TEDにて
トッド・コールマン: タトゥーシールで病院の診療が自宅でも受けられる?
(詳しくご覧になりたい場合は上記リンクからどうぞ)
もし、医師が自宅にいる患者を、入院時と同じ様に的確に観察することができたらどうでしょうか?
バイオエレクトロニクス革新者であるトッド・コールマンが、革命的な健康医療と低侵襲治療を約束する、装着可能で、柔軟性のある電子健康管理シールを開発するまでの探究を紹介します。
インスピレーション次第でタトゥーが、こんなにもイメージが突き抜けるような良い印象を与えてくれます。テクノロジーの進歩でこのようなアイデアも実現できるようになっています。
ナノテクノロジーといわれるもので・・・
ナノテクノロジーは、物質をナノメートル (nm)の領域すなわち原子や分子のスケールで、自在にコントロールする技術のことである。
この技術によって、原子や分子の一個一個を単独でつまみ上げ、移動し、築き上げることも可能になっています。現在は、新素材やコンピューターのCPUの製造過程で現実に応用されています。
電子回路のトランジスタは、だいたい数十nm程度の大きさで、カーボンナノチューブなども同様です。物質を数ナノメートルの大きさにすると、量子効果と呼ばれる特殊な現象が発現する。
例えば、電子の閉じこめによるエネルギー準位の離散化があらわれる大きさや、トンネル効果など。量子力学を応用することでコントロールが可能になっています。
私が、このような話を考えはじめ、同じような話を聞くようになると自問し、別の手段はないだろうか?病院内の信頼できるパートナーと組んで、患者が自宅で普段通りの生活を送りながら高性能なモニターの利点を活かせる方法はないだろうか?
長い過程を経て、アクセサリーの様に身に付けられる。あるいは、絆創膏の様に貼り付けられる装着可能なシステムのビジョンとアイディアを得たのです。そして試行錯誤の結果、この柔軟性のある電子シールを完成させました
これはコンピューターチップを作るのと同じ工程で製造されましたが、この電子装置は、半導体の固いウェハーではなく、肌に直接触れられるような柔軟な素材に変更されました。
これらのシステムは、人の髪の毛程の厚さで我々が求めるタイプの情報を測定できます。情報とは、例えば、体の動きや体温、身体の電気的リズムなどです。さらに、これらのシステムの設計もできます。
電源を搭載することができて無線での送信も可能です。これらのタイプのシステムを構築し、我々の研究グループでテストを開始しました。
さらに、サンディエゴにいる臨床パートナーに連絡し、異なる症例をもつ複数の患者を対象にテストを始めました。母親になる人も含めてです。
そして、さらなるインスピレーションを得て、ここにご覧いただく写真は、テープをウェハーから剥がすだけでこれらのセンサーをテープに一体化できることを示しています。
継続的なプロジェクトにより、我々の研究グループは、柔軟性のあるテープに集積回路を内蔵することで信号の増幅やデジタル化。信号の処理や無線通信のエンコーディングを可能にしました。
これらの機能全てが、病院で使用されているのと同じ医療用テープに統合されました。我々は、この段階に到達した時点で設計と使い勝手の双方の観点から 実用性を高めようとしたのですが、更なる課題にぶつかりました。
多くの医療電子化の議論で人々が固く信じていることとは、我々はデータを単に電子化して、無線で送信し、クラウドに送りさえすれば、クラウドで有用な情報を抽出解析できるということです。
また、個人情報の問題に気を使う必要もあるのです。
もし、クラウド内でデータを解析するアルゴリズムを動かすのではなく、接着シールに内蔵された小型集積回路の上で動かしたらどうでしょう?クラウドへ送信するための毎月の通信費のコストも必要なくなります!
