Tumgik
#高級食パンを滅ぼしたい
darksouljellyfish · 1 year
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「高級食パン」の名前で売られている物は、菓子パン向けの生地を、食パンの型に入れて焼いた物だと言う事を、もっと広めていきたい。
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genkidesuka2022 · 9 months
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コーヒーは発酵食品って知ってました?
香ばしい香りと苦味のバランスが絶妙のコーヒー。
多くの健康効果も高いと言われ、毎日のようにコーヒーを楽しまれている方も多いと思います。
そんなコーヒーは発酵食品ってご存知でしたか?
そうコーヒーは、納豆やキムチと同じ発酵食品なんです。
クセのある味わいのコーヒーは発酵というプロセスを踏むことで味の行方が左右されます。
嗜好品として楽しんでいる方も多いコーヒーの発酵方法からコーヒー酵母、乳酸発酵、麹菌、酸素が関わる複雑な情報をまとめました。目次
そもそもコーヒーってなに?
コーヒーは発酵食品
コーヒー豆は製造過程で発酵
コーヒーの発酵方法
コーヒーの発酵方法1・水洗式(ウォッシュド)
コーヒーの発酵方法2・非水洗式(アンウォッシュド)
コーヒーの発酵で多くの味が楽しめる
アナエロビックファーメンテーション
ハニープロセス
マロラクティック(乳酸発酵)
麹菌
酵母の力で発行
最後に
関連
そもそもコーヒーってなに?
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コーヒー豆はアカネ科の植物であるコーヒーの木から収穫されます。
コーヒーの果肉は完熟した状態になるとサクランボのように鮮やかな赤色になるため、コーヒー豆は別名コーヒーチェリーとも呼ばれています。
そんなコーヒーは気軽に飲めるものと答える方、こだわりを持っていると答える方、様々な楽しみ方があります。
コーヒーは突き詰めていくと非常に奥が深い飲み物です。
市販されているコーヒーは粉末のものからドリップして飲むものなど、個々の嗜好によって好みの飲み方ができます。
しかし、そんな世界中で愛飲されるコーヒーは独特の香りやクセのある味わいから、発酵食品のカテゴリーに入るのではないかと疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。
コーヒーは発酵食品
コーヒーは発酵食品か、という点ですが、結論から言えばコーヒーは発酵食品です。
コーヒー豆が収穫されてから私達が普段目にする状態になるまでに様々な工程を踏んでいきます。
そもそもコーヒーはコーヒー豆を収穫した後に、果肉を処理加工して種の部分が見慣れたコーヒーの元になります。
コーヒー豆の生産処理は味わいが変化するだけではなく、輸送や保存の関係で腐敗を防ぐために行われます。こういった生産処理のことを「プロセス」と呼び、様々なプロセス方法を実施されることで口に入れた際の香りや味わいが変わります。
ちなみに、このコーヒー豆の生産処理は他にも「コーヒー加工方法」や「精製」とも呼ばれます。
コーヒー豆は製造過程で発酵
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コーヒーの実が馴染んだ豆の姿にな���までには、木の育成から収穫、生産処理、脱殻、焙煎という順番を経て消費者の元へ届きます。
コーヒーが発酵する段階は生産処理を行う際に進んでいきます。
コーヒー豆が発酵食品に含まれるということは、ヨーグルトなどの乳酸菌を体内に取り込めるのかという疑問が出てきますが、焙煎が終わっているコーヒーは既に死滅した乳酸菌のみが含まれています。
生きたまま体内へ送ることはできませんが、死滅した状態でも腸内で善玉菌のエサになってくれるため、コーヒーは適度に飲むと体に良いと言われています。
しかし、コーヒーの発酵に関しては効用を期待するというよりも、発酵することによって発生する香りや味わいを楽しむという方向性に期待されています。
コーヒーの発酵方法
手間をかけずに飲めれば良いという方や、コーヒー豆によって抽出する道具を変えるほどこだわりを持っている方など、コーヒーにかける熱量は違うものの、万人に愛されるコーヒーはどのような発酵方法を経ているのでしょうか。
大きく分けて2種類の果実を取り除くための方法があります。
コーヒーの発酵方法1・水洗式(ウォッシュド)
水洗式(ウォッシュド)と呼ばれるプロセスは、その名の通り水につけて発酵させることで果実を除去する方法です。
コーヒー豆の果皮と果肉を機械で除去してから水へ浸すと、ほぼ完璧に果肉を除去することができます。
水を使ったこの方法は、水の中に含まれる微生物の増殖が進むことで、その働きによりコーヒー豆を分解(発酵)していきます。
ただし、水洗式で発酵したコーヒー豆は腐敗に近い状態の欠陥豆になってしまうことが多く、その場合は取り除かれてしまいます。
水洗式で作られたコーヒーは香りや質の良い酸味を味わえ、この方法を定番として取り入れているのはブラジルやエチオピア、イエメン以外の地域です。
コーヒーの発酵方法2・非水洗式(アンウォッシュド)
非水洗式(アンウォッシュド)と呼ばれるプロセスは、乾燥をメインに果肉を除去する方法です。
果皮と果肉を天日干しにして乾燥させた後に、機械的に除去が行われます。
乾燥させる間は虫の被害や不純物が混ざる可能性も高くなりますが、しっかりと熟した味わいと香り、コクが楽しめます。
非水洗式では果肉に残った微生物が酸素と触れて増え、果肉や種の部分の発酵が進んでいきます。
ブラジル、エチオピア、イエメンなどの地域がアンウォッシュド式を主流としています。
ちなみに非水洗式の方が乳酸菌発酵が進みやすいのだそうです。
コーヒーの発酵で多くの味が楽しめる
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コーヒーは非常に歴史の古い飲み物です。上記で触れた製造方法や発酵などを用いて現代まで飲み続けられていますが、嗜好の広がりからコーヒーは多用性を求められる時代になりました。
コーヒーがもともと持っているおいしさを異なるおいしさにシフトさせられないかと、今現在でも試行錯誤が続けられています。
次は上記でご紹介した以外の方法で作られるプロセスについて触れていきます。
アナエロビックファーメンテーション
アナエロビックファーメンテーションは日本語にすると「嫌気性発酵」です。もともとワインの製造工程で見られるこの方法を、コーヒーのプロセスにすることで特別な発酵が起こります。
発酵酵母の中には酸素を嫌うものがおり、酸素がない環境で活発になる酵母やバクテリアが存在します。
それらを活発にさせるために、タンクや容器などにコーヒーチェリーを入れて酸素をなくした環境で発酵させる方法がアナエロビックファーメンテーションです。
一般的な発酵と比べ、フルーティーな香りや独特の甘みが発生します。
ハニープロセス
ハニープロセスは前述した水洗式と非水洗式の中間である「半水洗式(セミウォッシュド)」とほぼ工程が同じです。
ハニープロセスは中米産のものに対して言い、果皮、果肉を除去してから乾燥させます。
コーヒー豆には殻の部分に「粘液質(ミューシレージ)」と呼ばれるネバネバとしたものが付いていますが、ハニープロセスはこの粘液質を付着させたまま乾燥が行われます。
その結果、ハニープロセス独自の甘い香りと味わいが引き立ち、クセのない魅力的なコーヒーが出来上がります。
また、ハニープロセスは粘液質をどの程度残すのかによって呼び方が変わり、90%除去されているものをホワイトハニー、75~80%除去されているものをゴールデンハニー、50%除去されているものをイエローハニー、20~25%除去されているものをレッドハニー、全く除去していないものをブラックハニーとしています。
マロラクティック(乳酸発酵)
マロラクティックという方法は上記でも少し触れましたが、もとはワインを製造する際に用いられる発酵プロセスです。
この方法は添加された乳酸菌の働きでリンゴ酸が乳酸に変化し、酸味を軽減させて広がる風味を引き出します。
コーヒーの果実に含まれるリンゴ酸が乳酸発酵することにより、甘さやなめらかさがアップしたコーヒー豆に仕上がります。
麹菌
コーヒーを発酵させる過程で麹菌を使ったものに注目が集まっています。
その元となっているのは、幻のコーヒーと謳われるほど希少価値の高い「コピ・ルアック」という高級コーヒーです。
東南アジアに生息するジャコウネコがコーヒー豆を食べて排泄した豆を使用します。
ジャコウネコの消化器官で発酵されたこのコーヒー豆は、麹菌を使うことで再現できるのではないかということで、麹菌発酵したコーヒーを開発しました。
麹菌発酵されたコーヒーはクリーミーで軽い口当たりと甘さが付加され、丸くカドが取れた味わいになるようです。
酵母の力で発行
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そもそも酵母とは、含まれる糖をアルコールと炭酸ガスに変える善玉菌(微生物とも言う)のことです。
パン作りに詳しい方はコーヒー酵母や〇〇酵母という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、発酵や酵母などは良く似ているため違いが分からないという方も多いことでしょう。
酵母は簡潔に言うと目的のものをアルコール発酵させる親のようなものです。
酵母があるから発酵するのですね。
コーヒーにも同じことが言え、コーヒー豆から起こした酵母をコーヒー酵母と言います。
ナチュラル思考の方が多い現代では、コーヒー酵母のような自家製酵母を1から作り、パンやケーキ作りに活用しています。
コーヒー酵母を混ぜて作ったパンはふっくらと膨らみ、良い香りを放ちます。
最後に
コーヒーは発酵食品か、についてご紹介させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。
コーヒーはただでさえ種類が多いため、情報の多さに困惑させられる食品です。
歴史を刻んできたコーヒーは普段目にする段階では既に発酵し終えていて、それが普段楽しんでいる香りや味わいに直接アプローチされます。
一杯のコーヒーに手間暇がかかっていることを考えると、丁寧にゆったりとしたコーヒータイムを楽しみたいものですね。
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kentarouchikoshi · 10 months
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 この手法を活用し,日本の街並みをミュンヘンやパリのように美しく調和の取れたものにしていくことは不可能でしょうか。
 僕は以前にヨーロッパを旅行したことがあります。ドイツ・スイス・フランスの名所旧跡を回ったり美食を堪能したり,実に楽しい旅行だったことを今もよく覚えています。余談ながら申し上げると,特に驚いたのがドイツの食事の美味しさです。自他ともに認める「美食の国」であるフランスの食べ物が美味しいのには満足しつつも驚きはありませんでしたが,ドイツの食事は「ソーセージとじゃが芋,パン」といった素朴なものが本当に素晴らしい味で「地味ながら大変な美味ではないか」と感じさせられたものでした。両者を和食に喩えれば,フランスのお料理は華やかな会席料理,ドイツのお料理はご飯・味噌汁・魚に焼き海苔を添えた旅館の朝食といったところでしょうか。本当に美味しいもののお好きな方であれば,前者のみならず後者もまた同じように高く評価することでしょう。
 さて,食べ物の話は別にして僕が「これは素晴らしい」と感じたのが,それぞれの都市景観です。特に「完璧だ」と感じさせられたのがドイツ・ミュンヘンの街並みでした。ミュンヘンというのはかつてバイエルン王国の都として栄えたところでありニンフェンブルク宮殿などが今も残されていますが,その周囲の街並みもまた宮殿と調和するような形状・色合い・装飾で統一されてまるで街自体が一つの美術品のように感じられました。「お城の周りだからということで,特に配慮が行われているのかな」と思いきや,ミュンヘン市内の何処を回っても「複数の建築物が同じような形状・色合い・装飾で統一されている」ということについては全く同じでした。これには本当に心の底からの驚きを感じさせられたものです。  その後に向かったフランスはというと,パリの中には「これは日本とあまり変わらないな」と感じさせられた地域もありました。具体的にはジュネーヴからのTGV(新幹線)で降り立ったパリ・リヨン駅前など(註:パリは東京と同様に各地方都市から向かってくる鉄道のターミナルをいくつも抱えていて,それぞれが「○○方面駅」という意味で「パリ・○○駅」と称されます。これを東京に擬えれば新宿駅を「東京・甲府駅」,池袋駅を「東京・秩父駅」,上野駅を「東京・水戸駅」、浅草駅を「東京・日光駅」と呼ぶような感じでしょうか)。しかし市内観光に繰り出すと,やはりパリ市内にもミュンヘンに負けないような街並みは存在するのでした。「ここはアンリ4世時代に遡る街並みだ」という地区などは全ての建物が同じ形状・色合い・装飾で統一されているばかりか各建築物のスカイラインも統一されていて,その美しさに思わず息を吞み「あぁ,ヨーロッパの文化はかくも素晴らしいのか」という思いが胸に刻まれたのは,今も僕の記憶に新しいところです。
 翻って日本では,そういった街並みはあまり存在しません。日本にもミュンヘンやパリに負けないような歴史的建造物,或いは近年に建てられ優れた外観を持つ建築物は勿論存在しますが,両市に匹敵するような同一の意匠で統一的な街並みとなると,これは少数の事例に留まるようですね。ドイツやフランスでは厳しい建築規制で街並みの統一が保たれているのに対し,これまでの日本はそうではなかったからです。重要伝統的建造物群保存地区や自治体の景観条例で指定された地区,或いは景観法に基づく景観地区や街並み誘導型地区計画を活用して設けられた地区などはありますが,どちらかというと日本では近年まで都市景観の調和・統一という意識自体が弱かったということが指摘されています。なお,このように申し上げると「無秩序不調和こそが日本の街並みの特徴であり面白さだ」といった意見や「何を美しいと感じるかは個人の感覚の問題だ」といった反論を見掛けることもありますね。たしかに無秩序や不調和にも面白さがあり,世界全部を調和で染め上げるのは逆に面白さや多様性を損なうことにもなるでしょう。しかし現状の日本には既に不調和は幾らでも存在する一方で,調和した街並みがあまりに少ないのが現状です。調和が求められる場面でも無秩序で不調和なことを「これで良いのだ」と居直るのは健全な議論とはいえません。また「何を美しいと感じるかは個人の感覚の問題だ」というのは一面の真理ですが,それは「何を美しいと感じるかは人によって全くのテンデンバラバラである」ということを意味しません。実際に「個人」を大勢集めて「美しい」と感じるものを選ばせると概ね一定の範囲に収斂してしまうというのは,我々も経験的に知る厳然たる事実です。たとえば日本庭園に極彩色のオブジェが置かれるなどということは特殊なイベントを除けば通常はありませんね。そこに破調の美を見出す者は居ても調和や統一を感じる者は滅多に存在せず,かつ破調の美は調和・統一の美に比べて圧倒的に不人気だからです。そもそも「何を美しいと感じるかは個人の感覚の問題だ」などと口にする者も,どんな服装も自由なプライベートな場で「ステテコにネクタイ」「背広にサンダル」「水着に革靴」などという珍しい格好をして「これこそが美しい装いである」と主張するかといえば,そのような事例はほぼ存在しません。たしかに「何を美しいと感じるかは個人の感覚の問題」ではあるのですが,実際に何を美しいと感じるかについての「感覚」は各人殆ど同じであるということの動かぬ証拠でしょう。
 とはいえ「ミュンヘンやパリのように調和のある街並みを日本にも」と求めても,それはなかなか容易ではありません。既に存在する建築物は各々異なった形状・色合い・装飾を持っており,耐用年数が来ても居ない以上それを建て直したり大規模修繕したりすることは実に難しい。仮に「街並みに調和と統一を」という意見に賛同する人であっても「貴方の持つ不動産を取り壊して,新しく建て直しなさい」などと要求されれば,たとえある程度の経済的支援(補助金や無利子・低利子での融資など)を用意したとしても「それには応じられない」と拒絶する場合が殆どでしょう。既に調和のある街並みが整っている場合にそれを維持することは可能でも「半ば調和が壊れかけた街並み」に再び調和を齎すことは非常に難しく,かつ「これから調和させていく」ことを実現させるのは遠い将来の話ではないか。僕はそのように思っていました。しかしそんな僕の思い込みを大きく揺さぶってくれたのが,こちらの記事で紹介されている長崎銀行本店です。一見すれば明らかなように「石造りなのかな」と感じさせる,重厚な威容を誇る実に美しい建築物ですね。しかしこちらの建築は実は石造りではなく,通常の建築物の周囲を衝立のような外壁で包んだいわゆる「看板建築」です。看板建築というのは「建物の前面に衝立を置いたような看板を兼ねた外壁を持ち、その壁面があたかもキャンバスであるかのように自由な造形がなされている」(Wikipedia「看板建築」より)建物のことで,建物の見栄えを良くすることと防火とを兼ねて1923(大正12)年の関東大震災後に被災地のみならず各地で盛んに採用されました。こちらの長崎銀行本店も1924(大正13)年の建築で,まさに「看板建築」の典型ということが出来るでしょう。  この「看板建築」の手法を使えば,既存の建築物を建て直したり大規模修繕したりすること無く,調和のある街並みを迅速かつ安価に作ることが可能になるのではないか。既に存在する建築物の正面,角の建物でも2つの面に衝立を立てるだけなのですから。その衝立の形状・色合い・装飾を同じようなものに統一することは決して難しくありません。それどころか現在ではバラバラの建物のスカイラインもかなりの程度まで統一することが叶います。衝立の高さを揃えれば良いだけなのですから。それは街並みの調和に資するのみならず,その衝立の材質に工夫を凝らすことで看板建築のもう一つの目的である防火にも有益ですから,そうした衝立の整備に行政が補助金を与えることは決して無理な話ではないでしょう。この点「そんな芝居の書き割りのような方法で『調和』を実現するというのはいかにも安直で安っぽいのではないか」という批判も予想されるし,その詩的にはたしかに一理あるといわざるを得ません。しかし安直で安っぽいと何が悪いのでしょうか。安物であっても全体の調和を図ることは充分に可能です。色調や形状に配慮すれば日常使いの安い食器であっても調和を図ることは充分に可能だし,それを心掛けると否とでは全体の美しさが全く違います。またこれは「本物の歴史的建造物が存在し,街並みをそれと調和させる」といった場合でも同じです。お金持ちではない僕も以前に人から頂いた高級なネクタイを持っていますが,それを身につけたい時には僕はトレーニングウェアではなく背広を着ます。トレーニングウェアはネクタイとは全く調和しませんが,背広であればたとえ安物であってもネクタイとかなりの程度調和してくれるからです。「安直で安っぽいもの同士でも形状・色合い・装飾などの統一を図れば調和するし,高級品と安物であっても雰囲気を揃えることでかなりの調和が図れる」というのは間違いの無い真実だといえるでしょう。
 日本の街並みもまたミュンヘンやパリのように美しく調和の取れたものにしていきたいし,それを迅速かつ安価に実現するための極めて優れた手法として「看板建築」の手法を大々的に活用していくべきであろう。僕はそのように考えますが,皆様はそれについていかがお思いでしょうか。ご意見をお聴かせ頂けますと幸いです。
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sisisi4kumisisisi · 1 year
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3階は殺された
12歳の誕生日を迎えて3日目 15年前の10月6日のことだった 僕は親に大声で起こされて まだ寝ていたかったけど 夢の中にいたかったのだけれど 半ば強制的に現実へと引きずりだされた これが僕の人生最大の後悔だった あの時 僕は一生目が覚めなければよかった ずっと夢の中で楽しいことだけを 奇妙なことだけを 冒険しておけばよかったのだ でも僕は目を覚ましてしまった リビングへと歩みを進めてしまった 菓子パンの封を開ける この後 僕はテレビをつけてしまった これが人生二番目の後悔だった 菓子パンを頬張る いつものNEWSが聞こえている あ また建物が燃えている また放火か何かだろう 物騒だな そう思って菓子パンを口に運ぶ でも何か違和感がそこにあった 寝ぼけてぼんやりした目にもそれはしっかりと映った この燃えている 炎が上がっている 建物に見えるそれは 僕が毎週通っていたデパートだった 僕はそれに気づくと 菓子パンを落としてしまった その場から動けなくなってしまった 学校を一か月休んだ 晩御飯はのどを通らなかった 僕のすべてが詰まっていたこのデパートは ある16歳の高校生によって 燃やし尽くされてしまったのだった 僕はこのデパートの3階がたまらなく好きだった 大きな本屋があって その隣にはゲームコーナーがあった 僕はいつも本屋を一通り見た後 なけなしの100円を持ってゲーセンに向かった 本屋にはよく行っていたけれど ここの本屋は特に思い入れが強かった 大好きな漫画本がたくさん置いてあったのだ さらにその一つ一つには他の本屋には必ず巻かれている立ち読み防止ラップが巻かれておらず 僕はお金を払うことなく漫画を読むことができた 店員の視線はずっと感じていたが 注意をされることはなかった 僕は毎週20冊のペースで読んでいった 一冊読むのに5分も時間はかけなかった お金は発生していなかったので 量のほうが大切だった 一時間くらい本を読んでいても母は一向に迎えに来る気配がない 母の買い物はいつも長かった 何せここはこの町で一番広いデパートで  母の職場の同僚たちにいつもかち合ってしまうからだ そうすると上司の悪口大会が自動的に開始される 僕はいつもそれが開始されたのを確認すると三階までの階段を逃げるようにして駆け上がっていった エレベーターは使う気になれなかった 閉じ込められるような気がしたのだ さすがに20冊も読むと漫画本には飽きてしまう そうすると僕はいつもゲームコーナーに足を運んだ 僕が遊んだのはいつもメダルゲーム 機械に100円を投入すると一気にメダルが放出される 僕はそれをカップに入れ 母が迎えに来るまでどうにか時間をつぶそうとしていた 100円でメダルは12枚しか買うことができない 僕はその少ないメダルの中で できるだけ長く遊ぶ方法を模索していた ゲームコーナーはこの大きいデパートの中でも一際人気がなかった 僕以外の子供たちはみんな 家で銃で人を撃ち殺す対戦ゲームに熱中しているからだ 僕はゲーム機も漫画も買ってもらえないから あのように家にこもるでもなく 母の買い物に三階目的で付き添っていた この三階で過ごした思い出が僕のすべてだった  当時 思い出と言える思い出はこの三階での出来事しかなかった  僕の宝物はこの三階他ならなかった 僕の居場所はこの三階でしかなかった でも  それは一瞬にして同じ町の16歳に殺されてしまった 一か月もの間寝込んだしご飯を食べることもできなかったけど 少しだけ心は回復した それから僕は 彼の名前と住所を 近所のおじさんおばさんがしている陰口を盗み聞きして すぐに手に入れた 彼の家は元来普通の何の変哲もない一軒家だった デパートに行くときいつも通りかかっていた家だった でもあの日以降その家はどんどんと姿を変えていった 壁には落書きがされて 死ねとか犯罪者とか さまざまな侮辱の言葉が描かれていた 窓ガラスという窓ガラスはほぼほぼ割れていた 彼に恨みを持った何者かが石を窓に向かって投げつけたんだろう 僕はそれを見ていい気味だと思った  だが同時に 僕の心はなんて汚くなってしまったんだろうと思った 普通 人の家がこんなにめちゃくちゃにされていたら なんとなくそれに嫌悪感を抱くだろう でも 彼は僕の宝物を殺した極悪人にしか僕には映っていなかったので 窓ガラスがどんどん割られていくたび 壁に書かれた侮辱の言葉がどんどん増えていくたびに 僕はどんどんそれに快感を覚えるようになった もちろん僕は彼の家に直接危害を加えることはなかったが 彼の家がこれからもどんどん荒らされていくことを考えると興奮は止まらなかった 妄想の中で僕は彼を何回も殺した 彼に殺されたあの宝物と同じように火を放つ妄想を 彼を刺す妄想を 彼に死なないほどの最大限の痛みを加えながらじわじわとやっていく妄想を 彼の命を一瞬で奪っていく妄想を 家がどんどん荒らされていく現実と彼の殺害妄想を繰り返すたび 僕の中にあった罪悪感というものはすっかり消え失せていた 僕は正義のヒーローなのだと 空想の中で信じ込んでいた 僕は悪い奴らを殺して思い知らせる正義のヒーローなのだと 僕が一番正しくて正義なやつなのだと 僕はあの三階を失ってしまったけれど 彼が 彼の家族がどんどんと追い込まれている現状を見るたびそして想像するたび 回復しきっていなかった心の傷が癒されていく気分になった もう三階のことなんて ほぼ忘れてしまっていた 彼らが苦しむのを眺めるのが 何より僕を支える最高級の娯楽だった それから半年がたった時 僕は引っ越すことになった 父が転勤になったのだ 娯楽を失った僕は またも絶望に打ちひしがれた ここには何もない 何も生まれるものがない この町にはデパートはなく 代わりにショッピングモールがあった 僕はそれが大嫌いだった  本屋は謎にキラキラしているし ゲーセンはあったけど 気持ち悪い男女が常にウロウロしていた そこに行くたび僕はフラストレーションがたまった そしてあのデパートがまた恋しくなり また彼を妄想で殺すようになった でも今回は違った いくら彼を殺しても あのデパート三階を殺された怒りは止められなかった 何故だ何故だ何故だと問うても返事は帰ってくることはない 壁を何回も殴って大きな穴をあけた 忘れるために親が飲んでいるめまいの薬を盗んで大量にアルコールで飲んだ でも 体調だけが悪くなるばかりで 怒りは膨張し続けて もはや破裂しそうなほどになった この怒りを完全に抹消するには 僕は あのショッピングモールを殺してやる以外に方法が見つからなかった 僕はなんて狂ってしまったんだろう そう思う余裕すらなかったのかもしれない そこには理性はなかった ただただ感情だけが働いていた 僕は灯油とマッチを持って自転車であの忌まわしきショッピングモールに向かった 道中 何度も車にぶつかりそうになった気がする 常にクラクションが鳴っていた気もした 眼鏡をかけた太った奴に 男か女かわからない軽自動車に乗ったやつに 大声で怒鳴られた気もした でも気にすることはなかった 僕は狂っていた 感情しかそこにはなかったのだった 目的地に着いた瞬間 僕は建物めがけて火のついたマッチを放った そして少し離れて 灯油の入った袋を力の限り投げる 見事灯油に引火した火種は一気に膨れ上がり 建物全体を包み込んでいった この事件で死者は出なかったらしい 負傷者も数名しか出なかったらしい しかも軽いけがだった 警備員と店員があり得ないほど優秀だったと 少年院出所後に見たまとめサイトで知った 僕はそれを知って心の底からうれしくなった 僕は人を殺したいわけではなかったからだ ただただ あのショッピングモール それだけを殺すことだけができたことがうれしかった でも 家は荒らされた  あの彼のように 壁も 窓ガラスも  すべてが二度と元に戻らなかった 僕はあの彼のように誰かに妄想の中で殺されたんだろうなと何度も勘づいた でもそれでよかった それが小さな罪滅ぼしになるのならば 僕の人生最大の後悔 あの時目が覚めることがなければ今頃 夢の中で楽しくやれてたんだろうな 狂うことなんて なかったんだろうな
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thyele · 1 year
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2023年1月31日
「シーナ&ロケッツ」鮎川誠さん、膵臓がんのため死去 ロック魂貫き74歳まで現役…俳優としても存在感― スポニチ Sponichi Annex 芸能 https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2023/01/30/kiji/20230130s00041000438000c.html 首振りDolls naoさんとの対談はびっくりした。ご冥福をお祈りします。
メールでバレまくる「デキない人」の3大欠点 | ムーギー・キムの「最強の働き方」 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース https://toyokeizai.net/articles/-/129929?page=2 個人的には基本即返信じゃ無くても良いけど限度があるよね。
雑司ヶ谷のカレー店『カリーザハードコア』が話題沸騰!間借りカレー店から独立し早くもブレイク中 - dressing(ドレッシング) https://www.gnavi.co.jp/dressing/amp/article/22964/
【速報】岸田総理、「子ども手当」採決時の自民党議員「愚か者めが」ヤジめぐり「反省すべきは反省」(TBS NEWS DIG Powered by JNN) - Yahoo!ニュース https://news.yahoo.co.jp/articles/a04a14540a69729ff4f2975537a706db6a0713dc だけならなんとかって昔あったね
長野の雪崩、亡くなったのはスキー元世界王者 直前に日本の雪質絶賛:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASR10365BR10UHBI003.html 自然は怖いね。Requiescat in pace
見取り図・盛山『ゴチ』新メンバーで『M-1』級の反響 ノブから愛あるエールも「思ったこと言ったらええで」 | ORICON NEWS https://www.oricon.co.jp/news/2265957/full/
菊池風磨が通常版表紙の「anan」裏表紙は洗濯大名 - 音楽ナタリー https://natalie.mu/music/news/510941
鬼滅の刃×浅草寺 特別企画「雷門~浅草寺 鬼滅の刃 キャラクター着ぐるみ お練り」実施決定! - 最新情報 | TVアニメ「鬼滅の刃」 無限列車編公式サイト https://kimetsu.com/anime/mugenresshahen_tv/news/?id=62413
1977年の消印、中身は「りぼん」賞金3000円 漫画家・萩岩睦美さんが再会した「15歳の大切な思い出」|まいどなニュース https://maidonanews.jp/article/14827352
ディズニーキャラがかわいい「ねこねこ食パン」に変身 ここだけのデコ用ステンシルシート&限定フレーバーを一足早く試してみた(1/2 ページ) - ねとらぼ https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2301/31/news053.html
電気料金が1年で倍に!驚愕の値上げに各地から悲鳴が続々、女性1000人に聞いた「私の節電方法」“自己防衛”するしかない悲しい現実 | 週刊女性PRIME https://www.jprime.jp/articles/-/26662
片寄涼太、結婚後初の公の場!「より一層頑張っていきたい」 https://news.tv-asahi.co.jp/news_geinou/articles/hot_20230131_070.html
エレコム(公式)さん「タップを安全にお使いいただくための注意事項も、ご一読を。」 https://twitter.com/elecom_pr/status/1619834598573359105
詩那(NOi'X-ノア-)/ヴィジュアル系演歌歌手TAKASHI(超大物)さん「【超大物から想像を絶��る大切なお知らせ†】 この度2月1日(水)から大手芸能プロダクションとマネージメント契約をする事になりヴィジュアル系演歌歌手TAKASHIの芸名が変わります† それに伴いオフィシャルTwitterがその芸名で新しく開設されます†その他InstagramやオフィシャルHPも新しくなります† https://t.co/Rjr2tjPeIx」https://twitter.com/shina1147/status/1619544260059209730
FreeAnswerさん「2月のスケジュールはこちら!!🔥 チケット取り置きDMお願いします!! https://t.co/0iTgYoUsND」https://twitter.com/FreeAnswer_/status/1619655387548102659
AKI_guitaristさん「こちら1週間後です‼️」https://twitter.com/official_KAUXS/status/1619635347385876481
Masaki Satoさん「高円寺HIGHにご来場の皆さん、お取り置き、お目当て関係なく先着順ですが、CDを無料でプレゼントしています。お気兼ねなくplant cell物販スペースでメンバーまでお声をおかけください。(開演中はいない場合があります🙇‍♂️) #totalfeedback https://t.co/C8W8lVIqIo」https://twitter.com/MasakiSato12/status/1619582345593651200
Lemon's Chair.2023/1/29 KOENJI HIGHさん「レモンズチケットご予約特典・未発表音源『shallow』。 2003年頃に演奏していた曲を長谷川正(BASS)さん参加で披露を考えておりましたが、新曲制作が後ろ倒しになり今回は見送ることに。 年内には実現できればと思っております。 https://t.co/sl8dzG0U9J」https://twitter.com/Lemons_Chair/status/1619288340649607168
eclipse.✩⃝ STRAY INDIVIDUALITY GROUPさん「代表が大好きなバンドっす!!!!! 皆に聴いて欲しいっす!!!! 皆さん拡散お願いしますー!!!!!! S 公式official(@official_xxxS) S YouTube : https://t.co/A54jS8IkGc S official store : https://t.co/RdBcMZLeOl #俺たちがSだ https://t.co/NwZ8frJXGS」https://twitter.com/eclipse01429/status/1619489294430896129
THE SHOTGUN GROOVEさん「先日のワンマンLIVEの配信アーカイブが 2/5の23:59までご覧頂けます!! 是非ご覧ください 配信チケット購入ははこちらから。 価格3000円 https://t.co/w5C3sgMIYi #THESHOTGUNGROOVE #TSG」https://twitter.com/shotgungroove/status/1618242402686496768
THE SHOTGUN GROOVEさん「ついに・・・ これは行くべし!!!」https://twitter.com/shotgungroove/status/1619107452955557888
