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#vicp
sorairono-neko · 2 years
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勝生勇利の愛の話
「ヴィクトルもおいでよ」  クリストフに誘われたとき、何かおもしろい集まりでもあるのかとヴィクトルは興味を持った。行ってみてもいい。勇利を連れて。勇利は大勢と会うのは苦手だけれど、スケート仲間に知り合いをつくっておくのはよいことだ。 「いいけど、何だい? 食事会?」 「飲むほうだよ。俺の部屋に集合することになってるんだ」 「楽しそうだね。誰が来る?」  クリストフはアイスショーのために集まっているスケーターの名をいくつか挙げた。ほとんどみんな引退しているプロスケーターばかりだ。現役で活動しているのはヴィクトルとクリストフくらいだった。 「ちょっとした発表会なんだ。ヴィクトルもそのつもりでいてね」 「発表? 何を発表する?」 「これまでの愛の軌跡さ」  クリストフは笑いながら言った。ヴィクトルは眉を上げた。 「おっと、俺の案じゃないよ。先輩方さ。ただのお遊びなんだし、断ることもできないだろう。ヴィクトルなら大丈夫でしょ。これまでの百万人とのいろいろなことを、適当にしゃべればいいんだよ」 「俺が愛しているのは勇利だけだ」 「じゃあそう言えば? そうそう、勇利だって来るんだよ」  クリストフはおもしろそうに笑った。ヴィクトルはびっくりしてしまった。 「なんだって? どうせ彼に会の目的を教えてないんだろう。騙してそんな場に連れ出すなんて感心しない。勇利はそういう話が苦手なんだ。クリスだってわかってるだろ?」 「説明したよ。それでもいいって勇利が言ったんだよ」  ヴィクトルはさらに驚いた。勇利がいいと答えた? 本当だろうか? 「むしろ、わくわくして楽しみにしてるみたいだったよ。うそじゃない。勇利に訊いてみれば? それで? ヴィクトルは来るの? 来ないの?」 「行くにきまってるだろう」  勇利が参加するのに行かないわけがない。しかしヴィクトルはふしぎだった。どういう会合かを聞いてなお、勇利が承知したのはなぜだろう? 彼ならそんなことはひとこと聞いた途端に断りそうなものなのに。ヴィクトルは、「愛されたことを思い出すんだ」と言っただけで勇利に完全に無視されたことを考えた。  ヴィクトルはクリストフに約束の時間を確かめ、そのあと、勇利に会いに行った。彼は平気そうだった。 「本当だよ」 「本当に? 本当に行くのかい?」 「行くよ。どうして? ヴィクトルは行かないの?」 「いや、行くが……」  どうやらクリストフの言葉にまちがいはないようである。勇利はただ行くというだけではなく、確かに楽しみにしているようだ。目は輝いて、言葉つきも弾んでいた。 「大丈夫なのかい?」 「どういうこと? ヴィクトルはいったい何を心配してるの?」  ヴィクトルは「きみがそういう話を嫌いで、話題にしたが最後、無視するような子だからだよ」とは言えなかった。それこそ怒らせてしまいかねない。だから彼は、「じゃあ一緒に行こう」と言うにとどめて勇利はそれを了承した。  その夜、食事を済ませてから、ヴィクトルは勇利とともにクリストフの部屋へ足を運んだ。すでにみんな集まっていて、ベッドやソファに思い思いに座っていた。 「やあ、ヴィクトル」  全員に挨拶され、ヴィクトルも返した。勇利は、かなり年上のスケーターが多いので緊張しているようだけれど、頬が赤いだけで、困っているふうではなかった。彼らは勇利にも親切に接し、「ショーでのすべりは本当によかったよ」「ヴィクトルと一緒に座ったら?」などと言って気遣った。ヴィクトルはベッドのすみのほうに勇利と腰を下ろし、飲み物を受け取った。 「はい、勇利は水ね。お酒でも俺はいいと思うけど」  クリストフが楽しそうにペットボトルを渡したのに、勇利は急いで「水でいい」と答えた。ヴィクトルがもらったのはアルコール飲料の缶だった。  みんな知り合いなので、ヴィクトルとしては気楽だったけれど、勇利はずいぶん緊張してかたくなっているようだ。ヴィクトルは勇利のことをずっと気にしていた。それぞれが歓談し、勇利に話題が及んだときには言葉を添えたりして助けた。そのうち、「じゃあ例の話を……」ということになって、場の雰囲気がすこし変わった。  勇利は大丈夫だろうか? ヴィクトルはちらと横目で彼をうかがった。勇利は相変わらず頬が赤いけれど、困惑してはいないようだ。かえってさっきよりも元気になったように見える。勇利が楽しいならいいことなんだが……とヴィクトルは考え、そこではっとなった。  クリストフは、恋愛遍歴を語る会だと言っていた。そして勇利はそれを楽しみにしていると。