Tumgik
#レゾ
eyes8honpo · 6 years
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四章 神々の黄昏
 桜の蕾は膨らんだまま、花開くことはなかった。  今年も随分と遅咲きなのだと、衣更が鼻をすすりながら教えてくれた。ほんの数分前の出来事だった。花粉症か。わざとらしく聞くと、ええ、今日は特に酷くて、目も鼻も、ぐしゃぐしゃです、と半笑いで返された。 「副会長、今まで、」 「衣更。もうそんな肩書きは、俺にはないぞ」  小さくしゃくりあげるような泣き声がして、俺は衣更の背に手のひらを添えた。随分と筋肉質な背中だった。それは表からは決して見ることが出来ない、衣更の努力の結晶だった。 「今まで、本当に、お世話になりました。蓮巳先輩」  思い返せば、衣更も俺にとっての“愛し子”というやつなのかもしれないな、などと、今さらのように思う。  初めて出来た後輩だった。  いつの間にか小間使いのように滑り込んできて、生徒会の雑用を文句も言わず小器用にこなし、気付けばその中核を担い、革命と板挟みになりながらも俺を思い遣るような、普通で、優しくて、少しばかり損な人間だった。  何を与えてやれたのかも分からない。  そればかりか踏みにじられてばかりだったろう。  なのに、今ここで流される涙が、感謝からくるものだというのだから、俺の成したことも無駄ではなかったのだと心から喜べる。  夢ノ咲を頼んだぞ。  どん、と背を叩きながら、想いを託す。はい、と返ってきた言葉は、力強かった。
 校庭へ出ると、在校生と卒業生がごったがえして写真を撮っているところだった。晴天を背景にして、まばらに薄紅を生む緑の木々が、完全な冬の終わりを告げていた。桜が咲くのはいつ頃だろう。去年はうんと遅かったが、例年通りなら入学式にはその儚い花弁を咲き誇らせているだろうか。  祝いの日には少し殺風景にも思えたが、その代わり、とでも言わんばかりに、退場の際に在校生から渡された大輪の花束が、そこかしこで瑞々しく香りを放っていた。去年のプログラムにはなかったことなので、予算は大丈夫だったのか、などと余計な心配をしてしまう。素直に感傷に浸ればいいものを、これも俺の悪癖のひとつだ。 「旦那ぁ!」  野太い声が遠くからあがり、周囲の後輩たちがすぐさま道を開けた。それが恐れや怯えからくる行動などでは決してないことは、傍目に見ても明らかだった。すまねえな、と大きな花束を頭上へ掲げながら、こちらへ向かって歩いてくる鬼龍を見るいくつもの眼差しは、憧れや尊敬の色を濃く滲ませていた。 「よう、卒業、おめでとさん」 「お前もな。日数が足りて何よりだ」 「はは、一瞬、ヒヤリとしちまったけどよ。これでも一応、三年生は皆勤賞だからな。……先生に言われたよ。あとほんの数日怠惰であれば、留年でしたでしょうね、ってな」  ばさり、と乱雑に花束を肩へと引っかけて、鬼龍が安堵の息をこぼす。 「ありがとな。俺を、こっち側に引っこ抜いてくれて」  二人分の花束が、むせ返るほどの香りを放って、息がつまった。 「……感謝をするのは俺の方だ」  礼など言われるようなことを、俺は一度たりともしたことがないと思っていた。全ては自分と、自分の分身ともいえる幼馴染のためだった。利用できるものはなんだって利用した。それで何をなくしても、自業自得だと思っていた。 「じゃあ、お互い様ってこったな」  カラリと笑った鬼龍が、左の拳をそっと向けてきた。ああ。枯れそうな声で頷いて、俺はそのごつごつとした指のふしに、己のそれを軽くぶつけた。今日という一日の中、初めてじんわりと目元に熱を感じた。本当に、いい戦友を得た。  お前の船出が明るいことを、俺は心から祈っている。  言葉にはしなかったが、鬼龍は合わせた指のふしを離す一瞬、何かを感じ取ったように目を細めて笑った。それで充分だと思った。 「……鬼龍。神崎をどこかで見ていないか」 「あぁ、あいつなら、生徒会の手伝いをしてるってよ。いつの世も人員不足だな、あそこは。友人のぴんちを放っては置けまい、つってよぉ。衣更たちと一緒に椅子の片付けとかしてるよ。ま、俺たちの場合は卒業の後も一個、仕事があるしな。別れの挨拶は、そこでもいいだろうよ」  そうだな。安心したように頷けば、旦那の過保護も直んねえのな、と軽口が飛んだ。返す言葉もなく黙ると、鬼龍の豪快な笑い声が、あたりいっぱいに響いた。 「あ、いたいた。お~い! 敬人く~ん!」  その目立つ笑い声が目印になったのだろうか。  遠くから呼ばれた気がして顔をあげると、頭上高く突き上げられた右手が俺に向かってぶんと振られていた。  貧弱そうに見えるのに、よく通る声だなと、初めて聞いた時から思っていた。  それと同時に、笑っているのに、全てが他人事だと言わんばかりの冷めた目が、ずっと気がかりだった。  すみません、すみません、と謝りながら人混みをかき分ける青葉の目は、今、ほんの少しでも柔らかくあるだろうか。 「おう、どうした。蓮巳のことでも撮りに来たか?」 「ああ、いえ。それが、夏目くんにこっぴどく叱られまして。こんな日まで他人事でいるんじゃない、そんなに暇だったら、迷惑かけた人間ひとりひとりに謝って回ったらどうなのーって。取り上げられちゃいました。ビデオカメラ」  あはは。  愉快そうに笑う青葉は、貰った花束もどこかへ置いてきたのか、空の両手をひらりと上へ向けた。その右頬は、ほんの少し赤くなっていた。大方、逆先に力一杯つままれた跡だろう。気持ちは痛いほど分かるが、あいつも相変わらず、本音を出すのが下手くそな奴だ。俺にそんなことを言われようものなら、大昔の武器を取り出して豆をぶつけてきそうなので、特に口を出さずに今日の日を迎えてしまった。 「あれっ? そのボタン、鬼龍くんがもらったんですか?」  突然話題を振られた鬼龍が、あ? と驚いたように声を漏らす。ボタンといえば、南雲が第二ボタンを貰っていったという話を、数週前にしたばかりだったが。 「それ、宗くんがものすごく気に入ってた、一点もののボタンなんですよ。贔屓のクリエイターが、手作りしてるものなんだとかで。何の衣装に使おうか~って、暇があるたび言ってたの、俺、覚えてます。まあ、暇なんて、そうそうないんですけどね、宗くんの場合」  聞いてもいないことをぺらぺらとよくしゃべる青葉は、ぽかんと固まった鬼龍の表情を全く気にしていなかった。よくよく見れば、なくなったはずの場所には、マーガレットをモチーフにしたような金古美のボタンがきちんと収まっていた。  あの野郎、と舌打ちをする鬼龍は、どこか焦ったように歯を噛みしめていて、俺はその姿の珍しさに少し笑った。つられたように、ふふ、と微笑んだ青葉に、そういえば、と我に返る。 「青葉、さっき俺を呼ばなかったか」 「お、おう、そうだぜ。撮影でもねえなら、逆先に言われた挨拶回りってやつか?」 「あっ、そうでした」  古めかしい動作でポンと手を打つと、青葉は相変わらず他人事のようにしれっと重要なことを言ってのけた。 「俺の用は、それとはまた別なんです。敬人くん、呼ばれてましたよ、英智くんに」
   ◆
 ごった返す人混みをかき分けて、もつれそうな足を動かし進む。途中、噴水の辺りから「どうした!? 緊急事態か!?」「『きんきゅうじたい』ですか~?」などと間の抜けた声を聞いた気がしたが、今、そんなスチャラカ軍団に返事をしている余裕はなかった。 「敬人! 遅いじゃないか敬人、ねえ、ちょっと頼まれてくれないかい?」  駆け付けたガーデンテラスで、いつもの特等席に座った英智は、俺をなじりながらも、随分と機嫌の良さそうな声を歌うように響かせた。 「卒業祝いにね、渉に贈りたいものがあるんだけれど」 「……贈りたいものというのは、そのちぐはぐな大量の花束か?」  ぱちくりと目を瞬かせた英智が、ほとんど体を覆い隠すほどの巨大な花の群れに目を落とす。花束を抱える腕さえも見えない始末で、俺の目から見えるのは花まみれになった英智の生首と、辛うじて見える細長い膝下だけだった。 「ふふ、これは可愛い可愛い桃李から、僕への個人的なプレゼント。花束をね、作りすぎちゃったんだって。あんまり愛らしすぎて、抱きしめてしまったよ。考えなしに全部を受け取ったら、見ての通りさ」 「阿呆、身動きが取れなくなるほどものを抱えるんじゃない。誰が世話を焼くと思っている、度し難い」 「えぇ~? 敬人にだけは言われたくないなぁ。こんな時期になるまで自由に動けなかった癖に」  俺の持つ花束の、何倍もの大きさ、何倍もの数のそれの奥から、英智の青い目がじっと俺を見つめる。 「俺は、特に不自由なくやってきたつもりだったが?」  ス、と眼鏡を直したのは、少しでも心のうちを見透かされないように――だろうか。 「どうだかね」  意地悪く目を細めた、性格のねじれ切った俺の幼馴染は、クスクスと笑ってから数秒、穏やかにその目を閉じた。 「さて、敬人の話はどうでもいいんだ。上を見てごらん。屋上に気球が見えるだろう? 見間違いでなければ、あれは先日僕が渉に贈ったものだ。頼むよ敬人」 「人をガーデンテラスまで呼びつけて、このうえ屋上まで走らせる気か?」 「君は両手いっぱいに花束を抱えた僕を屋上まで上がらせる気かい?」  分かり切ったやりとりのあと、俺が諦めたように息をつくのと、勝ち誇ったように英智が笑うのと、ほとんど同時だった。 「最後の我儘さ」  どうだかな。  頭の隅に浮かんだ捨て台詞を飲み込んで、俺はまた走り出した。
   ◆
 関わり合いになると面倒な噴水周辺を回避しようと裏手側へ回ると、茂みの中から何かが転がるように飛び出てきて、俺は思わず身を強張らせた。橙色の散切り頭。髪の所々に緑の葉を乗せ、右手に数枚の用紙を握ったそれは、見間違うことなく月永だった。 「あれ! ケイトだ! なあ、ケイトなら知ってるだろ、テンシのやつ、どこ行った?」  唖然とする俺をよそに、制服についた汚れをぱたぱたと払いながら、月永は立ち上がった。 「英智、なら……ガーデンテラスに居るが……」 「ガーデンテラス! りょーかい! 覚えたぞ! たぶん!」 「お、おい! 英智に何の用だ! 事と次第によっては――!」  そのまま今しがた俺が走ってきた道を駆けようとする月永に、大声で呼びかけると、月永はステージ上でターンを決めるようにくるりと美しく半回転して俺に満面の笑みを見せた。 「テンシにラブソングだ!」  じゃーなー!  右手に携えた紙束を頭上へ高々と掲げ、満足げに言うと、月永は猫のように走り去ってしまった。  ただただその背中を見送ることしか出来なかった間抜けな俺は、肩で息をしながら、しばらくぽかんと立ち止まってしまった。遠くの喧騒が、笑い声が、すすり泣く声が、ぼんやりと耳に響く。なんだったんだ、今のは。理解が追い付かないところへ、またひとつ、駆けてくる足音を聞いた。 「あっ、ちょっとぉ蓮巳ぃ!! 今あのアホがここを通ったでしょ!?」 「あ、ああ、アホ……というか月永なら、ガーデンテラスに……」 「あああっもう!! なぁんでそんな僻地まで行くかなぁ!! こんな日くらい大人しく後輩共に祝われてよねぇ!! あんなアホでもそこそこの人気者なんだからさぁ!!」 「……ふ、はは、お互い、最後まで苦労、するな……」  気の抜けたような笑いとともに、あぁ、と悲鳴を上げながら両膝に手をつくと、瀬名は少し目を見開いて、焦ったように俺の背に手を添えた。 「ちょ、ちょっと……そんなに息切らしてどうしちゃったわけ?」 「使いっぱしり、だ。さっき校庭から、ガーデンテラスまで呼び出されたかと思えば、今から屋上に行くことになった」 「はぁ~? あんたってさぁ、ほんっと……」  呆れたような瀬名は、途中で言葉を切って数秒黙ると、どこから取り出したのか一本のミネラルウォーターを俺に寄越した。 「それ。まだ、開けてないから」 「……いいのか」 「なんていうか……ちょっと、他人事じゃないからねぇ。……あんたの呆れたお人好し具合にはさぁ、こんな程度の報いくらい、あってもいいでしょ」  じゃあね。  小走りに、月永が駆けていった道をなぞるように遠ざかる瀬名の���その力強い足取りに、俺はゆっくりと上体を起こした。  あいつらの旗は、どうなるのだろう。  ようやく五人でまとまったかと思えば、あっという間に世代は次へと移っていく。字面だけ見れば、なんとも虚しい。だが瀬名が決死の想いで守り抜き、月永が再び突き立てたその旗は、明日も明後日も、誇り高くこの場所でたなびくのだ。それは無駄なことなどでは決してない。 ――そういうことだろ、生きるって。  あの時言えなかった返事を、そうだな、と静かに返し、俺はミネラルウォーターを一気に飲み干した。  そしてまた走り出す。  何の為などと言われても、もうよく分からなかった。ただ、何か変わるなら、誰か救われるなら、今日が最後だと思った。あいつなら赦してくれると思った。  自分の羽をもぎ取った、本来なら憎かろう、あの偏屈な子供のことを。
   ◆
「おやおや、こんなところにどなたがお出ましかと思ったら!」  ぜえぜえと息を切らして、最後の一段をのぼりきると、青空を背景に艶やかに舞い踊る銀色の長髪が、何故か嬉しげに俺を迎え入れた。  馬鹿と煙はなんとやら、だ。  派手な気球を屋上のすみに侍らせて、日々樹渉は一人、つま先でくるりと一回転をして、俺に向かってうやうやしくお辞儀を寄越した。 「生憎だったな。観客が少なくて」 「いえいえ! とんでもない! たったの一人であろうと、お客様はお客様ですから! それに、たとえ観客が一人もいなかろうと、私が何かを演じれば、それは既に演劇なのですよ」  相変わらず、こいつの言うことは理解しがたい。  対話するのを早々に諦めた俺は、返答を考えるのを放棄して、小さく息を吐き出した。 「英智が探している。貴様に贈りたいものがあるそうだ」 「うーん、あの人、先日そこの気球をプレゼントしてくれたばかりじゃないですか。まったく、呆れてしまいますね。一体私の何処がお気に召したのでしょう。いまだに不思議なんですよ」 「奇遇だな、俺もその点に関しては一生涯あいつと分かり合えない」 「うふふ。これはまた随分嫌われたものですねえ。私、貴方とも少しは仲良くなれたと思っていたのですけれど?」 「冗談じゃない、貴様に関わるとろくなことがないんだ、結局鳩は出なかったし」 「根に持ちますねえ~」  あっはっは、とからかうように笑った日々樹の細い目は、あの日俺にシルクハットを寄越した時とよく似ていた。 「……貴様は、変わらんのだろうな」 「何がです?」 「卒業しても、という話だ」 「ええ。それはそうでしょうとも。私の日常の中から、学生生活というものがなくなるだけなのですから。なんら変わりはありませんよ。ああ、今までユニット活動で制限されていた芸能活動がこれでギュギュッと詰め込まれてしまうでしょうから、こんな風にのんびり話す時間が減るのは――ほんの少しばかり寂しくもありますね」  淡々と滑らかに物語る日々樹の口から零された最後の言葉に、息を飲む。  ぱちくり、と瞬きをしがてら、俺と視線を絡ませると、形容しがたい奇妙は表情で、日々樹は困ったように眉尻を下げた。 「自分でも、驚いているんですよ。こんなに惜しくなるとは思いませんでした。こんなにも、愛しいと思えるものが増えるとは、思っていませんでした」  半回転。颯爽と、音もなくターンを決めれば、銀の髪が翻る。毛先が、ふわりと、俺の頬を撫でるようにかすめていった。 「貴方がたの都合で決められた五奇人という仲間のこと。周囲から化け物と呼ばれ、自らもそれを受け入れたこの道化師を、命懸けで手に入れようとした英智のこと。それと……こんな私のために、奇跡の仇討ちを果たしたあの子のことも」  背を向けた日々樹の表情を、声色から伺うことなど俺に出来るはずもなかった。  ただほんの少し、普段よりも低く、穏やかに聴こえるそれに重ねるように、俺も言葉を放り込んだ。 「……貴様にひとつ、聞いてみたかったことがある」  はい? と返事をした日々樹は、わずか俺を振り向く仕草を見せて、その先を促した。 「どうだった、愛弟子に持たせた革命旗を、特等席から見る気分は」  しばらく、静寂が横たわった。  まだ強く吹く春の風が、俺の短い横髪を乱れさせる。 「――ええ、それはもう」  最高でしたよ。  日々樹の声は、そんな荒々しい風の中、驚くほど凛と、美しく響いた。 「想像以上の世界を見せてくれましたからね。お礼を言わなくてはなりません。英智にも、彼にも」  煽られた銀の髪の向こう、横顔が見えた。俺の知らない微笑みを携えていた。思い返しているのは、あの春の決勝戦だろうか。あるいは、数ヶ月前の、奇跡のようなウィンターライブか。  全ての始まりの男は、今ここで、何を想う。 「そして貴方にも」  は、と視線を交わすと、日々樹はいつもの薄笑いを貼り付けて、俺にニコリと笑いかけていた。 「……気味の悪いことを、言うな、俺は何もしていない」 「おやおやぁ? 今更しらを切るなんてらしくない! 実行に移せたのは天祥院財閥の財力あってのことでしょうけど、初めにシナリオを書いたのは貴方でしょう? 夢見がちで穴ぼこだらけでしたけれど、なかなかに上等でしたよ。だからこそこの日々樹渉が自らその穴を埋めて差し上げようと思ったわけです」  仰々しく両腕を天に差し出しながら、舞台の台詞のようにまくし立てると、日々樹はその腕を静かにおろし、囁くように言った。 「そして最後のピースとして、あの子を選んだのは間違いではなかった」  つう、と細められた紫の瞳が、浮かべているのはつややかな短い黒髪。 「正直、私もほっとしてます。とびきりの良い子ですからね。時々、とびきりのお馬鹿にもなりますけど、それさえ愛おしい」 ――いつだったか、あの子が屋上へ迎えに来たことがあったな。  何故か今、そんなことを思い出した。 「幸福に、道を歩んでほしい。独りではなく、大勢で。手を取り合って」  私が彼にあげられるものは、それくらいですから。  消え入りそうな声でそう言うと、日々樹はまたもやくるりと半回転のターンを華麗に決めて、強張る俺の体に一歩、近付いた。 「さて、右手のひと! これはそんな貴方へのささやかなお礼です! さあさ、お手をどうぞ? ワン、ツー、Amaging!」  白い煙と共に、ポン、と小気味良い音が鳴って、俺は思わず目をつぶった。手の平に、どこか馴染みのあるような、金属の重さを感じ、ゆっくりと目を開ける。 「預かりものです。待っていますよ。旧い旧い、貴方の愛すべき隣人が」  それもそのはずだった。  二年もの間、俺はそれを手にし、あの部屋へと出入りしていたのだから。 「私も向かいます。――愛すべき、短命の天使の元へ」  微笑んだ日々樹は、俺が何か言う前に気球へ乗り込んで、あっという間に空へと飛び上がってしまった。相変わらず、突飛で、俺に対して薄情なやつだ。度し難い。  これからのぼり降りする階段の数をうんざりと思い返しながら、俺は手の中の鍵を、強く握りしめた。
