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#トイレと恋は勇気を出して一歩前に踏み出しましょう
blue-aotan · 2 years
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ハロー(´ー∀ー`)2022.6.11
久々にレンタルショップへ行ってきました。前までは新作・準新作は4枚で1000円だったのですが、暫く行かないうちに5枚で1000円になっていて驚きました。サブスク時代の波に揉まれ、レンタルショップも生存競争に必死なのかと思うと心が痛みました…
みんなレンタルもしようね!!!
(お前誰やねん←
5枚で1000円か〜5枚もあるかなぁ…とりあえず5作品観たいものを探してみようーーと新作コーナーからじっくりと見て回り、あれよあれよと5作品が決定しました。
それどころか出てくる出てくる次から次へと観たい映画のオンパレード😂
5枚じゃ全然おさまらない!ここはもう10枚にしよう!!
ってことでもう5枚選ぼうとしたらアレモミタイコレモミタイうぎゃあああああ
ってなって結局3枚くらい諦めて何とか10本借りて帰りましたwww
という事で映画の感想ブログだよ〜
「アンチャーテッド」
あお評価★★★★☆星4
これはゲーム「アンチャーテッド」の実写化になりますが、ゲームはスピンオフ作品以外は4作品全てプレイしてますわたくしです。
ですのでゲームファンとまではいきませんが←
ゲームと比べるということをどうしてもしてしまう自分がいる訳です。比べるといってもそこまでゲーム愛がある訳でもないんだけども、総合的にはとても面白かったです。
ゲームのネイトよりはめちゃくちゃ若いし、何たってトムホだから可愛いむしろ可愛すぎるくらいなんだけど、スパイディの時から成長したねーーーって少年から青年になってておばちゃんはときめいたよ←
ゲームよりもムキムキネイトだったし、子供の頃の話が既に映画の部分にあったりしてもうそこまで描くんだね!という驚きもありましたが、とても綺麗にまとまっているようにも思えました。
ただねー、私としてはサリーがゲームの中では一番好きなキャラクターだったので、それがマークウォールバーグってわかった瞬間にガッカリしたのよね←
だからあんまり期待してなかったのよね、正直w
だからなのでしょうか←最低
エレナは出てこなかったんだけど、クロエが何故かエレナを差し置いて出てきてさwしかもゲームより綺麗じゃないのよ←そこもがっかりポイントだと思うよ(何様
ゲームではネイトの恋愛要素があったけど、映画ではそれはいらないんじゃないかな←
私としては何のロマンスもいらないのでサリーと仲良しこよしで続いてくれたらそれで良しなんですよね。
話の随所にゲームのシーンがあったりして何となく「こんな感じのシーンあったなー」ってなったりして面白かったし、服装とかもまんまネイトでそこが本当に嬉しかったよね。
謎解きシーンも楽しくて、ゲーム版ネイトにはない純粋さっていうのを感じてしまったよね。トムホが純粋顔なのよー(何だそれ
なんかさーネイトはいい人だけど三枚目っていうか、「おいおい嘘だろ」ってセリフがしっくりきてちょっとダサいみたいなところがいいキャラクターだと思ってたんだけど、映画のネイトは純粋なのよーw
やっぱりもっとおじさんがすべきだったかもしれないとは感じたけど、これはこれで楽しめたとは思います。
サリーが最後で風貌をめっちゃゲームに寄せてきたんだけど、そこも何で?とはなったよね←始めからじゃダメだったのかな。
途中、ビーチで全然知らないおじさんが出てきてネイトに話しかけるシーンがあるんだけどこの人何かあるんだろうなって思って、もしかしたらゲームのネイトのモデルになった人とか?って思って見終わって調べたらゲーム版ネイトの声優さんだったらしいですw
私は吹替でゲームしてたからわかるはずもなく。
そういう繋がりももたせてくるのかーーーって、この映画がきちんとゲームリスペクトで作られていることに感動しました。
最後はまた続編を匂わせて終わったんだけど。
何部作なんだろうね←
こういう続編匂わせエンド、昨今の映画多くないですか?
好きな人には嬉しいことだろうけど、アベンジャーズシリーズとかもう多すぎて枝分かれしすぎてついていけない感あるよね←
ほどほどでお願いしたいです←
というか始めから「○部作です!!」って言ってほしい←
はい、また文句ばっかり言ってるだけなので感想はこの辺でおしまいwでもアクションも迫力あったし全然飽きることなく最後まで観れました。
トムホが30代になっても続いてほしい作品ですね😂
「TUBEチューブ 死の脱出」
あお評価★☆☆☆☆星1.5
これはね、ジャケット見て「なんなーんCUBEのパクリかよーーケケケ」と思って借りたアホですよ←
娘を失って自暴自棄になったとある女性が道路に寝そべって死のうとしてるんだけど、車が来た途端やっぱり死にきれなくて立ち上がって歩き出したところ、その車が停車してその女性を乗せるんですね。
そして死のうとしてただろーなんて話している途中でラジオから殺人事件のニュースが流れてきて容疑者は逃亡中であり特徴が運転手の男性とよく似てることに気づくんだけど、そこで男性も気づかれたなってなって急ブレーキを踏んで女性は頭を打って意識を失ってしまいます。
そして目覚めたら変な狭い場所に閉じ込められてて、右腕には見たことのない光る腕輪みたいなものをつけられ、西川貴教のホットリミットスーツみたいなものを着せられているのですよ。何だそれってまずなりますよね、私が←
そして狭い部屋はずっとダクトみたいな空間で繋がっていて、その罠だらけのダクトをずっと移動して脱出し続けなればならないのです。
そこで運転手がこんな手の込んだことをして何がしたいのだろうと思っていたけど、途中でこの運転手が主人公と同じように捕えられていることが判明します。しかも髭が伸び切っていてどれくらい経過してるんだ?って感じになります。
ほんで途中で皮膚がただれた人が出てきたりして、その人はもう人なのか何なのかわからなかったけど、最後まで何なのか私にはわからなかったよ←
その人がずーーっと追いかけてくるんだけど、捕まったからってどうなるんだろう?って別に噛みつきもしないし何なんだろう?って感じでした笑
そして終盤でずっと金属製のダクトみたいな狭い場所が続いていたのに、突然エイリアンの体内みたいな場所に出てきて、肛門みたいなところをくぐって主人公が移動するわ、外の壁みたいな膜みたいなのをみょーーんってエイリアンみたいなのが顔を近づけてきたりする訳。
そして主人公はそのエイリアンにおでこを合わせて嬉しそうにしたり意味わからん行動に出るんですよ。何なんこれ?←
結局その女性は脱出し、というかその元々拉致した宇宙人が逃がしてくれたのか、荒廃した地球みたいな場所に出て終わり。みたいな。
何なんこれ?
という何なんこれ映画認定です!!!おめでとう!!
ジャケットには「タランティーノ称賛」とか書かれてましたが、称賛すな←って思ったよね。私はタランティーノはあまり相性良くないかもしれないね←
(ホステルは好きだけど
途中で主人公がマークの謎が解けて、道順を繰り返し言って覚えるみたいなシーンがあるんだけどさ。結局自分に刻まれたマークを手で隠して「次は右ね」とか言ってるのよね。道順をブツブツ言って覚えるくだり何やったん?ってなったし、指でいちいちマーク隠さんでも見たらわかるだろ!!ってなったし、娘の姿をした宇宙人に騙されそうになって娘じゃないって分かれるのに、結局その宇宙人が後を追いかけてきた時も「いや、おるんかい!!!」と突っ込まずにはいられませんでした。
最後にチューブじゃないのよ、ダクトなのよ。
「ドント・ブリーズ2」
あお評価★★★★☆星4
1は本当に胸糞悪い部分とかもあって、おじいさんにも同情の余地はあったんだけどそれでも許してはいけない部分もあったし、犯罪VS犯罪みたいな感じで正義がない感じだったけど、2はおじいさんと、おじいさんと一緒に暮らしている女の子が主人公になって物語が展開していくのがとても面白かったです。
まずこの女の子は誰なのか。1でおじいさんの娘は車に轢かれて死んでしまい、犯人を監禁して自分の子供を産ませようとしていたけど強盗との揉み合いに巻き込まれて死んでしまったので、じゃあこの女の子は??って観客に疑問を持たせるところから始まります。
そして物語が進むにつれて判明していく真実。女の子がトイレに立ち寄った際、気持ちの悪い男性が少女に近づくんだけど、ただの変態男かと思いきや色々あるんですよねー。
テンポがとても良くてあれよあれよと終わりました。
少女の家に男性達が押し入る場面はかなりドキドキしたし、この子とっても賢くて勇気あるなーーって感心しましたw
結構グロい部分はありましたねー
血は繋がっていても最低な親だっているし、他人でも家族のように愛情を注いでくれる人だっている、みたいなメッセージを感じました。
おじいさんは犬に好かれるww
また続編あるのかなー。
「死霊館 悪魔のせいなら、無罪。」
あお評価★★★☆☆星3.5
副題がダサいのよね…なーーんかダサい。
でも実話ベースっていうのが怖いところですよね。悪魔に憑依され人を殺し��しまった男性、そして悪魔の証明を買って出たウォーレン夫妻の話。
今までも悪魔が人間の弱った心につけ込んで体を乗っ取るみたいな話はたくさんあったんだけど、これはなんと悪魔が勝手に出てきたのではなく召喚をした人間がいるって話なんですよね。
悪魔崇拝者が裏にいるのです。だけど本当に悪魔を呼ぶことなんてできるのでしょうか。現実で悪魔を召喚し人間に呪いをかけるなんてことを立証できるのでしょうか。
そしてそんな事件に自分が巻き込まれてしまったら、そんなことを考えずにはいられないストーリーでした。
実際に悪魔崇拝はあると思うんですよ。世に出ていないだけで、身近にそんな事件がある訳でもないし悪魔崇拝者がいたら絶対に人には話さないだろうしw
ただこれが人間が引き起こした出来事だということがただただ恐ろしいことには変わりないなといった感想です。
実話ベースとはいえ、悪魔祓いの様子や憑依された人の様子、実際に起きた出来事とかはどこまでが本当なのかはわかりません。
ロレインの現実とあの世の狭間みたいな世界で起きた出来事も、死体が襲いかかってきたりだとかも想像の話なのかもしれないしどこまでが脚色された部分かは分かりません。ただ子供の頃にこういう映画を観ていたら本当に怖かっただろうな…と思いましたw
大人で観れて良かったーーー←
夫妻のお互いを思いやる心だとか、美しい夫婦愛みたいな部分がいいシリーズでもありますよね。人にはない力を神からの贈り物だとロレインは言っていたけれど、その力のせいで恐怖や苦悩を体験することも人よりたくさんあるのでしょうね。
その精神面のサポートをしている旦那さんの存在がどれほど大きいのか、そんなことも良くわかる話となっておりました。
悪魔を何のために召喚したのか、目的は何だったのかそれが最後までわからなくて、本当は理由があったのかもしれないけどその理由を知ってどうなるのか、といったことも現実だなとは思いました。
理由がなくても変なことをする人はいるし、それが無作為に行われることだってある。
人間は怖いですねー。
「コンティニュー」
あお評価★★★☆☆星3
予告を見て気になっていた作品だったけど、期待していたよりつまんなかったかも。フランク・グリロさんが結構好きなんだけど(プリズンブレイクの時から好き)、何だか作品に恵まれないのかなと勝手に思ってしまったww(失礼
十分かっこよかったですけどね。この人、サブキャラだったらかなりの存在感を放っているよね。主人公オーラはかなりあるし、なんてったってムッキムキのムッキーだもんね。ちょっとステイサムさんとキャラが被っちゃうって思っている人結構いると思うんだけど←そこはハゲてるかハゲていないかの違いだよね(失礼すぎるし帰れ←
どっちも好きですからね!!好き故の発言なので広い心で読んでくださいよ←
これは同じ日を何度も何度も繰り返してるといったループ作品です。
死んだらまたリセットされて1日が始まるんだけど、その中で元妻を救うため、そして世界を守るために何度も挑戦し何度も生き返り訓練を重ね←強くなってラスボスに挑むみたいな話w
ラスボスって言ってもさ、メルギブソンじゃなくてもよかったのでは?ってくらいあっさりだったし、世界が滅びるってことも正直「?」だったよね←
あとはゲームにまつわるeスポーツが出てきたりだとかレトロゲームが出てきたりだとか中途半端なゲーム設定がちらほら←
死んだらまたやり直しっていう部分がゲームになぞられているんだろうけど、敵側の殺し屋達とかもゲームキャラみたいで変なのだったしw
観音がマジでしつけーーと思うくらいのしつこさだったよ←
あまりループしすぎると飽きてくるし、そこをコミカルな描写で見せてはいるんだけど人を選ぶ作品ではあると思いました。
ただねー、ラストがうーーんでした。不完全燃焼…とだけお伝えしておきます笑
とりあえずは5本の感想でした!!