そして、これらのものを統合した今こそ、我々は未来について考えることができるのです。
現在では、2015年にAppleWatchも発売されているので、心拍計も記録できるようになっています。腕時計型ウェアラブルコンピューターでスマートウォッチとも言われる。
Apple Watchの搭載チップは、振動にもつように完全に樹脂でコーティングされてるために、コンピュータシステム全体を一つのチップに組み込んでるそうです。
なお、ビックデータは教育や医療に限定してなら、多少は有効かもしれません。それ以外は、日本の場合、プライバシーの侵害です。
通信の秘匿性とプライバシーの侵害対策として、匿名化処理の強化と強力な暗号化は絶対必要です!
さらに、オープンデータは、特定のデータが、一切の著作権、特許などの制御メカニズムの制限なしで、全ての人が
望むように再利用・再配布できるような形で、商用・非商用問わず、二次利用の形で入手できるべきであるというもの。
主な種類では、地図、遺伝子、さまざまな化合物、数学の数式や自然科学の数式、医療のデータやバイオテクノロジー
サイエンスや生物などのテキスト以外の素材が考えられます。
こういう新産業でイノベーションが起きるとゲーム理論でいうところのプラスサムになるから既存の産業との
戦争に発展しないため共存関係を構築できるメリットがあります。デフレスパイラルも予防できる?人間の限界を超えてることが前提だけど
しかし、独占禁止法を軽視してるわけではありませんので、既存産業の戦争を避けるため新産業だけの限定で限界を超えてください!
(個人的なアイデア)
AppleWatchとiPhoneアプリで連携すれば、プライバシー、高セキュリティを維持して自己管理できたり、秘匿性の高い医者と健康データを共有できる可能性もあります。
Apple以外の他社製は、集積回路内臓タトゥーシールで無断で追跡されるかもしれません。
AppleのAirtagも将来的には、タトゥーレベルの薄さに?
AppleのAirtagも将来的には、タトゥーレベルの薄さに?
AppleのAirtagも将来的には、タトゥーレベルの薄さに?
さらに、Apple Vision Proと連携させれば・・・
タトゥーシールからジーニーエフェクトでウィンドウホログラムを出現させることができたら楽しめるかもしれません。
タトゥーシールの設定やiPhoneやiPad、ホームアプリから連携させても楽しめるかもしれません。
Before 2022, this would not have been possible, but with Apple, Google, and Microsoft agreeing to expand the use of “passkey,” a passwordless authentication system…
2022年以前では、不可能だったが、Apple・Google・Microsoftがパスワードな しの認証システム「パスキー」の利用拡大に合意したことで・・・
…on the basis of high security and a high degree of privacy as well…
高いセキュリティと高度なプライバシーも基本にして・・・
…and if, as Ivan Pupilev says, all everyday objects have gesture interface capabilities…
イワン・プピレフの言うように日常的な物すべてにジェスチャーインターフェース機能を搭載していれば・・・
By integrating them with a common smart home standard, “Matter,” and making it possible to automatically connect to them by simply approaching them, assuming permission and authentication…
スマートホーム共通規格「Matter」で統合して近づけるだけで本人の許可、認証を前提とし自動接続できるようにすることで
It may be possible to customize even simple functions as complex functions by combining various devices in a stand-alone manner.
単体では、単純な機能でもさまざまな機器を組み合わせることで複雑な機能としてカスタマイズできるようにできるかもしれない。
In the past, OpenDoc, a technology developed by Apple to realize compound document and document-centered operation, was available.
かつて、OpenDoc(オープンドック)は、Appleが開発したコンパウンド・ドキュメントとドキュメント中心の操作実現する技術があったが
Can we extend this technology to shift from a document-centric to a gesture-centric interface?
これを拡張して、ドキュメント中心からジェスチャーインターフェース中心にできないだろうか?
If you want to work on a larger screen from your smartphone, iPhone, or iPad with a user interface by wearing the Oculus Dash or HoloLens from Oculus Quest
Oculus QuestにあるOculus DashやHoloLensなどを身につけることでユーザーインタフェースをスマートフォン、iPhone、iPadからもっと大きい画面で作業したい場合
It was usual to use a computer with a large screen, but now it is possible to use a huge screen! However, there were limits to the amount of money and placement of the display.
