Tumgik
#大聖堂チャペル
usickyou · 2 years
Text
ゴオォォーーーン
 白雪千夜
 1
 私たちがかつて暮らしていたのはカリヤスカ県のほぼ最南端に位置するカラストという小さな農村だった。カラストには電気も水道もガスもあったし、夜八時には閉まるものの幹線道路沿いにはコンビニエンスストアもあって、もちろんワイファイだって届いた。とりたてて目立った産業はなく、観光地としても数十キロ離れたトリステの肥沃な低木湿地に見劣りするところばかりで、ひとびとのほとんどがおんぼろのピックアップトラックでトリステやヴェルニーへ働きに出るような村だった。  人口数百人ほどのカラストではだいたいの人が顔見知りで、特に私たちが暮らしていた集落ではその色合いが強かった。親や祖父母どころか家系のはじまりから互いに見知ったもの同士が、日がな昔話に花を咲かせながらティーカップをかたむける。そこに並ぶのは自家製のクッキーやパンケーキで、季節ごとのフルーツが手編みのテーブルマットの白いレースの上でつやつやとかがやく。イチゴやオレンジ……いつだったか、ビワがなったからと興奮ぎみの隣人の庭先で黄銅色の果実を切り分けたことがあった。はじめに食べたそれはよく熟れていなくて少しがっかりするくらいだったが、翌週には完璧な味わいをみせてくれて、噂が近所に広がりビワは数日で食べ尽くされてしまった。また来年ね、と満足げに、少し呆れたように言っていた彼女はなんという名前だったか。隣人だというのに。ああ。  はじめてカラストを訪れたとき、驚くほど温かく迎え入れられたことを覚えている。田舎の、小さな、地縁に基づく関係が強い農村に突如あらわれた異邦人の私たちに彼らが優しくふるまった理由は、いまだわからない。若い女性は希少だからでしょう、と私は言った。たましいがうつくしいからだよ、とお嬢さまは言った。彼らの与えてくれたカボチャのスープは甘く、やわらかだった。正しいのは私でなく、お嬢さまだったのだろう。  使われていなかった家の修繕も、家具の用意も、生活の糧を得ることについても、彼らはすべて私たちに施してくれた。村を去った若い母とふたりの子が住んでいたというロッジのような家は、私たちの暮らしにちょうど足りるものだった。ひとり暮らす老いた婦人の無事をたしかめては毎日くり返される息子の思い出話に耳を傾け、母親がおさない子どもを離れねばならないとなればほんのひとときを預かりおむつをかえて、対価として食事に招かれ、あるいは採れたてのまっかなトマトを受け取った。余すことなく、その日の恵みをいっぱいに使い切り、夜になれば差し込む月明かりに互いの姿をうつしながら寝床に入った。眠ることを恐れる必要はなく、朝が訪れるたびにこの生を憂うこともない、そういう日々を私たちはおくった。  しかし結局はすべてうしなわれてしまう。  カラストはいま、もうない。  すべて、灰と炎に飲み込まれた。  私たちの家はよく燃えただろう。老婦人は、あまり苦しまずにいけただろうか。あの、聖なる儀礼のために編まれたと思うほど美しいレースの白いマットがうしなわれたのは悲しむべきことだ。育つことのなかった二年目のビワは、人類にとって大いなる損失としか言いようがない。  また、ふたりきりだね。とお嬢さまは言った。  はい。と私はこたえた。  そうして私たちは逃げた。逃げて、逃げ尽くして、不幸せから遠ざかることと幸せそれ自体は等しいと、そう思っていたのだ。
 
 2
 ゴオォォーーーン…………。
 チャペルの鐘は頭上から降ってくる避け得ない厄災のような響きをもっていたが、それは堂内を反響し、はね返り、撮影現場にまったく純粋な幸せと呼んで差し支えないようなかんじを与えた。カメラマンは自らの仕事を放棄するようファインダーより目を外し、スタイリストは膨らみのまだ目立たない妊娠四ヶ月のおなかをそっとさすり、おばあちゃん、現在の私たちのマネージャーである彼女はのんびりした調子の拍手をおくりながら「ちとせちゃん、ほんとにかわいいねえ」と相貌をゆるませた。  ほんとうに。  ほんとうに……お嬢さまは完璧だったのだ。 「ありがと、おばあちゃん」とお嬢さまはこたえた。そっと、ウエディングドレスを着崩してしまわないよう手のひらを振ると、ヘッドドレスが南の海の朝のようにゆらめき、澄みわたる金色の光の波があたりを打った。 「ちよちゃん、どう?」とお嬢さまはたずねる。 「よく似合っておいでです」と私はこたえる。  するとおばあちゃんが私の腕をとり、「なんだか、じんときちゃったよ」と鼻をぐすぐすいわせはじめた。ハンカチを差し出すと「ごめんねえ」と目もとを拭い、「ティッシュはあるかい」と言ってちいんと鼻をかむ。その姿はみなの心をおおいに和ませ、あるいは静かな感動を与え、この瞬間の幸せがまるでほんものであるかのような錯覚をもたらした。  おばあちゃんは何者か。  おばあちゃんは、サイトウ、と名乗った。サイの漢字が苦手らしく、プロダクションから支給されたという名刺を私たちといっしょに眺めながら、面倒な字だねえと笑った。おばあちゃんでいいよ、と私とお嬢さまの手をそれぞれしっかりと握った。  おばあちゃんは何者なのか、ほんとうのところを私たちは知らない。かつて偉大なアイドルを育てた伝説のプロデューサだという。清掃会社の職員であったがある事件から慧眼を認められヘッドハントされたという。大規模な人員異動の折にまぎれどこかから迷い込んてきたという。実は東アジア圏に名を知られる魔女であり、もう二百歳をゆうに越えていて、世界で最初のアイドルであるらしい。  なにが本当で嘘なのか、私たちは知らない。  それは私たちにとって大切ではない。  おばあちゃんはよく笑う。よく泣きもする。そうやって、私たちに起きるできごとがどういうものなのか、私たちがそれをどういうふうに扱えばいいのかを教えてくれる。手のひらはくたびれて固く、頬はふっくらしていて笑うとぎゅっと皺が寄る。きちんと手入れのされた白髪はアルビノのような美しさを持っているが、衣服にはあまり頓着しないらしく襟首のよれたものをよく着ている。いつも甘いお菓子を持っていて、お嬢さまに食べさせては満たされたように笑う。熱いほうじ茶の水筒をいつも持っていて、私に飲ませては慈しむように笑う。  おばあちゃんはつまり、そういうひとだった。 「このまま、外いっちゃおっか」  お嬢さまが楽しげにそう言うと、夏のはじまりを知らせる風が吹いたようにベールがふっと揺れる。実際のところチャペル内の撮れ高はもうじゅうぶんであったらしく、屋内撮影の制限時間も迫っていたので、しぜんに誰もが同意するかたちになった。 「ちよちゃん、腕を組んでもいい?」 「お好きなように」 「ちよちゃんからしてもらってもいい?」 「望まれるのなら」  お嬢さまはそう、たわむれに言う。私が腕をからめると、「あは」と声にして強く力をこめる。おばあちゃんが笑っている。撮影クルーも機材移動の準備をしながらほほえんでいて、撮影用のカメラや私物のスマートフォンで私たちの姿をおさめたりする。  たわむれだ。すべてお嬢さまのたわむれでしかない。  チャペルの扉を開いたのは私だったが、先にそこを飛び出したのはお嬢さまだった。衣装くずれを気にする様子はあったが、お嬢さまはずいぶんと自由にふるまった。ドレスのすそを持ち上げ軽やかに宙へ躍り出すと、そのまま飛んでいってしまいそうだった。靴のつま先についた五色の宝石が光りかがやき、羽根のようなひらめきを放つと、お嬢さまはおとぎ話に描かれる精霊のたぐいでさえあるように見えた。  私はそのとき、立ち止まった。ほどかれた腕のからっぽな様子を感じ、お嬢さまを見つめた。  背中にぶつかったおばあちゃんが、「ああ、ごめんよ」と言う。  私は「こちらこそ」と言う。 「ちよちゃん」お嬢さまが言う。  十字架が、私とお嬢さまの間につき立てられる。  最初に悲鳴をあげたのはまだチャペル内にいたスタイリストだったが、彼女の切断音のような声は周囲に大きな混乱をもたらした。凄惨な事故を目にしたような恐慌が広がり、無事をたしかめるための、あるいはそうであると願うための呼び声が次々立ちあらわれた。  チャペルの屋根より墜落した十字架は、ひとのため作られたとは信じられないほどに巨大で、つかの間私たちを完全に隔絶した。 「お嬢さま」と私は呼ぶ。  十字架の腕をくぐると、果たしてお嬢さまはそこにいる。清らかなドレスのまま石畳の上に座り込み、なかば自失した様子で宙を見ている。私が呼べばかすかに応じ、肌のどこにも傷はない。手に触れればしっかりと握り返すが、静かなふるえが全身より感じられる。 「大丈夫かい、怪我は……」とおばあちゃんがたずねる。 「ありません。しかし……」と私はこたえる。 「カラスト」とお嬢さまはつぶやく。「カラスト……逃げられない……」とつぶやき、母親に虐げられた少女のように膝をまるめて泣きはじめる。 「どういうことだい?」と、おばあちゃんは私へたずねる。  私はこたえられない。  十字の影は、裁きを告げた官吏の槌のように私たちへ落ちる。
 
 3
 ほら、外から帰ったら手を洗って。ちゃんと爪の先まで洗うんだよ。うがいもしっかりね。  おばあちゃんはそうまくしたてる。私たちが並んでがらがらぺっとすると、とても満足したふうに笑う。おばあちゃんの、おばあちゃんからきつく言い聞かされて身についた習慣だという。おかげで風邪ひとつひかないと、おばあちゃんは言う。 「もう平気だよ、ありがと」  とお嬢さまは言う。実際、表情はすっかり明るく、庭園の草花を愛でた仕草や足取りにも変わった様子は見受けられなかった。 「うそおっしゃい」  とおばあちゃんは言う。撮影現場にてくたびれた軽自動車へ私たちを押し込んだのと同じ強引さで、お嬢さまを寝室のベッドにまで放り込んで、やっと安心したという表情を浮かべる。 「千夜ちゃん。キッチンは?」 「階段を降りて左手、扉のさらに左手奥です」 「ちょっと借りるよ」 「は?」 「おいしいおいしいお夕飯をつくったげるよ」  そう言って、おばあちゃんは立ち上がる。よっこいしょ、といかにも難儀であるように立ち上がり、「ちとせちゃん。苦手なものはあるかい?」とたずねる。 「辛いもの。鼻につんとくるもの」 「なら平気だね。千夜ちゃんは?」 「特にありません」 「そうかい。いいこだね」  そうして扉を閉めたおばあちゃんの足音は、のんびりと遠ざかってゆき、お嬢さまが「あはは」と笑う。私の、見とがめるような視線に気付いてするする毛布へもぐり込み鼻先を覗かせると、また声にして笑う。 「おかしいですか」 「うん。すごくおかしい」 「ペースが乱されます」 「そういうの、かわいいよ」 「お嬢さまは、楽しそうですね」 「わかる? 私、あんなおばあちゃんになりたいな。にこにこしていて……おせっかい焼きなのに、すごく自由な……」  そう続けながら、お嬢さまは窓のほうを見やる。私は立ち上がり、カーテンを開く。外はよく晴れており、いまだ明るく、庭園の色彩はいっそ目に刺さるほど鮮やかに感じられる。花が咲き、鳥がたわむれ、風のそよぎにざわめく緑は開いた窓から寝室へざあっとなだれ込む。歌うようだ。何もかもが歌うようで、細めた眼裏に炎がちらつく。  そうか。  あの季節がもう、目に映るほどに迫っているのか。 「わかってはくれません」と私は言う。背負った窓辺の光のつくる影がおそろしいほどの孤独を感じさせると、「出過ぎた発言、かとは思いますが」とつけ加える。 「ほんとうに?」とお嬢さまは言う。「おばあちゃんも、魔法使いも、誰もほんとうに私たちをわかってはくれないの?」と、瞳をゆらして続ける。  それでいいではないですか、と私はこたえない。 「カラスト」と私は言う。  お嬢さまは目を伏せる。 「お嬢さまは、何を見たのですか?」 「ちよちゃん」 「あの教会で、いったい何を」 「料理を手伝ってきて」 「まさか、魔女を」 「おばあちゃんが困らないように、お願いね」  わかりました、と私は言い窓を、カーテンをしっかり閉じきる。お嬢さまは白いテディベアのシルキーを抱きしめ、薄暗がりの室内には千数百年にわたる孤独が立ちあらわれる。 「行ってまいります」と私は言う。 「いいよ。行ってきて」とお嬢さまは言う。  小さなシルキーの手を振り、そのふくよかな腹に顔をうずめるお嬢さまは、泣きはじめようとする子どもに見えた。  扉を閉じると、私はすっかりひとりになる。この城は広く、堅固な造りをしており、階下はおろか扉ひとつ隔てた室内の物音さえ聞こえない。廊下にはもう開かれることのない数室の客間が並んでおり、その一つひとつの物言わず佇む向こうで、開かれたままでいた張り出し窓から暖かい風が吹き込んでいる。  そこを開いた記憶など、私にはなかったのだが。  窓を閉じると、あたりは快い静寂で満ちる。庇にかたどられた不鮮明な光芒が差し込み、いまだつぼみの窓辺の花を目覚めさせようとする。 「それで、いいではないですか」  と私は言う。  私たちは、結局はうしなうのだ。そういうふうに生まれてきて、どうして、なにも知らない幼子のように欲しがってよいだろう。  窓辺の花は、眠ったままでいられるのなら、それでいい。
 
