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#岩清水の如く澄んだ味わい
igayasakebrewery · 1 year
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3/18午前10時より‼️WEB限定販売‼️ 『岩清水JUPITER2022飲み比べ🍏限定30セット』 受付期間:2023年3月18日10:00~3月19日22:00(セット数に達し次第期間中でも終了します) お申込み:こちらの申込みもしくはホームページのWEB販売よりお願いします @iwashimizu.igaya Instagramプロフィール→ホームページ→WEB販売からお申し込みいただけます。 2022年4月に搾り来月で丸1年の熟成を迎える「岩清水JUPITER」飲み比べ(Souplesseスープレス(おりがらみ)&Corseコルセ)限定30セットをご用意しました! ※「岩清水JUPITER」の次回醸造は2025年以降を予定しております!この機会にぜひお楽しみくださいませ♪ さらに、ご一緒に「岩清水EARTH2022 Corse」の入った飲み比べコースもご用意しました! よろしくお願いします^ ^ #岩清水 #井賀屋酒造場 #期間限定 #web販売 #限定販売 #開栓注意‼️ #シュワシュワ #日本酒 #ワイングラスで日本酒 #岩清水ペアリング #日本酒好きな人と繋がりたい #グルメ好きな人と繋がりたい #ワイン好きな人と繋がりたい #生原酒 #低アルコール #惑星 #創業1853年 #始まりが伝統になる一滴入魂の蔵 #岩清水の如く澄んだ味わい #じっくりと時間をかけて #丁寧にていねいに #テロワール #減農薬栽培米 #井戸水 #超軟水 #日本一柔らかな仕込み水 #日本一生産量の少ない酒蔵 #生きている日本酒 #夫婦二人で醸す #マイナス5度で瓶貯蔵 (井賀屋酒造場) https://www.instagram.com/p/CpzmFf6S1Kd/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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kachoushi · 5 months
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各地句会報
花鳥誌 令和5年12月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和5年9月2日 零の会 坊城俊樹選 特選句
売られゆく親子達磨の秋思かな 三郎 初秋の六区へ向かふ荷風かな 佑天 浅草にもの食ふ匂ひして厄日 和子 秋の風六区をふけばあちやらかに 光子 蟬一つ堕つ混沌の日溜りに 昌文 中国語英語独逸語みな暑し 美紀 神谷バーにはバッカスとこほろぎと 順子
岡田順子選 特選句
ましら酒六区あたりで商はれ 久 レプリカのカレーライスの傾ぐ秋 緋路 鉄橋をごくゆつくりと赤とんぼ 小鳥 ぺらぺらの服をまとひて竜田姫 久 橋に立てば風に微量の秋の粒 緋路 秋江を並びてのぞく吾妻橋 久 提灯は秋暑に重く雷門 佑天 浅草の淡島さまへ菊灯し いづみ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年9月2日 色鳥句会 坊城俊樹選 特選句
さざなみの落暉の中の帰燕かな 睦子 流木を手に引き潮の夏終る 同 無干渉装ふ子等や生身魂 久美子 秋暑し右も左も行き止まり 愛 秋の虹までのバス来る五号線 同 バスを降りれば露草の街青し 同 投げやりな吹かれやうなり秋風鈴 美穂 先頭の提灯は兄地蔵盆 睦子 なりたしや銀河の恋の渡守 たかし 指で拭くグラスの紅や月の秋 久美子 くちびるに桃の確かさ恋微動 朝子 法師蟬死にゆく人へ仏吐く たかし 息づきを深め白露の香を聞く かおり 燕帰るサファイアの瞳を運ぶため 愛
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年9月4日 花鳥さざれ会 坊城俊樹選 特選句
恐ろしき事をさらりと秋扇 雪 美しき古りし虹屋の秋扇 同 秋扇想ひ出重ね仕舞ひけり 千加江 秋扇静かに風を聞ゐてみる 同 鵙高音落暉の一乗谷の曼珠沙華 かづを 秋夕焼記憶に遠き戦の日 匠 補聴器にペン走る音聞く残暑 清女 夕闇の迫りし背戸の虫を聞く 笑 秋扇閉ぢて暫く想ふこと 泰俊 曼珠沙華情熱といふ花言葉 天空
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年9月6日 立待花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
片足を隣郷に入れて溝浚へ 世詩明 野分中近松像の小さかり ただし 吹く風の中にかすかに匂ふ秋 洋子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年9月7日 うづら三日の月花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
何事も暑さの業と髪洗ふ 由季子 染みしわの深くなり行く残暑かな 都 膝抱き色なき風にゆだねたり 同 秋の灯を手元に引きてパズル解く 同 のど元へ水流し込む残暑かな 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年9月9日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
枯蟷螂武士の貌して句碑に沿ふ 三無 籠に挿す秋海棠の朱の寂し 百合子 一山の樹木呑み込み葛咲けり 三無 風少し碑文を撫でて涼新た 百合子 守り継ぐ媼味見の梨を剥く 多美女 葛覆ふ風筋さへも閉ぢ込めて 百合子 かぶりつく梨の滴り落ちにけり 和代 秋雨の音の静かに句碑包む 秋尚 梨剥いて母看取り居ゐる弟と 百合子 たわわなる桐の実背ナに陽子墓所 三無
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年9月11日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
登り来て峙つ霧を見渡せり エイ子 太鼓岩霧に包まれ夫と待ち のりこ 秋茄子の天麩羅旨し一周忌 エイ子 秋茄子の紺きっぱりと水弾き 三無 散歩道貰ふ秋茄子日の温み 怜 朝の日の磨き上げたる秋茄子 秋尚 山の端は未だ日の色や夕月夜 怜 砂浜に人声のあり夕月夜 和魚 四百段上る里宮霧晴るる 貴薫
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年9月11日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
星月夜庭石いまだ陽の温み 時江 サングラス危険な香り放ちけり 昭子 団子虫触れれば丸く菊日和 三四郎 羅の服に真珠の首飾り 世詩明 無花果や授乳の胸に安らぐ児 みす枝 蜩に戸を開け放つ厨窓 時江 秋立つやこおろぎ橋の下駄の音 ただし 曼珠沙華好きも嫌ひも女偏 みす枝 長き夜を会話の出来ぬ犬と居て 英美子 妹に母をとられて猫じやらし 昭子 長き夜や夫とは別の灯をともす 信子 蝗とり犇めく袋なだめつつ 昭子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年9月12日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
鳳仙花見知らぬ人の住む生家 令子 秋の灯や活字を追ひし二十二時 裕子 露草の青靴下に散らしたる 紀子 父からの裾分け貰ふ芋の秋 裕子 かなかなや女人高野の深きより みえこ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年9月12日 萩花鳥会
秋の旅ぶんぶく茶􄽂の茂林寺に 祐子 胡弓弾くおわら地唄の風の盆 健雄 大木の陰に潜むや秋の風 俊文 月今宵窓辺で人生思ひけり ゆかり 天に月地に花南瓜一ついろ 恒雄 月白や山頂二基のテレビ塔 美恵子
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令和5年9月12日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
蜩や五百羅漢の声明に 宇太郎 我が庭は露草の原湖の底 佐代子 水晶体濁りし吾に水澄める 美智子 手作りの数珠で拜む地蔵盆 すみ子 蝗追ふ戦終りし練兵場 同 病院を抜け出し父の鯊釣りに 栄子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年9月15日 さきたま花鳥句会
虫しぐれ東郷艦の砲弾碑 月惑 熱帯夜北斗の杓の宵涼み 八草 兵の斃れし丘や萩の月 裕章 夕刊の行間うめる残暑かな 紀花 校庭に声もどりをりカンナ燃ゆ 孝江 八十路にもやる事数多天高し ふゆ子 子供らの去り噴水の音もどる ふじ穂 杉襖霧襖越え修験道 とし江 耳底に浸みる二胡の音秋めけり 康子 敬老日いよよ糠漬け旨くなり 恵美子 重陽の花の迎へる夜話の客 みのり 新涼の風に目覚める日の出五時 彩香 鵙鳴けり先立ちし子の箸茶碗 良江
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令和5年9月17日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
昼の星遺跡の森を抜けて来て 久子 曼珠沙華もの思ふ翳ありにけり 三無 いにしへの子らも吹かれし秋の風 軽象 明け六つの鯨音とよむ芒原 幸風 秋の蟬さらにはるけき声重ね 千種
栗林圭魚選 特選句
朝涼の白樫の森香の甘し 三無 莟まだ多きを高く藤袴 秋尚 艶艶と店先飾る笊の栗 れい 榛の木の根方に抱かれ曼珠沙華 久子 揉みし葉のはつかの香り秋涼し 秋尚 風に揺れなぞへ彩る女郎花 幸風 秋海棠群がるところ風の道 要 秋の蟬さらにはるけき声重ね 千種
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年9月20日 福井花鳥会 坊城俊樹選 特選句
江戸生れ浅草育ち柏翠忌 世詩明 神谷バーもつと聞きたし柏翠忌 令子 柏翠忌句会横目に女車夫 同 旅立たれはやも四年となる秋に 淳子 桐一葉大きく落ちて柏翠忌 笑子 虹屋へと秋潮うねる柏翠忌 同 言霊をマイクの前に柏翠忌 隆司 若き日のバイク姿の柏翠忌 同 一絵巻ひもとく如く柏翠忌 雪 柏翠忌旅に仰ぎし虹いくつ 同 柏翠忌虹物語り常しなへ 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年9月24日 月例句会 坊城俊樹選 特選句
秋天を統ぶ徳川の男松 昌文 秋の水濁して太る神の鯉 要 眼裏の兄の口元吾亦紅 昌文 秋冷の隅に影おく能楽堂 政江 群るるほど禁裏きはむる曼珠沙華 順子
岡田順子選 特選句
身のどこか疵を榠櫨の肥りゆく 昌文 カルメンのルージュみたいなカンナの緋 俊樹 口開けは青まはし勝つ相撲かな 佑天 光分け小鳥来る朝武道館 て津子 蓮の実の飛んで日の丸翩翻と 要
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年8月2日 立待花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
炎天下被るものなき墓の石 世詩明 夫恋ひの白扇簞笥に古り 清女 野ざらしの地蔵の頭蟬の殻 ただし 一瞬の大シャンデリア大花火 洋子 三階は風千両の涼しさよ 同 素粒子の飛び交ふ宇宙天の川 誠
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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zaregoto1914 · 5 years
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土呂久鉱害事件に関する覚書
(2002年1月22日成稿)
土呂久鉱害事件に関する覚書
 宮崎県高千穂町の土呂久鉱山における亜砒酸製造に伴う慢性砒素中毒症は、大正期から戦後に至る長期にわたって継続した鉱害であったにもかかわらず、被害地域が僻遠の山村であったため長らくその存在が知られず、鉱山の閉山から10年近くたってから地元の教師の告発によって実態が初めて認知された特異な公害である。慢性砒素中毒症が4大公害病に続く指定公害病でありながら、現在あまり顧みられることが少ないことも考慮し、本稿では土呂久鉱害の経過を追うことで、近代日本社会の「闇」の一端に切り込みたい。
(1)土呂久鉱山の成立(1920-1933)  宮崎県岩戸村(現・高千穂町)の土呂久鉱山は、貞享年間(1684-1687)に銀山としてスタートしたものの、近代に入ってからは事実上休山状態であった。しかし、1920年、当時佐伯近郊の木浦鉱山で亜砒酸製造を行っていた鉱山師の宮城正一が土呂久鉱山から亜砒鉄鉱を採掘し、土呂久で亜砒酸の精錬を開始したことで一変した。日本の亜砒酸生産は第1次世界大戦期にドイツに代わる形で急成長し、主にアメリカに輸出されて綿花栽培の害虫駆除剤の原料などに使われていた。ところで、宮城が港町で交通の利便な佐伯から山間の土呂久へ移ったのには理由があった。地方紙『佐伯新聞』1917年4月29日付に次のような記事がある。