大画面のパソコンでというのが、普通でしたが、もっと、巨大な画面で!!という場合はディスプレイの金額的、配置場所にも限界がありました。
Virtual reality as the future of the holographic age, Virtual reality Virtual reality OS and its extension to the gesture interface center.
ホログラム時代の未来にあるものとして、Virtual reality バーチャルリアリティのOSとジェスチャーインターフェース中心への拡張
Seamlessly linked together, there will be no spatial limits, and you’ll be able to work in a small room with any number of huge, large screens that you can place anywhere in 360 degrees!
シームレスに連携させることで、空間的に限界は無くなり、小さな部屋でいくらでも巨大な大画面で360度どこにでも置いて作業できるようになります!!
For example, even if it is not possible to display 3D without wearing glasses like the gesture interface in the sci-fi movie “Iron Man”…
例えば、SF映画「アイアンマン」に出てくるジェスチャーインターフェイスのようにメガネをかけずに立体表示さ���るとまではいかないまでも
It may be possible to “make it look realistic by wearing special glasses” such as Oculus Dash and HoloLens in Oculus Quest, so…
Oculus QuestにあるOculus DashやHoloLensなど「特殊なメガネをかけることでリアルに見せる」ことはできそうなので・・・
It would be fun to display the setting panel of a simple function device that you touch through the special glasses as if it pops up from inside the device in CG in a hologram format (image: Genie Effect on Mac)
特殊なメガネを通して、触った単純な機能の機器の設定パネルをホログラム形式でCGで機器の中からポップアップするように表示してくれると楽しそう(イメージは、Macのジニーエフェクト)
しかし、人間自体を、追跡すると基本的人権からプライバシーの侵害やセキュリティ上の問題から絶対に不可能です!!
これは、基本的人権がないと権力者が悪逆非道の限りを尽くしてしまうことは、先の第二次大戦で白日の元にさらされたのは、記憶に新しいことです。
マンハッタン計画、ヒットラーのテクノロジー、拷問、奴隷や人体実験など、権力者の思うままに任せるとこうなるという真の男女平等弱肉強食の究極が白日の元にさらされ、戦争の負の遺産に。
基本的人権がないがしろにされたことを教訓に、人権に対して厳しく権力者を監視したり、カントの思想などを源流にした国際連合を創設します。他にもあります。
参考として、フランスの哲学者であり啓蒙思想家のモンテスキュー。
法の原理として、三権分立論を提唱。フランス革命(立憲君主制とは異なり王様は処刑されました)の理念やアメリカ独立の思想に大きな影響を与え、現代においても、言葉の定義を決めつつも、再解釈されながら議論されています。
また、ジョン・ロックの「統治二論」を基礎において修正を加え、権力分立、法の規範、奴隷制度の廃止や市民的自由の保持などの提案もしています。現代では権力分立のアイデアは「トリレンマ」「ゲーム理論の均衡状態」に似ています。概念を数値化できるかもしれません。
権限が分離されていても、各権力を実行する人間が、同一人物であれば権力分立は意味をなさない。
そのため、権力の分離の一つの要素として兼職の禁止が挙げられるが、その他、法律上、日本ではどうなのか?権力者を縛るための日本国憲法側には書いてない。
モンテスキューの「法の精神」からのバランス上、法律側なのか不明。
