Actionable Mutations Initially Treated Without Tyrosine Kinase Inhibitors: A Retrospective Analysis of Real-World Data"「チロシンキナーゼ阻害剤なしで初期治療された、治療可能な変異を有するステージIV非小細胞肺癌における予後の悪化:リアルワールドデータのレトロスペクティブ解析」(Journal of Clinical Oncology)
「チロシンキナーゼ阻害剤」とは、遺伝子変異に適合した分子標的薬とお考えください。
研究時点で治療アクションが可能ながん遺伝子変異「EGFR, ALK, ROS1, BRAF, MET, RET, ERBB2, or NTRK」を持っていたとわかっていた患者さんの転帰を以下の3群に分けて調べました。
・A群:遺伝子変異が判明するまで治療開始を待ち、適合する分子標的薬で治療した群(379名)
・B群:当初化学療法or免疫チェックポイント阻害剤で治療開始し、分子標的薬に35日以内にスイッチした群(47名)
・C群:当初化学療法or免疫チェックポイント阻害剤で治療開始し、分子標的薬に35日以内にはスイッチしなかった群(84名)
ちなみに、遺伝子変異の内訳は下記の通りです。
EGFR (n = 451), BRAF (n = 113), HER2 (n = 60), MET (n = 59), ALK (n = 58), ROS-1 (n = 21), NTRK1/2/3 (n = 15), RET (n = 14)
結果、全生存期間(OS)の中央値は、
・A群:28.8ヶ月
・B群:21.7ヶ月
・C群:15.3ヶ月
となり、A群とC群の間では有意差ありという形でした。
ということで、遺伝子変異がある場合、なるべく早いタイミングで適合した分子標的薬での治療に入ることが大事になるということが示唆されるデータでした。
ちなみに日本での臨床実態は、いきなりの遺伝子パネル検査は保険診療の中ではできませんが、EGFRやALKなど、比較的昔から知られている遺伝子変異については事前に調べ、そうでない遺伝子変異についてはスキップしたり後日実施したりする形で対応されている施設が多いと考えられます。
遺伝子変異は「早く知っておくに越したことはない」ということで、今後、より早いタイミングでの遺伝子パネル検査の保険適応を期待したいと思います。
※本項執筆時点(2023年8月31日)で、筆者は複数の遺伝子パネル検査機器メーカーの株式を保有しています。
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ブラザー・コーン、乳がんで驚いた。早期発見は救いだね。オジ(おじさん)も応援してるから、早く復帰してほしい。頑張れ!
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가장 길게 #머리 를 길러 봤고 #드라이기 로 머리를 완전히 말린 것도 #처음 이다 一番長く#髪 を伸ばしたし、#ドライヤー で髪を完全に乾かしたのも#初めて 。 #항암제 #부작용 중의 하나가 #살 이 찌는 거라더니 #몸무게 는 하향세이다 #抗がん剤 の#副作用 の一つが#太る ということだと言われたが、#体重 は#下降 #気味 だ。 이 정도라면 #머리카락 전체의 #무게 도 꽤 나갈 것 같은데 この程度なら#髪の毛 の#全体 の#重さ もかなり出そうだ。 #일본 #생활 #japan #life #日本 #日常(矢田川에서) https://www.instagram.com/p/CqEY33cSUmM/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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⚘ クリスマスローズに蕾がいっぱい。 寒くてもやっぱり春ですね。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 𓅯 今日は体液の話。 人間の体に流れる液体は、 水性と油性の2種類あります。 水性マジックと油性マジック೭✍︎ 的な(笑) 水(血液)は流れやすいのですが、 油(リンパ液)の流れは緩やか&詰まりやすい(¯―¯٥) お薬は大抵水溶性で血液に流します。 その方が効率的に吸収され、全身に巡らされるので。 ( #リンパ転移がん に #抗がん剤 が効きにくいのはそのせい) リンパ液は免疫力! #がん や #ウイルス から体を守ってくれる #リンパ球 がいっぱいですからね。 リンパ液を巡らせるには? しっかり温めて下さい。 リンパ節を優しくマッサージするのも有効です♡ 𓇼 #バリニーズマッサージ 2/25(Sat) インドネシアのバリ島伝来のマッサージ法 オイルを使った #リンパマッサージ で ≪リンパマッサージの効果≫ ① #リラックス ② #むくみ 解消 ③ #ダイエット ④ #疲労回復 などなど… 体も心も楽になる、健康情報を発信中٩(ˊᗜˋ*)و♡ 竹屋陶板浴の様子はコチラ ▹▹▹ @takeya.tby - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 𓅯 ⚑⚐⚑ 𝕡𝕚𝕔𝕜 𝕠𝕦𝕥 ⚐⚑⚐ \ バリニーズマッサージ / 2月25日(土) 施術者:若林陽子(ライナスの部屋) 理学療法士歴27年 冬の冷え性、足のむくみ、疲れに効果的!! 