GTA Onlinのプレイ日記 - 2023/11月頃
まだまだ、だらだらとGTA Onlinをプレイ中。そして、またもカジノで車をGET。
オフロードカーって一台も持ってなかったから丁度良かったのかもしれない、って思ったけど使うミッションとかあんまり無いんだよなぁ。
一応、タイヤを防弾の物にしたり、エンジンを良い物に変えたり、アーマー100%にしたりとかはしといたけど。
んで、他にはジャンクエナジー・スカイダイビングを攻略。
↑のロックフォード・ヒルズのコースがマジで難しくてワロタ。50回くらいリトライしまくった気がするww
それでもWikiとか攻略動画を参考にしつつロスサントス中のスカイダイビングでゴールドメダルをGET! やったぜ。
そして世の中がGTA6の情報で賑わっている中、地下基地に籠って1人で必死に射撃訓練場の攻略してたww
クッッッッッッッッッッッソ難しくて草。
PS4とかPS5だとミニガングリッチで結構簡単にクリアできるらしいが、PC版だと出来ないっぽい。マウスでエイムするんだからグリッチなんて要らんやろって感じもするが……いやー、難しかった……ww
リアルで5時間くらい掛った気がするww
それでもなんとか全ての武器で全てのレベルを制覇。
地下基地内でロケットランチャーの弾も拾えるようになったし、手持ちの爆発物も30個まで持って歩けるようになったZOY。
あとはタクシーの仕事の報酬UPのイベント来たからアワード狙いで真面目に働いてみたり。
クラブで100回酔いつぶれるアワードに挑戦してキフロムTシャ���GETしたり。
自転車のタイムトライアルに挑戦したり。
クラブで踊り狂ったりしてた(笑)
オンラインのアワードはソロだと出来ない物が多いから殆ど無視してたが、簡単に取れそうな物はちょっとやってみる事に。経験値がちょろっと貰えるだけであんまり優先してやる必要性は無さそうではあるが(笑)
で、髪型変えると取れるアワードあったから床屋へ。
なんて言うか……うん……自分が作ったキャラだが、ホントに似合う髪型が無くてワロタ。
その後も色々と髪型を変えてみて↑の状態で落ちついたww
絶妙に取るのが大変だったのが↑このフリッパーと、
スピンデレラだった。
マジで車のフリップとスピンの状態の正解が分からなくて苦戦したなぁ。
レースのスタントコース使ってスーパーカーで高い所からジャンプ台使って落ちる感じのコース使って何とかクリアしたわ。
↑のデヴェステ・エイトで挑戦するのが一番フリップもスピンもやりやすかった……気がする。
ジャンプ台へ入る角度、落ちる時の角度、サイドブレーキのかけ方、車の角度調整、とか色々試行錯誤してたら取れたけど、マジで何が正解なのか今でもサッパリ分からんww
とにかく車が空中でクルクル回るようにしたら何かいけたわww
後はミニガンをオレンジに着色。昔は他のプレイヤーを400人キルしないとオレンジに出来なかったが、アプデで変わった事を知れてラッキーだった。
で、ダーツにも挑戦。6本の矢で301点取るんだが、地味に3時間くらい掛ったww
20点のトリプルを連続4回って鬼やなww マウスでエイム出来る環境とはいえ、難しすぎて心折れそうになったわww
しかも似たような感じでゴルフのホールインワンのアワードもあって草。
ゴルフもちょろっとやってみたけど、プレイ技術でどうにか出来る感じじゃ無かったから諦めた。(完全に心が折れたww)
ホールインワンは運ゲーすぎる!
後はエキゾチック車両を100台輸出するのにライジュウ買ってロスサントス中を飛び回ったZOY。いや、マジで100台は多いって!
50台か70台くらいにしてくれww
100と言えば、オートショップも強盗契約を100回やるってのがあったわ。
100回も強盗事件が起きるとか、ロスサントスはゴッサムシティより治安悪くてワロタ。いや、マジでオンラインで尚且つソロで100回も強盗する時が来るとは思わなかったYO!
