Saturday Balloon・スタッフインタビュー(構成・文 徳永)
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01 松本永(照明)
02 PUGMENT(衣装)
03 三ッ間菖子(宣伝美術)
04 タカラマハヤ(美術)
05 河野当当(原案)
06 中村理奈(原作)
07 額田大志(脚本・演出)
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01 2月18日(公演期間中) 松本永(照明)インタビュー@kawamata Hall
——今回の照明プランについてお聞かせください。
松本 最初は、6人それぞれの関係が見えやすい形で考えていました。2人の会話の時は2人を照らす!みたいな。きっちりはいかないにしても、会話の質が変わったらシルエットにしてみたり、結構、今思うと演劇的に「うざい」やり方を提案したんです。額田さんの発想からすると、ちょっと「やりすぎ」な。まあやれるだけやった上で削って貰えばいいやとは思っていたので、最初は四楽章あるうちの、各楽章に、何十個ずつもきっかけがありました。わしわし変わっていくようなプラン立てちゃったんです。それが、もっと微妙で繊細だったらば受け入れられたかもしれないけど……結局時間もないので、そうしっくりはいかなかったでしょうね。2、300あったきっかけは、結局全部いりませんと額田さんにきっちりと言われました。はっきり言うところが彼のいいところですよね。演出家だから当然のことなのかもしれないけど。
——冒頭では、「おはよう」「おはようございます」という応酬の中で、次々に照明が変わっていたのが印象的でしたが。
松本 はじめの部分っていうのは、例えば5分しかないけど5年に感じるような、なんか時間の変化が欲しいねって、それはもう出会ってすぐ言われていたことで。それはもう前提だった。でも、一度プランの中からなくしてた時もありましたね。なくしてたけど、やっぱりちょっとやろうってなって今の形になっています。
(以降、たまたま通りかかった額田がインタビューに参加)
松本 今回、僕が稽古場にたくさん行けていれば、さっき言ったたくさんのきっかけも馴染んじゃったかもしれないね。
額田 そうですね。でもこれはかなり僕のミスでしたね。大きいところの会場で初めて公演をやったんですよ。今までは本当に小さいところか、もしくは大学の体育館だったので。非-劇場空間というか。ここ(kawamata Hall)も劇場というかわからないですけど。
松本 シアター「的」ではあるよね。
額田 シアター的なところで初めてやったので、こんなにも違うんだって思いましたね。チューニングが本当に初めてで。小屋入り後の時間が少ないことに初めて問題意識も感じましたね。小屋入りの時間って、大事なんだ……!
松本 マームとジプシーなんかは、稽古場でできることしかやらないって昔は言っていましたね。今はどうしているのか知らないけど。(劇場で)再現できないことはやらない、という感じで。それはある意味正しくて。質のためには正しいけど、それを広げるときにどういう手法をとるかっていうのはそれぞれですよね。僕、昔はよく稽古場に灯りを持ち込んでいたんですよ。だから、きっかけも一緒につくっていた。色合いやなんかも調節しながらやってるから、息遣いも分かる。肉体訓練も一緒にやるわ、太極拳やったりもするわで、その中で照明もやっていて。ほぼ全部の稽古に付き合うっていうのは、それはそれでめちゃくちゃ楽しかったです。そんなことはもうできないですよ! ただ、照明さんがもしそこまでできると、小屋に入ってからの調整はなくなるんですよ。そこについては問題ないから。
テクニカルの人間が、どれだけ付き合えるかっていうのはでかい。日本舞踊とかだと、5分間の申し合わせのみであとは本番という流れの時もあるんです。日頃稽古してるんだから、必要ないっていう。ただ演劇は、そっちの発想になかなかならなくて。方法論的にいろいろ考えられそうな気はするけど……なんとかしたかったりするよね。
額田 そうですよね。今回初めて衣装と照明というのをいれたいなと思ったんですが、そしたらやっぱりなかなか、クオリティの高さではないところの難しさがあるなと。