詩那(NOi'X-ノア-)/ヴィジュアル系演歌歌手TAKASHI(超大物)さん「尚、このTwitterは2月1日(水)以降…NOi'Xやその他の超大物以外の活動や個人的なつぶやきをメインにしたTwitterになります† https://t.co/yHZUrw4vjG」https://twitter.com/shina1147/status/1619548353578299392
詩那(NOi'X-ノア-)/ヴィジュアル系演歌歌手TAKASHI(超大物)さん「そして2月1日(水)から毎日5分置きに某所巨大オーロラビジュンにて超大物の謎のCM動画が流れます† 詳細は随時オフィシャルよりお知らせ致します† 震えて待て××׆ https://t.co/lUyOQ8Vj3A」https://twitter.com/shina1147/status/1619546752725680130
詩那(NOi'X-ノア-)/ヴィジュアル系演歌歌手TAKASHI(超大物)さん「で、その切り替わりの詳細はこのTwitterで報じるので気になる方は今のうちにこのTwitterをフォローしておく事を激しくオススメします† https://t.co/VpUfdELZnH」https://twitter.com/shina1147/status/1619556134897188866
詩那(NOi'X-ノア-)/ヴィジュアル系演歌歌手TAKASHI(超大物)さん「そして、それに伴い超大物のYouTubeチャンネルとTikTokも開設されます†お楽しみに♪ 既に数本収録済み† https://t.co/PF3WvOoGBS」https://twitter.com/shina1147/status/1619551948310736896
詩那(NOi'X-ノア-)/ヴィジュアル系演歌歌手TAKASHI(超大物)さん「人生まだまだ捨てたモンじゃない† 夢がある話でしょ?マジで♪」https://twitter.com/shina1147/status/1619549734364155905
詩那(NOi'X-ノア-)/ヴィジュアル系演歌歌手TAKASHI(超大物)さん「ガチでリアルに俺に関わる大人達(仲間)の夢を乗せて紅白を目指します†」https://twitter.com/shina1147/status/1619550448058527744
詩那(NOi'X-ノア-)/ヴィジュアル系演歌歌手TAKASHI(超大物)さん「どんなに辛くても挫けても上手く行かなくても怠ける事なくコツコツと地道に頑張っていればおじさんにもチャンスがあるよ(笑)†その努力や熱意を観てくれてる人はどこかに必ずいるから…誰かしら手をさしのべてくれる† 詩那†」https://twitter.com/shina1147/status/1619558100540993537
DMXscc 🌏さん「『郷愁の響』 思い出の奥底に眠る音 優しく響き渡る 作曲:惑(@MSDV_infomation) 映像:YUKI(@YUKI8686kk) https://t.co/aIO6oIrfwc https://t.co/RZjMItG63b」https://twitter.com/DmXscc/status/1619907595371937792
惑@MSDVさん「YUKI×GLAD 『郷愁の響』-instrumental-(再掲) 優しく微睡んだ遠い日の記憶は 深く共鳴し合うように響き渡る https://t.co/S7evQhEBlJ 映像:YUKI(@YUKI8686kk) 作曲,映像編集:惑 https://t.co/4Ea20OtO9H」https://twitter.com/MSDV_infomation/status/1619636476685307909
齋藤でぃずぃさん「新年一発目はこのような曲を投下してみます♨ 「妖-AYAKASHI-」 10年前くらいに衝動のまま制作、数年前に再構築した曲です💡 この頃は疾走感のある曲を作るのが好きだったなと🎈 歌詞、フルは↓ https://t.co/KgetKHCfZQ 聴いて頂けたら幸いでございますm(_ _)m #オリジナル曲 #歌ってみた #DTMer https://t.co/DBKMYOHFLj」https://twitter.com/Dizzy_knot119/status/1612048668919754756
LADIESROOMさん「チケット先行決定! THE LADIESROOM SHOW !! Re-START TOUR FINAL ★3/10(金)新宿BLAZE 18:00/19:00 一般席イープラスプレオーダー https://t.co/w5O4f4wAqj VIPチケット:https://t.co/irIt9OlDc6 一般席チケット:https://t.co/uE9IpWwGm8 受付2/1(水)10:00〜2/10(金)23:59まで。 #LADIESROOM https://t.co/NtXmvGY5pi」https://twitter.com/LADIESROOM_Info/status/1619885821842321408
杉本善徳さん「残念ながらLINE BLOGサ終のお知らせです。 それまでやっていたブログを閉じてLINE BLOGに移行したのですが、出戻りすることになりそうですね〜。 移管作業とかどうなるんだろう。ギギギ… ペタしてね」https://twitter.com/ys1126/status/1619971774539759618
ブシロード公式さん「2023年1月27日(金)に政府より発表されたイベント収容人数の上限規制の撤廃に伴い、本日からブシロードグループ主催の興行・ライブ・イベントにて、不織布マスク着用での声出しを解禁し、収容人数・声量・声出し時間の制限を撤廃します。 詳細はブシロードHPをご覧ください。 https://t.co/yCPAEw5GQ5 https://t.co/hZwy5IkLfu」https://twitter.com/bushi_PR/status/1619925362057809920
杉本善徳さん「あぁ…」https://twitter.com/ys1126/status/1619977753146851328
シーナ&ロケッツさん「鮎川誠のファンの皆様、関係者の皆様へ 1月29日5時47分、鮎川誠が永眠いたしました。 膵臓がんでした。 これまで鮎川誠とシーナ&ロケッツを長年に渡って応援し、愛してくださり、本当に有難うございました。 鮎川誠の通夜並びに葬儀告別式は下記の通り執り行います。 https://t.co/Fqj6LPGphd https://t.co/8hj8ZjhY78」https://twitter.com/rokketduction/status/1619970152271052801
Lisaさん「おめでとうございます㊗️🎉 芸名変わってしまうのは寂しいですがこれからも益々のご活躍を! ( *´ノд`)コショ... 皆さんが貯めてるTポイントはどうなりますの?w😂」https://twitter.com/misslisaxxx/status/1619630649899651074
Ryuichi Kawamuraさん「札幌✨✨✨ https://t.co/5kMYGts2eO」https://twitter.com/RyuichiKawamur2/status/1619633535580790785
金髪豚野郎K助(偽殿下)さん「スタジオは時間ギリギリまでやるよりも5〜10分前に退出するのがマナーだしスマートでカッコいいと思ってます (°_°) #体型の話じゃないけん #なんかきさんよかろーもん」https://twitter.com/goldenpigdrumer/status/1619633822114656256
Lisaさん「@shina1147 今でも超大物な詩那さん♪ 事務所所属後はTポイントを倍にしてくださいw ←したたかw」https://twitter.com/misslisaxxx/status/1619639113921200128
Ryuichi Kawamuraさん「今夜もありがとう🫶🏻 ブログ更新しました! https://t.co/Cj657ueILj」https://twitter.com/RyuichiKawamur2/status/1619650356572745729
SOPHIA_OFFICIALさん「🔥締切迫る🔥 3月4日(土)… SOPHIA初のアコースティックライブ「MTV Unplugged」 3月5日(日)… 「MTV Unplugged」で披露する楽曲を中心に"Plugged Live"をコンセプトとして開催! 異なるアレンジでお届けする、両日とも見逃せない特別なライブ‼️ 🎟お申込みは今夜1/29(日)23:59まで! #SOPHIA」https://twitter.com/SOPHIA_OFFICIAL/status/1619662363233488901
金髪豚野郎K助(偽殿下)さん「当然、知り合いとかはLINEでも予約受付してますけどオフィシャルから申し込まれると恥ずかしくも嬉しいもんですね 推しを見習ってオフィシャルで予約してくれた人には特典つけようかな アレどうやってやるんだろう? (°_°)」https://twitter.com/goldenpigdrumer/status/1619666890863054848
niguさん「ネオサイバーライド…」https://twitter.com/nigu_chang/status/1619671014891474946
THE DESPERADOさん「最新曲「The Cry Against」Music Video 公開 https://t.co/lMohzF42FB ■Listen https://t.co/3gZX08LfwS #THEDESPERADO #THECRYAGAINST https://t.co/2bNqtJfian」https://twitter.com/_thedesperado/status/1619651820481122317
惑@MSDVさん「GLAD インスト音源集 『可惜夜』 2022/12/5より各種ストリーミングにて配信開始! ➡ https://t.co/5hTwtz2ceu You tube 作業用 ➡️ https://t.co/7DTcZw0KEp 惑の活動名義であるGLADでの「夜」をテーマにした初インストアルバム。 深く包み込むようなサウンドが魅力的な作品群となっている。 https://t.co/Tf5r1L72Ju」https://twitter.com/MSDV_infomation/status/1599427964139339776
ジョニーダイアモンド首振りDollsさん「ふたたびDJ/JDやらせてもらいます!!」https://twitter.com/Tracisixteen/status/1619671592593952769
NEIN_OFFICIALさん「【NEiN福岡公演!】 dps30th year 「攻撃」~博多ファミリーと爆弾投下~」 2023/2/4(sat) 博多DRUM LOGOS 開場未定/開演未定 前売3500円/当日4000円 ・THE DEAD P☆P STARS ・グリム ・NEiN ・BEAT LOOSE ・ASHURA ・タラれば ・VIOLET-NARCISSUS https://t.co/Bbc7k360UJ」https://twitter.com/nein_official/status/1605349062198185984
NEIN_OFFICIALさん「チケットはコチラから🎫 https://t.co/t5xTsnfKgQ」https://twitter.com/nein_official/status/1605349426989453313
Ivy darknessさん「高田馬場お疲れ様でした」https://twitter.com/IVY_DOPE_SHOW/status/1619675800873365506
中島卓偉STAFFさん「#中島卓偉 LIVE 2023 VIVA LA BIG SUNSHINE TOUR プレイガイド抽選先行は【本日夜23:59まで】! ※どなた様でも申し込み可能 ▼受付期間 〜1/29(日)23:59まで ▼受付URL e+ https://t.co/l5DpLGaMJF ぴあ https://t.co/OlW2oLRFmj ローチケ https://t.co/qPh4zEzFMS #卓偉 https://t.co/Bjl24Ucr7d」https://twitter.com/helter_takui_st/status/1619621372564574210
朋さん「週明け、久し振りのマンワンギグ! 1/30 池袋手刀 【出】MUNIMUNI 【時】19:14/19:44 【チ】¥3500/¥4500 https://t.co/Eol7n9rTTh ※メール予約なしです… どの曲をやるか、考えるだけでも楽しいですねー。 新規発売のカレンダーも併せてお楽しみに!」https://twitter.com/manicure_ojisan/status/1618810090072735744
のんさん「@shina1147 わわ、 この度はおめでとうございます😭 お見かけしたのはのど自慢、それからフォローさせて頂き、Twitterから密かに応援してました😭嬉しい😆 嬉しくて、コメントしちゃいました‼️頑張ってくださいね🤗」https://twitter.com/non_non_8888/status/1619673900467752962
hideki〜1/22感謝‼️次回8/13Soleil復活‼️さん「念願の超大物さんと逢えた‼️メチャ良い人で面白くて仲良くなれたし嬉しかったな😁 良き想い出の一環。 覇叉羅復活してからLIVEする毎に本当に得るものが大きい気がする。感謝しかない #おはるさん #超大物」https://twitter.com/Al0ne8888/status/1619670055498948614
ひなっち。さん「@Al0ne8888 ちゃんと、Tポーズしてますね ( @ ˙◊˙@ )」https://twitter.com/HINA_521011/status/1619670352099172353
Daisukeさん「世界がTAKASHIに染まるぜ… 詩那さんおめでとうございます(^ω^)🎉」https://twitter.com/daisukeee108/status/1619664455922782208
むつみ@急低浮上ぎみさん「@shina1147 詩那さん👏おめでとうございます ますます飛躍して下さい!」https://twitter.com/mutsumi1615/status/1619659411693383680
maomaguさん「おめでとうございます㊗️ 天国のお父様も喜んでらっしゃいますね☺️」https://twitter.com/maomagu8686/status/1619657011729408001
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herbiemikeadamski · 2 years
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. (^o^)/おはよー(^▽^)ゴザイマース(^_-)-☆. . . 5月8日(日) #大安(辛酉) 旧暦 4/8 月齢 7.3 旧暦 3/27 月齢 26.0 年始から128日目(閏年では129日目)にあたり、年末まではあと237日です。 . . 朝は希望に起き⤴️昼は努力に生き💪 夜を感謝に眠ろう😪💤夜が来ない 朝はありませんし、朝が来ない夜 はない💦睡眠は明日を迎える為の ☀️未来へのスタートです🏃‍♂💦 でお馴染みのRascalでございます😅. . ハイ!5月の2週目で第20週目に突入🚀 今朝もお疲れで6時前に例の儀式を するのにやっと目が覚め寝ぼけマナコ でしたよ⤵️おかげでってか今朝は 混んでました。。。_| ̄|○まさかの 酷い結果でガックシです (T.T) ってか 疲れてる場合じゃありませんね😅💦 そっか今日は「母の日」ですか🤱 . 今日一日どなた様も💁‍お体ご自愛 なさって❤️お過ごし下さいませ🙋‍ モウ!頑張るしか✋はない! ガンバリマショウ\(^O^)/ ワーイ! ✨本日もご安全に参りましょう✌️ . . ■今日は何の日■. #大洋丸撃沈. 第二次世界大戦中の1942(昭和17)年5月8日(金)午後8時40分頃、東シナ海沖で日本郵船の客船「大洋丸」が米潜水艦の雷撃により沈没した。  1942(昭和17)5月5日(火)、民間人を含む1360名、物資2300tを乗せ広島宇品港を出港した。  他4隻と特設砲艦1隻の船団を組み、9ノットでシンガポールに向けて航行中に長崎県の男女群島に近い北緯30度45分 東経127度40分の東シナ海であった。  アメリカの潜水艦グレナディアー(SS-210)等による雷撃で浸水し、カーバイト150tから引火し炎上、同じく積荷弾薬へ誘爆し、被雷から約55分後に沈没した。  この沈没で南方作戦占領地のインフラ整備に召集された鐘淵紡績、小野田セメント、三菱商事、住友商事、三井物産などの営業マンや、台湾烏山頭ダムの  八田與一をはじめとした技術者ら乗客、軍属、船員他817名が殉難した。  2018(平成30)年9月5日(水)にラ・プロンジェ深海工学会が付近の海底を調査し海底に眠る「大洋丸」の船体を発見、水中ビデオの映像や詳細な位置を公表した。 . #大安(ダイアン). 「大安日(にち)」の略。 陰陽(おんよう)道で、旅行・結婚など万事によい日。 一切合切(イッサイガッサイ)が良いとされる日。「大いに安し」の意味。 六曜の中で最も吉の日とされる。 何事においても吉、成功しないことはない日とされる。 六曜は、暦注の一つで、先勝・友引・先負・仏滅・大安・赤口の6種の曜がある。 . #大明日(ダイミョウニチ). 民間暦でいう吉日の一つ。  通例、甲辰・甲申・乙未・乙丑・丙辰・丙午・丁卯・丁未・戊辰・己卯・己酉・庚戌・辛未・辛酉・辛亥・壬午・壬申・癸巳・癸酉の一九日とされるが、異説もある。  この日は、建築・旅行・婚姻・移転などすべてのことに大吉であって、他の凶日と重なっても忌む必要がないともいう。 . #神吉日(カミヨシニチ). 「かみよしび」ともいい、神社への参拝や、祭礼、先祖を祀るなどの祭事にいいとされています。 この日は神社への参拝や、お墓まいりに行くといい日です。 . #母の日.  母の日は、日頃の母の苦労をねぎらい、母への感謝を表す日。  毎年5月の第2日曜日に祝い、日本もそれに倣っているが、その起源は世界中で様々であり日付も異なる。  母の日には、カーネーションなどを贈るのが一般的である。  母親が健在の場合は赤いカーネーションを贈り、母親が鬼籍に入っている場合は白いカーネーションを贈ることが一般的である。 . #高級食パン文化月間(4月8日~5月9日) . #声の日. . #コカ・コーラの日(#Coca-Cola day). . #ゴーヤーの日. . #世界赤十字デー. . #松の日. . #袋物の日. . #ごはんパンの日. . #スートブロワ記念日. . #童画の日. . #紙飛行機の日. . #小鉢の日. . #歯ブラシ交換デー. . #信州地酒で乾杯の日(毎月8日). . #生パスタの日(毎月7日、8日). . #珊瑚海海戦. . #ヨーロッパ戦勝記念日・VE (Victory in Europe) デー. . #第二次世界大戦中に命を失った全ての人に追悼を捧げる日. . #韓国父母の日. . #八田與一の慰霊祭(台湾). . . ■今日のつぶやき■. #長い目で見る(ナガイメデミル) 【解説】 長期的な視点、気長な心構え、などの意味の表現。 現状だけで判断を下さず、気長に将来を見守るという意味。 . . 1959(昭和34)年5月8日(金) 榊󠄀原 郁恵 (さかきばら・いくえ/本名:渡辺 郁恵〈わたなべ いくえ〉) 【タレント、女優、歌手、元アイドル】 〔神奈川県川崎市〕 . . (牧野記念庭園) https://www.instagram.com/p/CdRqbVXPLTMVoDsiFRhFz5pNOaejwdLVpSDHdo0/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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gunosy-news · 3 years
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シャレにならない出来事も…「寝ぼけてやらかしてしまった」失敗談に驚愕
集計期間:2020年12月6日~12月8日 回答数:17133
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人間、眠たいときは判断力が鈍ってしまうもの。そんな時に油断をして、ついやらかしてしまった…そんな経験はありませんか?
今回はそんな「寝ぼけていたときにやってしまった失敗」について調査を行いました。
寝ぼけていたときにやってしまった失敗はありますか?
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回答者17133名のうち、寝ぼけていたときに失敗をしたことが「ある」という人は全体の約44.5%、反対に「ない」という人は約55.5%という結果でした。
ここからは、具体的にどのような失敗をしてしまったのか、回答者の皆さんから寄せられた意見を見ていきましょう。
寝ぼけていて、つい…やらかしエピソード集
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<直前に見ていた夢のせいで…>
・兄弟喧嘩の夢を見ていて机を殴っていた
・夢の中で悪漢を力一杯叩いたら、隣に寝ているダンナをぶっ叩いてしまった笑
・ケンカの夢を見てて妻を羽交い締めにして殴ったことがある
・ケンタのチキンを食べる夢を見て添い寝してた子供の足をかじった 
・子供のころ、夢の中で自分の右手の握り拳が上に上がって、ストンと下に落ちた。そしたら横に寝てる母が「アイタっ!」って叫んでるのが聞こえた。どうやら母の頭にゲンコツしたらしい。私は確かに母の声は聞こえたのだけれども、夢の中の出来事と思ってたので、そのまま朝までグッスリ眠っていた。
・夢の中で、 大草原を走っている夢を見ていたら 、一人暮らしの部屋から勝手に外に出ていって、 階段から落ちて怪我をした。
・夢で、友達が雪が降ってきて困ってたんで、夜中にその友達に電話して、明日はいっぱい雪が降るってよって電話した。
・サッカーをしている夢を観て、思い切りボールを蹴ったら実際には壁で、多分親指にヒビが入りました。
・母親から封筒に入った大金をどこにしまったか忘れて焦りまくっている夢を見て、必死に探している途中で目が覚めそのまま部屋中探し、挙句に深夜なのに母親を起こして聞いた所で我に帰った。
・ひたすら話し続けている夢を見ていて、その続きの支離滅裂な話を延々と話し続けた。周りの人に笑われてもまだ夢から覚めたことに気づかず、怒り気味にさらに演説を続けてしまった
・パワハラで仕事に行き詰まってた頃、遅刻する夢を見たので現実の区別がつかず遅刻だと思って、とりあえずカバン背負って服もシャツを締めながらエレベーターに乗って下に降りた寒さで一気に目が覚めたけどまだ夜明け前だったり、仕事に行かなきゃの思いが強くて夜中に起きて暗闇の中夢中で朝食用のパンを探してた。(実際にはパンなんて買い置きしていなかった)ほぼ毎日こんな感じでもしかしたら夢遊病だったのかも…
<寝言シリーズ>
・「泥棒ー」と声に出して叫んでしまった。
・寝言で「いまうどん食べてたのに!」って言ってしまった。
・昼寝から目覚めたらボーっとしてたので、家族全員に『おはよう、みんな起きるの早いね。』と言ったら『まだ夜なんだけど』と言われた事
<物損>
・夜中に目が覚めて、特に何かを見るつもりもないのに、なぜか眼鏡をかけてから二度寝したので、朝起きたらフレームがゆがんでいた。
・皿を割る。マクカップを割る。急須を割る。
・ノートPCの画面を踏んで割ってしまった
<洗面所あるある?>
・洗顔フォームで歯磨きした
・歯磨き粉とクレンジングオイル、間違えてしまった
・保湿クリームと日焼け止めを間違えた
・電動シェーバーに歯磨き粉をつけた。
<時間間隔の喪失>
・休みなのに学校に行ってしまった
・夕方なのに朝だと思って出かける準備をしてまった
・午前1時に出社した。
・旦那に朝5時にお魚買ってきてとお願いした
・仕事に追われ休日なのに身支度をしてしまい2度寝…起きたらスーツ姿で寝ていた。
・バイトに遅刻する!と思って外に出たら人通りが少なくて、不思議に思っていたら夕方の5時ではなく朝の5時だった。
・昼寝から起き、外が薄暗かったのに、朝だと勘違いして、遅刻した!!と慌てて支度をして駅に向かったら、日曜の夕方だったこと。 
・いつもの時間に起きて出勤したつもりが、実際はキッチリ1時間遅れだった。社内ですれ違う人に「今日は重役出勤だなぁw」と言われても理解できずにいた。休憩時間に遅刻に気付きメチャクチャ恥ずかしかった。思い込みの恐ろしさを痛感して以来、時計は分単位だけでなく何時かを確認するようになった。
<奇行種>
・冷蔵庫にスマホ入れた
・ベランダから飛び降りてしまった事が有ります。
・パジャマのズボンを脱いでゴミ箱に捨ててた
・学校帰りのバスの中の柱にひたすら謝ってたこと。
・子どもが泣き出したと勘違いして夫の頭を撫でてトントンして寝かしつけようとした。
・寝ぼけて自分の家だと思わなくて、あわてて帰ろうとして、母に呆れられた
・晩御飯を食べた後にテレビを見ながら寝てしまい、数時間後起きた時に晩御飯はまだかと聞いてしまったら、年齢的に呆けてしまったのだと心配された
・たくさんありすぎるので、、、最近で言えば、まだ目が完全に開かないにも関わらず、手探りでトイレに行ったものの、あまりの眠さに勝てずに、下着をつけないまま、パジャマを着てしまい、そのまま爆睡。肝心な下着は、部屋の入口そばに落ちていた。女性でありながら、誰もいなくて良かった、と思った。
・小さい頃、寝起きに駄菓子屋に行って、100円玉を握りしめて出かけたつもりが、いざお会計の時に出したら1円玉だった。小さいながらに恥ずかしかった。
・コンビニでお菓子買ってお金払って おつりもらって その買ったお菓子を取るの忘れた
・電車で寝ぼけて駅��ったので降りようとして走ったら違う駅で恥ずかしかったです。 
・大切な本を紙ゴミだと思って破いて捨ててしまった。翌日、ゴミ箱に本が捨ててあるのを見つけて我に帰った。
・高校生の頃、寝ぼけて母親の寝ている布団に入って寝てしまった。目覚めたときは朝でした。恥ずかしいやら、バツが悪いやら。
・女の子の服の袖をコーヒーカップと間違えて掴んだこと
・信号後変わったタイミングが青だと思い込み赤信号で渡りそうになり、車のクラクションで初めて気付いた。それまで青信号を赤だと思い込んでた自分が情けなくなった。
・朝目が覚めたら部屋中に小銭が落ちてた事がありました。割と大量に。いつかの何かしらのお礼にお地蔵様がやって来て打ち出の小槌を振ったのか、はたまた寝ぼけた私が小銭入れを逆さまにして振り回したのか…お地蔵、あの節はありがとうございました。 
・自分の家にいると思ったら友達の家で、すっぽんぽんで部屋の中を歩いていた
・携帯をキャリアのオンラインショップで機種変更した。そしたら同機種同色同GBの同じ機種を注文してしまったようで気付かず開封してしまった。開封後返品不可の為データ移行の面倒くささと引き換えにバッテリーが新しくなった感覚の製品になった 
・急に家の片付けを始め、家の鍵を間違えて捨てた。最近は車の鍵。しかもキーレスを捨ててしまい、悲惨。記憶がない状態で動いてはいけないのは理解できたが、本人は大丈夫だと思ってるのでタチが悪い。
・洗濯物をオバケと思って大声で叫んでしまった。
・納豆のからしを絨毯にかけた。
・喘息なんですが、苦しくて起きて吸入器をしてるつもりがマキロンをシュシュっと口に入れてしまい、急いでゆすぎにいったことがあります。
・小学生の頃家族と電車に乗っていたが寝てしまって、駅について起こされたが寝ぼけていて隣の人が床に置いてたカバンを持って出ようとしてしまった。歩き出したところで止められた。
・夜中に玄関のチャイムが鳴っていると思って飛び起きて、急いで玄関まで行って出ようとした。今考えると夜中の2時に誰か来ていても、いなくても怖い。
・ピカチュウのものまねを練習していた時期に、寝た後いきなり起きてピカチュウのものまねをしていてビックリしたと家族に言われて自分でもビックリしました。
<ケガ>
・子供のころ押し入れで寝ていたら寝ぼけて落ちた
・柱に、顔面ぶつけて歯が折れた
・家の階段で足を踏み外し、中段ぐらいから下までお尻で滑り落ちた。尾てい骨が…むちゃくちゃ痛かった。
・炬燵の掛け布団につまずき、ガラス戸に脚を突っ込んでしまい。救急搬送された。
・足が、もつれて転倒。足首と右手骨折
・ヘアアイロンで首の後ろ大火傷185℃設定だったから死ぬかと思った
・中学生の夏トイレに行こうと起きた所、暗闇でジャージパンツの裾に付いてた足掛け?に指を引っ掛かけて転んでしまった。その時に近くにあった灰皿の金属部が飛んできて目の横を切ってしまい未だに消えない物が残ってしまった。
・起きてすぐ慌ててゴミ出しに行ったら鍵を忘れてオートロックで閉め出された。ピンポンしても家族はまだ寝ていて誰も気づいてくれず、塀を乗り越えてサンダル(5cm位のヒール)でジャンプして飛び降りたら、かかとの骨を傷めた。その日は2010年の誕生日(3/18)だった。その後、半年病院通い。未だ完治せず、全力疾走できない。なぜジャンプしたのか壁をつたって降りれば良かった。寝ぼけていた
・未明に目が覚めて立ち上がったらよろめいて、家具に額をぶつけてまたよろめいて、今度は背後にあった箪笥に背中をぶつけたのですが、あまりに眠かったのでまたそのまま眠ってしまったこと。朝着替えようとしたら寝間着が何かに張り付いて脱げないのです。おかしいなと鏡で確認したら、背中に縦に袈裟懸けみたいな傷が付いていて血がべっとりとくっついたままカピカピになってました。なんか痛いな~とは思っていましたがビックリ。ちなみにおでこにもたんこぶができてました。 
<飲食物シリーズ>
・弁当作りで、玉子を器ではなく、三角コーナーの生ゴミの中に割った
・三角コーナーの上で玉子を割り、ご飯の上に殻を載せてから気づいた
・冷蔵庫と間違えて、下駄箱に卵焼きを入れてしまった。
・卵焼きを焼こうとして、卵をボールに割り入れようとしたのに間違えてそのまま排水口の上で割ってしまい排水溝に流してしまった。
・甘い玉子焼きを作るのに砂糖と塩を入れ間違えた時
・失敗と言うか、ダイエット中の朝に起きたら 枕元にポッキーの食べた後の袋が2袋! めっちゃ自分が怖かった。
・寝ぼけていて朝起きたら記憶なくてビックリしたことは、寝る前に沢山、お菓子を食べて食べ散らかした袋を片付けないで寝てしまい、起きて誰が散らかしたのか?と自分でやった事を覚えてなかった事です
・紅茶を飲もうと思ってティーバッグの袋を開けて、袋を捨てたつもりがティーバッグを捨てていた。しばらく気付かず、お湯を入れる時になって「えっ?!ティーバッグが無い!!何で?!」となった。
・自宅でインスタントラーメンを食べてたら眠くなり、頭を突っ込んで丼ぶりをひっくり返し、自分の太もも部分がラーメンだらけになりました。ぬるかったので、やけどはしませんでした。
・煮込むインスタントラーメンの麺を寝ぼけてそのまま食べた
・食べ物をリップだと思って塗ったりした    
・お弁当を持って行ったつもりが前日残ったご飯を入れたタッパーを持っていってしまった
・すでに飲みかけの缶コーヒーなのに、まだ開けてないと勘違いして振ってしまった?頭からコーヒーかぶった!無糖だったの乾いてもネバネバにはなりませんでした。よかった!チャンチャン(笑)  
・飲みかけのファンタグレープの缶にタバコの吸殻入れてそのまま飲んだ(汗)
・ペットボトルにした小便をお茶と間違えて飲んだ 
<失言シリーズ>
・もらっていないお年玉のお礼を言った。
・授業中居眠りしてたら、指されてお母さんと呼んだ
・居酒屋で飲んでいて眠くなってきた頃に、店員さんの「いらっしゃいませ!」につられて私も「いらっしゃいませ!」と言ってしまった。その頃は接客業をしていたので… 
・帝王切開の麻酔が覚めかけの時、主人と間違えて、主治医に『ダーリン』と呼びかけてしまった。
<トイレシリーズ>
・トイレいく夢みておねしょしました。(31歳)
・酔っ払って帰って、トイレと間違えて廊下でオシッコをした事。
・トイレに行ってズボンを脱いだら鏡台の椅子だった。もう少しで出すところだった…
・子供の頃、夜中にトイレに起きた時、寝ぼけてて階段で放尿したことがあります。
・子供の頃、トイレだと思ってテレビにオシッコをしてしまいました。
・だいぶ昔の事ですが、トイレと風呂を間違えて風呂で小便をしてしまった事。 
・冷蔵庫開けて中にオシッコした
・寝ぼけてトイレに行き、ふたを開けずに小をして跳ね返り足がズブ濡れ。
・ずーっと小さかった時だけど、寝ぼけて畳の上でしゃがんでおしっこしようとしたことがある。母親に慌てて止められて未遂に終わったけど、なぜかその時意識はあって、自分の行動は覚えてる。ホントに寝ぼけてたみたい…
・トイレに行った時に、寒いからとスパッツを履いていたのを忘れて、ズボンとスパッツだけおろして、パンツを下ろすのを忘れたまま用を足してしまった。
<誤操作>
・旦那に送るはずのLINEを上司に送った…
・会社のPCに、なんか色々書き込みして、放置
・夜中に寝ぼけながらスマホをいじっていたら、操作を誤って担任しているクラスの保護者に電話をかけてしまった
・友達にLINEを返している間にまた寝てしまい、すごい誤字った文章を送ってしまった 
・嫌いな人の過去のツイートを見ていてうっかりいいねを押してしまった。すく解除したが、相手に連絡が行ったようでブロックされた。
・寝惚けてる時にメールで告白して朝起きたら振られてた。夢であってほしかった…。
・片思い中の人によく分からない誤字脱字だらけのメールを送った
・お気に入りの配信者へのプレゼントを送るときに、住所等を伏せる設定にしなければならなかったのに、寝る直前だったので寝惚けてそのまま全て公開して送ってしまった。
・メルカリで、取引中の相手に訳の分からないメッセージを送っていた。
・Amazonを見ながら寝落ちして、間違えて注文ボタンを押してしまいました。
・クレジットカードのアプリを開きっぱなしにして寝てしまい、一括払いからリボ払いへ変更してしまったみたいだ。
・当時プレイしていたソシャゲを寝ぼけて起動してしまったまではよかったが、ソシャゲは立ち上げ時にオススメパックの宣伝画面になることが多く、パック購入画面に進んでしまい、そのまま顔認証で1番高額のパック購入をしてしまった。
・インターネット通販サイトで、本人の希望を確認しないうちに、ランドセルをポチっていました…。翌日、身に覚えの無いクレカ利用の速報メールが届き、それなりのお値段な事もあり肝が冷えました。結果的にとても気に入ってくれたので助かりましたが…一生の思い出になる品なので、もっと親子でじっくり話をしながら選びたかったです。
・普段なら絶対に引っ掛かることのない詐欺サイトでカード情報入力。後日カード会社から連絡が来て発覚。。被害額がまだ1円だけだったので気づいて連絡くれたカード会社の方には本当に感謝しています。
<ペットに…>
・近づいて来た愛犬を罵倒してしまった。怖がらせてしまった。
・猫を蹴飛ばしてしまった
・起きたら顔の近くにウサギがいて、寝ぼけていた為に「ふわふわのタオル」だと思って顔を拭いた。全力の蹴りを喰らった。
・冷蔵庫開けて、生卵取ってそのまま愛犬に……愛犬不思議な顔してた
<後の修羅場である>
・寝言で彼女の前で元カノ名前を言ってしまったらしい。
・今の妻と結婚前に一緒に寝ていて、寝ぼけて違う名前を呟く
・新婚の時に、寝ぼけて、主人に、誰?って言ったことがある?
・酒を飲んで寝たあと寝ぼけて関係を持ってしまい、相手に子ができた
・隣に寝ているのが女友達だったんだけど寝ぼけてて彼氏だと思ってて股間をまさぐっていた
・嫁と間違えて母にキスした!
