祝福とフィクション
28歳の誕生日、茉弥の結婚式だった。
半年以上前から悩みに悩み、ようやくレンタルまでこぎつけたパーティードレスが可愛くて嬉しい。パーティードレスを沢山着る人生にしたい。
駅で待ち合わせていたあづみが花束を抱えていたのを見て、しまった私も何か茉弥に用意すればよかったな、とちらりと頭が過った瞬間、お誕生日おめでとうとにっこり微笑まれて花束を渡される。思わず私の?と2回程聞いてしまった。
お花屋さんに花の選定からラッピングまで全部口出しという花束はとてもゴージャスでシックで、やっぱり花束って選ぶ人の性格が出るよなあとしみじみ思った。私が嫌いなかすみ草は抜いてもらって、大好きな菜の花は入れられなかったからと色とフォルムが似たお花をいれてくれた。彼女は好きだと言ったもの、嫌いだと言ったものを絶対に忘れないし、飲みの場での約束も忘れず叶えてくれる、律儀な女である。
駅から15分の道を当然のごとく歩く気になれず、平日なのに雨だからかずらりと並んだタクシー乗車列の最後尾に並ぶ。あづみのヘアセットがきれいにまとまっているのだけど初めて見る形の髪型をしていたので、個性的で可愛いねと言うと、前から見たスタイルはタイトで後ろは少し遊んだアップで見たことないけど奇抜では無い髪型にして欲しいと写真も持っていかずサロンでオーダーしたらしい。しかも初めて行くお店で。なんともチャレンジャー。
式場について、ウェルカムボードで初めて旦那さんの顔を見た。想像通りだの違うのだとやんや言っていたら、目の前を同じく式に招待されていた知人の理沙子が数人従えて通っていた。相変わらず嫌な雰囲気を携えて歩く女である。茉弥は理沙子ちゃんもあの時と比べて随分丸くなったからと言っていたけど、毛皮の羽織を着ているのをみて、丸ごと変わらずいけ好かない女のままだろうな、と思った。
カサブランカのにおいで埋め尽くされたチャペルにしずしずと入ってきたウェディングドレス姿の茉弥は、まるでウェディングドレスを着て生まれてきたのではないかと錯覚するほどよく似合っていた。私服だときわれても違和感がない。生まれながらにプリンセスなのだ。あづみは何度もハンカチで目を拭っていたけれど、私は対面に座っていた、新郎側ゲストの理沙子とその一味が誓いのキスで笑いをこらえていたのをみて一気に涙が引いた。おかげさまで親の勢いで泣いていたあづみに反して、私のハンカチは挙式開始から披露宴お開きまでカラカラに乾いていた。私の結婚式でもそれぐらい泣いてよね、とあづみには言っておいた。
メニューをみただけでも豪勢だとわかる料理は本当に美味しく、お金かかってんなーと身も蓋もないことを思った。久しぶりにお酒を飲んだらすぐ酔いが回り、酔い醒ましに違うお酒を飲む。式は終始和やかで、茉弥もとびきり可愛かった。歓談も多くてたくさん話したり写真を撮ったりできたし、正解の結婚式という感じがした。結婚式に正解も不正解もないだろうけど、正解の結婚式と聞いたら誰もが頭によぎるような結婚式。楽しかった。楽しかったのだ、確かに。親友と呼べる友人の結婚も嬉しいし、その結婚式に呼んでもらえたことも嬉しい。なのにずっと天井から俯瞰して見ているような気持ちだった。旦那さんベールダウン上手いなとか、メインテーブルガッツリあるタイプ久しぶりに見たなとか、そんなことばかり考えていた。
行きのタクシーで結婚欲のないあづみと、茉弥ちゃんの結婚式みたら結婚したくなるかななど話していて、結婚式はやっぱり素敵だなと実感したけど、自分がしたいかは別物だなと思う。
ちょうど1年前、元同期の間宮の式に参列した時は嗚咽が漏れるほど泣いた。それはあまりにも幸せな家庭で彼女が育ったということがありありと見えたから。眩しかった。自分の生まれ育った環境とのギャップに劣等感が煽られた。私は家族と仲が良くないからこんな結婚式はできない。家族に祝福してもらえない。だからこそ、嬉しそうに写真を撮るお父さんや、目頭をハンカチでしきりに抑えるお母さんを見て、胸の奥底が痛み、泣いた。今、たぶんあの時程私は家族というものに執着していない。茉弥はスーパーあったかい家庭でたいせつに育てられた子だと知っていて、実際にご両親も温かかったけれど、傷は痛まなかった。私はこの1年で随分癒えたのだと思う。色々と。
この先、誰の結婚式でも泣かないような気がしてきた。私は感受性が豊かで涙脆いと言われるのにだ。結婚式はなんというか私にとって身近じゃなくなりすぎた。友人の結婚式よりも、フィクションの小説や映画の方がずっとリアルで心が揺さぶられ涙が出る。
お見送りで茉弥からメイン装花の一部をもらった。花束を入れられるようなフラワーベースは生憎家には1つしかないので、帰り道、手頃なサイズのフラワーベースをFrancfrancで買って帰る。2つの花束を置くと部屋は一気に明るくなり、生花の瑞々しい香りで満ちている。これだけがリアル。この部屋が私の現実。
ところであづみが茉弥の式の様子をインスタに挙げたら、何人かの元クラスメイトから礼は私の事なんか言ってた?とか、礼とまだ連絡取れるかな、とあづみに連絡が来たらしい。礼に何かしてしまったなら謝りたいとまで。私はリアルなアカウントでSNSをしてないし、LINEもすぐブロックすると公言しているのでこういうことになるし、あづみには仲介役をやらせて申し訳ない。