残りの5本も見終わっているのでまた後ほどブログを更新したいと思います☺️
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bluegardenmaker · 2 years
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見た夢
母親といた。絵の壁があった。トイレに行きたいけど、はくれたら嫌だからトイレに行かずに戻って来た。
水のアトラクションで卵が流れてきて、大きめの卵をとったら、ヒヨコが孵化した。
アトラクションの係員に卵を見せて、アトラクションの中のトイレに入りたい。
係員はドイツ語でドイツだった。
新しいお金のコインには、危険な金属が使われている。触るな危険。
トイレに行けない夢は、自分の感情を表に出す事ができなくなっていることを意味しています。周りに対して、とても我慢していることが多く、いつも自分を押さえ込んでしまっているのです。そのため、とても苦しい思いをしているでしょう。
トイレに行きたいという気持ちがあって、行けないのは、まるで「ノーと言いたいのに言えない。」というのと同じ感覚なのです。あまりに自分を押し殺しているため、あなたは、精神的に楽になりたいといつも考えているでしょう。
この人には、自分の気持ちを伝えられるのでは?と思う人がいたら、勇気を持って伝えてみましょう。いつも我慢する必要はないのです。
壁というのは、夢占いではあなたをしっかり守っているという意味を持っています。また、目の前に現れた壁は乗り越えられる課題が提示されている場合もあります。問題が立ちはだかっても逃げてはいけない!という意味もあります。
壁にかざられた絵画の内容が暗く怖いイメージの場合、現在抱えている問題をしっかり向き合って乗り越えよう!というメッセージが隠されています。また、明るいイメージの絵画の場合は、誰かがしっかりあなたのことを守っているという安心ある夢占いとなります。
(明るい絵だった)
卵が生まれただけでなく、そこからヒナが生まれてくる夢… これ以上のラッキーはなかなかありません! 卵の吉に加えて、卵が孵化する大吉までもが盛り込まれたこの夢は、 あなたの前に待ち構えている大成功を指し示しています。
そして、あなたの潜在能力がついに花開き、びっくりするような成果をあげることも示唆しているのです。
もし今まで、一歩踏み出すのを躊躇してきた事柄があれば、遠慮なく進んでみましょう。 仕事でも恋愛でも望み通りの結果が出ることが期待できる、夢占いでも最上級の吉夢です。
外国語に関する夢の基本的な意味は、新しい発見によって成長することができることを表しています。外国語をすらすら理解できる夢であれば、今までと違った物事の見方ができるかもしれません。理解できない夢であれば、あなたの価値観が固まっていることを表しています。
(理解できなかった)
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moai084 · 3 years
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もう藁なんて着ない 2021.03.17
藁を着た。藁を着てミュージックビデオに出演した。
https://youtu.be/zwIBdGHy7JU
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正社員として働く傍ら、ダンサーとして活動している友人に、MVに一緒に出演しないかと誘われた。ダンスはもうほぼやっていないし、パフォーマンスの鍛錬をしていない私にやれることは無さそうに思えたが、企画書を見ると、衣装のところに雪男のような、藁を被った獣の写真がある。藁…。今まで変な役をやったりやらせたりしてきたが、藁を使ったことはなかった。「おもしろそう」と思って、オファーを受けた。仲の良い大学時代の友人と3人で同じ曲を踊ることができる、いい機会になると思った。
エッセイスト、作家、脚本家、お笑い芸人、ディレクター、YouTuber…何かを発信する人なら誰しも、ハプニングとエピソードの順番に悩んだことがきっとある。おもしろそうなことが起こる人生ではなく、おもしろそうなことに首を突っ込んでいく人生。「おもしろそう」は人間を火にも川にも飛び込ませてしまう危険な感情だけど、私はこの「おもしろそう」にめっぽう弱い。今回もその危険感情によって、雪山で死にかけた。これからその死にかけた話をするから、みな心して聞くように。
藁の前にまず全身タイツを着ることになる
衣装合わせの段階から不穏な空気はあった。グループLINEで「藁の下が透けるので茶色い服を用意してください」というオーダーに、監督が「全身タイツはどう?」と提案したのを、私たちダンサーは震えながら既読していた。私はコントで役者に全身タイツを着せたことがある。その罰が当たったんだと思った。目には目を、全身タイツには全身タイツを。そうかぁ。いいよ、やってやんよ、着てやんよ全身タイツを。人生はじめての全身タイツ、そしてその上から人生はじめての藁を羽織ることになった。でもそれも「おもしろいから良いか」と思ってしまった。そのときに気づくべきだった。2月の雪山で全身タイツは、恥ずかしいとかおもしろいとか言ってる場合じゃなく、寒くて死ぬんだ。でも私たちは気づかなかった。東京が、暖かかったから…
セクシーな雪の精霊
撮影当日、朝6時に渋谷集合、ロケバスで栃木へ向かう。無論、全身タイツも藁もまだ着ていない。渋谷でその格好をしていたら職質される。
雪山に到着し、ロケ地近くのお土産屋さんの一角を借りて撮影準備をはじめる。友達が髪に藁を巻かれはじめ、野生のMISIAみたいな頭で蕎麦を食う羽目になっている。
髪のセットを始める前にトイレで全身タイツを着たが、この時点ではまだズボンやジャンパーを上から着ている。監督が「全員黒ならズボン履いたままでも良いですね」と言ってくれる一縷の望みを捨てずにいたのである。でも監督は全身タイツに藁姿の私たちを見て「かわいい」と言ったので、その望みは北風と共に去った。友人の全身タイツ姿は赤ちゃんが着るロンパースみたいで確かにかわいかったが、藁が少々足りていなかった。でも同時に、衣装さんの睡眠も足りていなかった。徹夜で藁を編みました〜と楽しそうに言うので、もう何も言えなかった。結果、どちらかというと藁より全身タイツの割合が多めの、かなりセクシーな雪の精霊が3人完成した。
ダンサーとして呼ばれたのに雪がすごくて踊れない
お土産屋さんを離れ、車の入っていけない山道を30分ほど歩いてロケ地へ向かう。雪で足を滑らせながら、これ、本当に踊れんのか…?という不安がよぎる。
撮影がはじまり、まずは、メインの男の子が寝転んでいる後ろを通り過ぎてください、というオーダーが出た。監督のよーい、ハイ!の合図で勇んで前に歩んで行く。が、雪が積もりすぎてどこが地面かわからない。思い切り雪に足を突っ込んで抜けなくなる。雪に埋まる雪の精霊たち。慌てて助けに来るスタッフさんたちもひとりふたりと雪に足を取られ、なんとか引き上げられた時には足がびしょ濡れで、それ以降、足先の感覚が死んだ。たぶんそのとき助けてくれたスタッフさんたちの足先もその時に死んだと思う。
ダンサーとして呼ばれてここに来ているので、3人で振り付けも事前に用意してきた。ここのジャンプはこんなふうに…ここは手をそろえた方が…とか言って、zoomミーティングなどもしていた。私たちは雪山をなめていた。ジャンプどころじゃないし、手をそろえるどころじゃないんだ。まっすぐ立てないんだ。そのうえ仮面をつけているので視界は1m先がかろうじて見える程度だ。雪に足をとられるわ、身につけている藁を踏んづけるわで、とても満足には踊れない。それでも私たち3人はダンサーとして、今日の仕事をこなさないといけない。1番のサビまで踊るだけで足をつって死にそうだった。そして仮面のせいで酸欠になり呼吸ができない。1曲踊るまでに息絶える。何やってんだろう私…という気持ちが高速で心をよぎる。あぁ…鱗滝さんはすごい人だったんだな…あんな空気の薄い山で仮面をつけて炭治郎の稽古をつけて…やっぱ元水柱なだけあるな…と朦朧な意識の中無駄なことを考える。2番のBメロまでって言ってたのに、曲が一向に終わってくれない。終わって…お願い…終わって…!もう…殺して…!!とさえ思ったが、その願いも虚しく結局曲が終わるまで踊らされ、息絶えた。監督が「すごく良かったんで意地悪しちゃった…ごめんね」と言った。とても良い笑顔だったので良い絵が撮れたに違いないが、アンタの意地悪でヒトが3人死ぬぜと思った。
渾身のジョジョ立ちを笑ってもらえない
じわじわと寒さが増し、足先の感覚がなくなってきた頃、強烈な北風が吹き始めた。雪に埋まってげらげら笑っていた時がかわいく思えるレベルの寒さが全身タイツの女3人を襲う。カメラマンが「精霊のひとりがずっと俺の方を見てるんだけど…」と呟く。私たちはカメラを見つめてるんじゃない。寒さで直立不動なんだ。陽が落ちて夜のシーンを撮る頃には、視界も足元も最悪で、身にまとう藁も、踏んづけまくって明らかに減っている。あまりに寒いので肩身を寄せ合い、東京では御法度の密になる。最後、精霊ひとりずつポーズをとってください!というオーダーに、私はジョジョ第4部しげちーのスタンド、ハーベストのポーズを繰り出す。誰も笑ってくれない。私の頭は疲れはてると小ボケの精査ができなくなるが、薄皮1枚の女が雪山でこんなに体を張っているんだから、どうか笑っておくれよと心で泣いた。
年齢を感じてとうとう心が折れる
撮影が終わり、山中でよく見かけるロッジ風のトイレで藁と全身タイツを脱いだ。トイレには登山家のためにヒーターがついていて暖かかった。そのトイレではじめて鏡を見て、私藁似合うな…明日これで出勤しようかな…と思った。その日、藁姿(藁姿…?)を褒められるたびに「明日これで出勤しようかな」と言っていたが、3回目くらいから笑ってもらえなくなった。私は3回目以降も笑ってくれる人にしか心を許していない。
バッキバキの身体で藁を脱いでいると、主演の女の子も着替えにきた。心優しい女の子は私たちの身体から落ちた藁を箒で集めてくれた。でも、ちりとりがなくて集めた藁をどうすることもできずにいたのを、私が素手で掴んでゴミ袋に捨てるのを見てドン引きしていた。その表情を見てそういえばこれトイレの床だったと思いだした。主演の子はまだ高校2年生だと言う。こんな雪山に連れてこられてかわいそうに。完成したMVはこの子の処女作になるそうだ。めちゃくちゃ良い表情をしているので、ぜひMVを見てほしい。
トイレで暖をとっていると、その主演の子が突然「きゃーっ!」「やばい…!」「どうしよう…!」と声をあげ、スマホを抱えて外に出て行った。恋愛脳の私は「恋かな?」と呟いたが、友人2人は「いや、あれはおそらく推し活だよ」と言った。髪の藁を取りながら���んな風に語るふたりは何かのベテランっぽかった。無論、ふたりはジャニーズオタクのベテランである。そしてベテランの言うとおり、恋じゃなくて推し活だった。そして頬を赤らめながら戻ってきた女の子を見たとき、あ……なんか……若ぇ〜…と思って心が折れた。ほんと、藁が似合ってる場合じゃない。
きっとまた藁を着る
人間は恐ろしい。今思い出すと、ちょっと楽しかったと思ってしまうから。足の小指の感覚がもう2度と戻ることはないと思われるほど過酷なロケだったのに、私の脳は解凍された途端「おもしろかった」と総括してしまった。私はきっとまたこうやって、たとえば藁が着られますよ、とかいう、おもしろそうなことに首を突っ込んでしまう。そういう人生。これも人生。でも、とりあえず、もう藁は着ないことにする。
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ithink0905-blog · 6 years
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#トイレと恋は勇気を出して一歩前に踏み出しましょう
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tomtanka · 4 years
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『足の踏み場、象の墓場』全首評③(横書き引用ver.)
