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#すこてぃっしゅふぉーるど立ち耳
tokonishipeko · 1 year
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NEWFACE 立耳スコちゃん! #立ちスコ #スコティッシュフォールド子猫 #すこてぃっしゅふぉーるど立ち耳 #スコ#ねこ#ねこすたぐらむ#ねこかわいい #ねこのきもち #猫好きな人と繋がりたい #ペット#ペットショップ #オレンジ・ペコ#所沢西 #アニコム損保#ゆあぺてぃあ所沢西 #petstagram #petlovers #catstagram #catlife #cat https://www.instagram.com/p/CpuR-oHPp7c/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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ice-man-2023 · 7 months
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ちんぽで狂って、ケツマンコの本当の気持ちよさ教えられました。乳首イキより、ケツイキの方が気持ちいいし、あんなにちんぽでこすられるとこ順番にケツイキするくらい敏感にさせられたら、当たる度にイキまくって、イキ方も当たったら素直にイっちゃうから、何回いってもしんどくならないし、力も抜けて、マンコの締まりもゆっくりイってるのがわかる用にイくって気持ちよくて、やめらんなくなるかもってくらい、もっとケツイキしたいし、このちんぽ、生ちんぽでこすられて、生マンコイかされたいー。
マンコイキで締まりすぎて、マンコイキ我慢させられたんすけど、俺の我慢のひっしさが、可愛かったらしく、意地悪でいくなよ…いくなよ?って低めの声で囁かれると、いきそうになり、ぴくぴくしちゃうけど、なんとかイくの我慢できたって思ったら、ちんぽ奥まで一気に突っ込まれて、ケツに腰を強く打ち付けてきたから、イキまくって、じゃーって感じで、前からも漏れちゃうし、漏れちゃったぁぁ!すごいいーって漏らしたら、ちんぽ引いて、ちょっと止まって、俺が止められるのが嫌すぎて、ケツ振ったんで、ねだり方がよかったみたいで、ぱんぱんついてもらえて、突かれる度に、勝手に漏れちゃうし、いっぱいでちゃうー。漏らすの気持ちよすぎるーって言うのが面白かったみたいで、漏らせっ耳元で囁いて、ケツを突く、漏らせ、突く、って感じで、漏らせっ命令を聞いて漏らしてるみたいだし、こんなに気持ちよく漏らすの初めてで、ケツ割れびっちゃびちゃに濡らして、シーツまで濡らすくらい、種も潮も漏れたけど、体位が、漏らした真上に頭があるし、下見てどんだけ漏らしたか、確認させられました。
その染みを指に少しつけて、指を口に近づけられたので、いわれる前に舌出して舐めに行く姿がエロいし、従順だったし、美味しそうに指舐めして、嬉しそうになめてたらしいです。
そっからは、ケツイキしまくるけど、閉まりすぎて、おにーさんイキそうになっちゃって、まだ出したくないから、ケツイキ我慢しろって、言われました。さぅきより、ほんとにイキそうな感じが可愛くて、マンコいき気持ちいいの?ちんぽイかせちゃおっかなって、つい言ったら、生意気だったらしく、急に上半身を倒され、ケツ突き上げられ、ぎりぎりまでちんぽ抜いて、自分でケツ持たされ、ケツだけつきあげて、頭は床にべたって潰されてしまいました。俺のケツつかんでた両手がハズレ、ちんぽもゆっくりぬきはじめて、カリのところまで抜かれたまま、ちんぽのカリでとめたまま、無言でちんぽ動かなくなるし、帰っちゃうんですか?ごめんなさい!帰らないでちんぽ突っ込んでまんこしてください!
このちんぽ好きだし、このちんぽでケツイキしたいです!
このちんぽ1番好きぃ。お願いだから、ちんぽ抜かないでください!!
っておねだりして、ケツ振りまくったり、我慢してケツイキしないようにしますから、許してくださいって必死になって言ったら、ガンガンマンコついもらえたけど、ケツイキしそうになって、必死でケツに力入れたり、んーって体かためて、ケツピクで収めて、ケツイキしないようにしてたら、改めてケツ掴まれて、ゆーっくり、入り口ぐちょぐちょ割れ目をなぞりながら、入れたり出したりされました。突っ込みそうにするけどやめるってのを繰り返しされると、期待したり止まったり、で、おかしくなりそうだし、ケツイキの我慢が限界になって、ごめんなさいいいぃ!マンコいくぅぅぅ!
って言って、まじでケツイキ止まんなくなって、頭突っ伏して感じまくっちゃいました。よだれ垂らして目つきが虚ろになって、嬉しそうな顔して、まんこぉ気持ちいいイイって言いながら、イキまくったから、おにーさんのちんぽもピクピクしてきました。ぴくぴくされたのもたまんないし、まんこ緩いし、めくれてひくついてるし、抜いたら無意識にケツ振ってねだるし、完全にマンコ落ちしてました。
激しくケツの奥をえぐりながら、たまんね。出すぞ。欲しいか?って言われたから、欲しい❕種ほしいです!俺のマンコでビクビクさせてちんぽから種いっぱいにされたいです!
言いながら、ちょーだい!まんこにぃ。ここにぃ。って言って、ケツタブ自分で拡げてまんこ拡げてねだったのが可愛かったみたいで、ケツの奥でちんぽがびっくんびっくんしながら、液が出てるのもまんこの壁で解った瞬間に、ちんぽ中でビクビクしてるぅ。これ好きぃ。って言いながら、ケツイキしまくりながら、けっこー長く出されて、種が出される度に、ケツイキして、体起こして、虚ろな目でイキまくってたんで、半立ちのちんぽ抜かずに、動かしてくれるから、なんか動く度に、嬉しそうに感じてケツ押しつけたら、ガンガンってケツ突かれたから、このまま②発目かもって感じの顔して、ケツ振ったんで、ケツ叩きながら、抜かれちゃったから、すんげー悲しそうな顔で、ケツフリフリしてけつひくつかせるのみせたりしちゃってた見たいです。
喜んでくれたけど、いじめて楽しそうだったから、それはそれで嬉しかったっす。
��のあとは、好きすぎるちんぽを掃除させてくださいってねだって、ゆっくりしてるおにーさんのちんぽを舐め続けて口でちんぽの感触楽しんだり、顔にすりつけたり、時々頭掴んでぐりぐりおしつけてくれたりかい金玉嗅ぎながら、舐めました。
このちんぽめっちゃ好きとか、このちんぽに服従してる気分になって、ふせみたいにべたってなって、股の間に入って、金玉の下から、丁寧に頭下げて舐め舐めしたら、おにーさんも喜んで、見下ろして、頭掴んで舌出してちんぽゆっくり舐めて、俺の目を見てみ?て言われて、舌出して目を見ながら、犬気分で舐め方があってるかびくびくしながら、べろーっべろーって舐めたり、太もも舐めたりちんぽほおずりしながら、くんくんして、目を見てペロペロ舐めたら、ご褒美にゆびマンしてやるから、イキまくって俺に見せろって言われて、犬みたいにお腹見せる感じになれって言われて、仰向けになりました。ケツ見せろって言われて、ケツが上にあがるように足抱えて、俺のこのまんこ、ぐちょがちょに指マンしてください!
って言って、坑拡げて、指くれないから、ケツ拡げてケツ振ったりしたけど、指当てるだけで止められちゃったから、近くにあった足とかぺろぺろ舐めながら、お願いしますぅ。指でマンコしてくださいーって言ってマンコ拡げたら、ゆーっくり指入ってきて、指もきもちよすぎってくらい気持ちいい。気づいたら4本になってるし、いっぱいいっぱいだから、ちょっと指曲げたりしただけで、マンコイキして、漏らすし、顔にかかっても、気にせず、ゆっくりかき回しながら、マンコイキ寸止めしたり、急にかき回したり、マンコイキ何回も寸止めされて、まじおちしちゃって、泣き入って、寸止め許してえ。おかしくなるぅ。って言っても、にやついてみてるだけだから、何でもするからマンコイキさせてください!マンコイキいっぱいするし、漏らしたら舐めて掃除してもいいからぁ。
いかせてえぇ!って言うと、口開けて舌出せ。って言いながら、まんこの入り口くちゅくちゅして、指がいっぱいあてられて、マンコいきんで、いっぱい拡げて、ケツ振りして、まんこ指いっぱいかき回して、エロマンコにしてくださいっ!って言うと、指がずるぅーって入ってきて、ケツを真上に持ちあげられて、ずーっと指が動きまくって、漏らしたの口で受けると、なんか美味しくてたまんないし、ザーメンみたいな匂いのしてきて、精子がだらだら出てきたから、興奮して、種美味しいっていいながら、マンコイキいっぱいしてました。
力入らなくなって、けつのぴくぴく止まんないけど、ひっくり返されて、ケツ強引に突き出すポーズされたけど、されるがままにケツが閉まんないから、めくれたところなぞられて、ケツが気持ちいいから、ぴくぴくして、無意識にケツ振って、ました。
口開けて、よだれ垂れてるのに気づいたから、なんとか深呼吸して、帰る前にちゃんとお座りしたら、よしよしされたから、足舐め大好きだし、舐めて、服従してる感じだして、また阿讃でもらえるように舐めて、見上げながら、もう直された、おにーさんのちんぽのズボンの布越しに顔押しつけて、すりすりして、くんくんして、目を見ながら、ちんぽのさきあたりを、唇でなぞって、見上げてお礼を言ったら、また今度、もっとマンコおかしくしてやるからなって言われました。
めっちゃ嬉しそうな顔になったんで、ばいばいしようとしたら、いきなり目の前しゃがんで、
お座り。
乳首出せ。
乳首の先だけ触ったまま、言うこと聞けるよな?
お前、俺のちんぽの尺犬だよな?
最後に犬らしく、芸させるから、思いっきりできたら、俺のちんぽ犬になれるからな。
おすわり。
ちんちん!
って言われて、恥ずかしかったけど、すぐ膝立ちして、ちんちんぽーずしました。
半泣きになったけど、ちんぽ起ってきちゃって、ビンビンになりました。足でケツ割れの前のところはずされ、俺の皮被った、漏らしたもんで変な匂いもしてるし、皮の中から液が長ーく漏らしながら、ビンビンにぴくぴくさせてました。
腰振れよって言われたから、泣きそうな顔で腰振り始めたら、ゆっくり乳首つまんでくれて、
漏らして乳首イキして、俺の目を見��がら、イキまくっていいからなって言われて、乳首の先っぽいじられまくると、すぐ乳首イキして、もう出ないかと思ってたのに、乳首イキしながら、なんか出てくるってなったら、興奮しちゃって、腰振り激しくしたら、床にちんぽをぱしぱし当てながら、漏らしちゃって、起ってるから、まき散らしながら、イキまくってるの見てもらいました。おにーさんの服ちょっと汚したけど、止めないから、ごめんなさいい!漏らしたの汚してごめんなさいって言いながら、イって、だらーっともらしながら、腰触れなくなってきた俺を見おろして、ちゃんと床にこぼしたの綺麗にしない犬はしつけしなおしたがいいか?って言われたので、急いで床舐めできるくらい調教された…またしたいけど、おにーさんにしてもらいたいし、次はもっとマンコ犯してもらいたい。
思い出して収まんない。やべー。俺、狂ってしまってる。
あのちんぽねだるのたまんないっす。
ちんぽ舐めて、ちんぽの奴隷になればちんぽくれるなら、なんでもしそうっす。
ケツマンコ見てもらうのってたまんないっす。
ケツ振ってねだるのも楽しいっす。ちんぽねだるとき、後ろ向いて、ケツ突き出して、マンコ拡げて、まんこひくつかせて、指で突かれのエロくてやばかった。ケツ拡げて、敏感なところつんつんしてもらうと、まじちんぽ欲しくなって、ド変態なねだり方になっちゃうし、よだれ出ちゃうよね。ちんぽ想い出しちゃうと、唾出ちゃう。
ケツに塗られたのかもだけど、マンコの壁とか、気持ちよすぎてまだひくつく。
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isakicoto2 · 2 years
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つまさきになみのおと
そういえば、自分から電話することだって滅多になかったのだった。 ディスプレイに浮かぶ名前を、そっとなぞるように見つめる。漢字三文字、向かって右手側の画数が多いそれは、普段呼んでいるものよりもなんとなく遠くに感じる。同じ、たったひとりの人を指す名前なのに。こんな場面でやけに緊張しているのは、そのせいなのだろうか。うんと昔は、もっとこれに近い名前で呼んでいたくせに。本人の前でも、居ないところでだって、なんだか誇らしいような、ただ憧れのまなざしで。 訳もなく一度ベンチを立ち上がって、ゆるゆると力なく座り込んだ。ただ電話をかけるだけなのに、なんだってこんなに落ち着かないんだろう。らしくないと叱咤する自分と、考え過ぎてナーバスになっている自分が、交互に胸の中を行き来する。何度も真っ暗になる画面に触れなおして、またひとつ詰めていた息を吐き出した。 寮の廊下はしんと静まり返っていた。巡回する寮監が消していく共同部分の照明、それ以外は規定の中だけで生きているはずの消灯時間をとうに過ぎている。水泳部員の集まるこのフロアに関して言えば、週末の夜にはもう少し笑い声も聞こえてくるはずだ。けれど、今日は夜更かしする元気もなく、すっかり寝息を立ててしまっているらしい。 午前中から半日以上かけて行われた、岩鳶高校水泳部との合同練習。夏の大きな大会が終わってからというもの緩みがちな意識を締める意味でも、そして次の世代に向けての引き継ぎの意味でも、今日の内容は濃密で、いつも以上に気合いが入っていた。 「凛先輩、今日は一段と鬼っスよぉ」 残り数本となった練習メニューのさなか、プールサイドに響き渡るくらい大きな声で、後輩の百太郎は泣き言を口にしていた。「おーい、気張れよ」「モモちゃん、ファイト!」鮫柄、岩鳶両部員から口々にそんな言葉がかけられる。けれどそんな中、同じく後輩の愛一郎が「あと一本」と飛び込む姿を見て、思うところがあったらしい。こちらが声を掛ける前に、外しかけたスイミングキャップをふたたび深く被りなおしていた。 春に部長になってからというもの、試行錯誤を繰り返しながら無我夢中で率いていたこの水泳部も、気が付けばこうやってしっかりと揺るぎのない形を成している。最近は、離れたところから眺めることも増えてきた。それは頼もしい半面、少しだけ寂しさのような気持ちを抱かせた。 たとえば、一人歩きを始めた子供を見つめるときって、こんな気持ちなのだろうか。いや、代々続くものを受け継いだだけで、一から作り上げたわけではないから、子供というのも少し違うか。けれど、決して遠くない感情ではある気がする。そんなことを考えながら、プールサイドからレーンの方に視線を移した。 四人、三人と並んでフリースタイルで泳ぐその中で、ひときわ飛沫の少ない泳ぎをしている。二人に並んで、そうして先頭に立った。ぐんぐんと前に進んでいく。ひとかきが滑らかで、やはり速い。そして綺麗だった。そのままぼんやりと目で追い続けそうになって、慌ててかぶりを振る。 「よし、終わった奴から、各自休憩を取れ。十分後目安に次のメニュー始めるぞ」 プールサイドに振り返って声を張ると、了解の意の野太い声が大きく響いた。
暗闇の中、小さく光を纏いながら目の前に佇む自動販売機が、ブウンと唸るように音を立てた。同じくらいの価格が等間隔に並んで表示されている。価格帯はおそらく公共の施設に置いてあるそれよりも少しだけ安い。その中に『売り切れ』の赤い文字がひとつ、ポツンと浮き上がるように光っている。 ふたたび、小さく吐き出すように息をついた。こんな物陰にいて、飲み物を買いに来た誰かに見られたら、きっと驚かせてしまうだろう。灯りを点けず、飲み物を選んでいるわけでも、ましてや飲んでいるわけでもない。手にしているのはダイヤル画面を表示したままの携帯電話で、ただベンチでひとり、座り込んでいるだけなのだから。 あと一歩のきっかけをどうしても掴めない。けれど同時に、画面の端に表示された時刻がそんな気持ちを追い立て、焦らせていた。もう少しで日をまたいで越えてしまう。意味もなくあまり夜更かしをしないはずの相手だから、後になればなるほどハードルが高くなってしまうのだ。 今日は遅いし、日をあらためるか。いつになく弱気な考えが頭をもたげてきたとき、不意に今日の後ろ姿が脳裏に浮かんだ。途端に息苦しさのような、胸の痛みがよみがえる。やはり、このままでいたくなかった。あのままで今日を終えてしまいたくない。 焦りと重ねて、とん、と軽く押された勢いのまま、操作ボタンを動かした。ずっと踏み出せなかったのに、そこは淡々と発信画面に切り替わり、やがて無機質な呼び出し音が小さく聞こえ始めた。 耳に当てて、あ���り音を立てないように深く呼吸をしながら、じっと待つ。呼び出し音が流れ続ける。長い。手元に置いていないのだろうか。固定電話もあるくせに、何のための携帯電話なのか。そんなの、今に始まったことじゃないけれど。それに留守電設定にもしていない。そもそも設定の仕方、知ってんのかな。…やけに長い。風呂か、もしくはもう寝てしまっているとか。 よく考えたら、このまま不在着信が残ってしまうほうが、なんだか気まずいな。そんな考えが浮かんできたとき、ふっと不安ごと取り上げられたみたいに呼び出し音が途切れた。 「もしもし…凛?」 繋がった。たぶん、少しだけ心拍数が上がった。ぴんと反射的に背筋が伸びる。鼓膜に届いた遙の声色は小さいけれど、不機嫌じゃない。いつもの、凪いだ水面みたいな。 そんなことを考えて思わず詰まらせた第一声を、慌てて喉から押し出した。 「よ、よぉ、ハル。遅くにわりぃな。あー、別に急ぎじゃないんだけどさ、その…今なにしてた? もう寝てたか?」 隙間なく沈黙を埋めるように、つい矢継ぎ早に並べ立ててしまった。違う、こんな風に訊くつもりじゃなかったのに。いつも通りにつとめて、早く出ろよ、とか、悪態の一つでもついてやろうと思ってたのに。これではわざとらしいことこの上なかった。 「いや…風呂に入ってきたところだ。まだ寝ない」 ぐるぐると頭の中を渦巻くそんな思いなんて知らずに、遙はいつもの調子でのんびりと答えた。ひとまず色々と問われることはなくて、良かった。ほっと胸を撫で下ろす。 「そ。それなら、良かった」 電話の向こう側に遙の家の音が聞こえる。耳を澄ませると、何かの扉を閉じる音、続けて、小さくガラスのような音が鳴った。それから、水の音、飲み下す音。 …あ、そっか、風呂上がりっつってたな。向こう側の景色が目の前に浮かぶようだった。台所の、頭上から降る白い光。まだ濡れたまま、少しのあいだ眠っているだけの料理道具たち。水滴の残るシンクは古くて所々鈍い色をしているけれど、よく手入れがされて光っている。水回りは実家よりも祖母の家に似ていて、どこか懐かしい。ハルの家、ここのところしばらく行ってないな。あの風呂も、いいな。静かで落ち着くんだよなぁ。 「それで、どうしたんだ」 ぼんやり、ぽやぽやと考えているうちに、水かお茶か、何かを飲んで一息ついた遙がおもむろに投げかけてきた。ハッと弾かれるように顔を上げ、慌てて言葉を紡ぎ出す。 「あー、いや…今日さ、そっち行けなかっただろ。悪かったな」 「…ああ、そのことか」 なるほど、合点がいったというふうに遙が小さく声を零した。 そっち、というのは遙の家のことだ。今日の合同練習の後、岩鳶の面々に「これから集まるから一緒に行かないか」と誘われていたのだった。 「明日は日曜日なんだしさ、久しぶりに、リンちゃんも行こうよ」 ねぇ、いいでしょ。練習終わりのロッカールームで渚がそう言った。濡れた髪のままで、くりくりとした大きな目を真っすぐこちらに向けて。熱心に誘ってきたのは主に彼だったけれど、怜も真琴も、他人の家である以上あまり強くは勧めてこなかったけれど、渚と同じように返事を期待しているみたいだった。当の家主はというと、どうなんだと視線を送っても、きょとんとした顔をして目を瞬かせているだけだったけれど。きっと、別に来てもいいってことなのだろう。明確に断る理由はなかったはずだった。 けれど、内心迷っていた。夏の大きな大会が終わってやっと一息ついて、岩鳶のメンバーとも久しぶりに水入らずでゆっくり過ごしたかった。それに何より、他校で寮暮らしをしている身で、遙の家に行ける機会なんてそう多くはない。その上、一番ハードルの高い『訪問する理由』というものが、今回はあらかじめ用意されているのだ。行っても良かったのだ。けれど。 「わりぃ、渚。今日は行かれねぇ」 結局、それらしい適当な理由を並べて断わってしまったのだった。ミーティングがあるからとか、休みのうちに片付けなきゃならないことがあるとか、今思えば至極どうでもいいことを理由にしていた気がする。 始めのうちは、ええーっと大きく不満の声を上げ、頬を膨らませてごねていた渚も、真琴に宥められて、しぶしぶ飲み込んだみたいだった。 「また次にな」 まるで幼い子供に言い聞かせるようにやわらかい口調につとめてそう言うと、うん、分かったと渚は小さく頷いた。そうして、きゅっと唇を噛みしめた。 「でもでも、今度こそ、絶対、ぜーったいだからね!」 渚は声のトーンを上げてそう口にした。表向きはいつものように明るくつとめていたけれど、物分かりの良いふりをしているのはすぐに知れた。ふと垣間見えた表情はうっすらと陰り曇って、最後まで完全に晴れることはなかった。なんだかひどく悪いことをしてしまったみたいで、胸の内側が痛んだ。 ハルは、どうなんだ。ちらりとふたたび視線をやる。けれど、もうすっかり興味をなくしたのか、遙はロッカーから引き出したエナメルバッグを肩に引っ掛け、ふいっと背を向けた。 「あ、ハル」隣にいた真琴が呼びかけたけれど、遙は振り返らずに、そのまま出入り口へ歩いていってしまった。こんなとき、自分にはとっさに呼び止める言葉が出てこなくて、ただ見送ることしかできない。強く引っ掛かれたみたいに、いっそう胸がちくちくした。 「なんか、ごめんね」 帰り際、真琴はそう言って困ったように微笑んだ。何が、とは言わないけれど、渚の誘いと、多分、先ほどの遙のことも指しているのだろう。 「いーって。真琴が謝ることじゃねぇだろ」 軽い調子で答えると、真琴は肩をすくめて曖昧に笑った。 「うん、まぁ、そうなんだけどさ」 そう言って向けた視線の先には、帰り支度を終えて集まる渚、怜、江、そして遙の姿があった。ゆるく小さな輪になって、渚を中心に談笑している。この方向からでは遙の顔は見えない。顔の見える皆は楽しそうに、ときどき声を立てて笑っていた。 「言わなきゃ、分からないのにね」 目を細めて、独り言のように真琴は口にした。何か返そうと言葉を探したけれど、何も言えずにそのまま口をつぐんだ。 その後、合同練習としては一旦解散して、鮫柄水泳部のみでミーティングを行うために改めて集合をかけた。ぞろぞろと整列する部員たちの向こうで、校門の方向へ向かう岩鳶水泳部員の後ろ姿がちらちらと見え隠れした。小さな溜め息と共に足元に視線を落とし、ぐっと気を入れ直して顔を上げた。遙とは今日はそれっきりだった。 「行かなくて良かったのか?」 食堂で夕食を終えて部屋に戻る道中、宗介がおもむろに口を開いてそう言った。近くで、ロッカールームでの事の一部始終を見ていたらしかった。何が、とわざわざ訊くのも癪だったので、じっとねめつけるように顔を見上げた。 「んだよ、今さら」 「別に断る理由なんてなかったんじゃねぇか」 ぐっと喉が詰まる。まるで全部見透かしたみたいに。その表情は心なしか、成り行きを楽しんでいるようにも見えた。 「…うっせぇよ」 小さく舌打ちをして、その脚を軽く蹴とばしてやる。宗介は一歩前によろけて、いてぇなと声を上げた。けれどすぐに、くつくつと喉を鳴らして愉快そうに笑っていた。 「顔にでっかく書いてあんだよ」 ここぞとばかりに、面白がりやがって。
それから風呂に入っても、言い訳に使った課題に手を付けていても、ずっと何かがつかえたままだった。宗介にはああいう態度をとったものの、やはり気にかかって仕方がない。ちょっとどころではない、悪いことをしてしまったみたいだった。 だからなのか、電話をしようと思った。他でもなく、遙に。今日の後ろ姿から、記憶を上塗りしたかった。そうしなければ、ずっと胸が苦しいままだった。とにかくすぐに、その声が聞きたいと思った。 寮全体が寝静まった頃を見計らって、携帯電話片手にひと気のない場所を探した。いざ発信する段階になってから、きっかけが掴めなくて踏ん切りがつかずに、やけに悩んで時間がかかってしまったけれど。 それでも、やっとこうして、無事に遙と通話するに至ったのだった。 「…らしくないな、凛が自分からそんなこと言い出すなんて」 こちらの言葉を受けて、たっぷりと間を置いてから遙は言った。そんなの自分でも分かっているつもりだったけれど、改まってそう言われてしまうと、なんとなく恥ずかしい。じわじわと広がって、両頬が熱くなる。 「んだよ、いいだろ別に。そういうときもあんだよ」 「まぁ、いいけど」 遙は浅く笑ったみたいだった。きっと少しだけ肩を揺らして。風がそよぐような、さらさらとした声だった。 「でも、渚がすごく残念がってた」 「ん…それは、悪かったよ」 あのときの渚の表情を思い浮かべて、ぐっと胸が詰まる思いがした。自分のした返事一つであんなに気落ちさせてしまったことはやはり気がかりで、後悔していた。いっつもつれない、なんて、妹の江にも言われ続けていたことだったけれど。たまにはわがままを聞いてやるべきだったのかもしれない。近いうちにかならず埋め合わせをしようと心に決めている。 「次に会うときにちゃんと言ってやれ」 「そうする」 答えたのち、ふっとあることに気が付いた。 「そういえば、渚たちは?」 渚の口ぶりから、てっきり今晩は遙の家でお泊り会にでもなっているのだと思っていた。ところが電話の向こう側からは話し声どころか、遙以外のひとの気配さえないようだった。 「ああ。晩飯前には帰っていった」 「…そっか」 つい、沈んだ声色になってしまった。何でもないみたいにさらりと遙は答えたけれど、早々にお開きになったのは、やはり自分が行かなかったせいだろうか。過ぎたことをあまり考えてもどうにもならないけれど、それでも引っ掛かってしまう。 しばらく沈黙を置いて、それからおもむろに、先に口を開いたのは遙の方だった。 「言っておくが、そもそも人数分泊める用意なんてしてなかったからな」 渚のお願いは、いつも突然だよな。遙は少し困ったように笑ってそう言った。ぱちりぱちりと目を瞬かせながら、ゆっくりと状況を飲み込んだ。なんだか、こんな遙は珍しかった。やわらかくて、なにか膜のようなものがなくて、まるで触れられそうなくらいに近くて、すぐ傍にいる。 そうだな、とつられて笑みをこぼしたけれど、同時に胸の内側があまく締め付けられていた。気を抜けば、そのまま惚けてしまいそうだった。 そうして、ぽつんとふたたび沈黙が落ちた。はっとして、取り出せる言葉を慌てて探した。だんだんと降り積もるのが分かるのに、こういうとき、何から話せばいいのか分からない。そんなことをしていたら先に問われるか離れてしまうか。そう思っていたのに、遙は何も訊かずに、黙ってそこにいてくれた。 「えっと」 ようやく声が出た。小石につまづいてよろけたように、それは不格好だったけれど。 「あ、あのさ、ハル」 「ん?」 それは、やっと、でもなく、突然のこと、でもなく。遙は電話越しにそっと拾ってくれた。ただそれだけのことなのに、胸がいっぱいになる。ぐっとせり上がって、その表面が波打った。目元がじわりと熱くなるのが分かった。 「どうした、凛」 言葉に詰まっていると、そっと覗き込むように問われた。その声はひどく穏やかでやわらかい。だめだ。遙がときどき見せてくれるこの一面に、もう気付いてしまったのだった。それを心地よく感じていることも。そうして、知る前には戻れなくなってしまった。もう、どうしようもないのだった。 「…いや、わりぃ。やっぱなんでもねぇ」 切り出したものの、後には続かなかった。ゆるく首を振って、ごまかすようにつま先を揺らして、わざと軽い調子で、何でもないみたいにそう言った。 遙は「そうか」とひとつ返事をして、深く問い詰めることはしなかった。 そうしていくつか言葉を交わした後に、「じゃあまたな」と締めくくって、通話を切った。 ひとりになった瞬間、項垂れるようにして、肺の中に溜め込んでいた息を長く長く吐き出した。そうしてゆっくりと深呼吸をして、新しい空気を取り入れた。ずっと潜水していた深い場所から上がってきたみたいだった。 唇を閉じると、しんと静寂が辺りを包んでいた。ただ目の前にある自動販売機は、変わらず小さく唸り続けている。手の中にある携帯電話を見やると、自動で待ち受け状態に戻っていた。まるで何ごともなかったみたいに、日付はまだ今日のままだった。夢ではない証しのように充電だけが僅かに減っていた。 明るさがワントーン落ちて、やがて画面は真っ暗になった。そっと親指の腹で撫でながら、今のはきっと、「おやすみ」と言えば良かったんだと気が付いた。