   ◆
 手すりに体を預けながら、踏みしめるように、一段一段を降りていく。  通りすがりに窓の外を覗けば、今もなお雑踏は雑踏のままに、かたまりを形成していた。別れが惜しいのだ。校庭の賑わいはやまない。それに引き替えここは静かだ。きっともう、誰も残ってはいないだろう。俺と、あの人以外は。  チャリ、と音を鳴らす銀の鍵を、指先につまんで見つめる。  誓いも、企ても、駆け引きも、裏切りも。二年前の、あの部屋から始まった。そして俺だけが残った。英智が、衣更が、姫宮が、時折やってくる日々樹や伏見が、あの部屋を随分と明るく、賑やかにしていった。それでも忘れたことなど一度もなかった。  十字路は、いまだにあの場所に在るのだということ。  渡り廊下へと続く、最後の一段を降りると、窓の外で、ひらりと花弁が舞い落ちた。桜が咲くのは、まだ先だったはずだが。気になって校庭を見下ろすと、外の連中も驚いたように空を見上げていた。降り注ぐのは薄紅色の花弁。おおかた、派手好きなあの道化師が、気球からばらまいているのだろう。奴の奇行には、常日頃手を焼かされてきたが、今日ばかりはなかなか粋な事をしてくれる。一度、大きく深呼吸をして、俺は別棟の三階を目指し、花舞う渡り廊下の中央をひとり歩いた。  廊下の行き止まりから、さらに一階分の階段を、震える膝でのぼり切る。  辿り着いた、一番端の白いドア。  そうっと、手を添えて、呼吸を整える。  心を決めて、思い切りドアノブを捻った。体当たりでもするかのように内側へ飛び込むと、入った瞬間ザアッと風が吹きぬけて、窓越しに見えていた薄紅の花吹雪が、眼前を覆い尽くすように迫ってきた。 ――朔間さん。  呼ぼうとしたそれは、風圧に負けて、声にならなかった。春風がやんだあと、目元を守っていた右腕をゆっくりと降ろすと、その人は机の上に行儀悪く腰かけながら、呆然と俺を見つめていた。花まみれになった漆黒の横髪を、気にも留めていない様子だった。 「……何を、驚いているんだ、あんたが――呼びつけたんだろう」 「あ、あぁ……そうじゃな。そう、じゃった。いや、よく応じてくれたのう、蓮巳くん。こんな老いぼれの呼び出しに――」  はらり、と乱れた前髪の上から、花びらが一枚、卓上へと滑り落ちる。 「――いや、なんか……やっぱ、やめようかな。うん。お前の前じゃ、こっちの方が、なんでかしっくりくるような気が、するから」  あー、と伸びをするように両腕をあげると、朔間さんは、開け放たれた生徒会室の広い窓を見やって、ぎこちなく笑った。 「見ろよ、敬人。渉のやつ、どっから花びらまいてんだ? こないだ貰ったっつう、デカい気球からか?」 「あぁ……あんたの言う、通りだ。それで、俺は、屋上から、またここまで降りてくる、羽目にだ、な」 「はは、息、整ってからでいいよ。時間は、有限だけどさ。今日くらい、ゆっくりしてもいいだろ」  ごめんな。たらい回しにさせてさ。  謝りながらも、朔間さんの赤い瞳は、どこか愉快そうだった。昔からそうだった。俺が、あちこち奔走するさまを、隣で見ながら楽しそうに笑っていた。子供扱いして、からかっているのだと思っていた。  俺はただ、悔しさを背負って闇雲に走るばかりだった。  そうではなかったのだと、気付きもせずに。 「……あれ、薔薇だろうな。綺麗なピンクだ。桜の代わりに、振りまいてんのか、渉。なかなか粋なことするじゃねえか」  花言葉は、感謝、だったっけ。  ぽつんと呟いたそれが正しいものなのかどうか、俺には分からなかった。  そんなことより、今しがた一人歩いた渡り廊下で、この人と同じことを感じた事実が、どうしようもなく目頭を熱くさせた。 「朔間さん」  そう呼ぶと、彼は呑気に頭の上に花びらを乗せたまま、うん? と軽く首を傾げた。 「あの時、言えなかった答えを、聞いてくれないか」  あんたはもう、覚えてなんか、いないかもしれないが――  そう続けようとして、息を飲んだ。 「聞くよ」  漆黒のまつげを震わせながら、泣き笑うような微笑を浮かべた朔間さんは、頬に貼りついた花びらをひとつ、そうっと取り除いて、俺の目を見つめ返した。 「それを俺は、ずっと、聞きそびれたまま、今日まで来ちまったんだ」  最後の杭を、抜いてくれよ、敬人。  返礼祭の時に呟いた洒落を再び口にして、朔間さんは俺の言葉を待った。 「俺は」  言えばきっと、馬鹿にされる。  昔々、そんな風に強がったせいで、伝えられなかった本当の言葉を、今なら素直に、思うままに、言えるような気がした。 「輝きたかったんだ」 “あの空で光る星のように”  思い返せばあの一瞬のステージが、俺の求めた全てであり、革命を起こそうと躍起になっていた頃、まだ見ぬ誰かに見せたかった景色そのものだった。  一面の虹模様。  サイリウムの波。  何も持たない者たちが、あがき、奇跡を起こし、手にいれた、本物の輝き。 「誰だって、何も持たない者だって、努力すれば報われる世界が欲しかった」  おいでおいで、と無邪気に呼ばれ、制服のまま間抜けに歌わされたことについては、少しばかり、悔しさもあるが。  あの時確かに思った。  俺が見たかったのは、これだったのだと。  本当は、他の誰に見せるわけでもなく、自分の、この両の目で、見たかった景色なのだと。 「一度くらい、光を浴びてみたかったんだ。誰かでなく、俺自身が」  確かに、英智のために、と動いたのも本心のひとつだった。あれは金と権力だけを振りかざす子供のようで、ほしいほしいと命を削るように財と力を行使していたのを俺はよく知っていた。あいつを見ていると苦しかった。あいつの苦しみは、俺の苦しみだった。幼い幼い頃の話だ。  俺たちが見たい景色は同じなのだと思っていた。  俺たちは、自らのあがきで手にした力をもって、虹の橋を渡りたかったのだ。  いつだったかの幼い頃、祖父は教えた。人生は苦行だと。生きて徳を積み、魂の輪廻から外れることこそが、我々にとっての幸福なのだと。英智に出会うことさえなければ、その教えを俺は信じたのかもしれない。  けれどその、決死の覚悟で削られた命が、今この場所でなく、死んだあとに評���されるなんて、あんまりじゃないか。  報われる方法が、あの世で解脱することだけだなんて。  そこから俺のシナリオは始まったのだ。  道化師の言うところの、“夢見がちで穴ぼこだらけ”のシナリオは。
「俺はさ、お前のためだけなら旗を振ってやってもよかったんじゃないかって、思ったこともあるんだ」  絡まった視線を、先に外したのは朔間さんの方だった。 「けど、お前、優しいからさ。俺とお前、ふたりだけ助かる世界なんか、欲しくなかっただろ? 自分と同じか、それ以上に苦しんで、あがいてる奴を放って、自分だけ助かるなんて、ゆるせなかっただろ?」  ズキン、と体の何処かが痛んだ。  その伏せられた真っ赤な双眸が、あまりに切なく見えたせいだった。 「お前の、そういうさ。青臭いところ、っていうか。誰も彼もを、なんとか等しく救いたいって無謀な気持ち、俺は結構好きだった」  だから余計に悲しかったのかな。  ぼう、と独り言でも呟くように、溢れ出たそれこそが、この人の本心なのだとすれば。  本当に、そうだとすれば、どれほど残酷なことを、俺は。 「俺、お前に言ったよな。俺は本当は、化け物でも、吸血鬼でも、なんでもないって。……俺だって平等に扱われたかったよ、せめて、敬人、お前にだけはさ。一人で旗振って、聖人よろしく民衆を導くなんて、そんなのって――あんまりじゃねえか。それに、知ってんだろ? 孤独な先導者の末路は、火炙りの刑だ、って……結果的に似たようなことになっちまったのは、皮肉なもんだけどな」  あいつらには、謝っても謝り切れねえよ。  自分と共に青春を謳歌した、四人の仲間に向けて、彼は黙祷するように目を閉じた。  処刑されたのは、自身ではなかったこと。  五奇人としての友の最期を、見届けることすら出来なかったこと。  それらもまた、彼が夜闇の世界へ身を潜めた大きな要因だったのだろう。自分が表だって動くことで、生まれる犠牲の多さを思い知ったのだろう。  けれど。 「やっぱりさ。一緒に振りたかったよ。革命の旗はさ。俺一人じゃなくて、誰かと」  この人は再び陽の当たる場所へと手を伸ばしたのだ。  世界を変えるために。  自ら見出した“何者でもない星々”へ。  そしてこの学院に、たった一人舞い降りた、奇跡のような少女の元へ。 「だったら――あんたの夢は、叶ったんだな」  負け惜しみのように、聞こえてしまったかもしれなかった。  だがそれは俺の、心からの祝辞だった。  どうか伝わってくれと、祈るようにその目を見つめた。 「お前の夢だって、叶ったんだろ?」  泣きそうに眉を寄せて笑う、特別神様に愛され生まれ落ちたこの人が、もう孤独ではないということが、俺には嬉しかった。 「ああ。あんたが――あんた達が、用意した、破天荒な四人と、一人のおかげでな」  ふ、と零した俺の笑みに、朔間さんは小さく息を吐き出すと、乱暴に机から飛び降りた。  窓から舞い込んで、卓上に積もった薔薇の花弁が、はらはらと床に零れ落ちる。気にも留めず、ずかずかと俺の正面へやってくると、朔間さんは、二度ほど瞬きをしたあと、息を吸い込んで、俺の左手をうやうやしくすくい上げた。  その手のひらに、乗せられた小さなものは。 「やるよ。あとで捨ててもいい。俺が渡したいだけ。けどまあ、こいつを死守するの、DDDで勝ち残るよりよっぽど大変だったってことくらいは、言わせてくれよな――」  確か、ここに入れたままのはずだ。  ズボンの右ポケットに、手を突っ込む仕草を、朔間さんはぽかんと見つめていた。カチ、とプラスチックの安っぽさが、爪に当たって響く。 「……敬人?」 「あんたの心臓は、まだ必要なんだろう?」  小さな小さな裁縫箱の、一番取り出しやすい場所に位置するハサミを抜き取って、己の制服に差し込む。ブツ。糸の切れる音が確かに聞こえた。俺は、ほどけた糸の隙間から、丁寧にそれを取り出して、目の前の胸元に突きつけた。 「生きていくんだろう。ここで。目印の旗を掲げて」  そして待つのだろう。  あんたと共に、自分の意志で、歩こうと決めた仲間のことを。 「敬人、」 「俺は、きっとあんたに背中を見せられる人間にはなれない。大神や羽風のように、この理不尽な世界を、走って行けるだけの力はない。それは自分が一番よく理解している。俺は、そっち側には行けない」  ほんの少し、うつむけば、己のくたびれた上履きが目に留まる。三年間、この学院のあらゆる場所を駆けずり回った、歴史の残骸。  決めたじゃないか。  全てを抱えて、それでもなお前を向いて、歩いていくのだと。  幾重にも汚れ、泥を被り、血の海を踏みしめてきた、この両の足で。 「だがもしいつか少し先の未来であんたの旗を支えることができるなら、俺は、」  言い切る前に、俺の視界は開け放たれた窓を綺麗に捉えていた。  視界の隅で、ゆるい巻き毛が、ふわりと揺れている。肩の上に乗せた額を擦りつけるように動かすと、朔間さんは、俺を抱える腕に力を込めた。 「……四年も待ってらんないぜ?」 「……抜かせ。四年後俺が敏腕プロデューサーになるまでに落ちぶれたりでもしたら、いい笑い者だぞ」 「はは、誰に向かって言ってんだよ。……朔間零ちゃんだぜ?」  強気に放たれた言葉は、泣きそうな声に乗って、俺の耳をくすぐった。  体を離すその一瞬のうちに、俺の手から金の心臓を奪い取ると、朔間零は笑った。  俺はそれを、美しい、と思った。 「どこにいても、分かるように響かせてやるよ。俺の声を。魂の叫びを。誰かと一緒に輝きたかった、あの頃自分で手放した、夢みたいなアンサンブルを――」  開け放たれた窓から、春風が強く舞い込んで、分厚いカーテンを強引に揺らす。  いつかまた、十字路が訪れ、道を選ぶ時。俺は今日という日を思い出すだろう。  この人の乱れた黒い前髪を。  その後ろで、奇跡のように踊る、深紅に染まる旗のことを。
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panette · 4 days
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i got curious about the japanese phrasing of this, and to the best of what my ears can pick up, it's amelia: あの…レゾさんのことは? / ano... rezo-san no koto wa? zelgadis: いいや. いいんだあいつもことは. / iiya. iin da aitsu mo koto wa. and to my very very very limited knowledge of japanese that is sort of operating on vibes and context rn, i think this can be taken a lot more ambiguously than "i'm fine with him now" in the sense of "yeah i've forgiven him" etc etc the dub exchange is: amelia: umm... what do you think happened to mister rezo? zelgadis: i don't know. but i think i'm alright with that. google translate gives me
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and deepl gives me....... okay, well, this isn't right LMAO
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let me try focusing on the word and particle doing the heavy lifting here
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when i hear "いいんだ" phrased as a question in anime, i tend to see in translated like... "is that fine?" "is it alright/acceptable [for something to be that way/to turn out like this]?" someone with actual japanese knowledge feel free to correct me here but when i hear what zelgadis says and try to parse it on my own it sounds like zel's broadly fine with the way the rezo situation has turned out. oh yeah lemme add one thing for further context