我妻俊樹「窓を叱れ」『足の踏み場、象の墓場』の全首評
中里さんの塗り替えてくれたアパートに百年住むこの夕暮れから
叱れと言われたら、これはもう、一時的にわずかな理性を取り戻してでも、説明せざるを得ない。 叱るのと怒鳴るのは、全然違う。声を張りあげて自分の感情をぶつけるのが怒鳴るだとしたら、叱るのには、もっと理路整然とした秩序が必要になる。叱ることによって、これまでの状況が変化することが求められるからだ。だから、叱る者には、全てを把握するための客観的な視点が必要だ。感情や状況にまつわる現状を、説明という器に乗せて、差し出すために。 叱れ、という命令は、私が理性を取り戻すだけのパワーを持っている。 なぜかというと、これまでの連作に登場したどの歌にもタイトルにもなかった、「命令」が初めて登場するからだ。 ささやかな願望・曖昧な提案・誰に対しても伝えたい感想と感嘆・シチュエーションに対する忠実な状況説明。 上記の4つがこれまでの歌やタイトルの8割を占めている構成要素だった(残りの2割が何なのか、それを説明するほど愚かなことはない)。 ところが、「叱れ」という命令は、誰の誰に対するどのような命令であれ、この歌集の中で異質さを放っている。 その理由は、作者も読者も知りようがないが、個人的に推測するに、それは、この連作が何かに対峙している唯一の連作であり(何かに投影・何かから投影している連作はあるが、もちろん対峙するのとはわけが違う)、そして、この連作の最初の1首目に、中里さんが登場するからである。 中里さんとは誰か。 それを探るためには、残念ながら何かを連れて来なくてはならない。ただ、直接連れて来るのはよそう。 覚えている人は、「世話する光」を思い出してほしい。 私は、この歌集は、ビーカーに水を注ぎながら、ひたすら目盛りを数える歌集だと思っているが、このビーカーに水を注いでいる人こそ、まさしく中里さんなのである。 ビーカーに水を注ぐ速さを調整できるのは、中里さんしかいない。 中里さんの設定した、アパートの耐用年数は百年だ。今まで私はこのアパートに十六年住んでいたが、この築二十五年のアパートは、今度は百年しか持たないだろう。夕暮れをこんなに身近に感じることは、これまでなかった。あったとしても、それは時間の経過を感じるだけのことで、日が暮れるという感傷に浸っているに過ぎなかった。 誰がアパートを塗り替えてくれと頼んだのか。依頼主は誰か。 「そういうのを感傷と呼ぶんだよ」
この話のつづきは箱の中で(いま、開けたばかりできれいなので)
スイスにようこそ! 客車から降り、石炭の匂いを感じながら、私は停車場の短い階段から野草の生い茂る草はらへと下った。駅舎までは多少、距離があった。改札で銀色の箱に切符を落とし、石畳のロータリーに出たところで、その男は大声でそう言ったのだ。 「スイスにようこそ!」 けたたましい警笛と、シリンジやポンプの作動音、蒸気の噴出される細長い音の後、機関車は走り出した。その男は、もう一度、「スイスにようこそ!」と叫んだ。 その男は、ホテルから私を迎えに来ていた。 その男は、ボタン穴の部分に白い花が刺繍された、キルト地の赤いチョッキを着ていた。民族衣装なのだろう。滑稽に見えた。 「スイスにようこそ!」 私が声を発さないせいか、その男はいつまでも叫び続けていた。
思いましょう 世界は果てが滝なのに減らないくらい海に降る雨
わずかな言い換えが、同一性をより担保してくれる。違いではなく、同じであるということに価値があり、光の当たり方が違うという指摘をすることに、この世界の意味があるのだ。 何も変えてはいけないし、そもそも何も変わっていない。 だから、ため息のような破調をため息だと断定するような、理性に支配された言葉や深読みの数々に、どうか、果てしない嫌悪を。
歩いてもどこにも出ない道を来たぼくと握手をしてくれるかい
空き地の真ん中にあるブランコを漕いでいる人はいなかった。しかし、そのブランコはもう2時間以上、揺れ続けていた。風が吹いたり、地震が起こったりしたのだろうか。犯人は誰だろう? ぼくはそんなことを考えながら、空き地から出て行った。夕映えでまぶしい道にも、もちろん誰もいない。
眉を順路のようにならべて三分間写真のように生まれ変わるよ
さっきまでスパゲッティが乗っていた皿だろうか。陶器が割れる音がした。いつ聞いても嫌な気持ちがする。盛り付けにどれだけ時間をかけたか知っているのだろうか。拳大の麺を掴んだトングを円の中心に垂直に下ろし、3°ずつ反時計回りで円を広げていく。麺が尽きたら、今度は尽きた箇所からもっとも近い皿の縁から、時計回りに同じことを繰り返す。規定量の麺がなくなるまで、それを反復し、最後に外・内の間隙に向かってミートソースをかけていくと、もっとも美しい、写真映えするミートソーススパゲッティのできあがり。 それを奴は台無しにしたのだ。 客に謝る声がした。愛想がなく、声が大きいのにこもって聞き取りにくい。 やがて奴が戻ってきた。こんな奴しかバイトに来ない。 怒りがこみ上げてきた。
鰐というリングネームの女から真っ赤な屋根裏を貢がれる
忘れもしない10月15日、三銃士マドモアゼル・リンダとの決戦。 私は地面へと頭から叩き落とされた。筋骨隆々の大女リンダは、背負い投げの途中で掴んでいた両手を離し、私は右側頭部にゴギュという音を聞き、次の瞬間には病院のベッドに横たわっていた。4日間、眠っていたらしい。脳だ。硬膜に、血が溜まってしまった。もう復帰できないだろう。リンダとの再戦では、今度こそ殺されるに違いない。 退院してからも、私の脳裏からゴギュという音は消えなかった。
バス停を並ぶものだと気づくのはいずれ人ばかりではあるまい
カラスの襲撃がはじまった。 毎朝、5時35分発のバスに乗るための列がある。そこで餡パンを食べる男子高校生が、その襲撃がはじまる原因だった。 その列には、イヤホンのつながったMDプレーヤーを持つ会社員らしき男、バスに乗ってからすればいいのになぜか待ち時間でチークを塗るOL、文庫本を読む一見して職業のわからないラフな出で立ちの中年男性が並んでいることが多かった。曜日によって数人増減する日もあった。 カラスは滑空した勢いで餡パンを盗ることもあれば、バス停の近くまでひょこひょこ歩いてきて、飛び上がる弾みに文庫本を掠めとることもあった。日によって、何を盗るのかまちまちで、規則性はなかった。 しだいに、そのバス停の5時35分発の利用者は減った。私の部屋はバス停の真裏の2階にあったが、観察するに、それまでの利用者は35分の前後のバスに変えたようだった。35分発の前は27分発で、後ろは少し間隔が空き、52分発だった。 カラスは35分発のバスに固執していたので、前後のバスの利用者を狙うことはなかった。 私はだんだん、そのバス停の35分発のバス列に並んでみたくなった。バスに乗らない生活が続いていたが、意を決して餡パンを食べながらそのバス列に並んだ。 並んだといっても、その日、私以外に並んでいる人はいなかった。 カラスが飛んできた。私の背後から近づいてきて、しばらくじっとしていたが、やがて朝焼けの空へと飛び去っていった。 私はバスに乗り、駅に向かった。駅に人はまばらで、なんだか楽しい気分になった。 どこに行こうかな。
拾った本雨で洗ってきた人と朝までつづく旅行計画
歩けば歩くほど、傘が遠のいていった。空き地の中央に突き刺さっている、一本の傘。半透明のビニール傘で、コンビニのテープが持ち手に付いたままだ。 誰もいないのに、傘がゆっくりと開いていった。時が止まる前の、緩慢な動き。 パラボラアンテナのように宇宙へと開いて、雨を受け止めている。 これから先、もうどこにも旅に行くことはできない。そう思うのに、時間は必要なかった。 朝は消滅した。
消えてった輪ゴムのあとを自転車で追うのだ君も女の子なら
自転車で行くには、あまりにも近過ぎた。ペダルを4回漕げば、そこに輪ゴムがある。わかっているのに、絶対に輪ゴムをひき殺してしまう。輪ゴムの断末魔が響きわたる。うんざりだ。
ブルーシートに「瀬戸内海」とペンで書け恋人よ 毛玉まみれの肩よ
瀬戸内海は本州と四国に挟まれ、九州と淡路島によって蓋をされている。こう定義したとき、瀬戸内海を狭いと感じるか、広いと感じるかは、人それぞれだろう。レトリックの差だ。 ただ、そもそもレトリックが生じるには、瀬戸内海に行ったことがあるか・ないか、が関わってくる。 私は瀬戸内海に行ったことがないから、レトリックが有効だ。 瀬戸内海=ブルーシートに座って、花見の場所取りをしていると、茂みからタヌキが顔を出した。私が瀬戸内海にいるので、タヌキが瀬戸内海に侵入することはなかった。 オオカミが来た時のことを考えて、もっと大きく書いておこう。 「おーい。オオカミが来たぞう」
牛乳を誰かが飲んだあとに来る ���草をきみはねだる目をする
「おーい。牛乳が来たぞう」 「煙草、吸うかい?」 「これで無事に牛になれます」 「あいつは有名な牛なんだよ」 「知らなかったな」
月光はわたしたちにとどく頃にはすりきれて泥棒になってる
TEL「お電話ありがとうございます。ピザッチです」 わたしたち「注文お願いします」 TEL「承ります」 わたしたち「ピザッチの熟成ベーコン ダブルチーズスペシャルで」 TEL「レコードですね」 わたしたち「はい?」 TEL「月光ですね。お届け先を伺ってもよろしいでしょうか」
忘れてた米屋がレンズの片隅でつぶれてるのを見たという旅
夢なのか、旅なのか、映画なのか。 確かなのは、私が1眼レフを構えて、海辺のトタン屋根の小屋にレンズを向けていることだけだ。窓ガラスは割れ、部屋の中には砂が溜まっていた。防風林の木々の間から、風が流れ込んでくる。夢なのか。気がつくと、私は望遠鏡を覗き、宇宙の小さな米を見ている。星の中の、家の中の、米櫃の中の、一粒の米。われわれには、今目に見えているものが、米なのか、星なのか、区別することができない。
顔のなかに三叉路のある絵を描いた凧が墜ちても届けにいくわ
しかし、雲が突然、光を発した。本来見えていたはずの太陽をかすめている、飛行機の排気ガスの軌跡を柄のようにぶらさげた白いかたまりは、ゆっくりとひしゃげた。 私の頭の中と、想像の君の頭の中と、想像の中里さんの頭の中は、どれも凧が真っ青な空の中を落下する映像だけで占められていて、落下地点のことを決して想像することはなかった。つまり、野原で寝転んでいる中里さんの顔に向かって凧が落ちていき、中里さんの顔を凧の布が覆い尽くしたとは、誰も知らなかったのだ。 三者三様に、拾いに行く途中で迷子になり、誰も帰って来なかった。