100回も強盗やったおかげでランクも220超え。所持金も9000万ドル超えてるのに殆ど使い道が無いって言う……ww
んで、色々攻略サイトを見てたらクルーザーを買ってなかった事を思い出して購入。丁度ブラックフライデーのイベントもあって340万ドルで買えた。
クルーザー専用ミッションもソロで攻略してみた。
うん、まぁ……最低でも600万ドルする船買って出来るミッションだけど……面白くは無かったわww
一通りミッションクリアしてもらった服を見てみたが、おそらく今後着る事は無いと思う(笑)
唯一良い所として挙げるなら、「見ろ!これが600万ドルの夜景だぞ!」って言える所くらいか?ww
あと、何となくでクルーザー買ってからフランクリンのVIP契約で遊んだら微妙に前と台詞変わってた。
フランクリンから「クルーザーは危険」とか言われると草しか生えない。
ペントハウスとクルーザーで台詞変わるっぽい。
殆ど汚い金しか持ってないプレイヤーに対して「どこで盗んだ?」とか聞いてくるなよぉ!ww
オンラインプレイヤーによってはカジノ、銀行、政府、南の島と有りとあらゆる処から盗んでるしなww 殺した人の数も数えれないほどと思うとエグいww
んで、その後もちょろっとプレイを続けて、とうとう1臆ドルの貯蓄を達成。
いい加減、チンピラみたいな服装止めるか、って思ったのでスーツを揃えてみた……が、インテリヤクザにしか見えなくてワロタ。(または下手なマイケルのコスプレ)
そんな感じで終り。GTA Onlinだけで270時間くらい遊んだわ。このキャラを最初に作ったのが2016年の9月くらいで4年くらい何もせず放置してから復帰してここまで遊んだけど、いやーここまでソロで遊べるオンラインゲーになるとは思ってなかったなぁ。
強盗するなら最低2人は居ないとなーんにも出来ないゲームだと思っていたが、いつの間にか南国の新マップ追加して完全ソロで強盗出来るようになるとは……。やっぱ1人で自分のペースで遊びたいってプレイヤーが多かったんだろうな、とは思う。あと、難易度がオフラインのストーリーと桁違いすぎる。
1人でもギリギリ対処できる敵の数と強さ、ってのが一番遊んでて楽しいわ。4人前提のミッションは難しすぎてやる気無くなる。連携取りづらい野良強盗とか絶対やりたくないもの……。
GTA6の発表も間近に迫って来た所で、このGTA5のオンラインサービスもそろそろ終わりに近づいて来たなって感じ。1臆ドル持ってるこのキャラとも、何時かはさようならしないといけなと思うと寂しくなるなぁ。
GTA最新作発売決定!→即サービス終了って事にはならないとは思うが、まぁオンラインゲームな以上、いつかは終わるだろうし。
今年の冬の大型イベントで新要素追加ってのが最後な気がする。マイケルが復活するんじゃないか?って結構盛り上がってる印象。個人的にもちょっとマイケル復活は楽しみだわww
そんな感じでGTA Onlinの記事は終り。
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第4話「姉(ななばん)妹」
地下都市クーニャから地上に出たとしても、学校は変わらないのだな、とゆらぎは思っていた。
唯一と言ってもいい変化は、ここがイカロスの搭乗者養成校であり、学校の全てを管轄するのが「めろり・ハート」だということだ。
ホログラムの彼女が教壇に立ち、今後の予定を告げていく。列車で見たときと同じように、派手な学生のような見目。しかし全ての教室で、全ての時間をたった一人、彼女が統括しているのを今日一日見せられてしまえば、並みのAIでないのは理解できた。
すでに新入生はダイブと呼ばれる基礎的な操作方法のインプットは終わっていたらしい���その後の後遺症や、不備、機体自体の���明が今日のメイン講義だった。
「それじゃあ、明日からは具体的なイカロス操作に関して講義するよん。遅刻厳禁、でも朝ごはんはちゃんと食べること!」
一日の授業が全部終わり、多くの生徒たちが立ち上がる。すでに入学から数日が過ぎている。数人単位のグループが、教室内にいくつか見えた。
「獅子夜、準備はいいか」
「ゆらっち、はよ行こ」
ゆらぎの背後から、声が掛かる。振り向けば色白の男子生徒と、赤毛の女子生徒。
「うん、今行く。イナくん、早瀬さん」
久々の、気の抜けた生活だとゆらぎは思った。
色白の男子学生、イナ・イタライ。ゆらぎの親友祐介と同じく、飛び級で卒業して、入学した少年。適正診断では、ゆらぎと同じオペレーター。対し、赤毛の女子生徒は早瀬ルナ。昔みたアニメ映画の、関西弁というものに憧れて真似し始めたという少女。適正診断ではパイロット適正が高く、イナと共にパートナー候補として、登録する予定らしい。
彼ら二人が、ゆらぎの学園での新しい友人だ。
好奇心の視線に晒されたゆらぎに、臆せず、列車では隣だったとルナとイナが話しかけてきたのがきっかけだった。今日一日、一緒に授業を受けて、昼休みや教室移動での案内役を二人が担ってくれる中、意外なほど趣味があったのも、気安く会話できた理由かもしれない。