 4
 私がリンゴの皮を剥く様子を見て、おばあちゃんは喜んだ。ウサギや花弁……ねだられるまま飾り剥きをしてみせるといっそ子どものような素直さで「うまいのねえ」と声をあげた。  そういう態度に、私は慣れることができない。 「お料理はいつ覚えたんだい?」 「お伝えできません」 「あら……お母さんが教えてくれた?」 「お伝えできません」 「なんだか嫌われちゃったのねえ」 「そうではありません。権限の問題なのです」 「難しいおはなし?」 「私は、私についてあなたにお伝えできません」 「なら、嫌われたわけじゃないんだね」 「好きも嫌いも、思うところはありません」  よかったねえ、と言うとおばあちゃんは、私のささいな驚きになど気付きもしないという様子で両手をぱちんと合わせる。平皿に並べたリンゴを満足そうに眺めると、グリルから二切れの鮭を取り出し、手招きをして私を呼ぶ。その温かい声に、私は慣れることができない。 「骨を取ってもらっていい?」とおばあちゃんは言う。おかゆとお味噌汁と、並べた鍋にかけた火を弱める丁寧な手つきには、愛情のそそぎ方を知るものだけが持つやわらかさが感じられる。「こまい作業がもう、難儀で……」 「承知しました」と私はこたえる。鮭はよく焼けており、小骨も少なく、それほど手間のかかる作業ではない。しかし隣から時おり寄せられる視線が、手のはたらきを鈍らせる。 「何か気にかかりますか」  と私はたずねる。 「からすと?」  とおばあちゃんは言う。包丁を、私がすっかり下ろしているときに言ったのは、やはり気遣いなのだろう。 「いったい、なんのこと?」 「お伝えできません」 「逃げられないのはちとせちゃん? 千夜ちゃんも?」 「それも、お伝えできません」 「なら、しょうがないねえ」  おばあちゃんが澱みなく話しながら溶き玉子を鍋に流し込むと、お味噌汁の渦まく中でそれは綿雲のように広がった。  なめらかな所作だ。迷いがなく、流れるようで、ごつごつした手のひらには機構の露出した柱時計が感じさせるような、実際的な美しさがあった。 「……話せないのです」と私は続ける。「好きも嫌いもありませんが、心苦しく思います」 「話せたらいいねえ」とおばあちゃんはこたえる。「わたしじゃなくても、誰か、信頼できるひとに」  できたみたいだね、とおばあちゃんは鮭の切り身を箸で気軽く取り上げてはおかゆに落としていく。鍋を数度、軽くかき混ぜると立ちのぼるかぐわしい香りは、私に穏やかな心地を与える。  いま、私たちはどんなふうに見えるだろうか。  そんなおもいが脳裏にちらつく。  馬鹿げたことだと、私は思う。  ほどなく料理ができあがると、私たちはそれぞれ両手いっぱいに鍋や皿を抱えて寝室へ戻った。お嬢さまは少し眠っていたらしく、ぼさっと癖のついた髪を整えながら私たちを迎え入れた。寝室のテーブルは小さく、食卓はずいぶん手狭なものとなったが、お嬢さまはそれを喜んだ。かたむきはじめた日の光が、清貧な初夏の晩餐であるかのようにそこを照らした。  いただきます、と私たちは声を揃える。  お嬢さまは鮭雑炊のやわらかさをたいそう気に入り、素朴な味つけについてやや不満な様子をみせた。しかし浅漬けを一切れかじると納得したようにうなずき、お味噌汁を一口飲むと、深く感動したというふうにほっと息をはいた。 「いい食べっぷりだねえ」とおばあちゃんはほほえむ。 「だっておいしいんだもん。ね、ちよちゃん」 「はい。見事なものです」 「お粗末さま。でもね、ぜんぶ千夜ちゃんのおかげだよ」 「ご謙遜です。私にはとても……」  私たちはのんびりと箸をはたらかせながら、よく話した。小さな食卓には日と土の温さがあり、収穫を終えた農夫の迎える夜によく似ていた。お嬢さまは恐れることを忘れたように笑う。影のない喜びに照らされた姿は、私に大いなる安寧をもたらす。 「ああ、幸せ」とお嬢さまはこぼした。  私はお味噌汁に手を伸ばし、お嬢さまの感じたような幸せを味わおうとする。椀をかき混ぜると、美しく火の通った玉子が風にまかれた雲のように泳ぐが、そこへ、不意に黒いすじのようなものが混じる。落とした髪のようだった。残念なことだが、せめて私の椀であって良かった。そのように思いながら箸で探ると、思いがけず固いものに触れる。玉子と分葱で、どうしてそのような感触があるだろう。暗く澱んだ、沼をかき分けるような心地でそれを取り上げる。「お嬢さま」と私は言う。  一度、二度、明かりが明滅する。 「じいい」とかすかな雑音が響く。 「……カラスト」とお嬢さまは言う。取り落とした椀より流れ出した数匹の黒い蝗がだらしなく広げた翅をふるわせ、棘のある脚を屈伸させ床を這いまわる。 「蝗、じゃないの」とおばあちゃんはどこか素朴な驚きをみせる。  私は立ち上がり、カーテンを開く。窓には無数の蝗の群れが、ひとすじの光すら差し込まないほどの密度で取りついており、それは悪魔の起こす嵐のように次々飛来しては衝突をくり返す。「じいい」「じいい」と蝗のたてる音は際限なく膨張し、またたく間に耳もとで鳴き叫ぶかのような轟音となる。 「お嬢さま」と私は呼ぶ。  振り返るとお嬢さまは青ざめた、亡霊の目で蝗の大群を見ている。おばあちゃんはお嬢さまを気遣うことに懸命であり、ふたりは卓上の異変に気付かない。私は手近な毛布をひるがえしそこを覆う。かつてリンゴやトマトのひとかけらであった蝗は、地獄より飛び立とうとする悪鬼のはばたきを毛布の内で響かせる。 「立てますか」と私は言う。お嬢さまはうなずく。目いっぱいにおそれをたくわえ、それでも自らの足で地を踏みしめる。 「失礼します」と私は言って、おばあちゃんを背負いあげる。おばあちゃんははじめ遠慮する様子をみせるが、すぐに私にしがみついた。体が熱を帯びはじめている。どうしようもない。このような、強靱な呪いにさらされているのだ。しかしそれは、いまこの瞬間に限っては都合がよい。  私たちは、この嵐を越えなければならないのだ。  砕かれた窓から蝗の群れの雪崩れ込む音を背に寝室をあとにする。廊下ではじりじりと電灯がゆらめき、待ち受けていたかのようにひとりでに開いた窓からは炎のような夕焼けとともに蝗が入り込む。いまや地響きのような翅音が、背後より追いすがり続ける。振り返ると、わずか一秒前に私たちのいた場所を蝗が埋め尽くしていた。バルコニーにて、天窓からの光を仰ぐ女神の彫像が蝗に喰らい尽くされていった。 「同じだ」とお嬢さまが言った。握り潰された黒い蝗は、絵画の顔料のようにさらさら手のひらからこぼれ落ちた。 「呪物」と私は言う。ならばやはり、そのときが来たのだろう。私たちは、ふたたびすべてをうしなうのだ。  階下では無数に起きる破壊の音が聞こえた。リビング、キッチン、客間……エントランスの窓より覗いた庭園では、色づく緑の草花がむごたらしく喰われていく光景がうかがえた。おばあちゃんの軽自動車はまだ形を保っているが、それも時間の問題だろう。  進むごと、私たちは追い詰められる。 「降りましょう」と開いた地下室からは、黴や煤の煙るような匂いが立ちのぼる。そこはいっそ死の床へつながる石段のようだが、窓はなく、少なくとも侵入を許すような構造ではない。お嬢さまが地下へ降りると、私はエントランスの様子をたしかめる。蝗は上階より豪雨のように降り落ちるが、それは憂慮すべき光景ではない。恐れるべきはキッチンへつながる扉だ。かたく閉じられていたそれは至るところに腐食させられたような黒ずみを帯び、ものの数秒でうがたれた穴より蝗が這い出した。かかかっと顎を噛み合わせ、大群は一個の獣が鳴くような狂喜的な声音を放った。 「化物め」と私は覚えず言う。 「ほんとうにね」と、お嬢さまがささやく。 「お嬢さま、私が対処します」 「ごめんね、ちよちゃん。私たちだけなら大丈夫だけど、おばあちゃんがいるから」 「問題はありません」 「確実でなければいけないの」 「ならばせめて、私の血をお使いください」 「だめよ」 「ですが」 「それは許可しない」  お嬢さまは支配者の態度を崩さず、「剣を」と手のひらを差し出す。私がこたえずにいると、「命令はしたくないの」と瞳の奥よりあかい光を覗かせながら続ける。 「お願い」と、お嬢さまは泣くように言う。  私は懐中より剣を、始祖より受け継がれたという短剣を取り出す。それは銀と鉛、鉄により鋳造された儀礼用の短剣であり、刃は丸く、通常の殺傷力はない。しかし六千人の高位なる聖人より儀礼を施されたそれは現代において人ならざる者を、お嬢さまを殺しうる限られた聖遺物だった。  それはお嬢さまに、いつでも死ねるようにと、与えられた。  お嬢さまが短剣の先端で腕をなでると、なめらかに切り裂かれた薄い肌から血が溢れ出す。腕を振り、扉に走った血痕はまたたく間に凝固し、呪物を遠ざける魔術の堰となった。石段を降りて天井へも何度か血を振り撒くとお嬢さまは、「壁は平気? さすがに土は掘ってこないよね?」と冗談でも言うみたいにほほえんだ。 「しばらくは、持ちこたえるでしょう」と私はこたえた。受け取った短剣より消散するお嬢さまの血は、呪われた大気を浄化していく。大丈夫だろう。ひとまずは、と古びたソファに寝かせたおばあちゃんの体は高熱をもっており、息も荒く、命を落としかけているかのように見える。しかしこのひとは、何歳であるのかは知らないが、高齢なのだ。お嬢さまの霊気が体内を巡るまでいくらか時間が必要であるようだった。  お嬢さまは吸血鬼であるが、日の光を恐れない。銀はもはや毒でなく、十字架によってその肉体が破壊されることもない。お嬢さまは、祈りの子だ。人間の世界に交じることを望んだ吸血鬼たちが生み出した、研鑽と奇蹟の子だった。人間と同じものを食べ、人間の血を吸うことも要さず、体はほとんど人間である。  それでも、お嬢さまはある種の神なのだ。  ふっと明かりが、地下室にただ一つの電球が消える。あたりは暗闇となるが、お嬢さまは苦もなく火種を探し当てロウソクをともす。火の照らす腕の傷はもう、あとかたもなく塞がっている。 「電気、もう使えないのかな?」とお嬢さまはたずねる。 「配線が食われたのでしょう」と私はこたえる。 「おばあちゃんは?」 「少し休めば目を覚ますかと」 「よかった……ちよちゃん、ありがとね」 「そのような言葉に、私は値しません」 「ううん。私を、おばあちゃんを助けてくれてありがとう。お願いを聞いてくれて、一緒にいてくれて……ちよちゃん、ほんとうに……」  話す途中で言葉をなくし、お嬢さまは地に伏せる。背中を激しくふるわせ、声をあげて泣きはじめる。「シルキー……死んじゃった。イーリエ、ノラ、バンシー……みんな、みんな」と一つひとつ、ぬいぐるみの友人たちの名前を、たまのように火をはじく涙ともにこぼしていく。 「……みんなで育てたイチゴ畑も千夜ちゃんと植えたひまわりのお花も……終わった……ぜんぶ、食べられた」  そんなふうに流れる、お嬢さまの涙は温かい。たましいを引き裂かれるような慟哭も、私の体を伝う声のふるえも、お嬢さまの心をあらわすものすべては私を焦がすほどに温かい。  お嬢さまが生きてさえいれば、それでいいのです。  と私はこたえない。 「少し、休みましょう」と私は言う。「ここを出たなら、弔いをしましょう。私たちのうしなったもの、すべてのために」  胸のうちで、お嬢さまは泣き続ける。  守らなければならない。このひとを、たとえなにに代えようと。
 
 黒埼ちとせ
 5