マサチューセッツ工科大学卒業後 ほんとうの自由にたどり着けるだろう
何も考えたくないという時の「何も」こそが「自由」であり、何もかも達成したという時の「何も」が「ほんとうの」だ。バカ田大学は実在しない大学で、マサチューセッツ工科大学は「ほんとうの」大学だ。
五時がこんなに明るいのならもう勇気は失くしたままでいいんじゃないか
卒業おめでとう。五次会へようこそ。
東京タワーを映す鏡にあらわれて口紅を引きなおすくちびる
自分がどこにいるのか思い出せない、いや、自分がどこにいるのかわからない。東京タワーが映っているということは東京都内のはずだが、もしかするとテレビの中の東京タワーを映した鏡かもしれず、その証拠に東京タワーはゆらゆらしているが、しかしそれはタバコの煙のせいかもしれないし、もしかするとスモッグか黄砂か霧かもしれないし、くちびるは口紅を加えてはっきりするということは、つまり鏡の中の口は自分の口で、くちびるは自分の口のくちびるで、ようするに自分が鏡の目の前にいるということ以外に確かなことはないと思ったが、塗っている自分の指と指は本当に自分の指なのか、「指?」、指ではないだろう、ここはトイレだからテレビはないはずだ、東京タワーは小さいし、自分は口紅を塗っている自分だ。
その森がすべてうれしくなるまでにわたしたちは二匹に減っておく
わたしと、マイケル・ジャクソン。この森はすべてうれしい。
こどもたちは窓のかたちを浴びていて質問してくるようすがない
遠い空を凧が浮かんでいたので、空について詳しくないぼくらには、それがいかに巨大か、近づいてくるまで分からなかった。 凧は風にあおられぐらつき、山の峰に触れた時、周囲の木々と凧の大きさの違いに、ぼくらは驚いた。 もっと遠くに浮かんでいると思っていた。 いや、あれは飛んでいたんだ。 あれは大人かな。 子供じゃないかな。子供が五人、凧の対角線に沿って張り付いている。 貼り付いている、の間違いじゃないかな。彼らは死んでいるよ。 五角形のそれが草原へと着陸した。ずどん、と。 ぼくらはそれに向かって駆け出した。
こうもりはいつでも影でぼくたちは悩みがないかわりに早く死ぬ
もぐらとこうもりは、ぼくたちにとって黒いかたまりだった。猫がもぐらを咥えて夕方の軒下にやってくると聞いたことがあったけど、中里さんはそれをぼくたちに見せてはくれなかった。 ただ、一度、ぼくはその死体を見たことがある。中里さんがどこかに埋めたもぐらを掘り起こしてきたのだ。でも、それは真っ黒に塗りたくられていて、まるで影が空中に浮かんでいるみたいだった。ぼくはそれを手に取った。これがもぐらだとは思えなかった。いや、思おうとする前にもぐらは、ぼくの手からその黒いかたまりをかすめ取り、夕闇の暗がりへと消えていったのだった。 ぼくが幼少期に死について考えたのはそのたった一回だったが、長い時間が経ってから思い出すと、ぼくはつねに死について考えていて、それはぼくたちにとっての共通のテーマだったが、今、捏造した記憶かもしれない。こうもりが、車庫の屋根裏から羽ばたき、ぼくの顔を覆った。苦しくなることが、ぼくはいま溺れているのか、どこで。
けむりにも目鼻がある春の或る日のくだものかごに混ぜた地球儀
バナナと梨とリンゴと葡萄がかごに混ざっていて、実はどれかが地球儀でーす、というクイズ。 正解は、バナナ。よく見てごらん。ほら、剥いてみて。
電球を抜く手つきしてシャツの中おめでとうってどこか思った
エルヴィス・プレスリーは振動を発明し、マイケル・ジャクソンは手つきを発明した。 アンチ・グラヴィティは、特許によって成立しており、靴と床の構造によって無重力を再現していた。なぜ、バスター・キートンやチャップリンとは「違う」のか。 「おめでとう」と言えるのは、マイケルだけだから?
その鍵は今から四つかぞえたら夢からさめた私が開ける
なぜ、五や三とは違うのか。 「おめでとう」と言えるのは、四だけだから?
全世界 というとき世界が見おろせる星にかかっている羊雲
トートロジーに照らして考えたとき、全世界とは三角形であり、同時に正四面体でもある。つまり、三角形は四個あり、同時に十六個あるとも言える。 私は羊雲すら把握することができている。
部屋に見えるほど寒々と白旗をひろげなさいって誰に言われた?
凧は裏側の三角形に墜落した。ぼくらはそれを見ることができなかった。羊雲が青空に広がっていた。
犬がそれを尊ぶ「セックスアピールって要するにおっぱいだろ?」という目で
マイケルのそっくりさん「おめでとう」
たくさんになって心は鳥たちの動いたあとの光が照らす
「いらっしゃい」
新聞が花をつつんで置いてある よみがえるなんて久しぶり
長年考えていたのだが、と話をはじめることができれば、この話に説得力や教訓、哲学的な示唆があるのではないか、と耳を傾けてくれる人々が増えるのだとは思うのだが、実際はほんのついさっき考え出したことについて話をしたいと思う。しかし、これからずっと考えつづけていくに違いない事柄についてだ。 いや、私は長年、ずっと考えつづけていたのかもしれない。それを、ついさっき考えはじめた、と韜晦混じりに話している可能性もある。と、話を続けることしかできない。つまり、私には、いつ考えはじめたのか、全く分からないのだ。 いったい、新聞と何の関係があるのかと思うだろう。だが、話には順序がある。 まず、私が話したいのは、まさしく、わたしが陥ったある狂気についてである。 おそらく、世界中どんな場所にも、狂人と呼ばれる人間が必ず1人はいるはずだ。どういった人間かというと、たとえば、あからさまに口調がおかしかったり、あるいは身振りが不審な人間が狂人と呼ばれるのではなく、常識という土台はあるにも拘らず、その常識が生み出すはずの思考が常識とはかけ離れてしまう・少しずれてしまう人間のことだろう。 だが、何が狂人たらしめるのかというと、実際は時代時代の常識から見た「狂気」であり、大部分は、その人間が置かれた状況や環境に対する理解の欠如や、差別意識によるものなのではないか、とも思うが、しかし、土台の上の常識がずれるということについては、多くの人間は狂気と人間(狂人)を峻別し、その上で狂気に見舞われた人間を「狂人」と見做しているのではないだろうか。 ケースバイケースだ。こんなところで結論がでるような話ではなく、そもそも「土台」という考え方が、非常に差別的にちがいない。ただ、私が何を言いたいのかというと、この「土台の上」ではなく、まさに「土台」の部分で、私は狂気に飲み込まれてしまったということだ。 話を始めよう。 私はかつて、池袋で新聞少年だったことがある。しかし、それはほんの2週間でおわってしまった。当時の家庭環境からすれば、私は働きつづけなければならなかったのだが、体力はもちろん、幼稚さゆえの逃避癖から、楽で薄暗い方へと身を沈めてしまった。逃げたのだ。打ちっぱなしの床に、やけに赤いヒーターしかない作業所が苦痛だった。2階から聞こえる怒声が、ただ耳の内側に響き、昼の数時間の睡眠や不規則な生活が、だらだらと続くのに絶望した。 それはともかく、私は2週間の短い経験だったが、新聞、と呼ばれると、広告チラシと新聞を一括りで連想するようになってしまった。私にとって、新聞とは新聞紙のことではなく、チラシがハンバーガーのように挟まっていてこその、「新聞」だ、と言えば少しは分かりやすいだろうか。 そして十六年後、私はあるアパートに住んでいた。チラシを捨てることができず、十六年分のチラシが部屋にはあり、話とは関係ないが、毎日、ダブルチーズバーガーを食べていた。 私が陥った狂気について語ろうと思うが、前置きに比べてずいぶん短くなると思う。なぜかといえば、これは私が現在直面している狂気であり、私は正常と異常、時間の長短の区別がもはや付かなくなっているからだ。ようするに、私は説明することができないに違いない。 話とはこうだ。私はある日、部屋の壁中にチラシを貼る男を夢想した。それは私だったのかもしれないし、今、私がチラシを壁に貼っているのかもしれない。 「新聞が花をつつんで置いてある」 私は「新聞」に包まれている。 私は置かれている。 私は自分が花だとは言わない。しかし、「よみがえるなんて久しぶり」とは。 私が、自分が狂気に陥ったと考える理由は下句にある。 私は甦っただろうか。「久しぶり」には、世界に対する癒しが含まれている。 癒しは、包まれているのか。包まれていないのか。 文字が塗りたくられた円錐は、床に転がっている。 円錐の先に窓がある。 窓から、光が射し込んだ。窓にもチラシを貼っていたが、紙が薄かったので、窓は光っていた。 「よお」
*
引用はすべて、我妻俊樹「窓を叱れ」(『足の踏み場、象の墓場』、短歌同人誌『率』10号 誌上歌集、2016年)より。
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cofgsonic · 7 years
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17.01.06 優しい人にはくちづけを
1.
 聞いてくれ、ソニック。オレ、お前のことずっと……。  ああ、待て。ありきたりすぎる。それに「聞いてくれ」なんて切り出し方、自分自身にプレッシャーかけちまうよ。でもこう言っちゃえば後戻りできない。  いやいやもう少し考えよう。今日はいい天気だなソニック。ほら見ろ、空が青くて、みんなが笑って生きてる。こんな最高の日にお前と二人きりなんていいのかな、オレ、こんな幸せで。何、不思議そうな顔してるんだよ、本当のことさ。そう見つめるなって。……ソニック。  ああっ!? 恥ずかしいもん考えやがって、オレは! これ告白したあとの話だろ! ていうか、オレじゃなくてむしろソニック側のやり口かもな、シャレててムカつく。いやそうじゃない、落ち着け、オレ。  フラれたって構わないんだ。言いたいんだ。言いたくて仕方ないんだよ、お前が好きだって。ソーリー、友達でいようぜ、で笑って終わりでいいから。でも、もし、付き合おうってなったら? 付き合うって何するんだろう。さっきみたいに日常生活のふとした瞬間に見つめ合ったりするのか? 心臓持つのかよ、それ。そんで、見つめ合ったあとは……?  だめだだめだ。不埒な妄想は、おしまい!