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02 2月18日(公演期間中) PUGMENT(衣装)インタビュー @kawamata Hall
——ヌトミックの舞台衣装は、そのような依頼のもと制作されたのでしょうか。
PUGMENT 制作の杉浦さんから、役や物語を記号的に表象しない衣装をつくって欲しいと依頼を受けました。あとはPUGMENTの好きなようにと、お話を頂いて。
今回でいうと、100円ショップの店員役の役者さんに100円ショップの店員のような制服を着せたら、見た人は、100円ショップの店員だと認識する。それが「記号的」ということだと思います。それは、役者さんの身体の上に衣装が乗っている状態というか、衣装と役者さんがあまり関係していない状態ですよね。そういうことを考えた時に、役者さんと服が関係している状態をつくることを、まず念頭におきました。
——そう考えた上で、どのような制作プロセスを辿っていったのでしょうか。
PUGMENT まず、額田さんがどうやって演出しているか、どうやって舞台ができるのかを見ることにしました。その後に、役者さんがヌトミックの演劇において、どう舞台上に存在しようとしているのかを知る必要があって、役者ひとりひとりに話を聞くことにしました。それまでは、役者さんが日常の自分と乖離した状態で「役になっている」と想定しながらプランを考えていたのですが、話を聞いて違うと分かりました。日常の流れと地続きの状態で舞台に立っている意識が強い、という話を聞いた時、面白いと思いました。それと同時に、私服を着ているように見える演劇、もしくは実際に私服を着ている演劇作品をいくつか観た時、良い意味でも悪い意味でも変だな、面白いなと思っていたことがありました。普段日常で着ている服を、非日常のステージ上でも着る時、どのような身体性になるのか気になっていきました。それで、私服を使うことを考えました。
——舞台上での存在の仕方について役者に尋ねたようですが、以前からそのことについて考えていた部分はあったのでしょうか?
PUGMENT 舞台衣装を実際にやるのは今回が3回目ですが、関わっていく中で、自分たちが捉えているファッションのあり方と、演劇のあり方がリンクするのではないかと感じ始めていて、いわゆるファッション、特に、パリコレなどは、パーティーウェアというか、一回しか着ないものとして発表しているものも沢山あります。そういう、日常の自分とは切り離されている、ある意味、美しい状態を「演じる」という部分がある。自分以外の何かになる、通常の自分とは違う状態にというのが、ファッションの本質としてある気がしていて。自分たちの感覚でも、今日は(服装が)何っぽいとかあるじゃないですか。その時に、本当の自分よりはちょっと理想的なイメージを演じるという状態になっていて。……そういう意味で、ファッションと演劇の構造を考えた時に、役者さん自身の、作品とは関係ない状態と、役者として存在している状態、両方を扱いたい、関わっていきたいというのがあります。
——作中では、透明な見た目や脱ぎ着される様子が印象的でした。作品全体に影響を及ぼしていたと感じます。
PUGMENT あ、脱ぎ着するっていうアイディアは、杉浦さんとか額田さんからきました。そういうところがすごく面白かったです。作品の演出に関わってくる感じがあって。関わってくることで、服の見え方も変わるので面白いと思います。
額田さんは、服を楽器として扱いたいと言っていました。演奏会で言うと、演奏がはじまる前に楽器がステージ上に置いてあり、演奏者が歩いていき、自分のポジションにつき、楽器を持って準備する……そのようなことを意識的に見せたいという話があり、服をそれに使えないかと。
額田さんとは今回初めてお会いしたので、まずヌトミックの身体性とは何かということを額田さんに投げかけたところ「ライブ中に演者が水を飲む時の身体」と言っていて。それから稽古場で、転換のシーンを観て、なるほどこういうことか、面白いなと思いました。そして、最終的には脱いだ時の私服をデザインする気持ちで衣装をつくるという風になって。そこから、透明にするような形になっていきました。衣装を脱いだ時のリアリティーによって、私服が一番強く見えて欲しい。そこに希望がある。