・あるあるですが、今カレを呼ぶ時に元カレの名前を呼びました。寝言のようにごまかしたけど、その日は一日中機嫌が悪かったので気づいてしまったんですね私の元カレが、自分(今カレ)の上司だってことに。
<電話シリーズ>
・電話が鳴ったので、寝ぼけたまま応答して知らない人と30分以上話をしたこと
・朝3時に、寝ぼけて、疎遠の友人に電話をかけてしまった。
・寝起きに就活の面接の連絡がきて、なんと答えたか解らなくなって焦った
・昼寝してて電話が鳴り寝ぼけてバイト先の店名を言ってしまい、よりによって所作や作法に厳しい親戚の叔父でこっぴどく1時間に渡り電話口で説教された
・当時付き合っていた彼と電話をしていて、夜も更けたしお互い眠くなったので、電話を切った。その直後に着信があり眠かったのもあり、確認せずに彼だと思って『も?、どうしたのぉ。もうさびしくなっちゃったのぉ?』と甘えた声で出たら友人だった。『あんた何言ってんのよ』と爆笑された。
・部活をズル休みした時に先輩が心配して電話してきたのに声が同級生の声に聞こえタメ口で答えてしまい挙句の果てにズル休みの理由も話してしまった。
・高校生の夏休み、連日バイトと部活の両立で寝不足で、バイトから帰ってきて仮眠していた。顧問から用事で電話がかかってきたけど、眠さMAXでかなり寝ぼけて電話応対してしまった。友達感覚で話せる先生ではあったが、友達にもやらないような不機嫌な対応してしまった。その時は夢見たと思ってたが、顧問に電話したよ、と言われてうっすら思い出してきて、本当にどうしようもなかった  
・電話がかかってきて、それに起こされ慌てて出た為、ものすごくテンションが低く声もかすれていて、とっても感じ悪くなってしまった。相手はかかりつけの病院からで検査予約日の変更のお願いだったのだが時間的にも寝ていたとは言えず、後日病院に行った時に最近怪しい電話ばかりかかってきているので電話に出るときはあんなに感じが悪くなってしまいすみませんでしたと平謝りした。
<身だしなみ>
・化粧。まゆげ書き忘れて眉無しオバケで会社に行った。メイク直しも持っていなったので鉛筆で書いた。
・寝坊して会社に遅刻しそうになった時に、スカートを履くのを忘れてストッキング姿で家を飛び出したことがある。
・小学生の頃に寝ぼけてランドセルを忘れて登校し、中学生の頃はパジャマで登校しかけた。寒い冬じゃなかったら学校着くまで気づかなかったかも。
・パジャマの下を履いたままズボンを履いて出勤したことがあります。何だか足が重く疲れてるのかな?と感じてましたが、帰宅してからパジャマを履いてることに気づいて納得した、というか、それまで気づきませんでした。
<塩対応>
・寝ぼけていて、家族を怒ってしまった事があります。後で冷静になってみたら、怒る事でもなかったと、反省してます。
<あわや大惨事>
・寝ぼけながらタバコを吸っていて気付かぬうちに火種が落ちていた。煙が出ていたことに自分は気付かず、父親が慌てて叩いて消していた。一人だったら火事になっていたと思う。
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abcboiler · 3 years
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【黒バス】TEN DANCER has NOTHING -2-
2015/01/03Pixiv投稿作
「脚本は人生によって汚されたのです」 ジョセフ・エル・マンキーウィッツ『裸足の伯爵夫人』
他人の熱をどうやって知ることが出来るだろう *** 「……あれ?真ちゃんは?」 「緑間くんなら三日は来ませんよ」 高尾と緑間が出会い、夕飯を共にした翌日、稽古の開始は午前十時だった。早朝ランニングの服のまま、高尾が稽古場入りしたのは丁度その一時間前で、板張りのがらんとした部屋に人影は無かった。彼は誰もいない稽古場に向けて「よろしくお願いします」と頭を下げ、靴を履き替えて入口から踏み入る。稽古場だろうと、舞台は舞台である。舞台には、敬意を払わなくてはけない。それは役者だけではなく、ダンサーも、或いはバスケットプレイヤーや野球選手も同じことだ。自分たちが立つ舞台へ、尊敬と畏怖の念を忘れた者から落ちていく。自分がどこに立っているのか、それを理解しない者に居場所が与えられるほど、世界は広くなど無いのだ。 初日にチェックしていた照明のスイッチを入れれば、窓の無い稽古場がぼうっと青く光る。どうやら設備が古いらしく、完全に点灯するまでに時間がかかるらしい。さして気にも止めず、高尾はミラーと椅子を引っ張り出す。歴史ある劇場に備え付けの稽古場は、その歴史にふさわしくあちこちに時間が刻んだシミや引っかき傷が残っていた。けれど、手入れをされていないという訳ではない。大切に使われてきたのであろうことは、机のネジ一つとってみても判る。広さざっと10メーター掛ける6メーター。天井の高さ5メーター。稽古場の中でも、ある程度の広さが確保されている部類だ。軽く準備運動をしていれば他の共演者たちもぽつりぽつりと入って来る。 挨拶を交わしつつ、高尾は共演者たちの目を見る。どうやら、誰よりも早く来て準備を済ませていた高尾に悪感情を抱く者はいないらしかった。高尾は、それなりに名の知れた役者たちの中に、突如紛れ込んだダンサーだ。どれだけ高尾が踊りの世界で名を馳せていようと、ここでは全くの初心者である。準備運動をしっかりとしたかったというのも勿論あるが、誰よりも早く来たのは、共演者達への敬意をわかりやすく示すためでもあった。 いつだって、どこだって、下っ端のやることは変わんねえよ、と言って笑った、高尾のスクール時代の友人がいる。 『誰よりも早く行って、雑用して、笑顔で挨拶して、どんなことでも引き受けるんだ。世界はこんなに広いのに、ボトムビリオンのやることは変わんねえし、逆に言や、それだけやっときゃどんな世界でも受け入れられるんだ。最高に笑えるよな』 全くもってその通りだと、その時の高尾は笑いながらくすねたスタウトで乾杯したものだが、いざ世界に出てみれば、九割は彼の言う通りだった。そして残り一割はといえば、表立ってはそのように従順な態度を示す人間を、侮蔑するタイプの人間だった。そういった人種の大抵はひねくれていて、人の好意を素直に信じない。ごく稀に、そういった「表面だけの従順さ」或いは「気に入られようという下心」を敏感に察知して嫌悪を示す潔癖な人間もいるが、高尾は滅多に出会ったことが無い。そして、この舞台に集まった役者たちは、皆、ある程度の癖はありこそすれ、真面目で、一本気な人間らしかった。そのことに彼は素直に安堵する。仕事を共にするにあたって、仲間は気持ちがいいほうが良いに決まっている。 (まあ、真ちゃんなんかは、割と残り一割の人間っぽいけど) にこやかに笑いながら、高尾は頭の中で気難しそうな緑髪を思い出す。そうして、稽古開始10分前になっても、その鮮やかな芽吹きの色の、影も形も見えないことに首を傾げた。顔合わせの時の緑間は、丁度30分前に現れた。一分の狂いも無かったのだから、それが彼の流儀なのだろう、こだわりの強そうな男だから、自分の決めたルールから外れるようなことはすまい。高尾は、そう思っていたのである。そう思っていた所に、突如かけられた声だった。 「緑間くんなら三日は来ませんよ」 「……三日? 三日は来ないって、どういうこと?」 「僕に驚かないんですね」 「いや、驚くも何も普通に話しかけられただけじゃん」 「そんな反応されたのも久しぶりです。いや、初めてかもしれません」 高尾の横に静かに現れたのは、水色の髪の少年だった。髪と同じ水色の、大きな瞳に感情は見えない。埃一つついていない燕尾服は、舞台の上ならば映えるだろうが、この稽古場では浮くばかりである。黒の燕尾服と青白い肌のコントラストは沈黙を発している。背は低く、線も細く、とても役者とは言い難い風貌をしていた。 そもそも昨日の顔合わせの時に、こんな男を彼は見た覚えがない。稽古場に燕尾服で現れるような人間を、忘れる筈も無いのだから、間違いなく高尾とこの男は初対面だ。けれどこの少年の佇まいは、高尾に既視感をもたらした。 この色を、この空気を、どこかで見たことがある、それも、つい最近。 脳みその奥でぐるぐると記憶が動き始めるが、その既視感よりも、少年の言葉の意味よりも、高尾には気になることがあった。頭蓋骨の奥で回転を続ける脳を放って、高尾は思ったままの質問をぶつける。 「えーっと、真ちゃん、三日は来ないって、マジ?」 「ええ、マジ、です」 「……なんでそんなこと知ってるの?」 「緑間くんはぶっ飛んでいるなりに真面目ですから、支配人に連絡はちゃんと入れますよ。欠席の連絡、ですけどね」 「……支配人?」 「ええ」 高尾の訝しげな瞳にも、鋭さを増していく視線にも動じることなく、水色の瞳はじいっと鏡のように見つめ返してくる。その静寂さを、高尾はふと思い出した。 これは、舞台が始まる前の沈黙だ。 例えば稽古場の照明を灯した瞬間のぼうっとした青い光。或いは、幕が開く直前に落ちた沈黙の色。目の前にいる人間は、舞台の上でスポットライトを浴びる人間ではなく、けれど必ず、舞台の始まりに潜んでいる影だ。既視感の理由を突き止めて、高尾はもう既に判りきった解答が与えられるのを待つ。 「君にこの舞台のオファーを出したのは僕です。顔を直接合わせるのは初めてですね」 「……まさか、こんだけ伝統ある劇場の支配人がこんな若いとは思ってなかったわ」 「童顔なんですよ、僕。年齢的には君や緑間くんと変わりません」 「それでも充分若いって」 「同世代の若造に雇われるのはお嫌ですか?」 「まさか。その逆。すげーよ、お前」 苦笑しながら高尾は右手を差し出した。雇い主に対して随分と馴れ馴れしい口を聞いてしまったとも思うが、恐らくこの人物はそういったことを気にしないだろう。支配人といえば、いつだって、劇場を我が物顔で歩き回り、まだ売り出されてもいないような若い卵を小間使いのように従えて歩いているのが常だった。黒子テツヤと名乗る男に、その虚栄の影も見えなかった。そして何より、入口で丁寧に揃えられた、曇りひとつない黒い革靴を、高尾は確かに視界に捉えている。黒子もまた、舞台という圧倒的な存在に、尊敬と畏怖を覚える人種なのだ。そんな確信と共に、高尾は、自分の右手が、冷たく青白い右手に握られるのを感じている。 「改めまして、この度はこのような歴史ある舞台にお招き頂きましてありがとうございます。高尾和成です」 「黒子テツヤです。この度はご無理を申し上げましたが、快くお引き受け頂き感謝致します。感謝の証に、この口調はやめましょうか」 「はは、助かるわ、こういうしゃちほこばったの、苦手でさ」 「僕も無意味なやり取りは興味ないです。虚礼廃止派なんですよ」 「へえ。劇場なんてトラディショナルマインドの塊かと思ったけど」 「伝統と歴史は大切ですよ。気持ちがこもっていなくちゃ意味が無いってことです」 「耳が痛いね」 別に君は、伝統も歴史もないがしろにする人間じゃあないでしょう。 そう言って静かに笑う黒子に、高尾は目の奥の苦笑を隠せない。出会って数分で、見透かしたようなことを言う。臆するどころか、一つも揺るがない調子で。黒子は、身にまとう静謐な空気とは裏腹に、その内面は感情豊かな男のようだった。いっそ、苛烈とさえ呼べるほど。 「しかし、なんでまたわざわざ俺に声かけたのさ?黒子さん」 「さん付けなんてしなくて良いですよ」 「いや、そりゃ流石に不味いだろ」 「緑間くんの懐に���一日目にしてあそこまで入り込んだ人ですから。『友達の友達は友達』、とまでは言いませんが、『奇妙奇天烈な友人の数少ない友人になりそうな人』は大切にしたいんですよ、僕も」 「……真ちゃんとは友達なんだ?」 「腐れ縁です」 僅かに剣呑な雰囲気を帯びた高尾に、黒子は内心で驚嘆と呆れの入り混じった溜息をつく。黒子も黒子で、この異端のダンサーには思うところがあった。勿論お首には出さないが、どうやら、この高尾和成という男の緑間真太郎への執着は、事前に黒子が伝え聞いていたよりも一段と強いようである。それは、噂の方が間違っていたということでもないのだろう。何せ黒子に高尾の存在を教え、その詳細な情報を伝えて寄越した男は、人を見る目だけは確かだった。口調や言動こそ軽い男だけれど、人脈の広さと内面を探ることに関しては黒子も認める所である。その彼の情報では、ここまでの執心はうかがえなかった。 どうやら『緑間真太郎』の実物と出会ったことによって、その執心が一段と深まってしまったらしい。そう黒子は察しをつける。 「……さっきの君の質問ですが」 「さっき?」 「自分で聞いたんでしょう。『何故俺に声をかけたんだ』って」 「ん? ああ、そうそう、そうだったわ」 「僕には、顔の広さだけは誇れる友人が一人いましてね」 「君の噂はかねがねお伺いしています」 そう黒子が告げた瞬間に、高尾は確かに薄く笑った。高尾和成の『噂』は、どうやら彼自身の耳にも届いているらしい。どこまで知っているのか、等という無粋な質問を、高尾はしなかった。その代わりに浮かべたのが、温かみの欠片も見つけられない、酷薄な笑みだった。会話の切上げ時だ、と黒子は感じる。そうして何故、自分の周りには、こうも厄介な人間ばかり集まるのだろうと考えている。舞台に立つ人間は、そこで輝く人間は、どれだけ真っ当に見えても必ずどこかが歪な形をしている。その歪みこそが輝きを生むのだと思わせるほどに、強烈な光を放つ物ほどその歪みは大きい。黒子の脳裏に浮かぶのは、神経質そうに眉をひそめて腕を組む、緑の友人。 (君は僕の友人の中でもとぴきり奇妙で扱いにくい人だけれど、変人は変人を引き寄せるんでしょうかね) 周りからすれば、はた迷惑な話だ、と一人で納得する黒子には、自分もその一員なのだという自覚は、少なくとも高尾和成からは同じカテゴリに分類されている自覚は、ない。 「長々とお喋りしてしまいました。もう立ち稽古始まりますけど大丈夫ですか?」 「いや、別に準備運動は済ませてっからいいけど……つうか、そうだよ、真ちゃん結局来てねえじゃん。そのこと聞きたかったのに話逸れすぎだわマジで」 「不思議なことです」 「お前なあ……まあいいや。俺は役者じゃねえけどさ、どう考えてもおかしいだろ。場当たり稽古で役者がいないって」 「そうですね」 時計の針は、十時一分前を指している。座ってストレッチをしていたものも立ち上がり、集合の声がかかる瞬間を待っている。もう、舞台は始まるのだ。片手に台本を持った場当たりの稽古だろうと、そのことには変わりない。そうして、高尾が待ち焦がれる緑色は、恐らくもう現れないだろう。 「彼とんでもない馬鹿なんですよ」 「……随分と知ってるんだね」 「腐れ縁だって、言ったでしょう。まあ、馬鹿さ加減なら、君もどっこいだと思いますけどね」 「さっきから、結構ずけずけ言うよなあ、お前」 「そうですね」 飄々と高尾の視線を交わす黒子の顔には罪悪感の一つも浮かんでいない。高尾には判る。この黒子テツヤという人間は全く悪びれていない。高尾が何も判らずに、少しずつ苛々の棘をあらわにするのをじいっと観察している。そうやって、高尾和成を見定めようとしている。そのことが、高尾には、わかる。何せそれは、形こそ違えど、高尾が朝、この稽古場で他の共演者たちに向けたのと同じ瞳なのだから。 「あー、なんかなあ、俺結構人あたり良い方なんだけど」 「自分で言いますか」 「言うね。高尾ちゃんだって顔の広さならそれなりだよ。でもなんかお前は、ちげーや。同族嫌悪ってやつかな」 「そうかもしれません」 集合の声がかかる。高尾は黒子に背を向ける。結局、緑間が何故来ないのか、その答えを黒子は一つも言わなかった。焦ることはない、と高尾は言い聞かせる。黒子が支配人というのならば、彼はこの劇場の住人だ。この劇場の中に、必ずいる。そして恐らく、隠れもしないだろう。練習終わりにでも捕まえればいいし、万が一捕まえられなかったとしても、三日後に緑間が来るという情報は確かなのだろうから。 「でも、君と僕は全然違いますよ。全く、一つも、何もかも、全部」 意外なことに、背中を向けた高尾にも黒子は言葉を続けた。背中でその言葉を受け止めながら、高尾は頭のスイッチをぱちりぱちりと切り替えていく。緑色を遮断して、水色も遮断して、その代わりに頭に浮かべるのは真っ白いスポットライトだ。幕が上がるまでの静寂と、布擦れの音、音楽と、軋む床。それを思い浮かべれば、今まで頭の中を占めていたことはゆっくりと消え去っていく。舞台の上は、もう違う世界だ。 そうやって段々と現世から消えていく高尾へ、亡霊のように、水色の声は続いている。 「僕は黒子ですから」 「……?」 「君はそちらの人間だ」 その声の、あまりの冷たさに高尾は振り返った。振り返った先に見えた瞳は、相変わらず鏡面のように静かで、そこに映りこんだ高尾自身まで反射して見えた。その姿を見たことを、僅かに高尾は後悔した。 「ステージもミュージックもミラーも、僕には手に入れられなかった」 深淵を覗く時、深淵もまたお前を覗いているのだと、そんな古い戯曲の一節を、何故か高尾は呼び起こした。成程確かに、この黒子テツヤという男は影だった。劇場に潜む、影だった。 * 「ああ、高尾くん、お疲れ様です」 「……お疲れ様です……ってかなんでここいんの? そんなケロッとした感じで?」 「ケロッと、というのが何を指しているのかよく判りませんが、そういえば緑間くんが来ない理由言い忘れてたなと思い出して」 「え?! いやそりゃ言われなかったけど、何あれわざとじゃなかったの? 嘘だろ?」 「すみません、忘れてました」 「マジかよ……」 あまりにもあっけらかんとした黒子の態度に、高尾は思わず頭を抱えて蹲る。あれだけ思わせぶりな態度で人のことを引っ掻き回しておきながら、自分は無実だと言わんばかりのこの態度はどうだ。 窓の外はもう日も暮れて、木枯らしの音と星の瞬きが聞こえるのみである。これが演劇初舞台となる高尾にも薄々察せられるように、どうやらこの劇場の練習はかなりじっくりと行われるようだった。公演までは一ヶ月、ほぼ毎日のように練習が入っているが、長い時では一日六時間近く確保されている。恐らく平均の倍近いだろう、というのは事前に高尾が関係者から聞いていた話との比較だ。それだけ、この劇場で行われる演目というのは重大なことなのだろう。それを高尾はこの日一日で感じ取っている。そして、その劇場を取り仕切っているのが、今、彼の目の前でぼんやりと佇んでいるこの男なのだ。 黒子、お前はとんでもない役者だ、という内心を口にするのも悔しく、獣のような唸り声を噛み殺して高尾は小さく文句を告げた。 「いやほんと、お前も大概だわ」 「失礼ですね。僕は少なくとも彼らよりはマシだと思ってます」 「いや本当にどっこいだと思うぜ。真面目に」 「そうですかね」 「はー……、ま、いいや、これ以上言っても無駄だろうし……」 頭をかきながら高尾は立ち上がる。見下ろす黒子はやはり存在感の希薄な何も無い少年で、一体全体この体のどこに熱が潜んでいるのか高尾には全く読み取れない。 「なあ、真ちゃんの連絡先って教えてもらえる? 直接行くわ」 「プライベートもへったくれもないですね。そして残念ながら、僕も知りませんよ」 「知らねえの?」 「自宅のベルという意味なら知っています。或いは郵便物の届け先なら。けど、少なくとも今は無意味ですよ」 「どういうこと?」 「見つけるのは……そうですね、君次第ですけど不可能じゃないです」 「待てって、黒子、ちゃんと説明してくれよ」 「緑間くんを連れてくるというならご自由に。まあ、できるなら、ですけど」 「黒子」 高尾が話についていけないことを理解しながらも黒子は喋り続ける。理解させるつもりが無いのかと苛立つ高尾に黒子が向けた瞳は、高尾の予想に反して一切のからかいを含んでいなかった。ただ、彼に覚悟を問いかけていた。 それは緑間真太郎という役者に、関与することの覚悟である。 「緑間くんはね、絶対に妥協を許さないんですよ」 「稽古には出ないのに?」 「サボりじゃ無いですよ。一応僕だけじゃなく、監督さんや演出さんにも連絡は入ってますし」 「いや、何してんだか知らないけど、来ないんじゃ駄目だろ」 「君だったら朝起きてどうしますか?」 「俺?」 正直な所、高尾和成は、今朝、確かに失望を覚えていたのだ。昨晩ともに夕食を食べた緑間は、少なくとも舞台に対して真剣な態度を示していた。舞台に命をかけている人間の目をしていた。彼は、緑間真太郎が、まさか初日から練習を欠席するような男だとは、ゆめにも思っていなかったのである。そんな男を追いかけてこの舞台に来たのかと自身をあざ笑いさえした。ただ、何より、高尾は、何故緑間がこのような行動に出たのかを問いただしたかったのだ。理由なく休む男ではないと信じていた。けれどその内容如何によっては、あの顔を殴ることも辞さないとすら考えていた。黒子の態度によって誤魔化されてはいたが、高尾が緑間に対して抱いていたのは、紛れもない怒りだった。 自分だったらどうするか、という問いは、高尾からしてみればナンセンスな質問だった。準備をして、練習をしに行くに決まっている。そうして高尾のその答えに、黒子は静かに首を振った。 「高尾くん、君は普段、朝起きて、何をしますか?朝起きて一番に、トイレに行きますか?顔を洗いますか?或いは真っ先に朝ごはんを食べる?それともご飯は食べない?食べるとしたら、パン?ライス?フレーク?それとも果物や飲み物だけ?着替えてから朝食を食べますか?それとも先に支度を全て済ませてから最後に着替えますか?靴を履くのは右から?左から?その靴は誰が選んだ物ですか?どこで買ったもので値段はいくら?新聞は手に抱えますかそれとも鞄?ニュースはテレビジョンで見るだけ?欠伸は噛み殺しますか?それとも手で隠しますか?そうですね、それから」 「ちょ、ちょいまって、なに、黒子、そんなに俺のこと知りたいの」 「そうですね、君には何の興味もないですけど」 「失礼すぎだし、お前さっき、友達の友達候補は大事にとか言ってたろ」 「成程、僕が言いすぎました。でも、そうでしょう? 他人のそんなところまで興味、ないでしょう、普通は」 「そりゃあ、まあ」 「そんな所まで気にするのは、緑間くんくらいです」 黒子の言葉に高尾は首を傾げる。たった一度食事をしたきりではあったけれど、緑間がそのような人間だとは彼にはどうしても思えなかった。彼は高尾に一切の詮索をしなかった。質問こそすれど、高尾が隠したいと望んだことを、隠していると気がつきながら、それ以上踏み入ることはしない男だった。 『そんな姿勢で人事を尽くせるのか?』 そう尋ねた緑間の瞳に燃える炎を高尾は覚えている。茨のような形をした緑の炎。けれど、高尾がその答えをはぐらかせば、その棘を突き刺そうとすることもなくしまいこんだ。緑間は、人の痛みに鈍感な男ではなかった。かといって、わざわざ人に関与しようとは思わない、自分の国を守ることができれば他は預かり知らぬ、そういう態度をとる男だった。 「真ちゃんなんて、他人に興味ないベストテンって感じの顔してるけど」 「君もなかなか失礼ですがその通りですね」 呆れたように笑う黒子の顔に怒りが見えないのは、黒子なりの肯定に他ならない。そう、緑間真太郎は他人などに興味が無い。興味を持たずに、生きてきたのだ。 「でも言ったでしょう。彼は妥協を許さないんですよ。だから、自分の役が、朝、何をしているのか、知らないなんてことを彼は許さない」 「……嘘だろ?」 「嘘なら良かったですね」 緑間真太郎。高尾和成が10点の顔だと評した男。彼が出る舞台のチケットは即日完売。舞台から徐々に人が、観客が失われていく中でも変わることなく、常にスタンディングまで客席は埋まる。赤いベロアの椅子が、その生地を覗かせることなどない。そこには常に、人影がある。高尾だって、チケットを手に入れるには、関係者のコネクションを辿りに辿って、ようやくスタンディングセンター一列だったのだから。 自分はもしかしたら勘違いをしていたのかもしれない、と、ふと高尾は閃いて、脳裏にちらついた空想に背筋を震わせた。この劇場の稽古だから、練習が倍量なのではない。 共演するのが緑間真太郎だからこそ、周囲は倍量の練習を、余儀なくされているのではないかと。 舞台の世界は、決して、顔だけではない。 「多分緑間くん、昨日家に帰ってから、『緑間真太郎』としての生活なんてしてないですよ」 「……真ちゃんは、さっきお前が言ったようなこと、全部、��えてるってわけ? 脚本家だってそこまで考えてないようなことを?」 「ええ、何せ、彼、超ド級の、馬鹿なので」 君はさっき、僕が緑間くんのことを馬鹿だって言ってた時に嫉妬していたようですけれど、それは随分と見当違いだったと言わざるを得ませんね。 腐れ縁じゃなくったって、一回でも彼とおんなじ舞台に立てばきっとわかりますよ。彼がどれだけ大馬鹿なのか。 黒子の言葉は高尾の耳を通り抜けて落ちていく。冷たい夜の床に、黒子の言葉は誰に拾われることもなく散らばっていた。 「緑間くんの役は、映画監督になることを夢見て、才能が追いつかず家賃を滞納し、食費も無くバイト代は全てフィルムに回す馬鹿な男でしたっけね」 「……つくづく真ちゃんとは真逆の男だよなあ」 「そうですね。だから緑間くんは突き詰めるでしょう」 自分には理解できない役だからこそ、その役がどういった人物なのか、どこでうまれ、何を考え、何を食べ、何を感じ、何を信じて今の瞬間にたどり着いたのかを理解するまで、緑間真太郎は止まらない。愚直なまでに、それだけを追い求め続ける。妥協という言葉は、緑間真太郎には存在しない。ある程度、などという言葉で彼を止めることなど出来はしないのだ。 『一つの物を極めるためには、他の物を捨てねばならないだろう』 「もう一度聞きます。君ならどこに行きますか?」 「俺なら」 「君がもし、映画監督になることを夢見て、才能が追いつかず家賃を滞納し、食費も無くバイト代は全てフィルムに回す馬鹿な男だとしたら、どこに行って、何をします?」 高尾の顔色は黒子に話しかけた時と比べて段々と悪くなっている。そこに浮かんでいるのは、一種の恐怖だ。或いは、畏怖だ。舞台に全てを捧げる男の、凄惨なまでの一途さは、人がたどり着いていいものではない。 「君が考えるこの役と、緑間くんが考えるこの役がもし一致すれば、きっと君は緑間くんを見つけられますよ。」 「そんなの」 「まあ、焦らなくてもいいんじゃないですか。彼が三日と言ったからには三日でつかめると判断したんでしょう。三日後には会えますよ」 「三日間、役になりきって生活してんのかよ、あいつ、一人で」 「妥協ができないんです彼は。それに一人とも限りませんよ。もしも彼がこの役を『女好き』だと判断したのなら女性の一人や二人や三人四人、引っ掛けていてもおかしくないですし。三日間、ヒモとして面倒見てもらってるかもしれません」 「……は?」 黒子の発言は、高尾の強ばっていた表情を一瞬呆けさせ、それから引きつらせるのに十分だった。 何かを口に出��うとして、何を口にしても藪蛇にしかならないことが目に見えて、高尾は二の句が継げずにいる。右手はさまよった挙句に、彼の頭を抱えた。そうしてその様子を興味深そうに最後まで観察した黒子は、きっかり三十秒後、高尾から一切の言葉が無いことを確認して背を向けた。今度こそ、用事は無いとばかりに。自分の出番は終わったとばかりに。 「それじゃあ、僕はここで。高尾くんも慣れない練習で疲れたんじゃないですか? 公演が終わるまで体調管理はしっかりお願いしますね。大楽が終わって幕が完全に降りたあとでしたらいつでも熱出してブッ倒れていいので、それまではどうか健康に。心身ともにとは言いませんが、出来れば両方整うと良いですね。それでは」
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guragura000 · 3 years
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海辺の洞窟
 リネン君は、誰よりもまともです、という顔をして、クズだ。彼の中身はしっちゃかめっちゃかだ。どうしたらそんなにとっ散らかることができるのか、僕には分からない。
 彼の朝は床から始まる。ベッドに寝ていた筈なのに、いつの間にか転がり落ちているのだ。頭をぼりぼり掻きながら洗顔もせずに、そこらに落ちている乾いたパンを食べる。前日に酒を飲んでいたのであれば、トイレに行って吐く。
 それから自分を寝床から蹴落とした女を見やる。それは顔も知らない女であったり、友人の彼女であったり、上司の妻であったりする。ともかく面倒くさそうな女だ。
 ここで必ず電話が鳴る。誰もがリネン君が起きる瞬間を見計らったように電話をよこす。それとも彼の体が電話に備えるようになったのか。まあ、どちらでもいい。
 電話の向こうは女の関係者で、烈火の如く怒っている。朝から怒鳴り声を聞くのは気分のいいものではない。口の中から胆汁がしみ出してくるような心地になるので、黙って切る。
 リネン君にとって、彼女とその関係者の将来など、自分には関係のないことなのである。いやいや彼は彼女らの人生に大いに干渉しているのだが、リネン君は全ての責任を放棄しているのだ。誰が何と言おうと、彼は彼の行動の責任をとらないし、とるつもりもない。だからどうしようもない。
 そうこうしているうちに女が目覚める。彼女はリネン君の消えゆく語尾から、彼氏や旦那の名前を聞き取るだろう。次の瞬間彼女はヒステリックに喚き出し、リネン君は自室を追い出されるはめになるわけだ。
 リネン君はあくびをしいしい喫茶店に入り、仕事までの時間を潰す。休日であれば友人なのか知り合いなのか曖昧な人間と遊ぶ。暇な輩がつかまらなければ、その辺をうろつく汚い野良猫とたわむれる。リネン君は大抵の人には煙たがられるが、動物には好かれるのである。
 リネン君は出会う人々とろくでもない話をする。誰かを笑わせない日はないし、誰かを傷つけない日もない。彼は湧き上がった感情を、健全であれ不健全であれ、その場で解消するだけなのだ。
 僕等は同じアパートに住んでいる。リネン君の部屋は一階の一番端っこ、僕の部屋は二階の階段のすぐ隣だ。親しくなる前から彼の顔は知っていた。朝、父さんに言われて新聞を取りに行くと、みちみちにチラシの詰まった郵便受けの前で悪態を付いている彼を時々見かけた。母さんから、
「あんな人と付き合っちゃダメよ」
とお叱りを受けたこともある。その理由を聞くと、
「しょっちゅう女の人を連れ込んでいるみたいだし、毎晩のように酔っ払って何かを叫びながら帰ってくるし、たまに非常階段で寝てるし、ゴミは分別しないで出すし、昼間もふらふらして何をしているか分からないし、無精髭を剃りもしないしこの間だって⋯⋯」
と、このように、大人達のリネン君の評判はよろしくなかった。
 僕等はアパートの庭に設置されている自販機の前で出会った。リネン君の第一声は、
「おい。五十円持ってないか」
だった。小遣いでジュースを買いにきた小学生にかける言葉ではないと思うが、いかにも彼らしい。リネン君はたかった金で手に入れたエナジードリンクを一気に飲み干した。それから隣でグレープジュースをちびちび啜っている僕を、
「ガキ。礼に煎餅やるから来い」
「え? でも知らない人の家に行くなって母さんから言われてるし」
「親離れは早いにこしたことない。いいから来い」
「え、あ、あの、ちょっと」
誘拐まがいに部屋に招いたのだった。
 そうして僕は彼と親しくなった。もちろん母さんには内緒で。
 彼の部屋は余計なものでいっぱいだ。年期の入った黒電話、聞きもしないレコード、放浪先で見つけてきた不気味な雑貨、または女性。つまり彼の部屋は子どもの暇つぶしにもってこいの場所なのだ。
「リネン君はどこから来たの?」
 僕が尋ねても、彼はにんまり笑って答えない。
「俺がどこからやってきたかなんて、お前には関係ないことだろ?」
「じゃあこれからどこへ行くの?」
「嫌なことを聞くやつだな、お前は」
 リネン君は心底うんざりした顔で僕を睨みつけた。けれど僕は睨まれても平気だ。大人は彼を怖がるけれど、僕はそうではない。彼は子どもと同じだ。好きなことはやる。嫌いなことはやらない。それだけ。それは子どもの僕にとって、非常に理にかなったやり方に思える。
 大人は彼をこう呼ぶ。「根性なし」「我がまま」「女たらし」「クズ」⋯⋯。
 リネン君は煙草をくゆらせる。
「近所のババア共ときたら、俺の姿が見えなくなった途端に悪口おっ始めやがる。常識人になり損なっただけなのにこの言い草だ。奴らに面と向かって啖呵切る俺の方がよっぽど潔いぜ。違うか?」
 本人はそう言っているが、リネン君は陰険だ。この間なんて仕事で成功した友人の彼女と寝て、絶交を言い渡されてされていた。僕には確信犯としか思えない。
「バカ言え。どうしてそんな面働なことをやらなくちゃならない? 俺はな、他の奴らの目なんてどうでもいい。自分の好きなことに忠実でありたいだけだ」
 リネン君は良くも悪くも自分の尻拭いができない。つまりクズっていうのは、そういうことだと思う。
 とはいえ彼は僕に良くしてくれる。
「林檎食うか?」
 彼は台所から青い林檎を放ってくれた。
「ありがと」
 僕は表皮を上着の袖で拭き、がじっと齧る。酸っぱくて唾液がにじむ。リネン君は口いっぱいに食べカスを詰め込みながら、もがもがと言った。
「そういや隣の兄ちゃん、引っ越したからな」
 なぜとは聞かなかった。リネン君が原因だと察しがついたからだ。
「どうせ彼女を奪ったんでしょ」
「『彼女を奪う』か。『花を摘む』と同じくらいロマンチックな言葉だな。お前、いい男になるよ」
「適当なこと言って」
「悪いな、またお前の植木鉢から花を摘んじまったよ」
「本当に悪いと思うなら、もうこんなことやめてよね」
「駄目だ。夜になると女が欲しくなる。こう見えても俺は寂しがり屋だからな」
「うえー、気色悪っ。⋯⋯それでお兄さんはどこに?」
「浜辺の廃屋に越した��て。遊びに行こうったって無駄だぜ。あいつ、彼女にふられたショックで頭がおかしくなっちまって、四六時中インクの切れたタイプライターを叩いてるんだそうだ」
 彼女にふられたショック? それだけではないだろう。リネン君の残酷な言葉に弱点を突かれたのだ。
 人間は隠そうとしていた記憶、もしくはコンプレックスを指摘されると、呆れるほど頼りなくなるものだ。ある人は気分が沈みがちになり、ある人は仕事に行けなくなる。リネン君は、大人になるということは秘密を隠し持つようになることだ、と言う。
 つまり、と僕は子どもなりに解釈する。大人達は誰もが胸に、洞窟を一つ隠し持っているのだ。穴の奥には宝箱があって、そこには美しい宝石が眠っている。宝石は脆く、強く触れば簡単に壊れてしまう。彼らは心を許せる仲間にだけその石を見せる⋯⋯と、こんな具合だろうか。
 リネン君は槍をかついでそこに押し入り、宝石を砕いてしまうのだろう。ばらばらに砕けた宝物。リネン君は散らばる破片を冷徹に見下ろす。物語の悪役のように⋯⋯。
 ではリネン君の洞窟は? 彼の胸板に視線を走らせる。何も見えない。堅く堅く閉ざされている。僕は酸っぱい林檎をもう一口齧る。
 午後の光が差す道を、僕等は歩いた。今日の暇つぶし相手は僕というわけだ。
「リネン君」
「何だ」
「僕、これ以上先へは行けないよ。学区外だもの」
「そんなの気にするな。保護者がついてるじゃないか」
 リネン君は自分を指差した。頼りになりそうもない。
「学校はどうだ」
「楽しいよ」
「嘘つくんじゃない」
「嘘じゃないよ。リネン君は楽しくなかったの?」
「楽しくなかったね。誰がクラスメイトだったかすら覚えていない。あー、思い出したくもない」
 路地裏は埃っぽく閑散としていた。あちこちに土煙で茶色くなったガラクタが転がり、腐り始める時を待っている。プロペラの欠けた扇風機、何も植えられることのなかった鉢、泥棒に乗り捨てられた自転車⋯⋯。隙間からたんぽぽが図太く茎を伸ばしている。僕達はそれらを踏み越える。
「友達とは上手くやれているか」
「大人みたいなことを聞くんだね」
「俺だって時々大人になるさ」
「都合の悪い時は子どもになるくせに?」
「黙ってろ。小遣いやらないぞ」
「ごめんごめん。友達とはまあまあだよ」
「どんな奴だ」
「うーん」
 僕はそれなりに仲のいい面子を思い浮かべる。けれど結局、分からない、とだけ言った。なぜなら誰であっても、リネン君の擦り切れた個性には敵わないように思えたからだ。僕の脳内で神に扮したリネン君が、同級生の頭上に腕組みをしてふんぞり返った。
「どいつもこいつもじゃがいもみたいな顔してやがる。区別がつかねえのも当然だ」
 リネン君はまさに愚民を見下ろす神の如くぼやく。だが僕は彼を尊敬しているわけではない。むしろ彼のようになるくらいなら、じゃがいもでいる方がましだと思う。
「ところでリネン君、僕等は一体どこに向かっているの?」
 彼の三角の鼻の穴が答えた。
「廃墟だよ。夢のタイピストに会いに行く」
 潮の匂いに誘われ松林を抜けると、そこは海だ。透き通った水色の波が穏やかに打ち寄せる。春の太陽が砂を温め、足の裏がほかほかと気持ちいい。リネン君の頭にカモメが糞を落とす。鳥に拳を振り上げ本気で怒り狂う彼を見て、僕は大笑いする。
 その建物は浜辺にぽつりと佇んでいた。四角い外観に白い壁、すっきりとした窓。今は壊れかけて見る影もないが、かつては垢抜けた家だったのだろう。
ペンキが剥げたドアを開ける。錆びた蝶番がひどい音を立てる。中はがらんとしていた。一室が広いので、間取りを把握するのに手間取る。主人を失った椅子が一脚悲しげに倒れている。家具といったらそれきりだ。天井も床もところどころ抜けている。まだらに光が降り注ぎ、さながら海の中のようだ。
 空っぽの缶詰を背負ったヤドカリが歩いている。リネン君がそれをつまみ、ふざけて僕の鼻先に押しつける。僕の悲鳴が反響し消えてゆく。本当にここにお兄さんが住んでいるのだろうか。
「どこにいるってんだ。これだけ広いと探すのも手間だぜ」
リネンくんは穴の空いた壁を撫で、目を細める。
「僕は何だかわくわくするな。秘密基地みたいで」
「だからお前はガキだってんだ」
「うるさいな⋯⋯あ」
「あ」
 僕等はようやく彼を見つけた。
