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#大垣散歩
tedyockey · 2 years
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今天去岐阜県大垣市、大垣城〜♪ 水の都、大垣で散歩散歩 #大垣 #大垣城 #大垣市 #大垣散歩 #犬 #日本的生活 #チワワ #チワワのいる暮らし #チワワバカ #チワワのいる生活 #ogaki #ogakicastle #sunday #joywalk #chuhuahua #chihuahualife #chihuahualove #chihuahuaworld #follow #followme #fun #enjoy (at 大垣城) https://www.instagram.com/p/ChzAbeZPCP3/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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elle-p · 24 days
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Famitsu 916 Persona 3 part pictures and transcription.
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期待の新作特搜隊
期待の新作TOP30にランクインしたソフトの最新情報を特捜隊が徹底調查!
2006年も半分を過ぎようとしている今日このごろ。我らが特捜隊は、今週も読者が期待を寄せるビッグタイトルを総力取材!厳選された新作情報を見逃したら、話題に乗り遅れちゃうぞ!!
今週のラインアップ 期待の新作TOP30は44ページ
ペルソナ3 254ページ
うたわれるもの 散りゆく者への子守唄 258ページ
メタルギア ソリッド4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット 260ページ
ファイナルファンタジーⅢ 262ページ
その他の期待作 266ページ
本作の概要はここでCHECK!
人気RPG、『ペルソナ』シリーズの最新作。これまでのシリーズとは異なる世界設定、異なる登場人物による、新たな物語が描かれるのだ。主人公を始めとした"ペルソナ"を召喚する能力を持つ仲間たちが、人間の精神を喰らう"シャドウ"と戦うことになるぞ。こうしたシャドウとの戦いは、午前0時になると訪れる"影時間"に行われる。一般の人間には、その存在を認識することすらできない闇の時間が、人類の存亡を懸けた戦いの舞台となる!!
主人公
私立月光館学園に転入してきた17歳の少年。学園寮への入寮当日にシャドウ襲撃事件に巻き込まれ、その際にペルソナ召喚能力を覚醒。シャドウ討伐部隊、"特別課外活動部"のリーダーとなる。メンバーの中で唯一、複数のぺルソナを自由につけ替える力を持っている。
初期ペルソナ
オルフェウス
P3
Persona3
ペルソナ3
またもや新たな登場人物が判明!でも、なんか怪しい感じ⋯⋯?
ケータイで購入
プレイステーション2
PS2
DVD-ROM
アトラス 7月13日発売予定 7140円[税込]
ドラマ RPG 要67キロバイト
ディレクター:橋野桂、キャラクターデザイン&アートディレクション:副島成記
期待の新作TOP30 ランキングデータ
今週の順位
3位
初登場4月7日号
15位
最高順位6月30日増刊号
1位
"影時間"に行動する者が⋯⋯!?
主人公ら、ペルソナ召喚能力を持つ者たちは、影時間に自由に行動することができる。それ以外の人間は、影時間に迷い込むとシャドウに精神を喰われてしまうのだ。しかし、そんな影時間に行動する、主人公たち以外の人間がいることが判明したぞ!彼らは3人組。いったい何者なのだろうか⋯⋯!?
↑影時間に入り込んでも精神を喰われないのは、主人公たちだけではなかった。彼らはシャドウに襲われないのだろうか⋯⋯?
仲間になることが判明しているペルソナ使い
たけ ば
岳羽ゆかり
声:豊口めぐみ
主人公のクラスメイトで、同じ寮に住んでいる女の子。性格は勝ち気で、明るく前向き。ぺルソナ召喚能力には覚醒したばかりだ。月光館学園に入学したのは、ある事情によるらしいが?
初期ペルソナ イオ
い おり じゅん ぺい
伊織順北
声:鳥海浩輔
主人公のクラスメイト。転校生である主人公にまっさきに話しかけてきた、明るくお調子者の少年だ。主人公の転校直後に影時間への適性=ペルソナ召喚能力を見出され、仲間に加わる。
初期ペルソナ ヘルメス
はみだし情報
シリーズのクロスレビューは何点?
PS 女神岡聞録 ペルソナ
9887
謎の3人組⋯⋯彼らの目的とは!?
ネットで話題になっている、復讐代行サイト。そこに依頼を書き込むと、復讐がなされるという噂が流れている。この復讐代行屋の正体は、シャドウに精神を喰われることもなく平然と影時間を闊歩する3人組だった。どうやら、影時間に復讐を行っているらしい。彼らがこんなことをしているのは、なぜなのだろうか?
不気味な気配⋯⋯
タカヤ
声:神奈延年
グループのリーダーらしき男。この界隈では有名な、"不気味"で、"イッている"集団をまとめている。ほかのふたりと比べて、不気味さは際立っている。その言動から、何か狂信的な思想を持っているようにも感じられるが、詳細は不明だ。
←↑荒垣と話す3人組。特別課外活動部のことを気にしているようだ。荒垣と彼らの関係性が気になるが、詳細はいまのところ不明。
荒垣と知り合い?
←復讐の代行屋⋯⋯。いかにも危なそうなヤツらだ。
ジン
声:小野坂昌也
タカヤのそばに、いつもつき添っている関西弁の男。情報収集や分析を行う、リーダーのサポート役的な立場らしい。その手に持っているのは手榴弾なのだろうか⋯⋯?何にしろ、危ない人物であることは確か。
チドリ
声:沢城みゆき
タカヤが率いる集団に、つねについて歩いている女の子。不気味な集団の中で、どのような役割を果たしているのかは不明。また、なぜ集団に身を置くのかも謎に包まれている。ゴスロリテイストの服装に、行動とのギャ��プを感じる。
主人公にとって彼らは敵か味方か⋯⋯?
きり じょう み つる
桐条美鶴
声:田中理恵
月光館学園の経営母体でもある大企業、桐条グループの令嬢で、局等部の生徒会長。幼少時のある事故を契機に、ペルソナ召喚能力に目覚めた。主人公を特別課外活動部に勧誘した張本人。
初期ペルソナ
ペンテシレア
さな だ あき ひこ
真田明彦
声:緑川 光
月光館学園高等部3年生で、ボクシング部主将。ストイックな性格で、シャドウとの戦いも強くなるためのトレーニング的な感覚で行っている。明彦が力を求めるようになった理由とは?
初期ペルソナ
ポリデュークス
さまざまなシステムが一挙に判明!!
ダンジョン探索や戦闘に関するシステムについて、これまで明らかにされていなかった部分が一挙に判明!さっそく、これの要素について紹介していこう。どうやら探索、戦闘の両面で計画性を持った行動が求められるようだ。事前に戦略をしっかり立てよう!
パーティーを編成して突入!
ダンジョン"タルタロス"の探索に入るまえに、パーティーメンバーを編成する。探索に挑めるのは、主人公を含め最大4人。出現する敵の属性や、仲間が持っているスキルなどをよく考えて編成しよう。
会話して
編成に加えるかを選択
誰を連れて行く?
←攻撃、回復という区別だけではなく、所持ペルソナの属性も考慮したパーティー編成を心がけよう。
ダンジョンを手分けして探索
ダンジョン内で"散開"コマンドを選択すると、パーティーが個別行動に移る。主人公以外の仲間は、自動で探索を行ってくれるぞ。ダンジョンの全体像を把握したり、宝箱を捜す際に便利なコマンドだ。
ダンジョン内部を各自単独で探索!
"散開"を指示
宝箱も見つけてくれる
←宝箱を発見したら、各自回収してくれるぞ。散開をうまく使えば探索が楽に!
散開中でも戦闘はアリ!
↑→散開中の戦闘は、それぞれ単独で戦うことになるぞ。強敵に注意すること!
探索を終えたら"集合"!
←↑"集合"を指示すれば、散開中の仲間が主人公のもとに戻ってくる。
やま ぎし ふう か
山岸風花
声:能登麻美子
引っ込み思案で、自分を卑下してしまう傾向がある女の子。戦いには参加せず、情報支援に特化した立場で特別課外活動部に参加する。機械いじりが得意だが、料理にも興味があるようだ。
初期ペルソナ
ルキア
あま だ けん
天田 乾
声:緒方恵美
月光館学園初等科所属。2年まえに事故で母親を失い、親戚からの学費援助のみで寮住まいをしている。初等科5年生という若さながらペルソナ召喚能力を持ち、特別課外活動部に加わる。
初期ペルソナ ネメシス
ピンチのときは"救護要請"
破間中に戦闘になることもある。この場合、当然ながら主人公はひとりで敵と戦うことになるわけだ。もし苦戦を強いられそうなら、迷わず"救援要請"を指示しよう。歌会していた仲間が、続々と駆けつけてくれるぞ。ひとりで無理せず、緊急時には仲間の助けを求めるのも勇気だ。
→危ないと思ったら、迷わず放後要請を出すべき。あとは仲間がやってくるまで、なんとか持ちこたえろ!
仲間が続々と集まってくる
↑←頼れる仲間が集結したら、いざ反撃。目にモノ見せてくれる!
パーティーが全員集合!!
ペルソナが成長していく!
主人公たちだけではなく、ベルソナも敵との戦いで経験値を積み、レベルアップしていく。レベルが上がるとパラメーターが上昇するほか、新たなスキルも覚えるのだ。覚えるスキルの上限まで育てるのもあり。ぺルソナ合体・育成ともに自由度高し!!
これが合図
→こうして地道にペルソナを強化していけば、ペルソナ合体の際に、より強力なぺルソナが生み出せるぞ。
ペルソナのレベルアップ!!
新たなスキルを覚えることも!
←↑新しいスキルを修得!さっそく戦闘で使い、効果のほどを確認してみよう。
所持ペルソナの組み合わせによって発動する"ミックスレイド"
主人公は、複数のペルソナを所持できる。このとき、特定の組み合わせのペルソナがいれば"ミックスレイド"が発動。強力な魔法で戦況を有利にしてくれるのだ!
ミックスレイド発動!
↑ジャックフロストとジャックランタンで発動。ほかにはどんな組み合わせが?
なんだかスゴそう!
→一転して迫力溢れる演出に!ジャックブラザーズが本気になった!?
組み合わせごとに異なる演出が入る
←"ジャックブラザーズ"という組み合わせらしい。漫才コンビのような演出で心も癒される。
そして主人公がスキルをくり出す!その威力は⋯⋯!?
コロマル
声: ? ? ?
