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#子連れ狼 死に風に向う乳母車
kaipanzero · 1 year
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Lone Wolf and Cub Baby Cart to Hades
子連れ狼 死に風に向う乳母車 (1972)
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イルカの家 The first chapter
イルカの家 ── あろ 海辺に近い東部では、暑さと生まれてきた子どもたちが寄り添い、漁師たちは生まれたての誕生に喜び、将来の事業と土地への愛を受け継いでいる。太陽が海面から昇る頃には黄身の色はすっかり色づいていたが、新子たちは世界に対する無限の好奇心を抱き、その好奇心こそが、親たちは成長の糧を海から得て、日の出と日の入りの時には生きていることと自然を感じることの奇妙さを、子供の頃の海への好奇心を思い起こしていた。 今日は大きな日で,豊作の喜びである。 子供たちは仲間に言い合い、高いところからビーチのエキサイティングな光景をどっと見ていました。 大人たちは浜辺で忙しく、彼らは短い時間内に魚を切り取り、箱に入れなければならない。子供たちは一方で大人たちの生存能力を学び、親の仕事を邪魔してはならない。 大収穫!二百匹以上のイルカが入り江に集まり、遠くの海に行くこともなく、船に乗ってすぐに、元気なイルカを銛で捕獲することができたのは、今年生まれたばかりの子供たちのために、そして成長していく若い少年たちのために、海の神ポセイドンの恵みだった。 漁民たちは、毎年海を敬い、祈りを捧げることによって、海の皇神の恵みを受けることができると信じている。それは彼らの自然への畏敬の最も敬虔で直接的な報いであり、町全体が来年の今頃まで生きるのに十分な自然の恵みである。 車が走っている間も、優秀なスタッフたちはあまり知られていない砂浜に向かっていた。ない商売の間に誠実に取引がなければ、3回の狼が来たように最終させてより大きな調整できる食べ物の運送会社の購買を放棄し、町にとって、采购商なしにどもった最古の年代に戻った——の少ない人は、治療のないお金、毎日未明、縦横無尽に海に、远くの地方性ハリケーンに会ったが、古代の伝説のあれらの海の怪物はすべて孤児が后代の楽しい幻想にあげることができて、あれは孤児として得ることができる最大の楽しい伝承です。 仕入先のFT社は今回の輸送を重視しており、地勢が離れているため、海のものの鮮度や食感は最高に違いないと考え、上層部が写真や映像を見た時点で、会議ですぐに輸送車の数を控えめにすることを決めた。 今日の収获の魚介類の多くのお金に换できる、これも糸守鎮なぜft会社との協力の理由は、より多くのお金のことは多くの食べ物、海洋の贈与は限られて、波の冬の恵みを適時にいつも、漁民らなければ分からないが、海洋と調和を節約との関係を食物の不足は、糸を守鎮の住民の冷たい、それはあまり良いことではない。 米会社の米は大陸から輸入され、でんぷん質が多く、住民がハリケーンの季節を乗り切れるほどだった。価格はかなりのもので、住民たちは子供たちと一緒に過ごす時間が多く、彼らは神の祭壇で老人から古代の皇帝や海洋の不思議な物語を聞くことができた。 子どもたちも元気にホタルを捕まえていますが、これは自然の恵みとお年寄りの知恵のおかげです。 漁師たちはもう一匹のイルカを漕いで砂浜に連れて行き、そこでイルカに新しい使命と死の意味を与えた。 岸の人用の锐利な刃イルカの生命を終え、それはとても上手と慈悲深いこと、良質の刀の質、海洋の生き物たちの苦痛を減らすことができる血液が流出したとき、イルカの死亡が、それらを一番優しいやり方で世界を離れ、それらの体は、新しい方式の昇華され、人々の祈りを得て、人間の感谢を受ける。 食べ物の前で涙を流す人は少ないが、海に対しては、イルカに対しては、人々は食卓の前に海に似た味を残す——イルカの献身に感謝する。 数百年前に、人々は無私に自分の一生を捧げて海洋を泳ぐ代価に哺乳中の母子のイルカを救うために1基の神棚を建てることができ(ありえ)て、次第に、1種の浪費であるようで、海は感謝する人類の祈りを聞いていないようです。樹木は霊でもあり、その存在は夏の木陰だけでなく、寒さをしのぐ丸太小屋の材料にもなる。 神棚の風習は次第に儀式に変わっていったが、それは糸守町の住民を結びつける行事であった。 イルカのヒレは速く平らに切り取られて、彼らは大陸人のようにヒレを残して、サメの体は海に戻って、浪費は糸が町の優秀な伝統を守るのではなくて、いつもより良い料理方法があって、自然は決して偶然に1種の浪費の可能性を提供しません。 魚の頭に沿って、斜めに切って、すばらしい赤い魚の身の膠を持ってイルカの脳の中で鎖をつけて、この美味は多くなくて、同じく非常に高価ではありませんが、FT会社と民族の習わしと伝統は1つの理念に食べ物の鮮度を保つことと異なる食感を升華させます。 続いて腹部の短い裂け目を開いて、食べられない胃や腸を舎てて、海に帰って、再びその命を、海は優しい態度ですべてを抱擁する。 二百数十年前までは、イルカの内臓も捨てられなかったし、貧乏人でも肥えたものが食べられた。お金持ちの家であれば、毎日の安全を守る自分の家族のユニークなメンバーに与えられていたかもしれない。使えなくなった腹や腸は、犬たちが一年間留守番をしてくれた恩返しになる。海が海辺の住民に海を守る見返りを無私に提供するように。 贫しい人々の多くは惜しんで、彼らが金品を残して、商売に良いのインテリアは、家族のために加え、数件の新しい服、学費を読む子ども塾に提供するために、古代の先生は会长に住むあるところに、先生が完成した彼の使命は、また新しいところから彼の使命に行くと、多くの子供を認識の字で、多くの子どもが书写文章。 先生が久しぶりに来ても、子どもに世界の捉え方を教えることができます。 これは先生の光栄で、彼は人類文明の認知に従って文化を伝承しています。 今の学校の先生たちに忙しく走り回ってでなくて、子供のごとに機会が理想の大学に合格する、异说専属のではなく、勤労と克己と坚持こそ過程で、子供たちが浪人多くの次は、彼らの亲は老人を楽しむ知恵の庇護を続けることができれば、糸守鎮学のある青年が希望すれば海洋と耕地を守り続ける大都市から帰国し、子供たちには未来がある。 イルカの腹部の肉を無駄にすることはできません、精緻なカット技術は肉の異なる部位をわずか20分ですばらしい収獲になります、尾の部分はとても安くなります、そこは多くの人が好む部位ではありませんが、シチューは別の味です。で大型のマグロやサーモンは、鱼眼処理の必要もない、と鱈の頭に入れて氷の内、スーパーでは、経済の规则は、鱈の頭をそれぞれ異なる部位に感谢者の選択。 イルカの腹には脂がのっていて、揚げたての香りが家族を楽しませてくれます。 魚の背の部位の肉は良い、スーパーマーケットの供給が不足して、これらの良い栄養は海洋が人類に与える前に苦労して、人々は消費する時海洋の難しさを感じることができて、調理過程の慎重さは海を離れた后にまだ存在することができる畏敬の念。 短い時間に、一匹のイルカ生命の使命を讴歌するを得て、それの肉を入れて氷され、多くの若者が室内へされ、氷が溶けない後の美味を失った。 ますます多くの町民がやってきて、家に備えつけの道具を手に入れ、自然の恵みをすばやく切り取り、保護しなければならなかったが、その恵みは、彼らが夜な夜な祈りと家族への保証をしたすべての行為のお返しに違いなかった。 砂浜と海の中ですべて新年のように楽しく活発な赤色を塗って、イルカの生命はここで海を讴歌して、彼らは自分の血と肉を献上して、感謝する人々を供養しています。 子供たちはとても喜んで、子供たちの喜びと興奮に感染されているようで、イルカの霊はもっと多くの仲間を呼んで砂浜に来て、自分の霊体を捧げて、彼らはこのように高尚で、驚嘆させる無私です。 作家が賛美イルカによる新入生、舞踊者がイルカの舞台で演じ続けになる海洋霊体の世界にしばし遊んだ。 共同の協力は生産方式であり、住民たちは手っ取り早くイルカを捕獲し、最も厳格な態度で霊体を切り取る。百数十匹のイルカはすでに室内に放りこまれていた。さらに遠くを眺めてみると、海にはもっと多くのイルカがいて、新生を待ち望んでいる。それが彼らの使命であり、古代の移動の先生のように崇高である。 仕事は午後四時まで忙しく、FT社の車は凍ったイルカの肉をひっきりなしに運んでいたし、運転手もひっきりなしにやってきた。彼らは今回のポセイドン提督の海での歓喜を過小評価していた。 もう十分だ、人は貪るべきではない、海辺に住む者はもっと素養の保持を理解できる。 浜辺はまた近くのイルカの呼びかけの唇を見ることができて、彼らはとても気前がよくて、十分で、残りのイルカは海の新しい任務に馴れ馴れしくて、彼らは離れて、他の場所に行きます。 さんびゃく件のイルカが十分に糸守鎮の住民は3年まで生き、来年もこの贈与すれば、この町の一部の富裕なる——それは不思议の大変化を——富裕と十分な物資を保有するのが容易ではない、だからいくら来年もない波の冬の贈与し、数日内に必ず異色の行事がある。 彼らはバイヤーと一緒に酒宴を楽しみ、バイヤーも家族連れの軽い海辺の旅で長い労苦を終える。 一風変わったイベントに違いない。子供たちの喜びと興奮は更に多くの霊感をもたらして、神の所の巫女は全く新しい方法でイルカの魂を召喚して、彼らがここから無事に海に戻るこ��ができるようにします——生まれ変わって、泳ぎます。
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この本を続けて書こうと思っていたのですが、なかなかアイデアが出てこなかったので、午後に第1章を書き終えて、次の時間に完成させることにしました。 この本は海辺に住む愛すべき人々に捧げます。 日本に捧ぐ
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cultfaction · 3 years
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Lone Wolf and Cub: Baby Cart to Hades (1972)
Lone Wolf and Cub: Baby Cart to Hades (1972)
Director Kenji Misumi returns for the third instalment of the Lonewolf and Cub series – Lone Wolf and Cub: Baby Cart to Hades. Tomisaburo Wakayama and Akihiro Tomikawa also return and reprise their repective roles as father and son Ittō and Daigoro Ogami. This time they are travelling by water when Ittō notices ome bamboo reeds are trailing the boat in the reflection on his blade, this can only…
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defconprime · 2 years
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TREKMATCH! # 730 - Enterprise's "Sleeping Dogs" vs 1972's Lone Wolf And Cub: Baby Cart To Hades
LONE WOLF AND CUB: BABY CART TO HADES aka 子連れ狼 死に風に向う乳母車 aka WOLF WITH CHILD IN TOW: PERAMBULATOR AGAINST THE WINDS OF DEATH
Ogami Itto and Daigaro save a lady from being tortured (by Ogami Itto taking on the torture himself), and so impress the torturers that they hire him to get their clan's honor back. The plot is a little more serpentine than usual but the movie is saved whenever Itto has to fight like a hundred assassins in the final scene - it's incredible!
GRADE: A-
STAR TREK: ENTERPRISE - "Sleeping Dogs"
Enterprise finds a spaceship trapped in the upper atmosphere of a gas giant but uh oh! Looks kinda Klingon to me and Klingons don't like being rescued!
GRADE: C+
Victory to Lone Wolf and Cub, so Trek is up 366-364!
Lone Wolf and Cub us up 3-0!
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eigabaka · 5 years
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子連れ狼 死に風に向う乳母車 (Lone Wolf and Cub: Baby Cart to Hades) (1972; Misumi Kenji)
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groyanderson · 3 years
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☆プロトタイプ版☆ ひとみに映る影シーズン2 第七話「復活、ワヤン不動」
☆プロトタイプ版☆ こちらは電子書籍「ひとみに映る影 シーズン2」の 無料プロトタイプ版となります。 誤字脱字等修正前のデータになりますので、あしからずご了承下さい。
☆ここから買おう☆
(シーズン2あらすじ) 私はファッションモデルの紅一美。 旅番組ロケで訪れた島は怪物だらけ!? 霊能者達の除霊コンペとバッティングしちゃった! 実は私も霊感あるけど、知られたくないなあ…… なんて言っている場合じゃない。 諸悪の根源は恩師の仇、金剛有明団だったんだ! 憤怒の化身ワヤン不動が、今度はリゾートで炸裂する!!
pixiv版 (※内容は一緒です。)
དང་པོ་
 ニライカナイから帰還した私達はその後、魔耶さんに呼ばれて食堂へ向かう。食堂内では五寸釘愚連隊と生き残った河童信者が集合していた。更に最奥のテーブルには、全身ボッコボコにされたスーツ姿の男。バリカンか何かで雑に剃り上げられた頭頂部を両手で抑えながら、傍らでふんぞり返る禍耶さんに怯えて震えている。 「えーと……お名前、誰さんでしたっけ」  この人は確か、河童の家をリムジンに案内していたアトム社員だ。特徴的な名前だった気はするんだけど、思い出せない。 「あっ……あっ……」 「名乗れ!」 「はひいぃぃ! アトムツアー営業部の五間擦平雄(ごますり ひらお)と申します!」  禍耶さんに凄まれ、五間擦氏は半泣きで名乗った。少なくともモノホンかチョットの方なんだろう。すると河童信者の中で一番上等そうなバッジを付けた男が席を立ち、机に手をついて私達に深々と頭を下げた。 「紅さん、志多田さん。先程は家のアホ大師が大っっっ変ご迷惑をおかけ致しました! この落とし前は我々河童の家が後日必ず付けさせて頂きます!」 「い、いえそんな……って、その声まさか、昨年のお笑いオリンピックで金メダルを総ナメしたマスク・ド・あんこう鍋さんじゃないですか! お久しぶりですね!?」  さすがお笑い界のトップ組織、河童の家だ。ていうか仕事で何度か会ったことあるのに素顔初めて見た。 「あお久しぶりっす! ただこちらの謝罪の前に、お二人に話さなきゃいけない事があるんです。ほら説明しろボケナスがッ!!」  あんこう鍋さんが五間擦氏の椅子を蹴飛ばす。 「ぎゃひぃ! ごご、ご説明さひぇて頂きますぅぅぅ!!」  五間擦氏は観念して、千里が島とこの除霊コンペに関する驚愕の事実を私達に洗いざらい暴露した。その全貌はこうだ。  千里が島では散減に縁を奪われた人間が死ぬと、『金剛の楽園』と呼ばれる何処かに飛び去ってしまうと言い伝えられている。そうなれば千里が島には人間が生きていくために必要な魂の素が枯渇し、乳幼児の生存率が激減してしまうんだ。そのため島民達は縁切り神社を建て、島外の人々を呼びこみ縁を奪って生き延びてきたのだという。  アトムグループが最初に派遣した建設会社社員も伝説に違わず祟られ、全滅。その後も幾つかの建設会社が犠牲になり、ようやく事態を重く受け止めたアトムが再開発中断を検討し始めた頃。アトムツアー社屋に幽霊が現れるという噂が囁かれ始めた。その霊は『日本で名のある霊能者達の縁を散減に献上すれば千里が島を安全に開発させてやろう』と宣うらしい。そんな奇妙な話に最初は半信半疑だった重役達も、『その霊がグループ重役会議に突如現れアトムツアーの筆頭株主を目の前で肉襦袢に変えた』事で霊の要求を承認。除霊コンペティションを行うと嘘の依頼をして、日本中から霊能者を集めたのだった。  ところが行きの飛行機で、牛久大師は袋の鼠だったにも関わらず中級サイズの散減をあっさり撃墜してしまう。その上業界ではインチキ疑惑すら噂されていた加賀繍へし子の取り��きに散減をけしかけても、突��謎のレディース暴走族幽霊が現れて返り討ちにされてしまった。度重なる大失態に激怒した幽霊はアトムツアーイケメンライダーズを全員肉襦袢に変えて楽園へ持ち帰ってしまい、メタボ体型のため唯一見逃された五間擦氏はついに牛久大師に命乞いをする。かくして大師は大散減を退治すべく、祠の封印を剥がしたのだった。以上の話が終わると、私は五間擦氏に馬乗りになって彼の残り少ない髪の毛を引っこ抜き始めた。 「それじゃあ、大師は初めから封印を解くつもりじゃなかったんですか?」 「ぎゃあああ! 毛が毛が毛がああぁぁ!!」  あんこう鍋さんは首を横に振る。 「とんでもない。あの人は力がどうとか言うタイプじゃありません。地上波で音波芸やろうとしてNICを追放されたアホですよ? 我々はただの笑いと金が大好きなぼったくりカルトです」 「ほぎゃああぁぁ! 俺の貴重な縁があぁぁ、抜けるウゥゥーーーッ!!」 「そうだったんですね。だから『ただの関係者』って言ってたんだ……」  そういう事だったのか。全ては千里が島、アトムグループ、ひいては金剛有明団までもがグルになって仕掛けた壮大なドッキリ……いや、大量殺人計画だったんだ! 大師も斉二さんもこいつらの手の上で踊らされた挙句逝去したとわかった以上、大散減は尚更許してはおけない。  魔耶さんと禍耶さんは食堂のカウンターに登り、ハンマーを掲げる。 「あなた達。ここまでコケにされて、大散減を許せるの? 許せないわよねぇ?」 「ここにいる全員で謀反を起こしてやるわ。そこの祝女と影法師使いも協力しなさい」  禍耶さんが私達を見る。玲蘭ちゃんは数珠を持ち上げ、神人に変身した。 「全員で魔物(マジムン)退治とか……マジウケる。てか、絶対行くし」 「その肉襦袢野郎とは個人的な因縁もあるんです。是非一緒に滅ぼさせて下さい!」 「私も! さ、さすがに戦うのは無理だけど……でもでも、出来ることはいっぱい手伝うよ!」  佳奈さんもやる気満々のようだ。 「決まりね! そうしたら……」 「その作戦、私達も参加させて頂けませんか?」  食堂入口から突然割り込む声。そこに立っていたのは…… 「斉一さん!」「狸おじさん!」  死の淵から復活した後女津親子だ! 斉一さんは傷だらけで万狸ちゃんに肩を借りながらも、極彩色の細かい糸を纏い力強く微笑んでいる。入口近くの席に座り、経緯を語りだした。 「遅くなって申し訳ない。魂の三分の一が奪われたので、万狸に体を任せて、斉三と共にこの地に住まう魂を幾つか分けて貰っていました」  すると斉一さんの肩に斉三さんも現れる。 「診療所も結界を張り終え、とりあえず負傷者の安全は確保した。それと、島の魂達から一つ興味深い情報を得ました」 「聞かせて、狸ちゃん」  魔耶さんが促す。 「御戌神に関する、正しい歴史についてです」  時は遡り江戸時代。そもそも江戸幕府征服を目論んだ物の怪とは、他ならぬ金剛有明団の事だった。生まれた直後に悪霊を埋め込まれた徳松は、ゆくゆくは金剛の���のままに動く将軍に成長するよう運命付けられていたんだ。しかし将軍の息子であった彼は神職者に早急に保護され、七五三の儀式が行われる。そこから先の歴史は青木さんが説明してくれた通り。けど、この話には続きがあるらしい。 「大散減の祠などに、星型に似たシンボルを見ませんでしたか? あれは大散減の膨大な力の一部を取り込み霊能力を得るための、給電装置みたいな物です。もちろんその力を得た者は縁が失せて怪物になるのですが、当時の愚か者共はそうとは知らず、大散減を『徳川の埋蔵金』と称し挙って島に移住しました」  私達したたびが探していた徳川埋蔵金とはなんと、金剛の膨大な霊力と衆生の縁の塊、大散減の事だったんだ。ただ勿論、霊能者を志し島に近付いた者達はまんまと金剛に魂を奪われた。そこで彼らの遺族は風前の灯火だった御戌神に星型の霊符を貼り、自分達の代わりに島外の人間から縁を狩る猟犬に仕立て上げたんだ。こうして御戌神社ができ、御戌神は地中で飢え続ける大散減の手足となってせっせと人の縁を奪い続けているのだという。 「千里が島の民は元々霊能者やそれを志した者の子孫です。多少なりとも力を持つ者は多く、彼らは代々『御戌神の器』を選出し、『人工転生』を行ってきました」  斉一さんが若干小声で言う。人工転生。まだ魂が未発達の赤子に、ある特定の幽霊やそれに纏わる因子を宛てがって純度の高い『生まれ変わり』を作る事。つまり金剛が徳松に行おうとしたのと同じ所業だ。 「じゃあ、今もこの島のどこかに御戌様の生まれ変わりがいるんですか?」  佳奈さんは飲み込みが早い。 「ええ。そして御戌神は、私達が大散減に歯向かえば再び襲ってきます。だからこの戦いでは、誰かが対御戌神を引き受け……最悪、殺生しなければなりません」 「殺生……」  生きている人間を、殺す。死者を成仏させるのとは訳が違う話だ。魔耶さんは胸の釘を握りしめた。 「そのワンちゃん、なんて可哀想なの……可哀想すぎる。攻撃なんて、とてもできない」 「魔耶、今更甘えた事言ってんじゃないわよ。いくら生きてるからって、中身は三百年前に死んだバケモノよ! いい加減ラクにしてやるべきだわ」 「でもぉ禍耶、あんまりじゃない! 生まれた時から不幸な運命を課せられて、それでも人々のために戦ったのに。結局愚かな連中の道具にされて、利用され続けているのよ!」 (……!)  道具。その言葉を聞いた途端、私は心臓を握り潰されるような恐怖を覚えた。本来は衆生を救うために手に入れた力を、正反対の悪事に利用されてしまう。そして余所者から邪尊(バケモノ)と呼ばれ、恐れられるようになる……。 ―テロリストですよ。ドマル・イダムという邪尊の力を操ってチベットを支配していた、最悪の独裁宗派です―  自分の言った言葉が心に反響する。御戌神が戦いの中で見せた悲しそうな目と、ニライカナイで見たドマルの絶望的な目が日蝕のように重なる。瞳に映ったあの目は……私自身が前世で経験した地獄の、合わせ鏡だったんだ。 「……魔耶さん、禍耶さん。御戌神は、私が相手をします」 「え!?」 「正気なの!? 殺生なんて私達死者に任せておけばいいのよ! でないとあんた、殺人罪に問われるかもしれないのに……」  圧。 「ッ!?」  私は無意識に、前世から受け継がれた眼圧で総長姉妹を萎縮させた。 「……悪魔の心臓は御仏を産み、悪人の遺骨は鎮魂歌を奏でる。悪縁に操られた御戌神も、必ず菩提に転じる事が出来るはずです」  私は御戌神が誰なのか、確証を持っている。本当の『彼』は優しくて、これ以上金剛なんかの為に罪を重ねてはいけない人。たとえ孤独な境遇でも人との縁を大切にする、子犬のようにまっすぐな人なんだ。 「……そう。殺さずに解決するつもりなのね、影法師使いさん。いいわ。あなたに任せます」  魔耶さんがスレッジハンマーの先を私に突きつける。 「失敗したら承知しない。私、絶対に承知しないわよ」  私はそこに拳を当て、無言で頷いた。  こうして話し合いの結果、対大散減戦における役割分担が決定した。五寸釘愚連隊と河童の家、玲蘭ちゃんは神社で大散減本体を引きずり出し叩く。私は御戌神を探し、神社に行かれる前に説得か足止めを試みる。そして後女津家は私達が解読した暗号に沿って星型の大結界を巡り、大散減の力を放出して弱体化を図る事になった。 「志多田さん。宜しければ、お手伝いして頂けませんか?」  斉一さんが立ち上がり、佳奈さんを見る。一方佳奈さんは申し訳なさそうに目を伏せた。 「で……でも、私は……」  すると万狸ちゃんが佳奈さんの前に行く。 「……あのね。私のママね、災害で植物状態になったの。大雨で津波の警報が出て、パパが車で一生懸命高台に移動したんだけど、そこで土砂崩れに遭っちゃって」 「え、そんな……!」 「ね、普通は不幸な事故だと思うよね。でもママの両親、私のおじいちゃんとおばあちゃん……パパの事すっごく責めたんだって。『お前のせいで娘は』『お前が代わりに死ねば良かったのに』みたいに。パパの魂がバラバラに引き裂かれるぐらい、いっぱいいっぱい責めたの」  昨晩斉三さんから聞いた事故の話だ。奥さんを守れなかった上にそんな言葉をかけられた斉一さんの気持ちを想うと、自分まで胸が張り裂けそうだ。けど、奥さんのご両親が取り乱す気持ちもまたわかる。だって奥さんのお腹には、万狸ちゃんもいたのだから……。 「三つに裂けたパパ……斉一さんは、生きる屍みたいにママの為に無我夢中で働いた。斉三さんは病院のママに取り憑いたまま、何年も命を留めてた。それから、斉二さんは……一人だけ狸の里(あの世)に行って、水子になっちゃったママの娘を育て続けた」 「!」 「斉二さんはいつも言ってたの。俺は分裂した魂の、『後悔』の側面だ。天災なんて誰も悪くないのに、目を覚まさない妻を恨んでしまった。妻の両親を憎んでしまった。だからこんなダメな狸親父に万狸が似ないよう、お前をこっちで育てる事にしたんだ。って」  万狸ちゃんが背筋をシャンと伸ばし、顔を上げた。それは勇気に満ちた笑顔だった。 「だから私知ってる。佳奈ちゃんは一美ちゃんを助けようとしただけだし、ぜんぜん悪いだなんて思えない。斉二さんの役割は、完璧に成功してたんだよ」 「万狸ちゃん……」 「あっでもでも、今回は天災じゃなくて人災なんだよね? それなら金剛有明団をコッテンパンパンにしないと! 佳奈ちゃんもいっぱい悲しい思いした被害者でしょ?」  万狸ちゃんは右手を佳奈さんに差し出す。佳奈さんも顔を上げ、その手を強く握った。 「うん。金剛ぜったい許せない! 大散減の埋蔵金、一緒にばら撒いちゃお!」  その時、ホテルロビーのからくり時計から音楽が鳴り始めた。曲は民謡『ザトウムシ』。日没と大散減との対決を告げるファンファーレだ。魔耶さんは裁判官が木槌を振り下ろすように、机にハンマーを叩きつけた! 「行ぃぃくぞおおおぉぉお前らああぁぁぁ!!!」 「「「うおおぉぉーーーっ!!」」」  総員出撃! ザトウムシが鳴り響く逢魔が時の千里が島で今、日本最大の除霊戦争が勃発する!