「懸案となり居りし当町字灘鳥越にある亜砒酸製造所の煙毒問題は今回所主宮城正一が農民に対して損害賠償をなし且つ製造所を移転する事となり、兎も角も一段落を告げるに至った」
 宮城は煙害により地元住民から補償と立ち退きを要求されていたのである。つまり宮城は佐伯を追われ、亜砒酸製造が甚大な鉱害をもたらすことを知りながら土呂久へ移転したのであった。
 亜砒酸は昇華点の193℃を境にして固体から気体へ、気体から固体へ変化する。この性質を利用し、亜砒鉄鋼を焙焼して砒素分を亜砒酸ガスとして流出させ、ガスを昇華点以下の空間に導き固体に戻して亜砒酸の結晶を採取する。当時、亜砒酸生産量全国一の足尾銅山では、銅の精錬の際に煙に含まれる亜砒酸をコットレル集塵器で回収する方法が採られていたが、土呂久にはそのような設備はなく、煙突に藁の覆いを被せるだけで、砒素を空気中に撒き散らし放題であった。そのため早くも1923年には亜砒酸による農業被害が地元で問題にあった。5月に行われた土呂久の部落自治組織「和合会」総会は鉱山側に「完全ナル設備ヲナシ事業ヲナサレン事」を要求することを決した。これに対し、宮城に代わって経営者となっていた川田平三郎は、1ヵ月50円の「交付金」を和合会に支払うことに応じたが、その見返りとして鉱山へ操業に必要な材料を提供することを求めた。鉱山側は要求を逆手にとったのである。
 その後鉱害は甚だしくなり、特に牛馬の奇病が相次いだ。1925年、和合会は岩戸村長の甲斐徳次郎に対策を要求し、甲斐は西臼杵郡畜産組合の獣医である池田実と鈴木日恵に奇病で死んだ牛の解剖と鉱害の調査を依頼した。4月7日、鈴木は警察官立ち会いのもと解剖を行い、「連続セル有害物ノ中毒ニアラサルヤノ疑ヲ深カラシムルモノナリ」との所見を示した。甲斐はこの牛の内臓を宮崎県警察部衛生課に持参し、鑑定を依頼したが、県側は解剖後に内蔵へ亜砒酸が混入した可能性を理由に鉱害を否定し、現地調査を行ったものの調査結果を隠蔽した。一方、池田は「岩戸村土呂久放牧場及土呂久亜砒酸鉱山ヲ見テ」と題する報告をまとめた。池田報告は当時の土呂久の実状を生々しく伝えている。
「二、三十年モ経過シタ植林ノ杉ガ萎縮シテ成長ガ止リ、或ハ枯死シテ赤葉味又竹林ハ殆ンド枯死シ」 「妙齢ノ婦女ノ声ハ塩枯声デ顔色如何ニモ蒼白デアル、久敷出稼デ居ル人ノ顔面ハ恰モ天刑病患者ノ様ニ浮腫」 「山川ノ水ハ清ク澄ミ渡ッテ居ルガ、川中ノ石ハ赤色ニ汚レテ、三年前迄居タ魚類ハ今ハ一尾モ見ヘヌ」 「今ハ椎茸ノ発生デ忙シカラネバナラヌノニ、何ノ果報カ、此地ノ重要物産デアル椎茸ノ原木ヲミレバ、椎茸一ツ見ヘヌ。土呂久名物ノ蜂蜜モ、今ハ穴巣ヲ止ムルノミ」 「小鳥類ガ畑ノ中ニ死ンデ落チテ居ル事ハ年中ノ事で、何時デモ死ンダ小鳥ヲ畑ノ中ヨリ拾ッテ見セル事ガ出来ル」
 この池田報告は1972年に高千穂町史編纂室で発見されるまで封殺された。
 鉱害が拡大・悪化するに従い、農業では生計を立てられなくなった人々は鉱山で働くようになった。しかし、亜砒酸による健康被害は鉱山労働者に最も顕著であり、皮膚の亜砒負け、色素沈着、黒皮症、角膜炎、結膜炎、喘息、気管支炎、肝硬変などの症状に見舞われた。健康悪化に耐えられずに鉱山を辞め帰農する人も少なくなかったが、農業被害は増大するばかりで生活できず、結局収入を得るために再び鉱山に戻らざるをえなかった。あるいは椎茸の生えなくなった木を木材として鉱山に売却したり、完全に農業ができなくなった土地を鉱山に売却するという例もあった。鉱害はむしろ鉱山の事業を拡大する動因になったのである。
 また被害と加害の重層性も深刻であった。鉱山の地主であった佐藤喜右衛門は鉱山から地代を得るのみならず、自ら採掘を請け負い、地元住民を労働者として勧誘し、鉱害に苦しむ農民からは加害者として忌避された。しかし、一方で彼は鉱山のすぐ近くに住んでいたために砒素中毒症に罹り、1930年から32年の2年間に彼の一家7人のうち自身を含む5人が病死した。部落で鉱山から収益を受ける者が増えるに従い、鉱害反対の足並みは崩れていった。
(2)土呂久鉱山の展開と終焉(1933-1962)  大戦景気によって始動した亜砒酸製造は、戦後不況によって急速に不振になった。1926年にはアメリカの綿花不況のあおりで生産量が激減し、土呂久鉱山も生産中止・事業縮小に追い込まれた。一方、1930年代になると、航空機の材料の国産化をねらう中島飛行機が錫を求めて土呂久に目をつけた。1931年、中島門吉(中島知久平の弟)が一部の鉱業権を獲得し、33年には中島商事鉱山部が土呂久鉱山のすべての経営権を取得した(後に岩戸鉱山株式会社設立)。
 中島は当初亜砒酸よりも錫を重視し、1936年に錫精錬の反射炉を建設したが、この反射炉は錫から分離された砒素分が煙とともに空気中に飛散するという杜撰な代物であった。翌年、和合会は反射炉の煙害防止を鉱山側に要求し、その結果遊煙タンクが作られたが、煙害対策とは名ばかりで、実際はこれを利用して亜砒酸の採取が行われたため、鉱害はむしろ悪化した。また、経営者が変わったことにより1923年の交付金契約は無効となり、中島が和合会に亜砒酸1箱精製につき12銭の補償金を支払う新契約が結ばれたが、旧契約に比べて被害者が受け取る金額は事実上半減し、しかも補償金の分配を巡り和合会内部で対立が発生した。さらに1937年の岩戸村会議員選挙で、中島側は鉱山の会計係長を出馬させ、鉱山労働者を買収した結果、中島系候補が当選し、和合会系の現職は落選した。明治以来、土呂久出身者が議席を失ったのは初めてであった。鉱山は地方自治をも破壊したのである。
 中島傘下となって土呂久鉱山は拡大し、最盛期には約400人の労働者が働いた。特に1930年代末頃から亜砒酸は毒ガスの原料として需要が急増した。「黄二号」ことルイサイト、「赤一号」ことジフェニール・シアン・アルシンが亜砒酸を元に作られ中国戦線に送られた。深まる亜砒酸鉱害に対し、ついに1941年和合会は鉱山との契約破棄を決定した。福岡鉱山監督局は和合会に説明を求め、代表6名が福岡へ行き亜砒酸製造の中止を申請したが、監督局の担当者は「非常時には、部落のひとつやふたつつぶれても鉱山が残ればよい」と言い放ったという。結局1941年11月選鉱場の火災により土呂久鉱山は休山し、所有権も中島から国策会社へ移行した。
 土呂久鉱山は戦後1948年、銅や鉛などの採掘を再開した。再び鉱業権を獲得した中島鉱山(旧岩戸鉱山)は亜砒酸製造の再開を計画した。和合会は再開反対を決議したが、宮崎県と岩戸村の斡旋により、1954年、鉱山から和合会への協力金支払を条件に改良焙焼炉建設に同意した。土呂久婦人会は岩戸村に抗議したが、村長伊木竹喜は「鉱山のおかげで、岩戸村には鉱産税がはいりよる」と取り合わなかったという。
 鉱山がその後、1958年7月の坑内出水事故により一時休山を余儀なくされ、翌年には住友金属鉱山が中島を事実上買収したが、往時の活性を取り戻すことができず、1962年経営不振により閉山した。その間も鉱害は続き、1959年には和合会が高千穂町(岩戸村吸収)に亜砒酸製造施設の廃止を陳情した。しかし、ついに閉山まで鉱害はやむことがなかった。
(3)土呂久鉱害の告発(1970-  )  1970年、宮崎県高城町の四家鉱山で集中豪雨により鉱滓堆積場のダムが決壊し、砒素を含む鉱毒が河川へ流出するという事故が起き、宮崎県は急遽県内の休廃止鉱山の調査を行った。調査の結果、土呂久川から飲料水基準の2倍の砒素が検出された。同年12月、土呂久在住の佐藤鶴江は、岐阜のカドミウム汚染の報道を聞いて不安を抱き、宮崎地方法務局高千穂支局の人権相談に鉱毒被害を訴えた。支局は土呂久鉱山跡を調査し、彼女に鉱毒被害の事実申立書を発行したが、法務局は専門医による因果関係の証明がないことを理由に申立書を留置した。またしても行���によって鉱害は隠蔽されたのである。
 一方、高千穂町立岩戸小学校教諭の斎藤正健は、妻が土呂久出身であったことから鉱害の事実を知り、同僚とともに土呂久全世帯を対象に鉱害調査を行った。斎藤らの調査は1971年11月、宮崎県教職員組合の教研集会で報告され、新聞報道により全国的に注目された。斎藤報告は、①1913-1971年に死亡した92名の平均寿命は39歳である、②土呂久全住民の34%が呼吸器をはじめ疾患に罹っている、③土呂久の児童の体位は劣っている上に眼病が目立つ、④スギの年輪は鉱山創業期に生長が阻害されている、という驚くべき内容であった。大正期以来の鉱害がこの時はじめて公表されたのである。
 土呂久住民に不安が高まる中、宮崎県は県医師会に委託して住民の一斉健康診断を実施したが、慢性砒素中毒症に認定されたのは7名だけで、県の土呂久地区社会医学的専門委員会も健康被害と亜砒酸製造との関係性を「現在の知見では十分に説明ができない」と肯定しなかった。宮崎県知事黒木博は住友金属鉱山と認定患者に補償斡旋を提案し、1972年12月、両者間に補償協定が結ばれたが、住友の法的責任には一切触れず、補償金額は平均240万円にとどまり、しかも将来の請求権放棄を定めていた。県側は患者との交渉を外部との接触を絶った密室で行い、十分な説明をしないまま患者に調印を強要した。その後、黒木は新たな認定患者に対しても同じ内容の補償斡旋を5次にわたって続けた。しかも県は斡旋受諾者に対して公害健康被害補償法による給付を含む公的給付を中止するという「いやがらせ」まで行った。知事斡旋は補償額を抑制し、被害者の口を封じることがねらいであった。
 1973年、環境庁は慢性砒素中毒症を第4の公害病に指定したが、認定要件を皮膚障害に限定し、内臓疾患を認めなかったため、多くの被害者が認定されなかった。一方でこの頃から県外の医師による自主検診が相次いだ。同年2月には名古屋大学医学部講師大橋邦和が、74年には太田武夫ら岡山大学医学部衛生学教室が、75年5月には熊本大学体質医学研究所の堀田宣之が住民への自主検診を行った。堀田は10月にも同僚の原田正純らとともに1週間にわたる大規模な自主検診を行った。これらの検診結果は環境庁の認定要件とは裏腹に、砒素中毒による障害が皮膚に限らず、呼吸器や循環器などの内臓にまで広がっていることを示していた。
 1975年12月、5人の患者と1遺族が住友金属に損害賠償を求め宮崎地裁延岡支部に提訴した(第1次訴訟)。続く76年11月には第2次、77年12月には第3次、78年3月には第4次の訴訟が起こった。土呂久訴訟最大の問題は、1次的に賠償責任を有する鉱山師も中島鉱山もすでに存在せず、被告の住友が正式に鉱業権を得たのが閉山後の1967年で、住友自体は亜砒酸製造を行っていないことにあった。住友側は全面的に争い、訴訟は長期化し、高齢の原告が相次いで死亡していった。1984年3月に下された第1次訴訟の1審判決は「土呂久地区という山間の狭隘な一地域社会が、そのただ中ともいえる場所での本件鉱山操業により、大気、水、土壌のすべてにわたって砒素汚染され、本件被害者らはその中で居住、生活することにより、長期間にわたって四六時中間断なく、且つ経気道、経口、経皮、複合的に砒素曝露を受けたもので」あると土呂久鉱害を正確に認め、鉱業不実施を以って鉱業権者の賠償責任は免責されず、鉱業法115条の時効規定も適用されないことを理由に住友へ損害賠償を命じる画期的な内容であった。
 しかし、この1審判決をピークに土呂久鉱害は急速に風化していった。既に1980年頃には被害者の支援組織「土呂久・松尾等鉱害の被害者を守る会」が財政難による活動停滞に陥っていた。また、支援運動の中心であった総評系労組が「反公害」から「反原発」へシフトしつつあり土呂久鉱害への関心は相対的に低下した。1979年、補償斡旋を続けた黒木が受託収賄容疑で逮捕され知事を辞職し、翌年、後継知事松形祐尭は公害認定を巡る行政不服審査で県が敗訴したのを機に被害者へ公式に謝罪したが、依然として知事斡旋受諾者への公健法給付を認めなかった。一方、訴訟は住友の控訴により続き、1988年の控訴審判決は住友の賠償責任を認めたものの、補償額から公健法給付を差し引くよう命じる後退したものだった。住友はさらに上告したため、原告弁護団はついに水面下の和解交渉を行った。原告の高齢化と最高裁の状況を踏まえた苦渋の判断であった。1990年10月最高裁で原告と被告の一括和解が成立したが、住友の法的責任には触れず、賠償義務を否定し、公健法給付とは別に「見舞金」総額4億6475万円(1審判決の仮執行金と同額)を支払うという内容だった。1審判決も控訴審判決も被告の法的責任を認定したにもかかわらず、原告は訴訟の長期化に耐えることができずに訴訟自体には敗北したといえよう。
(4)総括  土呂久鉱山は、日本経済の工業化が急速に進展した第1次世界大戦期に始まり、戦間期の停滞を挟んで、15年戦争期には新興財閥の手で重化学工業の一端を担わされ、そして高度経済成長の開始により終焉した。その歴史は終始日本資本主義の発展過程に強く制約されたと言えよう。故に土呂久鉱害事件は局地的な鉱害ではあるものの、鉱山の杜撰な鉱害対策、鉱山への抵抗と依存の間で揺れる地域社会、一貫して公害の存在を隠蔽し民衆の声を潰した行政、公害反対運動の党派的分裂等々、近代日本の鉱害の一般的特筆を余すところなく有している。そしてついに根本的解決には至らず、現在も土呂久の自然が回復していないことは、鉱害が過去の問題ではなく、依然として現在的問題であることを示していよう。