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his line here is いいんだこれで / iin da kore de
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crydayz · 11 months
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積極的に「嫌な体験」欲するのは内容さておき「味が濃い」のが好きだから。不快な刺激の方が往々にして「味が濃い」。あとから反芻する上でレゾが高くて「思い出ガム」として長持ちする。だから好き。
信心浅い囚人だって退屈に負けて聖書を読みふける。「退屈から逃れる」為なら人はどんなに不本意でポリシーに反する事だってするんだ。
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nemosynth · 2 years
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私を通り過ぎた電子楽器たち
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AKAI S700     12bit QD, レゾなしVCF、変。 AKAI S950     ややハイ上がりなローファイ、変。 AKAI S1000HD   HDDファン音がサンプリングされてしまう AMDEK CMU-800  同梱シーケンスソフトはカセットMTR同期可=オーディオとシーケンスと兼備せしDAW先駆者! ARP 2600 Rev.1  ええ音やったのに1週間で壊れても〜た! Arturia MicroBrute 変態VCO/VCF可愛いパッチング64ステSeq変態音色最高! Arturia microFreak  秀逸外観秀逸音色秀逸操作秀逸表示秀逸専用凹マイク、0-Coastと組合せてなんちゃってブックラ Ashun Sound Machine Hydrasynth Explorer よぉ勉強したはるね、もちっと操作性を詰めたら文句なしアプデ大期待 CASIO CT-201 "CASIOTONE"  初代カシオトーン、音丸い CASIO CT-403 "CASIOTONE"  意外にこれしかない音色あり、モンドなアナログリズム最高 CASIO CZ-101 ミニ鍵でもPD音源8ステEG! CASIO FZ-1  DCFのレゾ上げてカットオフ上げ切ると元気! CASIO VZ-1  自作アルゴリズム部分音合成変調音源最高 CASIO VZ-10M 変調方式こそ純粋な音色創造 CASIO VZ-8M 変調方式こそ純粋な音色創造だが発音数が足りん編集非現実的 Clavia Digital Musical Instruments nord lead 初代しかも12声拡張版、個性派な音! Clavia Digital Musical Instruments nord wave 初代サンプル読めて正体不明の音になるVAと最大6オペ簡易FMとマルチピークフィルターとオブジェクト指向なモーフィング最高! Cre8audio West Pest あらゆる波形をフォールドできる西海岸セミモジュラーしかも音が良い!環境にやさしい段ボール箱の印刷技術もひそかに優れている Dave Smith Instruments mono evolver keyboard PE 2連左右配置デジアナシンセ超変態 Dave Smith Instruments prophet 12 5でなく12、最強預言者、私は前を向く!!!!! Dave Smith Instruments PRO2 モノ・パラフォ最強ハイブリッド超変態 ELECTRO HARMONIX MINI-SYNTHESIZER 歪んだ音ですぐ壊れた elektron SIDstation  よく飛ぶらしい、リング変調3基すばらしい Emu Emax S.E   VCFがSSM系の音、E IIワンチップ化 ensoniq SQ-80  アジのあるレゾるハイブリッド・シンセ ensoniq VFX   ひとめぼれ、デーハーのみならず幽玄な音も出る ensoniq VFX SD II 今も右腕、なくしたら相当に落ち込む ensoniq EPS16Plus  メリケンな音の迫力とデモ曲グッド ensoniq TS-12    エンソ最後の孤高の名機 ensoniq ASR-10R   エンソ最後の孤高の名機 学研 SX-150 本屋でシンセが買える、しかもそぎ落としの美学 HIkari Instruments Duos ちっさいのに木製側板恐れ入り高精細ボディにパンキッシュなフォントと逝ってるチャネリングしかもゲームコントローラみたいな両手UI叫ぶシンセCV/Gate接続可能PRO2ハックするデバイスBOSS PSA-100ご推奨露西亜製Lyra-8買えずこっちにしたが正解 HOHNER D-6 "Clavinet"  PU壊れたクラヴィどないすんねん KORG 700S "miniKORG" 真似できない音楽的なサイン波最高!と思ったら実は三角波 KORG 800DV  少ないパラメで多彩な音が出る異形の黎明期混沌シンセ KORG MS-10  東洋の哀愁、でもフィルターレゾナンス金属的歪み凶暴 KORG MS-20  個体差でEGの立上がりが早くデジタルっぽかった KORG MP-4 "MONO/POLY" やんちゃ坊主最高! LFO2基あるのもいい KORG PS-6 "Polysix"   演歌みたいな泣きの音がトランスに合う KORG DW-8000  正体不明の音が最高な鍵盤、エディットし倒した KORG EX-8000  正体不明の音が最高なモジュール KORG DVP-1   5声ボコ、フォルマント操作可能 KORG DSS-1   でかい重いVCF2連モジュレーション・ディレイ KORG DS-8    青春をついやしたFMシンセ KORG WS-1 "WAVESTATION EX" おもろいけど難解、ニューエイジに人気 KORG 01/W FD  音源波形に遊び心、でもパターントラックでパターン枠外さなあかんのは、あかん KORG Z1EX    既存シンセへのアンチテーゼは偉い! KORG KARMA with MOSS Expansion  シーケンシング革命は激楽しいけど難解 KORG monotron これはどこでも遊べる純アナログモノシンセ、でも音階で弾きたい KORG monotron DUO 音階で弾くべく購入するも鍵域が狭すぎ実用的でなく KORG monotrol Delay サイケにトリップする60sセンセーション再現 KORG KRONOS 61keys すんげー多機能多芸、でも画面の文字が小さすぎ起動遅すぎサンプルRAM少なすぎ音色メモリー無さすぎ! KORG minilogue xd  初代はヴィンテ総括音、xdは未来的アナログ音かつp12廉価版の如し、multi-engineでDW-8000再現感涙 KORG NTS-1  Shimmer Reverbデフォだけでも最高! C++攻略前に頓挫笑 KORG wavestate こなれたウェーヴシーケンス、操作性難解、エディター万歳 KORG modwave  こいつもp12廉価版の如し、しかもKRONOS切売第3弾KURZWEIL PC361  仮想モジュラー単体ハードシンセ、内蔵FXまでモジュラー、凄まじ!! Make Noise 0-Coast 変態セミモジュラー、日影の西海岸シンセシスが逆襲! modal electronics Cobalt5S  キュレーター的VA、オサレ外観も新時代、操作お作法独特、バスパワー鍵盤コントローラーにVAと思えば超今風 moog 338BX "LIBERATION" WHITE 重たい、心斎橋クラブクアトロで弾いた novation mininova ミクロKORG20年、ミニNOVA10年、ロングセラーにはわけがある nunomo QUN mkII グラニュラー+ヴァーチャルアナログ基板シンセ緻密! Oberheim XP-1 "Xpander" フラクタルモジュラーええ音、サービスモードも楽し Pioneer DJ - Dave Smith Instruments TORAIZ AS-1 ほぼp6モノ版すぐれて現代風かつ良質アナログ音で過去のしがらみ関係ない宜しい! Roland System-100   セミモジュラー、実は螺旋のイントロ Roland System-100M  フルモジュラーど定番、100ともどもソフトシンク有 Roland SH-09     ハードケース付!日本の少年少女に夢を与えた名機 Roland JP-8 "Jupiter-8"  ゴージャス!な外観。ユニゾンモードとクロス変調楽し Roland JU-6 "Juno-6" HPF無段階連続可変!野蛮DCB改造済!外観バランス良し! Roland JU-60 "Juno-60" 鍵盤タッチ改善、高完成度、外観バランス慌てぶりが垣間見える笑 Roland JP-6 "Jupiter-6" MIDIつきVCO珍しい、音源波形を加算できるのも良い Roland JX-10 "Super JX" x 2 DCOでも深い音、Fence of Defenseの音 Roland MKS-100   日影のS-10モジュール、でもライブラリーたくさん持ってた Roland S-10 x 3   火を噴くくらい使い倒した青春のひとコマ Roland S-550 x 2  CRTでフェアライト気分、RC-100とマウスもあっただよ Roland D-50   エイリアス万歳!! 永遠の名機、部分音合成っていいねRoland D-10   へんなリズムマシン内蔵がまた良い Roland D-5    実は常にサウンド・パレット状態でエディットしやすいRoland A-50   エディット・バッファ無くて困る、手放したが買い直した Roland W-30sc  音源波形がみんなつながっててお祭り Roland JD-800  やわらかい音がやさしい、エディット快適!シンセはこうでなければ Roland JV-90   鍵盤数が多くて手ごろ Roland Rhodes VK-1000  ハーモニック・バー・シンセ、上にもう1台載せれるけど邪魔 Roland S-770   けっきょくただの重し Roland DJ-70   タンテ型コントローラ付サンプラー、階層深すぎ、劇団ポン出し向け Roland SC-8850 なんでGS/GM音源がうちに?かなり壊れてる Roland XP-80   これはロングセラーやったな Roland XV-5080  それまでにない柔らかい音もでて新機軸 Roland VP-9000  当時は物真似ばかりだったソフト音源に喝ハード! Roland VariOS/V-Producer III デザイン秀逸、ミニ・プロツー的 Roland V-Synth  ひさびさに出たイカれたシンセ Roland V-Synth XT  ちょっと大人になったかな Roland VC-1 "D-50 for V-Synth/VariOS" モノホンのソースコードまんま移植したそうな Roland VC-2 "Vocal Designer" 結構役立つ、歌詞つきで合唱隊を歌わせられるし Roland Fantom-XR   VFX後継者のつもり保険のつもりがエキパン再生機に Roland SRX-02 "Concert Piano" めずらしくダークな音の生ピアノの音 Roland SRX-04 "Symphonique Strings" 大好きな弦楽のみのエキパンだから大好き! Roland SRX-05 "Supreme Dance" テクノ4人組3人組の追悼リズムセットよろし Roland SRX-09 "World Collection" やっぱ民族楽器あってこその音色ライブラリ! Roland SRX-11 "Complete Piano" 88鍵サンプリングでカミさんの練習用音源に Roland AIRA TB-3 変態DSPモノシンセ変態シーケンサーこそが本質 Roland JD-XA デジアナ直列並列縦横無尽重層的16系統快適編集万歳 Roland SH-4d ZEN-Core外伝独自音源11 Osc. モデル卓上電池駆動万歳 Sequential Circuits "prophet-5" Rev.3  40メモリー、ポリモジュとPWMとVCFの相性よき個体差 Sequential Circuits "Pro-One"  めっさ太いシンベと秀逸デジタルシーケンサーたった40音 東京優勝 WHOLETONE Revolution  弾きこなせず!!!! waldorf microWAVE XT  ヲタなのにポップでグレイト! YAMAHA CS-15   古いのに二系統音源は流石、鍵盤タッチいいのも流石 YAMAHA CS01   シンセ基本形 YAMAHA DX7   2019年にもなってほんまにこれが来る日が来るとは! KQ Dixieでエディット YAMAHA DX9   やっぱこれこそがDXですよ YAMAHA DX100  やっぱこれこそがDXですよ YAMAHA TX7   DX7よりも賢いDX7音源モジュール据置型クール! YAMAHA TX802  変調方式を重ねてディチューン最高 YAMAHA V50   中堅機種のわりに、なかなかに手ごわい YAMAHA SY35   重量軽い、ええ音する
KORG monotribe フルアナログ音源グルボ、MicroBruteとGate同期させると激楽しい! KORG Kaossilator 2 よく考えられて楽しいけどおもちゃなので飽きる KORG volca modular  よくここまで詰め込んだね♬ でも頓挫魂炸裂笑 KORG volca nubass  ふっる~いホコリっぽ~い真空管サウンドも楽しい Roland D2  謎のグルボ異端児 でもVariPhraseちゃうであの音色変化は Roland SP-404mk2  実はVariPhrase搭載型サンプラー!独自変態FXも◎
AMDEK RMK-100 x 2 アムデックのトホホなDIYリズムボックス! KORG DDD-5 長く使用。ベロシティ・パッドと音色カードが新しかった KORG DRM-1  すぐ売り飛ばした。私にラックは合わない KORG PSS60  なんで買ぅたんやろ? KORG WAVEDRUM Mini 和太鼓 和太鼓とWaveDrum Miniとがニコイチ!和のこころとSondius XG! Roland CR-78  我が家のクロック・ソースでした! Roland CR-68  日影もんですが、良い音します Roland TR-606  フォークソングおっさんが呉れた!!!! Roland TR-707  かなり故障中 Roland TR-626  なんでうちにあってんろ? Roland R-70   リズムパターン自動生成。エスノなのは下手。ポジショナルパッドよろし。外観ポップ Roland R-8 MKII  永遠の名機。外観も硬派。'80年代後期はこれでしょう
KORG SQ-8 x 2 DW-8kワーステ化をもくろむも変態さを自慢して終わり KORG SQ-1  これほしかった!S/H波LFOの代用になるし安いし USB-CV/Gate I/F になるし Make Noise 0-CTRL これもなんちゃってブックラ素晴らしい!!! Roland MC-500 バルクライブラリアン最高! タイ航空ステッカー最高! Roland MC-500 mkII クロックが揺れず、ダイアル一発でリタルダントとかできて良いらしい Roland MC-50 mkII 最後の単体ハードシーケンサーSMF互換ロングセラー YAMAHA QX5 多機能やねんけど使いにくくて、と思ったらもっぺん来た笑 YAMAHA QX3 これ、はやりましたな!