 ……さま。お嬢さま。  千夜ちゃんが、まだまだ寝ていたい朝みたいに優しく呼ぶので、私はうっかり気の抜けた調子で「……いやぁ」とこたえ���。地下室は薄暗く、ロウソクの火で揺らめいていて、空気はほこりっぽく墓地みたいにこごえていた。 「眠っていたの?」と私はたずねる。 「ほんの少し、です」と千夜ちゃんはこたえる。 「ごめんね」 「私が、休んでいただいてよいと判断しました」 「おばあちゃんの様子はどう?」 「悪化の兆候はみられませんが、よい状態ではありません」 「……お年寄りだものね」  おばあちゃんは、触れるとひどい熱をもっていた。重い病気にかかったみたいに、背中はぐっしょり濡れていて、木枯らしのような息を懸命にくり返した。 「なにか見つかった?」 「見ていただきたいものが」  千夜ちゃんがそう言って導いたのは、壁の一面だった。煉瓦の一部が崩れていて、ほとんど天井ほど高さのある什器棚を倒してあらわれたそこからは、燈火のような光が差し込んだ。 「お嬢さまには、わかりますか」 「たぶん、だけど」と手をかざすと、煉瓦はさらさら崩れ落ちる。足もとに残った砂の山を見下ろして、せっかくなので「ほらね」と得意なかんじで笑ってみせた。  壁の向こうは坑道のようだった。わざわざ背中を丸めなくても通れるほど大きなそこは、一枚の巨大な岩をくり抜いたかのようになめらかで、絶えずしみ出してくる地下水のためにつやつやしていた。背すじを撫でるような冷ややかな風が吹いていて、ロウソクの火が消えてもそこがぼんやり明るいのは、天井から床に至るまでびっしりと刻み込まれた文字が淡く光っているからだった。 「抜け道だね」と私は言う。「私たちみたいなひとのための……使われたことはないみたいだけど」 「みな、平和に暮らすことができたのでしょう」と千夜ちゃんは言う。「崩れていなければ、よいのですが」 「たぶん平気」 「どうしてそう思われるのですか」 「とまれ、って書いてある」 「魔術ですか」 「うん。だから寒い。とまっているものは、冷たいから」 「では、進みましょう」 「その前に。ちよちゃん、タイツを脱いでもらえる?」 「は?」 「あぁん。だいじょうぶ、私も脱ぐから」 「冗談ですか」 「冗談ではないの」  千夜ちゃんは渋々という様子をあらわにしながら、タイツを脱いでくれた。私はその脚の白くまっすぐで美しいかたちにうっとりしながら、庇護のためのごく簡単な魔術をかけた。千夜ちゃんが、こごえてしまいませんように。 「タイツは置いていこうね」 「トーテムですか」 「そう。おばあちゃんを任せていい?」 「問題ありません」 「ありがと。それじゃあ行こっか」 「その前によろしいですか」 「どうしたの?」 「私の血を、使ってはいただけませんか」  千夜ちゃんは続ける。 「確実を期すのであれば、そうすべきではありませんか」  そのまっすぐ差し向けられた、美しい瞳に、私は口づけたくなる。千夜ちゃんは驚くだろうか。華奢な体をびくっとふるわせて、それから私を受け入れるだろうか。私は千夜ちゃんのまぶたに口づけて、頬からおとがい、首すじや鎖骨窩をたどってやわい二の腕に至る。そこはふっくらしていて、ああ、ここに牙をたてられたらと思うだけで全身がびりびりと痺れる。  けれどまだ足りない。  唇は、腕をすべり降りて腰へ、肌の薄いところばかりをなぞりながら大腿にたどり着く。そこは細くて、ぎゅっと引き締まっていて、肌の奥にいくつも張りめぐらされた血管は指をからめたくなるほど鮮やかに、上質な糸で編み上げたレースの綾みたいに見える。千夜ちゃんは私を見下ろしている。おそれと陶酔に目を細め、口もとの恥じらいを手で隠し、その被虐者の喜びに私の眼前の闇がちかちか白くはじけていく。  私は言う。 「ちよちゃん」  私がどれほど、あなたを求めているかわかっているの。 「いいこね。でも、だめよ」 「ですが……」 「もう血はいらないよ」  そう言って、千夜ちゃんの返事を待たず私は坑道を踏み出す。なめらかな岩肌は足の裏に吸いつくようで、逃げているのだという事実を忘れさせるくらいに心地よい。こんなことなら、もっと先に来ていたら良かった。この場所で、千夜ちゃんと夏の暑さを避けるみたいな時間を過ごしていたら良かった。空想の淡い光みたいなものが散らばって、二度と戻れないここを一歩ごと大切な場所にかえていくようだった。 「……わかったことがあってね」  と私は言う。  千夜ちゃんは、「はい」とだけこたえる。 「ちょっと、昔の話を聞いてくれる? ちよちゃんも知っていることだけど、退屈はしないでね。カラストの、私がほろぼした村の話……」
 
 6
 ォォーーーン…………。
 カラストを見守る鐘楼の鐘は、世界の中心よりあまねくすべてのものへ祝福を与えるかのような偉大さで鳴り響いた。私はこのすばらしい朝のはじまりを告げる六点鐘を祈るような心地で聞いていたけれど、千夜ちゃんはいまだ穏やかな眠りの湖を、白いテディベアのシルキーを抱きながらたゆたっている。その健やかな寝息に耳をそばだてると、私はスープを作りたいと思った。この子のために、飢えた子どものたましいの器をいっぱいに満たしていくような、あたたかいカボチャのスープを。  そっと寝床を抜け出して、おもてへ出る。吹き抜ける風に木々はざわめき、それらは東から昇る日のきらめかんばかりの白い光を地に塗りたくる。カリー、アンネスト夫妻の作ってくれたクヌギ製のポストから取り出した二通の招待状は、まるでそれ自身がかがやきを放つかのように見える。 『親愛なる隣人、ちとせへ』  と書かれた手紙にかけられた祈りのようなおもいがなくなってしまわないようそっとロウを剥がすと、便せんには歓迎会の時と場所が記してある。十五時から。教会で。なんとなく、私は空を見たくなる。祝いごとのある朝はやく、日の昇るより前に招待客の家に手紙を直接贈るのはこの村のならわしだという。空はよく澄み渡り、まっさおで、どこまでも幸せが続いていくのだと信じたくなるような気持ちを与えてくれる。私は「ありがとう」と言う。「ちちち」、と木の上の鳥が小さな声で鳴く。  この村に来てより、一年が経つ日だった。  フローレンス。メロ。私たちの歓迎会をひらこうと言ったふたり、手紙の贈り主は、他の誰よりもこの村に授けられた恩寵のようなものを体現した。贅を好まず、汗を流すことを喜びとし、よく笑った。ふたりは幼いころからの付き合いだという。まだうまく話すこともできないころ、はじめて手のひらが触れた瞬間に、ふたりは運命というものを知ったのだという。ともに育ち、この村で、ともに生きていく。フローレンスとメロは運命のままに村を愛し、暮らしを愛し、そして誰からも愛された。私たちにカラストではじめての愛を、あたたかいカボチャのスープを与えてくれたのも、ふたりだった。  運命とふたりが呼んだものは、そのころの私によく理解できた。頭から外套をかぶり、一本のロウソクの明かりのみを頼りに生きていくということは、幸せなのだ。私は、心からそう思っていた。信じていた。信じようと、していた。  千夜ちゃんへの手紙には『私たちの大好きな、千夜ちゃんへ』と書かれていた。フローレンスらしい、子どもっぽくくずれた字だった。メロから私への手紙と並べてみせると、千夜ちゃんは「おふたりらしいですね」と言った。夢のほとりに足先をつけて、スープで体をあたためた。私は「支度をしなきゃね」とこたえながら、いつまでもそうしていたかった。千夜ちゃんが小さな匙で甘いスープをちびちび掬う様子を、絶え間なく降る予感の日射しのただ中で眺めていられるのは、他のどんなものにも代え難いほどの幸せだった。  この村ではよく鐘が鳴らされた。嬉しい日には六の倍数、悲しい日には七の倍数。理由は誰も知らない。たずねると村びとたちは、気にもしたことがなかった、というふうに笑った。なんらかの教えをもとにして独自に変化しただろう彼らの素朴な信仰は、どの家にもある大きな窓から降りそそぐ線状の光に向けられているように感じられた。  十二点鐘が聞こえると、にわかに村はにぎにぎしい雰囲気になる。私たちはお昼ごはんをしっかりと(私は……私にしては)食べて、ひと休みすると草刈りの仕事に取りかかる。とても短い雨の季節を終えると、村は炸裂した榴弾のような草木の彩りであふれかえって、とても人の手でどうにかなるありさまではなかった。けれど私たちは、村の友人たちと一緒に小さな鎌を持つとそれらを切り、ときに手で根ごと引き抜いた。祝福の日には、誰もが村にとどまり、村の中の小さな仕事をする。たくさん働いて、あおい草の蜜や服の繊維の奥までしみ込んだ土の汚れをそのままに教会へ向かう。��れが彼らのマナーだというので、私たちはすなおに従った。青虫を、赤黄色のツノから熟しすぎたオレンジみたいな匂いを出す青虫を見て千夜ちゃんがひっくり返ったのは、楽しかった。あまりの暑さにくらくらして、ブナの木陰で休んでいたときは置いてきぼりにされたみたいに寂しかったけれど、ほんとうに、楽しかった。  なかなか日が傾かないので、ふたたび六点鐘が聞こえたときはみんなで慌てた。いっせいに走って、汗びっしょりで教会の扉を開けたとき、主催のフローレンスがおなかを抱えて笑った。メロもおんなじように、大きな声で笑うと、丁寧に並べられたテーブルのお誕生日席に私たちを導いた。そこは手織りの白いレースでかわいらしく仕立てられていて、とれたばかりのお花や果物の彩りはまぶしいくらいだった。私は千夜ちゃんの肩に寄りかかりながら、そのとき起きた聖なるかんじのあまりに巨大な様子にうちふるえた。けれど、ああ。驚くべきことに、それはこの一年ごしの歓迎会で起きた幸せのうち最もささやかなものだったのだ。  その一つひとつを、いまも鮮やかに浮かべることができる。  夜の訪れとともに、あたりがお酒の果物かごみたいな匂いでいっぱいになる前に、私たちは家へ帰った。ちっちゃなおふろに代わりばんこで入って、物足りなくてぎゅうぎゅうに身を寄せ合って、幸せの余熱みたいなものを味わった。寝床に入っても胸のうちはまだ温かくて、私はえんえん千夜ちゃんに話した。疲れていまにも眠ってしまいそうだったけれど、この日に終わってほしくなかった。そのうちに鐘の音が聞こえはじめると、もの悲しい心地がした。祝福の日の終わりを告げる十二点鐘。それはすっかり寝静まった夜の村に、稲妻がひらめくように、十二を過ぎてもなお激しく打ち鳴らされ続けた。「じいい」、「じいい」という声が壁から天井から地の底から響きはじめ、開いたカーテンの向こうをまっくろな蝗の腹が埋め尽くしていた。  魔女の目。魔女の呪い。お前をずうっと見ているよ。幼いころ、ささやきとともにかざされた手のひらは皺だらけで、ぼろ布のようにごわごわしていて、万感の呪いによってかたちづくられていた。 「村のみなが……」と言ったのは千夜ちゃんだった。そのころ、私たちはまだ勇気を持っていて、血の加護を施すと頭からシーツを被りおもてへ飛び出した。  村はもう、終わっていた。  通りを走って見える家々のすべては、蝗に蹂躙され尽くしていた。歌のうまいリースとお琴にはまっているアニヤ、一日中遊んでも疲れを知らなかったミナの住んでいた、村でいちばんきれいなボタンの咲く家はざらざら揺れる黒い波だった。優しいカリー、アンネストの家はもう、ほとんど崩れてかたちをなくしていた。もの静かで果実酒と詩を好んだウィリアン老人の住まう平屋から覗くか細いともしびが、ふっと消えていく様子を目にした。  蝗の嵐は私たちに触れる寸前、加護の力により炭化した。はらはら落ちる呪いの粒子は、美しいカラストの大地を汚していった。  けれど私はどこかで信じていた。  フローレンス。メロ。  あんなに美しいふたりがうしなわれるはずがない。この村の恩寵や、愛、ほんの数時間前に教会で感じた聖なるものが、ふたりを守ってくれると信じていたのだ。  私は、ふたりの名を叫んだ。家の扉を開くと、ひとのかたちをした黒いかたまりがうごめき「じいいい」と話した。そのとき、私はやっと悲鳴をあげた。
 
 7