 お兄さんは奥の小さな部屋にいた。バネの飛び出た肘掛け椅子に座り、一心不乱にタイプライターを叩いている。紙に見えない文字が次々と刻まれてゆく。テーブルには白紙の「原稿」が山積みになっていた。僕等は息を呑み、その光景に見入る。
僕は目の前の人物がお兄さんだと信じることができなかった。きらきらしていた瞳は濁っていた。締まった頬はこけていた。真っ直ぐだった背骨はたわんでいた。若さでぴんと張ったお兄さんは、くしゃくしゃになっていた。
「ご熱心なことで」
 リネン君はテーブルに寄りかかり、これみよがしに足を組む。
「おい、元気か」
 お兄さんは僕等に目もくれない。リネン君は溜息を吐く。
「聞こえてるのか」
 先程よりも大きな声だった。沈黙が訪れると、キーを叩く音だけがカチャカチャと鳴った。呼吸のように規則正しく。カチャカチャカチャ、チーン。カチャカチャカチャカチャ、カチャ。
 リネン君は懲りずに話しかける。
「何を書いてるんだ。小説か。いいご身分だな。ちゃんと物食ってるか。誰が運んでくれてる。あの女か?答えろよ。答えろっつうんだ。おい!」
 かつてお兄さんは僕とよく遊んでくれた。爽やかに笑う人だった。時折食事に誘ってくれた。決まって薄味の感じのいい料理だった。彼女が顔を出す日もあった。彼に似て優しい女性だった。リネン君が彼女を知るまでは。
「お前、俺が彼女と寝てからおかしくなったんだってな」
 リネン君はねちっこい口調で囁く。
「脆いもんだ、人間なんて。そうだろ? 好青年だったお前がこんなに縮んじまった。どうしたんだ? 筋トレは。スポーツは。やめちまったのかよ。友達は会いにこないのか? そうだよな。病人と面会なんて辛気臭いだけだ。
 お前は何もかも失ったんだ。大事なものから見放されたんだ。良かったなあ、重かっただろ。俺はお前の重荷を下ろしてやったんだよ。大事なものを背負えば背負うほど、人生ってのは面倒になるからな。
 にしても、たかが女一人逃げたくらいで自分を破滅させるなんて馬鹿なやつだな。お前は本当に馬鹿なやつだよ」
 お兄さんは依然として幻の文字を凝視している。それにもかかわらず毒を吐き続けるリネン君がやにわに恐ろしくなる。一度宝石を砕かれた人は、何もかもどうでもよくなるのかもしれない。何も感じることができない空っぽの生き物。それは果たして人間なのだろうか。もしかしてリネン君の石は、もう壊されてしまった後なのかもしれない。
 チーン。
 お兄さんが初めて身動きをした。原稿が一ページできあがったらしい。彼は機械から完成品を抜き取ると、ロボットのように新たな用紙をセットした。後は同じことの繰り返しだった。決まったリズムでタイプを続けるだけ。カチャカチャカチャカチャ。
 リネン君は舌打ちをした。
 僕等は廃屋を後にした。夕日が雲を茜色に染め上げる。水平線が光を受けて星のように瞬いていた。海猫がミャアミャア鳴きながら海を越えてゆく。遠い国へ行くのだろうか。
「壊れた人間と話しても張り合いがねぇな。ったく時間の無駄だった。まともな部分が残ってたら、もう少し楽しめたんだがな」
 リネン君はクックック、と下劣な笑いをもらす。仄暗い部屋で背中を丸めていたお兄さんの横顔が頭をよぎる。
「リネン君、どうしてお兄さんだったの?」
 僕はリネン君に問いかける。糾弾ではなく、純粋な質問だ。リネン君は億劫そうに髭剃り跡を掻きむしった。
「お前には関係のないことだろ」
「お兄さんに何かされたの? お金がほしかったの? それとも彼女さんが好きで妬ましかったの?」
「どれもガキが考えそうなことだな」
「ねえ、何で? 教えてよ」
 彼は僕の肩をぽんと叩いた。それで分かった。彼は僕の問いに答えてはくれないだろう。明日も、明後日も、その先も。ひょっとするとリネン君も、自分がどうしてそうしてしまうのか分からないのかもしれない。だから洞窟荒らしを繰り返してしまうのかもしれない。それは彼の壊れた宝石がさせることなのかもしれない。ずっと、ずっと前に壊れてしまった宝石が。
 僕は彼の手を握る。
「僕には何でも話してよ。僕、子どもだし。大人の理屈なんて分からないし。リネン君が話したことは誰にも言わないよ。友達にも絶対。だからさ⋯⋯」
 リネン君は鼻をスンと鳴らした。何も言わなかったけれど、僕の手を払いのけることもしなかった。
 僕等はとぼとぼと暮れなずむ街道を歩いた。夜が深まるにつれ、繁華街のネオンがやかましくなる。リネン君は殊更騒がしい店の前で立ち止まると、
「これで何か食え」
僕に小銭を握らせドアの向こうに消えた。
 近くの自販機でコーラを買う。プルタブを開けると甘い香りが漂う。僕はリネン君の部屋に放置されていたビール缶の臭いを思い出す。どうして黄金色の飲み物からあんな臭いがするのだろう。コーラのように甘やかな匂いだったらいいのに。そう思うのは、僕が子どもだからなのだろうか。
 僕は全速力で走る。野良犬にちょっかいをかけていたら、すっかり遅くなってしまった。早く帰らないと母さんに怒られるかもしれない。これまでの時間誰と何をしていたのか問い詰められたら、リネン君のことを白状しなければならなくなる。自白したが最後「あんな人と付き合うのはやめなさい」理論で、監視の目が厳しくなるかもしれないのだ。
 慌ててアパートの敷地に駆け込んだ時、リネン君の部屋の前に女の人が座り込んでいるのが見えた。臍が出るほど短いTシャツ、玉虫色のジャケット、ボロボロのジーンズ。明るい髪色と首のチョーカーが奇抜な印象だ。切れかけた電球に照らされた物憂げな顔が気にかかり、つい声をかけてしまう。
「あの。リネン君、しばらく帰らないと思いますよ。居酒屋に入ってったから」
 女の人は僕を見た。赤い口紅がひかめく。瞬きをする度、つけ睫毛からバサバサと音がしそうだ。彼女はかすれた声で返事をした。
「そう。だろうと思った」
 彼女はラインストーンで飾られたバックから煙草を取り出し、火をつける。煙からほのかにバニラの香りがした。
「君は彼の弟?」
 僕はぶんぶんと首を横に振る。これだけは何が何でも否定しなければならない。
「ふーん。じゃ、友達?」
「そんなところです。僕が面倒を見てあげています」
「あいつ、いい歳なのに子どもに面倒見られてるんだ。おかしいの」
 女の人はチェシャ猫のようににやりと笑った。彼女は派手な上着のポケットをまさぐる。
「ほら、食べな」
 差し出された手にはミルク飴が一つ乗っていた。
「あ。有難うございます」
「あたしミクっていうの。よろしくね」
「よろしくお願いします」
 僕は彼女の横に腰かけ、飴玉を頬張った。懐かしい味が口内に広がる。ミクさんは足を地べたに投げ出し、ゆらゆらと揺らす。僕も真似をした。
「ミクさんはリネン君の彼女なんですか」
「はあ? 違うって。昨日あいつと飲んでたら突然ここに連れ込まれちゃって、明日も来いなんて言われてさ。暇だから何となく寄っただけ。彼氏は他にいる」
 恋人がいるのに名も知らぬ男の家に二晩続けて泊まりにくるなんて、やはり大人の考えることはよく分からない。
「それにあいつ、彼女いるんじゃないの?」
「えっ。いないですよ」
 正しくは「ちゃんとした彼女はいない」だ。
「そうなの? 昨日彼女の話で��り上がったのになあ。じゃあ思い出話だったんだ、あれ」
 好奇心が頭をもたげる。僕はわくわくと聞き返した。
「リネン君が言う彼女って、どんな人だったんですか?」
「えーとね。確か大学で知り合って」
 リネン君、大学なんて行ってたんだ。
「サークルの後輩で」
 サークル入ってたんだ。
「大人しくて可愛くて料理が上手くて守ってあげたくなる感じで」
 そんな人がリネン君と付き合うだろうか。
「結婚しようと思ってたんだって」
「まさか!」
「うわ、びっくりした。突然叫ばないでよね」
「すみません。今のリネン君からは全く想像できない話だったもので」
「そんなに?」
 やっぱ君っておかしいの、とミクさんは微笑む。
「どんな人にも、こっそり取っておきたい思い出って、あるからね」
 僕はひょっとして〝彼女〟がリネン君の宝石だったのではないかと推測し、やめた。いくら何でも陳腐だし、ありきたりな筋書きだ。恐らく宝石はもっと複雑で、多彩な色をしているはずだから。
ミクさんはあっけらかんと言う。
「ま、君の反応を見る限り、彼女の存在もあいつのでっちあげだった可能性が高いけど」
大いに有り得る。彼女は腰を上げスカートの砂を払った。
「行くんですか?」
「うん。君もそろそろ帰る時間でしょ?」
「リネン君にミクさんが来たこと、伝えときましょうか?」
「いいよ。この分じゃ、約束したことすら覚えてないと思うから」
ミクさんは僕に溢れんばかりにミルク飴を握らせると、
「またどこかでね」
カツカツとヒールを鳴らして立ち去った。
 ドアを開けた瞬間母さんがすっ飛んできて「心配したのよ!」と怒鳴った。
「まあ許してやれよ、男の子なんだから。なあ?」
「お父さんは黙ってて!」
「はい」
どうして僕の周りの男どもはこうも頼りないのか。
母さんにこってりしぼられながら、僕はかつてのリネン君の恋人を思い浮かべる。まなじりは涼しく吊り上がり、心なしか猫に似ている。けれどリネン君がどんな顔をして彼女に接していたのかという点においては、全く想像がつかない。
女性を抱いては捨てるリネン君。皮肉を言ってばかりのリネン君。人を廃人にするリネン君。リネン君にとって今の生活は、余生でしかないのだろうか。
洞窟は宝石の輝きを失ったら、どうなるのだろう。僕等は心が壊れても死なないけれど、それは果たして幸福なことなのだろうか。人は肉体が朽ちるまでは何があっても生きる運命だ。この体は意外と頑丈だから。
「聞いてるの?!あんたって子は本当に⋯⋯ちょっと、誰からこんなにミルク飴貰ったの!叱られながら舐めないの!」
「痛っ!」
頭をはたかれた衝撃で、口の中の飴がガチンと割れる。
僕の宝石は誰にも見つからないように、奥深くに隠しておこう。誰かが洞窟に侵入した場合に備え、武器を用意しておこう。相手を傷つけることのない柔らかな武器を。もしかしたらその敵は、リネン君かもしれないから。
僕がお説教されている頃、孤独なタイピストの家に誰かが食事を運んでいた。カーテンの向こう側に蝋燭の火が灯され、二人の影が浮かび上がる。
古びた机に湯気の立つ皿が置かれると、お兄さんはぴたりと手を止める。彼は凝り固まった体をやっとのことで動かし、痩せ細った手でスプーンを掴む。
その人は彼が料理を口に運ぶのを、伏し目がちに、いつまでも見守っていた。
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yagaikatsudo · 4 years
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北上川カヌー単独行② 盛岡~花巻
1997年9月23日~26日 4日間 3日・4日目
■3日目
7時起床。寒い、快晴、息が白い。 昨日までの寂しい風景が一変して輝いている。 作業服を着た土建屋のオジチャンが出勤前に釣りをしている。寒いですね、と言うと、今朝は10℃切ったからなぁ、と言った。 ラーメンを食い、テントを撤収、カヌーに荷物を詰め込む。困ったことに昨日、雨が降ったのに一昨日より水量が減っていて、カヌーをエントリーする場所の斜度がきつく、滑って川に落ちそうになる。すったもんだの末、ようやく川に漕ぎだすと、一部始終を橋の上から見ていたオバチャンが笑いながら「頑張れや~~」と見送ってくれた。今日は4名から「気ぃ~付けて~」「ご苦労さんやの~」と声援を送られたが、みな、ジイサン、バアサンだった。北上の川沿いに住むうら若き女性たちよ、今度赤いカヌーを見かけたら黄色い声で声援をよろしく。ビールなんか差し入れてくれたら更に嬉しい。 川の流れは穏やかだった。僕はなるべく漕がずに周りの木や田んぼ、泥岩の崖を眺めながら下った。 上半身を後ろにそらせば秋晴れの空が目に沁みる。カルガモの群れが突然現れたカヌーに驚いて、フガフガ鳴きながら飛んでゆく。
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↑泥岩の崖
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川幅広くなり大河の様相を呈してくる。時速5キロぐらいだろうか、クルクルと回るカヌーの上で、僕はユラユラと流されてゆく。ひたすらいい気分だ。
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後ろ向きに流されてゆくとゴツンと何かにぶつかったので焦った。水面ギリギリにある隠れ岩だ。パドルでバランス取り問題なし、再び流されてゆく。 東北新幹線の鉄橋の下をくぐり、右手に花巻空港に向け着陸態勢に入ったJASの機体を眺めながら行くと大正橋。 橋脚の向こうにしぶきを上げる瀬が見える。右を行けばたいしたことなさそうだが、久々の轟音に血が騒ぎ左を攻めた。しかし恐ろしいことにそこは50cmぐらいの落ち込みで、沈はしなかったが船底を思い切りこすってしまった。おまけに顔面に冷たいしぶきがドヒャッとかかった。
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次の井戸向橋で上陸、船底は補強に貼ってあったガムテープが裂け、本体の布も少し擦り切れていた。セメダインとガムテープで応急措置をし、乾くまで昼メシ(菓子パン)とする。
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再び出発。 川の両岸はジャングルのように鬱蒼としたり、突然、ヨーロッパの田園風景のようになったりと、様々な表情を見せてくれる。スメタナのモルダウなど口ずさみながらユックリ流されてゆく。 平和だ、そしてシアワセだ。思わず僕は天を仰いだ。
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そんな風景の中をしばらく行くと、川面から飛び出た岩の上で何かが光った。何だろうと思ってカヌーを近づけると、それは60cmはあるスッポンだった。スッポンは岩の上で気分よく昼寝をしていたのだ。光って見えたのはその立派な甲羅だった。野生のスッポンを見るのは初めてなので僕は独りで静かに興奮した。当のスッポンは昼寝を邪魔され、うざったそうな顔で僕に一瞥してスルスルチャポンと水の中に消えていった。 僕は急に腹が減った。スッポンを見てスッポン鍋を思い出してしまったのである。こう書くと、何て卑しい、あさましいと思うPTAのようなつまらない方もいらっしゃるだろうが、僕の育ちはそんなモンだから仕方がない。
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↑大河の雰囲気
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次第に雲が多くなり川の上を行く風も冷たさを増してきた。 少し力を入れて漕ぐ。大きく右へカーブしたところへ差し掛かると、そこには地層が幾つも重なった泥岩が連続していて、不思議な眺めだった。これを過ぎると花巻大橋、更にその向こうにはJR釜石線の鉄橋も見える。あの2つを越えれば今日の目的地、花巻ももう少しだ。怪しくなってきた空を眺めながら僕は漕ぎ続けた。
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花巻大橋を越え、釜石線の鉄橋が近づいてくるとゴーゴーと激しい瀬の音が聞こえてきた。カヌーの両脇に腕を立てて自分の体を持ち上げ、少しでも先が見えるようにする。 ”う~~、すごい瀬だ。2級と3級の中間ぐらいだなぁ、やだなぁ~。そう言えば何年か前、あそこで地元の漁師が死んだって本に書いてあったなぁ”と狼狽しつつも素早くコースを選ばなくてはいけない。 ゴ~~~という音が段々と大きくなり僕をビビらせる。エライコッチャ、エライコッチャと焦りながらカヌーを瀬に対し真正面に向け、下っ腹に力を入れ〝行くぜ”と呟き選んだコースに突っ込む。 その刹那、滅多に通りそうにない2両編成の釜石線が頭上を走って行く。チラッと見上げると小学生らしき男の子が、僕を見てアッというような顔をした。僕も目が合い、アッというような顔をしたが、目の前には荒れ狂うような瀬がオイデオイデしている。 次の瞬間、体が大きく跳ね上がったかと思うとすぐに叩きつけられ、顔面に冷たい水がぶち当たる。「ウヒョ~~~~~!!!」僕は我武者羅にパドルを漕いでバランスを取った。気が付くと無事に瀬を脱出していた。 それは一瞬だったが、日頃緊張感のない生活をしている僕にとってなかなかのスリルだった。 空はいつしか曇天となり、僕は宮沢賢治が名付けた花巻のイギリス海岸の端っこへ上陸した。盛岡から約45キロだ。 イギリス海岸とは渇水した時のここの河原の風景が、イギリスのそれと似た泥岩の奇観を呈していることに由来するそうだ。ただ、この日は水かさはあったため、その姿を見ることはできなかった。
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コスモスの咲く芝の上にテントを張っていると、観光客らしきカップルが写真を撮りながら冷たい視線を僕に投げかける。キキーッとタクシーが停まり、出てきた運ちゃんが、熟年フルムーン夫婦にガイドしながらこちらをチラチラと見ている。イギリス海岸はもっと向こうのはずなのに、何でみんなここへ来るんだろうと不思議に思っていると、近くの看板に「ここがイギリス海岸」と書いてあった。 端っこだと思っていたのはこちらの勘違いで、僕は宮沢賢治ゆかりのイギリス海岸のど真ん中にテントを張っていたのだ。 しかし、その芝と言い、コスモスと言い、眼下を流れる北上川と言い、そのロケーションは野宿者憧れの、と言った感じなので僕は死んだふりをしてテントを張った。見方を変えれば観光客ご一行も、「おお、さすがイギリス海岸、カヌーにテント、実にブリティッシュ、絵になりますなぁ」等と言いながら、パシャパシャ写真を撮れば良いのである。 まぁ、でも、そこに佇むのは、ど~見ても薄汚い三十路ジャパニーズの僕なので、実にブリティッシュ、とはいかないか。。。 街に出る。 見知らぬ街をウロウロするのは好きだ。何となくその土地の雰囲気が路地裏から伝わってくる。30分も歩けば、そこが自分の肌に合うところかどうか何となく分かってしまう。不思議なものでアチコチ旅してきたせいか、そんな風になってしまった。 そして花巻は良いところだった。何となく懐かしい気持ちにさせてくれるからだ。 公衆電話で明日の天気予報を聞く。70%雨。土地の人に尋ねても雨。 僕はあっさりこのカヌー旅の打ち止めを宣言した(誰も聞いてないが)。 もうすっかり「雨ニモ負ケテ、風ニモ負ケテ・・・ソンナ人ニワタシハナッテル」という気分だ。 ついでに明日は温泉!ということも、これまた別に誰も聞いていないけど宣言してしまった。花巻には幾つもの秘湯があるのだ。やっぱり旅の終わりは温泉に限る。 こうなったら後は酔っぱらうだけである。北上の流れを見ながら、戻りガツオのタタキとツブ貝の刺身を肴に、一番搾りをグビグビ飲む。ウマイ!シアワセ。 川の近くで生まれ育ったせいか、川を見ていると落ち着く、ビールがあると更に落ち着く、カネが無くても腹が減ってても落ち着く。 日が暮れてテントに入り、ヘッドランプの光を頼りに本を読み、ウイスキーを舐める。シアワセ。 いつの間にか眠ってしまったが、途中、雨音で目が覚める。ポタポタというテントに当たる雨音が気持ちいい。そして雨音は僕を再び眠らせた。
■4日目
雨の中、テントとカヌーを撤収。昨日頼んでおいた宅急便のトラックが取りに来てくれる。 電話で「イギリス海岸にいる服部です」と言うと、応対してくれた女の子が真面目に「では、明日午前中にイギリス海岸に伺います」と言ったのが可笑しかった。それに宅急便の運ちゃんも何故か、「どうぞ」と言って三色パンをくれたのも可笑しかった。 温泉は数ある秘湯の中から、案内所のオバサンが勧めてくれた大沢温泉にした。花巻駅からバスで1時間、山合いの渓流、豊沢川に面した一軒宿の露天風呂だ。 建物は宿のオヤジも知らないと言うほど古く、休憩室には、ここへ遊びに来た少年時代の宮沢賢治の写真もあった。湯治客が多いため障子で仕切られた和室がたくさんあり、その間の細い廊下を縫うように行くと渓流を臨む混浴の露天風呂。ここでも圧倒的にジイサン、バアサンだが、雨中の風呂は最高である。 この宿は素泊まり2,000円、夕食1,500円から、布団300円、毛布100円、ストーブ700円、枕10円など、細かく料金表に書いてあった。 花巻駅に戻り、〆として立ち食いそば屋で450円のじゃじゃ麺を食う。みそダレが美味い。 高校生の集団と一緒に鈍行列車に乗り東京を目指す。 またいつか、続きを下りたい。 終                           
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uso8oo · 4 years
Text
米長邦雄伝説
親友だった枡田幸三に「彼だけは会長にしてはいけない」と言われていた
あだ名は「オラウータン」
米長哲学「自分にとっては消化試合でも、相手にとって重要な対局であれば、相手を全力で負かす」 相手の降格が掛かった非タイトル戦に正装で戦う
自分自身のサイトから情報を発信しており、「個人的な発言なのか、連盟会長としての発言なのか」と将棋界を混乱に巻き込む
「『させてくれ』と女にお願いしているうちは半人前である」「鍛練して『してください』と頼まれるようにならなければいけない。 なおかつ、そのお願いに充分に応えられなくてはならない」
Q.ストレス解消法は?A.「口に出すわけにはいかない」
弟弟子の沼春雄と八ヶ岳に登頂。天狗岳山頂で「ああいいねえ」と言いながら自らの天狗を開チン
加藤一二三との十段戦。トイレで一緒になった観戦記者の山田史生に「ここだけは加藤さんには負けないんですね」と逸物を見せつける
瀬戸内寂聴と対談して「先生は最後にセックスしたのいつ?」
道後温泉のホテルで将棋連盟の社員を前にして「よし!明日は頑張ろうじゃないか」と下半身露出
米長邦雄追悼号では、これらの赤裸々なエピソードも掲載される
携帯サイトで「米長邦雄のさわやかイロザンゲ」を連載。内容はモテる秘訣、自身の過去についての赤裸々な告白だった
49歳11ヶ月で名人位を獲得(50才名人) 名人位を取った後妻に電話「帰ったら、オマンコしよう」
朝早くのさわやかな時間にラジオ番組を担当「米長邦雄・人生さわやか流」。内容は女性遍歴や不倫経験を赤裸々に告白する。
「米長の将棋」で穴熊相手の将棋を、女性の下着を脱がす事に例えて解説。
新宿のぼったくりバーにそれと知りつつ飲みに行き文句ひとつ言わず言われるままに支払い翌日も素知らぬ顔して行った。相手はぎょっとするも大サービスを受けた
死の床につく米長を見舞いに行った伊藤能の境遇を聞き、逆に分厚い金一封を渡した
観戦記者に「事務所の○○さんのおまんこ見た事ある?w」と問いかける
「まんこ知新」「正常位よ永遠なれ」という本を出版しようとして、編集者に止められた。
タイトル戦の打ち上げで、お酌に来た芸者に、おもむろに浴衣の裾を開いて米長玉を見せる。
劣勢になると局面を複雑にする手を指して逆転を狙う棋風から、「泥沼流」と呼ばれる。本人の見た目から「さわやか流」とも呼ばれた
将棋雑誌でプレゼントの色紙に書いた言葉「TOTOが あたたまるころ 尻をふき」
奨励会員の時に、将棋会館の二階から放尿
島朗にストレート負け、ホテルで自室から大浴場まで「ギャオーッ」と絶叫しながら全裸で疾走
45歳で南芳一から王将を奪取した際には、打ち上げの際に「まあ滅多に他人には見せないんですけど」と言いつつ 弟子の先崎学と歓喜の裸踊りを敢行。 目撃者からは「裸踊りで勃起させてる人は初めて見ました」との感想も。
A級順位戦、谷川浩司に完敗し、名人挑戦が遠のく。対局後「悔しい!」と叫びながら将棋会館4階より放尿を試みる。 心ある棋士たちの体を張った制止により未遂に終わる。
名人戦で三連敗して、本来の自分を取り戻さなければならないと、将棋を離れ女に向かう。 今まで感じた事がないという32歳の不感症の女を4時間半かけてイかせることに成功したことで自信を取り戻し 第4局は会心の将棋が出来た
65歳で前立腺がんを患う。SEXできなくなると手術を拒否して投薬治療
その後完治し、自らのブログで「愛人を作って、セ〇クスできました!、チンコから血が出ました」とファンへ歓喜の報告。
、「悲願千人斬り」という目標を立てましてね。千人の女性とする、と。 ・・・千人というのは、もうとにかく大変な数なんです。 三百八十人くらいまでノートに付けていたんだけど、結局五百人くらいまでいったのかな。 二十歳のころを振り返って、なんで千人斬りをもっと早く始めなかったのか、という反省がありますね。・・・
雑誌でチンコの白髪について語る。
性的描写マンガ規制。よーく考えると私自身の存在も問題ありかなあ。
中原誠との十段戦を前に「男四十、鳥取砂丘に立つ」と題して週刊誌に全裸写真を掲載。
俺以上に女を喜ばせられる男がどこにいる?
私の特技はセクハラで訴える女性かどうかを瞬時に見分けられることです。
巣鴨のとげぬき地蔵は線香の煙を患部に当てると御利益があります。前立腺癌の私は当然アソコにこすりつけました。
(読売新聞記者)電王戦について「デンノウセン、デンオウセンどっちが正しい読み方ですか?」米長「言葉を大事にする読売新聞ならではの質問だと思うのですが、将棋連盟というところは「どっちでもええやないか」という団体でございます。」
(弟子の中村太地について)「自分のタイトル19期を抜けるかは難しいが千人切りは間違いなく抜ける」
(84歳の男が、24歳の美女と結婚というニュースを聞いて)「よーし。元氣が出た。 」
「人妻を落とすのが最高の楽しみだ」
「手八丁、口八丁」手と口さえあればエッチはできる。
「この世を去るまでモテる法。これについて語り合う会を立ち上げたい。あっちもこっちも立ち上げたい。」
やった女の数を自慢
週のうちに5日は家に帰ってこない時期があった。
74才で買春疑惑。イタリアのベルルスコーニ首相。けしからんと怒るべきか、羨ましいと感心するべきか。
「女房を大事にしないような男は、よそへ行ってもモテません。今、目の前にあるものを大事にしないということですから」
「いちばん大事なことはな、いちばん最初の女に尊敬されることなんだ」
私のツイッターは80%が女性ファンが見ているような氣がしています。
原発の事故地に行ってみたい、でも90才になって子供が出来ない体になったらどうしようと心配だ。
「お前は元氣になると目が大きくなるね」「私は、あの、その、違う所なんですけど」
飲むと全裸で踊る。 弟子も全裸で踊らせる。
将棋界も「先生」と呼ばれるうちはまだまだだ、野球界の茂ちゃん、ワンちゃんのように。米ちゃんと呼ばれたい。
うんこなう。快心の作です。直径2センチで長さ80センチが一本にゅーっ。幸せです。」
快眠、快便。今朝は直径2センチ長さ70~80cmのが一本です。流すのが惜しい。うなぎさんサヨウナラ。
中国は発展途上国なんて言ってる国は日本だけだろう。発展増長国です。
「なんだ、なんだ。いきなりキスしようとして」「だってあなたチューしてって言ったでしょ」 「コタツの温度だよ。低温を中温にしてくれって言ったんだ。チューにしてくれ」
「スエデン食わぬは男の恥」。
「おい、一杯やろうよ」「俺、飲まねえ」「どうして?」「ノーマネー」
常用漢字追加196字。好きな字は駒ですね。氣になるのは淫、股、尻、蜜、勃、妖、萎、媛、艶、何か氣になるもんで。
「悪寒がするからお燗がいいわね」
私の朝食は洋食です。パン・ティーです。
お墓を購入、妻に「お前の人生は、はかない人生ではない。これからは墓ある人生だ。」
今日から師走。「しあわせっす」で締めくくりたいものです。
「オ××コ見るような目で将棋盤を見ろ」
「相手を誘惑するコツはあるんでしょうか」「YOUをワクワクさせることだね」
壱岐島で戸籍上200才の男性が史上最高齢の人となった。さすがは「生きの島」
イチローは早い。ちろうは遅い。
居候は長くて嫌われる。そうろうは早くて嫌われる。
お嬢さんがご懐妊。父親の方は役職をご解任。
羽生善治は名人、棋聖を防衛して他も好調です。ガッポリ入ったのかなぁ。「羽生り」が良いらしい。
「すべてうまくいった。感無量」「すべてがまずかった。菅無能」
古稀になった知人。「あっちこっち体も悪いところが増えてね。古機だ」
カテキンは勝て菌
「おい。凄いことになりそうだぞ。凄いシーンが見られる」数分後、息をひそめていても何も起こらない。何も音がしない。「シーン」
「マニフェストって公約じゃなくて口約なんだね」「どうして」「口約束ってことさ」
「マニフェストって公約じゃなくて膏薬なんだね」「どうして」「いつでも剥がせるってことさ」
ドガ展に32万人。ドガッと来たのね
私腹を肥やす時が至福の時
こっちの遊園地は中年女性が泣いている。豊島園(年増エーン)
工程表が東電から発表された。国から出して「見通しが悪かったら俺が責任を取る」くらいの事出来ないのか。これはイカン、遺憾である。
青春。若い頃は良かったなあ。今じゃ肝心のものがシュンとしたまま、と友人が嘆く。性しゅん時代。
「私は浮氣をしたことがない」
釣りガールが流行というんですね。私も釣ってみたい。
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hakobitsu · 6 years
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コヨーテたち
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 大丈夫別に そのままでいれば 割とうまくいく    いつも通りやるだけ                                     シャムキャッツ 「 Coyote 」
 大学の部室棟、と言ってもただブロックをコンクリートで塗り固めて作っただけの外にいるみたいに寒々しい建物なのだけど、まあ当時の僕たちはどこにいたって同じようなものだったし、誰かの窮屈なアパートに集まって騒いだり飲み食いして汚すくらいならと、よくそこに集まった。綺麗好きなのが一人か二人ちゃんといて、僕らがひねもす部屋でうだうだした後にちゃんとジュースや発泡酒の缶を集めて袋に入れて講義棟のゴミ捨て場まで運んだり、晴れた日にマットレスを誰かの原付に立てかけて干してから演習に出たりした。先輩が就職して引っ越して行く度に要らなくなったスピーカーだのビデオデッキだのを運んでくるので、いつの間にか誰の部屋よりも充実した場所になっていて、僕らはますます堕落していった。
 そう、充実は堕落をもたらすのかもしれなかった。僕の大学時代の記憶と言えば、その部室のことばかりなのである。
 誰かが長く付き合った恋人にフラれて手首を切ると騒いでいたと思ったら、誰かがライブハウスで会ったどこ女子大の女とその日のうちにヤった話で盛り上がったりとか、あるいは誰かがお金がなくて生協の脇に生えていたキノコを食べて気絶したと思ったら、別のやつはうまいバイトを見つけたとか言って大学には来ず月に数十万稼いで毎日すき家のステーキ膳を食べていたりとか、なんというか、そういう風に僕らはみんなが混ざり合って一つになって暮らしていた。誰も命が途切れるほどのダメージは受けなかったし、極端に何かに満足もしないのだった。  今では誰がステーキにありついていたのかも思い出せないし、そういう野草とか花とか食べてちょっと意識が飛んだことがあったのは自分だったような気もするし、結局誰がどうだったかみたいなことは上手く思い出せないのだ。みんなそうなんじゃないか、と勝手に思っている。  それでも、そんな部室から離脱して一人坂道を下っている最中の、間違いなく自分の鼻の先がつんとくる感じとか、何にもないのに間違いなく自分の涙がこぼれそうな感じとか、そういうのははっきりと思い出せる。あれは間違いなく自分の鼻だったし目だった感覚だったし、うつむいた時に目に入ってくるバンズのスリッポンの靴も、ベルトラインのあんまり市場に出回ってない、僕自身が気に入って買ったピースマークの柄だった。  そういうのも、アパートのドアノブの冷たさを思い出すとか、地鉄の小さい踏切の音聞くと思い出すとか、みんなそれぞれの何かがあるんじゃないかと勝手に思っている。
 そんな永遠に続きそうに思える時間が、決して永遠には続かないのだということの決定的な証拠のひとつに、今の僕らはなってしまっている。もしかすると僕だけは、そういうのを証明できるかもしれないと漠然と思っていたのだけど。  下手したらあの部室棟だってないのかもしれない。ただでさえ隙間風が多い建物だったし。  誰も怖くて確かめに行かないのだ。あるいは、確かめたとしても、報告しないのだ。
 部室には、野良犬が住み着いていた。  誰が、いつ、どこから連れてきたのかも定かではない。過去のない犬だった。その犬の歴史は、僕らの堕落の歴史と共に始まったのだ。毛足の長くて汚い雑種で、舌がいつもだらしなく垂れ下がっていた。口を閉じていた試しがない犬だった。  僕らはそいつを、各々好きなように呼んだ。スヌーピーとかウルフとかシロとかバックとか町田さんとか犬とか。茶色いそいつはどんな風に呼ばれてもへらへらしてこちらに近づいてきて、僕らが食べているスナック菓子やサンドイッチやらをねだるのだった。時々発泡酒を飲ませてみたりも。隣の部室だったダンス研究会のやつらより、その犬の方がよっぽどイケる口だった。そういう、自分の欲望に忠実なところが愛おしかった。素直なまま生きるのが難しい時代だったから、余計に。それで時々僕らも四つん這いになってみたりして、犬とお尻を追っかけ合うのだった。  食べても食べても痩せている犬だった。結局僕らの中の誰よりも、そいつが一番食っていたはずなのに。パンだのフランクフルトだの、学食で買ったものを部室にいる連中に一口ずつ齧らせていたら、あっという間に自分の取り分も無くなってしまうわけである。だから僕らは犬を代表者にしたのだ。最後の一口を床に放り投げてやって、待て待て待てと言いながら待たずにそれにかぶりつく犬を眺めていた。
「俺たちは傷を舐め合ってるだけなんやないか」と、犬顔のTが言い始めたのは、この国で大きな災害があった頃だった。四年の春。犬が一番懐いていたのがTだった。  被災地にインスタント食品や水を送ってあげるだのなんだのとボランティアサークルが躍起になっていた記憶がある。そういうのにも参加したし、犬にも僕らが買った食べ物の分け前を与えていた、ということになる。
 その頃、とはっきりと言えるのは何故かと言うと、僕は誰かが運び込んだ合皮の安っぽいソファに寝転がって、スニーカーの隙間からNHKの番組を見ていたことを覚えているからだ。それはこの街であった十数年前の災害と今回の災害の比較している討論番組で、かつてここいらの復興計画に関わった僕のゼミの先生が真ん中に映っていた。  多分インターネットを使えば、その番組が何年の何月何日何時にやっていたのか調べることができると思う。つまり、Tが「俺たちは傷を舐め合っているだけなんやないか」と言い始めた具体的な日時も調べられるということだ。
 Tはちょっとかわいそうなやつで、両親を既に亡くしていて、バイトをしながら夜間の授業に出ていて、その頃彼女にもフラれたのだった。サークル内ではギターボーカルをやっていて、ライブ中に手拍子したりするとものすごくキレるやつだった。「全体主義的やん」とか「テンポが合ってなくて気持ち悪いねん」とか「ステージ側から客が手拍子してんの見てると教祖になったみたいや」とか、まあごちゃごちゃと思いつく限りのことを言っていた。  犬は、別にTがいつもコンビニをぶら下げているわけでもないのに、一旦食べたり撫でられたりするのをやめて、Tのそばにそっとかけよるのだった。犬の気持ちなんて誰にもわかりようはないけど、あれは「嬉しそうに」としか形容できないかけより方だった。
 その「俺たちは傷を舐め合っているだけなんやないか」記念日のことを、僕はとにかくよく覚えている。Tが言ったことに、何て返せばいいのかわからなかったからだ。Tも別に僕に返答を求めている様子ではなくて、はっはっはっと短く息を吐き続けるアホ面の犬——しばらくバリーとでも呼んでおこうか——の首を撫でながら、ただそう言っただけなのだった。  カップラーメンかコーヒーでも作ろうとしていたのだろう、湯沸かし器が蒸気をあげながらこぽこぽ音を立てていて、煙が窓の青空に染み込んでいくところまで覚えている。  犬は、息を吐きながらTの顔をじっと見つめていた。    それからTは、僕らが夜になって音楽をかけて踊ったり、一人で見たら絶対笑わないようなバラエティ番組を見てげらげら笑ったり、ろくでもないゾンビ映画を観たり、卑猥な形に削ったスタイロフォームに誰かの元カノのブラジャーを着けて腰を振る真似をしてにわかに盛り上がると、必ず「俺たちは傷を舐め合ってるだけなんやないか」とつぶやくのだった。  Tの縁なし眼鏡の奥の眼は、それを本気で言っているのか、それとも本気っぽく言うというギャグにも取れる目つきで、どっちなのか判断できなかった。  ただ、バリーだけは何故か、千切れるんじゃないかというくらい激しく振っていた尻尾をしゅんとさせて、Tの言ったことを真面目に受け取っていたことに、僕は気づいていた。相変わらず舌は出しっぱなしにしていたけど。
 今そういうのを思い出すのは、どうしてなのだろう。傷?あの頃僕はそんなに傷ついていたのだろうか。そして傷を舐め合っていたのだろうか。  Tが言っていたのは「傷を舐め合おう」でも「傷を舐め合っている場合じゃない」でもなく、間違いなく「俺たちは傷を舐め合っているだけなんやないか」という問いかけだった。  水を差そうとしているのかどうか判断することも出来ない、というのは間違いなのかもしれない。僕らは判断するのが怖くて、無視していたんじゃないだろうか?