「よーやく、シュミレーター室の予約とれたんよ。ゆらっちも一緒なんやから、イカロス操縦のコツ教えて欲しいわ」
「早瀬、獅子夜はオペレーターだ。必ずしも、パイロット操作が得意とは限らない」
「イナっちには聞いとりません」
「うーん、おれ実は、パイロットちょっと気になるんだよね」
「せやろ、せやろ!? ほらほら、イナっち聞いた?」
「うるさい」
やいのやいのと騒ぎながら、三人は学園内にあるイカロス搭乗のシュミレーター室へと向かう。時折、ゆらぎを見て鋭い視線を向けたり、ひそひそと何か話すような仕草をする生徒たちもいた。しかし、それらは全てイナとルナの二人から無視するように言われていたので、ゆらぎも気にせずに会話をし続ける。
シュミレーター室に入った時も、似たような視線が多かったが、やはり三人とも気にせずに、指定された機器へと向かった。
「あははは、ゆらっちパイロットの才能なさすぎでしょ」
「ここまでオペレーター特化型だったとは……」
けらけらと笑い続けるルナに対し、イナは気にするなとゆらぎを慰めてくる。シュミレーターということで、張り切ってパイロットをしてみたゆらぎは、あまりの操作の難しさと、感覚の違いに愕然としながら即座に撃墜。ここまで向かないのかと落ち込んでいた。
「……右近さんは、あんなにも簡単に操作してたのに」
「まぁ、ナンバーズの一員なのだろう? 僕らとは経験が違う」
「それはそうなんだけどさ……おれの経験の浅いオペレートで、あそこまで動いてたのがすごいなって改めて思えた」
ゆらぎの説明で、うんうんと頷いたのはルナだ。
「ゆらっちのオペレート、わかりやすいんよ。でも、あんだけ一気に情報渡されると、うちも混乱するわぁ」
先程、試しに組んでみた際には、ゆらぎのオペレートを処理しきれずに早瀬ルナは撃墜。イナのオペレートでは、オーバーフローは起こさなかったが、今度は見逃した敵が多く出た。
「獅子夜と組んでいるナンバーズの神楽右近は、閲覧できる資料だとオペレーター適正も高いようだな」
「はぁ、すごいお人なんね」
イナが配布された携帯端末から調べた情報を伝えると、感心したのがルナ。さらに落ち込んだのがゆらぎだ。
「二刀流だなんて、うらやましい」
「これが特殊例……でもないな。六番の神楽左近も似たような適正値だし、四番オペレーターのユエン・リエンツォもかなりのパイロット適正値だ」
「あの双子、そこまで一緒なの!?」
「どうして、双子で組まんかったんやろね」
ゆらぎからナンバーズの情報も聞いていたルナたちからしてみれば、同じ適正値同士なら組んでもよかったのではないかと思われた。が、ゆらぎだけは、なんとなく予想がつく。というよりも、あの短時間で両者のスタンスが分かりやす過ぎたのだ。
「たぶん、右近さんも左近さんも……お互いには負けたくないんじゃないかな」
負けず嫌いの権化のようなあの双子だと、手を組む発想はあまりなさそうだ。ゆらぎはそう思っていた。彼の説明を聞いて、イナもルナもそうなのかとだけ思う。
その時、ゆらぎを呼ぶアナウンスが流れた。放送は、受付カウンターまで来るように告げられる。
「なんだろう」
「とりあえず、行ってみんと分からんわね」
ルナの言葉にゆらぎもイナも頷いた。
そうして三人が、シュミレーター室の受付カウンターにやってくると、随分な人集りができていた。
その中心にいたのは、二人の女性だ。彼女たちの身につける制服とその腕章から第三学年だというのが分かる。
その片方が、イナやルナと共にやって来たゆらぎに気づいた。
「あなたが、獅子夜ゆらぎ?」
ややつり目がちの、黒髪をツインテールにした女性が、ゆらぎに尋ねてくる。その眼力は強く、つい目を反らしながらもゆらぎは肯定した。
「は、はい」
「そう、じゃあ裁定勝負をお願い」
「え、」
「突然で驚いてるかもしれないけど、あたしは君がナンバーズに、しかも五番に相応しいと、ちっとも思わない。神楽右近とスバル・シクソンのペアなら、認めてたわ。でも、パートナーが交代したなら、また一から始めるべきだと思わない?」
だから、裁定勝負をお願いしたいの、と続く女性の言葉に、ゆらぎは目を白黒させる。
「あ、あの……あなたは」
「あら、ごめんなさい。あたしは兎成あゆは。ナンバーズ七番のパイロットで、こっちはオペレーターの」
「梓・A・兎成だよ。お姉ちゃんはすごいんだからね! あんたなんか、すぐに負けるに決まってる」
ツインテールの女性の陰から、ひょっこりとまた別の女性が出てくる。あゆはと同じ髪型と服装なのだが、より小柄で金髪のため似ているかと言えばそうでもない。また梓は、あゆはよりかは派手な化粧をしている。だが、互いに同学年でありながら、姉妹と称する言葉にゆらぎは戸惑った。
「姉妹の」
「ナンバーズ」
「七番」
ゆらぎと同じように、成り行きを見ていたイナとルナが唖然とした表情を浮かべる。それぞれが引き継ぐように、驚きのポイントを述べていった。
「あら、姉妹が珍しいの? クーニャでも、それなりにいたはずよ」
「わたしたち以上に、双子なんてほうが珍しいのに変なの」