གཉིས་པ་
 大散減討伐軍は御戌神社へ、後女津親子と佳奈さんはホテルから最寄りの結界である石見沼へと向かった。さて、私も御戌神の居場所には当てがある。御戌神は日蝕の目を持つ獣。それに因んだ地名は『食虫洞』。つまり、行先は新千里が島トンネル方面だ。  薄暗いトンネル内を歩いていると、電灯に照らされた私の影が勝手に絵を描き始めた。空で輝く太陽に向かって無数の虫が冒涜的に母乳を吐く。太陽は穢れに覆われ、光を失った日蝕状態になる。闇の緞帳(どんちょう)に包まれた空は奇妙な星を孕み、大きな獣となって大地に災いをもたらす。すると地平線から血のように赤い月が昇り、星や虫を焼き殺しながら太陽に到達。太陽と重なり合うやいなや、天上天下を焼き尽くすほどの輝きを放つのだった……。  幻のような影絵劇が終わると、私はトンネルを抜けていた。目の前のコンビニは既に電気が消えている。その店舗全体に、腐ったミルクのような色のペンキで星型に線を一本足した記号が描かれている。更に接近すると、デッキブラシを持った白髪の偉丈夫が記号を消そうと悪戦苦闘しているのが見えた。 「あ、紅さん」  私に気がつき振り返った青木さんは、足下のバケツを倒して水をこぼしてしまった。彼は慌ててバケツを立て直す。 「見て下さい。誰がこんな酷い事を? こいつはコトだ」  青木さんはデッキブラシで星型の記号を擦る。でもそれは掠れすらしない。 「ブラシで擦っても? ケッタイな落書きを……っ!?」  指で直接記号に触れようとした青木さんは、直後謎の力に弾き飛ばされた。 「……」  青木さんは何かを思い出したようだ。 「紅さん。そういえば僕も、ケッタイな体験をした事が」  夕日が沈んでいき、島中の店や防災無線からはザトウムシが鳴り続ける。 「犬に吠えられ、夜中に目を覚まして。永遠に飢え続ける犬は、僕のおつむの中で、ひどく悲しい声で鳴く。それならこれは幻聴か? 犬でないなら幽霊かもだ……」  青木さんは私に背を向け、沈む夕日に引き寄せられるように歩きだした。 「早くなんとかせにゃ。犬を助けてあげなきゃ、僕までどうにかなっちまうかもだ。するとどこからか、目ん玉が潰れた双頭の毛虫がやって来て、口からミルクを吐き出した。僕はたまらず、それにむしゃぶりつく」  デッキブラシから滴った水が地面に線を引き、一緒に夕日を浴びた青木さんの影も伸びていく。 「嫌だ。もう犬にはなりたくない。きっとおっとろしい事が起きるに違いない。満月が男を狼にするみたいに、毛虫の親玉を解き放つなど……」 「青木さん」  私はその影を呼び止めた。 「この落書きは、デッキブラシじゃ落とせません」 「え?」 「これは散減に穢された縁の母乳、普通の人には見えない液体なんです」  カターン。青木さんの手からデッキブラシが落ちた途端、全てのザトウムシが鳴り止んだ。青木さんはゆっくりとこちらへ振り向く。重たい目隠れ前髪が狛犬のたてがみのように逆立ち、子犬のように輝く目は濁った穢れに覆われていく。 「グルルルル……救、済、ヲ……!」  私も胸のペンダントに取り付けたカンリンを吹いた。パゥーーー……空虚な悲鳴のような音が響く。私の体は神経線維で編まれた深紅の僧衣に包まれ、激痛と共に影が天高く燃え上がった。 「青木さん。いや、御戌神よ。私は紅の守護尊、ワヤン不動。しかし出来れば、お前とは戦いたくない」  夕日を浴びて陰る日蝕の戌神と、そこから伸びた赤い神影(ワヤン)が対峙する。 「救済セニャアアァ!」 「そうか。……ならば神影繰り(ワヤン・クリ)の時間だ!」  空の月と太陽が見下ろす今この時、地上で激突する光の神と影の明王! 穢れた色に輝く御戌神が突撃! 「グルアアァァ!」  私はティグクでそれをいなし、黒々と地面に伸びた自らの影を滑りながら後退。駐車場の車止めをバネに跳躍、傍らに描かれた邪悪な星目掛けてキョンジャクを振るった。二〇%浄化! 分解霧散した星の一片から大量の散減が噴出! 「マバアアアァァ!!」「ウバアァァァ!」  すると御戌神の首に巻かれた幾つもの頭蓋骨が共鳴。ケタケタと震えるように笑い、それに伴い御戌神も悶絶する。 「グルアァァ……ガルァァーーーッ!!」  咆哮と共に全骨射出! 頭蓋骨は穢れた光の尾を引き宙を旋回、地を這う散減共とドッキングし牙を剥く! 「がッは!」  毛虫の体を得た頭蓋骨が飛び回り、私の血肉を穿つ。しかし反撃に転じる寸前、彼らの正体を閃いた。 「さては歴代の『器』か」  この頭蓋骨らは御戌神転生の為に生贄となった、どこの誰が産んだかもわからない島民達の残滓だ。なら速やかに解放せねばなるまい! 人頭毛虫の猛攻をティグクの柄やキョンジャクで防ぎながら、ティグクに付随する旗に影炎を着火! 「お前達の悔恨を我が炎の糧とする! どおぉりゃああぁーーーーっ!!」   ティグク猛回転、憤怒の地獄大車輪だ! 飛んで火に入る人頭毛虫らはたちどころに分解霧散、私の影体に無数の苦痛と絶望と飢えを施す! 「クハァ……ッ! そうだ……それでいい。私達は仲間だ、この痛みを以て金剛に汚された因果を必ずや断ち切ってやろう! かはあぁーーーっはーーっはっはっはっはァァーーッ!!!」  苦痛が無上の瑜伽へと昇華しワヤン不動は呵呵大笑! ティグクから神経線維の熱線が伸び大車輪の火力を増強、星型記号を更に焼却する! 記号は大文字焼きの如く燃え上がり穢れ母乳と散減を大放出! 「ガウルル、グルルルル!」  押し寄せる母乳と毛虫の洪水に突っ込み喰らおうと飢えた御戌神が足掻く。だがそうはさせるものか、私の使命は彼を穢れの悪循環から救い出す事だ。 「徳川徳松ゥ!」 「!」  人の縁を奪われ、畜生道に堕ちた哀しき少年の名を呼ぶ。そして丁度目の前に飛んできた散減を灼熱の手で掴むと、轟々と燃え上がるそれを遠くへ放り投げた! 「取ってこい!」 「ガルアァァ!!」  犬の本能が刺激された御戌神は我を忘れ散減を追う! 街路樹よりも高く跳躍し口で見事キャッチ、私目掛けて猪突猛進。だがその時! 彼の本体である衆生が、青木光が意識を取り戻した! (戦いはダメだ……穢れなど!)  日蝕の目が僅かに輝きを増す。御戌神は空中で停止、咥えている散減を噛み砕いて破壊した! 「かぁははは、いい子だ徳松よ! ならば次はこれだあぁぁ!!」  私はフリスビーに見立ててキョンジャクを投擲。御戌神が尻尾を振ってハッハとそれを追いかける。キョンジャクは散減共の間をジグザグと縫い進み、その軌跡を乱暴になぞる御戌神が散減大量蹂躙! 薄汚い死屍累々で染まった軌跡はまさに彼が歩んできた畜生道の具現化だ!! 「衆生ぉぉ……済度ぉおおおぉぉぉーーーーっ!!!」  ゴシャアァン!!! ティグクを振りかぶって地面に叩きつける! 視神経色の亀裂が畜生道へと広がり御戌神の背後に到達。その瞬間ガバッと大地が割れ、那由多度に煮え滾る業火を地獄から吹き上げた! ズゴゴゴゴガガ……マグマが滾ったまま連立する巨大灯篭の如く隆起し散減大量焼却! 振り返った御戌神の目に陰る穢れも、紅の影で焼き溶かされていく。 「……クゥン……」  小さく子犬のような声を発する御戌神。私は憤怒相を収め、その隣に立つ。彼の両眼からは止めどなく饐えた涙が零れ、その度に日蝕が晴れていく。気がつけば空は殆ど薄暗い黄昏時になっていた。闇夜を迎える空、赤く燃える月と青く輝く太陽が並ぶ大地。天と地の光彩が逆転したこの瞬間、私達は互いが互いの前世の声を聞いた。 『不思議だ。あの火柱見てると、ぼくの飢えが消えてく。お不動様はどんな法力を?』 ༼ なに、特別な力ではない。あれは慈悲というものだ ༽ 『じひ』  徳松がドマルの手を握った。ドマルの目の奥に、憎しみや悲しみとは異なる熱が込み上がる。 『救済の事で?』 ༼ ……ま、その類いといえばそうか。童よ、あなたは自分を生贄にした衆生が憎いか? ༽  徳松は首を横に振る。 『ううん、これっぽっちも。だってぼく、みんなを救済した神様なんだから』  すると今度はドマルが両手で徳松の手を包み、そのまま深々と合掌した。 ༼ なら、あなたはもう大丈夫だ。衆生との縁に飢える事は、今後二度とあるまい ༽
གསུམ་པ་
 時刻は……わからないけど、日は完全に沈んだ。私も青木さんも地面に大の字で倒れ、炎上するコンビニや隆起した柱状節理まみれの駐車場を呆然と眺めている。 「……アーーー……」  ふと青木さんが、ずっと咥えっ放しだったキョンジャクを口から取り出した。それを泥まみれの白ニットで拭い、私に返そうとして……止めた。 「……洗ってからせにゃ」 「いいですよ。この後まだいっぱい戦うもん」 「大散減とも? おったまげ」  青木さんにキョンジャクを返してもらった。 「実は、まだ学生の時……友達が僕に、『彼女にしたい芸能人は?』って質問を。けど特に思いつかなくて、その時期『非常勤刑事』やってたので紅一美ちゃんと。そしたら今回、本当にしたたびさんが……これが縁ってやつなら、ちぃと申し訳ないかもだ」 「青木さんもですか」 「え?」 「私も実は、この間雑誌で『好きな男性のタイプは何ですか』って聞かれて、なんか適当に答えたんですけど……『高身長でわんこ顔な方言男子』とかそんなの」 「そりゃ……ふふっ。いやけど、僕とは全然違うイメージだったかもでしょ?」 「そうなんですよ。だから青木さんの素顔初めて見た時、キュンときたっていうより『あ、実在するとこんな感じなの!?』って思っちゃったです。……なんかすいません」  その時、遠くでズーンと地鳴りのような音がした。蜃気楼の向こうに耳をそばだてると、怒号や悲鳴のような声。どうやら敵の大将が地上に現れたようだ。 「行くので?」 「大丈夫。必ず戻ってきます」  私は重い体を立ち上げ、ティグクとキョンジャクに再び炎を纏った。そして山頂の御戌神社へ出発…… 「きゃっ!」  しようとした瞬間、何かに服の裾を掴まれたかのような感覚。転びそうになって咄嗟にティグクの柄をつく。足下を見ると、小さなエネルギー眼がピンのように私の影を地面と縫いつけている。 ༼ そうはならんだろ、小心者娘 ༽ 「ちょ、ドマル!?」  一方青木さんの方も、徳松に体を勝手に動かされ始めた。輝く両目から声がする。 『バカ! あそこまで話しといて告白しねえなど!? このボボ知らず!』 「ぼっ、ぼっ、ボボ知らずでねえ! 嘘こくなぁぁ!」  民謡の『お空で見下ろす出しゃばりな月と太陽』って、ひょっとしたら私達じゃなくてこの前世二人の方を予言してたのかも。それにしてもボボってなんだろ、南地語かな。 ༼ これだよ ༽  ドマルのエネルギー眼が炸裂し、私は何故かまた玲蘭ちゃんの童貞を殺す服に身を包んでいた。すると何故か青木さんが悶絶し始めた。 「あややっ……ちょっと、ダメ! 紅さん! そんなオチチがピチピチな……こいつはコトだ!!」  ああ、成程。ボボ知らずってそういう…… 「ってだから、私の体で検証すなーっ! ていうか、こんな事している間にも上で死闘が繰り広げられているんだ!」 ༼ だからぁ……ああもう! 何故わからないのか! ヤブユムして行けと言っているんだ、その方が生存率上がるしスマートだろ! ༽ 「あ、そういう事?」  ヤブユム。確か、固い絆で結ばれた男女の仏が合体して雌雄一体となる事で色々と超越できる、みたいな意味の仏教用語……だったはず。どうすればできるのかまではサッパリわかんないけど。 「え、えと、えと、紅さん……一美ちゃん!」 「はい……う、うん、光君!」  両前世からプレッシャーを受け、私と光君は赤面しながら唇を近付ける。 『あーもー違う! ヤブユムっていうのは……』 ༼ まーまー待て。ここは現世を生きる衆生の好きにさせてみようじゃないか ༽  そんな事言われても困る……それでも、今私と光君の想いは一つ、大散減討伐だ。うん、多分……なんとかなる! はずだ!
བཞི་པ་
 所変わって御戌神社。姿を現した大散減は地中で回復してきたらしく、幾つか継ぎ目が見えるも八本足の完全体だ。十五メートルの巨体で暴れ回り、周囲一帯を蹂躙している。鳥居は倒壊、御戌塚も跡形もなく粉々に。島民達が保身の為に作り上げた生贄の祭壇は、もはや何の意味も為さない平地と化したんだ。  そんな絶望的状況にも関わらず、大散減討伐軍は果敢に戦い続ける。五寸釘愚連隊がバイクで特攻し、河童信者はカルトで培った統率力で彼女達をサポート。玲蘭ちゃんも一枚隔てた異次元から大散減を構成する無数の霊魂を解析し、虱潰しに破壊していく。ところが、 「あグッ!」  バゴォッ!! 大散減から三メガパスカル級の水圧で射出された穢れ母乳が、河童信者の一人に直撃。信者の左半身を粉砕! 禍耶さんがキュウリの改造バイクで駆けつける。 「河童信者!」 「あ、か……禍耶の姐御……。俺の、魂を……吸収……し……」 「何言ってるの、そんな事できるわけないでしょ!?」 「……大散、ぃに、縁……取られ、嫌、……。か、っぱは……キュウリ……好き……っか……ら…………」  河童信者の瞳孔が開いた。禍耶さんの唇がわなわなと痙攣する。 「河童って馬鹿ね……最後まで馬鹿だった……。貴方の命、必ず無駄にはしないわ!」  ガバッ、キュイイィィ! 息絶えて間もない河童信者の霊魂が分解霧散する前に、キュウリバイクの給油口に吸収される。ところが魔耶さんの悲鳴! 「禍耶、上ぇっ!!」 「!」  見上げると空気を読まず飛びかかってきた大散減! 咄嗟にバイクを発進できず為す術もない禍耶さんが絶望に目を瞑った、その時。 「……え?」  ……何も起こらない。禍耶さんはそっと目を開けようとする。が、直後すぐに顔を覆った。 「眩しっ! この光は……あああっ!」  頭上には朝日のように輝く青白い戌神。そしてその光の中、轟々と燃える紅の不動明王。光と影、男と女が一つになったその究極仏は、大散減を遥か彼方に吹き飛ばし悠然と口を開いた。 「月と太陽が同時に出ている、今この時……」 「瞳に映る醜き影を、憤怒の炎で滅却する」 「「救済の時間だ!!!」」  カッ! 眩い光と底知れぬ深い影が炸裂、落下中の大散減を再びスマッシュ! 「遅くなって本当にすみません。合体に手間取っちゃって……」  御戌神が放つ輝きの中で、燃える影体の私は揺らめく。するとキュウリバイクが言葉を発した。 <問題なし! だぶか登場早すぎっすよ、くたばったのはまだ俺だけです。やっちまいましょう、姐さん!> 「そうね。行くわよ河童!」  ドルルン! 輩悪苦満誕(ハイオクまんたん)のキュウリバイクが発進! 私達も共に駆け出す。 「一美ちゃん、火の準備を!」 「もう出来ているぞぉ、カハァーーーッハハハハハハァーーー!!」  ティグクが炎を噴く! 火の輪をくぐり青白い肉弾が繰り出す! 巨大サンドバッグと化した大散減にバイクの大軍が突撃するゥゥゥ!!! 「「「ボァガギャバアアアアァァアアア!!!」」」  八本足にそれぞれ付いた顔が一斉絶叫! 中空で巻き散らかされた大散減の肉片を無数の散減に変えた! 「灰燼に帰すがいい!」  シャゴン、シャゴン、バゴホオォン!! 御戌神から波状に繰り出される光と光の合間に那由多度の影炎を込め雑魚を一掃! やはりヤブユムは強い。光源がないと力を発揮出来ない私と、偽りの闇に遮られてしまっていた光君。二人が一つになる事で、永久機関にも似た法力を得る事が出来る!  大散減は地に叩きつけられるかと思いきや、まるで地盤沈下のように地中へ潜って行ってしまった。後を追えず停車した五寸釘愚連隊が舌打ちする。 「逃げやがったわ、あの毛グモ野郎」  しかし玲蘭ちゃんは不敵な笑みを浮かべた。 「大丈夫です。大散減は結界に分散した力を補充しに行ったはず。なら、今頃……」  ズドガアアァァァアン!!! 遠くで吹き上がる火柱、そして大散減のシルエット! 「イェーイ!」  呆然と見とれていた私達の後方、数分前まで鳥居があった瓦礫の上に後女津親子と佳奈さんが立っている。 「「ドッキリ大成功ー! ぽーんぽっこぽーん!」」  ぽこぽん、シャララン! 佳奈さんと万狸ちゃんが腹鼓を打ち、斉一さんが弦を爪弾く。瞬間、ドゴーーン!! 今度は彼女らの背後でも火柱が上がった! 「あのねあのね! 地図に書いてあった星の地点をよーく探したら、やっぱり御札の貼ってある祠があったの。それで佳奈ちゃんが凄いこと閃いたんだよ!」 「その名も『ショート回路作戦』! 紙に御札とぴったり同じ絵を写して、それを鏡合わせに貼り付ける。その上に私の霊力京友禅で薄く蓋をして、その上から斉一さんが大散減から力を吸収しようとする。だけど吸い上げられた大散減のエネルギーは二枚の御札の間で行ったり来たりしながら段々滞る。そうとは知らない大散減が内側から急に突進すれば……」  ドォーーン! 万狸ちゃんと佳奈さんの超常理論を実証する火柱! 「さすがです佳奈さん! ちなみに最終学歴は?」 「だからいちご保育園だってば~、この小心者ぉ!」  こんなやり取りも随分と久しぶりな気がする。さて、この後大散減は立て続けに二度爆発した。計五回爆ぜた事になる。地図上で星のシンボルを描く地点は合計六つ、そのうち一つである食虫洞のシンボルは私がコンビニで焼却したアレだろう。 「シンボルが全滅すると、奴は何処へ行くだろうか」  斉三さんが地図を睨む。すると突如地図上に青白く輝く道順が描かれた。御戌神だ。 「でっかい大散減はなるべく広い場所へ逃走を。となると、海岸沿いかもだ。東の『いねとしサンライズビーチ』はサイクリングロードで狭いから、石見沼の下にある『石見海岸』ので」 「成程……って、君はまさか!?」 「青木君!?」  そうか、みんな知らなかったんだっけ。御戌神は遠慮がちに会釈し、かき上がったたてがみの一部を下ろして目隠れ前髪を作ってみせた。光君の面影を認識して皆は納得の表情を浮かべた。 「と……ともかく! ずっと地中でオネンネしてた大散減と違って、地の利はこちらにある。案内するので先回りを!」  御戌神が駆け出す! 私は彼が放つ輝きの中で水上スキーみたいに引っ張られ、五寸釘愚連隊や他の霊能者達も続く。いざ、石見海岸へ!
