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#長戸裕夢
kinosuke · 2 years
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レシピ(細口そうめん) #Repost @__food_letters__ ・・・ *** そうめんが美味しい季節になってきました。わが家はいつも真砂喜之助製麺所さん(@masago_kinosuke )のそうめん。何層にも重ねて撚ってつくるそうめんはコシがあってツルッとした喉ごし。個人的にふにゃっとした食感のそうめんが苦手だったので真砂さんのそうめんに出会ってからは毎年の楽しみなのです。 5年前にレシピ本づくりで訪れた小豆島の旅を思い出しながら。 ごちそうさまでした。 浅田剛司 #真砂喜之助製麺所 #器のある暮らし #長戸裕夢 #阿南維也 #棚橋祐介 #府川和泉 #小豆島 #手延べそうめん #そうめん #細口 http://kinosuke.tumblr.com https://www.instagram.com/p/CevgGlKPDBx/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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ari0921 · 4 months
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「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和六年(2024)2月8日(木曜日)
   通巻第8122号 <前日発行> 
三亜は「中国のハワイ」であるとともに、大海軍基地である。
  不動産バブルはすでに15年前、海南島ではじまっていたのだ
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 十五年前のことである。
初回の海南島訪問はその十年ほど前で、北側の港町=海口のホンダの偽バイク工場取材だった(取材は失敗、その後、ホンダが贋物工場を買収した)。ついでに南端の三亜まで長距離バスで七時間かけて足を伸ばし、戦争中に日本軍が敷設したレーダーサイトや西海岸に開通させていた鉄道(SLがまだ動いていた)。この頃は海南島では観光客誘致に熱心でアライバルヴィザを例外的に発効していた。四半世紀前まで中国旅行には逐一ヴィザが要求された。
 弐回目は海口から三亜へ新幹線が繋がったというので試乗がてら途中のボーアオ(中国版ダボス会議)も取材する予定だった。
さて三亜での驚きはリゾートマンションがにょきにょきと林立していたことだ。飛行機の窓から夢中に撮影したが、あんなに壮大に高層マンションを建てて、購入した人は果たして何人いるのだろうか? 
 三亜は「中国のハワイ」であるとともに、大海軍基地である。町で不動産屋の店先で物件のビラを眺めていたら、店員が飛びだしてきた。なるほど、売れていない証拠である。
 三年前から中国の不動産バブルが瓦解し、大手デベロッパーが軒並み債務不履行におちいったことは周知の事実。習近平自身が「マンションは人の住むところだ」と当たり前のことを発言した。多くが投機用に建てられたもので、2024年二月時点で、工事中断物件は数千とも数万ともいわれ、売れ残りを最低に見積もっても1億5000万戸ある。
 恒大集団は1月28日、香港で精算命令がだされた。CEOの許家印が所有した香港の豪邸は競売に付された。ところが、豪華すぎて買い手がいない。
恒大集団幹部たちはごっそり逮捕され、整理精算しようにも、なにから手をつけてよいか分からない。とりあえず二つの子会社を五鉱山国債信託に売却した。 
 海外を含めて資産売却を急ぐ最大手の碧桂園はロンドンに4億5000万ポンド(5億7000万ドル)を投じた開発プロジェクトを売りに出した。世界最大の不動産仲介コンサルティング「ナイト・フランク」社は、碧桂園の子会社「リスランドUK」からエルサホー大団地(62エーカー、952戸)の売却仲介を依頼されていると発表した。
碧桂園はシドニーに保有した物件をすべて手放したほか、広州の高層ビルやフェニックスホテル等五軒を売却した。
 中国オーシャンワイドHD社はサンフランシスコに建てた高層タワーが差し押さえとなったと発表した。まだ「広州富力地産」はロンドンの広大な物件二件を売却した。これらは「氷山の一角で」しかなく、夥しい中国企業が外国の不動産を売却し、また富裕層は手元資金不如意となったため海外物件の売却を急いだ。
中国政府は外貨不足を補えるため、海外物件売却を奨励した。
また工事中断物件を完成させよとして特別融資をおこなうなどモラトリアム政策を適用している。「こうした休載政策は逆効果になる」と米紙ウォールストリートジャーナルが警告してきたが、自由主義市場経済ではない中国では、独自の路線を選択、さらに凄絶な破滅の道を驀進中だ。
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dropoutsurf · 6 months
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結論、ほぼデマ | パチンコ屋の倒産を応援するブログ
民主党,立憲民主党,鳩山,枝野,野田,首相,悪夢,リーマン,311,東日本大震災,人災,
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・国家公務員の天下りあっせんを全面禁止  ↓ 府省庁からの斡旋のあったものだけを天下りに数えるように変更して 94%の天下りをカウントから除外しただけ。
さらに民主党政権は天下り・現役出向の拡大とかえって悪化させている。
評価:× 嘘
・子供手当支給  ↓ 2010年7月の参議院選挙前に配って票を得ようとして 麻生政権の景気対策補正予算を事業仕分けで無理矢理凍結して転用。 その後も結局半額支給に留まるなど政権発足前から財源がないことは 藤井裕久ら民主党幹部がすでに理解していた。
評価:△ 半分
・生活保護の母子加算復活 父子家庭に児童扶養手当  ↓ これは事実。
評価:○ ただし福祉ばかり手厚くするその財源は税金なんですけどね。
・記者会見オープン化  ↓ たしかに部分的にオープン化したが、 民主党に批判的な記事を書いた事を理由にした記者の排除や 民主党に批判的な社の記者は絶対に質問させないなどが行われた。
評価:△ オープンにした意味が無い
・公立高校生授業料無償化 私立高校へ助成金支給  ↓ 事実。ただし朝鮮学校へ支給するために1条校以外も対象にしようとするなどした。
評価:△ そもそも義務教育外のものを無償化する是非は?
・密約解明  ↓ おそらく沖縄返還の際に日米で密約があったという話の件。 岡田克也外務大臣が 「証拠はないけど密約はあったはずだ!だからあった」(要約) という乱暴な結論を出し、これを根拠に米国を批判したもので解明などとはほど遠い内容。
評価:× 証拠なしで決めつけただけ。 民主党と支持者に法治の精神がない事を示した上に米国との関係悪化だけでなく、あとから勝手に非公開のはずの話を公開されかない姿勢を各国に見せつけてしまい、各国が民主党政権をまともな外交相手として扱わなくなり日本の外交的地位を完全に地に落とした。 (実際に訪米では途上国と同じ扱いをされるまで日本外交の地位が低下した) のちの安倍政権で日本の外交を立て直すために前半数年を費やさなければならなくなった。
・社会保障費削減撤回  ↓ 評価:△ 事実、ただし代替案なしで負担増加分は現役世代へ。
・基礎自治体に事務事業の権限と財源を大幅に移譲  ↓ 権限を若干移譲したがそれ以上にNPOの主観を地方自治体に移すなど、現在問題となっている公金チューチューなどの温床となっている。 また、予算が欲しい団体は民主党幹事長室に言われた要求を満たさないとならないなど、結局の所は予算や権限を人質に民主党の横暴が加速する面もあった。
評価:△ 責任から逃げたい民主党の哲学もあってか責任の曖昧化が進むなどむしろ害の方が遙かに多いのでは?
・診療報酬引き上げ  ↓ 事実、若干上がった
評価:○ ただし社会保険料の上昇加速で現役世代への負担増。
・国と地方の協議の場を設置  ↓ 地方自治体は民主党幹事長室に何らかの見返りを用意しないと予算が追加されなかったり、民主党の議員が強い自治体だけ極端に補助金が優遇されるなど協議以前の問題だった。
評価:× 民主党幹事長室を通さないとならないという憲法違反をやっていた。 (請願の自由の侵害)
・全ての国直轄事業における負担金制度を廃止  ↓ 民主党政権中にさくっと復活
評価:× その後に元に戻った事を考えれば2010年7月の参院選向けのアピールでしかなかった。
・非正規労働者の雇用保険への適用条件緩和  ↓ 事実
評価:○
・原則として製造現場への派遣を禁止  ↓ そもそも派遣で働いていた人達の働き先を無くした後のことを考えておらず、 そのことをつっこまれて民主党政権は方針を変更して撤回したため公約破りとして批判されていた。
評価:× 実現していません。
・農家戸別所得補償制度実施  ↓ たしかに部分的実施は行ったが 農地改良や鳥獣害対策費などの予算を大幅カットしてこれを財源として実現。 また岡田克也の実家であるイオンが戸別所得補償制度を理由に 米農家を買いたたいていた事が国会で指摘されたり、 飼料用米を雑に作っていれば補償で儲かるという制度の建て付けにより、 他の農業者へ貸し出していた農地の貸し剥がしなども横行した。
評価:△ 朝三暮四な上に発生した問題の方が多かった。
・バリアフリー改修、省エネ改修工事補助  ↓ 事実、ただし麻生政権で実施したプランを引っ張った形。
評価:△ 鳩山内閣が特別に実施したものではない
・分娩の公的助成  ↓ 麻生政権で増額を決定したもの
評価:× 強いて言うのなら麻生政権の実績
・肝炎患者のインターフェロン治療の自己負担限度額引き上げ  ↓ 2009年民主党政権公約では「自己負担限度額を引き下げる」としていた。 引き上げたのなら公約と逆。
評価:× 公約と真逆
・自殺者が政権交代後に減少中  ↓ たしかに若干の減少は認められるものの 2007年に決定された自殺総合対策大綱を民主党政権は踏襲していただけ。 その後の第二次安倍政権では 1997年以降3万人台を下回った事の無かった自殺者数が2万人前後に低下。
評価:△ 事実ではあるがリーマンショック後の有利なタイミングで政権を取ってただけ。 民主党不況に陥れられていなければもっと減っていた可能性があるのでは?