以前は神社の神主に飼われていたが、主人を事故で失って以来野良犬として暮らしていた。ペルソナ召喚能力を覚醒させてからは、特別課外活動部の一員としてともに戦うことになる。
初期ペルソナ
ケルベロス
アイギス
声:坂本真綾
シャドウ制圧用として開発された兵器。ペルソナ召喚能力を実装するため、"自我”を与えられている。従順実直で、命令には忠実に従う。戦術面以外の知識は、あまり持ち合わせていない。
初期
ペルソナ
パラディオン
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oka-akina · 9 months
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0721
 昨日は財布とスマホを忘れて労働に出かけてしまった。気づいたのは電車の中で、あちゃーとは思ったけどまあでもパスモ(クレカと一体型のやつ)があるからべつに平気だなと思ってすぐあきらめた。待ち合わせの予定とかもなかったし。こういうときに限って何か緊急の連絡が…とはちょっと思ったけど、一月に義父が亡くなったばかりだからしばらくそういうことはあるまいと思った。またそういうことがあるかもとはあんまり考えない。こういうのって性格なのかな。誰からも何も来ないに千円と頭の中で賭けた。  つまりわたしは労働に遅刻しないよう、わざわざ引き返さなくたって平気だと自分に言い聞かせているのだろうかとちょっと思った。そんなに遅刻をおそれているのか。ちょっとくらい遅刻したって気にしない感じの方がいいのになと思う。自分も周囲も。わたしは電車とか待ち合わせとか映画の上映開始時間とか、いつもいろんなことがギリギリで、ギリギリまで仕度ができないタイプなんだから大手を振って遅刻しちゃえばいいのに毎度バタバタ走って大汗をかいている。悪あがき。一生こうやって走っているんだろうかとときどき恥ずかしくなる。
 さっき電車に乗り込むとき、ホームと電車のすきまに靴を落としてしまった人がいた。すきまにかかとを引っかけて転んでしまったようで、一瞬迷ったけどわたしも電車を降り、大丈夫ですかと声をかけた。このときはまだ自分が財布とスマホを忘れてきたことに気づいていないのが、なんか昔話の正直者っぽいムーブだな……。人助けってほどのことでもないけど、うっかり者で正直者のなんとか太郎的な。  でもそんなんではないな、昔話の無償の正直さではないな。自分も乗りたい電車に遅れそうでしょっちゅう走っているタイプだから味方したくなったってだけかもしれない。自分ももうずっと前、学生時代、靴をホームのすきまに落としたことがあって、東中野の駅で足を踏み外して体ごと落っこちかけたのを近くにいた人がすぐ引っ張り上げてくれた。そのときは演劇のフライヤーを業者に届けに行く用事でかなり重たい紙袋を持っていた。よく引っ張ってもらえたなと思った。そういう善意の循環……みたいなことを考えるとなんかちょっと気味が悪いような気もする。これはわたしがひねくれているだけかも。  転んだ人は声をかけられてかえって恥ずかしいかもしれないと思って、駅員さんが来るまでなんとなく近くで見守り、駅員さんはすぐ来たので車輌ひとつぶんくらい離れたところに移動した。そして、電車一本くらい見送ったっていいや、多少遅刻してもいいやという判断をした自分に酔っていないか?みたいなことも思った。多少の遅刻は気にならない自分をやりたかったんではないか。なんだか心臓がばくばくし、さっきその人が転んで尻もちをついたとき、プリキュアみたいな絵面と一瞬重なった。スカートが広がった感じと手に握ったままのハンディ扇風機がなんか魔法少女みたいだなと思った。それがうしろめたくて声をかけたのかもしれない……とかも考えた。  なので財布もスマホも忘れてきたと気づいたときちょっとほっとした気持ちもあった。慣れない善意のようなことをしたからそれと釣り合いがとれているような気がした。バチが当たるの逆みたいな。
 そういうことを考えていたら電車はすぐ着いて、財布もスマホも持っていないのに水筒と読みかけの本は持って会社に出かけるのなんか優雅だな…と思った。あとタオルと日傘と飴。リュックの中で水筒の氷がカラカラ鳴って、このごろ水筒には冷たいお茶を入れているから、歩くたび遠足の子どもみたいな音がする。  読みかけの本はレアード・ハント『インディアナ、インディアナ』。柴田元幸訳。柴田元幸だから読んでみるというのは武豊が乗るから買っておくみたいな感じ? わかんない。インディアナ〜は難解な小説ではないと思うんだけど、ゆっくり読まないとすぐなんだかよくわからなくなる小説。もうあと少しで読み終わるんだけど、読み落としているところがたくさんある気がして行きつ戻りつ読んでいて、今はもっかい最初からゆっくり読み直している。 「ヴァージルの死ぬ間際にノアはもう緑の印は見つかったかとヴァージルに訊いて見つかったならどこにあるのか教えてくれと頼んだがヴァージルは長いあいだノアの顔を見てそれから眠りに落ちそれから目ざめてノアの顔を見てそれからまた眠りに落ちた。」だいたいこういう感じ。辛抱強く話を聞くみたいな小説で、いつかこういうの書きたいな、書けたらなあと思う。このそれからが3回続くの、自分だと書くのに勇気がいると思うし、書いたとしても書いたぞってあざとさが出てしまう気がする。
 お昼は会社の横に来ていたフードトラックでタコスを食べた。パスモで支払えた。白いタコスには鶏肉、ピンクの生地には牛肉の赤ワイン煮込み、黒っぽい生地にはサボテン?を何か和えたやつ。三個入り。キウイのサルサが辛くて美味しかった。スマホを持っていたらぜったい写真を撮っていたなと思った。  並んでいるとき、トラックに据えた鉄板の火が消えてしまったようで店の人が五分くらい格闘していた。しばらくチャッカマンをカチカチやっていたけどたぶんチャッカマンも燃料切れのようで、ぜんぜん火がつかない。ライターでやろうとしてなかなかうまくいかず、昼休みの五分くらいってけっこう長く感じるしかなり人も並んでいたんだけど、その人はまるで焦らず黙々とやっていたのですごいなーと思った。焦りが顔に出ないタイプなだけかもしれないけど。べつに誰にも謝らず、普通に注文を受け普通にタコスを包んでとやっていて、そうだよなあと思った。
 労働を終えまっすぐ帰宅したらスマホにはやはり誰からも連絡は来ていなくて、千円勝ったと思った。千円くらい何か食べようと思った。わざわざ夜出かけるのめんどくさいなとは思ったけど、金曜の夜でほんとは寄り道したかったのだから出かけたい気持ちが勝った。  ぶらっと出てみたらいつもより涼しくて、どこまでも散歩できそうな気持ちのいい晩だった。ぶらぶら歩き、なんとなく電車に乗っていた。夜だから上り電車は空いていて、定期圏内の、でもあまり降りる用事がない駅のちょっと歩いたところにある中華料理屋というか定食屋というか、カツカレーが美味しいらしいので前から行ってみたかった。ふだんぜんぜん用事のない、買い物に行くような街でもない、誰も知り合いもいない駅。ここでわたしが何か交通事故とかにあって死んじゃったりしたら、なんであんなところにいたんだろうと家族は不思議に思うんだろうな……とあまり行かない場所に出かけるたび思う。  駅を降りたら書店があったので覗いてみた。雑誌と漫画と学参の棚が大きい、ちょっと広めの店舗の懐かしい感じの書店。気になっている本のリストを頭に浮かべながら物色し、目当てのいくつかは置いていないようだったけど、そういえばしゃしゃさんの本が今日発売日じゃなかったっけと思って探した。『蒼き太陽の詩』。1,2巻は棚に差してあったけど今日発売の3巻はなかった。レジに持って行って、これの3巻もありますかと尋ねたら奥から出してきてくれた。ラスト一冊でしたと教えてくれた。あっ善意と思った。カツカレーを食べながら読んだ。  『蒼き太陽の詩』は、アラビアンファンタジーというのかな、双子の王子が国王の座をめぐって殺し合う……というワクワクハラハラする物語。砂漠の王国が舞台の大長編で、読みやすくてぐいぐい進んだ。『インディアナ、インディアナ』を読んでいたから余計にそう思うのかも。壮麗な織物みたいな物語で、読んでいるとキャラクターたちの声が聞こえてくるし人や周りの風景が目に浮かぶ。生き生きとしている。これアニメになったらいいなーと思った。赤将軍のユングヴィはファイルーズあいさんがいいな……。
 カツカレーの店は、客はわたしだけで、店のおじいさんは座敷でテレビを見ていた。テーブルにハイボールのコップとつまみがいくつか並んでいて、わたしが来たのでおじいさんはちょっと慌てたようすで、でもにこやかに注文をとってくれた。すっかりすり減った畳が赤くなっていて、ちょっと緊張した。あまりきれいでない状態に緊張するのもあるし、よそものが入ってきてすみませんみたいな緊張感もある。テーブルはきれいに拭かれていた。揚げたてのカツが大きくて、油と肉汁がジュワッと溢れてきてすごく美味しかった。カレーは濃くて、柔らかくほぐれた牛肉もけっこう大きいしたくさん入っていた。たしかにうまい。がつがつ食べるうちにだんだん体のこわばりがほどけた。  テレビの音がものすごく大きくて閉口したけど、カツを揚げ終えたおじいさんが汗をぬぐいながら夢中で見ているのがなんかよかった。『チコちゃんに叱られる』というやつ?初めて見た。音が大きいから見てしまう。ボーッと生きてるんじゃねえよってこれかと思った。Vtuberっぽい。おじいさんが何度もはははと笑った。どうしてゴルフボールの表面にでこぼこがあるのかというのをとても真剣に見ているので、ひととおり解説が終わるのを待って会計を頼んだ。
 家に帰ったら板垣さんがツイッターでスペースをやっていたので、洗い物や洗濯物などを片付けながら聞いた。どうやら同じ大学出身だったことがわかって思わず話しかけてしまった。一日いろいろカラフルでなんか気持ちが興奮していたのか、やけにたくさんしゃべってしまって、恥ずかしくなって寝た。文フリの話とか小説の話。  千葉雅也『エレクトリック』、わたしは父親がエロいのがいいと思った。と言ったんだけど、なんていうの、エロいって言い方はちょっとちがう気もするんだけどエロく書くことのすごさがあってそれをそう受け取りたいというか……。これは『サバービアの憂鬱』で読んだんだったかな、「男性は会社(仕事)に嫁ぐ」というのを思い出したの。大場正明『サバービアの憂鬱 「郊外」の誕生とその爆発的発展の過程』。うろおぼえだからちょっとちがうかもだけど、男性が会社(仕事)に対して「嫁」になってしまう、みたいな。父親の人妻的な感じ。そういうエロさ。舞台の宇都宮も郊外(サバービア)だなと思った。そしてそういう小説の、文章自体がヘテロでない感じがあって、すごくよかった。多くの小��の文章が意識的にも無意識的にも備えている、当然の「調べ」みたいなものがあんまりない文章だと思った。
 『エレクトリック』の前後で読んでいた、数年前の文藝賞の作品が、なんかこうすごくどヘテロだったのもあってそう思ったんだと思う。ヘテロが悪いわけではもちろんないけどよくもわるくもどヘテロ、ザ・調べという感じで、この作品のどこらへんがわたしは苦手だったのかを語ろうとすると、そこに糸口があるみたいな話。  なんていうの、村上春樹に文句言ってる場合じゃないくらい若い作家の新しい作品がめちゃめちゃ古いジェンダー観で、読んでいて作品の面白さとかすごさはわかるような気はしたんだけど、でもこれをよしとするんだなあ、帯に誰々氏が激賞と書いてあるけどそうなんだ?!みたいな驚きは、やはりあった。ジェンダー観もそうだし、地方や精神障害者への偏見を強化するような感じもあって気になった。「壮大な作品」「圧倒的な熱量」「知識と想像力を駆使し」と帯に書かれていたけど、わたしは読んでいて小ささや狭さの方が目についた。  いやわざとそう書いている、いかにもなステレオタイプをやることに意味がある作品なんだろうとは思った。仕掛けというか。でも意味があるんですよと書くずるさというか……。ステレオタイプをなぞり続けたい、そのようにして書けるものに作家は意味を見出したいし、どうしても興味がある。それってフェチではあるよなあと思うんだけど、ステレオタイプをフェチと指摘されることってあんまりない気がする。  偏見の強化によって生まれる痛み、それを感じない場所に作家は立っていて、痛みを感じる人のこともあまり見えない。いや見えてはいるかもしんないけど、自分の書くこの作品とはさほど関係ないと思っている? それは別の作家、何かそれにふさわしい属性を持った作家がやることであって自分の作品では関係ない。おそらくは無自覚な特権があり、特権って言うと反発したくなると思うけど……みたいなことを思って、うーーんとなった。やつあたりかもしんないけど。作品名出さずに書いてるからなんのこっちゃって感じだと思うけど。  まあ小説ってそんなに読まれないんだろうなと思った。読む人そんなにいないから、これのここってどうなのみたいな話題にのぼることってあんまりない。漫画とはそこがちがう。あとまあわたしが純文学、文芸誌とその賞にそれなりに夢をもっている(もっちゃっている)ふしはあるな…。
 そしてこの作品の直後にC・パム・ジャン『その丘が黄金ならば』を読んであーーーこういうのが好きだ〜〜と思って、なんかそういう不満のようなものはふっとんだ。大きい。大きい小説。こういうのがいい。小さい小説がだめなわけではぜんぜんないけど、大きい話を書こうとしたものが狭苦しく感じられるのはやはりつらい。あと長さもよかった。四六版で384ページ。父親が亡くなり子どもたちが埋葬の旅に出る…という筋書きで、本のけっこう前半で埋葬は済んじゃう。その後が長いのがよかった。純文学系の賞はちょっと短いのかもしれない。「自分の書くこの作品とはさほど関係ない」と書いたけど、まあだって短いもんなー。読む人にも書く人にも。この長さの話はもうちょっと掘り下げたい。日記に書きたいことっていろいろあるな。長くなったのでまた今度。
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neigesucre · 1 year
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2月の外食記
2月4日 ABCラーメン@銀座/tabacco@恵比寿
歌舞伎観たあと、受験で弟が遠路はるばる来てくれたので銀座でランチ。東京で、ラーメン食べたいとのご所望があればここ一択。育ち盛りをいいことにサイドメニューもたらふく食わせる。大学の下見に付き合ってから好きな人①に会いに恵比寿に。彼の行きつけのラーメン屋向かってから、かよ先輩が行っていて気になってたイタリアンにお邪魔。串カツ屋さんみたいなノンストップタパス、楽しいなあ。大はずれだったビブグルマンフレンチの話して、ここは好みと伝えたら俺たち情報食ってるからねと返されて、たしかになと思った。情報を噛み締めて気持ち良くなりたいよね。4度目も手を繋いで健全解散。デートはこれが最後かな。
2月11日 うゆう@渋谷
大学時代のバイト同期と飲む。私以上に食にうるさいから、お店サジェストするときどきどきしちゃう。芸術品のようによそわれたお通し6品に毎度見惚れる。褒めてもらえて嬉しい。酔ったノリでハプバ行く。摘発されていたからどんなもんかと思っていたけど、プレイルームはホテルとして別会社が運営、行きたいときはスタッフにこっそり声かけるっていうパチ屋仕様になっていてウケた。たしかに懇ろになった男女がホテルに行くのは誰にも憚られませんからね。声かけてくれた男性2人と、半分おしりが見えるセーラー服着てダーツした。失礼だけど、私たちがアプリで会ったら初手で切ってしまう、なんならそもそもマッチしない属性の人。でも2人とも私たちに楽しんでもらいたい気持ちがまざまざと伝わってきて、人間っていとしいなと思えた。ここに来るといつだってあたたかい気持ちで帰路に着く。ありがとう。