でも。あれから5年も経ったのに、未だに自分が何をしたか分からないのなら、私に謝る権利などないということでしょう。好きな人にだけ数年ぶりにLINEを送って寝る。どうせ会うこともないだろうけど。
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君にハラキリ Kimi ni harakiri translation
A third translation has hit the towers.
One of my favorite Urbangarde songs of all time!!!
君にハラキリ 君にハラキリ
Kimi ni harakiri kimi ni harakiri
Stabbed in the stomach by you, stabbed in the stomach by you (1)
傷つけあうようなキスしませんか
kizutsuke-au you na kisu shimasen ka
why don’t we kiss like we’re hurting each other?
嘘つきあの娘のウェディング・ドレス
usotsuki ano ko no uedingu doresu
the lying girl’s wedding dress
愛されたくて愛せないお姫様
ai saretakute ai senai ohimesama
like a princess who wants to be loved but can’t love back
嘘つきあいつのウェディング・ケーキ
usotsuki aitsu no uedingu keeki
that lying man’s wedding cake
ナイフみたいに切り裂きたいの
naifu mitai ni kirisakitai no
he wants to cut it up and tear it apart like he would with a knife
Killer Killer したいの
he wants to be a killer (2)
忘れないで 砂のお城 渚で燃えるピアノ
wasurenai de suna no oshiro nagisa de moeru piano
Don’t forget a sand castle a burning piano on the shore
撮らないで 瞳で焼きつけてみせて
toranai de hitomi de yakitsukete misete
don’t take a photo burn it into my retinas
君にハラキリ 君にハラキリ
kimi ni harakiri kimi ni harakiri
stabbed in the stomach by you, stabbed in the stomach by you
ハートまで 傷のあとまでも さらけ出して
haato made kizu no ato made mo sarakedeshite
to the heart all the way to the scar expose it all
君にハラキリ 君にハラキリ
Kimi ni harakiri kimi ni harakiri
Stabbed in the stomach by you, stabbed in the stomach by you
傷つけあうようなキスしませんか
kizutsuke-au you na kisu shimasen ka
why don’t we kiss like we’re hurting each other?
気の毒あの娘のモーニング・ドレス
ki no doku ano ko no mooningu doresu
that pitiful girl’s mourning dress
嫌われたくなくて嫌ってた昨日に
kirawaretakunakute kitteta kinou ni
she wanted to not be hated but yesterday she was hating others
気の毒だれかのモーニング・カード
Someone pitiful’s condolences card
ブーケみたいに投げつけたいの
I want to throw it like I’d throw the bouquet
Blue Blue するから
because they’re blue, blue (3)
忘れさせて くちづけて 煙あげるリムジン
wasuresasete kuchidzukete kemuageru rimushin
Kiss me and make me forget in the smoke filled limousine
書かないで 潮騒にぜんぶ流して 恋は激しく
kakanaide shiosai ni zenbu nagashite koi wa hageshiku
don’t write it down, everything is floating away to the sounds of the sea, love is done violently (4)
「君に、ハラキリ?」
kimi ni harakiri
Will you stab me in the stomach?