《引用・参照文献》 斎藤正健「土呂久公害の告発とその後」Ⅰ-Ⅲ 『歴史地理教育』211、212、214号 1973年 川原一之『口伝 亜砒焼き谷』岩波書店 1980年 川原一之「土呂久鉱毒史」『田中正造と足尾鉱毒事件研究』5号 1982年 土呂久を記録する会編『記録・土呂久』本多企画 1993年
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kkagtate2 · 5 years
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お地蔵様
里帰りした男の話。
これは実に二十年ぶりに里帰りした時の話である。思ひ立つたのは週末の金曜日、決行したのは明くる日の土曜日であつたが、何も突然と云ふことではなく、もう何年も昔から、今は無き実家の跡地を訪れなければならないと、漠然と思つてゐ、きつかけさへあればすぐに飛び立てるやう、心の準備だけはしておいてゐたのである。で、その肝心のきつかけが何なのかと云へば、私が小学生の時分によく帰り道を共にした女の子が手招きをするだけといふ、たわいもない夢だつたのだが、私にとつてはそれだけで十分であつた。一泊二日を目安に着替へを用意し、妻へは今日こそ地元の地を踏んでくると、子供へはいゝ子にしてゐるんだよと云ひ残し、一人新幹線に乗り込んだ私は、きつかけとなつた夢を思ひ出しながら、生まれ育つた故郷へ真直ぐ下つて行つた。
実のことを云ふと、この時にはすでに旅の目的は変はつてゐたやうに思へる。私の故郷といふのは、周りを見渡せば山と川と田んぼしかないやうな田舎で、目を閉じてゆつたりと昔を懐かしんでゐると、トラクターに乗つてゆつくりとあぜ道を走るお爺さんだつたり、麦わら帽子を目深に被つてのんびり畑を耕すお婆さんだつたりと、そんなのどかな光景が頭に描かれるのであるが、新幹線のアナウンスを聞きながら何にも増してはつきりと思ひ出されたのは、一尊のお地蔵様であつた。大きさはおよそ二尺程度、もはや道とは呼べない山道の辻にぽつんと立つその地蔵様には、出会つた時から見守つていただいてきたので、私たちにとつてはもはや守り神と云へやう。私たちはお互ひ回り道になると��ふのに、道端で出会ふと毎日のやうにそのお地蔵様を目指し、ひとしきり遊んだ後、手を合はせてから袂を分かつてゐた。さう云へば最後に彼女の姿を見たのもそのお地蔵様の前であつたし、夢の中でも彼女はそのお地蔵様の傍にちよこんと座つて、リンと云ふ澄んだ鈴の音を鳴らしながら、昔と同じ人懐つこさうな目をこちらに向けてゐた。ちなみにこゝで一つお伝へしておくと、彼女の夢を見た日、それは私が故郷を離れ、大阪の街へと引つ越した日と同じなのである。そしてその時に、私は何か大切なものをそこへ埋めたやうな気がするのである。――と、こゝまで考へれば運命的な何かを感じずには居られまいか。彼女が今何処で何をしてゐるのかは分からない。が、夢を通じて何かを訴へかけてきてゐるやうな気がしてならないのである。私の旅の目的は、今は無き実家を訪れるといふのではなく、彼女との思ひ出が詰まつたその地蔵を訪れること、いや、正確には、小学校からの帰り道をもう一度この足で歩くことにあつた。
とは云つても、地元へは大阪からだと片道三四時間はかゝるので、昼過ぎに自宅を出発した私が久しぶりに地に足をつけた時にはすつかり辺りは暗くなりつゝあつた。故郷を離れた二十年のうちに帰らなかつたことはないけれど、地方都市とは云つても数年と見ないあひだに地味に発展してゐたらしく、駅周辺はこれまで見なかつた建物やオブジェがいくつか立ち並んでゐて、心なしか昔よりも賑やかな雰囲気がする。駅構内もいくつか変はつてゐるやうであつたが、いまいち昔にどんな姿をしてゐたのか記憶がはつきりしないため、案内に従つてゐたらいつの間にか外へ出てしまつてゐた程度の印象しか残つてゐない。私は泊めてくれると云ふ従妹の歓迎を受けながら車に乗り込んで、この日はその家族と賑やかな夜を飲み明かして床についた。
  明くる日、従妹の家族と共に朝食をしたゝめた私は、また機会があればぜひいらつしやい、まだ歓迎したり無いから今度は家族で来て頂戴、今度もまたけんちやんを用意して待つてゐるからと、惜しまれながら昨晩の駅で一家と別れ、いよ〳〵ふるさとへ向かふ電車へと乗つた。天気予報の通りこの日は晴��間が続くらしく、快晴とはいかないまでも空には透き通るやうに薄い雲がいくつか浮いてゐるだけである。こんな穏やかな日曜日にわざ〳〵出かける者は居ないと見えて、二両しかない電車の中は数へられるくらゐしか乗客はをらず、思ひ〳〵の席に座ることが出来、快適と云へば快適で、私は座席の端つこに陣取つて向かひ側の窓に映る景色をぼんやりと眺めてゐたのであるが、電車が進むに連れてやはり地方の寂しさと云ふものを感じずにはゐられなかつた。実は昨晩、駅に降り立つた私が思つたのは、地方もなか〳〵やるぢやないかと云ふことであつたのだが、都会から離れゝば離れるほど、指数関数的に活気と云ふものが減衰して行くのである。たつた一駅か二駅で、寂れた町並みが現れ始め、道からは人が居なくなり、駅もどん〳〵みすぼらしくなつて行く。普段大阪で生活をしてゐる私には、電車に乗つてゐるとそのことが気になつて仕方がなかつた。さうかと云つて、今更故郷に戻る気もないところに、私は私の浅ましさを痛感せざるを得なかつたのであるが、かつての最寄り駅が近づくに従つて、かう云ふ衰退して行く街の光景も悪くは無いやうに感じられた。それは一つにはnostalgia な気持ちに駆られたのであらう、しかしそれよりも、変はり映えしないどころか何もなかつた時代に戻りつゝある街に、一種の美しさを感じたのだらうと思ふ。何にせよ電車から降り立つた時、私は懐かしさから胸いつぱいにふるさとの空気を吸つた。大きいビルも家も周りにはなく、辺り一面に田んぼの広がるこの辺の空気は、たゞ呼吸するだけでも大変に清々しい。私はバス停までのほんの少しのあひだ、久しく感じられなかつたふるさとの空気に舌鼓を打ち続けた。
バス停、……と云つてもバスらしいバスは来ないのであるが、兎に角私はバスに乗つて、ちやつとした商店に囲まれた故郷の町役場まで行くことにした。実のこと、さつきまで故郷だとかふるさとだとか云つてゐたものゝ、まだ町(ちやう)すらも違つてをり、私のほんたうの故郷へは駅からさらに十分ほどバスに揺られ無ければ辿り着けず、実家へはその町役場から歩いて二十分ほどかゝるのであるが、残念なことにそのあひだには公共交通機関の類は一切無い。しかしかう云ふ交通の便の悪さは、田舎には普通なことであらう。何をするにしても車が必須で、自転車で移動をしやうものなら急な坂道を駆け上らねばならず、歩かうものならそれ相応の覚悟が要る。私は自他ともに認める怠け者なので、タクシーを拾はうかと一瞬間悩んだけれども、結局町役場から先は歩くことした。母校の小学校までは途中まで県道となつてをり、道は広く平坦であるから、多少距離があつても、元気があるうちはそんなに苦にならないであらう、それに何にも増して道のすぐ傍を流れる川が美しいのである。歩いてゐるうちにそれは美化された思ひ出であることに気がついたけれども、周りにはほんたうに田んぼしか無く、ガードレールから下をぐつと覗き込むと、まだゴツゴツとした岩に水のぶつかつてゐるのが見え、顔を上げてずつと遠くを見渡すと、ぽつぽつと並ぶ家々の向かうに輪郭のぼやけた山々の連なる様が見え、私はついうつかり感嘆の声を漏らしてしまつた。ほんたうにのどかなものである。かうしてみると、時とは人間が勝手に意識をしてゐるだけの概念なやうにも思へる。実際、相対性理論では時間も空間的な長さもローレンツ変換によつて同列に扱はれると云ふ。汗を拭いながら足取りを進めてゐると、その昔、学校帰りに小遣ひを持ち寄り、しば〳〵友達と訪れた駄菓子屋が目に入つて来た。私が少年時代の頃にはすでに、店主は歩くのもまゝならないお婆さんであつたせいか、ガラス張りの引き戸から微かに見える店内は嫌にガランとしてゐる。昔はこゝでよく風船ガムであつたり、ドーナツであつたり、はたまた文房具を買つたりしたものであつたが、もう営んではゐないのであらう。その駄菓子屋の辺りがちやうど田んぼと人の住処の境で、県道から外れた一車線の道先に、床屋や電気屋と云つた商店や、古びたしまうたやが立ち並んでゐるのが見えるのだが、どうもゝうあまり人は居ないらしく、その多くはピシャリと門を締め切つてゐる。中には荒れ屋敷化してしまつた家もあつた。
と、そこでやうやく母校の校庭が見えて来た。町役場からゆつくり歩いて二十五分と云つたところであらうか、時刻を確認してみるとちやうど午前十一時である。徐々に気温が上がつて来てゐたので、熱中症を心配した私は、適当な自販機を見つけるとそこで水を一本買つた。小学校では何やら催し物が開催されてゐるらしく、駐車場には何台もの車が停まつてをり、拡声器を通した賑やかな声が金網越しにぼや〳〵と聞こえてきたのであるが、何をやつてゐるのかまでは確認はしてゐない。おそらく子供会のイベントでもやつてゐたのであらう。さう云へば私も昔、めんだうくさい行事に参加させられた憶えがある。この学校は作りとしてはかなり平凡であるのだが、さすがに田舎の学校ともあつて緑が豊富であり、裏には先程沿ひながら歩いて来た川が通つてゐる。久しぶりにその川にまで下つてみると、記憶とは違つてカラリと乾いた岩がゴロゴロと転がつてをり、梅雨時のじめ〳〵とする季節でも涼を取るには適してゐるやうに感じられた。一体、こゝは台風がやつて来ると自動的に被害を受ける地域で、毎年子どもたちが夏休みに入る頃には茶色く濁つた濁流が溢れるのであるが、今年はまだ台風が来てをらず、降水量も少なかつたこともあつて、さら〳〵と小川のやうな水の流れが出来てゐる。昔、一度だけ訪れたことのあるこの川の源流部でも、このやうな流れが出来てゐたやうな憶えがある。が、源流のやうに水が綺麗かと問はれゝば、決して肯定は出来ない。手で掬つてみると、太陽の光でキラキラと輝いて一瞬綺麗に見えるけれども、じつと眺めてゐると苔のやうな藻がちらほら浮いてゐるのが分かり、鼻にまで漂つて来る匂ひもなんだか生臭い。それにしても、この手の中で漂つてゐる藻を藻と呼んでいゝのかどうかは、昔から疑問である。苔のやうな、とは形容したけれども、その色は生気を感じられない黒みがかつた赤色で、実はかう云ふ細長い虫が私の手の上で蠢いてゐて、今も皮膚を食ひ破つて体の中に入らうとしてゐるのだ、と、云はれても何ら不思議ではない。さう考へると、岩に引つ付いてうよ〳〵と尻尾を漂はせてゐる様子には怖気が走る。兎に角、話が逸れてしまつたが、小学生の時分に中に入つて遊んだこの川はそんなに綺麗では無いのである。むしろ、影になつてゐるところに蜘蛛の巣がたくさん巣食つてゐたり、どす黒く腐つた木が倒れてゐたりして、汚いのである。
再び母校へと登つて、先程通つて来た道に戻り、私は歩みを進め初めた。学校から出るとすぐに曲がり角があつて、そこを曲がると、右手には小高い山、左手にはやはり先程の川があり、その川の向こう側に延々と田んぼの並んでゐるのが見える。この辺りの光景は今も昔も変はらないやうである。道の先に見える小さな小屋だつたり、ガードレールだつたり、頼りない街灯も変はつてをらず、辛うじて残つた当時の記憶と綺麗に合致してゐる。私は変はらない光景に胸を打たせつゝ、右手にある山の影の下を歩いていつた。そして、いよ〳〵突如として現れた橋の前に辿り着くや、ふと歩みを止めた。彼女と学校帰りに会ふのはいつもこゝであつた。彼女は毎回リンリンと軽快な鈴の音を辺りに響かせながら、どこからともなく現れる。それは橋の向かふ側からゆつくりと歩いて来たこともあれば、横からすり寄つて来たこともあつたし、いきなり背後を取られたこともあつた。私はゆつくりと目を閉じて、ゆつたりと深呼吸をして、そつと耳を澄ませた。――木々のざわめきの中にかすかな鈴の音が、確かに聞こえたやうな気がした。が、目を開けてみても彼女はどこにも居ない。今もどこかから出てきてくれることを期待した訳ではないが、やはり一人ぽつんと立つてゐるのは寂しく感じられる。