——以前に制作された衣服でも、iPhoneで撮影した写真を利用するものがあったと思いますが、この手法はPUGMENTのやり方として定着しているものなのでしょうか。
PUGMENT 画像を使うことは多いです。もともとどうして服をつくりたいのかという話になるのですが……。自分とは何か、自分の身体のリアリティーとは何かを考えた時に、頭の中でイメージする自分自身と、実際に物質として存在している自分自身がまずあって。それが等価にあるけど、微妙にズレてる。その感じが、今の身体のリアリティーなのではないかと考えていて。
例えば、ネットで服を買おうと、服を見るじゃないですか。これ似合いそうだなと思って、これを着てイケてる自分をイメージするけど、家に届いて着てみたら全然違った、みたいな。その、実際の自分と、イメージする自分のどちらが自分というわけでもない。ネットショップの服の画像が、いわゆるイメージとしての自分だとして、それと実際の自分をヒエラルキー無く扱う。でも、画像の方は操作しやすいんですよ。フォトショップとかでいじれる。なので画像を服として扱うが、実際に着てみるとズレる。等価ではない状態の何かが立ち上がるということをやりたい。
演劇自体のコンセプトである、価値観の枠の外、内、ということについて服で考えた時に、ショップコートという形に無理やり合わせることで出てくる歪みが、藤井さんの(役の)とまどい感のようなものに近い感じがします。その歪みがある舞台上に、実際に私服を着た役者さんが立っている。
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03 2月23日(本番4日後) 三ッ間菖子(宣伝美術)インタビュー
——今作のフライヤー、「レシート型」と言われていますが、なぜあの形にしたのでしょうか。
三ッ間 前回の『シュガドノ』の時は、額田くんが演劇でやろうとしている方法論に寄り添ったんです。「ズレ」に着目して、それをグラフィックでやったらどうなるのかなあっていうところを考えてつくっていました。今回は、最初にお話をいただいた時にプロットがあって、価値をテーマにした話であるとか、百円ショップが舞台だっていうのがわかっていたので、方法論ではなく、内容に寄り添う形で。……ありがちな手法ですよね。例えば喫茶店がテーマだったら、その喫茶店の絵を描こう、とか、直結する形のつくりかたができるなと思いました。でもめちゃくちゃ悩みましたね。最初は絵を描こうと思ったんです。百円ショップにある商品をシルエットで。それがシルエットであることで、それは実際なんなんだっていうことを問うようなものが一個思いついて。それと同時に、もう少し何かないかなあと考えましたね。今回は紙のフライヤーをつくることが決まっていたので、紙の形で何かできないかなと。そこで気になってくるのが、演劇の折り込み文化の問題なんですよ。私にはすごく違和感があって。ライブハウスとかで紙のチラシを持つ文化って、未だに続いてますよね。ライブってクロークとかがある世界なのに、なんでまだあんな現象が起きてるんだっていう!……演劇もその形が根強いのかな、と関わるうちに思いました。劇場入るとばーっと平置きで並んでたりするじゃないですか。大体A4とかB5で。もちろん折り込み機械の問題とかもあるのかもしれ���いですけど、誰の意志でもないサイズ感覚だなって思います。その、消費されていく紙のフライヤーのことに疑問があるし、ヌトミックでは面白いことをやらせてもらえる、というところがあったので、ちょうど考える機会になりました。
ヌトミックがいいのは、言ったら応えてくれるところですよね。レシート型を思いついた時、私はすごく自信がなかったんですけど、とりあえず見せてみました。パロディだったり、奇抜なことがやりたいわけではないし、ウケを狙いたくもない……とりあえず、思いついた2つの案を持って行って、クリアファイルから、「あの〜」ってもそもそ出したんです。そしたら、シルエットの方は、はあ、みたいな感じで。レシートの方は、いいじゃんこれ!って反応してもらえて、そのまま決まりました(笑)。
——今振り返ると、レシート型に決まってよかったとご自身では思いますか?