 バリーの話には結末がある。  しばらく部室で姿を見ないなと、僕らは随分心配した。特にTは部室棟の部屋を全部回って犬を知りませんかと聞いて回ったり、ペットショップや保健所に電話をかけまくったりしていた。「お前ら薄情やな」みたいなことをTは言わなかったし多分思ってもいなかったけど、なんとなく後ろめたくて僕らも色々探し回った。  もしかしたら、車に轢かれたり、道で変な物を食べたりしたんじゃないか。  落ち着きのない馬鹿な犬だったので、誰もがそう思った。あいつアホで可愛かったよな、尻尾振ってさ、と思い出を話すみたいに誰かが言うとき、犬は死んだことになっていたのだと思う。  繰り返しになるが、あの犬の歴史は、僕らの堕落の歴史と共に始まったのだ。だから、もしかしたら堕落の歴史が先細って収束に向かうのと同じように、犬も衰えて死んだのかもしれない。
 そう、僕らの堕落の歴史も、そろそろ終わりを迎えようとしていたのだ。
 と、そんなことをTも思い始めて犬を探すのを諦め、僕らと踊ったり教科書を燃やしてサンマを焼いたりするようになった頃、犬が見つかった。  犬は、その坂道の多い大学の傍の、高級住宅街で暮らしていた。  汚い毛は清潔に刈られ、服を着ていた。同じ庭に純潔の犬がいて、そいつとお尻を追いかけ回っているところを、たまたまバイトの帰り道にTが見つけたのだ。 「アホ面やったからすぐわかった」  相変わらず舌出しっぱなしのままやったわ。大きくて白い純潔のメス犬の鼻をぺろぺろ舐めてたよ。  T以外は誰も��ウィードでありマルクマスでありタカシでありハリーでありミスター・ボーンズでありプルートでありバリーでもあったその犬を見に行かなかった。Tは何度か見に行っていたと思う。どんな気持ちで、二匹の犬がよろしくやっているのを見ていたかは、想像するしかない。もしかするとやはり、「傷を舐め合ってるだけなんやないか」とつぶやいていたかもしれない。  僕は広い庭を走り回る犬を見たら、そう呟いただろうか?
 何か特別な力が、あの時代の自分たちにはあったのかもしれない。でも、あの半野良犬のことを思い出すと、実は最初から——そしてこれからも——そんな力はなくって、ただ大きな流れみたいなものに全て左右されているだけなのかもしれない���思い直してしまうのだ。
 僕はその大学を卒業してからその街を離れ、仕事���するために東京に出た。そしてまた仕事の都合で、その頃災害があった場所のすぐ傍——どこまでを傍と言って良いのかわからないけど——に住むことになった。  街並みというのはどこも同じに見える。夜の光が多いか少ないか、それくらいのものだ。余裕があるときは、どこの街並みも美しく見える。  そうしてかつての住まいから遠く離れた場所に住んでいることもあって、その頃の仲間とはあまり会えない。東京に仕事で行くときもみんながたくさん集まることは滅多になくて、二人とか三人とかで飲むだけだ。ああいう部室みたいな広々とした場所は東京のどこを探してもなくて、狭くてうるさい居酒屋で肩をすぼめて話さなくてはならない。踊ることもキャッチボールすることもうだうだと時間が過ぎていくのを待つこともできず、二時間ほど経ったらお金を払って帰る。
「俺たちは傷を舐め合っているだけなんやないか」  すごく良い言葉だぞ、T、と僕は思う。傷を舐め合っているだけなんじゃないか、俺たちは。そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。  お前は正しいぞ、T、と僕は思う。合っているかどうかに関わらず。  昨年の春だったか秋だったか、結婚式で同じテーブルだったTに——結婚式だって、信じられないな——その話をしたことがある。お前が言っていたことは正しいよ、絶対正しい。
「そんなん言うてた覚え、全くない」
 Tはそう言っていたけど、僕は覚えているのだ。  でもきっと、可愛がっていたあの犬のことは忘れていないんじゃないか、と思う。結婚式の時はちらりとも思い出さずにいて、確認していないのだけど。
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yo4zu3 · 4 years
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やさしい光の中で(柴君)
(1)ある日の朝、午前8時32分
 カーテンの隙間から細々とした光だけがチラチラと差し込む。時折その光は強くなって、ちょうど眠っていた俺の目元を直撃する。ああ朝だ。寝不足なのか脳がまだ重たいが、朝日の眩しさに瞼を無理矢理押し上げる。隣にあったはずの温もりは、いつの間にか冷え切った皺くちゃのシーツのみになっていた。ちらりとサイドテーブルに視線を流せば、いつも通り6時半にセットしたはずの目覚まし時計は、あろうことか針が8と9の間を指していた。
「チッ……勝手に止めやがったな」
 独り言のつもりで発した声は、寝起きだということもあり少しだけ掠れていた。それにしても今日はいつもに増して喉が渇いている。眠気眼を擦りながら、キッチンのほうから漂ってくる嗅ぎ慣れた深入りのコーヒーの香りに無意識に喉がこくりと鳴った。
 おろしたてのスウェットをまくり上げぼりぼりと腹を掻きながら寝室からリビングに繋がる扉を開けると、眼鏡をかけた君下は既に着替えてキッチンへと立っていた。ジューという音と共に、焼けたハムの香ばしい匂いが漂っている。時折フライパンを揺すりながら、君下は厚切りにされたそれをトングで掴んでひっくり返す。昨日実家から送ってきた荷物の中に、果たしてそんなハムが入っていたのだろうか。どちらにせよ君下が普段買ってくるスーパーのタイムセール品でないことは一目瞭然だった。
「おう、やっと起きたか」 「おはよう。てか目覚ましちゃんと鳴ってた?」 「ああ、あんな朝っぱらからずっと鳴らしやがって……うるせぇから止めた」
 やっぱりか、そう呟いた俺の言葉は、君下が卵を割り入れた音にかき消される。二つ目が投入され一段と香ばしい音がすると、塩と胡椒をハンドミルで少し引いてガラス製の蓋を被せると君下の瞳がこっちを見た。
「もうすぐできる。先に座ってコーヒーでも飲んどけ」 「ん」
 顎でくい、とダイニングテーブルのほうを指される。チェリーウッドの正方形のテーブルの上には、今朝の新聞とトーストされた食パンが何枚かと大きめのマグが2つ、ゆらゆらと湯気を立てていた。そのうちのオレンジ色のほうを手に取ると、思ったより熱くて一度テーブルへと置きなおした。丁度今淹れたところなのだろう。厚ぼったい取手を持ち直してゆっくりと口を付けながら、新聞と共に乱雑に置かれていた郵便物をなんとなく手に取った。  封筒の中に混ざって一枚だけ葉書が届いていた。君下敦様、と印刷されたそれは送り主の名前に見覚えがあった。正確には差出人の名前自体にはピンと来なかったが、その横にご丁寧にも但し書きで元聖蹟高校生徒会と書いてあったから、恐らくは君下と同じ特進クラスの人間なのだろうと推測が出来た。
「なんだこれ?同窓、会、のお知らせ……?」
 自分宛ての郵便物でもないのに中身を見るのは野暮だと思ったが、久しぶりに見る懐かしい名前に思わず裏を返して文面を読み上げた。続きは声に出さずに視線だけで追っていると、視界の端でコトリ、と白いプレートが置かれる。先程焼いていたハムとサニーサイドアップ、適当に千切られたレタスに半割にされたプチトマトが乗っていた。少しだけ眉間に皺が寄る。
「またプチトマトかよ」 「仕方ねぇだろ。昨日の残りだ。次からは普通のトマトにしてやるよ」
 大体トマトもプチトマトも変わんねぇだろうが、そう文句を言いながらエプロンはつけたままで君下は向かいの椅子に腰かけた。服は着替えたものの、長い前髪に寝ぐせがついて少しだけ跳ねあがっている。
「ていうか同じ高校なのになんで俺には葉書来てねぇんだよ」
 ドライフラワーの飾られた花瓶の横のカトラリー入れからフォークを取り出し、小さな赤にざくり、と突き立てて口へと放り込む。確かにクラスは違ったかもしれないが、こういう公式の知らせは来るか来ないか呼びたいか呼びたくないかは別として全員に送るのが礼儀であろう。もう一粒口に含み、ぶちぶちとかみ砕けば口の中に広がる甘い汁。プチトマトは皮が固くて中身が少ないから好きではない。やっぱりトマトは大きくてジューシーなほうに限るのだ。
「知らねぇよ……あーあれか。もしかして、実家のほうに来てるんじゃねぇの」 「あ?なんでそっちに行くんだよ」 「まあこんだけ人数いりゃあ、手違いってこともあるだろ」 「ったく……ポンコツじゃねぇかこの幹事」
 覚えてもいない元同級生は今頃くしゃみでもしているだろうか。そんなどうでもいいことが頭を過ったが、香ばしく焼き上げられたハムを一口大に切って口に含めばすぐに忘れた。噛むと思ったよりも柔らかく、スモークされているのか口いっぱいに広がる燻製臭はなかなかのものだ。いつも通り卵の焼き加減も完璧だった。
「うまいな、ハム。これ昨日の荷物のか?」 「ああ。中元の残りか知らないけど、すげぇいっぱい送って来てるぞ。明日はソーセージでもいいな」
 上等な肉を目の前に、いつもより君下の瞳はキラキラしているような気がした。高校を卒業して10年経ち、あれから俺も君下も随分大人になった。それでも相変わらず口が悪いところや、美味しいものに素直に目を輝かせるところなんて出会った頃と何一つ変わってなどいなかった。俺はそれが微笑ましくもあり、愛おしいとさえ思う。あとで母にお礼のラインでも入れて、ああ、それとついでに同窓会の葉書がそっちに来ていないかも確認しておこう。惜しむように最後の一切れを噛み締めた君下の皿に、俺の残しておいた最後の一切れをくれてやった。
(2)11年前
 プロ入りして5年が経とうとしていた。希望のチームからの誘いが来ないまま高校生活を終え、大学を5年で卒業して今のチームへと加入した。  過酷な日々だった。  一世代上の高校の先輩・水樹は、プロ入りした途端にその目覚ましい才能を開花させた。怪物という異名が付き、十傑の一人として注目された高校時代など、まだその伝説のほんの序章の一部に過ぎなかった。同じく十傑の平と共に一年目から名門鹿島で起用されると、実に何年振りかのチームの優勝へと大いに貢献した。日本サッカーの新時代としてマスメディアは大々的にこのニュースを取り上げると、自然と増えた聖蹟高校への偵察や取材の数々。新キャプテンになった俺の精神的負担は増してゆくのが目に見えてわかった。
 サッカーを辞めたいと思ったことが1度だけあった。  それは高校最後のインターハイの都大会。前回の選手権の覇者として山の一番上に位置していたはずの俺たちは、都大会決勝で京王河原高校に敗れるという失態を犯した。キャプテンでCFの大柴、司令塔の君下の連携ミスで決定機を何度も逃すと、0-0のままPK戦に突入。不調の君下の代わりに鈴木が蹴るも、向こうのキャプテンである甲斐にゴールを許してゲーム終了、俺たちの最後の夏はあっけなく終わりを迎えた。  試合終了の長いホイッスルがいつまでも耳に残る中、俺はその後どうやって帰宅したのかよく覚えていない。試合を観に来ていた姉の運転で帰ったのは確かだったが、その時他のメンバーたちはどうしたのかだとか、いつから再びボールを蹴ったのかなど、その辺りは曖昧にしか覚えていなかった。ただいつまでも、声を押し殺すようにして啜り泣いている、君下の声が頭から離れなかった。
 傷が癒えるのに時間がかかることは、中学選抜で敗北の味を知ったことにより感覚的に理解していた。君下はいつまでも部活に顔を出さなかった。いつもに増してボサボサの頭を掻き乱しながら、監督は渋い声で俺たちにいつものように練習メニューを告げる。君下のいたポジションには、2年の来須が入った。その意味は、直接的に言われなくともその場にいた部員全員が本能的に理解していたであろう。
『失礼します、監督……』
 皆が帰ったのを確認して教官室に���き慣れない部誌と共に鍵を返しに向かうと、そこには監督の姿が見えなかった。もう出てしまったのだろうか。一度ドアを閉めて、念のため職員室も覗いて行こうと校舎のほうへと向かう途中、どこからか煙草の香りが鼻を掠める。暗闇の中を見上げれば、ほとんどが消灯している窓の並びに一か所だけ灯りの付いた部屋が見受けられる。半分開けられた窓からは、乱れた黒髪と煙草の細い煙が夜の空へと立ち上っていた。
『お前まだ居たのか……皆は帰ったか?』 『はい、監督探してたらこんな時間に』
 部誌を差し出すと悪いな、と一言つけて監督はそれを受け取る。喫煙室の中央に置かれた灰皿は、底が見えないほどの無数の吸い殻が突き刺さり文字通り山となっていた。監督は短くなった煙草を口に咥えると、ゆっくりと吸い込んで零れそうな山の中へと半ば無理やり押し込み火を消した。
『君下は……あいつは辞めたわけじゃねぇだろ』 『お前がそれを俺に聞くのか?』
 監督は伏せられた瞳のまま俺に問い返す。パラパラと読んでいるのかわからないほどの速さで部誌をめくり、白紙のページを最後にぱたりと閉じた。俺もその動きを視線で追っていると、クマの濃く残る目をこちらへと向けてきた。お互いに何も言わなかった。  暫くそうしていると、監督は上着のポケットからクタクタになったソフトケースを取り出して、残りの少ないそれを咥えると安物のライターで火をつけた。監督の眼差しで分かったのは、聖蹟は、アイツはまだサッカープレーヤーとして死んではいないということだった。
 迎えの車も呼ばずに俺は滅多に行かない最寄り駅までの道のりを歩いていた。券売機で270円の片道切符を購入すると、薄明るいホームで帰路とは反対方向へ向かう電車を待つ列に並ぶ。間もなく電車が滑り込んできて、疲れた顔のサラリーマンの中に紛れ込む。少し混みあっていた車内でつり革を握りしめながら、車内アナウンスが目的の駅名を告げるまで瞼を閉じていた。  あいつに会いに行ってどうするつもりだったのだろう。今になって思えば、あの時は何も考えずに電車に飛び乗ったように思える。ガタンゴトンとレールを走る音を聞きながら、本当はあの場所から逃げ出したかっただけなのかもしれない。疲れた身体を引きずって帰り、あの日から何も変わらない敗北の香りが残る部屋に戻りたくないだけなのかもしれない。一人になりたくないだけなのかもしれない。
『次はー△△、出口は左側です』
 目的地を告げるアナウンスで思考が現実へと引き戻された。はっとして、閉まりかけのドアに向かって勢いよく走った。長い脚を伸ばせばガン、と大きな音がしてドアに挟まる。鈍い痛みが走る足を引きずりながら、再び開いたドアの隙間からするりと抜け出した。
 久しぶりに通る道のりは、いくつか電灯が消えかけていて薄暗く、不気味なほど人通りが少なかった。古い商店街の一角にあるキミシタスポーツはまだ空いているだろうか。スマホの画面を確認すれば、午後8時55分を指していた。営業時間はあと5分あるが、あの年中暇な店に客は一人もいないであろう。運が悪ければ既にシャッタは降りているかもしれない。
『本日、休業……だあ?』
 計算は無意味だった。店のシャッターに張り付けられた、チラシの裏紙には妙に整った字でお詫びの文字が並んでいた。どうやらここ数日間はずっとシャッターが降りたままらしいと、通りすがりの中年の主婦が店の前で息を切らす俺に親切に教えてくれた。ついでにこの先の大型スーパーにもスポーツ用品は売ってるわよ、と要らぬ情報を置いてその主婦は去っていった。こうやって君下の店の売り上げが減っていくという、無駄な情報を仕入れたところで今後使う予定が来るのだろうか。店の二階を見上げるも、君下の部屋に灯りはない。
『ったく、あの野郎は部活サボっといて寝てんのか?』
 同じクラスのやつに聞いても、君下のいる特進クラスは夏休み明けから自主登校となっているらしい。大学進学のためのコースは既に3年の1学期には高校3年間の教科書を終えており、あとは各自で予備校に行くなり自習するなりで受験勉強に励んでいるようだ。当然君下以外に強豪運動部に所属している生徒はおらず、クラスでもかなり浮いた存在だというのはなんとなく知っていた。誰もあいつが学校に来なくても、どうせ部活で忙しいぐらいにしか思わないのだ。  仕方ない、引き返すか。そう思い回れ右をしたところで、ある一つの可能性が脳裏に浮かぶ。可能性なんかじゃない。だがなんとなくだが、あいつがそこにいるという確信が、俺の中にあったのだ。
『くそっ……君下のやつ!』
 やっと呼吸が整ったところで、重い鞄を背負うと急いで走り出す。こんな時間に何をやっているのだろう、と走りながら我ながら馬鹿らしくなった。去年散々走り込みをしたせいか、練習後の疲れた身体でもまだ走れる。次の角を右へ曲がって、たしかその2つ先を左――頭の中で去年君下と訪れた、あの古びた神社への道のりを思い出す。そこに君下がいる気がした。
『はぁ……はぁっ……っ!』
 大きな鳥居が近づくにつれて、どこからか聞こえるボールを蹴る音に俺の勘が間違っていない事を悟った。こんなところでなにサボってんだよ、そう言ってやるつもりだったのに、いざ目の前に君下の姿が見えると言葉を失った。  あいつは、聖蹟のユニフォーム姿のままで、泥だらけになりながら一人でドリブルをしていた。  自分で作った小さいゴールと、所々に置かれた大きな石。何度も躓きながらも起き上がり、懸命にボールを追っては前へ進む。パスを出すわけでもなく、リフティングでもない。その傷だらけの足元にボールが吸い寄せられるように、馴染むように何度も何度も同じことを繰り返していた。
『ハッ……馬鹿じゃねぇの』
 お前も俺も。そう呟いた声は己と向き合っている君下に向けられたものではない。  あいつは、君下はもう前を向いて歩きだしていた。沢山の小さな石ころに躓きながら、小さな小さなゴールへと向かってその長い道のりへと一歩を踏み出していた。俺は君下に気付かれることがないように、足音を立てないようにして足早に神社を後にした。  帰りの電車を待つベンチに座って、ぼんやりと思い出すのは泥だらけの君下の背中だった。前を向け喜一、まだやれることはたくさんある。ホームには他に電車を待つ客は誰もいなかった。
(3)夕食、22時半
 気付けば完全に日は落ちていて、コートを照らすスタンドライトだけが暗闇にぼんやりと輝いていた。  思いのほか練習に熱中してしまったようで、辺りを見渡せば先輩選手らはとっくに自主練を切り上げて帰路に着いたようだった。何の挨拶もなしに帰宅してしまったチームメイトの残していったボールがコートの隅に落ちているのを見つけては、上がり切った息を整えながらゆったりと歩いて拾って回った。
 倉庫の鍵がかかったのを確認して誰もいないロッカールームへ戻ると、ご丁寧に電気は消されていた。先週は鍵がかけられていた。思い出すだけで腹が立つが、もうこんなことも何度目になった今ではチームに内緒で作った合鍵をいつも持ち歩くようにしている。ぱちり、スイッチを押せば一瞬遅れて青白い灯りが部屋を照らした。
 大柴は人に妬まれ易い。その容姿と才能も関係はあるが、自分の才能に胡坐をかいて他者を見下しているところがあった。大口を叩くのはいつものことで、慣れた友人やチームメイトであれば軽く受け流せるものの、それ以外の人間にとってみれば不快極まりない行為であることは間違いない。いつしか友人と呼べる存在は随分と減り、クラスや集団では浮いてしまうことが常であった。  今のチームも例外ではない。加入してすぐの公式戦にレギュラーでの起用、シーズン序盤での怪我による離脱、長期のリハビリ生活、そして残せなかった結果。大柴加入初年度のチームは、最終的に前年度よりも下回った順位でシーズンの幕を閉じることになった。それでも翌年からも大柴はトップに居座り続けた。疑問に思ったチームメイトやサポーターからの非難や、時には心無い中傷を書き込まれることもあった。ゴールを決めれば大喝采だが、それも長くは続かない。家が裕福なことを嗅ぎつけたマスコミにはある事ない事を週刊誌に書き並べられ、誰もいない実家の前に怪しげな車が何台も止まっていることもあった。  だがそんなことは、大柴にとって些細なことだった。俺はサッカーの神様に才能を与えられたのだと、未だにカメラの前でこう言い張ることにしている。実はもう一つ、大柴はサッカーの神様から貰った大切なものがあったが、それを口にしたことはないしこれからも公言する日はやって来ないだろう。
「ただいまぁー」 「お帰り、遅かったな」
 靴を脱いでつま先で並べると、靴箱の上の小さな木製の皿に車のキーを入れる。ココナッツの木から作られたそれは、卒業旅行に二人でハワイに行ったときに買ったもので、6年間大切に使い続けている。玄関までふわりと香る味噌の匂いに、ああやっとここへ帰ってきたのだと実感する。大股で歩きながらジャケットを脱ぎ、どさり、とスポーツバッグと共に床へ投げ出すと、倒れ込むように革張りのソファへとダイブした。
「おい、飯出来てるから先に食え。手洗ったか?」 「洗ってねぇ」 「ったく、何年も言ってんのにちっとも学習しねぇ奴だな。ほら、こっち来い」
 君下は洗い物をしていたのか、泡まみれのスポンジを握ってそれをこちらに見せてくる。この俺の手を食器用洗剤で洗えって言うのか、そう言えばこっちのほうが油が落ちるだとか、訳の分からない理論を並べられた。つまり俺は頑固汚れと同じなのか。
「こんなことで俺が消えてたまるかよ」 「いつもに増して意味わかんねぇな。よし、終わり。味噌汁冷める前にさっさと食え」
 お互いの手を絡めるようにして洗い流していると、背後でピーと電子音がして炊飯が終わったことを知らせる。俺が愛車に乗り込む頃に一通連絡を入れておくと、丁度いい時間に米が炊き上がるらしい。渋滞のときはどうするんだよ、と聞けば、こんな時間じゃそうそう混まねぇよ、と普段車に乗らないくせにまるで交通事情を知っているかのような答えが返ってくる。全体練習は8時頃に終わるから、自主練をして遅くても10時半には自宅に着けるように心掛けていた。君下は普通の会社員で、俺とは違い朝が早いのだ。
「いただきます」 「いただきます」
 向かい合わせの定位置に腰を下ろし、二人そろって手を合わせる。日中はそれぞれ別に食事を摂るも、夕食のこの時間を二人は何よりも大事にしていた。  熱々の味噌汁は俺の好みに合わせてある。最近は急に冷え込んできたから、もくもくと上る白い湯気は一段と白く濃く見えた。上品な白味噌に、具は駅前の豆腐屋の絹ごし豆腐と、わかめといりこだった。出汁を取ったついでにそのまま入れっぱなしにするのは君下家の味だと昔言っていた。
「喜一、ケータイ光ってる」 「ん」
 苦い腸を噛み締めていると、ソファの上に置かれたままのスマホが小さく震えている音がした。途切れ途切れに振動がするので、電話ではないことは確かだった。後ででいい、一度はそう言ったものの、来週の練習試合の日程がまだだったことを思い出して気だるげに重い腰を上げる。最新機種の大きな画面には、見覚えのある一枚の画像と共に母からの短い返信があった。
「あ、やっぱ葉書来てたわ。実家のほうだったか」 「ほらな」 「お前のはここの住所で、なんで俺のだけ実家なんだよ」 「知るかよ。どうせ行くんだろ、直接会った時に聞けばいいじゃねぇか」 「え、行くの?」
 スマホを持ったままどかり、と椅子へと座りなおし、飲みかけの味噌汁に手を伸ばす。ズズ、とわざと少し行儀悪くわかめを啜れば、君下の表情が曇るのがわかった。
「お前、この頃にはもうオフだから休みとれるだろ。俺も有休消化しろって上がうるせぇから、ちょうどこのあたりで連休取ろうと思ってる」 「聞いてねぇ……」 「今言ったからな」
 金平蓮根に箸を付けた君下は、いくらか摘まんで自分の茶碗へと一度置くと、米と共にぱくり、と頬張った。シャクシャクと音を鳴らしながら、ダークブラウンの瞳がこちらを見る。
「佐藤と鈴木も来るって」 「あいつらに会うだけなら別で集まりゃいいだろうが。それにこの前も4人で飲んだじゃねぇか」 「いつの話してんだよタワケが、2年前だぞあれ」 「えっそんなに前だったか?」 「ああ。それに今年で卒業して10年だとさ。流石に毎年は行かねぇが節目ぐらい行ったって罰は当たんねーよ」
 時の流れとは残酷なものだ。俺は高校を卒業してそれぞれ違う道へと進んでも、相変わらず君下と一緒にいた。だからそんな長い年月が経ったことに気付かなかっただけなのかもしれない。高校を卒業する時点で、俺たちがはじめて出会って既に10年が経っていたのだ。  君下はぬるい味噌汁を啜ると、満足そうに「うまい」と一言呟いた。
*
 今宵はよく月が陰る。  ソファにごろりと寝転がり、カーテンの隙間から満月より少し欠けた月をぼんやりと眺めていた。月に兎がいると最初に言ったのは誰だろうか。どう見ても、あの不思議な斑模様は兎なんかに、それも都合よく餅つきをしているようには見えなかった。昔の人間は妙なことを考える。星屑を繋げてそれらを星座だと呼び、一晩中夜空を眺めては絶え間なく動く星たちを追いかけていた。よほど暇だったのだろう。こんな一時間に何センチほどしか動かないものを見て、何が面白いというのだろうか。
「さみぃ」
 音もなくベランダの窓が開き、身体を縮こませた君下が湯気で温かくなった室内へと戻ってくる。君下は二十歳から煙草を吸っていた。家で吸うときはこうやって、それも洗濯物のない時にだけ、それなりに広いベランダの隅に作った小さな喫煙スペースで煙草を嗜む。別に換気扇さえ回してくれれば部屋で吸ってもらっても構わないと俺は言っているのだが、頑なにそれをしようとしないのは君下のほうだった。現役のスポーツ選手である俺への気遣いなのだろう。こういう些細なところでも、俺は君下に支えられているのだと実感する。
「おい、キスしろ」
 隣に腰を下ろした君下に、腹を見せるように上を向いて唇を突き出した。またか、と言いたげな顔をしたが、間もなく長い前髪が近づいてきてちゅ、と小さな音を立てて口づけが落とされた。一度も吸ったことのない煙草の味を、俺は間接的に知っている。少しだけ大人になったような気がするのがたまらなく心地よい。
 それから少しの間、手を握ったりしてテレビを見ながらソファで寛いだ。この時間にもなればいつもニュースか深夜のバラエティー番組しかなかったが、今日はお互いに見たい番組があるわけでもなかったので適当にチャンネルを回してテレビを消した。  手元のランプシェードの明かりだけ残して電気を消し、寝室の真ん中に位置するキングサイズのベッドに入ると、君下はおやすみとも言わないまま背を向けて肩まで掛け布団を被ってしまった。向かい合わせでは寝付けないのはいつもの事だが、それにしても今日は随分と素っ気ない。明日は金曜日で、俺はオフだが会社員の君下には仕事がある。お互いにもういい歳をした大人なのだ。明日に仕事を控えた夜は事には及ばないようにはしているが、先ほどのことが胸のどこかで引っかかっていた。
「もう寝た?」 「……」 「なあ」 「……」 「敦」 「……なんだよ」
 消え入りそうなほど小さな声で、君下が返事をする。俺は頬杖をついていた腕を崩して布団の中に忍ばせると、背中からその細身の身体を抱き寄せた。抵抗はしなかった。
「こっち向けよ」 「……もう寝る」 「少しだけ」 「明日仕事」 「分かってる」
 わかってねぇよ、そう言いながらもこちらに身体を預けてくる、相変わらず素直じゃないところも君下らしい。ランプシェードのオレンジの灯りが、眠そうな君下の顔をぼんやりと照らしている。長い睫毛に落ちる影を見つめながら、俺は薄く開かれた唇に祈るように静かにキスを落とした。
 こいつとキスをするようになったのはいつからだっただろうか。  サッカーを諦めかけていた俺に道を示してくれたその時から、ただのチームメイトだった男は信頼できる友へと変化した。それでも物足りないと感じていたのは互いに同じだったようで、俺たちは高校を卒業するとすぐに同じ屋根の下で生活を始めた。が、喧嘩の絶えない日々が続いた。いくら昔に比べて関係が良くなったとはいえ、育ちも違えば本来の性格が随分と違う。事情を知る数少ない人間も、だからやめておけと言っただろう、と皆口を揃えてそう言った。幸いだったのは、二人の通う大学が違ったことだった。君下は官僚になるために法学部で勉学に励み、俺はサッカーの為だけに学生生活を捧げた。互いに必要以上に干渉しない日々が続いて、家で顔を合わせるのは、いつも決まって遅めの夜の食卓だった。  本当は今のままの関係で十分に満足している。今こそ目指す道は違うが、俺たちには同じ時を共有していた、かけがえのない長い長い日々がある。手さぐりでお互いを知ろうとし、時にはぶつかり合って忌み嫌っていた時期もある。こうして積み重ねてきた日々の中で、いつの日か俺たちは自然と寄り添いあって、お互いを抱きしめながら眠りにつくようになった。この感情に名前があるとしても、今はまだわからない。少なくとも今の俺にとって君下がいない生活などもう考えられなくなっていた。
「……ン゛、ぐっ……」
 俺に組み敷かれた君下は、弓なりに反った細い腰をぴくり、と跳ねさせた。大判の白いカバーの付いた枕を抱きしめながら、押し殺す声はぐぐもっていてる。決して色気のある行為ではないが、その声にすら俺の下半身は反応してしまう。いつからこうなってしまったのだろう。君下を抱きながらそう考えるのももう何度目の事で、いつも答えの出ないまま、絶頂を迎えそうになり思考はどこかへと吹き飛んでしまう。
「も、俺、でそ、うっ……」 「あ?んな、俺もだ馬鹿っ」 「あっ……喜一」
 君下の腰から右手を外し、枕を上から掴んで引き剥がす。果たしてどんな顔をして俺の名を呼ぶのだと、その顔を拝みたくなった。日に焼けない白い頬は、スポーツのような激しいセックスで紅潮し、額にはうっすらと汗が浮かんでいる。相変わらず眉間には皺が寄ってはいたが、いつもの鋭い目つきが嘘のように、限界まで与えられた快楽にその瞳を潤ませていた。視線が合えば、きゅ、と一瞬君下の蕾が収縮した。「あ、出る」とだけ言って腰のピストンを速めながら、君下のイイところを突き上げる。呼吸の詰まる音と、結合部から聞こえる卑猥な音を聞きながら、頭の中が真っ白になって、そして俺はいつの間にか果てた。全て吐き出し、コンドームの中で自身が小さくなるのを感じる。一瞬遅れてどくどくと音がしそうなほどに爆ぜる君下の姿を、射精後のぼんやりとした意識の中でいつまでも眺めていた。
(4)誰も知らない
 忙しないいつもの日常が続き、あっという間に年も暮れ新しい年がやってきた。  正月は母方の田舎で過ごすと言った君下は、仕事納めが終われば一度家に戻って荷物をまとめると、そこから一週間ほど家を空けていた。久しぶりに会った君下は、少しばかり頬が丸くなって帰ってきたような気がしたが、本人に言うとそんなことはないと若干キレながら否定された。目に見えて肥えたことを気にしているらしい本人には申し訳ないが、俺はその様子に少しだけ安心感を覚えた。祖父の葬儀以来、もう何年も顔を見せていないという家族に会うのは、きっと俺にすら言い知れぬ緊張や、不安も勿論あっただろう。  だがこうやって随分と可愛がられて帰ってきたようで、俺も正月ぐらい実家に顔を出せばよかったかなと少しだけ羨ましくなった。本人に言えば餅つきを手伝わされこき使われただの、田舎はやることがなく退屈だなど愚痴を垂れそうだが、そのお陰なのか山ほど餅を持たせられたらしく、その日の夜は冷蔵庫にあった鶏肉と大根、にんじんを適当に入れて雑煮にして食べることにした。
「お前、俺がいない間何してた?」
 君下が慣れた手つきで具材を切っている間、俺は君下が持ち帰った土産とやらの箱を開けていた。中には土の付いたままの里芋だとか、葉つきの蕪や蓮根などが入っていた。全て君下の田舎で採れたものなのか、形はスーパーでは見かけないような不格好なものばかりだった。
「車ねぇから暇だった」 「どうせ車があったとしても、一日中寝てるか練習かのどっちかだろうが」 「まあ、大体合ってる」
 一通り切り終えたのか包丁の音が聞こえなくなり、程なくして今度は出汁の香りが漂ってきた。同時に香ばしい餅の焼ける香りがして、完成が近いことを悟った俺は一度箱を閉めるとダイニングテーブルへと向かい、箸を二膳出して並べると冷蔵庫から缶ビールを取り出してグラスと共に並べた。
「いただきます」 「いただきます」