なんだか全身が火照っているような気がして、屋外で涼んでから部屋に戻ることにした。同室の宗介は、少なくとも部屋を出てくるときには既に床に就いていたけれど、この空気を纏って戻るのは気が引けた。 寮の玄関口の扉は既に施錠されていた。こっそりと内側から錠を開けて、外に抜け出る。施錠後の玄関の出入りは、事前申請がない限り基本的には禁止されている。防犯の観点からも推奨はできない。ただ手口だけは簡単なので、施錠後もこっそり出入りする寮生が少なくないのが実情だった。 そういえば、前にこれをやって呼び出しを受けた寮生がいたと聞いた。そいつ���そのまま校門から学校自体を抜け出して、挙げ句無断外泊して大目玉を食らったらしいけれど、さすがに夜風にあたる目的で表の中庭を歩くくらいなら、たとえばれたとしてもそこまでお咎めを受けることはないだろう。何なら、プールに忘れものをしたから取りに行ったとでも言えばいい。 そうして誰もいない寮の中庭を、ゆっくりと歩いた。まるで夜の中に浸かったみたいなその場所を、あてもなくただ浮かんで揺蕩うように。オレンジがかった外灯の光が点々とあちこちに広がって、影に濃淡をつくっている。空を仰ぐと、雲がかかって鈍い色をしていた。そういえば、未明から雨が降ると予報で伝えていたのを思い出した。 弱い風の吹く夜だった。時折近くの木の葉がかすかに揺れて、さわさわと音を立てた。気が付けば、ほんの半月ほど前まで残っていたはずの夏の匂いは、もうすっかりしなくなっていた。 寝巻代わりの半袖に綿のパーカーを羽織っていたので、さして寒さは感じない。けれど、ここから肌寒くなるのはあっという間だ。衣替えもして、そろそろ着るものも考えなければならない。 夏が過ぎ去って、あの熱い時間からもしばらく経って、秋を歩く今、夜はこれから一足先に冬へ向かおうとしている。まどろんでいるうちに瞼が落ちているように、きっとすぐに冬はやってくる。じきに雪が降る。そうして年を越して、降る雪が積もり始めて、何度か溶けて積もってを繰り返して、その頃にはもう目前に控えているのだ。この場所を出て、この地を離れて、はるか遠くへ行くということ。 たったひとつを除いては、別れは自分から選んできた。昔からずっとそうだった。走り出したら振り返らなかった。自分が抱く信念や想いのために、自分で何もかも決めたことなのに、後ろ髪を引かれているわけではないのに、最近はときどきこうやって考える。 誰かと離れがたいなんて、考えなかった。考えてこなかった。今だってそうかと言えばそうじゃない。半年も前のことだったらともかく、今やそれぞれ進むべき道が定まりつつある。信じて、ひたむきに、ただ前へ進めばいいだけだ。 けれど、なぜだろう。 ときどき無性に、理由もなく、どうしようもなく、遙に会いたくなる。
ふと、ポケットに入れていた携帯電話が震え出したのに気が付いた。メールにしては長い。どうやら電話着信のようだった。一旦足を止め、手早く取り出して確認する。 ディスプレイには、登録済みの名前が浮かんでいる。その発信者名を目にするなり、どきりと心臓が跳ねた。 「も、もしもし、ハル?」 逡巡する間もなく、気が付けば反射的に受話ボタンを押していた。慌てて出てしまったのは、きっと遙にも知れた。 「凛」 けれど、今はそれでも良かった。その声で名を呼ばれると、また隅々にまで血が巡っていって、じんわりと体温が上がる。 「悪い、起こしたか」 「や、まだ寝てなかったから…」 そわそわと、目にかかった前髪を指でよける。立ち止まったままの足先が落ち着かず、ゆるい振り子のように小さくかかとを揺らす。スニーカーの底で砂と地面が擦れて、ざりりっと音を立てた。 「…外に出てるのか? 風の音がする」 「あー、うん、ちょっとな。散歩してた」 まさか、お前と話して、どきどきして顔が火照ったから涼んでるんだ、なんて口が裂けても言えない。胸の下で相変わらず心臓は速く打っているけれど、ここは先に会話の主導権を握ってしまう方がいい。背筋を伸ばして、口角をゆるく上げた。 「それより、もう日も跨いじまったぜ。なんだよ、あらたまって。もしかして、うちのプールに忘れもんしたか?」 調子が戻ってきた。ようやく笑って、冗談交じりの軽口も叩けるようになってきた。 「プールには、忘れてない」 「んだよ、ホントに忘れたのかよ」 「そういうことじゃない」 「…なんかよく分かんねぇけど」 「ん…そうだな。だけど、その」 遙にしては珍しい、はっきりとしない物言いに首を傾げる。言葉をひとつずつひっくり返して確かめるようにして、遙は言いよどみながら、ぽつぽつと告げてきた。 「…いや、さっき凛が…何か、言いかけてただろ。やっぱり、気になって。それで」 そう続けた遙の声は小さく、言葉は尻切れだった。恥ずかしそうに、すいと視線を逸らしたのが電話越しにも分かった。 どこかが震えたような気がした。身体の内側のどこか、触れられないところ。 「…はは。それで、なんだよ。それが忘れもの? おれのことが気になって仕方なくって、それでわざわざ電話してきたのかよ」 精一杯虚勢を張って、そうやってわざと冗談めかした。そうしなければ、覆い隠していたその存在を表に出してしまいそうだった。喉を鳴らして笑っているつもりなのに、唇が小さく震えそうだった。 遙はこちらの問いかけには返事をせずに、けれど無言で、そうだ、と肯定した。 「凛の考えてることが知りたい」 だから。そっとひとつ前置きをして、遙は言った。 「聞かせてほしい」 凛。それは静かに押し寄せる波みたいだった。胸に迫って、どうしようもなかった。 顔が、熱い。燃えるように熱い。視界の半分が滲んだ。泣きたいわけじゃないのに、じわりと表面が波打った。 きっと。きっと知らなかった頃には、こんなことにも、ただ冗談めかして、ごまかすだけで終わらせていた。 ハル。きゅっと強く、目を瞑った。胸が苦しい。汗ばんだ手のひらを心臓の上にそっとのせて、ゆるく掴むように握った。 今はもう知っているから。こんなに苦しいのも、こんなに嬉しいのも、理由はたったひとつだった。ひたひたといっぱいに満たされた胸の内で、何度も唱えていた。 「…凛? 聞いてるのか」 遙の声がする。黙ったままだから、きっとほんの少し眉を寄せて、怪訝そうな顔をしている。 「ん、聞いてる」 聞いてるよ。心の中で唱え続ける。 だって声、聞きたいしさ、知りたい。知りてぇもん。おれだって、ハルのこと。 「ちゃんと言うから」 開いた唇からこぼれた声はふわふわとして、なんだか自分のものではないうわ言みたいで、おかしかった。 できるだけいつも通りに、まるで重しを付けて喋るように努めた。こんなの、格好悪くて仕方がない。手の甲を頬に当ててみた。そこはじんわりと熱をもっている。きっと鏡で見たら、ほんのりと紅く色づいているのだろう。はぁ、とかすかに吐き出した息は熱くこもっていた。 「あのさ、ハル」 差し出す瞬間は、いつだってどきどきする。心臓がつぶれてしまいそうなくらい。こんなに毎日鍛えているのに、こういうとき、どうにもならないんだな。夜の中の電話越しで、良かった。面と向かえば、次の朝になれば、きっと言えなかった。 「こ、今度、行っていいか、ハルの家」 上擦った調子で、小さく勢いづいてそう言った。ひとりで、とはついに言えなかったけれど。 「行きたい」 触れた手のひらの下で、どくどく、と心臓が弾むように鳴っているのが分かる。 無言のまま、少し間が開いた。少しなのに、果てしなく長く感じられる。やがて遙は、ほころんだみたいに淡く笑みを零した。そうして静かに言葉を紡いだ。 「…うん、いつでも来い」 顔は見えないけれど、それはひらかれた声だった。すべてゆるんで、溢れ出しそうだった。頑張って、堪えたけれど。 待ってる。最後に、かすかに音として聞こえた気がしたけれど、本当に遙がそう言ったのかは分からなかった。ほとんど息ばかりのそれは風の音だったのかもしれないし、あるいは別の言葉を、自分がそう聞きたかっただけなのかもしれない。あえて訊き返さずに、この夜の中に漂わせておくことにした。 「それまでに、ちゃんと布団も干しておく」 続けてそう告げる遙の声に、今度は迷いも揺らぎも見えなかった。ただ真っすぐ伝えてくるものだから、おかしくてつい吹き出してしまった。 「…ふっ、はは、泊まる前提なのかよ」 「違うのか」 「違わねぇけどさ」 「なら、いい」 「うん」 くるくると喉を鳴らして笑った。肩を揺らしていると、耳元で、遙の控えめな笑い声も聞こえてきた。 いま、その顔が見たいな。目を細めると、睫毛越しに外灯のオレンジ色の光が煌めいて、辺りがきらきらと輝いて見えた。 それから他愛のない会話をひとつふたつと交わして、あらためて、そろそろ、とどちらともなく話を折りたたんだ。本当は名残惜しいような気持ちも抱いていることを、今夜くらいは素直に認めようと思った。口にはしないし、そんなのきっと、自分ばっかりなのだろうけど。 「遅くまでわりぃな。また連絡する」 「ああ」 そうして、さっき言えなかったことを胸の内で丁寧になぞって、そっと唇に乗せた。 「じゃあ、おやすみ」 「おやすみ」
地に足がつかないとは、こういうことなのかもしれない。中庭から、玄関口、廊下を通ってきたのに、ほとんどその意識がなかった。幸い、誰かに見つかることはなかったけれど。 終始ふわふわとした心地で、けれど音を立てないように、部屋のドアをいつもより小さく開けて身体を滑り込ませた。カーテンを閉め切った部屋の中は暗く、しんと静まっていた。宗介は見かけに反して、意外と静かに眠るのだ。あるいは、ただ寝たふりなのかもしれないけれど。息をひそめて、自分のベッドに潜り込んだ。何か言われるだろうかと思ったけれど、とうとう声は降ってこなかった。 横向きに寝転んで目を閉じるけれど、意識がなかなか寝に入らない。夜は普段言えない気持ちがするすると顔を出してきて、気が付けば口にしているんだって。あの夏にもあったことなのに。 重なったつま先を擦りつけあう。深く呼吸を繰り返す。首筋にそっと触れると、上がった体温でうっすら汗ばんでいた。 なんか、熱出たときみてぇ。こんなの自分の身体じゃないみたいだった。心臓だって、まだトクトクと高鳴ったまま静まらない。 ふっと、あのときの声が聞こえた気がした。訊き返さなかったけれど、そう思っていていいのかな。分からない。リンは奥手だから、といつだかホストファミリーにも笑われた気がする。だって、むずかしい。その正体はまだよく分からなかった。 枕に顔を埋めて、頭の先まで掛け布団を被った。目をぎゅっと瞑っても、その声が波のように、何度も何度も耳元で寄せては引いた。胸の内側がまだいっぱいに満たされていた。むずむず、そわそわ。それから、どきどき。 ああ、でも、わくわくする。たとえるなら、何だろう。そう、まるで穏やかな春の、波打ち際に立っているみたいに。
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(2018/03/18)
両片想いアンソロジーに寄稿させていただいた作品です。
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shukiiflog · 6 months
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イキヤ樹エロ
イキヤくんにあたまんなか樹でいっぱいっていわれて樹さんも緊張抜けて、ふわふわなってるかも だっこされたら身を預けちゃう感じ お風呂もあんまちゃんと自分で立ってられない… イキヤくんの身体触ってぺろぺろ舐めたりする 頬とか耳とかだけじゃなくて性器も触ったり舐めたりするかもしれん
sz — 昨日 21:14 ほあぁあああイキヤたまらん 樹さんがかわいい… 頭撫でてあちこちにキスして全身にキスマーク残す… 性器舐められたら「…っふ、」て思わず声こぼしちゃうしさらに性器固くなっちゃう なんとか宥めながら樹さんのうしろほぐす…
4949cry — 昨日 21:18 「ぅ ん…っ」ちゅう ぷは
sz — 昨日 21:18 えろおおおい
4949cry — 昨日 21:18 これで全身キスマークまみれだしな…えろい イキヤくんの脚の付け根とか腰とかもぺろぺろする… 陰毛に口元うめるみたいになるでは
sz — 昨日 21:20 うしろほぐれてきたらちょっと指入れる…痛くない程度に
4949cry — 昨日 21:22 四つん這いみたいな姿勢だろうなこれ イキヤくんの足元に手ついて股ぐらに顔来る位置 指いれられたらちょっと喘いで身体かくんってなってイキヤくんの股に顔まふんってぶつかる
sz — 昨日 21:23 やばいいいい イキヤそれだけでもう先端から先走り漏れてくる…
4949cry — 昨日 21:23 それで樹さんのほっぺたどろどろになる…
sz — 昨日 21:24 イキヤがぬるま湯でそっと樹さんのほっぺた洗う…拭う… きれいになったらちゅ
4949cry — 昨日 21:24 床についてた手でちょっとイキヤくんの足の指先とかに触れる…親指とひとさしゆびの間とかにすりすり ちゅ…ちゅ ぺろ…
sz — 昨日 21:26 お風呂場の中のゼリーを指先にとって濡らして樹さんの後ろに指ずぐずぐいれてく… なかひろげる…
4949cry — 昨日 21:27 「ぅぁ ぁ ぅぁん…んー…」イキヤくんの肩に凭れてあえぐ…耳元 「ぅ ぁふ… ふ」耳はむ…ぺろ…じゅる ぎゅって背中に手まわして抱きついてる
sz — 昨日 21:28 音…やらしい… イキヤの身体の芯がじぃん…て痺れる… 負けじと(?)樹さんのなかイジっていいところ抉ったりこすったりする…ゼリーが樹さんのお尻から漏れて垂れてくる…
4949cry — 昨日 21:31 樹さんの喘ぎがえろえろになってゆく
sz — 昨日 21:32 イキヤは両手で10本の指使って樹さんのうしろとそのまわりいじって広げてってしてるな… 触手のようにたくさん動いて刺激してくる指
4949cry — 昨日 21:33 ひええ イっちゃうかもしれん樹さん イくの我慢しようとしてはぁー♡はあーっ♡って喘ぎがめっちゃ荒い息になってく
sz — 昨日 21:34 えろおおおおおおお 我慢すると快感やっっばいよな 気が狂うほど乱れちゃうぜ
4949cry — 昨日 21:35 やっばいことになってるな 一生懸命脱力したり?逃げるみたいに身体くねらせてるが 目くらくらしてるし いまにもイきそう
sz — 昨日 21:36 おあーとうとうイキヤがトキさんのお家芸に 辿り着いてしまったようだ…
4949cry — 昨日 21:37 Σお家芸
sz — 昨日 21:37 樹さんに性器とか股ぐらとか脚の付け根とか舐められて、思い至った
4949cry — 昨日 21:37 樹さんもう「いれぇ、いれてぇ うつひこ いれて」って ねだるけど
sz — 昨日 21:37 樹さんを四つん這いにして後ろ向かせて、 指ぜんぶ使ってうしろひろげながら、顔つっこむみたいにして樹さんのうしろにキスして舌いれて舐めはじめた
4949cry — 昨日 21:39 「ぁ っ…――――――」うああ 樹さんイった… しかも我慢しようとしてる状態のまま押し上げられてイかされた…
sz — 昨日 21:40 イキヤがまだイくの我慢してるで… まだやれる
4949cry — 昨日 21:40 うああああやべえええ じわぁぁぁ…じわぁぁ ってゆっくりうねるみたいにナカいきつづけてて
sz — 昨日 21:41 じゅっぽじゅっぽじゅるり…ちゅぱ、ってすごいやらしい音がうしろから 舌の出し入れと吸いつきで 風呂場に響く…
4949cry — 昨日 21:41 イく、って状態じゃないままイかされたからどうしようにも元に戻ることもなくて 力抜けたままじわああ…って身体中快感が そこに更に吸い付かれて何度もイかされる…
sz — 昨日 21:43 イキヤ、まるで大好きなご馳走にむしゃぶりつくみたいに容赦なくうしろを口と指で攻める… イキヤの目も恍惚としてる…
4949cry — 昨日 21:43 ヤバですわ
sz — 昨日 21:44 この歳にしてこんなプレイを覚えてしまったぜ… ここでふとまだ風呂場だったことを思い出すイキヤ… 大きなタオルで樹さんを包んで抱っこしてベッドにもってく… ベッドの上にタオルごと広げる…汚してもいいように
4949cry — 昨日 21:47 もう樹さんぐったり脱力している…ひくひくおなかふるえている ん…ん…ってかすかに喘ぎ声もれてる
sz — 昨日 21:47 樹さん仰向けにして脚を肩に担ぐ… 正常位
4949cry — 昨日 21:48 されるがままだ…
sz — 昨日 21:48 指で後ろに触れてみる… どろどろのとろとろのゆるゆるだ…
4949cry — 昨日 21:49 前もたってるままだから脚担がれたら自分のお腹にぽたぽた漏れてるのがかかる…
sz — 昨日 21:50 イキヤが先走りでぬらぬらになった自分のを樹さんのうしろにあてて、「いつき…欲しい…?」て蕩けた声と顔でわざわざ訊く… ゆるゆるなのとぬるぬるなのとひくついてるのとでもう勝手に入りそうなくらいかもだが
4949cry — 昨日 21:51 「あ あっ…♡」
sz — 昨日 21:53 樹さんの身体全体に腕まわして抱きしめて、自分の背中に樹さんの腕も掴まらせる…
4949cry — 昨日 21:53 「ぅ うつひこ …ぅ う」 きもちよくてたまらない…けどずっと身体疼いて へんなイきかたしておさまらない めちゃくちゃにしてほしい
sz — 昨日 21:54 お互いのお腹とお腹で樹さんの前挟んでゆるっと押しつぶすみたいに刺激する…
4949cry — 昨日 21:55 「いれて、ぇ おく、まで …ぅぁぁん…」前つぶされてなきごえでた びゅ、てちょっともれる 「あ ぁ だめ もっと ぉ …いっぱい して
sz — 昨日 21:56 「ん、…」イキヤがようやくぬぷ…っとうしろに自分のをいれる…
4949cry — 昨日 21:57 あはぁ…ー…♡ みたいな喘ぎの息が何度ももれる…
sz — 昨日 21:57 「樹 いつき… かわいい… 」とろとろに蕩けた声でうわ言みたいに言う 腰進めてったらどんどん滑らかにはいる…
4949cry — 昨日 21:59 「ぅぁ ぁ はい て くる…」どろどろ…
sz — 昨日 21:59 あと少しで奥まではいる、てとこで途中でとめた…
4949cry — 昨日 22:00 「あつぃ、お く…ぁ ぁ …やぁぁ…」寸止め…おかしくなりそう
sz — 昨日 22:00 「きもちい…?」蕩けた微笑み…
4949cry — 昨日 22:01 「ぁ ぁ きもち、 きもちぃ ぃ… ぅ …、…ゃ …ぁ…」 奥まで乱暴にして一気にイかせてほしいのに寸止めされたまま、それでもイってしまった… ナカせつなげにひくひく痙攣する
sz — 昨日 22:02 ぎゅううぅ…て強く抱きしめるのと同時に腰進めて一気に奥までいれたぞ…
4949cry — 昨日 22:02 かくっ かくっ て身体ふるえてふわぁ…って目の焦点なくなる ! 「――――――――ッッ 悲鳴あがった 追い討ちで更にイかされた ガクガクガクッ て身体跳ねる…
sz — 昨日 22:03 奥の奥まで入ったところでイキヤのが興奮でさらに大きく固くなる…
4949cry — 昨日 22:04 奥あつーくなってきゅうきゅうせまくなる…
sz — 昨日 22:04 やばあああ…イキヤ堪えられないっ… 奥でじわあぁ…てイって出しちゃう
4949cry — 昨日 22:05 ぐったり弛緩しちゃって動かせないまま、びくびく… ずっととろけた喘ぎが呼吸と一緒にこぼれる…
sz — 昨日 22:07 イキヤもまるで受けのように蕩けてはあ…♡はあ…♡、てなんとか息吐いて吸ってってしている… まだ抜いてません 樹さんに深いキスする… ここでやっちゃうイかせるキス
4949cry — 昨日 22:19 !! 樹さん快楽墜ちくるでは
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スコティッシュちゃんが新しいおうちに巣立っていきました😊とってもヤンチャで元気いっぱいな女の子です✨いーっぱい遊んでもらうんだぞぉ❣️ #すこてぃっしゅふぉーるど立ち耳 #スコティッシュフォールド立ち耳 #子猫 #仔猫 #あたらしいおうちがきまりました🐾 #にゃんすたぐらむ #ねこすきさんと繋がりたい #ペットショップ (Ichikawa, Chiba) https://www.instagram.com/p/B_RmDpZDsbq/?igshid=azc2xt3b48em
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mobilefirelord · 5 years
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Tea ceremony with orange tabby. #Repost @shippona77 • • • • • ⚘⚘⚘ ✱ ✱ 𓅰 𓅰 𓅰 ✱ 今日のヒルカシ𐂐 ⠜ ✱ ほおずき...ガン見 ಠ_ಠ ✱ ほとんどぶさにゃん ( ´・⊇・`) ✱ ✱ #birdswords #バーズワーズ #バーズワーズのある風景 #伊藤利江 ✱ ✱ snack time 🍵 ✱ ✱ ⚐⚑⚐⚐⚑⚐⚐⚑⚐⚐⚑⚐⚐⚑⚐⚐⚑⚐⚐⚑⚐⚐⚑ #スコティッシュフォールド #scottishfold #すこてぃっしゅふぉーるど #立ち耳スコ #レッドタビー #ねこ #小さな猫が大きな癒しにニャる #ニャンニーズ事務所 #チーム月輪グ #cat #catstagram #catloversclub #猫のいる暮らし #みんねこ #picneko #ペコねこ部 #cutepetclub #eclatcat #animalland #carpediemneko #japanesesweets #ヒルカシ #和菓子 #おやつの時間 #六花亭 #堀宏治 https://www.instagram.com/p/B1rrhkIAQvT/?igshid=es6f3mhxtx7t
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kurihara-yumeko · 3 years
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【小説】The day I say good-bye (1/4) 【再録】
 今日は朝から雨だった。
 確か去年も雨だったよな、と僕は窓ガラスに反射している自分の顔を見つめて思った。僕を乗せたバスは、小雨の降る日曜の午後を北へ向かって走る。乗客は少ない。
 予定より五分遅れて、予定通りバス停「船頭町三丁目」で降りた。灰色に濁った水が流れる大きな樫岸川を横切る橋を渡り、広げた傘に雨音が当たる雑音を聞きながら、柳の並木道を歩く。
 小さな古本屋の角を右へ、古い木造家屋の住宅ばかりが建ち並ぶ細い路地を抜けたら左へ。途中、不機嫌そうな面構えの三毛猫が行く手を横切った。長い長い緩やかな坂を上り、苔生した石段を踏み締めて、赤い郵便ポストがあるところを左へ。突然広くなった道を行き、椿だか山茶花だかの生け垣のある家の角をまた左へ。
 そうすると、大きなお寺の屋根が見えてくる。囲われた塀の中、門の向こうには、静かな墓地が広がっている。
 そこの一角に、あーちゃんは眠っている。
 砂利道を歩きながら、結構な数の墓の中から、あーちゃんの墓へ辿り着く。もう既に誰かが来たのだろう。墓には真っ白な百合と、あーちゃんの好物であった焼きそばパンが供えてあった。あーちゃんのご両親だろうか。
 手ぶらで来てしまった僕は、ただ墓石を見上げる。周りの墓石に比べてまだ新しいその石は、手入れが行き届いていることもあって、朝から雨の今日であっても穏やかに光を反射している。
 そっと墓石に触れてみた。無機質な冷たさと硬さだけが僕の指先に応えてくれる。
 あーちゃんは墓石になった。僕にはそんな感覚がある。
 あーちゃんは死んだ。死んで、燃やされて、灰になり、この石の下に閉じ込められている。埋められているのは、ただの灰だ。あーちゃんの灰。
 ああ。あーちゃんは、どこに行ってしまったんだろう。
 目を閉じた。指先は墓石に触れたまま。このままじっとしていたら、僕まで石になれそうだ。深く息をした。深く、深く。息を吐く時、わずかに震えた。まだ石じゃない。まだ僕は、石になれない。
 ここに来ると、僕はいつも泣きたくなる。
 ここに来ると、僕はいつも死にたくなる。
 一体どれくらい、そうしていたのだろう。やがて後ろから、砂利を踏んで歩いてくる音が聞こえてきたので、僕は目を開き、手を引っ込めて振り向いた。
「よぉ、少年」
 その人は僕の顔を見て、にっこり笑っていた。
 総白髪かと疑うような灰色の頭髪。自己主張の激しい目元。頭の上の帽子から足元の厚底ブーツまで塗り潰したように真っ黒な恰好の人。
「やっほー」
 蝙蝠傘を差す左手と、僕に向けてひらひらと振るその右手の手袋さえも黒く、ちらりと見えた中指の指輪の石の色さえも黒い。
「……どうも」
 僕はそんな彼女に対し、顔の筋肉が引きつっているのを無理矢理に動かして、なんとか笑顔で応えて見せたりする。
 彼女はすぐ側までやってきて、馴れ馴れしくも僕の頭を二、三度柔らかく叩く。
「こんなところで奇遇だねぇ。少年も墓参りに来たのかい」
「先生も、墓参りですか」
「せんせーって呼ぶなしぃ。あたしゃ、あんたにせんせー呼ばわりされるようなもんじゃございませんって」
 彼女――日褄小雨先生はそう言って、だけど笑った。それから日褄先生は僕が先程までそうしていたのと同じように、あーちゃんの墓石を見上げた。彼女も手ぶらだった。
「直正が死んで、一年か」
 先生は上着のポケットから煙草の箱とライターを取り出す。黒いその箱から取り出された煙草も、同じように黒い。
「あたしゃ、ここに来ると後悔ばかりするね」
 ライターのかちっという音、吐き出される白い煙、どこか甘ったるい、ココナッツに似たにおいが漂う。
「あいつは、厄介なガキだったよ。つらいなら、『つらい』って言えばいい、それだけのことなんだ。あいつだって、つらいなら『つらい』って言ったんだろうさ。だけどあいつは、可哀想なことに、最後の最後まで自分がつらいってことに気付かなかったんだな」
 煙草の煙を揺らしながら、そう言う先生の表情には、苦痛と後悔が入り混じった色が見える。口に煙草を咥えたまま、墓前で手を合わせ、彼女はただ目を閉じていた。瞼にしつこいほど塗られた濃い黒い化粧に、雨の滴が垂れる。
 先生はしばらくして瞼を開き、煙草を一度口元から離すと、ヤニ臭いような甘ったるいような煙を吐き出して、それから僕を見て、優しく笑いかけた。それから先生は背を向け、歩き出してしまう。僕は黙ってそれを追った。
 何も言わなくてもわかっていた。ここに立っていたって、悲しみとも虚しさとも呼ぶことのできない、吐き気がするような、叫び出したくなるような、暴れ出したくなるような、そんな感情が繰り返し繰り返し、波のようにやってきては僕の心の中を掻き回していくだけだ。先生は僕に、帰ろう、と言ったのだ。唇の端で、瞳の奥で。
 先生の、まるで影法師が歩いているかのような黒い後ろ姿を見つめて、僕はかつてたった一度だけ見た、あーちゃんの黒いランドセルを思い出す。
 彼がこっちに引っ越してきてからの三年間、一度も使われることのなかった傷だらけのランドセル。物置きの中で埃を被っていたそれには、あーちゃんの苦しみがどれだけ詰まっていたのだろう。
 道の途中で振り返る。先程までと同じように、墓石はただそこにあった。墓前でかけるべき言葉も、抱くべき感情も、するべき行為も、何ひとつ僕は持ち合わせていない。
 あーちゃんはもう死んだ。
 わかりきっていたことだ。死んでから何かしてあげても無駄だ。生きているうちにしてあげないと、意味がない。だから、僕がこうしてここに立っている意味も、僕は見出すことができない。僕がここで、こうして呼吸をしていて、もうとっくに死んでしまったあーちゃんのお墓の前で、墓石を見つめている、その意味すら。
 もう一度、あーちゃんの墓に背中を向けて、僕は今度こそ歩き始めた。
「最近調子はどう?」
 墓地を出て、長い長い坂を下りながら、先生は僕にそう尋ねた。
「一ヶ月間、全くカウンセリング来なかったけど、何か変化があったりした?」
 黙っていると先生はさらにそう訊いてきたので、僕は仕方なく口を開く。
「別に、何も」
「ちゃんと飯食ってる? また少し痩せたんじゃない?」
「食べてますよ」
「飯食わないから、いつまでも身長伸びないんだよ」
 先生は僕の頭を、目覚まし時計を止める時のような動作で乱雑に叩く。
「ちょ……やめて下さいよ」
「あーっはっはっはっはー」
 嫌がって身をよじろうとするが、先生はそれでもなお、僕に攻撃してくる。
「ちゃんと食わないと。摂食障害になるとつらいよ」
「食べますよ、ちゃんと……」
「あと、ちゃんと寝た方がいい。夜九時に寝ろ。身長伸びねぇぞ」
「九時に寝られる訳ないでしょう、小学生じゃあるまいし……」
「勉強なんかしてるから、身長伸びねぇんだよ」
「そんな訳ないでしょう」
 あはは、と朗らかに彼女は笑う。そして最後に優しく、僕の頭を撫でた。
「負けるな、少年」
 負けるなと言われても、一体何に――そう問いかけようとして、僕は口をつぐむ。僕が何と戦っているのか、先生はわかっているのだ。
「最近、市野谷はどうしてる?」
 先生は何気ない声で、表情で、タイミングで、あっさりとその名前を口にした。
「さぁ……。最近会ってないし、電話もないし、わからないですね」
「ふうん。あ、そう」
 先生はそれ以上、追及してくることはなかった。ただ独り言のように、「やっぱり、まだ駄目か」と言っただけだった。
 郵便ポストのところまで歩いてきた時、先生は、「あたしはあっちだから」と僕の帰り道とは違う方向を指差した。
「駐車場で、葵が待ってるからさ」
「ああ、葵さん。一緒だったんですか」
「そ。少年は、バスで来たんだろ? 家まで車で送ろうか?」
 運転するのは葵だけど、と彼女は付け足して言ったが、僕は首を横に振った。