あゆはと梓の互いの言葉に、どこから何を言うべきかとゆらぎは戸惑う。いや、そもそもの成り行きから驚きの連続なのだから、とっくのとうにゆらぎのキャパシティはオーバーしていた。
だが、さらに事態は大きくなっていく。
「ちょうど良いタイミングだったようですね」
聞き覚えのある声が、ゆらぎに掛けられた。その際、周囲のざわめきが、極端に大きくなった気がする。よくよく見てみれば人集りも、先程よりも二回り以上も大きくなっている。その原因は、一眼見て分かるほどに簡単だった。
「右近さん」
やってきたのは、朝別れたきりの男、神楽右近だった。
ナンバーズ、五番、あの双子とヒソヒソ声が小波となって耳を通り過ぎる。その中にの紛れ込んだ友人の二人は、あの人が、という言葉以外何も零せなかった。
「臆病者が何の用」
あゆはが辛辣な言葉を吐く。梓もまた、無言で彼を睨みつけていた。それをものともせず、右近は仮面のように白々しい笑みを浮かべて答える。
「何、兎成姉妹にも朗報です。俺と獅子夜くんのペアを認めるために、七番か四番との裁定勝負が決定しました。この機会を逃すほど、あなたたちもナンバーズの矜持は欠けていないでしょう」
「呆れた。あなたにナンバーズの矜持があるかと問われるとはね」
「それで、受けるのですか? それとも、四番のお二人に譲る?」
「受けるに決まってるじゃない」
どう見ても右近が兎成姉妹を挑発していた。だが、姉妹のどちらも冷静さを欠いていることに気付いていないようだ。
「あの……裁定勝負って、何ですか」
何かに巻き込まれていることだけは分かっているが、さてそれが何かと言われてもゆらぎにはさっぱりだ。恐る恐る、低く手をあげて右近に尋ねてみれば、彼は実に胡散臭いとしか言いようもないほどにニッコリと笑って「後ほど説明しますね」と述べた。
どう考えても、ゆらぎがイカロス初搭乗時並みの暴走に思える。思わず、ルナとイナの両名がゆらぎの両腕をがっつり掴んだ。本当に大丈夫なのかと、今日一番の不安な顔を二人共がしている。大丈夫かどうかはゆらぎも分からない。
「エイト・エイト、聞いていましたか」
「はいよー、バッチリ。それじゃあ、リンクを雪斗のところに持っていけばいいね。観戦の処理は全部あっちがすればいいか」
三人の不安な表情に気づかない右近は、そのまま腕時計端末からエイト・エイトを呼び出す。小さな彼のホログラムは元気いっぱい、笑顔で敬礼をしていた。
「そうですね。左近とルー経由で他のメンバーには観戦してもらいましょう。兎成姉妹も、それでいいですか?」
「あたしは問題ないわ。梓は?」
「私もないよ。でも審判は誰がやるの? エイト・エイトとテトラ以外のナンバーズAIを呼ぶにしても、瀬谷雪斗は論外だからね」
「ああ、学園ですから適任がいますよ」
そこで右近は、室内の端に寄せられた机に向かって相手の名前を呼んだ。
「めろり教官」
彼の呼びかけに応じるように、机のそばに等身大のホログラムが現れる。それは、ぱっと見では学生のようにも思えるめろり・ハートだった。だが、右近だけでなく、あゆはや梓もまた彼女への対応は実に丁寧だ。
「なによ、この問題児」
「学園内の会話は、あなたには筒抜けでしょう。単刀直入に言えば審判をお願いしたい。公平公正な立場でできるのは、あなただけだ」
「この間の件を恨んで、君たちのことを厳しく見るかもしれないよ」
「そんなこと、あなたは決してしない」
その言葉には、絶大な信頼があった。
めろりは大袈裟にため息をつくと、「しょうがないなー」と呆れた仕草をする。
「エイト・エイト。めろりの審判での裁定勝負と、学園設備の貸し出しを許可するって向こうに伝えて。瀬谷雪斗とのオープン通信の権限の一時的譲渡もするから」
「エイト・エイト、了解しました」
「あゆは、梓。二人ともテトラにめろりとの同期を許可して。後でエイト・エイトにも同期するよう伝えるけど、学園内で行う裁定勝負なら、学園側にもその戦闘ログを提出してもらうよ。後進の育成機関だもん、ここ」
「兎成あゆは、了解です」
「梓・A・兎成、了解です」
「神楽右近、要請了解しました。エイト・エイトの帰還次第、同期許可を出します」
ぽんぽんぽん、と軽快な言葉のキャッチボールが進む。めろりの提案にゆらぎたち新入生を除いて、多くの生徒たちは興奮し始めた。
ざわめきの中身は、ナンバーズの裁定勝負が生で見られること。そもそもナンバーズの戦闘が見られるだけでもかなり珍しいようだ。
「それじゃあ、二組ともめろりが指定した機器に搭乗して」
右近から「さて、行きましょうか」と招かれて、ゆらぎはゆっくりと歩き出す。それまで両腕を押さえていた友人たちの手は、あっけなく離れていった。
「それから、イナ・イタライと早瀬ルナ。二人は新入生だし、特等席で観戦しよっか」
こっちだよん、と案内するめろりに連れられてどこかに行った直後のどよめきで余計にゆらぎは心配する。が、いつの間にか戻ってきたエイト・エイトが、右近の端末から「心配しないで」と声を掛けてきた。