2月12日 小野田商店@学芸大学
2ヶ月ぶりの加藤。大好きなホルモン屋さんとワインバー行く。ここに訪れるたびにお客さまは神様じゃないのを思い出す。この街がぜんぜんしっくりこない男だなと思う。ずっと日比谷線にいたほうがいいよ。そのあとなぜか六本木行こうや、と向かったもののバーはろくに空いておらず、さらになぜか遠隔プレイしようや、とドンキ行く。ぜんぜん思っていたのと違ってAVはフィクションだねと笑い転げた。
2月13日 友@目黒
3年前からときおり会っているティンダーの男友達とサシ。はじめて会ったときは私は22で彼は27だったと思うとこわい。手書きのメニューが適当に壁に引っ付けてあるお店ってだいたいはずれがない。M1出場を打診されノーシンクで快諾。だってM1経験のある人生のがおもろいじゃん。いったん彼の芸風見てからコンビ組もっと。
2月15日 ilungo@自由が丘
お気に入りのおでんやさんで飲むつもりが、煩いおじさん客がいるからっておでんやの女将さんと2人して抜けてビストロで飲んだ。日本酒フリーフローは嬉しい。彼女は代理店の大先輩でもある。さんざん仕事の愚痴を連ねる。最近仕事干されてイヤイヤ期だけど、たしかに私はキャッチアップ遅いんだった。背中押される。私も彼女みたいに着物を自由に纏えるようになれるなら、アラフォーもそう悪くない。ハナエモリのお着物ずっと狙ってる。
2月18日 のんき屋@浅草/Trattoria Azurri@神楽坂
日本舞踊のお稽古に浅草へ。せっかくだし、と帰りにホッピー通り寄るもおひとりさまだからと4軒連続で断られる。もしかしてお呼びじゃない?半ば憤って入った立ち飲み屋が大正解で息をつく。もつ煮150円なんてマネタイズが心配です。ほろ酔いで神楽坂。電話でのリファレンスチェックも功を奏し案の定楽しかった。国家公務員からコンサルに転職した理由を問うたら、「それでいうと理由は3つあって〜」とお手本のような仕草を垣間見てにやにやしちゃった。まだ遊んでいたいと恋愛したいの狭間で揺れてると聞いて、正直な人だなあと思う。でも恋人がいないと甘えたくても甘えられないと溢されて、そんなの傷口の舐め合いじゃんと返したけど、まあ、そうだよね。だって私たち、頑張ってるもんね。男の子、みんな葛藤してて可愛い。菜の花とホタルイカ、旬のうちにリベンジしたいな。好きな人②に昇格。
2月21日 ゑぶり亭“@横浜
ダンサー3人で飲んだ回。まあダンサーじゃないんだけど。炙りしめ鯖にレモンを搾るさまさえもべた褒めしてくれるから自己肯定感あがる。元気の良い居酒屋って大好き、絶対にバイトしたくないけど。業界人でもないのにフースタ見てる人は変態と聞くけど、フースタは間違いない。
2月22日 カクニマル@神泉
某ギャラ飲みの日。ここも接客がいい意味でやたらやかましい。刺し盛を出血大サービスしてくれた。こういう人も、まだこういうお店で飲むんだなと思った。でもしっとりしない雰囲気で逆に良かったのかもしれない。女友達と来たかったなあ。
2月23日 da GIORGIO@湯島
好きな人②と飲む。彼から教えてもらったこのお店、かよ先輩が「東京で1番美味しいピザ」とツイッターに残していたのを思い出して俄然楽しみになった。MECEな恋愛の話する。MECEな恋愛なんてないだろ。私はやっぱり一緒にボトルを空けてくれる人が好き。いつ��って飲みきる責任を背負った共犯関係でいたい。
2月25日 串カツ田中@横浜
サークルの同期3人と鎌倉で座禅を組んだ日。幸せってなんたるか、良い家に住むでも素敵な配偶者と巡り合うでもなく、皆さんの足元にあるそうですよ。頭ではよ〜くわかってるんだけどな〜!シャバい経営者は全員座禅したほうがいい。私もまだまだ先は長そう。そのまま横浜向かって、田中とカラオケとハブをはしごする煩悩に塗れた夜。田中で串カツ選ぶのってなんであんなに楽しいんだろう。好きなチェーンは田中と松屋とふたごです。
2月27日 どん底@新宿
「お会計30%オフになる年賀状が今月いっぱいだから!」と誘われてティンダーの男友達と飲む。彼ともかれこれ2年になる。ここ、クラシックでとっても美味しいけど絶対にスタッフが堅気じゃないんだよな。そこも含めて良店です。ティンダーを辞めた理由のひとつは彼で、彼に出会えてもう辞めても悔いないなと思った。好き同士ならただ一緒にいれば良いじゃない、なんて互いに婚姻アンチだけど、でも結婚したらバイブス上がりそうじゃね?!と盛り上がる。それもわかる。私が結婚式をするなら彼を「インターネット」のテーブルに着席させる。26歳、春からようやく社会人になるらしい。おめでとう。帰りに店員さんに「しこたま飲んだなあ!」と言われて笑う。2人でシーバスのボトルキープした。勝手に飲ませてね。
今月がはやく過ぎたのは決して日数だけの話じゃない。総じて非常に楽しかったんですよね。よく食べ、よく飲んだ。数えたら2日にいっぺんは飲み歩いていた模様。あと、思い返せば浮き足立つデートが毎週末あって幸せだったな〜!私、やっぱりときめいてたい。来月も素敵なお店で大好きな人たちと過ごせますように。
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geniusbeach · 1 year
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石の言葉
 名古屋を巡る車の中で、静岡に砂丘があることを友人から教わった。鳥取以外に砂丘が存在することは意外だったが、私はちょうど、ぼうっと眺めるだけで済む単調な風景を欲していたところだった。というのも、このところ雑事に追われていたせいで、精神は干された雑巾のように疲弊しきっており、何事に関しても乾いた考えしか浮かばなくなっていたからだ。友人に請うて予定を変更し、翌日足を伸ばしてみることにした。
  三月某日。朝から曇天。連休の中日であるせいか車道はしばしば滞った。昼過ぎにようやく浜名湖に着き、そばにある店で鰻を食べつつ、私は植田正治が撮影した写真を思い出していた。白い空と白い砂に二分された画面の中央に、黒い服を着た人物が立っている。現実から遊離した夢のような断片。まるでタンギーの時空にぽつんとある、マグリットのオブジェ。新しいのにどこか懐かしい、シンプルで強烈なイメージだ。そんな不思議な光景が、この先で待っているだろうか。重箱の蓋を閉め、肝吸いをすする。椀のなかにある黒い背景と白い肝のネガポジを反転すれば、近くて遠い異世界が現れるだろう。思いもよらぬ効果は、そのように簡単な操作で得られるのかもしれない。携えたカメラで何かを撮ってみよう。
 中田島砂丘は浜松の南部に位置し、遠州灘に面している。砂は、その東端が接する天竜川の上流から運ばれてくるそうだ。駐車場に車を停め、滑り止めが敷かれた小道を歩いて登って行く。林を抜けると視界が開けた。友人が声を上げる。空と、一面の砂が広がっていた。砂原へと続く急斜面を、足を取られながら興奮ぎみに降りる。すると、不意に下方から視線のようなものを感じ、私は立ち止まった。目を凝らすとそれは人でも動物でも虫でもなかった。石であった。坂の下に、じっとこちらを見つめている石があったのだ。遠ざかる友人をよそに、砂に顔を打たれながら、私はそれを見た。あたりにごろごろ転がる石とは何かが違う。風と波の果てしない響きのなかで、その石は白くきわだち、寂しそうだった。
 私たちにはどこか通じ合うものがあった。ルートを外れ、靴にざばざばと砂が入り込むのも構わず、石のもとまで無心で下って行った。拾い上げると、それは花崗岩であった。美しい卵型をしており、側面に少し平べったい部分がある。表面はチョコチップアイスを思わせる、白にわずかな黒のまだら模様。握ってみるとたしかな重みがあり、旧知の仲でもないのに、手にしっくりとなじんだ。持ったまましばらく考え、その石を散策の相棒にすることに決めた。
 石は、大人しい。しかしその性質はなかなか気難しい。浜を東へ歩いていく途上、こいつをどう扱おうかと悩んだ。ぐっと握りしめたり、持ち上げたり、掲げたり。ときに置いたり、立てたり、回したり。はたまた投げたり、落としたり、転がしたり。その全面が顔ともいえる、しかしいっさい動いてくれないカタブツをなだめすかしながら、何枚も写真を撮った。そのうち何やら、石の言葉が聞こえてくるような気がした。しかしその言葉とはいったいどんなものだろう。
 雨に濡れて。/独り。/石がゐる。/億年を蔵して。/にぶいひかりの。/もやのなかに。
 そう書いたのは詩人草野心平だが、なんでもない石について、石そのもののごとく簡潔に、そこに秘められた歴史と存在の必然性を言い表している。なおかつ映像的でもあり、事物を外部から見た限界ぎりぎりのところを巧みに描写している。とはいえ、それは石の発した言葉ではなく、あくまで人間から見た石の姿にすぎない。最終的にその主張を想像して汲み取るのは我々読者だ。詩人石原吉郎によれば、詩とは「沈黙を語るための言葉」だという。結局、我々が読めるのは「書かれた詩」でしかない。ほんとうの詩は事物と感興との沈黙の関係にあり、口にしたとたん霧消してしまうたぐいのものなのだ。ただしその意味で、カメラは言葉と同等に詩をつかみ得る道具となる。
 石の言葉の意味は石にしかわからないが、聞くことはできる。それは生成と漂着の場所にこだまする音に根ざしているはずだ。ここは砂丘。海と空と砂と風がある。それらを組み合わせて固めた言語が質量となって、いま手のなかにある。石の組成、つまりこの風土の中心に改めて石を据えてみようと思った。空へと放り投げて、あるいは、太陽と重ね合わせたシルエットに向けて、シャッターを切る。一連の試行錯誤の末、徐々に一個の石の多様な側面が見えてきた。浜にある無数の石の中、風紋を斜めに切る光彩と陰影の間、人の足のような流木の上、それぞれの関係性の中で石は表情を変え、異なる何か訴えかける。それは静かだが、熱のこもった対話であった。
 石のようになかなか動こうとしない私に友人はやきもきし、途中からどんどん先に進んでいった。帰りがけに走って追いついたところ、持って帰るつもりかと聞かれた。私は黙って首を振り、堆砂垣の向こうにそっと転がした。ホテルに戻ると、お気に入りを見つけたと言って、友人はポケットから小さな黒い石を取り出してみせた。彼は彼で写真を撮っていたらしい。そうしてにやりとしながら差し出されたカメラの画面には、私と石の出会いが切り取られていた。少し笑うと、名残惜しさが込み上げてきた。ふたたび永遠の海亀の卵へと還った石は、満月とともに夜を語り明かすにちがいない。ここちよい疲労に包まれてほんとうの石となった私は、夢幻のなかでその会話を聞いただろうか。
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patsatshit · 6 months
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「週刊少年ジャンプ」(集英社)にて2018年14号から連載中の『呪術廻戦』が面白い。人間の負の感情から生まれる化け物・呪霊を呪術を使って祓う呪術師の闘いを描いたダークファンタジー。読者の予想を裏切りまくる展開で、数多の考察系YouTuberを幾度となく地獄に叩きつける作者のイヤラシイ才能に惚れ惚れする。ストーリー、人物造形、魅力的な術式の数々、どこをとっても見どころ満載で語り始めたらそのまま夜を駆けて呪いに転じてしまいそうなんだけど、特筆すべき点をひとつ挙げるとすれば、主要なキャラクターのひとりである羂索という呪詛師の存在。他人の身体を乗っ取り、永い時を越え自らの野望を叶えるために存在する人物。この羂索が物語を牽引するから本作は特別なものになっている。どこまでも純粋に面白いことを追求する奴が真に面白いと思ったことだけを次々に実践していく訳だから、その内容が面白くならない筈がない。
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彼が目指すのは「呪力の最適化」である。 呪霊のいない世界でも牧歌的な平和でもなく、自らの生み出すもの以上の可能性を見つけること、つまりは呪術の力で新たな世界を創造しようとしている。 呪術師・呪霊・非術師、これらは彼曰く「人間という“呪力の形”の可能性の一つ」に過ぎないらしく、さらなる呪力の可能性の探求の為に、1000年もの間、様々な術師の身体を渡り歩いて暗躍を続けていた。 そして最終目標は日本全土を対象に人類への強制進化を成すため、人類と天元を同化させることである。 おまけに乗っ取った人物の身体能力、特徴だけでなく術式等の能力をもそのまま引き継ぐことができるのだが、本人の年齢及び本来の顔、性別も未だに不詳。ここまで書けば勘の鋭い方なら既にお気づきだろう。そう、これは完全にドゥルーズの生成変化である。生成変化とは他なる物事への複数の「外在的」な「関係」の付置それ自体としての、言うなれば「関係束」としての「自他」が組み変わることである。それは万象の渾然一体ではなく、互いに区別される関係束の多様な組み変わりである。ドゥルーズの動物論は、スピノザ的「生態学的倫理」として解釈されることが多い。要するに自己の「身体の能力」を開発し、他者のそれと絡み合わせ、自他が一緒に活力を増していく「強度の共同性」を拡大することである。まさに「闘争領域の拡大」というやつだ。そしてそれは数々の漫画作品からの場面引用と構図、展開等の組み合わせで『呪術廻戦』を構築する作者の意図としても汲み取ることが可能である。
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つまりは羂索≒芥見下々であると、わざわざ声を大にして僕は言いたい訳だが、これは世界とは、断片的な物事のあらわれを「想像」に於いて「連合」した「結果=効果」であり、そして世界のいたるところに、互いに分離した想像する「精神」があるというヒューム主義を独自に咀嚼した庵野秀明原作・監督によるオリジナルアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の概念を字義どおりに渡り歩いた芥見下々の巧みな筆捌きからも察することは容易い。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』で作中人物の碇ゲンドウが目論んだ「アディショナルインパクト」をゲンドウ自身の言葉で要約すると「セカンドインパクトによる海の浄化。サードによる大地の浄化。そしてフォースによる魂の浄化。エヴァインフィニティを形作るコアとは魂の物質化。人類という種の器を捨てその集合知をけがれなき楽園へといざなう最後の儀式だ」ということであるが、これは羂索の最終目標である日本全土を対象に人類への強制進化を成す為、人類と天元を同化させようとする「超重複同化」と思想的にもかなり近しいものがある。『新世紀エヴァンゲリオン』は言わずもがな、他作品へのオマージュをふんだんに散りばめる『呪術廻戦』そのものが芥見下々なりの「アディショナルインパクト」であり「超重複同化」であり「生成変化」の一端であると言い切ってしまうのは、いささか暴論に過ぎるだろうか?
