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#藁の鍋敷き
laatikko-t · 1 year
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֒𓈒𓏸𝚂𝚊𝚝𝚞𝚛𝚍𝚊𝚢.𝟸𝟶𝟸𝟹.𝟶𝟹.𝟶𝟻. ࿐𝙿𝚊𝚒𝚗 𝚍𝚎 𝚌𝚊𝚖𝚙𝚊𝚐𝚗𝚎 𓏬 今回の カンパーニュ𓋃𓋂𓋃 毎日 焼いては 食べて、、、 楽しい時間⌖˚ ◌ クープアートの 沼からは まだまだ 抜けれそうにない…笑ˊˎ˗ ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ ✄ ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ #campagne #カンパーニュ #パンアート⠀ #パン #手作りパン #クープアート #クープデザイン⠀ #ストウブ #staub #staub料理 ⠀ #藁の鍋敷き #staubパン⠀ ㅤㅤㅤㅤ#日々の暮らし #丁寧な暮らし #暮らしを楽しむ #暮らしの風景 #植物のある暮らし #ドライフラワーのある暮らし #器 #うつわ #器好き #tablephoto #onmytable #おうちごはん #フーディーテーブル #ごはんぐらむ #おうちごはんlover #instafood #instagood #foodstagram 𓋃𓋂𓋃 (おうち時間) https://www.instagram.com/p/CpYHwBzvl98/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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yuushiyou · 2 years
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子と鍋敷きです。ちょっと前にも描きました。 一日一画では、だいたい肌色以外一色だけで描くようにしていて、 前回書いた時にパジャマの青を塗ったので、鍋敷きは影つけただけにしました。 しかし完成した絵を改めて見て、鍋敷きの藁の色こそ塗るべきだったな~と思って。 今回リベジン…リンベジ?リベンジしてみました。 藁の鍋敷きの藁の鍋敷き感が、皆さんに伝わりますように。 #今日の一画 #イラスト #ブログ #1日1絵 #イラストグラム #漫画家 #ゆうしよう #岩手県 #子育て #女の子 #鍋敷き #藁細工 #illustration #drawing #art #それではまた明日の一画で https://www.instagram.com/p/CcAZG5IvFGW/?utm_medium=tumblr
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utsuwayarin · 3 years
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※※ 雫石民芸社さんより 小物のご紹介です。 くるみ樹皮の調味料立て 山ぶどうのスプーン入れ くるみの花結びコースター 藁細工の鍋敷き 人間も自然とともにある生き物。 星空を見たり、川に足を入れたり、またはグラウンディングをすると、心身ともに癒されエネルギーが満ちてくるように、生活の道���も自然に即した物が身近にあると、やはり本来の輝きやリズムが生まれてくるように思います。 自然にできた節やゆがみもまた美しい。 昨日も籠やリネンをお求めくださった皆様、とてもお似合いでした😊 今日もどうぞよろしくお願い致します。
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hananien · 3 years
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【SPN】庭師と騎士
警告:R18※性描写、差別的描写
ペアリング:サム/ディーン、オリキャラ/ディーン
登場人物:ディーン・ウィンチェスター、サム・ウィンチェスター、ボビー・シンガー・ルーファス・ターナー、ケビン・トラン、チャーリー・ブラッドベリー、クラウス神父(モデル:クラウリー)
文字数:約16000字
設定: 修道院の囚われ庭師ディーン(20)と宿を頼みに来た騎士サム(24)。年齢逆転、中世AU。
言い訳: 映画「天使たちのビッチナイト」に影響を受けました。ボソボソと書いてましたがちょっと行き詰まり、詰まってまで書くほどのものじゃないので一旦停止します。
 自分のことなら肋骨の二本や三本が折れていたとしても気づかないふりをしていられるが、部下たちを休ませる必要があった。
 王国騎士の象徴である深紅のマントは彼ら自身の血に染められ、疲労と傷の痛みとで意識がもうろうとしている者も数名いた。何よりも空腹だった。狩りをしようにも、矢がなく、矢を作るためにキャンプを張る体力もない。  一度腰を下ろせばそこが墓地になるかもしれなかった。  辺境の村を救うために命じられた出征だった。王はどこまで知っていたのか……。おそらくは何も知らなかったのに違いない。そうだと信じたかった。辺境の村はすでに隣国に占領されていた。彼らは罠にかけられたのだった。  待ち構えていた敵兵に大勢の仲間の命と馬を奪われ、サムは惨めな敗走を余儀なくされた。  森の中を、王城とは微妙にずれた方向へ進んでいるのに、サムに率いられた騎士たちは何もいわなかった。彼らもまた、サムと同じ疑いを胸に抱いていたのだ。全ては王に仕組まれたのではないかと。  誰一人口には出さなかったが、森の中をさ迷うサムに行き先を尋ねる者もいなかった。  なけなしの食糧を持たせて斥候に出していたケビンが、隊のもとに戻ってきた。彼は森の中に修道院を発見した。サムはその修道院に避難するべきか迷った。森は王国の領内だ。もしも王が裏切っていた場合、修道院にまで手を回されていたら彼らは殺される。  だが、このままでは夜を越せない者もいるかもしれなかった。サムは未だ六人の騎士を率いていて、王国よりサムに忠実な彼らを何としても生かさなければならない。  サムはケビンに案内を命じた。
 ディーンは自分の名前を気に入っていたが、今ではその名前を呼ぶ者はほとんどいなかった。  修道院では誰もがディーンのことを「あれ」とか「そこの」とか表現する。もしくは彼自身の職業である「庭師」とか。彼自身に、直接呼びかける者はいない。なぜなら彼は耳が聞こえないし、口も利けないから。  ディーンは今年で二十歳になる……らしい。彼は子供のころに両親を盗賊に殺されて、もともと身を寄せる予定だったこの修道院に引き取られた。ただし支払うべき寄付金も盗賊に奪われたので、修道士としてではなく庭師として働いて暮らしている。  夜中、ディーンはフラフラになりながら修道院を出て、納屋に帰り着いた。家畜小屋の横の納屋が彼の住処だ。神父が彼に酒を飲ませたので、藁の下に敷いた板のわずかな段差にも躓いてしまった。  そのまま藁の中にうずくまって、眠ってしまおうと思った時だ。納屋の戸の下の隙間から、赤い炎の色と複数の人影がちらついて見えた。  ディーンは、静かに身を起こした。少し胸やけはするが、幻覚を見るほど酔ってはいない。ディーンがいる納屋は、修道院の庭の中にある。修道士たちをオオカミやクマから守る塀の、内側だ。修道士たちは夜中にうろついたりしないから、この人影は外部からの――塀の外、森からの――侵入者たちのものだ。  門番の爺さんは何をしていたのか。もちろん、寝ているんだろう、夜更かしするには年を取りすぎている。今までも修道院が盗賊被害には遭ったことはあるが、こんな夜中じゃなかった。オオカミにとってはボロを着ていようが聖職者のローブを着ていようが肉は肉。強襲も山菜取りも日差しの入る間にやるのが最善だ。  では何者か。ディーンはそっと戸を開けて姿を見ようとした。ところが戸に手をかける間もなく、外から勢いよく開けられて転がり出てしまう。うつ伏せに倒れた鼻先に松明の火を受けてきらめく刃のきっさきを見て、そういえば、神父に持たされたロウソクが小屋の中で灯しっぱなしだったなと気づく。  「こそこそと覗き見をしていたな」 ざらついて低い声がディーンを脅した。ディーンはその一声だけで、彼がとても疲れて、痛みを堪えているのがわかった。  「やめろ、ルーファス! 何をしている」  若い男の声がした。ディーンを脅している男は剣のきっさきを外に向けた。「こいつが、俺たちを見張っていた。きっと刺客だ。俺たちがここに来るのを知っていて、殺そうとしてたんだ」  刺客、という言葉に、側にいた男たちが反応した。いったい何人いるんだ。すっかりと敵意を向けられて、ディーンはひるんだ。  「馬鹿な、彼を見ろ。丸腰だ。それに刺客なら小屋の中でロウソクなんて灯して待っているわけがない」 若い声の男が手を握って、ディーンを立たせた。俯いていると首から上が視界にも入らない。とても背の高い男だった。  「すまない、怖がらせてしまった。我々は……森で迷ってしまって、怪我を負った者もいる。宿と手当てが必要で、どうかここを頼らせてもらいたいと思って訪ねた」  背の高さのわりに、威圧的なところのない声だった。ディーンが頷くのを見て、男は続けた。  「君は――君は、修道士か?」 ディーンは首をかしげる。「そうか、でも、ここの人間だ。そうだろ? 神父に会わせてもらえるかい?」 ディーンはまた、首をかしげる。  「なんだ、こいつ、ぼんやりして」 さっき脅してきた男――闇夜に溶け込むような黒い肌をした――が、胡乱そうに顔をゆがめて吐き捨てる。「おお、酒臭いぞ。おおかた雑用係が、くすねた赤ワインをこっそり飲んでいたんだろう」  「いや、もしかして――君、耳が聞こえないの?」 若い男が自分の耳辺りを指さしてそういったので、ディーンは頷いた。それから彼は自分の口を指さして、声が出ないことをアピールする。  男の肩が一段下がったように見えて、ディーンは胸が重くなった。相手が自分を役立たずと判断して失望したのがわかるとき、いつもそうなる。  彼らは盗賊には見えなかった。何に見えるかって、それは一目でわかった。彼らは深紅の騎士だ。王国の誇り高い戦士たち。  幼いころに憧れた存在に囲まれて、これまで以上に自分が矮小な存在に思えた。  「聞こえないし、しゃべれもしないんじゃ、役に立たない。行こう、ケビンに神父を探させればいい」 疲れた男の声。  抗議のため息が松明の明かりの外から聞こえた。「また僕一人? 構いませんけどね、僕だって交渉するには疲れ過ぎて……」  「一番若いしまともに歩いてるじゃないか! 俺なんか見ろ、腕が折れて肩も外れてる、それに多分、日が上る前に止血しないと死ぬ!」  ディーンは初めて彼らの悲惨な状態に気が付いた。  松明を持っているのは一番背の高い、若い声の男で、彼はどうやら肋骨が折れているようだった。肩が下がっているのはそのせいかもしれなかった。ルーファスと呼ばれた、やや年配の黒い肌の男は、無事なところは剣を握った右腕だけというありさまだった。左半身が黒ずんでいて、それが全て彼自身の血であるのなら一晩もたないというのも納得だ。女性もいた。兜から零れた髪が松明の炎とそっくりの色に輝いて見えた。しかしその顔は血と泥で汚れていて、別の騎士が彼女の左足が地面に付かないように支えていた。その騎士自身も、兜の外された頭に傷を受けているのか、額から流れた血で耳が濡れている。  六人――いや、七人だろうか。みんな満身創痍だ。最強の騎士たちが、どうしてこんなに傷ついて、夜中に森の中をゆく羽目に。  ディーンは松明を持った男の腕を引っ張った。折れた肋骨に響いたのか、呻きながら彼は腕を振り払おうとする。  「待って、彼、案内してくれるんじゃない? 中に、神父様のところに」 女性の騎士がそういった。ディーンはそれを聞こえないが、何となく表情で理解した振りをして頷き、ますます騎士の腕を引っ張った。  騎士はそれきりディーンの誘導に素直についてきた。彼が歩き出すとみんなも黙って歩き出す。どうやらこの背の高い男が、この一団のリーダーであるらしかった。  修道院の正面扉の鍵はいつでも開いているが、神父の居室はたいていの場合――とりわけ夜はそうだ――鍵がかかっている。ディーンはいつも自分が来たことを示す独特のリズムでノックをした。  「……なんだ?」 すぐに扉の向こうで、眠りから起こされて不機嫌そうな声が聞こえてほっとする。もう一度ノックすると、今度は苛立たし気に寝台から降りる音がした。「なんだ、ディーン、忘れ物でもしたのか……」  戸を開いた神父は、ディーンと彼の後ろに立つ騎士たちの姿を見て、ぎょっとして仰け反った。いつも偉そうにしている神父のそんな顔を見られてディーンは少しおかしかった。  ディーンは背の高い男が事情を説明できるように脇にのいた。  「夜半にこのような不意の訪問をして申し訳ない。緊急の事態ですのでどうかお許し頂きたい。私は王国騎士のサミュエル・ウィンチェスター。彼は同じく騎士のルーファス。彼は重傷を負っていて一刻も早い治療が必要です。他にも手当と休息が必要な者たちがいる」  神父は、突然現れた傷だらけの騎士たちと、さっき別れたばかりの庭師を代わる代わる、忙しなく視線を動かして見て、それから普段着のような体面をするりと羽織った。深刻そうに頷き、それから騎士たちを安心させるようにほほ笑む。「騎士の皆様、もう安全です。すぐに治癒師を呼びます。食堂がいいでしょう、治療は厨房で行います。おい」 目線でディーンは呼びかけられ、あわてて神父のひざ元に跪いて彼の唇を読むふりをする。  「治癒師を、起こして、食堂に、連れてきなさい。わかったか?」  ディーンは三回頷いて、立ち上がると治癒師のいる棟へ駆け出す。  「ご親切に感謝する」 男のやわらかい礼が聞こえる。「……彼はディーンという名なのか? あとでもう一度会いたい、ずいぶんと怖がらせてしまったのに、我々の窮状を理解して中へ案内してくれた……」  ディーンはその声を立ち止まって聞いていたかったが、”聞こえない���のに盗み聞きなどで���るはずがなかった。