その他。
野党側に審議時間すら認めない強行採決10連発など、 過去に類例の無い強引な国会運営だったが マスゴミがこれを批判しないようにして擁護していました。
民主党政権では長妻昭と山井和則コンビが 「長妻・山井プラン」などと自慢していた大量の派遣切りがありました。 特定26業種の多くで解釈によって一般の派遣と見なすという手口を使いました。 「派遣を継続的に雇えないようにすれば正社員が増えるはずだ」 という連合の生兵法をそのまま実施した形です。
それに加えて民主党政権が超円高誘導を行う事で 本来ならリーマンショック後の回復局面なのに 民主党不況を作り出して失業者を大量に生み出す結果となりました。
また、「(国家)公務員の総人件費削減」という民主党の公約を実現するという理由で 民主党政権は一時的に霞ヶ関の新卒採用を0にさせようとしました。 (さすがに非難囂々で渋々「若干名」を認めるに変更)
民主党政権は彼らの票田である「情弱高齢層」を向いたままの政治がより露骨で、 若者は切り捨てる傾向が非常に極端な政権だったと言えます。
アニメーターが労組を作った時に 各政党にも挨拶に回ったのですが、 民主党はアニメと聞いて選挙権がない子供じゃ意味が無いと考えて ろくに相手にしなかったなんて話があります。
日本の政治って結局の所は数の多かった団塊世代を中心に 高齢者層ばかりを向いた政治がこの30年以上続けられてきました。
若者を使い捨てにする氷河期世代を作ったのも そうした政治の怠慢と、数ばかり多い問題のある世代のわがままと経団連の合作 と言って良いのだろうと思います。
すでに手遅れ状態になっていますが、岸田総理は異次元の少子化対策などと言って 金を巻き上げて補助金として付け替える 財務省が喜びそうな間抜けな手口で社会保険料負担増を財源にする政策にしようとしています。
今の現役世代は30年間ほぼ給料が上がっていないのに 社会保険料がひたすら上がり続け、 可処分所得がガンガン削られてきた世代だと言えます。
若者の○○離れ、 などとマスゴミが非常に後ろ向きな文脈で使いますが、 使える金の余裕がなくなってるんですから、 お金を無駄に使うような事はできませんよ。
若者にもっと他のことに無駄にお金を使わせたいのなら、 若者の可処分所得を増やすために負担を減らすのが一番ですよ。
財務キャリアという日本国民の敵の言うような 「増税して金を毟って、それを天下りの利権の原資にしつつばらまく」 という方法では効果はほとん期待できないと思います。
日本のマスゴミの特にダメなところの一つに 「○○と比べて今の若者はxxにお金を使わない��� みたいにわざわざ比較して極めて否定的に扱うところがあります。
まぁ、マスゴミとしては 「若者は不幸なんだー!もう未来は真っ暗なんだー!」と、 世の中に不満がどんどんと蓄積していくようにしたいのでしょうけど。
マスゴミの上の方の人達は マルクス主義にかぶれたポンコツどもばかりで固められてますからね。
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kennak · 7 months
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国税庁の最終面接のことを思い出している。大学四年生の頃だ。今までの面接は、無機質な長机とパイプ椅子でのものだった。だがその時は、四角いどっかりとした檜机と、ふかふかの椅子だった。それでいて圧迫感のある面接であり、最後に「私達と一緒に働けますか?」と言われたのを憶えている。 「はい。私でよければ宜しくお願いします」といったことを告げると、その場で最終合格が遠回しな言い方で告げられた。内定通知は賃貸アパートに届いた。 こんなところに書くほどだから予想はつくだろうが、結構前に官僚を辞めている。仕事は大変キツかった(きっつー、というやつ)が、やりがいはあった。いつかは挑戦してみたい仕事もあった。 思えば、大学3年生の春からコツコツコツコツと勉強を重ねて、やっと第一志望のひとつだった官庁に合格できて、「やったー!」と無邪気に思っていた。案外こんなものだ。 国家公務員(課税部門)としての経験は20数年しかないが、せっかくのシルバーウィークだ。ちょっと語ってみたい。今は税務コンサルタントとして働いているが、夏前に大きな仕事が片付いた。今は仕事を少なくしてもらっている。 仕事のことを、はてな匿名ダイアリーに書いてる人を稀に見る。今回、私もやってみようと思った次第だ。企業との課税交渉の協議録とか、個人・法人の税額とかを載せない限りは大丈夫だろう。何かあったら責任は取るつもりだ。 高橋洋一や山口真由が自著で話している内容に比べれば、当日記はベジタブルのようなものだ。あの内容を出版して捕まらないなら、ここで書く内容など余裕でセーフだ。 なお、私ははてなユーザーの中では年寄り(フミコフミオさんと同い年)である。古い表現があってもお許し願いたい。 先に言っておくが、「霞が関に来なければ体験できなかったことは人生の財産」とか、「国のために働いている自負があった」とか、「苦しかったけどいい仕事ができて国民のためになった~」といったことはあまり書かない。 そんなに夢や理想のある官僚じゃなかった。僅かばかりはあったが。むしろ組織に負のイメージがあって、若い頃に限った語彙だと「こいつらクソ野郎だな」という感情を抱いていた。それで、40代になって数年後に転職した。再就職規制に引っかかる危険はあったが、グレーな方法で突破した。 当日記は、数パートに分かれている。できるだけ簡潔にまとめたい。以下、思い出を何点か挙げて回想する。思い出① 税金とは何か?という問い 中学生の頃から、「税ってそもそも何ぞや?」という疑問があった。大学に入ってからは、税理士の資格を取るために勉強していたが、どれだけ勉強しても税への理解はイマイチだったし、全科目に合格した後も結局わからなかった。※東大とか一橋大とか慶應とか早稲田とか、そういういい大学を出てるわけじゃない。偏差値50ちょっとの大学だ。たまたま会計学の講義を取ってみたら面白く、勉強にハマった。 税とは、一般的な説明だと、国や地方自治体が国家の維持や発展をめざして、民間では供給されにくい公共的なサービスを提供するにあたっての資金として「税金」を徴収している――ということになっている。 だが、おかしいと思っていた。だって、国はお金を自由に発行できる。地方自治体が言うのならわかる。あと、大昔だったら年貢を物納で納めてもらわないと国が維持できなかったはずだ。 だが、現代社会の国家がそんなことを言っても説得力はイマイチだ。税金をとらなくても、別にお金を刷ったらそれでいい。金本位制の時代を通り抜けて、今では発行された紙幣そのものに信用がある時代なのだ。お金というのは、それがお金であるがゆえにお金だ、というトートロジーである。 増田民の人も、わかってる人はわかってるだろう。税とは何かが。ここで答えは書かない。気になる人は、Yahoo!知恵袋とか、Quoraで求めれば賢い人が教えてくれる。 私が納得いかなかったのは、一応は国家公務員一種試験(昔だったら上級甲種試験)を通ってきたはずの人達が、入庁一年目だった私の質問に答えられなかったことだ。「そんな当たり前のことを聞くな」という人もいたし、「ここではちょっと…」と口を濁す人もいたし、「知らん。自分で調べろ」という人もいた。 税を納めるのは当たり前のこと、ただ、その原理と言うか……そう、原理が大事だろう。何も考えずに常識を信じていいのは中級者までだ。上をめざすのであれば、身も蓋もない本質を疑う必要がある。 こういうことを私が言っても説得力がないので、ちょっと引用させていただく。それぞれの原理を、その自然本性のかぎりで探求しようとしなければならないし、きちんと定義されるよう腐心しなければならない。というのも、原理はそのあとに続く事柄にとって、大きな影響をもっているからである。実際、原理は全体の半分以上であり、探求されているものの多くは、原理を経由することで明確になると思われるのである。 ニコマコス倫理学(上) P.62 なぜ国民から税金を取るのか、という新人職員の問いに答えられる職員は10人に1人ほどしかいなかった。思えば、この時から私はいつかここをやめようと思っていたのかもしれない。 実際、徴税は国民みんなから集めたお金を公共サービスに充てるため、というのはお題目だ。わかりやすく国民を納得させるための。本来の目的はほかにある。それに比べると、上の『お題目』はビックリマンチョコのおまけに近い。ウエハースだ。思い出② 課税処分の難しさ トラブルになりかけた事例になる。詳細は端折って書く。専門用語は補足するか、日常的な言葉に言い換えている。 キャリア官僚は現場を体験しないイメージがあるかもしれないが、別にそんなことはない。入庁二年目からは普通に現場だったし、30才を過ぎて地方支局で働いてる人もいる。 当時は、北海道某所にある国税局に勤務していた。一応は税理士に必要な科目は残りふたつというところまで取っていたが、それでも実務は難しかった。勉強しないといけないことは山ほどあるし、一年目は税務の学校で学ばせてもらったが、実務に必要な知識の何割も身に付いていない。税務の世界は広いのだ。 最初の頃はひたすら、簡単な事務とか雑用とか、先輩が受けた税務相談の回答案作りとか、上位機関からの調査ものとか、庶務全般(文書収受~会議日程調整~飲み会手配まで含む)に、兎に角いろいろやった。 すべて勉強になるとは思ったが、正直これは臨時職員がやった方がいいのでは……と感じるものもあった。まあ、とにかく新人らしく何でもやった。 赴任して半年だった。とある先輩を経由して、それなりの事業規模の法人の税務申告を最初から最後までやらせてもらえることになった。同じ年代の職員(※省庁キャリア)の中では遅い方だった。資本金が結構ある機械メーカーだったかな。これまで当業務では、先輩方を手伝う立場として動いていたから、割とすんなりいくように思えた。 申告内容は当然精査するのだが、日本の課税制度は一応性善説でいっている。国民(法人含む)が嘘をついたりごまかしたりしない、ということを前提にしている。その企業も、過去に税務に関して更正処分(支払う税額が誤っていると判断した場合に○円払いなさい、という措置)関係のトラブルを起こしたことはない。 一応は提出書類を三周ほどしたところ、申告書類も、帳簿も、領収書や請求書や契約書(請書)も、通帳関係も問題なし……それで、さあ決裁だといった具合に伺いをスタートした。 先輩方の場合は、スルッと起案が通るようだったが、自分の場合はそうはいかなかった。新人に厳重なチェックが入るのは当然だった。「不動産の項目がおかしい。取得した不動産価格が常軌を逸して安い。税をごまかそうとしているのでは?」 という、先輩及び直属の上司からのツッコミがあった。上司を納得させないと、次に進むことができない。思えば、あの先輩は、このことがわかっていて私に振ったのかもしれない。 当時の私の実力を超えた課題だった。頭を抱えたのを憶えている。あの時の思考過程を追っていこう。 かくして・・・ 探求の旅は はじまった まず何をすればいいかというと、不動産価格がしっかりしたものかを調べればいい。正当な根拠のある価格であればいいし、不適当な価格であれば……面倒なことになる。 不動産売買にかかる課税額は、比較的シンプルだ。普通の法人税と同じで基本は定率である(税額表を見ればいい)。ちょっと賢い中学生でも実務ができるだろう。 印紙税も、登録免許税も、不動産取得税(県税)も、固定資産税(市税)もそんな具合だ。不動産本体の価格については難しい計算が必要だが、焦る必要はない。市区町村にある固定資産税台帳には、固定資産税評価額が載っている。それを見れば、登録免許税の目安となる不動産価格がわかる。※固定資産税の納付書にも書いてある。 それを根拠に……と思ったが、そんなに単純な話ではない。ならば先輩も上司もツッコミを入れたりしない。イレギュラーなケースなのだ。 その物件は、なんと固定資産税台帳に載っていなかった。そういう土地だった。登記簿を見たところ、字名がとんでもないことになっていた。奥地にあって、大昔は栄えていたのかもしれないが、今では地域まるごと誰も手入れをしていない。そんな土地だった。しかし、幅4.0m以上の道路は通っている。江戸時代の人が整備したと思われる。 国税庁においても、外部公表している不動産価格の調べ方みたいなものはある(いわゆる路線価だが、当然奥地には路線価がない)。国でも地方自治体でも、不動産価格を求めるための要綱要領は具えているが、今回は通用しないのではないか。そういう案件だった。 