橋の方へ体を向けると、ちやうど真ん中あたりから強い日差しが照りつけてをり、反射した光が目に入つて大変にまばゆいので、私はもう少し影の下で居たかつたのであるが、彼女がいつも自分を待たずに先々行つてしまふことを思ひ出すと、早く歩き始めなければ置いていかれてしまふやうな気がして歩き始めた。橋を渡り終へてすぐに目に飛び込んで来たのは、川沿ひにある大きなガレージであつた。時代に取り残されたそれは、今も昔も所々に廃材が積み上げられてゐ、風が吹けば倒れてしまいさうなシャッターの中から、車だつたり、トラックの荷台だつたりがはみ出してゐるのであるが、機材や道具などが放りつぱなしになつてゐることから、未だに営んではゐるらしい。何をしてゐるのかはよく知らない。が、聞くところによると、こゝは昔からトラックなどの修理を行つてゐるところださうで、なるほど確かにたまに危なつかしくトラックが通つて行つてゐたのはそのためであつたか。しかし、今見ると、とてもではないが生計が成り立つてゐるやうには思へず、侘しさだけが私の胸に吹き込んで来た。二十年前にはまだ塗料の輝きが到るところに見えるほど真新しかつた建物は、今では積み上げられたガラクタに埋もれたやうに古く、痛み、壁なぞは爪で引つ掻いたやうな傷跡がいくつも付けられてゐる。ガレージの奥にある小屋のやうな家で家族が暮らしてゐるやうであるのだが、その家もゝはや立つてゐるのが限界なやうである。さて、私がそんなボロボロのガレージの前で感傷に浸つてゐたのは他でもなく、彼女がこゝで遊ぶのが好きだつたからである。する〳〵と積まれたガラクタの上を登り、危ないよと云ふこちらの声を無視して、ひよい〳〵とあつちこつちに突き出た角材に乗り移つて行き、最後には体を蜘蛛の巣だらけにして降りてくる。体を払つてやらうと駆け寄つても、高貴な彼女はいつもさつと逃げてしまふので、仕方なしにそのへんに生えてゐる狗尾草(エノコログサ)を手にして待つてゐると、今度はそれで遊べと云はんばかりに近寄つて来ておねだりをする。その時の、手にグイグイグイグイ鼻を押し付けてくる仕草が殊に可愛いのであるが、だいたいすぐに飽きてしまつて、気がついた時には喉をゴロゴロと云はしながら体を擦り寄せて来る。これは愛情表現と云ふよりは、早く歩けと云ふ彼女なりの命令で、無視をしてゐるとこちらの膝に乗つてふてくされてしまふので、帰りが遅くならないようにするためには渋々立ち上がらなければならない。
さう云へばその時に何かを食べてゐたやうな気がするがと思ひ、私は彼女との思ひ出を振り返りつゝ辺りを見渡してゐた。するとガレージの横に鬱蒼と生い茂る草木の中に、柿の木と桃の木の生えてゐるのが見つかつた。だが、ほんたうに一歩も入りたくないほどに、大葉子やら犬麦やら髢草が生えてをり、当時の私が桃やら柿やらを毟り取つて食べてゐたのかは分からない。しかしさらに見渡しても、辺��は田んぼだらけで実のなる木は無いことから、もしかしたら先程の橋を渡る前に取つて来て、彼女の相手をしてゐるあひだに食べてゐたのかもしれない。先程道を歩いてゐる時にいくつかすもゝの木を見かけたから恐らくそれであらう。なるほど、すもゝと云ふ名前にはかなり聞き覚えがあるし、それになんだか懐かしい響きもする。それにしてもよく考へれば、そのあたりに生えてゐる木の実なぞ、いつどこでナメクジやら毛虫やらが通つてゐるのか分からないし、中に虫が巣食つてゐたのかもしれないのに、当時の私はよく洗いもせず口にしてゐたものである。今思ふとものすごく怖いことをしてゐたやうに感じられる。何にせよ、彼女はいつももぐ〳〵と口を動かす私を不思議さうに見てきては、差し出された木の実を匂ふだけして興味のなさゝうな顔をしてゐた。なんや食べんのか、お前いつたい、いつも何食べよんな。と、問うても我関せずと云ふ風に眼の前で伸びをするのみで、彼女は彼女でしたゝかに生きてゐるやうであつた。
気がつけば私は座り込んでゐた。眼の前では彼女が昔と同じやうに、なんちやら云ふ花の前に行つては気持ちよさゝうに匂いを嗅いで、恍惚とした表情を浮かべてゐる様子が繰り広げられてゐた。少しすると彼女の幻想は私の傍に寄つて来て、早く行きませう、けふはもう飽きてきちやいました、と云ふ。そして、リンと鈴の音を立たせながらさつと身を翻して、私の後ろ側に消えて行く。全く、相変はらず人を全く待たない子である。いや〳〵、それよりも彼女の亡霊を見るなんて、私は相当暑さにやられてゐるやうであつた。すつかりぬるくなつた水を口に含むと、再び立ち上がつて、田植えが行われたばかりの田んぼを眺めながら、彼女を追ひかけ初めた。
ところで、もうすでに読者は、延々と続く田んぼの風景に飽きてきた頃合ひであらうかと思ふ。が、そのくらゐしか私のふるさとには無いのである。私ですらこの時、懐かしみよりも飽き〳〵としてきた感情しか沸かなかつたので、もう今後田んぼが出てきたとしても記さないと約束しよう。だが歩いてゐると、いくつか昔とは違つてゐることに気がついたので、それは今こゝで記しておくことにする。まず、田んぼのあぜ道と云ふものがアスファルトで鋪装されてゐた。それも最近鋪装されたばかりであるらしく、未だにぬら〳〵と黒く輝いてをり、全くもつて傍に生えてゐる草花の色と不釣合ひであつた。かう云ふのはもはや都会人である私の嘆きでしか無いが、こんな不自然な黒さの無い時代を知つてゐるだけに残念である。二つ目は、新たに発見した田舎の美しさである。これはガレージの道のりからしばらくして空を仰いだ時に気がついたのだが、まあ、順を追つて説明していかう。断末魔のやうなツクツクホーシの鳴き声を聞くために足を止めた私は、ぼんやりと眼の前にある虎杖(いたどり)を眺めてゐた。ゆつくりと目を動かすと、崖のような勾配の向こう側に田んぼがだん〳〵になっているのが見える。決して棚田と云へるほど段と段が詰まつてゐる訳ではないが、その棚田のやうな田んぼのさらに向かふ側に、楠やら竹やら何やらが青々と茂つてゐるのが見え、そして、もう少し見渡してみると空の上に送電鉄塔がそびえているのが見えた。この鉄塔が殊に美しかつたのである。濃い緑色をした木に支へられて、淡い色の空をキャンバスに、しつかりとした質感を持つて描かれるそれは、赤と白のしま〳〵模様をしてをり、おそらく私は周りの自然とのコントラストに惹かれたのだらうと思ふ。この旅で最も美しかつたものは何ですかと聞かれたならば、空にそびえ、山と山を繋ぐ鉄塔ですと答へやう、それほどまでに私はたゞの鉄塔に感銘を受けてしまひ、また来ることがあるならば、ぜひ一枚の作品として写真を撮りたいと思ふのであつた。
ところで読者はその鉄塔の下がどのやうになつてゐるのかご存知であらうか。私は彼女と一緒に足元まで行つた事がある。行き方としてはまず田舎の道を歩くこと、山の中へ通ずる道なき小さな道を見つけること、そして藪だらけのその道に実際に飛び込んでみることである。もしかすると誰かのお墓に辿り着くかも知れないが、見上げて鉄塔がそびえてゐるならば、五分〳〵の割合でその足元まで行きつけるであらう。お地蔵様へ向かふために山道(やまみち)に入つた私は、その小さな道のある辻に来た時、つい鉄塔の方へ足を向けさうになつた。が、もうお昼時であるせいかグングン気温が上がり始め、路端(みちばた)の草いきれが目に見えるやうになつてゐたので、鉄塔の下で足を休めるのは次の機会にと思ひ、山道を登り始めた。別に恐ろしいと云ふほどではないけれども、車の音がずつと遠くに聞こえるせいか現世から隔離されたやうで、足取りはもうずいぶん歩いて来たにも関はらずかなり軽快である。私は今頃妻が子供と何をしてゐるのかぼんやりと想像しつゝ、蔓のやうな植物が、にゆる〳〵と茎を伸ばしてゐる柔らかい落ち葉の上を、一歩〳〵よく踏みしめて行つた。日曜の夕食時、もしかするとそれよりも遅くなるかもしれないが早めに帰ると云ふ約束の元、送り出してくれた妻は、今日はあなたが行きたがつてた王子動物園に行つてくるからいゝもん、と仰つていらつしやつたから、思ふに今頃は、子供を引き連れて遊びに行つてゐるのであらう。それも惜しいが、ペットたちとのんびりと過ごせなかつたのはもつと惜しい。特に、未だに懐いてくれない猫と共に週末を過ごせなかつたのは、もうかれこれ何年ぶりかしらん? あの猫を飼ひ始めてからだから、恐らく六年ぶりであらう。それにしてもどうして猫だけは私を好いてくれないのだらうか、家で飼つてゐる猫たちは、もう何年も同じ時を過ごしてゐるのに、私をひと目見るや尻尾を何倍にも膨らませて威嚇をしてくる。そんなに私が怖いのか。――などと黙々と考へてゐたのであるが、隧道のやうな木の生い茂りが開けた頃合ひであつたか、急に辺りが暗くなつて来たので空を仰いで見ると、雨の気配のする黒い雲が太陽を覆ひ隠してゐた。私は出掛けに妻に、どうせあなたのことだから雨が降ると思ふ、これを持つていけと折り畳み傘を一つ手渡されてゐたものゝ、これまで快晴だつたからやーいと思つてゐたのであるが、次第に埃つぽい匂いが立ち込めて来たので急いで傘を取り出して、じつと雨の降るのを待つた。――さう云へば、昔も雨が振りさうになつた時には彼女も傘に入れて、かうしてじつと佇んでゐたな。たゞ、そのまゝじつとしてゐてはくれず、雨に濡れると云ふのに、彼女はリンリンと軽やかな鈴の音を云はせながら傘の外に飛び出してしまふ。そして早く行かうと云はんばかりに、山道の少し上の方からこちらを見下ろして来くる。――懐かしい。今でもこの赤茶けた落ち葉と木の根の上に、彼女の通る時に出来る、狼煙のやうな白い軌跡が浮かび上がつてくるやうである。と、また昔を懐かしんでゐると、先程の陰りはお天道様のはつたりであつたらしく、木の葉の隙間から再び太陽が顔を覗かせるやうになつてゐた。私は傘を仕舞ひ込むと、再び山道を練り歩いて行つた。
だが、雨が降らなかつたゞけで、それからの道のりにはかなり恐ろしいものがあつた。陽が辺りに照つてゐるとは云へ、風が出てきて木の���がゆら〳〵とゆらめいてゐたり、ふつと後ろでざあつと音がしたかと思ひきや、落ち葉が何枚も〳〵巻き上げられてゐたり、時おり太陽が雲に隠れた時なぞは、あまりの心細さに引き返さうかとも思つた。そも〳〵藪がひどくて木の棒で掻き分けなければまともに進めやしない。やい〳〵と云ひながら山道をさらに進んで行くと、沼のやうにどんよりと暗い池が道の側にあるのだが、物音一つ、さゞなみ一つ立てずに、山の陰に佇んでゐるものだから、見てゐないうちに手が生えて来さうで、とてもではないが目を離せなかつた。そんな中で希望に持つてゐたのは、別の山道を登つても来ることの出来るとある一軒家だつたのだが、訪れてみると嫌にひつそりとしてゐる。おや、こゝはどこそこの誰かの父親か親戚かゞ住んでいたはずだがと思ひつゝ窓を覗いても誰もをらぬ。誰もをらぬし、ガランとした室内には酷く傷んだ畳や障子、それに砕けた天井が埃と共にバラバラと降り積もつてゐる。家具も何もなく、コンロの上にぽつんと放置されたヤカンだけが、寂しくこの家の行末を見守つてゐる。――もうとつくの昔にこの家は家主を失つて、自然に還らうとしてゐるのか。私は急に物悲しくなつてきて手の甲で目元を拭ふと、蓋の閉じられた井戸には近づかずにその家を後にした。行けば必ずジュースをご馳走してくれる気のいゝお爺さんであつた。
私の憶えでは、この家を通り過ぎるとすぐに目的のお地蔵様へと辿り着けたやうな気がするのであるが、道はどん〳〵険しくなつて行くし、全く記憶にない鉄製の階段を下らなければいけないし、どうやらまだ藪と戦はねばならないやうであつた。もうかうなつてくると、何か妖怪的なものにお地蔵様に行くのを拒まれてゐるやうな気さへした。だが、引き返す気は無かつた。記憶はほとんど残らなかったけれども、体は道順を憶えてゐるのか、足が勝手に動いてしまふ。恐怖はもはや旅の友である。先の一軒家を超えてからと云ふもの、その恐怖は猟奇性を増しつゝあり、路端(みちばた)にはモグラの死骸やネズミの死骸が、何者かに噛み殺されたのかひどい状態となつて散乱してゐたのであるが、私の歩みを止められるほど怖くは無かつた。途中、蛇の死体にも出くわしたけれども、どれも色鮮やかなアオダイショウであつたから、全く怖くは無い。そんなものよりよつぽど怖かつたのは虫の死骸である。私の行く手には所々水たまりが出来てゐたのであるが、その中ではおびただしいほどのカブトムシやカマキリが、蠢いているかのやうに浮いてゐて、ひやあ! と絶叫しながら飛び上がつてしまつた。別にカブトムシの死骸くらゐ、夜に電気をつけてゐると勝手に飛んでくるやうな地域で幼少期を過ごしたから、たいしたことではない。問題は数である。茶色に濁つた地面に、ぼつ〳〵と無数の穴が開いて、そこから黒い小さな虫が目のない顔を覗かせてゐるやうな感じがして、背中がゾク〳〵と殺気立つて仕方がなかつた。かういふ折には、ぼた〳〵と雨のやうに蛭が落ちてくるのが御約束であるのに、まつたく気持ち悪いものを見せてくるものである。
と、怒つたやうに足を進めてゐると、いつしか私は恐怖を乗り越えてゐたらしく、勇ましい足取りで山道を進んでゐた。するとゞうであらう、心なしか道も歩きやすくなり、轍が見え始め、藪もほとんど邪魔にならない程度しか前には無い。モグラの死骸もネズミの死骸も蛇の死骸も、蓮の花のやうな虫の死骸も、気がつけば道からは消えてゐた。そして一軒家を後にしてから実に二十分後、最後の藪を掻き分けると、そこには確かに記憶の通りのお地蔵様が、手をお合はせになつて私をお待ちしていらつしやつた。私は地蔵様の前まで来ると、まずは跪いてこゝまで無事に辿り着けたことに、感謝の念を唱へた。そして次々と思ひだされる彼女の姿に涙をひとしきり流し、お地蔵様にお断りを申し上げてから、その足元の土を手で掘つて行つた。冒頭で述べた、かの地蔵の傍に埋めたなにか大切な物とはこのことである。二十年のうちに土がすつかり積み重なつてしまつてゐたらしく、手で掘るのは大変だつたし、蚯蚓やら蟻やらよく分からない幼虫やらが出てきてゾツとしたけれども、しばらくするとペットボトルの蓋が見えてきた。半分ほど姿を見せたところで、渾身の力を込めて引き抜き、私は中にあつた〝それ〟を震へる手で握りこんでから、今度は傍にあつた漬物石のやうな大きな石の前に跪いた。手を合はせるときに鳴つた、リン、……と云ふ可愛らしい鈴の音は、蝉の鳴き声の中に溶け込みながら山の中へ響いて行き、恰も木霊となつて、再び私の手の中へ戻つてくるのであつた。