三ッ間 今考えればよかったなと思います。人はサイズ感で物の認識をしているんだなというのがあるんですよね。あのフライヤーは、もっとパロディみたいにレシートに寄せることはできたんですよ。値段書くとか。でもそれはあえてしていないです。でも、あのサイズだけでみんながレシートって認識してる。そこがすごいなって思います。あれがペラッて落ちていたら、レシート?って思う、その0.0何秒の感覚のすごさ。なので、あれはレシートであってもなくてもいいんですけど、サイズを見た時にレシートかな?って思う感覚を狙うというか。そういうことはちょっと考えましたね。
もちろん、普通のフライヤーによくある形ではないから、わかりやすいという情報の提示の仕方ではない。だからあれで集客ができるとはあまり思いませんね。でも、ヌトミックのスタンスとしても、こういうことをしていますっていうのがわかりやすくもないし、余白があるというという部分でつながるかなとは思っています。
——先ほどフライヤー文化への疑問について話してもらいましたが、今後三ッ間さんがつくってみたいフライヤーなどありますか?
三ッ間 結構考えてはいるんですけど……うーん。私は、全部に決着をつけていきたいんですよ。A4でフライヤーをつくるなら、何でそういう風につくるのか、自分の中で言えるようにしたいです。その時々で形とかは違っていきますけど。ぼんやりとした、「それっぽい」ものは本当につくらないようにしないなあと、思っては、いますね。
紙のフライヤー問題って絶対あって。何万枚刷っても、全部配りきれるわけはないんですよ。何千枚……下手したら一万枚ぐらい捨てられてるんじゃないかな、という。送ったり何かしらする仕事が間にあるのはわかりますし、私の仕事は納品したら終わりなんですけど、せっかくやるなら、そうならない違う道を考えていかないと。仕事の規模によっても距離感によってもつくり方は違ってくるけど、ヌトミックみたいな同世代のひとたちがいる現場だと、一緒に考えてつくっていける。
でも例えば、おもて面には情報を入れずに裏面だけにして、飾れるおしゃれなポスターみたいなやつにしようよ、みたいなものもまったく違うと思っていて。それはそれでいいんですけど、グラフィックデザイナーが画だけをつくっている場合ではないというか。
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04 2月24日(公演5日後) タカラマハヤ(美術)インタビュー
——役者の立ち位置がほぼ固定されているのが今作の特徴ですが、その範囲を「輪」で定めるというのはどのような経緯で生まれたのでしょうか。
タカラ 前作をふまえて身体が気になった時に、じゃあ制限をかけて動けなくしてやろうってなったんですよね。稽古の時はみんなを、ゴム紐みたいな輪っかで囲ってみてた。まんなかにいる平吹さんががドラムに見えるみたいな話を額田がして、俺もそうだなと思いました。位置を分けることによってバンドっぽく見えるというか、そういう意味で音楽観がそこに入っている。
額田の説明だと、あの、役者の動ける範囲というのは価値観の大きさを示しているっていう話もあったんだけど……そういうことでは無いのかなとは思いました。ひとりひとりのキャラクターが際立っていた方が、平等とか言ってる時の違和感というか言葉の力が増すような感じがあって。だから「輪」は全部違う形にしてみました。
——確かに砂鉄で描かれた輪っかは、細かい模様なども違っていましたね。
タカラ あれは、役者それぞれの……イメージ(笑)。結構バリエーションもあって、日によっても変えていました。日によって変えた方が、役者のモチベーションも上がるかなあって。今日はこんな形になってしまったんだ、みたいな。例えば藤倉さんだと、スペースが一番ちっちゃくて。しゃがむことのできなそうなサイズにしてたこともあったし、最終日につれてだんだん大きくしてあげたり……(笑)。それで少しずつ身体が動かせるようになったり。
——砂を素材として選んだ理由は何でしょうか。
タカラ それは、残るなと思ったんです。ぶつかった時に、その痕跡が残る。物理的な反応が欲しいっていうのがありますね。美術は置いたら終わりだから、レスポンスというか役者と影響し合うっていうのが重要な気がしています。それと、単純に緊張感が出るだろうなとは考えていました。崩したくないじゃないですかあれ。ヌトミックの舞台美術に関してはいつも緊張感っていうのを意識してます。