ལྔ་པ་
 御戌神の太陽の両眼は、前髪によるランプシェード効果が付与されて更に広範囲を照らせるようになった。石見沼に到着した時点で海岸の様子がはっきり見える。まずいことに、こんな時に限って海岸に島民が集まっている!? 「おいガキ共、ボートを降りろ! 早く避難所へ!」 「黙れ! こんな島のどこに安全が!? 俺達は内地へおさらばだ!」  会話から察するに、中学生位の子達が島を脱出しようと試みるのを大人達が引き止めているようだ。ところが間髪入れず陸側から迫る地響き! 危ない! 「救済せにゃ!」  石見の崖を御戌神が飛んだ! 私は光の中で身構える。着地すると同時に目の前の砂が隆起、ザボオオォォン!! 大散減出現! 「かははは、一足遅いわ!」  ズカアァァン!!! 出会い頭に強烈なティグクの一撃! 吹き飛んだ大散減は沿岸道路を破壊し民家二棟に叩きつけられた。建造物損壊と追い越し禁止線通過でダブル罪業加点! 間一髪巻き込まれずに済んだ島民達がどよめく。 「御戌様?」 「御戌様が子供達を救済したので!?」 「それより御戌様の影に映ってる火ダルマは一体!?」  その問いに、陸側から聞き覚えのある声が答える。 「ご先祖様さ!」  ブオォォン! 高級バイクに似つかわしくない凶悪なエンジン音を吹かして現れたのは加賀繍さんだ! 何故かアサッテの方向に数珠を投げ、私の正体を堂々と宣言する。 「御戌神がいくら縁切りの神だって、家族の縁は簡単に切れやしないんだ。徳川徳松を一番気にかけてたご先祖様が仏様になって、祟りを鎮めるんだよ!」 「徳松様を気にかけてた、ご先祖様……」 「まさか、将軍様など!?」 「「「徳川綱吉将軍!!」」」  私は暴れん坊な将軍様の幽霊という事になってしまった。だぶか吉宗さんじゃないけど。すると加賀繍さんの紙一重隣で大散減が復帰! 「マバゥウゥゥゥゥウウウ!!!」  神社にいた時よりも甲高い大散減の鳴き声。消耗している証拠だろう。脚も既に残り五本、ラストスパートだ! 「畳み掛けるぞ夜露死苦ッ!」  スクラムを組むように愚連隊が全方位から大散減へ突進、総長姉妹のハンマーで右前脚破壊! 「ぽんぽこぉーーー……ドロップ!!」  身動きの取れなくなった大散減に大かむろが垂直落下、左中央二脚粉砕! 「「「大師の敵ーーーっ!」」」  微弱ながら霊力を持つ河童信者達が集団投石、既に千切れかけていた左後脚切断! 「くすけー、マジムン!」  大散減の内側から玲蘭ちゃんの声。するうち黄色い閃光を放って大散減はメルトダウン! 全ての脚が落ち、最後の本体が不格好な蓮根と化した直後……地面に散らばる脚の一本の顔に、ギョロギョロと蠢く目が現れた。光君の話を思い出す。 ―八本足にそれぞれ顔がついてて、そのうち本物の顔を見つけて潰さないと死なない怪物で!― 「そうか、あっちが真の本体!」  私と光君が同時に動く! また地中に逃げようと飛び上がった大散減本体に光と影は先回りし、メロン格子状の包囲網を組んだ! 絶縁怪虫大散減、今こそお前をこの世からエンガチョしてくれるわあああああああ!! 「そこだーーーッ!! ワヤン不動ーーー!!」 「やっちゃえーーーッ!」「御戌様ーーーッ!」 「「「ワヤン不動オォーーーーーッ!!!」」」 「どおおぉぉるあぁああぁぁぁーーーーーー!!!!」  シャガンッ! 突如大量のハロゲンランプを一斉に焚いたかのように、世界が白一色の静寂に染まる。存在するものは影である私と、光に拒絶された大散減のみ。ティグクを掲げた私の両腕が夕陽を浴びた影の如く伸び、背中で燃える炎に怒れる恩師の馬頭観音相が浮かんだ時……大散減は断罪される! 「世尊妙相具我今重問彼仏子何因縁名為観世音具足妙相尊偈答無盡意汝聴観音行善応諸方所弘誓深如海歴劫不思議侍多千億仏発大清浄願我為汝略説聞名及見身心念不空過能滅諸有苦!」  仏道とは無縁の怪獣よ、己の業に叩き斬られながら私の観音行を聞け! 燃える馬頭観音と彼の骨であるティグクを仰げ! その苦痛から解放されたくば、海よりも深き意志で清浄を願う聖人の名を私がお前に文字通り刻みつけてやる! 「仮使興害意推落大火坑念彼観音力火坑変成池或漂流巨海龍魚諸鬼難念彼観音力波浪不能没或在須弥峰為人所推堕念彼観音力如日虚空住或被悪人逐堕落金剛山念彼観音力不能損一毛!!」  たとえ金剛の悪意により火口へ落とされようと、心に観音力を念ずれば火もまた涼し。苦難の海でどんな怪物と対峙しても決して沈むものか! 須弥山から突き落とされようが、金剛を邪道に蹴落とされようが、観音力は不屈だ! 「或値怨賊繞各執刀加害念彼観音力咸即起慈心或遭王難苦臨刑欲寿終念彼観音力刀尋段段壊或囚禁枷鎖手足被杻械念彼観音力釈然得解脱呪詛諸毒薬所欲害身者念彼観音力還著於本人或遇悪羅刹毒龍諸鬼等念彼観音力時悉不敢害!!」  お前達に歪められた衆生の理は全て正してくれる! 金剛有明団がどんなに強大でも、和尚様や私の魂は決して滅びぬ。磔にされていた抜苦与楽の化身は解放され、悪鬼羅刹四苦八苦を燃やす憤怒の化身として生まれ変わったんだ! 「若悪獣囲繞利牙爪可怖念彼観音力疾走無辺方蚖蛇及蝮蝎気毒煙火燃念彼観音力尋声自回去雲雷鼓掣電降雹澍大雨念彼観音力応時得消散衆生被困厄無量苦逼身観音妙智力能救世間苦!!!」  獣よ、この力を畏れろ。毒煙を吐く外道よ霧散しろ! 雷や雹が如く降り注ぐお前達の呪いから全ての衆生を救済してみせよう! 「具足神通力廣修智方便十方諸国土無刹不現身種種諸悪趣地獄鬼畜生生老病死苦以漸悉令滅真観清浄観広大智慧観悲観及慈観常願常瞻仰無垢清浄光慧日破諸闇能伏災風火普明照世間ッ!!!」  どこへ逃げても無駄だ、何度生まれ変わってでも憤怒の化身は蘇るだろう! お前達のいかなる鬼畜的所業も潰えるんだ。瞳に映る慈悲深き菩薩、そして汚れなき聖なる光と共に偽りの闇を葬り去る! 「悲体戒雷震慈意妙大雲澍甘露法雨滅除煩悩燄諍訟経官処怖畏軍陣中念彼観音力衆怨悉退散妙音観世音梵音海潮音勝彼世間音是故須常念念念勿生疑観世音浄聖於苦悩死厄能為作依怙具一切功徳慈眼視衆生福聚海無量是故応頂……」  雷雲の如き慈悲が君臨し、雑音をかき消す潮騒の如き観音力で全てを救うんだ。目の前で粉微塵と化した大散減よ、盲目の哀れな座頭虫よ、私はお前をも苦しみなく逝去させてみせる。 「……礼ィィィーーーーーッ!!!」  ダカアアアアァァアアン!!!! 光が飛散した夜空の下。呪われた気枯地、千里が島を大いなる光と影の化身が無量の炎で叩き割った。その背後で滅んだ醜き怪獣は、業一つない純粋な粒子となって分解霧散。それはこの地に新たな魂が生まれるための糧となり、やがて衆生に縁を育むだろう。  時は亥の刻、石見海岸。ここ千里が島で縁が結ばれた全ての仲間達が勝利に湧き、歓喜と安堵に包まれた。その騒ぎに乗じて私と光君は、今度こそ人目も憚らず唇を重ね合った。
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keepcalm-readmanga · 7 years
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2016 淑女Repo:司機們實力飆車的一年,那些我們一起坐過的車 (仮)
米那桑又到了年終總結的時刻啦!讓我先\高呼一聲/ OH YEAH! 這是本司機不才,第三次做年終總結了,是的我已經蹲這坑裡蹲三年了,對於很多事都三分鐘熱度的某來說,能堅持這麼久也是吃了一鯨!??
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​2016年是馬甲碟的發行量爆多的一年,年年按照曲線成長,非常牙白的節奏。也礙於這個市場太過壯大,淑女們每年都要買的總結雜誌-Honey Style竟然沒有出…所以無法統計總數,但不用總結也知道是誰又蟬聯馬甲碟之王的寶座了!佐和真中以幾乎週刊的頻率掃過了2016!土門熱和茶介位居第二及第三名,媽啊這兩個勞模也是一整年霸佔我Ipod的男人,急速竄起勢不可檔啊!
港真,我的聽碟量應該都保持在一定的數目,但是發行總量遠遠超過這個數字好像顯得我很挑一樣orz 所以今年我選擇大方向點評一些流行走向還有我個人非推薦不可的碟子給大家做為參考~
Part.1 年度潮流走向:旦那、古風、續作
旦那
唉嘛其實我三年前一入坑的時候就已經嚷嚷著旦那題材的碟太少太稀有,明明是日常生活生活向的王道題材怎麼就這麼少呢?今年彷彿各大會社聽到我的心聲一樣,動不動人物設定就丟旦那出來,弄得俺受寵若驚措手不及好麼!旦那的萌點為大家複習一次:1兜裡的男人所以勾心鬥角一切OUT!2持證上崗、合法開車合法中X 3汙力滔滔的最佳煙幕彈
旦那系列重點推薦
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迷蝶(パンタレイ):轉世的異種人外旦那!重點是月亮社的年度純愛巨作!旦那分別是吸血鬼、狼人、外星人,但他們竟然是同一個人!!!(瞬間HP-5000) 題材最高能沒有之一,然而是旦那設定所以特別溫柔深情,信賴度滿分!系列的製作非常精良,BGM好聽,台詞唯美魔幻,貫穿一系列的蜘蛛與蝴蝶的故事也引人深思,可以說肉非常美味之餘還感受到了三位旦那的深愛。
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​Cream Pie~大好きな彼と、素肌のままで最後まで:真TM沒看過乳此直白的Title好麼!下面提示你們自行體會一下,如果是放在男性向謎之小片子會寫成無T中X,英文就是這個意思了。然而合法玩梗的咧,這系列根本就是變向的旦那特權系列。我跟你們縮,一臉正直的汙��滔滔一向是我萌點。目前聽過第一彈的奶油登登,可愛又肉食超滿足。期待2017土門大法的到來也希望拉多幾個人進這系列啊啊啊!
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​旦那さまシリーズ:最經典的大人氣旦那系列,各式各樣的旦那任君挑選的一個系列。然後佐和真中大肆入侵的一個系列(笑哭) 又稱霧谷家兄弟Story (X) 這系列從去年年底開始出,到今年又多開了第二季跟第三季,可見非常好評,少了套路的傻白甜設定總是市場的保障名額。其中男大姐跟變態旦那的設定最為突出,還這系列在第三季的最後請來了我大沖野靖広!你們真是太有眼光了(含淚點讚) 以前曾經寫問卷給Honeymoon系列要他們請他,沒想到是來了馬甲碟(歡喜升天)
古風
今年古風題材似乎火了起來,日本古代為題材的碟子變多不在話下,西洋古代背景的碟子也不少我發現。一定要比較的話,我個人是喜歡和式古風的,特別喜歡那種大河劇跟時代電影的氣氛,有著武士、遊女、町人、忍者(?)的時代背景真讓人欲罷不能啊~ 相較之下西洋古代為背景的大多喜歡描寫王宮貴族的故事,很有童話故事的Fu~
和式古風系列重點推薦
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遊女悲恋:標題已經劇透了一切,嫖客跟遊女的101種死法。不是男主被女主拋棄失智之後被關小黑屋就是放一把火把妓院燒了啪啪啪到死,不然就是親兄妹哥哥當嫖客去嫖妹妹然後兩個人互捅殉情。一個大寫的慘烈,然而劇本娘堀川還是寫得很有水準,全數BE的大做符合了我這個BE愛好者的口味。古代日本用語偏多所以理解上比較困難,但是查字典也是我的一個樂趣就是。跟下面的系列打對台還CV重覆率100%,Entremets跟花鏡社不要太火爆喔喔喔!
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​籠女ノ唄~吉原夜話~:同樣也是遊女題材這系列就給人有希望多了,系列四部作品三部HE,中途換馬甲的桐生麻都小哥被排擠得厲害所以BE(並不) 本來這系列預計出三部,可能是人氣出乎意料所以硬生生又多開了第四部把佐和真中給叫來,你們真的不是故意跟Entremets對著幹?也是古風氛圍滿滿的一個系列,古色古香,嘛,反正被人嫖的題材也就是這樣了(攤手) 重點嫖完了還能HE真的太治癒人心(痛哭失聲) 劇本娘御門蓮給個好評!
和式古風精選單碟
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​嵐一夜 -アラシノイチヤ-:三心社在年底推出的高分古風作品!又請來了茶介搖錢樹!基本可以總結為山中奇遇記,遇難的女主在暴風雨的夜晚遇上了野生小哥並被他撫慰的故事。茶介第一次挑戰兄系角色非常駕輕就熟,野哥哥太棒!劇中不少古代風俗跟背景的捏他,一旦深入了解之後是非常有趣的一張。肉真是好吃的沒話說,我也要組隊上山去收服一隻野哥哥回家成親了!
洋式古風系列重點推薦:
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​Dark Night Princess:去年這個大好評的暗黑三匹童話系列2016又加開了兩部,分別是灰姑娘和小紅帽。這系列目前改編的全都是西洋的童話故事,所以設定也很有西方古典的韻味。兩部的劇本跟CV演出都很棒,但是一定要比較的話我個人是更喜歡灰姑娘。肉好吃,題材充滿童心的一個系列。畫師沿用了前兩部的兩位畫師也是好評的要點之一。
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​私の小鳥:破梗一說就是一系列都是王子的故事(不)這系列預計在2017上半年會延續出第三部,可見也是人氣高漲的作品,我個人非常期待。設定於中世紀歐洲國家的背景,在不同機緣巧合下與當國的王子相知相戀的故事,系列的要點是女主是會帶給王子們幸福的小鳥,基本上傻白甜的劇情展開。歐風古典浪漫風情大家務必一試。
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​吸血姫ナイトパレード:劇情偏向套路但我個人滿喜歡的一個吸血鬼小公舉系列。吸血鬼不算是稀有題材(雖然馬甲碟這邊才正要火),不過這系列是女主是吸血鬼,這個設定夠新鮮喔(拇指) 所以理所當然被吸血的就是我們的男人啦,聽到男人被吸血呵呵哈哈的聲音簡直欲罷不能(惡趣味) 雖然是架空設定但應該也是西方古代,有招親舞會有大宅子,還有來自世界各地的新郎候補(重點) 也是比較童心的一個系列。
續作
不知道是今年會社們感覺抓馬題材貧乏還是怎麼了,不約而同開始拿自家既有的系列開始炒冷飯(別說得這麼難聽) 牛奶社是慣犯我就不說了,VV社是真的感覺花招不如以往,開始把男友枕頭一一作成續作撈錢我也(攤手) 但是今年連一些出碟量不高走精緻路線的會社如BizCrown跟Operetta都開始出續作,這真的是我意料之外,但是水準如常甚至更上一層樓這才是我想要推薦的。
PS.續作的定義是指同系列同角色的故事的延續或是前傳,同系列追加新角色新故事不在討論範圍。
續作系列推薦:
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​彼と添い寝でしたいコトもっと:杏子社今年再開最賣座的陪睡系列,而且是兩兩成張,兩個角色一碟的綜合FD,銷售策略太強,只控其中一個角色也會買碟,而且雙CV的碟順勢拉高了售價,簡直圈錢手段太高明。這都不是重點,續篇延續了前作溫馨可愛傻白甜的風格,睡前收聽最合適,還加入了兩個角色(CV)躺旁邊跟你一同睡覺的福利軌,你們不吃這安利嗎?與男友跟旦那一起度過的睡眠時光w
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​その愛は病にいたる~HARUTO~、そこは狂った夢の淵~選択される定め~:馬甲碟史上最強的兩個病嬌又殺回來了!而且變成了旦���!激動到只想罵臥槽!妹紙酷愛逃啊!然後聽完這兩碟之後簡直愛這兩個犯罪變態病嬌愛到骨髓裡,媽啊天知道我有多心疼他們。續作再開的巔峰作品,比純黑還要黑的色彩,堪稱一絕了。劇情度百分百,吃了一堆刀子的續作,可是我甘願!這兩個故事只告訴我們,變態不可怕,可怕的是聚在一塊。
​Part.2 淑女私心個人榜單
年度代表獎【完美得無可挑剔的超‧高分作品】
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​In the Room
任何評分標準來說都是滿分的一張碟,就連我入了馬甲碟坑三年了也是我第一次聽到如此接近完美的作品。這是個心痛得令人憐惜,用男主角的無奈跟淚水刻劃出一個深愛之人失憶的故事。因為最愛所以傷得最深是我對劇情的一句話總結。充實俱備HE跟BE兩種結局的分歧型Drama CD在市面上很常見,但是兩個Ending的意境都是令人咋舌的美麗,也就只有小房間這一張了,尤其那帶有一點悲情跟苦澀的HE(對的是HE沒錯)更是精彩。聽完特典完整了整個劇情,只能用惋惜來形容本篇所發生過的憾事。CV茶介演技水準飆上天的作品,把這個傷透心的癡情男人演到骨髓裡,感情的表達真切到位,滾床單也流露出細膩的情緒變化,可以說是CV本身今年的代表作了。封面的繪畫設計看過都知道是極為典雅賞心悅目的風格。馬甲碟界難得一見的超高水準逸品,2016如果只能聽一片碟的話就是這碟了。入手絕對不會失望的精彩作品,推薦給大家。
年度新穎題材系列獎【歪腦筋都動到自我保健上面來了】
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​·         Adult Direction
·         ラブユーブング
·         Club:CUP6
·         シコレボ!
我感覺今年的新穎題材都跟自我保健有關了(什麼鬼) 女性向的謎片、謎之玩具、音聲DIY導覽還有漢子自撸的馬甲碟。業界真是越來越會玩了w 總之非常有益身心的出發點,我必須給會社好評,這種現實題材跟馬甲碟重疊的微妙感覺,大家不去瞧瞧嗎?
年度生活向系列獎【又色又蠢萌的日常向】
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​Love Toxic
超級推薦的一個系列!男主角不是旦那就是男友,規規矩矩的甜碟設定。描繪了男主角們面對女主的時候就會變成癡漢的樣子(並不) 在歡樂的日常中各種いちゃいちゃ台詞風格非常暖心而且惹人喜愛。滾床單的成分也絕對不馬虎,收服了可愛的男友跟旦那之後肉也十分美味。喜歡無負擔日常向的這個系列可以坑。
年度畫風殘念獎【Chocolat Blanc一定是不想賺錢了】
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モトカレ~上司と2度目の���~
當初��到這個封面我是囧的,先不說濃濃的同人風格,這個作畫讓我真心認為這社要自我毀滅拿銷量開玩笑了。這個天大的玩笑竟然落在了勞模佐和真中身上,一眾CV中最人氣的馬甲王竟然是這種人設…在此把膝蓋奉獻給每個購入這張CD的佐和迷妹,你們是真愛粉。看看那超高的髮際線跟學園Handsome風的下巴跟五官比例,手的比例也很奇怪,港真還沒見過如此水準的官碟封面,嚇得他自己他手上的咖啡都涼了(喂) 這碟反正封面就這麼奇筢了,說說內容。內容真的不差啊,雖然是前男友兼前上司,舊愛最美的複合路線劇情,佐和用低音演這種專情一根筋的男人是真的挺萌,滾床也挺苦幹有種公務員氣質(夠) 反正是只能忽略封面的一碟了。
然而Chocolat Blanc殘暴的畫風摧殘了市場幾個月之後,最近他們的畫風突變成這樣↓
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說到底你們還是想賺錢的嘛 一開始知道這樣又何必拿前面幾作的銷量來測試大家的底線呢?正正經經找畫師付錢給人家這銷量就上來了嘛!這些CV的粉絲哪裡得罪你們了?
同場加映:KZ Entertainment
強烈懷疑是這社是Chocolat Blac的母公司,網站的風格跟同人感的作風有著很大的呼應。下面就放個圖讓你們感受一下比較 “上檔次” 的同人風格馬甲碟繪畫
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KZ Entertainment的成立比Chocolat Blanc早,一開始這社的風格還只是被大夥吐槽是容易誤會成是同人碟的風格,不過至少還沒發生像Chocolat Blanc那樣人物崩壞的慘事,頂多就是說說標題的設計風格比較俗氣/土氣或是人物的上色方法偏向動畫。但你們造嗎?自從看過モトカレ的封面之後我開始珍惜KZ了(我是真心你們信我) 果然人的觀感還是很賤的。我今年有入KZ的碟,我得說作為新社KZ的碟其實價格很良心(真心話) 一張碟2000円含特典,劇情描寫也都挺有趣,CV也都是正規的官方馬甲群,就是碟子是台壓跟封面的繪畫成本可能反映了價格(遠望)
年度喜劇推薦專區【笑到肚子疼得新感覺作品】
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只今恋愛中!