 明け方にルーファスは熱を出し、治癒師は回復まで数日はかかるだろうといった。サムは騎士たちと目を合わせた。今はまだ、森の深いところにあるこの修道院には何の知らせも来ていないようだが、いずれは王国から兵士が遣わされ、この当たりで姿を消した騎士たち――”反逆者たち”と呼ばれるかもしれない――がいることを知らされるだろう。俗世から離れているとはいえ修道院には多くの貴族や裕福な商家の息子が、いずれはまた世俗へ戻ることを前提にここで生活している。彼らの耳に王宮での噂が届いていないことはまずあり得なく、彼らがどちらの派閥を支持しているかはサムにはわからない。もっとも王が追っている失踪騎士を庇おうなどという不届きな者が、たくさんいては困るのだった。  出征の命令が罠であったのなら、彼らは尾けられていたはずだった。サムの死体を探しに捜索がしかれるのは間違いない。この修道院もいずれ見つかるだろう。長く留まるのは良策ではない。  かといって昏睡状態のルーファスを担いで森に戻るわけにもいかず、止む無くサムたちはしばらくの滞在を請うことになった。  修道院長のクラウス神父は快く応じてくれたが、用意されたのは厨房の下の地下室で、そこはかとなく歓迎とは真逆の意図を読み取れる程度には不快だった。彼には腹に一物ありそうな感じがした。サムの予感はしばしば王の占い師をも勝るが、騎士たちを不安させるような予感は口には出せなかった。  厨房の火の前で休ませているルーファスと、彼に付き添っているボビーを除く、五人の騎士が地下に立ち尽くし、ひとまず寝られる場所を求めて目をさ迷わせている。探すまでもない狭い空間だった。横になれるのは三人、あとの二人は壁に寄せた空き箱の上で膝を枕に眠るしかないだろう。  「お腹がすいた」 疲れて表情もないチャーリーが言った。「立ったままでもいいから寝たい。でもその前に、生の人参でもいいから食べたいわ」  「僕も同感。もちろんできれば生じゃなくて、熱々のシチューに煮込まれた人参がいいけど」  ガースの言葉に、チャーリーとケビンが深い溜息をついた。  地下室の入口からボビーの声が下りてきた。「おい、今から食べ物がそっちに行くぞ」  まるでパンに足が生えているかのように言い方にサムが階段の上に入口を見上げると、ほっそりした足首が現れた。  足首の持ち主は片手に重ねた平皿の上にゴブレットとワイン瓶を乗せ、革の手袋をはめたもう片方の手には湯気のたつ小鍋を下げて階段を下りてきた。  家畜小屋の隣にいた青年、ディーンだった。神父が彼を使いによこしたのだろう。  「シチューだ!」 ガースが喜びの声を上げた。チャーリーとケビンも控え目な歓声を上げる。みんなの目がおいしそうな匂いを発する小鍋に向かっているのに対し、サムは青年の足首から目が離せないでいた。  彼はなぜ裸足なんだろう。何かの罰か? 神父は修道士や雑用係に体罰を与えるような指導をしているのか? サムは薄暗い地下室にあってほの白く光って見える足首から視線を引きはがし、もっと上に目をやった。まだ夜着のままの薄着、庭でルーファスが引き倒したせいで薄汚れている。細いが力のありそうなしっかりとした肩から腕。まっすぐに伸びた首の上には信じられないほど繊細な美貌が乗っていた。  サムは青年から皿を受け取ってやろうと手を伸ばした。ところがサムが皿に手をかけたとたん、びっくりした彼はバランスを崩して階段を一段踏みそこねた。  転びそうになった彼を、サムは慌てて抱き止めた。耳元に、彼の声にならない悲鳴のような、驚きの吐息を感じる。そうだ、彼は耳が聞こえないのだった。話すことが出来ないのはわかるが、声を出すこともできないとは。  「急に触っちゃだめよ、サム!」 床に落ちた皿を拾いながらチャーリーがいう。「彼は耳が聞こえないんでしょ、彼に見えないところから現れたらびっくりするじゃない」  「ディーンだっけ? いや、救世主だ、なんておいしそうなシチュー、スープか? これで僕らは生き延びられる」 ガースが恭しく小鍋を受け取り、空き箱の上に並べた皿にさっさと盛り付けていく。階段の一番下でサムに抱き止められたままのディーンは、自分の仕事を取られたように見えたのか焦って体をよじったが、サムはどうしてか離しがたくて、すぐには解放してやれなかった。  まったく、どうして裸足なんだ?
 修道士たちが詩を読みながら朝食を終えるのを交代で横になりながら過ごして待ち、穴倉のような地下室から出て騎士たちは食堂で体を伸ばした。一晩中ルーファスの看病をしていたボビーにも休めと命じて、サムが代わりに厨房の隅に居座ることにした。  厨房番の修道士は彼らがまるでそこに居ないかのように振る舞う。サムも彼らの日課を邪魔する意思はないのでただ黙って石窯の火と、マントでくるんだ藁の上に寝かせた熟練の騎士の寝顔を見るだけだ。  ルーファスは気難しく人の好き嫌いが激しい男だが、サムが幼い頃から”ウィンチェスター家”に仕えていた忠臣だ。もし彼がこのまま目覚めなかったら……。自分が王宮でもっとうまく立ち回れていたら、こんなことにはならなかったかもしれない。  若き王の父と――つまり前王とサムの父親が従弟同士だったために、サムにも王位継承権があった。実際、前王が危篤の際には若すぎる王太子を不安視する者たちからサムを王にと推す声も上がった。不穏な声が派閥化する前にサムは自ら継承権を放棄し、領地の大半を王に返還して王宮に留まり一騎士としての振る舞いに徹した。  その無欲さと節制した態度が逆に信奉者を集めることとなり、サムが最も望まないもの――”ウィンチェスター派”の存在が宮殿内に囁かれるようになった。国王派――この場合は年若き王をいいように操ろうとする老練な大臣たちという意味だ――が敵意と警戒心を募らせるのも無理はないとサムが理解するくらいには、噂は公然と囁かれた。何とか火消しに回ったが、疑いを持つ者にとっては、それが有罪の証に見えただろう。  自分のせいで部下たちを失い、また失いつつあるのかと思うと、サムはたまらないむなしさに襲われた。  ペタペタと石の床を踏む足音が聞こえ顔を上げる。ディーンが水差しを持って厨房にやってきた。彼は石窯の横に置かれた桶の中に水を入れる。サムは声もかけずに暗がりから彼の横顔をぼうっと眺めた。声をかけたところで、彼には聞こえないが――  床で寝ているルーファスが呻きながら寝返りを打った。動きに気づいたディーンが彼のほうを見て、その奥にいるサムにも気づいた。  「やあ」 サムは聞こえないとわかりつつ声をかけた。まるきり無駄ではないだろう。神父の唇を読んで指示を受けていたようだから、言葉を知らないわけではないようだ。  彼が自分の唇を読めるように火の前に近づく。  「あー、僕は、サムだ。サム、王国の騎士。サムだ。君はディーン、ディーンだね? そう呼んでいいかい?」  ディーンは目を丸く見開いて頷いた。零れそうなほど大きな目だ。狼を前にしたうさぎみたいに警戒している。  「怖がらないでいい。昨夜はありがとう。乱暴なことをしてすまなかった。怪我はないか?」  強ばった顔で頷かれる。彼は自らの喉を指して話せないことをアピールした。サムは手を上げてわかっていることを示す。  「ごめん――君の仕事の邪魔をするつもりはないんだ。ただ、何か困ってることがあるなら――」 じっと見つめられたまま首を振られる。「――ない?」 今度は頷かれる。「――……そうか、わかった。邪魔をしてごめん」  ディーンは一度瞬きをしてサムを見つめた。彼は本当に美しい青年だった。薄汚れてはいるし、お世辞にも清潔な香りがするとは言い難かったが、王宮でもお目にかかったことのないほど端正な顔立ちをしている。こんな森の奥深くの修道院で雑用係をしているのが信じられないくらいだ。耳と口が不自由なことがその理由に間違いないだろうが、それにしても――。  水差しの水を全て桶に注いでしまうと、ディーンはしばし躊躇った後、サムを指さして、それから自分の胸をさすった。  彼が動くのを眺めるだけでぼうっとしてしまう自分をサムは自覚した。ディーンは何かを伝えたいのだ。もう一度同じ仕草をした。  「君の? 僕の、胸?」 ディーンは、今度は地下に繋がる階段のほうを指さして、その場で転ぶ真似をした。そしてまたサムの胸のあたりを指さす。  理解されてないとわかるとディーンの行動は早かった。彼はルーファスをまたいでサムの前にしゃがみ込み、彼の胸に直接触れた。  サムは戦闘中以外に初めて、自分の心臓の音を聞いた。  ディーンの瞳の色は鮮やかな新緑だった。夜にはわからなかったが、髪の色も暗い金髪だ。厨房に差し込む埃っぽい日差しを浴びてキラキラと輝いている。  呆然と瞳を見つめていると、やっとその目が自分を心配していることに気が付いた。  「……ああ、そっか。僕が骨折してること、君は気づいてるんだね」 ”骨折”という言葉に彼が頷いたので、サムは納得した。さっき階段から落ちかけた彼を抱き止めたから、痛みが悪化していないか心配してくれたのだろう。サムは、彼が理解されるのが困難と知りながら、わざわざその心配を伝えようとしてくれたことに、非常な喜びを感じた。  「大丈夫だよ、自分で包帯を巻いた。よくあることなんだ、小さいころは馬に乗るたびに落馬して骨を折ってた。僕は治りが早いんだ。治るたびに背が伸びる」  少し早口で言ってしまったから、ディーンが読み取ってくれたかはわからなかった。だが照れくさくて笑ったサムにつられるように、ディーンも笑顔になった。  まさに魂を吸い取られるような美しさだった。魔術にかかったように目が逸らせない。完璧な頬の稜線に触れたくなって、サムは思わず手を伸ばした。  厨房の入口で大きな音がした。ボビーが戸にかかっていたモップを倒した音のようだった。  「やれやれ、どこもかしこも、掃除道具と本ばかりだ。一生ここにいても退屈しないぞ」  「ボビー?」  「ああ、水が一杯ほしくてな。ルーファスの調子はどうだ?」  サムが立ち上がる前に、ディーンは驚くほどの素早さで裏戸から出て行ってしまった。
 キラキラしてる。  ディーンは昔からキラキラしたものに弱かった。  木漏れ日を浴びながら一時の昼寝は何物にも得難い喜びだ。太陽は全てを輝かせる。泥だまりの水だってきらめく。生まれたばかりの子ヤギの瞳、朝露に濡れた花と重たげな羽を開く蝶。礼拝堂でかしずいた修道士の手から下がるロザリオ。水差しから桶に水を注ぐときの小気味よい飛沫。  彼はそういったものを愛していた。キラキラしたものを。つまりは美しいもの。彼が持ち得なかったもの。  サムという騎士はディーンが今までに見た何よりも輝いていた。  あまりにもまぶしくて直視しているのが辛くなったほどだ。彼の瞳の色に見入っていたせいで、厨房で大きな音に反応してしまった。幸いサムは音を立てた騎士のほうに目がいってディーンの反応には気づかなかったようだ。  もう一度彼の目を見て彼に触れてみたかったが、近づくのが恐ろしくもあった。