 坑道のおわりは、釣鐘のようなかたちをした巨大な空洞だった。周囲を囲む煉瓦は経年のため腐食していて、したたる水のため繁殖した苔の鬱蒼とした樹林のようなにおいがそこを満たした。壁の呪文が途切れているのは、頭上のまる穴から降る月光が希望のように、あんまりまぶしく見えるからだろうと思った。 「きっとね、幸福が呪いを発現させるの」と私は言う。「私が幸せに思うこと……ほんとうに、幸せで仕方がないと感じること……」 「……フローレンス、メロ」 「それに今日のお仕事とかね」 「お嬢さま、私は……」  千夜ちゃんは、言うべきことを探しているみたいに見える。その声があんまり優しいので、私は少し笑う。まる穴へ続くはしごにかけた手のひらには、赤さびが付着した。壁に打ち込まれたそれは、歳月のため腐食していて体を預けるには心もとなく感じられた。 「わかっていたの。私は罪深い吸血鬼なのだから、裁かれなければならない」手で招くと、千夜ちゃんは従順な足取りで近付いてくれる。「わかってい��のだから、平気なんだよ」  千夜ちゃんは、奥歯をぎゅうっと噛みしめる。千夜ちゃんには、思ったことが言えない。ほんとうに言いたいことを、私にだけ絶対に言えない。  そういうふうに、私が育てた。 「吸血鬼は、滅びなければならない」  と私は続ける。  千夜ちゃんが何かこたえるより早く、私のおもいに呼応するかのように壁がふるえはじめる。それが数秒でおさまると、私の背中にぞっとする喪失の感覚が走る。トーテムが、破壊されたようだった。坑道の向こう、もと来た道より「じいい」と大瀑布のような音が轟きはじめた。  蝗がとうとう堰を破ったのだ。  思ったよりもたなかったのは、やはり吸血鬼の力が衰えているからなのだろう。 「おばあちゃんをこっちに」と私は言う。千夜ちゃんからもらい受けたおばあちゃんの体は小さく、けれどずっしり重たく、静かな息づかいは穏やかな眠りを感じさせる。その安寧が続くよう、私はおばあちゃんの体に呪文をかけた。ゆっくりと休んでいられますよう、目が覚めればまた私たちとなにげない日々を過ごしてくれますよう。  ここは寒いから、おばあちゃんが風邪なんかひきませんように。 「ちよちゃん、剣を」  千夜ちゃんは、さほど迷う様子もなく短剣を手渡してくれる。その目には決意があり、薄暗い悲しみがまたたいている。 「少し、時間をつくってね。私が魔術を練るぶんだけ」  そうして私は腕を切ると、溢れ出す血を千夜ちゃんに塗りたくる。それはまたたく間に蒸散して、呪いから守るための霊気の加護をもたらしてくれる。千夜ちゃんは目を開けたまま、じっと私を見ている。 「体が傷つくということは、あまり痛くないの」と私は言う。 「私は、そう思いません」と千夜ちゃんはこたえる。 「ほんとうなのに」 「私には、自らの肌が切り裂かれるより痛みます」 「それは、そうだね」 「控えていただければ幸いなのですが」 「善処しまぁす」  私は傷口が塞がる前に、流れた血を集めて一振りの長剣を錬成する。それは短剣と同様に通常の殺傷能力はほとんどないが、呪物の蝗をほろぼすための力を宿す。 「いやな思いをさせてごめんね」  と私は言う。 「必ず、お守りします」  と千夜ちゃんは、ふたつの剣を受け取ってこたえる。私はそのときの、私の千夜ちゃんの凜々しい声に胸がわああっとときめいて、思わず呪文を口ずさむ。またたく間に白いロングコート、騎士の勲章と青いバラの花飾りが千夜ちゃんを飾りたてる。おじょうさま、とたしなめるような声が何かを言うより早く、私は黒いドレスに十字架と悪魔の角をあしらえた衣装をまとって、「だって雰囲気って大事でしょ」と胸を張って言う。 「たわむれが過ぎます」 「ちよちゃん、すごく似合ってるよ」 「それは関係ありません」 「私だって似合ってるでしょ」 「その通りですが、しかし必要のないことです」 「そうかなあ。もう着れないかもしれないんだよ?」 「なおさらです。未練が生じます」 「ちゃんとお別れしないと引きずらない?」 「消え去るべきなのです。何事も、なかったように」  ふうん、と私は言う。なんとなく飲み込めないみたいな顔をして千夜ちゃんを見ながら、私たちの間にある巨大な断絶の谷を見つめる。それは暗く、互いの姿すら見えないほど広い岸と岸の間には、永遠の深さを持つ孤独が広がっている。 「でも、着ていてくれるよね」と私はたずねる。 「仰せのままに」と千夜ちゃんはこたえる。  そうして背を向けた千夜ちゃんを、私はじっと眺める。空洞を照らすまる穴からの月光が、揺れる黒い髪を神秘的にきらめかせる。吹き下ろす風や、蝗の軍隊が坑道を貫いて起きる乱流が、ロングコートの裾をはためかせる。千夜ちゃんは、すうっと息を吸うと、世界のあらゆる邪悪に立ち向かうと誓った勇敢な騎士のように背すじを伸ばして、「来い」と言った。  大好きよ、と私は千夜ちゃんに届かないよう心のうちでだけささやいた。  坑道よりあらわれた蝗は群れではなかった。それは互いを喰い合い、それぞれのかたちを形成する力を一個体に集積させた、巨大な呪物だった。呪物は蝗のかたちをしながら、その大きさゆえに飛ぶことも駆けることも叶わないようだった。坑道をほとんど埋め尽くした蝗は壁の文字の光を削り取り、あたりを黒く塗り込めて這い寄った。その凝集した闇のような体を引きずり、無数の棘の脚をうごめかせながら「じいい」「じいい」と私たちを呼ぶように叫んだ。  千夜ちゃんが聖なる祈りの短剣を振るうと、その軌跡の蝗が消散する。灰となり、あたりを漂うとまる穴の光に導かれるよう空へ昇りやがて消失する。蝗は動きを止めるが、うしなわれた部位を群体にて再生させるとふたたび体を引きずりはじめる。  私は血を思う。全身をめぐる血液に残る吸血鬼の残り滓を思い、その微小な粒子の一つひとつに呼びかける。集え。集え。集え。吸血鬼の血は指先から、脳幹から移動をはじめ、やがて肺胞に集うと呼気に混じり気道を駆け昇り私の口腔から黒ずんだ煙として吐き出される。  長剣が振るわれると、施された血の加護は蝗の呪いとぶつかり合う。灰が激しく飛び散り、削岩機に放り込まれたかのように蝗の体が消散していく。千夜ちゃんは獣のように叫び、蝗の中枢部分をほとんど吹き飛ばすと息つく間もなく短剣を振るう。蝗は悲鳴か絶望のような鳴き声を絶やすことなく、群体を寄せ集めながら果てのない再生を続ける。  私はその姿に、残酷な胸の高鳴りを覚えた。私を滅ぼさんとする呪いの破滅に、あるいは千夜ちゃんの圧倒的な暴力や哮る声の荒々しさに、胸の内に溶ける鋼のような熱を感じた。  血が目を開く。次々と目を覚まし、吸血鬼のたましいを取り戻していく。肺より昇った血が口腔にて、気道にて、そして肺の内にて、蝙蝠と化す。それは目覚めの喜びとともに私の口より飛び立ち、まる穴の光へ舞い上がった。数百、数千……数万……蝙蝠は与えられた自由に歓喜のおたけびを上げながら空を舞った。私の感覚はその蝙蝠の一匹いっぴきすべてと共有され、数万の感覚が地上の世界をとらえた。まる穴は、城にほど近い山林の中腹の廃井戸であり、そこからは青ざめた満月の照らすあたりの様子がうかがえた。  城はもう、滅びている。  威厳をたたえた鉄の門扉も、あらゆる季節の彩りをみせてくれた庭園も、この日まで数百年のあいだ美しく光をはじき続けた噴水も、自然の猛威にさらされ続けても堅牢に主人たちを守った外壁も、数え切れないほどの客人たちに感嘆のため息をこぼれさせたエントランスも、キッチンもダイニングルームも客間も書斎もバスルームも寝室も遊技場もダンスホールも、すべて滅びた。そこにあるのは、ひとつのうねりだ。波のように、広大な樹林が風にそよぐように、城を食い尽くしても足りることのない蝗は一個の暗いかたまりとなり私たちの何もかもを奪い続けた。  じいい。  じいい。  じいい……。  蝗の声はほとんど地鳴りのようにとどろいた。最後に残った尖塔が崩れ落ちたとき、蝗のうごめく影に飲み込まれた青銅の鐘が鳴ることはなかった。  私は深く息を吸う。数万の蝙蝠が一斉に息を吸い込むと、刃物が擦れ合うときのような超高音があたりに響き、蝗はぴたりと動きを止める。私の蝙蝠がざあっと空に展開し月を覆い隠すと、つかの間あたりに本物の暗闇が満ちる。 「さようなら」と私は言う。  蝙蝠が砲弾の速度で降下をはじめると、蝗は矢のように地上を飛び立った。ふたつの巨大なかたまりがぶつかり合い、灰が空一面に広がった。私は蝙蝠の一匹として蝗を噛みちぎり、群れを成した蝗に食われ、雲のように広がった大群の切れ間より時おり注ぐ線状の月の光の美しさに目を細めた。  坑道の戦いは、もう終わっていた。千夜ちゃんの振るう剣は呪物のほとんどを滅ぼし、そこに灰の山を残した。後から迫った哀れな蝗は、坑道に満ちた加護の力によって私たちに近付くことさえできず灰と化した。千夜ちゃんは大きく息を吐き、衣装にまとわりついた蝗の粉を払い落として、「時間は足りますか」とたずねた。  私は少し笑って、「急ぐね」とこたえた。  蝙蝠と蝗。吸血鬼と魔女。もとより差は明らかだった。私は、私の蝙蝠が圧倒的な力をもって魔女の呪いを食い尽くす様子を眺め、やがてそのすべてが終わると魔術を解いた。  千夜ちゃんは私を支えようとした。けれど私は自分の足で立つことができたし、意識もはっきりとして、「平気だよ」と完璧な笑顔をつくることだってできた。 「無理をしてはいませんか?」 「もう、心配してくれてありがと。私、ふつうの人間にもけっこう慣れたみたい。平気だから、早く出よ」 「……承知しました」 「おばあちゃんをお願いしていい?」 「お任せください」 「先に登るけど、スカートの中は見ないでね」 「お嬢さま」 「あぁん、冗談」  そうして私は壁のはしごに手をかける。それはいまにも壊れそうなほど錆ついて、しかし私の体をしっかりと支えた。一つひとつ、腕と脚の筋肉をしっかり使って体を運ぶのは、いまの私にはひどく難しいことだった。  消耗している。吸血鬼の力をほとんどなくした私には、まる穴の光はずいぶん遠くにあるように感じられる。  廃井戸の外、地上にはまぶしいほどの月が注いだ。夜明けはまだ、遠いようだった。蝙蝠より鮮明に、私の知覚は滅びた城をうつした。そこは灰が降り積もり、月の光に砂塵がきらめき、さながら古の城跡を飲み込んだ砂漠のような姿だった。 「家、なくなっちゃったなあ……」  と私はつぶやいた。それがなんだか間の抜けた、ちっとも切実でないような響き方をするので、少し笑えた。実際、明日からどうしようか。黒埼の家に頼りたくはないし、千夜ちゃんのおじさまに迷惑はかけられない。……魔法使い。ああ、プロダクションに寮があったはず。いい考え。お願いして、寮に入れてもらって、アイドルのお仕事をがんばってお金を貯めたら家を、千夜ちゃんと暮らす家を……私が? こんな私が……こんなふうに呪われた、私が……。  魔女の手。  お前をずうっと見ているよ。  砂漠……。  ああ……。  私は、うしなった。  この、灰の砂漠が、私の幸せの末路なのだ。  悲しみが、胸のうちを荒れ狂う波濤のように打った。たちまち心はいっぱいになり、立っていることさえできなかった。とてつもない喪失の悲しみに押し潰され、息をするのもむずかしいようだった。 「お嬢さま」と千夜ちゃんが言った。  私は背中でその声を受け止め、振り向くことができなかった。見られてはならない。気取られてはならない。私の孤独に触れられてはならない。  ざざざ、と草を踏みしめる音がした。千夜ちゃんは廃井戸より、地上に足を下ろしたようだった。そうしておばあちゃんをそっと寝かせると、千夜ちゃんは私へ近付いた。  笑わなければならない。「どうなさったのですか」と、優しい声が聞こえる。私は笑わなければならない。これまでしてきたように、やがて千夜ちゃんが私のもとを巣立っていく日のように、しっかりと笑わなければならない。 「お嬢さま!」  千夜ちゃんが叫んだ。  私は振り返ることもできず、ぐうんと視界が転変し、満月が、その光が遠ざかっていく様子を眺めた。  落下している。  廃井戸の、まる穴を落ちていく私を、おばあちゃんが見ていた。おばあちゃんは私に取りつき、ともに墜落しながら真っ暗な眼球に私を写しほほえんだ。 「魔女」  私は言った。  魔女の手の内の聖なる短剣が、歓喜のようにまぶしく閃いた。
 
 白雪千夜
 8