馬甲碟史上第一部成長型系列,一個男主貫穿三篇作品,分別是大學時代、社會人跟結婚後。女主跟他都是初戀的男女朋友,然後一起走過那人生中的每個階段。第一次接吻第一次滾床單這都不稀奇,但是會ED(?)會出錯會慌張還會吐槽自己的床技的男主我還是第一次見。從第一張笑到第三張的爆笑作品,體現了 “真愛是會讓你哈哈哈而不是啪啪啪”這一點。每次都在關鍵時刻跌一跤然後永遠不可能在女主老婆面前帥一次的真愛,是部笑完之後會感到很窩心的好作品!
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​·         ヘタレだけど好きな彼
·         夫はお医者さま~新堂先生は変態です���
·         ダメンズ先生~元憧れの高校教師
剛剛提到了KZ Entertainment現在來說說他們家的碟子。這三張喜劇型馬甲碟都非常有趣,分別是前高中老師變成無業遊民(?)被女主撿到,從大學時代就開始交往到現在出社會的超沒用男友,還有全世界最愛老婆的喜感變態癡漢外科醫的丈夫。乍看之下三個故事的設定都很異想天開很不乙女的發展,其實都笑料滿滿,CV們更是活靈活現把這些非典型的男人們給演出來了,絕對好評絕對娛樂。KZ的喜劇馬甲碟著實做得出色,我比較喜歡他家的喜劇,除外那些比較悖德或是鬼畜的設定我就PASS了。上面三張小品推薦給大家。
年度叔控推薦專區【缺糧缺得慌的一年】
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​·         恋する編集者第五弹「つよがり。」
·         旦那さまシリーズvol.5年上旦那さま
·         Sweets Blossom 純也編 After story
今年純正的大叔向碟子少得我只能精選三張,簡直快要斷糧的狀態orz 這三張還都是叔系音而且角色也是叔叔的馬甲碟。喜歡成熟大人的淑女們快把這僅有的糧食包回家吃了吧,不然就像我要叛變到青年音了(錯誤示範)相信我,我真的是大叔控(吐一口血死) 特別推薦副編輯長(第一張)跟甜點店記者桑(第三張),叔的技術跟餘裕你不能錯過,絕對不能,司機果然還是要選老的。叔叔旦那(第二張)告訴我們歐吉桑雖然是自稱體力還是ㄅㄧㄤˋㄅㄧㄤˋ叫,茶介開車哪有不飆的道理?而且寵上天了好嗎!
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​·         吸血姫ナイトパレード第三候補:ハンターの花婿ルッツ
·         ヤな奴。同僚・灰島編
這兩張人設真的不是叔(媽啊二十幾歲的小伙用叔音會社選角也是叼),但是叔音大法好,我還是要來推薦一下。好久不見的黑瀨鷹叔叔一定要會會的,黑道系的溫柔,重點被吸血的聲音牙白到無法直視。健康太郎第一次下馬甲碟的海,我不推薦不是人,好勝心超強的同事叔叔船上技術也很一流而且還純情(反差萌),希望以後多看到他啊,煙燻口味的迷人嗓音讓人欲罷不能。
同場加映:低音砲馬甲碟
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·         『私立常盤坂学院 - immoral game -』第4巻騎堂アラト~野蛮な騎士は草風に愛す~
老實說這個是我個人的馬克,我都還沒聽(別打我) 我真的很喜歡低音砲,這三張也都是,無奈基於各種原因沒聽(明明就是花心你敢說)。這些人設真的很不低音砲(第三張還說得過去),總之斧爆彈跟鬍內惡太兩位是我一直很心水的重低音CV,無奈今年他們倆個專注幫人出續作了沒有開發新系列我是有點失望的。最終常盤坂學園的設定實在不戳我所以沒開坑我也不好評價什麼。
年度M男推薦專區【劇本的硬傷比較多】
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·         ブユーブング-永嶺海斗編-
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·         ナミダメ“シ”ノミヤマキの場合
·         私の彼のおかしなヒミツ Vol.3 M気質の彼
今年M男碟的數量比去年明顯少了很多,我專注冷門萌點30年我瞭。而且其中W太郎的本能果實還是去年的,嘛,反正我今年才聽就算進來了。今年的M男碟真是劇本硬傷,唯一一張我覺得劇本沒問題的大概就是土門的抖M玩具小哥了。海斗小哥真的大推,雖然BE很治鬱但是他超可愛的,家事全能開車也很上手,就是女主的設定奇筢了點(不想破梗)。W太郎的本能果實跟草莓牛奶的淚目男子雖然都是正宗的M,但是劇本的槽點太多加上都是渣男轉M男的走向,渣男劇情有點難熬就是,只能退而求其次沖著CV唉唉叫來聽了。最後一張伊集小哥的小M男也很可愛,不過牛奶社的劇本一向都不怎麼戳我,而且這系列本來就標題黨意味濃厚,小M男是不錯就是太會使換人了一點讓我覺得有點煩(微妙?),不過還是很軟萌,喜歡輕口的M男這張可以一試。
年度沖野靖広推薦專區【固定刷存在感的男神】
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​·         Door to Door
·         サークル♥カタログ鈴原恭弥編
·         re:Reversible vol.3~チャラ系カレシ・平磨~
·         旦那さまシリーズvol.9 激甘旦那さま
穩定的季刊沖野,今年也是幸福在坑裡的一年。身為沖野太太兼沖野靖広安利小隊長,今年的四張碟都是發揮的中規中矩的水平。Door to Door即使只有三分之一的沖野我也買了,因為他一圓了送貨員小哥跟奧桑的妄想(謎片看多的後遺症)。Circle Catalogue大型犬男朋友專情又有點不擅言詞非常可愛而連動特典有唱歌非常好聽,男子輕音部這個設定本來就自帶青春熱血萌點。Reversible FD歐派星人重磅回歸, My 平磨男朋友還是一如既往的baka ,BizCrown讓我有了活下去的意志。激甘旦那我吃了一堆砂糖一點點的傲嬌十分美味並感受到了對老婆的深愛,對嘛沖野靖広就應該演旦那,會社你們不絕得相見恨晚嗎?今年四張全部保留名額全部推薦!今年季刊已經超級滿足超圓滿(合掌) 希望來年繼續跟男神卿卿我我XD
​Part.3 CV博愛(x)溺愛心路歷程
咳咳!大家應該都知道我這人是很博愛的,對CV示愛(?)乃日常,頻繁接觸各種不同類型的聲優是我的興趣。今年馬甲碟的產量很高,也來了不少新的馬甲CV加入這個行列,就連往年出鏡率較低的固定班底CV都開始刷起了存在感,淑女我今年得到了很大的滿足(躺平) 下面就簡單說說我今年花心了哪些人(賊笑)
大家的旦那,一流的色情標竿,定位床友(?)【茶介】
My 床友 (被一票妹子打死),今年我算是非常隨意的入了茶介的坑,不敢自稱他的擔因為我覺得自己貢獻錢包貢得不夠(請原諒這個窮逼)。今年看到他變成勞模我真的是欣喜若狂,早在2014他出男ともたち的時候我就十分看好他了,業界一匹黑馬,今年作品數量更是大爆發,奪下馬甲碟作品數第三名的寶座。
以健康又紮實的男人味聲線著稱,說起話來非常親切,台詞的演繹跟說話的tempo掌握得很到位的聲優。今年馬甲碟會社頻頻找他出演旦那,證實了他聲音裡的良好品格感讓人淪陷,作品數中旦那達成率高達七成的神人。所以我整年就是茶介嫁嫁嫁!每個月都嫁他!H起來迫真到令人害怕,聽完碟就像是跟他在床上滾了好幾回的銷魂滋味讓人無法忘懷。今年感覺他喘息比較入大流了,個人喜歡聽的啊嘶啊嘶比較少見了,不過不影響他的技術與美味。期望明年繼續看到他刷版!
老司機組隊輪流出番,2016年裡佔據我Ipod的人們
【ワッショイ太郎、土門熱、河村眞人】
ワッショイ 太郎:今年超額完成任務的一位。前兩年一直以為他總是在年底發功一下下就收山的CV,沒想到今年從年初到年底都看到了他,變成常見CV簡直驚喜!說話咬字都帶著高端色氣感的CV,依我說就是歐美感的情色,自帶Player氣場所以以往劇本娘都丟渣男劇本給他演(跪) 今年正經的男人多了不少,這點我是欣慰的,但是年底最後一張牛郎還是依照慣例耍流氓了,果然話不能說太早。人頭麥的敏感點掌握得很碉堡的一位,不管是親親還是耳邊說話都會起雞皮疙瘩的那種。明年應該還會來這邊玩耍吧叔叔?不准你交了差之後就去攀岩沖浪,浪到不知道回家了啊(喊)
土門熱:人稱土門大法,今年的大勞模。土門大法也算是我一入這坑的時候就認識的資深司機了,也因為我聽他的第一張就是Reversible,我基本上都是關注他的好男友角色居多。典型的帥哥音,就像是少女漫畫走出來的男主角的聲音,中音而且有些沙啞的音色。H起來水準高,好吃的地方是一高潮就受(唉???),叫起來很好聽,男前的叫叫叫讓人想欺負他。因為今年也是作品量大爆發所以我走到哪裡都會碰到他,常常在我Ipod上看到他的名字。驚奇的是今年聽到了他的抖M碟真的是非常美味,玩具擬人的小哥哥聲線又乖又可愛(而且還M) 其他正常傻白甜的男友也是等身大一般大寫的可愛(揉臉) 估計明年也會常駐在這邊的CV。
河村眞人:今年也是頻繁看到他!大人色氣再來一位!專注演繹高大上的男主,演過的角色不乏王子、貴族、律師、上司、執事、刑警等,有著性感的聲線還自帶華麗貴氣的氣場,H的時候總是非常有餘裕偶爾蹦出像是んにゃ一樣的可愛聲調。今年吃他的糧吃得一本滿足,而且角色類型都很符合他的氣質,不得不提Love Toxic的軟萌年上旦那一點點的強引凸顯出他的美味。我明年也會安定的關注他的~
新司機大舉進攻市場,冉冉升起的新星銳不可擋,全部都是青年音
【テトラポット登、深川綠、三樂章、大鳥遊二、一夜愛、五日天峰、昼間真昼】
テトラポット登:大家所公認的超級新人王。一開始登登給我一種年下的感覺其實我是拒絕的(攤手) 我專注年上跟叔叔三十年啊!直到DNP他演了一個很可愛的雙子小哥哥我才對他改觀,哎嗎這個新人開起車來簡直老司機了是鬧哪樣(膩愛口吻) 之後吃了奶油登登跟廢柴男友登登也都非常棒,真的是個值得關注的新星(淑女我背書) 啞啞的青年音有種可愛的感覺,慢慢說話的時候很��穩令人安心,說話快的時候一秒逗逼。H的時候有雄喘跟雌喘之分(據說),雌喘非常快而急也是高潮就受的type,雄喘目前沒接觸太多所以不方便評論。H的聲音跟風格跟土門有幾分相似,聲音類別可以算是同一類的(笑哭)
深川綠:積極刷存在感的一位司機,月亮社出道,今年也是靠月亮社的觸手旦那一作把關注力推向了高峰。去年就已經在馬甲碟的海裏只不過出鏡率偏低,今年開始積極受邀參與不同馬甲碟會社的作品。偏低的青年音也是聲音中帶有啞的音色,男前風格,吻技跟H的技術也是非常嫻熟,遽聞也是常混跡裏界的CV。非常積極經營他的馬甲Twit,而中之人的烤蛋糕愛好展現出了超高女子力(小叮噹微笑)
三樂章:年底突然靠著劇本娘松竹梅老師跟Operetta社上位的司機,我突然而然入他坑港真我也很害怕好嗎?(抖) 去年以Operetta社的狂夢之淵單碟出道,無奈那碟收錄音質實在可憐,除了過人的演技,完全沒有注意到他美形的聲音!?今年松竹梅老師連著春人把愛病跟夢淵又帶了出來,三樂章的聲音完全是以1080P高清重現,並演活了間宮定繼這個瘋狂的義兄!沉穩的中低青年音,有禁慾的味道,抓狂起來嚇壞人,擅長演人形泰迪(X) H起來意外寫實,美形的聲音喘起來意外用力而且那個說話斷斷續續的演法很高能。十分期待看到三樂章2017活躍起來,他是繼茶介之後第二個我看好的黑馬CV。
大鳥遊二:玩過BL遊戲應該不會陌生的司機,據說是遇到好角色聲音有點像石田彰遇到普通角色就路人的一位(笑哭) 健氣型的中音青年音,笑起來滿可愛的,吻技不錯坑戲中規中矩。今年就以Adult Direction的wasabi男優一角出道,堪稱是馬甲碟界的鈴木X徹了(夠) 我挺喜歡這位的聲音的。
一夜愛:這個男性向黃油跟裏番常見的司機今年也奔向馬甲碟這邊了(招手) 感覺是比較年下犬系的中音,有點小鼻音,他的碟我還沒聽不好鑑定坑戲但聽說也還滿老司機的。馬甲名唸One Night Love(噴笑) 也是會玩了。作品慢慢開始增多的一位, 2017也 都會看到他。
五日天峰:常常跟河村眞人綁定一起出現的司機,本來是河村碟裡的SUB CV 後來轉正開始出單人碟。正統的中音青年系,常常出演好青年(?)的感覺讓我印象挺深但是聲音辨識度不怎麼高,也是因為他的碟我還沒聽所以不鑑定坑戲的表現。馬甲名裏五日天是姓氏,峰是名字。2017已經有新作預定發行。
昼間真昼:從BLCD過來的司機,經營澡堂的小哥非常萌,比較軟膩偏高的青年音,也是因為角色關係覺得他的聲音有種迷濛感,吻技普通坑戲覺得有點受但不明顯。今年就在在這邊發了一張探頭,但感覺大家的評價都還不錯,不管是對劇本還是CV本身,2017已有新作待發行。
2016總評以上。
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最後以今年的錢包(不對) 愛人們總結,一點點不成敬意的心意。特別藉著這個小地方感謝低燃廢人生將三位棒得飛起的茶介聚聚送給我,讓他跟著沖野男神一起常伴我身旁(´▽`ʃ♡ƪ) 他們相處得非常和諧,請你不要擔心。 也感謝2016年陪我一起飆車的淑女伙伴們,不管是在湯不熱、天使論壇、還是微博,謝謝你們今年的陪伴與支持,沒辦法把每個人都一一列出來,請你們接受我的隔空飛吻Mua Mua Mua~2017讓我們繼續走在耳朵失血的康莊大道上吧!(指著太陽)
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​最後其實上圖並不是2016我所有的腎,我還有三張還在路途中,因為趕不及年度總評的發文所以入不了鏡orz 希望他們趕快回到我身邊啊,我的雞肝旦那跟平磨男友(咬手帕) 嗯?你問我有張畫風不一樣?三樂章偷渡了是事實,等我收到碟我就來傳教(大誤)
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​那麼米納桑新年快樂!同時我們明年再見囉!(揮手)
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shibaracu · 4 years
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●大道芸をして金銭を乞うた者。乞胸(ごうむね)となった。 乞食(物貰い)の一種
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●大道芸をして金銭を乞うた者。乞胸(ごうむね)となった。  ●乞胸   歴史民俗用語辞典 読み方:ゴウムネ(goumune) 近世の乞食の一。   ●乞胸(ごうむね) http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B9%9E%E8%83%B8 江戸時代に江戸市中などで、万歳や曲芸、踊りなど、さまざまな大道芸をして金銭を乞うた者。 乞食(物貰い)の一種であり、元侍や町人、あるいは身元が不明な者が乞胸となった。 身分的には町人に属したが、穢多頭の弾左衛門の支配下に置かれ、稼業としては非人と同等とされた。 乞胸をする場合は、非人頭から鑑札(許可証)をもらい、老人と障害者以外は一定額の上納金を納めなければならなかった。 非人同様、編笠をかぶり門付もしていたが、非人の職域を荒らさないために、のちに乞胸の門付は禁じられ、主に広場や路上で芸を見せた   ●芸の種類 『乞胸頭家伝』には、以下の12の芸種が挙げられている。 綾取り - 竹に房をつけ、これを投げて取る芸。 猿若  - 顔を赤く染めて芝居をする芸。一人狂言。 江戸万歳 - 三河万歳の真似をする芸。二人で行なう。 辻放下 - 玉かくし、あるいは手玉を使う芸。 操り  - 人形を操って見せる芸。 浄瑠璃 - 義太夫節や豊後節などの節をつけ���物語などを語る芸。 説教  - 昔物語に節をつけて語る芸。 物真似 - 歌舞伎の口上や鳥獣の鳴声をまねる芸。 仕形能 - 能の真似をする芸。 物読み - 古戦物語の本などを読む芸。 講釈  - 太平記あるいは古物語を語り、講釈する芸。 辻勧進 - 芸のできない者や子供らが、往来に座って金銭を乞うこと。   ・起こり さまざまな雑芸を演じてわずかな報酬をえて生計をたてる物もらいは、室町時代末期の『三十二番職人歌合』にすでに、編笠をかぶり、手で裸の胸を叩く風情が描かれている。胸叩など、こうした路上芸が乞胸の起源とされる。乞胸の名の由来は「先方の胸中の志を乞う」ところからきたとする語源説もある。芸能に対してある種の羨望と崇敬がありながら、彼らが賤民とされたのは、人の気を引き、金銭を得んがために演じる芸能は賤しいとする考えと、その非生産的な生活態度にあったとされる。   ・歴史 江戸幕府ができると、多くの大名家が取り潰され、職を失った大量の浪人が溢れた。長嶋礒右衛門という浪人が食うに困った浪人仲間を集めて寺社の境内や空き地で草芝居や見世物をして生計を立てていたが、非人頭の車善七から手下の生業が邪魔されると苦情が持ち込まれ、慶安年中(1650年代)、身分を町人に落としたうえ、乞胸稼業においては善七の支配下に入る取り決めがなされた。 善七のもと、磯右衛門が乞胸頭になり、町人、または身元の明らかでない者で乞胸を稼業する者には「鑑札」を渡し、一人につき18文ずつ毎月徴収した。乞胸頭は無許可で大道芸をする者を取り締まり、その世話と管理をし、浅草溜(善七が管理していた医療刑務所のような施設)の火事の際には囚人の警固もした。その後、1843年(天保14年)の天保の改革で、それまで江戸の各所に住んでいた乞胸も、非人同様、幕府によって一か所に集まって住むように命じられた。 明治4年(1871年)の身分制の解放令で乞胸の名称は廃止された。欧米でのジャポニスムの影響で、乞胸たちの芸も海外で好評を得、開国後の明治から大正にかけて芸人たちの渡航が一時盛んになったものの、国内にあってはハレの場から追放されていき、彼らが育んできた日本の伝統的な大道芸は次第にその姿を消していった。   ●◆「東京の被差別部落の歴史と現状」index http://blltokyo.net/tkburaku/tkburaku/index.html 弾左衛門と江戸の被差別民衆、今日の東京の部落    弾左衛門の支配下にあった、江戸の被差別民衆 http://blltokyo.net/tkburaku/history/goumune.html 2-5 乞胸(ごうむね)  浅草非人頭・車善七の支配下に置かれた被差別民に、乞胸(ごうむね)と呼ばれる人々がいました。大道芸を業とする被差別民であり、その頭は仁太夫と言いました(参考『寛政度文政度御尋乞胸身分書』)。     乞胸が特殊な位置にあるのは、法的にはその身分が町人とされ、大道芸をおこなって金銭を取るときその生業が非人頭車善七の支配を受けるとされたことでした。非人が門付(かどづけ)芸を生業としていたことが、この支配関係に結びついているのではないかと考えられます。   ●寛政度文政度御尋乞胸身分書 http://blltokyo.net/tkburaku/siryou/goumune.html  江戸の町で大道芸をおこなった近世的な「被差別民」乞胸(ごうむね)に関する基礎的史料、『寛政度文政度御尋乞胸身分書』の原文、およびその現代語訳です。原文は東京都刊行『重宝録』第一に所在しています。この文書に関する解説は、一番下にあります。 【目次】    1.『寛政十一年乞胸頭仁太夫書上』(寛政11〈1799〉年)    2.『文政四年下谷山崎町名主書上』(文政4〈1821〉年)    3.《現代語訳・注釈》『寛政十一年乞胸頭仁太夫書上』    4.《現代語訳・注釈》『文政四年下谷山崎町名主書上』    5.《解説》『寛政度文政度御尋乞胸身分書』    ●非人 - Wikipedia   https://ja.wikipedia.org/wiki/非人 非人(ひにん)は、主に、 1.日本中世の特定職能民・芸能民の呼称であり、次第に被差別民の呼称となる。 2.江戸時代の賎民身分の呼称である。 いわゆる士農工商に属さないが、公家や医師や神人等と同様にあくまでも身分制度上の身分とされ、人別帳の枠内にある。この点、身分制度外に位置付けられ江戸時代から人別帳外で無籍の山窩(サンカ)等とは異なる。ただし、サンカとの違いは流動的なもので、非人が流浪生活に入ってサンカとなり、逆にサンカが被差別部落に定住して非人となる例がいつの時代にもあった[1]。 さらに多数説によると、非人は「下人」といわれた不自由民・奴隷とも全く異なる存在であるとする。   ●穢多 - Wikipedia   https://ja.wikipedia.org/wiki/穢多 穢多(えた)とは、日本において中世以前から見られる身分制度の身分のひとつである。日本仏教、神道における「穢れ」観念からきた「穢れが多い仕事」や「穢れ多い者(罪人)が行なう生業」の呼称、非人身分の俗称とする説もあるが、それより古く、古代の被征服民族にして賤業を課せられた奴隷を起源と見る立場もある。 穢多の明確な基点は明らかになっていない。逃亡農民に由来するという推測、皮革加工などに従事する部民という説、中世の元寇に由来するという説、古代の被征服民族とする意見などがあるが、穢多などの被差別民の起源は一様ではなく、雑多な起源をもつ集団であったのかもしれないが、非人と違って、穢多は、職業に関わりなく親子代々承継されたとされる。1885年、東京人類学会の会員であった箕作源八が「穢多ノ風俗」について各地の報告を求め、各地からの被差別部落民にかんする伝承や関係文献が集まったが、その多くは、被差別部落民を日本人とは異なる「人種」として捉え、その起源について論じるものであった。   ●サンカ - Wikipedia   https://ja.wikipedia.org/wiki/サンカ サンカは、日本に過去に存在したとされる放浪民の集団である。本州の山地に住んでいたとされる。サンカの定義については後述のように激しく論争されてきた。サンカという呼称は日本の警察による便宜上のものであり、差別用語としても使われる。   ●呼称  https://ja.wikipedia.org/wiki/サンカ#呼称 「サンカ」を漢字で書き記す時には統一的な表記法は無く、当て字により「山窩」、「山家」、「三家」、「散家」、「傘下」、「燦下」(住む家屋を持たず傘や空を屋根とする屋外に住む存在という意味)などと表記した。 また、地方により「ポン」、「カメツリ」、「ミナオシ(箕直)」、「ミツクリ(箕作)」、「テンバ(転場)」など、呼ばれ方も違う。(それぞれの呼称は、「ホイト(陪堂)」、「カンジン(勧進)」など、特定の職業を指す言葉と併用されることも多い。) サンカの実態調査を試みた立場による呼び名の違いもある。   ●乞胸 【ごうむね】世界大百科事典 第2版の解説. 江戸時代から明治にかけて,都市を中心に活動した雑芸人(ぞうげいにん)で,いわゆる乞食の一種とみなされた人々の呼称。身分制度では町人の扱いを受けたが,万歳(まんざい),大黒舞(だいこくまい),節季候(せきぞろ),厄払,猿若(さるわか),辻放下(つじほうか),説経,講釈など,さまざまな雑芸を演じて門付(かどづけ)してまわり,わずかな報酬をえて生計をたてており,〈物もらい〉とも呼ばれた。その先駆形態は室町末期の《三十二番職人歌合》にすでに描かれ,編笠をかぶり,裸身で,手で胸をたたく風情である。   ●ごう‐むね 〔ごふ‐〕 【乞胸】 江戸時代、江戸市中で辻講釈・綾取り・万歳などの雑芸をして金銭を乞うた者。   ●ごうむね【乞胸】 近世から明治にかけて,家々の門や寺社の境内・広場などで雑芸を演じて米銭を乞うた雑芸人。乞胸頭に銭を上納して鑑札を受けた。   ●ヤクザ  https://ja.wikipedia.org/wiki/ヤクザ 組織を形成して暴力を背景に職業的に犯罪活動に従事し、収入を得ているものを言う。この偏倚(へんい)集団を特徴づける要因の一つに集団内部の「親分子分」の結合がある。 「やくざ」研究の古典的名著とされる岩井弘融の『病理集団の構造』の序説で「親分乾分(岩井は故意に、乾としている。読みは「こぶん」で同じ)」の関係は民俗学(柳田國男他)や社会学(川島武宜他)において説明されるところのオヤカタ・コカタの関係と共通の社会的基盤を持つと説明している。