 大きめの深い器に入った薄茶色の雑煮を目の前に、二人向かい合って座り手を合わせる。実に一週間ぶりの二人で摂る夕食だった。よくある関東風の味付けに、四角く切られ表面を香ばしく焼かれた大きな餅。シンプルだが今年に入って初めて食べる正月らしい食べ物も、今年初めて飲む酒も、すべて君下と共に大事に味わった。
「あ、そうだ。明日だからな、あれ」
 3個目の餅に齧りついた俺に、そういえばと思い出したかのように君下が声を発した。少し冷めてきたのか噛み切れなかった餅を咥えたまま、肩眉を上げて何の話かと視線だけで問えば、「ほら、同窓会のやつ」と察したように答えが返ってきた。「ちょっと待て」と掌を君下に見せて、餅を掴んでいた箸に力を入れて無理矢理引きちぎると、ぐにぐにと大雑把に噛んでビールで流し込む。うまく流れなかったようで、喉のあたりを引っかかる感触が気持ち悪い。生理的に込み上げてくる涙を瞳に浮かべていると、席を立った君下は冷蔵庫の扉を開けてもう2本ビールを取り出して戻ってきた。
「ほら飲め」 「おま……水だろそこは」 「いいからとりあえず流し込め」
 空になった俺のグラスにビールを注げば、ぶくぶくと泡立つばかりで泡だけで溢れそうになった。だから水にしとけと言ったのだ。チッ、と舌打ちをした君下は、少し申し訳なさそうに残りの缶をそのまま手渡してきた。直接飲むのは好きではないが、今は文句を言ってられない。奪うように取り上げると、ごくごくと大げさに喉を鳴らして一気に飲み干した。
「は~……死ぬかと思った。相変わらずお酌が下手だなお前は」 「うるせぇな。俺はもうされる側だから仕方ねぇだろうが」
 そう悪態をつきながら、君下も自分の缶を開ける。プシュ、と間抜けな音がして、グラスを傾けて丁寧にビールを注いでゆく。泡まで綺麗に注げたそれを見て、満足そうに俺に視線を戻す。
「あ、そうだよ、話反らせやがって……まあとにかく、明日は俺は昼ぐらいに会社に少し顔出してくるから、ついでに親父んとこにも寄って、そのまま会場に向かうつもりだ」 「あ?親父さんも一緒に田舎に行ったんじゃねぇの?」 「そうしようとは思ったんだがな、店の事もあるって断られた。ったく誰に似たんだかな」 「それ、お前が言うなよ」
 君下の言葉になんだかおかしくなってふふ、と小さく笑えば、うるせぇと小さく舌打ちで返された。綺麗に食べ終えた器をテーブルの上で纏めると、君下はそれらを持って流しへと向かった。ビールのグラスを軽く水で濯いでから、そこに半分ぐらい溜めた水をコクコクと喉を鳴らして飲み込んだ。
「俺もう寝るから、あとよろしくな。久々に運転すると疲れるわ」 「おう、お疲れ。おやすみ」
 俺の言葉におやすみ、と小さく呟いた君下は、灯りのついていない寝室へと吸い込まれるようにして消えた。ぱたん、と扉が閉まる音を最後に、乾いた部屋はしんとした静寂に包まれる。手元に残ったのは、ほんの一口分だけ残った温くなったビールの入ったグラスだけだった。  頼まれた洗い物はあとでやるとして、さてこれからどうしようか。君下の読み通り、今日は一日中寝ていたため眠気はしばらくやって来る気配はない。テレビの上の時計を見ると、ちょうど午後九時を回ったところだった。俺はビールの残りも飲まずに立ち上がると、食器棚に並べてあるブランデーの瓶と、隣に飾ってあったバカラのグラスを手にしてソファのほうへとゆっくり歩き出した。
*
 肌寒さを感じて目を覚ました。  最後に時計を見たのはいつだっただろうか。微睡む意識の中、薄く開いた瞳で捉えたのは、ガラス張りのローテーブルの端に置かれた見覚えのあるグラスだった。細かくカットされた見事なつくりの表面は、カーテンから零れる朝日を反射してキラキラと眩しい。中の酒は幾分か残っていたようだったが、蒸発してしまったのだろうか、底のほうにだけ琥珀色が貼り付くように残っているだけだった。  何も着ていなかったはずだが、俺の肩には薄手の毛布が掛かっていた。点けっぱなしだった電気もいつの間にか消されていて、薄暗い部屋の中、遮光カーテンから漏れる光だけがぼんやりと座っていたソファのあたりを照らしていた。酷い喉の渇きに、水を一口飲もうと立ち上がると頭痛と共に眩暈が���た。ズキズキと痛む頭を押さえながらキッチンへ向かい、食器棚から新しいコップを取り出して水を飲む。シンクに山積みになっていたはずの洗い物は、跡形もなく姿を消している。君下は既に家を出た後のようだった。
 それから昼過ぎまでもう一度寝て、起きた頃には朝方よりも随分と温かくなっていた。身体のだるさは取れたが、相変わらず痛む頭痛に舌打ちをしながら、リビングのフローリングの上にマットを敷いてそこで軽めのストレッチをした。大柴はもう若くはない。三十路手前の身体は年々言うことを聞かなくなり、1日休めば取り戻すのに3日はかかる。オフシーズンだからと言って単純に休んでいるわけにはいかなかった。  しばらく柔軟をしたあと、マットを片付け軽く掃除機をかけていると、ジャージの尻ポケットが震えていることに気が付いた。佐藤からの着信だった。久しぶりに見るその名前に、緑のボタンを押してスマホを耳と肩の間に挟んだ。
「おう」 「あーうるせぇよ!掃除機?電話に出る時ぐらい一旦切れって」
 叫ぶ佐藤の声が聞こえるが、何と言っているのか聞き取れず、仕方なくスイッチをオフにした。ちらりと壁に視線を流せば、時計針はもうすぐ3時を指そうとしていた。
「わりぃ。それよりどうした?」 「どうしたじゃねぇよ。多分お前まだ寝てるだろうから、起こして同窓会に連れてこいって君下から頼まれてんだ」 「はあ……ったく、どいつもこいつも」 「まあその調子じゃ大丈夫だな。5時にマンションの下まで車出すから、ちゃんと顔洗って待ってろよ」 「へー」 「じゃあ後でな」
 何も言わずに通話を切り、ソファ目掛けてスマホを投げた。もう一度掃除機の電源を入れると、リビングから寝室へと移動する。普段は掃除機は君下がかけるし、皿洗い以外の大抵の家事はほとんど君下に任せっきりだった。今朝はそれすらも君下にさせてしまった罪悪感が、こうやって自主的にコードレス掃除機をかけている理由なのかもしれない。  ベッドは綺麗に整えてあり、真ん中に乱雑に畳まれたパジャマだけが取り残されていた。寝る以外に立ち入らない寝室は綺麗なままだったが、一応端から一通りかけると掃除機を寝かせてベッドの下へと滑り込ませる。薄型のそれは狭い隙間も難なく通る。何往復かしていると、急に何か大きな紙のようなものを吸い込んだ音がした。
「げっ……何だ?」
 慌てて電源を切り引き抜くと、ヘッドに吸い込まれていたのは長い紐のついた、見慣れない小さな紙袋だった。紺色の袋の表面に、金色の細い英字で書かれた名前には見覚えがあった。俺の覚え違いでなければ、それはジュエリーブランドの名前だった気がする。
「俺のじゃねぇってことは、これ……」
 そこまで口に出して、俺の頭の中には一つの仮説が浮かび上がる。これの持ち主は十中八九君下なのだろう。それにしても、どうしてこんなものがベッドの下に、それも奥のほうへと押しやられているのだろうか。絡まった紐を引き抜いて埃を払うと、中を覗き込む。入っていたのは紙袋の底のサイズよりも一回り小さな白い箱だった。中を確認したかったが、綺麗に巻かれたリボンをうまく外し、元に戻せるほど器用ではない。それに、中身など見なくてもおおよその見当はついた。  俺はどうするか迷ったが、それと電源の切れた掃除機を持ってリビングへと戻った。紙袋をわざと見えるところ、チェリーウッドのダイニングテーブルの上に置くと、シャワーを浴びようとバスルームへと向かった。いつも通りに手短に済ませると、タオルドライである程度水気を取り除いた髪にワックスを馴染ませ、久しぶりに鏡の中の自分と向かい合う。ここ2週間はオフだったというのに、ひどく疲れた顔をしていた。適当に整えて、顎と口周りにシェービングクリームを塗ると伸ばしっぱなしだった髭に剃刀を宛がう。元々体毛は濃いほうではない。すぐに済ませて電気を消して、バスルームを後にした。
「お、来た来た。やっぱりお前は青のユニフォームより、そっちのほうが似合っているな」
 スーツに着替え午後5時5分前に部屋を出て、マンションのエントランスを潜ると、シルバーの普通車に乗った佐藤が窓を開けてこちらに向かって手を振っていた。助手席には既に鈴木が乗っており、懐かしい顔ぶれに少しだけ安堵した。よう、と短く挨拶をして、後部座席のドアを開けると長い背を折りたたんでシートへと腰かけた。  それからは佐藤の運転に揺られながら、他愛もない話をした。最近のそれぞれの仕事がどうだとか、鈴木に彼女が出来ただとか、この前相庭のいるチームと試合しただとか、離れていた2年間を埋めるように絶え間なく話題は切り替わる。その間も車は東京方面へと向かっていた。
「君下とはどうだ?」 「あー……相変わらずだな。付かず離れずって感じか」 「まあよくやってるよな、お前も君下も。あれだけ仲が悪かったのが、今じゃ同棲だろ?みんな嘘みたいに思うだろうな」 「同棲って言い方やめろよ」 「はーいいなぁ、俺この間の彼女に振られてさ。せがまれて高い指輪まで贈ったのに、あれだけでも返して貰いたいぐらいだな」
 指輪という言葉に、俺の顔の筋肉が引きつるのを感じた。グレーのパンツの右ポケットの膨らみを、無意識に指先でなぞる。車は渋滞に引っかかったようで、先ほどからしばらく進んでおらず車内はしん、と静まり返っていた。
「あーやべぇな。受付って何時だっけ」 「たしか6時半……いや、6時になってる」 「げ、あと20分で着くかな」 「だからさっき迂回しろって言ったじゃねぇか」
 このあたりはトラックの通行量も多いが、帰宅ラッシュで神奈川方面に抜ける車もたくさん見かける。そういえば実家に寄るからと、今朝も俺の車で出て行った君下はもう会場に着いたのだろうか。誰かに電話をかけているらしい鈴木の声がして、俺は手持ち無沙汰に窓の外へと視線を投げる。冬の日の入りは早く、太陽はちょうど半分ぐらいを地平線の向こうへと隠した頃だった。真っ赤に焼ける雲の少ない空をぼんやりと眺めて、今夜は星がきれいだろうか、と普段気にもしていないことを考えていた。
(5)真冬のエスケープ
 車は止まりながらもなんとか会場近くの地下駐車場へと止めることができた。幹事と連絡がついて遅れると伝えていたこともあり、特に急ぐこともなく会場までの道のりを歩いて行った。  程なくして着いたのは某有名ホテルだった。入り口の案内板には聖蹟高校×期同窓会とあり、その横に4階と書かれていた。エレベーターを待つ間、着飾った同じ年ぐらいの集団と鉢合わせた。そのうち男の何人かは見覚えのある顔だったが、男たちと親し気に話している女に至っては、全くと言っていいほど面影が見受けられない。常日頃から思ってはいたが、化粧とは恐ろしいものだ。俺や君下よりも交友関係が広い鈴木と佐藤でさえ苦笑いで顔を見合わせていたから、きっとこいつらにでさえ覚えがないのだろうと踏んで、何も言わずに到着した広いエレベーターへと乗り込んだ。
 受付で順番に名前を書いて入り口で泡の入った飲み物を受け取り、広間へと入るとざっと見るだけで100人ほどは来ているようだった。「すげぇな、結構集まったんだな」そう言う佐藤の言葉に振り返りもせずに、俺はあたりをきょろきょろと見渡して君下の姿を探した。
「よう、遅かったな」 「おー君下。途中で渋滞に巻き込まれてな……ちゃんと連れてきたぞ」
 ぽん、と背中を佐藤に叩かれる。その右手は決して強くはなかったが、ふいを突かれた俺は少しだけ前にふらついた。手元のグラスの中で黄金色がゆらりと揺れる。いつの間にか頭痛はなくなっていたが、今は酒を口にする気にはなれずにそのグラスを佐藤へと押し付けた。不審そうにその様子を見ていた君下は、何も言わなかった。  6時半きっかりに、壇上に幹事が現れた。眼鏡をかけて、いかにも真面目そうな元生徒会長は簡単にスピーチを述べると、今はもう引退してしまったという、元校長の挨拶へと移り変わる。何度か表彰状を渡されたことがあったが、曲がった背中にはあまり思い出すものもなかった。俺はシャンパンの代わりに貰ったウーロン茶が入ったグラスをちびちびと舐めながら、隣に立つ君下に気付かれないようにポケットの膨らみの形を確認するかのように、何度も繰り返しなぞっていた。
 俺たちを受け持っていた先生らの挨拶が一通り済むと、それぞれが自由に飲み物を持って会話を楽しんでいた。今日一日、何も食べていなかった俺は、同じく飯を食い損ねたという君下と共に、真ん中に並ぶビュッフェをつまみながら空きっ腹を満たしていた。ここのホテルの料理は美味しいと評判で、他のホテルに比べてビュッフェは高いがその分確かなクオリティがあると姉が言っていた気がする。確かにそれなりの料理が出てくるし、味も悪くはない。君下はローストビーフがお気に召したようで、何度も列に並んではブロックから切り分けられる様子を目を輝かせて眺めていた。
「あー!大柴くん久しぶり、覚えてるかなぁ」
 ウーロン茶のあてにスモークサーモンの乗ったフィンガーフードを摘まんでいると、この会場には珍しく化粧っ気のない、大きな瞳をした女が数人の女子グループと共にこちらへと寄ってきた。
「あ?……あ、お前はあれだ、柄本の」 「もー、橘ですぅー!つくちゃんのことは覚えててくれるのに、同じクラスだった私のこと、全っ然覚えててくれないんだから」
 プンスカと頬を膨らませる橘の姿に、高校時代の懐かしい記憶が蘇る。記憶の中よりも随分と短くなった髪は耳の下で切り揃えられていれ、片側にトレードマークだった三つ編みを揺らしている。確かにこいつが言うように、思い返せば偶然にも3年間、同じクラスだったように思えてくる。本当は名前を忘れた訳ではなかったが、わざと覚えていない振りをした。
「テレビでいつも見てるよー!プロってやっぱり大変みたいだけど、大柴くんのことちゃんと見てるファンもいるからね」 「おーありがとな」
 俺はその言葉に対して素直に礼を言った。というのも、この橘という女の前ではどうも調子が狂わされる。自分は純粋無垢だという瞳をしておいて、妙に人を観察していることと、核心をついてくるのが昔から巧かった。だが悪気はないのが分かっているだけ質が悪い。俺ができるだけ同窓会を避けてきた理由の一つに、この女の言ったことと、こいつ自身が関係している。これには君下も薄々気付いているのだろう。
「あ、そうだ。君下くんも来てるかな?つくちゃんが会いたいって言ってたよ」 「柄本が?そりゃあ本人に言ってやれよ。君下ならあっちで肉食ってると思うけど」 「そうだよね、ありがとう大統領!」
 そう言って大げさに手を振りながら、橘は君下を探しに人の列へと歩き出した。「もーまたさゆり、勝手にどっか行っちゃったよ」と、取り残されたグループの一人がそう言うので、「相変わらずだよね」と笑う他の女たちに混ざって愛想笑いをして、居心地の悪くなったその場を離れようとした。  白いテーブルクロスの上から飲みかけのウーロン茶が入ったグラスを手に取ろとすると、綺麗に塗られたオレンジの爪がついた女にそのグラスを先に掴まれた。思わず視線をウーロン茶からその女へと流すと、女はにこりと綺麗に笑顔を作り、俺のグラスを手渡してきた。
「大柴くん、だよね?今日は飲まないの?」
 黒髪のロングヘアーはいかにも君下が好みそうなタイプの女で、耳下まである長い前髪をセンターで分けて綺麗に内巻きに巻いていた。他の女とは違い、あまりヒラヒラとした装飾物のない、膝上までのシンプルな紺色のドレスに身を包んでいる。見覚えのある色に一瞬喉が詰まるも、「今日は車で来てるから」とその場で適当な言い訳をした。
「あーそうなんだ、残念。私も車で来たんだけど、勤めている会社がこの辺にあって、そこの駐車場に停めてあるから飲んじゃおうかなって」 「へぇ……」
 わざとらしく綺麗な眉を寄せる姿に、最初はナンパされているのかと思った。だが俺のグラスを受け取ると、オレンジの爪はあっさりと手放してしまう。そして先程まで女が飲んでいた赤ワインらしき飲み物をテーブルの上に置き、一歩近づき俺の胸元に手を添えると、背伸びをして俺の耳元で溜息のように囁いた。
「君下くんと、いつから仲良くなったの?」
 酒を帯びた吐息息が耳元にかかり、かっちりと着込んだスーツの下に、ぞわりと鳥肌が立つのを感じた。  こいつは、この女は、もしかしたら君下がこの箱を渡そうとした女なのかもしれない。俺の知らないところで、君下はこの女と親密な関係を持っているのかもしれない。そう考えが纏まると、すとんと俺の中���収まった。そうか。最近感じていた違和感も、何年も寄り付かなかった田舎への急な帰省も、なぜか頑なにこの同窓会に出席したがった理由も、全部辻褄が合う。いつから関係を持っていたのだろうか、知りたくもなかった最悪の状況にたった今、俺は気付いてしまった。  じりじりと距離を詰める女を前に、俺は思考だけでなく身体までもが硬直し、その場を動けないでいた。酒は一滴も口にしていないはずなのに、むかむかと吐き気が込み上げてくる。俺は今、よほど酷い顔をしているのだろう。心配そうに見つめる女の目は笑っているのに、口元の赤が、赤い口紅が視界に焼き付いて離れない。何か言わねば。いつものように、「誰があんなやつと、この俺様が仲良くできるんだよ」と見下すように悪態をつかねば。皆の記憶に生きている、大柴喜一という人間を演じなければ―――……  そう思っているときだった。  俺は誰かに腕を掴まれ、ぐい、と強い力で後ろへと引かれた。呆気にとられたのは俺も女も同じようで、俺が「おい誰だ!スーツが皺になるだろうが」と叫ぶと、「あっ君下くん、」と先程聞いていた声より一オクターブぐらい高い声が女の口から飛び出した。その名前に腕を引かれたほうへと振り返れば、確かにそこには君下が立っていて、スーツごと俺の腕を掴んでいる。俺を見上げる漆黒の瞳は、ここ最近では見ることのなかった苛立ちが滲んで見えるようだった。
「ああ?テメェのスーツなんか知るかボケ。お前が誰とイチャつこうが関係ねぇが、ここがどこか考えてからモノ言いやがれタワケが」 「はあ?誰がこんなブスとイチャつくかバーカ!テメェの女にくれてやる興味なんぞこれっぽっちもねぇ」 「なんだとこの馬鹿が」
 実に数年ぶりの君下のキレ具合に、俺も負けじと抱えていたものを吐き出すかのように怒鳴り散らした。殴りかかろうと俺の胸倉を掴んだ君下に、賑やかだった周囲は一瞬にして静まり返る。人の壁の向こう側で、「おいお前ら!まじでやめとけって」と慌てた様子の佐藤の声が聞こえる。先に俺たちを見つけた鈴木が君下の腕を掴むと、俺の胸倉からその手を引き剥がした。
「とりあえず、やるなら外に行け。お前らももう高校生じゃないんだ、ちょっとは周りの事も考えろよ」 「チッ……」 「大柴も、冷静になれよ。二人とも、今日はもう帰れ。俺たちが収集つけとくから」
 君下はそれ以上何も言わずに、出口のほうへと振り返えると大股で逃げるようにその場を後にした。俺は「悪いな」とだけ声をかけると、曲がったネクタイを直し、小走りで君下の後を追いかける。背後からカツカツとヒールの走る音がしたが、俺は振り返らずにただ小さくなってゆく背中を見逃さないように、その姿だけを追って走った。暫くすると、耳障りな足音はもう聞こえなくなっていた。
 君下がやってきたのは、俺たちが停めたのと同じ地下駐車場だった。ここに着くまでにとっくに追い付いていたものの、俺はこれから冷静に対応する為に、頭を冷やす時間が欲しかった。遠くに見える派手な赤色のスポーツカーは、間違いなく俺が2年前に買い替えたものだった。君下は何杯か酒を飲んでいたので、鍵は持っていなくとも俺が運転をすることになると分かっていた。わざと10メートル後ろをついてゆっくりと近づく。  君下は何も言わずにロックを解除すると、大人しく助手席に腰かけた。ドアは開けたままにネクタイを解き、首元のボタンを一つ外すと、胸ポケットから取り出した煙草を一本口に咥えた。
「俺の前じゃ吸わねぇんじゃなかったのか」 「……気が変わった」
 俺も運転席に乗り込むと、キーを挿してエンジンをかけ、サンバイザーを提げるとレバーを引いて屋根を開けてやった。どうせ吸うならこのほうがいいだろう。それに今夜は星がきれいに見えるかもしれないと、行きがけに見た綺麗な夕日を思い出す。安物のライターがジジ、と音を立てて煙草に火をつけたのを確認して、俺はゆっくりとアクセルを踏み込んだ。
(6)形も何もないけれど
 煌びやかなネオンが流れてゆく。俺と君下の間に会話はなく、代わりに冬の冷たい夜風だけが二人の間を切るように走り抜ける。煙草の火はとっくに消えて、そのままどこかに吹き飛ばされてしまった。  信号待ちで車が止まると、「さむい」と鼻を啜りながら君下が呟いた。俺は後部座席を振り返り、外したばかりの屋根を元に戻すべく折りたたんだそれを引っ張った。途中で信号が青に変わって、後続車にクラクションを鳴らされる。仕方なく座りなおそうとすると、「おい、貸せ」と君下が言うものだから、最初から自分でやればいいだろうと思いながらも、大人しく手渡してアクセルに足を掛けた。車はまた走り出す。
「ちょっとどこか行こうぜ」
 最初にそう切り出したのは君下だった。暖房も入れて温かくなった車内で、窓に貼り付くように外を見る君下の息が白く曇っていた。その問いかけに返事はしなかったが、俺も最初からあのマンションに向かうつもりはなかった。分岐は横浜方面へと向かっている。君下もそれに気が付いているだろう。  海沿いに車を走らせている間も、相変わらず沈黙が続いた。試しにラジオを付けてはみたが、流れるのは今流行りの恋愛ソングばかりで、今の俺たちにはとてもじゃないが似合わなかった。何も言わずにラジオを消して、それ以来ずっと無音のままだ。それでも、不思議と嫌な沈黙ではないことは確かだった。
 どこまで行こうというのだろうか。気が付けば街灯の数も少なくなり、車の通行量も一気に減った。窓の外に見える、深い色の海を横目に見ながら車を走らせた。穏やかな波にきらきらと反射する、今夜の月は見事な満月だった。  歩けそうな砂浜が見えて、何も聞かないままそこの近くの駐車場に車を停めた。他に車は数台止まっていたが、どこにも人の気配がしなかった。こんな真冬の夜の海に用があるというほうが可笑しいのだ。俺はエンジンを切って、運転席のドアを開けると外へ出た。つんとした冷たい空気と潮の匂いが鼻をついた。君下もそれに続いて車を降りた。  後部座席に積んでいたブランケットを羽織りながら、君下は小走りで俺に追いつくと、その隣に並んで「やっぱ寒い」と鼻を啜る。数段ほどのコンクリートの階段を降りると、革靴のまま砂を踏んだ。ぐにゃり、と不安定な砂の上は歩きにくかったが、それでも裸足になるわけにはいかずにゆっくりと海へ向かって歩き出す。波打ち際まで来れば、濡れて固まった足場は先程より多少歩きやすくなった。はぁ、と息を吐けば白く曇る。海はどこまでも深い色をしていた。
「悪かったな」 「いや、……あれは俺も悪かった」
 居心地の悪そうに謝罪の言葉がぽつり、と零れた。それは何に対して謝ったのか、自分でもよく分からない。君下に女が居た事なのか、指輪を見つけてしまった事なのか、それともそれを秘密にしていた事なのか。あるいは、そのすべてに対して―――俺がお前をあのマンションに縛り付けた10年間を指しているのか、それははっきりとは分からな��った。俺は立ち止まった。俺を追い越した、君下も立ち止まり、振り返る。大きな波が押し寄せて、スーツの裾が濡れる感覚がした。水温よりも冷たく冷え切った心には、今はそんな些細なことは、どうでもよかった。
「全部話してくれるか」 「ああ……もうそろそろ気づかれるかもしれねぇとは腹括ってたからな」
 そう言い終える前に、君下の視線が俺のズボンのポケットに向いていることに気が付いた。何度も触っていたそれの形は、嫌と言うほど覚えている。俺はふん、と鼻で笑ってから、右手を突っ込み白い小さな箱を丁寧に取り出した。君下の目の前に差し出すと、なぜだか手が震えていた。寒さからなのか、それともその箱の重みを知ってしまったからなのか、風邪が吹いて揺れるなか、吹き飛ばされないように握っているのが精一杯だった。
「これ……今朝偶然見つけた。ベッドの下、本当に偶然掃除機に引っかけちまって……でも本当に俺、今までずっと気付かなくて、それで―――それで、あんな女がお前に居たなんて、もっと早く言ってくれりゃ、」 「ちょっと待て、喜一……お前何言ってんだ」 「あ……?何って、今言ったことそのまんまだろうが」
 思い切り眉間に皺を寄せ困惑したような君下の顔に、俺もつられて眉根を寄せる。ここまで来てしらを切るつもりなのかと思うと、怒りを通り越して呆れもした。どうせこうなってしまった以上、俺たちは何事もなく別れられるわけがなかった。昔のように犬猿の仲に戻るのは目に見えていたし、そうなってくれれば救われた方だと俺は思っていた。  苛立っていたいたのは君下もそうだったようで、風で乱れた頭をガシガシと掻くと、煙草を咥えて火を点けようとした。ヂ、ヂヂ、と音がするのに、風のせいでうまく点かない。俺は箱を持っていないもう片方の手を伸ばして、風上から添えると炎はゆらりと立ち上がる。すう、と一息吸って吐き出した紫煙が、漆黒の空へと消えていった。
「そのまんまも何も、あの女、お前狙いで寄ってきたんだろうが」 「お前の女が?」 「誰だよそれ、名前も知らねぇのにか?」
 つまらなさそうに、君下はもう一度煙を吸うと上を向いて吐き出した。どうやら本当にあのオレンジ爪の女の名前すら知らないらしい。だとしたら、俺が持っているこの箱は一体誰からのものなのだ。答え合わせのつもりで話をしていたが、謎は余計に深まる一方だ。
「あ、でもあいつ、俺に何て言ったと思う?君下くんといつから仲良くなったの、って」 「お前の追っかけファンじゃねぇの」 「だとしてもスゲェ怖いわ。明らかにお前の好みそうなタイプの恰好してたじゃん」 「そうか?むしろ俺は、お前好みの女だなと思ったけどな」
 そこまで言って、俺も君下も噴き出してしまった。ククク、と腹の底から込み上げる笑いが止まらない。口にして初めて気が付いたが、俺たちはお互いに女の好みなんてこれっぽっちも知らなかったのだ。二人でいる時の共通の話題と言えば、サッカーの事か明日の朝飯のことぐらいで、食卓に女の名前が出てきたことなんて今の一度もない事に気付いてしまった。どうりでこの10年間、どちらも結婚だとか彼女だとか言い出さないわけだ。俺たちはどこまでも似た者同士だったのだ。
「それ、お前にやろうと思って用意したんだ」
 すっかり苛立ちのなくなった瞳に涙を浮かべながら、君下は軽々しくそう言って笑った。  俺は言葉が出なかった。  こんな小洒落たものを君下が買っている姿なんて想像もできなかったし、こんなリボンのついた箱は俺が受け取っても似合わない。「中は?」と聞くと、「開けてみれば」とだけ返されて、煙が流れないように君下は後ろを向いてしまった。少し迷ったが、その場で紐をほどいて箱を開けて、俺は目を見開いた。紙袋と同じ、夜空のようなプリントの内装に、星のように輝くゴールドの指輪がふたつ、中央に行儀よく並んでいた。思わず君下の後姿に視線を戻す。ちらり、とこちらを振り返る君下の口元は、笑っているように見えた。胸の内から込み上げてくる感情を抑えきれずに、俺は箱を大事に畳むと勢いよくその背中を抱きしめた。
「う゛っ苦しい……喜一、死ぬ……」 「そのまま死んじまえ」 「俺が死んだら困るだろうが」 「自惚れんな。お前こそ俺がいないと寂しいだろう」 「勝手に言ってろタワケが」
 腕の中で君下の頭が振り返る。至近距離で視線が絡み、君下の瞳に星空を見た。俺は吸い込まれるようにして、冷たくなった君下の唇にゆっくりとキスを落とす。二人の間で吐息だけが温かい。乾いた唇は音もなく離れ、もう一度角度を変えて近づけば、今度はちゅ、と音がして君下の唇が薄く開かれた。お互いに舌を出して煙草で苦くなった唾液を分け合った。息があがり苦しくなって、それでもまた酸素を奪うかのように互いの唇を気が済むまで食らい合った。右手の箱は握りしめたままで、中で指輪がふたつカタカタと小さく音を立てて揺れていた。
「もう、帰ろうか」 「ああ……解っちゃいたが、冬の海は寒すぎるな。帰ったら風呂炊くか」 「お、いいな。俺が先だ」 「タワケが。俺が張るんだから俺が先だ」
 いつの間にか膝下まで濡れたスーツを捲り上げ、二人は手を繋いで来た道を歩き出した。青白い砂浜に、二人分の足跡が残る道を辿って歩いた。平常心を取り戻した俺は急に寒さを感じて、君下が羽織っているブランケットの中に潜り込もうとした。君下はそれを「やめろ馬鹿」と言って俺の頭を押さえつける。俺も負けじとグリグリと頭を押し付けてやった。自然と笑いが零れる。  これでよかったのだ。俺たちには言葉こそないが、それを埋めるだけの共に過ごした長い時間がある。たとえ二人が結ばれたとしても、形に残るものなんて何もない。それでも俺はいいと���っている。こうして隣に立ってくれているだけでいい。嬉しい時も寂しい時も「お前は馬鹿だな」と一緒に笑ってくれるやつが一人だけいれば、それでいいのだ。
「あ、星。喜一、星がすげぇ見える」 「おー綺麗だな」
 ふと気づいたように、君下が空を見上げて興奮気味に声を上げた。  ようやくブランケットに潜り込んで、君下の隣から顔を出せば、そこにはバケツをひっくり返したかのように無数に散らばる星たちが瞬いていた。肩にかかる黒髪から嗅ぎ慣れない潮の香りがして、俺たちがいま海にいるのだと思い知らされる。上を向いて開いた口から、白く曇った息が漏れる。何も言わずにしばらくそれを眺めて、俺たちはすっかり冷えてしまった車内へと腰を下ろした。温度計は摂氏5度を示していた。
7:やさしい光の中で
 星が良く見えた翌朝は決まって快晴になる。君下に言えば、そんな原始的な観測が正しければ、天気予報なんていらねぇよ、と文句を言われそうだが、俺はあながち間違いではないと思っている。現に今日は雲一つない晴れで、あれだけ低かった気温が今日は16度まで上がっていた。乾燥した空気に洗濯物も午前中のうちに乾いてしまった。君下がベランダに料理を運んでいる最中、俺は慣れない手つきで洗濯物をできるだけ綺麗に折りたたんでいた。
「おい、終わったぞ。お前のは全部チェストでいいのか?」 「下着と靴下だけ二番目の引き出しに入れといてくれ。あとはどこでもいい」 「へい」
 あれから真っすぐマンションへと向かった車は、時速50キロ程度を保ちながらおよそ2時間かけて都内にたどり着いた。疲れ切っていたのか、君下は何度かこくり、こくりと首を落とし、ついにはそのまま眠りに落ちてしまった。俺は片手だけでハンドルを握りながら、できるだけ眠りを妨げないように、信号待ちで止まることのないようにゆっくりとしたスピードで車を走らせた。車内には、聞き慣れない名のミュージシャンが話すラジオの音だけが延々と聞こえていた。  眠った君下を抱えたままエントランスをくぐり、すぐに開いたエレベーターに乗って部屋のドアを開けるまで、他の住人の誰にも出会うことはなかった。鍵を開けて玄関で靴を脱がせ、濡れたパンツと上着だけを剥ぎ取ってベッドに横たわらせる。俺もこのまま寝てしまおうか。ハンガーに上着を掛けると一度はベッドに腰かけたものの、どうも眠れる気がしない。少しだけ君下の寝顔を眺めた後、俺はバスルームの電気を点けた。
「飲み物はワインでいいか?」 「おう。白がいい」 「言われなくとも白しか用意してねぇよ」
 そう言って君下は冷蔵庫から冷えた白ワインのボトルとグラスを2つ持ってやって来た。日当たりのいいテラスからは、東京の高いビル群が遠くに見えた。東向きの物件にこだわって良かったと、当時日当たりなんてどうでもいいと言った君下の隣に腰かけて密かに思う。今日は風も少なく、テラスで日光浴をするのには丁度いい気候だった。
「乾杯」 「ん」
 かちん、と一方的にグラスを傾けて君下のグラスに当てて音を鳴らした。黄金色の液体を揺らしながら、口元に寄せればリンゴのような甘い香りがほのかい漂う。僅かにとろみのある液体を口に含めば、心地よいほのかな酸味と上品な舌触りに思わず眉が上がるのが分かった。
「これ、どこの」 「フランスだったかな。会社の先輩からの貰い物だけど、かなりのワイン好きの人で現地で箱買いしてきたらしいぞ」 「へぇ、美味いな」