つまり、勇利には何か語るべき話があるのだろうか? すてきな思い出があって、それを話したいからここへ来たのだろうか? だとしたら──。  ヴィクトルは一瞬のうちに重苦しい気持ちになった。彼は、勇利にはそういう経験はないと思っていた。いかにも純粋だし、透明とも言えるほど清純だし、何も知らない、やわらかな精神をしているからだ。勇利自身、愛されたことなどないというようなそぶりだった。だからヴィクトルはすっかり安心していたのだ。しかし、勇利はうつくしく、かわいらしく、気高く、上品で魅力的な青年である。彼に心惹かれる者はいくらでもいるだろう。ヴィクトルが勇利にめろめろになっておぼれきっているように、これまでも誰かが──もしかしたら幾人もの者が夢中になっていたのかもしれない。そして勇利はそのうちのひとりと──。  ヴィクトルは強くかぶりを振った。考えたくなかった。そんなことはないと思いたかった。彼は、あり得ない、と自分に言い聞かせた。だが、本当はあり得なくはないことを知っていた。勇利は「ノーコメント」と言っていたけれど、そのとおり、言葉にしなかっただけで、じつは劇的な物語があったのかもしれない。  ヴィクトルは憂うつになり、いますぐ勇利を連れて帰りたいという気持ちだった。実際、喉元までそのひとことが出かかっていた。しかし勇利が頬を上気させ、ひとみを輝かせていかにも楽しみそうにしているのを見て、言うのをやめてしまった。ヴィクトルは苦しんだ。 「じゃあ、まずは俺から……」  先輩スケーターのひとりが手を挙げ、まわりが拍手をした。勇利も子どものようにぱちぱちと手を叩いた。ヴィクトルはなげやりだった。  勇利の愛とはいったいどんなものなのだろう。イマジネーションの豊かなヴィクトルでも、まったく想像がつかない──いや、想像したくなかった。何かそれらしいことを思い浮かべて慣れておき、間もなく襲ってくるであろう衝撃に耐える支度をしたいのに、ヴィクトルの頭は考えることを拒絶して、すこしも働こうとしなかった。ヴィクトルはほかの者の話を何も聞いておらず、しばらく勇利のことばかり思案していた。  笑いが起こったり、ひやかしの声が上がったり、歓声が部屋にあふれたりした。そのうちヴィクトルは、自分の番が来たら何か語らなければならないのだということに気がついた。ヴィクトルは言うべきことなど何も考えつかなかった。クリストフに言ったとおり、勇利を愛していることしか話すことはない。みんなはどういった話をしているのだろう? ここでようやくヴィクトルは、彼らの会話にしぶしぶ耳を傾けた。 「これは引退してからの話なんだ。地中海のある島へ旅行に行ったとき──」  先輩スケーターは、そこで出会った美女との恋物語について得意そうに話した。本当かうそか知らないが、かなり情熱的ななりゆきだった。出会って、恋に落ちて、どんなふうに夜を過ごしたかまで、包み隠さず語った。ほかの者の話も聞いたが、どうやらみんな、恋の話そのものよりも、夜はどんなふうだったか、ベッドの上で相手がどう魅力的だったかということに重点を置き、そこを熱心に説明しているらしい。誰もみな、自分の経験がいちばんだと思っているようだった。  ヴィクトルはめんどうになってきた。勇利とのあいだには何もないけれど、あったとしてもこんなところで話したくはない。彼らは、世界一もてると言われているヴィクトルに期待をしているだろう。適当な作り話をしてごまかすしかないが、勇利に誤解されるようなことは言いたくなかった。そんなこと、冗談ではない。  そこでヴィクトルは、勇利の順番もまわってくるのだということを思い出した。そうだ。勇利はこんな話をするのだろうか? セックスの話を? 彼が誰かとこんな夜を過ごしたというのだろうか? 考えたくない。勇利はまさかいまも──その誰かのことを──。  ヴィクトルは緊張しながら、そっと勇利を見た。そして、彼の顔色を目にした瞬間、愕然とした。勇利はうつむき、まっかな頬をし、泣きだしそうになりながら、両手を握りしめて膝に押しつけていた。気分が悪いのかと思ったけれどちがう。彼は、みんなの話を聞いて、あきらかにつらくなっているのだ。ヴィクトルはうろたえた。こういう会だと知っていたはずなのにこんなふうになっている理由はわからないが、実際直面したら慌ててしまうこともあるだろう。できると思っていたのに無理だったなんていうことは珍しくない。とにかく勇利を助けなければ──。 「じゃあ次は」  先輩のひとりがそう言い、全員が楽しそうに勇利を見た。 「世界一もてる男をこれほどとりこにしてるんだから、きっとすごい武勇伝があるんだろう?」 「試合でのファンの視線も、君の場合はかなりすごいしね」 「さあどうぞ!」 「あ、あの──」  勇利はしどろもどろになった。彼はとりみだしていた。ヴィクトルにはわかる。