身体全体もポカポカしてきますよ❣ 𓇼膝下マッサージ: 25分2.500円 オプション20分2.000円 𓇼かっさヘッドマッサージ 𓇼背面もみほぐし 𝟙 10:30- × 𝟚 11:00- × 𝟛 11:30- × 𝟜 12:00- ○ 𝟝 12:30- ○ 𝟞 13:30- ○ 𝟟 14:00- ○ 𝟠 14:30- ○ 𝟡 15:00- ○ 𝟙𝟘 15:30- × 𝟙𝟙 16:00- × 𝟙𝟚 16:30- ○ 𝟙𝟛 17:00- ○ 𝟙𝟜 17:30- ○ 𝟙𝟝 18:00- ○ 予約状況は更新されません。 体験希望の方は お電話,DM,コメントでご連絡下さい☺︎ - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 𓅯 2月は #初春の整え月間 開催中⚘ 今日は12時から ストレッチ&フラダンス🌺 参加無料&初心者歓迎です♡ 明日は雪? 身体も楽になるし、運転も心配ですから、 天気が崩れる前に温まりに来て下さい。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 𓅯 ≪2月のスケジュール≫ 11日(土)味噌作り教室♡ 11日(土)「歯と電磁波」zoom上映♡𓇼 12日(日)頭皮もみ𓇼𓁙 13日(月)内臓整体𓇼𓁙 14日(火)メタトロン𓇼 14日(火)玄米お握り販売 15日(水)足もみ若石𓇼 15日(水)氣功𓇼 16日(木)ストレッチ&フラダンス♡ 17日(金)ホメオパシーぷち講座𓇼 17日(金)QX-SCIO測定体験会𓇼 18日(土)「足から読み解く潜在意識”チャクラと足の話”」♡𓇼 18日(土)メタトロン𓇼 19日(日)頭皮もみ𓇼𓁙 20日(月)足もみ若石𓇼 20日(月)笑いヨガ♡𓇼 21日(火)椅子ヨガ ♡𓇼 21日(火)玄米お握り販売 22日(水)足もみ若石𓇼 23日(木)ストレッチ&フラダンス♡ 23日(木)腸もみ𓇼𓁙 23日(木)「脳を育てる!発達へのアプローチ講座」𓇼 23日(木)がん交流会♡ 25日(土)バリニーズマッサージ𓇼 26日(日)毛細血管刺激療法𓇼 27日(月)足もみ若石𓇼 28日(火)腱引き𓇼 28日(火)玄米お握り販売 29日(水)足もみ若石𓇼 ♡:参加費無料 𓇼:整え会 𓁙 :キャンセル待ち - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 𓅯 竹屋陶板浴 @takeya.tby 𓅨 茨城県龍ケ崎市栄町4356 ℡ 0297-64-3726 営業時間 6:00-20:00 利用料金 ¥1.200- #竹屋陶板浴 #陶板浴 #温熱 #温活 #龍ケ崎市 (株式会社 竹屋陶板浴) https://www.instagram.com/p/CobmsXnSWid/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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大腸癌ステージ4
抗がん剤治療 20回目。
治療頑張ります‼️‼️
寝てるだけですけど。
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#埼玉県 #越谷市【ディンプル】は、‼️ 皆様の『今まで一番のキレイ』を目指します♪ OPEN 9:30-19:30 定休日/火 TEL/0489671303 ご予約はプロフィールのURLの他、LINE、ホットペッパー、TELからもokです #のばしかけショート #抗がん剤治療の後の髪の毛 #抗がん剤後ヘアケア ⚫︎20〜50代のお客様多数! ⚫︎ショート指名8割越え! ⚫︎極上艶髪で若返る☆極艶☆透明感カラー! ⚫︎Instagramからのご予約ご相談!急増中! ⚫︎指名のお客様は、ほぼおまかせオーダー! #DiMPlE 越谷/越谷駅前 西口から徒歩20秒 #越谷レイクタウン からもアクセス◎ #越谷美容室 #越谷美容 #越谷カット #越谷カラー #埼玉ボブ #越谷ボブ #埼玉ショート #越谷ショート #埼玉ショートボブ #越谷ショートボブ #内巻きボブ #ショートが得意なサロン #ブリーチ #Wカラー ◎ 人間関係を重視する方を大募集♪ #DiMPlE 越谷/越谷駅前 西口から徒歩20秒 #越谷レイクタウン #埼玉美容師求人 #越谷美容師求人 #埼玉美容師求人 #越谷美容師求人 #美容師スタッフ募集 #美容師ブランク求人 #ブランク美容師求人 #美容師ブランクサポート求人 #フリーランス美容師求人 ◎ ディンプル 越谷/越谷駅前 DiMPlE 048-967-1303 (ディンプル) https://www.instagram.com/p/Ckuzr4iPDrS/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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抗がん剤の副作用のため、ヒルドイドが必要な方がたくさんいます。削らなければならないのはそこではないと思います。
効いてないと説明受けても本人の希望で続けられている何十万もする治療。
家族希望で副作用で苦しむ認知症の超高齢者の先進医療。
真面目に働いている人が治療費のことで治療継続できないことがある高価な抗癌剤を保護の方が平気で受けられている。
海外籍なのに親戚を頼って日本の安価な自費で高額治療を受けられる方..
