Vol.85「アンジー現象!? 健康側の乳房まで予防的に切除する乳がん患者が米国で急増」
花見の季節がいつの間にか過ぎたと思ったら、東京ではいきなり初夏の陽気で、着る服を何にしたら良いのかちょっと戸惑う感じですね。
新しい取り組みのお知らせを2つほど。
1つめは、インタビューに応じて頂ける患者さんの募集です。2本の記事の間に詳細がありますので、ぜひ奮ってご応募頂けましたら幸いです。
もう1つは、「お薦め書籍コーナー」。↓に特に乳がんの患者さん向けに私がお薦めできる本をいくつかご紹介していますので、ご笑覧ください。
http://ow.ly/fhXE30b2sC9
━ イシュランメルマガ Vol.85 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【記事1】 意味のある遺伝子検査が身近になる日
★募集★ 乳房再建についてのインタビューに応じて頂ける方
【記事2】 アンジー現象!? 健康側の乳房まで予防的に切除する乳がん患者が米国で急増
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意味のある遺伝子検査が身近になる日
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日本ではここ2−3年でだいぶ人口に膾炙するようになってきた感のある遺伝子検査ビジネスですが、米国では一足早くに始まり、そして一足早くに当局から待ったがかかっていました。
■「Googleが支援する遺伝子検査キット『23andMe』に出荷停止命令が下る」(GIGAZINE)
http://gigazine.net/news/20131126-fda-halt-23andme-backed-google/
この記事にあるように、23andMeの遺伝子検査キットは、2013年11月に米国FDAによって販売停止命令が下りました。
販売停止の理由は、一部の項目で誤った陽性反応が生じて利用者に無用の不安を抱かせたり、逆に誤った陰性反応が早期治療を受ける機会を失わせる可能性がある、という精度についての疑念。
また、「正しい検査が行われた場合でも検査結果を利用者が十分に理解できないことで健康被害が生じる可能性」も理由となっていました。
ところがこのたび、販売許可が下りることになりそうというニュースが流れてきたのです。
■”F.D.A. Will Allow 23andMe to Sell Genetic Tests for Disease Risk to Consumers”「FDAが23andMeの遺伝子検査の販売再開を許可する方向へ」(The New York Times)
https://www.nytimes.com/2017/04/06/health/fda-genetic-tests-23andme.html
記事によると、新サービスでは、10疾患の遺伝子マーカーについてレポートされますが、そのほとんどは血友病C、血液凝固障害、ゴーシェ病1型、セリアック病などの希少疾患関連で、これらの疾患の発症リスクが高まる遺伝子変異がある場合、そのままレポートされます。
一方、もっと一般的な疾患であるアルツハイマーやパーキンソン病のレポートについては少し扱いが変わります。
検査結果を知りたい人は事前にその意思表示をしなければなりません。そして、知るべきかどうか迷っている人に対しては、遺伝子カウンセリングを有料で受けるオプションが用意されています。
精度が担保された疾患のみに絞られたこと(従前は254項目もありました)、そして利用者の理解を医師がサポートするカウンセリング体制を��えたことで、FDAもGoを出したと考えられます。
3年半かけて、意味のある遺伝子検査がようやく身近になったということが言えるでしょう。
翻って、現時点での日本での遺伝子検査ビジネスは、ちょっと野放し状態の様相です。
↓記事にもあるように、その精度もどうも心もとないのが実態。
■「遺伝子検査を比較!GeneLifeやMYCODEなどで結果に違いあり」
http://www.h-nc.com/cat40/post_15.html
日本でも遺伝子検査事業会社と当局が連携して、「検査の質の担保」と「遺伝子カウンセラーとの連携」の2点を是非早急に実現して頂きたいところです。
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★募集★ 乳房再建についてのインタビューに応じて頂ける方
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乳房「二次」再建について、ご自身の経験や考えをお話しして頂ける方を募集致します。
具体的には、
・乳房全摘手術をされ、2013年以後に乳房二次再建を実施した方:2名
・乳房全摘手術を経験され、二次再建を考えてみたことはあるものの、実施はしていない方:4名
を募集致します。
(一次再建をされた方や温存手術を経験された方に関しては、今回は残念ながら対象外です)
実施要項は以下の通りです。
・日時:5月8日(月)〜19日(金)の中の、ご都合のつく時間帯で1時間程度
・場所:ご相談の上決めますが、ご近所の喫茶店等を想定しております
・インタビュー者:私(イシュラン編集長・鈴木)
・謝礼:5000円相当の金券を差し上げます
インタビューに応じても良いですよという方は、↓にメールでご連絡頂けますでしょうか。
実名を明かして頂く必要はありませんので、仮名で結構です