若かりし日の私は思案しつつ、先輩にも相談して上司に2つの案を出したはずだ。懐かしい。 1. 比準価格(みなし計算のようなもの)を使って不動産価格を弾くと、今の数倍以上の価格になる   メリット…適正と思われる税を徴収できる   デメリット…上申や裁判等になった時に勝てる保証がない       県や市町村にも情報共有や協議・意見聞取が必要 2. 今回は大した金額ではないため、相手方の税額を受け入れる   メリット…百万にも満たない税額差であり、費用対効果を考えるべき   デメリット…相手方が悪質だった場合、前例を作ることになる 結局、2.の案が採用された。それで、起案はあっさり通った。協議や相談をしたのは直属の上司までであり、決裁の責任者には上司が一声かけたくらいだ。それで新人職員の一件目である課税処分は通ってしまった。 思えば、先輩や上司からすれば、最初から2.一択だったのだ。今の私の判断もそうだ。課税額の差として百万円にも満たない金額のために、そこまでの手間はかけられない。もっとほかに、日本の税務行政のためにやらないといけないことが山ほどある。 一応弁護しておくと、現場で働く公務員には、「法適用の裁量」と「エネルギー振り分けの裁量」がある。現場的な要素が強い職種だと、上司の指揮監督を受けるのが望ましくない場合がある。極端な例だが、警察官が凶悪犯をパトカーで追っている最中に、スピード違反や信号無視をしている者を放っておくのはやむを得ない、といった観点だ。 余談になるが、国税局職員が県税や市税の脱税を見つけた場合も、人や状況によって対応が変わる。情報提供する場合もあれば、見なかったことにする場合もある。 それこそ昔の話だが、飲み会でとある話を聞いた。ある個人納税者から地方税務署に相談があったという。要約すると「1年前に出した赤字決算の申告書だが、実は黒字で、税金を納めないといけないことがわかった。どうすればいいか」ということだった。追加で納付すべき税額は、約30円のようだ。このままでは脱税者になってしまうと焦っていたらしい。 その相談を受けた税務署員はこう答えたという。「実は、ボールペンとか消しゴムとか、事務用品を買っていたのを申告書に書いてないんじゃないですか? だったら、納付すべき税額はやはり赤字では? 問題ないですよ」と。※以後の話は不明 課税処分はもちろん、どのような行政処分であっても費用対効果という観点が重視される。税収1万円増のために2~3万円をかけるのは議論の余地があるにしても、20~30万円をかけるのは明らかに不合理だろう。 テレビやネットメディアやはてなブログでは、公務員は何も考えずに税金を支出しているイメージがあるかもしれないが、ちゃんと考えている人が多数派である。そこは信じてほしい。 数年後、私は北海道から霞が関に戻ることになった。それから退職するまで、ずっと法人課税部門にいた。
税務官僚だった頃の思い出 Part1/3
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20230610
雑記(サボテンの花、映画『怪物』等)
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サボテン鉢
味が出てきた気がする。
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兜丸
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鬼雲丸
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烏羽玉
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緋花玉
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大豪丸。すごくいい匂い。
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紅花団扇
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翠晃冠
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兜丸。播種して3年半で花芽がついた。
二価鉄とタンニンの自作液肥と家庭用のヨーグルトメーカーで培養した発酵性の液肥を希釈して潅水の度に与えているのだが例年より1.5倍ぐらいの速度で成長している。
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白刺翠平丸。一本刺から連なった刺が生えてきた。
成長した開花球がネットで5〜6万で落札されてるの見かけるとようやるなあと思う。枯らす可能性考えたらとても買えないので種から育てたという訳だがこの草姿になるまで既に5年近くかかっている。
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花王丸
成長点からトゲが吹く時の仕組みってどうなってるんだろう。GANTZの転送とか3Dプリンターの出力みたいなのを想像する。
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恵比寿大黒
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睡蓮(マニー・サイアム)の花芽
登山
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あまり時間が取れず一座登ったところで季節は梅雨に入ってしまった。
今年は甲斐駒(黒戸尾根)、赤岳(美濃戸口)辺りを登れたらラッキーぐらいで考えている。
映画
先日是枝監督の『怪物』を見た。以下多分ネタバレはない。
前回映画館で見た『イニシェリン島の精霊』以来またもや地獄みたいな映画だったがすごいものを見てしまった。繰り返される和音と不協和音。個人的にはこの十年で見た映画で一番ではないか。
子を守る母の姿は美しく、あるいは子を甘やかす姿は時に何よりも醜悪に映る。子を守る親に限らず人は何かを守る時に怪物にもなり得るのだと思った。
「君の立場になれば君が正しい。 僕の立場になれば僕が正しい。 」 誰かが誰かを責め立てる度にボブ・ディランの『One Too Many Mornings』の歌詞を思い浮かべた。立つ視点よってその姿や形はルビンの壺のように変化する。
自分がわざわざ映画館まで行って見る映画に求めているのは、見ることによって心的に何らかの外傷を負うこと、またその回復過程において獲得する新しい視点や魂の再生や精神の浄化なのかも知れない。人工的な夢とその共有装置としての「映画」による擬似的なトラウマ体験とその克服によって図らずも過去の心の傷を癒すという効能。
主人公の子役の子が爆笑問題の太田の子供の頃の写真にそっくりで太田が常々人生最良の時間だったと話す、小学校の夏休みの間中親友の悪ガキ二人で遊んで過ごしたという郷愁のエピソードと映画のシーンが二重写しに見えた。
是枝監督と太田は歳も近くて太田は埼玉の上福岡、是枝監督は練馬の出身で少年期の原風景をおそらくは共有している。
「是枝裕和 太田光」で試しに検索すると是枝監督が東武東上線に乗りながら太田の書いた『向田邦子の陽射し』を読んでいる旨の10年以上前のツイートが見つかる。
日曜日の爆笑問題のラジオに是枝監督がゲストで出たら面白いんだけど太田は是枝さんにいちいち突っかかりそう。
兎にも角にもすごい映画だった。
あの校舎に響く金管楽器の音がいまだに頭の中で鳴り響いている。
もっかい見たいけどもう二度と見たくないような。
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jitterbugs-mhyk · 2 years
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猟犬のゆりかご stray dogs.
 
 その黒い犬は、朝靄のなかにねむっているやさしい思い出をじっと、眺めている。おおきな身体はしなやかで、しるしの星を戴いて、凡庸に立つクリスマスの樅の木のように、朴訥としてどこか盲目な従順、ひとみ燃えるピジョン・ブラッド、星を融かし沈めたくだもの、喉を焼くサングリアの酒精、あらゆる焔に熱はなく、ただ煌々と、しらじらと、夜明けとともに世界の表層が、嘗められてゆくのを感じていた。さあ、朝だ。日が昇り、山肌を温め、空気をかき混ぜ、靄を払って、変わり映えのない日を今日も積み重ねる。羊たちは草を食み、石についたわずかの朝露と、塩分とをちびりちびりと舐めている。彼は眠るためではなく羊をかぞえ、起きだして仕事をはじめた。
 日々の多くは単調だ。どきどきしたり、わくわくしたり、ちょっとした異変や、予想できない天候の変化のたぐいはあっても、まったく思いもよらないことや、出逢ったことのないひと、見たことも聞いたこともない大事件が起きるなどというのは、魔法使いの長い人生においてだって稀なこと。未だ未開の土地も多く、ひとの手の入らない、魔法があったって生きていくのにけして楽とは言い難い南の国は、うつくしく積み上がった石の、白亜の尖塔を天へ向けて聳えさせている雄大なるグランヴェル城を有する中央の国や、華やかなりし芸術の都、花の、音楽の、絵画のそうして演劇の、文化の発展いちじるしい西の国、一年の多くを雪と嵐に鎖されて、自ら持ち得る魔法のみを恃みにし、傲慢で高潔、純粋すぎるがゆえにいっそ邪悪ですらある魔法使いたちに縋らなければ生きてゆくさえむつかしい、しかし凍てつく嵐のはざま、垣間見える土地の峻厳にして繊細なうつくしさは、他の追従をゆるすことはない北の国、それぞれの孤独で互いをぬるく慰め合う、晴れた日の雨のような、いつだって濡れて光っている石畳の東の国、それらのどこより未熟で、純朴、大陸にあってもっとも魔法使いと人間との紐帯たしかな土地である。力を重宝されるのみでなく、単純に、きびしい暮らし向きのなかにあって、それらを区別することに、意味など見出しかねるというのが実際のところだろう。区別して暮らすよりも、助け合うほうがよほど生きやすいのだ。少なくともここ、南の国では。
 開拓と、生活、日々のちいさな積み重ね、森を拓き、山を切り崩し、水を引いてようやく畑に実りをもたらす。まずは明日を、そうしてその次の日を。南の国で未来と云えば、遠いかなたの日々ではなしに、まずは来月、来年の話になる。星を詠み風を視て、やれ今年の収穫はどれだけで、食い扶持はこれだけ、来季に種にするぶんを省いた残りを備蓄と、売って僅かに贅沢にする。暮らし向きはけして裕福であるとは言えなかった。かくいうレノックスも、天候に恵まれず収穫のきびしい年には、そう易くはくたばらない魔法使いであることに胡坐をかいて、いったい何日絶食したものか定かではない。自分はかつて軍人でもあったから、満足に食うこともかなわない強行軍も経験があると請け負って、育ち盛りの子どものいる家に食糧を回してもらった。まったく苦でないというと語弊があるかもしれないが、満足にものを食えずひもじい思いをすることよりも苦しいこと悔しいこと、しんどいことがほかにもあると知っていて、較べてなんということも無い、自分には耐えられると判断したまで。のちに長じた子どもたちはあの厳しい冬、レノックスが食い扶持を分けてくれていなかったらきっと死んでいたと、彼に深く感謝をするのを、けして忘れはしなかった。感謝や、親愛、それらを求めてしたことではなかったけれども。
 羊飼いの職に就いてもう何年になるだろう。そもそもレノックスが南の国へやってきたのは、かつての知己、たったひとり誰より敬愛して、このひとのほかにあるじはないと定めた男、偉大なる中央の国の建国の英雄でありながら歴史の闇の中に消えてしまったファウスト・ラウィーニアの消息を訊ねてのことだった。革命の終局にあって、彼が率い、レノックスも所属していた魔法使いの隊は、手酷い裏切りにあってファウストが火に架けられると、文字通りに旗印をうしない、司令官をうしなって、てんでバラバラに離散してゆくほかになかった。レノックスを含めた数人が、無辜のままに焔のなかで、さいごまで親友を信じていた男の処刑を遠くから見つめていたが、彼らはどれほどファウストを慕っていようとも、彼を助けるために駆け寄ることかなわなかった。
 別段、レノックスは、まさに火に架けられようとするファウストを救うために躍り出て、そのころは影も形もなかったグランヴェル城の裏手、物見高く、興味と、熱狂の渦にのまれて、どれだけ自分が残酷になろうがお構いなしの、詰めかけた民衆を蹴散らしたって良かったし、処刑台のきざはしに足をかけた瞬間に無数の矢で射られたって良かったのだ。