「ひとりで帰りたいんです」
「あっそ。気を付けて帰れよ」
 先生はそう言って、出会った時と同じように、ひらひらと手を振って別れた。
 路地を右に曲がった時、僕は片手をパーカーのポケットに入れて初めて、とっくに音楽が止まったままになっているイヤホンを、両耳に突っ込んだままだということに気が付いた。
 僕が小学校を卒業した、一年前の今日。
 あーちゃんは人生を中退した。
 自殺したのだ。十四歳だった。
 遺書の最後にはこう書かれていた。
「僕は透明人間なんです」
    あーちゃんは僕と同じ団地に住んでいて、僕より二つお兄さんだった。
 僕が小学一年生の夏に、あーちゃんは家族四人で引っ越してきた。冬は雪に閉ざされる、北の方からやって来たのだという話を聞いたことがあった。
 僕はあーちゃんの、団地で唯一の友達だった。学年の違う彼と、どんなきっかけで親しくなったのか正確には覚えていない。
 あーちゃんは物静かな人だった。小学生の時から、年齢と不釣り合いなほど彼は大人びていた。
 彼は人付き合いがあまり得意ではなく、友達がいなかった。口数は少なく、話す時もぼそぼそとした、抑揚のない平坦な喋り方で、どこか他人と距離を取りたがっていた。
 部屋にこもりがちだった彼の肌は雪みたいに白くて、青い静脈が皮膚にうっすら透けて見えた。髪が少し長くて、色も薄かった。彼の父方の祖母が外国人だったと知ったのは、ずっと後のことだ。銀縁の眼鏡をかけていて、何か困ったことがあるとそれをかけ直す癖があった。
 あーちゃんは器用だった。今まで何度も彼の部屋へ遊びに行ったことがあるけれど、そこには彼が組み立てたプラモデルがいくつも置かれていた。
 僕が加減を知らないままにそれを乱暴に扱い、壊してしまったこともあった。とんでもないことをしてしまったと、僕はひどく後悔してうつむいていた。ごめんなさい、と謝った。年上の友人の大切な物を壊してしまって、どうしたらよいのかわからなかった。鼻の奥がつんとした。泣きたいのは壊されたあーちゃんの方だっただろうに、僕は泣き出しそうだった。
 あーちゃんは、何も言わなかった。彼は立ち尽くす僕の前でしゃがみ込んだかと思うと、足下に散らばったいびつに欠けたパーツを拾い、引き出しの中からピンセットやら接着剤やらを取り出して、僕が壊した部分をあっという間に直してしまった。
 それらの作業がすっかり終わってから彼は僕を呼んで、「ほら見てごらん」と言った。
 恐る恐る近付くと、彼は直ったばかりの戦車のキャタピラ部分を指差して、
「ほら、もう大丈夫だよ。ちゃんと元通りになった。心配しなくてもいい。でもあと1時間は触っては駄目だ。まだ接着剤が乾かないからね」
 と静かに言った。あーちゃんは僕を叱ったりしなかった。
 僕は最後まで、あーちゃんが大声を出すところを一度も見なかった。彼が泣いている姿も、声を出して笑っているのも。
 一度だけ、あーちゃんの満面の笑みを見たことがある。
 夏のある日、僕とあーちゃんは団地の屋上に忍び込んだ。
 僕らは子供向けの雑誌に載っていた、よく飛ぶ紙飛行機の作り方を見て、それぞれ違うモデルの紙飛行機を作り、どちらがより遠くへ飛ぶのかを競走していた。
 屋上から飛ばしてみよう、と提案したのは僕だった。普段から悪戯などしない大人しいあーちゃんが、その提案に首を縦に振ったのは今思い返せば珍しいことだった。そんなことはそれ以前も以降も二度となかった。
 よく晴れた日だった。屋上から僕が飛ばした紙飛行機は、青い空を横切って、団地の駐車場の上を飛び、道路を挟んだ向かいの棟の四階、空き部屋のベランダへ不時着した。それは今まで飛ばしたどんな紙飛行機にも負けない、驚くべき距離だった。僕はすっかり嬉しくなって、得意げに叫んだ。
「僕が一番だ!」
 興奮した僕を見て、あーちゃんは肩をすくめるような動作をした。そして言った。
「まだわからないよ」
 あーちゃんの細い指が、紙飛行機を宙に放つ。丁寧に折られた白い紙飛行機は、ちょうどその時吹いてきた風に背中を押されるように屋上のフェンスを飛び越え、僕の紙飛行機と同じように駐車場の上を通り、向かいの棟の屋根を越え、それでもまだまだ飛び続け、青い空の中、最後は粒のようになって、ついには見えなくなってしまった。
 僕は自分の紙飛行機が負けた悔しさと、魔法のような素晴らしい出来事を目にした嬉しさとが半分ずつ混じった目であーちゃんを見た。その時、僕は見たのだ。
 あーちゃんは声を立てることはなかったが、満足そうな笑顔だった。
「僕は透明人間なんです」
 それがあーちゃんの残した最後の言葉だ。
 あーちゃんは、僕のことを怒ればよ��ったの��。地団太を踏んで泣いてもよかったのだ。大声で笑ってもよかったのだ。彼との思い出を振り返ると、いつもそんなことばかり思う。彼はもう永遠に泣いたり笑ったりすることはない。彼は死んだのだから。
 ねぇ、あーちゃん。今のきみに、僕はどんな風に見えているんだろう。
 僕の横で静かに笑っていたきみは、決して透明なんかじゃなかったのに。
 またいつものよう��春が来て、僕は中学二年生になった。
 張り出されていたクラス替えの表を見て、そこに馴染みのある名前を二つ見つけた。今年は、二人とも僕と同じクラスのようだ。
 教室へ向かってみたけれど、始業の時間になっても、その二つの名前が用意された席には、誰も座ることはなかった。
「やっぱり、まだ駄目か」
 誰かと同じ言葉を口にしてみる。
 本当は少しだけ、期待していた。何かが良くなったんじゃないかと。
 だけど教室の中は新しいクラスメイトたちの喧騒でいっぱいで、新年度一発目、始業式の今日、二つの席が空白になっていることに誰も触れやしない。何も変わってなんかない。
 何も変わらないまま、僕は中学二年生になった。
 あーちゃんが死んだ時の学年と同じ、中学二年生になった。
 あの日、あーちゃんの背中を押したのであろう風を、僕はずっと探してる。
 青い空の果てに、小さく消えて行ってしまったあーちゃんを、僕と「ひーちゃん」に返してほしくて。
    鉛筆を紙の上に走らせる音が、止むことなく続いていた。
「何を描いてるの?」
「絵」
「なんの絵?」
「なんでもいいでしょ」
「今年は、同じクラスみたいだね」
「そう」
「その、よろしく」
 表情を覆い隠すほど長い前髪の下、三白眼が一瞬僕を見た。
「よろしくって、何を?」
「クラスメイトとして、いろいろ……」
「意味ない。クラスなんて、関係ない」
 抑揚のない声でそう言って、双眸は再び紙の上へと向けられてしまった。
「あ、そう……」
 昼休みの保健室。
 そこにいるのは二人の人間。
 ひとりはカーテンの開かれたベッドに腰掛け、胸にはスケッチブック、右手には鉛筆を握り締めている。
 もうひとりはベッドの脇のパイプ椅子に座り、特にすることもなく片膝を抱えている。こっちが僕だ。
 この部屋の主であるはずの鬼怒田先生は、何か用があると言って席を外している。一体なんの仕事があるのかは知らないが、この学校の養護教諭はいつも忙しそうだ。
 僕はすることもないので、ベッドに座っているそいつを少しばかり観察する。忙しそうに鉛筆を動かしている様子を見ると、今はこちらに注意を払ってはいなそうだから、好都合だ。
 伸びてきて邪魔になったから切った、と言わんばかりのショートカットの髪。正反対に長く伸ばされた前髪は、栄養状態の悪そうな青白い顔を半分近く隠している。中学二年生としては小柄で華奢な体躯。制服のスカートから伸びる足の細さが痛々しく見える。
 彼女の名前は、河野ミナモ。僕と同じクラス、出席番号は七番。
 一言で表現するならば、彼女は保健室登校児だ。
 鉛筆の音が、止んだ。
「なに?」
 ミナモの瞬きに合わせて、彼女の前髪が微かに動く。少しばかり長く見つめ続けてしまったみたいだ。「いや、なんでもない」と言って、僕は天井を仰ぐ。
 ミナモは少しの間、何も言わずに僕の方を見ていたようだが、また鉛筆を動かす作業を再開した。
 鉛筆を走らせる音だけが聞こえる保健室。廊下の向こうからは、楽しそうに駆ける生徒たちの声が聞こえてくるが、それもどこか遠くの世界の出来事のようだ。この空間は、世界から切り離されている。
「何をしに来たの」
「何をって?」
「用が済んだなら、帰れば」
 新年度が始まったばかりだからだろうか、ミナモは機嫌が悪いみたいだ。否、機嫌が悪いのではなく、具合が悪いのかもしれない。今日の彼女はいつもより顔色が悪いように見える。
「いない方がいいなら、出て行くよ」
「ここにいてほしい人なんて、いない」
 平坦な声。他人を拒絶する声。憎しみも悲しみも全て隠された無機質な声。
「出て行きたいなら、出て行けば?」
 そう言うミナモの目が、何かを試すように僕を一瞥した。僕はまだ、椅子から立ち上がらない。彼女は「あっそ」とつぶやくように言った。
「市野谷さんは、来たの?」
 ミナモの三白眼がまだ僕を見ている。
「市野谷さんも同じクラスなんでしょ」
「なんだ、河野も知ってたのか」
「質問に答えて」
「……来てないよ」
「そう」
 ミナモの前髪が揺れる。瞬きが一回。
「不登校児二人を同じクラスにするなんて、学校側の考えてることってわからない」
 彼女の言葉通り、僕のクラスには二人の不登校児がいる。
 ひとりはこの河野ミナモ。
 そしてもうひとりは、市野谷比比子。僕は彼女のことを昔から、「ひーちゃん」と呼んでいた。
 二人とも、中学に入学してきてから一度も教室へ登校してきていない。二人の机と椅子は、一度も本人に使われることなく、今日も僕の教室にある。
 といっても、保健室登校児であるミナモはまだましな方で、彼女は一年生の頃から保健室には登校してきている。その点ひーちゃんは、中学校の門をくぐったこともなければ、制服に袖を通したことさえない。
 そんな二人が今年から僕と同じクラスに所属になったことには、正直驚いた。二人とも僕と接点があるから、なおさらだ。
「――くんも、」
 ミナモが僕の名を呼んだような気がしたが、上手く聞き取れなかった。
「大変ね、不登校児二人の面倒を見させられて」
「そんな自嘲的にならなくても……」
「だって、本当のことでしょ」
 スケッチブックを抱えるミナモの左腕、ぶかぶかのセーラー服の袖口から、包帯の巻かれた手首が見える。僕は自分の左手首を見やる。腕時計をしているその下に、隠した傷のことを思う。
「市野谷さんはともかく、教室へ行く気なんかない私の面倒まで、見なくてもいいのに」
「面倒なんて、見てるつもりないけど」
「私を訪ねに保健室に来るの、――くんくらいだよ」
 僕の名前が耳障りに響く。ミナモが僕の顔を見た。僕は妙な表情をしていないだろうか。平然を装っているつもりなのだけれど。
「まだ、気にしているの?」
「気にしてるって、何を?」
「あの日のこと」
 あの日。
 あの春の日。雨の降る屋上で、僕とミナモは初めて出会った。
「死にたがり屋と死に損ない」
 日褄先生は僕たちのことをそう呼んだ。どっちがどっちのことを指すのかは、未だに訊けていないままだ。
「……気にしてないよ」
「そう」
 あっさりとした声だった。ミナモは壁の時計をちらりと見上げ、「昼休み終わるよ、帰れば」と言った。
 今度は、僕も立ち上がった。「それじゃあ」と口にしたけれど、ミナモは既に僕への興味を失ったのか、スケッチブックに目線を落とし、返事のひとつもしなかった。
 休みなく動き続ける鉛筆。
 立ち上がった時にちらりと見えたスケッチブックは、ただただ黒く塗り潰されているだけで、何も描かれてなどいなかった。
    ふと気付くと、僕は自分自身が誰なのかわからなくなっている。
 自分が何者なのか、わからない。
 目の前で展開されていく風景が虚構なのか、それとも現実なのか、そんなことさえわからなくなる。
 だがそれはほんの一瞬のことで、本当はわかっている。
 けれど感じるのだ。自分の身体が透けていくような感覚を。「自分」という存在だけが、ぽっかりと穴を空けて突っ立っているような。常に自分だけが透明な膜で覆われて、周囲から隔離されているかのような疎外感と、なんの手応えも得られない虚無感と。
 あーちゃんがいなくなってから、僕は頻繁にこの感覚に襲われるようになった。
 最初は、授業が終わった後の短い休み時間。次は登校中と下校中。その次は授業中にも、というように、僕が僕をわからなくなる感覚は、学校にいる間じゅうずっと続くようになった。しまいには、家にいても、外にいても、どこにいてもずっとそうだ。
 周りに人がいればいるほど、その感覚は強かった。たくさんの人の中、埋もれて、紛れて、見失う。自分がさっきまで立っていた場所は、今はもう他の人が踏み荒らしていて。僕の居場所はそれぐらい危ういところにあって。人混みの中ぼうっとしていると、僕なんて消えてしまいそうで。
 頭の奥がいつも痛かった。手足は冷え切ったみたいに血の気がなくて。酸素が薄い訳でもないのにちゃんと息ができなくて。周りの人の声がやたら大きく聞こえてきて。耳の中で何度もこだまする、誰かの声。ああ、どうして。こんなにも人が溢れているのに、ここにあーちゃんはいないんだろう。
 僕はどうして、ここにいるんだろう。
「よぉ、少年」
 旧校舎、屋上へ続く扉を開けると、そこには先客がいた。
 ペンキがところどころ剥げた緑色のフェンスにもたれるようにして、床に足を投げ出しているのは日褄先生だった。今日も真っ黒な恰好で、ココナッツのにおいがする不思議な煙草を咥えている。
「田島先生が、先生のことを昼休みに探してましたよ」
「へへっ。そりゃ参ったね」
 煙をゆらゆらと立ち昇らせて、先生は笑う。それからいつものように、「せんせーって呼ぶなよ」と付け加えた。彼女はさらに続けて言う。
「それで? 少年は何をし、こんなところに来たのかな?」
「ちょっと外の空気を吸いに」
「おお、奇遇だねぇ。あたしも外の空気を吸いに……」
「吸いにきたのはニコチンでしょう」
 僕がそう言うと、先生は、「あっはっはっはー」と高らかに笑った。よく笑う人だ。
「残念だが少年、もう午後の授業は始まっている時間だし、ここは立ち入り禁止だよ」
「お言葉ですが先生、学校の敷地内は禁煙ですよ」
「しょうがない、今からカウンセリングするってことにしておいてあげるから、あたしの喫煙を見逃しておくれ。その代わり、あたしもきみの授業放棄を許してあげよう」
 先生は右手でぽんぽんと、自分の隣、雨上がりでまだ湿気っているであろう床を叩いた。座れと言っているようだ。僕はそれに従わなかった。
 先客がいたことは予想外だったが、僕は本当に、ただ、外の空気を吸いたくなってここに来ただけだ。授業を途中で抜けてきたこともあって、長居をするつもりはない。
 ふと、視界の隅に「それ」が目に入った。
 フェンスの一角に穴が空いている。ビニールテープでぐるぐる巻きになっているそこは、テープさえなければ屋上の崖っぷちに立つことを許している。そう。一年前、あそこから、あーちゃんは――。
(ねぇ、どうしてあーちゃんは、そらをとんだの?)
 僕の脳裏を、いつかのひーちゃんの言葉がよぎる。
(あーちゃん、かえってくるよね? また、あえるよね?)
 ひーちゃんの言葉がいくつもいくつも、風に飛ばされていく桜の花びらと同じように、僕の目の前を通り過ぎていく。
「こんなところで、何をしていたんですか」
 そう質問したのは僕の方だった。「んー?」と先生は煙草の煙を吐きながら言う。
「言っただろ、外の空気を吸いに来たんだよ」
「あーちゃんが死んだ、この場所の空気を、ですか」
 先生の目が、僕を見た。その鋭さに、一瞬ひるみそうになる。彼女は強い。彼女の意思は、強い。
「同じ景色を見たいと思っただけだよ」
 先生はそう言って、また煙草をふかす。
「先生���」
「せんせーって呼ぶな」
「質問があるんですけど」
「なにかね」
「嘘って、何回つけばホントになるんですか」
「……んー?」
 淡い桜色の小さな断片が、いくつもいくつも風に流されていく。僕は黙って、それを見ている。手を伸ばすこともしないで。
「嘘は何回ついたって、嘘だろ」
「ですよね」
「嘘つきは怪人二十面相の始まりだ」
「言っている意味がわかりません」
「少年、」
「はい」
「市野谷に嘘つくの、しんどいのか?」
 先生の煙草の煙も、みるみるうちに風に流されていく。手を伸ばしたところで、掴むことなどできないまま。
「市野谷に、直正は死んでないって、嘘をつき続けるの、しんどいか?」
 ひーちゃんは知らない。あーちゃんが去年ここから死んだことを知らない。いや、知らない訳じゃない。認めていないのだ。あーちゃんの死を認めていない。彼がこの世界に僕らを置き去りにしたことを、許していない。
 ひーちゃんはずっと信じている。あーちゃんは生きていると。いつか帰ってくると。今は遠くにいるけれど、きっとまた会える日が来ると。
 だからひーちゃんは知らない。彼の墓石の冷たさも、彼が飛び降りたこの屋上の景色が、僕の目にどう映っているのかも。
 屋上。フェンス。穴。空。桜。あーちゃん。自殺。墓石。遺書。透明人間。無。なんにもない。ない。空っぽ。いない。いないいないいないいない。ここにもいない。どこにもいない。探したっていない。消えた。消えちゃった。消滅。消失。消去。消しゴム。弾んで。飛んで。落ちて。転がって。その先に拾ってくれるきみがいて。笑顔。笑って。笑ってくれて。だけどそれも消えて。全部消えて。消えて消えて消えて。ただ昨日を越えて今日が過ぎ明日が来る。それを繰り返して。きみがいない世界で。ただ繰り返して。ひーちゃん。ひーちゃんが笑わなくなって。泣いてばかりで。だけどもうきみがいない。だから僕が。僕がひーちゃんを慰めて。嘘を。嘘をついて。ついてはいけない嘘を。ついてはいけない嘘ばかりを。それでもひーちゃんはまた笑うようになって。笑顔がたくさん戻って。だけどどうしてあんなにも、ひーちゃんの笑顔は空っぽなんだろう。
「しんどくなんか、ないですよ」
 僕はそう答えた。
 先生は何も言わなかった。
 僕は明日にでも、怪人二十面相になっているかもしれなかった。
    いつの間にか梅雨が終わり、実力テストも期末テストもクリアして、夏休みまであと一週間を切っていた。
 ひと夏の解放までカウントダウンをしている今、僕のクラスの連中は完璧な気だるさに支配されていた。自主性や積極性などという言葉とは無縁の、慣性で流されているような脱力感。
 先週に教室の天井四ヶ所に取り付けられている扇風機が全て故障したこともあいまって、クラスメイトたちの授業に対する意欲はほぼゼロだ。授業がひとつ終わる度に、皆溶け出すように机に上半身を投げ出しており、次の授業が始まったところで、その姿勢から僅かに起き上がる程度の差しかない。
 そういう僕も、怠惰な中学二年生のひとりに過ぎない。さっきの英語の授業でノートに書き記したことと言えば、英語教師の松田が何回額の汗を脱ぐったのかを表す「正」の字だけだ。
 休み時間に突入し、がやがやと騒がしい教室で、ひとりだけ仲間外れのように沈黙を守っていると、肘辺りから空気中に溶け出して、透明になっていくようなそんな気分になる。保健室には来るものの、自分の教室へは絶対に足を運ばないミナモの気持ちがわかるような気がする。
 一学期がもうすぐ終わるこの時期になっても、相変わらず僕のクラスには常に二つの空席があった。ミナモも、ひーちゃんも、一度だって教室に登校してきていない。
「――くん、」
 なんだか控えめに名前を呼ばれた気はしたが、クラスの喧騒に紛れて聞き取れなかった。
 ふと机から顔を上げると、ひとりの女子が僕の机の脇に立っていた。見たことがあるような顔。もしかして、クラスメイトのひとりだろうか。彼女は廊下を指差して、「先生、呼んでる」とだけ言って立ち去った。
 あまりにも唐突な出来事でその女子にお礼を言うのも忘れたが、廊下には担任の姿が見える。僕のクラス担任の担当科目は数学だが、次の授業は国語だ。なんの用かはわからないが、呼んでいるのなら行かなくてはならない。
「おー、悪いな、呼び出して」
 去年大学を卒業したばかりの、どう見ても体育会系な容姿をしている担任は、僕を見てそう言った。
「ほい、これ」
 突然差し出されたのはプリントの束だった。三十枚くらいありそうなプリントが穴を空けられ紐を通して結んである。
「悪いがこれを、市野谷さんに届けてくれないか」
 担任がひーちゃんの名を口にしたのを聞いたのは、久しぶりのような気がした。もう朝の出欠確認の時でさえ、彼女の名前は呼ばれない。ミナモの名前だってそうだ。このクラスでは、ひーちゃんも、ミナモも、いないことが自然なのだ。
「……先生が、届けなくていいんですか」
「そうしたいのは山々なんだが、なかなか時間が取れなくてな。夏休みに入ったら家庭訪問に行こうとは思ってるんだ。このプリントは、それまでにやっておいてほしい宿題。中学に入ってから二年の一学期までに習う数学の問題を簡単にまとめたものなんだ」
「わかりました、届けます」
 受け取ったプリントの束は、思っていたよりもずっとずっしりと重かった。
「すまんな。市野谷さんと小学生の頃一番仲が良かったのは、きみだと聞いたものだから」
「いえ……」
 一年生の時から、ひーちゃんにプリントを届けてほしいと教師に頼まれることはよくあった。去年は彼女と僕は違うクラスだったけれど、同じ小学校出身の誰かに僕らが幼馴染みであると聞いたのだろう。
 僕は学校に来なくなったひーちゃんのことを毛嫌いしている訳ではない。だから、何か届け物を頼まれてもそんなに嫌な気持ちにはならない。でも、と僕は思った。
 でも僕は、ひーちゃんと一番仲が良かった訳じゃないんだ。
「じゃあ、よろしく頼むな」
 次の授業の始業のチャイムが鳴り響く。
 教室に戻り、出したままだった英語の教科書と「正」の字だけ記したノートと一緒に、ひーちゃんへのプリントの束を鞄に仕舞いながら、なんだか僕は泣きたくなった。
  三角形が壊れるのは簡単だった。
 三角形というのは、三辺と三つの角でできていて、当然のことだけれど一辺とひとつの角が消失したら、それはもう三角形ではない。
 まだ小学校に上がったばかりの頃、僕はどうして「さんかっけい」や「しかっけい」があるのに「にかっけい」がないのか、と考えていたけれど、どうやら僕の脳味噌は、その頃から数学的思考というものが不得手だったようだ。
「にかっけい」なんてあるはずがない。
 僕と、あーちゃんと、ひーちゃん。
 僕ら三人は、三角形だった。バランスの取りやすい形。
 始まりは悲劇だった。
 あの悪夢のような交通事故。ひーちゃんの弟の死。
 真っ白なワンピースが汚れることにも気付かないまま、真っ赤になった弟の身体を抱いて泣き叫ぶひーちゃんに手を伸ばしたのは、僕と一緒に下校する途中のあーちゃんだった。
 お互いの家が近かったこともあって、それから僕らは一緒にいるようになった。
 溺愛していた最愛の弟を、目の前で信号無視したダンプカーに撥ねられて亡くしたひーちゃんは、三人で一緒にいてもときどき何かを思い出したかのように暴れては泣いていたけれど、あーちゃんはいつもそれをなだめ、泣き止むまでずっと待っていた。
 口下手な彼は、ひーちゃんに上手く言葉をかけることがいつもできずにいたけれど、僕が彼の言葉を補って彼女に伝えてあげていた。
 優しくて思いやりのあるひーちゃんは、感情を表すことが苦手なあーちゃんのことをよく気遣ってくれていた。
 僕らは嘘みたいにバランスの取れた三角形だった。
 あーちゃんが、この世界からいなくなるまでは。
   「夏は嫌い」
 昔、あーちゃんはそんなことを口にしていたような気がする。
「どうして?」
 僕はそう訊いた。
 夏休み、花火、虫捕り、お祭り、向日葵、朝顔、風鈴、西瓜、プール、海。
 水の中の金魚の世界と、バニラアイスの木べらの湿り気。
 その頃の僕は今よりもずっと幼くて、四季の中で夏が一番好きだった。
 あーちゃんは部屋の窓を網戸にしていて、小さな扇風機を回していた。
 彼は夏休みも相変わらず外に出ないで、部屋の中で静かに過ごしていた。彼の傍らにはいつも、星座の本と分厚い昆虫図鑑が置いてあった。
「夏、暑いから嫌いなの?」
 僕が尋ねるとあーちゃんは抱えていた分厚い本からちょっとだけ顔を上げて、小さく首を横に振った。それから困ったように笑って、
「夏は、皆死んでいるから」
 とだけ、つぶやくように言った。あーちゃんは、時々魔法の呪文のような、不思議なことを言って僕を困惑させることがあった。この時もそうだった。
「どういう意味?」
 僕は理解できずに、ただ訊き返した。
 あーちゃんはさっきよりも大きく首を横に振ると、何を思ったのか、唐突に、
「ああ、でも、海に行ってみたいな」
 なんて言った。
「海?」
「そう、海」
「どうして、海?」
「海は、色褪せてないかもしれない。死んでないかもしれない」
 その言葉の意味がわからず、僕が首を傾げていると、あーちゃんはぱたんと本を閉じて机に置いた。
「台所へ行こうか。確か、母さんが西瓜を切ってくれていたから。一緒に食べよう」
「うん!」
 僕は西瓜に釣られて、わからなかった言葉のことも、すっかり忘れてしまった。
 でも今の僕にはわかる。
 夏の日射しは、世界を色褪せさせて僕の目に映す。
 あーちゃんはそのことを、「死んでいる」と言ったのだ。今はもう確かめられないけれど。
 結局、僕とあーちゃんが海へ行くことはなかった。彼から海へ出掛けた話を聞いたこともないから、恐らく、海へ行くことなく死んだのだろう。
 あーちゃんが見ることのなかった海。
 海は日射しを浴びても青々としたまま、「生きて」いるんだろうか。
 彼が死んでから、僕も海へ足を運んでいない。たぶん、死んでしまいたくなるだろうから。
 あーちゃん。
 彼のことを「あーちゃん」と名付けたのは僕だった。
 そういえば、どうして僕は「あーちゃん」と呼び始めたんだっけか。
 彼の名前は、鈴木直正。
 どこにも「あーちゃん」になる要素はないのに。
    うなじを焼くようなじりじりとした太陽光を浴びながら、ペダルを漕いだ。
 鼻の頭からぷつぷつと汗が噴き出すのを感じ、手の甲で汗を拭おうとしたら手は既に汗で湿っていた。雑音のように蝉の声が響いている。道路の脇には背の高い向日葵は、大きな花を咲かせているのに風がないので微動だにしない。
 赤信号に止められて、僕は自転車のブレーキをかける。
 夏がくる度、思い出す。
 僕とあーちゃんが初めてひーちゃんに出会い、そして彼女の最愛の弟「ろーくん」が死んだ、あの事故のことを。
 あの日も、世界が真っ白に焼き切れそうな、暑い日だった。
 ひーちゃんは白い木綿のワンピースを着ていて、それがとても涼しげに見えた。ろーくんの血で汚れてしまったあのワンピースを、彼女はもうとっくに捨ててしまったのだろうけれど。
 そういえば、ひーちゃんはあの事故の後、しばらくの間、弟の形見の黒いランドセルを使っていたっけ。黒い服ばかり着るようになって。周りの子はそんな彼女を気味悪がったんだ。
 でもあーちゃんは、そんなひーちゃんを気味悪がったりしなかった。
 信号が赤から青に変わる。再び漕ぎ出そうとペダルに足を乗せた時、僕の両目は横断歩道の向こうから歩いて来るその人を捉えて凍りついてしまった。
 胸の奥の方が疼く。急に、聞こえてくる蝉の声が大きくなったような気がした。喉が渇いた。頬を撫でるように滴る汗が気持ち悪い。
 信号は青になったというのに、僕は動き出すことができない。向こうから歩いて来る彼は、横断歩道を半分まで渡ったところで僕に気付いたようだった。片眉を持ち上げ、ほんの少し唇の端を歪める。それが笑みだとわかったのは、それとよく似た笑顔をずいぶん昔から知っているからだ。
「うー兄じゃないですか」
 うー兄。彼は僕をそう呼んだ。
 声変わりの途中みたいな声なのに、妙に大人びた口調。ぼそぼそとした喋り方。
 色素の薄い頭髪。切れ長の一重瞼。ひょろりと伸びた背。かけているのは銀縁眼鏡。
 何もかもが似ているけれど、日に焼けた真っ黒な肌と筋肉のついた足や腕だけは、記憶の中のあーちゃんとは違う。
 道路を渡り終えてすぐ側まで来た彼は、親しげに僕に言う。
「久しぶりですね」
「……久しぶり」
 僕がやっとの思いでそう声を絞り出すと、彼は「ははっ」と笑った。きっとあーちゃんも、声を上げて笑うならそういう風に笑ったんだろうなぁ、と思う。
「どうしたんですか。驚きすぎですよ」
 困ったような笑顔で、眼鏡をかけ直す。その手つきすらも、そっくり同じ。
「嫌だなぁ。うー兄は僕のことを見る度、まるで幽霊でも見たような顔するんだから」
「ごめんごめん」
「ははは、まぁいいですよ」
 僕が謝ると、「あっくん」はまた笑った。
 彼、「あっくん」こと鈴木篤人くんは、僕の一個下、中学一年生。私立の学校に通っているので僕とは学校が違う。野球部のエースで、勉強の成績もクラストップ。僕の団地でその中学に進学できた子供は彼だけだから、団地の中で知らない人はいない優等生だ。
 年下とは思えないほど大人びた少年で、あーちゃんにそっくりな、あーちゃんの弟。
「中学は、どう? もう慣れた?」
「慣れましたね。今は部活が忙しくて」
「運動部は大変そうだもんね」
「うー兄は、帰宅部でしたっけ」
「そう。なんにもしてないよ」
「今から、どこへ行くんですか?」
「ああ、えっと、ひーちゃんに届け物」
「ひー姉のところですか」
 あっくんはほんの一瞬、愛想笑いみたいな顔をした。
「ひー姉、まだ学校に行けてないんですか?」
「うん」
「行けるようになるといいですね」
「そうだね」
「うー兄は、元気にしてましたか?」
「僕? 元気だけど……」
「そうですか。いえ、なんだかうー兄、兄貴に似てきたなぁって思ったものですから」
「僕が?」
 僕があーちゃんに似てきている?