立法と行政の関係においては、アメリカ型の限定的な独裁である大統領制において、相互の抑制均衡を重視し、厳格な分立をとるのに対し、イギリス、日本などの議院内閣制は、相互の協働関係を重んじるため、ゆるい権力分立にとどまる。
アメリカ型の限定的な独裁である大統領制は、立法権と行政権を厳格に独立させるもので、行政権をつかさどる大統領選挙と立法権をつかさどる議員選挙を、別々に選出する政治制度となっている。
通常の「プロトコル」の定義は、独占禁止法の優越的地位の乱用、基本的人権の尊重に深く関わってきます。
通信に特化した通信プロトコルとは違います。言葉に特化した言葉プロトコル。またの名を、言論の自由ともいわれますがこれとも異なります。
基本的人権がないと科学者やエンジニア(ここでは、サイエンスプロトコルと定義します)はどうなるかは、歴史が証明している!独占独裁君主に口封じに形を変えつつ処刑される!確実に!これでも人権に無関係といえますか?だから、マスメディアも含めた権力者を厳しくファクトチェックし説明責任、透明性を高めて監視しないといけない。
今回、未知のウイルス。新型コロナウイルス2020では、様々な概念が重なり合うため、均衡点を決断できるのは、人間の倫理観が最も重要!人間の概念を数値化できないストーカー人工知能では、不可能!と判明した。
複数概念をざっくりと瞬時に数値化できるのは、人間の倫理観だ。
そして、サンデルやマルクスガブリエルも言うように、哲学の善悪を判別し、格差原理、功利主義も考慮した善性側に相対的にでかい影響力を持たせるため、弱者側の視点で、XAI(説明可能なAI)、インターネット、マスメディアができるだけ透明な議論をしてコンピューターのアルゴリズムをファクトチェックする必要があります。
<おすすめサイト>
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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和六年(2024)2月17日(土曜日)弐
通巻第8137号
SNSの中味は若者のメンタルヘルスに甚大な影響
全米48州で、メタ、TIKTOKが提訴されている
*************************
2024年2月14日、ニューヨーク市は、「YouTubeやTikTok、フェイスブック、インスタグラム、スナップチャットなどSNS五社が若者のメンタルヘルスに悪影響を与えている」として提訴に踏み切った。
「運営各社は若者が依存するようにプラットフォームを意図的に設計している」と主張し。いじめやプライバシーの侵害などでメンタルヘルスに悪影響を与えた」として、損害賠償などを求めた。
1月、アメリカ上院公聴会でメタCEOのマーク・ザッカーバーグが証言台にたって、SNSの影響で子どもを失ったと主張した家族に「謝罪」した。日本と異なってアメリカ社会での謝罪は損害賠償に応じるということである。
2023年三月に既にアーカンソー州が、メタとTikTokがSNSアプリで利用できるコンテンツに関して、「消費者を欺いた」と訴訟した。アーカンソー州のティム・グリフィン司法長官(共和党)は、メタに対して1件、TikTokとその中国の親会社「バイトダンス」に対して2件の個別の訴訟を州裁判所で起こし、「欺瞞的取引の禁止法」に違反したと理由を挙げた。
「フェイスブックやインスタグラムの親会社のメタが意図的に、若年層のユーザーが「中毒状態に陥る」ようにアプリを設計した」。また、TikTokとバイトダンスに対する1つ目の訴訟では、「両社は未成年者に露骨なコンテンツを宣伝するアルゴリズムを作成した」と主張した。
「未成年者の行動に影響を与え、重大な損害を与える可能性がある」。
またTikTokは「中国政府がユーザーデータにアクセスできない」という虚偽の主張をしたとし、TikTokのCEO=周受資が「米国内のデータを中国政府と共有したことがない」と主張していることに反論した。周は「わたしはシンガポール国籍であり、中国共産党とは関係がなく、指令を受けたこともない」と反論したいた。
裁判は拡がり、インディアナ州のトッド・ロキタ司法長官(共和党)は23年末、TikTokが中国政府にユーザーデータを提供し、成人向けのコンテンツを子どもに提供しているとして、州の「消費者保護法に違反した」と訴訟を起こした。
メタもテキサス州で顔認証データを不正に収集していたとして提訴された。
かくしたメタとTikTokは48の州と地域の司法長官から提訴され、同社がインスタグラムとWhatsAppを買収した後に、SNS市場を独占したと主張した。この訴訟は2021年に棄却されたが、司法省はこの訴訟を復活させるよう促していた。
ブームは去ったか、それとも訴訟合戦はまだ延々と続くのか?