あと、戯曲が日常会話をモチーフにしてるから、景色は逆に日常から離れていた方がいいとも思ってました。最初は100円ショップの商品を使って舞台美術をつくるっていう案があったんだけど、それだと緊張感がなくなるなと思って。他の意味があるにもかかわらず、100均の商品をつかってるんだね、で終わっちゃうかもしれないから。いろんなものから逃げるようにつくっています。ひとことで捉えられないものの方がいいです。
——宣伝美術の三ツ間さんも、フライヤーをレシートの形でつくってはいるけど、完全にレシートには寄せないという話をしていましたね。
タカラ あれはすごいスレスレだけど(笑)。だってレシート感もちゃんと使っていたので。唯一レシート感出してないところって、文字くらい。ただイラレで打ったみたいな文字を使っていて。でもこれじゃわかる人にしかわからないじゃんか!って俺は思ってたけど……どうなんだろう。
——字幕のプログラミングもやられていましたが、あの表示形式に決定したのにはどのような経緯があるのでしょうか。
タカラ 演じる方も美術もかなりストイックだったから、字幕は見てて楽しいものにしたかったんです。最初に案を出した時はDTM、って言ってたけど、MIDIの打ち込み画面みたいになりましたね。太鼓の達人みたいな。字幕をつけたことに関しては、TPAMだったというのも契機ではあるんだけど、快快の『アントン、猫、クリ』(2009年初演)をDVDで観て、字幕面白すぎじゃね?ってなって。
あと、クリスさんの翻訳がよくできててすごい。面白かったのが、「プアーリッチガール」を「poor shopping girl」にしていて。あと「リッチ」は「posh」。あれ、「poor shopping」のp、o、s、hを組み合わせると、「posh」になる、っていう超かっこいい訳なんですよね。クリスさんがTwitterに書いてたけど、パズルを解くように訳したって。字幕の出方も気にしていて、ひとつの文を読めば意味とか流れが大体通じるように訳していたみたいです。
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05 2月23日(本番4日後) 河野当当(原案)インタビュー
——作品をご覧になっていかがでしたか?
河野 『それからの街』を(映像で)初めてみた時とすごく似ているという印象を持ちました。今回はストーリーというか、内容を箇条書きにしただけのプロットを額田さんに見てもらっていたので、それを結び付けてもらえれば、シュガドノよりはもう少しストーリーの見える話になるのかなって思っていたんですけど。もちろんまったくそのまま上演されるとは思っていませんし、そのまま上演されても面白味がないので、どう変わってるんだろう、という他の観客の方とは違う楽しみ方を個人的には持ってました。観終わった正直な感想として、面白かったかはよくわかりません、それも『それからの街』を観た時の感覚に似てます。現場のことを少し知った分、制作陣や役者陣の方はすごいなと思うんです、ですけど、その技術的なすごさと作品の面白さは関係ないというか、内容的なものが繋がるかは今の所わからないです。演劇は全部ひっくるめて観るものだというのは分かるのですが、それは「総合的に観られますよ」という意味ではなく、「選択的に観られますよ」という意味だと思うんです。なので自分の場合は、テキストを選択的に観てしまうし、テキストにしか興味がないので、そのテキストが面白かったどうかに関してはまだたくさんのクェッションマークが残っているという感じです。
——今作は原案・原作・脚本という様に立場が分かれていていますが、どう役割分担がなされているのか分かりづらい部分があると思います。
河野 『���ュガドノッカペラテ』の後に額田さんと、テキスト責任の区分けが難しいという話をしました。『シュガドノッカペラテ』の時、制作側の論理というかクレジット云々というのは、観る人にとっては何にも関係がないから役割はそこまで気にすることは無い、ということで額田さんと一致していたんです。でも終わってみてやはり、そういう内側の論理というのは、実は外側にもちゃんと反映されてしまうというか、作る側がギクシャクしたら観る側もギクシャクするのではないか、と思ったんです。それでギクシャクするのはお互いの棲み分けが出来ていないのが原因だと思ったので、今回は、ちゃんと棲みわけませんかっていう提案をしたんです。自分は今回は、プロットのテキストをあげたら、それ以降はお任せします、そういった感じで関係しようと思っていました。