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『呪術廻戦』と同じく「週刊少年ジャンプ」で連載中のギャグ漫画『僕とロボコ』の第156話「オマージュとロボコ」と題された一話にはオマージュを最大の武器としている作者・宮崎周平の意図を盛り込んだ内容で、そのあまりにも大胆かつバカバカしい試みに失笑を超えて思わず仰け反った。「パクりはもう卒業しました!」と切り出す主人公ロボコは「複数の作品の良いトコロを参考にすれば、それはオリジナルになりうる!」と豪語する。そして数え切れないほどの他作品の「良いトコロ」をつまみ食いしてオリジナル漫画を描き上げては周囲を唖然とさせるも、本人は至って冷静に「オマージュの範囲内ですね」と嘯く。そしてキャリア2年目の編集者が編集長の目を盗んで本誌掲載に踏み切り、結果、見事に大炎上するという極めてメタメタで知的な内容だった。オマージュについては『リズム・サイエンス』(青土社)という書籍にも深い洞察が垣間見える。本書はヒップホップやジャズなどのブラ���ク・ミュージックから現代音楽、果てはメタルまでを往還する境域のミュージシャンDJスプーキーが本名ポール・D・ミラー名義で上梓した渾身の音楽論である。前述のロボコが描いたオリジナル漫画のタイトルが『ドキ♡孫・D・炭太郎の青春‼︎大秘宝‼︎』であったことを鑑みれば、宮崎周平の目論見は明確である。ミドルネームの「D」それは単なる偶然にしては出来すぎた話ではないか。近/現代思想を核に、音楽、映画、小説、詩をサンプリングしながらも、「���人の思考を自分のものにするのは発明するのと同じくらい難しい」と天を仰いだその真意とは。彼の試みは確実にイギリスの批評家マーク・フィッシャーに受け継がれ、氏の没後は言うまでもなく……。
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東京を拠点に活動するラッパー、J.COLUMBUSが長野県松本市のトラックメーカーMASS-HOLEをプロデューサーに迎え、制作したアルバム『On The Groove, In The City』は、幾つもの言葉の断片が虚実の被膜ではなく、自己/他者の被膜をねっとりと愛撫するように言葉が置かれる。しかもそれらは決して打点を刻むことなく、じわじわと地中に溶解する。もはやJ.COLUMBUSの言葉とPAUL AUSTERの言葉に差異はない、否、具体的には決して交わらない他者と自己の言葉が混ざり合うことも溶け合うことも拒絶して地表に吐き捨てられる。これはストリートの詩情などという陳腐な戯れではなく、現前する意志を喪った風景を浮かび上がらせようとする稀有なる試みだ。因みに芥見下々は「パロディやオマージュの線引きは、自分の中では明確な基準がある」と明言している(コミックス16巻を参照)。ここまで記してきた僕の文章自体もWikipedia、ピクシブ百科事典、千葉雅也の論文「ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学」を渡り歩いたものに過ぎず、無論、オリジナリティは皆無である。
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moment-japan · 2 years
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今日、早めの散歩。
ひがし茶屋街は、欧米人観光客が大勢。
ミシュラン1つ星料理人が開いた新しい日本料理店がオープンしていた。
昭和の青いHONDAのCB350か550が置かれたお店?の町家も改装中だった。
(凄く気になる!)
人ごみを避けていつものように、観光客の来ない奥の寺院群へと足を運ばせる。
このあたりは、コンパクトながら風雅な雰囲気を漂わすお寺がたくさんあるので、怪奇大作戦「京都買います」の岸田森みたいに考え事をしながらよく散歩します。
切込接で積まれた妙正寺の石垣が非常に美しい。
サイドも丁寧な算木積になっている。
整然と積まれた石垣に明るい秋の日差し・・。
石垣を観察していると「なにかありますか?」と物凄く品のいいおじいさんに声をかけられた。
「この石垣があまりにも綺麗なので・・」と答える僕。
「目の付け所が素晴らしい」と上品な笑顔で返してくるおじいさん。
しばらくテンプルトークで盛り上がり「では、この辺で、ごきげんよう。楽しんでいってください」と去っていった元大学名誉教授風のおじいさん。
おじいさんの正体が気になる・・。
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flamingo-rex · 5 months
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2023.12.02
雪マークが付く気温。
はい!2℃ですわ
でも直ぐに常夏の石垣島入り
ダウンジャケットからTシャツだぜ!
日本って凄いよな…
明日、Cat ch.22の12周年って事で
お祝いに駆け付けてくれた方々、
大変感謝しております!ありがとうございました
で、帰り道。
ラッキー🐕散歩の為に車で移動してたら
めちゃんこデカい 隕石? 彗星? 流れ星?
って感じのを目撃!
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流れ星のレベルぢゃないのよ!
まぢで明るくて、光の尾っぽが長くて
早くて…
あれ何やったやろ??
何しろ調べても、
今月は流れ星がめちゃんこ見れますよ!
みたいな記事は出るんだけど
さっき見たのが、彗星なのか?流れ星なのか?
火の玉なのか?謎過ぎだけど
めちゃんこ感動するレベルの体験でした!!
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me--me--me · 7 months
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ポケモンSV🎇🎆鬼フェスの鬼は鬼畜の鬼編👘🍎
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おはこんハロチャオ🎶!( ΦωΦ )みーくんです🖤
残暑も去りすっかり秋めいて来た今日この頃ですが、先週てゃ(鴨見 居ちゃん)🌼おむ(オムライス)🐣けーちゃん(けなみちゃん)💜と遂に待望の…!
🏮👘✨️✨️㊗️DLC記念‼️🎉キタカミ夏祭りデート(👈強調)✨️✨️🏮🎇
に行ってきました〜!😻💖甚平姿が眩しいぜ🤦
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👇コレは初っ端からふざけだすてゃおむ📸😎
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当日は昼の部🌞と夜の部🌃で分けて遊びまして、けーちゃん♡は夜の部からの参戦です🥳💘打倒‼️鬼フェス上級‼️😡️👊💥👹てことで本番は夜♡😘
昼の部の時はてゃおむに俺の図鑑完成を手伝って貰ったり軽く上級凸って練習したり屋台行ったり、とにかく写真をメチャクチャ撮ってた‼️👨‍👧‍👧️💥📸
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🌿ぽにおピクニックもしたゾ🎶🤗
👇てゃ🌼が撮ってくれた大変百点満点な写真🤗
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👆おむ🐣が撮ってくれたガンダムSEEDのOP🤗
自分をオーガポンだと思い込んでるハリボーグ好き
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三人組なら一度は撮ってみたい三馬鹿ともっこ写真📸ガラ悪めで猫っぽいミー、頭脳明晰なシエル、ひよこポケモンのタマで綺麗に分かれたが、イイネイヌはイヌだし個人的にシエル(てゃ)のイメージはうさぎ🐰
日も暮れ始め、やりたかった事を大体し終えたところで夜の部に備え一旦解散‼️また後でな👋🌇
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何かこの写真めっちゃ好き🥲🌌タマもシエルもミーも心做しか楽しそう;一生一緒にいてくれや😭
ミータマ、ミーシエ、シエタマは〝ある〟(は?)
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✨️🍎👘����🌞昼の部まとめ動画🌞🎇👘🍎✨️
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動画内でソチャデスとチャデスを間違えてます🙇‍♂️
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夜の部は〜じま〜るよ〜❣️❣️✨🍧️👘🎆けーちゃんと合流します‼️🥳💜
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―――…最強ミュウツー討伐以来、凡そ三週間ぶりだろうか。久しぶりに会った彼女は髪を切り色も可憐なダスティピンクに染め上げ、少し大人びた容姿になっていた。あどけなさの残るタマ(おむ)、ボーイッシュなシエル(てゃ)とはまた違う、艶のある女性の面を垣間見たミーは唐突なSSやめーや💥💥👊😅
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けーちゃんのお写真に関してはてゃが撮ってくれた写真が良すぎるから見て‼️🤯💘可愛い❣️😭👇
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この4人組可愛いなァ〜🤪💜🐈🌼🐣
一方その頃おむ🐣💛が撮ってくれた写真♡😋👇
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ガンダムOPを引きずるな何で毎回オモロいねん
オタチとオオタチの写真とても可愛いの暴力
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各自渡したかったポケモン交換も終えて…((🤗))
さて‼️今回のメインディッシュ‼‼️✨️️😋🍽💞✨️鬼退治フェス上級ですが‼️‼️🤗👹
怖すぎワロタ。
尚最高レベルの10まで到達は出来るものの一歩二歩及ばずホントにギリギリのとこでクリアまで漕ぎ着けなかったので次回こそは‼️🔥💢🤬👊👹
んまっ🌟今回のでおおよその流れを掴んだ俺らなら余裕っしょ🌟🤟😸🫰(特大フラグ建築)
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また遊ぼ〜〜〜ね〜〜〜❣️❣️❣️🌈🌈✨️✨️今回も楽しかった‼️‼️👊😻
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✨️🍏💜🎆🌃夜の部まとめ動画🌃🎆💜🍏✨️
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夜の部は鬼フェスで予想外に時間取られた為ゆっくり写真撮る時間が設けれなかったのが唯一の心残り😭次回はけーちゃんとも屋台に行きたい!😖📷
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🌈ここらでポケモンちゃんの写真コーナー🌈✨️
交換で貰った子や皆の手持ちの子たち😎📸
ミー太郎の手持ちは動画で見てクレメンス🙌
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一番下のてゃおむのどっちか(多分てゃかな?)に撮って貰ったやつなんだけどメチャ可愛い‼️💘🦊
内股気味でもイケメンでゴメン🤦(は?)