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インタビューの後半。
以下引用
ーートッドさんはロシアのウクライナ侵攻により、「第3次世界大戦が始まった」と指摘しました。その世界規模の戦いを終わらせるために、どのような方策があると考えていますか。
エマニュエル・トッド氏(以下、トッド氏):第1次、第2次世界大戦は何年も続いた戦争でした。なぜかというと、それが相手が死ぬまで続けるという戦争だったからです。つまりそれぞれが完全勝利を目指す戦争でした。
第1次世界大戦では最終的にドイツ帝国が崩壊し、第2次世界大戦ではドイツが完全に敗北しましたし、日本も核爆弾によって破壊されてしまいました。そして今では米国の保護国のような状態になっており、今の地政学的な状況は2つの世界大戦と関係しています。
ですから、第3次世界大戦から抜け出す、あるいはそれを拒否するというのは、まず精神的な意味で誰にとっても完全勝利はないと理解することから始めないといけないと思っています。軍事的な対立でも完全な勝利はなく、交渉しなければいけない。第1次、第2次のような勝利というのはあり得ないということを理解することが始まりになります。
交渉を実現するために最初にすべき努力というのは、敵国が怪物であるというような表象をやめることです。西洋人はロシア人を怪物だと言い、ロシア側も同じように西洋人をそう言いますが、それをやめるというのが最初にすべき努力であり、それは精神的、道徳的、また倫理的な努力なのです。
そして、この最初の努力がなされたら、今度は敵であるロシアというのをまた人間的な観点から見直し、ロシア側も西洋人を人間としてもう一度見る。そうすると交渉が始まるわけです。具体的なことをそこで話すべきです。ただし、ロシアがこの戦争で苦戦しているため、一度獲得した領土から二度と出ていかないだろうという問題があります。
ウクライナ人にとって、とてもひどい戦争であることは間違いありません。しかしロシア側も犠牲者が出ているため、ロシアは獲得した領土から二度と出ていかないでしょう。それがよいと言っているわけではありません。しかし西洋人は、「ロシアは奪った領土からは二度と出ていかないだろう」という現実を受け入れることから始めなければならないと思います。
ですので、交渉の場ではロシアが出ていかない代償として何を出せるかが焦点になります。例えば残ったウクライナの領土の独立性を認める必要があると思います。これも非常に難しいのですが、ウクライナの主権を認め、キーウ(キエフ)はウクライナの独立した首都であり、ロシアとは関係がないことを認めるべきでしょう。しかし同時に西洋人とウクライナ人は、今の黒海沿岸地域やウクライナ東部地域の一部がロシアの領土であることを認める必要があります。
そうすると、もしかすると交渉が成立するかもしれませんが、私はこれに関しても全く楽観的ではありません。非常に悲観的になっている理由はいろいろあります。ウクライナでは中級階層の人口が国外に流出を続けています。ウクライナは国家であることは間違いないですが、健全な国家ではないのです。
まず私の見方が、西洋側のメインストリーム(主流)と全く違うということはよく理解しています。私はロシア問題というのは存在しないと考えています。侵攻前のロシア社会は安定を見いだしていました。領土は人口に対して大き過ぎ、その中で北大西洋条約機構(NATO)の拡大に脅威を感じており、これを阻止するべく予防のための戦争に乗り出したという意味では、ロシアの指導者層は合理的な態度を見せていたのです。
真の問題、世界の不安定性はロシアではなく米国に起因しているのです。米国は世界的な軍事大国で、中東などで戦争や紛争をする、あるいは維持し続けている存在なのです。ウクライナ軍も再組織化しました。そしておそらく同じようなことをアジアでも引き起こそうとすると私は見ています。台湾に対してウクライナのように振る舞うべきだと言い始めています。