戦後に来日したニューヨーク・ポストの特派員ダレル・ベリガンは、その著作で有名な『やくざの社会』の中で「日本の家族は与太者の集まりであり、家族の長は与太者の長である」という文から始まる、日本社会の内部構造についての報告をまとめている。また、かつて横浜の塚越一家に所属した右翼活動家の野村秋介は、「やくざ」について説明する際に「やくざとは職業ではなく」、「実業家、ジャーナリスト、政治家にもやくざは存在する」と発言したが(出典:『暴力団新法』)これも個人間の繫がりとして絶対的権威(親分)と追随者(子分)の関係が広く社会で見られる点を示唆するものである。ただし、その上で「やくざ」を特徴づけている別の内部要因として、集団の共通目的、成立の社会的条件、存続のための経済的活動、社会的価値基準から逸脱した副次文化等がある。ジャーナリストの朝倉喬司は明治の自由民権運動と「やくざ」の関連を指摘する一方で現代の制度的空間や価値基準との関連において「暴力団」と呼ばれるとしている(出典:『ヤクザ』)。   ●子連れ狼 死に風に向う乳母車 亡八者の首領は女(浜木綿子)で、酉蔵と名乗った。この浜木綿子がいい。 男勝りの キップと度胸、ドスの効いた、しかし唄うような台詞回し。 そして何よりもあの目。一度も 瞬きせず、一刀に挑むような力強いあの目線。   ●「子連れ狼(第3シリーズ)」長坂作品エピソード 第3話「来ない明日へ」  http://www.tcp-ip.or.jp/~goshii/t02_data/06_story/1976_01_kozu_M03_story.htm そんな中、一年前に一刀と出会い、事を構えた木颪の忘八者・酉蔵は近くに一刀がいることを知る。一刀に想いを寄せる酉蔵は、一刀に接触。一刀に酉蔵らと同じ格好をさせ改め番所を突破する。一刀に協力した為に捕らえられた酉蔵は、松崎代官所代官・佐久間軍兵衛から、義父・尾形三郎兵衛の命と忘八者存続を引き替えに一刀を討ち果たすよう脅迫され、やむなく一刀と対決。酉蔵は、すべてを察した一刀によりその命を絶った。産まれてからずっと男として生きてきた酉蔵は、初めて女として死んでいったのだった。 本作のゲストである木颪酉蔵(演:浜木綿子氏)は、第1シリーズ第7話「あんにゃとあねま」にて初登場。本作にて「あんにゃとあねま」のシーンが回想シーンとして流れている。一部の間で「ぶりぶり」が有名になったこの酉蔵だが、若山富三郎氏版の映画「死に風に向かう乳母車」(1972年)でも浜木綿子氏が同役で出演。まさにハマリ役といえる。なお、北大路欣也氏版(2002年~2004年)では池上季実子氏が酉蔵役を演じている。   ●『子連れ狼 / あんにゃとあねま』 https://ameblo.jp/kazzp0610/entry-11480781287.html  この作品の見どころは、やくざものの姐御を演じた浜木綿子だろう。純情可憐な少女を演じた竹下景子とは異なり、男勝りの度胸と貫録がありながらも、女性としての色気をぷんぷんさせている女を演じ、美しさもひときわだ。本作で最も目立った役者であった。  浜木綿子との対決 ●あんにゃとあねま https://youtu.be/7vXf5Xrymnc   ●時代劇屈指の怪キャラ・・・阿部頼母 https://ja.wikipedia.org/wiki/子連れ狼#.E6.B1.9F.E6.88.B8.E5.B9.95.E5.BA.9C  阿部頼母(あべ たのも) 代々公儀御口唇役を務める旗本阿部家当主。別名を怪異(かいい)。性格は残虐かつ保身的。物事に熱中すると「毒屋の子」なる独自の歌を口ずさむ癖がある。 母の不義密通によって生まれたため、父の監物から疎まれ、御口唇役の育成の名目の下、日夜その食事に毒を盛られ虐待に近い育て方をされる。そのような中で独自に毒薬の調合法を編み出し、それを使って両親を毒殺、阿部家を相続した。以降、公方の深い信任を得て毒薬の大家となった。 その後、柳生烈堂に代わり拝父子の抹殺を命じられると、烈堂を追い落として幕政の実権を握る好機と考え、阿片漬けにした夜鷹を使うだけでなく、自ら変装して直々に一刀らの毒殺を図るがことごとく失敗。さらに、頼母ら阿部一族の抹殺を狙う烈堂の毒殺にも失敗し、逆に烈堂に弱みを握られる結果となる。そんな中「柳生封廻状」を手に入れ、これを公方に差し出し「柳生に謀反の企てあり」と訴え出る。これにより、烈堂は江戸城で監禁されるが、烈堂は「草」と呼ばれる密偵を招集し、頼母の担当である江戸城内の御膳所を放火。これが失火と断定され、加えて当日は公方が紅葉山東照宮に参詣する重要な日であったため、御膳所の責任者である頼母は責任を追及され切腹を命じられる。頼母はこれを嫌がり抵抗するが、���戸城に潜入していた一刀から諫められると、全てを諦めたかのように一刀の介錯によって死亡した。なお、萬屋版のドラマでは、切腹の場での騒ぎを聞いて訪れた一刀の姿を仰ぎ見ながら、「そなたや烈堂よりも先に死ぬとは」と恨みのような言葉を最後に残し、一刀によって斬り殺される描写に変更されている。 『子連れ狼』の続編漫画『そして - 子連れ狼 刺客の子』では、頼母の子である秋田高星が登場���ている。   ●『椿三十郎 殺陣シーン』黒澤明...監督作品 https://youtu.be/cbENunuojXA このシーンを観るためだけでも映画館に足を運ぶ価値がある もっとも見逃しそうな位に目にも留まらぬ殺陣だけど   ●『Yojimbo 殺陣シーン』三船敏郎と仲代達矢 https://youtu.be/zCjsazHO0c0 https://youtu.be/SfpagB8wWng   ●殺陣 - Wikipedia  https://ja.wikipedia.org/wiki/殺陣 殺陣(たて)もしくは技斗・擬斗・擬闘(ぎとう)は、演劇・映画・テレビドラマで俳優が格闘シーン時に素手素足もしくは武器を用いた演技。 殺陣(たて)は主に時代劇、技斗(ぎとう)は主に現代劇に用いる。   ●生意気/こざかしい/利いた風 の使い分け  利いた風な口をきく 1  いずれも、目下の者に対していう語。 2  「生意気」は、それにふさわしい身分や年齢ではないのに、出すぎた言動をすること。 3  「こざかしい」は、利口ぶって、「利いた風」は、わかっているふりをして、出すぎた言動をすること。「こざかしい」は「小賢しい」とも書く。 4  しゃらくさい 【形】    分(ぶん)不相応な感じがして生意気なこと。やや古めかしい言い方。    「そんなことを言うなんてしゃらくさい」 5 ちょこ才 【名・形動】    小才があって生意気なこと。やや古めかしい言い方。「ちょこ才なやつめ」 6  小生意気 【名・形動】    いかにも生意気なさま。「小生意気な口をきく」   ●利いた風(キイタフウ)とは - コトバンク [名・形動] 1 いかにも物知りぶったなまいきな態度を見せること。また、そのさま。知ったかぶり。「利いた風な口をきくな」 2 気の利いていること。また、そのさま。 「―な名をつけて高慢な顔したと聞いたが」〈黄・造化夢〉   ●ルーツでなるほど慣用句辞典 利いた風  きいたふう https://imidas.jp/idiom/detail/X-05-X-07-1-0002.html よく知ってもいないのに、なんでも知っているという生意気な態度をとるさま。 「きみが解決するって? 事情も分からないくせして利いた風な口を利くな」 〔語源〕もと、気が利いたようすの意。   ● 『利いた風(きいたふう)』の意味 - 日本語俗語辞書 http://zokugo-dict.com/07ki/kiitahuu.htm 利いた風 Kîtafû 利いた風とは、よく知らないことを知っているかのように語る口ぶりのこと。 『利いた風』の解説 利いた風とはよく知らないことをいかにも知っているかのように語る口ぶりのことで、そういった口ぶりや態度に対し、否定的・批判的な意を含んで用いる言葉である。目下の人や快く思っていない相手が知った風な口をきいたときなどに言う「利いた風なことを言うな」というセリフで用いることが多い。 「どこかで聞いただけの話しを、よく知っているかのように語るな」という意味から【聞いた風】という表記と間違いやすいが利いた風が正しい。 利いた風は近年、小説やドラマなど特別な場で使われる程度で日常会話ではほとんど使われることがなくなっている。   殺陣(たて)は何度見てもいいね。 三船敏郎と仲代達矢との絡みの殺陣は。 用心棒の最後のシーンで下の動画の中で加山雄三が「お見事」 と言った ことに 「利いた風なことを吐かすな」と叱られる。 今は 三船さんも見ていてあんなふうに演技したんだと苦笑いしているのでは。 加山雄三は今はもう80かな。 見たらなんて思うかな。俺もこんな小僧っ子の様な時も有ったかなと。 今は 説教する側だね。わずか 3分ほどのシーンの中に色んなものが入ってる。 血しぶきは 失敗だけどそのまま封切りしたらしい。 いつかそんな事を言ってる動画を見た人がある。 このシーンは珍しくワンカットで納めたとも 言っていた。 こんな事言うとどうかと言われるかな。今の時代劇ドラマ 良いと思えない。 私だけかな。日本人の仕事は手抜きが多くなっているように思う。 やはり 縄文人のDNAが 薄くなって 優しさが抜けてしまってきているのかな。 午前中の国会中継で トップのリーダーが質問に答えていたが なんか気抜けした。 トップがあれでは 何しても 良心が無いのは今の地球全体になっている。 私だけがそんな事考えていて 最近のジジババは 腑抜けになっているとコメント されていたけど 間違いないね。 なんか 愚痴ばかりになっている。 ここに来て 消費減税ナンテ話が出てきている。 あれだけの税金使い 今更 それはないと思うのは わたしだけ。
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ama-gaeru · 6 years
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林田の世界(初稿版)
11話  カリブの海賊は人を食わない
 ……。
 「ルービックキューブだったらいいのに」
 震える声で呟き、願い、撫でる。砂が崩れるような感触。この感覚はなんだ。粒子的な何かが組み替えられてるってことなのか。
 撫でていた手をどけると、ルービックキューブがここにあった。ずっと前からここにあったという風に。
 そして俺がルービックキューブを林田の部屋から持ってきたという過去が出来上がる。
 口の中が乾き、体は冷たい汗で湿る。頭蓋骨の中で脳みそが回転したみたいだ。気持ちが悪い。
 崩れかけた体を彼女が支えてくれた。
「無理しないで。立ってられないなら私にもたれていいから」
 めっちゃ良い子。
「ありがとう」短く礼を言ってから自分の足で立つ。
「席に戻ろうよ」
 俺は彼女には答えず、ルービックキューブを見つめる。どっからどうみても普通のルービックキューブだ。重さも。質感も。当然、ガチャガチャと動かすこともできる。
 あの時、林田は他に何を出したっけ。あやとりとか? あとは……。
「……石鹸?」
 俺は呟き、撫で、感触だけが存在する砂を崩す。
 そして思った通り、石鹸が出現した。
「カスタネット」
 ルービックキューブは消え、そこにカスタネットが。
 他の物は? 林田が変化させなかった物も出せるのか?
「……サイコロ」
 そこにサイコロがある。でたわ。きたわ。
 俺と林田はラスベガスのカジノで大勝ちしたことがあり、このサイコロはカジノ側にお願いして、記念に持ち帰ったものだという過去が出現する。勿論、俺も林田もラスベガスに行ったことはない。
 スーパーボール、お手玉、ウルトラマンの人形、腕時計、手鏡−−俺は元々は数珠だった物を思いつくまま色々な物に変えてゆく。
 変える度に新しい過去が影のようについてきた。
 どんな過去が出てくるのか、俺には予想もコントロールもできない。夜店の紐くじみたいだ。
「……お金」
 ずっしりとしたお札の束が手の中に現れた。
 おっ! っと興奮したのもつかの間。左頬に彼女の平手打ちが飛んできた。容赦のない一発だった。いっってぇ。
「最低! 何考えてんの!」
「ちょ、え」
 もう一発右頬が、今度はグーで殴られる。すっげぇ痛ぇ。舌かんだ。痛ぇ。
 混乱しながらも記憶を探ると、俺が林田の香典を盗んだことが彼女にバレたという過去が新しく出来上がっていた。
「何じゃないでしょ! 見損なった!」
 彼女が顔を真っ赤にしてもう一度俺を殴ろうと手を振り上げたので、俺は「誤解だぁ!」と叫び、札束を数珠に戻した。
 その瞬間に香典泥棒の過去は遠のき、殴られた頬の痛みは消えて、彼女が手を振り上げたのはどこからか入り込んでいた蝿を追い払うためだという理由に変わった。
 間違いない。これは林田の力だ。
 でもなんで俺が?
 俺は包帯に包まれた左手を見つめる。思い当たる点があるとすればこの傷だ。怪我をした時、林田の血が流れ込んだ。手からも口からも。
 ……いいのか。神的な力がそういう、なんか、物質的なアレで拡散しちゃって……。いや、せっかくだから貰えるもんは貰うし、使えるもんは使うけど。
 俺、そういうところあるから。アイ・ハブ・ザ・パゥワァー。 
 俺は喪服を着た人々に囲まれている林田の棺に向かって足を踏み出す。
 この力があれば、大体のことはなんだってできるはずだ。猿を人に変えたり、猫を人に変えたりできるんだから、死んでいる林田を生きている林田に変えることだって、もちろんできるはずだ。そうだとも。
 いけるいける。
 絶対いける! できるって! 願って、撫でて、戻せばいいんだ。林田にできたんだから俺にだってできるって。やれる。やれるって。気合いだ。気合いだ。気合いだー。京子ー。
 俺の脳内アニマル浜口が、何とも言えない表情を浮かべている脳内浜口京子を肩車して走り回り始める。京子ー。京子ー。京……あ、なんか違うのも出てきた。
 アニマル浜口親子が消えて、変わりに黒いレザーを超格好良く着こなした超格好いい外国人が俺の脳内に姿を現した。
 熱に浮かされてハニマライズされていた頭が冷静になる。
 外国人は全身にじんわりと汗をかき、脇腹に包帯を巻いた姿で俺の頭の中に横たわっている。日焼けした肌。黒い巻き毛。エキゾチックな顔つき。
 この人、知ってる。
 「ジュラシックパーク」に出てくる超格好いい人だ。俺の「大人になったらこういう人になりた��ラインキング」でオールタイムベスト5に入ってる人。
 俺もう大人だけども。そういうことじゃないんだ。そういうことじゃないんだよ、憧れっていうのは。
 誰かがティラノサウルスに襲われていたら、発煙筒を手に囮になれるような人間になりたいじゃん。あと黒いレザーを着こなしたいし、哲学的で難しくて抽象的な言葉で|頭よさ男《あたまよさお》に見られたいじゃん。シュレディンガーの猫とか言ってみたいじゃん。あとアイヒマン実験とか、ドラップラー効果とかって言ってみたいじゃん。頭いい感じがするじゃん。ドラップラー、ドラップラー!
 俺の脳内で憧れの彼が言うじゃん。
 −−どっかで蝶々が羽ばたくと、遠いどっかでなんか起きる−−。
 俺の記憶頼りだからか、あまり格好良くない。ぼんやりしてる。
 −−カリブの海賊は人を食わない−−。
 全然関係ないところだけははっきり思い出せる。
 −−カオス理論だ−−。
 格好いい人がキリッと言う。
 俺は棺に向かっていた足を止める。
 ……ちょっとした変化が思わぬ惨事を生むかもしれないから、軽率に何かを出現させて、変な過去を生まない方がいいって、俺の無意識の思いが憧れのあの人の姿を借りて浮かび上がってきたんだろう。
 ……。
 知ったこっちゃねぇっすわ。
 アニマル浜口が京子ーと叫びながら格好いいあの人にタックルをかまし、俺の頭から放り出した。
 林田が死んだんだ。あいつの身に起きてることを誰にもわかってもらえないまま。
 これ以上の惨事なんてあるもんかよ。
 俺は棺に向かいながら数珠を撫でる。
 林田を撫でる前に、物と同じように生きているものを出せるのかどうか試しておかないと。
 何を出せばいいかを考える。
 小さくて、掌サイズで、ここで出しても騒ぎにならない生き物。虫は却下。気持ち悪いから却下。哺乳類オンリー。そうだな。ハムスター。ハムスターでいこう。
 願い、撫でて、砂が崩れる感触。
「キュッ!」
 あまりにもあっさりとハムスターが手の中に出現した。ピンク色の鼻を忙しく動かしている。めっちゃ生きている。めっちゃ元気。
 ハムスターは頭だけを俺の手から出して「キュッキュキュッ!」と体の割に大きな声で鳴いた。毛並みや具体的な顔付きは例のごとくぼんやりしてよく見えない。
 手の中でハムスターの小さな手足が忙しく動く。少し痛いけど、痛いよりもくすぐったいの方が強い。温かくて、ドクドクと心臓が脈打っているのが伝わって来る。
 ハムスターが出現すると同時に、辻褄あわせの新しい過去も俺の記憶の中に出現した。
 俺は振り返り、ハムスターが出現する今のために、後付けで出来上がった過去達に目を向ける。
 俺の数歩後ろに小さな女の子とその両親が立っている。
 さっきまで存在すらしていなかった彼らは、付け足された記憶によると林田の親戚の夫婦とその娘さんだ。このハムスターは娘さんのペット。
 女の子は蓋の空いたプラスチックのカゴを胸の前で抱えている。どうしてもハムスターと離れたくなくて葬儀に連れてきたのだ。そして葬儀に退屈して蓋を開けてしまい、ハムスターは逃げ、こうして俺に捕まった−−そんな、辻褄あわせの新しい過去。
 このハムスターを元の数珠に戻せば、彼らはどうなるんだろう? さっき札束を消した瞬間に過去が消えたけど、それと同じようにハムスターが消えたら彼らは丸ごと存在しなかったことになるんだろうか?
「その子、私の!」
 女の子の顔は認識できないけど、彼女の瞼が赤く腫れていることや、頬に涙の筋が残っていることはわかった。透明なのにニヤニヤだけを残す猫みたいだ。
「すいません。捕まえてもらっちゃって」
「どうしても連れていくってきかなくて……非常識だとは思ったんですが」
 両親が俺に頭をさげる。彼らも見ようとすると顔が消える。記憶にとどめておくことができない顔。
 俺はハムスターを握る。
 消そう。
 もう命を出現させられるっていう確認は取れたんだ。
 いないはずのものがいるの怖いもん。だめでしょ。いちゃいけないはずのものがいちゃうのは。どうせ今さっき、ハムスターの都合ででてきた存在なんだ。心なんてないんだから。よくできた村人Aなんだから。
 −−それって俺がお前をそういう風になるように願ったからなのかもしれないって気がずっとしてるんだ−−。
 俺はハムスターを撫で消そうとしていた手を止める。
 −−お前に心はあるよな? お前の意思で、俺と友達になったんだよな? 俺がそうなるように作ったからじゃないよな? −−。
 存在しない女の子が存在しない顏で俺を見上げている。俺がハムスターを返してくれるに違いないという期待を俺に向けている。
 俺がハムスターもろとも彼女をなかったことにしようとしてるなんて想像すらしてないだろう。
 俺は握っていた手を少し緩める。ハムスターが顏を出した。
 女の子と目線を合わせるため俺は少し腰を屈める。
 ……彼らに心があるかどうかは、俺が決めることじゃないよな。
 それは彼らが決めることだ。俺に心があるかどうかも俺が決めることだ。俺を作った林田ではなく。
 「もう外に出しちゃだめだよ」
 女の子はハムスターを受け取ると、大事そうにカゴの中に入れて蓋を閉めた。
 蓋にはキラキラしたシールが貼ってあり、そこにハムスターの名前が書かれていた。それが子供らしいくねくねした文字だということはわかるのに、俺はそれを読むことができない。
 女の子の字が下手��からではなくて、病室の札に書かれていた俺の名前が読めなかった理由と同じだ。名前なんかないから。
 ハムスターはおが屑の中に素早く身を隠した。
 俺は軽くコツコツとカゴの側面を指で叩く。
「幸せに生きろよ、俺の数珠ちゃん」
 ハムスターの大福を思わせる尻が左右に揺れておが屑の中に消えたかと思うと、同じ場所からひょこっとハムスターの顔が出てきた。
「わぁ!」
 思わず悲鳴をあげて飛び退く。
 参列者の非難がましい、あるいは好奇心で満ちた視線が俺に突き刺さる。
「ちょっと、どうしたの?」
 彼女がカゴを覗き込む。カゴの中ではおが屑から飛び出したハムスターが忙しく口を動かしながら小さな手で自分の顔を撫で回していた。
 ハムスターの大きさはコンビニのおはぎくらい。黒くて丸い模様が首の周辺をぐるっとまわっていて、ネックレスをかけているように見えた。存在がぼんやりしていたさっきまでとは違う。もうどこからどう見てもただのハムスターだ。
「ただの可愛いハムちゃんじゃないの」
「ハムちゃんじゃないよ。じゅずちゃんだよ」
 女の子が蓋に貼られたシールが彼女によく見えるようにカゴを掲げて見せる。
 さっきまで読めなかった文字が読めた。
 じゅずちゃん。
 はっきりとそう書いてある。
 ……俺が呼んだから、そういう名前になったのか?