「顔のつくりとかは、もちろん違いますけど、なんていうか、表情とか雰囲気が、兄貴に似てるなぁって」
「そうかな……」
 僕にそんな自覚はないのだけれど。
「うー兄も死んじゃいそうで、心配です」
 あっくんは柔らかい笑みを浮かべたままそう言った。
「……そう」
 僕はそう返すので精いっぱいだった。
「それじゃ、ひー姉によろしくお伝え下さい」
「じゃあ、また……」
 あーちゃんと同じ声で話し、あーちゃんと同じように笑う彼は、夏の日射しの中を歩いて行く。
(兄貴は、弱いから駄目なんだ)
 いつか彼が、あーちゃんに向けて言った言葉。
 あーちゃんは自分の弟にそう言われた時でさえ、怒ったりしなかった。ただ「そうだね」とだけ返して、少しだけ困ったような顔をしてみせた。
 あっくんは、強い。
 姿や雰囲気は似ているけれど、性格というか、芯の強さは全く違う。
 あーちゃんの死を自分なりに受け止めて、乗り越えて。部活も勉強も努力して。あっくんを見ているといつも思う。兄弟でもこんなに違うものなのだろうか、と。ひとりっ子の僕にはわからないのだけれど。
 僕は、どうだろうか。
 あーちゃんの死を受け入れて、乗り越えていけているだろうか。
「……死相でも出てるのかな」
 僕があーちゃんに似てきている、なんて。
 笑えない冗談だった。
 ふと見れば、信号はとっくに赤になっていた。青になるまで待つ間、僕の心から言い表せない不安が拭えなかった。
    遺書を思い出した。
 あーちゃんの書いた遺書。
「僕の分まで生きて。僕は透明人間なんです」
 日褄先生はそれを、「ばっかじゃねーの」って笑った。
「透明人間は見えねぇから、透明人間なんだっつーの」
 そんな風に言って、たぶん、泣いてた。
「僕の分まで生きて」
 僕は自分の鼓動を聞く度に、その言葉を繰り返し、頭の奥で聞いていたような気がする。
 その度に自分に問う。
 どうして生きているのだろうか、と。
  部屋に一歩踏み入れると、足下でガラスの破片が砕ける音がした。この部屋でスリッパを脱ぐことは自傷行為に等しい。
「あー、うーくんだー」
 閉められたカーテン。閉ざされたままの雨戸。
 散乱した物。叩き壊された物。落下したままの物。破り捨てられた物。物の残骸。
 その中心に、彼女はいる。
「久しぶりだね、ひーちゃん」
「そうだねぇ、久しぶりだねぇ」
 壁から落下して割れた時計は止まったまま。かろうじて壁にかかっているカレンダーはあの日のまま。
「あれれー、うーくん、背伸びた?」
「かもね」
「昔はこーんな小さかったのにねー」
「ひーちゃんに初めて会った時だって、そんなに小さくなかったと思うよ」
「あははははー」
 空っぽの笑い声。聞いているこっちが空しくなる。
「はい、これ」
「なに? これ」
「滝澤先生に頼まれたプリント」
「たきざわって?」
「今度のクラスの担任だよ」
「ふーん」
「あ、そうだ、今度は僕の同じクラスに……」
 彼女の手から投げ捨てられたプリントの束が、ろくに掃除されていない床に落ちて埃を巻き上げた。
「そういえば、あいつは?」
「あいつって?」
「黒尽くめの」
「黒尽くめって……日褄先生のこと?」
「まだいる?」
「日褄先生なら、今年度も学校にいるよ」
「なら、学校には行かなーい」
「どうして?」
「だってあいつ、怖いことばっかり言うんだもん」
「怖いこと?」
「あーちゃんはもう、死んだんだって」
「…………」
「ねぇ、うーくん」
「……なに?」
「うーくんはどうして、学校に行けるの? まだあーちゃんが帰って来ないのに」
 どうして僕は、生きているんだろう。
「『僕』はね、怖いんだよ、うーくん。あーちゃんがいない毎日が。『僕』の毎日の中に、あーちゃんがいないんだよ。『僕』は怖い。毎日が怖い。あーちゃんのこと、忘れそうで怖い。あーちゃんが『僕』のこと、忘れそうで怖い……」
 どうしてひーちゃんは、生きているんだろう。
「あーちゃんは今、誰の毎日の中にいるの?」
 ひーちゃんの言葉はいつだって真っ直ぐだ。僕の心を突き刺すぐらい鋭利だ。僕の心を掻き回すぐらい乱暴だ。僕の心をこてんぱんに叩きのめすぐらい凶暴だ。
「ねぇ、うーくん」
 いつだって思い知らされる。僕が駄目だってこと。
「うーくんは、どこにも行かないよね?」
 いつだって思い知らせてくれる。僕じゃ駄目だってこと。
「どこにも、行かないよ」
 僕はどこにも行けない。きみもどこにも行けない。この部屋のように時が止まったまま。あーちゃんが死んでから、何もかもが停止したまま。
「ふーん」
 どこか興味なさそうな、ひーちゃんの声。
「よかった」
 その後、他愛のない話を少しだけして、僕はひーちゃんの家を後にした。
 死にたくなるほどの夏の熱気に包まれて、一気に現実に引き戻された気分になる。
 こんな現実は嫌なんだ。あーちゃんが欠けて、ひーちゃんが壊れて、僕は嘘つきになって、こんな世界は、大嫌いだ。
 僕は自分に問う。
 どうして僕は、生きているんだろう。
 もうあーちゃんは死んだのに。
   「ひーちゃん」こと市野谷比比子は、小学生の頃からいつも奇異の目で見られていた。
「市野谷さんは、まるで死体みたいね」
 そんなことを彼女に言ったのは、僕とひーちゃんが小学四年生の時の担任だった。
 校舎の裏庭にはクラスごとの畑があって、そこで育てている作物の世話を、毎日クラスの誰かが当番制でしなくてはいけなかった。それは夏休み期間中も同じだった。
 僕とひーちゃんが当番だった夏休みのある日、黙々と草を抜いていると、担任が様子を見にやって来た。
「頑張ってるわね」とかなんとか、最初はそんな風に声をかけてきた気がする。僕はそれに、「はい」とかなんとか、適当に返事をしていた。ひーちゃんは何も言わず、手元の草を引っこ抜くことに没頭していた。
 担任は何度かひーちゃんにも声をかけたが、彼女は一度もそれに答えなかった。
 ひーちゃんはいつもそうだった。彼女が学校で口を利くのは、同じクラスの僕と、二つ上の学年のあーちゃんにだけ。他は、クラスメイトだろうと教師だろうと、一言も言葉を発さなかった。
 この当番を決める時も、そのことで揉めた。
 くじ引きでひーちゃんと同じ当番に割り当てられた意地の悪い女子が、「せんせー、市野谷さんは喋らないから、当番の仕事が一緒にやりにくいでーす」と皆の前で言ったのだ。
 それと同時に、僕と一緒の当番に割り当てられた出っ歯の野郎が、「市野谷さんと仲の良い――くんが市野谷さんと一緒にやればいいと思いまーす」と、僕の名前を指名した。
 担任は困ったような笑顔で、
「でも、その二人だけを仲の良い者同士にしたら、不公平じゃないかな? 皆だって、仲の良い人同士で一緒の当番になりたいでしょう? 先生は普段あまり仲が良くない人とも仲良くなってもらうために、当番の割り振りをくじ引きにしたのよ。市野谷さんが皆ともっと仲良くなったら、皆も嬉しいでしょう?」
 と言った。意地悪ガールは間髪入れずに、
「喋らない人とどうやって仲良くなればいいんですかー?」
 と返した。
 ためらいのない発言だった。それはただただ純粋で、悪意を含んだ発言だった。
「市野谷さんは私たちが仲良くしようとしてもいっつも無視してきまーす。それって、市野谷さんが私たちと仲良くしたくないからだと思いまーす。それなのに、無理やり仲良くさせるのは良くないと思いまーす」
「うーん、そんなことはないわよね、市野谷さん」
 ひーちゃんは何も言わなかった。まるで教室内での出来事が何も耳に入っていないかのような表情で、窓の外を眺めていた。
「市野谷さん? 聞いているの?」
「なんか言えよ市野谷」
 男子がひーちゃんの机を蹴る。その振動でひーちゃんの筆箱が机から滑り落ち、がちゃんと音を立てて中身をぶちまけたが、それでもひーちゃんには変化は訪れない。
 クラスじゅうにざわざわとした小さな悪意が満ちる。
「あの子ちょっとおかしいんじゃない?」
 そんな囁きが満ちる。担任の困惑した顔。意地悪いクラスメイトたちの汚らわしい視線。
 僕は知っている。まるでここにいないかのような顔をして、窓の外を見ているひーちゃんの、その視線の先を。窓から見える新校舎には、彼女の弟、ろーくんがいた一年生の教室と、六年生のあーちゃんがいる教室がある。
 ひーちゃんはいつも、ぼんやりとそっちばかりを見ている。教室の中を見渡すことはほとんどない。彼女がここにいないのではない。彼女にとって、こっちの世界が意味を成していないのだ。
「市野谷さんは、死体みたいね」
 夏休み、校舎裏の畑。
 その担任の一言に、僕は思わずぎょっとした。担任はしゃがみ込み、ひーちゃんに目線を合わせようとしながら、言う。
「市野谷さんは、どうしてなんにも言わないの? なんにも思わないの? あんな風に言われて、反論したいなって思わないの?」
 ひーちゃんは黙って草を抜き続けている。
「市野谷さんは、皆と仲良くなりたいって思わない? 皆は、市野谷さんと仲良くなりたいって思ってるわよ」
 ひーちゃんは黙っている。
「市野谷さんは、ずっとこのままでいるつもりなの? このままでいいの? お友達がいないままでいいの?」
 ひーちゃんは。
「市野谷さん?」
「うるさい」
 どこかで蝉が鳴き止んだ。
 彼女が僕とあーちゃん以外の人間に言葉を発したところを、僕は初めて見た。彼女は担任を睨み付けるように見つめていた。真っ黒な瞳が、鋭い眼光を放っている。
「黙れ。うるさい。耳障り」
 ひーちゃんが、僕の知らない表情をした。それはクラスメイトたちがひーちゃんに向けたような、玩具のような悪意ではなかった。それは本当の、なんの混じり気もない、殺意に満ちた顔だった。
「あんたなんか、死んじゃえ」
 振り上げたひーちゃんの右手には、草抜きのために職員室から貸し出された鎌があって――。
「ひーちゃん!」
 間一髪だった。担任は真っ青な顔で、息も絶え絶えで、しかし、その鎌の一撃をかろうじてかわした。担任は震えながら、何かを叫びながら校舎の方へと逃げるように走り去って行く。
「ひーちゃん、大丈夫?」
 僕は地面に突き刺した鎌を固く握りしめたまま、動かなくなっている彼女に声をかけた。
「友達なら、いるもん」
 うつむいたままの彼女が、そうぽつりと言う。
「あーちゃんと、うーくんがいるもん」
 僕はただ、「そうだね」と言って、そっと彼女の頭を撫でた。
    小学生の頃からどこか危うかったひーちゃんは、あーちゃんの自殺によって完全に壊れてしまった。
 彼女にとってあーちゃんがどれだけ大切な存在だったかは、説明するのが難しい。あーちゃんは彼女にとって絶対唯一の存在だった。失ってはならない存在だった。彼女にとっては、あーちゃん以外のものは全てどうでもいいと思えるくらい、それくらい、あーちゃんは特別だった。
 ひーちゃんが溺愛していた最愛の弟、ろーくんを失ったあの日。
 あの日から、ひーちゃんの心にぽっかりと空いた穴を、あーちゃんの存在が埋めてきたからだ。
 あーちゃんはひーちゃんの支えだった。
 あーちゃんはひーちゃんの全部だった。
 あーちゃんはひーちゃんの世界だった。
 そして、彼女はあーちゃんを失った。
 彼女は入学することになっていた中学校にいつまで経っても来なかった。来るはずがなかった。来れるはずがなかった。そこはあーちゃんが通っていたのと同じ学校であり、あーちゃんが死んだ場所でもある。
 ひーちゃんは、まるで死んだみたいだった。
 一日中部屋に閉じこもって、食事を摂ることも眠ることも彼女は拒否した。
 誰とも口を利かなかった。実の親でさえも彼女は無視した。教室で誰とも言葉を交わさなかった時のように。まるで彼女の前からありとあらゆるものが消滅してしまったかのように。泣くことも笑うこともしなかった。ただ虚空を見つめているだけだった。
 そんな生活が一週間もしないうちに彼女は強制的に入院させられた。
 僕が中学に入学して、桜が全部散ってしまった頃、僕は彼女の病室を初めて訪れた。
「ひーちゃん」
 彼女は身体に管を付けられ、生かされていた。
 屍のように寝台に横たわる、変わり果てた彼女の姿。
(市野谷さんは死体みたいね)
 そんなことを言った、担任の言葉が脳裏をよぎった。
「ひーちゃんっ」
 僕はひーちゃんの手を取って、そう呼びかけた。彼女は何も言わなかった。
「そっち」へ行ってほしくなかった。置いていかれたくなかった。僕だって、あーちゃんの突然の死を受け止めきれていなかった。その上、ひーちゃんまで失うことになったら。そう考えるだけで嫌だった。
 僕はここにいたかった。
「ひーちゃん、返事してよ。いなくならないでよ。いなくなるのは、あーちゃんだけで十分なんだよっ!」
 僕が大声でそう言うと、初めてひーちゃんの瞳が、生き返った。
「……え?」
 僕を見つめる彼女の瞳は、さっきまでのがらんどうではなかった。あの時のひーちゃんの瞳を、僕は一生忘れることができないだろう。
「あーちゃん、いなくなったの?」
 ひーちゃんの声は僕の耳にこびりついた。
 何言ってるんだよ、あーちゃんは死んだだろ。そう言おうとした。言おうとしたけれど、何かが僕を引き留めた。何かが僕の口を塞いだ。頭がおかしくなりそうだった。狂っている。僕はそう思った。壊れている。破綻している。もう何もかもが終わってしまっている。
 それを言ってしまったら、ひーちゃんは死んでしまう。僕がひーちゃんを殺してしまう。ひーちゃんもあーちゃんみたいに、空を飛んでしまうのだ。
 僕はそう直感していた。だから声が出なかった。
「それで、あーちゃん、いつかえってくるの?」
 そして、僕は嘘をついた。ついてはいけない嘘だった。
 あーちゃんは生きている。今は遠くにいるけれど、そのうち必ず帰ってくる、と。
 その一週間後、ひーちゃんは無事に病院を退院した。人が変わったように元気になっていた。
 僕の嘘を信じて、ひーちゃんは生きる道を選んだ。
 それが、ひーちゃんの身体をいじくり回して管を繋いで病室で寝かせておくことよりもずっと残酷なことだということを僕は後で知った。彼女のこの上ない不幸と苦しみの中に永遠に留めておくことになってしまった。彼女にとってはもうとっくに終わってしまったこの世界で、彼女は二度と始まることのない始まりをずっと待っている。
 もう二度と帰ってこない人を、ひーちゃんは待ち続けなければいけなくなった。
 全ては僕のついた幼稚な嘘のせいで。
「学校は行かないよ」
「どうして?」
「だって、あーちゃん、いないんでしょ?」
 学校にはいつから来るの? と問いかけた僕にひーちゃんは笑顔でそう答えた。まるで、さも当たり前かのように言った。
「『僕』は、あーちゃんが帰って来るのを待つよ」
「あれ、ひーちゃん、自分のこと『僕』って呼んでたっけ?」
「ふふふ���
 ひーちゃんは笑った。幸せそうに笑った。恥ずかしそうに笑った。まるで恋をしているみたいだった。本当に何も知らないみたいに。本当に、僕の嘘を信じているみたいに。
「あーちゃんの真似、してるの。こうしてると自分のことを言う度、あーちゃんのことを思い出せるから」
 僕は笑わなかった。
 僕は、笑えなかった。
 笑おうとしたら、顔が歪んだ。
 醜い嘘に、歪んだ。
 それからひーちゃんは、部屋に閉じこもって、あーちゃんの帰りをずっと待っているのだ。
 今日も明日も明後日も、もう二度と帰ってこない人を。
※(2/4) へ続く→ https://kurihara-yumeko.tumblr.com/post/647000556094849024/
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fur-snr · 3 years
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2021.03.31 日本武道館2日目
開演前「うらしまさかせん」声出せんけどどうするんかなぁ思ってたらペンラのカチャカチャだったなるほどな笑笑
〜入りの映像〜
なんか大きい鞠みたいなのぽんぽんしてた気がするセンラさん。坂田さんが1年前にちょっとだけ上げてくれてたけどこ、この扇パタパタかぁ!!と思った。4つの障子から出てくる。センラさんは下段の上手。
1.返り咲
入り完璧のセンラさん。🗣💛「咲かせましょう」の音の抜き方とても好き。ほんと幾千の夜待ってた。「貴方に会いたいよ〜」ら辺の振り付けが手のひら上にしながら身体揺らす振りあったの可愛かった。あとビジュ。最高だった。自撮りより顔面良いとは何事か。前髪がお目目に掛かっててめちゃめちゃ良かった〜😭志麻さんのポニテに死にそうになった。他担でこれだから志麻リスはどうなってたことか。1曲目なだけあって全然音程���レなかった。
2.花鳥風月
楽しい!!!!!やっぱり画面越しで見るのとは違う😭😭😭コロナの運命(運命とか言いたかないけども😡)に抗って会えましたやっとだ……やっぱり愛を哀と〜のところの振り付け好き!力強く🗣💜「愛しちゅうよ」言って頂きました。ありがとうございます😭🐿
3.花魁俺嵐コンフュージョン
やっと生で聴けた😭😭😭衣装ほんと良かったですどんなんだったか忘れる前にDreamerの5th見に行こ…😭😭🗣💛「よし本当のお前を 捕まえてしまうんだ」の言い方が地味に淡々としててニヤけた。個人的にはセリフというより歌唱力に湧きました。力強くてめちゃめちゃ迫力あった。落としサビで皆涙したはず。
〜MC〜
4人が話してる間早々に汗を拭きに行くセンラさん。オペラグラスで見てましたえちぃ!!!
4.千本桜
もう殿堂入りの千本桜ですけど「まだ声出さないの慣れないな〜出したいな〜😭😭」という気持ち。名前コールのところペンラの色変えるのに必死☺️両手持ちの皆様どうしてたのだろう笑笑名前コールの仕方も🗣💚「うらた!うらた!」とかじゃなくて🗣💚「みどり!みどり!」って色の名前でした!センラさんパートの「撃ち抜いて(お手手のモーション付き)」でこっち方向バンされましたキュン死ぬ(でもあれは私とかセンラー個人にというよりはこっち方面全体に、という感じだった気がする。冷静。)落ちサビの年下組に涙。毎度思うけどあそこずるい心臓掴まれる!!!!