これは照れているのではない。本当に混乱して、どうしたらいいかわからないのだ。もうすこししたら泣くかもしれない。 「勇利──」 「ぼ、ぼくは、」  ヴィクトルが口をひらくのと同時に、勇利がふるえ声で話し始めた。 「ぼくはそういう……そういう話はなくて……」 「そんなことはないだろう」 「そうそう。スケートもすごくいいしさ。あれに魅了される者は大勢いる」 「あの、本当に、ごめんなさい、ぼくはなんの経験もなくて、みなさんみたいなことはなくて……」 「でもさっき、何か見てにこにこしてただろう?」  ひとりに指摘され、勇利はびくっと肩をふるわせた。確かに彼は、話が始まったとき、うれしそうに白い紙片をのぞきこみ、しあわせそうにみつめていた。 「相手の写真を見てたんじゃないのかい?」 「ぼくの愛してるひとはこのひとです、ってこと? 誰?」 「あっ、あの、それは、えっと、えと──」 「そこにあるやつかい?」 「ち、ちがいます」  勇利はあたふたして顔を上げた。彼の膝には写真があり、彼はその上にさっと手を置いた。 「ちがいます、これはそういうのじゃなくて、あ、愛してるひとだけど、そうじゃ──」 「見せてくれよ、勝生勇利の愛する相手なんだろう?」 「だめです! ちがうんです、そうじゃなくて、これは──」  近くにいた数人の者が写真を見ようとし、勇利は抵抗し、ヴィクトルは止めようとし──勇利の手から、写真が離れた。 「あっ」  写真はひらひらと舞って、床の上に落ちた。みんながそれをのぞきこんだ。ヴィクトルも我慢できず目を向けた。見たくないと思いながら、見ずにはいられなかった。それは──。 「あ、あ、あの……あの……」  それはヴィクトルの写真だった。おそらく昔から持ち歩いているのだろう、端のほうが古くなり、すり減り、全体的にすこし皺の寄った──しかし大切にしていることがひと目でわかる写真だった。  ヴィクトルはものも言えなくなった。わけがわからなかった。なぜ自分の写真なのか? 「なんだ」  クリストフが写真を拾い上げた。 「ヴィクトルの写真じゃないの」 「…………」  勇利はまっかになってうつむいた。クリストフは笑いながらそれを彼の手に返した。 「そんなことだろうと思ったけど」 「あ、あの……あの……あの、ごめんなさい……」  勇利が絞り出すように、かぼそい声で言った。 「ぼく、こういうのだと思ってなくて……あの、そんな話をするのだと思ってなくて……」  勇利の目が恥ずかしさでうるんでいるのを、ヴィクトルはぼうぜんとして見ていた。 「ただ、好きなひとの話をするんだと思って……ぼくほんとにそう思って……ヴィクトルのこと好きだから……ヴィクトルの話ができるんだと思って……みんなが言うみたいな、そんなことだと思ってなくて……」  勇利はぎゅっと胸に写真を押し当てた。 「ヴィクトルがどれだけすてきか、ヴィクトルのことをどれだけ好きか、それを言えたらいいなって……ぼくがヴィクトルのこと好きっていう話、あんまりちゃんとできないから……。でもみんなが言ってるようなことはなくて、本当に、あの、ぼくの片想いで……だからヴィクトルの話なんてここでしたらヴィクトルに迷惑がかかると思って……。ヴィクトルと特別なことがあったわけじゃないんです。ヴィクトルは関係ない……ぼくが一方的に好きなだけ……ヴィクトルはそんなのじゃないんです。ごめんなさい。本当にこういうのだと思ってなかったんです。わからなかった。こんなに場違いだなんて知ってたら来なかったんです。ごめんなさい……」  勇利はうるおいを帯びたひとみでヴィクトルを見た。ヴィクトルはやはりひとことも言えなかった。 「……ほんとうだよ」  ヴィクトルは目をみひらいた。その場にいる全員が、なぜ何も言ってやらないんだというようにヴィクトルに注目した。ヴィクトルは彼らの視線にまったく気がつかなかった。頭の中も、視界も、勇利でいっぱいだった。 「勇利」  ヴィクトルは勇利の手をとると、優しく、しかし急いで引いて立ち上がらせた。勇利が写真を落としてうろたえたので、ヴィクトルが代わりに拾ってやり、彼に丁寧に渡したあと部屋から連れ出した。そのとき、後ろでひやかしの声や口笛が上がったけれど、ヴィクトルの耳には入らなかった。 「あの、ヴィクトル、待って」  勇利が戸惑ったように言い、一生懸命ヴィクトルについてきた。 「ごめん。ごめんなさい。怒ったの?」  そんなわけがない。あんな勇利を見て、いとおしさを感じこそすれ、怒るわけがないではないか。だがヴィクトルは胸がいっぱいで、なかなかものを言うことができなかった。 「ごめんなさい。本当にわからなかったんだ。ごめんなさい。ごめんなさい……」 「勇利、おいで」  ヴィクトルはおかしくなりそうになりながら、まっかな顔の勇利を自分たちの部屋へ連れて入った。