  帰りの道のりは行きのそれとは違つて、かなり楽であつた。恐らく道を間違へてゐたのであらうと思ふ。何せ、先程見たばかりの死骸も無ければ、足をガクガクさせながら下つた階段も無かつたし、何と云つても二三分としないうちに例の一軒家へとたどり着いたのである。私は空腹から元の道へは戻らずに一軒家の近くにある道を下つて県道へ出、一瞬間今はなき実家の跡地を眺めてから帰路についた。いやはや、なんとも不思議な体験であつた、よく考へれば蝮に噛まれてもおかしくないのによく生きて帰れたものだ、とホツとすると同時に、なんとなく肩が軽くなつたやうな心地がした。――あゝ、お前でも放つたらかしにされるのは嫌なんだな。――と、私はもう一度顔が見たいからと云つて、わざ〳〵迎へをよこしてくれることになつた従妹を小学校で待ちながら、そんなことを思つた。
結局あのペットボトルは再びお地蔵様の足元に埋めた。中に入つてゐたものは私のものではなく、彼女のものであるから、あそこに埋めておくのが一番であらう。元はと云へば、私のなけなしの小遣ひで買つたものであるから、持つて帰つても良かつた気がしないでもないが、まあ、別に心残りはない。
さて、ふるさとに帰るとやはり思ふものがありすぎて、予定してゐたよりも大変長くなってしまつたけれども、これで終はりである。ちなみに、こゝにひつそりと記した里帰りの話は、今の今まで誰一人として信じてくれてはゐないので、もしどなたか一人でも興味を引き立てられた者がいらつしやれば本望である。
 (をはり)
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mashiroyami · 5 years
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Page 102 : 地を這う者たち
 アーレイスでポケモンを従える人間は限られている。誰もがポケモンを持ち、連れ歩き、共に生活をしているわけではない。多少の地域差はあれど人とポケモンの線引きはむしろ強く、それは野生と社会の境界線そのものでもあった。故に、どの町にもポケモンを扱える医者が居るわけではない。ポケモンと一口に括っても、その種族は何百と報告されており、千を超えるとの説もある。全てのポケモンを一律に診ることのできる者はそういない。簡単な治療や体力回復ならば大きな問題は無いが、重症度が高くなるほどそうはいかないのは人間と変わらない。  キリに向かう途中で立ち寄ったフラネの町にて真っ先に診療所に足を向けると、虫ポケモンは専門外だと言われラーナーは眩暈を覚えた。頼み込んで包帯を換えてもらい痛み止めである水剤を貰い、門前払いにされなかっただけ御の字だったが、考えてみれば当然なもののどこでも治療を受けられるとは限らないというのは思いがけない重石だった。  出入り口の屋根の下で曇天を仰ぐ。しとしとと降る雨は、正午から降り出したものだ。雨の気配は朝から漂っており長く危惧していたが、結局この町、フラネに辿り着くまで雨粒が落ちることは無かった。  ラーナーは怯えるような深い溜息をつく。心の澱みは一色に限らない。アメモースの傷口を実際に目にしたのは初めてだったが、それ以上に衝撃的な出来事が焼き付いている。壁にもたれ掛かりながら、欠片を拾うように思い返す。  水風船のような弾力のある身体に入った忌まわしい亀裂、そこを白い糸が幾度も往復していた。内包された繊維や肉体が鮮明に露出していたのだろう部分は縫われ息を潜めていたけれど、大きく腫れあがり、決定的に足りていない何かが存在していた証である傷だった。  包帯を取り、傷の具合を確認しようと患部周辺に医師の手が触れた瞬間、アメモースは決壊したように叫んだ。悲痛な金切り声はラーナーが耳にしたことのない類だった。  たまらず名を呼び近付いたが、目玉を模した触角が力任せにラーナーの頬を弾き、突き飛ばした。歪な羽ばたきでその場を飛び、しかし壊れたように予想もできぬ不安定な軌道を描いたかと思えばすぐに頭から墜落してしまう。床に叩きつけられた音が処置室に響き、そして尚も触角は揺れ、小さな翅は激しく震えた。床を転がるように暴れ回る姿は、悠々と空を滑空していた姿とはまるで対照的で、羽虫が最期に死に物狂いで足掻いている姿と重なった。そしてその目は、抉り出すようにぐるりと向いたその目は、座り込んで呆気にとられているラーナーを捉えた。つぶらで純粋な漆黒の双眸が、はっきりとラーナーを視た。声と視線で訴えかける、なにか強い意志が、彼女を槍の如く貫いた。  アメモースは、嗚咽を漏らしていた。  抑えつけられながら即効性の鎮静剤を投与されその場は沈黙したが、ラーナーはアメモースから発せられた衝撃に戸惑っていた。既に痛みなど無いはずなのに、叩かれた頬がまだ熱を帯びているようだった。  掌に収まっている小さな紅白に視線を落とす。細い手では抱えられないだけのなにかが、無理矢理この中に詰め込まれているのだ。  途方に暮れるとはこのことだろう。焼き尽くすような烈しさを前にしながら、尚も膜を張っている自分の心が虚しかった。  不透明な感傷を抱えたままラーナーは傘を差し、エーフィと共にその場を後にした。  フラネの町は長い草原帯を抜けた場所にある町で、白い壁と色とりどりの屋根が特徴的な町並みだ。それまで続いていた閑散とした風景の中にぽっかりと浮かぶような町は、田舎町だが愛らしい情緒がある。煤汚れたような深い色をした煉瓦造りの道路が町全体に張り巡らされているが、濃縮したように建物が連なっているためにどこも道が狭い。ラーナーは入り組んだ迷路のような町だという印象を持った。見た目は可愛らしいが、気を抜くとどこにいるのか解らなくなってしまいそうだった。だが、人口が少なく路地が狭い分人目には付きにくい。隠れ場所が多いようで、そのことはラーナーを安心させた。  音も無く降る雨の中を進んでいると、思考が明滅する。アメモース。宿。服装。食事。それから、じゅくじゅくと泡立つ音を立てている足下。雨の中を進んでいれば尚更だ。気になって仕方が無い。  町をぼんやりと彷徨っていると、青果店、肉屋を始めとした商店の集まる広場に出た。中央には巨大な樹が枝を伸ばしており、象徴的な佇まいをしている。樹を中心とした花壇は季節の花が植えられており、柔らかい桃色や紫色がしっとりと初秋を彩っている。雨に濡れる様は艶やかでもある。広場には買い物籠を手に品定めをしている者もいれば、浮き足立った表情でカメラを構える者もいる。全体に漂う和やかな賑わいは鬱屈とした雨模様を感じさせない。  霧雨のような人々の他愛もない会話を横にラーナーは壁を沿うように広場を歩き、どこにも立ち寄らなかった。店先に並ぶ彩色豊かな食べ物が目に付いたが、視界が濁っているように見ただけでうんざりした。首都を出てから、結局まだまともな食事をしてい���い。腹を空かしているはずなのに、全身が静かに拒否をしている。  広場から幾つも伸びている道の一つに足を踏み入れた。  再び狭い路地に入り声が遠くなったところで、ラーナーはひたと足を止め顔を上げた。  こじんまりとした白壁の建物だが、店頭に貼り出された一枚の大きな写真が目に入ったのだ。  険しい岩肌と真っ白な雪。辺りを薄らと漂っているのは霧のようにも雲のようにも見える。そしてあまりにも鮮やかな青い空。上空ほど濃い色になり、繊細なグラデーションが一切の汚れを知らぬ澄んだ空気を想像させた。雪山の写真だった。それも山頂だ。中央には、爽快な表情で高々と両拳を突き上げている男性の姿が写されている。  ラーナーは何故だかその写真に釘付けになってしまう。  山などまともに登ったことは無いが、雪山の険しさは言われずとも納得できる。切り立った岩肌は大自然の牙そのもので、美しさと同時に畏怖を感じさせる。凍える世界なのだろう、写真で満面の笑みを広げガッツポーズをしている彼も、背中を覆い尽くすような巨大なリュックサックを背負い、顔が埋もれているような防寒具を着込んでいる。  どこだろうか、素直に疑問が浮かび上がり目を凝らすと、写真の隣の扉が開き危うく声をあげそうになった。  写真よりもやや丸みを帯びた男性が、店内から顔を覗かせた。 「お客さん?」  尋ねられ、ラーナーは心臓を高鳴らせながら思わず曖昧に首肯した。そうか、と彼は笑う。笑窪が深く、ほっとするような笑い方をする人だった。がっしりとした体つきだがどこか草臥れ、三十か四十代程の外観に見える。 「いやね、あんまり夢中になってるようだったから、ちょっと気になりまして。僕も入り口近くにいて、たまたま見えたから」  そう言って顎で入り口を指す。扉は全面硝子張りになっていて、室内がよく見えた。中にも同じような山の写真が何枚か壁に飾られ、棚に並べられている商品も登山を想像させるものばかりである。 「ご迷惑でしたか」 「まさか。単に珍しくて」男性は腰に手を当て、隣に立つ。「山、登るんですか?」  ラーナーは即座に首を横に振った。 「そうじゃないんですけど、目に入って」 「そうですか、ここは登山向けの物しか置いてないけれど」  不意に、はっと彼は目を丸くししゃがみ込んだ。 「驚いた……エーフィだって」  男性の顔が興味深げに輝く。まるで新しい発見をした少年のような純粋な表情だ。  顔を近付けられたエーフィは二叉の尾を揺らし、動揺している様子が無い。エーフィは感情の機微を繊細に感じ取れるポケモンだ。彼から向けられた感情に悪意が混ざっていないことが見て取れる。 「君のポケモンですか」 「はい、一応」 「トレーナーとは恐れ入るな。良かったら、触っても?」  どうぞ、と促すと、男性は優しい手つきでエーフィの巨大な耳の後ろをさすり、それから頭全体を掴むように大きく撫でた。大きな手だった。甲の隆起が荒々しく、一本一本の指が太い。 「まさか生きていてエーフィに会える時が来るとはなあ」  大袈裟だと思いラーナーはくすりと笑った。けれどそうなのかもしれない。エーフィとブラッキーはどこに行っても物珍しい視線を集める。当然のように自分はこの二匹を連れているけれど、自分の方が異端なのかもしれない。正確には、彼等に出逢い育て上げた両親の方が。 「ありがとうございます。急に悪かったね」  長い胴体をゆったりと撫でてから、満足げに男性は笑い、徐に立ち上がった。ラーナーとは頭一つ以上の差がある。見上げた勢いで写真が目に入り、気になった。 「この写真の人は」 「ああ、僕です」  やはり。ラーナーは達成感に満ちている写真と現実の男性を無意識に見比べる。照れ臭そうに男性は苦笑いを浮かべた。 「結構前の写真ですけど。五年以上前かな」 「どこの山ですか」 「シルビア山脈。西に連なっている山脈の中でも険しい山です」  ラーナーは唾を呑み、改めて写真を見る。  険しくも美しい山並み。白い断崖絶壁の向こうには、遙かなる青が、絵の具で一気に塗りたくったように広がっている。白と青で構成された中で高々と拳を突き上げている一枚が、なんとも爽やかだ。どんよりとした雨が降っている今、余計に華やかに浮かび上がっている。 「最近は小さな山ばかりだけど、この山を登頂できたのは今でも誇りでね、でかでかと主張してしまうんですよ」  でも、と前置きをする。 「自分で言うのもなんですが良い写真でしょう。アピールするには良い一枚です」 「じゃあやっぱりお店も」 「そうですね。見ていきますか?」  ラーナーは自然と頷いた。  招かれた店内はアウトドア向けの商品が所狭しと置かれ、棚と棚の間は人ひとり分でいっぱいになる狭さだった。男性は身体が大きいので、余計に窮屈のようだった。  入り口正面の壁際にはずらりと服がかけられている。レインウエアから下着の類まで、僅かな隙間も埋める品揃えであった。部屋を仕切るような棚にはヘッドライトやコンパスなど細々とした商品が並べられ、ラーナーはしげしげと眺める。 「あ」  店内を移動しながら、ラーナーは声をあげる。部屋の奥にはトレッキングシューズや本格的な登山靴が並べられていた。 「靴を探してるんですか」 「あ、いえ……はい」  狼狽えながら辛うじて肯定すると、男性は嬉しそうに靴の商品棚の前に立つ。 「女の子だからなあ。むさ苦しいデザインばかりで申し訳ないんですが」 「あの、私、山は登らないんですけど」 「わかってます。でも、しっかりした靴が欲しいんでしょう」  胸の奥が引っ込むような感覚がした。  僅かな狼狽を見て、男性は豪快に笑った。 「なんとなく只者じゃないような気がしたんですよ。間違っていたかな」  これだけのやりとりで、何を感じ取れるというのだろう。ラーナーは疑問に思いながらも、曖昧な表情を浮かべた。 「修行の旅かと」 「修行」  思わず繰り返してしまい、その雰囲気から間違っていたとすぐに判断したらしい。 「漫画の読みすぎか」 「いえ……でも、旅はしています」 「あ、やっぱり?」  随分と年上だろうに、ぱっと華やいだ顔が何故か子供らしい。 「エーフィなんて珍しいポケモンを持ってるし、プロトレーナーの中には強い野生ポケモンとの出会いと自らの鍛錬を求めて修行の旅に出たっていう話もあるから。他の国では、そう珍しくもない所もあるらしいしね。とはいえ、アーレイスでは確かに聞かないし、現実離れした浪漫だからなあ」  親密な雰囲気でまくし立てる男性の前で、平然とした顔を繕いながらラーナーはどきどきしながら話を聞いていた。旅をしていると正直に話してしまったことを後悔した。どこかするりと自然な物言いで懐に潜り込んでくるような雰囲気が、突いてほしくない部分に触れてしまうのではと気が気ではなかった。 「それほど重装備じゃない方がいいかな。かといって、ウォーキングシューズだと心細いだろうか」  ラーナーの心配をよそに、彼は熱心に勤しんでいる。  独り言なのか話しかけているのか判別のつきづらいような口振りで、男性の頭より少し高い位置に掲げている靴を一足取る。スニーカータイプだが生地が厚く、今ラーナーが履いているカジュアルなデザインよりもずっと無骨だ。