「めろりちゃん相手に文句言う生徒はいないし、あの人あれでもこの学園を取り仕切るAIだから。二人が厄介ごとから避けられるように、めろりちゃん気を回してるんだよ。もちろん、今回の件は獅子夜くんに責はなーんにもないから、変に気にすることはないよ」
右近はその辺り鈍いからね、と揶揄するようAIに対し、右近は実に複雑な表情を浮かべていた。
「……悪かったですね、鈍くて」
否定する言葉でなかったので、それが真実を物語っていた。
ゆらぎが搭乗したのは、模擬戦用に使っていた先程までの機器とは違う機器だった。より複雑で、より性能の高い模擬戦用の機器らしい。確かに、先程よりもよりイカロスに乗っている感覚が強い。
「そもそも、裁定勝負はナンバーズ同士の戦闘になるので、より高速で処理できる機器とAIが必要になります。今回は特例として学園で行いますが、普段はファロス機関の中にあるシュミレーターで行われるんですよ」
右近のこれまでの経緯と、裁定勝負についての説明が行われたところで、ゆらぎは一つ、気になったことがあった。
「どうして、学園内にそのような機器があるんですかね」
「……まぁ、推測でしかないですけど、たぶん必要だとめろり教官たちが、かつて思ったんではないですかね」
相棒の歯切れの悪い言葉に、ゆらぎは首を傾げる。なにやら含みのある言い回しだが、と思ったところで、聞き覚えのない男性の声が聞こえた。
「やぁやぁ、獅子夜ゆらぎくん。噂は左近から聞いてるよぉ。さてはて、準備はできたかなぁ?」
「……雪斗。裁定勝負前に、俺たちに接触していいんですか?」
呆れたように右近が相手の名前を呼べば、オペレーター席のすぐそばにエイト・エイトとともに男性AIが現れた。
銀髪は襟足まで、同系色の目は銀より濃く灰色だ。デニムジャケットとシルバーアクセサリーの組み合わ��に、エイト・エイトとは違ったベクトルでの陽気さを感じ取る。
「審判はめろりちゃんだし、僕は観戦実況担当なんだな。と、初めまして獅子夜ゆらぎくん。僕は瀬谷雪斗、左近たちのAIだよ。今回は、僕を通して他のナンバーズたちに裁定勝負を見てもらうことになってるから」
ほら、と瀬谷雪斗が表示した画面には、円卓とそこに多くの人々が並んでいる。ゆらぎがわかるのは、一段高い位置に座るユタカ司令官と、にこやかに手を振っている左近くらいだ。
「いやー、こんなおもしろい裁定勝負ってなかなかないよねぇ。僕、楽しみで楽しみで、右近たちが負けたら全力で左近たちをけしかけようと思ってるんだぁ」
にこやかに言うべき話ではないのは百も承知なのだろう。そこで、ようやく真顔になった雪斗は、触れられないのは分かった上でゆらぎの頭を撫でて、右近を睨む。
「僕は観戦しかできないからさ。ちゃんと前を向きなよ、右近」
じゃあ、もう準備よさそうだねと微笑んだ雪斗が、ホログラムごと消える。残されたのはエイト・エイトで、彼は苦笑していた。
「激励するんだって、左近やルルの言うことも聞かなくてね。特例ではあるけど、雪斗曰く特例尽くしの裁定勝負なんだから、べつに構わないだろうって。獅子夜くんには何のことかさっぱり分からないだろうけど、それだけ五番の裁定勝負って注目されてるんだよ」
ね、右近。とAIからの同意を求める言葉に、言われた本人はため息を一つ。
「……獅子夜くんの実力、無駄にはさせませんよ」
「そうそう、その調子」
「そろそろカウントダウンが始まります。獅子夜くん、エイト・エイト。準備はいいですか?」
そう言って右近は前を見た。つられるように、ゆらぎもまた前を向く。
それまで無機質の壁だったのが徐々に透明になっていき、空中に多くの文字が並んだ。そして中央には大きな数字が刻一刻と形を変えていく。
三……二……一……カウントゼロの瞬間、オペレーターであるゆらぎの視界が変えられた。
一面に映るのは、都市ファロスの上空。ゆらぎが感知する全てが、最初に搭乗したときと同じ範囲であり、風も光も暑ささえもシュミレーターでありながら感じ取れる。
今の天候は、やや風が強めではあるが晴天だ。
そして、彼らが乗るのは青のイカロス。多量の銃器と、素早い動きでの接近および中距離攻撃に特化した形状そのままに、想像の世界にいた。
「……すごい」
「これがめろり教官が、教官として万人に敬意を抱かれる能力ですよ。彼女一人で、ここまで舞台を再現できるのは……かなりの異端です」
さて、と右近がゆらぎに告げる。
「この舞台での敵はペティノスではなく、同じイカロスです。兎成姉妹の乗るイカロスは赤。大変目立つ機体なのですが」
説明の合間に、光弾が三発ほど彼らの機体を襲った。即座にゆらぎはシールドを貼り、光弾の弾道から敵の位置を確認する。だが、彼の感知できる範囲にイカロスはいなかった。
続けて五発の弾が放たれるが、その軌道が歪んでいくのをゆらぎははっきりと感じ取る。
「着地点の予測を。あの弾の道は初期設定値から変えられません」
右近のセリフに、ゆらぎは考えられる場所を可能性が高い順に提示。即座に右近はその中から、経験的に最もあり得そうな軌道を選び出し、回避の動きをした。
五発の内四発の回避に成功する。だが、一発は避けきれずに被弾した。