米国は不平等が進み、(人口の一部では)死亡率も高まっているような、健全ではない国家になってしまっています。ウクライナ戦争が終わっても米国が欧州や日本、韓国をコントロールし続けている限り、世界は安定化には向かわないでしょう。
これは非常に私にとってもひどい状況で、何度も言ってきましたが、私はいわゆる反米主義ではありません。私の家族は戦争中に米国に避難した歴史があります。何か欧州に脅威が訪れたら米国に逃げようという考え方がそもそもの根本にありますが、今の状況を見ると米国は世界が不安定になっているそもそもの原因だということが明らかです。そういう意味では、個人的にもひどい状況です。
私は『帝国以後』(2002年)を書きましたが、これはイラク戦争の時期に重なります。しかし実はその後、一時は米国も再び合理的になってきたと感じた時期もあったのです。その頃の私は文化的には親米に近い立場ですらありました。しかしウクライナ戦争を経て、世界をひどく不安定にしていることが明らかになってしまいました。世界の問題は米国なのです。
これは私がちょっと感情的になっている部分なのですが、米国の政治は今、欧州大陸を壊そうとしています。フランスの人々がこれからどんどん貧しくなってしまうのも米国の行動に起因しています。そういう意味で私は非常に怒りを感じていて、これは歴史家としてではなくフランス人としての個人的な発言です。
ーートッドさんはウクライナ戦争の打開策として、フランスやドイツが「戦争から抜ける」ことを挙げていました。これは具体的にどのような意味なのでしょうか。
トッド氏:フランスもドイツも大した武器は持ってないので、その提供をやめることは大きな観点になりません。私は基本的にドイツが最終的に決めることになるはずだと思っています。例えば米国のイラクへの侵攻のときに、ドイツとフランスは侵攻に反対しました。それもドイツが決めフランスが付いていくという流れでした。
今のドイツは非常に迷っていて、間違えた道を歩み始めているようにも見受けられます。ただしドイツがいったん合理的な、現実的な観点に戻ってくれば、どうやって抜け出すか、その手段も見いだすだろうと思います。ドイツが決めたら、最終的には今、感情に突き動かされている欧州諸国もドイツに付いていくのではないかと。そこでドイツの首相が特に大きな政策を打ち出す必要もないと思います。ただ単に、「もうやめよう」とさえ言えば、米国中心のこの戦争のメカニズムが崩壊し、そこからは良い判断が次々となされるでしょう。ドイツは気がつくだけでいいのです。
この戦争の真に悲劇的な側面というのは、それが不条理なもの、非常にばかげたものだという点です。そして、この戦争は簡単に避けることができたのです。ロシアはウクライナのNATO加盟を許容できないと言い続けてきました。そしてドンバス地方の自立やロシア語話者の権利などを要求していました。ウクライナ人たちがそれを認めていればこのような戦争は起きなかったはずです。
この戦争の理由は非常に不条理ですが、同時にいったん始まると抜け出すのが非常に難しくなっています。ウクライナも米国政府もニヒリストになっていて、ポーランドもそうですし、バルト3国や英国もおそらくそうなっているからです。
ただ、欧州連合(EU)の国々がある日突然、目を覚ますこともあると私は思っています。今の戦争は非常に現実的で、実際に建物が崩壊され人が死んでいますが、始まった理由が非常に不合理です。悪夢という状態なので、誰かが目を覚まさなければいけないと私は思うんです。とんでもなくばかげた話だと人々は気付くべきだと思います。
ロシアの人口を見れば欧州を攻撃しようだなんて、そんな計画をロシアが描いていたはずがありません。だからこれだけのウクライナ人が亡くなる必要はなかったのです。そして欧州全体がロシアへの経済制裁のせいで貧困化していくというような事態は避けられるはずだったのです。だからこの状態は本当にひどいことだと思うのです。
ーー日本ではロシアのウクライナ侵攻に対して大きな懸念があります。ロシアの勝利を認めてしまうと、力によって領土を拡大することが世界的に認められかねません。そうすると例えば中国が力によって領土を拡大する恐れがあります。こうした考え方をどのように受け止めていますか。