よくない反応を受けられるかもしれませんが、海外ではあり得ない日本の現実なんです。
保湿塗り薬、10月に負担増 美容目的の不適切利用、是正も 厚労省(時事通信)のコメント一覧 - Yahoo!ニュース
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「標準治療」ができなくなった患者さんに忍び寄るのが、保険診療外の自由診療を行なっているクリニックです。医師には特権が与えられています。保険診療外であれば、医師が「治療」と言い張ることで、なんでも自由にお金を請求できてしまうのです。それこそ、がんに効く水を飲ませると言って数百万円で買わされた・・・みたいな話もありました。
自由診療で行われているものには、免疫療法、ビタミン剤、標準治療以外の抗がん剤、温熱療法など、さまざまな種類があるようです。ただ、いずれにも共通しているのは「標準治療」と違って効果が実証されておらず、保険診療にはなれなかった(研究で標準治療に負けた)治療たちであり、治療に高額の費用がかかるというものです。
しかもこういった自由診療のクリニックの医師たちは、基本的に優しいのです。「標準治療」ができなくなって、ある意味病院から見放された患者さんたちに「よく来てくれました。ここでは治療できますからね」と励ますのです。治療効果についても、たとえ病気が大きくなって、身体が痩せていったとしても、検査結果でよく見えるところだけ強調して「このままできるだけ続けましょう」と自由診療を続けさせます。そして、いよいよ悪化して、自由診療のクリニックに通院できなくなったとき、最期に見放すのです。なぜならそういうクリニックは入院できる環境がないので、「救急車を呼んでどこかへ連れて行ってもらいなさい」というのです。そういう患者さん、いったいどれだけ私は診療してきたか・・・。
Xユーザーの廣橋猛@二刀流の緩和ケア医さん
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2024/5/7
実家だと7時頃に目が覚める。
ベッドが今の自分の身体に合ってないということもあるし、日当たりが良いので窓からのブルーライトが覚醒を促すというのもある。
朝から、プロジェクト内で同じ業務を担当している同僚が倒れたという連絡が入り(奥さん曰く本当に倒れたらしい)そんなの実際あるんだなと思いつつ業務を引き受ける算段をつけた。
明日の大きめのイベントで講師をするし、来週は富山県に行く。たぶん、ひとりで寿司を食べる。
母から抗がん剤の結果が良好で金曜日には退院できそうという連絡が来た。良かった。迎えに行かねばと車を予約。誰かのトリガーでまた動く。
ネガティブ・ケイパビリティという言葉がある。未解決や不確実を受容する能力らしいが、日常生活を送るだけでこの能力が上がっていく。
出張をすると自分は大した事ないというのを自覚するためにたくさん歩くようにしている。当然ながら乗り���を使うよりもずっと遅いし疲れる。
人生において得られるものも、決められることも少なく、その中でもやりたいことを微力ながらやっていくしかない。行きたい方向に角度を調節し歩を進めていけばいつか大きな差になるだろう。
大した事ないと自覚しなくてはいけないはセミナー講師という時にはちやほやされる職についてるから。自己調整。
週末にTumblrつながりの人と会う事になった。
なんだろうか。同じ体験した人との繋がり。読書会に近いものか?
読書会も誰かとしたいなと確かに思っていたのだ。そういえば。
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米社会の病い、性別違和に苦しむ少女達
櫻井よしこ
日本ルネッサンス 第1094回
今日、4月9日の産経新聞に『トランスジェンダーになりたい少女たち』の広告が掲載されていた。米国人ジャーナリスト、アビゲイル・シュライアー氏の『IRREVERSIBLE DAMAGE』の邦訳で、出版元は産経新聞出版だ。
広告には「あの“焚書”ついに発刊」の字が躍る。「皆様の激励に御礼申し上げます」「Amazon総合1位」の文字が誇らしくも嬉しくも輝く。それはそうだろう。本書の出版に際して産経新聞出版も同書を扱うと推測される大手書店も、放火予告というとんでもない脅迫を受けていたのだから。
同書は当初、大手のKADOKAWAが出版する予定だった。しかしわが国の一部左翼勢力が「トランスジェンダーに対する差別を助長する」として抗議し、KADOKAWA本社前で集会を開くなどと警告した。国際社会に名を馳せる大手出版社でありながら、KADOKAWAはジェンダー思想に染まった左翼勢力の恐喝に屈した。斯(か)くしてその時点で、言論の自由も出版の自由も踏みにじられた。出版界の名門がそんなことを許したのは痛恨の極みだ。
本書の内容は後述するが、ジェンダー思想に染まっている人やWokeの人々にとっては、確かに気に入らないだろう。かと言って、それを出版禁止にせよというのは無茶にも程がある。そんな圧力に屈すれば自由と民主主義を基盤とするわが国の社会の根底が揺さぶられる。出版社の存在意義も吹き飛ぶ。KADOKAWAの情けない姿勢を見て、弱小の産経新聞出版、瀬尾友子氏が名乗り出た。するとそこに先述した放火の脅迫が降りかかったのだ。それでも産経新聞出版は遂に刊行に漕ぎつけた。しかもAmazon総合1位、だ。
日本社会も捨てたものではない。
奇妙なのはいつも言論、表現、思想・信条の自由などを金科玉条の如くに持ち上げる朝日などのリベラルメディアが同件にきわめてよそよそしいことだ。報道もしない。安倍晋三総理に対して行った「報道しない自由」をここでも発揮しているのだ。
ナブラチロワの抗議
シュライアー氏の著書は実に読みごたえがある。取材対象の当事者は200人、50家族に上る。意見を聞いた専門家の数、調べた専門書の幅広さにも感心する。彼女は驚いた。思春期に突然「性同一性障害」を発症し、「生物学的には女だけれど実は男だ」と主張する少女たちが急増していることに。2016年から17年にかけて米国では、女性に生まれついた人で性別適合手術を受けた人の数が4倍に増えた。英国ではジェンダー医療を望む10代の少女の数が過去10年で4400%増えた。