機体の揺れと衝撃が本物のように来る。
「さすがに、全ては難しかったようですね」
「すみません……おれがもう少しちゃんとオペレートできてたら」
演習でルナに言われたのも、実際にパイロットのシュミレーターをしたからこそ実感できる。ゆらぎの実力は、オペレーターとしてもまだまだ未熟だ。それを右近の技量で跳ね上げているだけに過ぎない。
「いいえ、正直君の技量はダイブ直後から飛び抜けています。今はただ単に経験が浅いだけですので、そう落ち込まないでください」
「ですが」
「獅子夜くん、相手は遠距離型のイカロスです」
「……」
「兎成姉妹は、ほとんどの天候でも命中率が高く、また弾道の設定可能な種類の多さでナンバーズに上り詰めました。どれだけペティノスたちから攻撃されていようが、対応するどのような機体の動きの中でもそれが可能なのは、パイロットとオペレーターの技量と経験が卓越しているためです」
が、とそこで右近は悪戯っ子のように笑う。
「それを先日ダイブしたばかりの新人オペレーターに予測されたどころか、半分以上回避されたんです。彼女たち、ものすごく苛ついてるでしょうね」
ふふふ、と笑い続ける彼に、ようやくゆらぎは力が抜ける。
今日一日、あのナンバーズ五番の新オペレーターとして、ありとあらゆる視線に耐え続けたのだ。緊張でとっくに疲れ切っている。他のナンバーズから裁定勝負だと言われても、イカロスに一度しか乗っていないから、それがどれほどの意義を持つものなのかも分からない。
分からない、分からない、分からないけど、どうにかしなくてはいけない。でもどうすればいいのかさえ分からない。イナやルナたちと過ごして、少しだけ安堵したのだが、それでも彼ら彼女らに頼り切るわけにはいかない。そんな思いでいたにも関わらず、右近は簡単にゆらぎを振り回す。全部、全部、右近が蒔いた種だし、ゆらぎは巻き込まれているだけだ。なのに、原因は楽しそうに相手を下すことしか考えていない。
エイト・エイトが彼は鈍いと言ったのもよく分かった。
「……もういいです。そうですね、右近さんはそういう人でしたね」
悩むのが馬鹿らしい、と悟ったゆらぎはついそう言ってしまった。途端に、びくりと右近の肩が揺れる。
「深刻に受け止めたおれが馬鹿でした。おれが未熟だからってくよくよしてたのが、本当にあほらしいのも分かりました」
「あ、あの……獅子夜くん?」
「右近さん!」
キッとゆらぎは背後を見ずに、前だけを睨みつける。だが、鬼気迫るものを感じ取ったのか「はい!」と普段より大きな声で右近は返事をした。
「おれは未熟なオペレーターなので、あとは全部右近さんに任せました!」
いきますよ、と声をかけたゆらぎは、あっという間に周囲の状況を数値化し、可能性を全て提示し、そして後の判断を相棒に放り投げる。
その数値の中には、罠と思われる機雷や爆発のために使用するセンサー系、あるい弾道を瞬時に切り替えるための仕組みなども混ざっていた。
一瞬だけ呆けた右近は、その次には悪どい笑みを浮かべて、イカロスを動かし始める。
移動、行動、その結果やってくるのは、敵の攻撃だ。
再びゆらぎは、ありとあらゆる可能性を、なんの脈絡もなく提示する。先程のように可能性の順位は一切されていない、本当にただのデータだ。だが、それだけでも右近には十分だった。
今度は五発の光弾が五発とも回避できた。
「これでいいですか!」
「構いません。相手のところまで最短ルートで突っ切るので、揺れます。酔わずにオペレートお願いします」
「右近さんこそ、データ読み間違えしないでください」
「生意気な新人ですね」
「あなたの相棒です」
その返答でパイロットが笑ったような気配した。が、続く「行きます」の右近の言葉の直後に、本当に派手にイカロスが揺れる。
ゆらぎの視界がブレるも、根性でオペレートを続ける。対し、右近は口笛を吹きながらも、次から次へと出される数値を頭に叩き込み、乱暴にイカロスを動かす。時に操縦席着弾の直前で、敵の攻撃を撃墜する荒技までしでかしている。
重力というよりも遠心力や爆風でオペレート席から転がり落ちそうだ。
「ははは、あいつら焦り始めましたね」
穏やかさのカケラもなく、好戦的なまでの「きますよ」の言葉通りに雨霰のように光の塊が降り注ぐ。いくつかダミーだったり、あるいは囮だったりで不規則な動きをしているのもあるが、既にゆらぎの中では、タネが分かっている。即座に、撃ち落とす光弾と放置していい光弾を分けて、最短ルートを叩き出した。
「無茶を提示しますね」
「最初から無茶しかしてません」
「失望しましたか」
「逆です」
「なら、頑張ります」
さらにイカロスが加速する。その加速に合わせて、ゆらぎが再計算した結果を出した。それに戸惑う右近ではない。
「嘘でしょう」
兎成あゆはは、否定の言葉を吐きながらも相手のことを認める。獅子夜ゆらぎのオペレーター能力は本物だ。
これまで散々、裁定勝負を仕掛けようとして六番の二人にやられていたのだ。今ならどさくさに紛れて五番を引きずり落とす裁定勝負に持ち込めると思ったのに、番狂わせである。
「なにあれ、なにあれ」