 俺は女の子に視線を向ける。……。
「君の言う通りだね。……静香ちゃん」
 名前を付けた瞬間に、今までぼんやりしていて見ることができなかった彼女の顔が、カメラのピントがあったみたいに見えるようになった。
 定規で線を引いた様な眉毛。低いけど形のいい鼻。小さな口。大きな前歯。クリクリした目。髪の生え際にある小さな黒子。
 俺がそうなってほしいと考えた顔じゃない。彼女の過去と同じように自動的に出来上がったんだ。
「じゅずちゃんはハムスターだけど、ハムスターはじゅずちゃんじゃないから、ちゃんとじゅずちゃんって呼ばなきゃいけないんだよ」
「しずちゃん、お兄さんに迷惑かけちゃだめでしょ。静かにしてなさい」
「そうだぞ、静香」
 俺は静香ちゃんの後ろにいる顔の見えない両親に向き合う。
「いいんですよ」えーと「……新一さん、蘭さん」
 ピントが合う。
 両親の顔が出来上がった。蘭さんは銀フレームの四角い眼鏡をかけていて、新一さんはお洒落な口ひげを生やしている。2人ともどことなく静香ちゃんに似ていて、俺が名前のモデルにしたコナンのキャラには少しも似ていなかった。
 俺の中の記憶が塗り変わる。最初からこの家族は俺の後ろに立っていて、最初からこの顔だったという記憶ができる。
 くらくらする。気持ち悪い。
「ねぇ、お願いだから無理しないで。顔色が悪いよ」
 彼女が俺の耳元で囁く。
「……大丈夫。本当、大丈夫だから。えーと」
 美人っぽい名前。美人っぽい名前。美人っぽい名前。メーテル? いや、ない。メーテルはない。現実的な意味で日本人の名前にメーテルはない。ブルマ? ないないない。えーと。
「大丈夫だから、心配しないで。麗子さん」
 彼女は後ろを向いたままだった。
「麗子さん?」
「……白鳥、麗子さん」
 彼女は後ろ姿のまま黙る。顔は見えない。でも表情は伝わった。「何言ってんだこいつ」的な表情だ。
「ちょっと休んだ方がいいと思う。全然大丈夫じゃないよ。興奮しすぎたんだよ。私、部屋まで付き添うから」
 そう言って彼女は俺の手をとって式場の外へ連れ出そうとした。案外、力が強い。
「あ、あ、いや。本当、大丈夫だから。少しほら、ちょっと混乱しただけ。大したことないから。俺、俺、もう1回だけ、林田の顔を見てくるよ」
 俺は彼女の手を振り払い、再び林田の棺に向かって歩き出す。
 出現させた人が名付けないといけないのかもしれない。
 俺と彼女は林田が出現させた。だから林田自身が名前をつけないと、現実に馴染めないんだ。多分。
 「はいはい、すいません。ちょっと失礼しますよ。すいません。すいませーん。とおりまーす」
「おい、順番があるだろう」
「はいはい。すいません」
 俺は棺の周りに集まっていた人々をかき分けて前にでる。参列者が「タイムセールじゃないんだから」とかぶつぶつと文句を言ったけど、そんなのどうでもいい。林田救助が最優先だ。
 俺は身をかがめて棺ののぞき窓に体を突っ込む。
 本当の思い出じゃない思い出の品に囲まれた林田の顔が見える。鼻の穴に綿が突っ込まれているのにこの時初めて気がついた。
「ちょっと、あの人どうしたの」的なざわめきが投げかけられるけどかまわない。
 俺は生きている林田を思い浮かべながら、死んでいる林田の顔を撫でた。
 ドライアイスの冷たさが移っている。氷みたいだ。死の温度にたじろぐけど、ここで止めるわけにはいかない。
「林田」
 俺は呟き、願い、撫でる。砂が崩れたような感触があった。
 でも林田は死んだままだった。
「林田」
 もう一度撫でる。砂が崩れる感触。手が離れる。
 まだ林田は死んだままだ。
「ちょっと、あなた。仏様の顔に触っちゃだめよ。詰め物がとれちゃうでしょう」
 老齢のご婦人の声が聞こえてきたけど俺は無視する。
 焦りで掌に汗が滲んだ。どうして生き返らない? 命だって出せるはずだぞ。猿を人に変えたり、猫を人に変えたり、数珠をハムスターに変えたりするよりも、死んでる林田を生きてる林田に変える方がずっと難易度低いんじゃないのか。
「林田ってば」
 もう一度撫でる。砂が崩れ���感触。手が離れる。
 林田の目が開いていた。
 煮詰めた黒豆を思わせるとろみのある瞳が、確かに俺を見ている。
 よ−−。
「っしゃぁー!」
 俺は歓声をあげ、ヒーローズに出てた人みたいに天に両手を突き上げた。
 あの丸くて、メガネで、黒髪で、オタクの。ヤッターの人。大半の日本人が最初「中国系の俳優さんだな。ハリウッドってそういうことするよね」って半笑いになって、後から本当に日本人だって知って、「マジか!」ってなった人みたいに。
「何をしてるんだ! やめなさい!」
 誰かが俺の肩を掴んで乱暴に棺から引き剥がした。俺は棺の側に尻餅をつく。右手の傷跡を強く床に押し付けてしまい、思わず悲鳴が漏れた。
「乱暴しないで! 彼、病人なんです!」
 彼女が駆け寄ってきて俺の側に膝をついた。
「だからといって……よくないでしょう。こういう場なんですから」
 俺を引き剥がした男が狼狽しながら周囲を見回す。自分は悪くないと肯定してもらいたがっているように。非難がましい目を向ける人が半分、よくやったと褒めるような目を向ける人が半分。
「大丈夫? 立てる?」
「俺より林田だよ! 生きてるんだ!」
 俺は叫んだ。ヤッター! ヒーローズみたいに。ヤッター!
「本当に? そんなことが……」
 男が棺の中を覗き込んだ。彼女も立ち上がって棺に駆け寄る。それに林田の両親も加わった。
「目を開けてるだろ! そいつ、生きてるだろ!」
 棺を覗き込んでいた人たちは俺の声に返事をしない。
「なぁ! 林田! 出てこいよ! 林田!」
 ヘイヘイ林田! ヘイカモーン! ででこいやー! ででこいやぁー!
 林田のお母さんが顔を抑えて泣き始めた。
 林田のお父さんが彼女の肩に腕を回して何か語りかけている。
「詰め物が外に出ちゃって瞼が開いただけだよ。全く。仏さんの顔にベタベタ触るなんて」
 さっき俺を突き飛ばした男が非難を込めた声で言う。
「そんなわけない! だって、ちゃんと願ったんだ!」
 俺は立ち上がって叫ぶ。
「願って、撫でて、砂が崩れるような感じがして! 生きてる林田に変えたんだ!」
「いい加減にしてくれ! 息子の葬儀だぞ!」
 林田のお父さんの悲痛な叫びが胸を刺し、俺は一瞬ひるむ。過去が変わる前と同じベニチオ・デル・トロの目つきで、林田のお父さんは俺を睨んでいた。怖い。
「けど、俺、ちゃんとやったんです! 目を開けたんです! 俺を見たんだ!」
 彼女が顔を横に振る。肩が小刻みに震えている。泣いているんだろう。
 このアウェイ感!
「だって、ほら、待って。思い出すから。生きてる記憶あるはずだから!」
 俺は新しく出来上がっているはずの、林田が生きているバージョンの過去を探す。
 でも、新しい記憶はどこにもなかった。林田が死んでいる過去しか思い出せない。
「そんな馬鹿な! だって、さっき、目ぇ開けてたじゃん!」
 俺は棺に駆け寄ろうとしたが、数人の男たちに腕を掴まれて阻止されてしまう。その中には俺がさっき実在にしてやった新一もいた。なんて恩知らずなんだ、工藤! 苗字が工藤かどうかはらないけど!
「落ち着きなさい! 君!」
「林田っ! おい! 林田! 何やってんだよ! 起きてんだろ!」
 俺はジャンプして棺の中を覗く。
 林田が目を開けていた。
 でもピクリとも動かない。死んだままだ。そんな。
「もう一度! もう一度やらせてください! 俺、林田を取り戻せるんだ! 本当なんです! 信じてくれなくていいんです! ただもう一度だけ、林田の顔を撫でさせてください!」
「もうやめないか。みなさんの迷惑になるだろう!」
 一段と強い力で腕を掴まれる。振り返るとそこにはお父さんが立っていた。
 さっきまでいなかった! この葬儀には俺だけで来たのに!
 お父さんは目に見えない顔をくしゃくしゃにした。
 新しい過去ができている。
 《《俺の脳腫瘍が原因で起きる発作は近頃頻繁になっていた。幻覚や幻聴を見ることも多い。だから万が一の時のためにお父さんは俺と一緒に葬儀にでたのだ。》》
 林田が目を開けて俺をみたという俺の現実は、後付けの過去によって幻覚になってしまった。
「こんなの汚ねぇぞ! 後出しばっかしやがって!」
「息子が大変ご迷惑をおかけいたしました。本当に申し訳ございません。もう我々は失礼いたしますので」
 お父さんは俺をぐいぐいと引っ張って行く。
「嫌だ! 帰らない! お願いです! もうちょっとでなんとかなるかもしれないんだ!」
 お父さんの手を振り払おうとした時、また脳みそがぐるぐると頭蓋骨の中で回転するような感覚に襲われた。
 俺はその場にへたり込む。気持ちが悪い。スカイツリーのてっぺんから一番下までを一気にエレベーターで降りたみたいだ。スカイツリー行ったことないけど。突然視界が狭くなった。手足がしびれる。
「あやじだが、おで、おえは、おえは、はあいたを」
 顎の感覚が鈍り、舌が重くなった。体がゆっくりと床に倒れてゆく。受け身を取ろうとしたけど、腕が自由に動かない。
「誰か! 誰か! 救急車を!」
 お父さんの声と、人々の悲鳴がどんどん遠くへ消えてゆく。
 嫌だ。
 気絶したくない。
 俺は顔を動かし、目を林田の棺に向ける。
 上手く動かない手を林田の棺に伸ばす。
 林田を取り戻さなきゃ。
 暗くなる視界の中にドミノピザの広告が浮かぶ。
 −−致命的な脳腫瘍はいかがですか? −−
 うっせぇんだよ! 潰れちまえ!
 こうしてまたしても、俺は病院のベッドで目を覚ました。デジャヴ感。
 葬儀は終わっていて、林田は火葬されていて、あいつの骨壷は林田家の墓地に収められていた。
 俺は見舞いにきたお父さんや妹や彼女に「林田は生き返っていたんじゃないのか」としつこく問いただしたけど、返ってくる答えは哀れみと悲しみが滲んだ「それは脳腫瘍が見せた幻覚だ」だけだった。
 親友が脳腫瘍により若くしてこの世を去り、自分自身の脳にも同様の腫瘍が見つかったことで俺は今までにない強いストレスに晒され、結果、葬儀の場で発狂した——ということになっていた。なっていたというか、俺以外にとってはそれが事実だ。
 俺は命短しかわいそ狂人だ。
 これじゃぁまるっきり林田のリプレイじゃないか!
 俺が意識を失っている間に家族と医者の間でどんな話が交わされたのかははっきりしない。
 でも俺の「家に帰りたい」という願いは却下されてしまった。自暴自棄を起こして、取り返しのつかない何かをやらかすのではないかと、心配されていたんだと思う。
 夜になると俺は布団を頭にかぶって泣いた。
 家族の前では泣かなかった。ただでさえ悲しんでいるお父さんや妹が余計に悲しむから。
 俺は、人生に投げ込まれた悲しみの手榴弾をその身で抱きしめて、周辺に被害が及ばないように爆風を受け止めるキャプテン・アメリカの人だ。
 そう思うと自分の死が少しは意味あるもののように思えて慰められた。悲しみの手榴弾というのは、微笑みの爆弾的な、そういうのだ。めちゃめちゃ悲しい時だってふいになぜか乗り越える勇気とパワー、湧いてくるのは的な。
 悲しいのにくだらないことを考えてしまうのは、抱えきれない悲しさを心が緩和しようとしているからなんだと思う。大怪我するとドーパミンがいっぱい出て、痛みを感じなくなるとか、そういうやつの心バージョン。
 涙は止まらなかったし、腹の底で悔しさは燃え続けて、俺を内側から容赦なく焼いた。もっと上手いことやれていたら何とかなったんじゃないかという思いが強かった。
 泣いて泣いて吐いて吐いて(うぇうぇげーげー)、泣いて吐いて吐いて(うぇげーげー)。
 そうこうしているうちに、またしても強い発作に襲われて俺は意識を失った。
 幸い1、2時間で意識は回復したけれど、このままでは遅かれ早かれ林田の後を追うはめになる。
 俺は死ぬ−−何を考えても、最後にはここに意識が持っていかれてしまう。
 死について考えるのは体内に2種類の蛆虫を飼うってことだ。俺は死ぬ。
 不安と恐怖。俺は死ぬ。
 そいつらは俺の中で蠢き、俺の気力と体力とアニマル浜口的な魂を貪り食ってゆく。俺は死ぬ。
 眠らなければいけないのに眠れず、食べなければいけないのに食べられない日々が続いた。俺は死ぬ。肌は弛み、腕には血管と骨が無様に浮き出した。俺は死ぬ。ただただ大きな何かに巻き込まれたままで。俺は死ぬ−−冗談じゃない。
 俺はまだ蛆虫に食いつかれていない気力とアニマル浜口をかき集め、この状況に蹴りをつけることにした。自分が何と戦っているのかわからなかったけど、負けたくはなかった。足掻くだけ足掻くんだ。俺って、そういうとこあるから。
 俺は命短しかわいそ狂人の立場を最大限利用し、医者の顔を撫でさせてもらった。医者は「何のことかわからないけど、それで命短しかわいそ狂人の気が済むのなら」という顔をしていた。
 俺は「この医者が世界一の脳腫瘍専門の名医でありますように」と願った。砂が崩れ、確かに医者は脳腫瘍専門の名医に変わった。
 過去も変わった。
 医者は俺のお父さんの学生時代の親友ということになった。彼はお父さんに頼まれて俺の診察にあたったものの「ここまでくると手の施しようが」と言うしかなかったという過去ができた。
 結果的に俺の脳腫瘍はより大きくなった。
 墓穴だ。文字通り墓穴を掘った。墓場に突っ込んでいる足が片足から両足になった。アニマル浜口の残機が減った。
 次に俺は医者から処方された薬を撫でて「脳腫瘍が劇的に縮小する薬になりますように」と願った。砂が崩れ、薬はそういった薬になった。
 過去も変わった。
 脳腫瘍が劇的に縮小する薬は脳腫瘍だけではなく、脳そのものにも損傷を負わせる強い副作用の薬だったという過去ができた。
 俺の脳腫瘍は劇的に縮小したが、その変わりに海馬に深刻なダメージを負い、痴呆に近い症状が現れた。おまけに脳腫瘍の縮小は一時的なもので、すぐに腫瘍は元どおりの大きさになった。
 俺は墓穴の中に寝転がっている状態になった。アニマル浜口の残機が減った。
 次に俺は俺の頭を撫でながら「脳腫瘍がなくなりますように」と願おうとした。
 林田が死んだ時、次々と現れる過去の思い出に圧倒され、どれが今に繋がる過去なのかわからなくなって掌で額を押さえたことがった。あの時、俺の額は砂みたいになって、俺の指が額の中に沈み、そしてその時求めていた今に繋がる過去を思い出すことができた。
 だからそれと同じように自分の体も弄れるんじゃないかと思った。
 でもできなかった。砂のような感触を感じた瞬間に、身体中が凍りつくような恐怖を覚えた。まるで自分の体を自分で解体しているような、一度手をつけてしまったら取り返しがつかないことになりそうな嫌な予感がした。本能的な恐怖が俺に「あかんやつや」と告げていた。俺はそれ以上どうしても踏み込めなかった。
 最後に俺は医者から自分の脳が映ったレントゲンを受け取った。
 そこにはテニスボール大の見事な腫瘍と、スポンジみたいに穴だらけになった海馬が映っていた。
 これでダメなら本当にもう何も打つ手がない。
 俺はレントゲンを手に取り、腫瘍が消えてなくなるようにと願い、撫でた。
 砂が崩れるような感触。手をどけるとレントゲンから腫瘍は消えた。
 そして新しい記憶が出来上がった。
 医者がレントゲンを取り違えていたという過去だ。俺が腫瘍を消したレントゲンは他の誰かのレントゲンだったということになり、俺の腫瘍は脳から消えはしなかった。
 何枚ものレントゲンでチャレンジしてみたけど、どうしょうもなかった。変える度に医者がレントゲンを取り違えたという過去になった。医療ミス。医療ミスの温床だ。
 こうして打つ手は消えた。俺は死ぬ。間違いなく死ぬ。茫然自失とはこのことだ。アニマル浜口の残機は0だった。俺は死ぬ。
 見舞いに来た妹が「気が向いたらでいいから読んでみて」と俺に押し付けたオーラでオーブでオーガニックでナチュラルでスピリチュアルで、心理テストに答えたり、塗り絵をしたり、誕生日と表を照らし合わせたりすると魂の守護動物が何なのかを教えてくれる本によると−−俺を霊界に導いてくれる守護動物は虹色に輝く甲羅を持ったウミガメだそうだ−−死には5つの段階があるらしい。
 否定。怒り。取引。投げやり。受け入れ。
 どの本にも言い回しは違えども同じようなことが書いてあった。多分最初に誰かがこういうことを言い出して、残りが追従したんだろうと思う。
 己の死の運命を知り、取引期を過ぎた俺は投げやり期に入る前に別ルートに入った。
 林田期だ。
 要するに他のことを考えて気を紛らわせたと言えるし、俺がダメなら林田だけでも現世にワンスアゲインと思ったとも言える。
 俺はちょっとだけ、ティラノサウルスの囮になる超格好いい人に近づけたような気がしていた。そう思うといくらかは慰められた。痩せこけた体では黒いレザーが着こなせないのが残念だった。
 そういうわけで。
 消灯時間を過ぎた薄暗い病室で、俺は今、天井を見つめながら林田をなんとかできないものかと考えている。両手の指を胸の上で組み、気分は俺ロック・カンバーバッチ。ここは消毒液臭い病院の個室ではなくてイギリスのどっかの街のお洒落な部屋だということにする。牛の頭蓋骨とか、なんか骨董品みたいな銃とか飾ってあって、壁紙の色が黒っぽいんだ。午後の紅茶のアールグレイが甘く脳に香る。
 どうして葬儀の日に林田カムバックが上手くいかなかったのかわからない。
 確かに目を開けたと思ったのに、それは俺だけが見ている幻覚になってしまった。
 生きている林田が出現するという辻褄を合わせられなかったんだろうか? 
 いや、どんなに強引でも辻褄はあわせられるはずだ。俺だって、俺になったくらいだし。
 死んだ人を生き返らせるのは無理なんだろうか? よくある、いわゆる「禁忌」っていうやつだろうか。
 12時過ぎたら餌をやるべからず。水に濡らすべからず。強い光を当てるべからず。このルールを破れば可愛いギ���モは可愛くないグレムリンになるであろう的な?
 ……そんなもんあってたまるか。
 この世に起きる全てのことは、起きるから起きるんだ。在るから在るんだ。
 本当の禁忌はそもそも起きないし、存在もできない。だって禁忌なんだから。
 起きて、在るものは禁忌じゃない。現象だ。
 猿から俺。違う俺から俺。猫から彼女。お数珠からハムスター。ハムスターからじゅずちゃん。後付けの過去から静香ちゃん一家。石鹸から色々なもの。デタラメなチラシから後付けの新興宗教団体。
 これらは実現できて、林田の復活はNG。何でだ?
 違いがあるとすれば、林田が死んでいたということ。やっぱり死んだ人間は生き返らせ−−いやいやいや。待て待て待て。
 俺ロックに閃きが訪れた。
 大量に生き返った人たちいるじゃん。
 林田のマンションの連中。あれ、実在だ。
 林田を追いかけてマンションの中廊下を走り回った時、買い物袋を切り裂かれてへたり込んでいる隣人を見た。結構前のことだけど、あの人にはちゃんと顔があったのは覚えてる。俺と林田の取っ組み合いを見ていた人たちにも顔があった。あの人たちの顔はぼんやりしてなかった。はっきり見えた。
 あの人たちは彼女の出現によって過去が変わったから死なずに済んで、今に存在するんだ。
 そうだよ。過去が違う。
 彼女の引き連れてきた過去では、あのアパートの大家は別の人だった。あのアパートは死の館ではなかった。もし死の館だったら彼女はそこで林田と同棲できない。そもそもそんな不気味な場所に尋ねてもこない。彼女が林田と付き合っているという現在と過去の辻褄が合わなくなる。成立しなくなる。だから、彼女のために大家が消えて、大家が消えたから住人が生きてるんだ。
 ってことは。ってことはですよ。ワトスン君。
 林田を生き返らせるんじゃなくて、そもそも死ななかったことにすればいいのか? あいつが死ぬはめになったきっかけを、別の形に変化させればいいのか?