 ディーン何某という男の子がこの世に生を受けたとき、彼は両親にとても祝福された子供だった。彼は美しい子だと言われて育った。親というのは自分の子が世界で一番美しく愛らしいと信じるものだから仕方ない。おかげでディーンは両親が殺され、修道院に引き取られる八つか九つの頃まで、自分が怪物だと知らずに生きてこられた。  修道院長のクラウス神父は親と寄付金を失った彼を憐れみ深く受け入れてくれたが、幼い孤児を見る目に嫌悪感が宿っているのをディーンは見逃さなかった。  「お前は醜い、ディーン。稀に見る醜さだ」と神父は、気の毒だが率直に言わざるを得ないといった。「その幼さでその醜さ、成長すれば見る者が怖気をふるう怪物のごとき醜悪な存在となるだろう。無視できない悪評を招く。もし怪物を飼っていると噂が立てば、修道院の名が傷つき、私と修道士たちは教会を追われるだろう。お前も森に戻るしかなくなる」 しかしと神父は続けた。「拾った怪物が不具となれば話は違う。耳も聞こえなければ口もきけないただの醜い哀れな子供を保護したとなれば、教皇も納得なさるだろう。いいかね、ディーン。お前をそう呼ぶのは今日この日から私だけだ。他の者たちの話に耳を傾けてはいけないし、口を聞いてもいけない。おまえは不具だ。不具でなければ、ここを追い出される。ただの唾棄すべき怪物だ。わかったかね? 本当にわかっているなら、誓いを立てるのだ」  「神様に嘘をつけとおっしゃるのですか?」  まろやかな頬を打たれてディーンは床に這いつくばった。礼拝堂の高窓から差し込む明かりを背負って神父は怒りをあらわにした。  「何という身勝手な物言いだ、すでに悪魔がその身に宿っている! お前の言葉は毒、お前の耳は地獄に通じている! 盗賊どもがお前を見逃したのも、生かしておいたほうが悪が世に蔓延るとわかっていたからに違いない。そんな者を神聖な修道院で養おうとは、愚かな考え��った。今すぐに出ていきなさい」  ディーンは、恐ろしくて泣いてすがった。修道院を追い出されたら行くところがない。森へ放り出されたら一晩のうちに狼の餌食になって死んでしまうだろう。生き延びられたとしても、神父ですら嫌悪するほど醜い自分が、他に受け入れてくれる場所があるはずもない。  ディーンは誓った。何度も誓って神父に許しを請うた。「話しません、聞きません。修道院のみなさまのご迷惑になることは決してしません。お願いです。追い出さないでください」  「お前を信じよう。我が子よ」 打たれた頬をやさしく撫でられ、跪いてディーンを起こした神父に、ディーンは一生返せぬ恩を負った。
 ぼんやりと昔を思い出しながら草をむしっていたディーンの手元に影が落ちた。  「やあ、ディーン……だめだ、こっちを向いてもらってからじゃないと」 後ろでサムがぼやくのが聞こえた。  ディーンは手についた草を払って、振り向いた。太陽は真上にあり、彼は太陽よりも背が高いことがわかって、ディーンはまた草むしりに戻った。  「あの、えっと……。ディーン? ディーン」  正面に回り込まれて、ディーンは仕方なく目線を上げた。屈んだサムはディーンと目が合うと、白い歯をこぼして笑った。  ああ、やっぱりキラキラしてる。  ディーンは困った。
 サムは困っていた。どうにもこの雑用係の庭師が気になって仕方ない。  厨房から風のように消えた彼を追って修道院の中庭を探していると、ネズの木の下で草をむしっている背中を見つけた。話しかけようとして彼が聞こえないことを改めて思い出す。聞こえない相手と会話がしたいと思うなんてどうかしてる。  それなのに気づけば彼の前に腰を下ろして、身振り手振りを交えながら話しかけていた。仕事中のディーンは、あまり興味のない顔と時々サムに向けてくれる。それだけでなぜか心が満たされた。  ネズの実を採って指の中で転がしていると、その実をディーンが取ろうとした。修道院の土地で採れる実は全て神が修道士に恵まれた貴重なもの――それがたとえ一粒の未熟な実でも――だからサムは素直に彼に渡してやればよかった。だがサムは反射的に手をひっこめた。ディーンの反応がみたかったのだ。彼は騎士にからかわれて恥じ入るような男か、それとも立ち向かってくるか? 答えはすぐにわかった。彼は明らかにむっとした顔でサムを見上げ、身を乗り出し手を伸ばしてきた。  サムはさらに後ろに下がり、ディーンは膝で土を蹴って追いすがる。怒りのせいか日差しを長く浴びすぎたせいか――おそらくそのどちらも原因だ――額まで紅潮した顔をまっすぐに向けられて、サムは胸の奥底に歓喜が生まれるのを感じた。  「ハハハ……! ああ……」 するりと言葉がこぼれ出てきた。「ああ、君はなんて美しいんだ!」  ディーンがサムの手を取ったのと、サムがディーンの腕を掴んだのと、どちらが早かったかわからかない。サムはディーンに飛びつかれたと思ったし、ディーンはサムに引き倒されたと思ったかもしれない。どっちにしろ、結果的に彼らはネズの根のくぼみに入ってキスをした。  長いキスをした。サムはディーンの髪の中に手を入れた。やわらかい髪は土のにおいがした。彼の唾液はみずみずしい草の味がした。耳を指で挟んで引っ張ると、ん、ん、と喉を鳴らす音が聞こえた。とても小さな音だったが初めて聞いた彼の”声”だった。もっと聞きたくて、サムは色んなところを触った。耳、うなじ、肩、胸、直接肌に触れたくて、腹に手を伸ばしたところでディーンが抵抗した。  初めは抵抗だとわからなかった。嫌なことは嫌と言ってくれる相手としか寝たことがなかったからだ。ところが強く手首を掴まれて我に返った。  「ごめん!」 サムは慌てて手を離した。「ご、ごめん、本当にごめん! こんなこと……こんなことするべきじゃなかった。僕は……だめだ、どうかしてる」 額を抱えてネズの根に尻を押し付け、できるだけディーンから離れようとした。「僕はどうかしてる。いつもはもっと……何というか……こんなにがっついてなくて、それに君は男で修道院に住んでるし――ま、まあ、そういう問題じゃないけど――ディーン――本当にごめん――ディーン?」  ディーンは泣いていた。静かに一筋の涙を頬に流してサムを見ていた。  「待って!」  またも彼の身の軽さを証明する動きを見届けることになった。納屋のほうに走っていく彼の姿を、今度はとても追う気にはなれなかった。
 夜、クラウス神父の部屋でディーンは跪いていた。  「神父様、私は罪を犯しました。二日ぶりの告解です」  「続けて」  「私は罪を犯しました……」 ディーンはごくりとつばを飲み込んだ。「私は、自らの毒で、ある人を……ある人を、侵してしまったかもしれません」  暖炉の前に置かれたイスに座り、本を読んでいた神父は、鼻にかけていた眼鏡を外してディーンを見た。  「それは由々しきことだ、ディーン。お前の毒はとても強い。いったい誰を毒に侵したのだ。修道士か?」  「いいえ、騎士です」  「騎士! 昨日ここに侵入してきたばかりの、あの狼藉者どものことか? ディーン、おお、ディーン。お前の中の悪魔はいつになったら消えるのだろう」 神父は叩きつけるように本を閉じ、立ち上がった。「新顔とくれば誘惑せずにはおれないのか? どうやって、毒を仕込んだ。どの騎士だ」  「一番背のたかい騎士です。クラウス神父。彼の唇を吸いました。その時、もしかしたら声を出してしまったかもしれません。ほんの少しですが、とても近くにいたので聞こえたかもしれません」  「なんてことだ」  「あと、彼の上に乗ったときに胸を強く圧迫してしまったように思います。骨折がひどくなっていなければいいのですが、あとで治癒師にみてもらうことはできますか?」  「ディーン……」 神父は長い溜息をついた。「ディーン。お前の悪魔は強くなっている。聖餐のワインを飲ませても、毒を薄めることはできなかった。お前と唯一こうして言葉を交わし、お前の毒を一身に受けている私の体はもうボロボロだ」  「そんな」  「これ以上ひどくなれば、告解を聞くことも困難になるかもしれない」  ディーンはうろたえた。「神父様が許しを与えて下さらなければおれは……本物の怪物になってしまいます」  「そうだ。だから私は耐えているのだ。だが今日はこれが限界だ。日に日にお前の毒は強くなっていくからな」 神父はローブを脱いで寝台に横たわった。「頼む、やってくれ、ディーン」  ディーンは頷いて寝台に片膝を乗せると、神父の下衣を下ろして屈み込んだ。現れたペニスを手にとって丁寧に舐め始める。  「私の中からお前の毒を吸い取り、全て飲み込むのだ。一滴でも零せば修道院に毒が広がってしまう。お前のためにもそれは防がなくてはならない」  「はい、神父様」  「黙りなさい! 黙って、もっと強く吸うんだ!」 神父は厳しく叱責したが、不出来な子に向けて優しくアドバイスをくれた。「口の中に、全部入れてしまったほうがいい。強く全体を頬の内側でこすりながら吸ったほうが、毒が出てくるのも早いだろう」  心の中でだけ頷いて、ディーンはいわれた通り吸い続けた。もう何度もやっていることなのに、一度としてうまくやれたことがない。いつも最後には、神父の手を煩わせてしまう。彼は自分のために毒で苦しんでいるのにだ。  今回も毒が出る前に疲れて吸う力が弱まってしまい、神父に手伝ってもらうことになった。  「歯を立てたら地獄行きだからな。お前を地獄に堕としたくはない」 神父は忠告してから、両手でディーンの頭を抱えて上下にゆすった。昨夜はワインを飲んだあとにこれをやったからしばらく目眩が治まらなかった。今日はしらふだし、神父がこうやって手を借してくれるとすぐに終わるのでディーンはほっとした。  硬く張りつめたペニスから熱い液体が出てきた。ディーンは舌を使って慎重に喉の奥に送り、飲み込んでいった。飲み込むときにどうしても少し声が出てしまうが、神父がそれを咎めたことはなかった。ディーンが努力して抑えているのを知っているのだろう。  注意深く全て飲み込んで、それでも以前、もう出ないと思って口を離した瞬間に吹き出てきたことがあったので、もう一度根本から絞るように吸っていき、本当に終わったと確信してからペニスを解放した。神父の体は汗ばんでいて、四肢はぐったりと投げ出されていた。  ディーンはテーブルに置かれた水差しの水を自分の上着にしみこませ、神父の顔をぬぐった。まどろみから覚めたような穏やかな顔で、神父はディーンを見つめた。  「これで私の毒はお前に戻った。私は救われたが、お前は違う。許しを得るために、また私を毒に侵さねばならない。哀れな醜い我が子よ」  そういって背を向け、神父は眠りに入った。その背中をしばし見つめて、ディーンは今夜彼から与えられなかった神の許しが得られるよう、心の中祈った。
 修道士たちが寝静まった夜、一人の騎士が目を覚ました。  「うーん、とうとう地獄に落ちたか……どうりで犬の腐ったような臭いがするはずだ」  「ルーファス!」 ボビーの声でサムは目を覚ました。地下は狭すぎるが、サムがいなければ全員が横になれるとわかったから厨房の隅で寝ていたのだ。  「ルーファス! このアホンダラ、いつまで寝てるつもりだった!」 ボビーが歓喜の声を上げて長い付き合いの騎士を起こしてやっていた。サムはゴブレットに水を注いで彼らのもとへ運んだ。  「サミュエル」   「ルーファス。よく戻ってきた」  皮肉っぽい騎士は眉を上げた。「大げさだな。ちょっと寝てただけだ」 ボビーの手からゴブレットを取り、一口飲んで元気よく咳き込んだあと、周囲を見回す。「それより、ここはどこだ、なんでお前らまで床に寝てる?」  「厨房だよ。他の皆はこの地下で寝てる。修道院長はあまり僕らを歓迎していないみたいだ。いきなり殺されないだけマシだけどね」  「なんてこった。のん気にしすぎだ。食糧をいただいてさっさと出発しよう」  「馬鹿言ってないで寝てろ。死にかけたんだぞ」 起き上がろうとするルーファスをボビーが押し戻す。しかしその腕を掴んで傷ついた騎士は強引に起きようとする。  「おい、寝てろって」  「うるさい、腹が減って寝るどころじゃない!」  サムとボビーは顔を見合わせた。