妹の梓は相手の動きを計算して、弾が当たるように数値を変えていく。だが、それ以上に青のイカロスの動きが早すぎるし、どう冷静に見ても無茶苦茶な戦法を即座に実行し続けている。
「なんだって、あんな馬鹿な動きするのよ!」
すでにこの場に留まるメリットはない。五番は五番らしく、狩人のように彼女たちを追い詰めていく。
「梓、離脱する」
「うん、分かった」
その言葉の通りに、赤のイカロスは逃げに徹し始める。
姉妹だって、それなりに息のあった連携をしている。だが、今回の五番のオペレーターとしてやってきた獅子夜ゆらぎの、神楽右近との相性はだいぶ良いようだ。
「スバル・シクソンとだって、あんな無茶してなかったじゃない」
一年以上前の記憶を頼りにしているとはいえ、それでもここまでじゃなかったと、あゆはは断言できる。彼は、もう少し嫌らしい戦法を好んでいたはずだ。
「お姉ちゃん!」
妹の梓の呼びかけに、はっとするあゆは。逃亡ルートに、いつの間にか罠が仕掛けられていたようだ。
「これって」
「私たちが仕組んだやつそのまま利用したんだ」
梓の解析に、あゆはも舌打ちをする。前言撤回、今回のオペレーターもかなり嫌らしい戦法を使うようだ。いや、もしかしたらあのエイト・エイトが教えたのかもしれない。
「梓、今は逃走を優先するから、最小の被害でいけそうなところ教えて」
「分かっ……え?」
画面上に映る逃げ道がないと出された数値と困惑する妹。
その梓の疑問の答えを、コンマ数秒であゆはは導き出した。
「やられた! あいつら最初から逃亡ルートまで予測してたんだ」
最小の被害、または最短のルート。どちらに賭けていたのかは知らないが、それでも最もという制限を用いたら、彼女たちの行動は予測可能だ。
逃亡ルートに向かおうとした赤のイカロスは、逃げ切るよりも前に、彼女たちが放った以上の弾数によって戦闘不能にされたのだった。もちろん、その攻撃をしたのは青のイカロスだった。
「決まったようだな」
五番と七番の裁定勝負という、異例尽くしの勝負を見守っていた他のナンバーズたちは、ユタカの言葉につまらなそうな顔をして頷いた。例外なのは、六番の神楽左近とルル・シュイナードのみ。随分と嬉しそうだ。あとは、三番オペレーターのクレイシュ・ピングゥがキャッキャッと楽しそうに笑っている。
「まぁ、なかなかやるようだ」
二番のアレク・リーベルトの言葉に、パートナーのアンナ・グドリャナもまた肯定のサインを出した。
その横では、だらしない体勢でこれまでの勝負をみていたユエンが相方のナーフに問いかける。
「ふーん、わいとしてはどうでもいんんだけど、ナーフどう思う?」
「こちらも裁定勝負をするべきだと思う。おれたちの実力差は殆どないない」
「あんなひよっこ相手に? ナーフったら心配性だなぁ」
まぁ、いいよと続く言葉とともに、四番のユエン・リエンツォは猫のような気まぐれさで目を細めた。
「それじゃあ、こちとら四番らしくお相手してあげようかねぇ」
ナーフは無表情を少し和らげて、目元だけをユエンのように細める。その視線の先には、映像に映る青のイカロスがあった。
「それでは、とりあえず神楽右近と獅子夜ゆらぎのペアは、五番として認める方向でよろしいですか」
「私に聞かなくてもいいだろう、ユタカ。君がファロス機関の総司令官なのだから」
ユタカの問いに、三番のパイロットである現見空音はしかめっ面のまま返事をする。
いよいよ退屈な時間が終わると思い、それぞれが席を立とうとしたところで、現場で起きている違和感に気づいた。
「……何かおかしくないか?」
左近の言葉で、ナンバーズの動きが止まった。
違和感の発端は、赤のイカロスで起きていた。
「悔しいけど、あなたたちの実力は認める」
あゆはが通信越しで、ゆらぎや右近に負けを認めていた。
既に裁定勝負が終わり、めろり・ハートの宣言により勝敗も公式なものになっている。ちらちらと別回線で見える訓練室の光景は、興奮の渦で満ちていた。
「そもそも左近たちに勝ててないんですから、この結果は当然ですよ」
「右近、あなたその嫌味な口調いい加減やめたら? 左近との差別化とかなんとか言ってたけど、全ッ然似合ってないのよ。左近の方がまだ裏表なくて好感持てるから」
「あなたたちが俺を左近と間違え続ける結果です。悔しかったら、見分けてみなさい」
「だーかーらー」
さらに口喧嘩が発展しそうなところで、ゆらぎの制止がかかった。
「右近さん、その言い方は流石にないです。そりゃあ確かに勝負の吹っ掛け方が唐突でしたし、おれへの配慮も全くなかった先輩ですが、右近さんだって似たようなものです。右近さんが指摘するのは、どう考えてもブーメランというやつです」
そのゆらぎの言葉に右近は押し黙る。あゆはは、こめかみを引き攣らせる。
「ちょっと獅子夜ゆらぎ。あなたフォローしたいの? それともあたしを貶してるの?」
「え、フォローしているつもりですが……」
自分何か間違っていますか、と言わんばかりの表情を浮かべていたゆらぎに、あゆはもまた心に傷を負う。