トッド氏:米国がイラクなど世界中でしてきたことが現実なのです。権利の問題ではなく、現実、事実の問題です。日本は自身の環境を見渡し、どこに脅威があるのかを見極めなければなりません。例えば中国が台湾を侵攻できるのかという問題があります。ロシアだけでは日本にとって脅威でもなかったので、日本の脅威になり得る中国に対して、ロシアはある意味助けになる存在だったはずなのです。
侵攻してはいけない、軍事介入してはいけないという原則は非常に不条理な話で、西洋でもそれは守られてこなかったのが現実です。西洋では米国が他国への侵攻を続けてきました。だから今、起きていることに関していえば、ロシアは米国の生徒だというふうにすら言えます。これまで米国が行ってきたことに習い、ロシアが侵攻したという流れがあると思います。
私は他国を侵攻するとか、介入するというのはいいとか、あるいはそれが普通だと言っているわけでは決してありません。私は戦争を忌み嫌っています。ただ私が言いたいのは、西洋の陣営の中でも特に米国は、ロシアに対し、原則を破っているなんて言う権利はないだろうということです。侵攻するということが良いと言っているわけでは決してありません。
ーー日本は軍事面や経済面などで米国にかなり依存しています。日本はどうすべきだと考えていますか。
トッド氏:何度も言ってきましたが、安全面での唯一の解決策があるとすれば、核兵器の所有でしょう。これがある日、実現するかどうかは分かりません。先ほど、交渉の話をしていたときにフランスとドイツにかかっていると言いましたが、日本には触れませんでした。それには理由があります。
日本の問題は非常に簡潔に言えば中国です。以前にも言ったことがあるのですが、中国では人口減少が始まっています。そのため日本に対しても、中国の脅威度は大きく下がるとみています。そして、日本の問題は例えば中国にある日本企業の工場をいかに維持していくかというような観点になっていくでしょう。
私はいろいろなインタビューの中でも今の文脈の中では米国との同盟関係は理解できるし、ロシアとの良い関係性も長期的に重要だとも言ってきました。これはウクライナ戦争を経た今も有効な話です。というのも、地理的にロシアも中国も日本も同じ場所に今後も存在し続けるからです。
しかし、このウクライナ戦争に関しては、日本の問題ではないことを認めるべきだと思います。なぜ日本がウクライナにここまで関心を抱くのでしょうか。例えば、フランスやドイツ、スウェーデン、フィンランド、欧州諸国が関わっているのは当然ですが、地図を見てほしいのです。非常にウクライナから離れた日本が、なぜウクライナのせいで世界大戦に巻き込まれなければいけないのか、考えてほしいのです。
ですので、私の日本への助言は、「抜け出せ」ということです。ウクライナ戦争は日本の問題ではないからです。ウクライナの危機は欧州全体を巻き込んでいるのが現状です。ウクライナがあたかもブラックホールのようになっていますが、しかしなぜ日本までもそこに落ち込んでいかなければいけないのかと、考えるべきです。日本はNATO加盟国ですらありません。日本が取るべき立場は、中立国という立場ではないでしょうか。
日本の読者の皆さんによく理解してほしいのは、ポーランドやリトアニア、ベラルーシ、ウクライナなどこの辺りの地域は、世界大戦中に最もひどい出来事が起きた地域です。Bloodlands(流血地帯)と米国人が呼んだ場所です。ソ連軍とドイツ軍が衝突したり、ユダヤ人たちが多く虐殺されたりしたのもこの地域でした。
この地域は18世紀からそうなのです。ですから、この地域圏というのはとてもリスクが高く、非常に危ないことが多く起きる地域です。なので、日本はここに入り込んできてはいけないと私は思うわけです。なぜ、日本が血なまぐさいこのような地域に関わらないといけないのでしょうか。ぜひここからは遠のいてほしいと思います。
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