 けれどもできなかった。ほかならぬファウストが望まなかったし、幼馴染の親友と、あたらしい国を夢見て故郷を出てここまで旅をしてきた男が、ずっと人のために尽くしてきた男が、たとえ自分の命を救うためとは雖も部下が人を傷つけるなど許すはずがなかったのだ。それに、今後、彼の部下であった魔法使いたちに類が及ぶのをファウストは懸念していた。すべての罪をひき被り、目立って処刑されることで、部下たちが人に紛れて逃れゆく時間を稼ごうと考えていたのは間違いないし、最後まで彼は、親友がほんとうに彼を火に架けることなどないと、信じていたかったのかもしれない。真に指揮官としてすばらしいひとだった、というのは、彼に心酔し、敬愛を寄せるレノックスのエゴからなる評価ではないだろう。
 しかし無情にも火は点けられ、英雄は自らその片腕を永遠に捥いだ。レノックスは無力だった。焔は、けして燃えやすいとはいえない男の肉のうえを嘗め尽くし、花のように、星のように、うつくしく燃え上がった。ぱちぱちと爆ぜる音の響きは懐かしくさえある。行軍中の、けして快適とは言い難かった野営の火を囲んで談笑し合う仲間たちに、人間と魔法使いの区別などなかったあの夜、あかるいすみれ色のひとみに、若い希望が輝いていたあの夜、ぱちぱちと爆ぜる篝の火に、誰もが横顔に陰を濃く落としていた、あの夜、たしかにこの人に追蹤ていこう、どこまでも、いつまでも、決意した、あの夜! 同じ音を立てて、愛した男が死に瀕していた。
 レノックス・ラムはただ佇むだけの唐変木、しるしの銀の星を戴くこともできない、樅になれない何か、楡か、花楸樹か、ああ、あそこに架けられたのがおれだったなら! そう易々とは燃えなかったろうに。
 
「レノックス、おまえさん、しばらくこの国にとどまってみちゃどうかな? バカンスだとでも思ってさ。どう? なんにもないけど、仕事くらいは斡旋してあげられるよ」
 そういったフィガロの意図はいまだに読めない。穏やかに微笑んでいるようでいて、実際のところは誰のことも愛していない、のみならず、自分自身の行く末にさえ無関心なのではと思われてならないフィガロ・ガルシア、かつて北の国で、今もってなお魔王と恐れられる大魔法使いオズと同門であり、兄弟子として肩を並べたこともあったという男が、なぜ何者でもないもののように振る舞うのか、答えは遠からず死に瀕した、彼の寿命だったかも分からないし、理由などないのかもしれなかった。死を間近にして命を惜しんでいるだとか、ただこれまでには馬鹿々々しくてやる気にもならなかった普通の暮らし、地に足の着いた暮らしというやつの真似事をやってみたくなったのかも分からない。
 なんにせよあの人のことはあれこれと考えるだけ無駄だからよせと、呆れたように、しかしどこか信頼にも似た声音でファウストが語っていたことをありありと思いおこされる。あの革命のさなか、フィガロもファウストの師として、また革命軍のきまぐれな懐刀として従軍していたが、当時のフィガロはまさにきまぐれ、ファウストがあれほどまでに人間と親密で、らしくないのと対照的に、まさに言葉の通りの魔法使いらしい魔法使いだったうえに、彼は革命を見届けることも無くふらり途中で姿を消したのだ。つまりあの短期間でファウストは、師と親友、ふたりから裏切られたことになる。
 はたしてフィガロを頼るのが正しいことであったのか。レノックスにも疑念はあった。しかし数十年、数百年と生きるうち、ファウストの足蹠を追い続けるのも難しくなった。自分が彼になぜこれほどまでに執着しているのか、おそらく明確な言葉では語られるまい。悔恨や、懺悔、つぎの機会が与えられるのであれば今度こそ、死地の果ての果てまでもファウストに追蹤ていくのだと思ったけれど、それらが自分の、身勝手な願いに過ぎないこともまた、分かり切っていた。彼はやさしいひとだから、いつか再会して、過去を詫びて、次の機会を冀ったなら、この愚鈍な、星ひとつ掲げない従者を許してしまうだろう。だからこそ見つからないように身を潜めているのかもしれないが、処刑のあと焔が消えて、そこに輝く石が残されていなかったと聞いたとき、レノックスはどうしても、彼を見つけ出さなければならなくなった。
 しかしながら、彼は決して、みずからを迷子の仔羊(stray sheep)とは呼ばない。右も左も定かでなくて、善悪が一元的なものではないとすでに学んだからには、彼もまた戸惑い揺れる寄る辺ない生きものであったに違いないのに! レノックス・ラムは縋らない。これは彼に信仰がないためではなくて、彼の信ずる神が、彼に縋られ、寄りかかられ、頼みにされるのを良しとしない、ただそれだけの理由であった。まったく、驚くほどの敬虔だ、さもなくば盲信だ、自らを擲ち穿つ、おそろしい自己犠牲の。
 腕をふるい、足を払い、身体をして成す暴力は、実際のところ、彼にとってはさしたる労苦でもなかった。激しやすく、ゆえに寡黙で、ことばのさきに振る舞われる暴力は、先祖伝来、あるいは、顔も見たことのない始祖、名前もしらない女たち、かれらから脈々と、粛々と、継がれてきた血や、歌や、儀礼や、そのほかすべての非科学的で超自然的な、迷信じみたアミニズムのなかに、流れていたかもしれなかった。フィガロ・ガルシアはバカンスなどとうそぶいたが、未だ発展の途上にある南の国で、魔法がなくとも家畜たちを抱え上げて斜面を行くことができ、肉体、精神共に健全で屈強、レノックス・ラムでなければ満たせないいくつもの条件が、彼の人生を、南の国で羊飼いとして暮らすことに引き留めた。ファウストを見つけ出し、そのうえで彼が復讐を望むならその手足になって働いて、あらゆる敵をなぎ倒し、あらゆる悪意と脅威の盾になって死のうと考えたことを、一日たりとも忘れたつもりはなかったが、短い一日も繰り返すうちに1年になり、5年になり、羊は仔を産み殖えたが、拓かれた牧草地は子どもや女、ほかの若い羊飼いたちに譲ってしまって、レノックスはますます険しい山肌に羊を追った。
「レノ、おまえは案外羊飼いの王様の素質があったのかもね」
「冗談でしょう。俺は星ひとつ、満足にかざせない」
 ばかだな、しるしの星なんておまえには必要がないだろう、輝きなんぞなくったって、それだけでかい図体が、どれだけ目立つと思ってる? いたずらそうに笑うフィガロの眸は薄曇りの冬の海に落ちた星だ。きっと怒られるけれど、肩をすくめて鼻でわらうようなその言い草に、ファウストの面影をみつけてレノックスも頬をゆるめた。
 導きの星はもうないけれど、いつかふさわしいときが来るまで、俺はずっと立って��る。険しい道を歩んできたひとが、ふとひと息ついて脚を休めるそのときに、広げた枝が安らぎになりますように。
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psytestjp · 15 days
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yotchan-blog · 1 month
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2024/4/24 9:01:11現在のニュース
アメリカ体操協会の性的虐待事件 捜査怠慢、215億円支払いで和解(毎日新聞, 2024/4/24 8:59:44) NY株続伸、263ドル高 好業績期待で買い優勢(毎日新聞, 2024/4/24 8:52:10) ハトやカラスへの「餌やり」やめない人物に大阪市が中止命令…違反すれば罰金の可能性も([B!]読売新聞, 2024/4/24 8:49:13) 海外から疑義の声相次ぐ中国の統計、信頼性向上狙い大幅法改正へ…実効性は不透明([B!]読売新聞, 2024/4/24 8:49:13) 脱炭素と生物多様性に「耕さない畑」が効果 常識覆す農法に注目 編集委員 吉田 忠則 - 日本経済新聞([B!]日経新聞, 2024/4/24 8:48:49) コメリ、純利益20%減の137億円 24年3月期 - 日本経済新聞([B!]日経新聞, 2024/4/24 8:48:49) 「ロイヤルホスト」のロイヤルHD、双日と飲食店開業支援サイト 物件紹介も - 日本経済新聞([B!]日経新聞, 2024/4/24 8:48:49) 熱中症特別アラート開始 ノジマやビックカメラ、はや猛暑商戦 - 日本経済新聞([B!]日経新聞, 2024/4/24 8:48:49) インディード「求人のAmazon」に 求職者と企業を集結 - 日本経済新聞([B!]日経新聞, 2024/4/24 8:48:49) キオクシア、メモリーの書き込み速度を最大5割高速化 - 日本経済新聞([B!]日経新聞, 2024/4/24 8:48:49) AIに俳句の良さはわかるのか? 「AI一茶くん」の挑戦 - 日本経済新聞([B!]日経新聞, 2024/4/24 8:48:49) スルガ銀行、クレディセゾン提携1年で手応え 支店は延期 - 日本経済新聞([B!]日経新聞, 2024/4/24 8:48:49) 「ここだけ」手製にこだわり 書籍製本の技術、次世代に ひと@TOKYO 渡邉製本社長、渡邉浩一さん(67) - 日本経済新聞([B!]日経新聞, 2024/4/24 8:48:49) 「蔦屋書店」運営のトップカルチャ��とトーハン、本と雑貨を書店に混載配送 - 日本経済新聞([B!]日経新聞, 2024/4/24 8:48:49) 生成AIが塗り替える職業地図 ジョブ型広げる好機 編集委員 水野裕司 - 日本経済新聞([B!]日経新聞, 2024/4/24 8:48:49) パリ五輪公式服装の製作業者名は非公表 応募は1社のみ JOC(朝日新聞, 2024/4/24 8:47:39) 正倉院に伝わる高級材のミニチュア塔、接着剤も貴重品 赤外線で分析(朝日新聞, 2024/4/24 8:47:39) 【速報中】注目の封じ手、豊島将之九段の選択は 名人戦まもなく再開(朝日新聞, 2024/4/24 8:47:39) 飛龍高を先月卒業の松本さん、伊勢ケ浜部屋入門 「関取の夢へ頑張りたい」(東京新聞)|dメニューニュース(東京新聞のニュース一覧|dメニュー(NTTドコモ), 2024/4/24 8:46:05) 朝鮮人追悼碑 代執行で撤去問題 来月11日の総会で「守る会」解散し新団体に 群馬県庁で会見(東京新聞)|dメニューニュース(東京新聞のニュース一覧|dメニュー(NTTドコモ), 2024/4/24 8:46:05) みなかみ町の魅力 駅ナカから発信 上毛高原駅 ビール提供やグッズ販売(東京新聞)|dメニューニュース(東京新聞のニュース一覧|dメニュー(NTTドコモ), 2024/4/24 8:46:05) 自民裏金の「再発防止策」の評価は…身内からは不満、野党は「ゼロ回答」批判 どんな内容?今後どうなる?:東京新聞 TOKYO Web([B!]東京新聞, 2024/4/24 8:45:12) タクシー運転手、外国人へ門戸 免許試験の多言語化進む - 日本経済新聞([B!]日経新聞, 2024/4/24 8:43:17) 性的被害者に約215億円支払いで合意 米司法省、米体操協会捜査で(朝日新聞, 2024/4/24 8:40:04) 歌手・相川七瀬さん、栃木県の文化財オフィサーに 「しっかり関わりたい」(東京新聞)|dメニューニュース(東京新聞のニュース一覧|dメニュー(NTTドコモ), 2024/4/24 8:38:28) 日立豪雨 処理場への浸水 下水管老朽化が一因に 茨城大チームの調査で判明(東京新聞)|dメニューニュース(東京新聞のニュース一覧|dメニュー(NTTドコモ), 2024/4/24 8:38:28) 茨城県内での医師不足解消目指す医学部地域枠 第1期生2人に感謝状 知事期待「茨城の医療支えて」(東京新聞)|dメニューニュース(東京新聞のニュース一覧|dメニュー(NTTドコモ), 2024/4/24 8:38:28) トランプ氏、34年ぶりの円安・ドル高に「米国にとって大惨事」(毎日新聞, 2024/4/24 8:37:40) イスラエルに抗議、全米の大学へ波及 大統領選の材料に - 日本経済新聞([B!]日経新聞, 2024/4/24 8:36:56) 異次元との決別:門間元日銀理事 異次元緩和は「日銀のデフレ脱却宣言」 今後は? | 毎日新聞([B!]毎日新聞, 2024/4/24 8:36:53)
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honyakusho · 1 month