「お嬢さま……」と私はふたたび呼んだ。しかしそれは叫びとならず、喉から漏れ出す吐息のようにかすれた声だった。  景色が歪んでいる。  後頭部が、熱を持っている。  手で触れてみるとべとっとした、ぬるい液体の感触があり、においを嗅ぐとそれが血であるということがわかる。私は殴られたのだ。お嬢さまは廃井戸へ、落ちて……。  月が空洞を照らした。お嬢さまはそこにいて、短剣の突き立てられた頚部から、楔の打ち込まれた両手足からおびただしい血を流した。磔にされた罪人のような姿で、自らを見下ろしたおばあちゃんを見つめ「……まじょ」と唇で言った。  私ははしごに体を預ける。しかし血のぬめりで片手が剥がれると、はしごは壁より脱落した。落下の途中、遠ざかるあの月には永遠に手が届かないような、そんなおもいが私を満たした。  さほど痛みは感じなかった。体の何かが狂っているのかもしれない。お嬢さまの庇護によるものなのかもしれない。すぐに立ち上がろうとして、私は転倒した。右脛の皮膚を、骨が破っているせいだった。反射で手をついて、地面が顔を打った。右肩の関節が、外れているようだった。右の目を開けていられないのは、頭部からの出血が絶えず眼窩に流れ込むからだった。 「あらあら、かわいそうにねえ……」と魔女が言った。魔女はおばあちゃんの姿かたちをしていて、おばあちゃんの声で話し、おばあちゃんと同じようにのんびり歩くと、真っ黒な眼球で私を見下ろした。「すぐに済むから、おとなしくしてるんだよ」  私はお嬢さまを見た。短剣は頸椎を貫くように突き刺され、首の周囲ではゆるやかに炭化が進行しはじ��ていた。両手に、両足に古びた木の楔を打ち込まれ動くこともできないようだったが、かろうじて瞳を揺らし「ちよちゃん」と、私を呼んだ。 「お嬢さま」と私は呼んだ。  左半身にて全身を引きずり、お嬢さまのそばへ寄ろうとすると、手のひらに楔が打ち込まれた。左手、左足……ついでのように右半身も地に縫い付け、「どうか、おとなしくしていてね」と魔女は言った。 「……殺してやる」と私は言う。  魔女はそうっと、小さな子どもにするようにほほえむ。その黒い眼球を、ぞっとするほど優しいかたちに細め「切ないことだねえ」と言う。  おばあちゃんは、サイトウ、と名乗った。 「殺してやる」と私は言う。  おばあちゃんは、実は東アジア圏に名を知られる魔女であり、二百歳を越えていて、世界で最初のアイドルだということだった。 「殺してやる」  おばあちゃんはよく笑い、よく泣き、私たちに起きるできごとの扱い方を教えてくれた。 「殺してやる」  おばあちゃんは、外から帰ったら手を洗って、うがいもしっかりね、と私たちへ言った。 「殺してやる」  おばあちゃんは、話せたらいいねえ、と言った。誰か、信頼できるひとに……。 「殺してやる、殺してやる」  魔女はつまり、そういうひとだったのだ。 「殺してやる! どうしても、お前を!」  私は叫んだ。しかし魔女は意に介す様子もなく、泣きじゃくる幼子に向ける目で私を見て、「悲しいことだね」と言った。深いため息とともにまる穴の光を見上げると、「千夜ちゃん。ちとせちゃんはね、死にたいんだよ」と続けた。  そうしてしずかに、泣きはじめた。  鼻をぐすぐすいわせ、目もとを濡らし、おばあちゃんのそれとまったく同じように澄んだ涙を黒い目から流した。 「かわいそうなちとせちゃん……話はずうっと聞かせてもらったよ。千夜ちゃんも、ほんとうはわかっているはずだよ。だからわたしが……でも、苦しまず死ねるようにがんばったのに、できなかった。失敗した。うまくできなかった……これは事故だったんだよ……千夜ちゃん、信じてくれるかい?」  私は、息を呑んでこたえた。 「お前は私たちを騙した」 「機会をうかがったんだよ。わたしは臆病で、まさか、こんなにかかるなんて……」 「お前は、私を背後から襲った」 「気絶してくれればよかったんだよ……千夜ちゃんはお利口で、いつもちとせちゃんのそばにいるんだから」 「お嬢さまを磔にした」 「こわかったんだよ。わたしは非力だから、どれだけ生命力が衰えていても吸血鬼が、おそろしくてしょうがない」 「杭を打った」 「ほんとうにごめんねえ。こわかったんだよ。わたしは弱くて、臆病で、魔術もろくに使えない……千夜ちゃん。わたしはね、死にたいんだよ。ちとせちゃんと同じで、いますぐに死んでしまえたらって思うよ……」  私は、ふたたび息を呑む。 「化物」と、私は言う。  魔女は、どうして、と言うように首をかしげた。その黒い瞳からは、わが子の幸福をおもう親の涙が流れた。その唇に、地を這う蟻の群れをいたずらに虐殺する子どもの笑みを浮かべた。両者は次々、一言ごとに入れ替わり、そのたび顎の、頬の、表情をかたち作る筋肉は破壊された機械仕掛けの粗雑さで機能した。  魔女は右目で笑い、左目で泣いた。口角を痙攣発作のように上下させ、「信じてくれるかい?」とたずねた。 「殺してやる」と私はこたえた。 「そうね」と、お嬢さまが続けた。  魔女はなにか聞き違えたという様子でゆっくりと振り返り、「どうして?」と言った。「ちとせちゃんは、死にたいんだろう?」と続ける声に、隠しようもなく恐れがのぞいた。  お嬢さまは幾度か咳き込み、「さようなら、おばあちゃん」と言った。そうして血性のつばを吐き出し、「あなたは許されない」と続けた。  そのとき私は見た。  流れる血の川が、魔女の足先に触れる一瞬を。  魔女は苦痛に顔を歪める。その足裏より伸びた芽は皮膚を破り骨を貫き、足背より鮮やかに花開く。魔女は悲鳴をあげ、痛みも問わず足を引き抜くがお嬢さまはそれを逃さない。血の網は、粘菌の這うように地中を広がり一面に花を咲かせた。それは魔女に絡みつき、伸ばした蔦よりふたたび花開き、無数の微小の針がその脚を貫き続けた。  魔女は倒れない。  もう倒れることができない。  花は針を実らせるとまたたく間に凝固をはじめ、赤黒いかたまりとなって魔女の体を釘付けにする。足から下腿、大腿……それが骨盤へたどり着くと、魔女は腐敗におかされた古木のような半身を眺め、「間に合うよ」と言った。 「ちとせちゃん。あんたは呪われている。幸せになれない。何度だって死にたいと思う。そのたびあんたは後悔する……呪われている、あの日死んでいたらよかった……それでいいのかい?」  針はもう、首の根元まで迫っている。  魔女はたずねる。 「それでも、生きていたいと思えるかい?」  お嬢さまは、しずかにこたえる。 「あなたは、ちよちゃんを傷つけた」  血の花は咲き続けた。魔女を頭頂まで覆い尽くしてやっと成長を止め、やがて泥のかたまりが砕けるよう崩れ落ちた。そこにもう魔女のかたちはない。枯れ果てた花の積もるあとには、十センチほどの木彫りの人形が残される。 「呪物」と私は言う。  頭部に刻まれた三つの方陣が溶解すると、人形はまたたく間に溶け落ちた。粘性の液体は地に混じりあたりを汚したが、ふたたび何かを引き起こすだけの力は持っていないようだった。 「どうりで……手応えがないと思った」  お嬢さまは言った。  異様にか細いその声には、迫り来る滅びの響きがあった。  私は、お嬢さまを見る。お嬢さまは、私にほほえみかける。その笑みはあいまいだった。苦しくないと伝えるようにも見え、安心するよう呼びかけるようでもあり、許しを乞うようでも、悲しまないようにと懇願するようにも見えた。  いずれにしても、それは生きようと望むものの表情ではない。  首の短剣を契機とする炭化はおとがい、肩口まで広がっている。杭を突き立てられた四肢はほとんど形を残していない。血を流しすぎた。お嬢さまはもはや、体を保つことさえ難しいようだった。  ああ。  お嬢さまのほほえみは美しく、どうしたって死にゆくもののそれに見える。  いかないでください、と私は言った。吐息は宙で解け、まる穴の光に導かれ、お嬢さまのもとへたどり着くことなく、消えていった。 「いま、そちらへゆきます」  私は言う。 「いいの。無理はしないで。日が昇れば助けがくるのだから、命をつなげることだけを考えて」  お嬢さまはこたえる。 「私に、こうして黙ったままお嬢さまの死を見ていろと、いうのですか」 「……そうね。私は助からない。じっとしていなさい」 「そのような命令はきけません」 「ちよちゃん。消え去るべきなの。何事も、なかったように」 「そんなことは望んでおりません」 「炎のように、思うでしょう。けれどすべて、消えていくの。灰のように、風にまかれて……」  楔はたやすく外れた。魔女の力が消え失せたのだ。しかし、それは私も同じことだった。楔の抜けた穴からはとめどなく血が、命が流れ出した。体は奥のほうから、心臓の周辺から熱をうしなってゆき、次第に呼吸がうまくできなくなる様子を感じた。湿ったぼろ布で背中を撫でられるようなおぞ気が絶えず走り、胃の底からせり上がる嘔気をこらえなければならなかった。  ここは地獄だ。  私は汚れた地を這う獣だった。  血を吸った泥が肌にまとわりつき、進むごと体は重みを増した。蒸散していく呪物の腐敗臭が意識を奪おうとした。お嬢さまの加護の消えゆく体には感覚が取り戻されてゆき、骨の出た脚を引きずる痛みは一瞬ごと私を殺してしまうようだった。  しかし、それがどうしたというのだろう。  お嬢さまは私の神だ。  お嬢さまは、手を差し出してくれた。  煤だらけのシーツに身をまるめた私に手をさしのべ、冷えた水を施し、そのぬくい手で頬に触れてくれた。  思い出せ。  そのとき見えた白い光を。  ひとりでに、祈りのかたちを成した手のひらを。 「死なせません」  と私は言う。 「近寄らないで」  とお嬢さまは言う。 「私を、死なせて」  お嬢さまは続ける。 「生きていてもしようがないの。呪われ、憎まれ、幸せになれず、ちよちゃんを傷つけるの。またこんなことが起きたら、もしもアイドルのみんなを巻き込んだら、どうすればいいの? 嫌なのよ、ちよちゃん……もう、私を許して」  ほとんど炭化した唇は、声を放つたびくずれた。むき出しになった皮下組織はひび割れ、その裂け目はすべての光を飲み込むようだった。 「許せません」  と私はこたえた。 「死んではならない」  私は続けた。 「どれほど呪われようと、拒まれようと、私がいます。誰を巻き込み傷つけようと、私がいます。私だけが、永遠に、お嬢さまの隣にいます」  私は、お嬢さまの首もとに触れた。そこは冷たく、からからに乾いていて、掴めばもろく崩れ落ちた。 「あめ……」とお嬢さまは言った。頬の肉が、舌がたて続けに炭化したために言葉はあいまいだったが、こぼれる涙がその意味を理解させた。「あええ……」  私は、少し笑う。 「なんと言っているのか、わかりません」とこたえる。  そうして地を踏みしめ、どうにか体を起こし、お嬢さまに馬乗りになると、途方もなく巨大な欲望が全身を満たしていく様子を感じた。見下ろしたお嬢さまはふるえていて、おそれていて、不明瞭な声をくり返した。剥がれる皮膚の溶けた涙は黒く濁っており、しかし生命の熱があり、月の光に美しくかがやいた。  お嬢さま。  私はずっと、こうしたかった。 「私は、お嬢さまのしもべです」  腕をかざし、こぼれた私の血がお嬢さまの体にしみこんでいく様子を眺めた。炭化した首の組織はその内部より再生し、甦り、もとの白くつややかな肌が脈を打った。  まる穴よりそそぐ光が、お嬢さまを照らした。 「それでいいではないですか」  私は、溢れる血をお嬢さまの口腔に注ぎ込んだ。  私のすべてを、お嬢さまに差し出した。
 
 9
 オォォ…………ン…………。