シュライアー氏は以下のように分析している。ここ10年でトランスジェンダーが目立つようになり、対照的に女性と少女が目立たなくなった。アメリカ全土の高校で最高水準にある女子選手たちは、女性を自認する生物学上は男子の選手に圧倒されている。その多くは男子チームでは月並みの選手だったのに、である。
文化面でも少女たちは支持を失った。女性専用だった場所は男女共用になり、スポーツの記録は先述のように不公平となり、抗議をすれば偏見だとどなられる。レズビアンを公表しているテニス選手のマルチナ・ナブラチロワは「トランスジェンダーの選手に女子スポーツで競技させるのは生物学上の女子に不公平だ」とサンデー・タイムズ紙に書いた。するとトランス嫌悪(フォビア)だとレッテルを貼られ、スポンサーから放りだされた。
世界でもっとも有名な同性愛者の女子アスリートであるナブラチロワが少女たちのために立ちあがったことで反トランスジェンダーの偏狭な人物だというレッテルを貼られたのなら、無名の女子選手たちが反対することはなおさら不可能だ。
そしてトランスジェンダー活動家は女性の生物学的な独自性を完全に否定しようとする。たとえば妊婦(プレグナント・ウィメン)は次第に“#妊娠中の人(プレグナント・ピープル)”と表現され、“膣(ちつ)”は“#前方の穴(フロント・ホール)”という忌まわしい言葉で表わされてしまう。トランスジェンダーを包括する語彙では、生物学的な女性は“養育者”あるいは“出血がある人”などと表現される。トランスジェンダー活動家はこのほうが繊細な言葉であり、より正確に表現することができると主張するのだという。しかし、とシュライアー氏は問うている。
「ほんとうの少女はどう感じるだろうか」と。
少女たちは女性であることに意味を見出し得なくなり、或いは居心地が悪くなり、自分はトランスジェンダーだと思い始める。そのような傾向をスンナリ受け入れて助長するのが昨今の大学だとして、幾つもの事例が記されている。
「抑うつ、自傷、薬物依存」
たとえばカリフォルニア大学ロサンゼルス校などである。そこでは、両親にはぜったいに知らせずに、キャンパス内だけ、あるいは法律上も名前を変更できるように簡単な説明と申込用紙を提供しているという。アイビーリーグをふくむ百を超える大学でトランスジェンダーのためのホルモン剤に健康保険が適用されているともいう。
こうして少女たちは男性になっていくが、その世界のことを21歳のヘレナ(米シンシナティのポーランド移民の娘)はこう語っている。
「トランスジェンダーのコミュニティにはあまりにも多くの抑うつ、自傷、薬物依存が存在しています」
ネットでトランスジェンダー・アイデンティティについて知った思春期まで性別違和を抱いたことはなかったヘレナは、途中で何とか引き返した。引き返した人をディトランジショナーと言うが、そのほとんどの人々が後悔に苦しんでいると、シュライアー氏は次のように指摘する。
テストステロンは数カ月摂取しただけでも、男性のように驚くほど声が低くなり、それは摂取をやめても元に戻らない。もっと長く摂取した場合は、通常とは異なる秘部を“肥大して小さなペニスに見えるクリトリスを”恥ずかしく思うだろう。夕方になると目立つひげや体毛もいやかもしれない。手術まで行ってしまった場合は胸に走る傷跡と一生つき合わなければならない。
シュライアー氏は、自分が語り合った全員が、自分の人生に関わった大人、とりわけ医療専門家が性別移行を促して助長したことを非難したとも書いている。
多くの少女たちがSNSでトランスジェンダーを知る。暴力的なポルノを見て正常なセックスもできなくなる。新しい傾向をもてはやすメディア、大学医療関係者がトランスジェンダー化への動きを無責任に後押しする。
トランスジェンダー問題はこうした思いやりに欠けた世界で運動家らによって尚も推進される。少女たちは回復不可能な傷を負い、少なからぬ家族が崩壊しているのがシュライアー氏の伝える現実である。この本は多くの貴重な教訓を与えてくれる。是非、わが国の政治家全員、最高裁裁判官たちにも読んでほしいものだ。
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Vol.162 【ASCO特集】カペシタビン(ゼローダ)の手足症候群に救いの手
梅雨真っ只中、ムシッとした空気に覆われていますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
私は先日、北海道(札幌)に出張で行き、一瞬だけですが爽やかな青空を楽しむことができました。
今月は皮膚科関連の学会に17年ぶり(!)に立て続けに参加してきたのですが、流石にこれだけ年数が経つと、座長や演者で見知っている先生はごく僅かで、時の流れを感じます。
今号は、月初に開催されたASCO(米国臨床腫瘍学会)からの最新情報を2本お届けします。
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【記事1】CDK4/6阻害剤の使い方に一石を投じた「SONIAスタディ」
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「ホルモン陽性・HER2陰性」は、乳がんで最も多いサブタイプです。
このタイプの乳がんの場合、がんは女性ホルモンを糧に増殖するため、術後療法にしても進行/再発時の治療にしても、ベースになるのは女性ホルモンを抑制する「ホルモン療法」になります。
ここに加わったのが、CDK4/6阻害剤というタイプの抗がん剤で、日本ではパルボシクリブ(イブランス)とアベマシクリブ(ベージニオ)の2剤が、2017年から18年にかけて、進行/再発のホルモン陽性・HER2陰性乳がんの治療薬として登場しました。