novation SL MkII 61keys オートマップ便利だが分かりにくい、SF的発光良い! (Roland)EDIROL PCR-M1 移動中ノーパソと相性抜群 (Roland)Roland ED SK-500 内蔵音源ぷー、なんでUSB鍵盤のくせしてバス駆動せん??
KORG MS-03 x 2 Pitch to CV変換機、謎リヴィジョン違い KORG KMS-30  DIN同期とMIDIとを変換するレアなボックス貴重 Oberheim Cyclone アルペジエイターのみの変態マシン Oberheim Strummer ギター奏法を再現というが、なかなか半端 Roland ASC-1 "Arabic Scale Converter" x 2 知られざる変態MIDI変換マシン Sigboost “midiglue” 史上初MIDI/CV Programmable Processorメルカリ!
BOSS HF-2 "High Band Flanger" 高い周波帯だけフランジングするアイディア商品 BOSS MZ-2 "Metalizer" ���の名も凄い、アナログ歪み+デジタルかな?によるコーラス BOSS XT-2 "Xtortion" その名も凄い、効果もエグい、でもアナログ歪み BOSS DM-2W "Delay"  アナログディレイ技ペダル、あやしいBBDだそうでよくぞ頑張ってくださいました感涙 BOSS VT-1  変態ボイスチェンジャー、某公共事業に寄贈 BOSS WP-20G GK P.Uが要るのにどないすんねん BOSS RE-20 "Space Echo" 極上のテープエコーをモデリング、綺麗な音 BOSS SL-20 "Slicer" シーケンシングに匹敵するツインペダル!
HeilSound Talking Modulator  ほとんど使わず、めっさ重たい Ibanez SDR1000+  2連MIDIタイム可変高音質デジリバ死語SONY製 KORG SDD-3300  3連モジュレーション・ディレイで変態 Roland RE-101  やっぱテープエコーですよ、800DV 等にかけっぱなし Roland RE-201  名機なのは分かるけど、この機種のみ有名なのは何故? Roland Revo30 x 2  珍品レスリーFX、非常にチープな音 Roland SDD-320 言わずと知れたディメンジョン、プロ5と相性抜群、取っ手もかっこいい Roland SDE-3000A ビット数が粗いのがかえって名機となるも、結局使わず Roland RSP-550 x 2  当時ボコーダーがほしくて入手 Roland E-660 x 2  中古で入手するにもほどがある、エディット時の反応が遅すぎ! Roland EF-303 x 2  友人にあげたらフォノイコになった!! SONY DPS-F7  ウソっぽいフィルターで硬い音のシンセにもなるがその音もウソっぽい、でもSONYシンセ! YAMAHA REX50  まともな使い方せず遊んだ青春、世界初デジタルディストーション なんやしらん緑の小さな Ring Modulator  ただ歪むだけ なんやしらん光学式のワウ  口に入れたり脇にはさんだりしてワウる
Roland A-880 MIDIマージ重宝したMIDIパッチベイ Roland A-110 ただのにぎやかしになるMIDIノート表示板
Roland M-480 48chラック型ミキサー! 経年劣化でノイズ Roland M-240 24ch 据置型ミキサー! 経年劣化でノイズ KORG KMX-122 フロントにイレギュラー入力は便利だがすぐ歪む
(Roland)Cakewalk UA-1G カミさんの Mac 用、借りて使って使いやすさにびっくり (Roland)EDIROL UA-101 私の Mac 用、大活躍だが生産完了になってから入手したので老兵 Roland UA-1010 "Octa-Capture" UA-101 の後釜。Auto-Sens 機能便利 Roland Rubix44 Octa-Capture後釜、4ch充分、Generic driver充分
Fostex X-28H VUではなくLEDレベルメーターに未来を感じた青春 TEAC TASCAM Porta One "MINISTUDIO" ピンポン録音だ! TEAC TASCAM Porta Two "MINISTUDIO" 入力端子が多くて当時アマにグッド! TEAC TASCAM 688 "MIDISTUDIO"  カセットで8トラ! 使い倒した! Roland VS-1680 "V-Studio" w / CDR-88 ピンポンしても音が劣化しないのに仰天! CD焼けてバックアップまでできて、また仰天!
Roland CD-5  使わずじまい、っていうか使えずじまい??
ableton Live w / various VST plug-ins Ver.1.0から使ってておもろかったけど安直に曲できすぎて飽きた ableton Live Lite 8 のばちょんのオマケ、VSTホストとして使うつもりが使わずじまい Apple Garage Band 当時これで同時録音可能音声トラックが8トラあったら充分やったのに Apple Logic Express 9 ガレバンが↑だからこれを買うはめに。凄い万能ぶりにぼーぜん Apple Logic Pro 9 なんせ最上位機種がダウンロード販売で1万7千円しかせんのでぼーぜん Apple Logic Pro X ゼロからの再出発 Apple Garage Band iOS まさか8トラが32トラになって無償になるとは!
Arturia Pigments 3 これはあたらしい音がするねぇ Arturia CS-80V ヴァンゲリス御大の神器、実物80kgもして所有不可なのでソフトで Arturia prophet-V キャンペーンでタダで入手!!プロ5とプロVS合体がいい Arturia minimoog V Original キャンペーンでタダで入手!!太い音しますねー Arturia Matrix-12 V Xpanderの代わりに入手、やっぱ LFO ×5基は凄いねぇ DEXED これは使いやすいDX7完全再現フリーウェアしかも今風の音もいろいろあり Garritan World Instruments 安い音質だが打楽器豊富、常にマルチ音源なのがちょっと KORG LegacyCollection MS-20 単品売りで安価、少々時代を感じる操作性だけど個性派 KORG M1Le キャンペーンでタダで入手!! レゾナンス無いし M1 そのもの Miroslav Philharmonik CE 格安キャンペーンで入手、原音忠実すぎて音域限定は使い辛い Media OverKill Waverazor もっともぶっとんだイカれた壊れたイカしたソフトシンセ!! Native Instruments Razor この変態音源が最高、なんせリバーブまで 320 倍音加算合成! Native Instruments Prism 変態打楽器物理モデリングシンセ、持続音にするとなお変態で良い Native Instruments Micro Prism 変態打楽器モデリングシンセ簡易版、遊ぶだけなら充分 Native Instruments Scanner グラニュラーで遊びたくて、しかも安かったし Native Instruments FM8 まぁクロノスとDX互換させたかったので、って変な理由ですね PPG WaveMapper2 奇才ジジイ極変態ウェーヴテーブルを超越タイムコレクテッド音源、楽しい! UVI 各種デモ版ばっか走らせるもスタンドアローンで弾けず waldorf largo 変態シンセメーカーの集大成的変態シンセが楽しい W. Taylor Holiday Audulus おそろしく基礎から始めさせられるモジュラーシンセ じつは膨大なフリーウェア音源とエフェクトたくさんたくさん
Toybear Robobear 変態グラニュラーフィルター VST FX、PowerPCのみ対応残念
AQ Interactive KORG DS-10 @ NINTENDO DS Lite やっぱ物理鍵盤で弾きたい DETUNE KORG M01 @ NINTENDO DS Lite 「Lore」音色をカオスパッド演奏すると楽しい
IK Multimedia iRig MIDI 30pin-Lightning アダプターケーブル併用だがMIDI Thruに拍手! IK Multimedia iRig MIDI2 前のがOSアプグレで非互換しょぼ〜ん対策
apesoft iVCS3 シンセ混沌の黎明期ラヴ&ピースなウッドストック+現代サンプラーでにこにこ Arpie 休日にやってると廃人になる AudioKit Analog Synth X カスタマイズできる無償アプリらしいが、勉強する時間が AudioKit FM Player サンプルベースだが使えるしレゾナントLPFもあるし無償やしええ時代 CASIO CZ やったー、この調子でぜひともVZ-1もアプリにしてくださいお願いします!! Compasso 方位磁石を操作子に使う変態シンセ Konaka Lab Fourier Synthesizer 教育的サイン波加算合成 KORG iElectribe リズムパターン勉強用だから私には珍しくプリセット命KORG iKaossilator ナウいねー KORG Gadget iPadでこんな楽しいDAWができるなんてええ時代 KORG iDS-10 アナモデのワークステーション・アプリシンセもここまで来たか KORG iWAVESTATION 初めてWaveStationの真価を発揮できる操作性、次は構造そのものを改善して下さい KiraQ Tech KQ Dixie DX7フルコンパチが480円って、もう時代はどこまで行くのや moog Animoog 老舗が8音色ベクター合成ポリアフタータッチ対応のナウいポリシンセを!! moog Animoog X ベクターが三次元に! もはや異次元シンセ!!! moog model D  ミニモーグが神々しすぎて手に入れるのが恐れ多い私に moog model 15 老舗ご謹製だけあってガチええ音すんで♬ Native Instruments iMaschine ナウいねー、サンプリングできるのもいい Peter Vogel CMI IIxとIIIの音が全部入ってPageRも世界遺産ですな、サンプリングもできるし PPG minimapper これは変態ですねー、生楽器をハイブリッド合成できる Procyon Studio Handy Harp ごっつー気合い入ったリアルなハープグリスができる Propellerhead Figure ナウいねー、パラメータを簡単オートメーションできるのもいい Propellerhead Thor for iPad なんでもありな万能シンセだけどバグ多し Pulse Code Modular 美しいモジュラーシンセ Reaktable Mobile あまりに先端的すぎてなかなか使いこなせないけど凄い ROLI NOISE ポリアフタータッチと物理モデリング音源との変態組み合わせが楽しい Seaquence 水族館グルボ、クラゲ的シーケンシングUIすげー Super Manetron メロトロンを24/96で全鍵サンプリングした真打ち TANSU Synth 松武秀樹の意地をご家庭で Vio 変態ヴォコーダー waldorf nave 同社総決算ソフトしかも見た目も使い勝手も抜群 Wizdom Music Geoshred ジョーダン・ルーデスがライヴで弾きまくる iPad、ギターなUIと物理モデリングで最高の表現力!!
Brian Eno Bloom これは楽器なのか? 楽曲なのか? 進化し続ける先端的作品
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nkhr0401 · 2 years
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性中立的な言葉
対象の性別を限定しない、性中立的な言葉の覚書。見た目等で他者の性別を勝手に判断しないこと。誰かを排除していないか考えること。自戒を込めて。 ※私による造語は「*」を付している
〈敬称接尾辞〉
-さん 性中立的な敬称接尾辞。
-ちゃん/-くん 性中立的な敬称接尾辞として使用することもでき、必ずしも対象の性別を限定しない。親しみを込めて呼ぶときに用いる。 ※相手の承諾を得てから使うこと。
〈三人称代名詞〉
かのと【彼人】 性中立的な三人称代名詞。RPGゲーム『Ikenfell』において ze/zim の訳語として「彼人(かのと)」が使われている。
かのひと【彼人】 性中立的な三人称代名詞。翻訳者の木原善彦氏が単数 they の訳語として「彼人」を提案している。 ※性中立的な三人称代名詞「彼人」は2010年代前半に同時多発的に造語されたと考えられるが、「かの-ひと」というコロケーションは古くから存在する。
かれ【彼】 性中立的な代名詞として「彼」を使用する例がある。現代では男性の代名詞として主に使われるが、代名詞「彼女」の登場以前は女性にも用いられていた。 ※男性性を表現する代名詞「彼男」が提唱されている。
かれ【渠】 代名詞「彼女」の登場以前に、文学作品などで性中立的な三人称代名詞として使用されていた。
〈関係性〉
えんくる・おんくる*【遠來】 性中立的な叔母/叔父/伯母/伯父の言い方。英語の auncle の音写。
しぶ*【枝分】 性中立的な姉/兄/妹/弟の言い方。英語の sib の音写。
しぶりん*【枝分隣】 性中立的な兄弟姉妹の言い方。英語の sibling の音写。
クワモア*[quoimour] かけがえのない存在であるが交際関係にない相手。何(quoi)+愛(amour)の造語。 ※「かけがえのない」にはクワロマンティック(quoieomantic)的な含意があり、相手に恋愛的な惹かれを抱いている必要はない
パラモア*[palamour] かけがえのない存在であり交際関係にないが継続して性的関係にある相手。親友(pal)+愛(amour)の造語。 ※「かけがえのない」の含意については「クワモア」に同じ
〈フィクション〉
NL[Non-binary Love] ノンバイナリーラブ。性別二元論を前提としない親密な関係性、またはその作品やジャンルの総称。 ※GL/BLに対応する異性愛作品やジャンルの総称として「NL」が使われているが、これは「ノーマルラブ」の略称であり、同性愛をアブノーマルなものと位置づけてしまう問題がある。 ※人口に膾炙した「NL」とは異なる意味であるため、草創期である現在は「NL」と「NbiL」の併記を提案する。
ReSo 既存のカップリング概念にあてはまらない関係性(ポリアモラスな関係性や恋愛・性愛を含まない関係性)、またはその作品やカテゴリーの総称。人間関係(rerationship)+解像度(res.=resolution)の造語。「レゾ」と読む。ReSo愛好家をReSoner(レゾナー)と称す。 ※概説記事はこちら。タグ使用の際は必読のこと。
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jz2p · 1 year
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nosui · 3 years
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個展『レゾ』③ 寺田てら pixiv waen gallery . . . . . #寺田てら #レゾ #pixivwaengallery #artist #illustrator #art #artwork #artexhibition #ドローイング  #arts #exhibition #예술 #艺术 #arte #現代アート #fineart #modernart #comtemporaryart #アート #illustration #イラスト #newcontemporaryart #popsurrealism #drawing #popart #painting #portrait (Pixiv WAEN Gallery) https://www.instagram.com/p/CJ3F4CgLxsT/?igshid=ov04qbzys8i4
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ahb-writes · 5 years
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If the powers of man are not enough, then one must turn to either the powers of gods or the monsters.