 三人の騎士は食堂に移動した。一本のロウソクを囲んで、鍋に入れっぱなしのシチューをルーファスが食べるのを見守る。  「で、どうする」 まずそうな顔でルーファスはいう。もっともルーファスは何を食べてもこういう顔だから別にシチューが腐っているわけではない。例外が強い酒を飲む時くらいで、一度密造酒を売って儲けていた商売上手な盗賊団を摘発した時には大喜びだった(酒類は国庫に押収されると知ってからも喜んでいたからサムは心配だった)。  修道院にある酒といえば聖体のワインくらいだろう。ブドウ園を持っている裕福な修道院もあるが、この清貧を絵にしたような辺境の修道院ではワインは貴重品のはずだ。ルーファスが酒に手を出せない環境でよかった。しかし――サムは思い出した。そんな貴重なワインの匂いを、あのみすぼらしい身なりの、納屋で寝ている青年は纏わせていたのだった。  「どうするって?」  ボビーが聞き返す。ルーファスは舌打ちしそうな顔になってスプーンを振った。「これからどこへ行くかってことだよ! 王都に戻って裏切者だか敗走者だかの烙印を押されて処刑されるのはごめんだぜ」  「おい、ルーファス!」  「いいんだ、ボビー。はっきりさせなきゃならないことだ」 サムはロウソクの火を見つめながらいった。「誤魔化してもしょうがない。我々は罠にかけられた。仕掛けたのは王だ。もう王都には戻れない――戻れば僕だけでなく、全員が殺される」  「もとからお前さんの居ない所で生き延びようとは思っていないさ。だが俺とルーファスはともかく……」  「若くて将来有望で王都に恋人がいる私でも同じように思ってるわよ」 チャーリーが食堂に来た。ルーファスの隣に座って平皿に移したシチューを覗き込む。「それおいしい?」  「土まみれのカブよりはな」  「なあ、今の話だが、俺はこう思ってる」 ボビーがいった。「この状況になって初めて言えることだが、王国は腐ってる。王に信念がないせいだ。私欲にまみれた大臣どもが好き放題している。民は仕える主を選べないが、俺たちは違う。もとから誰に忠義を尽くすべきか知っている。もう選んでいる。もうすでに、自分の望む王の下にいる」  「その話、なんだか素敵に聞こえる。続けて」 チャーリーがいう。  「いや、まったく素敵じゃない。むしろ危険だ」 サムはいったが、彼の言葉を取り合う者はいなかった。  ゴブレットの水を飲み干してルーファスが頷いた。「サムを王にするって? それはいい。そうしよう。四年前にあの棒みたいなガキに冠を乗せる前にそうしとけばよかったんだ。野生馬を捕まえて藁で編んだ鞍に乗り、折れた剣を振りかざして、七人の騎士で玉座を奪還する!」 そしてまた顔をしかめながらシチューを食べ始める。「俺はそれでもいいよ。少なくとも戦って死ねる」  ボビーがうなった。「これは死ぬ話じゃない。最後まで聞け、ルーファス」  「そうよ、死ぬのは怖くないけど賢く生きたっていい」 チャーリーが細い指でテーブルを叩く。「ねえ、私に案がある。ここの修道院長に相談するのよ。彼から教皇に仲裁を頼んでもらうの。時間を稼いで仲間を集める。探せば腐った大臣の中にもまだウジ虫が沸いてないヤツもいるかもしれない。血を流さなくても王を変える手はある。アダムだって冠の重さから解放されさえすればいい子に戻るわよ」  「それよりウィンチェスター領に戻ってしばらく潜伏すべきだ。あそこの領民は王よりもサムに従う。俺たちを王兵に差し出したりしない」  「だから、それからどうするのかって話よ。潜伏もいいけど結局王と対決するしかないじゃない、このまま森で朽ち果てるか北の隣国に情報を売って保護してもらって本物の売国奴になる他には!」  「ちょっと落ち着け、二人とも。修道士たちが起きてくる。それから僕の計画も聞け」  「ろくな計画じゃない」  「ルーファス! ぼやくな」  「そうよルーファス、死にかけたくせに。黙ってさっさと食べなさいよ」  サムはため息を吐きそうになるのを堪えて皆に宣言した。「王都には僕一人で行く」  「ほらな」とスプーンを放ってルーファスが特大のため息を吐いた。「ろくな計画じゃない」
 行商売りの見習い少年と仲良くなったことがあった。同年代の子と遊ぶのは初めてだったから嬉しくて、ディーンは思わず自分の秘密をもらしてしまった。自分の口で見の上を語る彼に、少年はそんなのはおかしいといった。  「君は神父に騙されているんだよ。君は醜くなんかない、夏の蝶の羽のように美しいよ」  「神様の家で嘘をついちゃいけないよ」  「嘘なんかじゃない。ホントにホントだよ。僕は師匠について色んな場所へ行くけれど、どんなお貴族様の家でだって君みたいな綺麗な人を見たことがないよ」  ディーンは嬉しかった。少年の優しさに感謝した。次の日の朝、出発するはずの行商売りが見習いがいなくなったと騒ぎ出し、修道士たちが探すと、裏の枯れ井戸の底で見つかった。  井戸は淵が朽ちていて、遺体を引き上げることもできなかった。神父は木の板で封印をした。ひと夏の友人は永遠に枯れ井戸の中に閉じ込められた。  修道院は巨大な棺桶だ。  ディーンは二度と友人を作らなかった。
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tenaraichou · 4 years
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小さめの鍋敷きがほしいので、ガマや藁をなった縄を組む練習。歪。そもそもの縄ないの下手さを実感中です😯  昔から生活の中にあったという縄ない、組みの技術は、特許とか著作権とかとは無縁のもので、ほっとします。 火を起こすとか、石を砕いて刃物を作るとか、土をこねて器を作るとか、繊維を採って布を織るとか、種を採って(収穫して)栽培するとか、そういった類いの行為は、今の暮らしからは遠くなっているのかもしれないけれど、そもそもは生きていくために必要な基本的な営みで、もしもその営みが一部の利益享受者のために完全に制限されたら、とても侵害、侵略された気持ちになるなと手を動かしながら実感した大寒。種苗法の改変が行きすぎたものにならないようチェックし続けなければいけないと思う大寒。  #藁細工 #ガマ細工 #手仕事 https://www.instagram.com/p/B7kEnBWpoYk/?igshid=1ee8g4k8ol39q
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foucault · 5 years
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土鍋の会、明日までです。山形で作られた、いぐさと藁の鍋敷き。全然正円じゃない。こういう、それがどうした、みたいな仕事が好きです。 (工藝風向) https://www.instagram.com/p/Bq1d_pLHMwc/?utm_source=ig_tumblr_share&igshid=1awpqi0u07ncm
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march0320 · 5 years
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2018/12/27
【年末のこんにゃくづくり】
木頭では、年末にこんにゃくを手づくりするそう。
えっともつ(長い間もつ)ことから、年末年始にはこんにゃく料理が並びます。
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「こんにゃくこっさえたけんいるか?刺身でも、炒りあげてもうまいわだ。」
「こんにゃく芋をいでた(茹でた)汁につけといたらえっともつぞ。冷たい水でもええけんどの。寒いく(場所)に置いといたらいけるけんの。」
と、いろいろこんにゃくのことを教えていただき、今の時期によくいただきます。ほれがまた美味しい。
こんにゃくを芋からつくるには、てまひまがかかり、知恵も詰まっています。
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「芋は、ソフトボールくらいのんがええんよだ。2~3年もののやつの。」
「10月くらいに芋掘って、1ヶ月くらい干しといて、水分を飛ばすんぞ。」
「大鍋に、芋を半分くらいに切って、藁の硬いところが通るくらいやりこくいでての。いですぎはかんまんけんど、いでなさすぎはいかんけんの。」
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「いでたら、水につけて、皮むいての。小さあに切るんよだ。冷凍庫に入れといたらえっともつけんの。」
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「灰汁をこっさえての。あさぎ(雑木)の灰がええっていうの。特に、椿やらかし、ケヤキやらの硬い木がええらしいわ。ざるに新聞紙敷いて灰のせての。そこい湯をかけて灰汁をこっさえての。灰汁と、水といでた芋をミキサーに入れて混ぜるんよだ。」
「ちょっと固まりがあまいなぁと思うたら、ちょっこし灰汁を足して混ぜたりしての。手で、形を整えて、1時間くらいいでたらできるんよだ。」
灰汁を使わず、炭酸ナトリウムを使えば、必ず固まって失敗はないそうだけれど、木頭では灰汁でこっさえたんが美味しいと、灰汁を使ってこんにゃくをつくる方が多いです。
でも、炭酸ナトリウムと違って、自分でつくった灰汁は、できあがりの濃さによって入れる量が変わるので、まずはちょっと舐めてみて、舌にピリッときたらOK。あとは、大体の目安の量を入れて、固まり具合を見ながら追加で入れていくそう。これが、何度もやらないとわからない。
「わぁは、硬いこんにゃくよりちょっとやりこいんが好きだけんの。灰汁の量を少なめにしてつくりよるんよだ。」
ベテランになると、硬さまでコントロールできるみたい。すごい。
てまひまかるけれど、かなりおいしい手づくりこんにゃく。
木頭の年末年始の食卓には、こんにゃくをゆず味噌で食べたり、炒って食べたり、炊いて食べたり、いろいろなこんにゃく料理が並ぶそうです。
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toubi-zekkai · 3 years
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白い鷹
 隕石の如き勢いで虚空から大きな雪の一塊が庭へと落ちてきた。しかしそれは雪ではなく白い鷹であった。私は自分の目に疑惑を抱き素早くそれを確認した。東京に鷹が生息しているという話を聞いたこともなければ見たことも無論なかった。 
 鷹の大きさは鴉と同程度であり、頭から尾の先まで白く覆われた羽毛の中に他の鳥類には見られない猛禽類特有の鋭い目付き、一切の余情を許さぬ残酷で厳しく誇り高い王の瞳が光っていた。そうした瞳に我が身が晒されるとき、存在は逃げ場のない緊張、戦慄が全身を駆け巡る。私は自分の身が紛れもなく緊張しているのを感じた。その瞬間に至るまで刻々と刻まれてきた私の全人生及び全人類の時計の針が光の速さで逆回転し、そこにはただ一匹の虚弱な猿と一羽の強靭な白い鷹がいた。猿は身に迫る危機そのものである鷹の研ぎ澄まされた三日月のような嘴、黒い血が染み込んだ拷問器具を思わせる爪、縛られて両肩を抑え込まれ膝を屈した罪人に淡々と死刑判決を告げる異端審問官のような眼差しに畏れ慄いていたのだが一方で鷹の神聖で侵し難い白い翼に抑えることの出来ない憧れを抱いていたのも事実であり、畏れと憧れは少しずつ一つに溶け合うと畏敬の興奮へと高められていった。  避け難い緊張の極限に達した時、世界は一瞬石になったかの如き完全な平和、静寂に包まれる。しかしそれは次の瞬間には轟音とともに爆散し弾け飛ぶような緊張の予感を孕んだ石である。とはいえ平和とはすべてそういうもので一見物静かに見えるものほどその裏側には危険な抑圧が潜んでいる。宇宙は一瞬たりとも時を止めたりはしない。それを無理矢理にでも留めようとするならば時間を抑え込むその殻が限界を迎えた瞬間に時間は一気に爆発する。核爆弾には圧縮された時間そのものが詰め込まれているのである。  鷹が舞い降りた庭が見える窓の面前で猿は石のように固まっていたが、息が止まるような緊迫はその猿だけではなく庭の敷地全体にまで及んでいた。先程まで柔らかな風が青い草と戯れ、枝の先々に乗ったすずめたちが無邪気に囀り、梅の花に群がる蜂たちの羽音がさざめいていた庭は些細な波の揺らぎ一つさえ浮かばない黒ずんだ沈黙の海へと様変わりしていた。固く閉ざされた庭の中に太陽は容赦なく時間を降り注ぎ続け、逃げ場のない空間のなかに充満した時間は、風、赤い自転車、草、乾きかけた洗濯物、すずめ、蜂たち、梅の木や花、猿、ありとあらゆる存在をきつく圧迫しその活動を停止させた。  時が停止した庭の光景は猿に幼い頃目にした一つの光景を思い出させた。それは夏休みか何かに両親に連れて行かれた片田舎にある博物館で見た古代人の生活を再現した展示だった。鍾乳洞のように薄暗い通路に沿って続くひんやりとした手摺のすぐ向こうでは、獣の毛皮に逞しい半裸を包んだ古代人たちが、細い矢が幾本も突き刺さり血を垂れ流しつつも白く鋭い牙を剥き出して抵抗するマンモスに四方八方から槍を投げつけ、断面化された藁ぶき屋根の簡素な家のなかで肩を寄せて黙々と土鍋をつつき、満天の星々と満月が浮かぶ夜の下に煌々と燃える焚火の周りを白い歯を剥き出して狂熱的に身体をくねらせて踊っていた。そこには幼い猿が思い描いてきた穏やかな太陽に見守られのんびりと自由気ままに暮らす古代人の面影は微塵もなく、どの場面の古代人たちも何か恐ろしいものの影に怯えて皆一様に固まっているように見えた。次の瞬間にはその何か恐ろしいものが古代人たちに一斉に襲い掛かり、そこに虐殺と悲鳴の惨劇が巻き起こるのではないかと予感させる不穏な臭いが密かに漂い、場面のひとつひとつはそうした惨劇が起こる直前の時間を無理矢理に固めて置いているように見えた。それは謂わば生々し過ぎる遺影だった。そうした場面場面の前を怖じ怖じと進みながら猿は自分が幽霊になったかのような不安を感じた。生きている時間は遺影のなかに閉じ込められおり、それを見ている自分はそこから乖離している何かだった。猿は怖くなって後ろを振り返った。しかしそこには暗闇に顔が半ば溶けたやはり幽霊のような両親が立っていた。  遺影と化した庭の上をしかし白い鷹は悠然と闊��していた。彼は幽霊に対する不安にもミダス王の如き嘆きにもまるで縁がないようだった。庭に置かれた大きな庭石の上に悠々と腰を落ち着けるとすぐに扇のように羽根を開いて丹念にそれを繕い始め、時折その白い羽根の隙間から覗く鋭い眼差しが庭の一面を睥睨しこの初めて見る土地が本当に征服に値する土地なのか見定めているようだった。そのようにして彼は己を飾るのに相応しい宝石を求めて空の海を渡り歩いて来たのだろう。ダイヤ、サファイア、真珠、エメラルド、トパーズ、様々な種類の宝石が王冠に煌いているように思えた。しかしこの庭の派手さに欠ける平凡な石たちは彼の気に召さなかったらしく、すぐに羽根を折りたたむと白い鷹は大きな羽音を立てて呆気なく空の彼方に飛び去っていった。後に残された庭はというと未だ時間を止められたままでいたが、それでもその後時間は少しずつ溶け始め、暫くすると堰を切ったように動き始めた。まず始めに風が青草に挨拶し、それから猿が足早に庭へと駆け出して来る頃には、すずめたちが囀り、満開の梅の花に蜂たちが群がる、いつもの庭がそこにあった。