——プロットの段階のものを河野さんがつくり、それを文章化したのは今回初参加の中村さんですよね。河野さんが中村さんをお呼びした理由について今一度お話してください。
河野 中村さんとはTwitterで知り合ったんですけど、大学院でモダンガールの研究をしているという話を聞いていたんです。もともと『SB』にモダンガール、というか、女性性について語る部分を入れたくて。実はその要素ありきの作品だったんですよね。
中村さんの第1稿が上がってきた時には、かなりディスカッションをしました。もともと最初は、(原案と役割を分けないで)自分と中村さんで、共同で原作をやろうって話になっていたんです。しかしそのディスカッションをしていく上で、中村さんに原作を全て任せようということになりました。なんていうんでしょう……書かない美学ってあるじゃないですか、中村さんはどちらかというとそちらのタイプなんです。自分は逆で、書いて書いての余白を埋めたいタイプなんです。こういうスタイルの問題って、話し合って解決する問題じゃないというか。多様性という言葉があるくらいだし、むしろ解決しない方が良いこともあるからと開き直ろうともしましたが、正直、気持ちにきちんと折り合いがついたわけではなかったですね。書いてしまう部分、そうでない部分の折り合いがつかなかったですね。でも、役割分担もあるし、他の方に対して不満を抱えてしまうというのもダメなのではと思ってしまったり……難しかったです。今回の「女性性」というのも、役割性と同じことで、つまり役割の棲み分けに通じてくる訳ですが、作品の外側にいるはずの自分の身近に起こっている問題はまさにそういう役割の棲み分けに関する問題だったので、作品の中でも外でも同じ問題が起こっていて、不思議な感じでした。
——2回目となる額田さんとのやりとりは、前回とはまた違ったものになったのでしょうか。
河野 今は違うのかもしれませんが、最初に会った時は、「テキストに関心がない」と額田さんは言っていて。それは衝撃というか、その発言を信じられませんでした。自分はテキストを中心に考えていたので。なので、『シュガドノッカペラテ』は30分という枠なのに、2時間ぐらいの戯曲を渡して……そしたら選ばざるを得ないじゃないですか。テキストについて関心を持たざるを得ない、考えざるを得ないというか。
——あの長さは意図的だったんですか……。
河野 意図的にやってました……。
���楽やってる人でも彫刻やってる人でも、絵を描いている人も、言語とそれ以外のものを持つために、つまり記述言語以外の言語を持つために音楽や彫刻をやって、最終的にもう一回言語に回帰というか、フィードバックさせるみたいな感覚が自分にはあって。なので音楽家であるにしても、テキストに関心が無いってことが本当にありえるんだろうか、という風に単純に不思議に思ってしまって、単純に知りたかったんです、あの発言の真意を……。だから『シュガドノッカペラテ』はどっちが原作、脚本をやっているのかわからなくなってしまうくらいに、のめり込んで、テキストに執着しようと思いました。でも今回は元となる原案テキストを渡すという方法に変えて、外から額田さんのテキストの扱い方が見れたので、学ぶところも多かったです。
——身近な場所がテーマになっていることもあり、原案の段階で出演者たちは面白く受け入れている印象でした。河野さんご自身が実際に100均で働いているというのは公演中に知りましたが。
河野 自分は2日目の本番に観に行ったんですけど、初日と3日目は100均で働いていました。「女性性」をテーマにしたSBだったのですが、その中には「労働」もテーマとして含んでいるので、働きながら、みんなと動きをシンクロさせていました。……気持ち悪いですかね……。
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06 2月25日(公演6日後) 中村理奈(原作)インタビュー
——率直に、作品の感想をお聞きしてよろしいでしょうか。
中村 すごく、混乱しました!いろんなことが起こりすぎて、びっくりというか、何が何だかわからないという感じになったんですけど……。でも、すごく面白かったです。すごく無機質なのに、役者さんの味というか持ってる人格みたいなのが、すごい出てるんですよね。
——原作のテーマ設定は、軽いものではなかったと思います。どのように解釈されましたか?