ご応募頂いた後、メールでもう少し詳しい背景を確認させて頂き、実際にインタビューさせて頂くか否かを決めさせて頂きます。どうぞ奮ってご応募ください。
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アンジー現象!? 健康側の乳房を予防的に切除する乳がん患者が米国で急増
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医療に地域差はつきものです。しかし、これほどまでに差があるとはびっくり、というデータが出てきました。
■”State Variation in the Receipt of a Contralateral Prophylactic Mastectomy Among Women Who Received a Diagnosis of Invasive Unilateral Early-Stage Breast Cancer in the United States, 2004-2012”「米国における早期浸潤乳がん患者に対する予防的乳房健側切除術の実施状況の州間格差」(JAMA Surgery)
http://jamanetwork.com/journals/jamasurgery/article-abstract/2613702
早期乳がんに対する治療としては、温存手術か全摘手術(乳房切除術)のいずれかが、原則選択されます。これは日本の標準治療でも米国の標準治療でもそうです。
全摘手術の場合、がんが存在する側の乳房だけを切除するのが通常ですが、予防的に健康な反対側の乳房まで切除してしまうという、かなり思い切った治療が、「予防的乳房健側切除術」です。
アンジェリーナ・ジョリーさんが受けた治療として、ご記憶にある方もいらっしゃるかもしれません。
上記の研究の2010年から2012年という直近のデータで、20-44歳の患者さんについては、予防的乳房健側切除術の実施割合がハワイ州15.7%に対し、中西部の州は42.8-48.5%と大きく異なっていたのです。
そして、米国全体で見て、2004年から2012年の間で、20-44歳の患者さんで予防的乳房両側切除術を実施した割合は、10.5%から33.3%まで急増。
では、この乳房の予防的な切除に科学的な根拠はあるのでしょうか。日本の診療ガイドラインで言及されているので見てみましょう。
■「BRCA1あるいはBRCA2遺伝子変異をもつ女性にリスク低減乳房切除術は勧められるか (疫学.予防・癌遺伝子診断と予防・ID41450)」(日本乳癌学会乳癌診療ガイドライン)
http://jbcs.gr.jp/guidline/guideline/g4/g41450/
本ガイドラインによると、BRCA遺伝子変異を持つ女性に関しては、予防的乳房健側切除術(CRRM)は将来の乳がんの発症リスクを低減するのは間違いないし、乳がんによる死亡率も低減するとほぼ言えるため、医師から勧めるものではないものの実施を検討しても良いというのが結論です。
ということで、BRCA遺伝子変異のある場合に限り一定の科学的根拠はあります。
前述の研究では、BRCA遺伝子変異のある方がどの程度いるのかというデータがなく、なぜここまで急増しているのか、なぜ州間でこれほどの差が生まれたのかはまだ謎で、今後の研究が待たれます。
とはいえ、アンジェリーナ・ジョリーさんの影響は大きいのでしょうね…
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QLifePro医療ニュースゴーシェ病、パーキンソン病の新たな治療につながるメカニズムを解明-九大らQLifePro医療ニュース九州大学は4月4日、グルコシルセラミドと呼ばれる生体内の脂質が、ミンクルという免疫受容体に結合し、免疫系を活性化する役割があることを発見したと発表した。この研究は、同大生体防御医学研究所、大阪大学微生物病研究所の山崎晶教授らの研究グループによるもの。
http://news.google.com/news/url?sa=t&fd=R&ct2=us&usg=AFQjCNF3rg_Vq9uYN-xl1Rtdc5itlbF0nw&clid=c3a7d30bb8a4878e06b80cf16b898331&ei=szvrWMDYIdLOqALf5InQCA&url=http://www.qlifepro.com/news/20170407/gauchers-disease-parkinsons-disease-elucidation-of-mechanisms-leading-to-new-treatment.html
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http://news.google.com/news/url?sa=t&fd=R&ct2=us&usg=AFQjCNF3rg_Vq9uYN-xl1Rtdc5itlbF0nw&clid=c3a7d30bb8a4878e06b80cf16b898331&ei=oB_rWLCiGZO63gGjloGwAw&url=http://www.qlifepro.com/news/20170407/gauchers-disease-parkinsons-disease-elucidation-of-mechanisms-leading-to-new-treatment.html
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