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2024年4月18日に発売予定の翻訳書
4月18日(木)には16点の翻訳書が発売予定です。
古都ウィーンの黄昏 建築と美術と文学と
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マリオ・プラーツ/著 伊藤博明/訳 金山弘昌/訳 新保淳乃/訳/責任編集
ありな書房
メイキング・シティズン
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ベス・C・ルービン/著 池野範男/監訳 川口広美/監訳 福井駿/監訳
明石書店
トランスランゲージング・クラスルーム
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オフィーリア・ガルシア/著 スザンナ・イバラ・ジョンソン/著 ケイト・セルツァー/著 佐野愛子/監訳 中島和子/監訳
明石書店
スラムに水は流れない
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ヴァルシャ・バジャージ/著 村上利佳/翻訳
あすなろ書房
父のところに行ってきた
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申京淑/著 姜信子/翻訳 趙倫子/翻訳
アストラハウス
マスターティーチャークリスタルオラクル
ラシェル・チャーマン/著 長井千寿/翻訳
JMA・アソシエイツ
花と夢
ツェリン・ヤンキー/著 星泉/翻訳
春秋社
戦争は,
ジョゼ・ジョルジェ・レトリア/著 アンドレ・レトリア/イラスト 木下眞穂/翻訳
岩波書店
カフカの日記 新版
フランツ・カフカ/著 マックス・ブロート/編集 谷口茂/翻訳 頭木弘樹/解説
みすず書房
金庫破りとスパイの鍵
アシュリー・ウィーヴァー/著 辻早苗/翻訳
東京創元社
いろいろな幽霊
ケヴィン・ブロックマイヤー/著 市田泉/翻訳
東京創元社
「音」の秘密
スティーヴ・マーシャル/著 山崎正浩/翻訳
創元社
ミステリーしか読みません
イアン・ファーガソン/著 吉嶺英美/翻訳 ウィル・ファーガソン/著
ハーパーコリンズ・ジャパン
遥かなる未踏峰 上
ジェフリー・アーチャー/著 戸田裕之/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
遥かなる未踏峰 下
ジェフリー・アーチャー/著 戸田裕之/翻訳
ハーパーコリンズ・ジャパン
アメリカ70年代
ブルース・J・シュルマン/著 巽孝之/監修・翻訳 北村礼子/翻訳
国書刊行会
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kinosuke · 2 years
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レシピ(細口そうめん) #Repost @__food_letters__ ・・・ *** そうめんが美味しい季節になってきました。わが家はいつも真砂喜之助製麺所さん(@masago_kinosuke )のそうめん。何層にも重ねて撚ってつくるそうめんはコシがあってツルッとした喉ごし。個人的にふにゃっとした食感のそうめんが苦手だったので真砂さんのそうめんに出会ってからは毎年の楽しみなのです。 5年前にレシピ本づくりで訪れた小豆島の旅を思い出しながら。 ごちそうさまでした。 浅田剛司 #真砂喜之助製麺所 #器のある暮らし #長戸裕夢 #阿南維也 #棚橋祐介 #府川和泉 #細口 #手延べそうめん#そうめん http://kinosuke.tumblr.com https://www.instagram.com/p/Cev3gZMvWrv/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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kachoushi · 2 months
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各地句会報
花鳥誌 令和6年4月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和5年1月6日 零の会 坊城俊樹選 特選句
ドッグラン鼻と鼻とで交はす賀詞 荘吉 裸木のはるかを白く光る街 要 頰切るは鷹の翔つ風かもしれず 順子 人波をこぼれながらの初詣 光子 焼芋の煙たなびく志んぐうばし 和子 群衆といふ一塊の淑気歩す 順子 寒雀神馬と分かちあふ日差し 光子 寒雀入れ神苑の日のたまり 同 寒の水明治の杜のまま映す 小鳥
岡田順子選 特選句
跼り清正の井を初鏡 昌文 本殿につぶやく寒紅をつけて 光子 楪の浴ぶる日我にゆづらるる 慶月 肺胞に沁み込んでゆく淑気かな 緋路 冬草や喧騒去りて井戸残し 眞理子 馬見えぬ乗馬倶楽部の六日かな 六甲 寒鯉来おのれの色の水を分け 緋路 寒椿落つれば湧くや清正井 眞理子 寒の水明治の杜のまま映す 小鳥
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月6日 色鳥句会 坊城俊樹選 特選句
一束もいらぬ楪もて遊ぶ 成子 深井より羅漢に供ふ冬の水 かおり 赤なまこ横目に買ひし青なまこ 久美子 畳みたるセーターの上に置くクルス かおり 再会のドアを開けばちやんちやんこ 朝子 半泣きのやうに崩るる雪兎 成子 火を見つめ男無口に薬喰 かおり 歳晩の一灯母を照らすため 朝子 悴みて蛇となる能の女かな 睦子 その中の手話の佳人やクリスマス 孝子 悪童に悲鳴をはなつ霜柱 睦子 凍空とおんなじ色のビルに棲み かおり かくも典雅に何某の裘 美穂 唐突に雪投げ合ひし下校の子 成子 楪や昔硝子の磨かれて かおり 奥伝の稽古御浚ひする霜夜 愛 出会ひ重ね寿限無寿限無と年惜む 美穂 冬灯一戸に遠き一戸あり 朝子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月8日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
流れ来し葉屑も霜を置いてをり 昭子 御慶述ぶ老いも若きも晴れやかに みす枝 初春の光りまとひし石仏 ただし 神なびの雨光り落つ氷柱かな 時江 地震の中産声高き初笑ひ ただし 歌留多とり一瞬小町宙に舞ふ みす枝 まだ誰も踏まぬ雪道新聞来 ただし 奥の間に柿餅吊し賑はへり 時江 さびしさの枯野どこまで七尾線 昭子 万象の音の鎮もり除夜の鐘 時江
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………��……………………
令和5年1月9日 萩花鳥句会
初句会吾娘よりホ句のファクシミリ 祐子 書き初め震何んぞ訳あり辰に雨 健雄 吹雪突き突進するエネルギー 俊文 日本の平安祈る今朝の春 ゆかり こがらしが枯葉ころがしからからと 恒雄 平穏な土地にて食べる七草粥 吉之 御降や茶筅ふる音釜の音 美惠子
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令和5年1月10日 立待花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
被災地にすがりし木の芽盛んなる 世詩明 的中の乾いた響き弓始 誠 初場所の桟敷の席の晴れ着かな 同 初御空耶馬台国は何処にぞ 同 石段を袖振り上がる春著の子 同 細雪番傘粋に下駄姿 幸只
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月11日 うづら三日の月花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
年上の夫に引かるる初詣 喜代子 地震起こり慌てふためく大旦 由季子 曇り拭き笑顔映りし初鏡 さとみ 地震の地にぢりぢり追る雪女 都 冴ゆる夜の天井の節をまじまじと 同 男衆が重き木戸引き蔵開き 同 寒月や剣となりて湾の上 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月12日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
海鳴や雪の砂丘は祈りめく 都 初電話卒寿は珠のごと笑ひ 同 針始友が未完のキルト刺す 同 授かりし神の詞や竜の玉 悦子 蜑に嫁し海山詠みて老いの春 すみ子 焚上げの火の粉加勢や冬銀河 宇太郎 古傷を思ひ出させて寒四郎 美智子 枯葦の透き間に光る水一途 佐代子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月12日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
寒の雨誦経とよもす陽子墓碑 文英 寒林を上り来よとて母の塔 千種 顔消えし元禄仏へ寒菊を 慶月 道祖神寄り添ふ寒の雨うけて 慶月 就中陽子の墓所の蕗の薹 幸風 裸婦像の背にたばしる寒の雨 同
栗林圭魚選 特選句
信州へ向かふ列車の二日かな 白陶 寒林を上り来よとて母の塔 千種 晴天の初富士を背に山降る 白陶 大寺の太き三椏花ざかり 幸風 空までも続く磴なり梅探る 久 ��ればれと良き顔ばかり初句会 三無 就中陽子の墓所の蕗の薹 幸風 五姉妹の炬燵の会議家処分 経彦 走らざる枯野の車両咆哮す 千種 凍蝶のポロリと落つる影哀れ れい 三椏の開花明日かと石の門 文英
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月13日 枡形句会(一月十三日) 栗林圭魚選 特選句
嗽ぐをどる喉越し寒の水 幸風 七福神ちらしの地図で詣でをり 多美女 七福神詣りしあとのおたのしみ 白陶 凍て鶴の青空渡る一文字 幸子 金継ぎの碗に白湯汲む女正月 美枝子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月15日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
曇天に寒紅梅や凜と咲く のりこ 寒梅のつぼみの枝の陽の仄か 貴薫 青空に白き寒梅なほ白く 史空 朝の日に紅色極め寒椿 廸子 我が机散らかり初めし二日かな 和魚 倒れ込む走者にやさし二日かな 三無 釦穴に梃摺る指や悴かみて あき子 夢てふ字半紙はみ出す二日かな 美貴 二日早主婦は忙しく厨事 怜 りんご飴手に兄妹日向ぼこ 秋尚 雪遊びかじかむ手の子包む母 ことこ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月16日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
幼子の運を担いで福引へ 実加 寒空や命尊きこと思ひ みえこ ことわざを子が覚えをりかるた取り 裕子 元旦の母と他愛もない話 同 元旦や地震の避難を聞くことに みえこ 初詣車椅子の児絵馬見上ぐ 実加
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月17日 伊藤柏翠記念館句会 坊城俊樹選 特選句
古里に温石と言ふ忘れ物 雪 師の墓に愛子の墓に冬の蝶 清女 寒の月見透かされたり胸の内 眞喜栄 鴨浮寝無言の中にある絆 同 降る雪を魔物と今朝を天仰ぐ 英美子 藪入りも姑の一言行けぬまま 同 庭仕事今日冬帝の機嫌よき かづを 玻璃越に霏々と追はるる寒さかな 同 正月が地獄の底に能登地震 みす枝 雪しまき町の点滅信号機 ただし お御籤の白き花咲く初詣 嘉和 若狭より繋がる水脤やお水取 やす香 水仙の香りて細き身の主張 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月17日 福井花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
寒紅の濃き唇が囁きし 世詩明 お雑煮の丸と四角と三角と 同 正月の馳走其々ある謂れ 千加江 新年の風も言の葉も美しく 和子 磯の香も菰巻きにして野水仙 泰俊 捨て舟を取り巻くやうに初氷 同 左義長や炎崩れて闇深し 同 去年今年形見の時計よく動く 同 ふと今も其の時のマフラーの色 雪 天地に誰憚からぬ寝正月 同 迷惑を承知の猫に御慶かな 同 不器用も父似の一つ初鏡 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月17日 鯖江花鳥句会(一月十七日) 坊城俊樹選 特選句