 私にはなにもできなかった。  悲鳴とともにお嬢さまより放たれた無数の蝙蝠は天を覆い、地に満ちた。それは家や木々、村を食い尽くす蝗のすべてを灰に変えた。やがて蝗が消え、蝙蝠が消えるとあたりに満ちていた鳴き声はまったく消え去り、しんとした静寂やときに過ぎる夜風の孤独な響きが広がった。  まっさらな、灰の砂漠に月の光が降りそそぐ。  それは、唯一残された教会の鐘楼を照らしている。 「お嬢さま」  私は呼んだ。お嬢さまは目を開かなかった。その肌はいまだ温かいが、体温はわずかずつうしなわれていた。心臓の鼓動はたしかだったが、脈拍はしだいに弱まっていた。呼気からは黒ずんだ煙が立ちのぼり、それは蝙蝠のかたちを取ることもなく大気のうちに消えていった。  黒埼の娘は、ある種の神なのだ。  かつておじさまが、聞かせてくれたことがあった。  だからおまえは、そのようにあの子と接しなければならない。常に畏敬の念を持ち、感謝を捧げ、そのたましいが荒ぶることのないように祈り続けなければならない。  できるね。  私はすぐに頷くことができた。私は一度死に、甦ったのだ。炎にまかれ、すべてをうしなった私へ手を差しのべてくれたお嬢さまのために祈り続けることは私にとって生きることに等しかった。  おじさまはこう続けた。  もし、もしもあの子が……。 「お嬢さま……」  私はふたたび呼んだ。その体を引きずり、灰に侵されていない森の木々の合間に横たえると、懐中より短剣を取り出す。お嬢さまの一族、その始祖より賜られたというそれの刃先は丸く、ちりばめられた装飾で重たく、とても何かを切るに適したものではなかった。  傷つけるには、勇気が必要だった。  私は、お嬢さまをおもった。お嬢さまのほほえみをおもった。私を呼ぶ声をおもった。肌に浮かぶたまのような汗をおもった。収穫した果実を差し出す誇らしげな手つきをおもった。用意した食事を食べきれず、眠る前に夜食を欲しがるときのわがままな様子をおもい、四角い窓から降りそそぐ線状光に照らされた穏やかな寝顔をおもうと、短剣を自らの手のひらに突き刺した。炎に肌を抉り取られるような衝撃にうめきがもれ、あとからあとから涙が溢れた。しかし短剣はどうにか手を貫き、途端に血だまりが広がるほどの出血が起きた。  お嬢さまに与えるのは、簡単なことだった。  その唇はほとんど閉じていて、しかしほんの少し手に力を込めれば拒む様子もなく開いた。その口腔の内の、お嬢さまの舌はうす明かりのもとでもはっきりと赤く、私はそれを眺めると目の前がくらくらした。最も甘美な、この世の何より官能的なものを見つめるような心地にうっとりとして、しぜん口もとが緩んでいく様子を感じた。  飢えた殉教者に蜜をそそぐようだった。  赤ん坊に母乳を飲ませるようでもあった。  そのように私はお嬢さまの口腔に指を差し込み、血を差し出し、身も心も差し出し、命をまるごと差し出すこのしもべの喜びにうちふるえた。  そのうちに、お嬢さまの体が熱を放ちはじめる。口腔内から頚部、胸や���より四肢の先端にいたるまで、まるで炎が体内をかけめぐるように、熱は広がっていく。  私が、お嬢さまに溶けていく。  ゆっくりと、空が白んでいく。  お嬢さまが目を開き、ぼんやりとした様子であたりを眺める。私が「大丈夫ですか」とたずねると、「指を抜いて」とこたえる。それに応じると、「傷を見せて」と私の手をそっとなでる。手のひらを貫通した刺創はそれであとかたもなく塞がり、驚いた私を見てそっとほほえむと「ありがとう」とお嬢さまは言う。 「こわかった」とお嬢さまは続ける。 「私は蝙蝠のすべての一羽だったの。蝗を食べて、食べられて……苦しくはなかった。だけど、おそろしかった。数万の死が、次々と……こわかった。ちよちゃん。私、こわかったの……」  そうしてお嬢さまは肩をふるわせる。声をあげることはないが、私の胸に身を寄せてしずかに泣き続ける。 『もし、もしもあの子が……』  かつて、おじさまは続けた。 『あの子が悲しむなら、おまえが笑わせてあげるんだ。できるね?』  私はテディベアのシルキーを取り出すと、そのまるっこい手の先でお嬢さまのまなじりを拭った。お嬢さまははじめ驚いたようだったが、すぐに顔を上げると「シルキー」と呼んだ。シルキーと私を交互に見やる瞳を、山嶺よりいまにも姿をあらわそうとする朝の光の予兆がぼんやりとかがやかせった。 「ちとせお嬢さま、泣かないで。あたしがそばにいるよ」と私は言った。うわずらせた声で、嘘のように、子どものように続けた。「あたしがちとせお嬢さまを守ってあげるから」 「ほんとうに?」 「ほんとだよ!」 「誓って?」 「約束する!」 「じゃあ、私もあなたを守ってあげる」 「それは……大丈夫です。私がお守りしますので」 「もう、ちよちゃんノリわるい」 「すみません……限界のようです」 「どうしてこの子を連れてきたの?」 「ベッドを立つとき転がったのです。手に取って、そのまま……」 「どこに隠していたの?」 「服の下に、このように……」  私たちは、そうやって話した。うしなったものから目をそらすように、まるで、同じ日々が続いていくのだと信じるように。  生きるため、私たちはそういう方法を選んだ。 「夜が明けるね」  と、お嬢さまが言った。その声とともに、朝日は予兆より現実へ姿を変え、山々の峰を越えて姿をあらわした太陽の最初の線状光が地にそそぐと、灰に炎がともった。太陽は、驚くべき速度で砂漠を照らしてゆき、燃え上がる炎は地の一切を、天の限りをことごとく焼き尽くしていった。  燃えていく。  カラストが、私たちの夢が、燃えていく。 「また、ふたりきりだね」とお嬢さまはささやいた。 「はい」とだけ、私はこたえた。  そうして、私たちは燃える炎を背負いながらカラストの村をあとにした。一度として振り返ることはなかったが、やがて鐘楼が焼け落ちて聞こえた青銅の鐘の音は細く長く伸びる影となり、どこまでも私たちを追うようだった。
 
 10
「目を開けて」  お嬢さまの優しい声は、もやの向こうから朝を告げる静かな光のように響いた。「ちよちゃん、起きて」とふたたび聞こえた言葉や髪をなでるあたたかな手のひらを、私は目を閉じたままいつまでも感じていたいような心地でいた。  お嬢さまの指が、私の頬をむにゅうと引っぱる。 「ちよちゃん、ちよちゃあん」と甘えた声が私をくすぐる。  目を開くと、お嬢さまはにっこりと笑った。私を見下ろすその目をうすく穏やかに細め、つやつやと夜明けの色に染められた頬をゆるめ、「おねぼうさん」と言った。  私は、「おはようございます」とこたえる。  お嬢さまは「うん。おはよう」とまた笑う。  その表情は、どこをとっても美しく、昇りはじめた太陽が見せるようなはっきりした生命で満ちていた。口もとや、首の傷はあとかたもなく消えており、それは私も同じだった。脚から突き出た骨や肩関節の脱臼、四肢を貫いた穴の数々、すべてがまるで悪い夢であったかのようだった。  きっと、いまのお嬢さまは死んだ私さえたやすく甦らせるだろう。 「どれほど眠っていたのですか」と私はたずねる。 「何時間か、くらい? 気持ちよさそうだったよ」 「夢を、見ました」 「どんな?」 「……明るい、光のある方へ、進んでいく夢です」 「うそつき」 「はい」 「そんな子に育てたおぼえはないよ」  お嬢さまはそっとほほえんで、私の唇に指で触れる。盲のように、そのありかをたしかめるように触れては離して、力を込めて、ゆるめて、口づける。そのできごとは小鳥のさえずりとともに終わり、お嬢さまはほとんどまつげの触れ合う距離で私を見る。 「だいすきよ」とお嬢さまは言う。  私は、こたえられない。  そうして、私たちのあいだになにか、光の交換のようなものが生まれる。  光は、この宇宙の進行にさえつながる莫大な力を持っている。信じられないほどの速度で朝日は昇り、その最初の一閃光が眼下の灰の城跡を照らす。 「ふたりで見よう、ね」とお嬢さまは言った。 「ご一緒します」と私はこたえた。  私たちは肩を寄せ、丘の上にそびえる大樹に背中をあずける。そこからは、城跡のなにもかもを見渡すことができる。  炎の、最初のひとかけは火花のように見えたが、それは幾度かきらめくとまたたく間に燃え上がり、城跡を舐めるよう広がった。  まず焼かれたのは、納屋のあった場所だ。そこにはちょっとした工具や何に使うのかわからない機械のたぐいがあって、そうだ、農機具や大量の園芸土、堆肥などもあったはずだ。それらが撒かれるはずだった後庭の畑には、すくすく育ちつつあったヒマワリや、今年の収穫を終えてゆっくりと休んでいるイチゴの畦があった。この灰は、きっとよい肥料にはならないだろう。庭園の花々も蔦をからませたアーチも、あおあおと際限のない広がりを続けていた樹木の緑も、もう見ることは叶わないだろう。それらに無限の命をそそいだ噴水すら炎にまかれ、二度と甦ることはない。  私たちは、うしなっていく。  はじめてこの城を訪れた日、お嬢さまはとても明るい様子だった。あちこちを探検し、すっかり疲れると食事もとらずに眠ってしまったことを覚えている。特に気に入ったようだったのが温室で、お嬢さまは城の内にあって最も日当たりのいいそこで好んで過ごした。日射しには弱いからと、ともに作った庇のできばえはすばらしかった。いまにしてみれば、私もあの空間をこころよく感じていたようだった。季節ごと、日ごとの飲み物を用意してふたり過ごす時間はかけがえのない、神聖といって差し支えないものだったように思う。  私たちは、うしなっていく。  シルキー。彼女にはじめての友人ができたのは、まだ肌寒い春の終わりのころだった。明るく自然な茶色をした二体のテディベア、名前はイーリエ、ノラといった。シルキーが寂しいと思って、とお嬢さまは言った。それから、ずいぶん背の高いテディベアのバンシー、白い毛なみのカマイルカのジェシー、子だくさんの雪ウサギのシーナ……あっという間にお嬢さまのベッドはぬいぐるみであふれるようになり、私たちは、ほんの少しずつさみしくなくなっていった。  私たちは、うしなっていく。  お嬢さまは、燃える地上の炎でまっかだった。いまにも消えゆく雪のような肌も、切り分けたグレープフルーツの黄金のような髪も、ただただしずかに流れる涙もすべて、まっかだった。  城のすべてが炎に覆い尽くされると、お嬢さまが私の手をにぎった。わたしはそれをにぎり返し、結ばれた手と手の間で交わされる祈りのようなおもいに心をそそいだ。  うしなった。  私たちは、うしなったのだ。  うしなったものたちが、昇っていった。  巨大な火柱に乗り、どこか高いところへ。 「死んでしまいたいの」お嬢さまは言う。「ちよちゃんが私のことを忘れて幸せに生きていけるのなら、いますぐにだって死んでもいい」 「生きていたい」私はこたえる。「お嬢さまとともに、です。お嬢さまが死んでしまうようなことがあれば、その一秒後に死ぬのが私の望みです」  お嬢さまは、こたえない。  私は、それ以上こたえない。  やがて遠くから、サイレンが響きはじめる。たくさんの強い光が、私たちのもとへ現実を連れてくる。 「いきましょう」 「うん」  私たちは立ち上がる。 「話さなければならないことが、多くあります」 「どこまで信じてくれるかな」  歩き出す。 「この衣装が、話をややこしくするように思えてならないのですが」 「あっ、ひどい。ちよちゃんだって、ほんとはすごく気に入ってるくせに……」  燃える炎の照らす先へ、向かっていく。
 
 黒埼ちとせ
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 しいっ。  そう言って指を唇にそえると、世界のすべてが音をたてるのをやめた。草花や木々、風と光……美しい自然のはたらき、それから、魔法使いでさえも。  だって、私は偉大なる吸血鬼なのだ。 「だめよ、魔法使いさん」私は続けた。「ちよちゃんが眠っているの。おはなしはあとで、ね」  魔法使いさんはうなずいて、そうっと病室の扉を閉めた。すると風が、木々が歌いはじめ、ゆらめく日の光がベッドへそそいだ。くうくう眠る千夜ちゃんはかわいらしく、どこをとっても完璧で、白くみずから光を放つように感じられた。  私は、もはや逃れ得ない愛情に駆られ、手のひらを重ねた。そこは温かく、握りかえす仕草の切なさに息がつまるようだった。 「私の、ちよちゃん」  と私は言う。  さようなら、と私は言えない。  ほんとうに言うべきことを、千夜ちゃんへ言えない。
 ゴオォォーーーン…………。
 どこかで鐘が鳴っている。  それは呪いの呼び声に聞こえる。  それは祝福の歓声に聞こえる。
 ゴオォォーーーン…………。
 それはいつまでも、私を見ている。
 ゴオォォーーーン…………。
 ゴオォォーーーン……………………。
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heart-field · 2 years
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・ 村のシンボルの大聖堂* ゲストからの目線はこんな感じに。 ここから登場する新郎新婦は本当に素敵で一生の思い出に残るはず! ____________ 𝙷𝙴𝙰𝚁𝚃 𝙵𝙸𝙴𝙻𝙳 トップページはこちら☟︎︎︎ @heartfield_wedding ご見学&資料請求は プロフィールのリンクから* [姉妹店のご紹介] 静岡 エスプリ・ド・ナチュール @esprit_de_nature_wedding 新横浜 ハートコート横浜 @heart_court_wedding 株式会社テイク・フォー ____________ #ハートフィールド #ハト嫁 #プレ花嫁 #プレ花嫁準備 #結婚式 #結婚式準備 #結婚式準備を楽しもう #ウェディング #ゲストハウス #貸切ウェディング #三島結婚式場 #沼津結婚式場 #静岡結婚式場 #三島花嫁 #沼津花嫁 #静岡花嫁 #静岡ウェディング #大聖堂 #大聖堂チャペル #大聖堂ウェディング #チャペルウェディング #チャペル挙式 #教会式 #教会ウェディング (ハートフィールド マナーハウスウェディング) https://www.instagram.com/p/CZ6X_LLvkaQ/?utm_medium=tumblr