 流れるような書体でコンドリューと書かれたそのボトルを手に取り、裏面を見ればインポーターのラベルもなかった。聞いたことのある名前に、確か希少価値の高い品種だったように思う。読めない文字をざっと流し読みし、ボトルをテーブルに戻すともう一口口に含む。安物の白ワインだったら炭酸で割って飲もうかと思っていたが、これはこのまま飲んだ方が良さそうだ。詰め物をされたオリーブのピンチョスを摘まみながら、雲一つない空へと視線を投げた。
「そう言えば、鈴木からメール来てたぞ……昨日の同窓会の話」
 紫煙を吐き出した君下は、思い出したかのように鈴木の名を口にした。小一時間前に風呂に入ったばかりの髪はまだ濡れているようで、時折風が吹いてはぴたり、と額に貼り付いた。それを手で避けながら、テーブルの上のスマホを操作して件のメールを探しているようだ。俺は残り物の鱈と君下の田舎から貰ってきたジャガイモで作ったブランダードを、薄切りのバゲットに塗り付けて齧ると、「何だって」と先程の言葉の続きを促した。
「あの後女が泣いてるのを佐藤が慰めて、そのまま付き合うことになったらしい、ってさ」 「はあ?それって俺たちと全然関係なくねぇ?というか、一体何だったんだよあの女は……」
 昨夜のことを思い出すだけで鳥肌が立つ。あの真っ赤なリップが脳裏に焼き付いて離れない。それに、俺たちが聞きたかったのはそんな話ではない。喧嘩を起こしそうになったあの場がどうなったとか、そんなことよりもどうでもいい話を先に報告してきた鈴木にも悪意を感じる。多分、いや確実に、このハプニングを鈴木は面白がっているのだろう。
「あいつ、お前と同じクラスだった冴木って女だそうだ。佐藤が聞いた話だと、やっぱりお前のファンだったらしいぞ」 「……全っ然覚えてねぇ」 「だろうな。見ろよこの写真、これじゃあ詐欺も同然だな」
 そう言って見せられた一枚の写真を見て、俺は食べかけのグリッシーニに巻き付けた、パルマの生ハムを落としそうになった。写真は卒アルを撮ったもののようで、少しピントがずれていたがなんとなく顔は確認できた。冴木綾乃……字面を見てもピンと来なかったが、そこに映っているふっくらとした丸顔に腫れぼったい一重瞼の女には見覚えがあった。
「うわ……そういやいた気がするな」 「それで?これのどこが俺の女だって言うんだよ」 「し、失礼しました……」 「そりゃあ今の彼氏の佐藤に失礼だろうが。それに別にブスではないしな」
 いや、どこからどう見てもこれはない。俺としてはそう思ったが、確かに昨日会った女は素直に抱けると思った。人は歳を重ねると変わるらしい。俺も君下も何か変わったのだろか。ふとそう思ったが、まだ青い高校生だった俺に言わせれば、俺たちが同じ屋根の下で10年も暮らしているということがほとんど奇跡に近いだろう。人の事はそう簡単に悪く言えないと、自分の体験を以って痛いほど知った。  君下は短くなった煙草を灰皿に押し付けると火を消して、何も巻かないままのグリッシーニをポリポリと齧り始める。俺は空になったグラスを置くと、コルクを抜いて黄金色を注いだ。
「あー、そうだ。この間田舎に帰っただろう、正月に。その時にばあちゃんに、お前の話をした」 「……なんか言ってたか」
 聞き捨てならない言葉に、だらしなく木製の折りたたみチェアに座っていた俺の背筋が少しだけ伸びる。  その事は俺にも違和感があった。急に田舎に顔出してくるから、と俺の車を借りて出て行った君下は、戻ってきても1週間の日々を「退屈だった」としか言わなかったのだ。なぜこのタイミングなのだろうか。嫌な切り出し方に少しだけ緊張感が走る。君下がグリッシーニを食べ終えるのを待っているほんの少しの時間が、俺には気が遠くなるほど長い時間が経ったような気さえした。
「別に。敦は結婚はしないのかって聞かれたから答えただけだ。ただ同じ家に住んでいて、これからも一緒にいることになるだろうから、申し訳ないけど嫁は貰わないかもしれないって言っといた」 「……それで、おばあさんは何て」 「良く分からねぇこと言ってたぜ。まあ俺がそれで幸せなら、それでいいんじゃないかとは言ってくれたけど……やっぱ少し寂しそうではあったかな」
 そう言って遠くの空を見つめるように、君下は視線を空へ投げた。真冬とは言え太陽の光は眩しくて、自然と目元は細まった。テーブルの上に投げ出された右手には、光を反射してきらきらと輝く金色が嵌められている。昨夜君下が眠った後、停車中の誰も見ていない車内で俺が勝手に付けたのだ。細い指にシンプルなデザインはよく映えた。俺が見ていることに気が付いたのか、君下はそっとテーブルから手を離すと、新しいソフトケースから煙草を一本取りだした。
「まあこれで良かったのかもな。親父にも会ってきたし、俺はもう縛られるものがなくなった」 「えっ、まさか……昨日実家寄ったのってその為なのか」 「まあな……本当は早いうちに言っておくべきだったんだが、どうも切り出せなくてな。親父もばあちゃんも、母さんを亡くして寂しい思いをしたのは痛いほど分かってたし、まあ俺もそうだったしな……それで俺が結婚しないって言うのは、なんだか家族を裏切ってしまうような気がして。もう随分前にこうなることは分かってたのにな。気づいたら年だけ重ねてて、それで……」
 君下は、ゆっくりと言葉を紡ぐと一筋だけ涙を流した。俺はそれを、君下の左手を握りしめて、黙って聞いてやることしかできなかった。昼間から飲む飲みなれないワインにアルコールが回っていたのだろうか。それでもこれは君下の本音だった。  暫くそうして無言で手を握っていると、ジャンボジェット機が俺たちの上空をゆっくりと通過した。耳を塞ぎたくなるようなごうごうと風を切り裂く大きな音に隠れるように、俺は聞こえるか聞こえないかの声量で「愛してる」、と一言呟く。君下は口元だけを読んだのか、「俺も」、と聞こえない声で囁いた。飛行機の陰になって和らいだ光の中で、俺たちは最初で最後の言葉を口にした。影が過ぎ去ると、陽射しは先程よりも一層強く感じられた。水が入ったグラスの中で、溶けた氷がカラン、と立てたか細い音だけが耳に残った。
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nyantria · 7 years
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* 秋元寿恵 東京帝大出身の血清学者     1984年12月の証言 部隊に着任して人体実験のことを知った時は非常にショックを受けました。 あそこにいた科学者たちで良心の呵責を感じている者はほとんどいませんでした。 彼らは囚人たちを動物のように扱っていました。 ・・・・死にゆく過程で医学の発展に貢献できるなら名誉の死となると考えていたわけです。 私の仕事には人体実験は関係していませんでしたが、私は恐れおののいてしまいました。 私は所属部の部長である菊地少将に3回も4回も辞表を出しました。 しかしあそこから���け出すことは出来ませんでした。 もし出て行こうとするならば秘かに処刑されると脅されました。 * 鎌田信雄 731部隊少年隊 1923年生      1995年10月 証言 私は石井部隊長の発案で集められた「まぼろしの少年隊1期生」でした。 注: 正式な1期から4期まではこの後に組織された 総勢22~23人だったと思います。 平房の本部では朝8時から午後2時までぶっ通しで一般教養、外国語、衛生学などを勉強させられ、 3時間しか寝られないほどでした。 午後は隊員の助手をやりました。 2年半の教育が終ったときは、昭和14年7月でした。 その後、ある細菌増殖を研究する班に所属しました。 平房からハルビンに中国語を習いに行きましたが、その時白華寮(731部隊の秘密連絡所)に立ち寄りました ・・・・200部隊(731部隊の支隊・馬疫研究所)では、実験用のネズミを30万匹買い付けました。 ハルビン市北方の郊外に毒ガス実験場が何ケ所かあって、 安達実験場の隣に山を背景にした実験場があり、そこでの生体実験に立ち合ったことがあります。 安達には2回行ったことがありますが、1~2日おきに何らかの実験をしていました。 20~30人のマルタが木柱に後手に縛られていて、毒ガスボンベの栓が開きました。 その日は関東軍のお偉方がたくさん視察に来ていました。 竹田宮(天皇の従兄弟)も来ていました。 気象班が1週間以上も前から風向きや天候を調べていて大丈夫だということでしたが、 風向きが変わり、ガスがこちら側に流れてきて、あわてて逃げたこともあります ・・・・ホルマリン漬けの人体標本もたくさんつくりました。 全身のものもあれば頭や手足だけ、内臓などおびただしい数の標本が並べてありました。 初めてその部屋に入ったときには気持ちが悪くなって、何日か食事もできないほどでした。 しかし、すぐに慣れてしまいましたが、赤ん坊や子供の標本もありました ・・・・全身標本にはマルタの国籍、性別、年齢、死亡日時が書いてありましたが、 名前は書いてありませんでした。 中国人、ロシア人、朝鮮族の他にイギリス人、アメリカ人、フランス人と書いてあるのもありました。 これはここで解剖されたのか、他の支部から送られてきたものなのかはわかりません。 ヨーロッパでガラス細工の勉強をして来た人がピペットやシャ-レを造っていて、 ホルマリン漬けをいれるコルペもつくっていました。 731部隊には、子どももいました。 私は屋上から何度も、中庭で足かせをはめられたままで運動している“マルタ”を見たことがあります。 1939年の春頃のことだったと思いますが、3組の母子の“マルタ”を見ました。 1組は中国人の女が女の赤ちゃんを抱いていました。 もう1組は白系ロシア人の女と、4~5歳の女の子、 そしてもう1組は、これも白系ロシアの女で,6~7歳の男の子がそばにいました ・・・・見学という形で解剖に立ち合ったことがあります。 解剖後に取り出した内臓を入れた血だらけのバケツを運ぶなどの仕事を手伝いました。 それを経験してから1度だけでしたが、メスを持たされたことがありました。 “マルタ”の首の喉ぼとけの下からまっすぐに下にメスを入れて胸を開くのです。 これは簡単なのでだれにでもできるためやらされたのですが、 それからは解剖専門の人が細かくメスを入れていきました。 正確なデータを得るためには、できるだけ“マルタ”を普通の状態で解剖するのが望ましいわけです。 通常はクロロホルムなどの麻酔で眠らせておいてから解剖するのですが、 このときは麻酔をかけないで意識がはっきりしているマルタの手足を解剖台に縛りつけて、 意識がはっきりしているままの“マルタ”を解剖しました。 はじめは凄まじい悲鳴をあげたのですが、すぐに声はしなくなりました。 臓器を取り出して、色や重さなど、健康状態のものと比較し検定した後に、それも標本にしたのです。 他の班では、コレラ菌やチフス菌をスイカや麦の種子に植えつけて栽培し、 どのくらい毒性が残るかを研究していたところもあります。 菌に侵された種を敵地に撒くための研究だと聞きました。 片道分の燃料しか積まずに敵に体当りして死んだ特攻隊員は、天皇から頂く恩賜の酒を飲んで出撃しました。 731部隊のある人から、「あの酒には覚醒剤が入っており、部隊で開発したものだ」と聞きました ・・・・部隊には,入れかわり立ちかわり日本全国から医者の先生方がやってきて、 自分たちが研究したり、部隊の研究の指導をしたりしていました。 今の岩手医大の学長を勤めたこともある医者も、細菌学の研究のために部隊にきていました。 チフス、コレラ、赤痢などの研究では日本でも屈指の人物です。 私が解剖学を教わった石川太刀雄丸先生は、戦後金沢大学医学部の主任教授になった人物です。 チフス菌とかコレラ菌とかを低空を飛ぶ飛行機からばらまくのが「雨下」という実験でした。 航空班の人と、その細菌を扱うことができる者が飛行機に乗り込んで、村など人のいるところへ細菌をまきます。 その後どのような効果があったか調査に入りました。 ペスト菌は、ノミを介しているので陶器爆弾を使いました。 当初は陶器爆弾ではなく、ガラス爆弾が使われましたが、ガラスはだめでした。 ・・・・ペストに感染したネズミ1匹にノミを600グラム、だいたい3000~6000匹たからせて落とすと、 ノミが地上に散らばるというやり方です ・・・・ベトナム戦争で使った枯葉剤の主剤は、ダイオキシンです。 もちろん731部隊でもダイオキシンの基礎研究をやっていました。 アメリカは、この研究成果をもって行って使いました。 朝鮮戦争のときは石井部隊の医師達が朝鮮に行って、 この効果などを調べているのですが、このことは絶対に誰も話さないと思います。 アメリカが朝鮮で細菌兵器を使って自分の軍隊を防衛できなくなると困るので連れて行ったのです。 1940年に新京でペストが大流行したことがありました。(注:731部隊がやったと言われている) ・・・・そのとき隊長の命令で、ペストで死んで埋められていた死体を掘り出して、 肺や肝臓などを取り出して標本にし、本部に持って帰ったこともありました。 各車両部隊から使役に来ていた人たちに掘らせ、メスで死体の胸を割って 肺、肝臓、腎臓をとってシャ-レの培地に塗る、 明らかにペストにかかっているとわかる死体の臓器をまるまる持っていったこともあります。 私にとっては、これが1番いやなことでした。人の墓をあばくのですから・・・・ * 匿名 731部隊少佐 薬学専門家 1981年11月27日 毎日新聞に掲載されたインタビュ-から 昭和17年4月、731と516両部隊がソ満国境近くの都市ハイラル郊外の草原で3日間、合同実験をした。 「丸太」と呼ばれた囚人約100人が使われ、4つのトーチカに1回2,3人ずつが入れられた。 防毒マスクの将校が、液体青酸をびんに詰めた「茶びん」と呼ぶ毒ガス弾をトーチカ内に投げ、 窒息性ガスのホスゲンをボンベから放射した。 「丸太」にはあらかじめ心臓の動きや脈拍を見るため体にコードをつけ、 約50メ-トル離れた机の上に置いた心電図の計器などで、「死に至る体の変化」を記録した。 死が確認されると将校たちは、毒ガス残留を調べる試験紙を手にトーチカに近づき、死体を引きずり出した。 1回の実験で死ななかった者にはもう1回実験を繰り返し、全員を殺した。 死体はすべて近くに張ったテントの中で解剖した。 「丸太」の中に68歳の中国人の男性がいた。 この人は731部隊内でペスト菌を注射されたが、死ななかったので毒ガス実験に連れて来られた。 ホスゲンを浴びせても死なず、ある軍医が血管に空気を注射した。 すぐに死ぬと思われたが、死なないのでかなり太い注射器でさらに空気を入れた。 それでも生き続け、最後は木に首を吊って殺した。 この人の死体を解剖すると、内臓が若者のようだったので、軍医たちが驚きの声を上げたのを覚えている。 昭和17年当時、部隊の監獄に白系ロシア人の婦人5人がいた。 佐官級の陸軍技師(吉村寿人?)は箱状の冷凍装置の中に彼女等の手を突っ込ませ、 マイナス10度から同70度まで順々に温度を下げ、凍傷になっていく状況を調べた。 婦人たちの手は肉が落ち、骨が見えた。 婦人の1人は監獄内で子供を産んだが、その子もこの実験に使われた。 その後しばらくして監獄をのぞいたが、5人の婦人と子供の姿は見えなくなっていた。 死んだのだと思う。 * 山内豊紀  証言  1951年11月4日   中国档案館他編「人体実験」 われわれ研究室の小窓から、寒い冬の日に実験を受けている人がみえた。 吉村博士は6名の中国人に一定の負荷を背負わせ、一定の時間内に一定の距離を往復させ、 どんなに寒くても夏服しか着用させなかった。 みていると彼らは日ましに痩せ衰え、徐々に凍傷に冒されて、一人ひとり減っていった。 * 秦正  自筆供述書   1954年9月7日  中国档案館他編「人体実験」 私はこの文献にもとづいて第一部吉村技師をそそのかし、残酷な実験を行わせた。 1944年冬、彼は出産まもないソ連人女性愛国者に対して凍傷実験を行った。 まず手の指を水槽に浸してから、外に連れだして寒気の中にさらし、激痛から組織凍傷にまでいたらしめた。 これは凍傷病態生理学の実験で、その上で様々な温度の温水を使って「治療」を施した。 日を改めてこれをくり返し実施した結果、その指はとうとう壊死して脱落してしまった。 (このことは、冬期凍傷における手指の具体的な変化の様子を描くよう命じられた画家から聞いた) その他、ソ連人青年1名も同様の実験に使われた。 *上田弥太郎 供述書  731部隊の研究者   1953年11月11日  中国档案館他編「人体実験」 1943年4月上旬、7・8号棟で体温を測っていたとき中国人の叫び声が聞こえたので、すぐに見に行った。 すると、警備班員2名、凍傷班員3名が、氷水を入れた桶に1人の中国人の手を浸し、 一定の時間が経過してから取り出した手を、こんどは小型扇風機の風にあてていて、 被実験者は痛みで床に倒れて叫び声をあげていた。 残酷な凍傷実験を行っていたのである。 * 上田弥太郎   731部隊の研究者 中国人民抗日戦争記念館所蔵の証言 ・・・・すでに立ち上がることさえできない彼の足には、依然として重い足かせがくいこんで、 足を動かすたびにチャラチャラと鈍い鉄の触れ合う音をたてる ・・・・外では拳銃をぶら下げたものものしい警備員が監視の目をひからせており、警備司令も覗いている。 しかし誰一人としてこの断末魔の叫びを気にとめようともしない。 こうしたことは毎日の出来事であり、別に珍しいものではない。 警備員は、ただこの中にいる200名くらいの中国人が素直に殺されること、 殺されるのに反抗しないこと、よりよきモルモット代用となることを監視すればよいのだ ・・・・ここに押し込められている人々は、すでに人間として何一つ権利がない。 彼らはこの中に入れば、その名前はアラビア数字の番号とマルタという名前に変わるのだ。 私たちはマルタ何本と呼んでいる。 そのマルタOOO号、彼がいつどこからどのようにしてここに来たかはわからない。 * 篠塚良雄     731部隊少年隊   1923年生    1994年10月証言から ・・・・1939年4月1日、「陸軍軍医学校防疫研究室に集まれ」という指示を受けました ・・・・5月12日中国の平房に転属になりました ・・・・731部隊本部に着いて、まず目に入ったのは 「関東軍司令官の許可なき者は何人といえども立入りを禁ず」と書かれた立て看板でした。 建物の回りには壕が掘られ鉄条網が張り巡らされていました。 「夜になると高圧電流が流されるから気をつけろ」という注意が与えられました ・・・・当時私は16歳でした。 私たちに教育が開始されました・・・・ 「ここは特別軍事地域に指定されており、日本軍の飛行機であってもこの上空を飛ぶことはできない。 見るな、聞くな、言うな、これが部隊の鉄則だ」というようなことも言われました。・・・・ 「防疫給水部は第1線部隊に跟随し、主として浄水を補給し直接戦��の保持増進を量り、 併せて防疫防毒を実施するを任務とする」と強調されました ・・・・石井式衛生濾水機は甲乙丙丁と車載用、駄載用、携帯用と分類されていました ・・・・濾過管は硅藻土と澱粉を混ぜて焼いたもので“ミクロコックス”と言われていました ・・・・細菌の中で1番小さいものも通さないほど性能がいいと聞きました ・・・・私は最初は動物を殺すことさえ直視できませんでした。 ウサギなどの動物に硝酸ストリキニ-ネとか青酸カリなどの毒物を注射して痙攣するのを直視させられました。 「目をつぶるな!」と言われ、もし目をつぶれば鞭が飛んでくるのです ・・・・私に命じられたのは、細菌を培養するときに使う菌株、 通称“スタム”を研究室に取りに行き運搬する仕事でした。 江島班では赤痢���、田部井班ではチフス菌、瀬戸川班ではコレラ菌と言うように それぞれ専門の細菌研究が進められていました ・・・・生産する場所はロ号棟の1階にありました。 大型の高圧滅菌機器が20基ありました ・・・・1回に1トンの培地を溶解する溶解釜が4基ありました ・・・・細菌の大量生産で使われていたのが石井式培養缶です。 この培養缶1つで何10グラムという細菌を作ることができました。 ノモンハンのときには1日300缶を培養したことは間違いありません ・・・・ここの設備をフル稼働させますと、1日1000缶の石井式培養缶を操作する事が出来ました。 1缶何10グラムですから膨大な細菌を作ることができたわけです ・・・・1940年にはノミの増殖に動員されました ・・・・ペストの感受性の一番強い動物はネズミと人間のようです。 ペストが流行するときにはその前に必ず多くのネズミが死ぬと言うことでした。 まずネズミにペスト菌を注射して感染させる。 これにノミをたからせて低空飛行の飛行機から落とす。 そうするとネズミは死にますが、 ノミは体温の冷えた動物からはすぐに離れる習性を持っているので、今度は人間につく。 おそらくこういう形で流行させたのであろうと思います ・・・・柄沢班でも、生体実験、生体解剖を毒力試験の名のもとに行ないました ・・・・私は5名の方を殺害いたしました。 5名の方々に対してそれぞれの方法でペストのワクチンを注射し、 あるいはワクチンを注射しないで、それぞれの反応を見ました。 ワクチンを注射しない方が1番早く発病しました。 その方はインテリ風で頭脳明晰といった感じの方でした。 睨みつけられると目を伏せる以外に方法がありませんでした。 ペストの進行にしたがって、真黒な顔、体になっていきました。 まだ息はありましたが、特別班の班員によって裸のまま解剖室に運ばれました ・・・・2ケ月足らずの間に5名の方を殺害しました。 特別班の班員はこの殺害したひとたちを、灰も残らないように焼却炉で焼いたわけであります。     注:ノモンハン事件 1939年5月11日、満州国とモンゴルの国境付近のノモンハンで、日本側はソ連軍に攻撃を仕掛けた。 ハルハ河事件とも言う。 4ケ月続いたこの戦いは圧倒的な戦力のソ連軍に日本軍は歯が立たず、 約17,000人の死者を出した。 ヒットラ-のポーランド侵攻で停戦となった。 あまりにみっともない負け方に日本軍部は長い間ノモンハン事件を秘密にしていた。 731部隊は秘密で参加し、ハルハ河、ホルステイン河に赤痢菌、腸チフス菌、パラチフス菌を流した。 参加者は、隊長碇常重軍医少佐、草味正夫薬剤少佐、作山元治軍医大尉、 瀬戸尚二軍医大尉、清水富士夫軍医大尉、その他合計22名だった。 (注:ハバロフスクの裁判記録に証言があります) * 鶴田兼敏  731部隊少年隊  1921年生 1994年731部隊展の報告書から 入隊は1938年11月13日でしたが、まだそのときは平房の部隊建物は建設中でした ・・・・下を見ますと“マルタ”が収容されている監獄の7、8棟の中庭に、 麻袋をかぶった3~4人の人が輪になって歩いているのです。 不思議に思い、班長に「あれは何だ?」と聞いたら、「“マルタ”だ」と言います。 しかし私には“マルタ”という意味がわかりません。 するとマルタとは死刑囚だと言うんです。 軍の部隊になぜ死刑囚がいるのかと疑問に思いましたが、 「今見たことはみんな忘れてしまえ!」と言われました・・・・ 基礎教育の後私が入ったのは昆虫班でした。 そこでは蚊、ノミ、ハエなどあらゆる昆虫、害虫を飼育していました。 ノミを飼うためには、18リットル入りのブリキの缶の中に、半分ぐらいまでおが屑を入れ、 その中にノミの餌にするおとなしい白ネズミを籠の中に入れて固定するんです。 そうするとたいてい3日目の朝には、ノミに血を吸い尽くされてネズミは死んでいます。 死んだらまた新しいネズミに取りかえるのです。 一定の期間が過ぎると、缶の中のノミを集めます。 ノミの採取は月に1,2度行なっていました ・・・・ノモンハン事件の時、夜中に突然集合がかかったのです ・・・・ホルステイン川のほとりへ連れていかれたのです。 「今からある容器を下ろすから、蓋を開けて河の中に流せ」と命令されました。 私たちは言われたままに作業をしました ・・・・基地に帰ってくると、石炭酸水という消毒液を頭から足の先までかけられました。 「何かやばいことをやったのかなあ。いったい、何を流したのだろうか」という疑問を持ちました ・・・・後で一緒に作業した内務班長だった衛生軍曹はチフスで死んだことを聞き、 あの時河に流したのはチフス菌だったとわかったわけです ・・・・いまだに頭に残っているものがあります。 部隊本部の2階に標本室があったのですが、 その部屋でペストで殺された“マルタ”の生首がホルマリンの瓶の中に浮いているのを見たことです。 中国人の男性でした。 また1,2歳の幼児が天然痘で殺されて、丸ごとホルマリンの中に浮いているのも見ました。 それもやはり中国人でした。 今もそれが目に焼きついて離れません。 * 小笠原 明  731部隊少年隊 1928年生れ  1993~94年の証言から ・・・・部隊本部棟2階の部隊長室近くの標本室の掃除を命じられました ・・・・ドアを開けたところに、生首の標本がありました。 それを見た瞬間、胸がつまって吐き気を催すような気持になって目をつぶりました。 標本室の中の生首は「ロスケ(ロシア人)」の首だと思いました。 すぐ横の方に破傷風の細菌によって死んだ人の標本がありました。 全身が標本となっていました。 またその横にはガス壊疽の標本があり、太ももから下を切り落としてありました。 これはもう生首以上にむごたらしい、表現できないほどすごい標本でした。 拭き掃除をして奥の方に行けば、こんどは消化器系統の病気の赤痢、腸チフス、コレラといったもので 死んだ人を病理解剖した標本がたくさん並べてありました ・・・・田中大尉の部屋には病歴表というカードがおいてあって、人体図が描いてあって、 どこにペストノミがついてどのようになったか詳しく記録されていました。 人名も書いてありました。 このカードはだいたい5日から10日以内で名前が変ります。 田中班ではペストの人体実験をして数日で死んだからです ・・・・田中班と本部の研究室の間には人体焼却炉があって毎日黒い煙が出ておりました ・・・・私は人の血、つまり“マルタ”の血を毎日2000から3000CC受取ってノミを育てる研究をしました ・・・・陶器製の爆弾に細菌やノミやネズミを詰込んで投下実験を何回も行ないました ・・・・8月9日のソ連の参戦で証拠隠滅のためにマルタは全員毒ガスで殺しました。 10日位には殺したマルタを中庭に掘った穴にどんどん積み重ねて焼きました。 * 千田英男 1917年生れ  731部隊教育隊  1974年証言 ・・・・「今日のマルタは何番・・・・何番・・・・何番・・・・以上10本頼む」 ここでは生体実験に供される人たちを”丸太”と称し、一連番号が付けられていた ・・・・中庭の中央に2階建ての丸太の収容棟がある。 4周は3層の鉄筋コンクリ-ト造りの建物に囲まれていて、そこには2階まで窓がなく、よじ登ることもはい上がることもできない。 つまり逃亡を防ぐ構造である。通称7,8棟と称していた・・・・ *石橋直方      研究助手 私は栄養失調の実験を見ました。 これは吉村技師の研究班がやっていたんだと思います。 この実験の目的は、人間が水と乾パンだけでどれだけ生きられるかを調べることだったろうと思われます。 これには2人のマルタが使われていました。 彼らは部隊の決められたコ-スを、20キログラム程度の砂袋を背負わされて絶えず歩き回っていました。 1人は先に倒れて、2人とも結局死にました。 食べるものは軍隊で支給される乾パンだけ、飲むのは水だけでしたからね、 そんなに長いこと生きられるはずがありません。 *越定男    第731部隊第3部本部付運搬班 1993年10月10日、山口俊明氏のインタビュ- -東条首相も視察に来た 本部に隣接していた専用飛行場には、友軍機と言えども着陸を許されず、 東京からの客は新京(長春)の飛行場から平房までは列車でした。 しかし東条らの飛行機は専用飛行場に降りましたのでよく覚えています。 -マルタの輸送について ・・・・最初は第3部長の送り迎え、、郵便物の輸送、通学バスの運転などでしたが、 間もなく隊長車の運転、マルタを運ぶ特別車の運転をするようになりました。 マルタは、ハルピンの憲兵隊本部、特務機関、ハルピン駅ホ-ムの端にあった憲兵隊詰所、 それに領事館の4ケ所で受領し4.5トンのアメリカ製ダッジ・ブラザ-スに積んで運びました。 日本領事館の地下室に手錠をかけたマルタを何人もブチ込んでいたんですからね。 最初は驚きましたよ。マルタは特別班が管理し、本部のロ号棟に収容していました。 ここで彼らは鉄製の足かせをはめられ、手錠は外せるようになっていたものの、 足かせはリベットを潰されてしまい、死ぬまで外せなかった。 いや死んでからも外されることはなかったんです。 足かせのリベットを潰された時のマルタの心境を思うと、やりきれません。 -ブリキ製の詰襟 私はそんなマルタを度々、平房から約260キロ離れた安達の牢獄や人体実験場へ運びました。 安達人体実験場ではマルタを十字の木にしばりつけ、 彼らの頭上に、超低空の飛行機からペスト菌やコレラ菌を何度も何度も散布したのです。 マルタに効率よく細菌を吸い込ませるため、マルタの首にブリキで作った詰襟を巻き、 頭を下げるとブリキが首に食い込む仕掛けになっていましたから、 マルタは頭を上に向けて呼吸せざるを得なかったのです。 むごい実験でした。 -頻繁に行われた毒ガス実験 731部隊で最も多く行われた実験は毒ガス実験だったと思います。 実験場は専用飛行場のはずれにあり、四方を高い塀で囲まれていました。 その中に外から視察できるようにしたガラス壁のチャンバ-があり、 観察器材が台車に乗せられてチャンバ-の中に送り込まれました。 使用された毒ガスはイペリットや青酸ガス、一酸化炭素ガスなど様々でした。 マルタが送り込まれ、毒ガスが噴射されると、 10人ぐらいの観察員がドイツ製の映写機を回したり、ライカで撮影したり、 時間を計ったり、記録をとったりしていました。 マルタの表情は刻々と変わり、泡を噴き出したり、喀血する者もいましたが、 観察員は冷静にそれぞれの仕事をこなしていました。 私はこの実験室へマルタを運び、私が実験に立ち会った回数だけでも年間百回ぐらいありましたから、 毒ガス実験は頻繁に行われていたとみて間違いないでしょう。 -逃げまどうマルタを あれは昭和19年のはじめ、凍土に雪が薄く積もっていた頃、ペスト弾をマルタに撃ち込む実験の日でした。 この実験は囚人40人を円状に並べ、円の中央からペスト菌の詰まった細菌弾を撃ち込み、 感染具合をみるものですが、私たちはそこから約3キロ離れた所から双眼鏡をのぞいて、 爆発の瞬間を待っていました。その時でした。 1人のマルタが繩をほどき、マルタ全員を助け、彼らは一斉に逃げ出したのです。 驚いた憲兵が私のところへ素っ飛んで来て、「車で潰せ」と叫びました。 私は無我夢中で車を飛ばし、マルタを追いかけ、 足かせを引きずりながら逃げまどうマルタを1人ひとり潰しました。 豚は車でひいてもなかなか死にませんが、人間は案外もろく、直ぐに死にました。 残忍な行為でしたが、その時の私は1人でも逃がすと中国やソ連に731部隊のことがバレてしまって、 我々が殺される、という思いだけしかありませんでした。 -囚人は全員殺された 731部隊の上層部は日本軍の敗戦をいち早く察知していたようで、敗戦数ヶ月前に脱走した憲兵もいました。 戦局はいよいよ破局を迎え、ソ連軍が押し寄せてきているとの情報が伝わる中、 石井隊長は8月11日、隊員に最後の演説を行い、 「731の秘密は墓場まで持っていけ。 機密を漏らした者がいれば、この石井が最後まで追いかける」と脅迫し、部隊は撤収作業に入りました。 撤収作業で緊急を要したのはマルタの処理でした。 大半は毒ガスで殺されたようですが、1人残らず殺されました。 私たちは死体の処理を命じられ、死体に薪と重油かけて燃やし、骨はカマスに入れました。 私はそのカマスをスンガリ(松花江)に運んで捨てました。 被害者は全員死んで証言はありませんが、部隊で働いていた中国人の証言があります。 *傳景奇  ハルピン市香坊区     1952年11月15日 証言 私は今年33歳です。 19歳から労工として「第731部隊」で働きました。 班長が石井三郎という石井班で、ネズミ籠の世話とか他の雑用を8・15までやっていました。 私��見た日本人の罪悪事実は以下の数件あります。 1 19歳で工場に着いたばかりの時は秋で「ロ号棟」の中で   いくつかの器械が血をかき混ぜているのを見ました。   当時私は若く中に入って仕事をやらされました。日本人が目の前にいなかったのでこっそり見ました。 2 19歳の春、第一倉庫で薬箱を並べていたとき不注意から箱がひっくりかえって壊れました。   煙が一筋立ち上がり、我々年少者は煙に巻かれ気が遠くなり、   涙も流れ、くしゃみで息も出来ませんでした。 3 21歳の年、日本人がロバ4頭を程子溝の棒杭に繋ぐと、 しばらくして飛行機からビ-ル壜のような物が4本落ちてきた。 壜は黒煙をはき、4頭のロバのうち3頭を殺してしまったのを見ました。 4 22歳の時のある日、日本人が昼飯を食べに帰ったとき、 私は第一倉庫に入り西側の部屋に死体がならべてあるのを見ました。 5 康徳11年(1944年)陰暦9月錦州から来た1200人以上の労工が 工藤の命令で日本人の兵隊に冷水をかけられ、半分以上が凍死しました。 6 工場内で仕事をしているとき動物の血を採っているのを見たし、私も何回か採られました *関成貴  ハルピン市香坊区  1952年11月4日 証言 私は三家子に住んで40年以上になります。 満州国康徳3年(1936年)から第731部隊で御者をして賃金をもらい生活を支えていました。 康徳5年から私は「ロ号棟」後ろの「16棟」房舎で 日本人が馬、ラクダ、ロバ、兎、ネズミ(畑栗鼠とシロネズミ)、モルモット、 それにサル等の動物の血を注射器で採って、 何に使うのかわかりませんでしたが、 その血を「ロ号棟」の中に運んでいくのを毎日見るようになりました。 その後康徳5年6月のある日私が煉瓦を馬車に載せて「ロ号棟」入り口でおろし、 ちょうど数を勘定していると銃剣を持った日本兵が何名か現れ、 馬車で煉瓦を運んでいた中国人を土壁の外に押し出した。 しかし私は間に合わなかったので煉瓦の山の隙間に隠れていると しばらくして幌をつけた大型の自動車が10台やってきて建物の入り口に停まりました。 この時私はこっそり見たのですが、日本人は「ロ号棟」の中から毛布で体をくるみ、 足だけが見えている人間を担架に乗せて車に運びました。 1台10人くらい積み込める車に10台とも全部積み終わり、 自動車が走り去ってから私たちはやっと外に出られました。 ほかに「ロ号棟」の大煙突から煙が吹き出る前には中国人をいつも外に出しました。 *羅壽山  証言日不明 ある日私は日本兵が通りから3人の商人をひっぱってきて 半死半生の目にあわせたのをどうすることもできず見ていました。 彼等は2人を「ロ号棟」の中に連れて行き、残った1人を軍用犬の小屋に放り込みました。 猛犬が生きた人間を食い殺すのを見ているしかなかったのです。