而して九十三の初鏡 雪 蛇穴に入り人の世は姦しく 同 紅を差し眉ととのへて近松忌 同 懐手おばあちやん子を憚らず 同 鬼つ子と云はれて老いて近松忌 同 着膨れて顔ちさき女どち 一涓 歌かるた子の得て手札取らずおく 昭子 年新たとは若き日の言葉とも やす香 新年を地震に人生うばはれし 同 元旦を震はせる能登竜頭めく 同 裂帛の気合を入れて寒みそぎ みす枝 風の神火の神乱舞どんど焼き ただし 八代亜紀聞きをり外は虎落笛 清女 寒怒濤東尋坊に砕け散り 同 波の腹見せて越前浪の華 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年1月19日 さきたま花鳥句会
月冴えて城址うろつく武者の翳 月惑 仲見世を出て蝋梅の香に佇てり 八草 枯菊や木乃伊の群の青き影 裕章 寒鴉千木の反り立つ一の宮 紀花 合掌す金波銀波の初日の出 孝江 青空に白き一機や寒紅梅 ふゆ子 初詣令和生まれの児と犬と ふじ穂 白鼻緒水仙の庫裏にそろへあり 康子 激震の恐れ記すや初日記 恵美子 お焚き上げ煙を浴びて厄払ひ 彩香 我が干支の年につくづく初鏡 みのり 家篭りしてをり冬芽萌えてをり 良江
………………………………………………………………
令和5年12月1月 花鳥さざれ会 坊城俊樹選 特選句
師を越ゆる齢授かり初鏡 雪 初笑玉の如くに美しく 同 大晦の右大臣左大臣 同 猫の名は玉と答へて初笑 同 天が下縁深めゆく去年今年 数幸 能登の海揺るがし今日の空冴ゆる 和子 しろがねの波砕かれて冴え返り 笑子 語り継ぐ越前の秘話水仙花 同 雪降れば雪に従ふ越暮し 希子 皺の手にマニキュア今日は初句会 清女 初電話親子の黙を解きくれし 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年11月 花鳥さざれ会 坊城俊樹選 特選句
蟷螂を見て戻りたるだけのこと 雪 もて余す老に夜長と云ふ一つ 同 蟷螂の緑失せつゝ枯れんとす 同 小春日や袱紗の色は紫に 泰俊 正座して釜音聞くや十三夜 同 海沿ひにギターの調べ文化の日 千加江 枝折戸をぬけて紅さす返り花 笑子 祇王寺の悲恋の竹林小鳥来る 同 大胆な構図を取りし大銀杏 和子 宿の灯も消して無月の湖明り 匠 秋の海消えゆくものにますほ貝 天空 落葉降る賽の河原に降る如く 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年12月 花鳥さざれ会 坊城俊樹選 特選句
異ならず枯蟷螂も人老ゆも 雪 世の隅に蟷螂は枯れ人は老い 同 無造作に残菊と言ふ束ね様 同 冬ざれや汽車に乗る人何を見る 泰俊 石膏でかたまりし腕冬ざるる 和子 山眠る小動物も夢を見る 啓子 路地裏の染みたる暖簾おでん酒 笑子 冬ざれや路面電車の軋む音 希子 おでん屋の客の戯れ言聞き流し 同 風を背に連れておでんの客となり かづを にこにこと聞き役おでん屋の女将 同 冬紅葉地に華やぎを移したり 同 街師走見えざるものに背を押され 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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hktryun · 4 months
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24/1/23 24:05
具合悪い。もう一月が終わりかけるらしい。早く生理が来るのって数年ぶりくらいで、塩漬けにしてるタスクをつつきながら全然進まなくて、そのせいにして布団でずっと唸っていた。リリースをしに出社したら手元の環境がまたよくわからなくなって、15分くらい何も考えられずコマンドを捏ねてから諦めて先輩に投げた。話すのが下手で努力家で恐ろしく優しい先輩は全然だいじょうぶです!と下手にグッと👍をしてくれ、全然大丈夫じゃね〜と思いつつひくひく笑うしかない。わたしは。プーさんみたいな部長とほとんどツーマンでやっていたその人、がわたしのリリース中にタスクや教育の話を時折していて、怯みながらリリースを終えた。さすがにまだミスはしていない。
先輩は年明けに東中野に引っ越したらしく金曜日の社内バンド会の会場から3分くらいのところに住んでて、そのすぐそばに初夏ランチをした優秀な社内夫婦が住んでいるらしく、走って逃げたら15分くらいで折田の実家があるのにわたしはなんでか魚民を予約し飲み放題をとって27人くらいで飲んでいた。なんにも酔わない。世の中でいうとお酒が弱くはないみたいなのに、たいして酔わず飲まない大人たちが普通に終電を逃��ぬるさが今のところ全然わからない。忘年会然り絶対に終電で帰る同期とまた走って大江戸線に乗り、ギターよりピアノができたらいい、音楽理論はわからないけど手癖ってさみしいとか、引っ越したら同棲するんだったとか少し話した。歌が上手く顔が綺麗で恐ろしく頭のいい人、なんだろうがほやほやとしていて、なんかいつか酷めに口が滑りそうになる。帰ったらプーさんみたいな部長からふわふわのDMがきて、ベースお上手ですねと言ったらここ2人だけだもんねと言われて笑ってしまった。なんか、無邪気でいたい。美味しいものをたくさんくれていたらわたしは可愛い後輩を忌憚なくやり続けられるけど、わからねー。先輩は伏見出身らしくてまたうおーフィクションだあと楽しくなった。
土曜日また友達と会って、会いに行く前にわたしはすっかり気持ちの置きどころをここにばっかり置いてしまってるからそりゃ話も進まないやと思う。良い居酒屋ですごく美味しいものを食べた。
どうせ落ち込んでいる いたからここからは蛇足、あんなになにかをしたかったのに、暮らせてしまってなにもない。分からないってずっと怖くてすごいのに、わたしが今やっているのはずっとなにかが分からない仕事らしい、適性が早めにわかりたい(落語だ)。学校から帰ってきて/帰ってこなくてもずっとフィクションのことしか考えず絵と文とインターネットにずぶずぶだったときに比べたら、なんにも「他に手がつかない」なんて状態には一生ならないだろうなと考えるとあっけらかんと絶望。線が好きな絵を眺めたり字面のいかつい初学者用の本をみてぐったりばかり。ぎちぎちに小さくした、フォントサイズ8pxくらいのメモ帳の小説を書き詰めてたのも6年前なのかと思って恐ろしい。ひとと話すようになってお互い動いているから時間の経過が恐ろしく早くなっている気がする。絶対に良いことだけど。
ついでに:コミュニティの中で浮いている という言い方があってわたしは小5くらいのとき母の友人に「クラスで浮いていていやだから中学校受験したい」とはっきり言ったらしく、その後も何度かいわれる、けど、中学から高校に行ったら「浮いている」じゃなくて「沈んでいる」にわかりやすく切り替わった。浮いているっていうかもっとふんわりひどい。沈んでいるは文字通りで、音がしなくて外から見ると動かず無様で、こちらは夢中でここじゃない下を向いて潜っていてきちんと息は詰まっていっている。ここなら息ができる!という言い方があるけど別に息ができない分たくさん喋らないといけないみたいだったな!と、皮肉でなくしみじみと最近思い出す。Twitterではじめて、声と書く文章とがつながって、わたしのことをアカウント名の愛称で呼んでくれた年上のともだちが、その慣用句のことを話したの、すごく覚えている。その人は誰が書いた文やっけねえと言ってたけど、わたしはその人自身か、じゃなかったら桜庭一樹だと確信してた。冬の、嫌な感じのしない夜道とかを歩いているとその人の好きな女子高生の小説を思い出して、ひたすらにフィクションすぎる氷みたいな女子高生の話、それを必死で消費してた高校生活を思い出す。消費していたと思っていたものが、ほとんど自己投影なのだと気づいて気持ちが悪くなってフィクションに逃げれなくなったのでした。今ならもう少し開き直れるかもしれないけど、ここじゃないところに行きたい、という死にそうな気持ちでしか投影はできなかったからいま何をしたらいいのかわからない。その人に会いに大阪にいこうかと思ったけどやはり怖く、京都でお茶を濁す予定を立てる。
暗い話、年越しで家族に会って、やっぱり会う前から会って2.3時間の間は喉をずっと詰めているような切迫感があって、それで猫の顔を見たくらいから慣れてきて頭がぼんやりしてくるなあと改めて確認。バリ島でも驚いたけど、23になってもまだ爪を立てるくらい息が詰まることが数時間ある。いつ慣れるんだろう。慣れていたからそれに戻るのが怖いのだろうけど、これを大人はみんな家族に対して潜り抜けるのだとしたら凄まじいことだと思う。母はまた(血のつながらない)"他人"の家族話しにぽやぽやと「親子ってそういうものなんだ」と感心していて、もうずっと笑うのを我慢、遠い遠い気持ちで。わたしが歌を怖いのは、歌だけがどうしようもなく好きなことはあまたあるのに、嫌いな人の歌のことをぞっとするくらい怖く気持ちが悪く感じるからで、つくられたものとつくった人の双方への認識の、どっちがほんとなのか、を後生抱えてる理由の一つ。母は誕生日には色んなことの自覚があるよというようなメッセージを送ってきて、誰も悪くない。余りにもらった酢の物をまた間に合わなくてさっき捨てた。ひとにご飯を作るのが、作りたいと思うのが心底こわいなと自覚しはじめている。台湾に行った話、転職、猫、話題の近さ、「そういうふうにした」のだろうな、といろんな派生のことを毎度落ち着かせている。半年くらい前ですら、もとの家に帰るとその暗さと汚さにぞっとしたんでした。人のことをピコピコハンマーじゃなくて8kgくらいのもので殴って2年くらいのことを忘れさせたい。いつだっていなくなるから陰口は影でしていてと祈る根っこの気持ちは変わらないけど、そんなのもできなくなってきたのが初めてでめでたい。恐ろしすぎる。今なら、わざわざ塗りつぶすんじゃなくて気付いたら潰せていたほうがいいとわかるけど、当時はそんな余裕もなかったんだよね。よしよし。
暮らしとしては、日暮里で実家に置いてきたいしいしんじと3度目のmonkeyと好きな漫画の兄弟作を買った。わたしの出自はかなりいしいしんじの、麦ふみクーツェにあると思う。本を読んでいきっていたい。感情が焦るかとろけるかの2択のようでいやだ。嫌いな有名人のゴシップ(本当に気持ち悪い)が、政治が、ガザが、生活がお金のことが本当に笑ってしまうくらい酷くて、どうしてそんなことばっかりなんだろう、スマートフォン中毒だからネット署名と募金をやたらとしている。そういう共有物をひとと話題に上げたときのテンションの違いにもびっくりする。世界のことこんなに嫌だと思っているのに、どこで開き直るかでしかなく、情けない気持ち。考えていることを、考えられているという自負にして材料にするしかないのか。好きだった嫌いな出版社や社会保障から親族のことを考え、しみじみとすべてが嫌になるが、最近はちょっとだけ前より化粧が好きになったから毎日の経過が大丈夫になった。肌をつやつやにしたい。
文字サイズ小さくできるのにやっと気付いてしまってこうなる。なんかこの目の滑りが好きなだけでわたしは文章が好きではなくて文字だけ見ている気がする。文字っていうか形容句。形容句が好きすぎて、人生が形容句選びだけみたい��なっている、うそです。でもそういう感じ。
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2023年に読んで「オォッ!」と思った本や作品……その2