彼と向きあうと、勇利は両手で写真を胸に押し当て、相変わらず泣きそうになってしゅんとしていた。 「勇利、まずこれを言うが」  ヴィクトルは喉にからまる声で、やっとのことで言いだした。上手くしゃべることができない。こんなときに。なんて役に立たないんだ、俺の口は! 「俺は怒ってなんかいない。むしろ申し訳ないと思ってるんだ。今夜の会の話を聞いたとき、勇利は大丈夫だろうかと心配した。でもクリスから勇利も楽しみにしていると教えられて安心したんだ。だけどよく考えてみれば、勇利がそんな会合、平気なはずがない。もっとちゃんと説明を求めればよかった。勇利が勘違いしている可能性を考慮すべきだったんだ」  そうだ。それが当たり前だ。本当に勇利がいても問題ないものかどうか、確かめるべきだった。それをおこたってしまった。 「……ぼくが幼稚だから……」  勇利は目を伏せてちいさくつぶやいた。ヴィクトルはかぶりを振った。 「幼稚なんじゃない。勇利は純粋なんだ。それだけのことだ。もちろん経験はその人にいろいろなものをもたらすけれど、経験しないことが悪いというわけじゃない。それぞれ考え方や出会い、感情というものがある。勇利にいけないところはひとつもないんだよ」 「でもヴィクトルに迷惑かけた……」  勇利はしょんぼりと言った。 「ぼくが何も知らなかったせいで……」 「迷惑だなんて思っていない。そんなことはちっとも思ってない」 「みんなで楽しく話してるのに、いきなり真剣にぼくに好きだとか言われて……」 「うれしかった」  ヴィクトルは勇利の手を取り、このう��なくまじめに、かき口説くようにささやいた。 「うれしかったよ」  勇利はまつげをふるわせて力なく言った。 「……ぼくほんとにだめで……恥ずかしかった……」 「何もだめじゃない。みんなもなんとも思ってないさ」 「ぼく……ヴィクトルのこと話すことしか考えてなくて……」 「いいんだ。うれしいよ。そんなふうに思ってくれてたなんてうれしい。本当だ。勇利、信じてくれ」  ヴィクトルはぎゅっと勇利の手を握った。勇利はまだ気恥ずかしそうにしていた。 「いま、ここで、あのとき言おうとしてたことを言ってくれたら俺は……、いや、そうじゃない。俺が言うべきだったんだ。俺が気持ちをはっきりさせないからこんなことになってしまった。俺としてはわかってもらえてると思ってたんだが──、そうじゃないな。それじゃだめなんだ。勇利には言わないとわからないのに、俺はいつも同じ失敗をするんだ。勇利、本当のことを言うとね、俺は勇利があの集まりを楽しみにしてると聞いて、かなり落ちこんだんだ。勇利には語るべきことがあるんだと思った。俺の知らない過去があり、誰かと特別な時間を持ったのだと……。知りたくなかった。ものすごく憂うつだった。勇利がそれを話すときをわくわくしながら待ってるなんて、考えたくもなかったんだ」  勇利はぱちぱちと瞬き、ふしぎそうにヴィクトルをみつめた。 「知らない過去ってなに……? ぼくヴィクトルでずっと頭がいっぱいだよ……」  ヴィクトルはのぼせ上がりそうになった。いけない。ちゃんと話をしなくては。 「勘違いした。やきもちを焼いたんだ」 「やきもち……?」 「ばかだろう? そうなんだ。俺はばかなんだ。勇利のことになるとたちまちばかになるんだ。さっきも、勇利のことをよく見ていて、不安そうになったらすぐ連れ出すべきだったのに、余計なことを考えてばかりいてなんの役にも立たなかった。自分にあきれるし、がっかりするよ。勇利、ごめんね」 「何がごめんなの?」 「勇利、つまり、俺が言いたいのは──」  ヴィクトルは息を吸った。勇利の気持ちを知っていても、全身がふるえそうだった。愛をわかちあうとは、かくも難しく、大変なことなのか。 「俺は勇利を愛してるんだ」  勇利がゆっくりと瞬いた。彼の長いまつげに、ちいさな涙のしずくが光っていた。 「勇利はちがうと言ったけど──、自分だけが好きで、俺はそうじゃないんだと言ったけど……。もちろんわかっている。俺に迷惑がかかると思って、一生懸命否定してくれたんだね。わかってるよ。わかってる。でもちがうんだ。好きなんだ。勇利、好きなんだ。愛してるんだ。おまえを愛してる」 「…………」 「もっと早くにちゃんとしておくべきだった。勇利は俺の愛を知ってるなんてうぬぼれてるんじゃなくてね。俺はいつも大事なところでばかなんだ。勇利、ああいう場で、俺とのことをつまびらかに語って欲しいわけじゃない。ただ──何か訊かれたら、それは俺とふたりだけのひみつだと言って欲しいんだ。語らないけれど、語るべきことはある──そういうふうになって欲しいんだ」 「……それって」  勇利は無垢なひとみをぱちぱちと瞬かせた。 「みんなが言ってたようなことを、ヴィクトルとするっていうこと……?」 「あんなふうじゃなくていいよ!」  ヴィクトルは急いで訂正した。