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enjoetoh · 4 years
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第二次世界大戦のさなか、ジョン・メイナード・ケインズとフリードリヒ・ハイエクは、ケンブリッジ大学のキングス・カレッジ・チャペルの屋根の上で、一晩中二人だけですごしたのだ。彼らの任務はじっと空をにらんで、英国の風光明媚な小都市に焼夷弾の雨を降らそうとする、ドイツの爆撃機を警戒することだった。 (中略) 夜が来るたびに、キングス・カレッジの教師や学生らは、シャベルを持って華麗なゴシック様式の礼拝堂の屋根に交代でのぼった。この礼拝堂の礎石は一四四六年にヘンリー六世によって据えられたものである。ロンドンのセント・ポール大聖堂の空襲火災警備員は、爆撃機に対抗する手段はないものの、落とされた焼夷弾を屋根に火がつく前に屋根の端から落としてしまえば、被害を最小限にとどめられることを学んでいた。そんなわけで、当時六十歳に近づいていたケインズと四十三歳だったハイエクは、石灰岩の手すりにシャベルを立てかけ座り込み、迫りつつあるドイツ機の空襲に備えた。
『ケインズかハイエクか』ニコラス・ワスプショット(新潮文庫)久保恵美子訳、p11-12
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【公式】FORTUNE GARDEN KYOTO WEDDING MOVIE〜CHAPEL~
「独立型の大聖堂で誓う永遠の愛」 9mの高い天井、大理石でできた15mのバージンロード、ドレスが映える祭壇、2階のキャットウォークから響き渡る生演奏。 花嫁の憧れがつまった独立型チャペルで永遠の誓いを。
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asanuman · 3 years
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St.Grace Cathedral 青山セントグレース大聖堂 表参道探索時に。 表参道の中心部に建ってます! 表参道通りを挟んで。 Apple表参道の反対側の路地を 行くとありました。 こうなるとNewYorkの摩天楼の中に建ってるチャペルも見たくなります! いつか行ってみたいですー❗️ #stgracecathedral #cathedral #church #chapel #newyork #セントグレース大聖堂 #青山 #表参道 #apple #摩天楼 https://www.instagram.com/p/CPN3k3Rl7Ky/?utm_medium=tumblr
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poetry-for-absence · 4 years
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E       建築と自然 / Neo modern   [ 風景の詩化 ]       Peter Zumthor  (1943- , Basel,  Switzerland)
 <構築する>という行為の世界異化、という点からピーター・ズントーの建築を論じたく思う。
構築することは自然と行為 (人工) のあわいに存在する詩的次元である。それは意図による自然の変質であり、素材を加工・変形させ、分節し、つなぎ合わせ、かたちづくることである。
 例えば、ガラスのコップの構築について考えてみる。「飲料物を飲む」という目的が、コップのくぼんだかたちを要請し、その要請通りに、これから作られるコップの形は意図される。そうして出来たコップの形が「飲む」という目的に適うとき、そのコップの機能は成就する。かたちが行為をうながし、意図・目的と効果の両者が円環で結ばれた状態を<機能>という。
 獲得したい効果が存在するとき目的が生まれ、効果が目的に適うとき、それは機能的であるといわれる。求められるのが機能性のみであるのならば、かたちが決定されるのは、経済的合理性によるのかもしれないし、構造的合理性によるのかもしれないし、生産体制の合理性によるのかもしれない。そして、そこでそれらを統合するものとして Aesthetics <美的感性> が現れるとき、人の制作行為は崇高性をおびる。そして、Aesthetics が かたちに求められるとき、そこで詩性が要請される。
 なぜ、詩が Aesthetics のモデルたりうるのか。それは言語的営為が、「語要素の論理と連結の構築」であるゆえであり、そのため、そこには制作行為( = 素材を加工・変形させ、分節し、つなぎ合わせ、かたちづくること )の投影像・モデルがみとめられるゆえである。その中でもオブジェクト性を得ることができる<詩作>という営為にこそ、構築行為における Aesthetics の元型があるということができるだろう。また、言語化することは認識につながるゆえに、<詩>の論理圏に建築の構築行為における論理を流入させることで建築の美的状態についての蓋然性が高まることも、詩を制作行為のモデルとすることの有効性がある。言語レイヤー(言葉)と身体的レイヤー(構築行為)は、互いが互いに構造を与え合っており、それらの現実における定位が認識と呼ばれるものである。つまりは、言葉と行いが人間の世界をかたちづくっている。そのため、詩を持ち出すことで、言語的営為と制作行為とを統合的に論じる可能性が生まれてくる。
  
 聖ベネディクトゥス・チャペル (1989)は、スイスの山あいの村にある木造の小さな教会堂である。斜面に立つこの建物は、木の葉型の平面に、細い木材の柱、薄いステンレスの板を内壁とし、木肌葺きの外壁となっている。それは、「構築行為の結晶」とも言えるものであり、柱を立てること、それを細い金属棒により壁と結合すること、ステンレス板を巻いて内壁を貼り付けること、薄い木板を貼り付けてゆくこと、などの構築の行為がそのまま焼き付けられ建築物となった感がある。これはリチャード・セラの作品『Verb list』(右図。セラの制作に際した行為を動詞名としてリスト化したもの)を想起させる。また、斜面に立つゆえ、床下は空洞となっており、このヴォイドが礼拝空間の静けさへの音響的な働きをしている。詩には独特の静けさが宿る。この静けさもまた詩的なものである。詩の中の濃縮された静けさ = 祈りの空間での体験が、日々の光を精彩なものとする。
 マサンスの養老院 (1993)は緑豊かな住宅街に立つシンプルな長方形平面の建築物である。構成に関してもとても簡素で、平面要素としては居室、廊下、階段だけであり、それを構成要素の存在性を明示しつつ光の陰影豊かな空間に仕上げている。肝要な点は、どのように構成要素が組み合わされて全体が成り立っているかを明示的に表現している点である。そこには構成の論理の透明性がある。また、ズントーの建築物には物質への感性が鋭敏であり、建築物を構成している物の重さや沈黙などが伝わってくるようである。
 ルツ・ハウス(2009)は、建築家自身の休暇のための住居である。構築の形式としてはログハウスの形式であり、杉の角材を率直に積んでゆくことで建築物は出来上がった。素材のナリにしたがって計画された平面には、ここでも構築の論理の透明性が見て取れる。
 詩美をかたちづくるもののエレメントをあげつらってみると、< 余白 > ・< 関係項 >・ < 響き >  = ( space, relatum, harmony ) となるだろう。そして、それらのエレメントがつくる種々の詩的状態を言い表す言葉として< 系の複層 > があげられる。それは関係項同士の連結の様態による響きの様相である。そして余白には<省略>と<圧縮>による多義像が宿る。
 人類学者の中沢新一が、フランスの詩人ボードレールについて論ずるところによれば、散文的な世界とは「加算的無限の成立する開放系」であり、詩の世界とは「無限に拡大する閉鎖系」である。「無限に拡大する閉鎖系」にあっては、部分が他の部分と響き合って存在している。ズントーの建築は物の構築により詩的状態を築いており、そこには構築行為の残響が深く響く。それはスイスの村々や街で、人々がその風景を構築してきたその制作行為と身体的に深く響き合う。詩の世界では万象が照応しあう。「無限に拡大する閉鎖系」の、その響きが世界に開かれるとき、世界は詩化される。詩とは、人間の、世界の呼び声に対する愛ある応答である。世界と人間とのあいだに美しい調和を結ぶこと、それが言葉の本懐とするところである。詩は世界を聖別する。
 ピーター・ズントーの建築、それは、人々の生を証しだてる「叙事詩としての建築」と呼ぶができるかもしれない。
 
 
(2021.04.14修正 : 聖ベネディクトゥス・チャペルの内壁は布に銀色の塗装仕上げ)
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takabooo0919 · 6 years
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師匠の作品「聖杯(天地)」これが、近く京都にオープンしたホテルKyoto Art Monzen に展示していただくことになりました。この聖杯は本作「天地」以外に「東、西、南、北」の、合わせて5体作られました。他の4体は、バチカンのローマ法王、ナイジェリアのアリンゼ枢機卿、イギリスカンタベリ大聖堂のウィリアムズ大主教、桃山学院大学チャペルにそれぞれ献上されました。嘘みたいなほんとの話です✨ #amazing #art #beautiful #japan #culture #ceramic #chawan #pottery #世界平和 #stoneware #聖杯 #calice #chanoyu #sadou #zen #vatican #ヴァチカン #catholic #カトリック #canterbury #カンタベリー # #茶碗 #茶の湯 #抹茶 #茶道 #protestant #ローマ法王 #プロテスタント #桃山学院大学 #teaceremony
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snoopymaniamidori · 4 years
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新年最初の「夕の祈り」 聖路加国際大学聖ルカ礼拝堂臨時チャペルにて 近藤岳さんのポシティフオルガン演奏は過去と現在を自在に行き来するような幻想的な印象。バッハのシンフォニア9番を聴きながら、私はどこから来てどこへ行くのだろうと様々な思いを巡らせる。 終わってロビーで愉快な仲間たちに新年のご挨拶。今日はお土産なんにも準備出来なかったから頂きっぱなしで恐縮です。。。みんなありがとね。 気の合う顔にまた会える、大好きな場所。今年も第一水曜日、楽しく通いたいな。 https://www.instagram.com/p/B7D6I_6JSkx/?igshid=18o8jgp5xi63j
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39kirin · 5 years
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ロンドン2日目
ロンドン2日目
今日はロンドン市内を離れてオックスフォードへいくよ!