5.Peacock Epoch
一緒に踊ってた記憶🤔「俺にしとき」はとても良い京都弁の発音でした(方言の発音が良いとはって感じですけど、私が今まで聞いたピーコックのセリフの中では1番癖がなくてナチュラルにかっこよかった。)「最後まで待って」の発音の仕方癖になってるのね笑笑という感じ(オンラインライブの時と同じ感じ)
6.ホエールホール
えっちです。やっぱり生のヤってるダンス良かった〜🥺遠目から見てもエロだったでもそこ以外のダンスは簡単だしペンラで真似しやすいので好きです!リップ音いいね録音では無い気がする…裏で音源ちっちゃく流しながらリアルでするって感じかな。でも歌ってしんどい中でリップ音つくるの大変な気がするし違うのかな…??(音ちっちゃいかもしれないからめちゃめちゃ静かにして耳突き出して聞いたけど結構しっかり音入ってた。吐息までしっかり。)パート抜けちょった志麻さん(これでこそ有観客ライブ。)センラさんはちゃんと「前の穴」と言っててほっとしました(ニヤけた)
〜生着替え(衣装チェンジ)タイム〜
4人が最初の障子に戻って影だけ見えている状態。4人順番にスポットが当たる×3セット
センラさんスポット1回目→お手手の消毒(めっちゃウケてた私も笑った)
センラさんスポット2回目→「服似合うかなぁ〜🥺(喋ってはない)」と荒々しく鏡に合わせる死ぬほど面白い
センラさんスポット3回目→羽織りを羽織って調節。ここは多分真剣にやってたけどそれすら面白いのは何。ただ鏡見ながら襟周り調節してるのはかなりかっこよかった。笑いとカッコイイのギャップで死にそう。(センラさんのところで毎回笑い起きる流石オチ担当)
8.Beetle Battle
4人とも安定して腰の動きがえろいです。センラさんの🗣💛「好きにし?」は「し?」をちょっと伸ばしたような言い方してて含みのあるもうとっても色気溢れる言い方でしたもうめちゃめちゃ誘ってきてる。京都のヤラシイ感じ出てる。だいすき!!!(まって京都人を貶したい訳では無い違う褒めてる)どっか音ちょっと外しちゃってでも自覚してるから笑いながら誤魔化す坂田さんも可愛かったです。笑ココ坂田家めっちゃ湧いてそう☺️「おっおっえおー!」の後のHeyは数少ないバージョン(cdバージョン)でした
9.💚❤️VS
たのしいね!!!!!!!ペンラとても暴れてました腕筋肉痛だー!!!!!この曲ヘドバンすべきだと思ってたんだけど斜め前にいたcrewも同じ解釈してたみたいでちょっと嬉しかった、笑Wow Oh Oh Oh〜のところめちゃくちゃ小刻みにペンラ振ってた😂さかたさんいつものテンション上がりすぎて何言ったかわからないやつ発動してた笑笑(crewニコニコ)
10.💜💛ファイティンサマーカーニバル
本当は志麻センめちゃくちゃ極楽浄土歌って欲しかったんだけどしょうがないぴえん(逆にこのRainbowの流れで極楽浄土来てもビビる)。めちゃめちゃ入り志麻さんが声出しててわああああ!!!!!ってなった🗣💛「なんか切ないなぁ〜🥺(ばり関西弁)」2人とも所々おとぼけ入れてて可愛かったし楽しかった〜なによりめちゃくちゃテンション高かった〜😂オンラインの時とじゃれ方はほとんど同じ!「しません!」で慌てて志麻さんにかけよるセンラさんかわちぃ🥺めちゃめちゃホットであの時だけ会場夏だった気がする〜〜〜(虚言)
〜うらさか呼ぶ〜
🗣💜💛「心の中で呼んでね〜」みたいなノリ。坂田さんジャンプしながらステージ入ってきたけどめちゃめちゃ舞台袖でやってたので観客には見えず笑笑本人曰く🗣❤️「ちょっとラグあるなぁ」との事。
11.Boohoo
最初の立ち位置並ぶ時に、🗣❤️「僕らの事は…?」🗣💚「あとで、笑」(じわるcrew達)
めちゃめちゃ楽しかったセンラさんの高音綺麗すぎる〜本人達見るかモニター見るかで凄いキョロキョロしてた。笑🗣💛「じっくり行こうか」の言い方音源よりえちぃ。ラップ部分良かった〜〜ワクワクした!!🗣💛「利子を付けて返すハウスルール〜」の所綺麗にリズムハマっててとてもカッコよかった
12.飲めや 歌えや 踊れや 騒げ
ぶーふーのえちえちからの明るい和曲!!!切り替え上手すぎ☺️☺️🗣💛「嬉しいーー!!!!!!!!」サビのペンラ暴れ芸。みんな力強く歌ってる印象🤔振り付け新鮮だった〜!!
〜VTR『浦島坂田船 色とり忍者(めちゃイケ)』〜
この時期なのでVTRはマスク付けてた(センラさんいつもの黒マスク(だった筈))罰ゲームはマッサージ(とても痛い)
1回戦⬇️
🗣❤️「黄色い歌い手!」
🗣💛「kradness!!」でウケる会場。
🗣💜「紫の花!」🗣❤️「薔薇!」でストップがかかる。坂田さんマッサージ行き。痛すぎて椅子からずり落ちるさかたさん。
2回戦⬇️
🗣❤️「ココマ☆¥*°ゼル!!!!」(噛む)(でもスルー)
🗣❤️「黄色の建物!」
🗣💛「!??…えっ…あっ金閣z((不正解音」
🗣❤️「イエローハット」
🗣💛「建物黄色ちゃうやん!!」
🗣💚「でも答えられたから」
マッサージ行きのセンラさん。
🗣💛「我慢してやる我慢してやる、、ああああ痛い!!!」
3回戦以降⬇️
坂田さん2回目のマッサージ行き。
(多分この辺で🗣❤️「順番反対にしよう」と提案)
うらたさんマッサージ行き
志麻さんがまだ1度も受けてないので3人で協力して落とそうという作戦に入る。
順番反対後⬇️
🗣💛「紫の景色!(裏切り)」
🗣❤️「………紫の景色…????((不正解音))」
🗣?「ラベンダー畑とか」
マッサージ行きの坂田さん(ショッカーみたいなのにも総攻撃を受ける)
睾丸のツボかなんかを押される。
🗣💚💛「なんかお前だけシモい、、笑笑」
最後締めくくりに入ると思いきや「1回も受けてないから」という理不尽な理由でマッサージ行きにされる志麻さん。めっちゃウケてた笑笑
13.💚GET UP
ソロは流石の安定感。オンラインの時も思ったけど多分4人の中で1番歌ってる時のダンス激しいのに音もリズムも外れないの凄い。流石浦島坂田船のリーダーであり声優だなぁと。サビの片足ケンケンしながら腕ぐるぐるする振り可愛い。(4人ともオンラインの時と振り付け変わってなかった気がする)
14.💜紫雲の翼
オンラインの時よりも声量の迫力が凄く(そりゃそうだ)て、凄い涙腺に来た。この曲サビとか特に声張りっぱなしの所に急に高音来たりするからめちゃくちゃ歌うのしんどいだろうなと思ってたけどめちゃめちゃ気持ち込めて歌ってるのが伝わってきて観客が一帯になっていた気がする。👏
15.❤️「迷図」
2番の「また起きたままイビキかいてます」の後に寝てるダンサー勢に「起きろぉ!!!」と言ってた良い演出。(オンラインのときこれあったっけ?あったか。)この情勢下でめちゃめちゃ刺さる事言ってくるこの曲。坂田さんの力強い歌い方と相俟って頑張らなきゃ〜!!!!と思った。(いや分からんその時は興奮してさかたさんがうたってる👶🏻ぐらいしか頭動いてなかったかも)
16.💛「Sweet Magic」一生懸命両手のリングライトのスイッチ押してたらいつの間にか推しとダンサーステージに立ってた。板着くまで見逃した〜🥲笑この曲入りからダンス激しいよね〜!!!頑張れ〜!!と思ったけど流石のエンターテイナーばっちり踊ってた。サビ前のダンサーとの絡みほんとに好きなんだよね…ハグする所とかキュンとしちゃう😂(語弊がありそう、そういう目線で見ているわけではない)。サビの「sweet magic」とか「pretty trick」まで歌ってて凄い。オンライン歌ってたっけな…多分歌ってたんやろうな…ばちこいかっこよかったいや〜この曲好き。大好き。
〜そのままMCタイム〜
🗣💛「今日は僕のワンマンライブに来て下さってありがとうございます!!!」
🗣❤️「おいおいおいおい!なんでやねーん!」とツッコミながら入ってくるさかたさんと志麻さん。うらたさんはステージの階段上から。🗣💛「ずっちぃーなぁ〜⤴︎︎⤴︎︎」って言ってた
センラ先生が号令をかける。
🗣💛「気をつけ!」「礼!((マイクがさがさ」ごめん今マイクの音消えてて聞こえなかったかもしれない」「気をつけ!」「礼!」「着席!」
ここでいつもの挨拶
🗣💚「僕たちが〜!!!」
(crewぱちぱちペンラかちかち)
🗣💚「うら」🗣💜「しま」🗣❤️「さかた」(それぞれボケる)🗣💛「せんでーーーーす!!!!」(安定に最後センラさんの勢いで纏める。可愛い)(あともしかしたら号令と挨拶順番逆だったかもしれないごめんなさい覚えてない)このまま「武道館2日目の人〜!」「初日の人〜!」みたいな流れに入った筈。坂田さんが武道館1日目失敗した「ペンライトウェーブ(さかたさんが指さした方向の座席の人がペンラ上げて光のウェーブを作る)」をやる。2回スタンド西からだった気がする。
🗣💚💜❤️💛「わぁーー!きれいー!!」
🗣💛「俺もやりたいことある。ステージのスポット消してやってみぃひん??あでもまって見えへんか俺。」
🗣??「ソロの時みたいにセンラさんにだけスポット当てればいいやん」
🗣💛「いやめっちゃ恥ずかしいやん俺wwwwいけます??照明さんいけます???」
(((徐々に暗くなりセンラさんにだけスポットか当たる)))crew爆笑案件
🗣💛「じゃあ行きますよ〜??(指さしながら)」
🗣💜「すげーー!!!!!!!」
🗣💚💜❤️「めっちゃ綺麗だった」
🗣💛「俺あんまり見えへんかってんけど笑笑」
🗣💚「2人ともいいな俺らもなんかやりたい。」
🗣💜「なんかないすか?」
🗣💚「俺あれやるわ旗揚げみたいなやつ」
(うらたさんにスポット当たる)
バラード歌いそうな雰囲気に。
🗣❤️「ではどうぞ。心做し。」
🗣💛「ねぇもしも((🗣💚「うるさい!!」🗣💛「すんません」
🗣💚「赤あげて!緑上げて!」最後黄色への指令噛んで終了。
🗣💚「じゃあまーしーは??」
🗣💜「いいわ笑俺最後の号令やるし」
そのまま男の子〜!女の子〜!のノリへ。
初参戦の人多かったなぁという印象。保護者も。笑保護者のときに🗣💛「ごめんなさいね平日の真昼間に。明日から新年度ですね〜決算終わりましたか〜?」とテラリーマン。めっちゃ会場わいた笑笑
最後��〆へ。
志麻先生🗣💜「起立!」「休め!」「気をつけ!」「楽しむポーズ(!?)」「礼!」
17.SWEET TASTE PRESENT
ダンスめちゃめちゃ可愛かったー!!!!😭にゃんにゃんポーズ最高か!!!!!MVと同じようなノリ(1人だけ抜け駆けしてる志麻さんをうらさかせんが引っ張る)で構成されててキュンした、、🗣💛「ちょっとまってよー!!!🥺」可愛すぎた〜😂😂センラさんもセ少で言ってたけどあんまりにも真っ直ぐに愛を伝えてくる歌なのでこっちが照れちゃう。笑きっと誰かのお父さんも乙女になっていた。笑とにかくダンス可愛かった〜〜〜最高に好き
18.グッド・バイ
スイートテイストプレゼントの萌え萌えキュンからのスタイリッシュな雰囲気のグッドバイ。ほんとに個人的にこの曲が大好きでイントロ流れ��時発狂しそうになった。危ない。笑入りから鳥肌案件でした。背筋ぞわぞわってなるぐらい興奮した。スマートな曲なのにサビめちゃくちゃ盛り上がるしペンライト振りやすい。楽しい。2番の入り歌詞抜けてしまうさかたさん。ニコニコcrew。ダンス何してたか全く覚えてない…覚えてないって事はそんな激しく踊ってた訳ではないんだろうか…?わかんなーい😭🗣💛「求めていたのに」めちゃめちゃ美声でした
19.微笑、香り、君と僕を繋ぐ
最初のてみうぉちゅみーから「わあああああ」ってなる🥺志麻さんの英語の発音めちゃくちゃかっこよかったの覚えてる。"This is love in this would"のworldカッコよすぎ。似合いまくってて歌い方もめっちゃ良くて流石持ち曲と思ってた。サビ楽しすぎて身体動かしちゃうからいつの間にかペンライトの振り方分かんなくなる😂🗣💛「重ね合わせた手に 伝わる温もりが」の所めちゃめちゃ音程もロングトーンも綺麗で鳥肌立った。ここ良すぎて鮮明に覚えてます。
20.アワ・ダンサー
イントロ聞いてめちゃめちゃ嬉しくなったー!!!!!!!!来たー!!!という感じ😂🗣💛「そうさヘイ ヘイ ヘイカモンベイベー」の高音めっちゃ綺麗だった笑笑「ソレソレソレソレ!!!!」でペンライト振りすぎて吹っ飛ぶかと…笑ちゃんとベルト(?)付けてて良かった。笑みんな(?)所々歌詞抜けてた気がする😂どこかは覚えてない…踊れって言われたら踊るしかない。めちゃくちゃ楽しかった〜〜〜😂😂😂
〜バンドメンバー、ダンサー紹介〜
リーダー進行でバンドメンバー紹介。ダンサー陣紹介。
21.最強Drive!!
ダンスたのしいーー!!!!!🙌ステージのでべその所で動いてたからオンラインの時ほど暴れてなかった笑笑歌う時音無視して叫ぶやつ(他の言い方探せ)勃発してた。会場も「わああああああ」って感じ(静かだけど)。熱気感じた〜😂心の中でみんな叫んでたはず!!!
22.花吹雪
イントロ聞こえた瞬間叫びそうになった〜心の中で叫んだ〜🤣🤣各々のセリフは力強い感じ!!!音源よりお祭り感増し増しのわちゃわちゃ感!!みんなわーー!!!!!って歌ってた〜!一生懸命ペンライトふりふりしてました😌
〜MC〜
多分有観客やっぱりいいな〜みたいな話だったはず。ちゃんと覚えられてない😓
23.完全燃焼〜花祭り〜
前日にアップされたときから思ってたけど志麻さん似合いすぎてるよねこの曲。ちょっと気だるそうに歌う入りやっぱ良い。🗣💛「思いは残すな」でめちゃめちゃグッときた。春ツ中止になった頃思い出してうるうるしてた。きっと同じ人多かったよね。センラさんが配信で裏話的なものを言ってから、🗣💛「よぉ〜〜〜〜!!」のところニヤケながら音源聞いてたのだけどライブでもニヤケてしまった😂(セ少聞いてた人は分かるはず)ひぇーっふぅ、好きです。
24.花や、花
去年の今頃はもう生で聴くことが出来ないと思ってたから、嬉しいなぁとか去年の泣きじゃくってた自分に「浦島坂田船は私達を幸せにしてくれたよ」って言ってあげたいなぁと思ってました。(あれなんかポエマー。もどります。)
入りから音源を超える歌の上手さ(オンラインライブのときも個人配信で自画自賛してたの覚えてるそんな所も推せる👶🏻)。特にロングトーンを意識して歌ってるんだろうなぁと思ってた(ひとつひとつの単語の末の出し方がかなり丁寧だった。「花や、花や、」の「や」とか)。🗣💛「君が為ならば」やばかったなぁばり綺麗。1年以上焦らされたお陰(☺️)でペンライトの振りはバッチリでしたね。🗣💛「もう離さない」で「離さないで〜😭😭😭」ってみんななってた筈。笑笑
〜アンコール〜
みんなで「アンコール」って心の中で思いながらお手手ぱちぱちしてた。
25.合戦
「望みはただ1つ」を飛ばしてにゃにゃにゃ〜ってするさかたさん笑笑笑みんな合戦のAパートちょっと低くて終盤に持って来るのはテンション上がってるし疲れてるししんどそうだった笑笑聴いてるこっちもハイだしもう分かんないけど。ラスサビ前の歌う所はすっ飛ばしてリーダーから順々にセリフ言ってた。めちゃめちゃ良かった。🗣💛「これからたくさんの思い出作っていこうね!」ばっちり撃ち抜かれた〜🤦‍♀️笑
〜MC〜
お写真タイム。安定してポーズ担当はセンラさん。今回は「武道館」なので「🍇館」でぶどうのポーズ。なんだそれ笑笑(みんな必死に丸作ったり垂らしたりしてた)。掛け声は🗣❤️「はいっぶどう〜!!!!!」
そして1人ずつのお話タイムへ。💛→❤→️💜→💚の順番。
皆さん武道館に立てて良かった〜みたいな内容。crewに感謝してるよみたいな事も言って下さったけどこっちのセリフなんだよな。大好きです。
26.そらに、ひらり
ただひたすら楽しかったな〜寂しいな〜って感情が頭の中でぐるぐるしてた。ので記憶が薄い。ごめんなさい。センラさん歌うま。全然外れない。志麻さんの落ちサビに涙。あの感情の込めた歌には泣くしかない。
〜おててふりふりタイム〜
東→西→真ん中の順番。いつもの倍ぐらいは時間かけてファンサしてもらった😭疲れて早く楽屋戻りたいやろうに長時間付き合ってくれて本当にありがとうの気持ち。センラさんはひたすらセンラーのペンライトの動き真似してた。「2階席見えましたか〜?」の言い方がほんとに優しくて涙出そうになった。ちっちゃいけど見えました。幸せでした。志麻さんはポケットからキュン溢れてた笑そんでめちゃめちゃ誰かのお父さんいじられてた草
お手手ふりふり中、マイク無しの「ありがとう」大会
🗣💚「ありがとう!」流石声優めちゃくちゃ通る
🗣💜「ありがとう!」力強い
🗣❤️「ありがとう!」いつものさかたさん(え)
🗣💛「ありがとう〜〜〜」オペラ調。センラート
最後は💛→❤→️💜→💚の順番で退場。順番に襖に入っていく。
🗣💛「今日はありがとう。またデートしましょうね((ニコッ」
🗣❤️「アイツ偶にこういうことするよな笑。今日はありがとう。また遊びに来てね。(うろ覚え)」
🗣💜「また愛を深めましょう。好きだよ。(うろ覚え)」
🗣💚「次は家デートしようね。(うろ覚え)」
(うらたさんが襖開けたら4人が襖の前で変なポーズしてる)
🗣💚「えっ、?笑笑1回閉めるよ笑」
(閉めてもう1回開けるとポーズ変わってる)
(うらたさんも襖閉まるギリギリの所にポーズする)
(4人でポーズしながら)
🗣💚💜❤️💛「バイバイ〜!!」
最高のライブでした。つい2日前に会ったのにもう会いたい😭次はオンラインライブ🙌(チケット全ハズレした為ニッコリ)
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t82475 · 3 years
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続・くのいちイリュージョン
1. 女性だけのイリュージョンチーム「コットンケーキ」に所属していたあたし、御崎芽瑠(みさきめる)がフリーのマジシャン、谷孝輔(たにこうすけ)と出会ったのはほんの4か月前のことだった。 恋人同士になり、専属のパートナーになって欲しいと頼まれた。 悩んだ末、あたしはコットンケーキを辞め、彼のアシスタントになって生きることに決めた。 2. 以前は撮影スタジオだったというフロアの半分に客席のソファとテーブルが並んでいる。 残り半分があたし達のステージだ。 ちらりと見たところ、客席は結婚式の披露宴みたいに着飾った人ばかりだった。 ここってものすごく高級なクラブなの? 「会員制の秘密クラブさ。会費は安くないらしいよ」 「すごいね」 「みんな俺たちを見に来てくれてるんだ。ドキドキするステージにしよう」 「うん!」 〇オープニング ステージが暗くなって、中央にスポットライトが一本当たった。 ゴーン。 鐘の音のSE(効果音)。 あたし一人で進み出た。 衣装は真っ赤な忍者の上衣、ショートパンツに網タイツとブーツ。覆面で顔を隠している。 身を屈めて爪先で小走り。ときおり物陰に隠れるようにして周囲を伺う。 あたしは敵地に侵入したくのいちだ。 絶対に見つからないよう、気配を殺して・・。 〇 スネアトラップの罠 がたんっ!! 大きな音がして、くのいちが消えた。 ピーッ、ピーッ! 呼び子が響き、ステージ全体が明るくなる。 くのいちは頭上高くに吊られていた。 片方の足を縄に絡められて、逆さになって激しくもがいている。 これは森で動物などを捕獲するために使うスネア・トラップという罠だ。 目立たないように張ったワイヤを引っ掛けると、縄の輪が足に掛かり、立ち木をしならせたバネの力で吊り上げられる。 「獲物がかかったか!」 黒装束の忍者が登場した。コースケだ。 長いマントを翻し、背中に太刀を背負っている。 黒忍者は逆さ吊りになったくのいちの手首を捕らえると、後ろ手に組ませて縄で縛り上げた。 さらに覆面を剥ぎ取って、その口に懐から出した白布を詰める。 「舌を噛んで自害されては困るからな」 にやりと笑うと、前髪を掴んで前後左右に振り回した。 ・・あたしは悔し気な表情を浮かべながら振り子のように揺れた。 揺れ幅が小さくなると、再び髪を掴んで揺らされた。 全体重を片足で受けているから長く続けると足首を痛めるけれど、そのために足首部分を分厚くしたブーツを履いているから耐えられる。 〇 逆さ吊りオリガミ 黒忍者は小さな箱を載せた台を押してくると、くのいちが揺れる真下に据えた。 一辺がわずか30センチほどのサイコロ形の箱である。 その箱の蓋を開け、くのいちを吊るす縄を緩めてゆっくり降下させ���。 くのいちの頭が箱に入り、続けて肩、胸、腰と沈んでゆく。 こんな小さな箱にどうやって人間の身体が入るのか不思議だった。 くのいちの膝まで箱に入ったところで、黒忍者は足首に絡んだ縄を解き、さらに左右のブーツを脱がせた。 網タイツだけになった脚を上から押し込んで箱の蓋を閉じる。 黒忍者は背中の太刀を抜くと、箱にぶすりと突き刺した。 すぐに抜いて別の角度で再び突き刺す。 これを何度も繰り返した後、黒忍者は箱の面を内側に折り込んで半分の大きさにした。 さらに折って小さくする。 箱をゲンコツほどの大きさまで折り畳むと、黒忍者はその台まで二つに畳んで運び去ってしまった。 〇 皮張り椅子からの出現 ステージが暗くなって、反対側に置いた皮張りの椅子にスポットライトが当たる。 黒忍者はその椅子に艶のある大きな黒布をふわりと被せた。 すぐに布を外すと、そこにくのいちが腰掛けていた。 縄で後ろ手に縛られ、白布の猿轡をされた姿は変わりがない。 黒忍者はその口から覗く布の端を摘むとずるずる引きだした。 咳き込むくのいち。 その首を両手で締め上げる。 くのいちは首を振りながら苦しみ、やがて動かなくなった。 ・・コースケの首絞めは容赦なしだ。 あたしは息を詰まらせ、ちょっぴり感じながら気絶する演技をする。 黒忍者はくのいちの頬を叩いて意識を失ったことを確認する。 大きなビニール袋を持ってくると、くのいちの上から被せ、袋の口を縛って床に転がした。 〇 透明袋のスパイク刺し 椅子が下げられて、キャスター付の薄い金属台が登場した。 金属台の広さは畳一枚分ほど。 黒忍者はくのいちを入れたビニール袋を金属台に乗せた。 袋の中ではくのいちが目を覚ましたようだ。 ・・あたしは身を捩ってもがくふりをする。 この後、後ろ手に縛られた縄を抜けてビニール袋から脱出するけれど、そのタイミングが難しいんだ。 コースケがアドリブで芸をすることもあるし。 痛! こらコースケっ、女の子を足で蹴るなぁ。 喜んじゃうじゃないか~!! 黒忍者がくのいちを袋の上から蹴って、くのいちが苦しむ。 その間に頭上から大きな器具が降りてきて、ビニール袋のすぐ上で停止した。 鉄板は金属台とほぼ同じ大きさで、100本以上の金属針(スパイク)が下向きに生えていた。 生け花に使う剣山(けんざん)を逆さにしたような形状である。 四隅に布ロープを掛けて吊るしているようだ。 もしロープが切れたら鉄板は落下して、鋭く尖ったスパイクがくのいちを貫くことになるだろう。 黒忍者は火のついた松明(たいまつ)を持つと、4本の布ロープに順に火を移した。 燃え上がる布ロープ。 透明な袋の中ではくのいちが必死に縄を解こうとしている。 4本あるロープの1本が燃え尽きて切れた。 鉄板は大きく揺れたが、まだ宙に浮いている。 反対側の1本も切れた。 鉄板がぐらりと傾き、それにつられて残りの2本が同時に切断された。 がちゃん!! 大きな音がして鉄板が落下した。 ちぎれたビニールの破片が舞い散る。 観客の誰もが息をのんでステージを見つめた。 金属台にスパイクが突き刺さっているが、そこに人影はなかった。 最後の瞬間まで、袋の中には確かにくのいちが閉じ込められていた。 いったいどうなっているのだろう? ステージが明るくなった。 黒忍者がマントを広げると、その陰からくのいちが現れた。 拍手の中、並んでお辞儀をする。 ・・やったね! コースケの目を見て微笑んだ。 コースケも笑ってあたしの頭を叩いてくれた。 3. 「じゃあ、お仕事うまくいったんですね!?」ノコが聞いた。 「まあね」 「いいなぁ、私も見たかったです」 「ダメよ。会員でないと入れないお店だから」 ノコはコットンケーキの後輩で、あたしとちょっと特別な関係にある女の子だ。 「・・だいたい片付きましたね」 「ありがとう、助かったわ」 「メルさんのことなら何でもお手伝いしますよ~♥」 ここはコースケのマンション。 彼の専属になって、あたしは前のアパートを引き払いコースケと一緒に住むことにした。 一緒と言っても、籍は入れない。ただの同棲だけどね。 ノコは引っ越し荷物の整理に手伝いに来てくれたのだった。 「お茶、入れるわ」 「お茶よりも・・」「何?」 「コースケさんはまだ帰らないんですよね?」 「うん。彼、ショーの打ち合わせで、戻るのは夜になるって」 「なら、触れ合いたいです、メルさんと」 「もう」 「えへへ」「うふふ」 あたし達はくすくす笑いながら着ているものを全部脱いで裸になった。 忍者の長いマントを互いの首に巻く。 マントは忍者装束が趣味のあたしがノコと一緒に過ごすときに必ず着けるアイテムだった。 「拘束してもらえますか?」 「ノコってマゾなの?」「はい、ドMです♥」 相変わらず素直ではっきり言う子。だから好きなんだけど。 ノコはマントの下で後ろに手を合わせ、あたしはその手首に手錠を掛けてあげた。 「ああ、これで私に自由はありませんよね」 後ろ手錠の具合を確かめるノコ。 その顎に指をかけて持ち上げた。そっと唇を合わせる。 キスの後、後ろから回した手で左右の胸を揉みしだく。 この子はあたしより小柄なくせに、おっぱいが大きくてふわふわ柔らかいんだ。 股間に手をやると、そこはもうしっとり濡れていた。 「はぁ・・ん」 カナリアみたいに可愛い声。 こんな声で鳴かれたら、あたしも濡れてくるじゃないの。 ソファに揃って倒れ込んだ。 乳首を甘噛みすると、ノコは全身をびくんと震わせた。 「・・俺がいないときを狙って、何やってるの」 振り向くと、ドアが開��てコースケが立っていた。 4. 「コースケ! 帰るのは夜だって・・」 「のはずだったけど、早く済んだから帰ってきたの」 コースケは頭を掻きながら呆れたように言う。 「ま、こんなことになっているだろとは予想してたけどね」 「すみませーんっ、メルさんを食べようとしちゃって」ノコが謝った。 「俺は気にしないよ。それに食べようとしてたのはメルの方じゃないの?」 「・・」 あたしはノコの上から離れた。 赤くなっているのが自分で分かる。 二人の関係はコースケ公認だけど、彼の見ている前でこの子とエッチするほどあたしの心臓は強くない。 「わははは。メル、それじゃ欲求不満だろう?」 「ばか」 「楽しませてあげるよ。ノコちゃんもね」 「うわ~い」 そんな簡単に喜んじゃダメよ、ノコ。 コイツがこんな風に言うときは、だいたいロクでもない目に会うんだから。 コースケは皮張りの椅子を持ってきた。 それ、この間のステージで使った椅子。 「はい、メル。ここに座って、前に両手出して」 「この格好で?」「もちろん」 コースケはあたしを椅子に座らせると、前に出した両手首を縄で縛った。 さらに肘を折らせて手首の縄を首に巻いて括り付けた。 あたしは手を前で合わせたまま、下げられなくなった。 椅子ごと大きな黒布を被せられた。 「動いたら後でお仕置き。いいな?」「う、うん」
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「さあノコちゃん、メルを好きにしていいよ」 「うわ~いっ」 後ろ手錠のノコが這って黒布の下に入り込んできた。