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sno-shop · 3 years
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今週の木曜日からふわっと実店舗の営業を始めておりました。 今年もどうぞよろしくお願い致します! 藁の鍋敷きなど入荷しております。 コーヒー週間なので、明日も営業しまーす! (スヌー 暮らしのもの) https://www.instagram.com/p/CKF1Na_si-o/?igshid=12xqnogm57o8u
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izumiiguchi · 6 years
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今日は納豆を仕込みますよ。 豆は二種類、スターターの葉は、ローズマリー、椿、月桂樹、無農薬の稲藁または棗。豆は二種類茹でるとガスを二口塞ぐので1つをカゴに入れて同じ鍋で茹でます。 料理のレッスンをしつつ、「量を食べなくてもいいこと」「からだのサイズと適量を知ること」「からだの使い方を知ること」を大きな柱にしてゆきましょう。心の中に、意識の中に、宮柱太敷き建て、からだを起こしてゆきましょう。春です。 もちろん食べたいものは食べて良い。からだを信頼し、ひとつも罪悪感を持たず、喜びに満ちて口に運ぶことこそなににもまさる栄養です。「うわー、おいしーい、うれしい!ありがとう」と心から思うと円とも出てくれますぞ。 食べることと罪悪感が紐付いている人が多いなー、と感じています(経験もしました)。それは本来まったく関係のない独立したふたつです。それをどうやってわかつかは、噛み方を知る、適量を知る、からだの姿勢に意識を払う、たまにご馳走をいただいても充分に対応できるからだを作り、からだのことを信頼する(信頼しているようで、からだを無視している人も多いのでこれは要注意)、適量以上は本当は美味しくないと知る、残すことに罪悪感を持たない、食べるのを焦らない(多少食べなくても死にませんし、ご馳走はまたやってくる)、食べ過ぎてしまう人は食事ではないところに理由がないか振り返る。 食べるという行為はわかりやすく喜びに満ちた、ありがたいことです。しかし幸せというものは外側からの理由や刺激とは一切関係ない。毎日三食からだの都合ではなく「スケジュール」のために食べなくても大丈夫。選んでゆきましょう〜。 🌿育てる・発酵のレッスンのお知らせ🌿 https://instagram.com/p/BgV8AlFlfPU/ #発酵の3日間 #発酵の5日間 #発酵の7日間
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sarahflow · 4 years
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「しがや」でごはん。
 ――はじまりは「味噌豆」だった。
 底の深いフライパンに油を敷き、軽く水洗いした大豆を入れながら、志賀真幸(しがまゆき)はそう思う。  ゆっくりとへらでかき混ぜて大豆に油をまわし、強火にかける。十五分ほど煎っていると、豆がしわしわになっていく。さらに煎り続けていけば、しわがなくなって、ぱちぱちと音をたてはじめる。表面が少し割れてもくる。  ちょっとずつ焦げ目がつく、この過程が真幸はとても好きだ。  どんなメニューを組む日でも、「味噌豆」は必ず作ってタッパーに入れておく。あまり甘くしないから、ごはんのおともにも、お酒のアテにもなる。  真幸がひとりで切り盛りする『しがや』は、昼の十二時から夜の十一時までが営業時間だ。ランチが午後二時まで。三時間の休憩を挟んで、午後五時から再開する。  八人でいっぱいになるカウンター席と、二人かけのテーブルがふたつに四人かけのテーブルがひとつの小さな店。  夕方からの営業には、食事だけでなく、お酒をメインにする常連さんも多いため、「味噌豆」を含むお通し三点付けはとても喜ばれる。もっとも、真幸はアルコールには詳しくなくて、ごく普通のビールと廉価な焼酎、日本酒しか置いていない。こだわりのある飲兵衛には向かない店だ。  それでも、『しがや』の個性や、ある法則をもったメニューのほうが重要だと言ってくれるお客さんに守られていた。  いまは、ランチあとの休憩時間。  ランチの片づけをして、食材のチェックをしてみたら、今朝作った「味噌豆」がこころもとない残量になっていた。夜の営業で足りなくなるのは困るので、追加で作っている。  中火にし、砂糖と味噌を入れて擦り合わせつつ混ぜはじめたとき、まだ暖簾を出していない店の引き戸が開いた。
「姐さん、これ置かせて」
 挨拶もなく入って来た青年がよく通る声で軽やかに言う。
「ちょっと待って」
 真幸は声の主を見ようともせず、ちゃっちゃとフライパンの中の豆を仕上げていく。砂糖も味噌も焦げやすいので、眼を放せないのだ。
「おう」
 青年は短く答えると、カウンターの角席に腰かけたようだった。椅子を引き、とんとなにかを置く音が聞こえた。  彼はその席が好きだ。絶対にそこでなければいやというわけではないのだが、何人かの仲間と顔を出してもテーブル席ではなく、角席を含んだ数席を選ぶ。  胡麻を加えて「味噌豆」を完成させてから、真幸はカウンター内を移動した。青年の真ん前に立った。
「見せてよ」 「あ、おう」
 青年はまた短く答えて、手元にあったA4サイズの封筒を真幸に差し出した。一センチほどの厚みがある。  真幸は受け取った封筒からぺらっと一枚引っ張り出してみた。「ふうん」と呟いて紙を見つめる。
「正之丞(せいのすけ)さん、出世したよねぇ」 「出世ってこたぁねぇですよ」
 正之丞と呼ばれた青年はへっと鼻先で笑い、カウンターに支度されている透明なポットに手を伸ばした。トレイに並んだグラスをひっくり返し、冷えた緑茶を半分ほど注ぐ。ごくごくと咽喉を鳴らして一気に飲み干した。
「でも、たいしたもんだよ。菱野ホールってキャパ二百五十くらいあるでしょ。そこで毎月やれてるんだもん」
 真幸の手にある紙は、いわゆる宣伝チラシだ。青っぽい背景の中央に着物姿の正之丞がいて、寄席文字と呼ばれる独特の太い筆致の文字で『日月亭(たちもりてい)正之丞月例独演会』と二行に分けで書かれていた。  ちなみに、寄席文字とは、提灯や半纏に使用されていた字体と、歌舞伎などで用いられていた勘亭流の字体を折衷して編み出したビラ字をもとにしている。天保年間に神田豊島町にあった藁店に住んでいた紺屋の職人が改良したものらしい。  たくさんの客が集まって、空席が���なくなるようにとの縁起を担いで、文字と文字の間隔を詰め、隙間を最小限にして書く。その際になるべく右肩上がりにもする。
「次からはチラシデザイン、もっと凝ったら? 正之丞さんイケメンなのにふつうのデザイン過ぎてつまんないよ、これ」
 真幸は淡々と言うと、チラシを封筒に戻した。  正之丞はもう一杯緑茶を注ぎながら、「だったら姐さんがやってよ」と唇を尖らせた。
「じょーだんでしょ。もうわたしは引退したのよ。いまはただの食堂のおばちゃん」
 自嘲気味に笑って、真幸はできたばかりの「味噌豆」といんげんと山芋のおひたし、小女子の佃煮入り卵焼きを三点付け用の小皿に盛り合わせ、正之丞の前に置いた。  正之丞は「うまそう」と呟いて、割り箸を手に取った。
「おばちゃんだなんて思ってないくせに」
 まず卵焼きを口に運び、正之丞はにっと口角を引き上げた。
「わたし、何歳だと思ってんの?」 「おれより四歳上だっけ?」
 正之丞はもぐもぐと咀嚼しつつ、首を捻った。真幸はすぐに「五歳」と返した。  正之丞は、スポーツ医療系専門学校卒業後に日月亭正治(せいじ)に弟子入りし、八か月の見習い期間のあと、前座として寄席に入った。四年半務め上げ、五年前に二ツ目となった。確か、早生まれの三十歳だったはずだ。  二ツ目になってからしばらくは、三十人キャパ程度の会場で勉強会を繰り返していたが、ある新鋭監督の映画に準主役で期用されてから注目されはじめた。  端は整った見た目ばかりが話題にされていたものの、ネタ的にほうぼうに呼ばれているうちに噺家としての実力もあがっていった。  真幸は、集客に苦労していた姿も知っているから、とんとん拍子に飛ぶ鳥を落とす勢いの存在となっていく正之丞に圧倒された。  多くの注視は自信の裏付けになると同時に、敵も生まれる。諸刃の剣だ。ファンの好意はちょっとしたボタンの掛け違いで嫌悪に変わってしま���。  そして、それを含め、目立ってナンボの世界だ。潤沢とはいえない客の数を多くの噺家たちで食い合いするのだから、売れていて、魅力がなければ勝ち抜けない。  真幸は『しがや』を開店するまで、日本橋にあるデザイン事務所に所属して、多種多様のチラシをデザインし、寄席文字を書いていた。売れはじめるまえの正之丞のチラシを作ったことも、独演会用に高座のめくりを準備したことも一度や二度ではない。  真幸のデザインするチラシは、噺家たちにも落語会に足を運ぶ客たちにも好評だった。  母が亡くなり、『しがや』を継ごうと決めて一線を退くとき、相当に残念がられたものだ。事務所を辞めても個人的に仕事を請け負ってほしいと頼まれたけれど、それではなんだか示しがつかないような気がして、すべて丁重にお断りをした。  仕事としてかかわらなくなっても、落語そのものは好きだったから、『しがや』のメニューに演目にちなんだものを出すようになった。 「味噌豆」も落語の演目からきている。  主人が隠れて「味噌豆」を食べようと便所にこもる。使用人もやはり隠れて食べたくて、椀によそった「味噌豆」を持って便所へ向かう。そこには主人がこもっているから鉢合わせになり、使用人は機転をきかせておかわりを持ってきたと言い放つというオチを迎える噺である。  もともと「味噌豆」という言葉の響きが妙に好きで、どんなものなのか興味があって個人的に調べて作って食べていた。いろいろなパターンのレシピに挑戦し、自分なりに改良を重ね、『しがや』の落語にちなんだ新メニューのトップバッターに決めたのだ。   真幸が作っている「味噌豆」は、落語に登場するものとはちょっと違うのだけれど。 「味噌豆」が好評だったから、真幸は少しずつ落語の演目絡みのメニューを増やしていった。 「目黒のさんま」にちなんださんま料理、「かぼちゃ屋」や「唐茄子政談」に絡めてかぼちゃ料理、「二番煎じ」に出てくる味噌味の肉鍋風煮物、などなど。  あとは、ランチ時には「時そば」にちなんで、もみ海苔を散らした花巻そばや、玉子焼き、蒲鉾、椎茸、くわいなどをのせたしっぽくそばを常に出している。  夏場には「青菜」に登場する鯉の洗いを用意したこともある。  つまり。  これが『しがや』のある法則をもったメニューなのだ。  このおかげで、母の代からのお馴染みさんや地元だから贔屓にしてくれるお客さんとともに、落語好きの常連さんが多くなった。飲みながら、落語話に花を咲かせているお客さん同士も、落語会帰りに一杯というひとたちもいる。  そのため、多くの噺家たちがチラシを置かせてほしいと言ってくる。去年からは頼まれて彼らのCDや著作物なども販売するようになった。置いてあるチラシやCDなどを目当ての客も結構いた。  正之丞の初CDが出た際には、サイン会を兼ねた特別落語会を開催もした。二百五十のキャパをコンスタントに埋められる正之丞なのに、二十程度の席しかないため、チケットはとんでもない争奪戦となった。  この会がうまくいけば、隔月くらいで落語会をやってみてもいいかなと思ったけれど、ファンの血眼ぶりがトラウマで、尻込みしている。正之丞ほどの動員能力を持つ噺家ばかりではないし、まだまだこれからの若手を呼べば、あんなことにはならないだろうとは頭ではわかるのだが。  思い切るにはもうちょっとの勇気が必要そうだ。