当初は二次治療以後で使われていたのですが、一次治療での有用性を示すエビデンスが出たことにより、現在では一次治療でもCDK4/6阻害剤+ホルモン剤(アロマターゼ阻害剤)がホルモン剤単剤の治療よりも推奨度の高い標準治療となっています。
ところが、そこに一石を投じるような試験結果が出てきました。
■”Primary outcome analysis of the phase 3 SONIA trial (BOOG 2017-03) on selecting the optimal position of cyclin-dependent kinases 4 and 6 (CDK4/6) inhibitors for patients with hormone receptor-positive (HR+), HER2-negative (HER2-) advanced breast cancer (ABC)”「ホルモン陽性HER2陰性進行乳がん患者に対するCDK4/6阻害剤の最適な投与タイミングの選択に関する第3相SONIA試験(BOOG 2017-03)の主要アウトカム解析」(Journal of Clinical Oncology)
一次治療でホルモン剤単独療法、二次治療でCDK4/6阻害薬の併用療法を行う場合と、一次治療からCDK4/6阻害薬の併用療法を行う場合を、”ガチンコ”で比較した試験は今までなく、SONIA試験はそこを明らかにしようとした試験です。
1050名のホルモン陽性・HER2陰性の進行/再発乳がんの患者さんを、以下の2群に分けてその後の治療経過を比較しました。
・一次治療でCDK4/6阻害剤+アロマターゼ阻害剤、進行後の二次治療でフルベストラント<A群>
・一次治療でアロマターゼ阻害剤、進行後の二次治療でCDK4/6阻害剤+フルベストラント<B群>
結果、2つの治療を合わせた無増悪生存期間(PFS2)は、A群は31.0ヶ月、B群は27.8ヶ月で、両者の間に有意差はなし。
一方で、CDK4/6阻害剤での治療期間は、A群は24.7ヶ月・B群は8.3ヶ月と、圧倒的にB群が短く、Grade3以上の重篤な有害事象の発生件数も2778件vs1620件と、B群が少ない結果となりました。
色んな意味で負担の大きい治療はなるべく後回しにしたい患者ニーズは一般的ですので、アロマターゼ阻害剤単剤治療が一次治療でも効果面で明確な不利がなさそうという今回の試験結果は、患者さんにとって選択肢の幅が広がったという意味で朗報だと思います。
最後に、こんな試験を製薬会社がやるわけないよなと思って資金提供者をチェックしたら、「オランダ医療研究開発機構とオランダの医療保険会社」と出てました。
今後もこうした患者さんの負担面に配慮する「デ・エスカレーション」的な試験は、保険者が率先して行なう流れが続きそうですね。
※本項執筆時点(2023年6月30日)で、筆者はパルボシクリブ、アベマシクリブに関して、特筆すべき利益相反はありません。
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【記事2】カペシタビン(ゼローダ)の手足症候群に救いの手
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「手足症候群」という言葉、抗がん剤治療を経験されてきた方は、耳にしたり実際に経験されたことがあるかもしれません。
抗がん剤を投与することで、
・手や足がしびれる、痛むなどの感覚異常が出る
・手や足の皮膚が赤くなる、むくむ、しみが出来る、皮膚が硬くなる(角質化)、水ぶくれが出来る
・爪が変形する、色がつくことがある
(出所:国立がん研究センター東病院)
などの症状が副作用として出てくることがあり、これら一連の症状が「手足症候群」と呼ばれています。
酷くなると、ものを持てなくなったりキーボードを打てなくなったりなど、著しくQOLが阻害されます。
「手足症候群」を引き起こしやすい抗がん剤の中でも代表的なものが「カペシタビン(ゼローダ)」。経口剤という簡便性もあって、胃がん、大腸がん、乳がんで、広く使われています。
このゼローダの手足症候群を予防するのに、「ジクロフェナク」という消炎鎮痛剤の外用剤を試してみた試験結果が出てきました。
■”Randomized double-blind, placebo-controlled study of topical diclofenac in prevention of hand-foot syndrome in patients receiving capecitabine”「カペシタビン投与患者における手足症候群予防を目的としたジクロフェナク外用薬の無作為二重盲検プラセボ対照試験」(Journal of Clinical Oncology)
ジクロフェナクは昔からよく使われている消炎鎮痛剤で、ブランドとしてはボルタレンが一番有名です。
カペシタビン投与予定の乳がん/胃がんの患者さんに、ジクロフェナク外用剤を予防的に4サイクル投与する群(130名)とプラセボ群(133名)とで、手足症候群の出方に違いがあるか調べたところ…
グレード2以上の手足症候群の発症率:3.8% vs 15.0%
全てのグレードの手足症候群の発症率:6.1% vs 18.1%
と、有意差ありで、ジクロフェナク投与群が低い結果になりました。
手足症候群が酷くなるとカペシタビンを減量せざるを得ないので、抗がん剤の本来の効果を期待するという意味でも、ジクロフェナク外用剤の予防投与は意義があると考えられます。
さらに、ジクロフェナクは古い薬剤なので、コストが極めて低いのも喜ばしいですね。
今回の試験はカペシタビン投与に限定されたものですが、手足症候群は、カペシタビン以外の抗がん剤でも比較的よくある副作用のため、更に応用が進むことを期待したいと思います。
※本項執筆時点(2023年6月30日)で、筆者はジクロフェナク外用剤、カペシタビンに関して、特筆すべき利益相反はありません。
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Nakameguro, Meguro, Tokyo / Oct. 2012