 俺はむくりと起き上がる。気分は悪いし、体は重い。手足のしびれは消えてない。でも確かめないといけない。
 ベッドサイドのランプをつける。明るさに目が慣れるまで少し待ってから手を伸ばし、見舞いの品の中から一番手近にあったオレンジを取る。それから果物ナイフも。
 仮説を実証しよう。
 俺は震える手でナイフで掴み、オレンジを刺した。柑橘類特有の匂いが鼻をくすぐる。不自由な手でなんとかオレンジを真っ二つに切る。
 オレンジを布団の上に置く。果汁がカバーを汚すけど、それはどうでもいい。
 ナイフを両手で持ち、願う。
「これが……」
 何がいいだろう? ナイフの反対のやつ。刃物の反対だからペン? でもペンだとまだ鋭いな。じゃぁ。
「これがクレヨンだったらいいのに」
 砂が崩れるような感触。変化。
 ナイフは消えて、親指ほどの長さのクレヨンが手の中にある。
 柑橘類の匂いが消えている。
 ベッドの上にはクレヨンでニコちゃんマークを落書きされたオレンジが転がっていた。手に持って確認してみるけどナイフでつけた傷なんて全然ない。
 新しい過去ができている。
 このクレヨンは退屈しのぎに絵を描きたいという俺の要望で、妹が持ってきてくれたものだ。俺は入院してからこまめに絵を描き、そのおかげか手のしびれはさほど進行していなかった。眠れない夜を持て余した俺は、オレンジに落書きして遊んでいた。
 俺は指を動かす。すっごい動く。うぉ。すっごい動く。なにこの可動域。
 体もさっきより軽い。
 クレヨンを所望した俺は度々病院の中庭に出てはお絵描きをしていたという過去も頭の中に出来上がっていた。
 足のしびれも軽い。まともに歩けそうだ。ありがとう。クレヨンを所望した俺。今回の紐くじは当たりだった。
 俺は点滴の針を抜き取り、ベッドから降りた。
 理詰めで考えるのは苦手だ。
 この俺の思いつきだって、筋が通らないところがたくさんあるだろう。今、たまたま上手くいっただけでまるっきり見当違いなのかもしれない。
 でもほんのわずかでもなんとかなりそうな可能性があるのなら、それに食いつかないと。いってみよう、やってみようの精神だ。どうせもう、どん詰まりなんだし。
 俺は病院のスリッパを靴に変える。
 パジャマを脱いで、それをジーンズとシャツに変えて、着替える。
 クレヨンをスマホに、オレンジを財布に変えてポケットにねじ込む。
 このちょっとした「改変」によって俺の病状が悪化なり回復なりするんじゃないかとドキドキしたけど、残念ながら、あるいは幸運にも、俺の病状に変化はなかった。
 そして俺はそっと、病室を抜け出した。
 林田を死ななかったことにするために、俺は消すべき人を消さなきゃいけない。
 包帯に包まれた右手が焼けるように痛んだ。
前話:次話
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sandacsakurai · 7 years
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「トリプルブッキング」本編
リレー小説「トリプル・ブッキング」
1=サクライ
「日曜なのに早いねえ」 寝ぼすけのふたりが起きてきた。 この家では母も妹も極端に朝に弱いから、朝食を作るのも朝のコーヒーを入れるのもぼくの仕事だ。 「兄ちゃん、卵焼きはもっと甘くしてっていつも言ってるのに」 「まろん、まがまま言わないの。お兄ちゃんが、お昼ご飯には美味しい卵焼きを出してくれるから」 「いや、わるいけど今日は出かけるんだ」 「えー、うっそ極度のインドアのあんた/お兄ちゃんがぁあ?」 ふたり揃って、こいつらは…。 今日は中学からの女友達の杏南(あんな)の相談を聞く約束になっている。どうも恋バナらしい。 あの杏南がなぁ…。
2=オッセルヴァンツァ 本当は行きたくないのだが。杏南に逆らうと後が怖いので、仕方なく集合場所である駅の改札口で杏南を待っていた。 「あ、いたいた~」 「おはよう、遅かったね」 「北口で待ち合わせって言ったのに、何で南口にいるのよ!」 「あっ…ゴメン!忘れてた」 「相変わらず間が抜けてるわね、昔っから変わってない」 「これでも気をつけている方なんだけどな…」 この彼女がぼくの幼馴染の杏南、小学生の頃からの付き合いである。 腐れ縁ってやつだ。 「もう、気をつけてよね。ほらもう、じゃあ行くよ」 杏南に手を引かれて、ぼくはその場から離れて行った。
3=ウニ太郎 杏南の白い指先が赤いストローを弄る。その先端が勝ち気に喋る小さな唇に吸い込まれ、ちゅる、と鳴らされてから離される。 やけに光るリップグロスに気づき、目のやり場に困ったぼくは喫茶店の窓の外を行き交う人々を見遣った。
「それでじゅりちゃんに誘われて赤高の男とカラオケ行ったの」 「はーん」 赤高、通称赤坂高校。ぼくたちの通う青嵐(せいらん)高校より数段偏差値の高い高校だ。 「ちょっと! ちゃんと聞いてよ」 「おっと。悪いわるい」 「あ、そうだ。じゅりちゃんも今日来るって」 「え? そうなのか?」
バタバタと店のドアが開く音。嫌な予感がする。 「ユウト~!!!!」 俺の名前を呼ぶ声に振り替えるとそこには美貌の巨乳・褐色・ピンク髪・スーパー転校生。 「呼ばれて飛び出てジュリアちゃんだぁヨ♡ ユウト!!アンナ!  こにゃにゃちわネ♡」 「神山!!」 「じゅりちゃんおはよ~」
神山ジュリア。先月来日した、俺の宿敵だ。
4=サクライ 「便所」 それだけ言って席を立つ。ジュリアはまたどこの言語かわからないことを言っている。多分意味は「いってらっしゃい」だ。 じゅり語を解読するに、カラオケで赤校の3年生(俺たちは2年生だ)と二時間程歌ったあと一番背の高い男と杏南はエスケープしたそうで、じゅり曰く「お似合い」だったそうだ。 「悠斗」 杏南に呼び止められビクっとなる。 「驚きすぎよ」杏南が笑う。 「大丈夫、悠斗?じゅりちゃんってほら、…じゅりちゃんだから」 「大丈夫だけど、ってかおまえがつれてきたんだろ?」 「まぁね」 けたけたと笑う杏南が、ふっと真顔になって続けた。 「今日の3時から付き合ってくれる?」 「え?まあ夕方まで付き合うつもりできたけど」 「そうじゃなくて」 きょとん、としていると杏南がクスッと笑った。 「ふたりっきりで」 「ああ、わかった」 「ありがと」と残して杏南はまた店からエスケープする。実をいうとわかってなかった。 「ちょっとまて、それまで神山の相手をさせとくつもか~!?」 杏南を追って駆け出したら、女の子にぶつかった。 「あっすみません」 おとしたハンカチを拾い手渡してから気付いた。知り合いだった。 彼女はー…
5=オッセルヴァンツァ うちの学校で知らない人は居ない、長身で綺麗な顔立ちをした彼女は2年の「桜 舞」、生徒会副会長を務めている。 別に生徒会役員だから有名になった訳ではない。百戦錬磨の兵士の様な彼女のあの眼がそうさせたのである。 そして付いた異名は『「ブライニクル」死の氷柱』だ。 「………」 「…あの、大丈夫ですか?」 「ああ…大丈夫だ」 そう言うと副会長さんは逃げる様に奥の席に進んで行った。 後で夜道歩いてたら後ろから刺さしてきたりしないよね?ね? 狼狽えていると後ろから神山が声をかけてきた。 「そんなに震えてどうしたノ?視◯プレイでイったのカ?」 「なんでそう繋がるんだよ。絶頂なんかしていないし、ぼくにそんな性癖は無い!」 全く、周りの目とか気にしろよ、只でさえ目立つ見た目なんだし。大体なんでぼくが一々ツッコむ羽目になっー 「あー!マイちゃんだーこにゃにゃちわー♡」 …忙しい奴であった。 「あぁジュリアか、奇遇だな」 「マイちゃんもティータイム?ジュリアもネー」 どうやら2人は仲が良いらしい。神山が転入してきてまだ1ヶ月も経たないのにあの副会長と友達になるとは、神山ジュリア恐ろしい娘…! そんな事を思っているうちに、どうやら2人はぼくの存在を忘れ、会話に夢中になっているようだ。 杏南との約束があるし、面倒ごとに巻き込まれたくない。それにトイレにもまだ行っていないからぼくの膀胱は限界に近い。ぼくは気付かれないようにコッソリ抜け出そうとすると。 「あっ マイちゃんにユウトを紹介しておくネ!」 逃すものかと話題の矛先をぼくに向けてきた。ジュリアめ、こんな時に限って…
6=ウニ太郎 「桜さん……ですよね?」 着席し、生唾をゴクリと嚥下したぼくは先陣を切った。アイスコーヒーのグラスの結露とぼくの冷や��がシンクロしている。 「ああ。私を知っているのか」 「モチロンロンだぁネ! ユウト、女のチチとケツ目で追うイズ大変なご趣味ヨ♪」 「は? 貴様、この私を常日頃から視姦していると言うのか?」 ギロリと睨まれた眼差しはまさに死の氷柱。 「神山やめてくれ! 誤解ですよ!!」 「ぱっくりゴカイチョウ〜!? 破廉恥ネ♡」 「本当にそんなことないですって……桜さん、コイツの言うこと信じないでよ!? ぼくは本当に桜さんのこと、普通に尊敬してただけだから!!!」 「ふむ……」 (あっ、ノリでタメ口を聞いてしまった!) 元気に騒ぐ騒ぐジュリアの淡いピンク色の巻き毛を指で弄びながら、副会長が緩やかに目を伏せた。これはまずい。 「すみません!!!!! 乗せられて粗野な言葉遣いを」 「いや、良いのだ」 慌てたぼくの言葉を副会長が遮る。 「えっ?」 「お前、なかなか見込みがあるな。友人関係にある訳でもないこの私に親しげに話しかける奴はめったに居ないぞ」 「はあ……」 「オー! ユウトラッキーね! マイちゃんの見込みバチコン外れないヨ。マイ、ジュリアと同じ事思うネ♡ウィアフレェンド♡♡♡」 ジュリアのノリでどうにか切り抜けられそうだ。桜に抱きつきながらジュリアがこちらにウィンクをする。いかんせん圧が強い。 「なあ悠人、お前、私と共に生徒会に入らないか?」 思わずぶっとコーヒーを吹いた。 「な、なんですと!?」 「お前の瞳には他の誰にもない何かがあるようだ。ぜひ私と青嵐高校の明日を作り上げようじゃないか」 「急に困りますよ! ぼく、なんの取り柄もない帰宅部ですよ? 桜さんにそこまで言ってもらう価値なんてありません」 「私の言うこと、聞けるだろう? 」 突如半身を乗り出した桜さんがぼくの顎を手でなぞり、頬に鋭い爪を食い込ませる。呆気に取られたぼくは思わず学園の誰も彼もに恐れられるその瞳を間近に見据えてしまった。 「な? お願いだ」 「桜さん……」その瞳の奥に一瞬、春の陽射しが煌めく。
「ひゅ〜〜〜〜〜〜!♡!♡!♡!♡!♡!♡!♡ ソームーディ♡♡♡見せつけてくれんじゃねェカ!!!」 「あっ! すみません!!」 ジュリアの一言で我に帰る。あれ? 今日のぼく、ジュリアに救われてないか? 「いいんだよ悠斗。じゃあ今日から生徒会役員としてよろしく頼む」 「困りますよ! とりあえず保留にさせてください」 「そうか……」 どことなくシュンとしたような桜さんには申し訳ないが、こちらは頭が爆発しそうだ。一旦間を置く必要がある。杏南との約束もあるのだ。 「とにかく、とりあえず今日は失礼します! ジュリアもまたな!」 「オッケ〜♡アンナによろよろ♡♡」
千円札を卓に置いて店を出る。待ち合わせに遅れそうだ。急がねばならない。 そういえば、ジュリアはどうして杏南との約束を知っていたのだろうか。とにかくまあ後で考えよう。ぼくはスマホを取り出し、杏南に電話をかけた。
「マイ、ユウトとすっかり仲良しね♪」 「ふふ」 「どしたネ?」 「私の言うことに従わなかった人間は久しぶりだ。まったく本当に、面白い男だよ……」 桜舞はジュリアに毛先を三つ編みにされながら、ひとりごちるように呟いたのであった。
7=サクライ 「ごめん待たせちゃって」 駆け足で駆け寄ると、杏南が無言で腕時計を指差すジェスチャーをする。 「まだ三十分前」 「えっ、そんなはずは…」 腕時計が一時間ズレてる。ぼくが真顔になった瞬間杏南がゲラゲラ笑い始める。 どうにも遊ばれてる気がする。昔からそうだ。だから苦手なのだ。 「まさか、おまえが隙をみて時計進めたとか…」 「なに?被害妄想?悲しいなー、独り者はー」 とは言うが杏南のことだ。分かったものじゃない。 …ところで、それなら杏南は30分前からなにを 「ほら、待ちぼうけで足が棒なんだからどっか入ろう!」 杏南に引っ張られ思考が遮られた。
そう赤校の先輩のことを聞かないといけないんだ。ぼくとしても長い付き合いの杏南が浮いた話を持ち出して気が気じゃない。ぼくの周りにそういう話は聞かないだけに、詳しく聞いておかないと。 しかし結論からいってその件は流れた。「ブライニクル(死の氷柱)」の再登場によって。 「桜さん!?なんでここに・・。てかなんで三つ編み?」 「うむ。君が財布を忘れていたからな。届けにきた」 「え!?うそっ!?すみませんわざわざッ!」 「うそだ。君にもう少し説得の余地がないかと思ってな。・・気配を消してつけてきた」 「そこはウソをつき通してくださいよ!マジで怖いんですからッ。夜道歩けなくなるじゃないですか!!」 ふと杏南が、らしくもなく張りつめているのに気付いた。 「桜…マイ」 「���ュリアが『アンナによろよろ』とか言ってたからまさかとは思ったが…本当に史歩杏南とはな」 「なに?あんたまだ根に持ってるわけ?」 「あたりまえだ。おまえのせいで父がどうなったか」 なにやらふたりには因縁があるらしい。杏南…一体何したんだ…。 「政治アナリストとかいってるから少し意見と質問しただけじゃないの」 「だまれ。あの日父はショックで寝込んでしまったんだ。人前で女子中学生に論破されてあんな恥をかかされたのは初めてだったのだ」 …はい? 「は、メンタル弱すぎるんじゃないの?そんなんで恨まれちゃ敵わないんだけど?」 「あの父の姿…。あんな父は見たことがなかった。あれから連日下痢で一週間で5㌔も痩せてしまった…!」 お父さん弱すぎませんか!? 「父を励まそうと当日に私が振る舞った手作りのシーフードカレーも全て流れてしまったと思うと私は悔しくてたまらない…!!」 それ貴方の手料理で腹壊しただけじゃねえか!!! 「とにかく私は、史歩杏南!貴様を許さないからなッ!!」 「ふん、いつでも相手してあげるから下痢のお父様でも便秘のお母様でもつれてきなさい!」 なんだこの馬鹿馬鹿しい戦争は…。 瞬間、鳴り響く着信音。 「もしもし、…神山!?なんでぼくの番号を…」 「それどころじゃないョユウウト!アンナとマイは超・・仲悪いンだってヨ!!タイヘンだヨ!二人は天敵だヨ!ライバルだヨ!ゴルゴ13だヨ!スペースコブラなんだヨ!!」 遅いよ神山。もう呆然真っ最中だよ。どっちがゴルゴでどっちがコブラなのか、今は聞かないでおくよ。ジュリア、きっと君はルパン三世だ。 「とにかく今からダッシユで行くから二人が会わないようヨロシク頼ムよ!」 「ちょ、ちょっとまて行くったって!」 「新宿二丁目のホテル街で待るヨロシな!」 「なんでそんな待ち合わせ場所なんだァ!!!」
まったくなんて日だ。ここまで女達に振り回されてばかりだ。 電話を切るとメールが来ていた。…桜舞…? いつのまにか桜舞がいなくなっている。 「あれ、桜さんは?」杏南に気いてみる。 「電話してる間に帰ったよ」 杏南はまだ少しふくれている。
あの人、会ってから数時間で何回再会しにくるんだ…。 メールを確認して戦慄した。そこには、 脅迫文。いますぐ所定の場所に来ないとSNSに拡散すると…。…僕の知られたくない唯一の秘密、な…なんで桜舞がこのことを…!!というかメルアドどうやって知ったんだ!ぼくの個人情報は回覧板にでも挟まって回ってるのか!!?
「どうしたの?」 首を傾げる杏南に平謝りしながら桜舞を追う。 杏南はさっき以上にふくれている。でも今は桜舞が優先だ。ジュリアが二丁目に着くのは彼女の足なら30分はかかるだろう。そして杏南はきっと何分もここで待っていて40分の時点でぷつんといく。あとが怖い。マジで怖い。とにかくまずは桜舞。そして神山ジュリア、最後に史歩杏南だ。本当に何という日だ。日に一回あれば厄日だっていう事件に三つも巻き込まれる。これじゃまるで……トリp…、 ぼくは余計な思考を投げ捨てて、目の前で子どもに愛想を売るササカマボコのゆるキャラを助走をつけ一気に飛び越えると、桜舞の元へ急いだ。
(��一部完…的な)
P.S.長くなっちゃいましたがキャラも出そろって一端まとめるという意味でも少し広く書いてしまいました。おおさめください。 それと現在劇中で登場した設定、状況をキャラ設定にまとめたので確認ください。サクライ
8=オッセルヴァンツァ
走って5分程で桜舞の元へたどり着いた。曲がり角で待っていてくれればいいのにと思う気持ちを抑えて、息を切らしながらも、ぼくは早速本題に入った。
「何が望みなんです?生徒会に入るのはまだ保留ですよ」「その話もいいが、今は違う。」「じゃあ、杏南の事ですか?」「見込み通り感はいいようだ。そうだ、ソイツの弱味…弱点を知りたい」「そんなのコッチが知りたいですよ」「何も知らないか、じゃあ君にはもう用は無い。消えてもらおうか…」「わっわかりました!探ってきますよ!わかったら直ぐ教えますから!!」「フフ、期待しているぞ」そう言って舞さんは小悪魔風にウィンクをして立ち去って行った。そのウィンク小悪魔どころか魔王クラスですよと言いかけてしまった、危ない危ない。魔王と契約してしまったが、弱味を握っても杏南にバレれたりしたらどうなることか、想像もしたくも無い。もう逃げ道は無いのである、不安やトラブルに悩まされない、そんな生活がぼくの社会に対する姿勢であり目標だったのにぃぃぃぃッ!!ぼくの平穏な日々よ…Arrivederci!!次はジュリアだ、携帯の時間を見ると意外と時間を消費していて、待ち合わせまで5分を切っていた。「クソ!なんて日だッ!」ぼくは例のホテル街に全力で走っていった。
9=ウニ太郎
「ハーイ♡」
ラブホテルの石段に腰掛けたジュリアがパッと顔を上げる。時間からすれば十分の遅刻だ。ぼくは息を切らし膝に手をついた。 「ごめん遅れた……」はたから見ればなかなかに無様だろう。 「いいのヨ〜」 「なんでラブホ街……?」 「ん〜……レッツメイクラヴ?」 「はは、冗談きついな」 「ヒドイヨ〜!!!!!」 ラブホテル前でシナを作る彼女は官能的なのだろう。初めて見たときは黒人ギャル的見た目に慄くばかりだったが、彼女はどちらかというとニャンニャンとすり寄ってくるタイプだった。それが童貞には厳しいところではあるけれど、ここ数ヶ月でぼくは彼女の扱いが上手くなったような気がする。 「あ、マイちゃんとアンナ! セーフか?」 「ああっ!!」 全然セーフではない。来なれないラブホ街の空気に飲まれている場合ではないのだ。 「聞いてくれよ! 大変なんだ」 「あっちゃっちゃネ」
「という訳なんだよ」 ぼくは一息に状況を説明した。ジュリアは真剣にうなづいている。 「アンナの弱味……ランジェリーがソーシンプル?」 「それを伝えてどうするって言うんだよ! というか男のぼくにそれをバラすなよ」 「オー、女のコの秘密口滑りやらかしたネ! 切腹あるヨ!」 「ああうん……」 「そうネ〜、ユウトはどうしたいの」 ジュリアの碧眼がぐっと焦点を合わせにくる。ぼくはたじろいでしまう。 「ぼくは……杏南とも舞さんとももめたくない……………」 「オー…………ジャパニーズ男のコ……」 「ごめん……」 流石に自分のことなかれ主義が恥ずかしい。しかし他にどうすればいいというんだ。 「ま、ジュリアにおまかせヨ!」 「待ってました!!」 ジュリアに頼ることにもう既に抵抗はない。ありがとうジュリア。女性は素晴らしい。
その後ジュリアはぼくに怒涛のアドバイスをくれた。要約すると、とりあえず桜舞には嘘ではない程度の小さな杏南の秘密を教えること。例えばギザ10集めてる事とか。杏南には桜舞との間に何が起きたかをそれとなく聞き、2人と仲良くすること。 それで大きく何かを変えられる訳では無いが、とりあえずの時間稼ぎにはなりそうだった。その先みんな仲良くなればいいネ〜と言って、ジュリアは微笑んだ。
「ジュリア、感謝してるよ。本当にありがとう」 「ウン!」 「じゃあ行かなきゃ」 「どこ行く?」 「杏南に会うんだ」 「………」 「どうした?」 黒いキメの細かい手がぼくの服の裾を掴んだ。 「アンナ、マイちゃん、イイナ………」 「え?」 「ユウト、ジュリアのことは興味ナイ? アリガト〜でオシマイ?」 「え?」 「ジュリア、もっと仲よくなりたいヨ」 「うんうん! とりあえず急ぐから、またな!」ぼくは時計に気を取られ、焦っていた。 バチン!!! 頬に衝撃が走る。なんだ? 「……ごめんネ」 ジュリアが呟く。ぼくは彼女にビンタを張られたのだ。 「ん…? うん……?」 「ゴメン」 そう言って彼女は走り出した。ぼくはポツンとラブホ街に取り残された。周囲の通行人が眉をひそめる。あ、これはやらかしたか? 初めてそう気づくも、ジュリアはもう去った後だ。とにかく杏南に、杏南に会いに行かねば。 気づいてはいたが、なにか大変なことになってきている。軽くパニックを起こしている自分に気づくが、とりあえずは待ち合わせに向け、ぼくも走り出した。神様、助けてくれ。
10=サクライ
「私が神だ」
「あんた誰」
「助けを求めただろう」
突然ホームレスのジーさんに話しかけられた。
「いや結構です」
「そうか。気が変わったらココに連絡をしろ」
LINEのIDを渡された。
とにかく杏南の所へ急がなくては。時間はギリギリ。全力疾走で元の場所に急ぐ。
しかし約束の場所に杏南はいない。そんな馬鹿な。あの杏南がたとえ口約束でも約束を破るはずない。長い付き合いだ。それは確信している。ただならぬ事態を察して、近くでタップダンスしているやくざに話かけた。
「ここにいたダサいTシャツの女の子、知りませんか?」
「おお、悠斗か。おめえのオヤジさん…市ノ瀬の叔父貴は元気かい?あと何年でシャバに出られるんじゃあ?」
「もう脱獄しちゃいましたよ。大きな声では言えないけど今度連絡先教えますね。・それで女の子は」
「おう頼むわ!…でもそれがなぁ。さっきそこの角にシャベルカーが突っ込む事故があってな。女の子が一人、救急車で運ばれたんじゃぁ…」
「!!」
ー杏南ッ!