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自分は膝立ちになると、あたしのマントの中に頭を挿し入れた。 ちゅう。 「きゃ」 おへその下を吸われた。そ、そんなに強く吸わなくても。 ノコの口は下へ下へと移動する。 あ、それ下の毛! 汚いよぉ。 「そろそろ諦めて足を開いてくださぁい、センパイ♥」 だ、だ、だっ、だめぇ。 両足の間にノコの肩が割り込んだ。 「はんっ!」 クリを吸われた。 「あ・・、あん、はぁん」 舌の先で転がされる。 「あ、あ、あああ」 我慢する気はすっかり失せた。 あたしは身を反り返らせて喘ぎ続ける。 「れろれろ。メルさんのおつゆ♥ 美味しいです」 「ば、ばか。そんなとこ、」 「噛みますよぉ。イっちゃってください」 「あ、やっ」 きゅん!! 衝撃が駆け抜けた。一瞬、意識が遠のく。 ノコの顔が上がってきて耳元で囁かれた。 「抱いてあげたいんですけど、手錠してるんでダメなんです。・・代わりにキスしますね♥」 「あぁっ!」「んんっ!」 ノコとあたし、両手を拘束された女同士がディープキスをする。 はあ、はあ。 肩で息をして、もう一度吸い合った。 ぱちぱちぱち。 「いいねぇ。堪能させてもらったよ」 のんびり拍手してからコースケが言った。 「はあ、はあ。コースケぇ。もう許して」 「そうだな。じゃ、そのままバニッシュしてよ」 「そ、そんな、無理」 「無理じゃないさ。それくらいできないとこの先困るぞ」 「きっとできます! メルさんなら」 もう、ノコまで無責任に。 「じゃ、いくぜ。・・ワン、ツウ、スリー!」 コースケは椅子全体を覆う黒布を両手で持って外した。 そこには後ろ手錠のノコだけが膝立ちで屈んでいた。 あたしが座っていた椅子の座面には、半透明の液体が広がって溜まっていた。 5. 翌日。 喫茶店に現れたサオリさんは以前より綺麗になっていた。 「待たせたかしら」「いえ、あたしも来たばかり」 「メルちゃん、何だか綺麗になってない?」 「あたしこそ、サオリさんが綺麗になったって思ったんですけど」 「え? あはは」「うふふ」 コットンケーキのリーダー、サオリさんと会うのはチームを辞めて以来だった。 あたしが円満に退所できたのはサオリさんが応援すると言ってくれたからで、あたしはとても感謝している。 「どうしてるの?」 「クラブで彼とイリュージョンのお仕事をやってます」 「そっか。頑張ってるのね」 「まだ続けてできるかどうかは分からないんですけど」 「コットンケーキだって最初はそうだったわ。・・それで、どこのお店?」 「それはまだちょっと、」 あたしは言葉をにごす。 秘密クラブで拷問イリュージョンやってます、なんてこの人には言えないよ。 サオリさんの目がきらりと光った。 「そう・・、詳しくは聞かないけど、いろいろなお店があるわ。危ない仕事はしないでね」 「無茶はしません。彼を信じて頑張ります」 「分かった」 サオリさんは笑って手を握ってくれた。 「じゃあ何も言わない! 自分の信じた道を進むのよ、メルちゃん」 「はい!」 6. 「くのいちの拷問とは考えたもんでんなぁ。客の評判は上々でしたで」 クラブのマネージャーが言った。 ガッチーと名乗る不思議な関西弁を喋るおじさんだった。 あたしとコースケは先週のステージの評価を聞きに来たのだった。 「来月も頼みますわ。それも好評やったら出演枠を毎週とる、ちゅうことで」 やった! あたしはコースケとガッツポーズをする。 「・・まぁ、できたら、できたらでよろしおまっけど、次は、もちょっと過激にしてくれたら、ええかもしれませんな」 「過激に、ですか?」コースケが聞く。 「過激に、ですわ。そちらのメルさんでしたか、可愛い顔やさかいグロな演出やったら喜ばれますわ。エロでもよろしいけど」 「分かりました、やります。まかせてください」 彼が胸を叩いた。 グロかエロって、あたしがやるんだよね。 コースケ、大丈夫? 安請け合いしちゃっても。 7. 東京から車で2時間の高原。 そこは小さな湖に面したキャンプ場だった。 次の出演が決まったお祝いに、あたしとコースケは二人でゆっくり過ごそうとやってきた。 キャンプなんて面倒くさいし汚れるからホテルがいいと言ったあたしに、大人気の絶景キャンプ場だから行こうと誘ったのはコースケだ。 「・・誰もいないじゃないの」 「あれ? おっかしいなぁ~。平日は空いてるのかなぁ~?」 「コースケ、知ってたんでしょ」 「わはははっ、まあいいじゃねーか」 「こんな寂しいところで二人だけなんて、どういうつもりよ!」 「誰もいなけりゃ、エッチし放題だぜ」 「え」 「ほら、今夜は晴れてるし、外でするってのはどう?」 これで喜ぶんだから、我ながら単純な女だと思う。 コースケはキャンプの料理も上手だった。 フライパンで焼いたピザとペンネ、チキンとキノコのホイル焼きを食べるとお腹いっぱいになった。 「マシュマロ、焼けたぜ」 「わ、食べるぅ」 パチパチ燃える火を前に並んで座っていると自然といい雰囲気になる。 あたしが身を寄せると彼が肩を抱いてくれたりして。 「キャンプも悪くないだろ?」 「うん、バカにしてごめんね。・・今度はノコも連れて来たいな」 「ああ、あの子なら喜ぶだろうね」 「見てっ。星がすごーい!」 「おお、まさに満天の星だ」 「こんなにたくさんの星見るの、初めてだよー」 見上げていると、頬に彼の手が添えられた。 顔を向けてキス。 「今日は優しいのね、コースケ」 「俺はいつでも優しいぜ?」「うそ」 「どう? 今なら何されてもいいって気分にならない?」 「そうね。・・いいよ、今なら」 「よっしゃ。じゃ、早速」 へ? コースケは立ち上がると暗がりの中を歩いていった。 もう、せっかくロマンチックな雰囲気だったのに。 バタン! あれは車のハッチバックの音。 「お待たせ~」 「何、そのキャリーケース」「見てな」 コースケはポケットから鍵を出すとキャリーケースの蓋を開けた。 大きな塊がごろんと転がり出た。 サージカルテープでぐるぐる巻きにされた布の袋だった。 テープを剥がして袋の口を開くと、中に膝を抱えて小さくなった女の子が入っていた。 「ノコ!!」 「えへへ。こんばんわぁ、メルさん」 「あんた、いつから」「えっと、朝からですぅ」 朝から? じゃ、あたし達がドライブして、ランチ食べて、コスモス園行って、それからえ~っと、ともかくいろいろしてる間、ずっと!? 「はいっ、頑張りましたぁ」 「水分補給も兼ねてカロリーゼリー持たせてたから問題ないぜ。トイレは無理だけど」 「私、漏らしたりしてませんよぉ。エライでしょ? ・・そろそろ限界ですけど」 「その袋は防水だよ。中でやっちゃって構わないって言っただろう?」 「女の子なのに、そんなことできませんっ。それに私、メルさんのためならボーコー炎になってもいいんです」 「そーいう問題じゃないでしょ!」 ともかくノコを袋から出して、トイレに行かせる。 ノコは裸で汗まみれだった。 「着るものあるの? それじゃ風邪引くわ」 「大丈夫です。メルさんに暖めてもらいますから」 「え? きゃっ」 やおらノコはあたしの服を脱がせ始めた。 「コースケ! 笑って見てないで何とかしてっ」 「俺、ノコちゃんの味方」「え~っ」 コースケは全裸になったあたしとノコを向かい合って密着させた。 反物のように巻いた布を出してくると、あたし達の首から下に巻き始めた。 とても薄くてゴムのように伸びる布だった。 きゅ、きゅ、きゅ。 弾力のある布が肌を絞め付ける。 き、気持ちいいじゃない。 「マミープレイに使う布だよ。メルはぎゅっと包まれるのが好きだろ? 性的な意味で」 「性的な意味は余計っ。・・否定、しないけど」 肩と肘、手首まで布に包まれる。 これ自力じゃ絶対に抜けられない。 「おっと、これを忘れてた」 あたしとノコの股間にU字形の器具が挿し込まれた。 「ちょっと重いから落ちないようにしっかり締めててね、ノコちゃん」 「はい!」 ノコ、何でそんな殊勝に応じるの。 やがて布はあたし達の膝から足首まで巻かれ、さらに二重、三重に巻かれた。 「口開けて、メル」「んっ」 コースケはあたしの口にハンドタオルを押し込んで上からガムテを貼った。 猿轡、あたしだけ!? 「よっしゃ、頭も巻くぞ」 あたし達は首から上も布を巻かれて一つの塊になった。 そのまま地面に転がされる。 「いいねぇ、女体ミイラ」 布の巻き具合とあたし達の呼吸を確認すると、コースケはおごそかに宣言する。 「二人揃ってイクまで放置。時間無制限」 えええ~っ!? 「俺は君らを肴にホットウイスキーでも飲んでるわ」 8. まったく動けなかった。 動けないけれど、女の子二人で肌を合わせて強く巻かれているのは気持ちよかった。 ちょっと息が苦しいのはノコの巨乳があたしの胸を圧迫するせい。 まあ仕方ないわね。 「メルさぁん♥」 耳元でノコが甘い声を出した。 あたし達は頬と頬を密着させた状態で固定されているから、この子の声は耳元で聞こえるんだ。 ぺろ。ぞくぞくぅ! 「んんっ、んんん~っ!!(ひぃっ、耳を舐めるな~!!)」 思わずのけ反ると、股間のU字器具が膣壁を刺激した。 「ひゃん!」「ん~っ!(ひゃんっ!)」。 あたしとノコは同時に悲鳴を上げる。 これ、うっかり力を入れるとヤバい・・。 ぶーんっ。 そのU字器具が振動を開始した。 「あぁ~んっ!!」「んんっ~ん!!!」 双頭バイブっ!? コースケめ、仕込んだなぁ!!! ノコがびくびく震え、同期してあたしもびくびく震えた。 膣(なか)で暴れるバイブは的確にGスポットを突いた。 耐えられずに下半身に力を入れると、それは刺激となって相手のGスポットに伝わる。 そしてさらに大きな刺激が返ってきて、こちらのGスポットをいっそう強く責めるのだった。 「はん! はん! はぁんっ!!!」「ん! ん! んん~んっ!!!」 コースケは双頭バイブのリモコンを気ままに操作した。 あたし達は震え、もがき、快感を増幅し合った。 イキそうになる前にバイブは停止して、その度に二人とも半狂乱になった。 疲れ果てたけれど、眠ることも休むこともできなかった。 あたしもノコも被虐の嵐の中をどこまでも堕ちた。 明け方近くになってコースケはようやくイクことを許してくれた。 ノコが声にならない声を上げて動かなくなり、それを見てあたしも安心して絶頂を迎え、そして意識を失った。 とても幸福だった。 朝ご飯の後、コースケが撮影した動画を見せてもらった。 スマホの画面の中で、あたし達を包んだミイラがまるで生き物のようにびくびく跳ねまわっていた。 9. クラブからさらに過激なネタと求められて、コースケは新しいイリュージョンを準備した。 機材の費用はクラブが出してくれるという。 続けて出演契約できたら、という条件だけどね。 「どう? いける?」「大丈夫、いけるよ」 あたしは新調したガラス箱に入って具合を確かめている。 クリスタルボックスに似ているけれど、幅と高さの内寸が50センチずつしかないから中で身を起こすことはできない。 高価な耐熱強化ガラスで作った箱だった。 絶対に成功させないといけないよね。 「じゃ、隠れて」「分かった」 あたしは底の扉を開けて、その下に滑り込んだ。 燃え盛る火の下でも安全に過ごせる隠れ場所。 「蓋、浮いてるぞ」「え、閉まってない?」 「太っただろ、メル」「失礼ねーっ。バストが大きくなったの!」 「そりゃあり得ねー」「言ったわねー。なら今夜確かめる?」「よし、徹底的に確かめてやる」 軽口を叩き合いながら、あたしは自分の位置を調整する。 「ごめん、一度押さえてくれる」「おっしゃ」 ぎゅ。かちゃり。 仰向けになったあたしを押さる天板が下がって、あたしはネタ場の空間にぴたりとはまり込んだ。 「どう?」「気持ちいい」 「何だよそれ。・・浸ってないで、とっとと出てこい」 「もうちょっと」 「あのねぇ~」 それからあたし達は次のステージの構成を決めて、ネタの練習を続けた。 10. 次のショーの本番当日。 「ノコ、何であんたがここにいるのよ」 「えへへ。私も手伝いに来ました」 控室にはノコがいた。 コースケと同じ黒い忍者の装束で顔に覆面をしていた。 「あんたもコットンケーキ辞めさせられちゃうよ」 「大丈夫です。ちゃんと顔隠してやりますから」 「それでバレないほど甘くないと思うけど」 「やらせてやれよ。ノコちゃんも覚悟して来てるんだ」 コースケが言うなら、とあたしはノコのアシスタントを認めた。 アシスタントと言ってもノコは黒子で機材の出し入れなどを手伝う役だ。 「・・御崎メルさん、来客です。フロアへどうぞ」「あ、はい!」 来客? 客席に行くと、そこにはセクシーなイブニングドレスの女性が待っていた。 「サオリさん!! どうしてここに!?」 「コットンケーキのリーダーが秘密クラブのメンバーだったらいけない?」 「いけなくはないけど・・、驚きました」 「ショーのプログラムに『Kosuke & Meru』ってあって、もしやと思って来たらやっぱり貴女だったのね」 「知られちゃったんですね。恥ずかしいです」 「いいのわ。わたし、今日はすごく楽しみにしてるんだから」「?」 サオリさんは微笑んだ。今まで見たことのないくらい色っぽい微笑み方だった。 「ここでやるってことは、メルちゃん、きっと可哀想な目に会うんでしょ?」 「え」 「正直に言うとね、女の子が酷いことされるのが大好きなの。拷問されたり、無理矢理犯されたり」 「・・サオリさん、やっぱりSだったんですか」 コットンケーキ時代、サオリさんの指導がとても厳しかったのを思い出した。 あたし達後輩はいつも泣かされて、このドS!とか思ったものだった。 「うふふ。逆かもしれないわよ」 サオリさんは笑っている。 「ま、まさか、ドM!?」 「わたしのことはいいじゃない。ステージ、怪我しないよう頑張ってね!」 「・・はいっ」 控室に戻り、ノコに「サオリさんが来てる」と伝えた。 「ぎょぼ!」 何、その驚き方は。 11. 〇 緊縛木箱と性感責め スポットライトの中に黒忍者のコースケと黒子のノコが登場した。 テーブルを出して、その上に空の木箱を置いた。 すぐに木箱を持ち上げると、テーブルの上にはくのいちのあたしがうつ伏せになって縄で全身を縛られていた。 衣装は先月のステージと同じ赤い上衣にショートパンツと網タイツだけど、ブーツと覆面は着けていない。 その代わり最初から口に縄を噛ませて猿轡をされている。 緊縛はタネも仕掛けもない本物だった。 背中に捩じり上げてほぼ直角に交差させた両手首と二の腕、胸の上下を絞め上げる高手小手縛り。 両足は膝と足首を縛り、後ろに強く引かれて背中の縄に連結されている。 決して楽じゃないホッグタイの逆海老縛り。 ショーが始まる前からこの姿勢で木箱に仕込まれていたのである。 黒忍者はくのいちの足首の縄を首の方向へ強く引いた。 テーブルについた顎に体重がかかる。 さらにその状態で太ももの間に手が侵入し、突き当りの部分が激しく揉み込まれた。 ・・くっ! あたしは両目をぎゅっと閉じて恥辱に耐える。 きついけど、これはまだまだ序盤なんだ。 今度のショーではお客様の前で性的な責めを受ける。 コースケは本気で責め、あたしは本気で苦しみ本気で感じる。 二人で決めたシナリオだった。 やがて膝と足首の縄が解かれ、右足と左足を黒忍者と黒子が掴んで開かせた。 逆海老の後は180度に近い開脚。 黒忍者は苦無(くない:忍者が使う短刀)を持ち、先端をくのいちの股間に突き立てる。 ショートパンツが破れない程度に突くけれど、それでも確実に女の敏感な部分が責められている。 「ん、あああああ~っ!!」 ・・耐えられずに声が出た。 あたしは喘ぎながら身を震わせる。 完全に被虐モードだった。じっと忍ぶ力なんて残っていない。 スポットライトに照らされて光る粘液がテーブルを濡らす様子が客席からも見えたはずだ。 〇 鞭打ちレビテーション ぐったり動かなくなったくのいちに大きな布が被せられた。 テーブルの後ろに黒忍者が立ち、両手で持ち上げる仕草をすると、布に覆われたくのいちがゆっくり上昇した。 2メートルほどに高さに浮かんだところで、黒忍者は一本鞭を手にする。 振りかぶって布の上からくのいちを打つ。 ぴしり。「あっ!」 鞭の音と呻き声が聞こえた。 ぴしり。「んっ!」 ぴしり。「んんっ!」 ぴしり。「んあっ!」 ぴしり。「ああーっ!!」 5度目の鞭打ちで布がずれ落ちた。 ・・この鞭打ちにも一切タネがない。 布が被せられているとはいえ、あたしはコースケの鞭を本当に受けている。 絶対に逃げられない拷問。 「女の子が酷いことされるのが大好きなの。拷問されたり、無理矢理犯されたり・・」 さっき聞いたサオリさんの言葉が蘇った。 あたし、本当に酷いことされてる! 鞭で布が落ちると、そこには高手小手で縛られたくのいちが浮かんでいた。 黒忍者は両手を振って���ーブルの上にくのいちを降下させた。 もう一度布を被せ直して、再び浮上させる。 鞭打ちが再開された。 ぴしり。「あぁっ!」 ぴしり。「んん~っ!!」 黒忍者は鞭を置くと、宙に浮かぶ布の端を掴んで引き下ろした。 ばさっ。 そこにあったはずの女体は消えてなくなっていた。 〇 ミイラ短剣刺し ステージ全体が明るくなった。 隅の方に敷かれていた黒布がむくむく膨み、中からくのいちが立ち上がった。 猿轡は外れていたけれど、高手小手の緊縛はそのままだった。 その場から逃げようとするが、黒忍者が両手を合わせて呪文を唱えると、何かに固められたかのように動けなくなって黒子に捕らえられた。 黒忍者は反物のように巻いた布を持ってきた。 これはあのキャンプで使った薄くて弾力のある布だった。 その布をくのいちの頭から足先までぐるぐる巻きつけた。 薄手の布の下にはくのいちの顔が透けて見えていたけれど、何重も巻くうちに見なくなって、全体が白っぽいミイラになった。 くのいちのミイラは床に転がされた。 黒忍者は短剣を持って掲げる。刃渡り10センチほどの銀色の短剣だった。 やおらその短剣をミイラのお腹に突き刺した。 「きゃあっ!!」激しい悲鳴。 さらに3本の短剣を出して、胸の上下と顔面に刺す。 ミイラは1本1本刺される度に悲鳴を上げてびくびく跳ね、短剣を突き立てた箇所には真っ赤な染みが広がった。 〇 ガラスの棺 透明な箱が登場する。 細長い棺(ひつぎ)のような形状をしていて、人が入るとしたら横たわるしかない大きさだった。 黒忍者はミイラから短剣を抜き、肩に担いで棺の中に入れた。 黒子が蓋をして南京錠の鍵を掛ける。 黒忍者は松明(たいまつ)に火を点けた。 照明が消えて真っ暗になった。 ステージの明かりは黒忍者が持つ松明だけである。 黒忍者は棺のまわりを歩きながら、松明で棺の中を照らした。 すると、何と、棺のミイラが燃え始めた! その火は次第に大きくなって、棺の中いっぱいに燃え広がった。 わっ。観客がざわつく。 一瞬だけ、棺の中にくのいちが見えたのだ。 しかしすぐにその姿は炎の中に消えてなくなってしまった。 ・・ヤバい!! あたしは棺の底に背中をつけて隠し扉を開けようとしていた。 ガチで両手を縛られているから動かせるのは指先だけだった。 その指に、あるはずの扉のフックが掛からない。 見つからないっ、見つからないよ!! 網タイツの足がちりちり焼け始めた。 火が小さくなって静かに消えた。 やがて照明が点いてステージが明るくなる。 黒忍者と黒子が棺の前後を持ち、斜めに傾けて中身を客席に向けた。 皆が目をこらした。 棺の中は黒い粉が溜まっているだけで、その他は何も入っていなかった。 くのいちの女の子は灰になってしまったのだろうか? 黒忍者が客席の後方を指差す。 黒子がほっとしたように両手を叩いた。 そこにはくのいちが立っていた。 忍者の衣装は灰で黒くなり、網タイツは焼けて穴が開きその下は赤くただれていた。 ・・あたしはステージに向かって走っていった。 ふらふらしながら、どうにか倒れずにすんだ。 拍手の中、揃って頭を下げる。 うずうずした。 お客さんの前だけど、もう我慢できない! あたしはその場でコースケに抱きついた。 黒忍者とくのいちはそのまま長いキスをした。 12. 喫茶店。 あたしはサオリさんと向かい合って座っていた。 「怪我したって本当?」 「火傷しただけです。脚に痕が残りますけど」 「可哀想に・・」 「大丈夫です。イリュージョンするのに問題ありません」 生足を出すのはちょっと難しいけどね。 「クラブの仕事はどうするの?」 「続けます。ただ、出演は減らそうって彼と相談してます」 「それがいいかもね。クラブを辞めないのなら、わたしはメルちゃんが苦しむシーンをこれからも楽しめるし」 「サオリさん、それ酷いですよ」 「あはは。じゃあ、今度はわたしが苦しんでみましょうか」 「見たい! でもいいんですか? コットンケーキのリーダーがそんなことして」 「コットンケーキでやればいいんでしょ? 拷問イリュージョン」 「まさか本気で言ってませんよね?」 「半分本気よ。ノコちゃんもやりたいって言ってるしね。貴女達のネタ見て興奮してるみたい」 「ぎょぼ!! 知ってたんですか、あの子のこと」 「リーダーを舐めちゃダメよ。そのときはメルちゃんもゲストで参加してくれる?」 「はい!」 13. 椅子に座ったあたしにコースケが黒い布を被せた。 「さあ、皆さま、ここに黒布に包まれたくのいちが一人!」 あたしは布の下から両手を前に出してひらひら振ってみせる。 「はい!」 真上から頭を叩かれた。ぱすっ。 「おおっ」「きゃっ!」 驚きの声が聞こえる。 あたしの頭はぺたりと潰れて、肩の高さで平らになってしまったのだった。 ここは公園。 あたしとコースケは通行人の前でイリュージョンをしていた。 赤と黒の忍者装束。 ノコはスマホの撮影担当で、ときにはネタの手伝いもしてくれている。 動画サイトに上げた『Kosuke & Meru のニンジャ・イリュージョン』は少しずつ閲覧回数が増えて、ほんの少しだけど収益を出すようになってきた。 「では、最後のイリュージョン!」 コースケはあたしの身体に布を巻き始めた。 薄くて弾力のある布を何重にも巻いて、あたしをミイラにする。 全身をきゅっと締められる感覚。 その気持ちよさにきゅんと濡れてしまいそうだ。 コースケは別の大きな黒布をあたしの上に被せた。 「はい!」 その黒布はふわりと広がって地面に落ちた。 あれ? 黒布を上げると、そこにはミイラに巻いていた薄い布だけが解けて落ちていた。 中身の女性はどこに消えたの? おおーっ。パチパチ! 一斉に起こる拍手。 その音をあたしは地面に置いたトランクの中で聞く。 今日も大成功ねっ。 この後、あたしはトランクに入ったまま帰ることになる。 荷物になって運ばれるのは悪い気分じゃない。 今夜はノコも一緒に過ごすことになっているから、またきっと酷い目に会うだろう。 「・・酷い目に会う女の子が大好きなの」サオリさんのセリフ。 あたしも大好きです。 ほのかな性感と被虐感に満たされた。 狭いトランクの中で回収されるのを待ちながら、あたしは甘くトロトロした時間を過ごすのだった。
~ 登場人物紹介 ~ 御崎芽瑠(みさきめる):25才。コースケとイリュージョンの新しい仕事を始める。イリュージョンチーム「コットンケーキ」元メンバー。 谷孝輔(たにこうすけ):30才。フリーのマジシャン。メルの恋人。 ノコ : 22才。コットンケーキの現役メンバー。メルのペット。 サオリ : コットンケーキのリーダー。30台半ばくらい。 前作 でコースケに誘われたメルが彼と一緒に頑張るお話です。 布や袋を使うというお題で拷問イリュージョン。 短剣をぶすぶす刺したり、火で燃やしたり、女の子は最初から最後までずっと緊縛されているとか、いろいろ楽しませてもらいました。 無茶といえば無茶ですが、ここはメルちゃんの精神力がスゴイから可能ということにしておきましょうww。 この先コースケくんとメルちゃんは秘密クラブとユーチューバーの二足の草鞋(わらじ)で生きるのでしょうか。 それともどこかで名を売ってメジャーなイリュージョニストになるのでしょうか。 くのいちイリュージョンのお話はこれで終了しますが、機会があればいつか描いてあげたい気もします。 (お約束はしませんよ~) 挿絵の画像はいただきものです。 黒布の下には実際に女性が椅子に座っています。 2枚目は分かりにくいですが、椅子に座った女性に向かい合ってもう一人女性が膝立ちになっています。 ノコちゃんがメルを責めるシーンはこの写真に合わせて書かせていただきました。 それではまた、 ありがとうございました。 # このコロナ禍中、皆さまの健康とお仕事/商売が無事であるよう祈っております。
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tokonishipeko · 2 years
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新しい仲間がきた✨ たち耳スコちゃん #すこてぃっしゅふぉーるど #スコティッシュフォールド子猫 #すこてぃっしゅふぉーるど立ち耳 #ねこ#猫写真好きな人と繋がりたい #ねこのきもち#ねこすたぐらむ #ペットショップ#オレンジ・ペコ#所沢西 #アニコム損保 https://www.instagram.com/p/Cb1bTCNv0Sb/?utm_medium=tumblr
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nanaintheblue · 4 years
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冬凪 バスを降りて歩きだした途端、「景一ぃい」とけたたましい声がした。初音がコンビニから飛びだしてくる。 「おかえり。レジ並んでたら景一歩いてくるんだもん、鬼ダッシュかましてきちゃった」きひ、と大胆に飛び出た八重歯を覗かせて笑う。なぜか彼女の髪は濡れていた。水泳部でもないのに。 しかもいまは真冬だ。初音の家はこのコンビニの真上のマンションとはいえ、男物のようにぶかっとしたサイズのニットにひらひらした素材のロングスカートとつっかけだった。 「手ぶらじゃん。レジ並んでる途中で出てきた?」 「うん。ちゃんと棚に戻してから来たよ。えらい?」 「はぁ」 初音は「百三十円」と言った。「あとさーアイスも買ってくんない? 熱くてさあ」 「おまえ、俺に払わせるためにわざわざ出てきたのかよ」 「そう!」 臆面もなく笑う。小学生のときからの腐れ縁で、高校も同じ初音は遠慮と言うものを知らない。ドラクエのレベル上げといて、教科書貸して、おつりあげるから購買でやきそばパンとリプトンのレモンティー買ってきて、使い走りを断るのもかったるかったので「へいへい」とのんでいたが、いちど、夏に「景一、体操服貸して」と教室まで来たときはさすがにあきれてものを言えなかった。 「女子に借りりゃいいだろ」 「えー? だってこの天気でリレーだよ? 超汗臭くなるし。気ぃ遣うじゃん。短パンはあるからさ、半袖だけ貸して」 クラスメイトの連中がにやにやしながらやりとりに耳をそばだてているのを存分に感じながら、結局貸してしまった。却ってきた半袖を午後ひっかぶった際、嗅ぐつもりはもちろん毛頭なかったが、シーブリーズの原液みたいな濃い匂いがぶわっと鼻の粘膜を襲った。むせすぎて子供以来の喘息の発作を起こすかと思った。それを非難すると、初音は手を叩いてキャッキャとはしゃいだ。 「えーまじか。ウケる、ごめん。汗の匂い、ごまかそうと思ってさあ」 「だからって直接ぶっかけるやつがいるか。ファブリーズじゃねえんだぞ」 俺が文句を言っても初音はへらっと笑うだけだ。そのくせ、自分は友だちが風邪を引いたらノートのコピーや課題を届けたり(そのコピーは俺がコンビニで自分のを印刷してやったもの)部活でトラブルを起こした後輩をなだめすかして顧問のところに謝りに行くのについて行ってやったり(なんでそんなことを知っているのかと言えば「矢崎先生呼んできてよ、いま鬼怒ってるから怖くて行けない」と職員室で数学を聞きに行った帰りに俺が初音に捕まったから)、そこそこまめで世話好きなので体面はわりかし良かったりする。勉強は大してできないくせに学級委員に選ばれてそこそこまじめに行事を仕切れるタイプなので内申点だけで俺と同じ高校に進み、予想はついていたものの「ねーこの問題解いて、明日板書当たってる」「やばい英語の予習忘れてた、写さして」とバスで後ろから突かれたり、何かと便利屋使いされている。 「暑いって、今日雪降ってんだぞ」 「うるさいなあ。いいからガリガリ君買って、ソーダ味」 よりにもよってこのクソ寒いなか、歯を立てた途端身体じゅうがそそけ立ちそうなアイスをねだる初音に、「買ってもらうやつの態度か。もっと媚びろよ」と言った。 「お願いします景一様、みじめな初音どんに買ってやってくだせぇ」 「プライドねえな。さみぃから早く入るぞ」 「よっしゃあ」 女子高生とは思えないがに股歩きでさかさかコンビニに吸い込まれていく。C.Cレモンとガリガリ君、あと自分のぶんのからあげ棒をレジに持っていくと、キリシトールガムまで直前にねじ込んできた。「572円です」と外人の店員が棒読みで読み上げる。 「あんがとぉ」 コンビニを出たとたん、初音はアイスの袋を剥き、霜のついたアイスを勢いよく齧った。見ているだけで寒気がして、からあげ棒にかじりつく。無難にうまい。 「っていうか、なんで真冬にアイスとジュースなんだよ。空気読んで肉まんとおしるこでも飲んどけよ」 初音は「えー」となぜかにやにやしている。溶けた水色の露が顎をぬうと伝ったので、子供かよ、と思わず眉を顰めた。「ティッシュで拭け。乾いたあとネタネタになるぞ」 「何そのキモい擬音。ネチャネチャでしょ普通」 「どっちにしろキモいし高二になってアイスの汁垂らしてる初音が悪いだろ」 「アイスの汁とか、ますます景一、キモい」 あーうま、と信じられないスピードでガリガリ君を咀嚼して、棒を俺が持っていたレジ袋に突っ込む。「歯、沁みないの?」と問うと「超沁みるけど、それがいいんじゃない?」となぜか低い素の声で肩をすくめ、C.Cレモンの蓋を勢いよく回した。 「そういやなんで風呂上がりなんだよ」 ぷしゅ、と炭酸が間抜けな音を立てて抜ける。 「え? それ聞いちゃう?」 「なんだよ」 初音がにやにやしながら上目遣いをする。一重まぶたの初音がする上目遣いは三白眼になるので、可愛いとかどきっとするとか以前に、爬虫類みたいで大層まぬけだ。教えてやろうか悩んでかれこれ二年半、面白いので結局教えていない。 同い年の女子におまえ風呂上がり?って訊くのってそんなにタブーか? セクハラくさいか? 確かに隣の席になってから一回も口を利いていない篠原佐代子さんに「あれ篠原さん朝シャンしてきた?」って訊くのはなんかだいぶやばい、でもこいつ初音だし、「生理まじだるい、景一頭痛薬持ってない? 痛み止め忘れてきてさあ」と朝からデカい声でバス停で話しかけてくるような女子だし。 「さっき戸嶋くん家に呼んでエッチしちゃった」 きゃはは、と甲高い声がコンビニの駐車場に響き渡る。俺は茫然と、見つめた。俺と、初音の間にある空気のもやつき、みたいなものを。 こいつ、何言ってるんだ。 「あれ、景一、戸嶋くんと同じクラスなったことなかったけ? バスケ部で副部長で、坊主の人」 俺の沈黙を勘違いした初音はしゃあしゃあと説明している。沈黙ではなく明らかに絶句なのに、恥ずかしがったり焦ることもなくあくまで。初音の口調は平常運転だ。 「知ってる、でもおまえ付き合ってるやついまいないってこないだ言ってたばっかだろ、つか昨日だし、その会話したの」 かろうじて声をしぼりだす。ふるえそうになるのを押さえつけようとすると、オタクの早口みたいな不自然なしゃべりかたになった。 「え? うん。べつに付き合ってないよ。あれ? もしかして景一知らない?」 何が、と訊く前に初音は「あれー、まじかぁ」「もしかして三組の人に認知されてないのかな、わたし」などとぶつくさ呟く。そして、ふいに顔を上げ、言う。 「わたしさ、結構誰とでもしちゃうんだよね。戸嶋くんのことも、べつに好きってわけじゃないんだけどさ」 あっはっは、と豪快に笑う初音の口から、ぶはっと白い息が空気砲のように飛びだし、灰青い空気中に消える。俺は「はぁ」と情けない感想しか出てこなかった。俺は、普通に童貞だった。 「だから、暑くて。アイス買おうと思ったら景一いて、ラッキー」 天を向いて、C.Cレモンをぐびぐびと飲む。