現像が追いつかないので昔の写真
買ったときからサビが醜くて外しておいたフロントキャリア。前カゴを付ける予定は今のトコないのだけど何となくフロントがのっぺりと寂しいので付けるかと思い再メッキを頼むか自分で塗り直すか。で、とりあえず塗ることにしたのだけどサビ4割ピカピカメッキ6割くらいの感じでメッキの上に塗装してもすぐに剥がれそうだから足付けが必要でどうせサビも落とすのだからかなり荒目の研磨パッドを買ってひたすらヤスる。細い棒状の曲げキャリアだから手でやるのが一番だ。棒と棒の溶接部分はルーターでサビを削り奥のほうはサビ転換剤を塗っておいた。脱脂してミッチャクロン吹いてサフ3回吹き付け。ツルツルよりザラついている感じがいいけど凹凸が気になる部分だけ軽く水研ぎ。でどちらにしても素人DIY塗装だからいずれは剥がれるだろうけどそれでも何とか抗おうかと耐熱スプレーの黒を吹いてオーブンで焼き付け。通常のスプレーよりは塗膜が固くなるだろうから若干耐久性が増すかな?最終的には仕上げで2液ウレタンクリアを吹いてみようかと思うのだけど耐熱スプレーの上にウレタン吹いてもいいのだろうか?そもそも耐熱塗料の下にサフ吹いたけど意味があったのか?どうなんだろう??下��処理を入念にやっておけば内側から剥がれてくることはないだろうけどどういう方法が最善なのかよくわからん。塗ってすぐはまぁボチボチの仕上がりに見えるけど使っていくと差が出るんだよなぁ。
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サイドシートの君
ゆかは旅先で呼んだコールガール。
地元が近いのと趣味が合った事がきっかけで連絡先を交換した。
そしてお盆の帰省のタイミングで会う約束を決めた。
ゆかのいる町まで車で一時間ほど。
来るか来ないかは半信半疑だった。
約束を破るような子では無いと思ってはいたけれど、連絡の返信の遅さがちょっと気になっていて、来なければ来ないでいいやと思っていた。
約束の時間の十分前に待ち合わせ場所に着いて車を停めた。
ゆかに着いた事と車の特徴を書いたメッセージを送る。
来ても遅れるだろうと思い、二十分後に発走する競馬を予想して買った。
既読が着いたのは約束の時間を二分過ぎたあたり。
あと五分くらいで着くらしい。
少し安心した。
それから十分後にメッセージ。
車のナンバーはこれですか?と来て、車の後ろを振り向くと、こちらを見ているゆかと目が合った。
手招きをして助手席に呼ぶ。
ゆかが席に乗り込んでくる。
「すみません」
「久しぶり」
「お久しぶりです」
「元気だった?」
「はい」
「ありがとね、来てくれて」
「いえいえ」
「じゃあ行こうか」
プランを二つ提案した結果、神社に行って近くにある貝出汁のラーメンを食べることにした。
近くのコンビニでコーヒーを買う。
「そうだ、さっき競馬買ってたんだよね」
「そうなんですか」
「一緒に見る?」
「見ましょう!」
一緒に見たレースは見事に的中だった。
ゆかも喜んでいた。
車を走らせる。
車内ではゆかが同棲中の彼氏に薦められて見た頭文字Dの話を熱く語っていた。
今度聖地巡礼に行くらしい。いろは坂はあのまんまだよと言っておいた。
ゆかが今日着ている服はライトなロリータ風のワンピースで、童顔の彼女にはそれがとても似合っていたので伝えた。
嬉しそうに笑うゆか。ロジータというブランドらしい。
田舎道を走っているとひまわり畑を見つけた。
下りてみると一面ひまわりが咲き誇っていて、その後方にある風力発電のプロペラがまたいい味を出していた。
夢中で写真を撮るゆかは無邪気な少女のようで、転んてしまわないか心配になるくらいだった。
車を再び走らせて神社へ向かう。
険しい階段を上って本殿でお参りをする。
「五円あった」ゆかが財布から硬貨を取り出す。
「俺は欲張りだから五円が十倍あるように五十円にするよ」
「なるほど!」
神様に祈ったことは今日が楽しく終わりますように。きつねの神様は俺を助けてくれるだろうか。
反対側に下りて行くと無数の赤い鳥居が並んでいる。何度来ても圧倒されるが、ゆかも同じだったようだ。
ここで少し雨が落ちてくるが気にせずに歩いていく。鳥居の中を歩いていくと横に水場がある。そこに咲く蓮の花を見つけたのでゆかに教えると鳥居から蓮にスマホを向けて撮影した。
白い花びらが水から顔を出して咲く姿は可愛らしさだけではなく強さも感じた。何となくそれはゆかの姿にも重なった。
高台から鳥居が並ぶのを眺める。
雨が本降りになってきたので木の下で雨宿り。
ゆかの持っている赤いバッグには傘が入っていないらしい。
「折りたたみもってくればよかった」
「雨降るなんて考えてなかったよ」
「県の真ん中の方は降るって聞いてたんだけどなぁ」
「しゃあないよ、ここ真ん中じゃないし」
しばらく経ってもやまない雨。結局少し濡れながら歩くことにした。
雨降りにも関わらず別な色の蓮の花を見つけて二人で写真を撮った。
階段を上って下り、おみくじをひいた。
天然石が入ってるおみくじで、パワーストーンが好きなゆかにはぴったりだった。
昼食の時間になったので店へ向かうが、時期や時間もあって行列ができていたので、同じく貝出汁のラーメンを出している別な店で食べることにした。
運良くすぐに座れ、ゆかとあれこれ話した。
ゆかは小学校から高校まで卓球をしていたらしい。
大学ではクラゲの研究をしていて、クラゲの生態にも詳しかった。
「一応理系なんで」
確かに同人小説を書き方を聞いたら実に論理的に話を作っているなと感じていた。
そんな話をしているとラーメンが出来上がって食べた。貝の出汁とバターの風味がうまくマッチしていて絶品だった。ゆかも気に入ってくれたようだ。
店の外に出るとまたもや雨。
近くの公園にあった遊具も濡れていた。
「晴れてたらやりたかったのになぁ」
「これじゃ濡れちゃうね」
残念そうにするゆか。
ここの段階で時間は十三時をまわっていた。ゆかは十六時くらいまでならと言っていたので、次の場所を迷ったが、思い切って賭けに出ることにした。