彼らの話はあまりに開放的で直接的だった。勇利は驚いてしまうだろう。 「そういうのじゃなくてもいい。ただ……もし訊かれたときは、愛してるのは俺だと……たとえみんなみたいな過激な話じゃなくても……そう……勇利がさっき言いたかったことを、言って欲しいだけなんだ……」  ヴィクトルはおもてを勇利に近づけ、熱心に、懇願するようにささやいた。 「そして俺が勇利のことを話すのをゆるして欲しい……。ああいうところで、愛について尋ねられたら……愛しているのは勇利だけだと、ひとこと……得意そうに答えるのを、笑ってうなずいて見ていて欲しいんだ……」  勇利はそっと顔を上げた。ヴィクトルは勇利の熱っぽいひとみをのぞきこんだ。勇利が返事をする前から、ヴィクトルには彼の答えが伝わった。目を見ればわかるのだ。 「……はい」  しかし、勇利が澄んだ声でそう答えたとき、どうにかなりそうなほど喜びがこみ上げた。ヴィクトルは勇利の手をとったまま、さらにおもてを近づけた。勇利が黒くて長いまつげをゆっくりと伏せ、まぶたを閉じた。  ヴィクトルは、みっともないほど不器用なキスをした。勇利はほんのりと頬を上気させ、ひどくうれしそうだった。 「まったく、ゆうべはどうなることかと思ったよ」  一緒に歩きながらクリストフが言ったので、ヴィクトルは機嫌よく笑った。 「勇利はかわいいだろう?」 「返事がそれなの? やれやれ、手に負えない」  ヴィクトルは物思いにふけるように言った。 「でも本当に反省してるんだ。もっとちゃんと勇利のことを考えるべきだったし、見ているべきだった。クリス、勇利にどんな説明をしたんだ?」 「君に言ったのと同じだよ。勇利はただ、愛するひとといえばヴィクトルのことしか考えられないんだよ」  ヴィクトルはうれしくてたまらず、黙って胸を張った。クリストフは「言うんじゃなかった」とおおげさに後悔した。 「まあ、上手くおさまってよかったよ。あのあと、みんな心配してたんだよ」  そこでクリストフは足を止めた。ヴィクトルも立ち止まった。廊下のさきのエレベータホールで、勇利が数人のスケーターに囲まれていた。きのう部屋にいた者たちだ。 「ゆうべは配慮が足りなかったよ。悪かったな」  そんな声が聞こえ、勇利ははにかんだ。 「いえ……、こちらこそ、ご迷惑をおかけして……ぼくが悪かったんです。よくわかりもせず参加したりして。すみません……」 「とにかく、ヴィクトルがいてよかった」  ひとりが安心したように言い、別のひとりが身を乗り出した。 「あのあと、どうなったんだい? ヴィクトルと上手くいった? よろしくやった?」  声を弾ませて尋ねる彼を、仲間たちがあきれたように見た。「だって気になるだろう!」と彼は笑いながら言った。 「いえ……あの……上手くというか……」  クリストフが彼らを示し、「助けたほうがいいんじゃない?」と可笑しそうに言うよりもさきに、ヴィクトルは歩きだしていた。勇利は気恥ずかしそうに言いよどんだあと、思いきったように顔を上げた。 「上手くいくってどういうことかわかりませんけれど、ぼくが好きなのはヴィクトルなんです」  ヴィクトルはぴたりと立ち止まった。遅れてついてきたクリストフも目をまるくした。勇利はまつげを伏せ、さらに恥じらった。 「それで……あの……えっと……」  彼は口元に手を添えてささやいた。 「ヴィクトルとのことは……ぼくとヴィクトルだけの……ひみつです……」  一瞬、先輩たちはしんと静まりかえり、次の瞬間、ひやかすような楽しそうな歓声を上げた。そのとき、勇利が気がついて、ヴィクトルのほうをぱっと振り向いた。 「あっ、ヴィクトル」  彼は駆けてこようとした。クリストフがかるく口笛を吹いた。ヴィクトルは勇利があまりにかわいらしく、いとおしかったので、耐えきれず、その場にあおむけに倒れてしまった。 「ヴィクトル、どうしたの!」  勇利が急いでやってきて、ヴィクトルのつむりの下に膝を入れた。彼の綺麗な指をヴィクトルは握った。 「大丈夫? しっかりして」 「心配いらないよ。ちゃっかり手を握ってるじゃない。どうせ勇利かわいいとか、そういうことを考えてひっくりかえったんでしょ」  クリストフはまったく気にしていない様子だった。  ヴィクトルは、目を閉じたまましあわせだった。勇利、と思った。勇利。勇利……。  勇利は、ゆうべ結んだばかりのヴィクトルとの約束を、誠実に、純粋に、可憐に守ったのだ。
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teritelnirbenothing · 10 months