中村 難しかったですね。プロットには、価値ということに関する詳細な事柄が書かれていて。河野さんと何回も電話でやりとりしたり、読んで考えこんだりしました。
私としては、100円ショップの、単価が統一された空間で問われているものの価値とは何なのかという部分を考えていて。そこで働く人の価値……うまく働ける従業員と、うまくできない従業員がいて、それによってその人の価値が変わってしまうのか……あとは、買う人側の価値観というか。100円ショップでは108円で大体全部の商品が同じように変えるけど、そこに価値を見出す自分というのは……という部分とか。本当に欲しいものを同じ値段から選び取る自分の、価値観こそが大事なんだって思って書いていました。
——脚本の段階でも扱いはほぼないと言っていいと思いますが、原案では芸術の価値について問うセリフがあったと思います。それについてはどう思われましたか?
中村 そこまで至れないなと感じました。私の中で、考えられる範囲のもの、という風になったんだと思います。芸術とは、ってなると、よくわからないという感想を持つ時があって。本当に人それぞれ見解を持っている、そういう意味でも明らかな物語を避けて、観た人に委ねるという形になったのかもしれません。
——河野さんとは重ねて話し合いをしたと聞いています。どのようなものだったのでしょうか。
中村 話し合いはかなりしましたね!河野さんが原案を考えている段階からやりとりはしていました。河野さんの生煮えの考えみたいなものを私が聞いて、それに対してなんて思うか言い合うというのを何回かやったように思います。私が書いたものに対して河野さんが指摘することもよくありました。河野さんは物語性がほしいということだったんですけど、私はどうしても物語性を入れられないというか、入れたくないというところがあって……。物語を、観てる人に委ねたかったんです。
——原案、原作、脚本という棲み分けに関してはどのように感じましたか?
中村 原案と原作という立場は、書いていたらだんだん区別がつかなくなっていきましたね。ただ、原案にあるけど、原作にはなくて、でも脚本では取り扱われている描写や言葉があるんですよね。それは面白かったです。「プリチーガール特集にするべきだと思わない?」っていうセリフを、私は書いていなかったんですけど、「プリチーガール」という可愛さと、「するべきだと思わない?」っていう断定的な強さみたいなのが、シュールでよかったと感じました。そのあたり、書いた人の個性が如実に出ていて、(原案原作脚本の)違いが面白かったです。
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08 3月10日(公演19日後) 額田大志インタビュー
——『シュガドノッカペラテ』を経て、今回の公演で挑戦したこととは何でしょうか。
額田 一番考えたことは、手法と物語を連動させるということです。稽古のやり方としては、精神論のようですけど、役者を信頼してみようというところからはじまりました。演技とか、身体の扱い方に関して、今までは全部自分で指示していたんですけど、今回は役者ができることを引き出した上で考えていくっていうやり方をしてみようと。パスカル・ランベール(演出家・劇作家)さんのWSに行った時に、演出の役割について彼は、「まとめあげること」であると言っていたんです。少しニュアンスは違ったかもしれませんが……。僕はそれはそうだなと思ったので、自分の中のスタンダードを一度疑って、演出法を変えてみました。
そのWS自体もとても良くて、一番良かったのが、(パスカルが)時間を自由に使っているというところでした。(参加者全員の)自己紹介だけで、一日半かかったんですよ。僕だけで25分。その場で即興で演劇をつくったりとか、演奏したりとかっていうのをめちゃくちゃやらされたんです、ずっと……(笑)。でもそれが良いなと思いました。どうしても稽古だと、締め切りとか、日数とかを考えて物事を決めてしまうんですけど、まずはやりたいことをとことんやってみて、最後の2週間くらいでえいっ!とまとめあげるのもいいかなと。
——『SB』の公演を経て、何か発見はありましたか?