「正之丞さん、まだ時間ある?」
 真幸はチラシの入った封筒をカウンター下の棚に収めてから、ふわっと訊いた。
「ん? あるよ。今日は寄席の昼席二か所だけだから、夜は空き。なんで?」 
 山芋のおひたしを口に入れて、正之丞は訝しそうな顔をした。眉間に薄く皺が寄る。
「さんまのつくね食べる?」
「ランチ残ったの?」
 正之丞はいたずらっぽく眉を上げた。
「あーー、やな言い方するなぁ。そういう態度だと出してあげないよ」
 真幸はむっとしている振りをした。  正之丞とはついじゃれ合いをしてしまう。異性であることを意識したことは、少なくとも真幸側からはない。きょうだいか喧嘩友達みたいな関係をずっと続けている。  真幸には大勢の噺家の知り合いがいるが、たぶん正之丞がいちばん親しい。家族関係もつきあっていた女性のことも知っている。  そして、ひとつひとつの恋愛があまり長く続かないことも。  正之丞がいろいろな女性と交際をしている間に、真幸は取引先の会社にいた相手と恋愛をし、シンプルな式を上げて結婚した。二歳上の物静かな男性だった。軽口を叩き合うような関係性ではなかったけれど、しっとりと静かに穏やかに時を重ねていけると思っていた。  だが、ともに暮らしはじめて三年目に突入して間もなく、「好きなひとがいる」と離婚を切り出された。相手が女性であればもっと引き止めたり、もめたりしたかもしれない。  でも、夫が選んだ相手は同性だった。  それも、高校時代からひそやかに続いていた。「女性の中ではいちばんきみが好きだけど、それ以上にどうしても彼がいとしい。もう嘘はつけない」と言われれば、もう返す言葉はなかった。  惚れていたぶんだけ、離婚直後は恨みめいた気持ちもあったものの、真幸といっしょにいるときよりも自然に幸せそうに、よく笑う元夫を見ているうちに、これで良かったのだと思えるようになった。  元夫は、いまでもあの彼氏とともに生きているらしい。  真幸は、職場ではずっと旧姓で通していたから、たぶん正之丞は結婚離婚を知らないだろう。
「食べる?って訊き方したんだから、ひっこめんなよ。オトコに二言はねぇだろ」
 正之丞はぶんっと割り箸を回した。
「行儀悪いことしないっ!」
 真幸は腕を伸ばして、正之丞の割り箸を掴んで止めた。
「あと、誰がオトコだ!」
 そのまま握り締めて拳にすると、正之丞の額を小突いた。正之丞はでへへっと笑った。
「いしる汁、ひとりぶんにちょっと足りないくらいなんだけど」 「いしるってどこの料理?」 「料理っていうか、能登の調味料ね。いしる出汁っていうの」 「能登かぁ。能登ねぇ」
 正之丞が感心したように頷き、「一昨年呼ばれて行ったなぁ」と続けた。 
「噺家はいろんなとこ行けていいねぇ」 「行くだけで観光もうまいもの食うのも、めったにできないけどね」
 真幸の拳の中から割り箸を奪い返し、正之丞は今度はいんげんのおひたしを食べた。  噺家たちは、確かに地方公演は多いが、余裕をもったスケジューリングにはされていない。  たとえば、福岡公演の翌日の昼に東京公演が組まれていたり、昼は名古屋、夜は仙台なんてむちゃくちゃなことになっていたり。その合間に師匠方に稽古をつけてもらいに行ったり。  噺家は、大抵は個人事業主で、事務所などがマネージメントしているわけではないのに、ファンの多い人気者や名人ほど大事にされていない。ひっぱりだこと言えば聞こえが良いが、ただの過重労働だ。  売れ出して以降の正之丞のスケジュールもそうなっている。昼席のあと、空いているというのは珍しい。
「正之丞さん。もうあとがないんなら、ごはんも食べて呑んじゃう? 奢るよ」
 真幸は断っても問題ないのだという隙間を持たせて、言ってみた。
 正之丞は性格的に年上や先輩からの誘いにノーと言わない。多忙な売れっ子をやっかむ先輩たちや、人気者を連れまわしたいタニマチ風の主催者たちにも従ってしまう。  だから、落語を離れたプライベートの場では気にせずに首を横に振っていい。つまらない上下関係や重圧を離れて、羽根を伸ばせばいい。夜が空いているのなら、彼女とデートだってしたいだろう。  そんな思いも内包していた。  まあ、もっとも、いまの正之丞に交際している女性がいるかどうかは知らないが。
「いいの?」
 正之丞は間髪あけずに返してきた。  真幸の見る目が歪んでいなければ、だが、正之丞にいやがっている様子はない。年上からの誘いだから仕方なく了解したという感じもしない。  正之丞の如才なさの賜物で、うまく本音を覆い隠している可能性もあるな、なんて臍の曲がったことを考えつつ、真幸は薄く笑みを浮かべた。
「ランチの残りと、普段、大皿で出してるような料理しか、まだ用意できないけど」 「充分充分。助かるよ」 「そう? じゃあ、ビール? 焼酎?」 「う~~ん。焼酎かな。ここの緑茶で割るから、グラスに氷と焼酎だけ入れてくれたらいいよ」
 真幸は「おっけー」と答えて、大きめのグラスに氷を四つと七分目ほどの焼酎を注いだ。正之丞の手元近くにグラスを置く。  正之丞はいかにも嬉しそうに「ありがと」と笑んだ。  正之丞は結構酒が強い。深酒も泥酔もしないし、醜態も晒さないが、酒量はいつも多いほうだ。真幸も酒飲みだから、ふたりで飲めば長くなる。  正之丞が緑茶で軽く割った焼酎を飲みはじめるのを見やり、真幸は残りが少ないので小鍋に移してあったいしる汁を火にかけた。汁には、つくねの他に大根、人参、牛蒡、三つ葉が入れてある。  さんまのつくねは、「目黒のさんま」にちなんだ料理のひとつとして作っている。  あの演目だと、「さんまは目黒に限る」で形容されるさんまの丸焼きがメインだ。もちろん『しがや』でも九月に入るとさんま焼きを提供する。  それ以外の時期に出すのが、さんまのつくねなのだ。演目の後半に、殿様が屋敷に戻って「さんまが食べたい」と言ったときに、使用人たちがさんまの脂っぽさや小骨をとりまくってぼろぼろになったものを椀に入れて出す場面を参考にしている。  汁に入れる以外では、揚げたり照り焼きにしたり、にんにくたっぷりでソテーにしたりする。  さんまを使ったメニューとしては、他に味噌煮、蒲焼き、野菜あんかけ、竜田揚げなど、我ながらレパートリーに富んでいると思う。お客さんにも人気がある。  真幸はいしる汁とごはんをカウンターに置くと、続けて、大皿料理として常に用意している筑前煮、かぼちゃの煮付、きんぴら、切り干し大根、肉じゃが、小松菜とツナと玉子炒め、オクラの豚肉巻き、鶏の唐揚げを少しずつ取り分けて出した。  ひとつひとつは凝ったものではなくても、全部が並ぶと途端に贅沢な食卓となる。和食中心の店だから、どうしても色合いが茶色っぽくなってしまうのは否めないが。
「こりゃ豪勢だな。ありがてぇ」
 落語の登場人物の江戸弁めいた口調で喜んで、正之丞は箸をつけていく。  緑茶割を飲みながら、ほんとうに美味しそうに平らげる。細い身体のどこに入ってしまうのかと思うくらいの食欲だった。見ているだけで楽しくて、嬉しくなる。  よく食べる人間は好きだ。ひとは食べたもので作られるのだから、気取って小食のふりをするよりも、食べるべきものをちゃんと食べる姿のほうが素敵なのは当然なのだ。
「おかわりする?」
 グラスの中身が残り少なくなったのを見て、真幸は訊いた。正之丞は「う~~ん」と低く唸って、グラスの底の薄い緑色と、皿に残った惣菜を見比べた。
おかわりを頼むには、つまみが足りないということか。
「えっとさ」 「うん?」
 真幸は、珍しく歯切れの悪い正之丞を見つめた。
「おれね、真幸……姐さんの料理好きなんだ」
 正之丞は、真幸の呼称代わりにしている姐さんの前に名前を入れた。これも珍しいことだ。
「このいしる汁も肉じゃがも筑前煮も豚肉巻きもぜんぶ美味いし、どれも好きだ。ほんとに口に合う」 「あ、ああ。そうなんだ。ありがとう」
 淡々と、だが、真摯に料理を誉める正之丞の口調が妙に照れくさくて、真幸はさり気なく目線をずらした。正之丞を正面から見ているのが、なんともいたたまれない気分だった。
「実家のおふくろのメシより好きだ」
 正之丞の「好き」は更に続く。真幸はかあっと顔が熱くなるのを感じた。  いま、彼が言い続けている「好き」は、あくまでも真幸の料理に対するものなのに。
 すべてが自分に直接跳ね飛んでくるみたいな感覚だった。
「できれば、これからもずっと姐さんのメシを食いたい」
「……う、うん」
 真幸は小刻みに頷いて、「いつでも食べに来てよ。毎回は奢らないけど」と続けた。  正之丞はふうっと深く大きなため息を吐いた。こんなに誉めたのに奢らないと言われて、つまらないと思ったのかもしれない。  でも、正之丞みたいな健啖家を毎回ロハで食べさせていては、『しがや』が立ち行かなくなってしまう。
「そうじゃないよ」
 少しの間を置いて、正之丞は低く言った。  なんとなく怒っているように聞こえて、真幸はちらっと正之丞を覗った。正之丞はまっすぐに貫くように真幸を見つめていた。
「『しがや』の客としても、だけど、それ以上に個人的にって意味」 「え、え? あ?」
 あまりに意外な言葉で、真幸は間抜けな反応しかできなかった。声もいびつに裏返った。
「どういう……」 「おれ、姐さんが好きだよ。何人かの女性とつきあってみて、余計にはっきりとわかった。おれは姐さんが好きだし、おれに合うのは姐さんだけだ」
 訊き返そうとした真幸の声に被せて、正之丞は一気に言い切った。手にしていた割り箸を肉じゃがの小皿に置いた。
「え、いや、でも、ほら、わたし年上だし」
 間抜けな動揺を色濃く残したまま喋るから、真幸の声は自分でも笑ってしまいそうなくらいに上擦っていた。  きょうだいや喧嘩友達のような存在の正之丞からこんなことを言われるなんて、想像したこともなかった。いまのふたりの関係に変化が起こるわけがないと、ずっと思っていた。
「五歳くらいどってことないんだけど」
 すかさす正之丞が答えた。
「え、でもね」
 なおも否定を続けようとした真幸に、正之丞は「姐さんのでもでもだっては、ぜんぶ打ち返せると思うよ、おれ」と微かに笑みを浮かべた。
「いますぐに答えがほしいわけじゃないんだ。おれの言葉を聞いた今日から、考えはじめるんでいい。姐さんの恋愛対象におれがいなかったんなら、これから加えてほしい。そういうことなんだよ」
「……でも、正之丞さん……」 「でもは、もうなし」
 うだうだと「でも」を並べる真幸を迷いなく見つめ、正之丞はびしゃっと切り捨てた。噺の中で誰かを叱りつけたときのような口調だった。  思わず背筋が伸びた。  真幸はぎくしゃくと正之丞に向き直った。正之丞は微笑みを湛えたまま、その動きを待っていた。
「考えてみて」
 正之丞は真幸と眼が合うのを待って、ひどく穏やかにそう言った。
「たくさんたくさん考えてみて。姐さんとおれがいっしょに生きていけるかどうか。真剣にちゃんと考えた結果がごめんなさいなら、おれは受け止めるから」
 あまりに真剣な口調に、真幸は唇を引き締めた。  いままで正之丞と自分を男女として意識したことはなかったけれど、ここまでしっかりと伝えられた以上、直視しないわけにはいかない。誤魔化したり予想外だからなんて言い方で逃げてはいけない。
「時間はいっぱいかけていいよ」
 正之丞は、これまで一度も見たことがないくらい穏やかに優しく頷いた。笑みの形になったままの表情がひどく美しかった。
 ――考えよう。これから、きちんとまっすぐに。
 真幸は言葉にはのせずに、ただ強く頷いていた。
「……良かった。ありがとう」
 心底から嬉しそうに、正之丞が頭を下げた。
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laatikko-t · 1 year