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President Reagan asked Wyeth why they couldn’t make safer vaccines. And Wyeth answered that they couldn’t because vaccines are “unavoidably unsafe.” And that phrase, “unavoidably unsafe,” is in the preamble of the VICP statute
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y0ur-maj3sty · 8 months
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Vaccinations critics have been concerned about the immunity that the government gives to vaccine manufacturers. The National Childhood Vaccine Injury Act of 1986 created the Vaccine Injury Compensation Program(VICP), which prevents anyone from filing civil lawsuits against vaccine manufacturers. Congress gave these corporations this legal protection, that in effect gave them a free pass to market as many vaccines as they want. The VICP is funded by a $.75 excise tax on every vaccine that's routinely administered to children. (courtesy of Jim Marrs)
Now if vaccines are so go0d, why would the above need to happen? They have aluminum, aborted baby fetus, mercury, thimerosal, gardisil, etc.. and even fluoride is found.
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postsofbabel · 6 months
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vaccinelaw · 11 months
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If you filed a vaccine injury claim and lost, you are not alone. Over the past 10 years, the U.S. Court of Federal Claims (the “Vaccine Court”) has dismissed thousands of claims under the National Vaccine Injury Compensation Program (VICP). In fact, since Congress established the VICP in 1988, the Vaccine Court has dismissed more claims than it has compensated. 
Read More:- https://vaccinelaw.com/lawyer/2021/07/18/Vaccine-Court/What-are-Your-Options-if-You-Lost-Your-Vaccine-Injury-Claim_bl42633.htm
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metalby · 7 months
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KK’s Priest [The Sinner Rides Again]. 2023. Spotify, Facebook, Amazon, Youtube. Twitter(metalone). ビクターから発売された日本盤には,インストVerのボーナストラック2曲を追加収録 (VICP-65618).