 非常に残念である。シルバーが束の間夢見たロマンスは訪れなかった。そしてもっと運が悪いことに、フラれたあとは笑って済まされなかった。  冬の雨上がりの夜道の体温を、シルバーは懸命に思い出そうとしたけれど、固まった記憶はなかなか意固地だった。夜道を流れていた空気なんて、その中を歩いていなければ感じることができない。たとえばピリつくほど寒いのか、寒くはないがやけに指先を刺してくる冷たさがまとわりつくのか、空気が冴えすぎていて声を奪われそうになるのか、きっとどれかだったと思うのだがシルバーはどれも呼び起こせなかった。  ただ、カラカラに渇いた口内に吹き込まれた甘い風と、「友達のキスで勘弁してくれ」などと返事した低い声と、いななくクラクションと、視界をまるごと食い破った光が、病室の天井を睨みつけるシルバーの脳裏を巡るのであった。ソニックの風よりも速いスピードで。
「最近の病院食はちょっとマシになったんだな」隣のベッドで彼は、吊るされた右足に一瞥も寄越さない。右足は包帯で何重にも固定されている。シルバーはギブスの嵌められた右腕をさすりながら「知らねえよ」と吐き捨てた。 「ご機嫌ナナメのところ水を差して悪かったな、シルバー? で、反抗期かい?」  陽気な嫌味だ。 「何であんたと隣のベッドなんだ。一人にしてほしかった」 「病院側の都合だからしょうがない」  消灯した。枕代わりに後ろで手を組むソニックの横顔も黒いシルエットに切り替わる。途端にブラックアウトした天井の微かな青白さが、不気味だった。同じ病室には数名の患者が寝ていて、ソニックは小声で話を続けた。「傷心ならオレが傍にいてやるぜ」 「フっておいて優しくすんな。わけわかんねえ」 「わかってくれよ。お前は可愛いと思うし、キスだってしてやりたかった。でも、そういう関係にはなれない」  このソニックという男はシルバーの想像以上に扱いにくいのだと知ってしまった。特に、恋愛に関しては。もし今後、あんな、眩暈を起こすくらい熱烈なキスをされるたびに「オレたちは友達だからな」と言い聞かされてしまうとしたら、いつか気が狂うだろう。間違いなく。  今、巷では、セックスフレンドのみならずキスフレ、一緒に添い寝をするソフレ、挙句には恋人のふりをするカモフレ――カモフラージュフレンドの略らしい――などなど、何だか曖昧な男女関係が若い人間たちの間で流行っていると聞く。いや流行っていると言うと聞こえは悪いが、とにかく、最近の若い人たちは恋人がいなくても「恋人っぽく振舞ってくれる友達」がいれば満足らしい。だが、シルバー自身はそういった相手を作ろうと考えたことがなく、もちろんソニックとの今後の関係は「れっきとした恋人」か「ただの友達」の二択しか可能性がないと思っていた。  ��して眠れなかった。鳥の鳴き声が朝を告げる。  やたら薄味の朝食を食べたあと、ふと辺りを見回すと病室には自分たちだけだった。他の患者は検査や、自宅での宿泊が許されたり、トイレに行ったりして、たまたまどのベッドももぬけの殻になっていた。松葉杖を持ってソニックも病室を出ていこうとした。 「シルバー」 「おう」 「自販機行くけど、なんか買ってこようか?」 「うーん」考えるふりをして、逸らした。「いらない。あんたどうせ、しばらく戻ってこないだろ」 「あー……」  よっこらせ、とソニックは腰を屈めた。じいさんみたい。病院の空気に感化されたか。 「OK. じゃあ違うものを置いていく」  黄色い粒子をふんだんに含んだ冬の光線が、ソニックの瞳に反射していた。シルバーより背を低くした瞬間に、彼が両眼に嵌める生きたレンズは、シルバーの身体の一部を移し、一層嬉しそうに細くなる。僅かに吸い込まれそうに深い青の、ふたつの��が、また迫ってくる。目を疑った。  でも拒否なんてできなかった。シルバーのギブスにソニックの口がくっついた。すぐに離れてゆく。松葉杖がぷるぷるしていたのを笑う余裕も与えられない。 「嬉しくなかったかい?」 「なあソニック、付き合ってくれよ」絞り出した。吐瀉物を出したあとのように喉の奥が引き攣っていた。「だめなのかよ。オレが本来生きる場所が、未来だから」 「付き合わなくたっていいだろ?」  お前はオレの恋人にはならない。お前はシルバーのままでいい。そしていつでもオレのもとから逃げてくれて構わない。オレも、そうする。  そう言ってギブスを撫でてくれる。ソニックの横顔は陽だまりを注がれて、いつもより優しい印象に見える。できすぎた演出だ。 「それより悪かったな。『オレのせいで』」  でも知っている。こいつは自分自身を、フェイクにしない。  世界のソニックが、リズムよく左右に傾きながら去っていった。口付けされた分厚いギブスに何も感じない。ただ、体内に嵐が起きていたのは言うまでもない。  付き合えませんとフラれ、侘びのようにキスをされて、いや今のは何だおかしいだろとソニックに食ってかかったら、二人して道路に飛び出してしまい、二人してぶつかり、119番。間抜けなのは重々承知である。骨折には至らなかったものの、右腕はすぐに良くなる程度の打撲では済まなかった。ソニックも少しの間は走るなと医者に強く止められた。退院は三日後。  ソニックは足を引きずってでも病院内を歩き回らないと落ち着かないだろう。自分もどこかで静かに座っていようと決めた。  オレたちはキスフレとかそういうのになっちゃうんだろうか。それとも。 「……残酷なこと平気で言いやがってさあ、あいつは」  ソニックにも自分を愛でたい気持ちが確かにあるみたいだ。それだけで幸せなことなんだ、恋人になれなくても。 「そうさ、恋人じゃなくたって」  しかし怖くもある。このままソニックについていったら、自分の中から優しい感情は廃れていく気がする。諦め切れない己の心を、敵に回すか、味方につけるかで、この恋の行方はいくらでも紆余曲折の運命を辿るだろう。でもいくら心と相談しても、今は、何も越えられない気がする。 2.
「しばらくスローな景色の中で生活するなんて、うんざりするぜ……。写真の中に飛び込んだみたいだ」  誘いは突然だった。 「なあお前、オレん家に来いよ」
 先生から今の状態を尋ねられ、看護師にギブスを取られ、包帯を巻き直してもらうだけで定期健診は終わった。ひとまずギブスが必要なくなっただけで回復へ大きく前進だ。  向かい風の強い日だった。シルバーは背中を押されるようにソニックの自宅へ入った。暖房の効いた部屋は、足先まで冷え切った身体を芯から温めた。朝食に使った食器がシンクの横の水きり網に乱雑に並んでいて、まだ濡れている。  借りた黒いマフラーを外しながら寝室を覗く。「サンドイッチ買ってきた」  Thanks. と横たわったままのソニックは視線を上げ、肘を上げた。テイルスからもらったという数字ドリルを鉛筆でぽりぽり解いていたらしい。シルバーは無事な左腕を差し出し、彼が立ち上がる支えになる。 「足の検査、今度いつだ?」 「来週の火曜」 「しつこいようだが、それまで安静にしてろよ。絶対、走りにいったらだめだからな」  ソニックは「助けてくれよ」と肩をがっくり落とした。絶大なストレスなのが窺がえる。 「とりあえず何か食べて、元気出せってー」  チリドッグはソニックひとり、でもサンドイッチは二人でひとつだ。ソニックはシルバーの腕が完治するまでここに泊まるよう言い、上着やマフラーなどの私物も貸し出してくれた。その代わり家事は手伝えと。ソニックは右足を引きずれば松葉杖なしでも何とか動けるようになっていたから、簡単な料理や掃除などの立ち仕事をした。ただ膝を曲げるのが困難だから、トイレの便器や風呂場はシルバーの担当になった。怪我をしたとき以外自宅に戻らないソニックは、家にいる間だけはと家のことはきちんとするらしい。「第一それだけでもやってないとキツいな」 「あんたが動けないなんて滅多にないもんな。走れない気分ってどうなんだ」 「最悪中の最悪」 「ふうん。それ、オレが一緒にいても?」 「何だよ、拗ねるなよ。Smile.」いやらしい流し目を睨んで跳ね返した。「ちょいと語弊があったようだが、一人だったら確かに最悪だ。でもお前のおかげで、最悪中の最悪だったのが、ちょっと楽しい、に変わった。雲泥の差だ」水風船で遊ぶような手つきをした。こちらを気遣うような嘘の笑い方ではなかった。 「ご要望があれば昼間からイイコトしたって構わないぜ、オレは」  シルバーはバンズを口に押し込み、コーラで喉に流した。ごくっ、と喉を鳴らしたあと、「昼寝したい」と冷たく返した。つれないね、と瑞々しいレタスを噛み千切るソニックの隣で、シルバーの歯にはレタスが挟まってなかなか取れなかった。  ソニックとのどこか平和ボケした同居において、互いに無理やりな干渉をし合うことはなかった。が、揉め事がないわけでもない。 「シルバー、ゴミ捨て頼むぞ」 「勘弁してくれよ、このあいだの燃えるゴミもオレが行っただろ」 「お得意の超能力でちょちょいのちょい、じゃん」 「片腕の影響で超能力もコントロールしづらいんだ。……あのな、オレの言いたいことわかるだろ? 今日、あんた、何もしてないじゃないか! 皿洗いだってあんたがぐーぐー寝てるから、オレが左腕と超能力を駆使して何とかやったんだぞ」 「そーだっけ? でもハンバーグはオレが解凍した」 「解凍しただけだろうが!」 「掃除機かけるのと窓拭きもオレ」 「昨日の話だろ、それ! しかも昨日はそれ以外オレがやった!」 「フン、さっきから偉そーだな。ここの家主はオレだぜ!」  はっと口を噤んだ。偉そうでうるさいガールフレンドみたいになっていた自分を恥じ入った。  確かに、彼以上に家事に勤しんでいた自覚はある。何でと聞かれたらこう答えるしかない、ソニックに「ここにいろ」と言われたから。言われていなければとっくに未来世界へ帰り、モ●ハ���のように炎の怪物たちの狩りをし、今頃ダンジョ●飯ならぬ未来飯を、親を失った子供たちに振舞ってやる時間だ。 「ていうか、料理ならオレの方が上手いんだからな」  タマネギ臭いまな板に溜息を落とす。タマネギで染みる涙とこの溜息をカレーに混ぜて、あいつに食わせてやりたい。夕方になって作り始めたミルク入りクリームカレーの鍋はもう煮立っていた。元気な左腕と超能力を駆使して何とか作ったのだ、二人分!  火を止めてゴミ袋をまとめる。ソニックはまだ昼寝している。  飯を振舞うのは未来世界における少年たちや大人たちの仕事だった。そして、作り方を子供たちに教えることも。自分がいなくても未来世界にはそれをやってくれる大人がたくさんいるからまだいい。が、常に命の危険と隣り合わせな時代に生まれ育ったせいか、シルバーもまた、じっとしていることに耐えられない気質であることは否めない。  ……だからできることはやってあげたい。多少コキ使われようと。  ゴミ捨てにほんの5分外出しただけなのに鼻水が流れた。玄関を開けるとやっぱり暖かい。  ほっとする。家があるというのは。  廊下の先で人影が動く。まるでほっとしていたのがバレたかと思って、耳がびくっと上がった。身構えているとソニックがにやにやと歩いてきた。 「怒って出ていっちまったかと思った」  シルバーの脳裏をあの言葉が走る。『いつでもオレのもとから逃げて構わない』。 「出ていった方がよかったか。どうせ探してくれないんだろ」 「機嫌直せよ。カレー、楽しみにしてんだぜ。いいにおいがして目が覚めちまった」  素直にも、心臓はかろやかに跳ねるのだ。ただそれだけの言葉に。仕方ない、惚れてんだから。ソニックは手にしていたスプーンで台所を差した。 「でも換気扇つけっぱなし」 「あんた意外と、細かいところうるさいな」 3.