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֒𓈒𓏸𝚃𝚞𝚎𝚜𝚍𝚊𝚢.𝟸𝟶𝟸𝟹.𝟶𝟸.𝟸𝟷. ࿐𝙿𝚊𝚒𝚗 𝚍𝚎 𝚌𝚊𝚖𝚙𝚊𝚐𝚗𝚎 𓏬 ˗ˏˋカンパーニュ ˎˊ˗ ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ ストウブでカンパーニュを 焼きました⸊𖠚 . ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ ストウブを使って焼く カンパーニュは 簡単なのに 美味しく出来ます𓈊ˊ˗ ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ 𝟸日間 試行錯誤で 材料の配合、作る工程、 色々と試して 𝟹個焼いて 自分好みの カンパーニュ出来ました.ᐟ.ᐟ ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ ちょうど、朝方に焼き上がったので 隣家の娘に 焼きたて持って行って 試食をしてもらいました𓃟 美味しいーーーって言ってくれたので 良かったです𓂃𓈒𓏸𓂂𓋪 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ 𐀑 𐃯 ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ #campagne #カンパーニュ #パン #手作りパン #ストウブ #staub #staub料理 #藁の鍋敷き #staubパン ㅤㅤㅤㅤ#日々の暮らし #丁寧な暮らし #暮らしを楽しむ #暮らしの風景 #植物のある暮らし #ドライフラワーのある暮らし #器 #うつわ #器好き #tablephoto #onmytable #おうちごはん #フーディーテーブル #ワンプレート #ごはんぐらむ #おうちごはんlover #instafood #instagood #foodstagram 𓅺 (おうち時間) https://www.instagram.com/p/Co5pK0-yLsl/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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3in53 · 4 years
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村上市紀行
村上市、ついでに瀬波温泉を旅行
瀬波温泉はナトリウム系?かな。あんまり滑りはない印象。
日本海を一望できて最高だったけど、あれ多分砂浜の方からも裸体を一望できる気がする。風が強かったので白波立つ日本海の音を聞きながら浸かっていた。贅沢。
そしていよいよ村上市。
まずは鮭が1000匹吊るされているきっかわ。ずっと見たかったので念願叶って良かった。鮭の匂いがすごい。
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おねーさんによると、ここに吊るされているのは全部オス。そして、同じオスでも獲った場所によって顔つきが違うらしい。
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←河川
海→
川上りすると、鼻が曲がって顔がいかつくなるらしい。確かに。サメっぽいワイルドさ。
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お店の囲炉裏に掛けてあった甘酒。そりゃあ買うしないでしょ!
甘い!砂糖不使用でこの甘さ!お粥飲んでるみたいな米の圧力!熱い!甘い!甘い!
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松尾芭蕉がそらと一緒に泊まった旅籠。井筒屋。今は料亭になってます。
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近くのお菓子屋さんで団子買った!これもうまい!新潟のお菓子屋さんは外れなし?
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中級武士が住んでいた武家屋敷、旧若林家住宅。なかなか残っていないらしい。何年もの歳月で改良されたものを、江戸当時のように復元したらしい。中に入ると案内人のおじさんが囲炉裏の番をしていた。燻して藁葺き屋根を守っているらしい。鍋の中にはフキと大根のお汁。迷わず頂く。美味い。美味いとしか言いようがない美味さ。やっぱりシンプルイズベスト。武家屋敷の説明を丁寧にしていただき、お宅拝見させてもらったけど、ぶっちゃけ汁のうまさと囲炉裏の煙たさに記憶を消されてる。いやはや、素敵でした。
朝市も(終わりどきだったけど)していた。村上の人、皆元気…。
若林家のおじさんにおすすめの場所を教えてもらう。抹茶が飲みたいと宣っていた同行人を連れて、お茶屋さんへ。
丁寧に家の中の説明をしてくれる。何も買ってないのに煎茶が出される。いやー、サービスしてもらいすぎじゃないですか?
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そして念願の抹茶を頂く!この辺では小堀遠州流が主流なのかな?
後茶として頂いたほうじ茶が抜群に美味しくて最高でした。
どーでもいいけど、今回お話を聞いた3人の方、みーーーんなもれなく10分以上話してくれた。地域の人のおもてなしがすごい。町屋祭りになると、70軒も家の中を見せてくれるらしい。着物着ていきます。
前日に清水園も行きましたが、写真は10枚しか貼れないので!割愛!
次は寺泊辺りに行きたいなぁ〜。
#旅行 #新潟県 #村上市
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feelkyoto · 4 years
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しめ縄飾りをつくろう !
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!! 楽しい時間。ありがとうございました。 !!
FEEL KYOTO WORKSHOP
『  しめ飾りをつくろう ! 』
新年に向けて、京都の里山の材料をつかったしめ縄かざりをつくりませんか。
小学生から大人まで、参加いただけます。
今回は、希望があればしめ飾りと鍋敷きもつくれます。
【日時】
2018年 12 月23 日(月)
❶ 10:30ー ❷13:30-(満席)   ❸16:00-(満席)  ❹19:30ー 
【定員】
各回  6名 (申し込み順 。定員に至らない場合は、当日受付可)
【参加費】 1000 円 (2縄つくれます。藁の他、飾りの植物、水引など 材料費込み)
【会場・申し込み】
hair salon ミナモ 
京都府京都市左京区高野玉岡町71    
叡山電車「一乗寺」駅下車徒歩5分
tel : 075-746-4834
e-mail : minamo-hair [at] hb.tp1.jp ([at]を@へ)
[主催]
hair salon ミナモ ・ FEEL KYOTO
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hero-moove · 5 years
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#Repost @moove.info ・・・ 7月21日(日)11時〜16時 久しぶりのMOOVE開催します 私の愛用する草履を作ってくれる、 「達磨草履工房」の真ちゃんが、 出店&DJで参加してくれます レアにバイナル(レコード)オンリーでDJしてくれます♪わお! 出店に並ぶの草履は 大人用、子供用 もちろん足型とって オーダーメイドも受け付けます 室内で履く草履の「足中」も作ってきてくれます。履くと骨板が締まり身体が整う優れモノ。古き良き日本の知恵です 既製品の草履は、早いもの勝ちです 気になる方は、ぜひぜひ!お早めにお求めくださいね 真ちゃんよりメッセージいただきました . . . 達痲草履工房 畳の原料でもある天然記念物に指定される「カヤツリグサ」を無農薬にこだわり完全自給しながら、足型から頂き、オーダーメイドで一足一足心を込めて達痲草履を編ませていただきます。 自身が惚れ込み子供たちに繋ぐべき植物と確信したカヤツリグサのこの植物と、草履という素晴らしい文化を保存するべく、達痲草履や鍋敷き、注連縄などを制作して、全国で実演しながらの展示会や出店、達痲草履、鍋敷き、しめ縄を作るワークショップと言う場でご縁をいただいてお伝えさせていただいております。 呼んでいただける地域で編める人が増えて、うちで育った株を分ける事で何より草履文化とカヤツリグサの保存に繋がると思い、その日常の技術を伝えるべくワークショップを積極的に行なっています。 現在は香川の山奥で家族4人と犬5匹で暮らし、生活の中心に音楽と火を灯し、山の水、薪で生活し農に携わる。 〒766-0204 香川県仲多度郡まんのう町勝浦892番地 080-2985-5889 [email protected] https://www.facebook.com/dharmakoubou?fref=ts  #moove #DJ #freeparty #フリーパーティ #デイパーティ #達磨草履工房 #天然記念物七島藁 #トランキーロカフェ #MOOVE #毎月第三日曜日 #タコス #メキシカン #jazz #techno #electronic #funk #disco #dub #reggae #soul (トランキーロカフェ) https://www.instagram.com/p/B0Avu8qAsuc/?igshid=1owjnnzv7fgdk
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karasuya-hompo · 5 years
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Skyrim不動産案内番外編: Snowflake Manor
(注:この家は、フォロワー追加mod 【Rebirth Of The Followers】 に付随するものです)
 俺がスカイリムに来たのは、何年前のことだったか。あいにく、今が何年で何の月だ、なんてことを気にするような生活じゃないんで、たぶん3年か4年ほど前、としか言いようがない。  4年ってのは決して短い時間じゃないが、一つの土地を「よく知っている」と言うにはまだまだ不十分だ。入ったことのない遺跡やダンジョンも、噂に聞くだけで実際には拝んだことのないものも、俺にはまだいっぱい残っている。そのうえ、現れたり消えたりする家や洞窟なんてものまであるんだからキリがない。
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 俺が今 目にしているその邸宅は、さて、昔からここにあったのか、それとも、最近現れたものなのか。  場所はウィンドヘルムの西、川沿いにあるアンガの工場から北に踏み入った山中だ。道もついてないから、まったく気ままにふらりと山に入らないかぎり、見つけることはない気もする。(筆者注:導入時点でFT可能です。場所はアンガの工場の北西あたり)
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 無人なのか、それとも誰か住んでいるのか。御大層な屋敷を訪問する前にちょっと、と外を見て回ると、厩が目についた。敷き藁は……その気になればここでも寝ることはできるものの、まあ、馬用だろうな、普通に考えたら。
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 厩の脇には小屋があった。小屋といっても石造りの堅牢なもので、粗末な板切れのあばら屋とは大違いだ。前には焚き火が燃え盛り、暖房用と思われる薪も積まれている。  倉庫かなにかだろうか。それとも、屋敷の管理人、使用人の住まいか。それは訪ねてみれば分かるだろう。
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 中に入るとシンプルなカウンターとベッド、ディベラの像といったものが目に入った。そしてそれとほとんど同時に、気さくな男の声で「おや、お客さんか。なにか買ってくかい?」と言われた。