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sarsootah · 7 months
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2020cookie · 8 months
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truthisouttheir · 1 year
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If you believe a vaccine is going to save us , I have 40 questions for you... 🙂
1. Name 5 vaccine ingredients.
2. What is MRC-5?
3. What is WI-38?
4. What is vaccine court?
5. What is the National Vaccine Injury Compensation Program?
6. What is the 1986 National Childhood Vaccine Injury Act?
7. How has the CDC schedule changed since 1986?
8. How much money has been paid out by vaccine injury court?
9. How many doses of how many vaccines are in the CDC schedule between birth and age 16? (70 in US)
10. Do vaccines contain aborted fetal tissue? If so, which vaccines? And how many aborted babies were needed before they found one with the virus necessary to create the vaccine?
11. Do any vaccines contain dog, monkey, pig, and human DNA?
12. What is an adjuvant?
13. What is an antigen?
14. Which arm of the immune system do vaccines stimulate?
15. Which arms of the immune system do natural diseases stimulate?
16. What is transverse myelitis?
17. What is encephalopathy?
18. What is the rate of autism in 2017, what was it in 2000? What was it in 1990?
19. What is glyphosate and is it in vaccines?
20. If your child is injured, who will take physical, emotional, and financial responsibility?
21. What was the Supreme Court’s statement on vaccines in 2011?
22. Can you provide a study showing vaccinated vs. unvaccinated health outcomes?
23. Can you show me a safety study proving it is safe to inject multiple vaccines?
24. What is shedding?
25. Do vaccines shed? Which vaccines can shed for up to 6 weeks?
26. Which vaccines are live virus vaccines?
27. What is the VICP?
28. What is SV40?
29. What is MTHFR (methylenetetrahydrofolate reductase)?
30. What is an acceptable amount of aluminum to ingest per day and how much is injected via the hep B vaccine on day one of life?
31. Can someone who was vaccinated for pertussis still spread pertussis after being exposed to it? If so, for how long?
32. What is the death rate from measles in the US from 2005-2015? From the MMR vaccine in same time frame?
33. What does attenuated mean?
34. Where can I find information about vaccines?
35. Are there vaccine consent forms?
36. Can the vial stopper cause allergic reaction?
37. Can there be serious reactions to vaccines?
38. What is NVIC?
39. Is there any compensation for physicians who have a certain percentage of their patients vaccinated?
40.whats the difference between natural formaldehyde and synthetic (synthetic is in vaccine)
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hard-rock-music · 1 year
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Gods Hotel - Gods Hotel (VICP-60117) Japan Edition+4 bonus - 1998, FLAC+MP3, CD w/ Scans
Gods Hotel – Gods Hotel (VICP-60117) Japan Edition+4 bonus – 1998, FLAC+MP3, CD w/ Scans
Genre: Hard Rock Disk (release) country: Japan Year of publication: 1998 Publisher (label): Victor Entertainment, Inc. Country of performer (group): International (more…)
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sorairono-neko · 3 years
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Yuri and Victor are in different competitions. Victor is told through the screen by Yuri, “I miss you.”
Victor usually relaxes before his performances, but today he was eagerly checking his cell phone to find out the status of the Japanese competition. Because Yuri is competing in the competition in Japan.
As a result, Yuri had won the competition and was being interviewed with flushed cheeks. Victor couldn't understand what he was saying because it was in Japanese, but he listened to his soft voice with his heart thumping. He was hoping that Yuri would say something to his coach at the end — that he would show him his medal and say that he had won.
Yuri answered thoughtfully, as he always did at the competitions, and ended the conversation without mentioning his coach. Victor was disappointed, but Yuri smiled a little embarrassed when the reporter nudged him to do something. Victor thought he heard the words “Coach Victor”. So Yuri was probably encouraged to say something to Victor.
Yuri was silent and thoughtful for a while. He was carrying a box of tissues, a thermos, and two stuffed dolls that were probably given to him by his fans. One of them was Victor, and the other was Yuri.
He suddenly put his stuffed doll in the shape of Yuri in front of the TV camera. Victor could only see his stuffed doll.  Victor waited for him to declare, “Victor, I won the gold medal!” Yuri said.
“Victor, um…, I can't wait to see you…. I miss you….”
Victor opened his eyes wide. He couldn't breathe, he stumbled and leaned against the wall. He felt dizzy and could not stand up straight. He also began to feel as if his vision was not clear.
Half of what Yuri said was in Japanese. But Victor could understand. He can understand simple Japanese. Yuri said that he missed Victor and that he was lonely without Victor. Yuuri. Yuuri….
“Hey, what are you doing?”
Victor heard Yakov's voice, which sounded a little surprised. Yakov approached Victor and grabbed his shoulder, “Are you not feeling well?” He worried.