『中銀カプセルタワービル 最後の記録』(中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト編/装幀:上清涼太/草思社) 『ヒエログリフを解け ロゼッタストーンに挑んだ英仏ふたりの天才と究極の解読レース』(エドワード・ドルニック著/杉田七重訳/東京創元社/Kindle版) 『AXIS August 2023 vol.224 特集シン宇宙時代 The New Space Age』(株式会社アクシス) 『ジブリの立体建造物展 図録〈復刻版〉』(藤森照信監修/コンセプト・デザイナー:種田陽平/編集:株式会社スタジオジブリ/デザイン:細山田デザイン事務所/トゥーヴァージンズ) 『 湖の秘密─川は湖になった』(編集・執筆:前田礼、戸谷莉維裟(市原湖畔美術館)/地図制作:吉田健洋(一般財団法人日本地図センター)/デザイン:大西隆介(direction Q)/写真:田村融市郎、市原市観光協会、『写真集/市原市の昭和史』(千秋社)/市原湖畔美術館発行) 『ジョセフ・アルバースの授業──色と素材の実験室』(執筆:ブレンダ・ダニロウィッツ、永原康史、沢山遼、亀山裕亮/和文英訳:中野勉/欧文和訳:水野俊、林寿美、亀山裕亮/編集:林寿美、亀山裕亮、飛田陽子(水声社)、関根慶(水声社)/ブックデザイン:木村稔将、阿部原己(Tanuki)/水声社) 『相分離生物学の冒険──分子の「あいだ」に生命は宿る』(白木賢太郎著/装丁:細野綾子/みすず書房) 『「生きている」とはどういうことか 生命の境界領域に挑む科学者たち』(カール・ジンマー著/斉藤隆央訳/装幀:大倉真一郎/白揚社) 『食虫植物 多様性と進化』(長谷部光泰著/裳華房) 『What is Tanuki?』(佐伯緑著/題字:森井(藤原)敏惠/表紙イラスト:佐伯緑/装丁:designfolio/佐々木由美/東京大学出版会) 『線虫 1ミリの生命ドラマ』(長谷川浩一著/装丁:鈴木成一デザイン室/dZERO) 『新・動物記8 土の塔に木が生えて シロアリ塚からはじまる小さな森の話』(山科千里著/新・動物記シリーズ編集:黒田末壽、西江仁徳/ブックデザイン・装画:森華/京都大学学術出版会) 『新・動物記7 白黒つけないベニガオザル やられたらやり返すサルの「平和」の秘訣』(豊田有著/新・動物記シリーズ編集:黒田末壽、西江仁徳/ブックデザイン・装画:森華/京都大学学術出版会) 『新・動物記6 アザラシ語入門─水中のふしぎな音に耳を澄ませて』(水口大輔著/ブックデザイン・装画:森華/シリーズ編集:黒田末壽、西江仁徳/京都大学学術出版会) 『フィールドの生物学24 ミツバチの世界へ旅する』(原野健一著/東海大学出版部) 『哺乳類前史:起源と進化をめぐる語られざる物語』(エルサ・パンチローリ著/的場知之訳/青土社/Kindle版) 『招かれた天敵──生物多様性が生んだ夢と罠』(千葉聡著/みすず書房/Kindle版) 『進化のからくり 現代のダーウィンたちの物語』(千葉聡著/講談社ブルーバックス/Kindle版) 『ビーバー:世界を救う可愛すぎる生物』(ベン・ゴールドファーブ著/木高恵子訳/草思社/Kindle版) 『タコの心身問題 頭足類から考える意識の起源』(ピーター・ゴドフリー=スミス著/夏目大訳/みすず書房/Kindle版) 『幻のシロン・チーズを探せ 熟成でダニが活躍するチーズ工房』(島野智之著/デザイン、イラストレーション:佐々木宏/帯文:坂上あき、森節子/八坂書房) 『すごい実験 高校生にもわかる素粒子物理の最前線』(多田将著/イラスト:上路ナオ子/イースト・プレス/Kindle版) 『ビッグコミックススペシャル 藤子・F・不二雄 SF短編コンプリート・ワークス7 ポストの中の明日』『ビッグコミックススペシャル 藤子・F・不二雄 SF短編コンプリート・ワークス1 ミノタウロスの皿』(藤子・F・不二雄著/装幀:佐々木暁/小学館) ���北極百貨店のコンシェルジュさん 1・2巻』(西村ツチカ著/装幀:井上則人(井上則人デザイン事務所)/小学館) 『ぼっち死の館』(齋藤なずな著/小学館ビッグコミックスフロントライン) 『すとまとねことがんけんしん1』(内田春菊著/装画:内田春菊/装丁:秋山具義(Dairy Fresh)/デザイン:横倉清恵(Dairy Fresh)/ぶんか社) 『すとまとねことがんけんしん2』(内田春菊著/装画:内田春菊/装丁:秋山具義(Dairy Fresh)/デザイン:山口百合香(Dairy Fresh)/ぶんか社) 『大金星』(黒田硫黄著/講談社アフタヌーンコミックス/電子書籍版) 『ころぶところがる』(黒田硫黄著/小学館/電子書籍版) 『大日本天狗党絵詞1〜4』(黒田硫黄著/アフタヌーンKC/電子書籍版) 『映像研には手を出すな!1〜8巻』(大童澄瞳著/小学館/電子書籍版)
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ashitaomaeto · 5 months
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『 今日呑み会行ってくるね。』
「 ん、気を付けて。帰る頃連絡して。」
『 はあい。』
なんてやり取りで、今まで付き合って来た恋人はそれで良かったはずなのに。
いま目の前で
『 今日呑み会なんだ〜。』
なんて呑気に用意をするお前に不服な表情を浮かべる、俺。
「 何時に帰ってくんの? 」
『 終電までには帰るかな。』
「 ふーん。」
嗚呼、俺今めちゃくちゃだせえなとか頭で考えて。
でも出てくる言葉は、
「 そんな格好で行くの?寒いよ。もっと丈長いのに着替えて。」
「 ねえ、もっと早く帰って来られない? 」
だなんて、面倒臭い言葉。
挙げ句の果てに、
『 もう、ひかる煩いよ。静かにして。』
『 たまにの楽しみなんだから。』って呆れた顔。
俺だって、どうしたら良いか分かんねえのよ。
今までこんな感情にならなかったのに、お前にはさ。
「 ごめん、俺寝るわ。」
頭冷やさなきゃなって思いながら、吐き捨てる。
『 おやすみ〜、18時には出るからね!』
背後で聞こえる声に手を挙げて答える。
今の俺に言葉を発する余裕は無い。
1人ベッドに横になり、考えるのはやっぱり。
「 あー、めちゃくちゃ好きじゃん。あいつの事。」
今までとは違う本気の好きに、戸惑いながら眠れる訳も無いのに目を瞑る。
『 ひかる、行ってくるからね!』
そんな声が耳に届いて、起き上がる。
あー、もう。服着替えてって言ったのに。そんな可愛い格好してさ。
言いたい事は沢山あるけど、あんまり言うと怒るから。
「 ん、行ってらっしゃい。気を付けて。」
俺なりの、精一杯。顔なんて見せられたもんじゃない。
『 はあい、帰る時連絡する〜。』
楽しそうな声、靴を履く音、ドアを開けて閉める音。
流石に見送れば良かったかな、なんて思いながらベッドへと逆戻り。
「 本気で好きだから、口煩くなんだよ。ばーか。」
聞こえるわけもない、独り言。
心の中で嫉妬と不安が混ざる、こんなに重かったっけ俺。
目を瞑り夢の中へ旅立つ直前、震える携帯。
『 早く帰るから、機嫌治してね。______ 、ひかる。』
嗚呼、ずるいな本当。これだからお前には勝てねえよ。
「 帰ったら朝まで付き合ってよ、俺に。」
酔っ払ってても、絶対寝かしてやんねえから。
そう心に決めて、仮眠を取るために目を瞑る19時過ぎ。
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shukiiflog · 8 months
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ある画家の手記if.58 告白
※エロ
車の中で香澄を膝の上に乗せていた体勢を一度入れ替えて、香澄を助手席に座らせる。その上に覆い被さるようにして香澄の唇に食らいつく。香澄の腕が僕の背中にすぐに回った。じれったそうに僕の体を締めつけるみたいにして腕を体に這わせて絡めてくる。 繋がった口の中で香澄の息が震える。さすがにこんな場所で声を聞かせてほしいなんてわがままは言えない、誰が通りがかってもおかしくないし、…きりのいいところで家に帰ってから…かな。…これで家まで運転まともにできるかな…香澄を乗せて���んだから無茶はしないけど 口付けたまま、自由になってる両手で香澄のズボンの前を開ける。下着を軽く下ろして固くなったものに片手を添えると、すでに先走りで香澄の先端は濡れていた。緩く握ってからその裏筋を人差し指で根元から軽く撫で上げた。それだけで香澄が体を痙攣させて、目の前の僕を見つめていた潤んだ両目をぎゅっと閉じる。その拍子に眦から涙が溢れた。…顔真っ赤になってる…かわいいな そのままゆっくり包み込んだ手を上下させて、たまに指先で先端に触れて先走りを手に絡めて馴染ませる。もう片手は袋を包み込むようにしてやわやわと揉みながら、中指を一本立ててうしろまで伸ばして入り口を触れるか触れないかくらい微かになぞった。「…っ、ん、んぅ、」口内で香澄の切ない声が響いて、ますます僕の体も強く反応する。 「…ん……ぁ…、…っはぁ」一度唇を離して、今度は香澄の首筋を舌先で舐めあげる。跡がつかないくらいに軽く吸いついたら、香澄が唾液の伝う口を息を荒げて軽く開いたまま、後頭部を座席に擦り付けるみたいにして悶えた。 「香澄…、…かわいい」顔を耳元にあてて耳に息を吹き込むようにして囁く「…けど、悪い子だね……こんな場所じゃ僕が満足できない」言ったあとで顔を耳元から離して香澄と目を合わせると微笑みかける。怒って言ったんじゃないよ、煽ったの。香澄がしたいならいろんな手を使って昂ぶらせてあげたい。 上下にゆっくりしごいていた手を早めていく。香澄も僕もすっかり体が汗ばんで、香澄のも全身と一緒にしっとり濡れてきた。片手でうしろを催促するように軽く指先でくすぐり続ける。こっちは家に帰ってからね。 「ぁ、あ、っ…な、おと、」香澄が声を噛み殺すようにしながら僕の名前を呼ぶ「…どうした、…痛い?」僕は香澄の体に少し体重を預けながら香澄の髪に頰をすり寄せる。 「ち、が…、…ぁ、っ……」少し手の動きを変えてさらに煽る「…どうしたの。…僕にどうしてほしい?…かすみ…」 限界だったのか何も答えられずに香澄は頭を仰け反らせたまま一言絞り出した「だ、め…も…ぅ、…い、…く……、っ」 その言葉で僕はすぐに手をはなして、座席を後ろに下げて広くスペースをとった車内の香澄の足元に両膝をついた、すぐに香澄の濡れたものの先端にキスをしてその���ま迷わず深く根元まで口の中に咥え込む。「な…、ぁ……な、なおと…」香澄の声は快感に混じって少し戸惑うような響きも含んでいたけど、拒絶ではなかった。数度僕が頭を上下させて、口内で舌を立てて根元から先端まで少し強めに押し上げるように舐めると、香澄は素直に僕の口の中に出した。 香澄のものならなんでも愛しい…僕にくれるならなんでも欲しい、ゆっくり口を離しながら出されたものをそのまま残らずぜんぶ飲み込んだ。 「ーーーー…はぁ……、……少し落ち着いた…?」香澄の足の付け根に埋めていた顔をあげて、乱れた長い髪をかきあげながら香澄に尋ねた。他にも聞きたいことはあるんだけど…一度いかせないとどうにも香澄の体がおさまらないようだったから。 「……ぅ、…う、ん………ごめんなさい…」 香澄はまだ顔を赤くしてイったばかりで少しぼんやりしたまま、恥ずかしいからなのか、こんな場所で迫ったことになのか、小さく謝った。すぐに頭をくしゃくしゃ撫でてにっこり笑うと、気にしなくていいと伝える。…車内にティッシュやタオルはあるけどまるで汚い物を拭うみたいであまり使いたくなかった。「香澄、…口のまわり、綺麗にしてくれる…?」濡れた唇で香澄を見つめてねだると、そっと香澄の手が僕の頭に伸びてきて、僕の髪の毛の間に指を通すみたいにして頭を両手で挟まれた。香澄の唇が僕のふやけた唇に一度重なってから、香澄は僕の唇や口まわりを舐めとるようにしてたくさんキスして綺麗にしてくれた。僕も呼応するように何度も香澄に軽いキスを降らせた。 それからしばらくお互いに体をくったり凭せかけあって、二人とも呼吸も体温も落ち着いた頃に、僕は香澄の頭を引き寄せて額にキスすると、助手席のドアを開けて車から一度出て、運転席に座りなおした。 香澄は一旦は落ち着いたようだけど僕はまだこれからだから、正直視界がぐらつきそうなくらいつらかったりする。なんとか安全運転で帰らないとな。