戸惑い続けるゆらぎと、黙ってしまったパイロットの二人。そして、これまで一切会話に加わらなかったもう一人のオペレーターは、ずっと泣き続けていた。
「悔しい、悔しい! あんな新人の罠に引っかかるなんて、悔じいいい」
テトラと呼ばれている、一瞬男性かと見間違う麗人のAIに慰められてた梓は更にゆらぎへの呪詛を吐き出し始めた。そして、唐突に「そうだ」と呟く。
「こうなったら、お願いめろりちゃん!」
梓は化粧が落ちてぐじゅぐじゅになった顔を隠すことなく、めろりを呼び出す。
「はいはーい、何かな?」
「あのデータを展開して!! あの新人に、上には上がいるって思い知らせてやる」
その言葉に不穏な何かを察したあゆはが、待ったをかけようとした。
「ちょっと梓? 何を言ってるのよ」
あゆはが梓を問いただすも、先程のセリフにめろりは意味深に笑う。それは待ちに待ったご馳走を前にした、肉食獣の歓喜に似ていた。
「いいよん、めろりもそろそろ頃合いだと思ってたからね」
「ねぇ、めろりちゃん、待って」
止めようとするあゆはを無視し、青と赤のイカロスの間にめろりのホログラムが登場する。そして、パチンと指が慣らされた。途端に赤のイカロスは退場し、幻想の都市は消え失せる。そして、いくつもの数字が見えない壁を形成した。
「なんですか、これは」
通信越しで兎成姉妹の片方が、何かを企んだのは理解している。外部の様子を確認するゆらぎ。対し右近は無言で全面を睨みつける。
シュミュレーター内の異変は、外で様子を見ていた面々も気づいていた。なんだなんだと、観戦していた生徒たちがモニタに群がる。それとは別に、ファロス機関から見ていたナンバーズたちも、固唾を飲んで見守っていた。
「データ展開、凍結解除、展開スピードを加速。フィールド情報をリセット、年代の固定、天候は晴天、蓄積データにアクセス。アクセス権の譲渡完了、データロック解除、百桁のパスワードを入力、問題なし。フィルタリングを実行、ノイズ除去、容量の圧迫問題なし」
めろりの朗々とした進行の言葉は、祈りの祝詞のように抑揚はない。
「展開データを実体化、残り三十……二十……十パーセント、カウントゼロ。投影開始します」
そこでようやく文字が消え失せて、先ほどよりもより高度が高く設定された、都市ファロスの上空に青のイカロスは浮かんでいた。
強風が延々と流れ続け、けれど雲ひとつない快晴の中、太陽光が容赦無く照りつける。
そして、それは現た。
その存在が何か理解した者は、多くいた。
「ゲッ!?」
現れた存在を目にした瞬間、左近は汚い声をあげる。そして、三秒にも満たない思考の末に、すぐさまモニタリングを止めようとした。が、それを押しとどめる声が響く。
「いいじゃないか、左近君。閲覧禁止のあのデータを、どこで君が知ったのかは知らないが、これもいい経験だ」
現見は無表情ながらも、周囲のナンバーズや長官たちへと同意を求める。それぞれが、焦り、驚き、興味深く、そして怨敵のような表情を浮かべているが、それでも否はなかった。
現れたのは、巨大な騎槍を持ったイカロスだった。
「銀色の、イカロス?」
見たことのない機体の色に戸惑うゆらぎ。だが、怒鳴るように右近はシールドを展開するように告げた。
「え? あ、はい全方位シールド展開しまし」
た。と最後の音を発音するよりも先に衝撃が訪れた。それは、ゆらぎには感知できないものだった。いや、何かノイズが脳裏に走った気がする。
気がついた時には、展開したはずのシールドが粉々になっていた。
「……え?」
「次が来ます!」
何が起きたのか分からないままのゆらぎを叱咤激励して、右近は機体を僅かに動かす。そのズレが功を成したのか、彼らが乗るイカロスは右側に展開している銃の全てをもぎ取られるだけで済んだ。
「兎成妹! 馬鹿なデータを展開してくれたものですねッ」
舌打ちとともに、残った左側で応戦を右近は開始する。だが、先程はっきりと見えた銀のイカロスの姿は、今は全く見えない。
「右近さん!」
「ゆらぎ君、わずかな痕跡も見逃さないでください。あれは、これまでのとはレベルが違う存在です」
「わ、わかりました。でも、あのイカロスはいった」
問いかける途中で、再度微かなノイズをゆらぎは感じ取る。ほぼほぼ、直感のようにオペレーターを格納する場所を彼は厳重に守った。
衝撃が訪れる。鋭い騎槍の先端が、先ほど極力厚く張り巡らせたシールドを貫きかけた。
ゆらぎの視界いっぱいに、銀色の塗装がなされたイカロスが現れる。
その姿は御伽噺の騎士のようで、ありもしないマントが風で翻った幻想が見えた。ゆらぎの頭の中をノイズが走る。一瞬にして、銀色のイカロスの姿は消える。
「よく防御が追いつけましたね」
右近は��らぎを褒めるも、言われた本人は褒められているような気がしない。
「あれは……あれは一体なんなんですか」
驚愕と恐怖がない混ぜになった感情を隠しもせず、ゆらぎは右近に尋ねる。その質問に、右近は簡単に答えた。
「三十年前の大英雄、未だ誰も到達できない永遠のナンバーズ一番です」
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