しかし黒地に白いラインが二本入っているのがアクセントになっていて、小洒落てもいる。 「どこでも歩けるものがいいだろうな。サイズは?」 「……三十七です」 「あるかなあ。ちょっと待ってて」  靴を足下に置くと、男性はレジカウンターの奥の部屋へと入っていった。  残されたラーナーは軽くなった肩を落とし、壁一面に整然と並べられた靴を眺める。黒、灰色、茶といった落ち着いた色合いのものが多いが、中には蛍光色が全面に出された主張の強い種類もある。ラーナーにはデザイン以外の細かい違いが解らない。スニーカーデザインもあれば、ベルトで締めるタイプもあり、ブーツもある。試しに男性が床に置いていった一足を手にとってみると、今自分の履いているものより重量感があり、靴底が殆ど曲がらず驚いた。こんなもので長距離を歩けるだろうか。勿論歩かずに電車などの乗り物を駆使する方法もあるが、町で人との擦れ違いすら怯えることがあるのに、密閉空間で他人と暫く同じ空間を共にしたら、と考えるだけで背筋が震える。  それに、これではいざという時走れるかどうか。 「おまたせ」  扉が開き、男性はいくつか白い箱を抱えて戻ってきた。 「履いてみた?」 「いえ。でも、ちょっと重そうだなと」 「最初はそうかも。履いてみるとまた印象が変わると思うよ。サイズあったから試してみる?」  なんだかあれよあれよと流されているようだ。ラーナーはエーフィに一瞥すると、彼女は涼しげな顔をしていて、むしろ何故か楽しそうな印象がある。  ラーナーは提案に乗って近くの木椅子に座り、スニーカーを脱ぐ。雨中を歩いていたからだろう、穴が出来た影響で中までびしょ濡れで靴下も足首まで水が浸透していた。見るも無惨な姿に言葉が出ない。人目に晒しているのだから尚更たちが悪い。  だが、それほど気に留めてないように男性はしゃがみ込んでせかせかと箱から真新しい靴を出し、準備を進めている。  とはいえ、少なくともこんな足で試し履きをするのは憚られる。ラーナーは鞄から使い古したビニール袋を取り出し濡れた靴下を放り込んで、急いで予備を履く。 「随分履き込んだんだね」すっかり汚れたスニーカーを一瞥し、男性はゆったりとした表情を浮かべた。「その靴を見て、きっと靴が欲しいだろうなあとか、随分と歩いてきた人なんだろうなあとか思った」 「それだけで?」  ラーナーは目を丸くする。 「勿論靴だけじゃない。エーフィもそうだけど、膨らんだ鞄とか、服もどことなく着古している感じとか……あ、気を悪くしたなら申し訳ないけど」  慌ててラーナーは首を横に振ると、男性は肩を揺らして笑った。 「まあ、一番はなんとなく同業者の匂いがしたってとこかな。さ、どうぞ」  足下に差し出され、ラーナーは僅かに胸が高鳴った。  するりと足を入れると、新品独特の、足を引き締めながらもぱりぱりと弾き返すような質感がした。そこで改めて、自分がどれだけ今の靴を履き潰してきたかを実感する。  両足を揃え、すうっと立ち上がる。やはり靴底が堅く、厚い分背が伸びたような気になった。試してみると案外重みは感じない。膨らんでいる分、急に足が大きくなったようなアンバランス感が可笑しかった。 「いいね」  満足げに言いながら、彼は素早い手捌きで靴紐を締める。一つ一つの動作が早いが、急いでいるというよりも、最初の一歩を躊躇せずに踏み込める性格なのだろうとラーナーは思った。自分に自信を持ってて、その自信に揺らぎの無い確信を得ている人。  促され歩いてみると、重みが安定感を生み出しているような気がした。数歩離れ、また戻る。確かめるように、じっくりと一歩一歩を踏みしめる。 「どう?」 「思ったより歩きやすいです」 「それは良かった」  また少年のように笑った。表情だけを見ると、気軽で隙のある雰囲気が、彼が一回りも二回りも年上であろうことを忘れさせる。 「でも、底が堅いのがやっぱり気になります」 「こんな平らな床だと余計ね。でも、たとえば岩道とか滑りやすい道だとやはり違う。元々履いていたこのスニーカーだと地面のでこぼこが直接伝わるから、足が疲れやすくなる。それでなくとも足は体重に耐え全身を支えているものだからね。これだと底が衝撃を吸収してくれるから足に疲労が溜まりにくいんだ」  熱の籠もった説明を聞きながら、ラーナーは相槌を打つ。元々疲れやすいのは体力が無いこともあろうが靴のせいでもあったのだろうか、などと考えるが、そもそも比較対照は無尽蔵の体力をもっていたことを思い出し、すぐに自ら消し去った。 「それに生地が厚く防水加工もしてあるから、雨や雪にも強い。うん、悪くないと思う。まあ、一番は君が気に入るかどうかだ」  ラーナーは逡巡して、顔を上げる。 「他も履いてみていいですか?」 「勿論」  靴を脱ぎながら棚を仰ぐ。基本的には男性を対象としている品揃えなのだろう、一目で大きいと解るサイズばかりが揃っている。こじんまりと左側に女性向けの靴が寄せられていた。  いくつか履いてみたが、これで良いと踏ん切りがつかない。値段もそう簡単に出せるようなものではなく、彼女を萎縮させた。  想定外に真剣に打ち込むうちに独特の疲労感が押し寄せてきて、方角を見失ったような気分に陥る。 「ちょっと考えてもいいですか」  出直したい、という意を込め、苦い思いでそう切り出すと、男性は嫌な顔一つ見せずに頷いた。 「まだこの町に?」 「とりあえず、今日はフラネに泊まるつもりです。でも……明日雨が止んだら出ようかと」 「そうか」  男性は少し残念そうな表情を見せ、やや考え込む。 「明日、出る前にもう一度来ないか?」  引き留める提案に、ラーナーは睫毛を伏せた。  彼の柔和な言動や雰囲気には、無理矢理売り込もうという強い下心も絡みつくような強制感も滲んではいなかった。しかし却ってそれが小さな違和感を抱かせる。が、正面から向けられる期待の視線もあって熟考する間もなく、ラーナーはふらりと一つ頷いていた。 「そうか」あっさりと嬉々とした表情を見せた。「明日までに店の奥に掘り出し物がないか、探しておこう」  ラーナーは目を細めた。  別れの挨拶を簡素に済ませ、店を出る。不思議だった。べたべたと付き纏ってくるような粘着感は無く、適度な距離感で接してくる。居心地が良いとは言い切れないが、悪くもない。出来るだけ人に会いたくなかったはずなのに、再訪問の約束まで交わしてしまった。  そういえば名前を聞いていなかったし、あちらも尋ねてはこなかった。が、大した問題ではないだろう。そのぐらいの距離感が良い。あまり自分をどこにも残したくない。  再び傘を差し、店の正面に堂々と飾られた写真をもう一度背中越しに振り返る。  西の山脈。  彼はそう言った。胸に針が刺さったようだった。  狭い路地を歩き、町で一番大きな広場へと戻る。交通の便は悪いが、可愛らしい町並みが人気を呼ぶのか、土産物を全面に押し出した観光向けの店も並んでいる。そういう場所に行けば、宿の案内をしてくれる場所もある。嘗て教えられたことだ。できるだけ安い場所、と釘を刺すように言われた記憶が蘇る。  素泊まりで一泊。町のはずれでひとまず宿を取ると、肩の荷が下りたように安堵する。築年の長い宿独特の古びた小汚さがあり、小さな一人部屋は簡素なベッドが部屋の大半を占領しているが、野宿に比べれば充分贅沢だ。寒さと雨を凌げればそれ以上は望まない。ラーナーはベッドに頭から倒れ込んだ。どっと疲れてしまった。  どうして明日も行くと約束してしまったのだろう。苦い後悔が広がっていく。  あの男の、不思議な吸引力に惑わされてしまったのなら、こんなことではいけないと思う。簡単に流されても、簡単に懐に入り込まれてもいけない。  だらだらと時間を弄ぶうちに窓の外は暗くなり、電気も点けずにいたので部屋も丸ごと黒く塗りつぶされていく。あまりにも自然と暗くなっていったので、ラーナーは暫く暗闇に気付かずに時間を過ごした。  靴。服装。食事。そしてアメモース。  追い立てるように頭の中で流れていくけれど、総じて怠くて仕方がない。  結局そのままラーナーは眠りに落ちた。ポケモン達も、今度は誰も起こさなかった。彼女から迸る不可侵の膜を破ることはできなかった。  早朝に目を覚まし、窓から差し込む薄明に彼女は眉を潜め、時刻を確認しまた倒れ込む。  夜も降り続けていた雨は止んだようで、風の音も無い。  無為に数分を過ごしたラーナーは、よろめきながら堅い窓を開け放つ。雨は止んだが上空は分厚い雲に覆われている。幾分冷えた空気が肌を刺し、いよいよ目が冴えた。正面はすぐに他の建物があって、身を乗り出して周囲を見渡す。細い道に面し、左の方に行くと確か階段があって、町の中心部へと続いていく。湿った朝の空気は霧がかかったように静かだ。ひっそりとまだ眠っている町。自分だけが息をしているようだった。  今なら誰にも気付かれることなく町を抜け出せる。過ぎった思いつきに、ぎゅっと窓枠を握る。  しかし、あの写真の突き抜けるような青空が過ぎって、ラーナーの足を掴んだ。  シャワーを浴び、髪をタオルで挟み込むようにして乾かした。朝に清めると全身の細胞が起きあがるようだった。これから始まる一日を生きる気合いのようなものが泡のように浮かんでくる。頼りないけれど、ちょっとだけ前を向くような泡。  部屋を出て階段を降り、宿の玄関に出ると既に従業員の姿があり、宿泊費を払い宿を出た。  ポケモン達をボールで休ませたまま、冷ややかな朝のフラネを歩く。宿を出て左の道ではなく、右の道を選び、なだらかな坂を昇っていく。まだ乾かない靴の裏から煉瓦道のおうとつが伝わり、昨日店で聞いた話を思い返した。  長い階段を昇っている途中でふと振り返ると、左右に壁に挟まれながらも色鮮やかな屋根が立ち並ぶ町並みが奥の方で広がっていた。縦に長い額縁に飾られた絵のようだ。もう少し高台へ行こうと思い、階段を登り切り、左の方へ。当てもなく歩いていたが、偶然建物が途切れて町を見下ろせるような空き地に辿り着く。急に視界が開けて、ラーナーは朝に眠るフラネを眺望した。  石造の欄干にもたれ掛かる。  綺麗な町だ。  素直にそう思った。灰色の曇天だからこそ、カラフルな屋根の色がそれぞれ強調されるようだった。あらゆる色が町中を彩っている風景は立体的な絵画のよう。子供が思いつくままにクレヨンで塗ったような愛らしさもある。  こんな町もあるのだ。まだ知らない空があって、知らない場所がある。  もうじき町は起き上がるだろう。溶け込む間も無く自分は出て行く。キリへはフラネから更に西へ進む必要がある。  気が熟すまで暫し堪能していたラーナーは、ふとした勇気でアメモースを外に出した。  閃光を払い、地面に着地したアメモースは眠たげだ。昨日の荒れた行動の気配を微塵も感じさせない。いつものアメモース。マイペースで、気ままで、悠然としていて、誰にもとらわれな���自由なアメモース。  ラーナーは彼を抱き立ち上がる���、共に凪いだ町を見渡した。  烈しく暴れ鋭く睨みつけた姿が彼の本性だろう。彼は元々野生で生まれ育った。詳しい経緯をラーナーは知らないが、何かがきっかけで旅を始め、それでも尚アメモースは大空に解き放たれ、また戻ってきた。時に血生臭い炎の中を翔けた。あの間にある繋がりを、モンスターボールを通じた主従関係のみで片付けることは難しい。  誰かが消えて、多くの糸が途切れた。ラーナーもアメモースも等しく。そうして生まれた希薄な繋がりにどんな名前を付けたら良いのだろう。  黙り込み物思いに耽っていた、次瞬。  三枚翅が震え、前に乗り出したアメモースは緩んでいるラーナーの腕を突き放した。  え、と、彼女が声をあげる間も無く唐突に腕の中から離れる、翅をばたつかせて、空を、飛んだ、飛ぼうとした。背中。薄い逆光。高台では、青白い陽光に照らされた町がよく見える。遠くまで見える。硬直した。下まで、一体、どれほど。  こんなの一瞬だよ。  一瞬で、ぜんぶ終わる。  ぞっとするような透明な顔が、笑って、透明な声が、近い場所から聞こえる。  咄嗟にラーナーは腕を伸ばした。指が辛うじて触角を掴む。 「だめ! だめ!!」  悲鳴のような叫びと共に、体重を背中にかけて引き戻した。後ろから倒れ込み尻餅をつくと、アメモースは縫いぐるみのように手から滑り落ちて後方へと転がっていった。  翅を素早く震撼させるけれど、壊れた動作は不気味ですらあった。三枚翅の羽ばたきは収まらず、鋭い風の群れを呼ぶ。銀色に輝く歪な旋風が巻き起こり、乱雑に煉瓦の表面を抉った。ラーナーは思わず顔を覆う。その隣で、銀の鱗粉に紛れ込むように白い閃光が鞄から飛び出し黒獣がアメモースに襲いかかった。風を切り裂き、一瞬で四つ脚が相手の体を地面に縫いつけ、同時に風は収束する。 「ブラッキー! 落ち着いて!」  喉を低く唸らせ組み伏せたアメモースを威嚇するブラッキーだったが、主人の声にハッと血眼を見開く。踏み潰しているのが仲間と解るやいなや、息を留めた。  気まずい余韻に冷や汗が流れる。  ラーナーの耳元では荒々しい鼓動が鳴り止もうとしない。迂闊だった。あまりにも軽率だった。ずっと遙か奥に霞むまで続いている町の光景は、自由な飛翔を最上の喜びとするアメモースに突き付けるには残酷だと何故気付けなかった。  ブラッキーは恐る恐る離れたが、殆ど不発に終わった銀色の風をもう一度起こす気は無いようで、アメモースはその場に倒れ込んだまま動かない。それぞれの息遣いが随分遠い。唾を呑む音すら躊躇われるような冷たい沈黙に誰もが痺れてしまったようだった。  飛べないんだよ、アメモース。  私達は、飛べないんだ。 < index >