 何故そんな流れになったのかわからぬが、二人でシャワールームに入っていた。一人用のシャワールームで二人のハリネズミを押し込めばそれはまあ窮屈で、ソニックは半ば挙動不審にきょろきょろと辺りを見回していたが(壁が迫ってくるような感じがすると本人は供述する。我慢しているみたいだがなかなか手強い閉所恐怖症のようだ)、「目ぇ瞑ってろ」とシルバーはひたすら彼の背中をスポンジでごしごしこすった。ちょこんと椅子に座るソニックは大人しい。 「痛いか?」 「いや……気持ちいい」心なしかハリがくったりしている。曇った鏡越しでは顔は見えないけれど、ソニックは足を組んで、リラックスモードになったようだ。シルバーも気をよくして気合を入れる。 「あとでオレの背中も洗ってくれよ。そうだ、昼間話してくれた、ダークガイアって奴を倒したときの話の続き、聞きたいぜ」  今日はテレビをたくさん見たけれど、それよりシルバーは、ソニックの話ばかりを聞きたがった。首筋まで泡だらけになりながらソニックは色んなことを答えてくれた。ナックルズがエッグマンに騙されたときの話、シャドウと出会ったときの思い出、ブレイズの印象、メタルソニックとの戦い……。  気づいてしまった。ソニックは、こちらが質問しない限り自分の話をほとんどしなかったと。話し始めれば乗ってくるし、喋るのも上手だと思う。シルバーの意見も聞いてくる。シルバーは気ままに、時には一生懸命答える。ソニックは笑う。シャワールームに声を木霊させて。彼の笑顔を見ていると、胸の裏側がくすぐったくなる。こちらもよく笑う魔法をかけられている。  添い寝にも慣れた。風と一体化するソニックの周りはいつも涼しいような気がしていたが、寝ていれば彼も体温を温存するひとりの生き物でしかなくなるのだと、このあいだ一緒に昼寝をしたときに感じた。陽が傾き、影が濃く深くなっていく寝室で、背中に感じるソニックの呼吸は驚くほど規則正しくて安心した。できれば、抱き合ってしまいたいくらいだった。あんなに近かったのに、息がかかるほど傍にいるのに、ソニックの青が、遠い景色のように見えていた。  でもひとつのベッドで密着なんてしようものなら危険だ。ソニックが買ってきたコンドームの箱はシルバーが握り潰して以来、結局開かずの箱としてベッド脇の小さなタンスの引き出しに残してある。中身は消費していない。もちろん生でヤってもいない。  夜、シャンプーのいいにおいを漂わせてソニックがブランケットを引っ張り上げたのを見ながら、シルバーはついに喉の最下層に押し込んでいた言葉を、かすかな息切れの後に吐き出した。 「大丈夫か、ソニック」  ソニックはフローリングライトを消し、ベッド脇のタンス上のスタンドランプをつけた。シルバーはソニックの身体の、どこも直視できない。 「What? 何がだい?」 「足」 「こっちの台詞だ。お前の自慢の超能力を半減させちまって」 「大したことないぜ。腕、結構上がるようになったし」少し上げてみせる。若干痛みは残っているし、数日前ゴミ捨ての件で彼に当たったばかりだけど。 「そうか。ま、オレだって大したことないさ」ソニックがこちらに向き直る。「どうせすぐに治るんだ。ただの打撲だぜ?」  下手に出すぎたら付け入られるだろうか。たとえば、ヤらせろ、とか。結局それ目的で自分を中途半端に口説き落とし、傍に留めようとしているのかと密かに疑ってはいる。でも、コンドームの箱を拒否して以来性行為をにおわせる言動を彼は見せない。その上、自由を制限されて本来なら苛立っていてもおかしくないのに、彼がシルバーに当たったことは一度もなかった。  ソニックにとって重要なのは足の怪我そのものではない。ドクターストップによって行動を制限されていることが負担なのだ。読書やゲームはどうせ飽きるからと、昼間ほとんど寝ている。足の使えるシルバーは散歩をしたりテレビを観て気を紛らわしているが、未来世界へ帰ろうとするとソニックが珍しく「療養中だろ」と引き止める。 「あんたはさ」 「ん」 「暇だろ、今」 「イエス。ベリーベリー暇。枯れそう」 「暇潰しにオレとソフレかキスフレになろうって魂胆なのか? あんたを好きな奴相手なら、都合はいいもんな」  スタンドランプの光がソニックの大きく見開いた片目を映す。「ソフレって何だ? 柔軟剤か何かか?」もう片方の表情は、闇の中だ。  自分の顔面も同じような演出になっているのだろうか。 「あー、いい。やっぱり聞かなかったことにしてくれ」  構わない。左右で違う顔色になってしまっているのがバレないから。 「ま、何となくわかるぜ。そうだなあ、確かに今のオレたちって何なんだろうな。フレンド、って名称がつく間柄ではあるんじゃないか。ガールフレンドもボーイフレンドも、つくけどな」 「確かに」苦笑した。しかし、口角はすぐに下がってしまう。「じゃあオレたちって何なんだろう」 「Hmm.... 何だろうな」 「何だろうなってお前なあ」 「名称なんてどうでもいいさ。お前がここに来てからキスもセックスもしていない。そもそもボーイフレンドじゃない。でも、お前はオレが好きだし、オレもお前が好きだ。それでいいんじゃないか?」 「……変わってるよな、あんた」 「お前も大概変わってると思うけどな」  シルバーはスタンドランプの明かりを消した。「じゃなきゃ、とっくに出てってるさ」良くなってきた右腕の筋が、ずきり、とした。  明かりを失った室内は宇宙よりも深い場所に感じられた。狭くて、月も星もない固いだけの天井が――炎の怪物と共に落っこちてきそうで。昔、下敷きになりかけて、見知らぬ老婆が助けてくれた。下敷きになったのは老婆だった。  今のソニックは全力で走れないし、シルバーも片腕をフルパワーで使えない。……ここは未来世界じゃないんだ、ちゃんとわかっているけれど、シャワールームよりよっぽど怖かった。隣のソニックが寝返りを打つ気配はない。  シルバーは目を閉じた。ソニック、と名を呼んだ。  どうした。  頼みがある。  オーケー。言ってみな。  また、オレの右腕をさすってくれないかな。病室でしてくれたみたいに。  キスはいいのかい?  ……さすってくれるだけで満足だ。  わかった。お安い御用さ。  ふれた。好きになってから初めて、彼の手の大きさが素敵だと思った。細くて握り潰せそうなシルバーの腕を、彼の手が包み込むようにして、上から、下に、ゆっくりと移動する。何度も。何度もそうしてくれた。安心する。痛みが和らいで、もはや腕の感覚すら薄れてきて、代わりに左胸の鼓動がドク、ドク、とシルバーの中を響き渡った。やがてシルバーは、ありがとう、と礼を告げた。  これ、お礼だ。  探りながら、包帯で締め付けられるソニックの右足に唇を当てた。瞬間、たまらなく胸を圧する想いが溢れ出し、息切れを起こしかけた。けれどソニックは誘惑してこなかったし、自分も結局仕掛けなかった。その晩はいつもより、ぐっすり眠れた。  朝方、ソニックに、こっそりキスをされたと気づいたとき以外は。まさか毎朝してた? 4.
 たすけてくれ。  どうしてあんたにはこう、縋ってしまうのかな。  ソニックがよたよたしながら、鼻と地面の間に血を引いて倒れているシルバーに歩み寄る。何度か揺さぶられ、名前も呼ばれたが、顔を上げたくなかった。包帯の取れかかっていた右腕が再び腫れ上がっているのに彼は気づいたはずだが、まず彼は「警察呼ぶか」と聞いた。シルバーがかぶりを振ると、腕を引かれ、彼の首周りに担がれた。「ったく、手のかかる年下だ!」 「……ごめん」 「今晩はオレがメシ当番だな。食欲はどうだい?」 「今日は、あんまり食べたくない」 「りょーかい、ブラザー」  入院中、自分の無力さを痛感させられた出来事があった。  患者の身内だろうか、廊下を走っていた小さな子供にぶつかったらしく、車椅子ごと転んでしまった爺さんを見つけた。起こしてあげようとしたが、これがまた頑固な爺さんで、人が手助けしようとすると意固地になって暴れるのだ。怪我をしたばかりで右腕どころか超能力の発動も不安定だったシルバーは、爺さんの頑なな拒否に悪戦苦闘し、挙句に「ロクに腕も動かせんくせに、却って邪魔だ! どっか行け!」と暴言を浴びせられた。抜け殻のようになって突っ立っていたシルバーの横を数名の看護師が駆け寄り、爺さんは彼女らにも遅いだの、最近の子供は、だの小言をぶつけて車椅子で去っていった。最近の子供に自分も含まれているかはわからなかった。  シルバーの胸の中は、砂のようにボロボロと崩れ落ちた。廃墟となって荒んだ心に激烈な炎が盛った。何だよあのじいさん! せっかく人が助けてやろうとしたのに、あそこまで言うことないだろ!  病室に戻ってソニックに鬱憤をぶつけると、彼はシルバーを宥めながらも、遠くを見つめながら唸った。 「よっぽど機嫌が悪かったのか、あるいは逆に庇われた可能性もあるぞ、お前」 「は?」 「お前のギブスを見て、無茶させて悪化したらって思ったのかもしれない。まあ本当のことはわからないけどな。でも案外年寄りの方が、若い奴に気を遣ってる感じがするよな、最近は」  ……カッとなっていた頭が急に温度を下げ、逆上せたみたいにクラクラした。あれ以来、廊下で爺さんに会うことはなかった。病気が進行して、遠くのフロアに病室を移されたと聞いた。  今思えば、あのとき何を言われようと、自分が無事に車椅子に戻してあげるのが一番よかったのだ。爺さんの怒号にうろたえなければ、超能力に集中してすんなりと事が終わったかもしれない。いざというときの弱腰ほど間抜けなものはない。あれからシルバーは自分の臆病な部分に敏感になった。  夕方、散歩をしていたら、狭い路地で女性が数人の男に絡まれているのを目撃した。  割って入り、今にも喧嘩が勃発しそうになったとき、にたにたといやらしく笑う男たちが立つ景色が、揺れた。地面とキスをしていた。ぐりぐりと踏みつけられ血混じりのディープキスまでさせられた。仕舞いに包帯まで足跡をつけられて……。歯が折れそうなほど食い縛って悲鳴を殺した。まさに超能力で全員ぶっ飛ばそうと構えた直前に、男たちの仲間が背後からシルバーを殴ったのだった。  勇敢ぶったハリネズミに人間たちはすぐ興味を失い、消えた。立ち上がる気力はなかった。  部屋に連れられると、珍しく寒かった。部屋の隅々まで鋭い糸が���り詰めているように、冷気が広がっていた。 「今日はオレも散歩してたんだ」ソニックは暖房のリモコンを操作する。ピッ。「ずっと走ってないと身体が鈍っちまうから」  ソファーに座ると、ティッシュを優しく鼻に当てられる。みるみるうちに柔らかなティッシュは赤く染まる。  まだ内蔵が興奮している。恐怖と痛みで凝り固まった皮膚の中で、落ち着きなく蠕動している。吐く心配はないと思う。でも慎重な動きで包帯を取り替えてくれるソニックの手つきが、シルバーの心をも、紐解いていく。 「サンドイッチ用のパンを買ってあったな。またサンドイッチでいいか? あとハムとキュウリと、卵も少しあったかな……。それと、こないだお前が作ってくれたクリームカレーの残りで、パーフェクトだ」  独り言なのか、話しかけているのか。赤黒く腫れた腕や、頬の痣を見られるのが悲しかった。ソニックは頬にも大きな絆創���を貼ってくれる。次々にシルバーの傷を隠す手伝いをする。 「腕が治ったらまたカレー作ってくれよ」  これ以上優しくされたら胸が爛れそうだ。 「くやしい」だからシルバーは咄嗟にせき止めた。 「ああ」 「こんなはずじゃ」 「うん」 「卑怯だ……」 「そうだな」  せき止めたはずなのに、水門が一気に開いたかのように感情が流れ込んでくる。 「けど、オレもばかだった」 「……そうかな」  せめぎ合う感情を片っ端から口に出す。指を差して物の名称を言ってみせる子供のように。  腕はやっぱり痛い。終わらないぞ、永遠に苦しめてやると信号を出されているかのように、嫌な熱が筋肉の裏側から骨の髄までを迸る。また通院かもしれない。情けない。嫌だ。ソニックはグラスに水を注いでくれ、ゆっくり飲め、と渡された。