アイスが顎に垂れているときは何も思わなかったのに、白い喉が剥きだしになって小さく波打つのを目にしてなぜか血液がかっと一か所に向かって集まるのを感じた。 陽が落ちて、藍色のガラスのコップにオレンジジュースを一センチだけ残したみたいな空が建物の隙間から覗いていた。 ――結構誰とでもしちゃうんだよね。はぁ。じゃねえだろはぁじゃ。「バカかおまえは」とか「何普通にそんなことしゃべってんの、意味不明だよ怖えよ」くらい言えよ。 夕食を食べ終わったあと、風呂場でシャンプーを流していると初音のことがよぎり、顔があつくなった。うそだ。本当は、「じゃあねえ。ごちそうさまっ」と初音がマンションの自動ドアに吸い込まれいくちっこい後ろ姿を見送って帰路について、部屋着に着替え、トンカツを家族で食べ、弟に付き合ってバラエティを見い見い英語の文法の予習をしているあいだじゅう、頭のなかでどでかいかなづちで銅鑼を鳴らされつづけているがごとく、初音の声が頭から離れなかった。 誰とでも、やる。そういう種類の女がこの世に存在することは、まあ深夜の十時以降に自分ひとりだけでひそかに視聴している芸人のトーク番組やAVのたぐいで知っている。だとしても、少なくとも遠いおとなたちの間の都市伝説みたいなものだと思っていた。まさか自分の幼馴染が、下卑た男が語る、いわゆる――ヤリマンだのビッチだのと呼ばれ、ありがたがられたり揶揄されたりする女と同じ種類の女、だなんて想像できるはずがない。 まったく知らなかった。あいつビッチなのか? いつから? みんな知ってんのか? 知ってて止めないのか? っていうかなんで俺は知らなかったんだ? 初音がちょいちょい誰かと付き合っていたことは、いちいち聞かされるので知っている。若干離れ気味のたれ目、子供みたいにちいさな鼻と笑うと八重歯が豪快に覗く大きな口。顔の造形はともかく前髪をだいたいいつも眉上に切っているため「お調子者」感が漂うちびな女子、ってところだが、中学のときから彼氏は何人かいたはずだ。性格が明るいので、一定の層からは支持されている。 初音がうちの教室にくるたびに、いつもつるんでいる連中からは「来たぞいいなずけ」などとひやかされるが、太一か誰かが「子だぬきっぽいよな」と言っていた。「下手にアイドル扱いされる女子よりああいうタイプがすぐ彼氏できるんだよね」と一番ちゃらい野田が冷静に呟いていたのを、ふーん、と聞き流したのも覚えている。 誰とでもしちゃうんだよね��てなんだよそれ。意味わかんねえ、それなんかメリットあんのかよ、おまえそんなキャラじゃねえだろ、ヤンキーの森田とか入学して即ヤリチンの三年と付き合ってた爆乳の松坂とか、もし初音がああいうのだったら俺だって「避妊はしとけよ」とか茶化せたかもしんないけど、いやそういうの失礼か、あー、まじか。あー。いつも初音といっしょにいる吹部の女子とか、知っててつるんでるのか? 「やめなよ」とか言ってやんないのか? 性器がわずかに持ち上がっているのに気づかないふりをして、湯舟に浸かった。欲情しているのではなく、そういう生理だった。 猥談くらいなら普通な程度にするし、中学のときはバカだったのでの「今週のヤンマガのグラビアで何回抜けるか」という超絶くだらない大会に参加して実際より一回自己申告する、みたいなアホな遊びに興じていた。つまりとても純粋で健康でまっとうな男子なわけだ。 ――俺がそういうくだらないことをして遊んでる間に、あいつ、処女捨ててたんだな。 初音の濡れた髪がぺたっと額に張りついて不揃いな鍵盤みたいになっていたのを思いだす。冬の陽がわずかな余力で彼女の頬のうぶげを照らすのを、話の衝撃に脳をぶんなぐられながらも俺は綺麗だと思ったのだった。 次の日、たまたま日直担当だったので、放課後残って日誌を書いた。手元がかげったかと思ったら、真だった。 「あー、窪田日直か。明日の予習してんなら見せてもらおうかと思って」 「おまえまで初音みたいなこと言うなよ」 昨日からずっと初音のことばかり考えていたので、思わずそんな返事が飛び出て赤面した。やいのやいの言われるので、からかわれることはあっても自分からわざわざ言ったことはいちどもない。異性の幼なじみのことをアピールして、ろくなことになるはずがない。 「え、何。ああ野原さんの? なんでいきなり」 さいわい、真はこういうときここぞとばかり突っ込んでいじり倒してくるタイプではなかったので、ほがらかに笑っているだけだった。内心ほっとして、「ごめん、あいつ予習よくたかってくるから」とごまかした。 「そういや真って初音と同じクラスだったよな、去年」 「え? ああ、二組だったから」 どこから話をしたら初音が男としまくっていることにつながるのだろうか。逆算しながら話題の進路を探る。 「一年のとき、野球部の誰かと付き合ってなかったけ。あの、ごつい感じの」 「あー。あったあった、まだ高校入ったばっかで、まだあんまりクラスにカップルいなかった頃だったから覚えてるわ。でもあの人、いろんな人と噂あるからなぁ」  真一から思いがけず反応があり、心臓がぐっと跳ねる。 「それってちゃんと付き合ってた?」 「いや~。それはおまえの方がくわしいんじゃん?」  真一が歯をこぼして下卑たふうに笑う。知ってるんだな、と思った。すう、と息を吐いてひと息で言う。 「俺さ。マジでしらなかったんだけどいつからそうなった?」 「は? そうなった、って何」っていうか窪田目が怖えよ、と真一が身を引いた。 言葉をどう選んで表現すればいいかわからず、迷っていると「あの人が500円で誰とでもやってる、って話のこと指してる?」と真一が声を低めて言った。血が逆流するかと思った。 「500円のくだりはいま初めて聞いたけど、誰とでもみたいなのを、昨日本人から聞いた」「えーマジ? 有名すぎてもはや誰も噂してねえよ。一年の時にバーッて拡散して、止まったって感じだと思う」  力が抜けた。第三者に認められたことによって、初音の悪い冗談、という説は粉々にぶっ壊れた。本当は、信じられなかったのだ。 「俺八組だったけど、みんな知ってたんかな」 【今週模試があるので数学に力を入れて対策しようと思います】と書いて尻切れとんぼになっている間抜けな日誌に目を落とす。「お前、野原さんと仲良いからかえって言いづらかったんじゃないの」と真が慰めるように言った。 「俺もそんなくわしいとかじゃないけど、いまは後輩からも声かかってくるらしい。ワンコインセックス、つってやっぱ下の学年でも話題になってたらしいな、一時期」 「ふざけんなよ、なんだよワンコインって。ばっかじゃねえの」 大声を上げた俺に、真はびくっと肩を揺らした。何人かがこっちを見ている。ごめん、と謝った。真に当たってもしょうがないのはわかっていても、憤りを感じずにはいられなかった。真は、感情を露わにする俺を見て憐れむような目をして肩をすくめた。 「なんなんだろうな、べつに病んでるとかそういうんでもなさそうな人がやってるから、俺も聞いたとき信じられなかったよ。でもまあ仲いくても男子と女子だったら、言えないよな。あんまり」 もっと知りたいという気持ちと、これ以上聞いても絶望するだけだという気持ちがないまぜになり、曖昧に笑った。 でもどうして初音は俺のところに来つづけるのだろう。 初音は、俺が知らないということを知らなかった。あれは演技だったのだろうか。 小中高と友だちが多いイメージのある初音が、いちどだけいじめに遭っていた時期がある。中学三年の春だ。大した理由ではなかったと思う。推薦をもらうために内申点稼ぎをしているのが見え見えだとか、先生の前での返事がいいこぶっているとか、女子中学生にありふれた、でも陰湿ないじめだった。初音の真似、と言いながら「はぁいっ」と身をくねらせながら女子集団が手を叩いて爆笑しているのを見かけたこともある。初音は身をこわばらせて、足早に教室を出て行った。授業を休んで保健室にいたこともあったらしい。小学校が同じだったので口を利きはしたが、中学生だったというのもあって、俺は同じ教室の中で彼女に話しかけたりましてやいじめをする女子をいなすなんて勇気もなかった。くだらないことに時間費やしてんなぁ、と思いながら遠巻きに見ていた。 いじめは数週間で終わり、初音は元のグループには戻らず、同じ高校を目指す真面目な女子のグループとつるむようになった。それ以降授業を休むこともなくなり、教室のなかではがらかに笑うようになった。別に何か働きかけたりしていたわけではなかったにしろ、俺も内心ほっとした。 「景一、理科教えてよ。電気回路のとこ、いまだによ��わかってないんだよね」 がり勉グループ、と揶揄されることもあったぶん、三年の秋ごろには同じ高校を目指す十五、六人は男女関係なく結束が強くなっていた。「初音は推薦だろ。小論文とかやった方がいいんじゃねえの」とやっかみ混じりに言うと、「受かるかは限らないから」と真面目な顔で言うので、断る理由もなく、自習室で並んで教えてやった。 俺は当時、付き合っていた同級生にふられたばかりだった。「高校別れるから」というシンプルな理由で同じ志望校を目指すサッカー部の寺岡に乗り換えられ、しっかり落ち込み、傷ついていた。それなので、教室だの廊下だのでいちゃついている元カノを見たくないがために、初音の「特訓」で気を紛らわせようとした。 「明高の制服ってかわいいよね、わたし絶対あそこのセーラー服着たいんだぁ」 帰り道、家の方向が同じなので結局あの頃はいつもふたりで帰ることが多かった。小学校が同じせいもあって、あまり照れくささや気恥ずかしさ、異性と帰る時の胸の弾み、浮遊感はなかった。こう並べると初音に失礼な感じがするのだけれど、しっくりきすぎて、誰かに見られたらどうしよう、とか彼女でもないのに二人きりで帰るのはちょっと、とか思いもしなかった。初音がどうだったかは、知らない。  受験勉強のあと、不安をごまかすためか初音はよく未来の話をした。電車通学は七時何分のに乗ると乗り換えがちょうどいいとか、テニス部が明高では一番いけてるとか、そういう他愛もない、けれどどこか陽射しを感じる話だった。 とはいえ女子の制服なんかどうでもよかった。俺が「ふーん」という生返事しか寄越さなかったことが不服だったのか、「えーだってブレザーより断然セーラーじゃない? 清楚だし、あとスタイルよく見える気ぃする」とくちびるをとがらせた。 「彼女にするなら絶対セーラーじゃない?」 と、口にしてから初音は「あ」と声を漏らした。迂闊だなあ、と思いながら、俺は「サッカー部のアホなヤンキーと付き合わないようなね」と相槌を打った。言ってしまえばらくだった。 初音はあは、と短く笑って「景一は高校生になったほうがもてる気ぃする。うちの中学ってちゃらちゃらしてるのがもてはやされるけど謎だよね」と言った。あ、いま気遣われてるな、と思うことで照れくささをごまかした。ありがとな、と言えるほどおとなじゃなかったので「おまえはいまがピークかもな」と混ぜっ返した。 「えーなんで⁉ ピークも何もいま彼氏いないしっ」 「前髪がそんな激短いやつ高校にいねえよ」 初音が手提げを振り回して俺の膝のうらっかわあたりを殴った。薄く伸びた、自分たちよりずっと大きな面積の影が後ろにどこまでも伸びていた。受験が目前で不安や悩みは尽きなかったけれど、あの頃が一番単純にまぶしい未来を信じられていた気がする。 部活が終わった後バス亭に並んでいたら、「よっす」とつつかれた。初音だった。ミントのような、緑がかった水色のマフラーに顔が半分うずもれている。 「お疲れー。なんか今日あったかかったね。小春日和ってやつ?」 「それを言うなら春一番じゃねえの」 「あーなんか三月に吹くやつ?」 誤用を指摘されたにもかかわらず、初音は恥じ入るわけでもなくふにゃりと笑った。 「あれだね、もうすぐバレンタインだね」 「あー、うん」 「去年、彼氏にあげたら『俺、ホワイトチョコきらいなんだよね。甘すぎて』って言われたな。ホワイトデー、用意してくれてるのわかってて振っちゃった」 「野球部のやつ?」いつだったか真が言っていた男のことだろうか。初音は困ったように曖昧に首を傾げた。 「よくそんなの知ってるね、恥ずかしい。違うよ、先輩。別れてから知ったんだけど、『彼女』ってわたしだけじゃなかったみたいなんだよねー」 「初音が見境なくなったのはそのトラウマのせい?」 思わず口をついていた。自分が口にした言葉の意味がいまになって頭に反響して、どんと大きく心臓がせり出る。「え」と初音が俺を見上げた。右頬に鉛筆の粉が擦れている。 「……うーん。別にあてつけのつもりはないんだけど、真面目な人だったらこうはなってなかったかもねえ。そりゃーショックで熱出たもん。そんときの模試ぼろぼろだったなあ」 バスが来る。初音のあとについて乗る。一番後ろのシートに座ったので、俺も隣に座った。 「ねー、景一って高校入ってから彼女いたことないの?」 「ない」 「告白されたことは? あとしたことは?」 「……両方一回ずつ」 「マジで? もてるじゃん」 「そうか?」 お前の方がよっぽどもてるだろ、とつづけようとしてやめた。皮肉になりかねない。 でも、本音だった。わざわざ自分の身体をだしにしなくても、初音なら大事にしてくれる彼氏くらいできるはずなのに、どうしてわざわざ自分を貶すのだろう。そういう考え自体が男尊女卑で、初音を貶しているのだろうか。自分の意思で、誰とでもセックスをするらしい、初音を。 ふ、と空気がゆるむ気配があって、隣を見遣ると初音は目の下をふくりと持ち上げて笑っていた。 「ねー景一って」なぜか、次に初音が言おうとしていることが脳に瞬時に浮かび上がった。言うな、と反射的に拒んだが、非常にもそれを初音の声が読み上げる。「童貞?」 冗談の一環として、流せばよかったかもしれない。でも、俺はどうしても初音がゆるせなくなかった。俺は傷ついた子供で、そう発言することしかできない初音もまた傷ついているということなんて、考えられもしなかった。 「おまえさ」 低い声で切り返した。自分でも、高圧的な声だなと思った。持ち上がっていた初音の頬が、中途半端な位置で固まる。 「くだらねえよ。人に優越感持つためにやってんのか、その活動は」 初音はくちびるをふるわせ、目を伏せた。思いがけないほどまつげが長い。 ごめんね、ととても小さな声で言うのが聞こえて、心臓がつぶれるかと思うくらい、ぎゅっと軋んだ。そのままぶざまにひきちぎれて死ねたらいいのに、と思った。黙って自分の膝のあたりを見ていた。 「わたしたちどこで違っちゃったんだろう」 はっと顔を上げる。初音はもう前を向いていて、弱々しくひとりごとを言っていた人の顔などしていなかった。俺の視線を撥ねつけるように背すじをこわばらせて宙をにらんでいた。 バスを降りる。これほど気まずいことなんかない、と思ったけれど、同じ学区なのだから同じバス停で降りるしかないのだった。 さきに降りた初音は、能面のように表情を動かさないで、俺が降りてくるのを待っていた。頬が真っ白だった。 「景一、」 「いいよ、俺、つっかかっただけだから」 謝られるのが怖くて思わず口を挟んだ。初音はわずかに口元をゆるめ、「ううん」と言った。 「景一、ほんとに知らなかったんだね。わたしのこと、男子で知らない人なんていないと思ってた」 「……知らなかったからほんとに俺、びっくりしたよ」 「ごめん。でも、なんか悪くて」 初音の頬に浮いたそばかすが、薄青く浮かびあがる。なんだか星みたいだ、と思った。 「わたし、ちゃんとしてないからさ、景一みたいに」  俺は黙った。そんなこ��ねえよ、と言えたらどれだけ楽だろう。善良で真面目で誠実な人間で、という意味で「ちゃんとして」るわけではなく、ただ黙々と日常を受け入れて高校生をしているという意味で俺は「ちゃんとして」いるし、外れたいとも外れてしまったと感じたこともない。 「早く大学生になりたいな」 ふと、既視感を覚えてまじまじと初音の横顔を見つめる。そうだ、中学生の頃も「早く高校生になりたいな」と呟いていたのだった。 「それ、中三の時もおんなじこと言ってたぞ」 からかうつもりでというより、ほんとうに深いことを考えずにそう言ったのだけれど、初音ははっと口を開けたままかたまった。まるで悪事がばれて母親に見つかった子供みたいに真っ青な顔をして、俺を見上げた。 「わたしって、いつまでわたしのままなんだろ」 ぐしゃ、と初音の顔が歪んだ。真っ白だった顔が、あかんぼうみたいに真っ赤になっていく。泣くだろうか、と思ったけれど、涙はこぼれなかった。だからこそ、初音の表情は痛々しく、心の底からつらいのだろうと思った。 しんどいとき、みじめなとき、自分を嫌いになったとき、さびしいとき、わんわん泣けた方が、よっぽど楽だ。 「もうちょっとしたら、大学生になるんだから、それまでの辛抱だよ」 やっとのことで言った。初音の頭の位置は、抱き寄せれば簡単に俺の胸に収まる位置にあったけれど、俺の手は宙ぶらりんのまま、自分のズボンの横っかわにひっついたりしていた。 「景一は」かすれた声で初音は言った。「わたしと、したい?」 俺は黙った。童貞? とくだらないことを訊いたときは軽薄なかたちにくちびるが笑っていたけれど、初音は少しだって笑ってなんかいなかった。切実な顔をしていた。そして、俺とセックスがしたいとは1ミリも思っていないのに、そう俺に問うているのだとわかった。 「俺とは、そんなことしなくても仲良くできるだろ。だったら、する必要ない」 冷たく聞こえるかもしれない、と思いながら口にした。初音は、また泣くかもしれない、と思ったけれど、はっと口元を引き締め、固まっていた。 「そうだよね」 ゆるゆると融ける雪のように、初音が安堵して微笑んだ。それを見て、もったいないと一瞬思った自分を俺は恥じた。 「そういう男の子とだけ、仲良くすればいいって、わかってるんだけど、やっちゃったほうがらくだから、しちゃうんだよね」 ぽそぽそと歪な小石を並べるように初音が呟く。すこしも理解できなかったが、うん、とうなずいた。俺がクラスの女子とセックスしたところで仲良くはなれない。 「女子には淫乱とかビッチとか陰口叩かれるけど、別に性欲強いわけでもないし。ただもう、こっちのほうがらくだから、断れなくなっただけ」 わずかに上を向いたちいさな鼻を境に、夕陽が影をつくっている。初音を抱いた男の誰かひとりでも、初音をきれいだと思ったり、「きれいだよ」と言ったやつはいるのだろうか。 「どうしても、また、そういうことしたくなったり、しなきゃいけなくなったら、とりあえず俺に言えよ。携帯で電話かけてスピーカーモードにしろ。俺、ばかでかい声でふっつうに雑談するから。したら気まずくて、やるどころじゃなくなるだろ」 早口で言った。初音がぽかんとして俺を見つめている。 「だから、誰とでもじゃなくて、好きな奴だけにしとけよ」  それが俺じゃなくても、俺はおまえを応援するし、祝福してやるよ。心のなかでだけつづけた。初音が、顔をくしゃくしゃにして今度こそ泣きだしそうになったので、俺は勇気を振り絞って頭をゆっくり撫でてやった。
2019.5
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kkagneta2 · 4 years
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ボツ(?)4
おっぱい。どうしよう、ボツにしてもいいけどこの子好きだからまた考え直すかも…
「また出たんだね、例の通り魔」
と、僕は何となしに言いながら、もう目で追いかけるだけになっている教科書のページを手繰った。
「そうなんだよ、もうこれで7人、いや、8人目か、一体いつ収まることやら、………」
と友人はパンを齧る。
「またいつもの状態で見つかったの?」
「あん?―――そうだよ、いつもどおりさ。俺らと同じ中等部の男子が、傷も怪我も何もなく教室に倒れていたんだと。で、これまたいつもどおり、何があったのか聞いてもうんともすんとも言わないで首を振るのみで、一向に埒が明かねぇ」
「怖いなぁ。首絞めでもされたのかなぁ」
「それが違うんだってさ。この男子の言うことじゃ、首絞めじゃなくてもっとこう、………そう、そう、枕みたいなもので押さえつけられたらしいんだ」
「ふぅん、枕かぁ、………」
と怖くなってふるりと震えて身をすくめた時、ふわりと横から人影が。
「何話してるん?」
現れたのはクラスメイトの佐々木さんだった。その気さくな人体と学年トップの成績から二年生でありながら生徒会長を勤め上げ、その一方で部活の水泳では全国大会で結果を残すなど、天に二物も三物も与えられたような女子生徒。特に一体何カップあるのか分からないぐらい大きな胸は、一時詰め物をしているのだと言う噂が絶えなかったが、運動会の練習時にブラジャーが壊れたハプニングがあって以来、男子はすっげぇ、すっげぇ、と言いながら、告白しては振られていった。
そんな彼女が真横に立ったので、僕は少しドギマギした。
「おぉ! 佐々木か。あれあれ、あの話。通り魔事件の話」
「美桜ちゃんは何か知ってる?」
僕は彼女を呼ぶ時はいつも下の名だった。
「あー、あの話かぁ、………実はうちもよく知らへんねん。昨日も教室で倒れてるん見つかったんやろ? うちその時部室に居てなぁ、秋ちゃんと一緒に見に行こ言うて行ったんやけど、先生に追い返されてしもうてなぁんにも。いや、怖い話やで、………」
「まじかー、………あの生徒会長様でも知らないとは、お手上げかなこりゃ」
「あ! でもうち一つ大切なこと知ってるで!」
と、身を乗り出してきて彼女の胸が顔にあたった。
「み、美桜ちゃん、胸が、………」
「おっと、ごめんごめん」
「おい、啓介そこ変われ」
「い、いや、これ僕のせいじゃないし、ここ僕の席だし、………」
「あははは、いや、啓介くんごめんよ。最近また大きくなってて距離感が掴めへんくてなぁ、昨日もシュークリームを潰してしもてん。困ったやつやで、ほんま」
「うおー、………すっげぇ、………。ま、まぁいいや。佐々木の言う大切なことってなんだ?」
気を取り直した友人は、それでも美桜の胸に釘付けである。
「そやそや、その話やった。大切なことって言うんは被害に会った男の子のことなんやねん」
「ほうほう」
「実はうち会ったことがあんねんけど、みんななぁ、すっごい可愛くってなぁ! うちああいう子が弟に来てくれたら思うて、ぎゅって抱きしめとうてたまらなくなってん」
「なんだ、そういうことか」
「そういうことって、どういうことや?! これほど重要な点はあらへんやんか!」
「分かった分かった、大切なのは分かったから落ち着いてくれ」
「ふん、分かればええ」
と美桜を宥めてから友人は僕の方を向いた。
「それにしてもアレだな。可愛いと言えばうちの俺らのクラスにも居るな、一人」
と言うと、美桜も僕の方を向いた。
「せやねんなー、せやねんなー」
「ヤバいぞ、佐々木の言うことが本当だったら啓介の身が危ない。おい、啓介、夜道には気をつけるんだぞ」
美桜はこれを聞いてクックッと笑った。
「せやせや、啓介君はかぁいいから気をつけんとあかんで」
ふるふると、���うに従うて彼女の胸が揺れた。
  それから一週間、件の事件は鳴りを潜め、学園は平和で、静かで、ゆるやかな日常がゆっくりと流れていた。今日も冬だと言うのに朝から陽気な日差しが差し込んで、始終あくびを噛み締めながら授業を受けなければならないくらいにはおだやかな空気が漂っていた。
そうして何事もなく授業が済んで、夕日の沈んで行くのを見ながら友人と一緒に教室を出たのだったけれども、校門の手前でふと、何か忘れものをしたような気がして立ち止まった。
「ごめん、忘れものしちゃったからちょっとまってて」
「しゃあねぇな、待っててやるからさっさと取ってこい」
腕組みをする友人を残して、僕は一人校舎の中へと入って行った。
校舎の中は妙に静かだった。さっきまで沢山人が居たような気がするのに、教室にたどり着くまで誰とも会わず、どこもかしこもひっそりとしている。電灯も消えていて廊下はほの暗い。
それで教室にまでたどり着いてみると、そこだけまだ明るいのであった。
「美桜ちゃん?」
中では美桜が一人窓際に佇んで外を眺めていて、僕に気がつくとふっと笑った。
「あれ? 啓介くんやん。どしたん?」
「ちょっと忘れものしたような気がして戻ってきちゃった」
「あはは、アホやなぁ」
と、美桜は近くの机に腰かけて、
「見つからへんのに」
そう呟くのがぼんやり聞こえたけれども、なぜか何にも気にかけないで机の中を漁り始めた。
それで随分と探したのであったが、机の中にも、ロッカーの中にもプリント類が山積みとなっている他何もなくて、一向にこれと言ったものは見つからない。そもそも何を忘れているのかも分からず、プリントの束を抱えて机を覗き込んだり、何となく体が動いて掃除用具入れの中を覗いたりもした。で、今は、床の上に落ちているのかと思って自席の周囲をグルグルと這っているのだけれども、もちろん何も見つからない。
「あれ、あれ?………」
あれ? と思っても見つからないものは見つからない。と、思ったその時だった。くすくすと上から笑い声がして、
「忘れものは見つかったやろか」
とほぼ頭上から声がしてハッと顔を上げると、やたらと綺麗な足が見え、次いでグワッと、物凄く大きな胸が目と鼻の先にまで迫ってくる。
僕は呆気にとられた。本当に大きくて、制服なんて今にも破れてしまいそうで、思わず後ずさりした。
「啓介くん?」
「あ、いや、何でもない、………あはは、はは、………」
僕はこう言いつつさっと立ち上がったけれども、
「んーん? 啓介くん?���
と、美桜がグッと覗き込んできて息が詰まった。彼女の方が頭一つ分は背が高くて、見下ろされると何となく身がすくむのである。………
「啓介くん」
「は、はい」
「今めっちゃうちのおっぱい見てたでしょ」
「えっ、いや、そんなことは、………」
「うそ、うちには分かってるから正直に言いな~?」
「ご、ごめん、見てました」
「あははは、えっちな子やなぁ!」
「―――むぐぅ!」
………一瞬のことだった。眼前に彼女の胸が迫ってきたかと思うと、顔中、………いや、頭がすっぽりとやわらかいものに包まれて、途方もなくいい匂いが鼻腔中に充満した。
「どーお? うちのおっぱい気持ちいーい?」
「むむぅ、………」
「んー? 何言ってるんか分からへん。もっと押し付けたらどうやろか」
と本当にぎゅうううっと後頭部を押し付けてきた。
息が、出来ない。
「むー! むー!」
こう藻掻いているうちにも美桜はさらに力を込めて押し付けてくる。一体何十センチあるのか分からない谷間に後頭部まで埋まり初めて、とうとう我慢しきれなくって美桜の腕を掴んだけれども、貧弱な僕では水泳部の彼女の力に敵うはずもなかった。
「グリグリ~」
と頭をゆすられると、されるがまま体も揺れる。自分ではどうしようもできないその力に、僕は恐怖を感じて叫んだ。
叫んだがしかし、その声は彼女の胸に全て吸収される。
「むうううううう!!!」
「すごい声やなぁ、でもうちには何言ってるかぜーんぜん分からへん、やっぱりもっとやってほしいんやろか」
とグリグリ、グリグリ。グリグリグリ。と、頭を擦られる度に、柔らかいおっぱいに鼻を押し付けられて、あの甘いような、懐かしような、とろけるような匂いが鼻をついて、頭がショートを起こしたように膝がガクガクと、腰が抜ける。
あゝ、もうだめだ、………
もはや彼女の手には尋常でないほどの力が込められていた、頭に激痛が走るほどに。でもそれが快感に変わって、僕は頭がもうどうにかなってしまったのだと思った。
「ええなぁ、このぎゅってする時の男の子の息、やっぱりたまらへんわぁ」
とますますギュッとして彼女の匂いが。ぬくもりが。
だけど命をつなくためには息を吸わなければならない。
「ふは、ふあ、ふひ」
「たっくさん吸ってぇな。うち生まれたときからええ匂い醸し出してるらしいねんわ」
「ふー!ふー!」
「ふふ、ええ気持ちやろ。もうなんにも考えられへんやろ。苦しくっても苦しくってもどこにも行きたくならへんやろ、―――」
ああああああ、………落ちていく、落ちていく。学園一の優等生の谷間の中へ落ちていく。
自力では立ってもいられなくなって彼女にすがりついた。柔らかい体、それがものすごく心地良くて、一生離したくないと思った。
気がつけば後頭部にあった手の感触が消え、僕の頭はすっぽりと彼女の胸に包まれていた。頭頂部にも、首元にも、肩にも、柔らかい感触がひたひたと吸い付いて、外からでは髪の毛の一本すら見えなくなっていた。
制服を着ているのに僕の顔を包み込んでしまう。
それほどまでに彼女の胸は大きい。世界一だと言っても誰も不思議に思わない。
だけどまだ中学生、二年生。………
「―――もうブラジャー無くってなぁ、今日学校終わったらすぐに買いに行かんとあかんから、ごめんなぁ。また誘ってぇな」
「―――今日すごい胸が張ってん。あーあ、明日になったらまた何センチか大きなってるわ」
そんな彼女のおっぱいに、僕の頭は丸ごと食べられてしまった。
そうして始まったのは頭部へのパイズリ。
さすがに僕も知っている。胸の大きな女性が男に向かってするアレ、………彼女はそれを僕の頭でやろうとしているのだった。
「男の子はこれすると腰が抜けんねん。うちのお兄ちゃんなんてな、毎日毎日、美桜! あれをやってくれ! たのむ!! ってせがんできてな、毎日毎日とろっとろにとろけきって十何回って射精すんねん。終わったら終わったで気ぃ失ってぐったりするし、起きたら起きたですぐ抱きついてくるし、昔はかっこよくて頼りになったんやけどなぁ、もう細うなってうちのことしか考えられへんようになったんやわ。あ、これ誰にも言ったらあかんで。うちこれ言われると弱いんやから」
と言ううちにも、ぎゅうううっと頭を圧迫してくる。美桜がどういう風に僕の頭を捕らえているのかは分からないけれども、もうここまで来ると嘘みたいな心地よさが体中を駆け巡って、手をだらりと垂れ下げた。
でもしばらくは開放してくれなかった。………
「あはは、もう腰立たん?」
ドサリと仰向けに倒れた僕に向かって美桜はこう言った。
で、唐突にのしかかってきた、―――!