生体実験の証言 | おしえて!ゲンさん! ~分かると楽しい、分かると恐い~ http://www.oshietegensan.com/war-history/war-history_h/5899/
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cookingarden · 3 years
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映画『涙するまで、生きる』とカミュ『客』の困難な結末
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ダヴィド・オロファン監督『涙するまで、生きる』は、アルベール・カミュの短編小説『客』1) に着想を得て作られた。それだけに両者には、物語の背景となる時代、場所、登場人物など類似点が多い。
しかし、映画が描く物語の結末は小説とはまさに正反対だ。同名の主人公が同じ分岐点に立ち、映画は右、小説は左というように別の道が選ばれる。まるで同じ主人公が二つに割れ、別の世界へと歩む姿を目にするかのようだ。
二つの作品が伝えるものはいったい何なのか、なぜオロファン監督は、小説から風景を借りながら物語を変えたのだろうか。そのことについて考えてみた。
映画『涙するまで、生きる』のあらまし
アルジェリア生まれのフランス人教師ダリュは、故郷近くの寂れた高地でアラブ人の子どもらに勉強を教えている。黒板にチョークで年表を描き、有史時代に何が生まれたかを子どもたちに問うダリュの姿が描かれる。その翌日、教室を目指し、アラブ人を引き連れたフランス人の憲兵が訪れる。憲兵は「この男は身内を殺した。隣町の警察まで護送してくれ」と言い残して立ち去る。
当時アルジェリアではフランスによる植民地支配への抵抗から、独立戦争の機運が高まっていた。第二次世界大戦中フランス兵だったダリュは、フランス人とアラブ人の双方から、敵とも味方ともみなされていた。一方、囚人モハメドはアラブ人という理由で、隣町に護送されればフランス人に処刑され、逃げれば逃げたで身内の復讐に会う悲劇の間に立たされていた。自身の帰属や行く末に確たる拠り所がない点で、二人は似た境遇を抱えている。
こうした事情にありながらも、アラブ人の子どもらのために教壇に立つダリュには、アルジェリア生まれとしての矜恃があった。彼には、同じ土地に生きるモハメドを、フランス人の官憲に渡すことに躊躇いがある。ダリュはモハメドに「俺は、お前を護送する気はない、自分で行け」という。
「タンギーへ行かないのか?」 「断る」 「南へ一日歩けば着く。道なりだ」
ダリュの言葉にモハメドは戸惑う。ダリュは護送は自分の役目ではないと思いながらも、黒板に「今日の授業はおやすみです」と書き記し、しぶしぶ学校を後にする。二人の旅がはじまる。
道中でダリュは、人質をよこせというフランス人に難詰され、アラブ人の一行にも追われる。追手を逃れようと山越えをはじめた夜泊の際、ダリュはモハメドに「お前は、なぜ従弟を殺したのか」と問いかける。
モハメドは、彼が麦を盗もうとしたのだと話しはじめる。殺したのは家族を餓死から守るためだった。イスラムの者が人を殺せば復讐を免れない。復讐を避けるには血の代償を支払わなくてはならないが、貧しさからそれができなかった。もし、逃げ通せば弟が殺され、自分が殺されれば弟が復讐をはたす。その定めにある自分にとって、復讐の連鎖を断ち切る唯一の道は、フランス人に裁かれて処刑されることだと打ち明ける。
「だからタンギーに行きたい」 「連れて行ってくれ」
こうしてダリュは、逃げようとしないモハメドの胸中を知る。「計画通りか」と。
その後二人は、アルジェリア民族解放戦線のゲリラと遭遇し捕虜になる。そこでは第二次世界大戦でともにイタリアと戦った男がリーダーを務めていた。ダリュの縄を解いた男は「連隊のアルジェリア人は皆ゲリラになった」という。ダリュは「独立運動は支持するが、俺は教育で社会を変えたい」と距離を置こうとする。そのダリュに男は、「あんたは兄弟同然だが、命令があれば殺す」という。
翌朝、宿営地を出た一行はフランス軍の奇襲により壊滅する。捕虜だった二人はフランス軍に保護されるが、ここにもダリュの戦時中の功績を伝え聞く者がいる。そして、囚人護送の任務のため二人は解放される。
再び歩きはじめた二人だが、ダリュには、モハメドをタンギーに連れて行くことになおも躊躇があった。そんなときダリュは、女を知らないと漏らしたモハメドのひと言から、生まれ故郷の町ベルジナに立ち寄ることを思いつく。女を知れば心変わりするのではないか。哀れみとともにダリュはそう期待した。
しかし、モハメドの気持ちは動かなかった。再びタンギーへと歩み出す二人。その行手に岐路が現れる。立ち止まったダリュが口を開く、「タンギーだ」。
「左の大きな建物が憲兵署だ」 「砂漠に向かうなら右だ」 「遊牧民が受け入れてくれる」
受け入れるのが彼らの掟だというダリュに、モハメドは「できない」とつぶやく。ダリュは、右に行くなら、自分は、お前はフランス人に殺されたという、そうすれば復讐の連鎖は終わりだと説得する。しかしモハメドは、そのことでダリュの身に危険が及ぶことを案じている。
「戻ってくるな、俺のことは気にするな」 「できない」 「神はお前とともにいる」 「与えれば与えられる」 「求めれば もたらされる」
ダリュは、懸命に生きろ、生きるのだとモハメドを諭す。沈黙が流れる。モハメドに背を向け道を引き返すダリュ。去って行く足音を聞くモハメドに何ものかが去来する。しばらく歩みを進め立ち止まるダリュ。振り返った視界の先には、夕暮れの靄のなかを砂漠へと向かう人の姿があった。
二日ぶりに帰り着いた教室は荒れ、黒板が床に落ちている。そこに��、自分が書き記した「今日の授業はおやすみです」のメッセージが残されていた。
翌日の朝、髪を整え教室で子どもらを待つダリュ。机には整然と教科書が並べてある。机についた子どもたちにダリュが語りかける。「今日は先生の最後の授業だ。ここを離れる。わかるな」と。そして黒板に「アトラス山脈」とチョークを走らせる。一日が終わり教室を去る子どもたち。最後の一人がダリュに手渡した紙には、学校の絵が描かれていた。
映画『涙するまで、生きる』と小説『客』との違い
映画のエンドロールで、本作がアルベール・カミュの短編小説『客』にもとづくと知り、あらためて小説を読んでみた。『客』は文庫本で24ページの短編だが、物語の背景や構成はほとんど同じだ。しかし、題名が異なるようにふたつの作品には違いも多い。とりわけ、作者の世界観には隔たりがある。
・出自と経歴が加えられた映画のダリュ 違いのなかで目立つことのひとつは、映画では、小説にないゲリラとフランス軍の場面が追加されていることである。
小説はどうかといえば、24ページのうち実に21ページが、憲兵が教室を訪れた日と、その翌日に二人が教室を出るまでに費やされている。しかも、小説では出かけて二時間ほどで岐路に着く。その間、二人は誰にも出会わない。
それでは、ゲリラとフランス軍が追加されたことで、物語にはどのような意味が加わったのだろうか。映画には、ゲリラとフランス軍双方が示す、ダリュへの友情と信頼が描かれている。また、ダリュ自身も映画のなかで、独立戦争の支持と教育によるアラブへの貢献を語っている。
こうした経歴のほかにも、映画ではダリュの出自についての情報が追加されている。フランス軍に保護され解放されたあと、二人はベルジナの町に立ち寄る。そしてモハメドとの会話のなかで、ダリュがアルジェリアのベルジナで生まれ両親がスペイン人であることが語られる。
この映画に加えられた場面によってわたしたちは、映画のダリュがスペイン系の入植者を両親とするアルジェリア生まれの男であり、アルジェリアがフランスの植民地だったことから、フランス兵として第二次世界大戦で戦った事情を知ることになる。
小説ではダリュのこうした出自や経歴についての記述はほとんどない。「ダリュはここの生まれだった」とあるのみである。「ここ」は直接的には、教室あたりの人里離れた場所を指している。
・異なる道を選ぶアラビア人 もうひとつ、映画と小説では決定的な違いがある。物語のハイライトとなるダリュとアラビア人(映画ではモハメド)の別れの後が、まったく正反対に描かれていることだ。先に記したように、映画では岐路でダリュに置き去りにされたモハメドは、逡巡したあと遊牧民のもとへと歩みを進める。
映画のダリュは、岐路でモハメドに、遊牧民の方向に行くように繰り返し説得している。小説のダリュはどうだろうか。彼は、岐路に立つアラビア人に棗(なつめ)とパンと砂糖の包みを渡す。それを手渡す際にダリュは、「これで二日はしのげる。ここに千フランある」という。タンギー へは歩いて二時間、反対に高原を抜ける山路を行けば一日で草原に出る。包みは間違いなく遊牧民のもとへと向かう道中を意識したものだ。千フランはどうだろう。おそらく当時の千フランに、官憲を買収できるほどの価値はなかっただろう。ダリュがアラビア人に手渡したものは、道中をしのぎ遊牧民のもとで当座をしのぐ手段だったはずだ。小説のダリュもまた、遊牧民への道を勧めたことになる。
しかし、小説のなかでアラビア人が選んだ道は、モハメドとは異なるものになった。アラビア人の所在を確かめようと引き返した際、ダリュは次の光景を目にする。
「彼は全速力で登った。頂上で、息を切らして、立ち止まった。南は、岩場のひろがりが青空の下にはっきりと浮き出ていたが、東の草原の上にはすでに熱気の靄が立ち昇っていた。そして、この薄靄のなかに、ダリュは、胸を締め付けられて、牢獄への道をしずかに進むアラビア人の姿をみいだした。」
映画がカミュの『客』を原作だと言わないのは当然のことだろう。主人公に小説と同じ名前を与え、酷似するハイライトの場面を維持したことを考えれば、オロファン監督には、結末を変えてこそ伝えたいメッセージがあったに違いない。これについては後述する。
・宗教観が加えられた映画のダリュ 映画と小説の違いは他にもある。そもそも、同名の主人公ダリュが、どこか別人に感じられるのである。確かに、ダリュがアルジェリアに住み、第二次世界大戦でフランス軍として戦った教師であるのは同じだ。そのいわば出自と肩書きの一致とは別に、二人のダリュの内面には隔たりがある。
何よりも、映画のダリュはクリスチャンとして描かれている。モハメドと食事をする場面で、ダリュは十字を切っている。カトリック教会のやり方だ。このときモハメドは「ビスミッラー」と、いただきますを意味するイスラム教徒の祈りを口にする。映画には他にも、ダリュがキリスト教徒であることを伺わせる場面がある。モハメドとの別れの際、岐路に立ったダリュは神を引き合いに、「与えれば与えられる」「求めれば もたらされる」と口にする。これは聖書のマタイ伝にある「求めよさらば与えられん」からの引用だろう。
しかし、小説のダリュにこうした宗教的な性格を見出すことはできない。ダリュは「あらゆる人間とその薄汚い悪意に対し、そのしつこい憎悪と血を求める狂気とに対する怒り」を覚える人間だが、超越的な立場から悪意や憎悪を断罪したり赦すような人物ではない。モハメドと教室を出る日の朝、ダリュは高台の端にうずくまりながら思いをめぐらせる。
「この男のばかげた罪は彼を憤激させる。しかし、この男を引き渡すのは信義にもとる振る舞いだ。それを考えただけでも恥ずかしさに気が狂いそうだった。そして、同時に、このアラビア人を自分のところに送りつけた仲間たちと、あえて殺人を犯しながら逃げることもできなかった男との両方を呪っていた。」
このように、小説に描かれたダリュは信義に揺れ、恥ずかしさに気を狂わせ、他人を呪う、悩めるままの地上の人間である。これは、「一貫してキリスト教や左翼革命思想のような上位審級を拒否し、超越的価値に依存することなく、人間の地平にとどまって生の意味を探しもとめた」2) と評される作者カミュの姿を思わせるものだ。その人間ダリュにオロファン監督は、欧州が生んだカトリックという宗教的な価値観を上乗せしたことになる。
・フランス文化を教える映画のダリュ また、映画の冒頭で描かれる教室の場面は、ダリュがどのような意識で子どもを教えていたかの手掛かりになるものだ。ダリュはそのとき子どもたちに、有史時代に何が生まれたかを尋ねている。「道具」と答えた子には間違いを指摘し、「文字」が正しいと教えている。
翌日にも授業風景が描かれる。このときダリュは黒板にチョークで描いた河川を指しながら川の名前を尋ねる。子どもらがガロンヌ川、ライン川、ロワール川と口をそろえる。黒板にはフランスを代表する5つの川の名前がフランス語で書かれている。
映画の最後では、モハメドと分かれた後の教室も描かれる。ダリュが行う最後の授業の場面だ。ここでダリュは、黒板にアラビア語でアトラス山脈と書き、その後フランス語でも同じことを書き添える。このあと子どもたちは教室を出ていく。その最後の一人がダリュに手紙を差し出す。その子は、映画の冒頭で有史時代の問いに、正しく「文字」と答えたヤシンだ。
こうした教室の場面から、ダリュの教育観を窺い知ることができる。映画の彼は、スペイン系の入植者を両親に持つアルジェリア生まれの男だが、彼の価値観はフランスにある。黒板に描かれるのは、フランス語で示される文明と歴史、そしてフランスの地理だからだ。その期待に応えるように、ヤシンはダリュの質問に正解を示し別れの気持ちを示す。これはダリュが願う教育の成果だけではない。ここでは、フランス人教師のダリュを通じて、小説よりもはるかに詳しい描写が与えられている。このことを考えれば、これはオロファン監督自身の願いであり価値観と考えるのが自然だろう。そうであればオロファン監督は、映画のダリュがよりヨーロッパ的であることが、アラブとフランスの分断の克服に役立つと考えたことになる。
二人のダリュが示す地上の人間の困難
このように、映画『涙するまで、生きる』とカミュの小説『客』は、外観上多くの類似点を持ちながらも、同名の主人公ダリュを通じて描かれるその内実には大きな隔たりがある。その違いを示すハイライトが、岐路でダリュに置き去りにされたアラビア人が示す選択である。
映画では、ダリュに説得されたモハメドは遊牧民への道を選び、小説のアラビア人は、ダリュの内心とは裏腹に自ら牢獄へ��向かう。それぞれの選択を促したのは二人のダリュである。
映画のダリュは、カトリックの信者であると同時に、欧州的な価値観を持っている。アラブ人の子らを教育し、フランス人の価値を身につけるさせることに情熱を傾けている。その男がアラブ人モハメドの救済を願うのは当然のことだろう。モハメドが遊牧民への道を選んだことで、ダリュの思いは叶ったことになる。だが、アラブ人を救った彼には、モハメドが懸念した不幸が待っていた。最後の授業と黒板の「アトラス山脈」がそのことを暗示している。おそらくこれは、イスラムの掟がダリュに引き継がれたことを示すサインなのだろう。
オロファン監督は宗教性のカケラもない『客』の舞台に、道行を同じくする者にキリスト教的な救済を持ち込んだ。そして、ダリュがモハメドに示した友愛の情は叶えられた。しかし、イスラムの掟は対象を変えて、そのまま引き継がれたように見える。欧州的な価値観による救済は、北アフリカに生きる男達を、分断から守れなかったことになる。
一方、小説のダリュは、凡夫として生きる地上の人間である。アルジェリアの高地で子どもを教え、客として訪れたアラビア人をいまいましい気持ちで見ている。だが彼は、アラビア人とともに歩む一種の興奮のうちに、口汚く罵りながらも囚人への哀れみを禁じ得ない。そして、その心根こそが、アラビア人を牢獄へと歩ませる。
「丘陵の端に、今は手をだらりと垂らして・・・・男は教師を見つめている。ダリュは喉がつまるのを感じた。しかし、じれったさに口ぎたなく罵り、激しく合図を送り、そしてまた歩き出した。」
このあとダリュは、「胸を締めつけられて、牢獄への道をしずかに進むアラビア人の姿」を見ることになる。アラビア人は本来の覚悟の上に、さらにダリュの心情を受け止め「胸を締めつけられた」のだろう。そのときアラビア人の心は、復讐から弟を守ることで処刑される覚悟から、愛情を裏切る悲しみへと姿を変えた。ダリュが不誠実であれば、こうはならかった。アルジェリア に生まれ、アラビア人の幸せを願う彼にとって、同胞に失意を抱かせ刑場に送ることは、あまりにも非道なことだったろう。そしてダリュには警句が残された。黒板に記された、誰からともわからないこの言葉は、小説のダリュもまた救われないことを示している。
「お前は己の兄弟を引き渡した。必ず報いがあるぞ」
小説ではこの言葉が「下手くそな筆跡」で書かれたとある。そうであれば、アラビア人の追手がフランス語で書き残したものかもしれない。しかしそれは、現実の死を忘れさせる、深い孤独に落ちた男の独白でもあるのだろう。
映画は、帰属の不確かなアルジェリア生まれのフランス人と、生きるあての不確かなアラブ人との間に交わされた友情の成就を描いている。そこではおそらく、人間の絆が前提になっている。宗教や思想が異なっても、必ず分かり合えるという思いがある。これは多くの近代人が願う共通の希望だろう。
アルジェリア戦争を戦う、アラブ人とフランス人だけの話ではない。ユダヤ人をめぐるパレスチナとイスラエルの争い、アメリカを苦しめる黒人と白人の分断にも通じるものだ。おそらくオロファン監督は、解きようのないカミュの『客』に、神に象徴される超越的な視点を加えることで、地上の人間が作り出した不幸の行く末に、一筋の光明を見ようとしたのだろう。だが、その引き換えに起こるダリュの運命から逃れることはできなかった。そのことは正直に映画に記されている。
しかし、小説のダリュは、映画のダリュ以上に救いがない。彼が行き着いた場所には世界すらもない。彼に訪れる報いには、いっさいの超越的な力も及ばない。人間が生きる場所とは、そういうものだというのである。小説のダリュもまた、アルジェリアの大地とアラビア人を愛している。だが、まさに愛するが故に、愛する者がいたからこそ、「彼はひとりぼっち」なのである。
二人のダリュはともに、愛によって自らの不幸を背負った。この深刻な事態を、多くのわたしたちは受け入れることができないでいる。結局のところ、映画で描かれた超越的な世界も、小説が示す人間的な地平に包まれて解きようがない。できるのはただ、愛しすぎないことである。その悲しみに独りで耐えろという。『客』は静かに、しかし強く、そう語りかけてくる。その声が聴こえると思うのは、わたしだけだろうか。
1)アルベール・カミュ『転落・追放と王国』新潮社, 2003.に収録 2)Wikipedia「アルベール・カミュ」 https://ja.wikipedia.org/wiki/アルベール・カミュ
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argo-nautai · 4 years
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聖夜のこども
 ゆっくりと動き出した列車の蒸気は、窓から顔を出す子供たちを巻いて灰色の幻影に変えていく。彼らはクリスマス休暇を過ごすために故郷へ帰って行く最後の組だ。僕ら居残り組は、取ってつけたような笑顔を作り、周りにいる人々と同じように漠然と列車に向かって手を振った。隣にいるヴァルターにいたっては手すら振っていない。ポケットに手を突っ込んで、胡散臭そうに、通りすぎていく乗客を眺めていた。
「さて子供たち、学校へ戻りましょう」
 神父がおごそかに手を挙げ、そのあとにぞろぞろと子供が続く。町は華やかな電飾が輝き、店の窓には赤や緑の装飾品、こんがりと飴色をした焼き菓子やチョコレートが並んでいた。僕は、湯気の立つカップを持った紳士がこちらに十字を切るのを見た。もちろん神父に向かってしたことだろうが、黒い外套を着て神父に従う僕らを傍から見れば、それはまるで葬列で、クリスマスに家へ帰ることができない絶望を滲ませた表情は、死者そのものなのだと気づいた。
 ハンスが、手袋の手で僕にガムをすすめた。口に入れ、噛み砕くと曹達味が鼻を通る。兄のお下がりだという大きすぎるコートに着られながら、僕の少し後ろをとことこと歩いている。
「今夜は一人で寝ないといけないんだ。クンツは家に帰っちゃったから」
 小さいハンスが俯いて言うのを見下ろした。頬にガムを溜めこんでいる。
「一人で寝るの、こわいのかい」
「いいや。全然こわくないよ。暗いところに一人でいることなんて平気だ。ただちょっと寂しいだけだ。ねえ、眠くなるまで話し相手になってくれない」
「ああ。いいとも。いつでも部屋に来るといい。ヴァルターは僕一人じゃ持て余すよ」
 隣を歩いていたヴァルターに目配せすると、奴は溜め息をつきながら首を振った。
「ハンス、騙されるなよ。こいつ、喋り散らかして寝かせてくれなくなるぞ」
 僕はヴァルターの肩を小突いた。
  町の喧騒を抜けて森に入ると、辺りはいつもの陰鬱さを取り戻し、一本道を行く背の高い神父の後ろ姿は、かのヴァイオリン弾きが子供をどこかへ連れ去ったのと同じような闇を感じさせた。寄宿舎へ逆戻りしているのは僕とヴァルターの他、ハンスを入れた下級生三人、同級生二人、上級生八人である。時折、前方から誰かの乾いた笑い声が上がるが、皆いつもに比べて大人しく、しっぽりとして、親鳥にくっついてまわる小鴨よろしく、土の道をじゃりじゃりいわせながら歩いている。
「今夜はクリスマス前夜だけど、ご馳走は無い。俺はガチョウのローストが好きだけど、きっとテーブルには並ばない。あるのは紫キャベツだけだ。これを地獄と呼ばずに何と呼ぶんだ」
「贅沢だよ。スープとパンがあれば僕はかまわない」
「アダム。俺は、お前はどこかがおかしい、おかしいと思っていたけど、そこまでネジが緩んでいるとは思ってなかったよ。ちっとも子供らしくないんだもの。退屈な長い長いミサだって‘神聖な気分になった’と言って目を赤くするし、くだらない宮廷音楽を聴かされた時だって‘感動した’と言ってまた目を赤くしてんだもんな。敵わないよ」
 ヴァルターと僕に挟まれたハンスは、交互に僕らの顔を見上げている。目の端に、ハンスのきのこ頭がきょろきょろと動くのが映り込む。
 刺々しい木々が連なる先に、寄宿舎の見慣れた銅屋根が見えて隊列は足を速めた。神父が、貴重品を扱う手つきで静かに門を開け、穏やかな口調で皆におかえりと告げていく。そそくさと通り過ぎようとしたヴァルターの肩に、神父の手がふいに伸び、そっと触れる。
「今日と明日は掃除を休みなさい」
 それは羽虫が飛んでいくような声だった。ヴァルターは無言でうなずき、門をくぐる。奴は数日前に授業を丸一日ずる休みしたため、トイレ掃除二週間を言いつけられていたのだ。神父の姿が見えなくなるまで歩いたところで、僕の背中をバシンと叩き、「メリークリスマス」と呟くのだった。
  寄宿舎内は、誰かが歩くとその靴音が全員の耳に入るという有り様だった。階段をソリで滑り降りた生徒や、花火を炸裂させ、寄宿舎内の全警報器を作動させた生徒の頬を強烈につねり上げ、廊下へ整列させて、「このアホのトンチキ野郎」と大声で寮長が青筋立てて怒鳴る、あの風景は当分の間見なくて済む。このまま子供が誰一人としていなくなれば、ここは廃墟であると言ってもよいほど、寂しく寒風が吹きこみ、錆びた窓枠がきしきし音を立てている。歓談室の暖炉も火が消えているし、暖房もあまり効いていない。
「用意ができたら、すぐに君たちの部屋へ行ってもいいかい」
 ハンスがそわそわとして、目を潤ませて言った。
「今すぐ、このまま一緒に来たらいいよ。何も用意することなんてないだろう」
「いいえ。寝間着に、羽織に、枕に、あと僕は毎晩クヌートを抱いて寝ているのだけれど、持って行ってもいいかしら。あ、クヌートはクマの縫いぐるみなの。シロクマじゃなく茶色のクマだよ。邪魔ならば置いていくんだけど」
「何でも持ってきていいよ。夜になったら本を読んで、トランプをしよう」
 僕が答えると、ハンスはぱあと顔を眩しくさせ、「はい」と大きな返事をしてから勇んで廊下を全速力で走っていった。眠くなるまで僕らの部屋にいると言っていたが、どうやら一緒に眠ることになったようだ。ヴァルターが、階段の中ごろで僕らの一部始終を見届けていた。外套を乱暴に脱いで小脇に抱え、見るからにだるそうに階段を上っていく。
「ハンスが来るんじゃ、煙草は吸えないな」
 背中がそう言う。僕は段飛ばしで横へ並んだ。
「あの子が眠るまで我慢しよう。なんたってクリスマスだから、可哀想な下級生を無下に出来ない」
「おや、そいつは神が遣わせし天使の言うことだな」
 皮肉を垂れ、部屋の扉を開けるヴァルター越しに見た室内は、朝の大騒動の爪痕を残したままだった。急いでいて気がつかなかったが、ペンライトは点けっぱなしだし、窓も開けっぱなしだ。窓を閉め、散らばった落書きや本、傾いた時計を整え、片方だけの靴下はタンスへ仕舞い、絨毯を伸ばしてから僕は外套のボタンを外した。
「これは、お前か」
 振り返ると、ベッドの上で沈んだヴァルターの手に、金色の包み紙のボンボンがあった。
「いいや、違うよ。あれ、ぼくのベッドにも置いてある」
 枕の横にころんと転がる、いくつかのキャンディをつまんで眺めた。
「君が置いたんじゃないのか」
「違う。寝転んだら枕元から降ってきたんだ」
 僕は外套をクローゼットに仕舞い、ベッドに腰を下ろしてヴァルターに向き合った。
「ひょっとすると、これは、サンタクロースからの贈り物じゃないのか」
 その言葉を待ち構えていたと見え、ヴァルターは鼻で笑って歯をぎらぎらさせた。
「サンタが良い子に贈り物をくれるとはな。お前は間違いなくもらえるとして、俺のは何かの手違いだ。誰かのベッドと間違えて置いちゃったんだな。今頃キャンディの在庫の帳尻が合わなくて、小首を傾げているはずだ」
 僕は、パラフィンをあやしげに光らせる菓子を手の平で転がした。
「今夜は前夜祭なのに菓子をくれるんだな。あのじいさんは」
 テーブルにボンボンを置き、ヴァルターは目を閉じて昼寝の態勢に入った。
  「やあ、ごめんなさい。邪魔なものが増えてしまうけれど、やって来たよ」
 ノックの音とともにハンスが部屋へ入って来た。七つの海を渡る船旅にでも出ようかと思うくらいの大荷物で、クマのぬいぐるみと、はじけ飛びそうな錠をやっと閉じたのであろう革張りのトランクを抱えていた。頭には、クリスマスにおあつらえ向きのチープな山高帽を被っている。トランクから寝間着と思わしき布を引きずり、床を丁寧に掃き掃除している。難儀な様子で部屋の隅にそれら旅行道具を置く。
「フランスへお出掛けか」
 ヴァルターが首を上げて言った。
「あれも、これもと詰め込んでいるとどんどん増えてしまったんだ」
「構わないよ。一階から二階へ来るのは大旅行だからな。ハンケチすら持たないヴァルターとは違って、君の備えあれば憂いなしの心得は素敵だ」
 ハンスははにかみ、申し訳なさそうに、ヴァルターが大の字になるベッドの端にちょんと座った。
「あ、そうだ。二人はキャンディに気がついたかい」
 出し抜けに言うので、僕は手に持った金色のものをぶらぶらさせて見せる。
「神父からのクリスマスプレゼントだそうだね。いつもは何も無いのだけど、今年は居残り組が少ないから特別にくれた。明日は早朝ミサがあって忙しいから、今渡しておくことにしたんだって。僕もう三つも食べちゃった」
 聞いて、頭の中が一瞬で曇るのを感じた。無邪気にハンスがお喋りするのを右から左へ聞き流しながら、なんだか無性に寂しい気分になった。幻滅したのではないし、神父が悪いわけではない。神父は親切で、優しくて、日々とんでもない悪戯ばかりして困らせる僕らに、今日のこの日ばかりは贈り物をしようなんてよくできた人間のやることだ。しかし、クリスマスに贈り物を贈り合い、大切な気持ちを再確認し合うという、本来ならば家族とすべきことが、悲しき不仲によって叶わないのだという孤独が波となって押し寄せてきたのだ。この学校に通う大多数の子供が今この時も、満面の笑みを浮かべながら家族との会話と晩餐の匂いに心躍らせているはずなのに、それが僕には一切叶わない。怒りや悔しさは通り過ぎて、空しさが腹の底からこみ上げてきた。
 ヴァルターを見ると、同じく返事もせずに黙りこくって、天井を見ているのだった。
「ああ、ごめん!神父からの贈り物だなんて言わないほうが良かったね」
 ハンスがおもむろに立ち上がり、おろおろしてズボンの裾を握っている。
「君たちが、まさか、サンタクロースを信じているなんて思いもしなかったんだ!」
 一瞬間があって、ヴァルターと僕は盛大に吹き出した。ハンスはただおろおろし続けるばかりで、腹を抱えて笑う僕が、もしや引き付けでも起こしたのではないかと心配そうな顔をしているのだった。
「ありがとう。良いクリスマスになりそうだよ」
 ハンスの山高帽が揺れるきのこ頭をぽんぽんと叩くと、彼はそれに応えてぎこちなく微笑んだ。
  窓の向こうの森の果てに、太陽が落ちていく。濃い群青が次第に色を変え、空のずっと上から黒のカーテンが降りて今日に幕を閉じようとしている。
 その夜の食卓には、紫キャベツが山盛りだった。僕らは互いの皿にキャベツを飛ばし合い、笑い合いながら、聖夜が過ぎゆくのを感じていた。
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