…思えば杏南との出会いはお笑いだった。高学年にもなって特撮ヒーローが大好きだと隠していたぼくは、ヒーローショーのチケットを鞄からこぼしオタクバレしてしまった。おわった、と青ざめたぼくを救ったのが杏南だった。「それ中々手に入らない奴じゃん!」彼女もオタクだった。杏南は夢中になってそのヒーロー『抜刀戦士カタナ』の素晴らしさを皆に説きはじめた。その日、杏南によってぼくの人生のルートが変更された。必死で自分の趣味を隠していたぼくは、それらをオープンに皆に晒して、更に皆の流行にも興味を絶やさないその姿に憧れた。ぼくはいつしかコンプレックスから苦手意識を持っていたが…、ぼくは杏南のように生きたかった・・・・・・
手術室の前にうずくまり、ぼくは震えた。震えながら祈った。そして後悔した。
なぜ今日、ちゃんと杏南の話を聞いてやらなかったんだろう・・・・・・
今にも壊れそうなぼくの前に、あの女が現れた。
カツ、カツと音をたて廊下の真ん中をゆっくり近づいてくる。
戦士のようなその冷たい眼光。
その冷たい眼より、さらに冷えきってしまったぼくの眼を彼女に向ける。
死の氷柱・・・
ブライニクル・・・
・・・桜舞がぼくを見下ろしていた。
11=オッセルヴァンツァ
「腕の良いと噂のフリーランスの女医に切らせた。まだ油断ならない状態だが、アイツなら大丈夫だろう。」 「何で名医じゃなくて、フリーの医者なんですか?」 「私は人の本質や性格を見抜くのが得意でな。それに、杏南に死なれては困るからな」 「舞さん、やったぱり杏南のこと …」 「奴には精神的に屈辱を与えて屈服させてやる、その為にもココで死なれては困る。」 杏南を助けようとしてくれたが、やっぱり2人の仲は悪い様だ。 どうしたものかな…。 「ところで。杏南の弱点、見つけたか?」 「こんな時にそれですか?まあ…確か昔あったような…」 「ん?幼少期によくある男女の無邪気なちちくりあいで、杏南の性感帯を見つけたとか?」 「確か小学一年の時に、プロレスごっこしてる時に乳首を押したら…て何言わせるんですか!?」 「成る程、乳首が性感帯か。情報提供感謝する」 まずい、杏南に知られたらまずい! 「ぜっ、絶対にバラさないでくださいよ!?」 そう言うと舞は何処からかローションボトルを取り出し、口に塗りはじめた。口を滑らす気満々だ。 ボクは突っ込む気力が無くなってしまった。
《その時、不幸が起きた》
病院の床が地響きを始めたのである。 地震だ… それもかなり大きい。 とっさにボクは舞さんを庇う様に覆い被さった。 それと同時に建物の照明が消えた。 杏南に繋がっている生命維持装置が止まる、まずい。 大抵の病院は予備電源があるが、揺れが収まってもなかなか復旧しない。 「今日は病院の予備発電機の点検日だ、まさか日が重なるとは…」 彼女の言葉に絶望した、直ぐにでも復旧しないと杏南の命が危ない。 その時不意にあのホームレスのLINE IDを思い出した。 これを読んでる君は理解してもらえないだろうが、藁にもすがる思いでメッセージを送った。要するに大人の都合だ。
12=ウニ太郎
スマホの画面を睨みながら老人とのやりとりが始まった。と思った。いつの間にかぼくの目の前に彼は立っていた。
「若き青き君よ、今何を思うのかね?」 「わっ!! いつの間に!」 「動ずるでない」 「んなこと言ったって」 「心の目で見、心の耳で聴くのじゃ」 老人は口ひげを弄びながらにんまりとする。 「えぇ……」 「はい深呼吸深呼吸」パン! しみと血管の目立つ手のひらがぼくの眼前で打ち付けられた。 「鼻から吸って〜」 その瞬間、気が遠のく。 「口から限界まで吐くのじゃ。繰り返すぞい。はい吸って〜!」 老人の指示に逆らえない。小刻みに脳が震える。しかし、逆らいたいとも思わないのだ。どこかでもう1人の自分が何やってんだ! と突っ込みを入れるがいまのぼくは急激なトランスの快感に震えながら目の前の声に従っている。
深呼吸を重ね、何分、何時間、いや一瞬。どれほどの時が経ったのだろうか。
「もうええかね」 遠く、近く、深いところから優しい声が聞こえる。 いつのまにかぼくは柔らかな椅子に深く座っている。そこは安全で、心地よい。 「見回してみんしゃい。心の瞳を開けるはずだぞい」 すっと目をあげれば、周りにはあまたの星。暗闇の中、白や黄色、赤いチカチカとした光の粒が縦横無尽に飛び回っていた。 「宇宙………」 ぼくは随分ぼーっとしている。 「そうじゃ。ここはお前の心の宇宙。どうしようもなくなったら、たまには戻ってみんしゃい」 「ぼくは、杏南を……助けて、舞さんと、そう、仲直りさせる…………」 「焦るな焦るな。ここでの一切の時は現実世界に鑑賞しない」 「ジュリアの話、も、聞くんだ…ちゃんと」 「それがおぬしの望みか」 ぼくはゆっくり首を縦に振った。 「ほな!」老人が今度は指を鳴らした。杏南、舞、ジュリア。宇宙の中に、憎らしくも愛しい3人の女の子が浮かびあがる。全員どう考えても自立できない体制でストップモーションを貫いている。 「この真面目そうな女が杏南じゃな」 驚いた表情で固まる杏奈のスカートを老人がピラリとめくる。 「水色や」 「ほへ…………」水色か、としか感じない。これが悟り(?)の境地か。 「これは事故に遭う直前の杏南や。この次の瞬間には彼女の意識は消失する」 「…じゃあ杏南は痛くなかった?」 「多分な。次は桜舞か。神経質な感じがするのぉ」 桜舞は腕を組み、しかめっ面でよそを睨んでいる。肘に打ち付けていたであろう左手の人差し指が宙を指している。 「なんや、ライバル言うても心配しておったんじゃな。『焦り』を感じるぞい。次はなんじゃ、ケトウか」 「ジュリア……」 「発育ええのお。走っておるじゃろ。おおよそ事故の知らせを聞いて病院に向かっている所だな」 「というか……ここはどこ?」 酷い離人感に負けずに言葉を紡ぎ出す。 「言ったじゃろ。ここはお前の宇宙じゃ。望んで、そうじゃな、瞑想やら薬やらキメればいつだってここに来れるぞい」 「でも…杏南は事故にあって、舞さんは拗れてるし、ジュリアも怒らせちゃった」 「そうだな。事実は変わらない。しかしワイは伝説のホームレス。電子端末がなくても脳内にLINEできるぞい。もしも望むなら、ちょっとは時間を戻せるぞい」 「ほんとぉ?」 「半日や。それが限度じゃ」 12時間前といえば、朝、家を出た頃合いだ。 「ありがとうございます………」 ぼくは何故か涙をこぼしている。 「ただ、それには条件がある。この術は力を使う。3人のうち、2人の恋心をワイが貰うぞい」 「恋?」 「アホかお前、全員押せばヤレる状態じゃぞ。これだから童貞は」 「恋……」 「なにもワイに惚れさせようってんじゃない。パワーに変換して時間をちょっと戻すだけじゃ。余ったパワーでまた、世界を救うとでもするかね。恋心は無限大の力を秘めておるからの」 ぼくはぼんやりして、でも現実世界はいろいろヤバくて、しかも得体の知れない老人に大変な女どもの恋心までリークされてぐちゃぐちゃだった。それでも何故か安心感と、また現実でうまくやろうという希望が漲ってきているのを感じた。 「ええか?」 「はい! 」 「ほな行くで〜。一人だけ、女を念じて目を閉じるんじゃ。しっかり『選択』するんやぞ」 「本当に、ありがとうございます」 「人生は自由自在じゃ。また別ルートを選びたくなったら口説き落とせばええんじゃ。ほな、少年よ、また会おう!!」 「アイアイ・サー!」 ぼくの心から、無限の希望が湧きだすのが感じられた。ぼくはちょっと考えて、愛しい彼女のことを思い浮かべた。瞳を閉じると彼女の優しい笑顔が脳裏に浮かんだ。身体が回転する。気持ちいい。 「追伸じゃ! みんなええ子や。女の子らとも、巡り会う全ての人とも仲良くするんやで〜〜!!!!」 遠い上の方から老人の優しい声とカラカラした笑い声が聞こえた。 ぼくはもう迷わない。全ての選択は今に繋がるのだ。ぼくは今、今に辿り着く。
「起きろクソ兄貴!!!!!」 「おはまろん」 なんで爽やかな目覚め。さあ、今、1番会いたいあの子に会いに行こう。
《あなたは誰を選びますか?》
13=サクライ
意識は戻ったがまだ朦朧としていた。 どうも二日酔いのような感覚だ。飲んだことないけど。 「ほら食え兄貴。激辛の卵焼きだ」 「はい」と言って箸をつける。おかしいな。なにかおかしい。 「お兄ちゃんは今日、杏南ちゃんとデートなのよ」 「杏南さんってあの幼稚園のころから兄貴とイチャついてる娘でしょ」 やっぱり、なにかおかしい。
「あらめずらしい。ちゃんと南口にいる。あんたのことだから北口を先に見てきたのに」 杏南は相変わらず辛辣だ。いややっぱりちょっとおかしいか。 「じゃあ行くよ!」 「まって。行きたい所があるんだけど、ぼくの方に付き合ってくれない?」 杏南はまったく予想外という風に、きょとんとする。 でもすぐに「いいよ!」と笑顔になった。そして小声で「じゅりちゃんに謝っとかないと」と加えた。でもぼくは聞き流した。もっと気になることがあった。
「それで赤校のやつとはどうなったんだ?」 「なんでそれ知ってるの?」 電車の中で突然切り出した。色々と段階を踏むべきとは思ったが、そのままぶつけることにした。そうしたかった。思うままに感情をぶつけても、彼女は受け取ってくれるという確信がぼくにはあった。 「まあさ、それを今日聞いてもらおうと思ったんだけどさ」 「どんな奴だったんだ」 「まあ、いい人だったよ。背高いし、歳上だけあって悠斗よりオトナだし、赤高だし」でた辛辣。 「でもさ。あんまグイグイ来るから白けちゃって。会ったその日に二人っきりのデートってのもちょっと趣味じゃないのにどんどん人気のない所行くし。だから失礼のない程度につっぱねて帰ってきちゃった」 「じゃあ特になにもなかったんだ」 ぼくは無意識に安堵の顔を見せる。 「まあね。でも色々考えちゃってさ。あたし、もう17よ?色々知っときたい気持ちだって少しはあるし。いつまでも振り返らない朴念仁をいつまでも待ってる気もないんだから」 「…?どういう意味かわからないな。…それが相談したかったことか?」 「まあね!でももういいわ。なんか迷いは消えた気がする」 杏南はぼくの目の前で、男の名前の連絡先を削除した。きっと赤高の男だろう。 「思えばあたし、待ってたことなんてなかった。朴念仁は手強いけど途中で投げ出すなんてあたしらしくないもの。あたしのやり方で最後までやり切ってみせるわ。別の相手追いかけるのはそれからでいい」 「よくわからないけど、解決したみたいだね。いつもの杏南の顔になった。応援してるよ。頑張って」 「あんたも頑張んのよ」 「えぇ…」相変わらず怖い幼なじみだ。 と、車窓に鎌倉の海が見えた。 「もうすぐ極楽寺駅だ」 「どうしてここに来たかったの?」 「なんとなく。父がいたころの思い出があるから」 「ふうん、思い出の場所か」 「ごめんね、急に付き合わせちゃって」 「ううん、悪くない」 「なにが?」 「ほら、海きれいだよ」 本当だ。彼女と一緒に見られてよかった。本当に。
「久しぶりだな!餓鬼!」 極楽寺で待ってたのは髭面で黒尽くめの男。 「あ、杏南のお父さん!?」 「そうだ!そしてお前の父親に無実の罪を着せた極悪極道、宅彩度組(ダークサイド組)組長にして暗黒面に堕ちた極道、史歩穴筋だ!」 「な、なんだって!衝撃の真実を2行で説明しやがって!なんのつもりだ!」 「衝撃の真実?甘いな!本当の衝撃はここからさ!おまえは俺が捨てた倅を市ノ瀬…つまりおまえの親父が育てた子…。俺はお前の父親だ!!!!つまりお前達は実の兄弟!市ノ瀬悠斗と史歩杏南は双子なんだ!!!!」 「なんですってー!」 「なんでそんな複雑な設定を最終回で持ち出すんだ!」 「最終回?甘いな!本当の前途多難はここからさ!本当の戦いはここから始めるのだ!まだ100話は続けるぞ!」 「ふざけんな!俺はもう嫌だ!!」 「トラベルデートなんかせずにトリプルブッキングしとけばよかったな!じゃあな息子よ!杏南は頂いていくぞ!諸々の問題と向き合ってから追ってこい!!」 「いやだぁぁぁあああ!!!!!」 最低の日曜日はまだ終わってくれそうにない。いや終わってくれよ。               完  つづく
13=オッセルヴァンツァ
-ボクは時間を遡った-
あの神様の力によって…
-ボクは時間を遡った-
みんなと隔たりなく友達になるために
-ボクは時間を遡った-
…………………。 ………。 …。
ボクは朝食を作りながら考えた。 どうすれば皆無事に過ごし、杏南と舞さんの関係を修復し、ボクとジュリアとの壁を取り払うか。 後者の場合はボクの苦手意識を克服し、接し方を変えればいいだろう。
問題は前者だ。
くだらないと言えばくだらない原因で関係が悪くなっている、これをどうやって和解させるかが重要だ。 杏南はプライドが高く意地っ張りだ、そして舞さんは目的の為ならば手段は選ばない。
厄介にも程がある
お互い絶対に引く事は無いだろう、どうするか。 「お兄ちゃん!卵焼き焦げてる!」 「あっ、しまった」 「お兄ちゃんどうしたの、焦がすなんて珍しい」 「ははは、ちょっと考え事をな」 「なになに?お悩み相談ならこのマロンちゃんにお任せあれ!」 「いや、いいよ」 「ガーン!冷たい」 「はいはい、作り直すから席に着きなさい」 時間は巻き戻っただけだ、どこかの選択を少し変えれば未来は変わるのだ。 この世の全ては連鎖反応によって成り立っている。 そうと決まれば、ボクは急いで朝食を済ませ、駆け足で杏南との待ち合わせ場所に向かった。
「…遅い」 「ごめん」 息を切らしながらボクは杏南に言った。
杏南に連れられ、ボクは近くの喫茶店に入った。 あの時死んでしまった杏南がこうして生きているのは不思議な気持ちだ。 それよりもここからが問題だ、杏南と舞さんの仲を良くし、ジュリアとの隔たりを無くす。チャンスは一度きり。おそらくこれが最後である。 「悠斗、何考え込んでいるの。話聞いてる?」 「あ、ごめん。聞いていなかった」 「ムカッ」 ムカッて口に出して言う人初めて見た、そしてあざとい。 「悠斗はどうなの、恋人とか作らないの?」 内心ドキッとした。 「うーん、恋人か…あまり考えた事ないなぁ、楽しそうだけど」 「ふーん、彼女作る気はあるんだ」 「作る気って、まぁできるならそうしたいけど。」 「じゃあさ、私と付き合ってみる?」 「は?今何て?」 「だからさ、私と付き合ってみないかって言ってるの。」 お前は何を言っているんだ、また杏南はボクをからかう気なんだな。昔からそうだった。 「またそんな事言って、ボクをからかっているんだろ」 「ためしてみる?」 いたずらに微笑む杏南。 やめてくれ、うっかり惚れそうになる。 「ちょっとトイレ」 このままでは杏南にいいようにされるので戦略的撤退を決めた。 トイレに入ろうとすると長身の女性とぶつかった。 「あっ、すいません…て、舞さん!」 「初対面でその反応は感心しないな。君、青嵐の生徒か。」 「はい、そうです。」 「…ん〜…」 彼女は唸りながら考え込んだ。 舞さんは人の性格などの内面を見抜ける特殊能力とも言える特技があるのだ。 噂では生徒会役員の大半が舞さんが選抜しているらしい、軍隊でも作るのだろうか。 「フフフ…」 「な、何ですか?」 「いや、興味深いと思ってな。」 何やら企んでるような顔をしている。 そうこうしているとあの転校生が現れた。 「マイちゃ〜ん!おまたネ〜」 「げ、ジュリア」 「ユウト酷〜い、でも何でユウトとマイちゃんが一緒に居るネ。モシカシテ付き合ってるのカナ〜?」 「おいジュリア、舞さんに失礼だろ」 「そうか?私は付き合ってみるのも面白そうだが」 「え、舞さん?」 この人も何を言っているんだ? 「ヒュ〜、マイちゃん大胆〜」 あーめんどくさい事になってきたぞ そしてさらに面倒な事になった。 「悠斗、いつまでトイレに居るつもり…桜舞…��� 「…杏南」 すっかり忘れてた、まずい空気になった。 「なんであんたが居るのよ」 「お前はこのフルール・ド・ラパンのオーナーでもないのに偉そうだな杏南、私がどこにいようと勝手だろう」 「マイちゃんアンナストップ、ストーップ!ジュリア2人が喧嘩するところ見たくないネ!」 「……。」 「………。」 しばらくの沈黙が訪れたが、みんな気づいて。他のお客さんがこっち観てるよ〜。 「あのー、お客様。他のお客様のご迷惑になるので…」 ほら、店員さんが来ちゃったよ。 出禁になったらどうするのさ。 「もういい、私帰るわ。悠斗、会計よろしくね」 え?ボク持ちなの?杏南さん結構注文しましたよね?手持ち足りるかな。 なんて思ってるうちに杏南は姿を消していた。 「はぁ、全くくだらないことで喧嘩なんて子供ですか」 「くだらないとはなんだ貴様、あいつは私の父を侮辱したのだぞ。それに貴様には関係ないことだろう?何故首を突っ込む」 「関係ありますよ、ボクには」 「ほう…では聞こうか、どんな関係があるのかを」 「それは…」 「2人ともー、ジュリアの事を忘れてないー?」 ジュリアが不機嫌そうに頬を膨らませている、リスかよ可愛いな。 「そんな事はないぞジュリア」 「マイちゃん…///」 ジュリアをそっと抱きしめる舞さん。 えっ?なに?2人はそんな関係なの?聞いてませんよ? 「どうだジュリア、久々に今夜は一緒に…」 「お取り込み中すいませんが、ボクの話を聞いてくれますか?」 これ以上はまずいので話を戻す事にした。 「ああ、すまない。ジュリア、先に私の家に行っててくれ、続きはその時に…///」 「うん先に待ってるネ♡」 うわぁ…この2人マジだ…まあいいや 「待たせたな、では話を戻そう。貴様に私とジュリアにどんな関係があるのかを」 「舞さんと杏南でしょうに、ジュリアは舞さんと杏南が喧嘩しているのが嫌なんですよ。それはボクも同じ気持ちです。みんなで仲良く平穏に過ごしたいんですよボクは。」 「それは知っている。杏南がキチンとした謝罪をしたら私は許すつもりでいる。だがアイツはその素ぶりを見せるどころか敵意を剥き出しにしている。それが気に入らない」 「確かに、杏南は意地を貼ることがありますからね」 「もっと謙虚で気遣いができれば、良き人間になれるのに勿体ない女だ」 杏南をいくら説得しても絶対に謝罪に応じないだろう、だったら他の手を考えなくては、だったら… 「舞さん、ボクを生徒会役員に入れようと思ってますよね?」 「!?何故わかった、一言もそのような発言はしていないのに…ふふ、やはり君は興味深いな」 「生徒会に入る代わりに1つ条件があります」 「何だ?言ってみろ、話しぐらいなら聞くぞ」 「杏南を許してやって下さい」 「ほう、その条件は高くつくぞ?」 「わかっています、それでもお願いします」 「君のその執念、気に入った。いいだろう、条件を受け入れよう」 「本当ですか!?ありがとうございます!!」 「では今から君は私の専属執事だ」 「へ?」 「高くつくと言っただろ?今からお前は私のモノだ、文句は無いよな?」 新しい玩具を見つけたかのようなサディスティックに笑う舞さん。何だろうこの気持ち、嫌いじゃない 「沈黙は了承と受け取る、では今から私の家に来い」 「え?確かジュリアも居るんですよね?さ…3Pだなんていきなりすぎますし、第1未経験ですし…」 「ゲーム機は複数台用意すれば良いし、オンラインプレイだから人数はあまり関係無い。操作方法と立ち回りは私とジュリアが教えるから心配するな」 「え?ゲーム?」 「ん?ゲームだぞ?何だと思ったんだ?」 「い…いや、あの、その…」 「もしかして、やましいことを想像していたのか?」 慌てるボクの顔をゲス顔で覗き込む舞さん、く…/// 「まあいい早く向かうぞ、時間は有限だ。あ、先ずは会計を済ませなければな」
実に奇妙で長い一日になったが、何はともあれ以前よりはいい結果にはなった。 しかし2人がプレイしているゲームがアーマード・コアって… でもゲームのおかげでジュリアとも仲良くなれた。 舞さんが杏南と喧嘩する事もなくなったが、今度は舞さんがボクを誑かしているとか言いがかりをつけ始めたが、約束通りに舞さんは穏便に話を済ませてくれたし、多少は関係が良くなっている。 それと、生徒会での仕事はいろんな意味で疲れるたが、それはまた別のお話。
-END-
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