「むぐぅ!!!」
僕の顔は彼女の胸の下敷きに、そしてまたしても息が。
(お、重っ、―――!!)
苦しさよりもこう思うほうが先だった。人が一人顔に乗っているような感じで、体を起こそうにも全く歯が立たない。
一方で美桜は胸の重みから開放されて、
「あー! 重かった!」
と、非常に清々しい声を出していた。
「ほんま重いわ。啓介くんもそう思う?」
「むー!!」
「あはは、めっちゃ苦しいやろなぁ。うちのおっぱい片方だけでも10キロは余裕であるねんもん。何カップやと思う?」
「むぐ、………むぐぅ!」
「正解は、………よく分からない、―――でした! ………あはは、うちZ カップ超えてんねん。胸小そうしとうて水泳部に入ったんやけど、逆効果やったみたいやわ。―――ほな、そろそろ息吸おか」
とゆっくりとずり下がって行って、美桜の顔が見えた。
「すごかったやろ? うちくらいおっぱいおっきいとあんなことも出来るねんで」
と、ここに於いてようやく区切りが出来たようだった。が、開放とは言っても美桜は未だに僕の体の上に乗っていて、あと一歩ずり動けば僕はまたしても天国のような苦しみを味わうことになりそうであった。
「それにしても啓介くん、最近うちのおっぱい見すぎやで。今日も授業中にチラチラチラチラ、………気づいてへんと思うてた?」
「ご、ごめん、………」
「あはは、むっつりさんやなぁ。でも正直な子はうち好きやから、しばらくこないしてよか。さっきみたいなのは苦しだけやったやろ?」
と、その時だった。
「おーい、啓介ー、いつまで忘れもの探してるんだ?」
と友人が教室に入ってきた。美桜を見つけて、
「おぉ、佐々木じゃないか。啓介を見なかったか?」
「啓介くんならさっき腹痛(はらいた)でトイレに行きはったよ」
「そうか、俺も忘れものをしたような気がして来たが、入れ違いになったか」
「―――?」
あれ? と思った。
―――なんで僕らの状況を不思議に思わないんだろう?
「み、美桜ちゃん」
と、言うと美桜は不敵に笑って、
「驚きはった? うち超能力使えんねん。ほら、こんな風に」
と左手の人差し指をピンと立てて僕の目にかざした。
すると途端に、クラクラと眼の前が揺れた。そして胸が苦しくなった。頬も耳も火傷しそうなほど熱くなって、口がぽかんと開く。そしてただでさえ可愛い女の子がさらに可愛く見えてきて、………あっ、あっ、………か、かわいい………!!
「あはは、目ぇとろっとろやん」
「うあ、うあ、………」
「声もしどろで、体が熱うなって、うちのことしか考えられなくなって、………ええねんで? おっぱい揉んでも、顔を埋めてぇも、口を吸い付けても」
「―――?!」
一体何が起こったのか分からなかった。分からなかったけれども説明すると、おもむろに立ち上がった美桜が指をパチンと鳴らすと体が空に浮き上がって、次の瞬間には小さな虫のごとく彼女に抱きついていたのである。
「しゅ、しゅごいいいいい!」
僕はそう叫んだ。
―――とろけていく。
脳がとろけていく感覚がする。動きも考えも支配されて僕が自由に動かせるのは手だけ、足はガッチリと彼女をホールドし、胴体はみっちりとそのなまめかしい体に張り付き、顔は再び胸に押し付けられている。
これでおっぱいを揉んだらどうなるのだろう。………
「あぅあ、………あわあわ、………」
それは恐怖とでも言うような感覚だった。触れたら終わる、確実におっぱいの虜になって人間性を失ってしまう。………だけれども手が伸びていく、おっぱいに、おっぱいに。
と、かすかに手先が触れた。「あ、終わった」と思った。
「なにこれ! なにこれええええええ!!!」
やっぱり一度触れたら最後だった。手が、止まらない。
「き、気持ちいいいいいい!!!」
あゝ、これが美桜ちゃんのおっぱい。僕の顔よりはるかに大きなおっぱい、いつも目の前で揺れるのを見つめるだけだったおっぱい、みんなが羨ましがるおっぱい、さっき自分の頭を丸ごと包んできたおっぱい、世界一のおっぱい、………おっぱい、おっぱい、美桜ちゃんのおっぱい、………
「あーあ、もううちのおっぱいのことしか考えられへんようなったなぁ」
と言ううちにも、ぎゅうううっと抱きしめておっぱいに顔をうずめ匂いを嗅ぎ、首元から手を突っ込んでじかにおっぱいに触れ、裾を軽くたくって彼女のおっぱいを覆う純白のブラジャーを堪能する。
「むああああああ!………」
何という快感、………
おっぱい、………
おっぱい、………
美桜ちゃんのおっぱい、………
彼女に再び人差し指を目にかざされると、恐ろしいまでの衝撃に駆られて、おっぱいの中でも特に大切な突起物に吸い付いた。あれ? と思ったら僕は今、制服を透いて、下着も透いて乳首を吸っているらしかった。そしてその乳首を口に含むのも自分の意思ではしていなかった。
それはまるで魔法だった。人差し指一本だけで僕の手足は彼女の思い通りに動いて、思考は全て奪われた。彼女がくるくると指を回すと頭が勝手に谷間へと向かった。彼女が指で空間を切ると僕の制服は真っ二つになった。彼女が5本の指を小さく折りたたむと、僕の体は赤ん坊のように小さくなった。彼女が指をクイと動かすと、僕は誘われるかの如く彼女の胸元に収まった。
そして赤ん坊のようにちゅうちゅうとおっぱいを吸った。―――
「ちゅうちゅう、ちゅうちゅう、………」
「ふふふ、かわいいなぁ」
「ちゅううう………!」
「ふふ、―――あ! せや、今うちが超能力使うんやめたらどうなるんやろ」
ふと美桜が言った。
「ちょっとやってみよか」
人差し指をくるりと回す。すると、
「んん?」
と友人がこちらを見た。
「どしたん?」
「なんか音がしたんだけど、佐々木は聞こえたか?」
「うちはなんも聞こえへんかったよ」
と、美桜は言って僕の方を顧みた。
「まさか全部見せるんやと思うた? あはは、いくらうちでもそんなことはせぇへんよ」
と言うものの、僕は赤ん坊にされると同時に知能までも剥奪されて、その実この言葉の意味がよく理解出来なかった。
「ばあ!」
「あーあー、よちよちよち、けいすけくんおっぱいおいちい?」
「あぅあぅ!」
「せやねー、友達邪魔やねんなぁ。よし、せやったらけいすけくんのために消してあげよか」
と指をくるくると回す。すると今までそこで忘れものを探そうとロッカーを覗いていた友人の姿は、その座席ごと、―――荷物も、制服も、身につけていた腕時計も何もかも、光がまたたくのと同じように消えた。
「きゃっきゃっ」
「帰る?」
「ばうばう、あー」
「ふんふん、けいすけくんはほんまにおっぱいが好きやなぁ。ほんま赤ん坊みたいやで。ほんならこないしてやろ」
と今度は親指と中指をぴったり合わせてパッチンと鳴らした。僕の体は赤ん坊からさらに小さくなって、リスのようになって、ネズミのようになって、最終的に蟻のサイズへ。彼女の手のひらの上でゴロゴロと転がされて、怖くてびーびー泣くのを見つめられる。
そしてブラジャーのカップの中へと入れられた。
そして次に見たのは、どんどん迫ってくる大きな大きな乳首だった。
僕はおっぱいとブラジャーの板挟みにされてもがき苦しんだけれども、ちょうどよい段差を見つけてそこに滑り込んだ。
「あーあ、気をつけなあかんて言うたのに、まったく啓介くんはかぁいいなぁ」
 時に、日が沈んで教室の中は真っ暗と、広々とした室内に半分に切れた一着の制服、闇の中に紛れて持ち主の帰りを待つ。
女神のような少女はそれすらも消して教室を後にしたが。
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iamshoihi · 6 years
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きらきらリボンが本能を掻き立てるのにゃ!とまらにゃい!とめられにゃい! #猫 #ねこすたぐらむ #すこてぃっしゅふぉーるど立ち耳 #catstagram #cutepet #scotishfoldlovers #animalaugh #catoftheday
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2ttf · 12 years
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 おへそを掃除する方法はすぐに見つかった。  オリーブオイルかベビーオイルをおへそに垂らし、汚れが浮いてきたら綿棒でこう、くちゅくちゅっとやってやればいいらしい。必要な道具はすべてある。  汐里は着替えると言って、物置兼汐里の寝室に入っていった。  この部屋における汐里の服はスウェットだけである。それを汚すわけにはいかないと、体操着に着替えるらしい。  一方、俺は居間で正座している。  安請け合いしたのはいいが、汐里合意のもとでおへそのそうじとか、理性が耐えられるのだろうか。想像してみよう。  汐里の白い服部の中心につつましくへこんでいるおへそ。そこにオリーブオイルを垂らす。汐里がひゃうっとかそれっぽい声を出す。なんなら体もちょっとくねらす。俺はそれを見ている。あんまり見ないで、と汐里が恥じらった声をあげる。俺はそこに綿棒を持って突撃し……。 「……」  なんだろう。あまりえろい気分にならない。  冷静に考えるとまぬけ極まりない光景である。  へそ掃除から始まる恋とかあるかな。将来子供に「お父さんとお母さんはなぜ恋人になったの?」と聞かれたときに「おへそがな」と答える勇気が俺にはあるだろうか。  クソみたいにどうでもいいことを考えていると、かちゃりとドアが開く音がした。 「……おまたせ」  俺は、はじめて見る汐里の体操着姿に、感動のあまり噴き出した。 「うっわ体操着だっさ!」  びっくりするほど水色だ。お嬢様学校に対する幻想を一撃で粉砕する常軌を逸した鮮やかなスカイブルァァァ。この色を採用した担当者の頭をカラーチャートを着色した鉄板で殴りたくなるくらい頭の悪い色だ。 「ちなみに二年は緑で、三年はピンクだよ」 「教育現場の荒廃は思ったより進んでいるようだな……」 「体育祭のときやばかった」 「やばそう」  真顔になってしまった。  ドローンで撮影したら軽くサイケデリックなことになってそうだ。ご覧、あれがサマー・オブ・ラブ���サンフランシスコははるか遠い。  汐里が俺から少し離れた場所に、ちょこんと座った。 「ま、それはそれとして……ほんとにやるのか?」 「う、うん……」 「正直、そこまでして掃除しなきゃいけない理由が思い浮かばない」 「お、お兄ちゃんの前では、いつもきれいな私でいたいの……」 「バカだな。おまえはどんなときだってきれいさ」 「もう、お兄ちゃんてば♡」 「……」 「……」  なぜだろう。ノリはノータイムでがっちり噛み合ったというのに、寒々しい空気にしかならない。 「と、とにかくやるって言ったらやるの!」 「なにがおまえをそこまで駆り立てるんだ……へそから出る爆臭で犬に吠えられたのか?」 「そんなにおいしないよ!?」 「どんなにおいだよ」 「一週間放置したお兄ちゃんの使用済み靴下のにおい的な……?」 「なんで知ってんの」 「知らないけど」 「イメージだけで人を貶めるのやめてくれる?」  よかった。経験談だったらちょっと対処に困る。 「じゃ、じゃあ、お兄ちゃん……」 「ああ」 「ちらっ」  汐里が、横目でこちらを覗いながら、体操着をたくしあげた。異常な青空の色の体操着の下から白い腹部が見える。思わず凝視する。  しかし、おへそ劇場は数秒で終わった。 「おまえ、なにやってんの」 「おへそ見せる練習」 「練習」  聞いたことねえ練習だ。 「だ、だって恥ずかしいじゃん! だから事前に見せて、その、覚悟を……」  自分から見せるほうが恥ずかしいという判断基準はそこにはないのか。  恥ずかしがりながら体操着を再びたくしあげようとする汐里を見ているうちに、おかしい気分になってきた。ごまかそう。 「なに言ってんだよ。おまえさっき全開でへそ見せてただろ。あそこまで全開だとグラム49円くらいの価値しかねえよ」  このあいだ近所でやってた鶏むね肉の値段だ。 「むっ」  いきり立った汐里が、よつんばいでわさわさと近づいてきた。  ぶつからんばかりに顔を近づけてきて、 「むーーーっ」  怒ってらっしゃる。  近いって。そんな至近距離でむーむーされてほっぺた膨らまされたらかわいいだろ。指でつつくぞこのやろう。 「むぅぅぅぅぅ」  ころん。  床に横になった。 「さあ来い!」  威勢のいい言葉のわりに、顔を手で覆っている。 「来て、お、お兄ちゃん……♡」  指の隙間から俺の様子を窺っている。  こいつまだ余裕あるんじゃねえの。 「まあいいけどさ……」  用具はすでに準備してある。 「それじゃ、おへそのそうじを開始します」 「う、うん……」  仰向けになって、軽く膝を曲げている汐里。  体操着の裾を持って、少しずつたくし上げる。雰囲気を盛り上げるためにBGMを入れよう。 「じゃーん、じゃじゃじゃじゃーん、じゃじゃじゃーん」 「……な、なに?」 「おへそさん、こんにちはー♡」 「お兄ちゃん……」 「なんだ」 「ごめん。ちょっとまじで気持ち悪い」 「自分でもそう思った」  俺はなにを盛り上げるつもりだったんだ。  妹の蔑むような目が心地よい。俺にはそんな趣味はない。つーかこんな作業、ふざけてやらないと身が持たない。 「んじゃ、ちょっと冷たいの行くぞー」 「は、はい……」  白いなー。おなかやわらかそうだなー。すべすべしてそうだなー。早百合さんが言ってた、汐里毛深い情報ガセなんじゃないの? それとも、このスウェットの下に手をかけてずり下ろせば、すべての謎があきらかになるの? 「み、見るなぁ……」 「見なきゃ命中させらんないだろ」 「そりゃ、そうだけど……でもぉ……」  顔をすっぽりと手で覆う。床にしどけなく広がった髪からちらりと見える耳が赤い。……まずい。早いとこかたづけよう。  おへそを狙って、オリーブオイルをたらりと垂らす。 「んひゃっ」 「動くなって」 「んぅぅ、思ってたより冷たいぃ……」 「我慢しろ」  想像を越えてえろい声来た。我慢するのはむしろ俺だ。 「……それで、このあとどうするの?」 「10分間放置」 「え」 「放置。汚れが浮かび上がるのを待つんだと」 「私、このまま?」 「うん」 「えぇぇ……」  やることがなくなってしまった。  このまま汐里を放置しておいて、俺はほかのことをしてもいいのだが、それはそれで高度すぎるプレーのような気もする。 「なあ汐里」  呼びかけに応じて、汐里が手を顔からどかす。赤面しっぱなしだ。俺のほうが赤面しそう。赤面率何%だよこの世界。 「この状況だと、俺は汐里のどこを見てればいいんだ? へそか?」 「おへそは……いや……」 「じゃあ足?」 「それもなんかやだ……」 「んじゃスマホでも」 「それはそれでもっとやだ!」  おへそから下が禁じられた。胸は論外だから、そうなると……。 「お、お兄ちゃん?」 「なんだ」 「な、なんで顔、見るの……?」 「消去法だけど……」  あらためてきれいな顔である。  切れ長の目や肌のきれいさはもちろん、輪郭もすっきりしている。さらに、鼻が高すぎずコンパクトであることも、顔の上品さを際立たせるのに一役買っている気がする。まつ毛、長いってほどじゃないけど、密度が高いなあ。 「お兄ちゃん……?」  とまどったように俺を見つめ返してくる汐里。  だんだんと、右に左にと視線が泳ぎ始める。  それでもかまわず見ていると、首まで動いてきた。しまいには、顔を手で覆って足をじたばたしはじめる。 「もう、もう!」 「なんだよ」 「顔も禁止! お兄ちゃんは今後、私の顔見るの禁止!」 「覆面かぶって生活しろ」 「鼻の次は目を潰せば……」  だんだんノリがおかしくなってきた。  最終的に、双方がスマホを見ることで落ち着いた。 「さて、10分が経過したわけだが……」 「うん」 「いよいよ、掃除の本番だ」 「ん……」 「おまえ、この状況でも小説に集中してんのか……」 「はい」  ちなみに汐里、ほんとに集中してるときだと、目の前でアヘ顔ダブルピースとかやってもまったく気づかない。そういえば汐里の欠点として、乗り過ごし常習犯ってのもあったよな……。 「もういい。そのまま集中してろ」  大騒ぎされないだけ、そのほうが都合がいい。 「んじゃ行くぞー」 「うーん」  あいかわらずの生返事。  そっと、汐里のおへそに綿棒を差し込んだ。 「おほぉっ!?」  美少女設定の妹があげちゃいけない声をあげて、汐里がびくっとした。 「やるならやるって言ってよ!」 「……」  なにも言うまい。続きだ。 「痛くないか?」 「痛くはないけど……や、なんか、すっごく……やな感じする……」 「すぐ済むから我慢しろ」 「うぅ……」  どこまでやればいいか加減がわからない。  がまあ、実際の掃除の効果より汐里の気分の問題である。  そして、へそから綿棒を抜き出して驚いた。なんか茶色い。 「ど、どうしたの……?」 「いや、なんでも」  目撃されたらうるさそうなので、綿棒をゴミ箱に放り込む。 「もう終わり?」 「ああ。ちょっと待ってろ」  なんだかんだでへそまわりはオリーブオイルで汚れている。  準備してあったティッシュペーパーで拭う。  ここまで、一連の流れである。だから俺は、なにも考えていなかった。触れてから、ようやく気づいた。  ……やわらかい。  なんだこれ。  油を含んだティッシュ越しに、汐里の肌がしっとりと手に張り付く。  考えてみれば、このあいだのデートもどきではっきりしたように、俺と汐里は直接の皮膚接触をあまりしない。素肌に触れるのは、たとえハグと比較してもなにかが違う。  このおなかの皮膚は、少し上にずれれば胸に続いている。  下にずらせば、もっと触れてはいけない場所に続いている。 「お、お兄ちゃん……? もう拭けたと思うんだけど……」 「ああ」 「あんまり触られると、その、ね……?」  そう言って、汐里がみじろぎをする。俺の手の当たる位置がずれて、脇腹をかすめる。バランスをちょっと崩した俺は、その脇腹をつかんでしまう。 「ひうっ……んぅぅ……」  あわてて手を離す。  なんだよ。いまの声。  汐里が、俺の手から逃げ出して、ぺたんと床に座る。  両手を胸の前で交差して、困ったように俺を見る。 「ご、ごめん。なんか、変な声、出ちゃった……」  だから、なんだよ。変な声って。  手を伸ばせば届く場所にいるんだぞ。  俺は、おまえが逃げ出さないように、羽交い締めにすることだってできるんだぞ。  汐里を見る。  汐里は、逃げない。  心持ち身を引きながらも、その場にまだいる。 「あ、あのさ、お兄ちゃんは……その、やっぱり、おなか触ったりすると……えっと……」 「興奮するよ」  だめだ。もう止まらない。 「汐里の体なら、どこを触っても興奮する」 「そ、それって……」  汐里が手を口に当てる。  顔を赤らめて、けど目は俺からそらさないでいる。そして、呼吸がやや荒くなっている。  いくら俺が童貞だって、この反応はわかる。  女性とそういう関係になることへのおそれを飛び越えて、わかってしまう。だって、こんな汐里を俺は一度も見たことがないから。 「……だから言ったろ。うかつなことすんなって」 「汐里は……」  涙目でもういっぱいいっぱい、という感じの汐里。自分を名前で呼ぶのは、種類の別なく感情的になっているときだ。わりと最近まで、汐里の一人称は自分の名前だった。少なくとも、俺の前ではそうだった。  汐里が悪いとか俺が悪いとか、そういうことはもう頭になかった。ただ、焼けただれていた。どろりとしたものに頭が支配されて、心臓だけがバカみたいに激しい鼓動を繰り返す。  こいつは、拒まない。きっと、受け入れる。  俺が汐里を求めて手を伸ばすのと、汐里が立ち上がるのはほぼ同時だった。 「お、おやすみなさい!」  自分の部屋に飛び込む。  ばたんと、ドアが閉まる音がする。  そのドアを呆然と見つめてから、俺は天を仰いだ。 「くっそ……やっちまった……」  我知らず、押し殺したようなつぶやきがこぼれた。
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