“Yakov…, help me….”
“What's going on?  Are you sick?”
“Help…” Victor groaned. “Yuuri is just too cute….”
“…What?”
“Yuuri said….” Victor said, his cheeks flushed and entranced as he felt his chest tingle. “Yuuri said he missed me…. He said he was lonely without me…and that he wanted to come back to me as soon as possible….”
“……”
“I don't know what to do…I'm gonna cry….”
Yakov was silent for a while, but he was evidently disgusted. He was furious because Victor had been so euphoric for so long.
“Get ready right now!”
The next day, Victor is motivated and full of energy for free skating. I'm going to win! My sugar Yuuri is waiting for my gold medal!
Victor wants to kiss each other's gold medals when Yuri comes back. He's preoccupied with that.
“Get ready right now!” Yakov gave the same stern warning as yesterday and pushed Victor's shoulder.
“Yakov, what an unemotional coach you are.”
“Coaches don't need emotions.”
“I've always had it. My eternal love for Yuuri….”
“Stop talking nonsense and go!”
Victor walked down the hallway, dissatisfied that Yakov couldn't understand his love for Yuri. Just then, something peeked out from the corner ahead of him. Victor was taken aback. It was the stuffed doll in the shape of Yuri that Yuri hold yesterday.
“Victor….”
The stuffed doll swayed from side to side as it spoke. It's Yuri's voice.
“I've come here to shrug off a lot of things….”
Victor has been still in a daze. The stuffed doll moved and he could see Yuri's embarrassed face beside it.
“Hello.” The stuffed doll that Yuri was holding said. Victor was so shocked that he fell against the wall even harder than yesterday. I absolutely love him…. How cute he is….
When Victor finished his performance and returned to Yuri, he looked at Victor with moist, shining eyes and waved his stuffed doll by his face. His stuffed doll said.
“You're so cool….”
“……”
“Victor, say something….”
“You're so cute I want to kiss you. Did you think I was cool you want to kiss?”
Yuri was pop-eyed with surprise, then laughed delightedly and pressed his stuffed doll against Victor's cheek.
“Smack!”
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nataliesewell · 7 years
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VOLTAGE INC. CHARACTER POSTERS: ↪ eisuke ichinomiya, kissed by the baddest bidder
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theexodvs · 2 years
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Republicans: It makes no sense that Pfizer and Moderna are being shielded from lawsuits! Nobody should be protected from getting sued!
Me: I agree. We shouldn't protect police officers from lawsuits either.
*crickets*
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vaccinelaw · 11 months
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There has recently been some discussion in the news about the link between the flu vaccine and Guillain-Barre Syndrome (GBS). This article provides a brief overview of this link as well as some important information about GBS and flu vaccine claims under the National Vaccine Injury Compensation Program (VICP). If you believe you have a claim for Flu Guillain Barre Syndrome(GBS) after any vaccine, contact our office to help you receive significant compensation awards. 
Read More:- https://vaccinelaw.com/lawyer/2022/02/28/Flu-Vaccination/Is-the-Flu-Vaccine-to-Blame-for-Your-GBS-Diagnosis_bl42869.htm
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theculturedmarxist · 2 years
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>It wasn’t just me. People with 2-3 x as many years experience covering the CDC as me were having the same problem. We were frozen out. Thought it would change when went from Redfield to Walensky. Nope. Just as bad or worse. Only get access during infrequent press calls.
>I haven’t personally asked about long COVID (yet) bc I haven’t covered it much (yet). (I cover a LOT of areas & vaccines have always been my specialty for 13+ years, so that’s where most of my energy has gone, but I literally suggested *yesterday* to my health org …
… that we do a webinar on the need to report more on long COVID and how to do it, and the fact that we have a HUGE wave of long-term disability hitting us that no one is talking about, and our HC system & PCPs & specialists & SSDI/SSI, etc aren’t ready for it.
So we’re working on it. There’s a lot of competing priorities, but we can only do so much when the CDC won’t talk to us anymore. See Ed Yong’s excellent work on long COVID (though there are many others).
To give you an idea of the difficulty of getting answers, I could send you the emails I had with HHS Re the CICP & VICP compensation programs for vax injuries for my Nat Geo story on it. More than a dozen emails back & forth, more than 30 questions… almost no useable answers.
(Seriously, DM me w your email and I’ll forward it to you. I’ve shared it with some others. The obfuscation in their answers is almost impressive it’s so bad. And they wouldn’t let me do phone interviews. It ALL had to be thru email.)
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