Rezo the Red Priest
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andersunmenschlich · 4 years
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Slayers CD Set Booklet (5)
The next two pages from this booklet:
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闇に住まう者たち Those Who Dwell In Darkness
獣神官(プリースト)ゼロス (Beast) Priest Xellos
何を聞かれても「それは秘密です」の決め台詞で周りを煙に巻く謎の神官。その正体は、魔王シャブラニグドゥの腹心の一人、獣王ゼラス・メタリオムの直属の部下。穏やかな外見とは裏腹に、たった一人で何千頭の竜族を破滅に追い込むほどの力を持つ高位魔族である。「NEXT」で冥王(ヘルマスター)フィブリゾの命令で、魔竜王(カオスドラゴン)ガーヴの陰謀を阻止すべくリナを巧みに誘導するなどの暗躍を行う。なにかとトラブルを起こしがちなリナを、つかず離れずの距離感を保ちつつ探り続けている。
A mysterious priest who uses the catchphrase "That is a secret" as a smokescreen no matter what's asked. Is actually the direct subordinate of Greater Beast Zelas Metallium, one of Demon Lord Shabranigdo's inner circle. Contrary to the amicable outward appearance, is a high-ranking demon with enough power to singlehandedly drive thousands of dragons to destruction. In "Next," on Hellmaster Phibrizzo's orders, carries out various behind-the-scenes operations such as skillfully guiding Lina in order to obstruct Chaos Dragon Gaav's schemes. While maintaining a neutral distance, continues to spy on / enjoy the natural beauty of the trouble-prone Lina.
[Translator's note: No gender-specific terms are used anywhere in this paragraph.]
赤法師レゾ Red Priest Rezo
五大賢者の一人に数えられている聖人。盲目というハンディを背負いながらも、あらゆる魔法に長け、諸国を回り多くの人に治療を施す。その行動の裏には、自分の目を治す魔術を研究するための予行演習という意図があり、実は目的のためには手段を選ばないエゴイストである。その邪悪さは、彼の体内に封印されていたシャブラニグドゥの力が影響していた。ゼルガディスを合成人間にした張本人でもあり、『無印』『REVOLUTION』『EVOLUTION-R』と、何度も復活してはリナたちと死闘を繰り広げる。
A saint numbered among the five great sages. Even while bearing the handicap of blindness, is proficient in all magics and goes through various countries curing many people. Behind those actions is the intention of making dry runs in order to research magic to heal his own eyes: in truth, he is an egoist who will stop at nothing to achieve his goals. That evil is due to the influence of Shabranigdo's power, which has been sealed within his body. The person responsible for turning Zelgadis into a composite human, makes many comebacks in "Unlabeled," "Revolution," and "Evolution-R," unfolding life-or-death struggles with Lina and company.
赤眼の魔王(ルビーアイ)シャブラニグドゥ Ruby Eye Shabranigdo (Red-Eyed Demon Lord)
リナの住む世界において、すべての魔族中で頂点に立つ存在。遙か昔から神(赤の龍神スィーフィード)と世界の覇権をめぐり戦いを繰り広げてきたが、約5000年前、神にその身体を7つに分けられ、世界の各地に封印された。しかし、その影響力はいまだに絶大で、自ら作り出したガーヴやフィブリゾなど5人の腹心と共に、世界を闇に葬ろうと暗躍している。ちなみに、リナの必殺技「竜破斬(ドラグ・スレイブ)」はこの魔王の力を借りた強大な魔法である。
The being who stands at the top of all demons/mazoku in Lina's world. Since the remote past has been fighting God (Ceiphied the Red Dragon) for supremacy over the world, but about 5000 years ago was split into seven pieces by God, and each piece was sealed in various places of the world. However, still has immense influence even to this day, and with five trusted retainers including Gaav and Phibrizzo, secretly maneuvers to bury the world in darkness. Incidentally, Lina's surekill move, "Dragon Slave," is a powerful magic that gets its power from this demon lord.
[Translator's note: No gender-specific terms are used anywhere in this paragraph, either.]
金色の魔王(ロード・オブ・ナイトメア) Lord of Nightmare (Golden Demon Lord)
魔王に頂点に位置するのはシャブラニグドゥだが、さらにその上に存在する魔王の中の魔王。さらに魔族だけではなく、世界の全てのものを統べる創造主とも呼べる存在である。リナがシャブラニグドゥを倒す際、この黄金の魔王の力である「重破斬(ギガ・スレイブ)を発動するが、一歩間違えれば世界を滅ぼしかねない危険な魔法である。『NEXT』では「重破斬」の制御に失敗したリナに、あろうことかこの黄金の魔王が同化するクライマックスが描かれた。
Shabranigdo is situated at the top of the demon lords, but even higher than that is the demon lord of all demon lords. This being can be said to be Ruler and Creater not only of mazoku, but of everything. When Lina defeated Shabranigdo, she invoked the spell that is this Golden Demon Lord's power, "Giga Slave (Extreme Destruction)," but it is a dangerous magic that can destroy the world if even the smallest mistake is made. In Next, Lina failed in the control of "Giga Slave" and (of all things) this Golden Demon Lord absorbed her in the depicted climax.
[Translator's note: And no gender-specific terms here.]
リナが魔王より恐れる“郷里(くに)の姉ちゃん”とは? The "Hometown Sister" Lina fears more than a demon lord?
郷里のゼフィーリア王国でウエイトレスのバイトをしているリナの姉。あの傍若無人で天下無敵のリナが、唯一心の底から恐れている存在で、その名を聞くだけで恐怖におののいてしまう。どうやらこの姉にトラウマになるぐらい鍛えられたらしいのだが……リナにとっては魔王より恐い存在である。『TRY』のオープニングで一瞬だけその姿を見せる。
Lina's older sister, who works part-time as a waitress in their hometown of Zephilia. The only being the peerless and arrogant Lina fears from the bottom of her heart; just hearing the name makes her tremble in terror. Apparently she was trained/disciplined by this older sister to the point of trauma, but... as far as Lina is concerned, this being is more terrifying than a demon lord. In the opening of "Try," her form was shown for a second only.
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cha-dance · 4 years
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FirstSaturday白河
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土曜日のFirstSaturdayに備えて、金曜日から福島入りしました。 そして翌日(当日)朝から「東北本線」という名のローカル線の罠にハマる。 郡山から白河行くのに、朝8時ちょっと前の次が9時過ぎとか想像もしてなかったダイヤ! …まぁ、朝まで調べてなかったんだけどw
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FirstSaturday(以下FS)は14時からだったんですが、 #BannerRuck という「10lb(ポンド、約4.5kg)の重りを背負って10km歩く」というイベントというか苦行というか、修行というか…が10時からありまして。
家に5kgある、こんなものもあったんですが…
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これを家から持っていって、終わったら持って帰る事を考えると「無理!」と思ったので、白河駅前のローソン(元スポンサーでも大事!)で2リットルのミネラルウォーター2本と500mlのお水2本を買って重りがわりにしました。
参加者は8人! 出発前にバナーラックミッション(6連作)を作成された方から「3番目のミッションは距離があるから、必ず相互確認してね!」と注意喚起されました。お城(白河小峰城跡)の前で記念(証拠)写真撮ってからスタート。
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「10ポンド、そんなに重くないじゃん」と思いつつ歩いてたんですが、Instagramに投稿してたら結構置いていかれ、常時最後尾歩いてた気がします。
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先月に「アーバン(Urban : 都会)」+「ルーラル(Rural : 田舎)」=「 #ラーババン 」なんてイベントに行ったのですが、ミッションの3番目が終わり、4番目をスタートすると最初のWayPointが1.4km先! そう、ルーラルです…。
でも峠道を抜けるとバイパスみたいなところに出ます。でも、何もない…。
結構歩きましたが、市街地へ戻ってきました。城の裏側に着いて5番目のミッション終わったー! …と思ったらまさかのトラブル! ほぼシーケンシャル(順番通りHackする)ミッションだったんですが、5番目に入り最初のポータルをHackし損ねて、最後まで来ちゃった方がいて戻って行かれました…。
戻ってくるまで、ポケストップにルアーを入れて休憩。 そこから城のある公園を回って13時頃、午前の部終わり。
FSの集合場所の「丸の内会館」へ。 仰々しい名前ついてますが、至って普通の田舎の集会所でしたw 結構人が集まってます。見慣れた方もいれば、そうでない方もいました。
ここで昼ごはんなんですが、 #BannerRuck 部隊はここからが違います! 昼ごはんは出前ですwww
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白河ラーメンの「田楽食堂(でんがくしょくどう)」さんでした。 いろいろメニューはあったんですが、何に忖度したのか頼んだ人みんなチャーシューメンとかw
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水分取ってないなぁと思い、スープを全部飲み干して完食!
そして、PoCのご挨拶やXFのチーム分け(ソロが結構な数いた気がします)、諸注意があり、 #FS白河 計測開始です。
#BannerRuck 部隊は引き続き、FS記念の6連ミッションを遂行します。 丸の内会館でたところから「わんこ(焼かれたポータルにひたすらレゾネーターを挿し続ける行為、わんこレゾ)」開始です。
小峰城跡からミッションスタートしてから、地下道潜って白河駅前に出た時点で1レゾが100本以上なくなってました…。
住宅街や川沿いの田舎道を歩いて進めます。途中でおばちゃんの集団に「何をやってるの?」と聞かれたりしました。そりゃそうだよね。見慣れない人たちが集団で歩いてたら不審ですよね。。Agentの本領発揮w
記念ミッションの方は、街中を通る感じでした。大きい町なんだろうけど、古き良き地方都市だなぁという感想でした。
終わってから重量の確認。
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結構背負ってました…。
もったいなかったけど、手付かずの水4リットルを捨て、重りから解放!(1リットルはもったいなくて持ち帰りましたw)
計測終了でStatsを更新します。 自分でもびっくりしたんですが、266,596AP(7位だったらしい)も稼げてました。 この日は年末からのイベントの続きで「ポータルへの8本目のレゾ挿しのAPが3倍」だったので何のレゾでもいいので、ミッション中はフルデプロイに徹してました。これが功を奏していたようです。
…インベントリは大変なことになりましたけどね…
FS終了後は、兼業魔法使いの方々と白河駅の隣の図書館へ移動して砦バトル。 高レベルの部屋が開いていない方と秘密保持法の最後の課題「3人以上で3回バトル」をクリアできていない方がいたので、ヘルプをしつつ、最後には闇の部屋IVを攻略。闇祓いが一人だったのでひたすら働かせられましたw(回復や蘇生役がいたのはほんとに助かりました)
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新年会直前になり、慌ただしく解散。 参加者の皆さん、お世話になりました。
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新年会もいっぱい話したし、いっぱい笑いました。 非日常のイベントは楽しいことを実感しました。
PoCの方、スタッフの方、参加者の皆さん、お世話になりました。 またどっかで笑えるといいですね!