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everydayoneramen · 6 years
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貝だしラーメン 黒船SECOND(岩手県大船渡市) SP貝だしラーメン塩
貝殻は伝える、陰陽併せ持つ貝の奥深さを。 岩手県の沿岸部に位置する大船渡市。震災からの復興は足を止めることなく続いており、大船渡線はバス輸送に変わり沿岸部には新しい商業施設が立ち並ぶ。ここで貝の出汁という特色をもつらーめんをいただけるとのことで、塩らーめんの券を買ってカウンターで待つことにした。しばらくして現れたのは、澄んだスープを湛えた丼。南部どりの出汁をベースにあさり・しじみといった貝の旨味が鼻を喉を満たしていく。具材をみると3種類のチャーシューにめんま、味玉、それに見慣れない小さな貝。貝殻に一列に刻まれた孔をみてそれが鮑だとわかり衝撃を受ける。まさかこの一杯で鮑までいただけるとは。実はこの鮑が今回のらーめんにおける"肝"であり潮目を変える存在となることを、綺麗な出汁と貴重な食材に満足しきっていた自分は知る由もなかった。 鮑の表面に乗っている黒いペースト。貝の身本体の色とは異なるそれが気になり、少量取り出して味を確かめる。伝わってくるのはわずかなほろ苦さと磯の香り。いや、磯の香りという綺麗な範囲におさまらない、磯くささすら感じる生々しさ。得体の知れない味覚に面食らう。暢気に麺を食らう場合ではなくなった、なんだこの風味は。鮑に関する料理を頭に思い浮かべしばらくして気づく、このペーストが鮑の肝によるものではないかと。 潮目が変わった。ごくわずかに緑褐色を帯びながら溶け出した黒いペーストによって、穏やかで澄んだスープの表情が一変する。復興によって生まれ変わった商業施設に突如現れた、三陸の荒々しい波が打ち付ける岩場。頭上に迫る荒波、壁のように襲い掛かる潮流。このままでは波に攫われ溺れる! 寸でのところで見つけた卓上の胡椒と生の玉ねぎのみじん切りを駆使し、命からがら逃げ延びたのだった。 貝のもつ陽と陰、静と動、清と濁。相反する要素が錯綜する一杯を思い返し、冷水を口にして一息つく。 青緑色をした小さな貝殻は、何も語らず丼の底に佇んでいた。
参考リンク: https://tabelog.com/iwate/A0304/A030403/3009631/
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igayasakebrewery · 1 year
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新商品の麹造りです😊 精米歩合が異なるので、いつもより入念に米の吸水状態を指で確認します✨ 中心までシッカリと水分は届いているのですが、速く硬くなりそうな感触です💦 添こうじ【日本酒を仕込む際3日間に渡り、添・仲・留と蒸した米・水・こうじを混ぜ合わせていきます🍶その1日目のこうじのこと♪】は、水分多めに管理するので問題は無さそうですが、留こうじ造りの時は考えなきゃなぁ。。。🥺 #創業1853年 #始まりが伝統になる一滴入魂の蔵 #岩清水の如く澄んだ味わい #理屈抜きで美味しい個性ある日本酒 #ワイングラスで美味しい日本酒 #食事とのペアリングを意識した酒造り #麹割合を変化させた酒造り #低アルコール日本酒 #無濾過生原酒 #ペアリングと言えば岩清水 #完熟麹 #完熟醪 #じっくりと時間をかけて #丁寧にていねいに #テロワール #減農薬栽培米 #減化学肥料栽培米 #井戸水 #超軟水 #日本一柔らかな仕込み水 #日本一生産量の少ない酒蔵 #夫婦二人で醸す #厳しい品質管理 #マイナス5度で瓶貯蔵 https://www.instagram.com/p/CoTzMHuy5fK/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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igayasakebrewery · 1 year
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時間差投稿です🙇 GOWARINGO2023🍎の留こうじ【日本酒の仕込みは、添→仲→留と3日間に分けて、蒸した米と水とこうじをタンクへ入れて混ぜ合わせていきます🍶その3日目のこうじ】が完成しました😊 もっとツキハゼ【米の表面の菌糸を抑えること】でも良かったのかな😌次回の課題です😊 #創業1853年 #始まりが伝統になる一滴入魂の蔵 #岩清水の如く澄んだ味わい #理屈抜きで美味しい個性ある日本酒 #ワイングラスで美味しい日本酒 #食事とのペアリングを意識した酒造り #麹割合を変化させた酒造り #低アルコール日本酒 #無濾過生原酒 #ペアリングと言えば岩清水 #完熟麹 #完熟醪 #じっくりと時間をかけて #丁寧にていねいに #テロワール #減農薬栽培米 #減化学肥料栽培米 #井戸水 #超軟水 #日本一生産量の少ない酒蔵 #夫婦二人で醸す #厳しい品質管理 #マイナス5度で瓶貯蔵 (井賀屋酒造場) https://www.instagram.com/p/CoHr1igyDyn/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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igayasakebrewery · 1 year
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EXILE橘ケンチさんの書籍が発売されました♪読み応え満点の熱い内容です😊ケンチさんの日本酒に対する想いが詰まった本を是非、お買いお求め頂きご覧頂きたいです🙇 弊社酒蔵のEARTHも掲載されておりますので、併せて御覧頂ければ嬉しいです😆 市内のTSUTAYAさんで購入させて頂いたのですが、もしかしたらもう無いかもしれないので、お問い合わせ頂いてから御購入頂いた方が良いかもしれません😌 #exile #橘ケンチ #exileファンと繋がりたい #中野市 #創業1853年 #始まりが伝統になる一滴入魂の蔵 #岩清水の如く澄んだ味わい #理屈抜きで美味しい個性ある日本酒 #ワイングラスで美味しい日本酒 #食事とのペアリングを意識した酒造り #麹割合を変化させた酒造り #低アルコール日本酒 #無濾過生原酒 #ペアリングと言えば岩清水 #完熟麹 #完熟醪 #じっくりと時間をかけて #丁寧にていねいに #テロワール #減農薬栽培米 #減化学肥料栽培米 #井戸水 #超軟水 #日本一生産量の少ない酒蔵 #夫婦二人で醸す #厳しい品質管理 #マイナス5度で瓶貯蔵 (井賀屋酒造場) https://www.instagram.com/p/Cn-uqL7y-Wc/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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igayasakebrewery · 1 year
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GOWARINGO2023🍎 の仲こうじ【日本酒を仕込む際、3日間に分けて蒸した米・水・こうじを仕込みタンクへ混ぜ合わせいきます。その2日目のこうじ。】が完熟したので広げました🎵 この後、枯らし【この間、こうじにビタミンが蓄積されていきます】と言って表面積を増やすために溝を付けて、乾燥を促していきます😊 #創業1853年 #始まりが伝統になる一滴入魂の蔵 #岩清水の如く澄んだ味わい #理屈抜きで美味しい個性ある日本酒 #ワイングラスで美味しい日本酒 #食事とのペアリングを意識した酒造り #麹割合を変化させた酒造り #低アルコール日本酒 #無濾過生原酒 #ペアリングと言えば岩清水 #完熟麹 #完熟醪 #じっくりと時間をかけて #丁寧にていねいに #テロワール #減農薬栽培米 #減化学肥料栽培米 #井戸水 #超軟水 #日本一生産量の少ない酒蔵 #夫婦二人で醸す #厳しい品質管理 #マイナス5度で瓶貯蔵 (井賀屋酒造場) https://www.instagram.com/p/CnW38mNyvOi/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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igayasakebrewery · 1 year
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GOWARINGO2023🍎 の仲こうじ【日本酒を仕込む際、3日間に分けて水とこうじと蒸した米を仕込む容器に入れていきます。その2日目のこうじ。】造りです♪ 床【とこ】と呼ばれる台の上にうす~く均一に蒸し米を広げ、こうじ菌【カビの一種】と呼ばれる微生物を蒸した米に付着させます😊 今回の狙いは、突きハゼ【米の表面のに菌糸が所々伸びていて、中心部にはしっかりと菌糸が伸びている状態】😌 うまくいくかなーっ頑張ります💪 #創業1853年 #始まりが伝統になる一滴入魂の蔵 #岩清水の如く澄んだ味わい #理屈抜きで美味しい個性ある日本酒 #ワイングラスで美味しい日本酒 #食事とのペアリングを意識した酒造り #麹割合を変化させた酒造り #低アルコール日本酒 #無濾過生原酒 #ペアリングと言えば岩清水 #完熟麹 #完熟醪 #じっくりと時間をかけて #丁寧にていねいに #テロワール #減農薬栽培米 #減化学肥料栽培米 #井戸水 #超軟水 #日本一生産量の少ない酒蔵 #夫婦二人で醸す #厳しい品質管理 #マイナス5度で瓶貯蔵 (井賀屋酒造場) https://www.instagram.com/p/CnLe7chy9Jb/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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igayasakebrewery · 1 year
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画像1枚目 昨日は洗米でした🌾 目標とする 「岩清水の如く澄んだ味わい」を目指すべく徹底的に糠を洗い流していきます😊 米に水を吸水させる際、浸けた水が濁る様では洗ったとは言えません✨水の濁りは味の濁りと言っても過言ではないと個人的には思っています🍀 画像2枚目 そして本日は水切り💧米の表層部の水をザルに傾斜をつけ自然落下させます👍実はこの時、水の吸水は続いておりより中心へ水を染み込ませていくんです😁 #創業1853年 #始まりが伝統になる一滴入魂の蔵 #岩清水の如く澄んだ味わい #理屈抜きで美味しい個性ある日本酒 #ワイングラスで美味しい日本酒 #食事とのペアリングを意識した酒造り #麹割合を変化させた酒造り #低アルコール日本酒 #無濾過生原酒 #ペアリングと言えば岩清水 #完熟麹 #完熟醪 #じっくりと時間をかけて #丁寧にていねいに #テロワール #減農薬栽培米 #減化学肥料栽培米 #井戸水 #超軟水 #日本一生産量の少ない酒蔵 #夫婦二人で醸す #厳しい品質管理 #マイナス5度で瓶貯蔵 https://www.instagram.com/p/CnEIVsmSTkC/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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igayasakebrewery · 1 year
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本日の17時半で仕事納めとなります♪ 年明けは3日から、通常通り9~17時半の営業となります🎍 本年も皆様には格別の御厚情を賜り、心より感謝申し上げます😊 今年は品質向上の為の大きな設備投資ができた、充実した年でした😆これも一重に飲み手の皆様が応援して下さるおかげであります🎵来年も現状に甘んじることなく感動して頂ける味わい、お酒造りを夫婦二人で続けて参りたいと思います🙇‍♀️🙇 来年も引き続き変わらぬご愛顧の程、よろしくお願い申し上げます🙇どうぞよいお年をお迎え下さいませ🙇‍♀️ #創業1853年 #始まりが伝統になる一滴入魂の蔵 #岩清水の如く澄んだ味わい #理屈抜きで美味しい個性ある日本酒 #ワイングラスで美味しい日本酒 #食事とのペアリングを意識した酒造り #麹割合を変化させた酒造り #低アルコール日本酒 #無濾過生原酒 #完熟麹 #完熟醪 #じっくりと時間をかけて #丁寧にていねいに #テロワール #減農薬栽培米 #減化学肥料栽培米 #井戸水 #超軟水 #日本一生産量の少ない酒蔵 #夫婦二人で醸す #厳しい品質管理 #マイナス5度で瓶貯蔵 (井賀屋酒造場) https://www.instagram.com/p/Cm0ESi7yUvP/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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igayasakebrewery · 1 year