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動画やココに載ってない子たちも含め頂いたポケモンちゃん達は大事に大事にします♡🍀🥰🙏
乙!!
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次の記事で連れ回してたアリアドスとかイトマルの紹介が出来たらいいにゃ😸 (2023/10/06)🐈
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hitujijp · 8 months
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我は極小の神秘を育てる層状構造
AIがいかにして知性的判断を育むか。実際にそれらを作成してみて思うのは、畳み込み層が層数を重ね一定の水準を超えるに至ると、学習による特徴量の蓄積が振る舞いに劇的な有用性を与え、知性として通ずる段階にまで収束する。という呆気ない構造を垣間見られる。
現在文明の技術水準と人間の知性の精緻さがまだ同等の段階に達しているとは言い切れないが、両者が同一線上の延長にある体系と見なせる時、精神をまさしく「呆気ない」ものの延長として捉えるのが自然な論理展開だろう。
ところで神秘なる力や、運命がどうしようもない格率に委ねられる時の祈りに、目に見えざる偉大な力を感ずる現象をオレ自身も否定はしない。実際唐突に訪れる閃き、或いは散歩や遊泳をしている時に予期しない発見が訪れる奇跡に、時代を問わず科学でさえも何度も何度も救われてきた。
人は生物なのだから、コンピュータとは異なり能力が大幅に変動する。好不調の波が有り、何かの拍子に例え一時的にせよ驚異的な段階にまで性能が高まる瞬間が有る。閃きの奇跡をその一環だと解釈する事も可能だろうが、仮にそうだとするのなら閃きは意図的に制御出来なければならない。しかし閃きを制御した信ずるに足る根拠を持った事例は耳にしないか、もしくは部分的な傾向の話程度でしかなかった。
ただそれでも個人的には偉大な存在(ただしそれが人間的な姿と思考を持っているとは考えていない)は有り得ると考えている。
しかしながら精神が崇高なものであるとか、精神がその役目を終えた後の世界についての諸説には随分懐疑的な心境だ。AI同様に呆気なく駆動源のエネルギー供給が止まれば消滅すると考えるのが妥当で、似た様な構造が片方だけ特別待遇に遇されるなど不自然に思える。
一方で情報には近年熱力学的な洞察を導入した研究が取り入れられ、異分野にも影響を与えている。情報の本質はオレ自身も十分に理解しているとは到底言えない自覚が有り、本音を述べるなら上記で述べてきた全てが根底から覆える事件の到来を楽しみにしている。
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poetohno · 9 months
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第四楽章 水の旅路
「物語」
地球上の水のほとんどが塩が混ざり あるいは氷に閉ざされている
純粋な水として存在するには空に抱かれ 山に削られ 岩磐(いわいわ)の険しい旅路を行き 大地の洗礼をうけなければならない
地表に流れる水は命の源であり 様々な自然の関わりによって生み出される命の産物
水は天より降り注ぎ 山を下り 河を流れ 海に終着する水が渇き天に抱かれ空を旅する雲となるのなら風とは命の使いとも呼べないか
風は運命を垣間見せる全ての命は風に運ばれている
風の導きによって命の定めも決まるだろうか風が囚われれば世界は地獄と化し風が自由に歌えば生命もまた謳歌する
ふと目にするあの雲もまた空の彼方の海からやってきたのかもしれない雲は風に流れ 果てに行き着くだろうまた別の風は果てしなく巡っていることだろう
―海のように
果てなき海は生命の始まりの大地山は生命の終わりの果て 辿り水は生と死を巡る 水は命そのもの
雪に閉じこめられた命は春の訪れと共に花開き溶ければ寄り集まりながら小さな鼓動のように流れやがて大きなうねりとなり生命が漲る川となる
そこに命があるなら戦いがある戦いに勝利したものは生き延び敗北したものは死に絶え川を下る
その戦記には続きがある彼らの肉体は川の果ての森に続き木々に住まうものたちの糧となる森の果ての川に命を紡ぐ物語がある
「川の調べ」
雨は天より零れし海の唄 海は天を仰ぎ 天は海を抱く山を越え 草原を愛で 森の謳歌を奏で渇いた砂漠に一瞬の楽園を築く 命の交響曲を支える旋律
空が蒼いのは川を抱いているからなのか空に漂う雲は 流れる風は 天に聳える山にとって脅威にもなる水は一度流れを持ってしまえば何者をもってしても止めることはできない時に抗えないように
水は命を蘇らせる力を持つが同時に山を死に至らしめる力を秘めている峰を削り 野山を駆け下り 大地を削り 渓谷へと変貌する深く奥へと 時が覆い隠した地表が現れる時を遡るかのように
「川の宴」
川が在る所に命は宿る獲物求め命を奪う破壊者がいるなら草を求め旅するものたちの大行進がある
命を賭けた戦いが川を彩る沈黙に眠る川も一度戦いが始まれば騒然となる
一瞬のうちに命が散り 火花のように瞬き雷の閃光のように轟く
そこには思想も哲学もない剥き出しの命と真実がある
「湖の謳歌」
湖は海と隔たり生き物たちはその境界を越えることはできないそれは牢獄なのか それとも楽園なのか
湖がもし栄華を極めたとしても湖が干上がれば命は全て消えてしまう
生き残るためには他を上回る戦略によって己の道を切り開くしかない
裏切り 裏切られ 騙し 騙され 命を残すための闘いは熾烈を極める本能と理性の狭間に揺れる闘争
鏡のように澄み切った湖の下には過酷な世界がある
一の美しさをこの目に宿すためには相反する十の醜悪な世界を知らなくてはならない
「川の旅路」
川の旅は続く天空より舞降りる千の雫は木の枝から幹へと遡るように寄り集まり川の流れを描き大地をうねりながら森を横切り平野を走る
大地の鼓動が生命の躍動なら大地の雄叫びは闘いの咆哮である
闘いの先に散っていった者達が川に溺れ 川に沈み川を血の色に濁らせるなら
草茂る水の流れはその汚れを払い水に清流を取り戻す
乾季と雨季に生と死が巡り歓喜と憂き命が交錯する
雨が降ることで大地の様子は一変し世界が変わる
生命の謳歌と眠りが時の巡りに合わせて変化する川は山を削り 破片を海岸まで運んでいく
そして川の旅は終わる
「海の森」
��瑚礁は海を砂漠から森に変え多種多様な命を呼び起こすオアシス光を受け輝き 波に揺らぐ花のよう海に咲く花を愛でようと多くの命が集まり闇の海に咲く光であり 命の灯のよう海の家 大地にとっての安らぎの木
海に昆布が揺らめく場所は熱帯雨林を思わせる海を浮かびながら漂い 命は溢れ 迸り色は犇めきあいながら 絡まり合い 踊りながら波に歌う絵の具を散りばめたかのような宝石のように輝き始める足を踏み入れたものはその場所に住み着き憩いの場所を築き 新たな旅に出る時を隠れながら待つ
「海の宴」
命を育み 支える命の種命を降らせる恵みの雨植物プランクトンの恩恵を受けるために 命たちで溢れ返る
生き物たちが群れを成して訪れる命求めて海を縦横無尽に旅するものたちが春を待ち続けていた
冬に荒れ狂う波は海をかき混ぜて海に栄養を行き渡らせる命にとっては天と地を別つ温度の壁海にはある嵐は壁を破壊し 天と地を混ぜ合わせる命にとっての心臓の鼓動のよう
夏命を求める旅は続く魚は群れを成して移動を続け鳥たちは巣へと帰り 再び飛び立っていく鯨もまた旅を続けている温暖な場所から極地へと向けて旅は続いている―春を求めて太陽の方角へ
秋が来る時 嵐は再び起こる命にとって堪えなければならない長い時の前の休息と謳歌の時間集まってきていた生き物たちは散り散りになりそれぞれの場所で 冬が終わる時を待っている海さえ嵐を呼び込みながら 海をたゆみ無く巡らせながら 春の時を待っている海の流れが無ければ 命は恵みの時を受けられず翼は折れ 大地に落ちる
「富の海」
光が降り注ぎ 大地は珊瑚礁に彩られ魚が銀色に閃いて通り過ぎる揺れる虹のようなたなびく彩雲のような百花繚乱の森色の豊かさが命の豊かさを示すならこの彩りに富んだ景色が命の豊かさを現している
海の楽園は海全体のどれ程だろうか
エメラルドに光り輝きクリスタルのように透き通り波が青の群れとなり光揺れる世界
生き物に犇めき濁った世界砂漠や極寒の世界に隠された地底奥底の知られざる世界があるかもしれない
豊かさだけを見るなら確かにここは楽園であるが楽園の背後に眠る闇を誰も知らない
命踊り 光輝き それは目下に佇む闇の中に歌う星のよう
「海の彼方の闇」
知られざる宇宙のような場所
天文学者ならば星を探して眼を凝らし新たな光を見ようとし
生物学者ならば命を探して彷徨い歩き新たな生き物を見つけるだろう
深海の闇という宇宙に潜む星を探すように生き物たちは身を潜め闇の中で蠢いている
光は徐々に薄くなっていく辺りは夜のように紺に染まっていく気づけば無音の闇の中光の恩恵はここには存在しないあらゆる時間において闇は光の無い洞窟のように
微かな栄養を頼りに彼らは生きるしかない自らの力によって海を渡り海流という大地にとっての風に乗り漂う
海を浮遊する微細なプランクトンが海の世界を支えている鯨や鮫 鯱や海豚といった華やかな生き物はその表面で閃いているに過ぎない舞台に踊るアクターを支える無数の影の努力者たちのような
触れれば壊れそうなガラス細工のように揺らめき揺れる蝋燭の火は今にも消えそうな陽炎のよう今にも壊れそうな幻想的なあり方をしている
「深海の底」
海は深いだけで圧倒的な力を湛えている大気であれば気圧 全ての命の源 水を水として存在させるための力水圧の力には際限がない 科学の力で武装した鎧すら簡単に破壊する
水温は凍えるほどに冷え込み 空気は高山のように薄く やがて皆無になるこの世界は生命の存在を拒んでいるのだろうか
果てしなく深い限界の場所で生き物は蠢いている恩恵は海の表層から降り注ぐ 雨のようで 雪のような死が舞い降りる生きとし生けるもたちの肉片が塵���なって落ちてくる彼らの死によってもたらされるものはこの世界では太陽の光のよう
海底に着く時この世界は月のようだ果てしない無の世界が広がっているしかしこんな所にさえも生き物は生息している
「海底火山」
海底にも火山は存在する海底とは海の底であると同時に大地の果て
大陸と大陸の鬩ぎ合いの狭間に摩擦に散る火花があるように火山が煌々と火を上げている
マグマは地脈のように奔り 地球の中心まで潜り巡り 再び地上へと吹き出す
世界とは外に開かれているのではなく内側に広大に巡っている
マグマが海底の生き物を支えている砂漠にとってのオアシスのように
海底に山脈を築き 延々と続くかのようにいつか大地が隆起し 沈没した時海底に眠る大地は海上に眼を覚ますだろうか
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elle-p · 4 months
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Famitsu 1820 Persona 3 Reload part scan and transcription.