#FS白河 #FirstSaturday #BannerRuck #IngressPrime #Niantic
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yk4w · 3 years
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eyes8honpo · 6 years
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三章 荒野に歌を祝福を
「敬人ちん」  そんなトンチキな敬称をつけて俺を呼ぶのをゆるされるのは、この学院においてただの一人しか存在しなかった。  図書室に向かう廊下の途中、背後を振り向けば、数冊の本を抱えた仁兎が真ん丸な赤い目を瞬かさせていた。腕の中の背表紙に数秒、視線をやって、要らぬ世話かと思いつつも立ち止まり、仁兎が近付いてくるのを待った。 「資料なら、進路指導室にもいくつかあるぞ」 「ん~ん。あそこはもう見たんだ。薫ちんに教えてもらった」 「羽風に?」  思いの外大きな声が出てしまい、はっと口を押さえる。廊下は静かに。貼り紙に筆で書いた己の文字を思い返していると、仁兎は噴き出すのを堪えるようにして小さく笑った。 「そ。あいつ、ああ見えて、ちゃんと考えてるんだよ。生きる、ってことをさ。まあ、それで結局、資料が要るのはおれだけになっちゃったわけだけど」  手元の本と、プリントの入ったファイルを見下ろして、仁兎は目を細めた。穏やかな、笑うような仕草だった。 「大学はもう決まったんだ。ただ、どの分野に進むか、やっぱり迷っててさ。色々見るなら、あそこのがいいと思って。おれ、けっこう図書室詳しくなったんだぜ~? つむぎちんたちと書庫の整理とかしてさ」  行き先が同じであることを察してか、仁兎は俺より先に歩き出した。横に並ぶと、金髪のつむじが見下ろせる。表情は伺えない。小さな歩幅に合わせてゆったりと歩を進める。仁兎は、いつもと変わらない、少し舌足らずな口調で話しながら、抱えた一冊のファイルを数ページめくった。 「ほんとはこのまま放送系に進もうかと思ってたんだけど……初年度に、うまいことコマを取れれば、一通りのことは広く浅くやれそうなんだよな。道を絞るのは、それからでも遅くないって、いっそ開き直っちゃおうかと思ってさ。ただでさえ、出遅れてるんだ」  開いたファイルを閉じる音が、ぱたん、とやけに響いた。 「おれはアイドルしかやってこなかった」 ――その一言に、どれほどの闇と傷が含まれているのか。  一年目は、斎宮宗の操る至高の天使として。  二年目は、糸のもつれた空洞の人形として。  三年目は、ようやく一人の、自我を持った人間として。 「でも、それも全部、自分で選んだことだから」  それを今、全て抱きかかえて、進もうというのだ。  小さな体の、一体何処にそれだけの力があるのだろう。不思議でたまらなかった。壊れたものは、元に戻らない。いつだったか瀬名が独りごちるようにそう言っていた。この数年の間、壊れたものなど山のように存在する。けれど仁兎も、つぎはぎ合わせの状態からここに至るまで、歩いて来たのだ。  やめようと思えばいつだってやめられた。  それは夢ノ先学院のどの生徒に対しても言えることだった。  単なる惰性だけで生き残っていられるような世界ではない。去年の大規模な革命から、その傾向はよりいっそう顕著になった。努力しなければ評価されない。それを理解した上で、惰性でなく、自己の確固たる意志をもって、信念を貫き通したものだけが、今、この緑のネクタイを首に携えている。 「……そうか」  小柄な仁兎の白いカーディガンから、俺のものと同じネクタイが覗いている。俺はその色に、仁兎の覚悟と、ここまでの道のりを想い、胸のうちで静かに称えた。
「斎宮は、海外へ行くと言っているようだな」 「はは。あいつらしいよ。芸術が芸術として、正しく評価される所へ行くんだ。むしろそれ以外有り得ないだろ? 向こうで認められるんなら渉ちんとの共演も夢じゃない」 「あぁ……昔はよくやっていたな。斎宮が演出と脚本、日々樹は……いったい何人分の役を演じ分けていたんだか……」 「すごかったよなぁ~あれ。なんで演劇科に入ってくれなかったんだ、って、あっちの先生らは結構、悩ましい顔してたみたいだぞ」  あはは、と笑う口元が、数秒して��とまっすぐに結ばれる。そっか。ひとこと放って、仁兎は黙考するように口をつぐんだ。  図書室へ向かうのであろう生徒が、立ち止った俺たち二人を追い越して歩いていく。 「でも、追いかけたりしないよ。おれは、おれの道を行くんだ。一年、いろんなやつらに恨まれながら、それでもみんなに助けられて、ここまで生きてきたんだから」  その背中を見て、焦るような気持ちは、きっともう何処にもないのだろう。  そう在るために、考え抜いて、見定めたのだろう。まっさらな大地から、己の進むべき道を。 「強いんだな、お前は」 「ううん、弱いよ。みんながいたからここまで来れた。友ちんに創ちん、光ちん、テニス部の連中、放送委員の二人、それに他のユニットの奴らも……おれだけの力じゃない。一人じゃ生きていけないんだ。人間って」  うんしょ、と資料を左腕に抱え直し、右手の親指から順に数を数え、最後にぎゅっと握りしめると、仁兎は大きく息を吸い込んだ。 「なあ、敬人ちん。おれ、天祥院に、お前のしたことは消せない、おれたちの記憶からも消えないって、言ったことあるんだ」  ス、と血の気の引くような感覚がした。  続く言葉を待つ間、指先が冷えて、眩暈でも起こすかと危ぶんだほどだった。  何を言われても、受け止めるしかない。  奥歯を噛み締めて覚悟を決めると、仁兎は、声色を変えることなく、うん、と一度頷いて、小さく微笑んだ。 「でも、同じだったんだな。あいつも、敬人ちんも、自分の足で立ち上がって、どんな道でも歩いてやるって思えるやつらを、待���てたんだろ?」  俺は、色素の薄くなった唇を、ぼう、と開けてそれを聞いた。 「よかったよ。おれは、三年間、ここに居られて」  三年間。  その全部を、大切なものとして抱きかかえ、前を向く。 「敬人ちんは、後悔してる?」  それが、一体、どれほど困難なことか。 「……後悔、しそうなことは、何度もあった」  誰にも晒したことのない、懺悔のような想いが、溢れて口から零れていった。  潰すことしか出来なかった。  それを修復する手伝いも、してやれなかった。 「けど、お前が、お前たちが。歩みをとめなかったから。俺も、前へ進むことを許されたんだと思う」  輝かしい夢を抱いて、初めて舞台袖に立ったあの子兎らが、どれほど涙を流したのか、俺には分からない。そんなものをいちいち目の当たりにしていては、どうにかなってしまうと思った。やはり、鬼龍や斎宮の言うことは当たっているのだろう。俺は、他人に何か与えることもたいがい下手だが、奪うことが得意というわけでもないのだ。  だから嬉しかった。  もう一度、天の川の下、彼らと相まみえたことが。 「……お前たちのマーチングに、励まされたんだろうな」  柄にもないことを言ってしまった、軽く咳払いをしながら視線を床に落とすと、仁兎は、へへ、とくすぐったそうに笑った。 「まだまだ続くよ、敬人ちん。あいつらのマーチングは、俺が抜けたあとも、どこまでも、空高く、続くんだ。……その道を開いてくれたのは敬人ちんだろ?」  うんと背伸びをして、満面の笑顔を見せつけるようにして、仁兎はその白い歯を見せた。 「ありがとう。あいつらに、全力でぶつかってくれて」  あぁ、こんなところでも。  ニ、と細められた、うさぎのように赤い両目。  手渡された裁縫セットの硬さがよみがえる。  礼を言われるようなことなど、何もないのに。
「あっれぇ、なずなくんじゃん。と、蓮巳くん? 何々、どういう組み合わせ?」  弾かれたように、二人して声の方を向く。  向かい側――図書室の方向から歩いてくる、くすんだ金髪に、片眉を吊り上げる。薫ちん。仁兎が呼ぶと、やっほ、と羽風は右手を振った。 「偶然居合わせただけだ。特に意味はない」 「うん。おれが資料見に行こうとして、たまたま途中で会ったんだよな~」 「ああ。蓮巳くん、暇さえあれば鬼の形相で棚の整理してるもんね。実はあれ、結構後輩に怖がられてたんだって、知ってた?」 「別に鬼の形相などしているつもりはないんだがな……」 「まあね。昔に比べたら、うんと優しい顔になったと思うけどね」  お前にそんなことを言われる筋合いはない、と言い返す間もなく、羽風は軽く後ろを振り向いて、手ぶらになった両手をズボンのポケットに突っ込んだ。 「俺は、色々と、返してきたとこ」  何を。  聞くまでもなかった。  仁兎が、両腕のそれをそっと抱え直すのを、俺は目の端で捉えていた。 「必要、なくなっちゃったから」  そっか。  仁兎が低く、けれどどこかすっきりした声で相槌を打つ。 「よかったな、薫ちん」 「あはは、うん。なんか、まだ、執行猶予付き、みたいな感じだけどね」 「大丈夫だろ~? おまえなら、きっとさ。……うん。おれはもうちょっと、色々借りてくるかな。じゃあな~!」  羽風と入れ替わるように背を向けた仁兎が、俺を置いて足早に進んでいく。手を振る羽風の、憑き物が落ちたような横顔が、どこか憎たらしくて、俺は両腕を組みながらフンと鼻を鳴らした。 「ようやく腹を決めたか」 「ええ~ちょっと……そんな親みたいな顔でほっとしないでくれる?」 「俺とて不本意に決まっている。しかし、夢ノ咲の卒業生が華々しく芸能界で活躍しないと我が校の今後が云々――などと言われる立場でもあるんだ。……まあ、そのあたり、英智の気苦労には到底及ばんだろうがな」  軽く眼鏡を直しながら当てつけがましく言い放つと、羽風は突然頬を強張らせて、表情を曇らせた。 「……蓮巳くんはさ」 ……少しばかり、言い過ぎたか。いや、こいつの進路に関して口喧しく上層部から聞かれ続けたのは事実だ。これくらいの文句は受け付けてもらわねば気がすまん。代わりに俺もあらゆる罵倒を受け流そう。それだけのことをした自覚もまた、俺にはある。 「……天祥院くんのために、薔薇色の青春時代を、棒に振ったの?」  何を言い返されるかと身構えていたところへ、存外真面目な質問を寄越されてしまい、俺は拍子抜けしてしまった。ハア、と大袈裟に聞こえるように、わざとため息を放る。顔色を伺うような羽風は、「俺、そういう馬鹿みたいに真面目な奴を、一人知ってるからさ」と案じるように続けた。 「貴様までそんなことを言うのか。……呆れてものも言えんな」  それが誰のことを指しているのか、なんとなく察しはついたが、あんな正義の味方と一緒にされてはたまらない。 「そんなわけがないだろう。俺の人生は俺のものだ。英智の掲げた目標が関わってくることも、まあ、多少はあるし、そこは否定できんが。あくまでも、共感、賛同できるから道を共にしただけだ。貴様、覚えていないのか? 一度派手に喧嘩をしたことがあったろう」 「ああ~あのなんか暑苦しいやつね、覚えてる覚えてる」 「あれだって、英智の言いなりになっていたならば、紅月は解散していたんだぞ。そんなことをさせてたまるか、全く、俺には俺の船がある。舵を取るのも俺自身だ」  そして、その航海を支えられるのは、同じ船に乗った同志だけだ。  真っ赤なオールバックと、紺碧の艶やかなひとつ結び。それでも各々、その双眸で捉えた世界の形は異なるはずだ。当然だろう。違う生き物なのだから、同じ場所に立っていても、見える景色が一緒とは限らない。 「……だから、ここまでだ。あいつと道を同じくできるのは」
 結局俺は、あの陶器の釉薬のような透き通る青の目と、同じものを見られるわけがなかったのだと、気付いたのはいつのことだったろう。  七夕祭の時? 喧嘩祭の時? いいや、本当はもうずっと前から分かっていた。  最初から最後まで、俺たちの未来図はどこか大幅にずれていたのだ。 「寂しい?」  やんわりと尋ねられ、羽風の灰色の瞳を覗く。微弱に揺れる、波のような目元を見て、あぁ、と合点がいった。それは俺に向けての疑問符でなく、同意や共感を求めるために発せられたものなのだと。  こいつも、厄介極まりない水浸しの友人と、もうじき道を別つのだ。そしてそやつは、行く道を誰にも明かさないまま卒業するのだと言う。  それが寂しいのだろう。  羽風薫という男は、存外一人では生きていけない生き物なのだと、気付いたのも今頃になってからだった。 「寂しくはないが、心配、だな。何度言い聞かせても、生き急ぐところがちっとも直らん。あいつ、次に会うのは僕の葬儀の時かもね、とか、平気で言うんだぞ。冗談に聞こえん」 「はは、うちとは真逆だ。足して半分に割れたらいいのに。もうちょっと、生き急がせたいんだけどなぁ、あの人のことは」  思い描いた人物と、遠からず近からずのところを引き合いに出されて、ぎくりと鼓動が跳ね上がる。己の寂しさを隠すための話題転換だということに、気付いてもなお、俺の動悸は収まらなかった。 「そこを、どうにかするのが、お前の役目なんだろう」  あれが命を削るに値すると判断するだけの何かを、羽風薫という男は持っている。  だから承諾したのだろう。そうでなければ動かない人だ。痛いほど分かっている。 「出来るかな」  不安がる要素など、どこにある。  あの人が共に歩くと決めたこと以上の評価が、この世界の何処に存在するというのだ。 「……出来なかった俺に、何か言う資格があると思うか?」  様々な言葉を飲み込む俺に対し、ハッと息を吸い込む音が、端からも聞こえるほどに大きく響いた。底意地の悪い言い方をしてしまった。狼狽える羽風に、申し訳なく目を逸らす。 「違う、そんなつもりじゃないよ。ごめん……ていうか、そうじゃないよ。俺だって、あんな頃の朔間さんを、どうこう出来るわけないって思うし、実際、当時はそう思ってたわけだし。それで、全部諦めて、流されて……今までずっと、情けなくぼーっとしてさ……」  ポケットに入れていた両手は、いつの間にかだらんと力なく地面に向かっておろされていた。 「朔間さんに、もっと頑張れよって言われた時だって、俺は何もしなかった」  灰色の双眸が、虚空を映すようにぼんやりと陰る。俺はこの目を知っている。あの時、あの稚拙な策略とステージを、遠巻きに見世物扱いした時と、似た色だ。虚無を抱えた瞳。全てを諦めた、戦うことを放棄した人間の目。 「俺がさ。頑張ろうと思えたのは、頑張ったら報われるんじゃないかって、嘘でもそんなことを思えるような世界になってからだよ」  それはまさに青天の霹靂と言うに相応しい出来事だった。  羽風薫という男が、あのサイリウムの渦の中に残る決意を固めたのは、本当の本当に、ここ数日のことであるらしい。  何故それを俺が知っているのかというと、あの黒髪の吸血鬼が、俺を見るなり勝手に呼び止めて、聞いてもいないのに報告してきたせいなのだが。 「多分さ、色んな人が傷付いて、色んなものをなくしたと思うよ。でも、今の子たちは……っていうか、俺もそのうちの一人だけど……その恩恵を受けてるわけじゃない。それはさ、蓮巳くんたちが、更地になったところから、種を蒔いた結果だと思うよ」  綺麗事のような話をされている、と、どこか他人事のように聞いていた。傷付いたものが元に戻ることはないし、撒いた種が芽を出す保証など何処にもなかった。  俺の、俺たちの革命は、運良く、奇跡的に、ただの破壊行為で終わらなかっただけなのだ。たまたまその奇跡を、何を思ったのか意図的に起こそうとしたモノたちがいたからこそ、俺たちの殺戮は、意味あるものとなった。 「あの人だって、何か大事なものをなくしたから、変わろうって思ったんじゃないの」  奇跡を起こせるだけの、人間離れした連中が、あらゆる場所に駒を置き、続編のようなハッピーエンドを描いたことで。 「そういうわけだから、俺はただ、タイミングがよかったってだけ。……でも、決めたからにはさ。ここからは、ちゃんと歩いていかなきゃだよね。あのおじいちゃんを、棺桶から叩き起こしてさ」  にへら、といつものように軽薄な笑みを浮かべた羽風は、じゃあね、と廊下を歩いていった。弛緩した表情に反して、その足取りは確かで、力強かった。ふわりと風が吹いても、もう何処へも流されそうになかった。決めたのだろう。この何もない更地から、一歩踏み出すことを。  あの人と共に。  不安など微塵も感じなかった。上手くやるだろう。あいつの足は、自分が思うより遠くへいくためのものを備えている。歩き出したのならば、きっとあの光の中に、居続けることができるだろう。  羨ましいか。  そうっと己に問いかけてみた。  心は静かに首を振った。おそらく、俺の物語は、ここまでなのだ。けれどもう充分だ。  この広大な世界の中で、主人公になれる一瞬があっただけで、俺はもう、それでよかったのだ。  一呼吸置いて、図書室へ向かう足を再び歩かせた。主人公であろうとなかろうと、人生は無情にも続いていく。ならば俺も、俺の道を選び取らねばなるまい。  あの小娘を、一年かけて叩き上げた成果が、ここへ来て俺の力になってくれるかもしれんな。  ふと、革命の象徴となった、未熟な少女の面影を思い起こし、微笑を浮かべた。俺の選ぼうとする道は、あの人の元へと繋がってくれるだろうか。俺の撒いた種は、いつか新芽を生むのだろうか。  英智。  いまだに入退院を繰り返す、病弱な幼馴染みの名を、小さく呼んだ。俺とお前の夢は、まだまだ続いていくと信じていいだろうか。  幼い頃の小さな背中を思い出す。  俺たち二人だけの物語は、きっともう、ここでおしまいだ。けれどいつか何処かで交差するだろう。お前の目指す大きな野望と、俺の思い描く矮小な夢は、同じでなくとも、そう遠いところにあるわけではないのだから。