それから安全運転で家に帰って、…赤信号のときに香澄の頭を抱き寄せてキスしたりしながらの運転を安全運転っていうのかはまた別として…、二人でいつもより少し急ぎぎみにお風呂に入って、夕食もそこそこに体を縺れ合わせるようにしながら一緒に僕の部屋のベッドに倒れこんだ。 香澄の服を手早く脱がせる、香澄も待ってられないように自分から脱ぎ捨てていって僕の服にも手をかける。 何も纏わない状態になってから一度ぎゅっと香澄の背中に手を回して体を抱き締めると香澄も抱き締め返してくれる。お互いにさらに手足を絡めて体を縺れ合わせて、前を相手の腹に擦り付けるようにする。 車内で口でしてから一度少しは熱がおさまったもののずっと二人とも頭は茹だったままみたいな状態で、体は戯れの前戯より少しでも早く繋がりたがっていた。 ベッドサイドの引き出しからゴムとローションを取り出して、片腕を枕について香澄の頭を囲んで、頭を枕に沈みこませるように深くキスする。もう片手を下肢に伸ばしてうしろを慣らしていく。香澄の腕が僕の首に回って、香澄が僕の頭に頰を擦り寄せてくる。髪を伸ばし始めてから、香澄はこれがお気に入り。いくらでも伸ばしててあげるよ、香澄がそれで笑ってくれるなら。 香澄は以前「自分をやらしいやつだと思ってないか」なんて朝になってから僕におそるおそる聞いてきたりしてた。あれからまた数えきれないほどして、香澄の体は徐々に僕のすることに少しずつだけど早く慣れて緩むようになってきた。少し刺激を与えるだけで今日も、もう二本目の指が奥まで入り込む。香澄の耳の中に舌を差し入れて舐めてから、耳の横で優しく囁いた「……香澄、やらしくなったね…すごくかわいい」辱めたり罵るようなニュアンスには決して聞こえないように、愛しい気持ちを全身全霊で声に込める。 あつくなった香澄の中で、香澄の好きなところを指先で抉って刺激する。「ふ…ぅぅ、…ぁ…」控えめな声と一緒に香澄の背が反って僕の背中から脱力した腕がシーツの上に落ちる。背がベッドから僅かに浮く。僕は気持ちいいと体が丸まっちゃうほうだけど、香澄は反っていくほうで、してるといつも自然と僕らは体がぴったりくっつく。 「なおと… なおと、」何度も熱っぽく僕を呼ぶ声が早く入れてって言ってるみたいでかわいくて、香澄の体のあちこちに強く吸い付いてたくさん跡を残した。入れた指で中をかき乱して拡げて、香澄の嬌声と一緒にどんどん緩くなる。 「香澄、…いい?」頰にキスしてから香澄の顔をしっかり見つめて聞くと香澄は蕩けた表情でこくんと頷いた。 脚を僕の肩にかけさせて香澄の腰を背から抱くようにしながらゆっくり香澄の中に入っていく。 「ふ、…ぁ、あぁぁぁ………」香澄が力の抜けたかわいい声を上げた。痛くないみたいだ。そのまま根元まで押し込む。キスしたいな…香澄の脚を肩から腕にかけなおして、上体を倒して体を密着させながら香澄の唇にキスする。 口の中で舌を絡め合いながら、ゆっくり腰を揺する。香澄の声が体の中から響くようにして聞こえる、気持ちよくて、僕の喉からも息と一緒に声が漏れる。すぐに声が出やすいの、昔はちょっとコンプレックスだったりしたけど、香澄がいつも喜んでくれるからいつのまにか遠慮なく喘ぐようになった。…まだ恥ずかしいけど 抜き差しを繰り返すうちに僕にも余裕がなくなっていく、浅いところでとめていたのを激しく深くまで突き始めたら香澄が悲鳴のような細い声を上げて、全身を弓なりに反らせて、イった。その間だけ香澄の体を抱いてじっとしてたけど、それもだんだんつらくなってきた。また腰を揺さぶり始める。…香澄、苦しくないかな…。ずっと続けているうちに僕の頭も冷静じゃなくなってきた、激しく奥まで貫くようになって、夢中で香澄にキスしていたら香澄がキスの合間に口の端から二人分の混ざった唾液を溢しながら言った。「す…き、…なおと…」 ふやけた意識の中でも一生懸命僕に言葉で伝えようとしてくれる、うれしい、愛しい……「…かすみ、ぼく…も、す……、っ…」好きって言おうとして途中で香澄の中でイって、全身が痺れて言葉が途切れたままになった。 イったあともしばらく香澄の中でじっとして、香澄の体を持ち上げるように大事に抱き締める。そのまま少し時間が経った。 お互いに外から帰ってきてからようやく熱が引いて気が済んで、部屋が事後のあったかくて少し湿った甘い空気に満たされる。 香澄の体をベッドにおろして寝かせて香澄の上にぐったり脱力して全体重をかけた。「…お…おもぃ…」僕の下で香澄が幸せそうに笑いながらそう言ったから、体を起こして香澄の髪の毛を優しく梳きながら途切れた言葉を言い直す。自然と顔がほわほわ緩んで、愛しさで目が細まって微笑む。 「香澄…好きだよ…かわいいね。誰よりも何よりも……愛してる…」
時刻はとっくに深夜を回っていたから、香澄は疲れてそのまま僕の首筋に顔を寄せて眠った。仕事の疲れもあるだろうし、そのまま寝かせた。 僕は香澄の頭を撫でながらしばらく一人で起きていた。 香澄があんなふうに所構わずしたがるなんて珍しい。話を聞こうとしても本人は何もないようなことを言っていたし…。…何かあるなら話してくれる。約束をしたばかりなのに香澄のことを疑いたくない。 今夜は香澄の要求がかわいくて、僕もしたくてそれに乗っかるみたいな対応をしてしまった。朝起きて、僕がせめて訊けることっていうと、なんだろう…
翌朝、昨日の香澄の言葉の中から少し尋ねられそうなことを見つけて、一緒に朝食をとりながら香澄の様子を探るように聞いてみた。 「香澄。昨日話してたことだけど、僕と香澄の関係を知ってる友達、…って言ったっけ。そのお友達は、それをどこから知ったのかな」 香澄は一瞬だけ食事の手を止めて、昨日を思い出すような顔をしたあとに「…わかんない…。俺がその場で少し動揺したせいかもしれないけど、…そのことは何も言ってなかった」って答えた。 「そう…、その子少し気になるね。僕らは外ではしっかり気をつけて親子で通してるし」 「…うん」 その件なら僕は誰にも話してない。…まあ情香ちゃんは知ってる、冷泉や山雪には話してはないけど知ってるも同然だろうし、稔さんに至っては当然知ってる、んだろうけど… この中の誰も、それを言いふらしたりする人たちじゃない。 ………僕と香澄の関係を知る友達…、昨日の香澄の様子と関係あるのかな 何にしても、香澄が傷つくようなことにならなければ…いいんだけど……
続き
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aoi--zine · 9 months
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夕すぎより降り出した雨は、刺すように続いている。私は歩いているが、すっかり濡れた服を着ながら、今すぐに脱いでしまえといった強引な気持ちにもなるけれど中々にそうはいかない。それは何匹か、しかしかなり多くの蟾蜍が、蛞蝓が、まいまいなどがが皮膚の至る処で図太い居眠りをしているのに一匹ずつそれらを引き剥がすような膨大な作業を想像し、諦め私はただ、今の私を犠牲にし、今の私をただ受け入れるしかないように思えるからだ。散るような雲が右から刻々と形を変えて、左へ行っているのに気がつき、漸く雨も止むようだと気持ちから先に晴れてゆく心地もしている。しかしそれもどれ程後のことなのかわからない。それならばなお、繰り返し、今の自分がどうであるかということを咀嚼する様に認めてやっと、時間というものを意識せずに済むのだ。それでも、それでもやはり私は、遠からぬ未来、白雲の隙間を縫って私にぶつかって来るような、無遠慮な太陽を全身で浴びているところを想像し、正確に言えば硝子のことを思い浮かべてこの妙にじっとりとした生活を見送るのである。
大きな夢を見ている若者たちは、そのため、働かなくては当日ですら暮らしていくことも叶わない。朝から働き、夜まで働き、まして夜から働き、二十五歳の、眩しく、透明で美しい時間は長方形の皺寄った、手の黒くなる様な円形の輪郭を与えられ、実際に我々の手中からこちらを見つめている。いや、違って見つめているのは私か。何か言いたげに、それでいて何も言わないかつて時間だった金は、甘い味がする。貴様も舐めてみるといい。少女の股の若々しく酸い味や、明後日食う肉脂の味、布団で鎮座する、安全な午睡の塩っぱい涎の味が、一切合わさり甘い味がする。酒は旨いが、苦労した金で飲む酒は殊更である。気がつくと私や、彼らは便器の中を覗き込んで、貴様に向かって叫ぶみたいにして、私たちしか知らない言語で「殺してやる」と、繰り返し、また繰り返す。目に浮かぶものが涙でないならあれは何か。それは彼方である。海水を掬って、掌の隙間から零れた点滴を逆さまに貫通して来た楽園が尖って、両目に突き刺さっている。時系は最早無意味に右へ行き、過去へ戻っていく。そこに立っているのが、せめて自分の愛する人であればいいと、立て掛けられたような依代に両肩をだらし無く預けて、真っ白のエネルギーを屑籠に堆く積み上げていくのである。
「今日は大変でした。私には黄色がいる、それは高木くんも承知のことかと思われますが、とにかく私の彫刻を買いたいって言ってしつこいやつがいたのです。私は一万でなら売ると何度も言いました。そうしたら急にあいつ、自分のポートフォリオなんて取り出してルックザットワーク!なんて言って結局自分の作品の話をしたがるんですもの。私はすごいね、かっこいいねなんて適当おべっかこいてたんだけど、あの手のやつには珍しくそういうのに聡いんだな。どの辺がいいだとかなぜそう思ったとか、ねちねち聞いてきてさ。俺はそれに説得力のあるようなこと言ってやり過ごしていたら今度はあんたの作品を見せなさいよっつって、見せたらこれを買いたい、一万でなら売る、私の作品を見ろ、この順を三繰りくらいしてたのさ?」
「ああ」
「するとベイビーがこっちに来てお友達?とかって聞くから俺は仕方なく、俺の彫刻が買いたいんだって説明してあげて、話の��れでさ、いや俺もわざとらしいとは思ったよ。けどとにかくベイビーは俺の彼女なんだってそいつに言ってやったらそいつ、I already know だなんて冷たく言い放った。冷えたね俺、いや熱かったね、あいつが放った言葉がベイビーの眉間に跳ね返って火花散らしてた、そんな感じだった」
私は自転車を押しながらそのことについて考えるのだが、ケイが本気で言っているのか、冗談として言っているのか分からない。結局何も言えなかった。ちょっとコンビニと言い残し、蛍光の直方体に吸い込まれていくケイの背中だけ妙に暗かった。ケイが私に追い付く前に自宅へ辿り着いた。シャワーを浴びて部屋の戸を開けるとケイは私の部屋で火のついた煙草を咥えて、熱心に何かをノートに描いていた。骨董市に一緒に行った時に買った、白い表紙に古い紙のノートで、背表紙にローマ字で論外と書かれた瀟洒なノートで、私はそのノートが気に入っている。なかには良いものしか描かれていないからだ。ケイのまえがみを潜って自由な煙は、次々に形をなくしていき、シェードの下で行き場のなさそうにうろうろとしている。いつになったら私は正直になれるのだろうか。ケイは決してノートを私に見せようとはせず、ただ黙りこくって真剣にノートを埋めていた。
つまり145番辺りで。なんて言って通じる者たちの間には不思議な了解がある。それは、今生きているのが何らかの偶然の加減だということである。
我々は109番と、110番に腰掛けて順繰り根元まで吸い干した煙草を海に投げ捨てていた。水平線は燃え、そして暗闇に溶けていった。
「昔付き合っていた女が、女の部屋で知らない男と寝ているのを見た時に私が何を思ったかわかりますか」
兎の瞳のように白々しくルークはそう私に問うた。
「私はすぐさま自分を客観したのです。きっとそれがよくなかった。自分の身体を盾に後ろ図去し、精神として事実を見守ったのです。言いたいことはわかりますか?」
恐らく、と答えて一際高い波が私の履いたズボンの裾を染めた。私は反射するように体勢を変えた。何となくそんな自分を恥じて、失礼と言った。ルークは続けた。
「精神は傷つきません。観察するだけですから。ただし私の精神が私の身体に収まっているなら話は別で、点のような隙間を満たすのが悲しみや怒りです」
「喜びも同様ですか」
「はい、喜びもまたそのようです」
「だとしたら愛はどこにあるのですか」
「愛は在るものではなく、探すものではないですか?あなたがいま尋ねたように。目の前にあっては既に愛ではないはずです。浮気や不倫は簡単ですが、愛は難しい。空気を抱くのにも似た曖昧な理想の中浮気や不倫は最高として形を取ります。しかし愛は既にそこにあるから、既に愛ではないというジレンマを常に抱えている。私はそういった試みのような関係性に疲れたのでしょう。両方とも完璧ではないが、両方とも中々良いということに甘んじて、常に自分自身を防いでいるのです」
しばし独白が続き、私は思い切って口を開いた。
「何からですか」
愛からです、とルークは言わずに私の挑発を躱す余裕が彼の諦めの堅さを伺わせて私は悲しくなった。
「私は硝子の為なら傷つくことができます。私を笑いますか」
ルークは私に対して何も言わなかった。爪に電話をかけると言って、テトラポットを伝ってどこかへ行ってしまった。
57
沈黙の扉を開けると、ケイと黄色と、ルークを除くラタンタラの連中が下品に笑っているのを横目に沈黙のマスターが仕方なくグラスを磨いていた。私はカウンターの右端に座ると、驚くべき一、二の間でアイスコーヒーが給仕され、マスターは何もなかったようにまたグラスを磨き始めた。そのグラスは既に綺麗だよと声をかけると、汚くはないだろうねと言われ、その言葉の意味を考えた。マスターは思い出したようにこちらに急いで駆け寄って「あ、深い意味なんてないよ」と言ってまたグラスを磨き始めた。
「やっぱり僕は紙が好きですね、紙でないと見えない景色があります」とケイの声が聞こえる。
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