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GOWARINGO2023の添麹【日本酒を造る際、3日間に分けて水・麹・蒸し米を容器に混ぜ合わせて入れていきます。その1日目の麹】が完成しました♪ 狙いは総ハゼ❗米の表面も中心も白い菌糸が伸びた状態を目指しました🌾 新米の状態を見極めながらの麹造りの割には良い出来映えです🎶 良い麹の見極め方として、純白であること・弾力があること・香りが華やかであること・麹を割ると中まで菌糸が食い込んでいること・輪郭がシッカリと出ていること・食べると上品な旨味があること等々ありますが、どれもまずまずといったところ😊 次回の麹造りは年明けからスタートとなりますが、蒸し加減や菌糸をより深く伸ばす為の水分と温度と酸素コントロールを意識しながら頑張ります🎵 #完熟麹 #時間をかけてじっくりと #丁寧にていねいに #完熟醪 #始まりが伝統になる一滴入魂の蔵 #創業1853年 #夫婦二人で醸す #日本一生産量の少ない酒蔵 #食事とのペアリングを意識した酒造り #麹割合を変化させた酒造り #低アルコール日本酒 #無濾過生原酒 #リッチ&ピュア #岩清水の如く澄んだ味わい #香りは食事の邪魔をしない様に上品に薫る #理屈抜きで美味しい個性ある日本酒 #テロワール #減農薬栽培米 #井戸水 #厳しい品質管理 #マイナス5度で貯蔵 (井賀屋酒造場) https://www.instagram.com/p/Cmgvzc8ycqt/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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kachoushi · 11 months
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各地句会報
花鳥誌 令和5年6月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和5年2月2日 うづら三日の月花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
厨女も慣れたる手付き雪掻す 由季子 闇夜中裏声しきり猫の恋 喜代子 節分や内なる鬼にひそむ角 さとみ 如月の雨に煙りし寺の塔 都 風花やこの晴天の何処より 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年3月2日 うづら三日の月花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
山焼きの煙り静かに天昇る 喜代子 盛り上がる土ものの芽の兆しあり 由季子 古雛や女三代つゝましく 都 青き踏む館の跡や武者の影 同 日輪の底まで光り水温む 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年3月4日 零の会 坊城俊樹選 特選句
桃の日のSt.Luke’s Hospital 光子 パイプオルガン天上の春連れませり 順子 指を向け宙に阿弥陀の春の夢 いづみ 春の川大東京を揺蕩ひぬ 美紀 聖路加の窓ごとにある春愁 眞理子 雛菊もナースキャップも真白くて 順子 聖ルカを標としたる鳥帰る 三郎 印度へと屋根とんがりて鳥雲に 佑天 鳥雲に雛僧の足す小さき灯 千種 学僧は余寒の隅に立つてをり きみよ
岡田順子選 特選句
春陽に沈められたる石の寺 美紀 春空に放られしごと十字架も 同 春潮の嫋やかな水脈聖ルカへ 三郎 鳥雲に雛僧の足す小さき灯 千種 涅槃西風吹きだまりては魚市場 いづみ 聖路加の鐘鳴る東風の天使へと 俊樹 皆春日眩しみ堂を出で来たり 千種 桃の日のSt.Luke’s Hospital 光子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年3月4日 色鳥句会 坊城俊樹選 特選句
春愁の揺れてをるなりだらり帯 愛 立子忌や飯とおさいにネモフィラ猪口 勝利 春眠し指に転がす砂時計 かおり ゆらめいて見えぬ心と蜃気楼 孝子 春潮のかをり朱碗の貝ひらく 朝子 ファシズムの国とも知らず鳥帰る たかし 立子忌の卓に煙草と眼鏡かな 睦子 毛糸玉ころがりゆけば妣の影 同 わが名にもひとつTあり立子忌よ たかし 波の綺羅とほく眺めて立子の忌 かおり 灯を消してふと命惜し雛の闇 朝子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年3月6日 花鳥さざれ会 坊城俊樹選 特選句
この空のどの方向も春日燦 和子 思ひ出はいろいろ雛の女どち 同 うららかや卒寿に恋の話など 清女 鳥帽子の小紐手をやく京雛 希 耳よりの話聞きゐる春の猫 啓子 地虫出づ空の青さに誘はれて 雪 意地を張ることもなくなり涅槃西風 泰俊
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年3月10日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
裏路地の古屋に見ゆる雛祭 実加 子等笑ふお国訛りの雛の客 登美子 彼岸会の約束交はし帰る僧 あけみ 筆に乗り春の子が画く富士の山 登美子 うららかな帰り道なり合唱歌 裕子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年3月10日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
春夕焼浜の民宿染めてをり すみ子 青粲粲空と湖面と犬ふぐり 都 水車朽ちながらも春の水音して 和子 朝東風や徒人の笛は海渡る 益恵 枝垂梅御幣の揺れの連鎖して 宇太郎 春の婚オルガン春の風踏んで 都
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年3月11日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
啓蟄やボール蹴る子は声がはり 恭子 海近き山の椿の傾きて 和代 啓蟄の光を帯びし雲流る ゆう子 鳥鳴いて辛夷の甘き香降る 白陶 一人言増えたる夕べ落椿 恭子 小気味よき剪定の音小半日 多美女 一端の鋏響かせ剪定す 百合子 ふる里の椿巡りや島日和 多美女 剪定や句碑古りて景甦る 文英 剪定や高枝仰ぐ褪せデニム ゆう子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年3月13日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
雪吊の縄の解かれて睡り覚む 世詩明 家康公腰掛け松や地虫出づ ただし 捨鉢な女草矢を放ちけり 昭子 屋号の名一字継ぎし子入学す みす枝 花冷や耳のうしろといふ白さ 昭子 坐りゐて炬燵の膝のつつましく 世詩明 対座したき時もあるらん内裏雛 みす枝
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年3月13日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
摘草のさそひ届きぬ山の友 ことこ 蒼天に光の礫初燕 三無 陽炎のけんけんぱあの子をつつむ あき子 朝戸風見上げる軒に初つばめ 同 摘み草や孫を忘れるひとしきり 和魚 かぎろへる海原円く足湯かな 聰 陽炎や古里に建つ祖母の家 ことこ 我家選り叉来てくれし初つばめ あき子 陽炎ひて後続ランナー足乱る のりこ 新聞を足してつみ草ひろげたり あき子 つみ草や遠くの鉄橋渡る音 史空
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年3月14日 萩花鳥会
熔岩の島生き長らへし藪椿 祐子 寝静まり雛の酒盛り夢の間に 健雄 田楽や子らの顔にも味噌のあと 恒雄 雑草も私も元気春日向 俊文 猫抱いてぬくぬく温し春炬燵 ゆかり 子自慢の如く語るや苗売よ 明子 雲梯を進む子揺らす春の風 美惠子
………………………………………………………………
令和5年3月15日 福井花鳥会 坊城俊樹選 特選句
雪吊りのほどけて古木悠然と 笑子 落椿きのふの雨を零しけり 希子 夜半の軒忍び歩きの猫の恋 同 立雛の袴の折り目正しくて 昭子 桃の花雛たちにそと添はせたく 同 口笛を吹いて北窓開きけり 泰俊 手のひらを少し溢るる雛あられ 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年3月16日 伊藤柏翠記念館句会 坊城俊樹選 特選句
雪吊の縄のゆるみに遊ぶ風 雪 奥津城の踏まねば行けぬ落椿 同 まんさくに一乗川の瀬音かな 同 よき言葉探し続ける蜷の道 すみ枝 春眠の赤児そのまま掌から手へ 同 足裏に土のぬくもり鍬を打つ 真喜栄 強東風の結界石や光照寺 ただし 裸木に降りかかる雨黒かりし 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年3月17日 さきたま花鳥句会
春雨に黙し古刹の花頭窓 月惑 震災の地に鎮魂の東風よ吹け 一馬 春昼や女房のうつす生あくび 八草 ととのへし畝に足跡朝雲雀 裕章 路地裏の暗きにありて花ミモザ ふゆ子 薄氷や経過観察てふ不安 とし江 拾ひよむ碑文のかすれ桜東風 ふじ穂 水温む雑魚の水輪の目まぐるし 孝江 薄氷の息づき一縷の水流る 康子 二月尽パンダ見送る人の波 恵美子 ほろ苦き野草の多き春の膳 みのり 梅園に苔むし読めぬ虚子の句碑 彩香 強東風老いてペダルの重くなり 静子 鉛筆はBがほどよき春半ば 良江
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令和5年3月19日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
一族の閼伽桶さげて彼岸寺 芙佐子 隠沼に蝌蚪のかたまり蠢きぬ 幸風 セスナ機の音高くして地虫出づ 月惑 この山の確と菫の一処 炳子 石仏に散華あまねく藪椿 要 年尾とはやはらかき音すみれ草 圭魚 茎立の一隅暗き室の墓 千種 春塵の襞嫋やかに観世音 三無
栗林圭魚選 特選句
ビル影の遠く退く桜東風 秋尚 古巣かけメタセコイアの歪みなし 千種 寄せ墓の天明亨保花あけび 同 色を詰め葉の艶重ね紅椿 秋尚 ひとつづつよぢれ戻して芽吹きけり 同 信号の変り目走る木の芽風 眞理子 助六の弁当買うて花人に 千種
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令和5年3月21日 鯖江花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
元三大師夢のお告げの二日灸 雪 新しき雪夜の恋に雪女 同 恋てふも一夜限りを雪女 同 懐手もつともらしく頷けり 昭子 石庭に音立て椿落ちにけり 同 雛簞笥何を隠すや鍵かけて 同 貸杖の竹の軽さや涅槃西風 ただし 石どれも仏に見えて草陽炎 同 泰澄の霊山楚々と入彼岸 一涓 制服も夢も大なり入学児 すみ枝 露天湯に女三人木の葉髪 世詩明 歩きつつ散る現世の花吹雪 同
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令和5年3月26日 月例会 坊城俊樹選 特選句
門出祝ぐ花の雨とてももいろに はるか 花色の着物纏ひて卒業す 慶月 街の雨花の愁ひの透き通り 千種 蹄の音木霊となりて散る桜 政江 フランス語のやうにうなじへ花の雨 緋路 大屋根をすべりて花の雨となる 要 花屑へまた一片の加はりぬ 緋路 永き日のながき雨垂れ見て眠し 光子 宮裏は桜の老いてゆくところ 要
岡田順子選 特選句
金色の錠花冷えのライオン舎 緋路 漆黒の幹より出づる花白し 俊樹 白々と老桜濡るる車寄せ 要 花揺らし雨のつらぬく九段坂 はるか 漆黒の合羽のなかに桜守 光子 花の夜へ琴並べある神楽殿 はるか 春雨や無色無音の神の池 月惑
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令和5年3月 九州花鳥会 坊城俊樹選 特選句
今昔の小川にしのぶ蜆かな 成子 薔薇の芽の赤きは女王の予兆 ひとみ 潮こぼしながら蜆の量らるる 朝子 餌もらふ鯉をやつかみ亀の鳴く 勝利 突きあげし拳の中も春の土 かおり 持つ傘をささぬ少年花菜雨 ひとみ 涅槃西風母も真砂女も西方へ 孝子 亀の鳴く湖畔のふたり不貞だと 勝利 口紅は使はれぬまま蝶の昼 喜和 長靴の子はまつすぐに春泥へ ひとみ パグ犬と内緒のはなし菫草 愛 息詰めて桜吹雪を抜けにけり 孝子 ふと涙こぼれてきたる桜かな 光子 健やかな地球の匂ひ春の草 朝子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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