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uvgx · 3 years
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nemosynth · 4 years
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<海外シンセ興亡記 I : Oberheim Xpander review>
●メーカー名
Oberheim
●機種名
XP-1 "Xpander" 1984 年発売。定価 69 万8千円
「オーバーハイム・エクスパンダー」という名称が有名だが、実は XP-1 という型番がある。
MIDI 生誕1年後に発売された MIDI 音源モジュール。そんな早い時代に鍵盤を無くすとは、いさぎよい! しかもデスクトップ型なので、操作しやすい。
●音源方式
アナログ減算方式 + マトリクス・モジュレーション
・VCO 2基 ・VCF 1基ステートバリアブル仕様 ・VCA 2基 ・EG  5基 ・LFO 5基 ・FM プロセッサー1基 ・ラグプロセッサー1基 ・ランププロセッサー4基 ・トラッキングジェネレーター3基
恐らく史上初の、複雑モジュレーションを可能にした単体(非モジュラー)シンセ。そのモジュレーションの仕組みは、音創り用パラメーターの数々を、変調源たるソースと変調先たるデスティネーションとに振り分け、それらの間を、あたかもモジュラーシンセであるかのようにパッチングすることで成立。たとえば、EG をソースに、VCA をデスティネーションにすれば、VCA が EG によって開閉する。そんなんあたりまえやん、と思うなかれ、そこはデフォでは切り離されていて、いちいちユーザーがつながないといけない。つまりモジュラーシンセと同じ。
むろん、ものほんのモジュラーとは違い、Xpander では、パッチコードでつなぐのでは無く、ソフトウェア処理。操作も、表示画面上にあるデスティネーションヘ、ソースをアサインし、デプスを設定してゆく。音声経路こそ、従来のヴィンテアナログシンセと同じく、オシレーター、フィルター、アンプという順番に固定されているが、変調経路は縦横無尽に、ユーザーが決定できる。
この、膨大な可能性を提示する複雑なモジュレーション・システムを、Oberheim 社は 「マトリックス・モジュレーション」 と呼び、これは同社の商標であるとともに、のちにはメーカーを越えて同様の機能が広がって採用され、これらに対し 「モジュレーション・マトリクス」 というふうに単語をひっくり返した表現が、広く一般に使われるようにまでなった。
●同時発音数 
6音。
1パート6音ポリとして使う他、6パートマルチ音源にもなり、そのとき各パートはモノシンセになる。MIDI 制定の翌年、早くもマルチティンバーを実現していたのも、先見の明。
●内蔵エフェクトの性能と傾向
無し。
でも VCO は元来ピッチが不安定だから、和声時に自然にコーラスかかるね。
●内蔵波形、プリセットの傾向
三角波、鋸歯状波、PWM 波。VCO2にはホワイトノイズもある。なお各波形は独立して On / Off できるので、組合せて出力する事もできる。
プリセット音色からは、ややおとなしく音圧に欠けるような誤解を受けてしまうが、本来はフィルターでこもらせても抜けてくる厚い粘りのある音。 音を自作してみれば分かる。バンド・アンサンブルの中でもしっかり抜けて聞こえ、下から支えてくれる良い音。FM 変調なども過激。時としてマトリクス・モジュレーションならではの、変態な効果音がプリセットされているところは流石。
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●エディットの自由度と可能性
なんと言っても目玉は、史上初のマトリクス・モジュレーション。
音色ごとにメモリー可能で、ソース 27 個、デスティネーション 47 個、最大モジュレーション系統数は 20 系統。今でこそ当然だが、単一のソースを複数のデスティネーションへパラったり、複数のソースから単一のデスティネーションへマージしたりなんていうのが簡単にできるのもソフト処理ならでは。
��のおかげで、ヴァーチャルモジュラーシンセの先駆者的存在と、よく言われる。しかも何がすごいって、モジュレーション部分はソフトウェア処理であるにしても、演算結果の全てが最終的にはフルアナログの VCO、VCF、VCA へ反映されるのが凄い。今でこそモジュレーションマトリクスを持ったシンセは多くのメーカーから出ているが、この当時はそんなものは他に例が無く、なおかつすべてが純アナログ音声経路に反映されるところが、'80 年代ならではの過渡期なハイブリッドぶりを思わせるとともに、今となってはトレンドになった、時代に先駆けた、あたらしいポイント。 以下、これについて、要所要所にて解説する。
オシレーターから音声経路順に、各ブロックを解説すると、まず VCO の直後にて「FM VCA」と銘打たれた FM 変調プロセッサーがあり、VCO2で、VCO1ないし、VCF カットオフをリニア FM 変調できる。自己発振させたフィルターにかけると、線形 FM とはいえ、アナログならではの下品な FM 音色になる。これは後の時代に、なんと AKAI をふくむ種々の Oberheim 系の機種に受け継がれた。
なお「FM VCA」の名は、FM 変調のデプスを専用 VCA にて制御することに由来し、その仕組み自体は普通だが、名前の付け方がきちょうめんと言えるかも。
「Multimode VCF」と名づけられたフィルターは、多彩なステートバリアブルフィルターであり、それまでの常識をやぶる計 15 タイプもある。フルアナログにして、こんだけ多彩な VCF というのも凄い。フェイザーっぽく位相を変える一種のオールパス・フィルターになるモードまであり、'80年代らしくないどころか、今でも遜色なく多彩。 またノッチフィルターでレゾらせばとんでもないドンシャリも出るところが、他機種のノッチフィルターとは違う。他のシンセにおけるノッチフィルターでは、単にノッチの幅が可変するだけなのだが、Xpander のそれはノッチとして凹むヘリとなる「両岸」が強調され、結果、上に凸のレゾナンスピークを2つつくるため、ど迫力のドンシャリになる。と思うのだが、ソフトによるエミュレーションを見てると、どうも挙動がちがう。なんで?
VCA が2基もあるのも、他に例をみない。2基あるおかげで、マトリクス・モジュレーションの中で真価を発揮する。なんせ VCA へエンベロープなどをいちいち手作業で接続し、それで VCA を駆動しない限り、VCA が開かないのでなんの音すら出てこないという徹底ぶりは、お手軽シンセに溺れた自分に喝を入れてくれる。まさにモジュラーと同じ。
ラグ・プロセッサーは、入力された制御信号を遅延させる、要はポルタメントなどに使えるモジュール。
EG は5基もあり、ADSR 型だが、打鍵によるゲート信号だけでなく、LFO などで周期的に EG へトリガーをかけることもできるため、繰り返し EG をループさせることが可能。マトリクス・モジュレーションによって、最大半時間におよぶ長大なるエンベロープを実現可能。それを途中で止めるには、チューニングボタンを押せば良いという裏ワザがあった。
LFO も5基あり、たとえばそれらをヤマハ FM 音源で言うところのオペレーターに見立て、LFO でアルゴリズムを組み、LFO 同士で周波数変調や振幅変調をかけることにより、ありえないくらい複雑な LFO 波形を得ることができる。ややゆっくりしたレート同士で乗算すると、なお面白い。
LFO 波形には、上昇鋸歯状波、下降鋸歯状波、三角波、矩形波、S/H 波、ノイズ、そしてさらに他のモジュレーションソースからの信号をクォンタイズするモードまであった。独自のラグ・プロセッサーを装備しているので、ディレイヴィブラートなども簡単。
3基のトラッキング・プロセッサーでは、5つのポイントにて値を設定することで、たとえば複雑なキースケーリングに使えたりした。
4基のランプ・プロセッサーもあり、これはアタックタイムだけの EG と思えば良い。
これらのおかげで、モジュラーばりに自由度の高いモジュレーションの組合わせが可能。
ただし、全般的な音のキャラとしてはブラスや厚いパッド向き。これは、EG が初期のソフトウェア処理であるためにアタックが遅くなまってしまうためで、食いつきが良くなく、シンベなどには、あんまり向いてはいない。
プリセット音色には、ありきたりなエンベロープで VCA を駆動するなんてフツーのシンセみたいな事をせず、VCO、VCF、VCA の全てを前述の複雑怪奇な変調をかけた LFO 群のみで、くすぐっているものあったりする。すると、最初にポロロンと適当に弾いただけで、あとは延々と音が小粒に細切れになりながら無限に鳴り続ける。まるで無数のゴム球スーパー・ボールが無限階段をはねまわり、各々勝手きままにバウンスしながら、そこいらじゅうに散らかっていくかのようで、文字どおり、おもちゃ箱をひっくりかえすように楽しい。言わば、シンセ版ししおどし。
怪奇 LFO 群を低速にしホワイトノイズを通した VCF を変調すれば、宇宙からエンゼル・ヘアーが降って来たような騒ぎになる。エンゼル・ヘアー? '70年代 UFO 現象ネタ、といっても「本物」は音がしないらしいが。
この、のちの時代で言う「モジュレーション・マトリクス」のために、Xpander には当時の IBM パソコンの倍の処理能力を持たせたという。が、それでも最大 20 系統までしか使えないのでご理解ください、というような謙虚な表現が、取扱説明書に書いてあったりする。おおらかな時代。
操作系は、いわゆるツマミストなアナログとは違い、メニュー・ダイヴせねばならないが、階層が表裏の2つしかないのと、デスクトップ型の形状、三つもある蛍光管表示、そして6基の無限エンコーダーノブに助けられて、まだ楽な方。その蛍光管ディスプレイ(FLD, VFD)にしても、16 セグメントもあり、英数字しか表示しないとはいえ、いわばハイレゾ表示。しかも LCD のような視野角が無いために、どこからでも視認できるのが長所。
フロントパネル右半分には、モジュラーぶりを示すブロックダイアグラムも描いてあるばかりか、その図解のなかに各ブロックに直結したエディットページへ一発で遷移するボタンまで配置されているので、分かりやすい。
●拡張性
直接に拡張できる機構は無いが、MIDI 受信可能メッセージ種数は多い。CV / Gate も受信できて、しかも MIDI へ変換送信できるため、CV / Gate to MIDI インターフェイスになる。
CV / Gate 入力は、6ペアもあり、6音ポリに対応する。Oct / V 対応であり、リアパネルに、ずらっと計 12 個もの入力端子がならぶさまは壮観。
マルチ音源にもなるので、6パートを個別に CV / Gate で制御することもできるばかりか、2パートは MIDI で、4パートは CV / Gate で制御するという芸当もできる。これにより、MIDI  とアナログ制御信号とのネットワークの中で、かなめとなる音源モジュールとして活躍できる。
MIDI によるバルクダンプのみならず、カセットテープ・インターフェイスも装備し、それで音色データをセーヴ / ロード可能。
●あなたにとっての長所
マトリクス・モジュレーション、しかもアナログ回路で音を加工できて、なおかつ MIDI で演奏可能。
VCO シンセでベロシティで表情がつくというのは、実は結構レア。ヴィンテで言えば、クローマやポラリス、ローランド MKS-80、AKAI VX600、AX73 とか VX90 くらいか。でも裏を返せば、他にあまりなくてレアなのである。
この機種における、フィルターでこもらせても抜けて聞こえる音の太さや、アナログならではのホワイトノイズのきめ細かさなどなど、胸がすくような素性の良さは、やはり他に代えるものがない。 で、そこへきて音色ごとに切り替え可能なマトリクス・モジュレーションによる、複雑かつ繊細な表現が、最後には VCO、VCF、VCA に反映されるという、まさに逸品同士の組合せも感動的。
音やキャラが違うとはいえ���ロフェット5より安定してる��、ヴィンテージにしては比較的軽量コンパクトだから、リハスタに Xpander と MIDI ケーブルだけ持っていくというのも、おもいっきりツウでかっこいい。
音源モジュールではあるが据置型なので、エディットしても手が疲れない。演奏中に、各オシレーターのローテーション・トリガーの実態が、ディスプレイに表示されるのも面白い。しかもボイスごとにパンニングを決定できるので、アルペジオを弾くと音像がアニメのように左右に動くのもおもしろい。 
また、ROM バージョンにもよるらしいが、サービスモードに入ってディスプレイチェック機能を駆動すると、1セグメントずつ単独に発光してチェックさせてくれるあたり、踊る蛍光表示がクリスマスツリーなんかより、ずっとずっとずーっと楽しい。
意外にリアパネルがクール。これは観客に見せたい。ロゴもかっこ良ければ、ずらりと並ぶ端子群も壮観。そのリアパネルに並ぶ怒濤の端子群に証明された CV-MIDI 変換機能も良い。なんせかつて私の機材の四分の三は、MIDI に対応して無かったので!
ある日、オシレーターが1基だけ「ぱぁ」になって、5音ポリになった。でも暫くすると自然治癒して6声に戻った! たましい入っとんのちゃうか!? これわ長所か!?
●あなたにとっての短所
どこをどうモジュレートしているのか常に把握するのは、慣れないと難しい。慣れるのも難しい。探そうにもデスティネーションからソースをいちいちたぐるしかないので、ソースをいじろうにも、どこまで影響範囲が及ぶのかが、なかなか分からない。のちの Matrix-12 では、逆引き機能があったという。ここはコルグ Z1 などに軍配が上がる。
理屈っぽく考え込まないと音づくりできない、というのも、なかなか構えさせる。
ほんとうのモジュラーというわけでは無いので、例えば 10 基の VCO からの音を1基の VCF に突っ込むことで音色を太く歪ませるような、おきて破りなモジュラーの醍醐味が味わえるわけでは無い。あくまでモジュレーションの経路が、想像を絶する自由度を有し、しかも音色ごとにメモリー可能で CV / MIDI 対応なのがメリット。それもアナログの分際で、MIDI 対応と。
MIDI でピッチベンドかけると、操作子を動かしつづけない限り値がゼロに戻る! ベンドアップしてホールドするような奏法をすると、ホールドに入るや否や、突如としてピッチが元に戻る。これは MIDI 黎明期ならではの、規格解釈の混乱か?