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続報
リマスターではなく、全ビジュアルを一から描き起こしている本作。3Dモデルも頭身が上がりより魅力的に。
人々との��が“影”を切り裂く力となる
岳羽ゆかり
声:豊口めぐみ
専用ペルソナ
イオ
↑←弓を武器とするゆかり。テウルギア“サイクロンアロー”は、敵1体に相性を無視して疾風属性の特大ダメージを与える効果を持つ。
月光館学園高等部2年生で、主人公のクラスメイト。専用ペルソナの“イオ”は、ギリシャ神話で女神ヘラに仕え、主神ゼウスの寵愛を受けたという巫女がモデル。
リマスターではなくフルリメイク作品として18年ぶりに帰ってきた、JRPGの傑作『ペルソナ3』。グラフィックを一新し、システムや操作系に多くの新要素を加えるなど、現在のP-STUDIOの手で生まれ変わっている。今回は、新戦闘服や日常生活について紹介しよう。
現行機種で蘇る少年少女たちの死闘
特別課外活動部(S.E.E.S.)が新戦闘服に身を包んでタルタロスヘ
本作では、特別課外活動部のメンバーがタルタロスに挑む際の戦闘服が新たなものに。オリジナル版をやり込んだ人も、新鮮な気分でバトルに臨めるはずだ。今回は、すでに公開中の主人公に続いて、ゆかり、順平の新戦闘服アートが披露された。合わせて、新要素で戦闘中に条件を満たすと発動できる超強力なスキル“テウルギア”のスキル内容も紹介しよう。
主人公
声:石田 彰
伊織順平
声:鳥海浩輔
↑火炎、斬撃属性を得意とし、両手剣での豪快な攻撃が持ち味の順平。テウルギア“バーストスイング”も、敵1体へ相性を無視した斬撃属性の特大ダメージを与えるという、彼らしいスキルだ。
専用ペルソナ
ヘルメス
主人公とゆかりのクラスメイト。専用ペルソナ“へルメス”は、ギリシャ神話でゼウスの使いとして従事する伝令の神で、旅人や商人から崇められていた。
共用の設備を使って仲間たちとともに過ごす寮生活
主人公たちが暮らす学生寮では、寮内にある共用の設備を使って、仲間といっしょの時間を過ごすこともできる。ときに仲間の意外な一面も垣間見られる共同生活では、主人公の人間性が磨かれるだけではなく、仲間たちがバトルで役立つパッシブスキル“特性”を獲得することも。
コロマルとの散歩
テスト勉強
屋上菜園
読書
料理
DVD鑑賞
共用パソコン
寮のラウンジには寮生共用のパソコンが置いてある。プレイ中に手に入る、サイトのURLが書かれたメモを使うなどしてこれを利用すると、ソフトを使った学習や、情報収集を行うことができる。それらを通じて、主人公の人間性を表し、さまざまな行動に影響する“人間パラメータ”を上げられるほか、戦闘や探索に役立つ技能を習得できることもある。
ネット環境完備の巌戸台分寮
特性の習得
学生寮で、共用の設備を使って主人公とともに寮生活イベントを過ごした仲間たちは、“特性”と呼ばれる特別なスキルを習得することがある。特性は、任意で発動させるものではなく、つねに効果が発生している、いわゆる“パッシブスキル”と呼ばれるもの。その内容は、“クリティカル攻撃の発生率アップ”、“回復スキルの発動に必要なコストが減る”など、戦闘に役立つものばかり。時間があれば積極的に仲間と過ごそう。
放課後に学園内外で
学園で出会う“コミュ”のメンバー
→月光館学園の生徒たちは、部活動や下校時の寄り道��ど、おもに放課後の時間帯に交流しやすい。
“コミュニティ”、略して“コミュ”とは、主人公が多くの人々と出会い、交流していく中で生まれる辞のこと。交流を重ねてコミュのランクを上げ、特別なイベントを発生させると、主人公のペルソナ能力の強化にもつながるため、非常に重要な要素だ。本作ではコミュ対象キャラクターのイラストが新規に描き下ろされ、イベントも新キャストによるフルボイスで展開する。今回はコミュ対象の月光館学園の生徒たちを紹介しよう。
気のいい男子生徒。クラスメイトとなった主人公に、なかば強引に友だち宣言をした。年上好きで、主人公に恋愛相談を持ち掛ける。
友近健二
クラスメイト
声:羽多野 渉
3年生。港区中の飲食店を渡り歩き、あらゆるメニューを食べ尽くした。トラブルから助けてくれた主人公を、自身のSPに任命する。
末光望美
グルメキング
声:落合福嗣
主人公のクラスメイトで、陸上部の部活仲間。 努力と気合と根性で結果を残してきたエースだが、主人公をライバルと認めている。
宮本一志
運動部
声:宮下英治
2年生。陸上部のマネージャーで、宮本とは幼なじみ。面倒見がよく、入部したての主人公のことも気に掛けてくれている。
西脇結子
女子マネージャー
声:加藤英美里
生徒会の副会長。厳格な性格で一般生徒からの受けはおおむねよくない。美鶴の推薦で生徒会に加入した主人公に一目置いている。
小田桐秀利
平賀慶介
声:松風雅也
1年生で、生徒会の会計を務める。押しに弱く厄介ごとを押しつけられがち。男性に苦手意識があり何とか克服したいと思っている。
伏見千尋
生徒会会計
声:遠藤 綾
美術部部長の3年生。医者の息子だが、医学部進学か芸術方面での留学か迷っている。部活動見学から主人公と交流することになる。
平賀慶介
文化部
声:井口祐一
フランスからの留学生で、着物と時代劇と日本庭園をこよなく愛する大の親日家。“ふぁっしょん同好会”に主人公を勧誘する。
ベベ
同好会の留学生
声:市来光弘
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memory-of-hiroshima · 2 years
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77回目の8月6日が来ました。 あの日、そしてその後の“ヒロシマ”を知ってもらうことが、核兵器廃絶への道につながることを信じたいのです。 2年前に書いた文章ですが、読んでいただければ嬉しいです。
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胎内被爆者の綴り方
<はじめに>  長い間、私は不特定多数の人に被爆体験を語ることにとまどいを覚えておりました。胎内被曝のため、実際に被爆の被害・惨状を見たわけでもなく、肉親を失ったわけでもなく、私自身もこの年齢まで生きてこれた幸運もあり、大きな嘆きの人々に比べれば語る資格がないと思っていました。  しかし、ここ数年、特に日本政府は広島・長崎の被害の事実をなかったものかのように動き始め、核兵器禁止条約に対しても、日本の代表とは思えぬ動きで、私は不安でたまりません。  今まで、生協の平和行進や集会、そして募金に参加したことがあるくらいで、平和や反核に対する運動をほとんどしていません。平和公園での座り込み運動にも、心をよせてはいても、ただの傍観者でした。私が育った戦後、ついこの間までは多くの活動をする人がいて、私も黙っていてもよかったのです。ただ被爆者の会も高齢化で消滅解散する中で、何かしなければならないのではと思い始めていました。  そんな時、オーラルヒストリーを研究しておられる元TBSアナウンサーの久保田智子さんの講演を聞く機会がありました。私が記憶を語るとしたら客観的事実ではないかもという懸念をもっていたのですが、久保田さんは「その人が感じ考え思ったことをいっしょに述べること、主観的事実でいい」と言われました。「複雑でいい、矛盾していい、個人的なものを社会的なものに関連づけて解釈するのだ」と。これは私を勇気づけました。  また、ピラミッドの一番上に直接被爆者がいて、その下にいろいろな人が階層的に存在し、それぞれに思うこと感じ考えることがある、それも大切だと。「ああ私の位置はヒエラルキーの二番目だ、それでも語っていいのだ」と強く励まされました。  それから1ヵ月後、ニューヨークの2020年NPT(核兵器不拡散条約)会議に広島生協の代表として行くことになった友人が、胎内被爆者の会が証言集を出す予定であることを教えてくれました。思い迷った末に、証言集に応募するしないにかかわらず、記憶がうすれる前に一度整理してみようかなとの思いに至りました。
<8月6日>  1946年1月24日生まれの私は、1945年8月6日原爆の炸裂したあの日、母の胎内にいました。予定より早く生まれたと聞いていますから、妊娠4ヵ月位ではなかったでしょうか。悪阻が激しく空襲警報がなっても「このまま死んでもいいから」と逃げるのが億劫だと言っていた母は、朝の洗たくものを干すため両手をあげた時、原爆の光を浴びたといいます。あっと思った時は、胸と腕に火傷をしたようですが、幸いにも「天ぷら油をぬったらいい」と教えてもらい、ケロイドにならずにすみました。借家だった家の前はごぼう畑が広がり、己斐駅がすぐ目の前に見渡せました。光線をさえぎるものは何もありません。爆心地から2.5kmとS42年(1967年)2月18日取得の被爆者手帳にはしるされています。  その時父は観音町の三菱重工の工場、爆心地から4kmの所で被爆。父がどのルートでどのように己斐まで帰ってきたのか全く知りません。9月に4才になる姉は、家の中の布団で寝ており、布団ごと部屋の端から端まで飛ばされていました。壁が少し崩れたくらいで、家は倒れずにすみ、姉も無事でした。  これらの話を父や母から直接聞いたという記憶はなく、どこでどのように知ったのでしょう。母が黒い雨にうたれ、髪の毛が抜け寝こんだこともどうして知ったのでしょう。それには一つの類推があります。
<近所の人々との思い出>  私が小学校低学年の頃住んでいた家はやはり己斐ですが、被爆した時とは違う近くの家です。家の前にも横にも40cm位の側溝に水が流れ、夏には青い露草の花が咲き蛍もとんでいました。暑い暑い8月6日の前後には、近所の人々が涼を求めて集まり、石垣に座って思い思いに語ります。クーラーも無い時代、手にはうちわがあります。冷蔵庫も氷で冷やす木の冷蔵庫です。家には西瓜が待っており、私たち子供は浴衣を着て、大人のまわりをうろちょろしています。そんな時大人の話が聞こえるともなく聞こえるのです。 「ようけえ逃げてきたのお」「おう、水あげりゃあえかったのう、どうせ死ぬんじゃったらのお」「Tさんの家は壊れたらしいのぉ」「下敷きになって男ん子が死んだんよ」「Nさんの奥さんは今年も日傘さして行きよっちゃったよ」「式典なんじゃろう。姉妹や親はえっとこ亡くなったって」  話が聞こえてくるうちにだんだん恐くなります。帰ってトイレに行くのも、夜寝るのも恐くなります。こんな会話の中で私の母の話も語られ、私が覚えたのだという気がします。  Nさんとは、私を実の娘と同じようにかわいがって、お風呂に入れて身体をごしごし洗ってくれたり、焼きリンゴを作ってごちそうしてくれたおばちゃんです。あの優しいおばちゃんが大きな悲しみを抱えておられたのに深く気づくのはずっと後です。このおばちゃんは小学生の女の子2人を残して腎臓病で、身体をパンパンにむくませて亡くなられました。きっと被爆の影響だったと今なら思いますが、当時小学生だった私は、おばちゃんの変わり様に恐ろしかっただけです。  あの夏の日々は、あらためて語り部と言わなくても、みんな思い思いに自然に語って、私たちに伝承されていたのだなあと改めて思います。
<己斐小学校でのこと>  伝承というと小学校の担任を1年から6年まで受け持ってもらったY先生のことが思われます。8月6日宝町の自宅から己斐小学校へ通勤した日のできごと。爆心地近くから相生橋、本川を通ってひたすら己斐へ歩く途中に見た被災の光景。川の中に浮かぶたくさんの人々、横たわる死者たち。その話を聞いた記憶がしっかり残っています。教壇に立って語る先生の息づかい。並ぶ生徒たちの机。写真のようにまぶたに残っています。先生はその日どのように自宅へ帰られたのでしょうか。全く知りません。Y先生はその後私たちが4年か5年生の頃、だから戦後10年くらいでしょうか、肝臓を悪くされ長く入院されたことがありました。きっとこれも原爆と関係があるに違いないと今は思います。  私の小学校は己斐小学校ですが、己斐はたくさんの被災者が流れ込んできて、小学校の校庭ではたくさん人を焼いたと言います。春秋に運動会があったのですが、グランド整理で土をならすと骨が出るというのをよく聞きました。私は直接拾ったことはないのですが恐くてたまりませんでした。それに春は校庭の桜が葉桜になる頃の運動会でしたから、毛虫がぞろぞろはい回ります。私は大の虫嫌い。二重に恐くて――。今と違って素足でかけっこですものね。