市街地へ車を走らせる。
「あのさ」
「ん、なに?」
「夜の仕事、まだやってるの?」
「いや、しばらくやってない。昼の仕事で稼げるようになったから。このままやめようと思ってる」
「そっか、昼の仕事が順調ならいいね」
「うん、もう知らない人に会わなくてもいい」
「お疲れ様。よう頑張ったと思うよ」
「彼には絶対言えないけどね」
「体調もよさそうだね」
「うん、抗うつ剤は飲んでないし、元気になったよ」
「よかったよ」
ゆかの手に触れて握ると、握り返してくれた。
川沿いの堤防を走る。
カーステレオからは真夏の果実。
市街地にあるホテルへ入り車を停めた。
ゆかの表情は暗くて見えなかった。
「いい?」
「タダじゃ嫌」
「そっか」
その返答は予測していた。元々は金で繋がった関係だ。
「いくらくれる?」
価格交渉が始まるが、割とすぐにまとまった。
タッチパネルで安い部屋を選んで入る。横にあるシャンプーバーの香りが鼻についた。
部屋に入ってソファに座る。
唇を重ね、ゆかの胸に顔をうずめた。
その後の事は何となくしか覚えていない。何度もキスをして、何度も愛を囁いた。
そして二人並んで眠った。
ゆかの寝息を聞きながら時間を気にしていた。
リミットの時間はとうに過ぎている。
目を覚ましたゆかに聞いた。
「時間大丈夫なの?」
「ああ、うん。別に花火があるからそれまでに帰れれば。そんな花火見たいわけじゃないんだけど」
その日はゆかの住む町で祭りがあって二十時から花火が上がる日だった。
「そっかそっか。一緒に見る?」
「うーん、誰かに見られると嫌だから」
「だよな」
その後はゆかの書いた小説を読んだ。そしたら俺もゆかに自分の書いた物を見せたくなった。
「ゆかの事書いた作品があるんだけど見る?」
「えー!恥ずかしいからやだ」
「まあまあ、自分だと思って見なきゃいいからさ」
「うーん、ちょっと興味はあるんだけどね」
そしてTumblrに投稿してたコールガールを見せた。
時に笑いながら、時に考えながら読んでいた。
「この表現好き」
ゆかを花に例えた部分が気に入ったらしい。
「人の書いたもの見ると勉強になる。すごく読みやすかった」
「ありがとう」
「今日の事も書くの?」
「そうだなぁ、たぶん書く」
「めっちゃ恥ずかしい」
そんな事を話しながら、不思議な関係だなと思った。
現実で会った人にTumblrを見せたのは初めてだった。
彼女でもなければセフレでも無い。そもそも会って二回目の関係なんだから名前をつけようにもまだ難しいだろう。
それでもこの関係は何だろうと思いながら気づけば温くなった風呂に二人で入っていた。
洗面台で歯を磨くゆかに後ろから抱きついたり、服を着るのを邪魔してみたりした。
帰路につく。
夕焼けの時間だった。
この様子だとゆかの町に着くのは十九時くらいになりそうだ。
「今日さ」
「うん」
「何で来てくれたの?」
「えっ、うーん…誘われたし暇だったから」
「そっか。お金もらえるって思ってた?」
「いや、それはない。ただ会ったらするかもなとは思ってた」
「そうなんだ」
「うん」
途中の海辺で夕焼けの写真を撮った。
「すごくいいね!あとで送って」
「いいよ、今送るよ」
すぐゆかに送った。
「ありがとう」
そっとゆかの手に触れた。自然と繋ぐ。
車は海沿いの道を駆け抜けていく。
町に着くと大勢の人で賑わっていた。
「どこで下ろせばいい?」
「真ん中は嫌だから…朝会ったとこ」
そこへ向かって車を進めると、警備の人が立っていて入れなかった。
「ちょっと入れないな…」
「うーん、どうしよう」
ぐるぐると町中を周る。
「やっぱ入れないよ」
「離れたとこなら一緒に見てもいい」
「えっ、あっ、そっか。じゃあそうしよか」
「うん」
「食べ物買いに行こか」
「屋台はダメだよ。知ってる人いるかもしれないから」
「そうだな。コンビニでいいか」
その町にある唯一のコンビニで食事を買った。
その隣りにある駐車場から花火が見えそうだったので、そこに停めて見ることに決めた。
花火が始まる。
ここでもゆかは写真を撮るのに夢中。
俺も撮ってみたけれど、信号が邪魔して上手く撮れなかった。
合間に見せてくれるゆかの写真は上手に撮れていた。
プログラムの間、ひたすらゆかはスマホをいじっている。その動きが止まると俺のスマホに通知が来た。
「アルバム作った」
開いてみるとトーク画面に日付が入ったアルバムが出来ていた。花火や蓮、ひまわりの写真がたくさんおさまっていた。
「おー、いいね。ありがとう!」
「ふふっ」
ゆかはまた外にスマホを向けた。
「あの色はリンで…」
花火の色を見ながらそんな事を言っていた。
「覚えたことって言いたくなるよね」
ゆかが笑う。そうだなと俺も笑う。
あっという間に花火大会は終わった。
「帰ろっか」
「うん…」
帰りに降ろす場所を探しながら車を進めた。
「あっちに行くと公園がある」
「そこで降ろす?」
「いや、遠いからいい」
「行ってみようか?」
「うん」
公園に行くと暗くてよくわからなかったが、日中は眺めがいいだろうなと思った。
「あっちには小学校がある」
「行ってみよか」
何となくゆかの気持ちがわかった。
「あれだろ」
「なに」
「別れが惜しくなったんだろ?」
笑いながら言った。
「でも明日は友達と遊ぶから泊まれない」
「もうちょっとドライブするか」
「うん」
小学校へ入った。ゆかが通っていた小学校はかなりきつい坂の上だった。
「こんなのだからめっちゃ足腰鍛えられた」
「これは中々スパルタだな」
「でしょ」
小学校を後にして車を俺の地元方向へ走らせた。
「あれだよね」
「なに?」
「泊まっても寝ればいいじゃん」
「うーん」
「俺いびきかかないし」
「そうなんだ」
ゆかの右手に左手を重ねた。
「朝、めっちゃ早起きだよ?」
「いいよ。またここまで送るからさ」
「わかった」
「じゃあ、泊まろっか」
「親に連絡しとく」
コンビニでコンタクトの保存液とビールとほろ酔いを買った。
ホテルへ入る。今日二度目だ。
カラオケがついていたので酒を飲みながら二人で歌った。
夜は深くなっていく。
シャワーを浴びる。マシェリでゆかの髪を洗った。