CPU が初期のトロいしろものなので、MIDI によるリアルタイムぐりぐりさせると、もたるらしい。マトリクス・モジュレーションにまかせるのが吉。
EG アタックも、初期のソフト演算によるものなので、とろい、アタックもなまるのでシンベではなくブラス向き。
フィルターを閉じても抜ける良い音してるのに、プリセットからは、そうは感じられにくい。
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●その他特記事項
Xpander は、VCO、VCF、VCA からなり、音声経路で言えばフルアナログシンセなので、とかくアナログ原理主義者からも崇拝される伝説的な名機として、語り継がれている。
だがその威力は、アナログにとどまらず、先進的かつ野心的なデジタル技術の恩恵によるところが大。
そのデジタルとは、MIDI であり、史上初のマトリクス・モジュレーションであり、FLD を用いた操作性である。
まず、MIDI。
Xpander よりさらに前にも、Oberheim は、OB-Xa をデスクトップ型音源モジュールに改造し、OB-Expander という機種名で発表した事があったが、実際には販売されなかったらしい。どっかで写真だけ見たことがある。この幻の機種には、MIDI 前夜に Oberheim が企画していた独自のデジタル通信インターフェイスが搭載されており、MIDI 以前にして、MIDI のように情報を送受できるシステム提案の一環として発表されていた。その実用化は、さらに前の OB-X 後期型、シリアル番号 803600 以降にはじまり、独自のパラレル通信プロトコルであった。
そもそも Oberheim 社を創設したトムおじさんは、'72 年に、史上2番目のデジタルシーケンサー DS-2 を発売。それでミニモーグや Odyssey を CV/Gate 駆動しているうちに、シーケンサー駆動時には手弾きできないというので、音源モジュールの名機 SEM こと Synthesizer Expander Module を開発したのが、同社シンセの発端だったのだから、音源モジュールや電子楽器データ・ネットワークについては老舗も老舗。独自の通信プロトコルを開発するに到ったのも、MIDI 音源モジュール Xpander を、さしずめ MIDI 時代の SEM のように開発したのも、当然のことであろう。
ネットワークの中で動作するシンセ、その在り方を、始祖 DS-2 から、SEM から、パラレルバスから、OB-Expander から、ついに Xpander にいたるまで模索。モーグに象徴される、内在するモジュラーではない。外部にモジュラーをもとめる電子楽器。
しかしその通信ケーブルたるや、パラレル転送による高速通信を重視するあまり、当初あたりに電波をばりばりにまき散らすフラットケーブルだったらしく、それはその後、MIDI の登場によりついえ去った。'83 年のナム・ウィンターにて、シーケンシャルの prophet-600 とローランド Jupiter-6 そして JX-3P とが MIDI 接続されるというセレモニーが行われ、MIDI は公式に誕生したのである。
MIDI 以前から、情報通信ネットワークの中で動作するシンセのあり方を模索し、DCB をつくったローランドと同じく、その道では老舗の Oberheim。老舗すぎて、自分たちの通信システムのほうが MIDI より高速であるため、ネットワークとしての優位性から MIDI 制定には参加せず、乗り遅れたのであった。自社フォーマットの優位性にこだわりすぎて MIDI に乗り遅れたメーカーは、他にも PPG などがある。
MIDI 制定にかかわったのは、海外ではデイヴおじさんの Sequential Circuits 社のみであり、それ以外はすべて日本企業、ヤマハ、コルグ、カワイ、ローランド、この合計5社だけであった。
ただ、MIDI 制定を遠巻きに眺めるだけだったトムおじさんは、やはりただものではなかった。MIDI 制定に乗り遅れたくせに、その翌年には Xpander という MIDI 音源モジュールを開発、成功している。しかもその機種がまた、ただものではない。たった1年で開発したとは思えない。
ここで MIDI を使うことで、音源モジュールという概念が、あらためて大きくはっきり打ち出された。
だがコンパクトにまとめるなら、別にただの箱でいい、OB-8から鍵盤を取り外すだけでいい。しかしそこを工夫し、その結果、他にはない抜きん出た個性を思いついてきたのが、Oberheim 社のえらいところ。
その、かなめが、次のデジタル技術、史上初のマトリクス・モジュレーション。
MIDI 誕生からたった1年後、それまでの OB シリーズから一転、史上初のマトリクス・モジュレーションを搭載したのが、この Xpander。MIDI が誕生してからわずか1年後に、いわば MIDI モジュラーシンセをつくってやろうという、先見性というか、もはや野心すらをも垣間見れる。
かつてモジュラーシンセであれば、ひとたびパッチングし終わったら、演奏中リアルタイムにケーブルをかえるのは至難のわざ。しかしマトリクス・モジュレーションであれば、音色ごとに一発で複雑怪奇なパッチングも呼び出せる。しかも、MIDI で遠隔操作で音色切替ができる。
ベロシティのようなリアルタイム MIDI 制御で表情がつくのも、大きな利点。既存の発想を超えて、MIDI でトリガーされたノートが、音源モジュール内部にてドミノ倒しの如く各部へ伝播し、あやつり人形のように多数の糸を引いて膨大なパラメーターをモジュレートするというコンセプトは、すさまじいの一言に尽きる。
マトリクス・モジュレーションの次は、それをコンパクトにまとめるための、デジタル技術を利用した操作性。
FL 管ディスプレイを三つも搭載し、さらにエンドレスにぐるぐる回る、ロータリーエンコーダーノブを6つも配することで、モジュラーシンセなら当前だったおびただしい数の物理操作子やスパゲティ工場爆発状態のパッチケーブルを、一切排することに成功。すっきりとコンパクトなデスクトップ型の音源モジュールに、まとめあげることができた。
なんせ:
・VCO 2基 ・VCF 1基ステートバリアブル仕様 ・VCA 2基 ・EG  5基 ・LFO 5基 ・FM プロセッサー1基 ・ラグプロセッサー1基 ・ランププロセッサー4基 ・トラッキングジェネレーター3基
計 24 基ものモジュールを内蔵。しかも6ボイス分が必要となれば、144 基のモジュールからなる巨大モジュラーシンセ。各モジュールがユーロラック 10 HP 幅だとすれば、1,440 HP すなわち、標準的な 84 HP ユーロラック型の収納ラックで 17 個分以上と、ありえないビッグサイズ。それをデスクトップ型とはいえ、小脇にかかえられるコンパクトかつ軽量な音源モジュールに収納したのだ。
この、MIDI、マトリクス・モジュレーション、そして新タイプの操作性。
これら三つのデジタル技術の恩恵により、それまで存在しえなかった新感覚のシンセモジュールが誕生。
つまり MIDI とは、単にマスターからスレーヴを鳴らす、というだけの単純なものではなく、演奏中ですらリアルタイムで音色を切り替えられる「プログラマブル・モジュラーシンセ」とでもいうべき、ありえない壮大な可能性と表現力とを秘めていたのだ。それを見事、具現化した Xpander。MIDI の可能性を見抜き、それを熟知していた Oberheim。さすが、MIDI に先駆け独自の通信インターフェイスを開発していただけのことはある。音色は変化してこそ音色、動きのある音、動いてナンボである。
時間軸上で動く音、それを実現するための、デジタルであり、それこそが、楽器におけるデータ通信の本質。するどく本質を見抜いたトムおじさんの眼力、そこに見えていたものとは?
MIDI ネットワークの中で泳ぎ回り、本体内部にも巨大なモジュレーションのネットワークが複雑怪奇に存在する。外在するモジュラー、内在するモジュラー。外部ネットワークの中で泳ぎ回り、内部ネットワークでもって変調し音創りする。入れ子になったネットワーク。フラクタルネットワーク網、フラクタルシンセ、などと言ってもいい。
まさに新感覚の音源モジュール。
そしてこれはデジタル、すなわちソフトウェアの勝利。他の米国製シンセたちと同様、単体機でありながらも搭載されているソフトウェアの勝利であった。MIDI への反応も、マトリクスモジュレーションも、どちらもハードシンセ内部にてソフトで処理されて行われる。まだまだ PC / Mac 上のソフトが生まれたての存在でしかなく、専用ハードウェアの存在が揺るぎなかった時代に、時代に先駆けてソフトウェアによる可能性をみせつけた、最初の成功例。
さらには、かつて TOTO が3台4台とスタックして愛用したという音の良さも、特筆すべきであろう。
MIDI とマトリクスモジュレーションという、2つのデジタル・ネットワーク、2つのデジタルモジュラー・アーキテクチャー。これがヴィンテ・アナログシンセ最後の栄華をいろどることになる。
それら新しいテクノロジーの勃興、すなわちモジュラー、ネットワーク、ソフトウェア、これらが生み出されるにいたった背景とは、なんだったのか。
それは、テクノロジーが世界を結びつける、テクノロジーによって世界はつながる、という、ここにも約束された技術社会的未来を無邪気に信じた、健全な未来観である。そのかなめは、つながる、であった。
’70 年代の終わり、映画「スターウォーズ」と「未知との遭遇」が封切られたとき、あの箱庭宇宙に登場するおびただしい数のけったいな異星人たちとの共存が、まだまだ夢見られていたこと。世界は多様性に富み、それをテクノロジーがつなげ、多彩な夢のような未来社会を率先して切り拓くのだ。あたかも現代ネット社会にて、片時も肌身離さずモバイルギアを握りしめてつながりたがる若い世代のように、人々もまた若く時代の最先端に飛びこみ、尖端にて風を切り、テクノロジーによって世界がつながるのだ!と無邪気に信じ込んでいた。
MIDI によって、電子楽器は、単に通信できるようになっただけでなく、音源モジュール、各種 MIDI コントローラー、単体シーケンサーなどへと因数分解していったように、これまでになく多彩な存在へと分化した。まさに生物多様性の如く、カンブリア爆発の如く、多種多様な進化をうながされ、電子楽器は多彩な黄金時代を迎えた。
そして、多様な地球社会を鏡に映し出したかのような当時の未来観が今、未来を信じられない人々に対し、たとえ信じられなくとも、理解できなくとも、それでもなお(denn noch!)、少なくとも共存はできるはずなのだと、メッセージを投げて託す。
世界はつながりたがっていた。
だからこそ、みんなでテクノロジーに裏打ちされた楽器でもって、テクノロジーに裏打ちされた音楽をかなでようと。
その帰結はさておき、そのこと自体は、今も昔も変わらないはず。
その後に発売された Matrix-12 は、Xpander を2台分搭載した史上最大規模のアナログ・ポリシンセだが、高価なわりに入出力系の端子は大幅に削除されてもいるあたり、ひょっとしたらモジュールである Xpander をスタジオ仕様、Matrix-12をステージ・モデルと位置付けたのかも知れない。 やがて6音ポリの鍵盤モデル Matrix-6が発売されるにあたり、 Oberheim は日本製の低価格路線を研究したようで、1ボイスあたり2基の DCOを採用し(それでも音は太かったような気がする)、マトリクス・モジュレーションも 20 ソース 32 デスティネーションに整理、LFO の数なども限定することで使いやすくスリム化した。それでも 29 万8千円。当時このマト6を DX7と併用するのが、カネ持ち息子ハコ入り娘のあかしであった(私ではない)。ほんとうのカネ持ちは Xpander と DX とを併用した(私ではない)。当時、大学の学園祭を Matrix-6たった一本だけでがんばるという、こだわりのキーボーディストな学生が時々いたものである。 続く Matrix-1000 では、Matrix-6の機能をそのままに1,000音色をプリセットして1Uに押し込め、事実上プリセット音源に徹することで、手軽に多彩な音を提供した。
Oberheim のアナログシンセ技術は、AKAI へも提供された。AX73 以降の AKAI の VCO シンセ AX73、VX90、VX600では、VCO 出力で VCF のカットオフを周波数変調するワザが使えるが、これぞ Oberheim からもたらされたもの。さらに VX600 には、16 ソースと 18 デスティネーションが駆動できるモジュレーションマトリクスが搭載された。その後しばらく、同社のウィンドシンセ用に VCO 音源モジュールが発売されるが、中には7ソース 10 デスティネーションの簡易モジュレーションマトリクスをさりげなく採用した機種 EWI3020m があったり、ニッチで面白かったものである。
いずれにせよ「モジュレーションマトリクス」という発想は、程度の差こそあれメーカーを越えて普及。エンソニック VFX や、Oberheim から転職したエンジニアを持つ Alesis、Waldorfの諸製品、コルグ Z1、ローランド XV シリーズなどへと、姿形を変えて受けつがれ、21 世紀に入って大々的に再発見されることになる。
さて、そのモジュレーションであるが。
わざわざマトリクス化しなくとも、例えばベロシティやアフタータッチで PWM をかける、つまり弱いタッチで太い矩形波 → 強いタッチで個性的なパルス波にするなどは、デジタルであってもすでにローランド D-50 で可能であった。ヴィンテアナログの Jupiter-8 / JUNO-6にいたっては、エンベロープによる PWM、つまり最初はパルス波 → ディケイするに従い音が太い矩形波になるという、フィルタースィープと似て非なる効果を演出することができた。
なぜかその後しばらく、忘れられがちな、ささやかな機能一つで、音の表情は生き生きとするもの。音���ネタで勝負か? 確かに面白い波形を選ぶセンスは重要。ライブラリー全盛期の今ならなおさら。DJ が所有する膨大なアナログ盤の数々だってライブラリー。だが、DJ だってスクラッチもする。ややもすると平板になりがちな PCM 波形でも、ensoniq VFX のようにスタートポイントをベロシティでずらす事で、驚くほど動的に表情がつく。この動的な音色変化という醍醐味! しかし、ささやかながら気が効いたモジュレーションを隠し味に、表現力を持たせることの重要性は、めんどうくささもあってか、しばらく忘れられていたらしい。
私が知るなかで、はじめて Xpander を凌駕したであろう大規模なモジュレーションマトリクスを搭載してきたのは、KORG Z1 のモジュレーションリスト機能、あれは便利! そして、そのあとしばらく間をおいて、21 世紀に入ってからソフト・ハードを問わず多くのシンセに「モジュレーションマトリクス」の名で、装備されていくことになる。Arturia がアナログシンセ・ルネッサンスの波に乗って、ミニ鍵アナログシンセ MicroBrute を出したときに、小さなパッチパネルを用意し、それに「モジュレーションマトリクス」と銘打っていたのは、象徴的ですらある。
けっきょく Oberheim 社は倒産したが、Xpanderは、きたるべきソフトウェアの時代をじゅうぶんに予感させるものでありながら、ほんとうに凌駕されるまで十数年も待たなければならなかった。
そして Xpander の音は、今後も永遠に新しいであろう。
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jujbuy · 3 years
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jz2p · 1 year
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