シルバーは言われたとおり時間をかけて飲み干した。かなり喉が渇いていたのだと知った。グラスをテーブルに置くと、座ったままソニックに抱きしめられた。促されたような気がした。でも、泣いてやらなかった。初めて体感するきもちだった。確かに強がりといえば強がりだ、けれどその心地よいぬくもりが、穏やかな声音が、オレの全部を守ってくれて、そしてオレの曝け出してしまった嫌いなところを隠そうとしてくれている気がしたから、それだけで充分に幸せだった。  甘えすぎたら戻れなくなる。オレたちは恋人じゃない。  でもお前の体温はオレに息を吹きこむ。 「シルバーはラッキーボーイだ」  至近距離でソニックはウィンクした。「人のせいにするばっかりじゃない考え方を、周りの大人から教わったんだな。優しい奴め」 「教わったわけじゃないさ。ただ、正義と悪に100%は存在しないって、思ってるだけで」 「Foo! クールだね。でも大事な局面での決断力は備えておけよ。優柔不断なヒーローは嫌われるからな」  ソニックのような人と、人生を共にしたかった。 「シルバーは優しい奴だ。だから」  友達としてもっと一緒に冒険したい。彼の強さに追いつきたい。 「幸せになれ」  一緒に色んな景色を見て、感動を共有したい。 「必ずお前を幸せにしてくれる奴が現れる」  そして愛がほしい。包み込まれたい。たまにでいい、抱きしめてほしい。 「でもその役はオレじゃない」  お前の風にじゃない、お前に抱いてほしいんだ。これからもずっと。何がいけないんだ? オレが未来世界の住人だから? オレじゃ頼りないから? オレが年下だから? 足が遅いから? ……いや、本当は知っている。オレ自身に悪いところはいっこもないってこと。それって一番、どうしようもないじゃないか。 「ひどい奴だ、あんたって人は」  しかし自分は、彼の生き甲斐を奪ってしまった。ほんの一瞬でも彼をここに留めた。だからワガママなんて言えない。……でも、どこかでそれを、ラッキーと思っていた事実も否めない。  未使用のコンドームがたくさん余っているのを思い出した。あれを捨てたって後悔はないだろう。彼が寝ている間に、一緒にゴミに出してしまったっていいとシルバーは思っていた。霞んだ朝焼けの下、コンドームの入ったゴミ袋を抱える、片腕を怪我したハリネズミ……爽やかではない光景だ。  でも自分たちにはまだ必要ない。その前に今のオレたちを、飛び越えなければいけない。  後悔するなよ。あんたが口説いたせいで。  しばらく、隣から離れられそうにないんだから。 「そんなにオレを評価してくれるなら、ソニックももっと優しいところ見せろよな。年上らしく」  嘘をついた。この男はもう充分すぎるほど優しい。濡れた金目と煌く翠目が絡み合う。万華鏡のように一つになりたい。 「優しく、ねえ。たとえば?」 「オレの願い、もう一つ聞いてくれないか」 「Of course. 喜んで。今度は腕じゃなくて背中をさすればいいのか?」 「年下扱いすんな! んな簡単に泣かないからな!」  両手を挙げて降参のポーズ。「はいはい、で、お願いって?」
 今日全部じゃなくていい。あと100回キスしてほしい。
 きょとんとするソニックは、次の瞬間、左右に挙げていた手を大きく叩いて、笑った。 「そりゃ一つのお願いじゃなくて、100個だ! 面白いぜ、その挑戦! 毎日たっぷり可愛がってやるよ」 「こ、後悔すんなよ。オレとあんたの耐久戦だ」 「緊張すんなって」  ああまた、この真青の瞼だ。オレの目の前がブルーになる。  すべて、友達のキスかもしれない。  それでも構わない。100回目のキスが終わったら……もう一度言うよ。ボーイフレンドになろうって。きっとオレが数えていないとあんたはすぐとぼけるんだろうな。「何回したか忘れちまった」なんて。  そうやって先延ばしにしようとしたってな、いつか必ず捕まえてやる。オレとあんたはまだ終わらないんだ。
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tomtanka · 4 years
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『足の踏み場、象の墓場』全首評③(縦書き引用ver.)
我妻俊樹「窓を叱れ」『足の踏み場、象の墓場』の全首評
中里さんの塗り替えてくれたアパートに百年住むこの夕暮れから
叱れと言われたら、これはもう、一時的にわずかな理性を取り戻してでも、説明せざるを得ない。 叱るのと怒鳴るのは、全然違う。声を張りあげて自分の感情をぶつけるのが怒鳴るだとしたら、叱るのには、もっと理路整然とした秩序が必要になる。叱ることによって、これまでの状況が変化することが求められるからだ。だから、叱る者には、全てを把握するための客観的な視点が必要だ。感情や状況にまつわる現状を、説明という器に乗せて、差し出すために。 叱れ、という命令は、私が理性を取り戻すだけのパワーを持っている。 なぜかというと、これまでの連作に登場したどの歌にもタイトルにもなかった、「命令」が初めて登場するからだ。 ささやかな願望・曖昧な提案・誰に対しても伝えたい感想と感嘆・シチュエーションに対する忠実な状況説明。 上記の4つがこれまでの歌やタイトルの8割を占めている構成要素だった(残りの2割が何なのか、それを説明するほど愚かなことはない)。 ところが、「叱れ」という命令は、誰の誰に対するどのような命令であれ、この歌集の中で異質さを放っている。 その理由は、作者も読者も知りようがないが、個人的に推測するに、それは、この連作が何かに対峙している唯一の連作であり(何かに投影・何かから投影している連作はあるが、もちろん対峙するのとはわけが違う)、そして、この連作の最初の1首目に、中里さんが登場するからである。 中里さんとは誰か。 それを探るためには、残念ながら何かを連れて来なくてはならない。ただ、直接連れて来るのはよそう。 覚えている人は、「世話する光」を思い出してほしい。 私は、この歌集は、ビーカーに水を注ぎながら、ひたすら目盛りを数える歌集だと思っているが、このビーカーに水を注いでいる人こそ、まさしく中里さんなのである。 ビーカーに水を注ぐ速さを調整できるのは、中里さんしかいない。 中里さんの設定した、アパートの耐用年数は百年だ。今まで私はこのアパートに十六年住んでいたが、この築二十五年のアパートは、今度は百年しか持たないだろう。夕暮れをこんなに身近に感じることは、これまでなかった。あったとしても、それは時間の経過を感じるだけのことで、日が暮れるという感傷に浸っているに過ぎなかった。 誰がアパートを塗り替えてくれと頼んだのか。依頼主は誰か。 「そういうのを感傷と呼ぶんだよ」
この話のつづきは箱の中で(いま、開けたばかりできれいなので)
スイスにようこそ! 客車から降り、石炭の匂いを感じながら、私は停車場の短い階段から野草の生い茂る草はらへと下った。駅舎までは多少、距離があった。改札で銀色の箱に切符を落とし、石畳のロータリーに出たところで、その男は大声でそう言ったのだ。 「スイスにようこそ!」 けたたましい警笛と、シリンジやポンプの作動音、蒸気の噴出される細長い音の後、機関車は走り出した。その男は、もう一度、「スイスにようこそ!」と叫んだ。 その男は、ホテルから私を迎えに来ていた。 その男は、ボタン穴の部分に白い花が刺繍された、キルト地の赤いチョッキを着ていた。民族衣装なのだろう。滑稽に見えた。 「スイスにようこそ!」 私が声を発さないせいか、その男はいつまでも叫び続けていた。
思いましょう 世界は果てが滝なのに減らないくらい海に降る雨
わずかな言い換えが、同一性をより担保してくれる。違いではなく、同じであるということに価値があり、光の当たり方が違うという指摘をすることに、この世界の意味があるのだ。 何も変えてはいけないし、そもそも何も変わっていない。 だから、ため息のような破調をため息だと断定するような、理性に支配された言葉や深読みの数々に、どうか、果てしない嫌悪を。
歩いてもどこにも出ない道を来たぼくと握手をしてくれるかい
空き地の真ん中にあるブランコを漕いでいる人はいなかった。しかし、そのブランコはもう2時間以上、揺れ続けていた。風が吹いたり、地震が起こったりしたのだろうか。犯人は誰だろう? ぼくはそんなことを考えながら、空き地から出て行った。夕映えでまぶしい道にも、もちろん誰もいない。
眉を順路のようにならべて三分間写真のように生まれ変わるよ
さっきまでスパゲッティが乗っていた皿だろうか。陶器が割れる音がした。いつ聞いても嫌な気持ちがする。盛り付けにどれだけ時間をかけたか知っているのだろうか。拳大の麺を掴んだトングを円の中心に垂直に下ろし、3°ずつ反時計回りで円を広げていく。麺が尽きたら、今度は尽きた箇所からもっとも近い皿の縁から、時計回りに同じことを繰り返す。規定量の麺がなくなるまで、それを反復し、最後に外・内の間隙に向かってミートソースをかけていくと、もっとも美しい、写真映えするミートソーススパゲッティのできあがり。 それを奴は台無しにしたのだ。 客に謝る声がした。愛想がなく、声が大きいのにこもって聞き取りにくい。 やがて奴が戻ってきた。こんな奴しかバイトに来ない。 怒りがこみ上げてきた。
鰐というリングネームの女から真っ赤な屋根裏を貢がれる
忘れもしない10月15日、三銃士マドモアゼル・リンダとの決戦。 私は地面へと頭から叩き落とされた。筋骨隆々の大女リンダは、背負い投げの途中で掴んでいた両手を離し、私は右側頭部にゴギュという音を聞き、次の瞬間には病院のベッドに横たわっていた。4日間、眠っていたらしい。脳だ。硬膜に、血が溜まってしまった。もう復帰できないだろう。リンダとの再戦では、今度こそ殺されるに違いない。 退院してからも、私の脳裏からゴギュという音は消えなかった。
バス停を並ぶものだと気づくのはいずれ���ばかりではあるまい
カラスの襲撃がはじまった。 毎朝、5時35分発のバスに乗るための列がある。そこで餡パンを食べる男子高校生が、その襲撃がはじまる原因だった。 その列には、イヤホンのつながったMDプレーヤーを持つ会社員らしき男、バスに乗ってからすればいいのになぜか待ち時間でチークを塗るOL、文庫本を読む一見して職業のわからないラフな出で立ちの中年男性が並んでいることが多かった。曜日によって数人増減する日もあった。 カラスは滑空した勢いで餡パンを盗ることもあれば、バス停の近くまでひょこひょこ歩いてきて、飛び上がる弾みに文庫本を掠めとることもあった。日によって、何を盗るのかまちまちで、規則性はなかった。 しだいに、そのバス停の5時35分発の利用者は減った。私の部屋はバス停の真裏の2階にあったが、観察するに、それまでの利用者は35分の前後のバスに変えたようだった。35分発の前は27分発で、後ろは少し間隔が空き、52分発だった。 カラスは35分発のバスに固執していたので、前後のバスの利用者を狙うことはなかった。 私はだんだん、そのバス停の35分発のバス列に並んでみたくなった。バスに乗らない生活が続いていたが、意を決して餡パンを食べながらそのバス列に並んだ。 並んだといっても、その日、私以外に並んでいる人はいなかった。 カラスが飛んできた。私の背後から近づいてきて、しばらくじっとしていたが、やがて朝焼けの空へと飛び去っていった。 私はバスに乗り、駅に向かった。駅に人はまばらで、なん��か楽しい気分になった。 どこに行こうかな。
拾った本雨で洗ってきた人と朝までつづく旅行計画
歩けば歩くほど、傘が遠のいていった。空き地の中央に突き刺さっている、一本の傘。半透明のビニール傘で、コンビニのテープが持ち手に付いたままだ。 誰もいないのに、傘がゆっくりと開いていった。時が止まる前の、緩慢な動き。 パラボラアンテナのように宇宙へと開いて、雨を受け止めている。 これから先、もうどこにも旅に行くことはできない。そう思うのに、時間は必要なかった。 朝は消滅した。