<ABCCの記憶>  私が唯一当事者として語れるのはABCC(現・放射線影響研究所)のことかもしれません。小学校低学年の時だったと思います。母と、あるいは近所の友と、そして級友と何回かABCCが近所まで迎えに来て出かけました。学校まで迎えに来たこともあります。黒塗りの大きなハイヤーが来るのですが、私はすぐ酔うので苦手です。行くと、全てがすんだあとクッキーやサンドイッチ、紅茶などをご馳走してくれるのです。異文化への興味や憧れのようなものがありました。けれども何しろアンパンやジャムパン育ちで偏食も多かった私は、なれないものを何とか口にし、帰りの車でまた気分が悪くなるのでした。  さて、ABCCの記憶で長く私が語れなかったことが一つ。検査に行くとズロース(パンツ)の上に白いスモックのようなものを1枚かぶるのですが、それを着てある部屋に一人連れて行かれます。大きな机、私には3m×4mぐらいにも思われましたが、その端に足をぶらんと下ろして、入口のドアに向かって不安そうに座っている自画像が脳裏に残って消えません。そして、立つように促されたのでしょうか。服を脱いでズロース1枚でテーブルに立ったと思うまもなく、大きな180cm位の白人男性がこれまた大きなカメラを抱えて10人近くどたどたと入って、テーブルの回りから、四方八方カメラのフラッシュをたきました。驚きと恥ずかしさと何があったかわからないのとで呆然としていたのでした。一番大きかったのはたぶん恥。何かいけないことのように思ったのでしょう。この話は帰りの母にも友にも誰にも話しませんでした。話せば自分一人の体験ではなかったことがわかったかもしれません。後に語れるようになり、友人夫妻にこの体験を話した時��つらい話をさせてしまった���と言われ、ああそうだったのかと納得したものです。映画のワンシーンのようなこの記憶は今後も決して消えることはないと思います。
<病気に思うこと>  私が生まれたのは、母の母・未亡人だった祖母のいた広島県北部の旧・山縣郡千代田町壬生です。大雪で2階の窓から出入りするような日だったということです。戦後の広島を避けてお産をしたのでしょう。私は乳を飲んでもすぐ吐き、胃の入口の調子が悪くて薬を飲んで治したといいますが、詳しいことはわかりません。その後10カ月位の時には百日咳の激しいのにかかり骨と皮になりました。母は父の実家の香川県高松市鬼無町にひきあげました。そこで祖父から「こんな子を連れて帰って」と非難されたことを相当うらめしく思ったようで、時々同じ話をしてくれました。父の家の事情もあり、結局両親と私たちはまた己斐に戻りました。  そこで成長して22才の大学卒業まで暮らすのですが、父も母も被爆者でしたが、特に母の身体が弱かった気がします。家事だけの人でしたが、一日中かかって掃除・洗たく・食事の支度をし、少し動くと休みながらという具合です。おまけに度の過ぎた清潔好きで、洗たくもハンカチを洗って次は上のもの、下着はその次、そのあとパンツ…といったくらいに丁寧でした。今思えば、それもこれも細菌におびえていた事情もあったかもしれません。私は母の身体の弱いのは偏食のせいと思っていましたが、ひょっとすると被爆の影響があったかもしれません。父は61才、母は57才で亡くなりました。二人とも脳内出血ですが、母は一度肺ガンということで、広島市のM病院で放射線治療を受けたこともあります。  私はよく熱を出し、決して強いとは言えず、身体も細く背も前から��・二・三を争うくらいのチビでした。それでも高校時代は皆勤賞をもらいました(授業中寝てばかりの子でしたが)。  それが結婚して1ヵ月ちょっとだったでしょうか。盲腸になり、夫も手術をしたこともあり夫の家族の中では名医と呼ばれていたN外科で手術をしました。なぜか2、3日眼が覚めず熱も出て、私が被爆者手帳で受診したからでしょうか、先生は慎重になられ結局1ヵ月入院しました。  また、二人目の子のお産の時、妊娠5ヵ月くらいから妊娠中毒症になりとうとう7ヵ月ころ入院。そして子供が9ヵ月に入った時母体がもたないということで早く生みました。お産がすめば蛋白尿がよくなるということでしたが、数値は4本プラスが2本プラスになっただけで入院がその後も続きました。家族を心配して泣き、食事もとれなくなり、そんな私を心配した先生が退院させてくれました。1年位かけて漢方薬をせんじて飲みながら治ることができました。この2回のトラブルで、人がスムーズにできることが上手にできないのは被爆と関係があるのかなあと思ったりしました。これが被爆者共通の心理かもしれません。
<家族の中で>  私が被爆者であるということを夫に初めて言ったのがいつかは覚えていません。当時は手帳取得が結婚にさわるという風評もあり、姉などは「いらない」とすぐにはとらなかったような気がします。私はそんな思いもなく所持していたのですが、夫が戦争の責任とか社会のものの見方などで、私よりはるかに反戦の意識が強かったので何も心配ありませんでした。広島・長崎の式典中継でも私より深く正座してみるような人で、これは幸いでした。  家庭の中で被爆体験を話せたこと。それを淡々と聞いてくれる家族がいたことはうれしいことです。  初孫が5才のころでしょうか。我が家には「原爆の図」「ひろしまのピカ」「ピカドン」(いずれも丸木位里・俊作)や原爆ドームの本など夫が集めた本がたくさんあります。それらを持って帰るほど興味をもち、「原爆ドームに行きたい」と親にねだるほどの孫娘。ホロコースト記念館にも何回か行き、私たち夫婦にもアンネの部屋を丁寧に教えてくれ、「ああこの子は平和の担い手に」と期待をこめて見守っていました。なにしろ8月15日生まれですから。そしてその孫に、佐々木禎子さんについてまとめたダイジェスト版の本を夫は作りました。それを読んだ孫は「禎子さんちは散髪屋さんだったんだね」と。夫はその一言に苦笑していました。2、3年もすると興味を失った孫娘が、いつの日かまた興味と関心を持ってくれれば幸いです。  孫娘が小学校1年生くらいの夏に遊びに来て、寝物語に被爆体験の話をしたところ「おばあちゃん(生きてて)よかったね」と言われ、私ははっとしたのを覚えています。「生きてて申しわけない」という被爆者のことばがよく言われます。私に明確にあるのではありませんが、いくらか私にも長生きへの申しわけなさみたいなものがあります。でも「よかったね」というのはありがたくかみしめたいと今では思っています。
<最後に>  たまたま2020年3月15日付の中国新聞に、「被爆オリンピアン肉声現存・広島市出身36年出場故高田静雄氏」という見出しを見ました。その人は小学校時代の級友の父親です。また、米兵たちの被爆をほりおこし追悼してオバマ大統領にハグされた森重昭さんも級友のお兄さんです。佐々木禎子さんが白血病で亡くなられたころ入院した級友もいます。でも、私たちは戦後60年、還暦を迎えた同窓会でほんの少し被爆のことを話したことがあるくらいで、級友でも詳しいことはほとんど知りません。日々衰えていく記憶と、語りあう機会も減っていく中で、今回書き残してみたのはよかったように思います。記憶とは不思議なもので、自分流にゆがめているかもしれません。この主観的な記録がどのように伝えられていくのか少し楽しみです。長生きすれば「最後の被爆者」となる可能性もある人間の記録ですから。そのためにも両親からもっともっと話を聞いておきたかったです。
<さらに>  この原稿のパソコン入力を娘がひきうけてくれました。彼女は幼い頃、原爆資料館のろう人形母子を見ておびえましたが、私と平和行進に参加したことや、大会で「青い空は青いままで子どもらに伝えたい。燃える八月の朝…」と歌ったことは覚えています。8月6日の式典で峠三吉の詩を子供代表が語ったのに感動して、東京から電話をかけてきたこともあります。彼女には彼女のヒロシマとの歴史が作られているのですね。いろいろな形でヒロシマが伝承され続け、子や孫・その先まで、この愚かなことがくり返されぬように祈ります。私の胸を今でもゆさぶる歌「原爆許すまじ」を心に銘じて。
(2020年4月記/上村洋子)
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tokoromantic · 1 year
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所 人生史ep.0 帰省記録
めちゃくちゃ久々にtumblerをあけました。
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
ということで今ココ↓
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ダブルベッド・2人用の部屋着……
コレって…… えっ……まさか………
みたいな環境で本当に1人で目の前のダブルベッドをつまみに飲んでる。や〜贅沢。
第一章 東京・第二章 名古屋・第三章 大阪…とだんだん西に流れている所には、第0章 熊本産声編がありまして。
もう本当に中学生ぶりの生まれ故郷で、まあうっすい記憶しかないけど、なんとなく良い旅になったので温度感高いうちに記録しようかと。
___________________________
福岡にも寄ろう〜♪ そうだな〜、12時の新幹線乗ろう♪ →12時起床
起きれるわけがない時間設定を音符マークつけて決めないこと。
5分で出ると神に誓う。メイクなど貴族の戯れ、着替えもパンツとブラだけでいっか!
とこだわるべき所を全放棄したのに、最後に前髪気になって切り出す女、所渚紗(24)
お得意の時間計算・予定全てぶち壊し行動、17時にしか着けなくて何ができるのであろうか酒を飲むことしかできないだろうがもっとフラフラ観光したかった… と自分の中の学級委員会の会長が嘆き散らかし…
初心者さんはここで新幹線内でふて寝してしまいますが、ここでポイントです。絶対に新幹線内で飲酒しましょう。
必ずその時は来ます。
そんなこんなで福岡に着いて一通りクソデカ駅で迷ったあと、福岡の大好きバンドnape'sの晴久くんと西岡くんが迎えに来てくれて早速my town状態に。なんと1年?ぶり?らしい。
さっそく一双のラーメン(バカウマ)を食べた後に飲酒しに行った。
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福岡のかっこいい音鳴らす友たちとの再会&初めましてにエキサイトした夜、みんな対ありでした。次は急にライブ観にいきゃす。
解散後、まあまあ酔ったけど泊まる格安ゲストハウスにそういえばbarスペースみたいな所あったな〜と思って酒購入、福岡に「ウチまだやれます!」の姿勢を提示しに殴り込むtokoromantic。
寝坊から始まってる福岡、このままじゃ終われない___。
端に座ってた男性がどうやら韓国人だったのでK-POPに命かけてた時に習得したやんわり韓国語で話しかけると、ゴリゴリの日本語で会話してくれて、一緒に飲んでくれることになった。
イェーイと思ってたらそこに洒落ストリート男性とメガネ大学生くんが集い、みんなで各々の生活や仕事、学業や旅の話をした。ストリート男性さんは東京の立川の人らしく、IKEAの横にあるスケートパークとかの話をした。福岡に来てニア地元立川の話で盛り上がれるとは…
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誰?すぎる相手との""ホンモノの笑顔"" の写真が撮れた。
これがもう朝の6時とかでマジでみんな朝までごめん、と思いを馳せつつあまり反省はせず自分も満身創痍2時間睡眠で熊本へ。
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着いた瞬間あまりにも怖すぎる生き埋めくまモンがご挨拶。メッセージ性強すぎる。
中学生ぶりの生まれ故郷、当時くまモンは我々クソガキにとって "死ぬほど可愛くない目が怖すぎる突然出現した熊" だったが、この町ではもう彼は大スターということを痛感した。
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「ま」と「も」の繋げ方無理がありすぎるし字が汚い。こむらさきの味はあまり覚えてなかったけど好きだったし、きっと変わらず、美味しかった。にんにくチップ懐かしかった〜。
熊本について覚えてる景色と覚えていない景色、全く新しい景色、色々あった。
震災があって、くまじいとくまばあ(所家ではくまもとのじいちゃんとばあちゃんのことをこう呼んでいる)のお家は大ダメージを受けた。←という報告を受けた。
直接は見てないが、写真はとっても胸が痛かったことを覚えていて…
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ガーン。奥に車の車庫があって、右にお家があったのに!それ以外の、昔ボール遊びしてボールを侵入させまくっていたご近所のお家は残っているのに!