5:00
昨日早く寝たせいで早起きしちゃった😅
これが時差ボケってやつかぁぁぁ!!
日本から持ってきた梅茶を飲む。
持ってきてよかったー。
7:00
朝食はコンチネンタルスタイルです!
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ご飯食べてるときが1番寂しく感じるかもな。
パンとシリアル食べたぞー!
8:00
オックスフォード行きのバスに乗るためにマーブルアーチ駅へ!
電車でちょっとボーッとしちゃってたんだけど耳が馴れたのか、アナウンスを聞いて降車に成功ww
バス乗り場を探してウロウロ…
地上に出たところから反対側の車線だったからわかりにくかったな💦
OxfordTubeもX90も同じところに止まるっぽかったから来た方に乗ればいいんね😀
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うおーロンドンではじめての2階建てバスだぞーーー! もっとバスを乗りこなせるようになりたいな!
10:30
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ひたすらバスに揺られること2時間、だんだん外の町並みが田舎っぽくなってきたぞー。
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つきました!Oxfordです! 町並みが!美しい!お城がいっぱいあるみたい!というかこれ、もうホグワーツ!!!!
どこを写真に撮っても絵になるよーすごいよー😭
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まずはため息の橋発見!
ボドリアン図書館の目の前にあるのね。
ニューカレッジに行こうと思い、歩いていくも、どうやら観光客向けOPENは2:00pmのよう。 セキュリティのおっちゃんありがとう。また後で来るね…
11:30
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ここで【ボドリアン図書館のガイドツアーに申し込む】というミッションを遂行…!
どこ行っても『Hello^^』て行ってくれる…優しい…
12:30からの30minガイドツアーに申し込むことに成功!!
かなり人気だって聞いてたけど無事予約できたぞすごいすごーい!
1時間ほど街をぶらぶらしてみる。 お土産屋さんいっぱあるね!
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かの有名なラドクリフカメラ!
街では沢山の学生がウロウロ…
なんだか小さめの学園祭みたいなものをやっててステージで歌を歌ったり絵画が展示されてたり…
日本人っぽい観光客も沢山いたよ!
12:30
いよいよボドリアン図書館の中に入るぞー!
説明しよう!
さっきから何回も言ってるボドリアン図書館とは、ハリーポッターの作中で図書室として使われた場所で、賢者の石では閲覧禁止の棚でハリーがニコラス・フラメルについて探しているシーンで使われているのだ!また、ホグワーツの医務室として使われている部屋(炎のゴブレットではマクゴナガル先生とロンがダンスの練習をするシーン)なんかもあるよ!
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正直英語わかんないからガイドさんの言ってることの7割は聞き取れなかったけど、とにかく中はすごかった…
セキュリティの関係上撮影NGだから、気になる方はググって見てね!
13:30
さて、そろそろお腹空いてきました。
事前に調べておいたおトイレスポット、ウェストゲートというショッピングモールに行きます。
歩いて10分くらい。
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イギリスはアリスの国でもあるんですよー。
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入って早々見つけたー!!極度乾燥(しなさい)www
イギリスのブランドで、意味不明な日本語がポイント!
Superdryという英語を翻訳機にかけて出てきたものをそのまま使ったんだとかww
ちなみに商標上の理由により日本での出店はできないらしい。(某ビール)
オックスフォードにもあるんやー…
中には入らなかったけど、向かい側にでっかいユニクロがあって、同じくらい広い様子!
すごい!!!
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お昼ご飯はフードコートで£8のヌードルを購入!
高物価ロンドン、めちゃ高い…
麺、味、トッピングをチョイスして自分の好きなヌードルを作れる!
海外の映画によく出てくるよね、こーゆー持ち手付きのボックス。
日曜日ということもあって、めちゃくちゃに混んでたよ。
おトイレも無料で使える!すごくキレイだった!
14:00
そろそろカレッジが開く頃なので、ニューカレッジは後回しにして、先にクライストチャーチへ!
説明しよう!
クライストチャーチとは、まさにホグワーツのロケ地で、作中に何度も出てくる階段、あの有名な大広間などがあるハリポタ聖地なのだ!
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いよいよですぞー!
仮にも大学だけど、世界各国の観光客がめっっっちゃ並んでてウケたわ。
15分くらいは並んだかな?
お天気も良くなってきました!
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ででーーーん!
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でででーーーん!!!
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階段!食堂!お庭!!!!
これぞハリーポッターの世界!これぞホグワーツ!!
ここの食堂はまさに今も学生達が使ってるんだよー。
ちなみにオックスフォードのカレッジは宿泊が可能で、宿泊するとここの食堂で朝食が食べられるんだとか。
あと2日長く旅行できてたら泊まってたわ。
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とにかく伝えきれないほど、圧巻!
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チャペルの中も見に行ったけど、何もかもが美しい!
人の手で作ったと思えない。
16:00
じっくり見過ぎちゃって、気付いたら2時間近く経ってたよ…
だいたいどこのカレッジも16:00には閉館してしまって、おかげで後回しにしてしまったニューカレッジに行くことができなかった。。
帰りにはお土産屋さんでニットキャップを購入!
Oxford Universityってなんかカッコいい(バカ)
17:00
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再びバスで2時間の長旅へ。
帰りは2階建てバスの2階最前列に座れたぜ!
疲れて寝ちゃってたけど←
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本当に載せきれないし写真なんかじゃ伝えきれない程美しいものを目にした気がする。
日本とは違った歴史の深さも感じる。
19:00
帰りに明日の朝ごはんで食べるヨーグルト買ったよ!
明日は朝早く起きて、ハリーポッターワーナースタジオに行ってきます!
ところでロンドンって室内は全面禁煙なんですよ。
そんな環境なもんで、そこら中に喫煙スポットがあり、ロンドナー達は街中どこでも歩きタバコ!
私は歩きタバコはしてないけど、そこら中に仕切りのない喫煙所がいっぱいあって、文化の違いを感じました。
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apricotrip5 · 5 years
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ローマ駅。
電車降りてとりあえず撮ったからひどい写真笑
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���物置いて地下鉄でバチカンへ。
高い壁が見えてきます〜
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美術館入り口で、ミケランジェロのチャペルは
今日は12:30で締め切りとのこと。
その時12:40。
残念だなーと思ってたら、
ツアーの客引きにつかまる⸜( ⌓̈ )⸝
サン・マルコまでツアーするよとのこと。
え、美術館入れないの?って言ったら
なんとなく濁されて、
ノーサンキューでその場���離れようとしたら、
美術館はやってるよ!って。
なんやねーーーん
騙されかけて、ちょっと帰りかけた笑
チケット買う時も、チャペル見れないよ?
って言われる。やっぱりメインなのよねー。
でもまあ、ラファエロ見られたら良いっす!
てか明日休館日だから今日しかないし!
またいつか誰かと来ようと心に決めて
入場したのでした。
_
いま、美術館を出てサンピエトロ大聖堂に入る
大行列に並んでる。
25分経過。。
そろそろセキュリティチェックにたどり着く。
15:49
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heart-field · 2 years
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・ ハートフィールドの魅力の1つ"大聖堂" ステンドグラスの前で永遠の誓いを* 家族や友人などご招待したゲスト様が感動していただける特別な場所。 ぜひブライダルフェアでその感動を体験して! ____________ 𝙷𝙴𝙰𝚁𝚃 𝙵𝙸𝙴𝙻𝙳 トップページはこちら☟︎︎︎ @heartfield_wedding ご見学&資料請求は プロフィールのリンクから* [姉妹店のご紹介] 静岡 エスプリ・ド・ナチュール @esprit_de_nature_wedding 新横浜 ハートコート横浜 @heart_court_wedding 株式会社テイク・フォー ____________ #ハートフィールド #ハト嫁 #プレ花嫁 #プレ花嫁準備 #結婚式 #結婚式準備 #結婚式準備を楽しもう #ウェディング #ゲストハウス #貸切ウェディング #三島結婚式場 #沼津結婚式場 #静岡結婚式場 #三島花嫁 #沼津花嫁 #静岡花嫁 #静岡ウェディング #大聖堂 #大聖堂チャペル #大聖堂ウェディング #チャペル #チャペルウェディング #クラシックチャペル #クラシックウェディング #アンティークウェディング #アンティークチャペル #ウェディングドレス (ハートフィールド マナーハウスウェディング) https://www.instagram.com/p/CYdw0n9vw2O/?utm_medium=tumblr
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koniart2 · 5 years
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「寺院・教会・チャペル・聖堂・ステンドグラス」のイラスト
「寺院・教会・チャペル・聖堂・ステンドグラス」を描いた無料イラスト 画像をクリックすると別タブでダウンロード画面が開きます。
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ganimaly · 5 years
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【旅|グルジア正教会】信仰が息づいている教会を訪れる
【旅|グルジア正教会】信仰が息づいている教会を訪ねる #ジョージア #ジワリ修道院 #至聖三者大聖堂 #ゲルゲティ三位一体教会
ジョージアの旅で、 幾つか教会をまわってみると、 信仰が生活に密着していること��気づきます。
これは首都トビリシにある、至聖三者大聖堂。 2004年に完成した新しい教会です。 建築の伝統的な様式が美しく、 南コーカサス地方最大です。
ゲルゲティ三位一体教会は、 トビリシから北へグルジア軍用道路を3時間、 ゲルゲティと言う小さな村の山の上に、
13~14世紀に建てられた教会が静かに佇みます。
見えるかな。 日曜日のこの日、 山頂に向かう急な山道は、 信者の人たちがちらほら。 チャペルでは司祭によるミサが行われていました。
内部の撮影はNGですが、 この隔絶された教会と絶景の動画です。
曇り空の夕方に、 トリビシの前に都だったムツヘタへ。 スヴェティツホヴェリ大聖堂は、 世界遺産「ムツヘタの歴史的建造物群」の一つ。
1029年に再建されたこの建物、 木造の時代は5世紀以前に遡ります。
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thyele · 5 years
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Mörishige【貴族】さん"母校へと舞い戻って来たYO!このチャペルのピアノは何年経っても変わらない。
Mörishige【貴族】さん"母校へと舞い戻って来たYO!このチャペルのピアノは何年経っても変わらない。
無論俺も変わらない。罪重ねた日々を思い出すYO。ノートルダム大変な事になってしまったけれど教会は寄り添える場所である事が一番大切。青空の下でも救われる人はいる。美SEA大聖堂が帰ってくるまで生きてこの目で見たい!
https://twitter.com/KIZOKU_0927/status/1118133795415384066
ニューアクション最期のライブです。 『PlayNight in Tokyo』 〜New Action Final Live〜 4月27日(土)
於:吉祥寺ichebee(伊千兵衛 ダイニング) OP&ST 19:00 Charge 2,000円(+1drink) 演奏:ニューアクション OverLightShow 〜大箱屋〜 踊りに来てください!
https://twitter.com/funamoch1/status/1117605672659480577
RIS official"【本日開催!】 4/17渋谷CHELSEA HOTEL
🎧18:30 DJ:Akiwo 🎸19:00 submen 🎸19:45 Tsuru and the SisterRay 🎸20:30 THE DIGITAL CITY JUNKIES 🎸21:15〜22:00 RIS 💰adv: ¥3,000 door: ¥3,500 💝来場者特典:ポストカード付き チケット予約(先着特典バッヂは残り1つ!)👇
https://twitter.com/RIS_707/status/1118322429376356354
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