「Yes,君に、ハラキリ」
Yes, you will stab me in the stomach.
君にハラキリ 君にハラキリ
kimi ni harakiri kimi ni harakiri
stabbed in the stomach by you, stabbed in the stomach by you
殺し合いみたいなキスしませんか
why don’t we kiss like we’re killing each other?
撃たれたあの娘のウェディング・ドレス
utareta ano ko no wedding dress
the girl who was shot’s wedding dress
愛されたくて愛せないお姫様
aisaretakute aisenai ohimesama
a princess who wants to be loved but can’t love
ピストル・オペラでチャペル血まみ
pisutoru opera de chaperu chi mami
the blood stained chapel from Pistol Opera
カメラは回り続けるけど 瞳だけで焼きつけてみせて
kamera wa mawaritsudzukeru kedo hitomi dake de yakitsukete misete
but the camera keeps turning, burn it only into your pupils
君にハラキリ 君にハラキリ
kimi ni harakiri kimi ni harakiri
stabbed in the stomach by you, stabbed in the stomach by you
ハートまで 傷のあとまでも さらけ出して
haato made kizu no ato made mo sarakedeshite
to the heart all the way to the scar expose it all
君にハラキリ 君にハラキリ
Kimi ni harakiri kimi ni harakiri
Stabbed in the stomach by you, stabbed in the stomach by you
カチンコ鳴ったって 抱きしめつづけて
kachinko nattatte dakishimetsudzukete
The clapboard sounds, keep holding onto each other
カットが終わっても キスを止めないで
katto ga owatte mo kisu wo tomenaide
Even when the cut ends, don’t stop your kiss
君にハラキリ…
kimi ni harakiri
stabbed in the stomach by you
Harakiri refers to ritual suicide by disembowelment, aka seppuku, but I think that’s clunky as a translation so stabbed in the stomach by you ‘tis.
Killer Killer is a play on the onomateopeia キラキラ kirakira “sparkling.”
Blue Blue is a play on the onomateopeia ぶるぶる buruburu “shaking.”
Not sure if this is right but if it is, isn't it just so beautiful?
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2023年11月から
11月から、群馬に新しく完成する施設の待望館で日曜日の主日礼拝がはじまる予定です。チャペル用の建物は、十字架や講壇も準備されています。
施設が完成する前に、法人本部のスペースで集会をしました。ホライズンチャペルから平野牧師が応援に来てくださいました。
クリスチャンの方とグループの理事長に高崎駅前のゴスペルで出会ったことからはじまった群馬での動き。ホサナとエリヤが歌っている時出会った関係です。
他教会のクリスチャンの方もいるため、私たちの教会は、聖書信仰で、伝道的な重荷もあり、カリスマを用いる立場だということも伝えてありますが、随分と好意的に受け止めて下さっています。
職場としてくる職員のかたや、これから入居する方々に福音が伝わっていくと良いなと思っています。また、施設に併設されるテナントに美容室やクリニックが入り、電車の車両も設置されるようで、地域の方々も徐々に集われると良いなと思っています。
12月9日には、こちらの施設の図書室でクリスマスゴスペルコンサートが計画されています。まだ、はじまったばかりになりますが、横須賀教会のゴスペルグループが来てくださる予定になっています。
これから、入居が始まります。
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どなたかのブログでみて、もともとミステリー好きなので、アリス・フィーニー、読んでみた。
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彼と彼女の衝撃の瞬間 アリス・フィーニー
彼の視点、彼女の視点で交互に語られていく物語
殺人事件がある
次々と残酷な方法で女性が殺されていく
なぜ、殺されたのか?
被害者の女性たちと主人公との関係は?
結末は、少し呆気にとられる。
わかるような…
いや、そこまでせんでも…
とも思うけれど。
ひとりばかり、最初から最後まで被害者なんじゃないか、と、可哀想な人が…
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彼は彼女の顔が見えない アリス・フィーニー
くじ引きで当たったという宿泊券を利用して、夫婦関係を修復する旅にでたふたりが滞在することになった古いチャペル
連れていった愛犬は姿を消し、雪が降るなか乗ってきた車のタイヤは傷つけられて、チャペルを出ることもままならない
夫は相貌失認症で、人の顔を見分けることができない(ええーっ!…ですよね?)。
そのことが、この謎の旅にどう関わっているのか?