くまじいとくまばあの家だけがポッカリ無くて、どうしようもない気持ちになった。
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熊本城は、一部がまだ修復されてなかったり、中の展示が音声や図ばっかりになっていたりで、垣間見えるダメージって感じだったけど想像より数倍きれいだった。
そして上通り下通り。相変わらずチンチン電車は走っていて、久々に乗れてエキサイトした。
上通り下通りでよく買い物やらしてた記憶があり、いろいろ歩いていたら気になりライブハウスNAVAROが近いことが分かり、そちらの方へ向かった。
そうすると上通りの裏の道がとっても面白くて、なんていうんだろう、原宿に対する裏原みたいな。そもそも上通り≠原宿だけど。
そこで見つけた良いお店↓
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ここの店主さんがめちゃくちゃ音楽ヲタクぽくて話が早く、いろいろ教えてくれた。他の古着屋さんもよかった。なんとなく、カルチャーはここら辺にぎゅっとしてる気がしたけど、こうなってきたのは結構最近らしい。おもろ〜だった。
そして今回のメイン、この食卓。
家がボロボロになって壊して、新しいこのアパートの全然知らない部屋だったけど、知っているあったかさの食卓でよかった。
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くまじいもくまばあもだいぶ小さくなっていたし、私はデカくなり、声がガラガラになった。なんてったっていつぶりの再会、孫の声がコレになっていたときの気持ちとは。
でも、くまじいは相変わらず自分のイケメンだった頃の写真を持ち歩いてるし、くまばあの唐揚げは世界で1番美味しかった。
ママとパパの馴れ初めの話になり、けんじが「娘さんと結婚を前提にお付き合いさせてください!」とベロベロでくまじいに言ったというので、大ファザコンの私はもうお気持ちの大号泣が止まらず
結婚を前提に…… 来世で………絶対に…と成仏してしまった。
めちゃくちゃな子で、めちゃくちゃするだけでなんにも恩返しできてなくて、って思っていたけど、会いに来てくれてありがとうと大感謝されてしまい、もう少しだけがんばってまた強くなって現れることを誓った。
変わらないこと、変わったこと、この歳になって見えたこと、色々あって大変満足だった。また時々来たい。未だにオギャァ〜言うて生きてるから熊本側もびっくりだったと思うけど、次来る時はもう少し大人になれてると尚良し。
いかがだったでしょうか。
皆さんもぜひ、"産声の大地に突然帰る" プレイしてみてください。
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セピア野球部みたいになってしまうパジャマを添えて。
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oka-akina · 2 years
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0929
 いつも左手首にヘアゴムをつけていて、イラッとしたり不安感が強くなったり何かストレスを感じているなあと思ったら、ゴムを右手に付け替える。気持ちが落ち着いたら左に戻す。ストレスを感じるたびに繰り返す。インターベンションブレスレットといって、やるのはそれだけなんだけど、いま自分の状態はこっちだなとか、もう平気そうだなとか、ちょっとだけ客観的になれるみたい。自分の起伏を意識するというか、ストレスの可視化というか、何で読んだんだったかな……。付け替えるときにパチンと音がするのもよくて、多���気持ちの切り替えになっている。でも、職場でムッとしたときなんかはかなり強めのパチンでやってしまうので、周りの人に気づかれるんじゃないかとか、そんなわけないのにちょっとドキドキしている。というか、べつに苛立ちを気づかれたって(表明したって)ぜんぜんいいわけなのに。そうして、これといった理由もなく漠然と不安なこともあって、ゴムを右に付け替えたあとでもっとどんどん落ち込んじゃったら、そのときは右のゴムをどこにどうすればいいんだろう……。たぶんそのくらい調子が悪いときは、ゴムのことなんか忘れてるんだけど。
 歯を磨いたとたんお腹が減ってきて、あ〜っと思ったんだけど結局杏仁豆腐を食べてしまった。夕方、なんかいろいろ気分が行き詰まっていたので、コンビニで弁当とか揚げ物とか甘いものとか飲み物とかいろいろ買った。スーパーとかドンキの方が安いんだけど、広い店に行く気力がなかった。コンビニはたくさん歩かなくていいので楽。そして、自分は何を食べたいんだかわからなくて棚の前でうじうじ悩んでしまい、やっぱり疲れがたまっているんだなあと思った。なかなか買うものが決められなかったり、余計なものを買ってしまったり、買い物がへたくそなときはエネルギーが枯渇しているとき。そんなら買い物なんかしなきゃよかったんだけど(家に食料品の買い置きはある)、だからまあそういう判断力にも欠けるんだろう。
 どこで咲いているのか見つけられないけど辺りはキンモクセイの香りでいっぱいだった。毎年そう。近所でキンモクセイを一度も見かけないのにちゃんとにおいはやってくる。  小学生のとき、生垣がキンモクセイの家が通学路にあって、けっこう大きい家だった。この季節になると細かいオレンジ色の花が道路にたくさん散らばって、それを踏んだり蹴飛ばしたり拾って集めたり、たぶん一生分触ったから、いまキンモクセイを見ることがないのもしょうがない……というのは変な言い方だけど、いっぱい触ったからどんなふうだか想像がつく。通学路のあの家はもこもこした濃い緑の生垣が目隠しになっていて、家や庭がどんなだかは見えなかった。  窓を開けていると強い香りが部屋の中にも流れ込んでくる。においは夜���くに薄くなり、明け方またどっと押し寄せてきて、朝になると花が咲くんだろうか。というか、うちのマンションは川沿いで、夜は川のにおいが濃くなるから花は負けてしまうのかもしれない。そしてきのう(おととい)は、夕飯に食べたしらすのお皿を洗わないまま寝てしまって、起きたら部屋が魚のにおいになっていた。
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illaalli444 · 2 years
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『犬王』舞台巡り【山陽道編】
友魚の旅路/平家都落ちルートも巡りたいよね、という記録です。関西在住・北部九州出身なのでこの経路なんてもう数え切れんほど往復しているが視点を変えるだけでこんなにも新鮮な旅ができるってすごいなあと思う。
行った場所:腕塚(腕塚堂・腕塚神社)/草戸千軒町遺跡/厳島神社/花岡八幡宮/壇ノ浦古戦場・赤間神宮ほか
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腕塚(兵庫県神戸市・明石市)
腕を埋めて腕塚。一の谷の戦いに破れ西へと落ちゆく途中で非業の死をとげた平忠度の腕を埋めたと伝えられる"腕塚"は神戸市長田区駒ヶ林と明石市天文町の2箇所にある。え どゆことじゃ?と思ったけど知りたいこと全部書いてある論文ありました(大坪舞2008「祭祀される忠度の腕ー伝承を引き寄せる場をめぐってー」『論究日本文学』88)。こちらを参考にすると、そもそも忠度死地は『平家物語』でも史実でも絞り込めない。両地の忠度伝承は、駒ヶ林は17世紀後半(腕塚そのものは19世紀)、明石は17世紀初頭(腕塚は17世紀後半)までは遡れそう、とのこと。
駒ヶ林の腕塚は一の谷からちょっと東に位置。地下鉄海岸線駒ヶ林駅が最寄り。長田港に面する民家に囲まれて"腕塚堂"がある。細い路地に入っていくけど看板や標石があるので迷いはしないと思う。ガレージみたいなお堂。北西に忠度胴塚もある(こっちは看板少なくてわかりにくかった。伍魚福さんの隣)。
明石の腕塚は一の谷から西へ10kmほど離れる。山陽電鉄人丸前駅下りてすぐの"腕塚神社"。神社といってもお堂はごく小さい。木製の腕は地元の彫刻家の方が奉納されたもので、これで患部を撫でるとよくなるとか(境内においてあった「腕塚神社縁起」より)。東南に忠度塚と忠度公園もある。駅をはさんで北の丘陵にある人丸神社は柿本人麻呂を祀るが、境内に"盲杖桜"があり目の見えない人とのゆかりが深い。このへんからは明石海峡と行き交う船たちがよく見えます。
当たり前ですが京都とは全然景色が違っている。南が海、北が山。海を眺めていると友魚としてはこのへんまでは始めて来た場所であっても(見えなくても)"知ってる景色"なんだろうし逆に平家の人びとにとっては都を落ちて流浪の身になってしまったことを思い知らされる景色なんだろうなと思う。
どちらの腕塚も、いまも地元の人に愛されているのが伝わってくるたたずまい。腕塚が複数箇所にあるの、後世の人たちが"物語"を求めた結果だと思うのでそんな人間の営みが愛おしくなります。
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草戸千軒町遺跡(広島県福山市)
直接の舞台ではないのですが、湯浅監督がふくやま草戸千軒ミュージアム(広島県立博物館)の街並み復元模型に言及されていたので。博物館では中世の人々の生活に関連する出土品を沢山見られる。本編で町の人たちが持ってて印象的な曲物の容器もいっぱい並んでる。
草戸千軒町遺跡は当時の海岸線で芦田川の河口付近にあった中世の港町。友魚と谷一さんも寄ったかな?と思っていたのですが、拠点的な大都市というわけではないようなのと、どうやら14世紀後半は一時的に町が衰退していたようなので寄ってないかもしれません。友魚が魚をほぐしているシーンはまだ広島らしいので(オーコメより。広島を2年もまったり旅していたのはちょっと謎)、このあたりかなと思っていたのですが、お金持ちがの人がいるのは尾道とか鞆とかかな���
遺跡現地は博物館から西南約2kmに位置。調査後に掘削されあとかたもありませんが、法音寺橋に説明板が設置されている。橋を渡って芦田川の右岸には草戸稲荷神社と明王院(常福寺)がある。明王院は本堂が1321年、五重塔が1348年に建てられたものなので、友魚たちが見たかもしれない建物がそのまま残っていることになる。明王院入り口付近の石垣にはひょうたん形の石が組み込まれている箇所があり(現地に説明板あり)、犬王ポイント高いように思います。
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厳島神社(広島県廿日市市)
あれに見えるは厳島(ここでお社は映さないの超好き)。斎き島=神様をお祀りする島 として古くから信仰されてきた。1151年に安芸守となった平清盛は厳島神主家の佐伯氏と関係を深め、12世紀後半に海上の社を造営。その後何度か建て替えられているが、主要な建物の配置は基本的には変わっていないらしい。特に印象的な回廊は、現在のものは永禄~慶長年間(1558~1615)の再建。作中の回廊は、1241年に再建され、1537年に焼けたものにあたる。
干潮のタイミングで訪問したので、社殿が建ってるベースとの距離感がわかってよかった。友魚が落ちちゃっても自力で這い上がれそうな深さで安心(海の子なので心配には及ばないんだろうけど)。社殿が海に浮かんでいる姿が見られなかったのがかなり残念だけど、昼に干潮だと夜に満潮になる、という関係が理解できた。
大鳥居は改修中だったので足場が組んであり近くまで行けず。でも社殿の柱にもフジツボいっぱい付いてるのが確認できました。大鳥居も何回か建て替えられていて、現在のものは明治期の再建。1325年に2代目が倒壊してから1371年に3代目が建てられるまで空白期間があるので、友魚訪問時(1360年代後半くらい?)、実際には建ってなかったぽい。
しゃもじって琵琶みたいな形だな~と思いながらお土産見てたのですが、弁財天の琵琶っぽい工芸品としてつくられるようになったんですね。知らなかった。
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花岡八幡宮(山口県下松市)
境内に友魚が雨宿りしてた塔(閼伽井坊多宝塔)がある。多宝塔の建てられた時期、立て看板では「室町中期」となっているのですが、ガイドブックやウェブ上で「室町末期」説も見るのでど~いうこっちゃと思っていたのですが、建築様式からみて室町中~後期、解体修理で見つかった木片に永禄3年(1560)の墨書あり、ということのようです(下松市HPより)。また、お宮そのものも創建当初の鎮座地から1489年頃に現在地に動いているらしい。作中で描かれているのは実際よりも少し下った時期の姿になるのかなと思います。
多宝塔の実物は思っていたより小さい印象を受ける。というか、ここに友魚があの感じで座っているのを想像すると、まだだいぶこどもだな...?!と感じました。
旧山陽道に面した丘陵上に位置し、高いところにあるのでめちゃくちゃ石段を登る。現代人にとっては雨宿りにちょっと寄るレベルを越えてるので、参道入り口あたりでお寺の人が友魚に声をかけたのかもとか想像します。
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壇ノ浦古戦場・赤間神宮ほか(山口県下関市)
鴨の河原と同様、壇ノ浦も始まりの場所であり終わりの場所。
壇ノ浦古戦場跡は関門大橋の下関側のふもとに「みもすそ川公園」として整備されている。ちょうどこのあたりに友魚の暮らしていた集落があったのかなと想像できる景色。作中では霧に包まれて対岸は描かれていないけど、九州側の門司がかなり近くに見える。この土地も"境界"ですね。
赤間神宮は壇ノ浦古戦場跡から南西1kmに位置。壇ノ浦の戦いで入水した安徳天皇を祀る。江戸時代までは阿弥陀寺で、明治の神仏分離により天皇社赤間宮へ。1940年に赤間神宮に改称。1958年につくられた水天門は「波の下にも都がございます」の竜宮城を地上に造りだす意図でデザインされている。
耳なし芳一の舞台でもあり、境内の片隅に芳一堂あり。宝物館ではいろんな種類の琵琶も見られる。境内に平家蟹の標本も置いてる。
生きてる平家蟹は市立しものせき水族館海響館で見られる。海響館ができるまえの旧下関市立水族館は長府にあったのだけど、敷地内に"鯨館"という鯨形の建物があった。現在は中には入れないけど外観は見られます。小さい頃訪れたことがあって、でっかい鯨!のイメージだったけど今回再訪したら思っていたより小さいな...となりました。場所は関見台公園。下関は近代捕鯨発祥の地とされ、鯨とゆかりが深い。たまたまかもしれませんがモチーフの重なりが面白いです。
旅してこの文章を書くことで、山陽道、というか瀬戸内の海辺が友魚の旅路であり作中作(腕塚、鯨、竜中将)の舞台でもあるという重なりをはっきり認識できたのでよかった。この作品の重層的につくられているところが大好きです。
文献(本文中で言及したものを除く)
小川國治編 2001『長州と萩街道』街道の日本史43 吉川弘文館
県立広島大学宮島学センター2020「宮島 大鳥居のひみつ」
広島県歴史散歩編集委員会編2009『広島県の歴史散歩』山川出版社
ふくやま草戸千軒ミュージアム2020『瀬戸内の交流 まちのにぎわい 人のつながり』
峰岸隆2015『日本の回廊、西洋の回廊』鹿島出版会
山口県歴史散歩編集委員会編2006『山口県の歴史散歩』山川出版社
山口佳巳2008「仁治度厳島神社廻廊の復元的研究」『国立歴史民俗博物館研究報告』第148集
頼祺一編 2006『広島・福山と山陽道』街道の日本史41 吉川弘文館
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