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 赤々と燃える暖炉の傍に、傭兵っぽいいでたちの男が座っていた。場所や人によっては、日中、たとえ鍵があいていても「出て行け」といった態度をとられることもある。しかしどうやらここは、そういった堅苦しい場所じゃないらしい。  俺は、挨拶代わりに売り物を少し見せてもらいつつ(こう言っちゃなんだが、この見かけでアクセサリーを扱っているのにはちょっと驚いた) 、ここはいったいどういう屋敷なのかと尋ねてみた。 「ああ。ここは俺たちの”巣”さ」  ラングヴァルドと名乗った男は陽気にそう答えた。  スノーフレーク邸と名付けられたこの屋敷には、今、9人の傭兵が住み暮らしているという。探索や冒険、商いの護衛として働き、仕事が終わるとここに戻ってくる。そんな共同生活を営む傭兵仲間だそうだ。 「皆、腕に覚えのある連中ばっかりだし、商才のほうはさておき、ちょっとした商売をしてる奴もいる。気になるなら、ゆっくり見ていけよ」  ラングヴァルドはそう言って、入って来たのとは別のドアを軽く示した。そこからも本館に入れるらしい。
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 けれど俺はいったん外に出て、玄関へ回ることにした。せっかくだから隅々まで見せてもらいたかったし、だったら構造というか間取りをきちんと把握したかったからだ。横手から入ると、どこがどこでどうつながっているのか、混乱することがある。俺は地図を読むのも探索も得意だが、それでも、だ。  見た目はかなり立派で高級そうな感じだ。中身と外側が一致しない家も珍しくないから、外から見たよりも狭いこともあるし、異様に広いこともある。この屋敷はどうなんだろう。
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 そう思って中に入ると、さっきのロッジとは違って、中は木造で見た目からしても少しあたたかかった。 「あら、お客さんかしら」  右手、ともすると上からだと思うが、女の声がした。それに、カジート独特のしわがれた声が続く。 「外は寒かっただろう。ゆっくりしていくといい」  ずいぶんと気さくで親切な連中が集っているようだ。
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 入り口の脇にはディベラとタロスの石像があったりして、なかなか豪華だ。  俺はとりあえず、声のした右手のほうから見に行く……挨拶しに行くことにした。
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 右手に入ったところは台所で、鍋をかき回していたのがさっき声をかけてきたジェイ・ハキールだった。彼は戦闘一本らしく、商いはしていない。  キッチンにはオーブンもあるが……収納は、どうやら鍋の脇の布袋だけらしい。……いやいや。人様の家に来てまでつい、自分が使うこと前提で見るこの癖はなんとかしないとな。  振り返ったところに二階への階段があった。俺は少し迷ったものの、このまままずは一階を見て回ることにした。
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 左手側には、さっきのロッジに通じるドアと、付呪台だ。ツボの中身は黒魂石で、もらってもいいものらしい。俺はあんまり使わないし、自前で足りてるからもらおうとは思わないが。  付呪台の上の壁掛け棚に乗った小さな宝箱には、同じように魂石がいくつか入っていた。しかも極大ばかり、充填済みだ。
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 逆サイドを見て、俺はこの屋敷が思ったより広いことを知った。ドアは開けっ放しで、そこにいきなり、洞窟が続いていたからだ。  なにがあるんだろうと進んでいくと、
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 鍛造器具に、大樹を利用した螺旋階段。奥の方からはオークの鼻歌に混じって、鉱石を掘る音まで聞こえてくる。  螺旋階段の先も気になるが、それも一種の二階だし、ともすると屋敷とつながっているかもしれない。だったらともかくまずは奥を見てこよう。
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 鍛冶設備が、鍛造台とその他とで離れているのは、ちょっと不便じゃないだろうか。そんなことを思っていると、鉱石堀りの手を止めたオークがやってきて、「新顔か?」と尋ねてきた。俺は共同体の仲間になったわけじゃなく、ただの通りすがり、物珍しさから立ち寄って、好きに見ていけばいいという言葉にそのまま乗っかって見て回っているのだと答えた。  オークはマクヘレル? それともマケーレル? 名乗ったがきちんと聞き取れなかったのはさておき、彼もやっぱりのんきな調子で、好きに見ていけと言ったのみならず、
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 この鉱石やインゴットは、必要なら持って行くといいと付け加えた。腕の立つ傭兵が9人も集まって、しかもここにも金・銀・鉄に水銀の鉱床があるとなると、腹も相当太くなるらしい。  螺旋階段はここにもあって、どうやらこれ以上奥はないようだ。上にはなにがあるんだろうか。
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 採掘場所の二階(?)は、プランターまであれこれ置かれた、立派な錬金所だった。それはそれとして……収納、どうしてるんだろうか? なにか入れておけそうな箱とか袋ってものが、ここには一切ないんだが。ついでに言えば、この錬金場所は、あのオークが管理してるんだろうか?  それにしても、外から見た時点では「立派なお屋敷」だったが、なんというか……そういう気取ったお屋敷ってより、これはもう一種の拠点って感じだな、なんて思いながら引き返す。
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 隣の螺旋階段の上には、アッシュヤムにスケイスクローの植えられたプランターがあった。奥に見えるのはダークエルフ風のテーブルセットだ。もしかしてと思って小屋を覗いてみると、
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 やっぱりそこにはダークエルフが一人いた。ドラーリンという名の彼は、この「屋敷の中の洞窟の中の小屋」に寝泊まりしているらしく、ベッドもある。  それから杖付呪の器具だ。ソルスセイムから持ってきたんだろうか。なにげなく尋ねると、レイヴンロックをしきりに懐かしがった。いくつか俺の知っている名も飛び出してきて、いくらかの消息を話してやると、「元気そうでなによりだ」とほっとした様子だった。  またいつでも来てくれと見送られ、屋敷の中に戻る。さて、そろそろ二階を見に行ってみようか。
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 登ったところの暖炉は火が消えていたが、屋内は十分あたたかい。そこにいたのはカ・イーナというカジートの女で、……彼女も俺と同じ、エルスウェーアの外で生まれ育ったカジートなのかもしれない。訛りがまったくない。  そこに入ってきた金髪の女はやけに長身で、間違いなくノルドだ。ダヴァニアと名乗った彼女は、魔法関連のものを商う商人でもあった。
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 二階、左手は主寝室といった趣きだ。壁には大型の武器棚に、
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 タンスも多いし、武器飾りの上下にはずらりと埋込み式の戸棚も並んでいる。  ベッドの足元まで衝立をはめ込んで武器棚になっていたのには驚いたが、実用的と言えばそうなのかも……。  弓を背負った女狩人はアレッシア。  どっかで見たような腰装備の、両手剣を背負った半裸のマッチョマンはケイル・ザ・ブラッドキッカー。たぶんノルド男だな。脳筋の戦闘一筋かと思えば、どうやら鍛冶屋も兼ねているのか、武具を売ってくれるみたいだ。
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 逆側の部屋は四人分の寝室で、そこにいたのはスタルリム装備の……レッドガード? ちょっと分からないが、エルハード、あるいはエルハルドって名前らしい。
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 なんかこう……最初っから全部設計して、家具類の置き場所もきっちり決まってたっていうより、あいたところに具合よく追加していった、て気がしたのは俺だけだろうか。  俺もあいつのツテでいろんな家を見てきたが、やっぱり多くの部屋はなんらかの「対称」性を持っていたり、カタマリが分かりやすかったりする。つまり、バランスよく置くことを優先してある気がする。  この凸型の部屋も、四つのベッドを綺麗に並べるなら、置き方はいくらでもある。ベッドを全部��か左に固めてしまうとか、あるいは左右対象に並べるとか。
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 しかも梯子段を登ったところにもベッドロールが二つあって……なんとなく俺は、最初にこの部屋に置かれていたベッドは右側に行儀よく並んでいる二つだけだったんじゃないか、なんて思ってしまった。そこに誰かが来て三つめを追加しようとしたけど、既に棚が置かれていたから、動かすほどのこともないとあいた場所にベッドを置いて、更にもう1人来て四つめも同じように。で、更に増えたから、寝られればそれでいい、みたいな奴が2人、物置だったここに寝ることにした。そんな感じだ。
 ともあれ―――タダでついてきてくれる9人の傭兵がいて、そのうちの何人かは商人でもあって、泊まっていくのも、邸内のものを持っていくのも自由とは、並外れた気前の良さには違いない。場所がちょっと辺鄙だが、覚えておけばなにかと便利だろう。  ただまあ、既に住民がいる家じゃ、あいつに教えるのは無駄だ。  見て回っているうちに夜中になったのもあって、俺はとりあえずこの一晩、遠慮なく泊めてもらうことにした。
 ……|•'ω'•)  またおまえかよ!? なーんて言われそうだけど、ナカノヒトがしゃしゃり出てくるよりはさぁ、この不動産案内シリーズに相応しいかなぁてわけで、またまたおじさんだよ~(* ・ω・*)  にゃーくんじゃ、たとえふと思ったって口にしないだろうからね。そんなわけでおじさんが補足すると、Relocate NPCを使えば、ここにいる9人全部まとめてどっかよそへやっちゃって、おうちまるっと乗っ取ることもできまーす٩(ˊᗜˋ*)و  もともとフォロワーたちが住んでる家だからNavMeshもしっかりしてるし、見てた範囲じゃ、夜中にカジートくんが寝もせずにタロス像の前で祈り捧げてたから、アクションマーカーも適宜置かれてるみたいだし、MFS+Relocateでお気に入りのフォロワーを集めて、ここを住処にしても面白いんじゃないかな。  その際には、1匹の家つき妖精に全員設定するんじゃなく、ロッジ、ダンマー小屋、四人+二人部屋の3匹くらいに分けたらいいと思うよ(´ω`*)  収納が足りないのはANAなんかでどうにでもなるから問題ないでしょ(๑•̀ㅂ•́)و✧ 採掘場に寝床を追加するのも良さそうだよね。  おじさん的には、どうせ夜中も採掘場から動かないオーク用に、たとえ寝なくても雰囲気として寝床一個あそこに置いて、自分も傭兵仲間として一緒にここに住んじゃう、なんてのも面白いと思うよ~(´ω`*)
 ちなみにこのmodのリリースは2016年11月でね(´・ω・`) そう、おじさんたちみーんな、この2年間全然気付いてなかったの(´・ω・`)  タイトルがどう見てもフォロワー追加用だからねぇ( ತಎತ) 今だと、「HOME」カテゴリに出てきた以上は建物も追加されるんじゃ!? と絶対確認するけど、2年前はそこまで見なかったから……(´・ω・`)  そんなわけで、知ってた人はだいぶ前から知ってたと思うけど、今更ながらの案内なのでありましたとさ(๑>؂•̀๑)
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