洗面台でそれを乾かしてベッドへ入る。
互いに欲望のまま相手を求めあう。
眠っては起きて、キスをして、何度も何度も。
「俺に好きって言ってみてよ」
「言わない」
「いいじゃん、嘘でも言ってみなよ」
「嫌だ言わない」
「そっか」
力一杯抱きしめて、それをゆかも返した。
俺は六月にあったことを話した。
自殺未遂のことも。
「ガチで死のうとしたんだね」
「うん、そうだよ」
「生きててよかったね」
「ほんとそう思う」
「今も彼女のこと好き?」
「いーや、全然」
「そっか」
「新しい好きな人いるらしいし」
「いなきゃ好きなの?」
「いや、そういうわけでもない。俺にはあわなかった」
「切り替え早いね」
ゆかの首筋にキスをして眠りについた。
結局は予定の時間にゆかは起きれなかった。
俺も軽くは起こしたけれど、別れを早くしたくないなんてエゴが出た。
「私ほんと時間にルーズなんだよね」
と言いながら、そんなに慌てないゆかが滑稽だった。
「私と付き合わない方いいよ」
「どうして?」
「時間守れないし、好きなこと話すと止まらないし」
「時間を守れないのはよくないな。でもそれはパートナーがちゃんとしてれば支え合っていけるんちゃうか?」
「うん…」
ワンピースを着ながらゆかは俺を見た。
「うしろのチャック閉める?」
「閉めよっか」
「自分でも出来るけど」
「いいよ、閉めるよ」
背中を向けたゆかの背中のファスナーを閉めた。
「上のボタンもかけて」
「はいはい」
ボタンを掛けて後ろから抱き締める。
「かわいいよ」
「ふふっ」
ゆかにかわいいと言うといつも笑う。
そんなとこはあざといのかもしれない。
「友達との待ち合わせ場所まで送ってくれるんでしょ?」
「うん、送るよ」
「やったー」
「そのかわり」
「なに?」
「お金は無しな」
「えー、少しも?」
「当たり前だろ。泊まったし送るんだし」
「ふふっ、そうだよね。わかった」
「交渉成立な」
「電車代浮いたからいいや」
「なんだよそれ」
ゆかが笑った。
ホテルを出てコンビニでコーヒーと朝食を買った。
予定時刻までに着かないのはわかっていた。
友達やら予約しているカラオケに電話をしながら、車の中でアイラインを引き、ルージュを塗った。
「ちょっとはおしゃれしないと」
「昨日と同じ服だけどね」
「それはしょうがない」
「そうだな」
「そうだ、スッピンどうだった?」
「あー、うん。可愛かったよ」
「ふふっ」
相変わらず笑う。
海辺を見ながらゆかは言った。
「普段海見ないけど、やっぱりこっちの海のが好き。向こうはなんか深くて怖いから」
戻ってこいよ。なんて言おうと思ったけど、別に俺がそれを言える立場じゃ無い。
「やっぱさ、十八年見た海は特別なんだね」
「確かにそうかもな」
「今回帰ったら、次見るのは冬か」
「その時も一緒に見たい」
「うん、いいよ。あっ、あとは会いに来てくれれば会えるよ」
「行きたいなとは思ってるよ」
海辺を過ぎて内陸へ入る。
あと五分で目的地。
信号で止まった時にゆかの唇を奪った。
信号の色が変わるのを感じで離れる。
ゆかの表情はどこか寂しげだった。いや、そう思いたいからそう見えたのかもしれない。
カラオケの前で降りる間際にもキスをした。
去り際にゆかは俺を見てこう言った。
「死なないでね」
短いけど重い言葉だった。
「そっちもな」
車を大通りへと向かわせる。
何度もゆかの耳元で囁いた言葉を思い出す。
車線を変えながら車を一台二台と抜いた。
「俺って本当に」
アクセルを踏んで帰路につく。
サイドシートにマシェリの香り。
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そもそもうつ病の根幹的な治療は何か?
まず、うつ病に至ったストレスを無くすことです。私は公務員という立場や家のローン、世間体などから仕事を辞めるという選択肢を選ぶのか遅すぎました。
そして、死なないように生き、どこかのタイミングで行動を起こすことです。具体性に欠けますが、深い深い闇の中にいて、抗うつ剤や他人の空虚な言葉が一筋の光になる…なんて事は現実的ではありません。
最初はどんな行動でも構いません。ポイントは、うつ病を患ってからした事がない行動です。
(中略)
だからまずあなたがするべき事は、死なないように生きることです。そ��て、私のようにきっかけを待つか、自らきっかけを作り行動することです。
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数日前、友人へプレゼントする本を購入しました。
ある方の投稿で教えていただいた西 加奈子さんの【くもをさがす】です。
日本からカナダへ移住した加奈子さん。
乳がん発症から闘病の記録が綴られた1冊です。
カナダ在住の友人が同じカナコさん。
そして1年前に同じバンクーバーの病院で乳がん治療。
同一人物?
本を出版した?と彼女へLINEで確認したところ違うカナコさんでした😅
でも本のことはご存知で、読んでみたくて!と話していました。
年が明けてすぐ市内のカフェで再会します☕️
4年ぶりの帰国。
病気のことは親にはまだ話していないらしく、近親者では私にしか話していないとのこと。
闘病中、ずっと経過を教えてくださっていました。
乳房を切除、自作自毛のウィッグのカナコさん。我が子の体、状況をご両親はどう受け取られるのでしょうか。
現在、抗がん剤治療が落ち着き定期的な検査を続けていますが、前向きな気持ち、彼女の強い精神力に逆に元気をいただいていました。
本のプレゼントは、過去を思い出させてしまうようでどうかな?と正直悩みました。
でも私がこの本を読み、闘病中の気持ちを少しでも理解して彼女にお会いできたら…という理由で購入、お渡しすることにしました。
会ったら泣いちゃうかもね🥹
私は読む速度が超スローで内容の理解に時間がかかります。
はい、国語が超苦手でした🤭
仕事も忙しく年内に読み終わり、再びラッピングできるよう頑張ります👍
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