消えてった輪ゴムのあとを自転車で追うのだ君も女の子なら
自転車で行くには、あまりにも近過ぎた。ペダルを4回漕げば、そこに輪ゴムがある。わかっているのに、絶対に輪ゴムをひき殺してしまう。輪ゴムの断末魔が響きわたる。うんざりだ。
ブルーシートに「瀬戸内海」とペンで書け恋人よ 毛玉まみれの肩よ
瀬戸内海は本州と四国に挟まれ、九州と淡路島によって蓋をされている。こう定義したとき、瀬戸内海を狭いと感じるか、広いと感じるかは、人それぞれだろう。レトリックの差だ。 ただ、そもそもレトリックが生じるには、瀬戸内海に行ったことがあるか・ないか、が関わってくる。 私は瀬戸内海に行ったことがないから、レトリックが有効だ。 瀬戸内海=ブルーシートに座って、花見の場所取りをしていると、茂みからタヌキが顔を出した。私が瀬戸内海にいるので、タヌキが瀬戸内海に侵入することはなかった。 オオカミが来た時のことを考えて、もっと大きく書いておこう。 「おーい。オオカミが来たぞう」
牛乳を誰かが飲んだあとに来る 煙草をきみはねだる目をする
「おーい。牛乳が来たぞう」 「煙草、吸うかい?」 「これで無事に牛になれます」 「あいつは有名な牛なんだよ」 「知らなかったな」
月光はわたしたちにとどく頃にはすりきれて泥棒になってる
TEL「お電話ありがとうございます。ピザッチです」 わたしたち「注文お願いします」 TEL「承ります」 わたしたち「ピザッチの熟成ベーコン ダブルチーズスペシャルで」 TEL「レコードですね」 わたしたち「はい?」 TEL「月光ですね。お届け先を伺ってもよろしいでしょうか」
忘れてた米屋がレンズの片隅でつぶれてるのを見たという旅
夢なのか、旅なのか、映画なのか。 確かなのは、私が1眼レフを構えて、海辺のトタン屋根の小屋にレンズを向けていることだけだ。窓ガラスは割れ、部屋の中には砂が溜まっていた。防風林の木々の間から、風が流れ込んでくる。夢なのか。気がつくと、私は望遠鏡を覗き、宇宙の小さな米を見ている。星の中の、家の中の、米櫃の中の、一粒の米。われわれには、今目に見えているものが、米なのか、星なのか、区別することができない。
顔のなかに三叉路のある絵を描いた凧が墜ちても届けにいくわ
しかし、雲が突然、光を発した。本来見えていたはずの太陽をかすめている、飛行機の排気ガスの軌跡を柄のようにぶらさげた白いかたまりは、ゆっくりとひしゃげた。 私の頭の中と、想像の君の頭の中と、想像の中里さんの頭の中は、どれも凧が真っ青な空の中を落下する映像だけで占められていて、落下地点のことを決して想像することはなかった。つまり、野原で寝転んでいる中里さんの顔に向かって凧が落ちていき、中里さんの顔を凧の布が覆い尽くしたとは、誰も知らなかったのだ。 三者三様に、拾いに行く途中で迷子になり、誰も帰って来なかった。
マサチューセッツ工科大学卒業後 ほんとうの自由にたどり着けるだろう
何も考えたくないという時の「何も」こそが「自由」であり、何もかも達成したという時の「何も」が「ほんとうの」だ。バカ田大学は実在しない大学で、マサチューセッツ工科大学は「ほんとうの」大学だ。
五時がこんなに明るいのならもう勇気は失くしたままでいいんじゃないか
卒業おめでとう。五次会へようこそ。
東京タワーを映す鏡にあらわれて口紅を引きなおすくちびる
自分がどこにいるのか思い出せない、いや、自分がどこにいるのかわからない。東京タワーが映っているということは東京都内のはずだが、もしかするとテレビの中の東京タワーを映した鏡かもしれず、その証拠に東京タワーはゆらゆらしているが、しかしそれはタバコの煙のせいかもしれないし、もしかするとスモッグか黄砂か霧かもしれないし、くちびるは口紅を加えてはっきりするということは、つまり鏡の中の口は自分の口で、くちびるは自分の口のくちびるで、ようするに自分が鏡の目の前にいるということ以外に確かなことはないと思ったが、塗っている自分の指と指は本当に自分の指なのか、「指?」、指ではないだろう、ここはトイレだからテレビはないはずだ、東京タワーは小さいし、自分は口紅を塗っている自分だ。
その森がすべてうれしくなるまでにわたしたちは二匹に減っておく
わたしと、マイケル・ジャクソン。この森はすべてうれしい。
こどもたちは窓のかたちを浴びていて質問してくるようすがない
遠い空を凧が浮かんでいたので、空について詳しくないぼくらには、それがいかに巨大か、近づいてくるまで分からなかった。 凧は風にあおられぐらつき、山の峰に触れた時、周囲の木々と凧の大きさの違いに、ぼくらは驚いた。 もっと遠くに浮かんでいると思っていた。 いや、あれは飛んでいたんだ。 あれは大人かな。 子供じゃないかな。子供が五人、凧の対角線に沿って張り付いている。 貼り付いている、の間違いじゃないかな。彼らは死んでいるよ。 五角形のそれが草原へと着陸した。ずどん、と。 ぼくらはそれに向かって駆け出した。
こうもりはいつでも影でぼくたちは悩みがないかわりに早く死ぬ
もぐらとこうもりは、ぼくたちにとって黒いかたまりだった。猫がもぐらを咥えて夕方の軒下にやってくると聞いたことがあったけど、中里さんはそれをぼくたちに見せてはくれなかった。 ただ、一度、ぼくはその死体を見たことがある。中里さんがどこかに埋めたもぐらを掘り起こしてきたのだ。でも、それは真っ黒に塗りたくられていて、まるで影が空中に浮かんでいるみたいだった。ぼくはそれを手に取った。これがもぐらだとは思えなかった。いや、思おうとする前にもぐらは、ぼくの手からその黒いかたまりをかすめ取り、夕闇の暗がりへと消えていったのだった。 ぼくが幼少期に死について考えたのはそのたった一回だったが、長い時間が経ってから思い出すと、ぼくはつねに死について考えていて、それはぼくたちにとっての共通のテーマだったが、今、捏造した記憶かもしれない。こうもりが、車庫の屋根裏から羽ばたき、ぼくの顔を覆った。苦しくなることが、ぼくはいま溺れているのか、どこで。
けむりにも目鼻がある春の或る日のくだものかごに混ぜた地球儀
バナナと梨とリンゴと葡萄がかごに混ざっていて、実はどれかが地球儀でーす、というクイズ。 正解は、バナナ。よく見てごらん。ほら、剥いてみて。
電球を抜く手つきしてシャツの中おめでとうってどこか思った
エルヴィス・プレスリーは振動を発明し、マイケル・ジャクソンは手つきを発明した。 アンチ・グラヴィティは、特許によって成立しており、靴と床の構造によって無重力を再現していた。なぜ、バスター・キートンやチャップリンとは「違う」のか。 「おめでとう」と言えるのは、マイケルだけだから?
その鍵は今から四つかぞえたら夢からさめた私が開ける
なぜ、五や三とは違うのか。 「おめでとう」と言えるのは、四だけだから?
全世界 というとき世界が見おろせる星にかかっている羊雲
トートロジーに照らして考えたとき、全世界とは三角形であり、同時に正四面体でもある。つまり、三角形は四個あり、同時に十六個あるとも言える。 私は羊雲すら把握することができている。
部屋に見えるほど寒々と白旗をひろげなさいって誰に言われた?
凧は裏側の三角形に墜落した。ぼくらはそれを見ることができなかった。羊雲が青空に広がっていた。
犬がそれを尊ぶ「セックスアピールって要するにおっぱいだろ?」という目で
マイケルのそっくりさん「おめでとう」
たくさんになって心は鳥たちの動いたあとの光が照らす
「いらっしゃい」
新聞が花をつつんで置いてある よみがえるなんて久しぶり
長年考えていたのだが、と話をはじめることができれば、この話に説得力や教訓、哲学的な示唆があるのではないか、と耳を傾けてくれる人々が増えるのだとは思うのだが、実際はほんのついさっき考え出したことについて話をしたいと思う。しかし、これからずっと考えつづけていくに違いない事柄についてだ。 いや、私は長年、ずっと考えつづけていたのかもしれない。それを、ついさっき考えはじめた、と韜晦混じりに話している可能性もある。と、話を続けることしかできない。つまり、私には、いつ考えはじめたのか、全く分からないのだ。 いったい、新聞と何の関係があるのかと思うだろう。だが、話には順序がある。 まず、私が話したいのは、まさしく、わたしが陥ったある狂気についてである。 おそらく、世界中どんな場所にも、狂人と呼ばれる人間が必ず1人はいるはずだ。どういった人間かというと、たとえば、あからさまに口調がおかしかったり、あるいは身振りが不審な人間が狂人と呼ばれるのではなく、常識という土台はあるにも拘らず、その常識が生み出すはずの思考が常識とはかけ離れてしまう・少しずれてしまう人間のことだろう。 だが、何が狂人たらしめるのかというと、実際は時代時代の常識から見た「狂気」であり、大部分は、その人間が置かれた状況や環境に対する理解の欠如や、差別意識によるものなのではないか、とも思うが、しかし、土台の上の常識がずれるということについては、多くの人間は狂気と人間(狂人)を峻別し、その上で狂気に見舞われた人間を「狂人」と見做しているのではないだろうか。 ケースバイケースだ。こんなところで結論がでるような話ではなく、そもそも「土台」という考え方が、非常に差別的にちがいない。ただ、私が何を言いたいのかというと、この「土台の上」ではなく、まさに「土台」の部分で、私は狂気に飲み込まれてしまったということだ。 話を始めよう。 私はかつて、池袋で新聞少年だったことがある。しかし、それはほんの2週間でおわってしまった。当時の家庭環境からすれば、私は働きつづけなければならなかったのだが、体力はもちろん、幼稚さゆえの逃避癖から、楽で薄暗い方へと身を沈めてしまった。逃げたのだ。打ちっぱなしの床に、やけに赤いヒーターしかない作業所が苦痛だった。2階から聞こえる怒声が、ただ耳の内側に響き、昼の数時間の睡眠や不規則な生活が、だらだらと続くのに絶望した。 それはともかく、私は2週間の短い経験だったが、新聞、と呼ばれると、広告チラシと新聞を一括りで連想するようになってしまった。私にとって、新聞とは新聞紙のことではなく、チラシがハンバーガーのように挟まっていてこその、「新聞」だ、と言えば少しは分かりやすいだろうか。 そして十六年後、私はあるアパートに住んでいた。チラシを捨てることができず、十六年分のチラシが部屋にはあり、話とは関係ないが、毎日、ダブルチーズバーガーを食べていた。 私が陥った狂気について語ろうと思うが、前置きに比べてずいぶん短くなると思う。なぜかといえば、これは私が現在直面している狂気であり、私は正常と異常、時間の長短の区別がもはや付かなくなっているからだ。ようするに、私は説明することができないに違いない。 話とはこうだ。私はある日、部屋の壁中にチラシを貼る男を夢想した。それは私だったのかもしれないし、今、私がチラシを壁に貼っているのかもしれない。 「新聞が花をつつんで置いてある」 私は「新聞」に包まれている。 私は置かれている。 私は自分が花だとは言わない。しかし、「よみがえるなんて久しぶり」とは。 私が、自分が狂気に陥ったと考える理由は下句にある。 私は甦っただろうか。「久しぶり」には、世界に対する癒しが含まれている。 癒しは、包まれているのか。包まれていないのか。 文字が塗りたくられた円錐は、床に転がっている。 円錐の先に窓がある。 窓から、光が射し込んだ。窓にもチラシを貼っていたが、紙が薄かったので、窓は光っていた。 「よお」
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引用はすべて、我妻俊樹「窓を叱れ」(『足の踏み場、象の墓場』、短歌同人誌『率』10号 誌上歌集、2016年)より。
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