過去に妻が夫にあてて書いた手紙と現在の夫の語りで物語が進んでいく
何が起きているのか、ほとんどわからないまま、物語は後半へ。
結末、そういうことか。と。
それにしても、相貌失認症、なんてこの本を読むまで知らなかったので驚いた。
100人に2人はいる、とのことだけど…
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また夜中に起きて、寝られないのですが、
最近、賛美が夢で出てきて、夜中に小さな声で録音をしております。(^^) 朝まで寝たら、忘れてしまうのでw
昨日はマラナタという曲でした😌⭐️
そして、今も朝の3時なのですが、
ケンタッキー州のアズベリー大学でリバイバルが起きていると、一般のニュースでも流れたそうです。普通のチャペル礼拝を行なっていた2月8日。聖霊様の働きが強くのぞみ、そこから今にいたるまでからノンストップのworshipとprayer. たくさんの学生や多くの方々、悔い改めの祈りがなされ、色んな場所。大学や、他の地域にも飛び���しているそう。
1970年にもアズベリー大学では、Revivalが起きたそうです!
なんか聞いたことある名前だなと思ったら。
同じ敷地内のアズベリー神学校は、
マーリンキャロザースさんが通われた学校✨✨
アメリカに3年ぶりに、ハリウッドチーム(映画を通してゴスペルを伝える宣教チームです😌) が出た2/8からアズベリーで素晴らしい神様のわざが現されていること。
とても感動します。
今、あまりニュースでは取り上げられていませんが、オハイオ州では電車の脱線事故の後、アメリカのチェルノブイリではないかと一部では言われるほど猛毒が流れて、1週間ほどたっているそうで、遠の川にいる魚やペットなども死んでいると。オハイオ州の川は500万人に影響があると言われています。そんな中、アメリカのために祈っている時に、
感謝と賛美のことを世界中に広めた、マーリンさんが通われていたアズベリー神学校の近く、アズベリー大学で、神様の働きが起こっていること。
どんな事が起きようとも、どんなマイナスな中にあろうとも、全てのことについて感謝する!
すごく語り掛けを受けました。
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最後にもう一つ^_^
最近なぜか、ステラおばさんクッキーを思い出しました。小学校、中学校と横浜にある学校に通っていて、いつも横浜駅のホームには、ステラおばさんのクッキーの良い香りが😍帰り道、食べたりしたらダメなのでw 毎回我慢しつつ、お金もあまりないし、いつも良いかおりにつられて、2回くらいは食べました😂美味しくて美味しくて!!
この前の浦和の奉仕の時に、何げなく浦和駅を調べていたら、ステラおばさんのクッキーがあることに気づき!笑
そして、知らなかったのですが、
ステラおばさんはペンシルベニア州にある、
アーミッシュの方で、聖書にそって、シンプルな生活をしておられ、幼稚園の先生だったそう!
ケーキやクッキーを作る時、一番大事なのはオーブンの温度でもなく、それを誰かのために作ろうと思う気持ちなんだよ。と言っていたステラおばさん✨
浦和に行く前日の夜。ベッドで、ルークにも、ステラおばさんのお話をしながら、「大事なのは、誰かのために作ろうっていう気持ちなんだって😆」といいながら、ルークは横でグーグー寝ていました。爆😂
そして、ステラステラ〜!と思っていたのですが、浦和に着いたらそれどころじゃない(当たり前。) 笑 沢山の方々がおられ、ゴスペルに聞き入っておられる✨😊
ステラのおばさんクッキーは🍪神様にささげますw とわけわからない祈りをして、
切り替えました。笑😂😂
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そして、6組出た、浦和のコンサートは祝福されました^_^
で、(前置きが長い)
今日、なぜかルークのお友達のお母さんが、はぁはぁいいながら追いかけてきてくれて、
ハッピーバレンタイン😍と言ってくれたものが、
なんと!!!
ステラおばさんのクッキー🍪セット😭✨
何これ。神様素晴らしすぎて。
今まで、ステラおばさんのクッキーは、もらった事がなくて。驚きでした。
サトピにも伝えたら、すごいね神様と!
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そしてルークもはじめて食べて、
これはどこで買えるのかと聞いてきました。笑
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長くなりましたがw
神様の恵みに感謝します❤️😌
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