額田 たくさんありましたね。演劇を続けるのは結構大変だな、とか……(笑)。
これ、昔あるお笑い芸人が言っていたんですけど、その芸人さんがテレビの企画で歌をつくって、ライブをやったんですよ。で、終わったら、お笑いライブのときの拍手も気持ちが良いけど、ライブではそれより多くの観客の拍手を浴びて、ミュージシャンが羨ましいと思ったらしいんです(笑)。どうしてもお笑いも演劇も、動きが見えないと成立しないことが多いから、(音楽ライブの最大キャパに比べて)限られた客席であることが多くて。ライブの方が、演劇に比べて単純な快楽によるところが多いと感じます。ただ一方で、音楽はCDなどの音源をある程度聞いてからライブに行く場合が多い。だからある程度の良さが保証されていて、本当につまらないライブって中々ないんですよね(笑)。逆にそれはそれで面白くないな、とも思います。何が起こるかわからないお客さんの前で、これが面白いんだ、というのを提示して1から共有していく、その過程が今は演劇を続ける魅力です。
他に発見というと、役者に動いてもらうことで、「演技」の良さがようやくわかるというか……良い役者が何なのか、少しだけ理解できた気がします。ヌトミックにおいて、今後どのような俳優に参加してもらいたいかということは、この作品を通じて一つの基準ができました。
——『SB』には原案、原作が存在しますが、テーマや物語の扱い方はどのようにしようと思いましたか?
額田 頂いたものを、どうやって自分の表現にできるかということには尽力しましたね。自分が説得力のある言葉で語れるように多少、改案はしたり。当たり前だけど、テーマがあると難しい。何を語るか、何を語っているように見えるか、語る内容を、どうやったら今の世界にひきつけられるか。如何にしてお客さんにイメージを立ち上げることができるか。まだまだ分からないことばかりです。
あと、物語にはあまり興味がないなと今回も感じました。『SB』のセリフにある日常会話とかも、そんなに筆が進まなくて(笑)。ただ、演劇だとどうしても逃れられない「物語」に対して、これから何ができるのか、引き続きヌトミックでは取り組んでいきたい気持ちです。
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開催日:4月26(金)から5/6(月祝)まで
場所:Gallery なんばCITY本館1階店
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ヴィヴィアンウエストウッドの腕時計は国内メーカーが生産終了、さらにメーカー側に在庫ゼロの為、弊社は現在の在庫が無くなり次第販売終了となります。
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※この優待セールはGalleryが独自に行っているもので、なんばCITY主催ではありません。くれぐれも御間違えのない様御願いします。
※期間中の精算は全てポイント加算対象です。
※他の割引サービスとの併用は出来ません。
※ポイント10倍イベントより遥かに御得です。
※店頭にこの優待のPOPや案内は掲示していませんので御注意下さい。
いいね・保存・コメント大歓迎です!
ご来店お待ちしております。
Gallery なんばCITY本館1F店
〒542-0076
大阪府大阪市中央区難波5-1-60 なんばCITY本館1階
【営業時間】11:00~21:00
【休館日】4月,5月無休
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